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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】筒状編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20240213BHJP
   D04B 7/32 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
D04B1/00 Z
D04B7/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020066052
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161575
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】森 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】登尾 佳史
(72)【発明者】
【氏名】由井 学
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/073445(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/139710(WO,A1)
【文献】特開平10-131001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00-1/28、21/00-21/20、
D04B3/00-19/00、23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に対向する第一針床と第二針床とを備える横編機を用いて、n×mのリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成し、
前記n×mのリブ組織は、編幅方向に連続するn個の表目と、前記編幅方向に連続するm個の裏目とが交互に並んだ編組織であり、n及びmは1以上の自然数である筒状編地の編成方法において、
前記第一針床に第一編目列がその編幅内に空針が含まれた状態で係止され、前記第二針床に第二編目列がその編幅内に空針が含まれた状態で係止された状態とする工程Aを行った後、
前記第一編目列の複数の編目を前記第一針床と前記第二針床とに振り分けて、前記第一編目列のウエール方向に繋がる前記n×mのリブ組織を有する新たな第一編目列を編成し、前記新たな第一編目列の編目配列を振り分け前の状態に戻す工程Bと、
前記第二編目列の複数の編目を前記第一針床と前記第二針床とに振り分けて、前記第二編目列の前記ウエール方向に繋がる前記n×mのリブ組織を有する新たな第二編目列を編成し、前記新たな第二編目列の編目配列を振り分け前の状態に戻す工程Cと、を繰り返し、
前記工程Aでは、前記第一編目列における一部の編目間隔を詰めて前記第一編目列を配置すると共に、前記第二編目列における一部の編目間隔を詰めて前記第二編目列を配置し、
前記工程Bでは、前記第一編目列を構成する複数の編目の振り分け時、第一距離を1.5針以下とし、
前記工程Cでは、前記第二編目列を構成する複数の編目の振り分け時、第二距離を1.5針以下とし、
前記第一距離は、前記第一針床と前記第二針床の間を渡る第一渡り糸で繋がる二つの編目の前記編幅方向の距離であり、
前記第二距離は、前記第一針床と前記第二針床の間を渡る第二渡り糸で繋がる二つの編目の前記編幅方向の距離であることを特徴とする筒状編地の編成方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、
前記第一編目列の係止幅を、第一係止幅よりもp針分狭くし、
前記第二編目列の係止幅を、第二係止幅よりもq針分狭くし、
前記第一係止幅は、前記第一編目列の各編目を一針置きの編針に係止させたときの係止幅であり、
前記第二係止幅は、前記第二編目列の各編目を一針置きの編針に係止させたときの係止幅であり、
前記pは、前記工程Bにおいて形成される前記第一渡り糸の数と同じで、
前記qは、前記工程Cにおいて形成される前記第二渡り糸の数と同じである請求項1に記載の筒状編地の編成方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、前記第一編目列の編目配列と、前記第二編目列の編目配列とを点対称にする請求項1又は請求項2に記載の筒状編地の編成方法。
【請求項4】
