IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
  • 特許-画像形成装置 図10
  • 特許-画像形成装置 図11
  • 特許-画像形成装置 図12
  • 特許-画像形成装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20240213BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240213BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/01 Z
B41J29/38 350
G03G15/00 303
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020059907
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021157140
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】徳間 直人
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134633(JP,A)
【文献】特開2014-219525(JP,A)
【文献】特開2013-054324(JP,A)
【文献】米国特許第05896206(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
H04N 1/40- 1/409
H04N 1/46- 1/62
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/50
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成条件に基づいてシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記シートを排紙トレイ向けて搬送する第1搬送パスと、
前記第1搬送パスから分岐した第2搬送パスと、
前記第2搬送パスに配置され前記シートに形成されたテスト画像を、該シートが搬送される搬送方向に交差する方向へ移動しながら読み取る読取手段と、
記画像形成手段を制御して前記シートに前記テスト画像を形成させ、前記読取手段による前記テスト画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、第1テスト画像が形成された第1シートが前記第1搬送パスと前記第2搬送パスとに跨がった状態で該第1シートの前記第1テスト画像の読み取りを開始する第1モードと、第2テスト画像が形成された第2シートの後端が前記第2搬送パスに位置するように前記第2シートが搬送された状態で該第2シートの前記第2テスト画像の読み取りを開始する第2モードと、を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記テスト画像が形成された前記シートを断続的に停止させた状態で、前記読取手段に該テスト画像を読み取らせることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、前記シートに形成された前記画像を定着させる定着手段をさらに有し、
前記第1搬送パスと前記第2搬送パスは、前記定着手段よりも前記搬送方向の下流側に設けられることを特徴とする、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1シートの前記搬送方向の長さは、所定の長さよりも長く
前記第2シートの前記搬送方向の長さは、前記所定の長さよりも長いことを特徴とする、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、画像データに画像処理を行う画像処理手段を含み、
前記画像形成手段は、前記画像処理が行われた前記画像データに基づいて前記画像を形成し、
前記画像形成条件は、前記画像処理に用いられる階調補正条件であることを特徴とする、
請求項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、画像データに画像処理を行う画像処理手段を含み、
前記画像形成手段は、前記画像処理が行われた前記画像データに基づいて前記画像を形成し、
前記画像形成条件は、前記画像処理に用いられるカラープロファイルであることを特徴とする、
請求項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド画像形成装置の市場が拡大している。例えば、オフセット印刷市場では、電子写真方式の画像形成装置が広がりつつある。また、ラージフォーマット、低イニシャルコスト、超高速等の理由で幅広い市場開拓に成功したインクジェット方式の画像形成装置がある。しかし市場拡大は容易なものではなく、その市場を担ってきた先行の画像形成装置の画像品質(以下、「画質」と呼ぶ。)を維持しなければならない。画質を維持するために、画像形成装置がシートに画像を形成する際の画像形成条件が適宜補正される。
【0003】
画質には、階調性、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)等がある。この中で最も重要なのは色再現性であるといわれている。人間は、経験に基づいた期待する色(特に人肌、空、金属等)についての記憶があり、この記憶の許容範囲を超えた色については違和感をおぼえることがある。このような記憶された色は「記憶色」と呼ばれる。記憶色は、写真等への出力時にその再現性が重要になる。この他にも、印刷されたビジネス文書とモニタとの色の差に違和感を覚えてしまうオフィスユーザ層、コンピュータグラフィックスを扱うグラフィックアーツユーザ層等は、オンデマンド画像形成装置に対する安定性を含んだ色再現性への要求度が高い。
【0004】
色再現性については、同機種間だけではなく、異機種間、他方式の画像形成装置、或いはディスプレイのような画像表示装置との色の違いも問題になる。これら機器同士のカラーマッチングを行うため、ICC(International Color Consortium)プロファイルと呼ばれる多次元LUT(Look Up Table)を作成するソフトウェア及び測色器がある。プロユーザでは、プリンタのICCプロファイルとオフセット印刷機のICCプロファイルとを作成し、カラーマネジメント環境が構築される。これにより、オフセット印刷機で印刷される色にプリンタで出力される色を合わせることが可能となるため、プリンタが、オフセット印刷機の色校正や、小部数の印刷に使用可能になる。
【0005】
オフセット印刷機のICCプロファイルとプリンタのICCプロファイルの内容は、測色器を用いたテスト画像の色測定結果に基づいて、印刷機及びプリンタに依存しない色空間に対応付けて校正されている。テスト画像は、複数のパッチ画像を組み合わせて構成される。色空間は、例えばCIE L*a*b*色空間(CIEは国際照明委員;Commission Internationale d'Eclairage)である。これにより、印刷機で印刷する色とプリンタでプリントする色とを一致させることができる。カラーマネジメントモジュール(CMM)は、これらのICCプロファイルを用いて色変換を行うことによりプリントデータを作成することができる。
