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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】光検出器及び距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20240213BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240213BHJP
   G01S 7/4863 20200101ALI20240213BHJP
【FI】
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01S7/4863
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020046076
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148477
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0249998(US,A1)
【文献】特開2020-031180(JP,A)
【文献】特表2020-503506(JP,A)
【文献】特表2018-537680(JP,A)
【文献】特開2015-078953(JP,A)
【文献】特開2018-044923(JP,A)
【文献】特開2020-027109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
H01L 27/14 - 27/148
27/30
29/76
31/00 - 31/02
31/08 - 31/10
31/18
H04N 5/222- 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源により出射され対象物により反射されたレーザ光を受光するように構成された光検出器であって、
基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素とを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1方向に並んだ第1の受光領域及び第2の受光領域を設定し、
前記第1の受光領域は、第1の距離に位置する対象物により反射された前記レーザ光を受光できるように配置され、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記第1の距離よりも近い第2の距離に位置する対象物により反射された前記レーザ光を受光できるように配置され、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第1画素と前記第2画素とのそれぞれをオンさせ、第1時間が経過すると、前記第1画素をオンさせた状態で前記第2画素をオフさせる、
光検出器。
【請求項2】
光源により出射され対象物により反射されたレーザ光を受光するように構成された光検出器であって、
基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素とを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1方向に並んだ第1の受光領域及び第2の受光領域を設定し、
前記第1の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、前記第1の受光領域よりも前記光源の光軸から離れて配置され、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第1画素と前記第2画素とのそれぞれをオンさせ、第1時間が経過すると、前記第1画素をオンさせた状態で前記第2画素をオフさせる、
光検出器。
【請求項3】
前記第2画素が含む前記センサの個数は、前記第1画素が含む前記センサの個数よりも多い、
請求項1又は請求項2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記第2の受光領域では、複数の前記第2画素が、前記第1方向に並んで配置され、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第1画素と前記複数の第2画素とのそれぞれをオンさせ、前記第1時間が経過すると、前記第1画素をオンさせた状態で前記複数の第2画素のうち前記第1の受光領域に対して遠い方の第2画素から順番にオフさせる、
請求項1又は請求項2に記載の光検出器。
【請求項5】
前記第2の受光領域では、複数の前記第2画素が、前記第1方向に並んで配置され、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第1画素と前記複数の第2画素とのそれぞれをオンさせ、前記複数の第2画素のうち前記第1の受光領域に対して遠い方の第2画素から順番に、検出した光信号を出力させる、
請求項1又は請求項2に記載の光検出器。
【請求項6】
前記複数のセンサの各々は、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、一端が第2電源ノードに接続され、他端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部は、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、
請求項1又は請求項2に記載の光検出器。
【請求項7】
レーザ光を出射する光源と、
対象物により反射された前記レーザ光を受光し、基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素とを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1方向に並んだ第1の受光領域及び第2の受光領域を設定し、
前記第1の受光領域は、第1の距離に位置する対象物により反射された前記レーザ光を受光できるように配置され、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記第1の距離よりも近い第2の距離に位置する対象物により反射された前記レーザ光を受光できるように配置され、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、
前記制御部は、前記情報に応じて前記第1画素と前記第2画素とのそれぞれをオンさせ、第1時間が経過すると、前記第1画素をオンさせた状態で前記第2画素をオフさせる、
距離計測装置。
【請求項8】
レーザ光を出射する光源と、
対象物により反射された前記レーザ光を受光し、基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素とを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1方向に並んだ第1の受光領域及び第2の受光領域を設定し、
前記第1の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、前記第1の受光領域よりも前記光源の光軸から離れて配置され、
前記制御部は、前記情報に応じて前記第1画素と前記第2画素とのそれぞれをオンさせ、第1時間が経過すると、前記第1画素をオンさせた状態で前記第2画素をオフさせる、
距離計測装置。
【請求項9】
前記第1の受光領域は、前記第1方向と交差する第2方向に並んだ第1及び第2チャネルを含み、
前記制御部は、前記反射された前記レーザ光の受光結果に基づいて、前記レーザ光を反射した対象物との間の前記第1チャネルに対応する距離と前記第2チャネルに対応する距離とのそれぞれを計測する、
請求項又は請求項に記載の距離計測装置。
【請求項10】
前記受光部は、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素を含み、
前記第1の受光領域の前記第1チャネルと前記第2チャネルとのそれぞれは、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、前記第2画素が含む前記センサの個数は、前記第1画素が含む前記センサの個数よりも多く、
前記第2画素は、前記第1チャネル内の第1画素と前記第2チャネル内の第1画素とのそれぞれと前記第1方向に隣り合っている、
請求項に記載の距離計測装置。
【請求項11】
前記受光部は、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素を含み、
前記制御部は、前記情報に基づいて第3の受光領域をさらに設定し、
前記第2の受光領域は、前記第1の受光領域と前記第3の受光領域との間に配置され、
前記第1の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第1画素を含み、
前記第2の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第2画素を含み、
