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特許7434029電子写真用ベルト及び電子写真画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】電子写真用ベルト及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240213BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
G03G21/00 318
G03G21/16 180
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020061524
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2020184064
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019086279
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】内田 光一
(72)【発明者】
【氏名】豊則 祐嗣
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125187(JP,A)
【文献】特開2013-044878(JP,A)
【文献】特開2012-018250(JP,A)
【文献】特開2013-080121(JP,A)
【文献】特開2012-003061(JP,A)
【文献】特開2019-191513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の電子写真用ベルトであって、
外周面に複数本の溝を有し、
該複数本の溝の各々が、該電子写真用ベルトの周方向に延びており、
該電子写真用ベルトの外周面における該溝が形成されている溝形成領域を、該溝形成領域の幅方向の全幅を3等分して3つの領域に分割したときの中央の領域に含まれる溝の深さの平均値をDmとし、両端部の領域に含まれる溝の深さの平均値を各々De1及びDe2としたとき、Dm、De1及びDe2が下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする電子写真用ベルト:
Dm<De1 (1)
Dm<De2 (2)。
【請求項2】
前記溝の深さが、前記電子写真用ベルトの幅方向の端部に近い溝ほど深い、請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項3】
前記電子写真用ベルトの幅方向の溝ピッチが1μm以上50μm以下の範囲内である請求項1または2に記載の電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記電子写真用ベルトの幅方向の溝ピッチが一定である請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項5】
前記溝の該電子写真用ベルトの幅方向の断面における形状がV字状である請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項6】
前記溝の深さが0.2μm以上3.0μm以下の範囲内である請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項7】
前記両端部の領域における溝の幅の平均値を各々We1及びWe2とし、前記中央の領域における溝の幅の平均値をWmとしたとき、Wm、We1及びWe2が下記式(3)及び下記式(4)を満たす請求項1~6のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト:
Wm<We1 (3)
Wm<We2 (4)。
【請求項8】
前記電子写真用ベルトが中間転写ベルトである請求項1~7のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子写真用ベルトと、該電子写真用ベルトの外周面上に接して配置されているクリーニング部材とを有することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項10】
前記電子写真用ベルトが中間転写ベルトである請求項9に記載の電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複写機やプリンター等の電子写真画像形成装置などに用いられる、搬送転写ベルトや中間転写ベルトの如き電子写真用ベルト、及び、電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置では、転写材を搬送する搬送転写ベルトや、トナー像を一時的に転写保持する中間転写ベルトとして、無端状の電子写真用ベルトが用いられている。
二次転写後にも電子写真用ベルトの外表面上に残留したトナーは、通常、クリーニングブレードの如きクリーニング部材を用いてクリーニングされる。
【0003】
特許文献1には、中間転写体から転写材へのトナーの転写効率の向上を図りつつ、クリーニング部材の摩耗の抑制を図ることのできる画像形成装置に用いられる中間転写体として、表面に、該中間転写ベルトの移動方向に沿って溝が形成されてなる中間転写体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-125187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に係る中間転写ベルトの、クリーニングブレードによる外表面のクリーニング性について検討した。その結果、長期の使用によって、中間転写ベルトの周方向に直交する方向(以降、「幅方向」という場合がある)の両端部と中央部とでクリーニングムラが生じることがあった。
