(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】電子機器及び蓋ユニット
(51)【国際特許分類】
G03B 17/02 20210101AFI20240213BHJP
G03B 17/08 20210101ALI20240213BHJP
H04N 23/51 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B17/08
H04N23/51
(21)【出願番号】P 2020056367
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英幹
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145905(JP,A)
【文献】特開2016-109727(JP,A)
【文献】特開2001-336522(JP,A)
【文献】特開2007-059157(JP,A)
【文献】特開平05-002242(JP,A)
【文献】特開2016-115926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02-17/17
H01M 50/20-50/298
H04N 23/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物を着脱可能に収容する収容部と、
前記収容部を覆う蓋部材と、
前記蓋部材を回動可能に軸支する軸部材と、
前記蓋部材が前記軸部材を中心として回動が可能な開き位置と回動が規制される閉じ位置との間でスライド可能に前記軸部材を支持するベース部材と、
前記蓋部材を前記開き位置と前記閉じ位置とで止まるよう前記軸部材を付勢する付勢部材と、
前記ベース部材に固定された第1の弾性部材と、
前記ベース部材の一部を覆うように設けられた第2の弾性部材と、を備え、
前記第1の弾性部材は、
前記蓋部材が閉じられた状態で前記蓋部材の内側へ防塵又は防滴の機能を有する第1の部位と、
前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に接触する第2の部位と、を有し、
前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に、前記蓋部材は前記第1の弾性部材に接触した後に前記第2の弾性部材に接触し、
前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材に同じ変形量を与えた場合に、前記第1の弾性部材
の変形
により生じる反力は前記第2の弾性部材
の変形
により生じる反力よりも小さいことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の弾性部材は、前記軸部材の軸方向に沿って2箇所に配置され、
前記軸方向と平行な方向において前記第2の部位の長さは前記第1の部位の長さよりも短く、
前記蓋部材を前記軸部材を中心として回動させて開いた際に前記蓋部材は最初に前記第2の部位の稜線と接触することを特徴とする請求項
1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の弾性部材は、スポンジ材又はゴム材からなり、
前記第2の弾性部材は、前記電子機器の外装を形成する部材であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
撮像手段を更に備え、
前記被収容物は前記撮像手段により撮像された画像データを記録カードであり、
前記収容部は、前記記録カードを着脱可能に収容するカードスロットであることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
被収容物を着脱可能に収容する収容部を開閉する蓋ユニットであって、
前記収容部を覆う蓋部材と、
前記蓋部材を回動可能に軸支する軸部材と、
前記蓋部材が前記軸部材を中心として回動が可能な開き位置と回動が規制される閉じ位置との間でスライド可能に前記軸部材を支持するベース部材と、
前記蓋部材を前記開き位置と前記閉じ位置とで止まるよう前記軸部材を付勢する付勢部材と、
前記ベース部材に固定された第1の弾性部材と、を備え、
前記第1の弾性部材は、
前記蓋部材が閉じられた状態で前記蓋部材の内側へ防塵又は防滴の機能を有する第1の部位と、
前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に接触する第2の部位と、を有し、
前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に、前記蓋部材は前記第1の弾性部材に接触した後に前