前記第3の受光領域は、前記複数の画素に含まれた第3画素を含み、
前記第2画素が含む前記センサの個数は、前記第1画素が含む前記センサの個数よりも多く、前記第3画素が含む前記センサの個数は、前記第2画素が含む前記センサの個数よりも多い、
請求項又は請求項に記載の距離計測装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記情報に応じて前記第1画素と前記第2画素とのそれぞれをオンさせた後に、前記第1画素及び前記第2画素をオンさせた状態で前記第3画素をオフさせ、
前記第3画素をオフさせた後に、前記第1画素をオンさせた状態で前記第2画素をオフさせる、
請求項11に記載の距離計測装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記光源が前記レーザ光を出射するタイミングと、前記受光部が反射された前記レーザ光を受光するタイミングとに基づいて、前記レーザ光を反射した対象物との間の距離を計測する、
請求項又は請求項に記載の距離計測装置。
【請求項14】
前記受光部は、各々が少なくとも一つの前記センサを含む複数の画素を含み、
前記制御部は、前記受光部が反射された前記レーザ光を前記第2の受光領域において受光した場合に、反射された前記レーザ光を検知した画素の位置に基づいて、前記レーザ光を受けた対象物との間の距離を計測する、
請求項又は請求項に記載の距離計測装置。
【請求項15】
前記複数のセンサの各々は、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、一端が第2電源ノードに接続され、他端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部は、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、
請求項又は請求項に記載の距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、光検出器及び距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LIDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LIDARは、センサから出力される光強度信号の時間変化に基づいて、LIDARから対象物までの距離を計測する。LIDARで使用されるセンサは多々有るが、今後有望なものとして、2次元に配列された複数のシリコンフォトマルチプライヤを備える二次元センサ(2Dセンサ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-350130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距離計測装置において、近距離対象物に対する距離計測の失敗を防ぎ、その精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光検出器は、受光部と、制御部とを含む。受光部は、基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つのセンサを含む複数の画素とを含む。制御部は、受光部に複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する。制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1の受光領域と、前記第1の受光領域と異なる第2の受光領域とを設定する。第1の受光領域は、複数の画素に含まれた第1画素を含む。第2の受光領域は、複数の画素に含まれた第2画素を含む。第2の受光領域は、第1の受光領域を基準として、受光部が受けるレーザ光の光軸から離れる方に配置される。制御部は、第1画素と第2画素とのそれぞれをオンさせた後に、第1画素をオンさせた状態で第2画素をオフさせる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の全体構成の一例を示す概略図。
図2】第1実施形態に係る光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図3】第1実施形態に係る光検出器の備えるSPADユニットの回路構成の一例を示す回路図。
図4】アバランシェフォトダイオードの構造の一例とSPADの動作原理とを示す概略図。
図5】第1実施形態に係る光検出器の備える受光部における受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
図6】第1実施形態に係る光検出器の出力部の構成の一例を示すブロック図。
図7】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
図8】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
図9】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
図10】非同軸光学系の距離計測装置における入射光の位置ずれの一例を示す概略図。
図11】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
図12】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において光検出器に照射される入射光の形状の一例を示す平面図。
図13】第2実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
図14】第3実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において光検出器が検出した光強度信号の出力経路の一例を示す平面図。
図15】第3実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において光検出器が検出した光強度信号の出力順番の一例を示すタイミングチャート。
図16】第4実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
図17】第5実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。
【0008】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、当該距離計測装置1と対象物との距離を計測することが可能なLIDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。尚、本明細書において“対象物TG”とは、距離計測装置1が距離を計測する範囲に含まれる物体のことを示している。
【0009】
[1-1]構成
[1-1-1]距離計測装置1の構成について
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示している。図1に示すように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば、出射部10、光学系20、計測処理部30、及び画像処理部40を備えている。
【0010】
出射部10は、距離計測装置1が対象物TGとの間の距離の計測に用いるためのレーザ光を生成及び出射する。出射部10は、例えば、制御部11、発振器12、第1駆動回路13、第2駆動回路14、及び光源15を含んでいる。尚、制御部11は、出射部制御のための出射用制御部と、計測処理部(受光部)のための受光用制御部とに分かれていてもよい。この場合、出射用制御部は出射部10に含まれ、受光用制御部は計測処理部(受光部)30に含まれる。
【0011】
制御部11は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んでいる。制御部11のROMは、例えば距離計測装置1の動作に使用されるプログラムを格納している。制御部11のCPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、例えば発振器12並びに第1駆動回路13及び第2駆動回路14を制御する。
【0012】
発振器12は、制御部11による制御に基づいて、パルス信号を生成する。そして、発振器12は、生成したパルス信号を第1駆動回路13に出力する。パルス信号が立ち上がるタイミングは、出射部10がレーザ光を出射するタイミングに対応している。
【0013】
第1駆動回路13は、発振器12から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光源15に供給する。つまり、第1駆動回路13は、光源15の電流供給源として機能する。
【0014】
第2駆動回路14は、制御部11による制御に応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光学系20のミラー24に供給する。つまり、第2駆動回路14は、ミラー24の電源回路として機能する。
【0015】