【0006】
本開示の一態様は、長期の使用によってもクリーニングブレードによる幅方向のクリーニングムラが生じにくい電子写真用ベルトの提供に向けたものである。
また、本開示の他の態様は、長期に亘って安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、無端状の電子写真用ベルトであって、外周面に複数本の溝を有し、
該複数本の溝の各々が、該電子写真用ベルトの周方向に延びており、
該電子写真用ベルトの外周面における該溝が形成されている溝形成領域を、該溝形成領域の幅方向の全幅を3等分して3つの領域に分割したときの中央の領域に含まれる溝の深さの平均値をDmとし、両端部の領域に含まれる溝の深さの平均値を各々De1及びDe2としたとき、Dm、De1及びDe2が下記式(1)及び式(2)を満たす電子写真用ベルトが提供される:
Dm<De1 (1)
Dm<De2 (2)。
また、本開示の他の態様によれば、上記の電子写真用ベルトと、該電子写真用ベルトの外周面上に接して配置されているクリーニング部材とを有する電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、長期の使用によってもクリーニングブレードによる幅方向のクリーニングムラが生じにくい電子写真用ベルトを得ることができる。また、本開示の他の態様によれば、長期に亘って安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の他の態様に係る電子写真画像形成装置の一例を示す模式的な断面図である。
図2】ベルトクリーニング装置の近傍を示す模式的な断面図である。
図3】本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトの一例を示す模式的な断面図である。
図4】本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトの一例を示す模式的な断面図である。
図5】本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトの一例を示す模式的な断面図である。
図6】延伸ブロー成形機を用いた中間転写ベルト基層の製造方法の一例を示す概略図であり、(a)はプリフォームの加熱工程を示す図、(b)はプリフォームの延伸工程を示す図である。
図7】中間転写ベルトの表面に溝を形成するインプリント加工装置の構成を示す概略図である。
図8】比較例に係る中間転写ベルトの模式的な断面図である。
図9】従来の中間転写ベルトの表面へのクリーニングブレードの当接状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、特許文献1に係る中間転写ベルトが、長期の使用によって、幅方向両端部と中央部とでクリーニングムラが生じる理由を検討した。
その結果、長期の使用によって、中間転写ベルトの幅方向両端の表面が摩耗したことにより、表面の溝が浅くなった結果、中間転写ベルトの表面とクリーニングブレードとの摩擦力が上昇していることを見出した。すなわち、図9に示すように、電子写真画像形成装置内においては、クリーニングブレード21は、幅方向両端に配置された2つのバネ18によって、中間転写ベルト8の表面に押圧されている。そのため、中間転写ベルト8の表面へのクリーニングブレードの押圧力は、幅方向中央部と比較して、両端において高い。その結果、長期の使用によって、中間転写ベルトの両端部表面は、中央部表面よりも相対的に早く削れる。そのため、両端部における溝の深さが、中央部における溝の深さよりも早く浅くなり、その結果、両端部の摩擦力が高くなり、幅方向中央部と両端部とのクリーニング性に差が生じたものと考えられる。
そこで、本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトにおいては、電子写真用ベルトの外周面における溝が形成されている溝形成領域を、溝形成領域の幅方向の全幅を3等分して3つの領域に分割し、中央の領域に含まれる溝の深さの平均値をDmとし、両端部の領域に含まれる溝の深さの平均値を各々De1及びDe2としたとき、Dm、De1及びDe2が、下記式(1)、及び式(2)を満たすようにした:
Dm<De1 (1)
Dm<De2 (2)。
このような構成を採用することで、両端部における溝が、長期の使用によっても中央部の溝と比較して早く削れることを防ぐことができ、クリーニングムラの発生を抑えることができる。なお、本発明において、幅方向とは、電子写真用ベルトの周方向に直交する方向である。
【0011】
以下、本開示に係る電子写真用ベルトの一態様としての中間転写ベルト、その製造方法及び本開示の他の態様に係る電子写真画像形成装置の一例を図面に則してさらに詳しく説明する。ただし、本開示は以下の説明における一例に限定されるものではない。
【0012】
1.中間転写ベルト
本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトの一例としての中間転写ベルト8の構成及び製造方法について説明する。図3は、中間転写ベルト8の周方向に略直交する方向の切断面の部分拡大図である。中間転写ベルト8は、基層81と表層82との2層からなる無端状のベルト部材である。基層81の厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下が特に好ましい。表層82の厚みは0.5μm以上5μm以下が好ましく、1μm以上3μm以下が特に好ましい。
【0013】