記第1の弾性部材とは異なる位置に設けられた第2の弾性部材に接触し、
前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材に同じ変形量を与えた場合に、前記第1の弾性部材
の変形
により生じる反力は前記第2の弾性部材
の変形
により生じる反力よりも小さいことを特徴とする蓋ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び蓋ユニットに関し、特にデジタルカメラ等の電子機器に設けられるスライド式の蓋ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子機器には、外部機器の着脱を可能とするために、機器本体に接続部を備えるものが多くある。外部機器としては、例えば、記録メディア(メモリカード等)や電池等の機器本体の内部に装填されるものや、パーソナルコンピュータやディスプレイ等のようにケーブルを介して接続されるものがある。
【0003】
一般的に、機器本体に設けられた接続部や機器本体の内部に収容された記録メディアや電池等を保護するために、接続開口部又は収容部を覆う蓋部材が開閉可能に設けられる。蓋の開閉機構としては、蓋部材の先端にロック機構を設け、蓋部材を回動軸中心に回動させる方式(例えば特許文献1)や、蓋部材の面と平行な方向にスライドさせた後に蓋部材を回動させる方式(例えば特許文献2)等がある。
【0004】
特許文献2に開示された蓋部材はバネで付勢されており、蓋部材を開けた際に付勢力により勢いがついた状態で開くが、蓋部材は開いた先にある弾性部材(グリップラバー)と衝突することで、衝突音が低減されて開き動作が止まる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-159872号公報
【文献】特開2015-145905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機器本体の軽量化や小型化を実現するために蓋重量の変更や弾性部材の小型化(薄型化)が必要になった場合、蓋部材が開かれて蓋部材が弾性部材に衝突した際に弾性部材が衝撃力を吸収しきれずに衝突音が大きくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、蓋部材を開いた際の衝突音を低減させた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器は、被収容物を着脱可能に収容する収容部と、前記収容部を覆う蓋部材と、前記蓋部材を回動可能に軸支する軸部材と、前記蓋部材が前記軸部材を中心として回動が可能な開き位置と回動が規制される閉じ位置との間でスライド可能に前記軸部材を支持するベース部材と、前記蓋部材を前記開き位置と前記閉じ位置とで止まるよう前記軸部材を付勢する付勢部材と、前記ベース部材に固定された第1の弾性部材と、前記ベース部材の一部を覆うように設けられた第2の弾性部材と、を備え、前記第1の弾性部材は、前記蓋部材が閉じられた状態で前記蓋部材の内側へ防塵又は防滴の機能を有する第1の部位と、前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に接触する第2の部位と、を有し、前記蓋部材を前記開き位置にて前記軸部材を中心として回動させて開いた際に、前記蓋部材は前記第1の弾性部材に接触した後に前記第2の弾性部材に接触し、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材に同じ変形量を与えた場合に、前記第1の弾性部材の変形により生じる反力は前記第2の弾性部材の変形により生じる反力よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子機器に設けられた蓋部材を開いた際の衝突音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラ(カメラ本体)斜視図である。
【
図2】
図1のカメラ本体の内部構造を示す斜視図である。
【
図5】
図1のカメラ本体が備えるカード蓋ユニットの分解斜視図である。
【
図6】
図3(a)に示す矢視S1-S1断面図である。
【
図7】
図1のカメラ本体のカード蓋が配置された部分の側面図及び断面図である。
【
図8】
図7に示すカード蓋を回動させて開いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る電子機器として、デジタルカメラを取り上げることとする。
【0012】
図1(a)はデジタルカメラの本体部1(以下「カメラ本体1」と記す)を斜め前方から見た外観斜視図であり、
