(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】長繊維を含有するスチレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240213BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20240213BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20240213BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240213BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08L77/00
C08J3/22 CET
C08K7/04
C08L25/12
C08L55/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020043032
(22)【出願日】2020-03-12
(62)【分割の表示】P 2016555601の分割
【原出願日】2014-03-03
【審査請求日】2020-04-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】510288530
【氏名又は名称】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ノーウィン ファン リエル
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】藤井 勲
【審判官】海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132628(WO,A1)
【文献】特開2009-179675(JP,A)
【文献】特開2013-181123(JP,A)
【文献】特開2015-059164(JP,A)
【文献】特開2010-043204(JP,A)
【文献】特開2003-020395(JP,A)
【文献】特開2011-080029(JP,A)
【文献】特開2012-087264(JP,A)
【文献】特表2005-532435(JP,A)
【文献】特開2010-285598(JP,A)
【文献】特開2012-092159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08F 2/00-301/00
C08G 2/00- 85/00
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形可能な組成物であって、
(A)220℃及び10kgで測定される試験法ISO1133に従って求められる5以上のメルトフローレートを有する1種以上のスチレン系ポリマーを含有する熱可塑性ポリマーを含む希釈ポリマー組成物と、
(B)
ペレットの形態の組成物、
とを含み、前記組成物(B)は、前記組成物(B)の20~50重量%のポリマーマトリックス中に分散された前記組成物(B)の50~80重量%の
長さ3mm~30mmの長繊維を含み、前記ポリマーマトリックスは、前記ポリマーマトリックスを基準にして10~40重量%の、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーと、50~90重量%の1種以上のポリアミドとを含み、前記スチレンコポリマーが、220℃及び10kgで測定される試験法ISO1133に従って求められる6以上のメルトフローレートを示し、前記希釈ポリマー及び組成物(B)は、前記成形可能な組成物が
前記1種以上のスチレンコポリマー中に含まれる前記1種以上のエラストマーモノマー単位を5重量%未満の量で含み、前記成形可能な組成物中のポリアミドの量が前記成形可能な組成物
の4重量%から50重量%未満であるような量で存在する、前記成形可能な組成物。
【請求項2】
前記1種以上のスチレンコポリマー中に含まれる前記1種以上のエラストマーモノマー単位の量が
前記成形可能な組成物を基準にして0.1重量%以上である、請求項1に記載の成形可能な組成物。
【請求項3】
ポリアミドの量が、前記成形可能な組成物
の4重量%~30重量%である、請求項1または2に記載の成形可能な組成物。
【請求項4】
組成物(B)中の前記スチレンコポリマーが、
前記1種以上のエラストマーモノマー単位を5重量%~15重量%の量
で有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
【請求項5】
物品の形成方法であって、
(i)
ペレットの形態の繊維含有組成物(B)を用意する工程であって、前記組成物(B)は、前記組成物(B)の20~50重量%のポリマーマトリックス中に分散された前記組成物(B)の50~80重量%の
長さ3mm~30mmの長繊維を含み、前記ポリマーマトリックスは、前記ポリマーマトリックスを基準にして10~40重量%の、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーと、50~90重量%の1種以上のポリアミドとを含み、前記スチレンコポリマーが、220℃及び10kgで測定される試験法ISO1133に従って求められる6以上のメルトフローレートを示すものである、工程、
(ii)別に、220℃及び10kgで測定される試験法ISO1133に従って求められる5以上のメルトフローレートを有する1種以上のスチレン系ポリマーを含有する熱可塑性ポリマーを含む希釈ポリマー組成物を用意する工程、
(iii)前記繊維含有組成物と前記希釈ポリマー組成物とをブレンドして混合物を形成する工程、
(iv)前記混合物が溶融して成形可能な組成物を形成するのに十分な温度に前記混合物を加熱する工程、及び
(v)前記成形可能な組成物を成形して物品を形成する工程、
を含む、物品の形成方法。
【請求項6】
前記ポリアミドが、前記成形可能な組成物
の4重量%~30重量%の量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記成形可能な組成物が、
前記1種以上のスチレンコポリマー中に含まれる前記1種以上のエラストマーモノマー単位を、前記成形可能な組成物
の0.1重量%~5重量%の量