基層81の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。
【0014】
また基層81の製造方法としては、これらの熱可塑性樹脂中に、導電材料などを熔融混練し、次いで、インフレーション成形、円筒押出し成形、ブロー成形などの成形方法を適宜選択して基層81を得ることができる。
【0015】
表層82の材料には、中間転写ベルト8の表面の硬度を高め、耐久性(耐摩耗性)を向上させる観点から、熱、または光(紫外線など)や電子線などのエネルギー線の照射によって硬化する、硬化性材料を好適に用いることができる。特に、硬化性の高い紫外線や電子線などの照射によって硬化する硬化性材料が好ましい。硬化性材料のうち、有機材料としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フッ素系硬化性樹脂(含フッ素硬化性樹脂)などの硬化性樹脂が挙げられる。
【0016】
表層82を基層81上に形成する方法としては、例えば、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、リングコートなどを挙げることができる。これらの方法から適宜選択して用いることで、所望の膜厚の表層82を得ることができる。
【0017】
中間転写ベルト8は、外周面に複数本の溝84を有し、複数本の溝84の各々が、中間転写ベルトの周方向に延びている。すなわち、中間転写ベルトの周方向に延びる複数本の溝84が、表層82の外表面で構成される。例えば、中間転写ベルト8の外表面の、中間転写ベルトの周方向に延びている複数本の溝84のピッチ(以降、「溝ピッチ」ともいう)は、幅方向に一定であることが好ましい。
また、溝84の形状はクリーニングブレード21及びトナーとの組み合わせで好適に設定されるが、溝ピッチをピッチIとしたとき、ピッチIが1μm以上50μm以下の範囲内にあることが好ましい。
さらに、中間転写ベルトの幅方向における溝84の開口の長さを幅Wとしたとき、幅Wが0.10μm以上3.0μm以下であることが好ましく、深さDは0.2μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0018】
中間転写ベルト8の外周面は、クリーニングブレード21が当接し、クリーニングブレード21によってクリーニングされる。中間転写ベルト8の外周面に対するクリーニングブレード21の押圧力は、長手方向(中間転写ベルト8の幅方向)中央部よりも加圧バネ18が配置された端部で高くなる傾向にある。そこで、押圧力が端部で高くなる傾向に合わせて、中間転写ベルト8の外表面に構成される溝の深さを長手方向中央部よりも端部にかけて深くし、摩耗による耐久性を高めることが好ましい。あるいは、クリーニングブレード21の押圧力が高くなる端部だけで溝の深さを深くすることも好ましい。
【0019】
中間転写ベルト8においては、溝84の深さを端部で深くする手段としては例えば、型を当接することで型表面の形状を転写する、遠心成形法、注型法、及びインプリント法が挙げられる。中でも、型表面を所望の形状にするか、弾性変形や熱膨張を利用して形状を転写することで所望の溝84の形状を得ることができるインプリント法が特に望ましい。
溝84の深さDは、中間転写ベルト8の周方向に直交する方向の端部に近い溝84ほど深いことが好ましい。すなわち、溝の深さが、電子写真用ベルトの幅方向の端部に近い溝ほど深いことが好ましい。また、溝84の深さは、0.2μm以上3.0μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0020】
また、中間転写ベルト8の外周面における溝84が形成されている溝形成領域を、溝形成領域の全幅を3等分して3つの領域に分割する。このときの中央の領域に含まれる溝84の幅の平均値をWmとし、両端部の領域に含まれる溝84の幅の平均値を各々We1、及びWe2としたとき、Wm、We1、及びWe2が、下記式(3)、及び下記式(4)を満たすことが好ましい。
Wm<We1 (3)
Wm<We2 (4)
すなわち、端部の領域における溝84の幅の平均値が、中央の領域における溝84の幅の平均値よりも大きいことが好ましい。特に、溝84の幅Wは、中間転写ベルト8の幅方向の端部に近い溝84ほど大きいことが好ましい。
【0021】
溝84は、中間転写ベルト8に対してクリーニングブレード21が当接する領域Wを含んで形成されていることが好ましい。
中間転写ベルト8とクリーニングブレード21との摺動特性は当接幅全幅にわたって均一であることが望ましい。そのため、溝84の中間転写ベルト8の幅方向の断面形状がV字状であることがさらに好ましい。溝84の幅方向の断面形状がV字状であることで溝深さが深いほど溝幅が広くなる。つまり、溝深さが深い中間転写ベルト8の端部ほどクリーニングブレード21との接触面積が小さくなる。これにより、摩擦力を端部にかけて低減することができ、クリーニングブレード21の押圧特性を相殺して均一な摺動特性となることが特に好ましい。断面形状がV字状であるということは、溝84は底部に向かって幅が狭くなっていればよく、溝84の断面形状が三角形状や台形状であってもよい。
【0022】
2.電子写真画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本開示の他の態様に係る電子写真画像形成装置の一例としての電子写真画像形成装置100について、概略構成を示す模式的な断面図である。電子写真画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像の形成が可能な中間転写方式を採用したタンデム型のレーザービームプリンターである。
【0023】