図1(b)はカメラ本体1を斜め後方から見た外観斜視図である。カメラ本体1の前面には、各種の不図示のレンズ鏡筒(交換レンズ)の着脱を可能とするマウント部123が設けられている。カメラ本体1の外観にはメインベース部材122に対して配置された外装部材や各種スイッチ等が現れている。
【0013】
カメラ本体1は、表示部101、ファインダ外表示部102、レリーズボタン103、モード切替スイッチ104、端子カバー105、メイン電子ダイヤル106、電源スイッチ107、サブ電子ダイヤル108及びマルチコントローラ109を備える。カメラ本体1はまた、背面電子ダイヤル110、動画ボタン112、AEロックボタン113、拡大ボタン114、再生ボタン115、メニューボタン116、通信端子117、ファインダ118、接眼検知窓119、グリップ部120及びカード蓋300を備える。
【0014】
表示部101は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であり、カメラ本体1の背面に設けられている。表示部101には、画像やカメラ本体1での各種の情報が表示される。表示部101にはタッチパネルが装備されており、表示部101の表示面(操作面)に対するタッチ操作を検出することが可能となっており、タッチ操作に応じた処理や動作が行われるように構成されている。
【0015】
ファインダ外表示部102は、カメラ本体1の上面に設けられており、シャッタ速度や絞り等の撮影条件に関する様々な設定値を表示する。レリーズボタン103は撮影指示を行うための操作手段である。モード切替スイッチ104は、撮影モードを切り替えるための操作手段である。端子カバー105は、カメラ本体1と外部機器とを接続する接続ケーブルが着脱されるコネクタ(不図示)を保護する。
【0016】
メイン電子ダイヤル106は、回転操作によりシャッタ速度や絞り等の設定値変更を可能とする操作手段である。電源スイッチ107は、カメラ本体1の電源のオン/オフを切り替える操作手段である。サブ電子ダイヤル108は、回転操作により選択枠の移動や画像送り等の行うための操作手段である。マルチコントローラ109は、キートップの押し込み操作に加えて、キートップ倒し方向の操作による入力が可能な操作手段である。キートップ倒し方向の操作は、上下左右に加え、斜め方向も含む8方向の操作が可能となっている。マルチコントローラ109は、主に選択枠の移動や各メニューにおける選択等に用いられる。
【0017】
背面電子ダイヤル110は、回転操作により、選択枠の移動や画像送り等を行うための操作手段である。背面電子ダイヤル110は、表示部101に撮影画像を再生させながら直観的に操作しやすく、カメラ本体1の姿勢を変えて構えた場合(例えば、縦に構えた場合)にも操作しやすい位置に配置されている。背面電子ダイヤル110の中央部にはSETボタン111が設けられている。SETボタン111は、押しボタンであり、主に選択項目の決定等に用いられる。動画ボタン112は、動画撮影(記録)の開始や停止の指示に用いられる。
【0018】
AEロックボタン113は、横に3連で並べられたAFスタートボタン、AEロックボタン、AFフレーム選択ボタンで構成されており、撮影待機状態の押下操作に応じて、AF制御やAF範囲の変更、露出固定を可能とする。拡大ボタン114は、L字に配置された拡大/縮小ボタン、情報表示ボタン、クイック設定ボタンから構成される。拡大/縮小ボタンは、ライブビュー表示時や撮影画像再生時における拡大モードのオン/オフの切り替えに用いられる。情報表示ボタンは、表示部101に表示される情報の表示方法の切り替えに用いられる。クイック設定ボタンは、撮影パラメータの項目設定への遷移に用いられる。
【0019】
再生ボタン115は、再生ボタンと消去ボタンで構成される。再生ボタンは、撮影モードと再生モードの切り替えに用いられ、撮影モード中に再生ボタン115が押下されると再生モードに移行し、記録カード5(
図4参照)に記録された画像のうち最新の画像を表示部101に表示させることができる。再生モードで画像を選択して消去ボタンが押下されると、選択された画像が消去される。
【0020】
メニューボタン116は、メニューボタンとレーティングボタンで構成される。メニューボタンが押下されると、各種の設定可能なメニュー画面が表示部101に表示される。ユーザは、表示部101に表示されたメニュー画面に合わせてタッチ操作、マルチコントローラ109、背面電子ダイヤル110及びSETボタン111を用いて、直感的に各種設定を行うことができる。再生モード中にレーティングボタンが押下されると、再生画像のレーティング(ランク付け)が行われる。
【0021】
