(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240213BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240213BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/90 Z
(21)【出願番号】P 2020050979
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光雄
(72)【発明者】
【氏名】小幡 進
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和人
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171750(WO,A1)
【文献】特開2015-119170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161792(US,A1)
【文献】国際公開第2019/058922(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/768
H01L 23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料を含んだ基板
であって、前記基板には、各々の深さ方向が前記基板の厚さ方向と等しい1以上の凹部が設けられ、前記1以上の凹部の側壁には、前記深さ方向に各々が伸びた複数の溝が設けられ
、前記1以上の凹部は、幅方向に配列した複数のトレンチであり、前記1以上の凹部の各々において、前記複数の溝の長さ方向は前記深さ方向に平行である
基板と、
前記側壁を覆った導電層と、
前記基板と前記導電層との間に介在した誘電体層と
を備え、前記基板は、少なくとも表面が導電性を有している導電基板であり、前記誘電体層は、前記導電基板と前記導電層とを互いから電気的に絶縁させている構造体。
【請求項2】
前記誘電体層の厚さD3と前記複数の溝の平均幅Av
D1との比D3/Av
D1は0.01乃至1の範囲内にある請求項
1に記載の構造体。
【請求項3】
前記複数の溝の平均深さAv
D2と前記複数の溝の平均幅Av
D1との比Av
D2/Av
D1は0.01乃至100の範囲内にある請求項1
又は2に記載の構造体。
【請求項4】
前記複数の溝の平均幅Av
D1は5乃至300nmの範囲内にある請求項1乃至
3の何れか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記複数の溝の平均深さAv
D2は2.5乃至150nmの範囲内にある請求項1乃至
4の何れか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記複数の溝の平均幅Av
D1と前記複数の溝の隣り合ったものの平均中心間距離Av
D5との比Av
D1/Av
D5は0.3乃至1の範囲内にある請求項1乃至
5の何れか1項に記載の構造体。
【請求項7】
半導体材料を含んだ基板の一方の主面上に、1以上の開口部を有しているマスク層を形成する工程と、
前記主面のうち前記1以上の開口部に対応した領域に、第1貴金属を各々が含んだ複数の第1触媒粒子からなり、前記複数の第1触媒粒子間に隙間を有する第1触媒層を形成する工程と、
前記第1触媒層上に、第2貴金属を各々が含んだ複数の第2触媒粒子からなり、前記複数の第2触媒粒子の少なくとも一部は前記隙間の上方に位置し、前記第1触媒層と比較してより小さな幅を有している第2触媒層を形成する工程と、
前記第1及び第2触媒層へエッチング剤を供給して、前記第1及び第2触媒層の触媒としての作用のもとで、前記領域をエッチングすることにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝を各々の側壁に有する1以上の凹部を形成することと
を含
み、前記1以上の凹部として、幅方向に配列した複数のトレンチを形成し、前記1以上の凹部の各々において、前記複数の溝の長さ方向を前記深さ方向に対して平行にする構造体の製造方法。
【請求項8】
前記側壁上に誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に導電層を形成する工程と
を更に含み、前記基板は、少なくとも表面が導電性を有している導電基板であり、前記誘電体層によって前記導電層から電気的に絶縁された請求項
7に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板にトレンチを形成した構造体には、トレンチの側壁に、各々が半導体基板の表面に対して平行な方向に伸びた複数の溝を設けることがある。そのような構造体を使用すると、例えば、電気容量が大きなコンデンサが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-26153号公報
【文献】特開平6-310655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、凹部の側壁に凹凸を有し且つ凹部を洗浄し易い構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面によれば、半導体材料を含んだ基板であって、前記基板には、各々の深さ方向が前記基板の厚さ方向と等しい1以上の凹部が設けられ、前記1以上の凹部の側壁には、前記深さ方向に各々が伸びた複数の溝が設けられ、前記1以上の凹部は、幅方向に配列した複数のトレンチであり、前記1以上の凹部の各々において、前記複数の溝の長さ方向は前記深さ方向に平行である基板と、前記側壁を覆った導電層と、前記基板と前記導電層との間に介在した誘電体層とを備え、前記基板は、少なくとも表面が導電性を有している導電基板であり、前記誘電体層は、前記導電基板と前記導電層とを互いから電気的に絶縁させている構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1に示すコンデンサのII-II線に沿った断面図。
【
図3】
図1及び
図2に示すコンデンサが含んでいる導電基板の斜視図。
【
図4】
図1及び
図2に示すコンデンサが含んでいるトレンチの側壁を示す断面図。
【
図5】トレンチの第1形成方法における触媒層形成工程を示す断面図。
【
図6】トレンチの第1形成方法における第1エッチング工程を示す断面図。
【
図7】
図6の工程によって得られる構造を示す断面図。
【
図8】
図7の構造に対して第2エッチング工程を行うことにより得られる構造を示す断面図。
【
図9】トレンチの第2形成方法における触媒層形成工程を示す断面図。
【
図10】トレンチの第2形成方法におけるエッチング工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<構造体の構成>