光源15は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源15は、第1駆動回路13から供給された駆動電流に基づいて、レーザ光L1を間欠的に発光(出射)する。レーザ光L1は、後述する光学系20を介して対象物TGに照射される。
【0016】
光学系20は、入射したレーザ光L1を2つに分ける。そして、光学系20は、2つに分けたレーザ光L1の一方を対象物TGに出射し、他方を計測処理部30の光検出器31に出射する。光学系20は、例えば、レンズ21、光学素子22、レンズ23、及びミラー24を含んでいる。
【0017】
レンズ21は、光源15から出射されたレーザ光L1の光路上に配置される。レンズ21は、当該レンズ21を通過するレーザ光L1をコリメートして、コリメートしたレーザ光L1を光学素子22に導光する。
【0018】
光学素子22は、レンズ21によって導かれたレーザ光L1を2つに分ける。2つに分けられたレーザ光L1は、それぞれレンズ23の方向とミラー24の方向とに向かって出射される。光学素子22は、例えばビームスプリッタである。
【0019】
レンズ23は、光学素子22によって分けられたレーザ光L1の一方の光路上に配置される。レンズ23は、当該レンズ23を通過するレーザ光L1を集光して、集光したレーザ光L1を計測処理部30の光検出器31に導光する。つまり、レンズ23は、距離計測装置1が外部に出射する前のレーザ光L1の一部を光検出器31に集める。
【0020】
ミラー24は、当該ミラー24に入射したレーザ光L1を反射する。ミラー24は、第2駆動回路14から供給される駆動電流に基づいて駆動する。例えば、ミラー24の反射面は、1つの軸、あるいは、互いに交差する2つの軸を中心として回転可能に構成される。ミラー24から反射されたレーザ光L1は、距離計測装置1の外部の対象物TGに出射される。
【0021】
計測処理部30は、光学系20から導かれたレーザ光L1と、対象物TGから反射されたレーザ光L2とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。計測処理部30は、例えば、光検出器31、レンズ32、光検出器33、第1増幅器34、第2増幅器35、時間取得部36、及び距離計測処理部37を含んでいる。
【0022】
光検出器31は、レンズ23を介して当該光検出器31に入射したレーザ光L1を受光する。そして、光検出器31は、受光したレーザ光L1の光強度に基づいた電気信号を、第1増幅器34に出力する。光検出器31は、例えばフォトダイオードである。
【0023】
レンズ32は、対象物TGから反射された反射光L2を集光して、集光した反射光L2を光検出器33に導光する。つまり、レンズ32は、距離計測装置1に対して照射されたレーザ光L2を含む外部の光を光検出器33に集める。
【0024】
光検出器33は、レンズ32を介して当該光検出器33に入射した反射光L2を受光する。そして、光検出器33は、受光した反射光L2の光強度に基づいた電気信号を、第2増幅器35に出力する。光検出器33は、例えば半導体を用いた光電子増倍素子を含む。光検出器33の詳細については後述する。
【0025】
第1増幅器34は、光検出器31から入力された電気信号を増幅して、増幅した電気信号を例えば時間取得部36と距離計測処理部37とのそれぞれに出力する。以下では、第1増幅器34が出力した電気信号のことを基準信号とも呼ぶ。
【0026】
第2増幅器35は、光検出器33から入力された電気信号を増幅して、増幅した電気信号を例えば時間取得部36と距離計測処理部37とのそれぞれに出力する。第2増幅器35は、例えばトランスインピーダンス増幅器である。以下では、第2増幅器35が出力した電気信号のことを計測信号とも呼ぶ。
【0027】
時間取得部36は、第1増幅器34から入力された基準信号の信号強度に基づいて、出射部10がレーザ光L1を出射したタイミングに対応する第1の時間を取得する。また、時間取得部36は、第2増幅器35から入力された計測信号の信号強度に基づいて、対象物TGから反射されたレーザ光L2を光検出器33が受光した第2の時間を取得する。尚、第1の時間と第2の時間との組は、間欠的に出射される基準信号毎に取得される。時間取得部36は、各時間を、基準信号又は計測信号の立ち上がり時間に基づいて決定しても良いし、基準信号又は計測信号のピーク時刻に基づいて決定しても良い。
【0028】
距離計測処理部37は、例えば、時間取得部36によって取得された第1の時間と第2の時間との時間差に基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。簡潔に述べると、距離計測処理部37は、出射部10によるレーザ光L1の出射タイミングと、対象物TGから反射されたレーザ光L2の光検出器33への入射タイミングとに基づいて、レーザ光L1及びL2の飛行時間を算出する。そして、距離計測処理部37は、当該飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。このような距離の計測方法は、ToF(Time of Flight)方式とも呼ばれる。
【0029】
画像処理部40は、距離計測処理部37によって計測した距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測結果を取得する。そして、画像処理部40は、取得した複数の計測結果を用いて、距離計測装置1の計測対象の領域における距離情報を含む画像を生成する。生成された画像は、例えば距離計測装置1を備える車両等の制御プログラムによって参照される。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、出射部10から出射されるレーザ光L1の光軸と光検出器33が受光するレーザ光L2の光軸とが異なる非同軸光学系を有している。尚、第1実施形態に係る距離計測装置1の構成は、以上で説明した構成に限定されない。第1実施形態に係る距離計測装置1の構成は、後述する動作を実行することが可能であれば、その他の構成であっても良い。
【0031】
例えば、光学素子22、レンズ23、光検出器31、及び第1増幅器34は、省略されても良い。この場合、これらの構成の代わりに、発振器12が、計測処理部30に対して基準信号を出力しても良い。また、画像処理部40による処理は、距離計測装置1に接続された外部の機器によって実行されても良い。
【0032】
[1-1-2]光検出器33の構成について
図2は、第1実施形態に係る光検出器33の平面レイアウトの一例を示している。図2に示すように、光検出器33は、受光部DPを備えている。尚、以下で参照される図面において、“第1方向”及び“第2方向”は、互いに交差する方向に対応している。
【0033】
受光部DPは、例えば光検出器33が対象物TGから反射したレーザ光L2を受けるための領域である。受光部DPにおいて光検出器33は、複数の画素PXを含んでいる。複数の画素PXは、例えば、半導体基板上に、第1方向及び第2方向に広がったマトリクス状に配置される。言い換えると、複数の画素PXは、2次元に配置される。
【0034】
複数の画素の各々は、少なくとも1つの光電子増倍素子を含んでいる。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。以下では、単一光子アバランシェダイオードのことを“SPAD”と呼び、SPADを使用するための回路のことを“SPADユニットSU”と呼ぶ。SPADの機能の詳細については後述する。画素PXに複数のSPADユニットSUが設けられる場合、複数のSPADユニットSUは、例えば第1方向及び第2方向に広がったマトリクス状に配置される。複数のSPADユニットSUを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0035】
尚、光検出器33に含まれる画素PXとSPADユニットSUとのそれぞれの個数は、図2に示された個数に限定されず、任意の個数に設計され得る。画素PXとSPADユニットSUとのそれぞれの平面形状は、必ずしも正方形でなくても良い。画素PXの形状は、各画素PXに含まれるSPADユニットSUの形状及び配置に応じて変化し得る。例えば、各画素PXにおいて、第1方向に並ぶSPADユニットSUの個数と、第2方向に並ぶSPADユニットSUの個数とは異なっていても良い。光検出器33は、異なる形状の画素PXを利用しても良い。SPADユニットSUの形状は、その他の形状であっても良く、例えば長方形であっても良い。
【0036】
(SPADユニットSUの回路構成について)
図3は、第1実施形態に係る光検出器33の備えるSPADユニットSUの回路構成の一例を示している。図3に示すように、SPADユニットSUは、例えばアバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqを含んでいる。
【0037】
アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqは、高電位ノードNhvと低電位電源ノードNlvとの間に直列に接続される。具体的には、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが、低電位電源ノードNlvに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードは、クエンチ抵抗Rqの一端接続される。クエンチ抵抗Rqの他端が、高電圧ノードNhvに接続される。