通信端子117は、マウント部123の内側に設けられており、マウント部123にレンズ鏡筒(不図示)が装着された状態でレンズ鏡筒側の通信端子と接触し、カメラ本体1とレンズ鏡筒とを通信可能に接続する。なお、通信端子117よりも更にカメラ本体1の内部側には、CMOSセンサ(不図示)等の撮像素子が配置されている。マウント部123に装着されたレンズ鏡筒(不図示)を通過した光束は撮像素子に結像する。
【0022】
ファインダ118は、具体的には電子ビューファインダであり、ユーザはファインダ118に接岸してファインダ118を覗きこむことで内部に表示された映像を視認することができる。接眼検知窓119は、ファインダ118にユーザが接眼しているか否かを検知するセンサである。
【0023】
グリップ部120は、ユーザがカメラ本体1を右手で握りやすい形状に形成された把持部であり、前面側から背面側にわたって滑り難いようにゴム材(エラストマ材)からなるフロントラバー121(
図3(a)参照)が設けられている。カード蓋300は、記録カード5を収容する後述のカードスロットを保護するための蓋部材である。カード蓋300は、グリップ部120の側面のユーザの掌が接触する部分に設けられており、カードスロットの形状に起因する制約や記録カード5の挿抜操作性を考慮して、配設位置や大きさが決定されている。なお、カード蓋300は、後述するカード蓋ユニット3の構成要素の1つである。
【0024】
図2は、カメラ本体1の内部構造を示す斜視図であり、カメラ本体1の背面カバー及びカード蓋ユニット3が取り外された状態が示されている。カメラ本体1の内部には、主基板4が配置されている。主基板4には、画像処理IC400が実装されている。画像処理ICは、撮像素子から出力される電気信号を画像データに変換し、生成した画像データを記録カード5に書き込む。
【0025】
画像処理IC400は比較的サイズが大きいため、主基板4上でのレイアウトに制約がある。本実施形態では、主基板4上の画像処理IC400の横に位置するグリップ側に、種類の異なる2つのカードスロットを配置している。具体的には、主基板4の本体背面側に第1のカードスロットが、主基板4の本体前面側に第2のカードスロット402(
図2では、主基板4に隠れて見えない)がそれぞれ取り付けられている。
【0026】
第1のカードスロット401は、被収容物である第1の記録カード501(例えばXQDカードやCFエクスプレスカード等)が着脱可能に収容する収容部である。第2のカードスロット402は、被収容物である第2の記録カード502(例えばSDカード等)が着脱可能に収容する収容部である。但し、記録カード5の種類はこれらに限られず、また、1つのカードスロットのみが設けられていてもよいし、同種の2つのカードスロットが設けられていてもよいし、更にその他の組み合わせのスロットであってもよい。
【0027】
第1のカードスロット401にはイジェクトボタン401aが設けられており、第1のカードスロット401に第1の記録カード501(不図示)が挿入されると、レバー401b所定の方向に回動し、イジェクトボタン401aが図中右側の突出方向へ移動する。突出方向へ移動しているイジェクトボタン401aをカメラ本体1の内部に向けて押し込むと、第1の記録カード501の挿入時の回転方向の逆方向にレバー401bが回動し、第1の記録カード501が外側へ押し出される。なお、第2のカードスロット402は、第2の記録カード502を挿入するとロック機構が作動して収容、保持され、収容状態から第2の記録カード502を再度強く押し込むとロック機構が解除されて押し出される構造となっている。
【0028】
グリップ部120の内側、且つ、主基板4の本体前面側には電池収納部124が設けられている。画像処理IC400の配置が制約されることで、第1のカードスロット401はカメラ本体1の幅方向の位置制約を受ける場合があり、本実施形態では、カード蓋ユニット3を取り外した状態では、電池収納部124の一部が露出する。
【0029】
図3(a)は、カメラ本体1の右側面図(グリップ部120側から見た図)である。
図3(b)は、
図3(a)に示すカメラ本体1からグリップ前面部に配置されたフロントラバー121を取り外した状態を示す側面図である。なお、カメラ本体1が
図1(a)に示すようにファインダ外表示部102が天を向いた状態でカメラ本体1を背面側から見た状態で左右方向を規定している。
【0030】
フロントラバー121が取り外されると、
図3(b)に示すように、カメラ本体1のメインベース部材122が露出し、また、カード蓋ユニット3を構成するカード蓋300、蓋ベース部材301及び内カバー302が露出する。蓋ベース部材301は、カード蓋300を支持する。内カバー302は、グリップ部120が把持された際のフロントラバー121の沈み込みを規制して、カード蓋ユニット3の内部構成部品(蓋ベース部材301を含む)を保護する。メインベース部材122とカード蓋ユニット3の一部は、フロントラバー121の形状に対応して、外観面より一段凹の(一段低い)形状となっている。