実施形態に係る構造体は、半導体材料を含んだ基板を備え、前記基板には、各々の深さ方向が前記基板の厚さ方向と等しい1以上の凹部が設けられ、前記1以上の凹部の側壁には、前記深さ方向に各々が伸びた複数の溝が設けられている。
【0009】
以下、構造体の一例としてコンデンサについて記載する。
図1及び
図2に、一実施形態に係るコンデンサを示す。
図1及び
図2に示すコンデンサ1は、
図2に示すように、導電基板CSと、導電層20bと、誘電体層30とを含んでいる。
【0010】
なお、各図において、X方向は導電基板CSの主面に平行な方向であり、Y方向は導電基板CSの主面に平行であり且つX方向に垂直な方向である。また、Z方向は、導電基板CSの厚さ方向、即ち、X方向及びY方向に垂直な方向である。
【0011】
導電基板CSは、シリコンなどの半導体材料を含んでいる。導電基板CSは、少なくとも導電層20bと向き合った表面が導電性を有している基板である。導電基板CSは、コンデンサの下部電極としての役割を果たす。
【0012】
導電基板CSは、第1主面S1と、第2主面S2と、第1主面S1の縁から第2主面S2の縁まで延びた端面とを有している。ここでは、導電基板CSは、扁平な略直方体形状を有している。導電基板CSは、他の形状を有していてもよい。
【0013】
第1主面S1、ここでは導電基板CSの上面は、第1領域A1と第2領域A2とを含んでいる。第1領域A1及び第2領域A2は、互いに隣接している。ここでは、第1領域A1は矩形状であり、第2領域A2は第1領域A1を取り囲んでいる。
【0014】
第1領域A1には、一方向に伸びた形状を各々が有し、幅方向に配列した複数の凹部TRが設けられている。凹部TRは、互いから離間している。ここでは、これら凹部TRは、幅方向に配列した複数のトレンチ、具体的には、Y方向に各々が伸び、X方向に配列した複数のトレンチである。
【0015】
導電基板CSのうち、隣り合った凹部TRの一方と他方とに挟まれた部分は、凸部である。凸部は、Y方向に伸びた形状を各々が有し、X方向に配列している。即ち、各第1領域A1には、凸部として、Y方向及びZ方向に伸びた形状を各々が有し、X方向に配列した複数の壁部が設けられている。
【0016】
なお、凹部又は凸部の「長さ方向」は、導電基板の厚さ方向に垂直な平面への凹部又は凸部の正射影の長さ方向である。
【0017】
凹部TRの開口部の長さは、一例によれば、5乃至500μmの範囲内にあり、他の例によれば、50乃至100μmの範囲内にある。
【0018】
凹部TRの開口部の幅、即ち、幅方向に隣り合った凸部間の距離は、0.3μm以上であることが好ましい。この幅又は距離を小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、この幅又は距離を小さくすると、凹部TR内に、誘電体層30と導電層20bとを含んだ積層構造を形成することが難しくなる。
【0019】
凹部TRの深さD1又は凸部の高さは、一例によれば、5至300μmの範囲内にあり、他の例によれば、50乃至100μmの範囲内にある。
【0020】
幅方向に隣り合った凹部TR間の距離、即ち、凸部の厚さD4は、0.1μm以上であることが好ましい。この距離又は厚さD4を小さくすると、より大きな電気容量を達成できる。但し、この距離又は厚さD4を小さくすると、凸部の破損を生じ易くなる。
【0021】
なお、ここでは、凹部TRの長さ方向に垂直な断面は矩形状である。これら断面は矩形状でなくてもよい。例えば、これら断面は、先細りした形状を有していてもよい。
【0022】
導電基板CSは、
図2に示すように、基板10と導電層20aとを含んでいる。
基板10は、導電基板CSと同様の形状を有している。基板10は、半導体材料を含んだ基板、例えば、半導体基板である。基板10は、シリコン基板などのシリコンを含んだ基板であることが好ましい。そのような基板は、半導体プロセスを利用した加工が可能である。
【0023】
導電層20aは、基板10上に設けられている。導電層20aは、例えば、導電性を高めるために不純物がドーピングされたポリシリコン、又は、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金からなる。導電層20aは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0024】
導電層20aの厚さは、0.05μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.1μm乃至0.3μmの範囲内にあることがより好ましい。導電層20aが薄いと、導電層20aに不連続部を生じるか、又は、導電層20aのシート抵抗が過剰に大きくなる可能性がある。導電層20aを厚くすると、製造コストが増加する。
【0025】
ここでは、一例として、基板10はシリコン基板などの半導体基板であり、導電層20aは、半導体基板の表面領域に不純物を高濃度にドーピングした高濃度ドーピング層であるとする。この場合、凸部は、十分に薄ければ、それらの全体が不純物で高濃度にドーピングされ得る。
【0026】
また、基板10の導電率が高い場合には、導電層20aを省略し、基板10を導電基板CSとして用いてもよい。例えば、基板10が、P型又はN型の不純物がドープされた半導体からなる半導体基板又は金属基板である場合、導電層20aは省略することができる。この場合、基板10の少なくとも表面領域、例えば、基板10の全体が導電層20aの役割を果たす。
【0027】
導電層20bは、コンデンサの上部電極としての役割を果たす。導電層20bは、第1領域A1上に設けられており、凹部TRの側壁及び底面を覆っている。
【0028】
導電層20bは、例えば、導電性を高めるために不純物がドーピングされたポリシリコン、又は、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、ニッケル及び銅などの金属若しくは合金からなる。導電層20bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0029】
導電層20bの厚さは、0.05μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.1μm乃至0.3μmの範囲内にあることがより好ましい。導電層20bが薄いと、導電層20bに不連続部を生じるか、又は、導電層20bのシート抵抗が過剰に大きくなる可能性がある。導電層20bが厚いと、導電層20a及び誘電体層30を十分な厚さに形成することが難しい場合がある。
【0030】
なお、
図2では、導電層20bは、凹部TRが、導電層20bと誘電体層30とによって完全に埋め込まれるように設けられている。導電層20bは、導電基板CSの表面に対してコンフォーマルな層であってもよい。即ち、導電層20bは、略均一な厚さを有する層であってもよい。この場合、凹部TRは、導電層20bと誘電体層30とによって完全には埋め込まれない。