で有する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記希釈ポリマー組成物が10以上のメルトフローレートを有する、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記希釈ポリマー組成物がスチレンポリマー又はスチレンコポリマーを含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記希釈ポリマー組成物が、スチレンアクリロニトリル又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマーを含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上のスチレンポリマーを含有する熱可塑性ポリマーマトリックスに分散された長繊維を含む組成物、該組成物に由来する成形可能な組成物、及びかかる組成物をベースとして作製される成形物に関する。本発明はまた、1種以上のスチレンポリマーを含有する熱可塑性ポリマーマトリックスに分散された長繊維、成形可能な組成物、及び成形物を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーは、種々の産業、例えば自動車、玩具、電化製品、農場及び芝刈りトラクター及び道具、医療デバイス、食品サービスアイテム、電子機器部品などにおける成形部品を作製するのに利用されている。熱可塑性ポリマーは、成形物に有意な利点、例えば、ある代替材料よりも軽い重量、設計柔軟性、制御された伝導率などを付与する。いくつかの用途において、熱可塑性ポリマーは、例えば、代替材料よりも高いライナー膨張係数(CLTE)、低い弾性率、低い伝導率及び高い脆性といった課題を呈する。フィラー、例えば繊維は、CLTE、弾性率、ならびに繊維の性質及び含有量に基づいて伝導率を改良するのに添加され得る。熱可塑性ポリマーの骨格が弾性を付加するように修飾されて、またはエラストマーポリマーがベースの熱可塑性ポリマーとブレンドされて、熱可塑性材料に由来する成形部品の脆性を低下させることができる。エラストマーモノマーによって修飾されたまたはエラストマーポリマーとブレンドされたスチレンポリマーを含有する熱可塑性ポリマー系は、高温で非常に良好な特性、例えば熱安定性、比較的高い弾性率及び良好な弾性率を付与すると認識されている。多くの熱可塑性ポリマー系から作製される成形部品は、所望の用途に必要な強度及び剛性を付与するために比較的厚い断面(例えば厚い壁)を必要とする。熱可塑性系から成形される部品の1つの利点は、成形物の表面が機能的または審美的要件に適合するように修飾され得、表面修飾された部品がいくらかのポリマー系及び加工技術を用いることで比較的光沢のあるものとなり得ることである。いくつかの用途では、低い光沢が望まれる。このことは、部品製造者にさらなる課題を提示する可能性がある。スチレンポリマーをベースとするポリマー系、特に、エラストマー性を付与するように修飾された系は、改良された剛性、弾性率及び弾性率を高温において有することにより、より薄い断面の使用によって所望の特性を達成することを可能にする。
【0003】
スチレンポリマーを含有する熱可塑性ポリマー系は、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011/023541;WO2005/090451;US8,030,393及びUS7,135,520に開示されているように、繊維によって修飾されている。かかる系は、かかる材料の加工を課題にするペレット堅牢性、例えば、繊維に対するポリマーマトリックスの低い付着性、及び低い流動性による問題に起因して商業的な成功に達していない。このように、スチレンポリマー系の望ましい特性にも関わらず、繊維修飾された系は、所望の特性の全てを付与しておらず、また、加工性でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、必要とされるのは、改良されたペレット堅牢性及び流動性を示す、スチレンポリマー及び繊維を含有する熱可塑性濃縮物、ならびに、スチレンポリマー及び繊維を含有する熱可塑性濃縮物をベースとし、高温において低い吸水性及び良好な弾性保持率を有する成形可能な組成物である。かかる成形可能な組成物は、使用強度要件を満たすのに必要とされるより薄い断面を有する成形部品の作製を容易にし、粒状の表面に低い光沢を付与することがさらに望まれる。必要とされるのは、改良された特性バランス、例えば高い剛性、良好な実用的延性、高い熱性能及び良好な加工性を有する、スチレンポリマーを含有する熱可塑性ポリマー系における繊維の濃縮物、ならびにこれに由来する成形可能な組成物である。また、必要とされるのは、商業的に実現可能なかかる濃縮物、これに由来する成形可能な組成物及び成形部品を作製する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリマーマトリックスを基準にして約10~約50重量%の、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーと、約30~約90重量%の1種以上のポリアミドとを含む約20~約70重量%のポリマーマトリックスの組成物に分散された約30~約80重量%の長繊維の組成物を含む組成物であって、スチレンコポリマーが約6以上のメルトフローレートを示す、組成物に関する。いくつかの好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの約0.1重量%以上の量で存在する、スチレンコポリマーとポリアミドとを相溶化させる1種以上の成分をさらに含む。好ましい長繊維は、ガラスまたは炭素繊維を含む。好ましくは、長繊維は、約3~約30mmの長さを有する。好ましくは、繊維は、織マットまたは繊維束に由来する。これらの組成物は、長繊維をベースポリマー系に導入するのに有用であり、ここで、ベースポリマー系は、広範な使用のために成形構造体を作製するのに利用され得る成形可能な組成物である。ポリマーマトリックスにおける長繊維の組成物は、濃縮物、すなわち、ポリマーマトリックスにおける長繊維の濃縮物と一般に称される。ベースポリマー系は、希釈ポリマーと称され得る、なぜなら、ベースポリマーとポリマーマトリックスにおける長繊維の組成物との接触が、記載の濃縮物に含有されるよりも低濃度の長繊維を有する組成物を生じさせるからである。
【0006】