【0038】
距離計測装置1の距離計測動作において、高電位ノードNhvの電位は、低電位電源ノードNlvに印加される電圧よりも高い。つまり、距離計測動作において、逆バイアスが、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される。高電圧ノードNhvは、SPADに含まれたアバランシェフォトダイオードAPDによる光検出結果の出力端、すなわち出力ノードに対応している。高電圧ノードNhvには、トランジスタToutが接続される。トランジスタToutのゲートには、制御信号Soutが入力される。
【0039】
SPADユニットSUは、高電圧ノードNhvに接続されたトランジスタToutを介して、光検出結果に対応する出力信号IOUTを出力する。例えば、制御信号Soutが“H”レベルである場合、当該SPADユニットSUは、トランジスタToutを介して、高電圧ノードNhvの電圧に基づいた出力信号IOUTを出力する。制御信号Soutが“L”レベルである場合、当該SPADユニットSUによる出力信号IOUTの出力は、トランジスタToutによって遮断される。実際には、多段に接続された複数のトランジスタによって、トランジスタToutが構成される。
【0040】
距離計測装置1では、例えば、画素PX毎に制御信号Soutが独立に制御され得る。つまり、距離計測装置1は、各画素PXに含まれたSPADユニットSUを、必要に応じてアクティブ状態又は非アクティブ状態にすることが出来る。本明細書において、“アクティブ状態のSPADユニットSU”は、当該SPADユニットSUが光信号を検出して出力信号IOUTを出力することが可能な状態であることを示している。“非アクティブ状態のSPAD”は、当該SPADユニットSUが受けた光信号に基づく出力信号IOUTを出力しない状態であることを示している。以下では、アクティブ状態のSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オン状態の画素PXと呼ぶ。非アクティブ状態のSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オフ状態の画素PXと呼ぶ。
【0041】
尚、画素PXの回路構成は、以上で説明した構成に限定されない。例えば、クエンチ抵抗Rqは、トランジスタに置き換えられても良い。高電圧ノードNhvには、クエンチ用のトランジスタがさらに接続されても良い。トランジスタToutは、N型トランジスタであっても、P型トランジスタであっても良い。トランジスタToutは、出力信号IOUTを選択的に出力可能であれば、その他のスイッチ素子であっても良い。高電圧ノードNhv(出力ノード)の配置は、アバランシェフォトダイオードAPDによる光検出結果を出力可能であれば、その他の配置であっても良い。また、複数のSPADユニットSUは、グループを形成しても良い。この場合、出力信号IOUTは、例えばそのグループに属するSPADユニットSUの出力の総和に相当する電気信号に対応している。
【0042】
(SPADの動作原理について)
以下に、図4を参照して、アバランシェフォトダイオードAPDの構成の一例と、SPADの動作原理とについて説明する。図4は、アバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例とSPADの動作原理との概略を示している。
【0043】
まず、アバランシェフォトダイオードAPDの構成について説明する。アバランシェフォトダイオードAPDは、例えば、基板50、P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53を含んでいる。
【0044】
基板50は、例えばP型の半導体基板である。基板50上に、P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53が、この順番に積層されている。Pプラス型半導体層52におけるP型不純物の濃度は、P型半導体層51におけるP型不純物の濃度よりも高い。Nプラス型半導体層53は、N型不純物がドープされた半導体層である。例えば、Nプラス型半導体層53上には、図示が省略された電極が接続される。
【0045】
次に、SPADの動作原理について説明する。第1実施形態に係る距離計測装置1では、基板50側が低電位電源ノードNlvに対応し、Nプラス型半導体層53が高電位側(カソード)に対応している。
【0046】
距離計測装置1の距離計測動作において、アバランシェフォトダイオードAPDには、基板50側に負の高い電圧が印加される。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加され、Pプラス型半導体層52とNプラス型半導体層53との間に強い電界が発生する(図4(1))。すると、Pプラス型半導体層52とNプラス型半導体層53との接合(すなわち、PN接合)領域の付近に、空乏層が形成される(図4(2))。距離計測動作では、この状態のアバランシェフォトダイオードAPDが、光信号を検知可能な状態に対応している。
【0047】
そして、アバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光のエネルギーの一部が空乏層に到達する(図4(3))。空乏層に光が照射されると、空乏層において電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する場合がある(図4(4))。空乏層に発生したキャリアは、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電界によりドリフトする(図4(5))。例えば、発生したキャリアのうち正孔は、基板50側に向かって加速される。一方で、発生したキャリアのうち電子は、Nプラス型半導体層53側に向かって加速される。
【0048】
Nプラス型半導体層53側に向かって加速された電子は、PN接合の付近に発生した強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電気と正孔の対を発生させる。アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合、このような電子と正孔の対の発生が繰り返される。このような現象は、アバランシェ降伏と呼ばれている(図4(6))。
【0049】
アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(図4(7))。このような放電は、ガイガー放電と呼ばれている。ガイガー放電が発生すると、SPADユニットSUの出力ノードを通じて電流が流れる。これにより、ガイガー放電とその後のリカバリに関わる電気信号が、アバランシェフォトダイオードAPD、すなわち1つのSPADから出力される。
【0050】
また、アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。その結果、電圧降下が、SPADユニットSUの出力ノードにおいて発生する(図4(8))。SPADユニットSUにおけるこのような電圧降下は、クエンチングとも呼ばれる。電圧降下によって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合における容量の充電や、リカバリ電流が流れることが完了すると、アバランシェフォトダイオードAPDは、電流の出力を停止する。ガイガー放電が止まって暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDは、次の光を検知することが可能な状態に戻る。
【0051】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える光検出器33は、ガイガーモードで使用されるアバランシェフォトダイオードAPDを有している。そして、これらのアバランシェフォトダイオードAPDは、光入射に応じてアバランシェ降伏を起こし、光検出結果に対応する電気信号を出力する。これにより、光検出器33は、フォトン単位の受光を検知して、電気信号に変換することが出来る。
【0052】
尚、SPADユニットSUに使用されるアバランシェフォトダイオードAPDの構造は、以上で説明された構造に限定されない。例えば、Pプラス型半導体層52は省略されても良い。P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53のそれぞれの厚さは、適宜変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、基板50との境界近傍に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDの構造において、P型半導体層とN型半導体層とが反転されて構成されても良い。
【0053】
(受光領域DRの設定について)