【0031】
図4は、カメラ本体1の右側面図であり、カード蓋300が開かれた状態を示している。
図4には、第1のカードスロット401に第1の記録カード501が挿入され、第2のカードスロット402に第2の記録カード502が挿入された状態が示されている。第1のカードスロット401に収容された第1の記録カード501と、第2のカードスロット402に収容された第2の記録カード502と、イジェクトボタン401aとを囲むように、第1のクッション307と第2のクッション308が配置されている。
【0032】
第1のクッション307と第2のクッション308はそれぞれ、防滴構造を形成する弾性部材であり、蓋ベース部材301に設けられた組み付け用の溝に両面テープ等で固定されている。第1のクッション307は、コの字形状を有しており、2箇所の端面が第2のクッション308と接するように蓋ベース部材301に組み込まれている。
【0033】
次に、カード蓋ユニット3の構成について説明する。
図5は、カード蓋ユニット3の分解斜視図である。
図6(a),(b)は、
図3(a)に示す矢視S1-S1での断面図である。
図6(a)はカード蓋300が矢印A方向(スライド閉方向)へスライドさせた状態を示しており、
図6(b)はカード蓋300を矢印C方向(スライド開方向)へスライドさせた状態を示している。カード蓋ユニット3は、カード蓋300、蓋ベース部材301、内カバー302、シャフト303、ストッパ304、クリックプレート305、蓋開きバネ306、第1のクッション307、第2のクッション308及び第3のクッション309を備える。
【0034】
カード蓋300は、樹脂で形成された部品であり、その外観面はグリップ部120の一部を形成する。カード蓋ユニット3は、第1のカードスロット401と第2のカードスロット402へ水(雨滴等)が侵入しないように防滴構造とする必要がある。そこで、カード蓋300の内面側は、第1のカードスロット401と第2のカードスロット402へ水(雨滴等)が侵入しないように防滴機能を有する。具体的には、カード蓋300内面側には防滴リブ300aがコの字型に設けられている。防滴リブ300aの天面はカード蓋300のスライド方向に対して斜めに形成されており、カード蓋300を矢印A方向へスライドさせて閉じる際に、第1のクッション307と第2のクッション308に対して緩やかにチャージされる構成となっている。なお、本実施形態では全体が樹脂で形成されたカード蓋300を用いているが、グリップ性や操作性を向上させるために、外観面にゴム材を貼り付ける等してもよい。
【0035】
蓋ベース部材301は、カード蓋300を支持する土台となる部品であり、樹脂で形成されている。蓋ベース部材301は、二色成型で作られており、部分的にエラストマのリブ301eが設られ、外装の他部品と接触又は押し潰しにより外装合わせ部の防滴を行っている。リブ301eは、蓋ベース部材301の外周に沿って部分的に設けられている。
【0036】
蓋ベース部材301には、カード蓋300に挿通されてカード蓋300を回動可能に軸支する軸部材であるシャフト303をスライド可能に支持する長孔301aが設けられている。蓋ベース部材301は、長孔301aからの浸水を防止する高い防滴性能を実現するため、クリックプレート305の組み込み方向を本体外観面側からとし、蓋ベース部材301は外観側に向かって開口している。蓋ベース部材301の開口部内にはクリックプレート305を固定するためのビス座301fが設けられている。
【0037】
蓋開きバネ306は捩りコイルバネであり、シャフト303に挿通されて組み付けられる。蓋開きバネ306の腕部の一端は蓋ベース部材301に当接し、他端はカード蓋300に当接しており、これによりカード蓋300が常に開く方向に付勢されている。
図6(a)のようにカード蓋300を矢印A方向へスライドさせた状態では、カード蓋300の内側に設けられた突起部(不図示)が蓋ベース部材301の係合部301bに挿入されることにより、カード蓋300の回動開方向への回動が規制される。
【0038】
ストッパ304は、シャフト303のスラスト方向の移動を規制するための樹脂部品と両面テープで構成されている。カード蓋ユニット3を組み立てる際には、蓋ベース部材301にカード蓋300を置いて開き位置(カード蓋300をスライド開方向へ移動させた位置)に合わせた状態で組立孔301cからシャフト303を通す。カード蓋300にシャフト303を挿した後にシャフト303が不用意に抜けないようにカード蓋300にストッパ304が貼り付けられる。組立孔301cは、底面カバー(不図示)の二色成形によって形成されたエラストマのボスが入り込むことで防滴される。