本発明はまた、5以上のメルトフローレートを有する1種以上の熱可塑性ポリマーを含む希釈ポリマー組成物を含む成形可能な組成物にも関し、該組成物は、上記のように長繊維及びポリマーマトリックスを含む。1種以上の熱可塑性ポリマーは、1種以上のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、スチレン系ポリマーまたはこれらのブレンドを含んでいてよい。好ましくは、希釈ポリマーは、1種以上のスチレン系ポリマー、または、1種以上のスチレン系ポリマーと他の熱可塑性ポリマー、例えば本明細書に開示されているものとのブレンドを含有する。好ましくは、成形可能な組成物は、約5%以下のエラストマー(ゴム)成分を含有する。好ましくは、成形可能な組成物は、スチレン系ポリマーを含む熱可塑性ポリマーをポリアミドと相溶性にする約1%以下の化合物を含有する。本発明は、これらの組成物に由来する成形品にさらに関する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、ポリマーマトリックスを基準にして約10~約50重量%の、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーと、約20~約90重量%の1種以上のポリアミドとを含むポリマーマトリックスを含む混合物に、繊維マットまたは繊維束を接触させる方法であって、繊維マットまたは繊維束がポリマーマトリックスに包囲されるような条件下でスチレンコポリマーが約6以上のメルトフローレートを示す、方法である。いくつかの実施形態において、該方法は、繊維マットまたは繊維束を包囲するポリマーマトリックスを有する繊維マットまたは繊維束を、約3~約30mmの長さに切断することをさらに含んでいてよい。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックスの成分は、ポリマーマトリックスを繊維マットまたは繊維束と接触させる前にブレンドされる。
【0008】
本発明のポリマーマトリックスに分散された繊維の濃縮物は、改良されたペレット堅牢性及び流動性を付与し、ポリマーマトリックスにおける長繊維の濃縮物をベースとする成形可能な組成物は、高温において低い吸水性及び良好な弾性保持率を示し、使用強度要件を満たすのに必要とされるより薄い断面を有する成形部品の作製を容易にし、粒状の表面に低い光沢を付与することができる。濃縮物及びこれに由来する成形可能な組成物は、改良された特性バランス、例えば高い剛性、良好な実用的延性、高い熱性能及び良好な加工性を付与する。かかる濃縮物ならびにこれに由来する成形可能な組成物及び成形部品を作製する方法が、商業的に実現可能である。濃縮物及び成形可能な組成物は、種々の産業、例えば自動車、玩具、電化製品、農場及び芝刈りトラクター及び道具、医療デバイス、食品サービスアイテム、電子デバイスなどにおいて利用され得る。成形可能な組成物から製造されてよい部品の例として、自動車用リフトゲート、インストルメントパネルキャリア、フロントエンドキャリア、ドア弾性率、座席背面、座席底面、ラジエータファン、内装トリム、電子デバイス用のケースまたはハウジングなどが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に提示されている説明及び図は、本発明、その原理及びその実用化について当業者に知らせることが意図されている。したがって、記載されている本発明の具体的な実施形態は、本発明の網羅または限定であることは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、かかる特許請求の範囲に権利付与される等価物の全範囲と併せて決定されるべきである。特許出願及び公開公報を含めた全ての論文及び参考文献の開示は、全ての目的で参照により組み込まれる。他の組み合わせもまた、以下の特許請求の範囲から得られるように可能であり、記載の詳細な説明内に参照により組み込まれる。
【0010】
本発明は、スチレンポリマーまたはコポリマーを含有する熱可塑性ポリマー系における繊維の濃縮物に関する。好ましくは、スチレンポリマーまたはコポリマーは、エラストマー成分をさらに含む。エラストマー成分は、スチレンコポリマー、またはスチレンポリマー若しくはコポリマーと相溶性でありかつこれとブレンドされるエラストマーポリマーの骨格にエラストマーコモノマーを含むことができる。エラストマー成分は、その特性に基づいてゴムと称される場合が多い。熱可塑性ポリマー系は、スチレンポリマーまたはコポリマー及びエラストマー成分を含むことができる。加えて、熱可塑性系は、他の熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0011】
スチレンポリマーは、重合された、アルケニル芳香族化合物を含有するポリマーまたはコポリマーに一般に関する。アルケニル基は、化合物が好ましくはフリーラジカル重合によって重合可能であるように芳香環に共有結合されている。化合物は、1つ以上の芳香環、好ましくは1または2つの芳香環、より好ましくは1つの芳香環を含有していてよい。芳香環は、置換されていなくてもよく、または、スチレンポリマーの重合、本発明の濃縮物の作製若しくは成形可能な組成物の所望の構造体への成形を妨げない置換基によって置換されていてもよい。好ましくは、置換基は、ハロゲンまたはアルキルであり、より好ましくは臭素、塩素またはC1~4アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。アルケニル基は、1つ以上の二重結合、好ましくは1つの二重結合を有する直鎖または分岐状の炭素鎖を含む。スチレンポリマーに有用なアルケニル基として、芳香環に結合しているときには重合によりスチレンポリマーまたはコポリマーを形成することが可能であるものが挙げられる。好ましくは、アルケニル基は、2~10個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、最も好ましくは2個の炭素原子を有する。好ましいスチレンモノマーとして、スチレン、アルファメチルスチレン、ジビニルベンゼン、n-フェニル-マレイミド及び塩素化スチレンが挙げられ、より好ましいスチレンモノマーとして、アルファメチルスチレン及びスチレンが挙げられる。スチレンコポリマーは、得られる熱可塑性組成物にエラストマー性を導入するためのエラストマーコモノマーを含有していてよい。スチレンモノマーと共重合していてよくコポリマーにいくらかのエラストマー性を導入する任意のコポリマーが利用されてもよい。エラストマーコモノマーのタイプの例として、アルカジエン、特に、その共役アルカジエンが挙げられる。好ましいエラストマーモノマーとして、特に、共役アルカジエン(例えば、ブタジエン及びイソプレン)が挙げられる。最も好ましくはブタジエンである。スチレンコポリマーは、スチレンモノマーにおいて不飽和基と重合するコモノマーをさらに含んでいてよい。スチレンモノマーと共重合可能な好ましいモノマーとして、アクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びこれらの混合物が挙げられ、アクリロニトリルが最も好ましい。好ましいスチレンコポリマーとして、スチレンアルカジエンコポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマーが挙げられる。エラストマーモノマーを含有する好ましいスチレンコポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマー、スチレンアルカジエンコポリマー系、水素化スチレンアルカジエンコポリマー系などを含み、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマーを含むことがより好ましい。