【0006】
以上のように測色器、アプリケーション、プロファイル作成ソフトなどのカラーマネジメント環境が整っている。しかし、オフラインの測色器は測色に時間がかかる。また、この環境は、ICCプロファイルの作成、ICCプロファイルのプリンタなどへのアップロード、アップロードしたICCプロファイルの有効利用などの課題があり、一般ユーザには普及していない。測色をより速く行い、簡単にICCプロファイルを作成し、設定作業を自動化するために、プリンタのシート排出部付近にインラインで測色器を搭載している画像形成装置が提供されている。
【0007】
特許文献1、2には、シート上に形成したテスト画像を、光源、回折格子、及び位置検出センサからなるカラーセンサにより検出する画像形成装置が開示される。カラーセンサは、検出精度を向上させるインラインによる測色器構成とされている。カラーセンサによる検出値は、分光反射率に変換し、三刺激値を考慮してCIE L*a*b*色空間における座標情報(L*,a*,b*)に変換可能である。
【0008】
カラーマッチング精度や色の安定性についての指標として、ISO 12647-7記載のカラーマッチング精度規格(IT8.7/4(ISO 12642:1617パッチ)[4.2.2])により、ΔE平均で4.0と規定されている。また、色の安定性の規格である再現性[4.2.3]では各パッチ画像がΔE1.5以下であることが規定されている。このようなスペックを満足するためには、カラーセンサの検出精度はΔE1.0以下であることが望ましい。なお、ΔEは、CIEが定めるL*a*b*色空間内の2点間(L1,a1,b1)、(L2,a2,b2)における、以下の三次元距離の式で表される値である。
ΔE=((L1-L2)^2+(a1-a2)^2+(b1-b2)^2)^1/2
【0009】
電子写真方式の画像形成装置は、連続してシートに画像を形成することにより色味が変動する。連続して画像を形成しながら色味の安定性をチェックする場合には、定期的にサンプルを抜き取って色味チェックが行われる。すなわち、初期から連続して色味が安定しているサンプルを得るためには、ジョブ前の色補正(初期補正)に加えて、定期的な抜き取りチェック(割込補正)を行うのが一般的である。色補正時に必要なパッチ画像の数は、初期補正に必要なパッチ画像数の方が、割込補正に必要なパッチ画像数よりも多いことが一般的である。初期補正には1000パッチ画像程度必要であるのに対して、Japan Standard Color BarやISO12647-7 Control Wedgeで規定される定期的な割込補正では50~80パッチ画像程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-53346号公報
【文献】特開2013-54324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シート上のテスト画像を読み取る場合に時間を要する構成においては、生産性が低下してしまう可能性がある。例えば、図13(a)に示すように、シートが搬送される搬送パス731上にセンサ700が配置される場合、シートS1の測定が完了するまで、シートS2の搬送を停止させる必要がある。これは、測定中のシートS1の後端に後続のシートS2が衝突してしまうことを防止するためである。
【0012】
また、図13(b)に示すように、装置の下流に接続された別の装置へシートを搬送するための第1の搬送パス731の途中でセンサ用の第2の搬送パス732へ分岐する構成においても、シートS1の後端が第1の搬送パス731に残ってしまう。例えば、テスト画像が形成されるシート上の測定領域がシート先端まで及んでいる場合、シートS1をセンサ700の読取位置で停止させようとすると、シートS1の後端が第2の搬送パス732へ進入する前に測定を開始しなければならない。特に測定に時間を要する場合にはシートS1の停止時間も長くなってしまう。この場合には、停止したシートS1に後続のシートS2が衝突してジャムが発生する可能性がある。
【0013】
前述のような後続シートとの衝突を回避するため、図13(c)のようにセンサ700を第2の搬送パス732に配置する構成が考えられる。この構成では、先頭のシートS1と後続のシートS2とが衝突しないように、シートS1の後端が第2の搬送パス732へ搬送されてからシートS1の測定が開始される。この場合、シートS1上の測定領域が狭まって1枚のシートから読み取られるパッチ画像数が少なくなるために、必要なシート枚数が増加してしまう。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、テスト画像を読み取る制御に適した停止位置へシートを停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の画像形成装置は、画像形成条件に基づいてシートに画像を形成する画像形成手段と、前記シートを排紙トレイ向けて搬送する第1搬送パスと、前記第1搬送パスから分岐した第2搬送パスと、前記第2搬送パスに配置され前記シートに形成されたテスト画像を、該シートが搬送される搬送方向に交差する方向へ移動しながら読み取る読取手段と、記画像形成手段を制御して前記シートに前記テスト画像を形成させ、前記読取手段による前記テスト画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成する制御手段と、を有し、前記制御手段は、第1テスト画像が形成された第1シートが前記第1搬送パスと前記第2搬送パスとに跨がった状態で該第1シートの前記第1テスト画像の読み取りを開始する第1モードと、第2テスト画像が形成された第2シートの後端が前記第2搬送パスに位置するように前記第2シートが搬送された状態で該第2シートの前記第2テスト画像の読み取りを開始する第2モードと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テスト画像を読み取る制御に適した停止位置へシートを停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】自動読取装置の構成図。
図3】測色ユニットの構成説明図。
図4】コントローラの説明図。
図5】ICCプロファイルの説明図。
図6】カラーマネジメントの説明図。
図7】(a)~(d)は、テスト画像の読取処理(測色)の説明図。
図8】(a)、(b)は、自動読取装置内のシートの位置の説明図。
図9】色補正を含む画像形成処理を表すフローチャート。
図10】色補正時の条件をまとめた表。
図11】(a)、(b)は、自動読取装置内のシートの位置の説明図。
図12】自動読取装置内のシートの位置の説明図。
図13】(a)~(c)は、カラーセンサを主走査方向に移動させる場合に生じる問題の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0019】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。本実施形態の画像形成装置1は、プリンタ100、自動読取装置400、及び排紙装置600により構成される。プリンタ100は電子写真方式によりシート110に画像を形成する。なお、本実施形態のプリンタは、インクジェットプリンタや昇華型プリンタであってもよい。