【0039】
クリックプレート305は、バネ性を有する金属板であり、シャフト303を付勢する付勢部材である。クリックプレート305の2箇所のビス座301fのうち一方のビス座は、ビス310によるビス締結によって蓋ベース部材301に固定されている。後述するように、クリックプレート305の2箇所のビス座301fのうち他方のビス座は、ビス311により内カバー302と共締めされる。なお、従来のクリックプレートは蓋部材に固定されるものが多いが、本実施形態では、空きスペースを活用して蓋ベース部材301に固定することでカメラ本体1の幅寸法の増加を抑制している。
【0040】
クリックプレート305においてシャフト303との接触部となる可動端には、閉じ規制谷部305aと開き規制谷部305bが形成されている。閉じ規制谷部305aはシャフト303を開き位置に保持する斜面部からなり、シャフト303が開き位置にある状態ではカード蓋300は回動可能な状態となっている。シャフト303が中間部305cを乗り越えて閉じ位置(カード蓋300をスライド閉方向へ移動させた位置)へスライドすると、シャフト303は開き規制谷部305bの斜面部により付勢される。この状態では、前述したようにカード蓋300の内側に設けられた突起部が蓋ベース部材301の係合部301bに挿入されることにより、カード蓋300の回動が規制されてカード蓋300は開かない。このように、中間部305cを乗り越える係合離脱動作によって、カード蓋300は開き位置(
図6(b)と閉じ位置(
図6(a))の各位置で保持され、スライド時にクリック感が生じる構成となっている。
【0041】
クリックプレート305の中央部は、内カバー302を固定するために蓋ベース部材301に設けられたビス座301gを挿通させるための貫通孔305dが設けられている。クリックプレート305に貫通孔305dを設けることによって、内カバー302をバランスよく固定することが可能になる。
【0042】
内カバー302は、アルミニウム合金の板であり、2箇所のビス座301fの他方にビス311によりクリックプレート305と共締めされ、ビス312によりビス座301gにビス締結されることにより、蓋ベース部材301に固定される。なお、本実施形態では、導電性と強度、重量を考慮してアルミニウム合金の板を内カバー302に使用しているが、強度上の問題が無ければ、その他の導電性材料(金属、樹脂)を使用してもよい。
【0043】
第1のクッション307と第2のクッション308は、第1のカードスロット401と第2のカードスロット402に対応した開口301dを取り囲むように蓋ベース部材301に固定されている。第1のクッション307と第2のクッション308には、例えば、シリコンゴムスポンジを用いることができるが、これに限られず、その他のゴム材やスポンジ材を使用してもよい。カード蓋300が閉じ状態になると、カード蓋300上の防滴リブ300a及びカード蓋端部300b(
図4参照)が第1のクッション307と第2のクッション308に押し付けられ、第1のカードスロット401及び第2のカードスロット402への浸水を防止する防滴構造となっている。なお、本実施形態では、第1のクッション307と第2のクッション308は、組立作業性を向上させるために二体化されているが、一体化された弾性部材であっても同等またはそれ以上の防滴性能を確保することが可能である。
【0044】
第3のクッション309は、蓋ベース部材301のカード蓋300左右の回転軸付近(シャフト303の左右端近傍)に設けられる弾性部材である。第3のクッション309には、第1のクッション307と同じ材質のものを用いることができるが、これに限られるものではない。第3のクッション309は、カード蓋300の回動軸部(シャフト303及びその近傍)への防塵(砂や塵埃の侵入防止)を目的とする第1の部位と、第1の部位から
図6(b)に示す矢印C方向に突出した突出部309a(第2の部位)を有する。突出部309aは、詳細は後述するが、カード蓋300を開いた際にカード蓋300と接触することにより、衝突音を低減させる機能を有する。
【0045】
次に、カード蓋300が閉じ状態から開き状態へ遷移する動作について説明する。
図7(a)は、カード蓋300は閉じ状態となっているカメラ本体1の部分的な側面図である。
図7(b)は、
図7(a)に示す矢視S2-S2での断面図である。
図7(c)は、
図7(b)の状態からカード蓋300をスライド開方向(
図6(b)の矢印C方向)へスライドさせた状態を示す断面図である。
図8(a)は、
図7(b)の状態から蓋開きバネ306のバネ力によってカード蓋300が開く途中の状態を示す断面図である。
