(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】予防若しくは防護施設及び予防若しくは防護施設の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
E01F7/04
(21)【出願番号】P 2020069677
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】小関 和廣
(72)【発明者】
【氏名】今井 真実
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-125117(JP,U)
【文献】特開2019-078165(JP,A)
【文献】特開2010-144447(JP,A)
【文献】特開2020-012249(JP,A)
【文献】実開昭59-025336(JP,U)
【文献】特開2011-038265(JP,A)
【文献】特開2018-178480(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069970(WO,A1)
【文献】特開2006-183326(JP,A)
【文献】特開平07-197423(JP,A)
【文献】特開2019-085691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0079985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00-15/14
E01F 1/00
E01F 7/00-7/04
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏がある斜面に所定間隔をおいて設置された複数の予防柵若しくは防護柵と、
ひし形金網で構成され、前記予防柵若しくは防護柵の間を連結した連結金網と、
積雪によって前記連結金網の上端部にかかる沈降圧による柵高の低下を低減するために、前記連結金網の上端付近に設けられた荷重受け上側部材と、
を備え、
前記荷重受け上側部材が、ひし形金網で構成され、前記連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網であって、折り畳まれることで、前記連結金網の上部を両サイドから挟み込むように配置された上端補強金網によって構成されていることを特徴とする予防若しくは防護施設。
【請求項2】
斜面に所定間隔をおいて設置された複数の吊式の予防柵若しくは防護柵と、
ひし形金網で構成され、前記予防柵若しくは防護柵の間を連結した連結金網と、
積雪によって前記連結金網の上端部にかかる沈降圧による柵高の低下を低減するために、前記連結金網の上端付近に設けられた荷重受け上側部材と、
を備え、
前記荷重受け上側部材が、ひし形金網で構成され、前記連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網であって、折り畳まれることで、前記連結金網の上部を両サイドから挟み込むように配置された上端補強金網によって構成されていることを特徴とする予防若しくは防護施設。
【請求項3】
雪圧による前記連結金網の変形を低減するために、前記連結金網の下端付近に
設けられた、荷重受け下側部材を備え、
前記荷重受け下側部材が、
ひし形金網で構成され、前記連結金網の下端に取り付けられた下端補強金網であって、折り畳まれることで、前記連結金網の下部を両サイドから挟み込むように配置された下端補強金網によって構成されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の予防若しくは防護施設。
【請求項4】
前記予防若しくは防護柵の間を連結するひし形金網で構成された第2の連結金網をさらに有し、
前記連結金網を構成する列線の方向と、前記第2の連結金網を構成する列線の方向が異なるように、前記連結金網と前記第2の連結金網が配されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【請求項5】
前記上端補強金
網が、前記第2の連結金網によって構成されていることを特徴とする請求
項4に記載の予防若しくは防護施設。
【請求項6】
前記連結金網が、当該連結金網を構成する列線が垂直方向となるように配され、
前記上端補強金
網が、当該上端補強金
網を構成する列線が水平方向となるように配されていることを特徴とする請求項
1から5の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【請求項7】
前記予防若しくは防護柵に備えられる横部材に対して前記連結金網が締結コイルによって取り付けられており、前記締結コイルによる取り付けが、前記予防若しくは防護柵の支柱よりも内側となる箇所であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【請求項8】
前記連結金網が、前記複数の予防柵若しくは防護柵にわたって全面的に設けられていることを特徴とする請求項1から
6の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【請求項9】
前記連結金網が、当該連結金網を構成する列線が垂直方向となるように配され、