第1実施形態に係る光検出器33は、受光部DPに含まれた所定の領域内の1つ又は複数の画素PXをオン状態にすることによって、受光領域DRを設定することが出来る。以下に、受光領域DRの設定方法の一例について説明する。
【0054】
尚、受光部DPに設けられた複数の画素のそれぞれには、第1方向に対応する座標と第2方向に対応する座標とが割り当てられているものと仮定する。また、本明細書において“受光領域”は、単なる名称に相当している。距離計測装置1の距離計測動作において、光が必ずしも受光領域DRの全体に照射されていなくても良く、通常、その一部のみが照射されている。
【0055】
図5は、第1実施形態に係る光検出器33の備える受光部DPにおける受光領域DRの設定方法の一例を示している。図5に示すように、第1実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”とに基づいて、受光領域DRを設定する。“N”は、画素PXの第1方向の座標に対応している。“M”は、画素PXの第2方向の座標に対応している。受光領域DRに関連付けられたこれらの座標は、例えば出射部10の制御部11、あるいは受光用制御部による制御に基づいて指定される。
【0056】
また、座標“N”及び“M”は、例えば受光領域DR内の左上の画素の座標に対応している。これに限定されず、受光領域DRは、少なくとも座標“N”及び“M”に対応するアドレスを基準として設定されていれば良い。例えば、座標“N”及び“M”が指定する画素PXの座標は、受光領域DR内の左下、右上、右下、中央等、いずれの画素PXの座標に対応していても良い。
【0057】
そして、受光領域DRは、座標“N”及び“M”を基準として、例えば第1方向及び第2方向にそれぞれ3画素及び4画素の広がりを有する領域に設定される。言い換えると、本例では、受光領域DRが、3×4画素を含む矩形領域に設定される。尚、受光領域DR内でオン状態にされる画素PXの配置は、適宜設定され得る。また、受光部DP内且つ受光領域DRに含まれない画素PXは、オフ状態に設定される。
【0058】
受光領域DR内の少なくとも1つの画素PXは、照射された光を電気信号に変換し、光強度に対応する出力信号IOUTを出力し得る。各画素PXによって生成された出力信号IOUTは、画素PX毎に出力される。これにより、光が照射された画素PXの信号のみが使用されるため、光が照射されなかった画素PXからのノイズが除去され、S/N比(Signal to Noise Ratio)が高くなる。
【0059】
以上で説明した受光領域DRの位置及び形状は、距離計測装置1によって出射されるレーザ光のスキャン位置に応じて設定される。具体的には、出射部10の制御部11あるいは受光部30の制御部が、レーザ光を出射したタイミングのミラー24の傾きに関連付けられた座標“N”及び“M”を指定して、受光領域DRの設定を光検出器33に対して指示する。これにより、距離計測装置1が、対象物TGから反射したレーザ光L2が照射すると推測される領域内の画素PXをオン状態にして、当該レーザ光L2を検出することが出来る。さらに、第1実施形態に係る光検出器33が、最適な計測距離の異なる複数種類の受光領域を、受光領域DR内に設定することが出来る。本動作の詳細については後述する。
【0060】
(光検出器33の出力部について)
第1実施形態に係る光検出器33は、例えば、受光領域DR内の複数の画素PXから取得された光信号(出力信号IOUT)を第2増幅器35に転送する前に、当該出力信号IOUTに対して所定の信号処理を実行する構成をさらに有する。
【0061】
図6は、第1実施形態に係る光検出器33の出力部の構成の一例を示している。本例では、3×4画素を含む矩形の受光領域DRが設定されたものと仮定する。図6に示すように、受光部DPは、例えば12個の画素PXにそれぞれ対応する出力信号IOUTa1~12を出力する。また、光検出器33は、出力部として、例えばスイッチ部SW及び信号処理部SPをさらに備えている。
【0062】
スイッチ部SWは、複数のスイッチ回路を含み、受光部DPによって出力された複数の出力信号IOUTの順序を整列する機能を有する。具体的には、スイッチ部SWには、例えば受光部DPによって出力された出力信号IOUTa1~12と、受光領域DRの座標を示す座標“N”及び“M”とが入力される。そして、スイッチ部SWは、座標“N”及び“M”に基づいて複数のスイッチ回路を適宜繋ぎ替えることによって、入力された出力信号IOUTa1~12を整列する。それから、スイッチ部SWは、整列された出力信号IOUTa1~12に対応する出力信号IOUTb1~12を、信号処理部SPに出力する。これにより、受光領域DR内の各画素PXの出力順番が、所定の順番(例えば、図6の下部に示された順番)に変更される。
【0063】
信号処理部SPは、スイッチ部SWから入力された出力信号IOUTb1~12を用いて、様々な信号処理を実行する。信号処理部SPは、例えば増幅回路のようなアナログ回路、アナログ-デジタル変換器、時間-デジタル変換器、積算器のようなロジック回路を含み得る。信号処理部SPによる信号処理によって、例えば画素PX毎の光強度に対応する電気信号や、グループ化された複数の画素PXの光強度に対応する電気信号が生成される。そして、生成された各電気信号が、例えば後段の第2増幅器35に出力される。
【0064】
以上のように、光検出器33の出力部は、受光領域DR内における相対的な位置に関する順番を変更せずに、信号処理を実行することが出来る。このような出力部の構成は、画素PXの出力に使用される信号線の本数を削減することが出来る。尚、スイッチ部SWと信号処理部SPとは、一体で設けられても良い。また、第1実施形態において光検出器33に接続されている第2増幅器35が、信号処理部SPに含まれていても良い。
【0065】
[1-2]動作
以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1の動作について説明する。
【0066】
[1-2-1]スキャン方法について
まず、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるレーザ光L1のスキャン方法の一例について説明する。図7図9は、対象物TGに対するレーザ光L1の照射方法の一例を示し、互いに異なるスキャン方法を例示している。
【0067】
図7に示された一例では、距離計測装置1が、紙面の右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンし、紙面の左方向にスキャンした後に、再び折り返して右方向にスキャンする。距離計測装置1は、このような左右方向のスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば2軸のミラーを使用することが考えられる。
【0068】
図8に示された一例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いは異方性のある非球面コリメータレンズを用いて、縦一列に複数の画素を同時に照射する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、回転ミラーや1軸のミラーを使用することが考えられる。また、ミラーを使用せずに、距離計測装置1をそのまま回転させても良い。
【0069】
図9に示された一例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いは異方性のある非球面コリメータレンズを用いて縦一列に複数の画素を同時に照射し、且つ垂直方向に位置がずらされたスキャンを複数回繰り返し実行する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー、及び2軸のミラー等が挙げられる。
【0070】
以上で例示されたスキャン方法は、機械的なものであるが、別のスキャン方法としては、OPA方法(Optical Phased Array)が知られている。第1実施形態に係る距離計測装置1による効果は、光をスキャンする方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いてレーザ光L1のスキャンを実行しても良い。以下では、説明を簡潔にするために、距離計測装置1が、図7に示された方法を用いてレーザ光L1のスキャンを実行する場合について説明する。
【0071】
[1-2-2]反射光の視差について
第1実施形態に係る距離計測装置1は、非同軸光学系を使用する。このため、受光部DPにおいて、近距離の対象物TGによる反射光が照射される位置と、遠距離の対象物TGによる反射光が照射される位置との間でずれ、すなわち視差が生じ得る。
【0072】
図10は、非同軸光学系の距離計測装置における反射光の視差の一例を示し、距離計測装置1内の光源15、レンズ21及び32、並びに光検出器33と、遠距離の対象物TGfと、近距離の対象物TGnとを表示している。
【0073】