【0020】
プリンタ100は、筐体101内に画像形成のためのエンジン部を構成する各機構及び各機構の動作を制御する後述のコントローラを備える。筐体101の上部には操作パネル180が設けられる。操作パネル180はユーザインタフェースであり、ユーザからの指示を受け付ける入力装置と、操作画面等の画面を表示する出力装置と、を備える。エンジン部を構成する各機構は、画像を形成する機構(画像形成機構)、シート110に画像を転写する機構(転写機構)、シート110を給送する機構(給送機構)、及びシート110に画像を定着させる機構(定着機構)を含む。
【0021】
画像形成機構は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応する4つの画像形成部120、121、122、123を備える。画像形成部120、121、122、123は、対応する色の画像を形成する。画像形成部120、121、122、123は、形成する画像の色が異なるのみで、同じ構成である。ここでは画像形成部120の構成について説明し、他の画像形成部121、122、123の構成の説明は省略する。
【0022】
画像形成部120は、感光ドラム105、帯電器111、レーザスキャナ107、及び現像器112を備える。感光ドラム105はドラム形状の感光体であり、ドラム軸を中心に回転する。帯電器111は、回転する感光ドラム105の表面を一様に帯電させる。レーザスキャナ107は、形成する画像を表す画像データに基づいて変調されたレーザ光により、感光ドラム105を走査する。レーザスキャナ107は、半導体レーザから出射されるレーザ光を一方向に走査する発光部108と、発光部108からのレーザ光を感光ドラム105に向けて反射する反射ミラー109と、を備える。なお、レーザスキャナ107が感光ドラム105を走査する方向(図中奥行き方向)が主走査方向である。
【0023】
感光ドラム105は、帯電した後にレーザ光により走査されることで、表面に、画像データに応じた静電潜像が形成される。現像器112は、感光ドラム105に形成された静電潜像を現像剤により現像する。これにより感光ドラム105の表面に静電潜像が顕像化された画像が形成される。画像形成部120の感光ドラム105には、イエローの画像が形成される。画像形成部121の感光ドラム105には、マゼンタの画像が形成される。画像形成部122の感光ドラム105には、シアンの画像が形成される。画像形成部123の感光ドラム105には、ブラックの画像が形成される。なお、感光ドラム105及び現像器112は、筐体101に対して着脱可能である。
【0024】
転写機構は、中間転写体106及び転写ローラ114を備える。中間転写体106は、画像形成部120、121、122、123の各感光ドラム105から、画像が順次重畳して転写される。本実施形態では、中間転写体106は、図中時計回りに回転しており、画像形成部120(イエロー)、画像形成部121(マゼンタ)、画像形成部122(シアン)、画像形成部123(ブラック)の順に画像が転写される。中間転写体106の回転方向で画像形成部123の下流側には、中間転写体106上に形成される画像濃度検出用の画像から画像濃度を検出するための画像濃度検出センサ117が設けられる。
【0025】
中間転写体106に転写された画像は、中間転写体106が回転することで転写ローラ114まで搬送される。中間転写体106の回転方向で転写ローラ114の上流側には、シート110への転写位置を決めるための画像形成開始位置検出センサ115が設けられる。転写ローラ114は、シート110を中間転写体106に圧接すると同時に、中間転写体106上の画像と逆特性のバイアスが印加されることで、中間転写体106からシート110に画像を転写する。
【0026】
給送機構は、シート110を収納する給紙カセット113と、シート110が給送される搬送パスと、シート110を搬送パスに搬送するための各種ローラと、を備える。シート110は、給紙カセット113から給紙され、搬送パスを搬送されながら画像が転写、定着されることで画像が形成され、筐体101の外部に排出される。
【0027】
そのためにシート110は、まず、給紙カセット113から給紙されて、搬送パスを転写ローラ114まで搬送される。給紙カセット113から転写ローラ114までの搬送パスの途中には、シート110の搬送タイミングを調整するための給紙タイミングセンサ116が設けられる。画像形成開始位置検出センサ115が中間転写体106上の画像を検出するタイミングと、給紙タイミングセンサ116がシート110を検出するタイミングとにより、シート110が転写ローラ114へ搬送されるタイミングが調整される。これによりシート110の所定の位置に、中間転写体106から画像が転写される。
【0028】
画像が転写されたシート110は、定着機構へ搬送される。本実施形態の定着機構は、第1定着器150及び第2定着器160を備える。第1定着器150は、シート110に画像を熱圧着するために、シート110を加熱するための定着ローラ151、シート110を定着ローラ151に圧接させるための加圧ベルト152、及び定着完了を検知する定着後センサ153を含む。定着ローラ151は中空ローラであり、内部にヒータ1510を有し、回転することでシート110を搬送するように構成されている。定着後センサ153は、画像定着後のシート110を検出する。
【0029】
第2定着器160は、第1定着器150よりもシート110の搬送方向で下流側に配置され、第1定着器150により定着処理されたシート110上の画像に対するグロスの付加や、定着性の確保に用いられる。第2定着器160は、定着ローラ161、加圧ローラ162、及び定着後センサ163を有する。定着ローラ161は定着ローラ151と同様の構成であり、同様に機能する。加圧ローラ162は、加圧ベルト152と同様に機能する。定着後センサ163は、定着後センサ153と同様に機能する。第2定着器160は、第1定着器150と同様にシート110への定着処理を行う。
【0030】
第2定着器160は、シート110の種類や画像形成処理の内容によっては使用されないことがある。搬送パス130は、第1定着器150で定着処理されたシート110を、第2定着器160を経由せずに搬送するために設けられる。そのために、シート110の搬送方向で第1定着器150の下流側には、シート110を第2定着器160と搬送パス130とのいずれかに誘導するためのフラッパ131が設けられる。
【0031】
第2定着器160と搬送パス130とのいずれか一方を経由したシート110は、そのまま排出される場合と、搬送パス135に搬送される場合とがある。そのために、第2定着器160後の搬送パスと搬送パス130とが合流した後に、フラッパ132が設けられる。フラッパ132は、シート110を搬送パス135とシート110の排出パスとのいずれかに誘導する。排出パスに誘導されたシート110は、画像が形成された面を上に向けて筐体101の外部に排出される。
【0032】