前記第2の連結金網が、当該第2の連結金網を構成する列線が水平方向となるように配されていることを特徴とする請求項
4又は5に記載の予防若しくは防護施設。
【請求項10】
前記連結金網と前記第2の連結金網が、相互に締結されていることを特徴とする請求項
4又は5に記載の予防若しくは防護施設。
【請求項11】
前記連結金網が、前記予防柵若しくは防護柵に対して取り付けられた箇所よりも前記予防柵若しくは防護柵の内側には設置されない、請求項1から7の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【請求項12】
起伏がある斜面に所定間隔をおいて設置されている複数の予防柵若しくは防護柵に対して、
前記予防柵若しくは防護柵の間を連結するように
ひし形金網で構成された連結金網を設ける工程と、
ひし形金網で構成された上端補強金網であって、前記上端補強金網を折り畳んで、前記連結金網の上部を両サイドから挟み込むようにして、前記連結金網の上端に取り付ける工程と、を有することを特徴とする予防若しくは防護施設の施工方法。
【請求項13】
斜面に所定間隔をおいて設置されている複数の吊式の予防柵若しくは防護柵に対して、
前記予防柵若しくは防護柵の間を連結するように
ひし形金網で構成された連結金網を設ける工程と、
ひし形金網で構成された上端補強金網であって、前記上端補強金網を折り畳んで、前記連結金網の上部を両サイドから挟み込むようにして、前記連結金網の上端に取り付ける工程と、を有することを特徴とする予防若しくは防護施設の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起伏がある斜面に設けられる予防若しくは防護施設及び予防若しくは防護施設の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜地では、雪崩や落石等の予防や防護のための予防若しくは防護柵が利用されている。このような予防若しくは防護柵に関する技術が、特許文献1~3によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-109181号公報
【文献】特開2014-109182号公報
【文献】特開2016-006278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜地に設けられる予防若しくは防護柵は、その幅方向(スパン)の長さをあまり長くすることができないものである。その理由としては、重機などを持ち込むことが難しく、人力での搬入・設置を要する場合があること、傾斜地には起伏があり、スパンの長い柵を設置することが難しい(直線状の長いものを起伏に沿わせることが難しい)こと等が挙げられる。
従って、例えば雪崩防止柵の場合、所定のスパン(例えば2~6m)の雪崩防止柵を、複数並べて配置することが行われている。このような雪崩防止柵は、雪崩予防効果に問題が無い範囲で経済性を考慮し、所定の間隔(例えば1~2m)をあけて並べて配置されている。
しかしながら、従来では問題無かった柵間であっても、昨今の気象の変化の影響等により、
図15の写真に示されるように、柵間からの雪の漏れ出しが見られるようになってきている。
これに対処するために、隙間を開けないように柵間をゼロにして配置することも行われているが、この場合、コストが高くなるという問題があった。また、雪崩防止柵は元々1m若しくは2m分の辺縁荷重も考慮して設計してある。これを柵間ゼロで配置するということはオーバースペックとなるものであり、この観点においても不経済なものであった。
また、柵間をゼロで配置しても、
図16の写真に示されるように、起伏の影響で隙間が空いてしまう場合がある。このような隙間を開けないように、さらに間をつめて配置すると、上記の不経済性がより顕著になるものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、起伏がある斜面において複数の予防若しくは防護柵を設置する予防若しくは防護施設において、経済性に優れる予防若しくは防護施設、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
起伏がある斜面に所定間隔をおいて設置された複数の予防若しくは防護柵と、前記予防若しくは防護柵の間を連結した連結金網と、を備えることを特徴とする予防若しくは防護施設。
【0007】
(構成2)
斜面に所定間隔をおいて設置された複数の吊式の予防若しくは防護柵と、前記予防若しくは防護柵の間を連結した連結金網と、を備えることを特徴とする予防若しくは防護施設。
【0008】
(構成3)
前記連結金網の上端付近に、荷重受け上側部材を備えることを特徴とする構成1又は2に記載の予防若しくは防護施設。
【0009】
(構成4)
前記連結金網の下端付近に、荷重受け下側部材を備えることを特徴とする構成1から3の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【0010】
(構成5)
前記荷重受け上側部材又は荷重受け下側部材が、前記連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網又は前記連結金網の下端に取り付けられた下端補強金網によって構成されていることを特徴とする構成3又は4に記載の予防若しくは防護施設。
【0011】
(構成6)