スチレンポリマーは、1種以上のスチレンホモポリマーと1種以上のエラストマーコモノマーを含有する1種以上のスチレンコポリマーとのブレンドを含んでいてよい。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってよい。好ましいスチレンコポリマーは、約5重量%以上、より好ましくは約10重量%以上の濃度でエラストマーコモノマーを含有する。好ましいスチレンコポリマーは、約20重量%以下、より好ましくは約15重量%以下の濃度でエラストマーコモノマーを含有する。代替的には、スチレンポリマーは、エラストマーポリマーとブレンドされていてよい。スチレンコポリマーは、スチレンコポリマーと均一なブレンドを形成し該ブレンドにエラストマー性を導入する任意のエラストマーポリマーとブレンドされていてもよい。スチレンポリマーがブレンドされていてよいエラストマーポリマーの例として、上記に開示されているエラストマーコモノマーを含有するスチレンコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレン-プロピレンジエンゴム、ポリアルカジエン、熱可塑性ポリウレタンなどが挙げられる。好ましいエラストマーポリマーとして、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレン-プロピレンジエンゴムなどが挙げられる。濃縮物において用いられるスチレンポリマーまたはコポリマーは、長繊維を分散させることができるいずれのスチレンポリマーまたはコポリマーであってもよいが、組成物が、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーを含有することとする。最も好ましくは、スチレンポリマーまたはコポリマーは、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマーまたはアクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー及びスチレンアクリロニトリルコポリマーを含む。本発明において有用な成形可能な組成物において、エラストマーモノマーまたはポリマーの好ましい量は、約0重量%以上であり、最も好ましくは約4重量%以上である。本発明において有用な熱可塑性組成物において、エラストマーモノマーまたはポリマーの好ましい量は、約10重量%以下であり、最も好ましくは約5重量%以下である。濃縮物における1種以上のスチレンコポリマーの量は、強化される組成物における繊維の分散を向上させるのに十分である。好ましくは、濃縮物において利用される1種以上のスチレンコポリマーの量は、濃縮物において利用されるポリマーの重量を基準にして約10重量%以上であり、より好ましくは約20重量%以上であり、最も好ましくは約30重量%以上である。好ましくは、濃縮物において利用されるポリマー組成物における1種以上のスチレンコポリマーの量は、濃縮物において利用されるポリマーの重量を基準にして約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、最も好ましくは約30重量%以下である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、熱可塑性組成物における強化用繊維の濃縮物である。好ましくは、濃縮物は、長繊維を含有し、一般に、繊維の長さは、繊維及び熱可塑性ポリマーから作製されるペレットまたは構造体の長さに基づく。該長さは、一般に最長寸法である。該長さは、最終組成物に組み込まれたとき改良された線膨張係数、弾性率、耐衝撃性、耐熱性などを付与する繊維を付与するように好ましくは選択される。好ましくは、繊維は、約3mm以上、より好ましくは約9mm以上の長さを有する。好ましくは、繊維は、約30mm以下、より好ましくは約13mm以下の長さを有する。繊維は、最終組成物に分散されたとき改良された線膨張係数、弾性率、耐衝撃性、耐熱性などを付与する任意の繊維を含んでいてもよい。例示的な繊維タイプとして、ポリマー繊維、炭素繊維、ガラス繊維などが挙げられる。最も好ましい繊維は、炭素及びガラス繊維であり、ガラス繊維が最も好ましい。好ましくは、濃縮物における繊維の濃度は、約30重量%以上、より好ましくは約50重量%以上、最も好ましくは約60重量%以上である。濃縮物における繊維の濃度は、約80重量%以下、より好ましくは約75重量%以下、最も好ましくは約70重量%以下である。
【0013】
濃縮物は、繊維濃縮物の堅牢性及び該濃縮物の流動性を向上させるように1種以上のポリアミドをさらに含む。これらの利点を付与するいずれのポリアミドが濃縮物において利用されてもよい。ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸との反応生成物である。本発明のブレンドにおいて用いられるポリアミドは、当該分野において周知であり、少なくとも5,000の分子量を有しナイロンと一般に称される半結晶性及びアモルファス樹脂を包含する。好適なポリアミドとして、全て全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,071,250号;同第2,071,251号;同第2,130,523号;同第2,130,948号;同第2,241,322号;同第2,312,966号;同第2,512,606号;同第3,393,210号;同第2,071,250号;同第2,071,251号;同第2,130,523号;同第2,130,948号;同第2,241,322号:同第2,312,966号;同第2,512,606号に記載されているものが挙げられる。ポリアミドは、等量の4~12個の炭素原子を含有する飽和ジカルボン酸とジアミンとの縮合によって生成されてよく、ここで、ジアミンは、4~14個の炭素原子を含有する。ポリアミドにおいてカルボキシル末端基よりも過剰のアミン末端基を付与するために過剰のジアミンが使用されてよい。ポリアミドの例として、ポリヘキサメチレンアジパミド(66ナイロン)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(69ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(610ナイロン)、及びポリヘキサメチレンドデカノアミド(612ナイロン)(該ポリアミドは、ラクタム、すなわち、ポリカプロラクタム、ポリラウリン酸ラクタム、ポリ-11-アミノウンデカン酸、ビス(パラアミノシクロヘキシル)メタンドデカノアミドの開環によって生成される)、が挙げられる。上記のポリマーのうち2種の共重合、または上記のポリマー若しくはそれらの構成要素、例えばアジピン酸、イソフタル酸ヘキサメチレンジアミンコポリマーの三元共重合によって調製されるポリアミドを本発明において用いることもできる。