【0031】
誘電体層30は、導電基板CSと導電層20bとの間に介在している。誘電体層30は、導電基板CSの表面に対してコンフォーマルな層である。誘電体層30は、導電基板CSと導電層20bとを互いから電気的に絶縁している。
【0032】
誘電体層30は、例えば、有機誘電体又は無機誘電体からなる。有機誘電体としては、例えば、ポリイミドを使用することができる。無機誘電体としては、強誘電体も用いることができるが、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、チタン酸化物、及びタンタル酸化物などの常誘電体が好ましい。これらの常誘電体は、温度による誘電率の変化が小さい。そのため、常誘電体を誘電体層30に使用すると、コンデンサ1の耐熱性を高めることができる。
【0033】
誘電体層30の厚さD3は、0.005μm乃至0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.01μm乃至0.1μmの範囲内にあることがより好ましい。誘電体層30が薄いと、誘電体層30に不連続部を生じ、導電基板CSと導電層20bとが短絡する可能性がある。また、誘電体層30を薄くすると、例え短絡していなくても耐圧が低くなり、電圧を印加した際に短絡する可能性が高まる。誘電体層30を厚くすると、耐圧は高くなるが電気容量が小さくなる。
【0034】
誘電体層30は、第2領域A2の位置で開口している。即ち、誘電体層30は、この位置で、導電層20aを露出させている。ここでは、誘電体層30のうち、第1主面S1上に設けられた部分は、枠形状に開口している。
【0035】
このコンデンサ1は、絶縁層60と、第1内部電極70aと、第2内部電極70bと、第1外部電極70cと、第2外部電極70dとを更に含んでいる。
【0036】
第1内部電極70aは、第1領域A1上に設けられている。第1内部電極70aは、導電層20bと電気的に接続されている。ここでは、第1内部電極70aは、第1主面S1の中央に位置した矩形状の電極である。
【0037】
第2内部電極70bは、第2領域A2上に設けられている。第2内部電極70bは、誘電体層30に設けられた開口の位置で、導電基板CSと接触している。これにより、第2内部電極70bは、導電基板CSへ電気的に接続されている。ここでは、第2内部電極70bは、第1内部電極70aを取り囲むように配置された枠形状の電極である。
【0038】
第1内部電極70a及び第2内部電極70bは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。第1内部電極70a及び第2内部電極70bを構成している各層は、例えば、モリブデン、アルミニウム、金、タングステン、白金、銅、ニッケル、及びそれらの1以上を含んだ合金などの金属からなる。
【0039】
絶縁層60は、導電層20b及び誘電体層30のうち第1主面S1上に位置した部分と、第1内部電極70aと、第2内部電極70bとを覆っている。絶縁層60は、第1内部電極70aの一部の位置と、第2内部電極70bの一部の位置とで、部分的に開口している。
【0040】
絶縁層60は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。絶縁層60を構成している各層は、例えば、シリコン窒化物及びシリコン酸化物などの無機絶縁体、又は、ポリイミド及びノボラック樹脂などの有機絶縁体からなる。
【0041】
第1外部電極70cは、絶縁層60上に設けられている。第1外部電極70cは、絶縁層60に設けられた1以上の開口の位置で、第1内部電極70aと接触している。これにより、第1外部電極70cは、第1内部電極70aに電気的に接続されている。なお、
図1において、領域70R1は、第1外部電極70cと第1内部電極70aとが接触している領域である。
【0042】
第2外部電極70dは、絶縁層60上に設けられている。第2外部電極70dは、絶縁層60に設けられた残りの開口の位置で、第2内部電極70bと接触している。これにより、第2外部電極70dは、第2内部電極70bに電気的に接続されている。なお、
図1において、領域70R2は、第2外部電極70dと第2内部電極70bとが接触している領域である。
【0043】
第1外部電極70cは、第1金属層70c1と第2金属層70c2とを含んだ積層構造を有している。第2外部電極70dは、第1金属層70d1と第2金属層70d2とを含んだ積層構造を有している。
【0044】
第1金属層70c1及び70d1は、例えば、銅からなる。第2金属層70c2及び70d2は、それぞれ、第1金属層70c1及び70d1の上面及び端面を被覆している。第2金属層70c2及び70d2は、例えば、ニッケル又はニッケル合金層と金層との積層膜からなる。第2金属層70c2及び70d2は省略することができる。
【0045】
第1外部電極70c又は第1内部電極70aは、それらの間の界面に隣接する位置に、バリア層を更に含んでいてもよい。また、第2外部電極70d又は第2内部電極70bも、それらの間の界面に隣接する位置に、バリア層を更に含んでいてもよい。バリア層の材料としては、例えば、チタンを使用することができる。
【0046】
上記の通り、このコンデンサ1では、第1主面S1に凹部TRを設けている。また、以下に説明するように、このコンデンサ1で、凹部TRの側壁に、それらの深さ方向に各々が伸びた複数の溝を設けている。誘電体層30と導電層20bとを含んだ積層構造は、第1主面S1だけでなく、凹部TRの側壁及び底面にも設けている。それ故、このコンデンサ1は、大きな電気容量を達成し得る。
【0047】
凹部TRの側壁に設ける溝について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、導電基板CSの斜視図である。
図4は、凹部TRの側壁及びその近傍の部分を示す断面であって、凹部TRの深さ方向に対して垂直な断面である。
【0048】
図3及び
図4に示すように、凹部TRの側壁には、それらの深さ方向に各々が伸びた複数の溝Gが設けられている。これら溝Gは、それらの幅方向に隣り合っている。即ち、凹部TRの側壁に設けられた溝Gは、Z方向に各々が伸び、Y方向に配列している。
【0049】
溝Gの長さ方向が第1主面S1に略平行である場合、コンデンサ1の製造において洗浄によって除去すべき物質が、溝G内に残留し易い。洗浄によって除去すべき物質が溝G内に残留すると、例えば、導電基板CSと導電層20bとの間の短絡を生じ易くなるか、又は、短絡していなくても耐圧が低くなり、電圧を印加した際に短絡する可能性が高くなるといった問題を生じ得る。
【0050】
これに対し、上記のコンデンサ1では、溝Gの長さ方向は、凹部TRの深さ方向に平行である。それ故、このコンデンサ1は、その製造において洗浄によって除去すべき物質が、溝G内に残留し難い。即ち、このコンデンサ1について上述した構造は、凹部TRの側壁に溝Gを有していながらも、凹部TRを洗浄し易い。従って、この構造は、信頼性の高いコンデンサを高い歩留まりで製造することを可能とする。