前記n及び前記mが共に2以上で、前記第一距離及び前記第二距離が1針である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒状編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n×mのリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する筒状編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後に対向する第一針床と第二針床とを備える横編機を用いて、n×mのリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する技術が開示されている。ここで、プレーティング編成は、編成方向に移動する第一給糸口から給糸される第一編糸と、第一給糸口に遅れて移動する第二給糸口から給糸される第二編糸を一つの編針で同時に編成する編成方法である。このプレーティング編成では、表目を編成する場合、第一編糸が編地の表側に配置され、第二編糸が編地の裏側に配置される。また、裏目を編成する場合、第二編糸が編地の表側に配置され、第一編糸が編地の裏側に配置される。一方、n×mのリブ組織とは、編幅方向に連続するn個の表目と、編幅方向に連続するm個の裏目とが交互に並んだ編組織である。n及びmは、1以上の自然数である。
【0003】
リブ組織の編成の一例として、2×2のリブ組織を編成する手順を図6の編成工程図に示す。図6の左欄の「S+数字」は編成工程の番号である。右欄には、針床における編目の係止状態が示されている。右欄における黒点は編針を示し、丸マークは編目を示し、黒丸マークは各工程で編成された編目を示し、太線矢印は目移しを示している。欄外の大文字アルファベットは編針の位置を示す。
【0004】
図6のS0には、第一針床FBの一つ置きの編針A,C,E,G,I,Kに係止される第一編目列11と、第二針床BBの一つ置きの編針B,D,F,H,J,Lに係止される第二編目列12とが筒状に繋がった状態が示されている。この状態から、S1では、第一編目列11を構成する複数の編目を第一針床FBと第二針床BBに振り分ける。具体的には、FBの編針A,G,Iに係止される編目をそれぞれ、BBの編針A,G,Iに移動させる。S1の状態にある第一編目列11のウエール方向に連続してプレーティング編成によって新たな第一編目列11を編成すれば、第一針床FBに係止される編目のウエール方向に連続する編目は表目、第二針床BBに係止される編目のウエール方向に連続する編目は裏目となる。従って、新たな第一編目列11は2×2のリブ組織を有する。新たな第一編目列11は、S0の第一編目列11と同じ配置に戻される。S2では、第二編目列12を構成する複数の編目を第一針床FBと第二針床BBとに振り分ける。具体的には、第二針床BBの編針B,H,Jに係止される編目をそれぞれ、第一針床FBの編針B,H,Jに移動させる。S2の状態にある第二編目列12のウエール方向に連続してプレーティング編成を行うことで、2×2のリブ組織を有する新たな第二編目列12が編成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-213706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プレーティング編成によってn×mのリブ組織を有する筒状編地を編成すると、リブ組織における編幅方向に隣接する表目と裏目との境界付近に滲みが発生し易い。滲みとは、編地の裏側に配置されるべき編糸の一部が編地の表側に露出し、目立ってしまう状態をいう。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、n×mのリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する際、表目と裏目との境界付近に滲みが発生し難い筒状編地の編成方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>本発明の筒状編地の編成方法は、
前後に対向する第一針床と第二針床とを備える横編機を用いて、n×mのリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する筒状編地の編成方法において、
前記第一針床に第一編目列がその編幅内に空針が含まれた状態で係止され、前記第二針床に第二編目列がその編幅内に空針が含まれた状態で係止された状態とする工程Aを行った後、
前記第一編目列の複数の編目を前記第一針床と前記第二針床とに振り分けて、前記第一編目列のウエール方向に繋がるn×mのリブ組織を有する新たな第一編目列を編成し、前記新たな第一編目列の編目配列を振り分け前の状態に戻す工程Bと、