好ましくは、ポリアミドは、200℃を超える融点で線形である。用語「ナイロン」は、本明細書において用いられているとき、当業者に公知であるように従来の配合成分を含有するナイロンを指す。ポリアミド樹脂の例は、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610などである。これらのポリアミド樹脂は、単独で用いられても併用されてもよい。濃縮物におけるポリアミドの量は、繊維濃縮物の堅牢性及び該濃縮物の流動性を向上させるのに十分である。好ましくは、濃縮物において利用されるポリマー組成物におけるポリアミドの量は、濃縮物において利用されるポリマーの重量を基準にして約30重量%以上であり、より好ましくは約40重量%以上であり、最も好ましくは約50重量%以上である。好ましくは、濃縮物において利用されるポリマー組成物におけるポリアミドの量は、濃縮物において利用されるポリマーの重量を基準にして約90重量%以下であり、より好ましくは約80重量%以下であり、最も好ましくは約70重量%以下である。
【0014】
濃縮物に繊維を分散させるのに利用される組成物は、スチレンポリマーまたはコポリマー及びポリアミドを含有する組成物を相溶化する1種以上のポリマーまたはコポリマーをさらに含んでいてよい。スチレンポリマーまたはコポリマー及びポリアミドを含有する組成物を相溶化する任意のポリマーまたはコポリマーが利用されてもよい。例示的な相溶化剤として、スチレン-マレイン酸イミドコポリマー、骨格にグラフト化された無水マレイン酸を有するスチレンポリマーまたはコポリマー、(例えば無水マレイン酸グラフト化アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS))、アクリルアミドグラフト化アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、エチレン-スチレン-メタクリル酸グリシジルグラフトコポリマーが挙げられ、好ましい相溶化剤として、スチレン-マレイン酸イミドコポリマーなどが挙げられる。相溶化剤は、スチレンポリマーまたはコポリマー及び1種以上のポリアミドを含有する熱可塑性組成物のブレンドを均一にするのに十分な量で利用される。好ましくは、相溶化剤の量は、繊維が分散されているポリマーマトリックスを基準にして約0.5重量%以上であり、より好ましくは約1重量%以上である。好ましくは、相溶化剤の量は、繊維が分散されているポリマーマトリックスを基準にして約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下である。
【0015】
濃縮物は、耐衝撃性改良剤をさらに含んでいてよい。濃縮物から作製される成形物の衝撃特性を改良しかつポリアミドとの均一な混合物を形成する任意の耐衝撃性改良剤が利用されてもよい。好ましい耐衝撃性改良剤として、エラストマーポリオレフィン及び変性ポリオレフィンが挙げられる。エラストマーポリオレフィンとして、商標VERSIFY(商標)プラストマー及びエラストマーで入手可能なプロピレン-エチレンコポリマー、商標AFFINITY及びAFFINITY GA(商標)ポリオレフィンエラストマーならびにENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマーで入手可能なポリオレフィンエラストマー、商標INFUSE(商標)オレフィンブロックコポリマーで入手可能なオレフィンブロックコポリマーが挙げられる。好ましい変性ポリオレフィンとして、オレフィンと不飽和酸、無水物若しくはイミドとのコポリマー、またはポリオレフィンと、ポリオレフィン骨格にグラフト化された不飽和酸、無水物若しくはイミドとのコポリマーが挙げられる。好ましいポリオレフィンとして、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、ポリエチレンが好ましい。有用な変性ポリオレフィンの例は、商標PRIMACOR樹脂でDow Chemical Midland Michiganから入手可能なエチレンアクリル酸コポリマー、及び商標AMPLIFY機能性ポリマーで入手可能な、無水マレイン酸によってグラフト化されたポリエチレンである。耐衝撃性改良剤は、本発明の成形組成物の衝撃特性を改良するのに十分な量で存在する。耐衝撃性改良剤は、濃縮物の約1重量%以上、好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上の量で存在してよい。耐衝撃性改良剤は、濃縮物の約20重量%以下、最も好ましくは約15重量%以下の量で存在してよい。
【0016】
濃縮物は、本明細書に記載されているポリマーマトリックスに分散されている繊維を含む。濃縮物におけるポリマー組成物の量は、所望の生成物を作製するのに用いられる最終組成物への繊維のブレンドを容易にするように選択される。一般に、濃縮物は、成形可能な組成物に繊維を組み込んで成形可能な組成物のCLTE及び弾性率を向上させるのに用いられる。濃縮物においてポリマーマトリックスを可能な限り最小量で利用して、最終生成物を作製するのに利用される最終の成形可能な組成物への繊維の組み込みにおいて最も大きな可撓性を付与することが望ましい。好ましくは、繊維を分散させるのに利用されるポリマー組成物は、濃縮物の約20重量%、最も好ましくは約30重量%以上である。好ましくは、繊維を分散させるのに利用されるポリマーマトリックスは、濃縮物の約70重量%以下、最も好ましくは約60重量%以下である。好ましくは、濃縮物における繊維の濃度は、濃縮物の約30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。好ましくは、濃縮物における繊維の濃度は、濃縮物の約80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。繊維は、繊維の表面にコーティングされるサイジング剤を有していてよい。サイジング剤は、コーティングにおける熱可塑性組成物への繊維の付着を改良するように適合される。熱可塑性組成物の繊維への接着を向上させる任意のサイジング剤が利用されてもよい。
【0017】