【0051】
図3及び
図4に示す構造では、各側壁において、隣り合った溝Gは、縁同士が接している。隣り合った溝Gは、互いから離間していてもよい。
【0052】
一例によれば、溝Gの1以上と他の1以上とは、幅D1が異なっている。溝Gは、幅D1が等しくてもよい。
【0053】
溝G1の平均幅AvD1は、5乃至300nmの範囲内にあることが好ましく、10乃至100nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0054】
溝G1の平均幅AvD1を過剰に小さくすると、誘電体層30が溝Gをほぼ完全に埋め込むか、又は、誘電体層30が溝Gの開口部を閉塞させる可能性がある。この場合、大きな静電容量を達成することが難しい。また、溝Gの平均幅AvD1を小さくすると、洗浄によって除去すべき物質が溝G内に残留し易くなる。
【0055】
溝G1の平均幅AvD1を大きくすると、大きな電気容量を得るには、溝Gの深さD2も大きくしなければならない。溝Gの深さD2を過剰に大きくした場合、隣り合った凹部TRに挟まれた凸部の厚さも大きくする必要を生じる。凸部の厚さを大きくすると、凹部TRの数を減らす必要を生じる。凹部TRの数を減らすと、コンデンサ1の電気容量は小さくなる。
【0056】
平均幅AvD1と隣り合った溝G1の平均中心間距離AvD5との比AvD1/AvD5は、0.3乃至1の範囲内にあることが好ましく、0.5以上1未満の範囲内にあることがより好ましい。ここで、隣り合った溝G1の中心間距離は、隣り合った溝G1の一方を幅方向に二等分し且つ側壁に垂直な平面と、隣り合った溝G1の他方を幅方向に二等分し且つ側壁に垂直な平面との間の距離である。
【0057】
比AvD1/AvD5を小さくすると、隣り合った溝G1が部分的に重なり合う可能性が高くなる。比AvD1/AvD5を大きくすると、大きな電気容量を達成することが難しくなる。
【0058】
一例によれば、溝Gの1以上と他の1以上とは、深さD2が異なっている。溝Gは、深さD2が等しくてもよい。
【0059】
溝G1の平均深さAvD2は、2.5乃至150nmの範囲内にあることが好ましく、5乃至50nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0060】
溝G1の平均深さAvD2を過剰に小さくすると、誘電体層30が溝Gをほぼ完全に埋め込むか、又は、誘電体層30が溝Gの開口部を閉塞させる可能性がある。この場合、大きな静電容量を達成することが難しい。溝G1の平均深さAvD2を過剰に大きくすると、洗浄によって除去すべき物質が溝G内に残留する可能性が高くなる。
【0061】
溝Gの平均深さAvD2と溝Gの平均幅AvD1との比AvD2/AvD1は、0.01乃至100の範囲内にあることが好ましく、0.1乃至10の範囲内にあることがより好ましい。大きな電気容量を達成するうえでは、比AvD2/AvD1は大きいことが有利である。但し、比AvD2/AvD1を大きくすると、洗浄によって除去すべき物質が溝G内に残留する可能性が高くなる。
【0062】
溝G1の平均深さAvD2と隣り合った凹部TR間に挟まれた凸部の厚さD4との比AvD2/D4は、0.005乃至0.3の範囲内にあることが好ましく、0.01乃至0.1の範囲内にあることがより好ましい。大きな電気容量を達成するうえでは、比AvD2/D4は大きいことが有利である。但し、比AvD2/D4を大きくすると、凸部の強度が低下する。
【0063】
誘電体層30の厚さD3と溝Gの平均幅AvD1との比D3/AvD1は、0.01以上0.5未満の範囲内にあることが好ましく、0.1以上0.5未満の範囲内にあることがより好ましい。比D3/AvD1を過剰に大きくすると、誘電体層30が溝Gをほぼ完全に埋め込むか、又は、誘電体層30が溝Gの開口部を閉塞させる可能性がある。比D3/AvD1を過剰に小さくすると、導電基板CSと導電層20bとの間の短絡を生じ易くなるか、又は、短絡していなくても耐圧が低くなり、電圧を印加した際に短絡する可能性が高くなる。
【0064】
<構造体の第1製造方法>
実施形態に係る構造体の第1製造方法は、
半導体材料を含んだ基板の一方の主面上に、1以上の開口部を有しているマスク層を形成する工程と、
前記主面のうち前記1以上の開口部に対応した領域に、貴金属を各々が含んだ複数の触媒粒子からなり、前記複数の触媒粒子間に隙間を有する触媒層を形成する工程と、
前記触媒層へエッチング剤を供給して、前記触媒層の触媒としての作用のもとで前記領域をエッチングすることにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝を各々の側壁に有し、前記深さ方向に伸びた針形状を各々が有する複数のエッチング残りを各々の底部に有する1以上の凹部を形成することと、
前記複数のエッチング残りをエッチングによって除去することと
を含む。
【0065】
以下、構造体が上述したコンデンサ1である場合を例に、
図5乃至
図8を参照しながら、第1製造方法について説明する。
【0066】
この方法では、先ず、
図5に示す基板10を準備する。ここでは、一例として、基板10は単結晶シリコンウェハであるとする。単結晶シリコンウェハの面方位は特に問わないが、本例では、一主面が(100)面であるシリコンウェハを用いる。基板10としては、一主面が(110)面であるシリコンウェハを用いることもできる。
【0067】
次に、MacEtch(Metal-Assisted Chemical Etching)により、基板10に凹部を形成する。
即ち、先ず、
図5に示すように、基板10上に、貴金属を各々が含んだ触媒層80を形成する。触媒層80は、基板10の一方の主面(以下、第1面という)を部分的に覆うように形成する。
【0068】
具体的には、先ず、基板10の第1面上に、マスク層90を形成する。
マスク層90は、凹部TRに対応した位置に開口部を有している。マスク層90は、第1面のうちマスク層90によって覆われた部分が、後述する貴金属と接触するのを防止する。
【0069】
マスク層90の材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料や、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機材料が挙げられる。
【0070】
マスク層90は、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。有機材料からなるマスク層90は、例えば、フォトリソグラフィによって形成することができる。無機材料からなるマスク層90は、例えば、気相堆積法による無機材料層の成膜と、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによる無機材料層のパターニングとによって成形することができる。或いは、無機材料からなるマスク層90は、基板10の表面領域の酸化又は窒化と、フォトリソグラフィによるマスク形成と、エッチングによる酸化物又は窒化物層のパターニングとによって形成することができる。マスク層90は、省略可能である。