搬送パス135は、シート110の表裏面の反転に用いられる反転パス136までシート110を搬送する経路である。反転パス136には、シート110を検出する反転センサ137が設けられる。反転センサ137がシート110の後端を検出すると、シート110は反転パス136で搬送方向が反転される。搬送方向が反転したシート110は、搬送パス135と反転パス138とのいずれかに搬送される。そのために搬送パス135と反転パス138との分岐にフラッパ133が設けられる。搬送パス135に搬送される場合、シート110は、フラッパ133により搬送パス135に誘導され、表裏面が反転されて(画像が形成された面を下に向けて)筐体101の外部に排出される。反転パス138に搬送される場合、シート110は、フラッパ133により反転パス138に誘導される。反転パス138に誘導されたシート110は、表裏面が反転されて、再度転写ローラ114へ搬送される。これによりシート110は、裏面への画像形成が行われる。
【0033】
(自動読取装置)
図2は、自動読取装置400の構成図である。自動読取装置400は、プリンタ100の後段に設けられ、プリンタ100から排出された画像形成後のシート110を受け付ける。自動読取装置400は、スルーパス431と上パス(読取パス432)との2つの搬送パスを備える。
【0034】
スルーパス431には、搬送ローラ401、402、403、及び排出ローラ404が設けられる。読取パス432には、搬送ローラ405、406、407、及び排出ローラ408が設けられる。読取パス432は、搬送ローラ405と搬送ローラ406との間にシートセンサ421が配置され、搬送ローラ406と搬送ローラ407との間に測色ユニット500が配置される。プリンタ100から送られてきたシート110は、搬送ローラ401、402、403により、スルーパス431と読取パス432との分岐位置へ搬送される。シート110は、分岐位置でスルーパス431と読取パス432とのいずれか一方へ搬送される。そのために自動読取装置400はスルーパス431に沿って搬送されるシート110を読取パス432へ誘導するためのフラッパ422を有する。フラッパ422はシート110の搬送先を切り替える。
【0035】
スルーパス431をそのまま搬送される場合、シート110は、フラッパ422により排出ローラ404側に誘導され、そのまま自動読取装置400の外部(排紙装置600)へ排出される。排紙装置600は、シート110をトレイ601、又はトレイ602へ排出する。なお、排紙装置600は、シート110に綴じ処理や製本処理等の後処理を行う後処理装置であってもよい。
【0036】
読取パス432へ搬送される場合、シート110は、フラッパ422により読取パス432へ誘導される。読取パス432に誘導されたシート110は、測色ユニット500によりテスト画像が読み取られた後に、排出ローラ408により排出トレイ423へ排出される。測色ユニット500は、読取パス432を搬送されるシート110から画像を読み取るインラインセンサである。
【0037】
(測色ユニット)
図3は、測色ユニット500の構成説明図である。測色ユニット500は、色検出センサ551を備える。色検出センサ551は、シート110上に形成されたテスト画像520の分光反射率を検出する測色を行うカラーセンサである。色検出センサ551は、白色LED(Light Emitting Diode)501と、回折格子502と、ラインセンサ503と、演算部504と、メモリ505と、レンズ506と、を備える。
【0038】
白色LED501は、発光部であり、読取パス432を搬送されるシート110に対して光を照射する。回折格子502は、テスト画像520による反射光を波長毎に分光する。レンズ506は、白色LED501から照射される光をテスト画像520に集光し、且つテスト画像520による反射光を回折格子502に集光する。
【0039】
ラインセンサ503は、n画素分の受光素子503-1~503-nを有する受光部である。ラインセンサ503の各受光素子503-1~503-nは、回折格子502により波長毎に分光された反射光を受光する。各受光素子503-1~503-nは、検出結果として、例えば受光した反射光の強度と相関のある電圧(電気信号)を出力する。演算部504は、各受光素子503-1~503-nから出力された電圧の値を8ビットのデジタル信号(光強度値)へ変換する。各受光素子503-1~503-nと波長との対応関係は予め決まっている。そのため、各受光素子503-1~503-nの光強度値は波長ごとの反射光強度(分光データ)に相当する。メモリ505には、各受光素子503-1~503-nが基準部材(不図示)からの反射光を受光したときの波長ごとの光強度が記録されている。
【0040】
演算部504は、テスト画像520に対応する波長ごとの反射光強度P(λ)を基準部材に対応する波長ごとの光強度W(λ)で除算することで、テスト画像520の分光反射率R(λ)を演算する。テスト画像520の分光反射率R(λ)は、メモリ505に格納されると共に、自動読取装置400からプリンタ100のLab演算部303(図4)へ出力される。
【0041】
(コントローラ)
図4は、以上のような構成の画像形成装置1の動作を制御するコントローラの説明図である。プリンタ100には、プリンタ100の動作を制御するプリンタコントローラ103及び画像形成のためのエンジン部の動作を制御するエンジン制御部312が、コントローラとして設けられる。自動読取装置400には、自動読取装置400の動作を制御する制御部451及びプリンタコントローラ103と通信を行う通信部450が設けられる。
【0042】
エンジン制御部312は、定着後センサ153、163、反転センサ137、シート110を搬送する各ローラを駆動する駆動モータ311、及びフラッパ131、132が接続される。エンジン制御部312は、各センサの検出結果に基づいて、駆動モータ311、及びフラッパ131、132を制御することで、エンジン部によるシート110の搬送を行う。また、図示は省略しているが、エンジン制御部312は、画像形成機構、転写機構、給送機構、及び定着機構の動作を制御して、シート110への画像形成を行う。エンジン制御部312は、プリンタコントローラ103により動作が制御される。
【0043】
プリンタコントローラ103には、操作パネル180及び外部I/F308が接続される。外部I/F308は、所定のネットワークを介して外部装置と通信を行う通信インタフェースである。プリンタコントローラ103は、外部I/F308を介して外部装置からジョブなどを受け付けることができる。プリンタコントローラ103の動作の詳細については後述する。
【0044】
自動読取装置400の制御部451は、搬送モータ452、シートセンサ421、フラッパ422、及び測色ユニット500が接続される。制御部451は、通信部450を介してプリンタコントローラ103と通信を行い、プリンタコントローラ103と協働で処理を行う。制御部451は、搬送モータ452により、自動読取装置400内の搬送ローラ401、402、403、排出ローラ404、搬送ローラ405、406、407、及び排出ローラ408の動作を制御して、シート110を搬送する。制御部451は、フラッパ422の動作を制御する。制御部451は、シートセンサ421がシート110を検出したタイミングに応じて測色ユニット500の動作を制御し、シート110上のテスト画像520を検出する。