図10に示すように、光源15から出射されるレーザ光L1は、ミラー24を介して対象物TGf又はTGnに照射され、対象物TGf又はTGnから反射したレーザ光L2(反射光)は、レンズ32を介して光検出器33に照射される。以下では、遠距離の対象物TGfから反射したレーザ光のことを“L2f”とも呼び、近距離の対象物TGnから反射したレーザ光のことを“L2n”とも呼ぶ。
【0074】
光検出器33の受光領域DRは、例えばミラー24の状態と遠距離の対象物TGfからの反射光の位置に合わせて同期するように設定される。しかしながら、非同軸光学系が使用される場合、反射光の視差が距離計測装置1と対象物TGとの距離に応じて生じ得る。具体的には、例えば、距離計測装置1と対象物TGとの距離が5m以内である場合の反射光の視差は、0.1mm程度生じ得る。このような視差は、出射光の光軸から離れる方向に生じる。また、視差は、対象物TGが接近する程大きくなる。
【0075】
このため、受光領域DRは、遠距離の対象物TGfから反射したレーザ光L2fを受光することが出来たとしても、近距離の対象物TGnから反射したレーザ光L2nを受光することが出来なくなるおそれがある。これに対して、第1実施形態に係る距離計測装置1は、距離計測動作において、光検出器33の受光領域DRに、近距離用の受光領域と、遠距離用の受光領域とを設定する。
【0076】
[1-2-3]近距離受光領域NDRを含む受光領域DRの設定について
図11は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示し、距離計測装置1の出射光及び出射光の光軸と、光検出器33の受光部DPとを表示している。図11に示すように、第1実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”が指定されると、遠距離受光領域FDRと近距離受光領域NDRとを含む受光領域DRを設定する。
【0077】
遠距離受光領域FDR及び近距離受光領域NDRは、この順番に、出射光の光軸に対して近接している。言い換えると、近距離受光領域NDRは、遠距離受光領域FDRよりも受光系の光軸から離れた領域に設定されている。第2方向における幅は、遠距離受光領域FDRよりも近距離受光領域NDRの方が広く設定されることが好ましい。遠距離受光領域FDRと近距離受光領域NDRとは、必ずしも隣接していなくても良い。
【0078】
遠距離受光領域FDRは、主に遠距離の対象物TGfからの反射光(レーザ光L2f)を検出するための領域である。遠距離受光領域FDR内でオン状態に設定される画素PXの配置は、例えば図5を用いて説明した画素PXの配置と同様である。つまり、遠距離受光領域FDRでは、オン状態に設定された複数の画素PXが、例えば矩形領域において二次元に配置される。
【0079】
近距離受光領域NDRは、主に近距離の対象物TGnからの反射光(レーザ光L2n)を検出するための領域である。近距離受光領域NDR内でオン状態に設定される複数の画素PXは、例えば、遠距離受光領域FDRと隣り合い且つ出射光の光軸から遠い側に第1方向に沿って一次元に配置される。このように、近距離受光領域NDRは、オフ状態の画素PXを含んでいても良い。言い換えると、オン状態の画素PXが配置される密度は、遠距離受光領域FDRよりも近距離受光領域NDRの方が低く設定されても良い。
【0080】
[1-2-4]距離計測動作における反射光の具体例について
図12は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において光検出器33に照射される反射光の具体例を示し、図11と同様の受光部DPを表示している。また、図12の上側が、対象物TGが遠距離に位置している場合の反射光の形状の一例に対応し、図12の下側が、対象物TGが近距離に位置している場合の反射光の形状の一例に対応している。
【0081】
図12の上側に示すように、遠距離の対象物TGfからの反射光(レーザ光L2f)は、主に遠距離受光領域FDR内に照射される。一方で、図12の下側に示すように、近距離の対象物TGnからの反射光(レーザ光L2n)は、例えば、主に近距離受光領域NDR内に照射される。図10を用いて説明したように、非同軸光学系が利用された場合、このような反射光の照射位置のずれ(視差)が発生し得る。
【0082】
また、距離計測装置1の受光側の光学系(例えばレンズ32等)の焦点は、例えば無限遠、すなわち遠距離の対象物TGfを基準に設定される。このため、近距離の対象物TGnからの反射光は、遠距離の対象物TGfからの反射光と比べてデフォーカスが発生し得る。反射光の光強度は、対象物TGが近くなるほど大きく、対象物TGが遠くなるほど小さくなる。また、反射光の光強度は、デフォーカスが発生するほど小さくなる。
【0083】
[1-3]第1実施形態の効果
距離計測システムの一種であるLIDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物から反射された反射光の強度をセンサで感知し、センサの出力に基づいて時系列のデジタル信号に変換する。そして、LIDARと計測対象物との間の距離が、例えばレーザが発光してから感知した反射光のピークまでの時間差に基づいて計算される。LIDARの計測データは、例えば車両の制御に使用することが想定されるため、高い精度が求められている。
【0084】
LIDARを安価に製造するためには、可能な限り簡素な構成であることが好ましい。コストを抑制する方法としては、非同軸光学系と2Dセンサとの組み合わせにより、光学系のコストを抑制することが考えられる。2Dセンサは、投光系のスキャンに同期して、受光領域の位置を変更する。投光系と受光領域との同期精度は、2Dセンサが1つの画素でなく複数の画素を用いて光を検出することにより緩めることが出来る。また、2Dセンサは、受光領域を広く設けることによって、受光位置のずれによる影響も抑制され得る。一方で、受光領域を広く設けることは、消費電力の増加に繋がる。消費電力は可能な限り抑制されることが好ましいため、受光領域は最低限の範囲に設定されることが好ましい。
【0085】
しかしながら、非同軸光学系が使用される場合、計測対象物の位置に応じて視差が発生する。このため、2Dセンサは、遠距離の計測対象物に合わせて受光領域が設定された場合に、近距離の計測対象物からの反射光を検知できなくなるおそれがある。近距離の計測対象物からの反射光にはデフォーカスが発生するが、視差の大きさの方がデフォーカスの拡がりより大きいと考えられるため、計測対象物が極めて近距離である場合、デフォーカスによる広がりを考慮しても反射光が受光領域から外れる場合がある。
【0086】
そこで、第1実施形態に係る距離計測装置1は、光検出器33の受光部DPに、遠距離からの反射光を受光するための領域FDRと、投光系の反対に位置する近距離用の領域NDRとを設定する。その結果、第1実施形態に係る距離計測装置1は、遠距離対象物と近距離対象物との両方に対応した受光領域DRを設定することが出来、近距離対象物に対するセンサのpile upを低減し、それによって距離計測の精度を向上させることが出来る。
【0087】
尚、近距離受光領域NDRに照射される反射光は、遠距離受光領域FDRに照射される反射光よりも強いことと、デフォーカスによる広がりを有していることが考えられる。これに対して、第1実施形態に係る距離計測装置1は、単純に受光領域DRを広くするのではなく、近距離受光領域NDRにおけるオン状態の画素PXの密度が小さくすることが出来る。言い換えると、オン状態にされる画素PXの密度が、遠距離受光領域FDRよりも近距離受光領域NDRの方が小さく設定され得る。密度を小さくする代わりに、近距離受光領域NDRの第1方向における大きさが、遠距離受光領域FDRの第1方向における大きさよりも小さく設定されても良い。
【0088】
これにより、近距離受光領域NDRからの反射光が第1方向のずれを有していた場合のおいても、第1実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDRからの反射光を検知することが出来る。従って、第1実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDR内でオン状態の画素PXを減らすことにより、消費電力を抑制することも出来る。
【0089】
尚、対象物TGと距離計測装置1との間の距離が近くなるほど、視差が大きくなる、すなわち出射光が反射する角度が大きくなる。これを利用して、第1実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDRにおける受光結果に基づいて、三角測量を用いた距離の計測を実行しても良い。例えば、距離計測装置1は、近距離受光領域NDRにおいて取得された複数の画素PXの受光結果のうち、最も光強度の大きい画素PXの位置に基づいて、三角測量を用いた距離の計測を実行しても良い。
【0090】
また、距離計測装置1は、ToF方式による距離の計測と、三角測量を用いた距離の計測との両方を実行しても良い。この場合、距離計測装置1は、例えば、近距離受光領域NDRにおける光強度分布に基づいて三角測量を用いた距離の計測を実行し、遠距離受光領域FDRにおける光強度分布に基づいてToF方式を用いた距離の計測を実行する。