好ましい実施形態において、濃縮物は、ペレットの形態で利用され、ペレットは、同じ方向で配向された繊維を有する。好ましくは、繊維は、ペレットの長さ全体に延在する。濃縮物は、熱可塑性組成物に繊維を分散させるように熱可塑性組成物とブレンドされるように適合される。濃縮物は、本明細書に記載の濃縮物が繊維を分散させることができる任意のポリマー、例えば、スチレンポリマーまたはコポリマー、テレフタレート(ポリエチレン若しくはポリブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなど、またはこれらのブレンドと共に用いられてもよい。熱可塑性組成物は、上記に記載されているスチレンポリマーまたはコポリマーを好ましくは含む。好ましくは、熱可塑性組成物は、エラストマーモノマーを含有するスチレンコポリマー、またはエラストマーポリマー若しくはコポリマーとブレンドされたスチレンポリマー若しくはコポリマーを含有する。スチレンポリマーまたはコポリマーを含有する熱可塑性組成物は、他のポリマー、例えばテレフタレート(ポリエチレンまたはポリブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどとさらにブレンドされていてよい。いくつかの実施形態において、濃縮物は、鉱物充填ポリマー組成物とブレンドされ得る。好ましくは、熱可塑性組成物は、スチレンアクリロニトリル及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンのうち1種以上を含む。
【0018】
好ましい実施形態において、濃縮物は、高メルトフローレート熱可塑性ポリマーとブレンドされ、より好ましくは、高メルトフローレート熱可塑性ポリマーは、1種以上のスチレンモノマーと1種以上のエラストマーモノマーとのコポリマーを含む。好ましくは、高メルトフローレートコポリマーは、約5以上、より好ましくは10以上、なおより好ましくは約20以上であり、最も好ましくは約50以上のメルトフローレートを示す。好ましくは、メルトフローレートは、約200未満または以上である。メルトフローレートは、220℃及び10Kgで測定される試験法ISO1133に従って好ましくは求められ、結果は、g/10分の単位で引用される。
【0019】
濃縮物は、所望の繊維濃度を付与するように熱可塑性ポリマー組成物とブレンドされる。所望の繊維濃度は、選択された目標とする特性を付与するように選択され、用途依存性である。濃縮物及び熱可塑性ポリマーの具体的な重量比は、最終的な生成物における所望の繊維レベル、及び濃縮物における濃度を基準とする。一般に、繊維濃度は、得られる組成物において約60重量%以下の繊維、より好ましくは約50重量%以下、最も好ましくは約40重量%以下であってよい。一般に、繊維濃度は、得られる組成物において約10重量%以上の繊維、より好ましくは約20重量%以上、最も好ましくは約30重量%以上であってよい。最終組成物は、例えば、着色剤、離型剤、抗酸化剤、UV安定剤、熱安定剤、フィラー、保存安定剤、スリップ剤、難燃剤などの、熱可塑性組成物において一般に利用されている他の成分を含有していてよい。濃縮物は、繊維、特に、長いガラス繊維を含有する濃縮物を形成するための任意の公知のプロセスによって作製されてもよい。本発明の濃縮物を作製するための好ましいプロセスは、繊維を、好ましくは繊維束またはマットの形態で、繊維がポリマー混合物に分散されるような条件下で繊維を分散するのに用いられるポリマー組成物を含有する槽に通過させることを含む。本質的には、ポリマー混合物を繊維に含浸させる。ポリマーは、キャリアに分散され得、または槽を通過してポリマーによって含浸され得るように溶融され得る。槽の温度は、繊維が溶融槽を通過するときにポリマーが溶融形態にあるように選択される。ポリマーが固化して繊維に含浸した後、含浸された繊維が所望の長さに切断される。好ましい実施形態において、繊維が束(ロービング)であり、含浸された束が繊維方向を横断する方向に切断されてペレットを作製する。いくつかの実施形態において、含浸された繊維がダイを通過して、繊維の移動の方向を横断する方向に含浸された繊維を形作る。好ましくは、繊維は、ポリマーマトリックスが固化する前に形作られる。好ましくは、ペレットは、比較的均一なサイズを有する。
【0020】
本発明の濃縮物は、1種以上の熱可塑性ポリマー、希釈ポリマーとブレンドされて、所望の繊維含有量を有する混合物を作製する。好ましくは、濃縮物及び熱可塑性ポリマーは、溶融ポリマーに繊維を均等に分散させるのに十分な混合によって溶融状態で接触する。濃縮物及び熱可塑性ポリマーが接触することができる温度は、存在するポリマーが溶融状態であって混合可能であるように選択される。スチレンポリマーまたはコポリマーについて、温度は、好ましくは約220℃以上、より好ましくは約240℃以上であり、最も好ましくは約260℃以上である。スチレンポリマーまたはコポリマーについて、温度は、好ましくは約300℃以下、より好ましくは約290℃以下、最も好ましくは約280℃以下である。ポリマー及び繊維の実質的に均一な混合物を形成するいずれの混合形態、例えばミキサー、適切に装備された押出機、射出成形機などが利用されてもよい。好ましい混合装置は、濃縮物及び熱可塑性ポリマーを加熱して溶融し、これらを溶融状態にすることが可能である加熱ゾーンを有する2軸押出機である。混合後、得られる混合物は、好ましくは冷却されて、混合物が所望の形状、例えば、ペレットを形成するように用いられることを可能にする形態に形成される。好ましくは、ペレットは、熱可塑性ポリマー混合物を通して均一に分散された繊維を含む。
【0021】
好ましくは、成形可能な組成物は、所望のペレット堅牢性及びペレット流動性を付与するのに十分な量のポリアミドを含む。混合物におけるポリアミドの濃度は、所望の最終生成物の作製を容易にする任意の濃度であり得る。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)におけるポリアミド濃度は、繊維を含むポリマー混合物を基準にして約4重量%以上、より好ましくは約10重量%以上、最も好ましくは約15重量%以上である。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物におけるポリアミド濃度は、繊維を含むポリマー混合物を基準にして約50重量%以下、より好ましくは約30重量%以下、最も好ましくは約20重量%以下である。混合物における繊維の濃度は、所望の最終生成物の作製を容易にする任意の濃度であり得る。成形可能な組成物における繊維の濃度は、所望の熱変形、弾性率及び衝撃特性を付与するように選択される。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)における繊維濃度は、繊維を含むポリマー混合物を基準にして約20重量%以上、より好ましくは約30重量%以上、最も好ましくは約40重量%以上である。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物におけるポリアミド濃度は、繊維を含むポリマー混合物を基準にして約70重量%以下、なおより好ましくは約60重量%以下、最も好ましくは約50重量%以下である。得られる混合物の耐衝撃性、弾性率及び流動性を向上させるために、混合物におけるエラストマー材料(ゴム)の量を制御することが望ましい。エラストマー材料(ゴム)の量は、作製されるポリマー混合物に所望の弾性、弾性率及び耐衝撃性ならびに流動性を導入するように選択される。