【0045】
(調整基本処理)
本実施形態の画像形成装置1は、プリンタ100により、シート110に画質を維持するためのテスト画像520を形成する。テスト画像520は、複数のパッチ画像の組み合わせを含む。プリンタ100は、テスト画像520を形成したシート110を自動読取装置400へ搬送する。自動読取装置400は、測色ユニット500(色検出センサ551)によりシート110に形成されたテスト画像520を読み取る。プリンタコントローラ103は、色検出センサ551による検出結果(読取結果)に基づいてフィードバック制御を行い、色再現性などの画質の維持を図る。
【0046】
本実施形態の画像形成装置1は、プロファイルを作成し、作成したプロファイルを用いて画像形成を行う。優れた色再現性を実現するプロファイルとして、本実施形態では、ICCプロファイルを用いる。なお、プロファイルには、CRD(Color Rendering Dictionary)、色分解テーブル、ColorWise内CMYKシミュレーションなども用いることができる。
【0047】
自動読取装置400は、色検出センサ551によりテスト画像520の分光反射率を測定する。画像形成装置1は自動読取装置400から出力されたテスト画像520の分光反射率に基づいて、色変換プロファイルとしてのICCプロファイルを作成する。画像形成装置1のCMM306(図4)は、画像データに基づいて形成される画像の色が目標とする色となるように、作成したICCプロファイルを用いて色変換処理を行う。
【0048】
L*、a*、及びb*の算出式について説明する。色検出センサ551は、白色LED501から照射された光の測定対象物による反射光を、回折格子502で分光し、380[nm]~720[nm]の各波長領域に配置された受光素子503-1~503-nで検出する。本実施形態では、Lab演算部303(図4)が、検出演算精度の向上を図るために、CIEの規定通り、分光反射率を、等色関数によりCIE L*a*b*色空間における座標情報(L*,a*,b*)に変換する。L*,a*,及びb*のデータとテスト画像520の信号値(画像データ)との関係により、色変換プロファイルであるICCプロファイルが作成される。
【0049】
(L*a*b*演算)
以下は、分光反射率からCIE L*a*b*色空間における座標情報(L*,a*,b*)を算出する方法である(ISO13655で規定)。
a.試料の分光反射率R(λ)を求める(380[nm]~780[nm])
b.等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)と標準光分光分布SD50(λ)を用意
なお、等色関数はJIS Z8701 、SD50(λ)はJIS Z8720 で規定され、補助標準イルミナントD50とも呼ばれる。
c.R(λ)×SD50(λ)×x(λ)、R(λ)×SD50(λ)×y(λ)、R(λ)×SD50(λ)×z(λ)
d.各波長積算 Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
e.等色関数y(λ)と標準光分光分布SD50(λ)の積を各波長積算
Σ{SD50(λ)×y(λ)}
f.XYZ算出
X=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Y=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Z=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
g.L*,a*,b*の算出
L*=116×(Y/Yn)^(1/3)-16
a*=500{(X/Xn)^(1/3)-(Y/Yn)^(1/3)}
b*=200{(Y/Yn)^(1/3)-(Z/Zn)^(1/3)} Y/Yn>0.008856のとき
Y/Yn>0.008856のとき:Xn、Yn、Znは標準光三刺激値
(X/Xn)^(1/3)=7.78(X/Xn)^(1/3)+16/116
(Y/Yn)^(1/3)=7.78(Y/Yn)^(1/3)+16/116
(Z/Zn)^(1/3)=7.78(Z/Zn)^(1/3)+16/116
【0050】
(プロファイル作成)
カスタマエンジニアによる部品交換時、カラーマッチング精度が要求されるジョブの前、さらにはデザイン構想段階などで最終出力物の色味が知りたいときなどに、ユーザは操作パネル180によりプロファイルの作成処理を指示する。プリンタコントローラ103は、操作パネル180からの指示に応じてプロファイルを作成する。
【0051】
図4に示すとおり、プリンタコントローラ103は、プロファイル作成部301、Lab演算部303、出力ICCプロファイル格納部305、CMM306、及び入力ICCプロファイル格納部307を備える。
【0052】
プロファイル作成の指示は、操作パネル180からプロファイル作成部301に入力される。プロファイル作成部301は、該指示に応じて、ISO12642テストフォームのCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)色信号(テスト画像)を、プロファイルを介さずに形成するようにエンジン制御部312に信号を送る。同時に、プリンタコントローラ103は、色検出センサ551に測色指示を送信する。エンジン制御部312は、プリンタ100の動作を制御して、シート110にISO12642テストフォーム(テスト画像)を印刷する。テストフォーム(テスト画像)が印刷されたシート110は、テスト画像に含まれる各パッチ画像が色検出センサ551により測色される。測色されたパッチ画像の分光反射率は、プリンタコントローラ103に入力される。分光反射率は、Lab演算部303を介してL*、a*、及びb*のデータに変換され、プロファイル作成部301に入力される。なお、分光反射率は、CIE L*a*b*色空間ではない、機器に依存しない色空間であるCIE1931XYZ表色系における座標情報(X,Y,Z)へ変換されてもよい。
【0053】
プロファイル作成部301は、テストフォームのCMYK色信号と入力されたL*、a*、及びb*のデータとの関係により、出力ICCプロファイルを作成する。プロファイル作成部301は、作成した出力ICCプロファイルを、出力ICCプロファイル格納部305に既に格納されている出力ICCプロファイルと入れ替える。
【0054】
ISO12642テストフォーム(テスト画像)は、一般的な複写機が出力可能な色再現域を網羅するCMYK色信号のパッチ画像を含む。プロファイル作成部301は、それぞれの色信号値と測色したL*、a*、及びb*のデータとの関係から色変換テーブルを作成する。つまりCMYKからL*、a*、及びb*のデータへの変換テーブル(A2Bxタグ)が作成される。この変換テーブルに基づいて、逆変換テーブル(B2Axタグ)が作成される。
【0055】
図5は、ICCプロファイルの説明図である。ICCプロファイルは、ヘッダ、タグ、及びデータからなる。タグには色変換テーブルはもちろん、白色点(Wtpt)やプロファイル内部で定義されているLab値によって表現される色が、ハードコピーの再現可能な再現範囲の内側か外側かを記述する(gamt)タグなども記述される。
【0056】