電子写真画像形成装置100は、一定の間隔をおいて一列に配置された4つの画像形成部Y、M、C、Kを有する。各画像形成部Y、M、C、Kは、それぞれイエロー(Y)マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する。なお、電子写真画像形成装置100では、各画像形成部Y、M、C、Kの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除けば、実質的に同じである。
【0024】
画像形成部Y、M、C、Kは、像担持体としてのドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1Y、1M、1C、1Kを有する。この感光ドラム1Y、1M、1C、1Kは、OPC感光ドラムであり、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。まず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kが配置されている。次に、露光手段としての露光装置3Y、3M、3C、3Kが配置されている。次に、現像手段としての現像装置4Y、4M、4C、4Kが配置されている。次に、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。次に、像担持体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6Y、6M、6C、6Kが配置されている。
【0025】
現像装置4Y、4M、4C、4Kは、現像剤として非磁性一成分現像剤を収容しており、現像剤担持体としての現像スリーブ41Y、41M、41C、41K、現像剤規制手段としての現像剤塗布ブレードなどを有する。感光ドラム1Y、1M、1C、1K、帯電ローラ2Y、2M、2C、2K、現像装置4Y、4M、4C、4K及びドラムクリーニング装置6Y、6M、6C、6Kは、一体的にプロセスカートリッジ7Y、7M、7C、7Kを構成している。プロセスカートリッジ7Y、7M、7C、7Kは電子写真画像形成装置100の装置本体に着脱可能である。また、露光装置3Y、3M、3C、3Kは、レーザー光を多面鏡によって走査させるスキャナユニットで構成されており、画像信号に基づいて変調された走査ビームを感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に照射する。
【0026】
また、電子写真画像形成装置100は、上で述べた本開示の一態様に係る無端状の電子写真用ベルトの一例としての中間転写ベルト8を有する。
中間転写ベルト8は、各画像形成部Y、M、C、Kの感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの全てと当接するように配置されている。中間転写ベルト8は、駆動ローラ9、テンションローラ10及び二次転写対向ローラ11の3個のローラ(張架ローラ)により支持されており、所定のテンションが維持されている。そして、駆動ローラ9が回転駆動されることによって、中間転写ベルト8は、図中矢印R2方向(ベルト搬送方向)に移動(回転)する。
電子写真画像形成装置100では、中間転写ベルト8は、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kとの対向部において、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対して順方向に略同速度で移動する。中間転写ベルト8の内周面側において、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対向する位置には、上述の一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kがそれぞれ配置されている。
一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kは、中間転写ベルト8を介して感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに所定の圧力で付勢(押圧)されている。そして、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kは、中間転写ベルト8と感光ドラム1Y、1M、1C、1Kとが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1Y、N1M、N1C、N1Kを形成している。
また、中間転写ベルト8の外周面側において、二次転写対向ローラ11と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ15が配置されている。二次転写ローラ15は、中間転写ベルト8を介して二次転写対向ローラ11に所定の圧力で付勢(押圧)されており、中間転写ベルト8と二次転写ローラ15とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成している。また、中間転写ベルト8の外周面側において、二次転写対向ローラ11に対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置12が配置されている。上述の3個のローラ9、10、11により支持された中間転写ベルト8と、ベルトクリーニング装置12とがユニット化されて、電子写真画像形成装置100の装置本体に着脱可能な中間転写ベルトユニット13が構成されている。
【0027】