前記連結金網が、当該連結金網を構成する列線が垂直方向となるように配され、前記上端補強金網又は下端補強金網が、当該上端補強金網又は下端補強金網を構成する列線が水平方向となるように配されていることを特徴とする構成5に記載の予防若しくは防護施設。
【0012】
(構成7)
前記荷重受け上側部材又は荷重受け下側部材が、横部材によって構成されていることを特徴とする構成3又は4に記載の予防若しくは防護施設。
【0013】
(構成8)
前記連結金網を保持するための中間支柱を備えることを特徴とする構成1から7の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【0014】
(構成9)
前記連結金網が、前記複数の予防若しくは防護柵にわたって全面的に設けられていることを特徴とする構成1から8の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【0015】
(構成10)
前記予防若しくは防護柵の間を連結する第2の連結金網をさらに有し、前記連結金網を構成する列線の方向と、前記第2の連結金網を構成する列線の方向が異なるように、前記連結金網と前記第2の連結金網が配されていることを特徴とする構成1から9の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【0016】
(構成11)
前記連結金網が、当該連結金網を構成する列線が垂直方向となるように配され、前記第2の連結金網が、当該第2の連結金網を構成する列線が水平方向となるように配されていることを特徴とする構成10に記載の予防若しくは防護施設。
【0017】
(構成12)
前記連結金網と前記第2の連結金網が、相互に締結されていることを特徴とする構成10又は11に記載の予防若しくは防護施設。
【0018】
(構成13)
前記連結金網が、290N/mm2以上の強度を有する金網であることを特徴とする構成1から12の何れかに記載の予防若しくは防護施設。
【0019】
(構成14)
受面として、複数の横部材が設けられた横部材受面部と、受面として、金網が設けられた金網受面部と、を備え、前記横部材受面部と前記金網受面部が交互に設けられていることを特徴とする予防若しくは防護施設。
【0020】
(構成15)
前記予防若しくは防護施設が、吊式の予防若しくは防護柵で構成されていることを特徴とする構成14に記載の予防若しくは防護施設。
【0021】
(構成16)
起伏がある斜面に所定間隔をおいて設置されている複数の予防若しくは防護柵に対して、前記予防若しくは防護柵の間を連結するように連結金網を設ける工程を有することを特徴とする予防若しくは防護施設の施工方法。
【0022】
(構成17)
斜面に所定間隔をおいて設置されている複数の吊式の予防若しくは防護柵に対して、前記予防若しくは防護柵の間を連結するように連結金網を設ける工程を有することを特徴とする予防若しくは防護施設の施工方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の予防若しくは防護施設、及びその施工方法によれば、起伏がある斜面において複数の予防若しくは防護柵を設置する予防若しくは防護施設においても経済性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る実施形態1の予防施設を示す概略図
【
図13】予防柵と連結金網の連結方法の別の例を示す概略図
【
図14】予防柵と連結金網の連結方法の別の例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0026】
<実施形態1>
図1は本発明に係る実施形態1の予防施設を示す概略図であり、
図1(a)は設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図1(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1は、起伏がある斜面に所定間隔をおいて設置された複数の予防柵11と、予防柵11の間を連結した連結金網12と、を備える。
【0027】
本実施形態の予防柵11は、吊式の雪崩予防柵である。
予防柵11は、2本の支柱111を有し、当該支柱111に対して複数の横部材112(本実施形態では7本の鋼管)が等間隔で取り付けられている(
図6参照)。支柱111の下端にはベースプレート113が設けられサポート材114などによって補強されている。
予防柵11は、斜面上方に打設されているアンカー(特に図示せず)に接続されたワイヤロープWによって、吊られて設置されている。
なお、予防柵11自体は、吊式か自立式か等に関わらず、従来の各種の予防柵や防護柵(例えば、「平成31年度北海道開発局道路設計要領 第6集 標準設計図集 6.雪崩予防柵」(https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_ken/ud49g700000023a8-att/splaat0000003yeo.pdf)で公示されているものや、特許文献1~3の防護柵等)を用いることができるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
本実施形態の予防柵11は最大で1m分(片側)の辺縁荷重を考慮して設計してあり、耐荷重の能力的には、隣り合う予防柵11の柵間を最大で2mとして設置することができる。