プリンタコントローラ103は、外部I/F308を介して外部装置からプロファイル作成の指示を受け付けることもある。この場合、プリンタコントローラ103は、外部装置で作成された出力ICCプロファイルを取得し、該ICCプロファイルに対応したアプリケーションにより色変換を行う。
【0057】
(色変換処理)
通常のカラー画像形成における色変換では、外部I/F308を介して入力されたRGB信号値やJapanColorなどの標準印刷CMYK信号値を想定して入力された画像データは、外部入力用の入力ICCプロファイル格納部307に格納される。この場合、外部I/F308にはスキャナなどが外部装置として接続される。入力ICCプロファイル格納部307に格納された画像データは、RGB→L*a*b*或いはCMYK→L*a*b*変換が行われる。入力ICCプロファイル格納部307に格納された画像データは、デバイスに依存した色空間からデバイスに依存しないL*、a*、及びb*のデータに変換される。
【0058】
L*、a*、及びb*のデータに変換された画像データは、CMM306に入力される。図6は、CMM306によるカラーマネジメントの説明図である。CMM306は、外部装置であるスキャナなどの読取色空間と、出力機器としてのプリンタ100の出力色再現範囲とのミスマッチをマッピングするGUMAT変換を行う。また、CMM306は、入力時の光源種と出力物を観察するときの光源種のミスマッチ(色温度設定のミスマッチとも言う)を調整する色変換や、黒文字判定等を行う。これによりL*,a*,及びb*のデータは、L*’、a*’、及びb*’のデータへ変換されて、出力ICCプロファイル格納部305に格納される。上述のように、作成したプロファイルは、出力ICCプロファイル格納部305に格納されており、新たに作成したICCプロファイルによって色変換され、出力機器に依存したCMYK信号へと変換され、出力される。
【0059】
(測色時動作)
図7は、測色ユニット500によるテスト画像の読取処理(測色)の説明図である。シート110には、テスト画像として複数のパッチ画像が形成される。テスト画像は、行方向及び列方向にそれぞれ所定数のパッチ画像を含む。本実施形態では、シート110は、行方向にP1~Pmのm行の測色用のパッチ画像Pが形成される。各行の列方向に、P1-1、P1-2、P1-3・・・P1-nのn個のパッチ画像が形成されている。つまり1枚のシート110にm×n個のパッチ画像が配置されている。mとnとは異なる数でもよく、同じ数であってもよい。
【0060】
測色ユニット500の色検出センサ551は、不図示の移動機構により、シート110の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に移動可能である。色検出センサ551の位置は、不図示の移動位置検知センサにより検知される。シート110は搬送ローラ405、406、407及び不図示の搬送機構により制御される。シート110の位置は、不図示のシート位置検知センサにより検知される。
【0061】
シート110を色検出センサ551の読取位置へ搬送する際には、図7(a)に示すように、色検出センサ551は主走査方向のシート110の領域外に退避して待機する。シート110は、読取位置551Sに先頭行のパッチ画像P1の位置が到達するまで搬送される。パッチ画像P1の位置が読取位置551Sに到達すると、シート110の搬送が停止される。その後、色検出センサ551は、図7(b)に示すように主走査方向に移動しながら、n個のパッチ画像P1-1~P1-nを読み取る。パッチ画像P1-1~P1-nを読み取った色検出センサ551は、図7(c)に示すように主走査方向のシート110の領域外へ移動される。色検出センサ551はシート110の領域外へ到達すると移動が停止される。色検出センサ551はシート110の領域外に待機する。この状態でシート110はパッチ画像P2の位置が読取位置551Sに到達するまで搬送される。パッチ画像P2の位置が読取位置551Sに到達すると、シート110の搬送が停止される。その後、色検出センサ551は、図7(d)に示すように主走査方向に移動しながら、n個のパッチ画像P2-1~P2-nを読み取る。色検出センサ551は、主走査方向にm/2回往復移動しながらシート110上のm×n個のすべてのパッチ画像Pを読み取る。このように色検出センサ551は、主走査方向に往復移動しながら、パッチ画像Pを読み取る。
【0062】
(画像形成、初期補正、割込補正)
図8は、テスト画像読取時の自動読取装置400内のシート110の位置の説明図である。図9は、画像形成装置1による色補正を含む画像形成処理を表すフローチャートである。色補正には画像形成処理の前に行われる初期補正と、画像形成処理の途中に行われる割込補正とがある。ここではシート110がA3サイズの場合の処理について説明する。A3サイズとは、シート110の搬送方向の長さが420[mm]であり、搬送方向に直交する方向の長さが297[mm]である。
【0063】
プリンタコントローラ103は、ユーザにより操作パネル180からジョブが入力されると、初期の色補正を行うか否かを確認する(S801、S802)。初期の色補正を行う場合(S802:Y)、プリンタコントローラ103は、エンジン制御部312によりシート110に初期補正用チャートを印刷する(S803)。初期補正用チャートが印刷されたシート110は、自動読取装置400へ搬送される。シート110は、搬送ローラ401、402、403によりスルーパス431をフラッパ422まで搬送される。フラッパ422は、読取パス432側へシート110を誘導する。
【0064】
シートセンサ421がシート110を検出すると、プリンタコントローラ103は、制御部451により、先頭行のパッチ画像P1が読取位置551Sに到達するまでシート110を搬送させる(S804)。シート110が目標の位置まで到達すると、プリンタコントローラ103は、制御部451にシート110の搬送を停止させる(S805)。図8(a)は、シート110のパッチ画像P1が色検出センサ551の読取位置551Sと同じ搬送方向の位置まで搬送された状態を表す。搬送ローラ401、402、403は、搬送モータ452により駆動されてシート110を搬送する。搬送モータ452は、例えばパルスモータである。制御部451は、シートセンサ421がシート110の先端を検出したタイミングから搬送モータ452のパルス数をカウントし、カウント数が第1の値に達したときに搬送モータ452の回転を停止する。これによって、初期補正用チャートの先頭のパッチ画像の位置が読取位置551Sに到達する第1の停止位置でシート110を停止させることができる。また、シート110の搬送速度が予め決まっている場合にはシートセンサ421がシート110を検出したタイミングから第1の時間が経過したタイミングで搬送モータ452を停止させることで、シート110を第1の停止位置で停止させることができる。
【0065】
図8(a)に示すように、シートセンサ421の検出位置から読取位置551Sと同じ搬送方向の位置までの距離をL1、シート110の先端から先頭行のパッチ画像P1の搬送方向中央部までの距離をLsとする。シート110は、先端がシートセンサ421に検出されてから(L1+Ls)搬送された位置で停止する。このとき、シート110の後端はスルーパス431に残っている。