図8(b)は、
図8(a)の状態からカード蓋300が更に開いた状態を示す断面図である。
【0046】
図7(b)に示すようにカード蓋300が閉じた状態では、カード蓋300はクリックプレート305により閉じ方向へ付勢されており、蓋ベース部材301に固定された第3のクッション309はカード蓋300に接触した状態となっている。このような状態とすることで、シャフト303等が配置されているカード蓋300の内部の空間に砂や塵埃等の異物が侵入してカード蓋300のスライドが行えなくなる懸念を小さくすることができる。なお、本実施形態では、カード蓋300と第3のクッション309を接触させているが、これらの間の隙間を小さくすることでも同様の効果が期待される。
【0047】
図7(c)に示すようにカード蓋300を開き位置へスライドさせると、蓋ベース部材301に固定された第3のクッション309はカード蓋300から離間した状態となる。また、開き状態では、前述したようにカード蓋300の内側に設けられた突起部が蓋ベース部材301の係合部301b から抜けているため、カード蓋300は蓋開きバネ306の付勢力によって回動開き方向に回動しようとする。
【0048】
カード蓋300が蓋開きバネ306の付勢力によって回動開き方向(
図8では時計まわり方向)に回動すると、
図8(a)に示すように、回動途中でカード蓋300の外観面が第3のクッション309の突出部309aに接触する。このとき、カード蓋300はフロントラバー121とは接触していない。カード蓋300が第3のクッション309の突出部309aに接触すると、カード蓋300の勢い(カード蓋300が第3のクッション309に与える衝撃力)により、第3のクッション309は弾性変形をはじめる。カード蓋300は第3のクッション309の突出部309aの稜線部から徐々に接触していくため、当接初期には反力が小さく、また、第3のクッション309には比較的軟らかいグレードのものが使用されている。そのため、カード蓋300の回動は止まることなく、カード蓋300は回動開き方向へ更に回動する。つまり、回動途中で止まることなく、最大開口位置まで回動しようとする。
【0049】
なお、第3のクッション309の反力は、素材(材質)を変更することで調整することが可能であり、また、第3のクッション309の形状の変更、具体的には、突出部309aの幅方向(シャフト303の軸方向と平行な方向)の寸法を変更することによっても、第3のクッション309の反力を調整することができる。更に、突出部309aの幅方向の寸法変更は、幅方向の端部を切り欠く寸法変更に限らず、中心付近を切り欠く等して接触面積を変更する方法でもよい。
【0050】
カード蓋ユニット3では、カード蓋300が確実に最大位置まで開くように、第3のクッション309は反力はフロントラバー121の反力よりも小さく設定されている。そのため、カード蓋300は、回動開き方向に回動した際に、最初に第3のクッション309に接触し、その後にフロントラバー121に接触する構成となっている。なお、カード蓋300が二段目に接触する部材は、グリップ部120を形成するフロントラバー121に限定されず、カード蓋300を設ける位置によっては他の弾性部材であってもよい。
【0051】
カード蓋300が最大回動位置まで開くと、
図8(b)に示すように、カード蓋300がフロントラバー121に接触する。カード蓋300は、第3のクッション309に接触して開く勢いが衰えた状態でフロントラバー121に接触し、フロントラバー121が弾性変形することで更に回動の勢いが吸収されることで静かに停止する。
【0052】
上記説明の通り、本実施形態に係るカード蓋ユニット3では、防塵及び防滴の機能を確保しながら、カード蓋300を開いた際の衝突音を低減させることが可能になる。
【0053】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る電子機器としてデジタルカメラを取り上げたが、本発明はこれに限られるものではない。また、上記実施形態では、記録カードを格納するカードスロットを覆うカード蓋ユニットについて説明したが、例えば、電池や通信カード等の他の被収容物を収容する収容部の蓋ユニットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 本体部(カメラ本体)
3 カード蓋ユニット
5 記録カード
120 グリップ部
121 フロントラバー
300 カード蓋
301 蓋ベース部材
303 シャフト
305 クリックプレート
306 バネ
307 第1のクッション
308 第2のクッション
309 第3のクッション
401 第1のカードスロット
402 第2のカードスロット