【0028】
本実施形態の連結金網12は、1400N/mm
2の強度を有する高強度金網であり、予防柵11の間を連結して設けられる。
予防柵11と連結金網12の連結は、本実施形態では結合コイルCを用いて、予防柵11の複数の横部材のそれぞれに対して、連結金網12と横部材を巻き合わせることによって行われる。巻き付け箇所は、
図1(a)に示されるように、予防柵11の支柱の内側となる箇所にするとよい。支柱と横部材との接合部より内側とすることにより、連結金網12に荷重がかかって、横部材から連結金網12の係合を引き抜くように力がかかった際に、支柱と横部材との接合部に、コイル連結部分が引っかかるため、横部材と連結金網12の連結が外れ難くなる効果が得られる。横部材の全てで結合コイルCによる巻き付けを行ってもよいし、例えば上下及び中間部の3か所で巻き付ける等してもよい。
支柱の内側となる位置で結合コイルCを用いて横部材に連結金網12を取り付ける構成とすることにより、結合コイルCの弾性力も利用することができる。雪圧により連結金網12に張力が作用すること等により、
図1(c)に示すように、結合コイルCが伸縮する。このような張力に対する伸縮機能は金網自体も有している。これらの結合コイルと金網の「アコーディオン効果」により、柵本体にかかる負荷を軽減する効果も期待できる。
【0029】
なお、予防柵11と連結金網12の連結方法を上記のものに限るものではなく、必要な連結強度が得られる任意の方法を用いるものであってよい。例えば、型鋼や鋼板とUボルト等を使用して横部材や支柱へ接続するようなもの等であってよい。
図1(d)には、このようなものの例として、鋼板(フラットバー)とUボルトを使用した取り付け構造を示した。各UボルトUBを予防柵11の各横部材にかけつつ、連結金網12を通して、フラットバー16に形成された孔に挿通させ、ナットNを取り付けて締めることによって、連結金網12の予防柵11への取り付けが行われる。なお、Uボルトは、全ての横部材に対して配するものであってもよいし、例えば上・中・下の3か所となるように配するようなものであってもよい。UボルトUB及びフラットバー16による締結箇所は、上述のごとく、予防柵11の支柱の内側となる箇所にするとよい。
また、より高い締結力を有するように、
図13(
図13(a):正面図、
図13(b):上面図、
図13(c):側面図)に示したような連結方法してもよい。
図13の例は、金網構造の列線の“中”に入るフラットバー16´(棒状の部材)を用いる。フラットバー16´を連結金網12の中に挿入し、フラットバー16´を予防柵11に取り付けることで、予防柵11と連結金網12を連結する。フラットバー16´の予防柵11に対する取り付け自体は、上述したフラットバー16の予防柵11に対する取り付けと同様であるが、フラットバー16´(棒状の部材)を予防柵11に対して取り付け可能な任意の構造を用いることができる。
連結金網12の中にフラットバー16´を挿入させることで、連結金網12に対して雪圧による柵間側へと引っ張られる張力が作用した場合でも、金網の縦長の線交点全てが張力に抵抗するため、金網自体が有する強度を最大限発揮させることが可能となる。連結金網の中にフラットバーを挿入させる連結方法は、下記説明する任意の実施形態に対して使用することができる。
【0030】
連結金網12に使用する金網は、線材の変形(金網の撓みなど)を極力抑えるため、少なくとも290N/mm2以上の強度を有する必要があり、600N/mm2以上の強度を有することが好ましい。1400N/mm2以上の強度を有するとより好ましい。一方で、施工性の面から、1800N/mm2以下であることが好ましい。
結合コイルCは、本実施形態では、直径が4.0mmの鋼線を、直径100mmで長さが300mmのコイル状に巻いたものを使用している。線材の太さや、コイルのサイズ(直径、長さ)は予防柵のサイズ等に合わせて適宜選択すればよい。結合コイルCの線材としては1230N/mm2以上の強度を有するものを用いることが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態の連結金網12は、列線が垂直方向となるように配されている。これにより、運搬時などにおいて巻かれている金網を横方向に展開することができ、作業がしやすいものであるが、列線が垂直方向となるように配するものであってもよい。
【0032】
本実施形態の予防施設1によれば、斜面において、起伏がある影響により、限られたスパンの予防若しくは防護柵を複数並べて設置せざるを得ない場合においても、柵間からの雪漏れを防止でき、経済性に優れる予防若しくは防護施設を提供することができる。
即ち、柔軟性を有する金網を使用して、間隔をあけて設置した複数の予防柵11の間を連結することにより、起伏がある傾斜地においても全面的(例えば20m以上の長いスパン)に受面を形成することができるものである。予防柵11は辺縁荷重を考慮して設計してあるため、その範囲内であれば、予防柵11の間を連結金網12で連結しても、追加のアンカーの設置などは必要ない。