【0066】
その後、プリンタコントローラ103は、制御部451により測色ユニット500を制御してシート110上の全パッチ画像Pの読み取りを行う(S806)。ステップS806の処理において、測色ユニット500がパッチ画像を1行読み終える度にシート110を所定量ずつ搬送させるように、プリンタコントローラ103は搬送モータ452を制御する。シート110上のパッチ画像Pの読取の完了後に制御部451は、シート110を排出トレイ423へ排出する(S807)。プリンタコントローラ103は、S803~S807の処理を初期補正用チャートの最終紙まで繰り返し実行する(S808:N)。なお、初期の色補正は1000パッチ画像程度を要するため、A3サイズのシート110を使用した場合でも、5~6枚、又は10枚程度のシート110が必要となる。
【0067】
初期の色補正が完了すると(S808:Y)、プリンタコントローラ103は、ジョブに基づき画像をシート110へ形成し始める(S809)。なお、初期の色補正を行わない場合(S802:N)、プリンタコントローラ103は、S803~S808の処理を行わずに、処理をステップS809へ移行させる。これによって、初期の色補正が行われない場合には、画像形成装置1はジョブに基づき画像をシート110へ形成し始める。
【0068】
プリンタコントローラ103は、ジョブに基づいて複数のシート110に画像が形成される場合、予め設定されたX枚のシート110への画像形成を行った後、割込補正を行うか否かを判断する(S810、S811)。X枚はユーザによって自由に設定できる形態が好ましい。これは、色味変動に対する許容値が各ユーザによって異なるためである。色味変動を最小限に抑えたいユーザはX枚を少なく設定して高頻度で割込補正を行わせ、多少の変動を許容できるユーザは低頻度で割込補正を行わせる。
【0069】
割込補正を行わない場合(S811:N)、プリンタコントローラ103は、(X+1)枚目以降のシート110へジョブに基づき画像を形成する。そして、プリンタコントローラ103は、ジョブに基づき全てのシートに画像を形成したか否かを判定する(S824)。ジョブに基づくすべてのシートへの画像形成が完了していない場合(S824:N)、プリンタコントローラ103は処理をステップS811へ移行させる。また、ジョブに基づくすべてのシートへの画像形成が完了した場合(S824:Y)、プリンタコントローラ103は処理を終了させる。
【0070】
また、割込補正を行う場合(S811:Y)、プリンタコントローラ103は、(X+1)枚目のシート110に割込補正用チャートを印刷する(S812)。つまり、(X+1)枚目のシート110には、ジョブに基づく画像が形成されずに、割込補正用チャートが印刷される。なお、ステップS812において印刷される割込補正用チャートのテスト画像(パッチ画像)は初期補正用チャートのテスト画像(パッチ画像)と異なる。割込補正用チャートが印刷されたシート110は、自動読取装置400へ搬送される。シート110は、搬送ローラ401、402、403によりスルーパス431をフラッパ422まで搬送される。フラッパ422は、読取パス432側へシート110を誘導する。
【0071】
シートセンサ421がシート110を検出すると、プリンタコントローラ103は、制御部451により、シート110を、後端が読取パス432に進入した位置まで搬送して停止させる(S813、S814)。図8(b)は、シート110の後端が読取パス432まで搬送された状態を表す。搬送ローラ401、402、403は、搬送モータ452により駆動されてシート110を搬送する。搬送モータ452は、例えばパルスモータである。制御部451は、シートセンサ421がシート110の先端を検出したタイミングから搬送モータ452のパルス数をカウントし、カウント数が第2の値に達したときに搬送モータ452の回転を停止する。これによって、割込補正用チャートの先頭のパッチ画像の位置が読取位置551Sに到達する第2の停止位置でシート110を停止させることができる。第2の値は第1の値より多い。また、シート110の搬送速度が予め決まっている場合にはシートセンサ421がシート110を検出したタイミングから第2の時間が経過したタイミングで搬送モータ452を停止させることで、シート110を第2の停止位置で停止させることができる。第2の時間は第1の時間より長い。
【0072】
第2の停止位置は、シートセンサ421の検出位置から読取位置551Sまでの距離L1、シート110の先端から先頭行のパッチ画像P1の搬送方向中央部までの距離をLi1、として、シートセンサ421の検知位置から(L1+Li1)の距離である。シート110の先端から先頭行のパッチ画像までの距離Li1は初期補正用チャートのシート110の先端から先頭行のパッチ画像までの距離Lsよりも長く設定される。そのために割込補正用チャートの1枚あたりのパッチ画像の数は初期補正用チャートのパッチ画像の数よりも少ない。しかし、上述したように割込補正用チャートのパッチ画像の数が初期補正用チャートのパッチ画像の数よりも少なくても補正は十分可能である。
【0073】
プリンタコントローラ103は、制御部451により測色ユニット500による割込補正用チャートの全パッチ画像Pの読取を行う(S815)。読取が完了後に制御部451は、シート110を排出トレイ423へ排出する(S819)。
【0074】
図8(b)に示すように、割込補正時の第2の停止位置では、シート110の後端はスルーパス431から退避される。そのためにスルーパス431への次のシート110の搬送が可能な状態である。そこで、プリンタコントローラ103は、ジョブに基づく画像形成の途中で割込補正用チャートが(X+1)枚目のシート110へ形成された場合、割込補正用チャートに対する読取が開始される前に(X+2)枚目のシートにジョブに基づき画像を形成する。(X+2)枚目のシートは、画像形成後にスルーパス431を通過して下流の排紙装置600へ排出される。引き続きプリンタコントローラ103は、ジョブに応じた画像を(X+3)枚目、(X+4)枚目…(X+Y)枚目のシートに形成する(S816、S817、S818)。プリンタコントローラ103は、割込み補正用チャートがシート110に形成された直後に処理をステップS824へ移行させる。
【0075】
このように、割込補正時には、割込補正用チャートが印刷されたシート110の後端がスルーパス431に残らないように、割込補正用チャートが印刷されたシート110は第2の停止位置で停止される。そのために割込補正用チャートのテスト画像を読み取る間に、ジョブに応じた印刷処理が可能となる。割込補正用チャートのテスト画像の読取中にスルーパス431を通過するシートの枚数は、テスト画像の読取時間及び印刷生産性による。例えばA3のシートで毎分50枚印刷する画像形成装置1は、測色ユニット500によるテスト画像の読取時間が30秒の場合に、テスト画像の読み取り中に25枚の印刷が可能となる。そのために割込補正を行う場合であっても生産性の低下が抑制される。
【0076】
図10は、本実施形態の色補正時の条件をまとめた表である。この表は、初期補正時と割込補正時のパッチ画像数、パッチ画像の配置、シートの停止位置、及び停止時のシートの後端の位置を含む。
【0077】