前記第二編目列の複数の編目を前記第一針床と前記第二針床とに振り分けて、前記第二編目列のウエール方向に繋がるn×mのリブ組織を有する新たな第二編目列を編成し、前記新たな第二編目列の編目配列を振り分け前の状態に戻す工程Cと、を繰り返す。
前記工程Aでは、前記第一編目列における一部の編目間隔を詰めて前記第一編目列を配置すると共に、前記第二編目列における一部の編目間隔を詰めて前記第二編目列を配置する。
前記工程Bでは、前記第一編目列を構成する複数の編目の振り分け時、第一距離を1.5針以下とする。
前記工程Cでは、前記第二編目列を構成する複数の編目の振り分け時、第二距離を1.5針以下とする。
前記第一距離は、前記第一針床と前記第二針床の間を渡る第一渡り糸で繋がる二つの編目の編幅方向の距離であり、
前記第二距離は、前記第一針床と前記第二針床の間を渡る第二渡り糸で繋がる二つの編目の編幅方向の距離である。
【0009】
<2>本発明の筒状編地の編成方法の一形態として、
前記工程Aにおいて、
前記第一編目列の係止幅を、第一係止幅よりもp針分狭くし、
前記第二編目列の係止幅を、第二係止幅よりもq針分狭くし、
前記第一係止幅は、前記第一編目列の各編目を一針置きの編針に係止させたときの係止幅であり、
前記第二係止幅は、前記第二編目列の各編目を一針置きの編針に係止させたときの係止幅であり、
前記pは、前記工程Bにおいて形成される前記第一渡り糸の数と同じで、
前記qは、前記工程Cにおいて形成される前記第二渡り糸の数と同じである形態が挙げられる。
【0010】
<3>本発明の筒状編地の編成方法の一形態として、
前記工程Aにおいて、前記第一編目列の編目配列と、前記第二編目列の編目配列とを点対称にする形態が挙げられる。
【0011】
<4>本発明の筒状編地の編成方法の一形態として、
前記n及び前記mが共に2以上で、前記第一距離及び前記第二距離が1針である形態が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筒状編地の編成方法では、工程B及び工程Cにおいてリブ組織を編成する際、渡り糸で繋がる二つの編目の編幅方向の距離が従来よりも短くなっている。そのため、第一編目列及び第二編目列における編幅方向に隣接する表目と裏目との境界付近に滲みが発生し難い。滲みが発生し難いメカニズムは、後述する実施形態1において図2を参照して説明する。
【0013】
また、工程B及び工程Cにおいて渡り糸で繋がる二つの編目の編幅方向の距離を従来よりも短くできるのは、工程Aにおいて第一編目列の係止幅と第二編目列の係止幅を狭くしているからである。
【0014】
上記<2>の筒状編地の編成方法によれば、工程B及び工程Cにおいて渡り糸で繋がる二つの編目の距離のみが狭くなり、それ以外の編目間隔は狭くならない。従って、リブ組織を構成する各編目の大きさがばらついて、筒状編地の見栄えが損なわれることがない。
【0015】
上記<3>の筒状編地の編成方法によれば、工程Bにおいて行う目移しやラッキングなどの編成動作と、工程Cにおいて行う編成動作とが点対称となる。従って、工程Bと工程Cとを同一パターンで繰り返すことができる。
【0016】
上記<4>の筒状編地の編成方法では、n及びmが共に2以上である。後述する実施形態1,3,4に示されるように、n及びmが共に2以上であれば、第一距離と第二距離とをそれぞれ1針にできる。その結果、上記滲みの発生がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に示される2×2のリブ組織を有する筒状編地の編成工程図である。
図2図2(A)は、実施形態1のリブ組織の編成における第一編糸と第二編糸の給糸状態を示す模式図であり、図2(B)は、従来のリブ組織の編成における第一編糸と第二編糸の給糸状態を示す模式図である。
図3図3は、実施形態2に示される1×1のリブ組織を有する筒状編地の編成工程図である。
図4図4は、実施形態3に示される3×3のリブ組織を有する筒状編地の編成工程図である。
図5図5は、実施形態4に示される4×4のリブ組織を有する筒状編地の編成工程図である。
図6図6は、従来の編成方法によって2×2のリブ組織を編成する手順を示す編成工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本実施形態1では、本発明の筒状編地の編成方法を用いて、2×2のリブ組織を有する筒状編をプレーティング編成によって編成する例を図1,2に基づいて説明する。本例の筒状編地の編成方法は、例えばセーターなどのニットウェアにおける裾、袖口、又は衿などを編成する際に利用される。もちろん、本例の筒状編地の編成方法によって編成される筒状編地は、ニットウェアに限定されるわけではなく、例えばカバーなどの産業資材であっても良い。