例えば、19250mm(約20m)の幅に、2本のアンカーで吊持されるスパンが2750mmの予防柵を用いて、柵間隔をゼロにして予防柵を設置する場合、7基の予防柵と14本のアンカーが必要になる。これに対して、本実施形態の予防施設1によれば、例えば、柵間隔を1500mmにして設置し、その間を連結金網12で連結することができるため、予防柵11は5基、アンカーは10本とすることができ、劇的にコストを低下させることができる。なお、柵間隔を3000mmにして設置すれば、予防柵11は4基、アンカーは8本とすることができる。柵間隔を3000mmにすることによって耐荷重が不足してしまう場合には、以下で説明する実施形態4の中間支柱を設けるようにすればよい。各柵間に中間支柱とアンカーを設けたとしても、中間支柱3本とアンカー3本で済むため、経済性が高い。
また、本実施形態の予防施設1は、既存の“所定間隔をおいて設置されている複数の予防若しくは防護柵”に対しても適用することができる。即ち、例えば
図15の写真に示されているような既存の施設に対して、予防柵11の間を連結金網12によって連結する作業を行うことによって、本実施形態の予防施設1とすることができる。既存の施設についても極めて経済的に、柵間の雪漏れ対策を行うことができる。このように、既存の施設の耐力を向上させるための施工方法としても有用性を有する。
【0033】
吊式の予防柵は、ロープで吊持ちされているものであるため、季節等による環境変化の影響でロープ張力が変わる。例えば積雪の量や有無によって荷重が変化し、ロープ張力(ロープの伸び)も変化する。これにより、柵の姿勢や位置に変動が生じるという特徴を有する施設である。このように、それぞれが個別に変位し得る複数の柵において、その柵間を連結する場合、固定的な連結方法であると、上記の柵の姿勢や位置の変動(相互の柵の位置の変位)に伴う応力が発生するため、耐力の大きな部材や固定方法を用いる必要があるが、これは経済性において不利である。また、固定的な連結方法に代えて、上記応力を吸収するための可動部などを有する連結方法を用いる場合にも、経済性において不利となる。
これに対し、本実施形態の予防施設1は、金網によって柵間を連結することで、上記応力が金網の柔軟性によって吸収されるため、上記の問題がなく、経済性においても非常に優れている。
【0034】
本実施形態から理解されるように、受面として複数の横部材が設けられた横部材受面部(本実施形態の例では予防柵11の範囲)と、受面として金網が設けられた金網受面部(本実施形態の例では連結金網12の範囲)と、を備え、これらの横部材受面部と金網受面部が交互に設けられた予防若しくは防護施設とすることで、起伏がある斜面において設置される予防若しくは防護施設を、高い経済性を有して提供することができる。
【0035】
<実施形態2>
図2は実施形態2の予防施設を示す概略図であり、
図2(a)は設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図2(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-1は、連結金網が、複数の予防柵にわたって全面的に設けられている点で実施形態1と異なっており、その他の点では基本的に実施形態1と同様である。実施形態1と同様の構成については、実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0036】
連結金網12-1は、運搬時などにおいて巻かれている金網を横方向に展開することで配され、これにより、列線が垂直方向となるように配されている。
本実施形態においても予防柵11の横部材と連結金網12-1の連結は結合コイルCを用いて行われる。上端付近及び下端付近において結合コイルCをより多く配置して結合することで、金網の展開状態がより維持されやすくなる。よって、予防施設1-1では、予防柵11の最上段の横部材と、最下段の横部材において、横部材のほぼ全長にわたるように結合コイルCを用いて横部材と連結金網12-1を連結している。また、予防柵11の中央付近の横部材に対して、ほぼ均等な間隔となるようにして、横部材と連結金網12-1を結合コイルCで連結している。また、
図1(c)で説明したフラットバー16及びUボルトUBを使用した取り付けも行っている。
なお、金網としては、本実施形態の連結金網12-1は、実施形態1の連結金網12と同じものであるが、連結金網12-1が連結金網12と違う金網であっても勿論良い。
また、予防柵11と連結金網12-1の連結方法を任意のものとしてよい点は実施形態1と同様である。
【0037】
本実施形態の予防施設1-1によれば、連結金網が、前記複数の予防若しくは防護柵にわたって全面的に設けられているため、柵間の雪漏れが防止されると共に、横部材の間から雪漏れが生じることも防止される。
【0038】
<実施形態3>
図3は実施形態3の予防施設を示す概略図であり、
図3(a)は設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図3(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-2は、連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網を備える点で実施形態2と異なっており、その他の点では基本的に実施形態2と同様である。実施形態1や2と同様の構成については、実施形態1や2と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0039】