【0071】
次に、第1面のうちマスク層90によって覆われていない領域上に、触媒層80を形成する。触媒層80は、貴金属を含んだ触媒粒子81からなる粒状層である。触媒層80は、触媒粒子81間に隙間を有している。
【0072】
触媒粒子81は、形成すべき溝Gの幅D1に対応した径を有している。触媒粒子81の平均粒径は、5乃至500nmの範囲内にあることが好ましく、10乃至300nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0073】
なお、触媒粒子の「平均粒径」は、以下の方法により得られる値である。先ず、電子顕微鏡により触媒層を撮像する。次に、この画像から得られる触媒粒子の面積を算術平均する。この平均面積と等しい面積を有する円の直径を、触媒粒子の平均粒径とする。
【0074】
触媒層80は、触媒粒子81が多層に積層されないように、及び、触媒粒子81が低い密度で分布するように形成する。好ましくは、触媒層80は、半導体表面のうち、マスク層によって覆われていない領域の面積に占める、触媒粒子によって被覆された領域の合計面積の割合である被覆率が10乃至50%となるように形成する。なお、触媒粒子の「被覆率」は、以下の方法により得られる値である。先ず、電子顕微鏡により触媒層を撮像する。次に、この画像から得られる触媒粒子の面積を算術平均する。この平均面積をマスク層で覆われていない半導体面の面積で割った値を被覆率とする。
【0075】
貴金属は、例えば、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、及びルテニウムの1以上である。触媒層80及び触媒粒子81は、チタンなどの貴金属以外の金属を更に含んでいてもよい。
【0076】
触媒層80は、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。触媒層80は、貴金属粒子を含む分散液の塗布、又は、蒸着及びスパッタリング等の気相堆積法を用いて形成してもよい。これら手法の中でも、置換めっきは、第1面のうちマスク層90によって覆われていない領域に、貴金属を直接的且つ一様に析出させることができるため特に好ましい。以下、一例として、シリコンからなる基板10への置換めっきによる触媒層80の形成について記載する。
【0077】
置換めっきは、無電解めっきの1種である。ここで行う置換めっきには、水中で貴金属を含んだイオンを生じる貴金属源と、弗化水素とを含んだめっき液を使用する。このめっき液は、置換めっき用であるので、自己触媒型無電解めっきで使用するめっき液とは異なり、還元剤を含んでいない。
【0078】
水中で貴金属を含んだイオンを生じる貴金属源は、例えば、金を含んだイオンを生じる金源である。この金源としては、例えば、硫酸金又は水中でテトラクロロ金(III)酸イオンを生じる金源などのノンシアン型であることが好ましい。水中でテトラクロロ金(III)酸イオンを生じる金源は、例えば、テトラクロロ金(III)酸又はテトラクロロ金(III)酸カリウムなどのテトラクロロ金(III)酸塩である。これら化合物又はテトラクロロ金(III)酸イオンは、低いpH値範囲において、硫酸金と比較してより安定である。
【0079】
基板10を置換めっき液中に浸漬させると、基板10の表面の自然酸化膜が除去されるのに加え、基板10の表面のうちマスク層90によって覆われていない部分に、貴金属、ここでは金が析出する。これにより、触媒粒子81からなる触媒層80が得られる。
【0080】
めっき液における貴金属源の濃度は、0.0001乃至0.01mol/Lの範囲内にあることが好ましく、0.0005mol/L乃至0.005mol/Lの範囲内にあることがより好ましい。この濃度が低いか又は高い場合、貴金属を粒子状に堆積させることが難しい。
【0081】
弗化水素は、以下に記載するように、シリコン表面から酸化膜を除去する作用を有している。ここでは、一例として、構造物1がシリコンからなる表面を有し、貴金属源は、水中でテトラクロロ金(III)酸イオンを生じる金源であるとする。
【0082】
この置換めっきでは、シリコンの酸化と、テトラクロロ金(III)酸イオンが有している金の還元とを生じ、その結果、シリコン表面に金が析出する。但し、この反応で生じるシリコン酸化物は、シリコンを不動態化する。
【0083】
弗化水素は、シリコン酸化物と反応して、SiF6
2-とH+と水とを生じる。即ち、弗化水素は、シリコン表面から不動態化膜を除去する。弗化水素は、このようにして、金の析出が速やかに停止するのを防止する。
【0084】
上記置換めっき液中における弗化水素濃度は、0.01mol/L乃至5mol/Lの範囲内にあることが好ましく、0.5mol/L乃至2mol/Lの範囲内にあることがより好ましい。弗化水素濃度が低い場合、十分な大きさの触媒粒子81が低い密度で分布した触媒層80を得ることが難しい。弗化水素濃度が高い場合、半導体表面の溶解が進行し、エッチングに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0085】
上記置換めっき液は、調整剤を更に含むことができる。調整剤は、めっき液のpH値を調整するか、又は、マスク層90とめっき液との界面(マスク層90の近傍の滑り面)におけるゼータ電位を調整するものである。
【0086】
調整剤としては、例えば、有機添加剤を使用することができる。有機添加剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合塩等の高分子添加剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のノニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;並びにそれらの組み合わせから選択することができる。
【0087】
有機添加剤がポリエチレングリコールなどの高分子化合物である場合、その平均分子量は、200乃至500000の範囲内にあることが好ましく、1000乃至100000の範囲内にあることがより好ましく、6000乃至20000の範囲内にあることが更に好ましい。なお、有機添加剤が高分子化合物である場合、その平均分子量は重量平均分子量である。有機添加剤が高分子化合物である場合、その平均分子量が小さいと、触媒粒子81が不所望な位置に付着するのを抑制する効果が小さい。平均分子量が大きいと、直鎖構造が長くなるため、立体障害となり、抑制効果が大きい。
【0088】