【0091】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様の構成を有し、近距離受光領域NDRにおける画素PXをパルス出射時からの経過時間に応じてオフさせる。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0092】
[2-1]光検出器33の動作
図13は、第2実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示している。図13(a)~(d)は、この順番に、計測開始から時間が経過していることを示している。つまり、第1時間、第2時間、第3時間は、この順番に、計測開始からの時間経過が長いことを示している。
【0093】
図13(a)に示すように、第2実施形態に係る光検出器33では、計測開始時において、例えば図8と同様の受光領域DRが設定される。計測開始から第1時間が経過すると、図13(b)に示すように、近距離受光領域NDR内でオン状態である画素PXのうち、投光系から最も離れた1つの画素PXがオフされる。計測開始から第2時間が経過すると、図13(c)に示すように、近距離受光領域NDR内でオン状態である画素PXのうち、投光系から最も離れた1つの画素PXがオフされる。計測開始から第3時間が経過すると、図13(d)に示すように、近距離受光領域NDR内でオン状態である画素PXのうち、投光系から最も離れた1つの画素PXがオフされる。以降も同様に、近距離受光領域NDR内の画素PXが適宜オフされる。
【0094】
第2実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において、近距離受光領域NDR内の画素PXは、投光系から遠い方からオフされることが好ましい。この理由は、反射光が光検出器33に到達するタイミングが対象物TGとの距離が遠くなるほど遅くなる、すなわち反射光の視差が計測開始からの時間が長くなるほど小さくなるからである。例えば、出射部10の制御部11は、測定開始時刻から対象物TGが20m以内に存在することに対応する時間が経過すると、近距離受光領域NDR内の画素PXがオフ状態に設定する。尚、第2実施形態に係る距離計測装置1では、近距離受光領域NDR内の画素PXが、少なくとも時間経過に応じて適宜オフされていれば良い。第2実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0095】
[2-2]第2実施形態の効果
以上のように、第2実施形態に係る距離計測装置1は、時間経過に応じて近距離受光領域NDR内の画素PXをオフ状態にする。言い換えると、第2実施形態に係る距離計測装置1は、近距離対象物からの反射光を受光する可能性のある期間だけ、近距離受光領域NDR内の画素PXを適宜オン状態にする。
【0096】
その結果、第2実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDRにおいてSPADがアクティブ状態である時間を短くすることが出来るため、光検出器33の消費電力を抑制することが出来る。
【0097】
尚、第2実施形態に係る距離計測装置1では、近距離受光領域NDR内でオン状態に設定される画素PXの密度と、遠距離受光領域FDR内でオン状態に設定される画素PXの密度とが同じであっても良い。このような場合においても、第2実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDRにおける画素PXが適宜オフ状態に制御することによって、消費電力を抑制することが出来る。
【0098】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様の構成を有し、受光領域DRから出力される複数の出力信号の出力方法に関する。以下に、第3実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0099】
[3-1]光検出器33の動作
図14は、第3実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において光検出器33が検出した光強度信号の出力経路の一例を示している。図14に示すように、第3実施形態に係る光検出器33では、例えば図11と同様の受光領域DRが設定される。
【0100】
以下では、受光領域DRに含まれる第2方向の座標について、出射光の光軸側から順に、“F1”、“F2”、“F3”、“N1”、“N2”、“N3”、“N4”、“N5”と呼ぶ。座標F1、F2及びF3は、遠距離受光領域FDRに含まれている。この例では、座標N1、N2、N3、N4及びN5は、近距離受光領域NDRに含まれている。
【0101】
また、第3実施形態に係る光検出器33は、3本の出力経路“A”、“B”及び“C”を使用するものと仮定する。出力経路“A”、“B”及び“C”の組は、例えば第2方向に繰り返し配置されている。言い換えると、第2方向において3画素毎に配置された複数の画素PXが、出力経路の一部を共有している。本例では、座標N5、N2及びF2が、出力経路“A”を共有している。座標N4、N1及びF1が、出力経路“B”を共有している。座標N3及びF3が、出力経路“C”を共有している。
【0102】
そして、第3実施形態に係る光検出器33において、受光領域DRに含まれた同じ出力経路の画素PXの出力は同出力経路に結線・結合され、オン状態の画素PXの信号が出力される。あるいは、出射光の光軸から遠い方から優先的に、出力信号IOUTが出力されても良い。例えば、まず出力経路“A”、“B”及び“C”を用いて、近距離受光領域NDR内の座標N5、N4及びN3の出力信号IOUTが出力される。次に、出力経路“A”、“B”及び“C”を用いて、近距離受光領域NDR内の座標N2及びN1、並びに遠距離受光領域FDR内の座標F3の出力信号IOUTが出力される。最後に、出力経路“A”及び“B”を用いて、遠距離受光領域FDR内の座標F2及びF1の出力信号IOUTが出力される。
【0103】
図15は、第3実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において光検出器33が検出した光強度信号の出力順番のその他の一例を示している。図15に示すように、出力経路“A”、“B”及び“C”は、後段の信号処理部SPに出力信号IOUTを入力する順番が定められている場合がある。この場合、出力経路“A”、“B”及び“C”には、転送途中の出力信号IOUTが適宜バッファされる。そして、例えば信号処理部SPが信号を受信可能になったタイミングに応じて、出力信号IOUTが逐次出力される。
【0104】
本例では、まず受光領域DRから転送された座標N5、N4及びN3の出力信号IOUTがバッファされる。そして、座標N5、N4及びN3の順番に、バッファされた出力信号が信号処理部SPに受け渡される。バッファされた信号を出力した出力経路は、次に転送する出力信号IOUTが続けてバッファされる。本例では、座標N5、N4及びN3の出力信号IOUTが出力された後に、それぞれ座標N2、N1及びF3の出力信号IOUTが対応する出力経路にバッファされる。以降も同様に、光検出器33は、オン状態の画素PXによって取得された光信号を、信号処理部SPに転送することが出来る。第3実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0105】
尚、以上で説明した出力経路の数及びグループは、あくまで一例である。光検出器33に設けられる出力経路の配線の本数に応じて、出力経路のグルーピングは適宜変更され得る。また、画素PXは、ある時間内の積算値を保持して、順に出力することも出来る。この場合、光検出器33にカウンタが設けられることによって、光検出器33内で容易に積算値が得られる。また光検出器33は、出力経路を適宜利用することによって、値の保持や、時分割の出力もすることも出来る。
【0106】
[3-2]第3実施形態の効果
以上のように、第3実施形態に係る光検出器33は、受光領域DR内の複数の画素PXの受光結果を出力において、複数の画素PXで出力経路を共有している。言い換えると、第3実施形態に係る光検出器33では、画素PXと出力の割り当てが周期的である。
【0107】
これにより、光検出器33の出力部に使用される出力の本数を少なくすることが出来、後段の計測回路を少なくすることが出来る。つまり、第3実施形態に係る光検出器33は、出力の本数の削減に伴い、出力に使用される回路の面積を小さくすることが出来る。
【0108】
また、第3実施形態に係る光検出器33では、画素PXの受光結果が、投光系に対して遠い方から出力される。その結果、第3実施形態に係る距離計測装置1において、距離計測処理部37が、車載される場合に特に重要である近接した対象物TGとの距離に関する受光結果を早期に処理することが出来る。
【0109】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様の構成を有し、図8或いは図9に示した様に、距離計測動作において第1方向に延伸した形状のパルス光を用いる。以下に、第4実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0110】
[4-1]光検出器33の動作