【0019】
図1の見方は図6と同じである。但し、第一編糸Y8を給糸する第一給糸口8と、第二編糸Y9を給糸する第二給糸口9とを逆三角マークで示す。
【0020】
図1のS0には、第一針床FBにおける一つ置きの編針A,C,E,G,I,Kに係止される第一編目列11と、第二針床BBにおける一つ置きの編針B,D,F,H,J,Lに係止される第二編目列12とが筒状に繋がった状態が示されている。ここで、S0の配置は一例であって、編成のスタート時の配置はS0の配置に限定されない。
【0021】
本例では、FBの編針C,E,Kの編目に続けて表目を、FBの編針A,G,Iの編目に続けて裏目を編成する予定である。つまり、S0以降の工程で、天竺組織の第一編目列11のウエール方向に続けて、2×2のリブ組織を有する新たな第一編目列11が編成される。一方、BBのB,H,Jの編目に続けて表目を、BBの編針D,F,Lの編目に続けて裏目を編成する予定である。つまり、S0以降の工程で、天竺組織の第二編目列12のウエール方向に続けて、2×2のリブ組織を有する新たな第二編目列12が編成される。2×2のリブ組織は、リブ組織の最小単位であるリブユニットを少なくとも一つ備える。2×2のリブ組織のリブユニットは、編幅方向に並ぶ2つの表目と2つの裏目とからなる。S0及び後述するS1では、表目となる編目に白抜きのくさびマークを、裏目となる編目に黒塗りのくさびマークを付している。図1では、第一針床FBの編針C,E,G,Iの編目のウエール方向に続けて一つのリブユニットが形成され、第二針床BBの編針D,F,H,Jのウエール方向に続けて一つのリブユニットが形成される。
【0022】
ここで、ニットウェアにおけるリブ組織の裾のように、リブ組織を最初に編成する場合、後述するS1の配置からリブ組織の編成を開始しても良い。
【0023】
S1では、第一編目列11における一部の編目間隔を詰めて第一編目列11を配置すると共に、第二編目列12における一部の編目間隔を詰めて第二編目列12を配置する(工程A)。本例では、S0における第一編目列11の係止幅(第一係止幅)よりも第一編目列11の係止幅をp針分狭くすると共に、S0における第二編目列12の係止幅(第二係止幅)よりも第二編目列12の係止幅をq針分狭くしている。自然数pは後述するS2において形成される第一渡り糸1の数と同じであり、自然数qは後述するS3において形成される第二渡り糸2の数と同じである。本例の場合、p=3、q=3である。
【0024】
S1における第一編目列11と第二編目列12の配置では、編目列11,12の編幅内に裏目用の空針を確保する。加えて、両編目列11,12の配置では、裏目用の空針に移動させた編目と、空針に移動させなかった編目との間隔、即ち渡り糸で繋がれる二つの編目の間隔を詰めることができるように、編目列11,12の一部の編目間隔を詰める。
【0025】
S1の具体的な配置に言及する。本例では、S0において編幅方向に連続する裏目となる二つの編目の間隔を詰める。具体的には、FBの編針G,Iの二つの編目の間隔、及びBBの編針D,Fの二つの編目の間隔を詰める。更に、S0においてリブユニットの端部編目と、そのリブユニットの外側に隣接する外側編目との間隔を詰める。具体的には、FBにおける編針Cの編目(端部編目)と編針Aの編目(外側の編目)との間隔、FBにおける編針Iの編目(端部編目)と編針Kの編目の間隔(外側の編目)、BBにおける編針Dの編目(端部編目)と編針Bの編目(外側の編目)との間隔、及びBBにおける編針Jの編目(端部編目)と編針Lの編目(外側の編目)の間隔を詰める。
【0026】
第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とは点対象になっている。より具体的には、第一編目列11と第二編目列12とで構成される筒の中心(バツ印を参照)に対して、第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とが点対称になっている。
【0027】
S2では、第一編目列11のウエール方向に繋がる2×2のリブ組織を有する新たな第一編目列11を編成する(工程B)。まず、第一編目列11を構成する複数の編目を第一針床FBと第二針床BBとに振り分ける。この振り分けの際、第一針床FBと第二針床BBの間を渡る第一渡り糸1で繋がる二つの編目3,4の編幅方向の第一距離を1.5針以下とする。編目3は、第一針床FBに係止され、表目となる第一前編目である。編目4は、第二針床BBに係止され、裏目となる第一後編目である。本例では、第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とをS1に示す状態としておくことで、第一編目列11の裏目となる編目を第二針床BBの空針に移動させるだけで、上記第一距離が1針となる。また、第一編目列11における第一距離のみが狭くなり、それ以外の編目間隔は狭くならないので、リブ組織を構成する各編目の大きさにばらつきができない。