めっき液における有機添加剤の濃度は、0.0001乃至10質量%の範囲内にあることが好ましく、0.0005乃至5質量%の範囲内にあることがより好ましく、0.001乃至1質量%の範囲内にあることがより好ましく、0.001乃至0.01質量%の範囲内にあることが更に好ましい。この濃度が低い場合、触媒粒子81が不所望な位置に付着するのを抑制する効果が小さい。この濃度を過剰に高くすると、この濃度が触媒粒子81の形状に及ぼす影響が大きくなる。
【0089】
調整剤として、無機添加剤を使用してもよい。無機添加剤としては、例えば、弗化アンモニウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等を使用することができる。
【0090】
無機添加剤は、マスク層90とめっき液との界面におけるゼータ電位が、好ましくは負の値の範囲内に、又は、好ましくは10乃至-10mVの範囲内に、より好ましくは0乃至-100mVの範囲内になるような濃度で使用する。
【0091】
このめっき液は、pH値が1乃至6の範囲内にあることが好ましく、4乃至6の範囲内にあることがより好ましい。pH値を低くすると、マスク層90とめっき液との界面におけるゼータ電位が高くなる傾向にある。pH値を高くすると、液中のプロトン量が減少するため、ゼータ電位はマイナス方向にシフトする。
【0092】
めっき浴の温度は、0乃至50℃の範囲内とすることが好ましく、15乃至35℃の範囲内とすることがより好ましい。
【0093】
マスク層90を形成した基板10を、置換めっき液に浸漬させると、半導体表面のうち、マスク層90によって覆われていない領域には、低い密度で分布した触媒粒子81からなる触媒層80が形成される。
【0094】
一例によれば、上記の置換めっき液は、1mmol/Lのテトラクロロ金(III)酸と、100mmol/Lの弗化水素とを含んだ水溶液である。このような置換めっき液を使用した場合、例えば、25℃で1分間のめっき処理を行う。
【0095】
次に、貴金属の触媒としての作用のもとで基板10をエッチングして、第1面に凹部を形成する。
【0096】
具体的には、
図6に示すように、基板10をエッチング剤100でエッチングする。例えば、基板10を液状のエッチング剤100に浸漬させて、エッチング剤100を基板10と接触させる。
【0097】
エッチング剤100は、酸化剤と弗化水素とを含んでいる。
エッチング剤100における弗化水素の濃度は、1mol/L乃至20mol/Lの範囲内にあることが好ましく、5mol/L乃至10mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至7mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。弗化水素濃度が低い場合、高いエッチングレートを達成することが難しい。弗化水素濃度が高い場合、過剰なサイドエッチングを生じる可能性がある。
【0098】
酸化剤は、例えば、過酸化水素、硝酸、AgNO3、KAuCl4、HAuCl4、K2PtCl6、H2PtCl6、Fe(NO3)3、Ni(NO3)2、Mg(NO3)2、Na2S2O8、K2S2O8、KMnO4及びK2Cr2O7から選択することができる。有害な副生成物が発生せず、半導体素子の汚染も生じないことから、酸化剤としては過酸化水素が好ましい。
【0099】
エッチング剤100における酸化剤の濃度は、0.2mol/L乃至8mol/Lの範囲内にあることが好ましく、2mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、3mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。
【0100】
エッチング剤100は、緩衝剤を更に含んでいてもよい。緩衝剤は、例えば、弗化アンモニウム及びアンモニアの少なくとも一方を含んでいる。一例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムである。他の例によれば、緩衝剤は、弗化アンモニウムとアンモニアとの混合物である。
エッチング剤100は、水などの他の成分を更に含んでいてもよい。
【0101】
このようなエッチング剤100を使用した場合、基板10のうち触媒粒子81と近接している領域においてのみ、基板10の材料、ここではシリコンが酸化される。そして、これによって生じた酸化物は、弗化水素酸により溶解除去される。そのため、触媒粒子81と近接している部分のみが選択的にエッチングされる。
【0102】
触媒粒子81は、エッチングの進行とともに、基板10の他方の主面(以下、第2面という)へ向けて移動し、そこで上記と同様のエッチングが行われる。その結果、
図6に示すように、触媒層80の位置では、第1面から第2面へ向けて、第1面に対して垂直な方向にエッチングが進む。
【0103】
上記の通り、触媒層80は、貴金属を含んだ触媒粒子81からなる粒状層である。それ故、エッチングの進行に伴い、凹部の側壁には、触媒粒子81によってエッチングが促進された痕跡として溝が形成される。また、上記の通り、触媒粒子81は低い密度で分布している。それ故、或る触媒粒子81が促進するエッチングによって生じる溝の位置と、他の触媒粒子81が促進するエッチングによって生じる溝の位置とが部分的に重なり合う可能性は低い。即ち、隣り合った溝同士が部分的に重なり合う可能性は低い。従って、隣り合った溝同士が部分的に重なり合うことに起因して、側壁に対して略平行な領域の面積が増加する可能性は低い。即ち、上記のエッチングにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝が設けられた側壁を有する凹部が得られる。
【0104】
但し、触媒粒子81は低い密度で分布しているので、触媒粒子81間の隙間に対応した位置ではエッチングが進行しない。その結果、
図6及び
図7に示すように、凹部の底部に、凹部の深さ方向に各々が伸びた針形状のエッチング残り10Rを生じる。これらエッチング残り10Rは、上記のエッチング(第1エッチング)後、以下に説明する第2エッチングによって除去する。
【0105】
第2エッチングは、例えば、等方性エッチングである。第2エッチングは、ドライエッチング及びウェットエッチングの何れで行ってもよい。ドライエッチングによりエッチング残り10Rを除去する場合、例えば、CF4ガスとO2ガスとの混合ガスを使用する。ウェットエッチングによりエッチング残り10Rを除去する場合、例えば、大きなサイドエッチングを生じるエッチング液を使用する。
【0106】
エッチング残り10Rは針状であるので、その周囲全体からエッチングが進行する。それ故、エッチング残り10Rは、エッチングによって容易に除去できる。また、第2エッチングにより凹部の側壁もエッチングされるが、エッチング残り10Rが消失した時点で速やかにエッチングを終了すれば、側壁上の凹部が消失することはない。
【0107】
このようにして、
図8に示す凹部TRを第1面に形成する。
その後、マスク層90及び触媒層80を基板10から除去する。
【0108】
次に、基板10上に、