画像形成動作が開始されると、各感光ドラム1Y、1M、1C、1K、中間転写ベルト8は、所定のプロセススピード(周速)で、それぞれ図中矢印R1、R2方向に回転を始める。回転する感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面は、帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kにより所定の極性(電子写真画像形成装置100では負極性)に略一様に帯電させられる。このとき帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kには、図示しない帯電バイアス印加手段としての帯電電源から所定の帯電バイアスが印加される。
次に、帯電した感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面が、各画像形成部Y、M、C、Kに対応した画像情報に応じて、露光装置3Y、3M、3C、3Kからの走査ビームによって露光される。これにより感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面に、該画像情報に従った静電像(静電潜像)が形成される。
次に、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成された静電像は、現像装置4Y、4M、4C、4Kによって各画像形成部Y、M、C、Kに対応した色のトナーによってトナー像として現像される。
ここで、現像装置4Y、4M、4C、4K内のトナーは、図示しない現像剤塗布ブレードによって負極性に帯電されて、現像スリーブ41Y、41M、41C、41Kに塗布される。また、現像スリーブ41Y、41M、41C、41Kには、図示しない現像バイアス印加手段としての現像電源より所定の現像バイアスが印加される。そして、感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に形成された静電像が、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと現像スリーブ41Y、41M、41C、41Kとの対向部(現像部)に到達する。ここで、感光ドラム1Y、1M、1C、1K上の静電像は負極性のトナーによって可視化され、感光ドラム1Y、1M、1C、1K上にトナー像が形成される。
【0028】
次に、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成されたトナー像は、一次転写部N1Y、N1M、N1C、N1Kにおいて、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kの作用により、回転駆動されている中間転写ベルト8に転写(一次転写)される。このとき、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアス印加手段としての一次転写電源E1Y、E1M、E1C、E1Kから、一次転写バイアスが印加される。この一次転写バイアスは、現像時のトナーの帯電極性とは逆極性(電子写真画像形成装置100では正極性)の直流電圧である。例えば、フルカラー画像の形成時には、色ごとに一次転写部N1Y、N1M、N1C、N1K間の距離に応じて一定のタイミングで遅らせて感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に静電像が形成され、これが現像されてトナー像とされる。そして、各画像形成部Y、M、C、Kの各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成された各色のトナー像が、各一次転写部N1Y、N1M、N1C、N1Kにおいて中間転写ベルト8に順次に重ね合わせる。このようにして中間転写ベルト8上に4色の多重トナー像が形成される。
【0029】
また、露光による静電像の形成に合わせて、図示しない転写材収容カセットに積載されている記録用紙などの転写材Pは、図示しない転写材供給ローラによりピックアップされ、図示しない搬送ローラによりレジストローラ14まで搬送される。転写材Pは、レジストローラ14によって、中間転写ベルト8上のトナー像に同期して、中間転写ベルト8と二次転写ローラ15とで形成される二次転写部N2へ搬送される。
そして、例えば上述のような中間転写ベルト8上に担持された4色の多重トナー像が、二次転写部N2において、二次転写ローラ15の作用により、転写材Pに一括して転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ15には、二次転写バイアス印加手段としての二次転写電源E2から、現像時のトナーの帯電極性とは逆極性(電子写真画像形成装置100では正極性)の直流電圧である二次転写バイアスが印加される。
【0030】
その後、トナー像が転写された転写材Pは、定着手段としての定着装置16に搬送される。そして、転写材Pは、定着装置16の定着ローラと加圧ローラとで挟持されて搬送される過程で加圧及び加熱されることで、その上にトナー像が定着される。トナー像が定着された転写材Pは、画像形成物として電子写真画像形成装置100の装置本体の外部に排出される。
【0031】
また一次転写部N1Y、N1M、N1C、N1Kにおいて、中間転写ベルト8に転写しきれずに感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、ドラムクリーニング装置6Y、6M、6C、6Kによって除去されて回収される。同様に、二次転写部N2において転写材Pに転写しきれずに中間転写ベルト8上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置12によって中間転写ベルト8上から除去されて回収される。
【0032】