【0028】
またS2では、紙面右方向に向かって第一給糸口8を先行、第二給糸口9を後行とするプレーティング編成を行う。表目を編成する場合、第一給糸口8から給糸される第一編糸Y8は表側に現れ、第二給糸口9から給糸される第二編糸Y9は裏側に隠れる。裏目を編成する場合、第一編糸Y8と第二編糸Y9の見え方が表目と逆になる。新たに編成された第一編目列11の配置を、S1と同じ状態に戻す。第一編目列11の配置を戻す工程は、ラッキングピッチなどの条件が合えば、次のS3における第二編目列12の編目の振り分けに合わせて行っても良い。
【0029】
S3では、第二編目列12のウエール方向に繋がる2×2のリブ組織を有する新たな第二編目列12を編成する(工程C)。新たな第二編目列12は、S2で編成した新たな第一編目列11に筒状に繋がる。まず、第二編目列12を構成する複数の編目を第一針床FBと第二針床BBとに振り分ける。この振り分けの際、第一針床FBと第二針床BBの間を渡る第二渡り糸2で繋がる二つの編目5,6の編幅方向の第二距離を1.5針以下とする。編目5は、第二針床BBに係止され、表目となる第二前編目である。編目6は、第一針床FBに係止され、裏目となる第二後編目である。本例では、第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とをS1に示す状態としておくことで、第二編目列12の裏目となる編目を第一針床FBの空針に移動させるだけで、上記第二距離が1針となる。また、第二距離のみが狭くなり、それ以外の編目間隔は狭くならないので、リブ組織を構成する各編目の大きさにばらつきができない。
【0030】
またS3では、紙面左方向に向かって第一給糸口8を先行、第二給糸口9を後行とするプレーティング編成を行う。新たに編成された第二編目列12の配置を、S1と同じ状態に戻す。第二編目列12の配置を戻す工程は、ラッキングピッチなどの条件が合えば、二回目のS2における第一編目列11の編目の振り分けに合わせて行っても良い。
【0031】
ここで、S3で行う編成動作は、S2で行う編成動作と点対称となっている。そのため、第一編目列11のリブ組織の編成と、第二編目列12のリブ組織の編成とを同一パターンで繰り返すことができる。
【0032】
以降、S2とS3とを交互に繰り返すことで、2×2のリブ組織を有する筒状編地を編成できる。リブ組織に続けて天竺組織を編成する場合、リブ組織の編目の配置をS0の状態としてから天竺組織を編成すると良い。
【0033】
本例の筒状編地の編成方法では、工程B及び工程Cにおいてリブ組織を編成する際、第一距離及び第二距離が、図6で示した従来よりも短くなっている。そのため、第一編目列11及び第二編目列12における編幅方向に隣接する表目と裏目との間に滲みが発生し難い。表目と裏目との間に滲みが発生し難いメカニズムを図2に基づいて説明する。
【0034】
図2は、針床を歯口の上方から見た図である。一点鎖線は給糸口8,9の進行方向に沿った目安線である。編針7は表目を編成する編針であり、編針70は裏目を編成する編針である。距離Dは、編針7と編針70との間の距離である。図2(A)に示されるように、表目を編成する編針7に引っ掛けられた第一編糸Y8と第二編糸Y9とは、編針7の位置で束ねられている。両編糸Y8,Y9は、給糸口8,9に向かうに従って左右に分離される。ここで、両編糸Y8,Y9が引っ掛けられている編針7と、次に両編糸Y8,Y9を引っ掛ける編針70との距離Dが近いと、両編糸Y8,Y9が左右にほとんど分離されていない状態で、両編糸Y8,Y9が編針70に引っ掛けられる。従って、編針7によって固定された第一編糸Y8と第二編糸Y9の位置関係が、編針70によって裏目を編成する際も維持され易い。そのため、表目と裏目との間に滲みが発生し難い。
【0035】
一方、図2(B)に示されるように、編針7と編針70との距離Dが遠いと、編針70の位置で第一編糸Y8と第二編糸Y9とが左右に分離している。そのため、編針70で裏目を編成したとき、表目と裏目との間で両編糸Y8,Y9の位置関係がずれる可能性があり、表目と裏目との間に滲みが発生し易い。
【0036】
<実施形態2>
実施形態2では、1×1のリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する例を図3に基づいて説明する。図3では、第一編目列11の編成のみ説明する。また、第二編目列12編成は、第一編目列11と同様に行えば良い。