流動性は、所望の生成物を形成するのに用いられる形成されたポリマー混合物を輸送する能力を指す。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)におけるエラストマー材料(ゴム)の濃度は、混合物の重量を基準にして約0.1重量%以上、より好ましくは約1重量%以上、最も好ましくは約2重量%以上である。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)におけるエラストマー材料(ゴム)の濃度は、混合物の重量を基準にして約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約4重量%以下である。得られる混合物の耐衝撃性、弾性率及び流動性を向上させるために、混合物における相溶化剤の量を制御することが望ましい。相溶化剤の量は、作製されるポリマー混合物の耐衝撃性及び強度特性を向上させるように選択される。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)における相溶化剤の濃度は、混合物の重量を基準にして約0重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、最も好ましくは約0.3重量%以上である。好ましくは、最終の熱可塑性ポリマー組成物(成形可能な組成物)における相溶化剤の濃度は、混合物の重量を基準にして約5重量%以下、より好ましくは約2重量%以下、最も好ましくは約1重量%以下である。
【0022】
濃縮物及び熱可塑性ポリマーの得られる混合物は、例えば、射出成形、圧縮成形、熱成形などの公知の成形プロセスを用いて所望の生成物に形成され得る。1つの好ましい実施形態において、濃縮物及び熱可塑性ポリマーは、混合され、次いで、最終部品に直ちに形成されてよい。好ましくは、濃縮物及び熱可塑性ポリマーは、単軸押出機において混合され、次いで、所望の形状に押し出され、金型、例えば射出金型に導入されて、所望の形状を形成する。混合物は、押し出されるときまたは金型に導入されるとき、好ましくは溶融状態である。本発明の混合物は、上記に記載されている種々の部品を作製するのに用いられ得る。
【0023】
得られる形成された生成物は、向上した特性、例えば、高温、例えば90℃において、より良好な弾性保持率を有する。以下に議論する目標とする特性は、35重量%の長ガラス繊維組成物を有する、本願に例示されている成形可能な組成物をベースとする。好ましくは、生成物は、試験法ISO527により約9,000N/M2以上、より好ましくは約10,000N/M2以上、最も好ましくは約11,000N/M2以上の引張係数を示す。好ましくは、生成物は、試験法ISO527により約105以上の引張降伏を示す。本発明の成形組成物は、試験法ISO179-1Eaにより約22kj/M2以上、より好ましくは約30kj/M2以上のシャルピー衝撃を実証する。好ましくは、成形可能な組成物は、試験法ISO22088-3によって決定される約60以上、より好ましくは約70以上のスパイラル流量を有することによって実証される向上した加工特性を示す。得られる生成物は、吸水性に低い感受性を示す。本発明の成形組成物は、水中で1時間煮沸した後の重量の増加が1%以下であり、かかる暴露後の弾性率の降下が10%以下である。該部品は、向上した耐薬品性、低い線膨張係数、及び低い光沢を示す。
【0024】
「1種以上」とは、本明細書において用いられているとき、開示されているように少なくとも1種、または1種を超える列挙された構成要素が用いられてよいことを意味する。
【0025】
本発明の説明的な実施形態
【0026】
以下の例は、本発明を示すために提供されるが、その範囲を限定することは意図されていない。全ての部及び百分率は、別途示さない限り、重量基準である。
【0027】
約5~20μmの直径を有する連続繊維を含む繊維束を、表1に列挙されている成分の溶融槽に通過させ、ペレット化し、50~60重量%のガラス濃縮物を形成する。濃縮物は、11mmの長さの繊維を含むペレットの形態である。
【表1】
【0028】
ABSは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマーである。SANは、スチレンアクリロニトリルコポリマーである。AOは、抗酸化剤、特に、IRGANOX
(商標)12076抗酸化剤である。IMは、官能化されたポリエチレン系耐衝撃性改良剤、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンである。SMIは、スチレンマレイン酸イミドコポリマーである。PA6は、ナイロン6と一般に称されるポリアミド6である。形成したペレットをコーヒーミルにおいて10秒間ブレンドし、試験後、ブレンドしたペレットは、試験前後のmmで表される体積を示す。ミル試験後に得られる体積を表2にまとめる。溶融槽において>25%のPAを含有する例では、向上したペレット堅牢性を示す。PAについての耐衝撃性改良剤として公知の官能化されたポリエチレンの添加もまた、ペレット堅牢性に対してプラスの効果を示す。
【表2】
【0029】
参考例0、参考例1及び実施例2~4の濃縮物をスチレンポリマーとブレンドし、試験試料を作製する。濃縮物をアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)またはスチレンアクリロニトリル(SAN)によって35%のガラスまで希釈する。試験試料を、シャルピー衝撃について試験法ISO179-1eAを用いて試験し、引張係数及び引張降伏について試験法ISO527を用いて試験し、非アニーリングでのHDT1.8MPaについて試験法ISO75/Aを用いて試験する。材料を260℃で注入し、60℃のツールにおいて1800MPaの注入圧で2mm厚のキャビティにおいて溶融するスパイラルフロー試験を実施する。試験法ISO22088-3を用いて耐薬品性を決定する。評定「不良」は、表面の質において視覚的影響があることを意味し、「OK」は、表面の質において視覚的影響がないことを意味する。結果を表3にまとめる。
【表3】
表3における結果は、目標とする高いフロー及び剛性が最も少ないゴム含有量でスチレン相において得られることを示す。向上した降伏強度性能では、最適なゴムレベルが、最終ブレンドにおいて約2~約5%であることが分かる。これらの結果はまた、10%のPAを含有する組成物に関する降伏強度及びHDT(熱変形温度)における改良も示す。17.5%のPA及び最大0.5%の相溶化剤の組成物では、さらなる増加が示されている。PA含有量を26%までさらに増加させることで、最終ブレンドの耐熱性のさらなる急増を与える。相溶化剤自体の存在の影響は、表4に列挙している3つの濃縮物によって実証されている。
【0030】