3.ベルトクリーニング装置
図2は、ベルトクリーニング装置12の近傍の主断面図である。
ベルトクリーニング装置12は、クリーニング容器17と、クリーニング容器17内に設けられたクリーニング作用部20とを有する。クリーニング容器17は、中間転写ベルトユニット13の図示しない枠体の一部として構成されている。クリーニング作用部20は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード21と、クリーニングブレード21を支持する支持部材22とを有する。クリーニングブレード21は、例えば、弾性材料であるウレタンゴム(ポリウレタン)を材料とする弾性ブレード(ゴム部)である。また、支持部材22は、例えば、メッキ鋼板を材料とする板金で形成されている(板金部)。クリーニングブレード21が支持部材22に接着されて、クリーニング作用部20が構成されている。
【0033】
クリーニングブレード21は、所定の厚さを有する一方向に長い板状部材である。このクリーニングブレード21は、略直交する2辺のうち長手方向の一辺がベルト搬送方向に略直交する方向(以下「スラスト方向」ともいう。)に沿って延在し、短手方向の辺の一方の端部側が中間転写ベルト8に接触する。
【0034】
クリーニング作用部20は揺動可能に構成されている。すなわち、支持部材22は、クリーニング容器17に固定された揺動軸19を介して揺動可能に支持されている。そして、クリーニング容器17内に設けられた付勢手段として加圧バネ18で支持部材22が加圧されることで、揺動軸19を中心としてクリーニング作用部20が可動し、クリーニングブレード21が中間転写ベルト8に付勢(押圧)される。
加圧バネ18は支持部材22の長手両端に配置され、クリーニングブレード21が中間転写ベルト8に押圧される。中間転写ベルト8の内側には、クリーニングブレード21に対向して二次転写対向ローラ11が配置されている。クリーニングブレード21は、ベルト搬送方向に対してカウンター方向に中間転写ベルト8に当接されている。すなわち、クリーニングブレード21は、その短手方向における自由端側の先端がベルト搬送方向の上流側を向くようにして、中間転写ベルト8の表面に当接されている。これにより、クリーニングブレード21と中間転写ベルト8との間にブレードニップ部23が形成されている。クリーニングブレード21は、ブレードニップ部23において、移動する中間転写ベルト8の外周面上の残トナーを回収する。
【0035】
例えば、クリーニングブレード21の取り付け位置は、次のように設定される。設定角θが24°、侵入量δが1.5mm、押圧力が0.6N/cmである。ここで、設定角θは、中間転写ベルト8とクリーニングブレード21とがなす角度である。
また、侵入量δは、クリーニングブレード21の自由端が中間転写ベルト8に対して重なる法線方向の長さである。例えば、このクリーニングブレード21の厚さは2mmであり、スラスト方向長さ245mm、クリーニングブレード21の硬度はJIS K 6253規格で77度である。中間転写ベルト8のスラスト方向長さが250mmであるとき、クリーニングブレード21は全幅に亘って中間転写ベルト8の外周面上に接して配置されている。また、ブレードニップ部23におけるクリーニングブレード21からの押圧力は、長手方向における線圧で定義され、例えば、フィルム式加圧力測定システム(商品名:PINCH,ニッタ社製)を用いて測定される。クリーニングブレード21の取り付け位置を上記のように設定することで、高温高湿環境下(30℃/80%)でのクリーニングブレード21の捲れやスリップ音を抑制でき、良好なクリーニング性能を得ることができる。また、このように設定することで、低温低湿環境下(15℃/10%)でのクリーニング不良を抑制して、良好なクリーニング性能を得ることができる。
【0036】
また、一般にウレタンゴムと合成樹脂とは摺動による摩擦抵抗が大きく、クリーニングブレード21の初期の捲れが起こりやすい。そこで、予めクリーニングブレード21の自由端側の先端に、フッ化黒鉛などの初期潤滑剤を塗布することができる。
【実施例
【0037】
(実施例1)
[中間転写ベルト基層の製造]
3段階の加熱成形工程を経てシームレスな基層を得た。
まず1段目の加熱成形工程として、二軸押出し機(商品名:TEX30α、日本製鋼所(株)製)を用いた。以下の基層材料をPEN/PEEA/CB=84/15/1(質量比)の割合にて熔融混練して熱可塑性樹脂組成物を調製した。
・PEN:ポリエチレンナフタレート(商品名:TN-8050SC、帝人化成(株)製);
・PEEA:ポリエーテルエステルアミド(商品名:ペレスタットNC6321、三洋化成工業(株)製);
・CB:カーボンブラック(商品名:MA-100、三菱化学(株)製)
熔融混練温度は260℃以上280℃以下の範囲内となるように調整し、熔融混練時間はおよそ3~5分とした。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。
【0038】
2段目の加熱成形工程として、射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業(株)製)に、上記の乾燥させたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を投入した。シリンダ設定温度を295℃とし、金型温度を30℃に温調させてプリフォームを作製した。得られたプリフォームは、外径が50mm、内径が46mm、長さが100mmの試験管形状を有していた。
【0039】