図16は、第4実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示している。図16に示すように、第4実施形態に係る距離計測装置1では、出射光が第1方向に延伸した形状を有している。第4実施形態における出射光の形状は、少なくとも第1方向に延伸した部分を有していればよく、例えば楕円形であっても良い。
【0111】
また、第4実施形態における受光領域DRは、複数のチャネルCH1~CH5を含んでいる。1つのチャネルCHは、例えば対象物TGに対する1つの計測点、すなわち画素に対応している。チャネルCH1~CH5は、第1方向に並んでいる。つまり、第4実施形態に係る距離計測装置1は、距離計測動作において、1つのパルス光(出射光)に対応して第1方向に並んだ5つの計測結果を得ることが出来る。
【0112】
各チャネルCHに対応して設定される受光領域は、例えば第1実施形態で説明した受光領域DRと同様の構成を有している。第4実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”が指定されることによって、第1方向に並んだ5つのチャネルCHを含む受光領域DRを設定することが出来る。また、第4実施形態では、対象物TGにおける反射光が、第1方向に延伸した形状の出射光を用いることによって、複数のチャネルCHのそれぞれに照射され得る。第4実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0113】
[4-2]第4実施形態の効果
以上のように、第4実施形態に係る距離計測装置1は、縦長のパルス光を使用し且つ受光領域DRに複数のチャネルCHを設けることによって、一度に複数の計測結果を得ることが出来る。つまり、第4実施形態に係る距離計測装置1は、1画面分のスキャンを実行する速度を向上させることが出来、測長のフレームレートを向上させることが出来る。また、第4実施形態に係る距離計測装置1は、各チャネルCHに近距離受光領域NDRと遠距離受光領域FDRとを設定することによって、各チャネルCHにおいて第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る距離計測装置1は、第4実施形態と同様の構成を有し、距離計測動作において、互いに異なる画素サイズを用いた複数の近距離受光領域を設ける。以下に、第5実施形態に係る距離計測装置1について、第4実施形態と異なる点を説明する。
【0114】
[5-1]光検出器33の動作
図17は、第5実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示し、受光領域DRに4つのチャネルCHが設定されている場合を例示している。図17に示すように、第5実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”が指定されると、遠距離受光領域FDRと、複数の近距離受光領域NDRとを含む受光領域DRを設定する。本例では、複数の近距離受光領域NDRとして、“NDR1”と“NDR2”とが設定されている。
【0115】
遠距離受光領域FDR、近距離受光領域NDR1、及び近距離受光領域NDR2は、この順番に、出射光の光軸に対して近接している。言い換えると、近距離受光領域NDR1は、遠距離受光領域FDRよりも受光系の光軸から離れた領域に設定されている。近距離受光領域NDR2は、近距離受光領域NDR1よりも受光系の光軸から離れた領域に設定されている。第2方向における幅は、遠距離受光領域FDRよりも近距離受光領域NDR1及びNDR2の合計の方が広く設定されることが好ましい。
【0116】
遠距離受光領域FDRにおける複数の画素PXの配置は、第4実施形態と同様である。近距離受光領域NDR1及びNDR2のそれぞれは、複数の画素PXを纏めて1つの画素として用いる。そして、近距離受光領域NDR1における画素のサイズは、遠距離受光領域FDRにおける画素PXのサイズよりも大きい。言い換えると、近距離受光領域NDR1に設定される画素に含まれる画素PXの個数は、遠距離受光領域FDRに設定される画素に含まれる画素PXの個数よりも多い。例えば、近距離受光領域NDR1における画素の第1方向における幅は、2つのチャネルCHの幅と同じである。
【0117】
近距離受光領域NDR2における画素のサイズは、近距離受光領域NDR1における画素PXのサイズよりも大きい。言い換えると、近距離受光領域NDR2に設定される画素に含まれる画素PXの個数は、近距離受光領域NDR1に設定される画素に含まれる画素PXの個数よりも多い。例えば、近距離受光領域NDR2における画素PXの第1方向における幅は、4つのチャネルCHの幅と同じである。
【0118】
第5実施形態に係る距離計測装置1は、チャネルCH1~CH4に対応する出射光のそれぞれが遠距離の対象物TGに照射される場合、1つの出射光に対応して第1方向に並んだ4つの計測結果を得ることが出来る。一方で、第5実施形態に係る距離計測装置1では、遠距離受光領域FDRと比較して、例えば、近距離受光領域NDR1における解像度が1/2であり、近距離受光領域NDR2における解像度が1/4である。
【0119】
尚、各近距離受光領域NDRにおける画素のサイズは、これに限定されない。第5実施形態では、近距離受光領域NDRに含まれた画素のサイズが、少なくとも出射光の光軸から離れているほど大きくなるように設定されていれば良い。近距離受光領域NDRは、3種類以上設けられても良い。第5実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第4実施形態と同様である。
【0120】
[5-2]第5実施形態の効果
以上のように、第5実施形態に係る距離計測装置1は、近距離受光領域NDRにおいて、遠距離受光領域FDRよりも大きいサイズの画素を備えている。これにより、光検出器33は、近距離受光領域NDR内の画素の受光結果を纏めて出力することが出来、出力信号の取り扱いが容易になる。
【0121】
また、近距離受光領域NDRでは、画素のサイズが大きくなるため、受光に使用されるSPADの数が多くなる。すなわち、近距離受光領域NDR内の画素のダイナミックレンジが拡大され得る。その結果、第5実施形態に係る光検出器33では、近距離受光領域NDRにおける受光結果に対して、一般に、pile-upに弱くて大きなダイナミックレンジを必要とする、TDC(Time to Digital Convertor)を使用することが可能となる。TDCは時間分解能がADCよりも高いため、光検出器33は、近距離の対象物TGの検出精度をより向上させることが出来る。
【0122】
さらに、第5実施形態は、第2実施形態と組み合わせることも有効である。簡潔に述べると、距離計測装置1は、例えば、レーザ光を出射した後に所定の時間が経過すると、出射光の光軸に対して遠い方から近距離受光領域NDR内の画素をオフさせる。これにより、第5実施形態に係る距離計測装置1は、第2実施形態と同様に、光検出器33の消費電力を抑制することが出来る。
【0123】
[6]その他
上記実施形態は、組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態は、第3~第5実施形態とのいずれとも組み合わされ得る。第3実施形態は、第4及び第5実施形態のいずれとも組み合わされ得る。さらに、3つ以上の実施形態が組み合わされても良い。複数の実施形態が組み合わされた距離計測装置1は、組み合わされた実施形態のそれぞれの効果を得ることが出来る。
【0124】
本明細書において、“近距離受光領域NDR”及び“遠距離受光領域FDR”のそれぞれの幅は、例えば、距離計測動作においてオン状態になっている画素PXが設けられた領域の幅に基づいて算出される。複数のチャネルCHを一括で計測する場合、“領域の第1方向における幅”は、チャネルCH毎に算出されても良い。例えば、“一つの画素PXの出力信号”は、当該画素PXに含まれたSPADによる光検知結果の総計に対応している。つまり、画素PXの大きさは、例えば受光部DPから一括で出力される信号に関連付けられているSPADの数及び配置によって定義される。“クエンチ素子”は、例えばクエンチ抵抗、又はトランジスタに対応している。
【0125】
本明細書において“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧である。
【0126】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1…距離計測装置、10…出射部、11…制御部、12…発振器、13…駆動回路、14…駆動回路、15…光源、20…光学系、21…レンズ、22…光学素子、23…レンズ、24…ミラー、30…計測処理部、31…光検出器、32…レンズ、33…光検出器、34…増幅器、35…増幅器、36…時間取得部、37…距離計測処理部、40…画像処理部、50…基板、51…P型半導体層、52…Pプラス型半導体層、53…Nプラス型半導体層、L1,L2,L2f,L2n…レーザ光、IOUT…出力信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17