図2に示す導電層20aを形成して、導電基板CSを得る。導電層20aは、例えば、基板10の表面領域へ不純物を高濃度にドーピングすることにより形成することができる。ポリシリコンからなる導電層20aは、例えば、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)によって形成することができる。金属からなる導電層20aは、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。
【0109】
めっき液は、被めっき金属の塩を含んだ液体である。めっき液としては、硫酸銅五水和物と硫酸とを含んだ硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅とピロリン酸カリウムとを含んだピロリン酸銅めっき液、及び、スルファミン酸ニッケルと硼素とを含んだスルファミン酸ニッケルめっき液などの一般的なめっき液を使用することができる。
【0110】
導電層20aは、被めっき金属の塩と界面活性剤と超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素とを含んだめっき液を用いためっき法により形成することが好ましい。このめっき法では、界面活性剤は、超臨界二酸化炭素からなる粒子と、被めっき金属の塩を含んだ溶液からなる連続相との間に介在させる。即ち、めっき液中で、界面活性剤にミセルを形成させ、超臨界二酸化炭素はこれらミセルに取り込ませる。
【0111】
通常のめっき法では、凹部の底部近傍への被めっき金属の供給が不十分となることがある。これは、凹部の深さと幅又は径との比が大きい場合に、特に顕著である。
【0112】
超臨界二酸化炭素を取り込んだミセルは、狭い隙間にも容易に入り込むことができる。そして、これらミセルの移動に伴い、被めっき金属の塩を含んだ溶液も移動する。それ故、被めっき金属の塩と界面活性剤と超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素とを含んだめっき液を用いためっき法によれば、厚さが均一な導電層20aを容易に形成することができる。
【0113】
次に、導電層20a上に、誘電体層30を形成する。誘電体層30は、例えば、CVD(chemical vapor deposition)によって形成することができる。或いは、誘電体層30は、導電層20aの表面を、酸化、窒化、又は酸窒化することにより形成することができる。
【0114】
次いで、誘電体層30上に、導電層20bを形成する。導電層20bとしては、例えば、ポリシリコン又は金属からなる導電層を形成する。そのような導電層20bは、例えば、導電層20aについて上述したのと同様の方法により形成することができる。
【0115】
次に、誘電体層30に、開口部を形成する。開口部は、第2領域A2の位置に形成する。ここでは、誘電体層30のうち第1主面S1上に位置した部分を、枠形状に開口させる。この開口部は、例えば、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによるパターニングとによって形成することができる。
【0116】
次いで、金属層を成膜し、これをパターニングして、第1内部電極70a及び第2内部電極70bを得る。第1内部電極70a及び第2内部電極70bは、例えば、スパッタリングやめっきによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0117】
その後、絶縁層60を形成する。絶縁層60は、第1内部電極70aの一部及び第2内部電極70bの一部に対応した位置で開口させる。絶縁層60は、例えば、CVDによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0118】
次に、絶縁層60上に、第1外部電極70c及び第2外部電極70dを形成する。具体的には、先ず、第1金属層70c1及び70d1を形成する。次に、第2金属層70c2及び70d2を形成する。第1金属層70c1及び70d1並びに第2金属層70c2及び70d2は、例えば、スパッタリングやめっきによる成膜と、フォトリソグラフィとの組み合わせにより形成することができる。
【0119】
その後、このようにして得られた構造をダイシングする。以上のようにして、
図1及び
図2に示すコンデンサ1を得る。
【0120】
<構造体の第2製造方法>
実施形態に係る構造体の第2製造方法は、
半導体材料を含んだ基板の一方の主面上に、1以上の開口部を有しているマスク層を形成する工程と、
前記主面のうち前記1以上の開口部に対応した領域に、第1貴金属を各々が含んだ複数の第1触媒粒子からなり、前記複数の第1触媒粒子間に隙間を有する第1触媒層を形成する工程と、
前記第1触媒層上に、第2貴金属を各々が含んだ複数の第2触媒粒子からなり、前記複数の第2触媒粒子の少なくとも一部は前記隙間の上方に位置し、前記第1触媒層と比較してより小さな幅を有している第2触媒層を形成する工程と、
前記第1及び第2触媒層へエッチング剤を供給して、前記第1及び第2触媒層の触媒としての作用のもとで、前記領域をエッチングすることにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝を各々の側壁に有する1以上の凹部を形成することと
を含む。
【0121】
以下、構造体が上述したコンデンサ1である場合を例に、
図9乃至
図11を参照しながら、第2製造方法について説明する。
【0122】
第2製造方法は、凹部TRの形成方法が異なること以外は、第1製造方法と同様である。第2製造方法では、凹部TRを以下の方法により形成する。
【0123】
即ち、先ず、第1製造方法において触媒層80について説明したのと同様の方法により、
図9に示すように、第1面のうちマスク層90によって覆われていない領域に、第1触媒層80aを形成する。第1触媒層80aは、第1貴金属を含んだ第1触媒粒子81aからなる粒状層である。第1貴金属、第1触媒粒子81a及び第1触媒層80aは、それぞれ、第1製造方法における、貴金属、触媒粒子81及び触媒層80と同様である。即ち、第1製造方法において、貴金属、触媒粒子81及び触媒層80に関して説明した材料や数値範囲等は、それぞれ、第1貴金属、第1触媒粒子81a及び第1触媒層80aにも当てはまる。
【0124】
次に、第1触媒層80aの縁の双方を第2マスク層(図示せず)で被覆する。そして、第1触媒層80a上に、第2触媒層80bを形成する。このようにして得られる第2触媒層80bは、第1触媒層80aと比較してより小さな幅を有している。なお、第2マスク層は、第2触媒層80bを形成した後に除去してもよく、除去しなくてもよい。
【0125】
第2触媒層80bは、第2貴金属を含んだ第2触媒粒子81bからなる粒状層である。第2触媒粒子81bの少なくとも一部は、第1触媒粒子81a間の隙間の上方に位置している。
【0126】