上述の通り初期補正時の方がパッチ画像数が多く、シート1枚当たりのパッチ画像数も多い。搬送方向において第1の停止位置で停止されたシート110の先端の位置は、搬送方向において第2の停止位置で停止されたシート110の先端の位置よりも上流に位置する。そのため、初期補正用チャートの1枚あたりのパッチ画像数も、割込み補正用チャートの1枚あたりのパッチ画像数より多い。停止時のシートの後端位置は、初期補正時はスルーパス431に残っているが、割込補正時は読取パス432に到達している。そのためにスルーパス431は、割込補正時に次のシートの搬送が可能となっている。このように設定することで、精度良く初期補正を行い、且つジョブ中の割込補正によって色味が安定した成果物を連続的に提供可能である。また、割込補正中の印刷停止による生産性低下の抑制することが可能である。
【0078】
・ノビサイズ(SRA3サイズ)のシートの場合
以上、シートがA3サイズの場合の処理について説明した。続いて、いわゆるノビサイズのシートの場合の処理について説明する。図11は、A3サイズよりも長いSRA3サイズのシートを用いる場合の自動読取装置400内のシート110の位置の説明図である。SRA3サイズのシートの種類はA3サイズのシートの種類と異なる。
【0079】
初期補正時にはシート110は、先端の位置がA3の場合と同じく、シートセンサ421の検知位置から(L1+Ls)の距離で停止する。すなわち、シート110の先端SdがA3とSRA3とで同じ位置で停止し、シート110の後端SuがA3の場合よりもSRA3の場合の方が上流となる。
割込補正時にはシート110は、後端の位置がA3の場合と同じになるように、シートセンサ421の検知位置から(L1+Li2)の距離で停止する。すなわち、シート110の後端SuがA3とSRA3とで同じ位置で停止し、シート110の先端SdがA3の場合よりもSRA3の場合の方が下流となる。
【0080】
なお、割込補正に必要なパッチ画像数は同じであるため、SRA3の場合のLi2とA3の場合のLi1との長さ差は、シートの長さの差(=30mm)である。このように、搬送方向のシートの長さが異なる場合、初期補正時はシートの搬送停止時の先端位置を統一(先端基準)し、割込補正時はシート110の搬送停止時の後端位置を統一(後端基準)している。初期補正は先端基準、割込補正は後端基準というように、基準位置を設けることで、搬送制御の簡略化や、チャートの簡略化が実現される。
【0081】
・A4サイズのシートの場合
図12は、A4サイズのシートを用いる場合の自動読取装置400内のシート110の位置の説明図である。A4サイズのシートは、A3サイズのシートよりも搬送方向の長さが短くなる。A4サイズのシートの種類はA3サイズのシートの種類と異なる。シート110の先端が初期補正時の停止位置(シートセンサ421から(L1+Ls)の位置)で停止しても後端がスルーパス431に残らない場合、シート110は、初期補正と割込補正とで同じ位置を停止位置としてもよい。つまり、フラッパ422から読取位置551Sまでの距離を長くすることで、すべてのサイズのシートを同じ位置で停止させて制御することが可能となる。
【0082】
このようにシート110の搬送方向の長さが所定長以上の場合には、初期補正時にシート110の搬送方向の後端がスルーパス431に残る位置でシート110の搬送が停止され、測色ユニット500によるテスト画像の読み取りが開始される。割込補正時にシート110の搬送方向の後端がスルーパス431に残らない位置でシート110の搬送が停止され、測色ユニット500によるテスト画像の読み取りが開始される。シート110の搬送方向の長さが所定長未満の場合には、初期補正時、割込補正時ともに、シート110の搬送方向の後端がスルーパス431に残らない位置でシート110の搬送が停止され、測色ユニット500によるテスト画像の読み取りが開始される。所定長は、スルーパス431と読取パス432との分岐点から色検出センサ551の読取位置551Sまでの距離に応じて決まる。シート110の搬送方向の長さがスルーパス431と読取パス432との分岐点から色検出センサ551の読取位置551Sまでの距離以上であれば、シート110の搬送方向の長さが所定長以上となる。シート110の搬送方向の長さがスルーパス431と読取パス432との分岐点から色検出センサ551の読取位置551Sまでの距離未満であれば、シート110の搬送方向の長さが所定長未満となる。
【0083】
また、本実施形態の画像形成装置1は、テスト画像の読取結果に基づき出力ICCプロファイルを生成しているが、例えば、画像データを変換するための階調補正テーブルを生成する構成であってもよい。階調補正テーブルは、シート110に形成される画像の階調特性を理想的な階調特性に補正するため、画像データの画像信号の入力値を出力値へ変換する1次元のルックアップテーブルである。この構成とする場合、プリンタコントローラ103は、自動読取装置400の色検出センサ551によるテスト画像の読取結果に基づいて階調特性を決定し、当該階調特性が理想的な階調特性となるように、階調補正テーブルを生成する。なお、画像形成装置1は、階調補正テーブルに基づいて変換された画像データに基づいてシート110に画像を形成する。階調補正テーブルが生成される場合にも、初期補正において必要なパッチ画像数が割込補正において必要なパッチ画像数より多くなる。そこで、A3サイズのシート110に初期補正用チャートが印刷される場合、初期補正用チャートが印刷されたシート110の後端がスルーパス731に残るようにテスト画像がシート110上に配置される。一方、A3サイズのシート110に割込補正用チャートが印刷される場合、割込補正用チャートが印刷されたシート110の後端がスルーパス731に残らないようにテスト画像がシート110上に配置される。そして、初期補正用チャートが印刷されたシート110の停止位置は、割込補正用チャートが印刷されたシート110の停止位置よりも搬送方向の上流側になる。初期補正用チャートのテスト画像(パッチ画像)は割込補正用チャートのテスト画像(パッチ画像)と異なる。
【0084】
出力ICCプロファイルも、階調補正テーブルも画像データを変換するための変換条件である。画像形成装置1は変換条件に基づいて変換された画像データに基づいてシート110に画像を形成する。また、出力ICCプロファイルも、階調補正テーブルも、画像形成装置1がシートに画像を形成するための画像形成条件に含まれる。
【0085】
以上説明した本実施形態の画像形成装置1は、初期補正では、シート110の後端がスルーパス431に残る位置でシート110の搬送を停止して、シート110の先端から全域のテスト画像を読み取り可能である。これにより、初期補正時に必要なシート110の枚数を削減することができる。割込補正時は、シート110の後端がスルーパス431に残らない位置でシート110の搬送を停止するため、スルーパス431には次のシートの搬送が可能である。これにより、割込補正時の生産性の低下を抑制することができる。このように、本実施形態の画像形成装置1は、色再現性を保って画質を維持しつつ、初期補正時の枚数削減と、割込補正時の生産性向上の両立が可能できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13