3段目の加熱成形工程として、図6に示した二軸延伸装置(延伸ブロー成形機)を用いて上記のプリフォームを二軸延伸した。二軸延伸前に、図6(a)に示すように、プリフォーム104の外壁及び内壁を加熱するための非接触型のヒータ(不図示)を備えた加熱装置107内にプリフォーム104を配置し、加熱ヒータで、プリフォームの外表面温度が150℃となるように加熱した。次いで、図6(b)に示すように、加熱したプリフォーム104を、30℃に保ったブロー金型108内に配置し、延伸棒109を用いて軸方向に延伸した。同時に、温度23℃に調温されたエアーをブローエア注入部分110からプリフォーム内に導入してプリフォーム104を径方向に延伸した。ブロー金型108から取出し、ボトル状成形物112を得た。
【0040】
得られたボトル状成形物112の胴部を切断してシームレスなエンドレス形状を有する中間転写ベルトの基層81を得た。この中間転写ベルトの基層81の厚さは70.2μm、周長は712.2mm、幅250.0mmであった。
【0041】
[中間転写ベルト表層の製造]
以下の表層材料をAN/PTFE/GF/SL/IRG=66/20/1.0/12/1.0(固形分換算での質量比)の割合とし、始めにSLを除く材料の粗分散処理を行った溶液を調製した。この溶液を、高圧乳化分散器(商品名:ナノヴェイタ、吉田機械興業(株)製)を用い、PTFEの50%平均粒径が200nmになるまで分散させて分散液を得た。
・AN:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(商品名:アロニックス M-402、東亞合成(株)製);
・PTFE:PTFE粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業(株)製);
・GF:PTFE粒子分散剤(商品名:GF-300、東亞合成(株)製);
・SL:アンチモン酸亜鉛粒子スラリー(商品名:セルナックス CX-Z400K、日産化学(株)製、アンチモン酸亜鉛粒子成分として40質量%);
・IRG:光重合開始剤(商品名:イルガキュア907、BASF社製)
続いて、分散液を、撹拌したSLに滴下して表層形成用の塗工液を得た。なお、塗工液中のPTFEの粒径は動的光散乱(DLS)技術(規格ISO-DIS22412)に基づき、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR-1000、大塚電子(株)製)を用いて測定した。
【0042】
ブロー成形で得た基層を円筒状の型の外周にはめ込み、端部をシールしたうえで、表層形成用の塗工液で満たした容器に型ごと浸漬した。その後、表層形成用の塗工液の液面と基層の相対速度が一定になるように引き上げることで、基層表面に表層形成用の塗工液からなる塗膜を形成した。
なお、引き上げ速度(硬化性組成物の液面と基層の相対速度)と硬化性組成物の溶剤比を調整することで、膜厚を変えることができる。
本実施例では、引き上げ速度を10~50mm/秒とした。塗膜形成後に23℃、減圧下で1分間乾燥させた後、塗膜にUV照射機(商品名:UE06/81-3、アイグラフィック(株)製)を用いて、積算光量が600mJ/cmになるまで紫外線を照射して塗膜を硬化させた。得られたエンドレス形状を有する中間転写ベルト8の表層の厚さは断面を電子顕微鏡(商品名:XL30-SFEG、FEI社製)で観察した結果、3.0μmであった。
【0043】
[中間転写ベルト表面の溝の形成]
図7に示したインプリント加工装置を用いて、準備した中間転写ベルト8に溝84を形成した。
インプリント加工装置は、円筒状金型181と円筒状ベルト保持型190とで構成されており、円筒状金型181は円筒状ベルト保持型190に軸を並行に保った状態で加圧することができる。このとき、円筒状金型181と円筒状ベルト保持型190は滑ることなく同期して自転する。円筒状金型181は、直径120mm、幅270mmであり、外表面には、全幅方向に亘って、切削加工によって、全周方向に延びる凸部(凸高さ3.5μm、凸底部幅2.0μm、凸頂部幅0.2μm)が、ピッチ20μmにて複数本形成されている。中間転写ベルト8は幅が250mmであるため、中間転写ベルト8は、その全幅に亘って円筒状金型181に当接させることができる。
円筒状金型181は両端部に加圧機構(不図示)を備え、両端部を17kNで加圧したときに中央部が両端部を結ぶ直線から2μm離れた位置まで推移する程度に緩やかに弾性変形するように設計されている。また、円筒状金型181内にはカートリッジヒータが埋め込まれており、所望の温度に均一に加熱することができる。
【0044】
円筒状ベルト保持型190(周長712.0mm)の外周に、中間転写ベルト8を装着した。外周に中間転写ベルトを装着した円筒状ベルト保持型に対して、130℃に加熱した円筒状金型181を、互いの軸中心線を平行に維持しながら、17kNの加圧力で押し当てた。そして、この状態を維持したまま、該円筒状ベルト保持型及び該円筒状金型を共に周速30mm/secで互いに逆方向に回転させた。
そして、中間転写ベルト8が1周をわずかに過ぎたところ(1mm相当)まで円筒状金型181を当接させた後に離間させた。これにより、中間転写ベルト8の表面の全面に図3に示すような溝84を形成して、実施例1に係る中間転写ベルト(以降、「中間転写ベルトNo.1」と称する)を作製した。
【0045】
<溝深さ及び溝幅の測定>
得られた中間転写ベルトNo.1の溝の深さ及び幅を以下のように測定した。
中間転写ベルトの溝形成領域の周方向に直交する方向の幅は、ベルト自体の幅と同じ250mmであった。そこで、溝形成領域を、幅83.3mmの3つの領域、すなわち、中央領域、及び端部領域に分け、各領域について、溝の深さの平均値、及び溝の幅の平均値を求めた。