重量部は、本明細書において用いられているとき、具体的に言及されている組成物の100重量部を指す。上記本願に列挙されている任意の数値は、1単位きざみで下限値から上限値までの全ての値を含む、ただし、任意の下限値と任意の上限値との間にも少なくとも2単位の分離が存在することとする。例として、構成要素の量または可変のプロセスの値、例えば、温度、圧力、時間などが、例えば、1~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70であると記述されているとき、15~85、22~68、43~51、30~32などの値が、本明細書において明確に列挙されていることが意図される。1未満の値では、1単位が必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であるとされる。これらは、具体的に意図していることの単なる例であり、列挙されている最低値と最高値との間の数値の全ての起こり得る組み合わせが、同様に本願において明確に列挙されていると考えられるべきである。別途記述されていない限り、全ての範囲は、両方の終点及びかかる終点間の全ての数を含む。範囲と併せた「約」または「およそ」の使用は、該範囲の両端に適用される。そのため、「約20~30」は、少なくとも特定されている終点を含めて「約20~約30」をカバーすることが意図される。組み合わせを記載するための用語「consisting essentially of」は、同定されている要素、成分、構成要素またはステップ、及び該組み合わせの基本的かつ新規の特徴にあまり影響しないかかる他の要素、成分、構成要素またはステップを含む。本明細書における要素、成分、構成要素またはステップの組み合わせを記載するための用語「comprising」または「including」の使用もまた、要素、成分、構成要素またはステップから本質的になる実施形態も企図している。複数の要素、成分、構成要素またはステップは、単一の一体化された要素、成分、構成要素またはステップによって付与され得る。代替的には、単一の一体化された要素、成分、構成要素またはステップは、別個の複数の要素、成分、構成要素またはステップに分割されてよい。要素、成分、構成要素またはステップを記載するための「a」または「one」の開示は、さらなる要素、成分、構成要素またはステップを排除することは意図されていない。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
ポリマーマトリックスを基準にして約10~約50重量%の、1種以上の不飽和ニトリル化合物由来モノマー単位及び単位及び1種以上のエラストマーモノマー単位を含有する1種以上のスチレンコポリマーと、約30~約90重量%の1種以上のポリアミドとを含む約20~約70重量%のポリマーマトリックスの組成物に分散された約30~約80重量%の長繊維の組成物であって、前記スチレンコポリマーが約6以上のメルトフローレートを示す、前記組成物。
[態様2]
前記1種以上のスチレンコポリマーが、約5~約20重量%のエラストマーモノマー単位を含有する、上記態様1に記載の組成物。
[態様3]
前記長繊維が、ガラスまたは炭素繊維を含む、上記態様1または2に記載の組成物。
[態様4]
前記長繊維が、約3~約30mmの長さを有する、上記態様1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[態様5]
前記繊維が、織マットまたは繊維束に由来する、先行上記態様のいずれか1項に記載の組成物。
[態様6]
前記ポリマーマトリックスが、前記ポリマーマトリックスを基準にして約20~約50重量%のスチレンコポリマーと約50~約80重量%のポリアミドとを含む、先行上記態様のいずれか1項に記載の組成物。
[態様7]
5以上のメルトフローレートを有する1種以上のスチレン系ポリマーを含有する熱可塑性ポリマーを含む希釈ポリマー組成物と、先行上記態様のいずれか1項に記載の組成物とを含む成形可能な組成物であって、エラストマー成分を5重量%未満の量で、またはスチレンコポリマーとポリアミドとを相溶化させる1種以上の化合物を1重量%未満若しくは以下の量で含有する、前記成形可能な組成物。
[態様8]
前記希釈ポリマー組成物が、1種以上のスチレン系ポリマーまたはコポリマーを含む、上記態様7に記載の成形可能な組成物。
[態様9]
スチレン系ポリマーまたはコポリマー以外の1種以上の熱可塑性ポリマーが、1種以上のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、そのブレンド、または1種以上のスチレン系ポリマー若しくはコポリマーとのブレンドを含む、上記態様8に記載の成形可能な組成物。
[態様10]
約5重量%未満のエラストマー成分と、1重量%未満若しくは以下の、スチレンコポリマーとポリアミドとを相溶化させる1種以上の化合物のポリマーマトリックスとを含有する、上記態様7~9のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
[態様11]
約25~約40重量%の1種以上のポリアミドと、約10~60重量%の長繊維とを含み、該百分率が前記組成物の重量基準である、上記態様7~10のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
[態様12]
約5%以下のエラストマー成分を含有する、上記態様7~11のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
[態様13]
1重量%未満または以下の、スチレンコポリマーとポリアミドとを相溶化させる1種以上の化合物のポリマーマトリックスを含有する、上記態様7~12のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
[態様14]
耐衝撃性改良剤をさらに含む、上記態様7~13のいずれか1項に記載の成形可能な組成物。
[態様15]
前記耐衝撃性改良剤が、変性ポリオレフィンを含む、上記態様14に記載の成形可能な組成物。
[態様16]
上記態様7~15のいずれか1項に記載の成形組成物を含む物品。
[態様17]
繊維マットまたは繊維束を、上記態様1~6のいずれか1項に記載の混合物と、繊維マットまたは繊維束がポリマーマトリックスに包囲されるような条件下で接触させることを含む方法。
[態様18]
前記繊維マットまたは繊維束を包囲する前記ポリマーマトリックスを有する前記繊維マットまたは繊維束を約3~約30mmの長さに切断することをさらに含む、上記態様17に記載の方法。
[態様19]
前記ポリマーマトリックスの成分を、前記ポリマーマトリックスを前記繊維マットまたは繊維束と接触させる前にブレンドする、上記態様16または17に記載の方法。
[態様20]
上記態様7~15のいずれか1項に記載の組成物を成形して成形品を形成することを含む方法。