第2貴金属は、第1製造方法において触媒粒子81について説明した貴金属と同様である。第2貴金属は、第1貴金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
一例によれば、第2触媒粒子81bは、第1触媒粒子81aと比較して、平均粒径がより小さい。第2触媒粒子81bの平均粒径は、0.1乃至100nmの範囲内にあることが好ましく、1乃至50nmの範囲内にあることがより好ましい。
【0128】
第2触媒層80bにおける第2触媒粒子81bの密度は、第1触媒層80aにおける第1触媒粒子81aの密度と比較してより高い。好ましくは、第2触媒層80bは、半導体表面のうち、マスク層によって覆われていない領域の面積に占める、触媒粒子によって被覆された領域の合計面積の割合である被覆率が50乃至100%となるように形成する。
【0129】
第2触媒層80bは、例えば、めっき条件を変更したこと以外は第1触媒層80aと同様の置換めっきにより形成することができる。即ち、第2触媒層80bを形成するための置換めっき(第2置換めっき)は、第1触媒層80aを形成するための置換めっき(第1置換めっき)と比較して、より穏やかな反応条件のもとで行う。
【0130】
第2置換めっきには、例えば、触媒層80について上述したのと同様の置換めっき液を使用することができる。第2置換めっきでは、例えば、第1置換めっきと同様の置換めっき液を使用し、第1置換めっきと比較して、めっき浴の温度をより低くし、めっき処理時間をより長くする。
【0131】
一例によれば、第2置換めっきに使用する置換めっき液は、1mmol/Lのテトラクロロ金(III)酸と、100mmol/Lの弗化水素とを含んだ水溶液である。このような置換めっき液を使用した場合、例えば、10℃で5分間のめっき処理を行う。
【0132】
以上のようにして、第1触媒層80a及び第2触媒層80bからなる触媒層80を形成した後、上述した第1エッチングを行う。第1触媒層80aの第1触媒粒子81aは、凹部の側壁に溝を生じさせる。他方、第2触媒層80bの第2触媒粒子81bは、第1触媒層80aが促進するエッチングで残留する部分のエッチングを促進する。従って、
図6及び
図7に示すエッチング残り10Rは生じない。また、第2触媒層80bは、第1触媒層80aと比較してより小さな幅に形成しているので、第1触媒粒子81aが凹部の側壁に生じさせた溝を、第2触媒粒子81bが消失させることはない。
このようにして、
図11に示す凹部TRを第1面に形成する。
【0133】
ここでは、構造体の一例としてコンデンサについて説明したが、コンデンサについて上述した技術は、他の構造体に適用することも可能である。
【0134】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
半導体材料を含んだ基板を備え、前記基板には、各々の深さ方向が前記基板の厚さ方向と等しい1以上の凹部が設けられ、前記1以上の凹部の側壁には、前記深さ方向に各々が伸びた複数の溝が設けられている構造体。
[2]
前記1以上の凹部は、幅方向に配列した複数のトレンチである項1に記載の構造体。
[3]
前記側壁を覆った導電層と、
前記基板と前記導電層との間に介在した誘電体層と
を更に備え、前記基板は、少なくとも表面が導電性を有している導電基板であり、前記誘電体層は、前記導電基板と前記導電層とを互いから電気的に絶縁させている項1又は2に記載の構造体。
[4]
前記誘電体層の厚さD3と前記複数の溝の平均幅Av
D1
との比D3/Av
D1
は0.01乃至1の範囲内にある項3に記載の構造体。
[5]
前記複数の溝の平均深さAv
D2
と前記複数の溝の平均幅Av
D1
との比Av
D2
/Av
D1
は0.01乃至100の範囲内にある項1乃至4の何れか1項に記載の構造体。
[6]
前記複数の溝の平均幅Av
D1
は5乃至300nmの範囲内にある項1乃至5の何れか1項に記載の構造体。
[7]
前記複数の溝の平均深さAv
D2
は2.5乃至150nmの範囲内にある項1乃至6の何れか1項に記載の構造体。
[8]
前記複数の溝の平均幅Av
D1
と前記複数の溝の隣り合ったものの平均中心間距離Av
D5
との比Av
D1
/Av
D5
は0.3乃至1の範囲内にある項1乃至7の何れか1項に記載の構造体。
[9]
半導体材料を含んだ基板の一方の主面上に、1以上の開口部を有しているマスク層を形成する工程と、
前記主面のうち前記1以上の開口部に対応した領域に、貴金属を各々が含んだ複数の触媒粒子からなり、前記複数の触媒粒子間に隙間を有する触媒層を形成する工程と、
前記触媒層へエッチング剤を供給して、前記触媒層の触媒としての作用のもとで前記領域をエッチングすることにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝を各々の側壁に有し、前記深さ方向に伸びた針形状を各々が有する複数のエッチング残りを各々の底部に有する1以上の凹部を形成することと、
前記複数のエッチング残りをエッチングによって除去することと
を含んだ構造体の製造方法。
[10]
半導体材料を含んだ基板の一方の主面上に、1以上の開口部を有しているマスク層を形成する工程と、
前記主面のうち前記1以上の開口部に対応した領域に、第1貴金属を各々が含んだ複数の第1触媒粒子からなり、前記複数の第1触媒粒子間に隙間を有する第1触媒層を形成する工程と、
前記第1触媒層上に、第2貴金属を各々が含んだ複数の第2触媒粒子からなり、前記複数の第2触媒粒子の少なくとも一部は前記隙間の上方に位置し、前記第1触媒層と比較してより小さな幅を有している第2触媒層を形成する工程と、
前記第1及び第2触媒層へエッチング剤を供給して、前記第1及び第2触媒層の触媒としての作用のもとで、前記領域をエッチングすることにより、深さ方向に各々が伸びた複数の溝を各々の側壁に有する1以上の凹部を形成することと
を含んだ構造体の製造方法。
[11]
前記1以上の凹部として、幅方向に配列した複数のトレンチを形成する項9又は10に記載の構造体の製造方法。
[12]
前記側壁上に誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に導電層を形成する工程と
を更に含み、前記基板は、少なくとも表面が導電性を有している導電基板であり、前記誘電体層によって前記導電層から電気的に絶縁された項9乃至11の何れか1項に記載の構造体の製造方法。
【符号の説明】
【0135】
1…コンデンサ、10…基板、10R…エッチング残り、20a…導電層、20b…導電層、30…誘電体層、60…絶縁層、70a…第1内部電極、70b…第2内部電極、70c…第1外部電極、70d…第2外部電極、70c1…第1金属層、70c2…第2金属層、70d1…第1金属層、70d2…第2金属層、80…触媒層、80a…第1触媒層、80b…第2触媒層、81…触媒粒子、81a…第1触媒粒子、81b…第2触媒粒子、90…マスク層、100…エッチング剤、A1…第1領域、A2…第2領域、CS…導電基板、G…溝、S1…第1主面、S2…第2主面、TR…凹部。