【0037】
S0には、表目となる編目と裏目となる編目とが交互に係止された状態が示されている。編幅方向に並ぶ二つの編目の間には一つの空針が配置されている。
【0038】
S1では、表目となる編目と、裏目となる編目の間隔を詰める(工程A)。第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とは点対称になっている。
【0039】
S2では、第一編目列11のうち、裏目となる編目を第二針床BBに移動させる。本例の場合、第一渡り糸1で繋がる編目3と編目4の編幅方向の距離である第一距離は、1針分又は2針分である。そこで、S3では、BBを右方向に0.5ピッチラッキングさせる。その結果、第一距離は全て1.5針以下となる。従って、S3の状態で新たな第一編目列11をプレーティング編成によって編成すれば、表目と裏目との間に滲みが発生し難い。
【0040】
<実施形態3>
実施形態3では、3×3のリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する例を図4に基づいて説明する。図4においても、第一編目列11の編成のみ説明する。
【0041】
S0には、第一針床FBに第一編目列11を構成する8個の編目が係止され、第二針床BBに第二編目列12を構成する8個の編目が係止された状態が示されている。
【0042】
S1では、第一編目列11の係止幅と、第二編目列12の係止幅を狭める(工程A)。両編目列11,12の係止幅は3針分狭くなっている。S2における第一渡り糸1の数と同じ数の編針の分だけ、両編目列11,12の係止幅が狭くなっている。本例では、第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とは点対称になっている。
【0043】
S2では、第一編目列11のうち、裏目となる編目を第二針床BBに移動させる。その結果、第一渡り糸1で繋がる編目3と編目4の編幅方向の距離である第一距離は全て1針分となる。従って、S2の状態から新たな第一編目列11をプレーティング編成によって編成すれば、表目と裏目との間に滲みが発生し難い。
【0044】
<実施形態4>
実施形態4では、4×4のリブ組織を有する筒状編地をプレーティング編成によって編成する例を図5に基づいて説明する。図5においても、第一編目列11の編成のみ説明する。
【0045】
S0には、第一針床FBに第一編目列11を構成する10個の編目が係止され、第二針床BBに第二編目列12を構成する10個の編目が係止された状態が示されている。
【0046】
S1では、第一編目列11の係止幅と、第二編目列12の係止幅を狭める(工程A)。両編目列11,12の係止幅は3針分狭くなっている。S2における第一渡り糸1の数と同じ数の編針の分だけ、両編目列11,12の係止幅が狭くなっている。本例では、第一編目列11の編目配列と、第二編目列12の編目配列とは点対称になっていない。
【0047】
S2では、第一編目列11のうち、裏目となる編目を第二針床BBに移動させる。その結果、第一渡り糸1で繋がる編目3と編目4の編幅方向の距離である第一距離は全て1針分となる。従って、S2の状態から新たな第一編目列11をプレーティング編成によって編成すれば、表目と裏目との間に滲みが発生し難い。
【0048】
<その他の実施形態>
本発明の筒状編地の編成方法は、n及びmが4以上のリブ組織の編成にも利用可能である。また、nとmとが異なる数字のリブ組織の編成にも利用可能である。例えば、2×1のリブ組織、又は3×2のリブ組織などの編成にも、本発明の筒状編地の編成方法は利用可能である。
【0049】
リブ組織と天竺組織とをウエール方向に並べる場合、一針置きの針抜き状態(1×1の針抜き状態)で編成される天竺組織の編幅に合わせて、リブ組織の編幅方向の編目数を天竺組織の編幅方向の編目数よりも大きくしても良い。また、リブ組織の一部の編目を重ねて、1×1の針抜き状態として、1×1の針抜き状態で天竺組織を編成しても良い。
【0050】
リブ組織を有する第一編目列11及び第二編目列12の編幅方向の一部に、リブユニットを有さない箇所が存在しても良い。また、異なるリブユニットが混在していても良い。その他、本実施形態では、編幅方向に並ぶ空針の数を一つとしているが、部分的に二つ以上の空針が並ぶ箇所があっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 第一渡り糸
2 第二渡り糸
3,4,5,6 編目
7,70 編針
8 第一給糸口、Y8 第一編糸
9 第二給糸口、Y9 第二編糸
11 第一編目列
12 第二編目列
FB 第一針床、BB 第二針床
図1
図2
図3
図4
図5
図6