具体的には、レーザー顕微鏡(商品名:VertScan;(株)菱化システム社製)を用いて、視野内に少なくとも10本の溝が観察されるような倍率にて各領域について任意の異なる3か所、すなわち、合計9か所を観察した。各領域内の3か所それぞれにおける10本の溝について溝深さ及び溝幅を測定した。つまり、観察した視野から溝に直交する方向に評価ラインを合わせて断面曲線を抽出し、溝部を除く断面曲線から最小二乗法で算出した直線を表面境界線とした。さらに、表面境界線を基準に各溝部の最深部の深さを溝深さとし、各溝部の断面曲線が表面境界線と交わる2点間の距離を溝幅として測定した。続いて、各領域につき10本の各溝について得られた溝深さと溝幅の算術平均値を算出し、各領域における溝深さの平均値(Dm、De1、De2)及び溝幅の平均値(Wm、We1、We2)とした。
【0046】
<動摩擦係数の評価>
中間転写ベルトNo.1の表層の動摩擦係数を以下の方法により評価した。
摩擦力の測定には、表面性試験機(新東科学株式会社製「ヘイドン14FW」)を用いた。測定圧子はウレタンゴム製ボール圧子(外径3/8インチ、ゴム硬度90度)を使用し、測定条件は、中央領域については、試験荷重50gf、端部領域については、試験荷重を55gfとし、また、速度は、10mm/sec、測定距離は、50mmとした。測定開始から0.4秒から1秒後までに計測された摩擦力(gf)の平均値を試験荷重(gf)で除した値を動摩擦係数μ1(中央領域)、及びμ2(端部領域)とした。
【0047】
<クリーニング性の評価>
図1に示す構成の電子写真画像形成装置を使用し、中間転写ベルトNo.1を装着し、画像を印刷して、クリーニング性の評価を行った。
温度15℃、相対湿度10%の環境下で、転写材Pとして、A4サイズの紙(商品名:Extra、キヤノン社製、坪量80g/m、)を用いて印刷を行ない、クリーニングブレードからのトナーのすり抜けの有無を確認した。
具体的には、二次転写電圧をオフ(0V)にした状態でレッド画像(イエロートナー、マゼンタトナー)をA4サイズ全面に印字し、引き続いて、二次転写電圧を適正値に設定して3枚白紙状態で連続通紙した。クリーニングできていれば、3枚は全くの白紙状態で出力されるが、クリーニングブレードからトナーがすり抜けていれば白紙ではない画像が出力される。トナーのすり抜けが確認された場合をトナークリーニング不良とし、以下の基準で評価した。
ランクA:20万枚通紙過程で、トナークリーニング不良は発生しなかった。
ランクB:15万枚通紙過程で、トナークリーニング不良が発生した。
ランクC:10万枚通紙過程で、トナークリーニング不良が発生した。
ランクD:5万枚通紙過程で、トナークリーニング不良が発生した。
【0048】
(実施例2~3)
表層の溝の形成における円筒状金型181の加圧力を、それぞれ実施例2では15kN、実施例3では30kNとした以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3に係る中間転写ベルトNo.2~3を作製した。得られた中間転写ベルトNo.2~3について、中間転写ベルトNo.1と同様にして溝深さ及び溝幅を測定し、表面の動摩擦係数及びクリーニング性を評価した。
【0049】
(実施例4~5)
円筒状金型181の凸形状ピッチIを、実施例4では3μmに、実施例5では30μmに変更した。また、インプリント加工装置における加圧力をピッチIに応じて適宜調整した。それ以外は実施例1と同様にして実施例4及び5に係る中間転写ベルトNo.4~5を作製した。得られた中間転写ベルトNo.4~5について、中間転写ベルトNo.1と同様にして溝深さ及び溝幅を測定し、表面の動摩擦係数及びクリーニング性を評価した。
【0050】
(実施例6)
円筒状金型181の長さをクリーニングブレード21の長手方向長さと同じ245mmとした以外は、実施例1と同様にして図4に示す中間転写ベルトNo.6を作製した。
実施例6ではクリーニングブレード21の当接する領域Wを外れる領域には溝84を形成しなかった。得られた中間転写ベルトNo.6について、中間転写ベルトNo.1と同様にして溝深さ及び溝幅を測定し、表面の動摩擦係数及びクリーニング性を評価した。
【0051】
(実施例7)
中間転写ベルトの基層及び表層を実施例1と同様にして作製した。続いて、上述のインプリント加工装置を用い、円筒状金型181の長さを50mmとし、中間転写ベルトの幅方向に5回に分けて溝84を形成した。これにより図5に示すような実施例7に係る中間転写ベルトNo.7を作製した。中間転写ベルトNo.7の両端部の領域の溝84を形成する際は、円筒状金型181を5kNの加圧力で押し当て、中央部の溝84を形成する際は3kNの加圧力とした。得られた中間転写ベルトNo.7について、中間転写ベルトNo.1と同様にして溝深さ及び溝幅を測定し、表面の動摩擦係数及びクリーニング性を評価した。
【0052】
(比較例1)
実施例7と同様に、円筒状金型181の長さを50mmとし、5回に分けて溝84を形成した。このとき、5回の溝84の形成を、いずれも一様に3kNの加圧力で行い、図8に示す比較例1に係る中間転写ベルトNo.8を得た。得られた中間転写ベルトNo.8について、中間転写ベルトNo.1と同様にして溝深さ及び溝幅を測定し、表面の動摩擦係数及びクリーニング性を評価した。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
1Y、1M、1C、1K 感光ドラム
5Y、5M、5C、5K 一次転写ローラ
8 中間転写ベルト
12 ベルトクリーニング装置
15 二次転写ローラ
21 クリーニングブレード
22 支持部材
81 基層
82 表層
84 溝
100 電子写真画像形成装置
181 円筒状金型
190 円筒状ベルト保持型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9