積雪が高くなってくると、予防施設の上端部にかかる雪圧(沈降圧)も大きくなる。当該荷重によって連結金網に撓み等の変形が生じてしまうと、その分の柵高が不足し、本来の性能を発揮できなくなる恐れがある。特に、特許文献1の
図5、6で説明されているような雪庇が形成されると、このような問題がより顕在化する恐れがある。
このような問題を低減するために、連結金網の上端付近に荷重受け上側部材を備えさせるようにするとよい。本実施形態の予防施設1-2は、この“荷重受け上側部材”として、連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網13を備えているものである。
【0040】
上端補強金網13は、金網としては実施形態1の連結金網12と同様のものであるが、上端補強金網13が連結金網12と違う金網であっても勿論良い。例えば、積雪が多い場合や吹き溜まり等が予想されることにより、上述の問題が顕著になる場合に、上端補強金網13として強度の高い金網を用いるようにしてもよい。
上端補強金網13は、
図3(b)に示されるように、連結金網12-1の上端において、折りたたまれて連結金網12-1の両サイドから挟み込むように配置される。
折りたたまれた上端補強金網13の下端付近において、結合コイルC1を用いて、折りたたまれた上端補強金網13の両端と連結金網12-1を結合する。また、予防柵11の幅方向における上端補強金網13の両端は、予防柵11の支柱の内側となる箇所まで至り、予防柵11の支柱の内側となる箇所で、結合コイルC1による結合がされる。これにより、荷重受け上側部材としての機能(雪圧に対する耐力)がより高くなる。
なお、結合コイルC1は実施形態1の結合コイルCと同様のものである。連結金網12-1と上端補強金網13の結合において、これらを予防柵11の横部材等と一緒に結合コイルC1で巻き付けるようにするものであっても勿論よい。
上端補強金網13は、その列線が水平方向となるように配される。このような向きであることにより、連結金網12-1の上端において上端補強金網13を折りたたむ際の作業性に優れる。また、連結金網12-1と上端補強金網13の列線方向の向きを異なるようにすることで、多方向の荷重に対しての耐力が向上される。
【0041】
本実施形態の予防施設1-2によれば、上端補強金網13を備えることにより、連結金網12-1の雪圧に対する耐力を向上することができ、積雪が高くなった際にも性能を維持することができる。
【0042】
<実施形態4>
図4は実施形態4の予防施設を示す概略図であり、
図4(a)は設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図4(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-3は、連結金網を保持するための中間支柱を備える点で実施形態1と異なっており、その他の点では基本的に実施形態1と同様である。実施形態1と同様の構成については、実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0043】
中間支柱14は、連結金網12を保持するために、予防柵11の間に設けられるものである。例えば、予防柵11の間隔が、予防柵11の辺縁荷重の設計を超えるようなものとなる場合に、中間支柱14を設ける。または、実施形態3で説明したような連結金網12の雪圧に対する耐力を向上させるために設ける。
【0044】
本実施形態の中間支柱14は、以下で説明する実施形態5と同様のものであり、
図6(実施形態5の斜視図)に示されるように、予防柵11の支柱111と同じものを利用しており、図示しないアンカーに接続されるワイヤロープWによって吊持されている。なお、中間支柱が予防柵の支柱と異なるものであってよいことは勿論である。
中間支柱14は、連結金網12より谷側に設けられ、中間支柱14と連結金網12は、ボルトBとナットNによって中間支柱14に対してボルト留めされるフラットバー16が、連結金網12の上から取り付けられることによって、締結される。
【0045】
本実施形態の予防施設1-3によれば、中間支柱14を備えることにより、予防柵11の間隔が、予防柵11の辺縁荷重の設計を超えるようなものとなる場合においても、耐荷重を十分なものとすることができる。また、中間支柱14によって連結金網12の雪圧に対する耐力を向上させることができる。中間支柱14は、これら2つの目的を同時に満たすものとして使用するものであってもよいし、何れか一方の目的にのみ用いられるものであってもよい。なお、連結金網12の雪圧に対する耐力を向上させる目的だけの場合、必ずしもアンカーによる吊持は必要ない。
【0046】
中間支柱は、正面視において左右方向(柵の幅方向)への中間支柱の傾きや転倒を低減するために、柵の幅方向に所定の寸法を持たせるようにしてもよい。
図12には、そのようなものの一例を示した。
図12(a)の中間支柱14-1は、脚部において逆V字状に広がる構成を有している。
図12(b)の中間支柱14-2は、全体的に柵の幅方向に広がる構成(予防柵11のスパンを短くしたものと同様の構成)を有している
【0047】
<実施形態5>
図5は実施形態5の予防施設を示す概略図であり、
図5(a)は、設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図5(b)は概略側面図である。また、
図6は同予防施設を山側になる方から見た斜視図である。
本実施形態の予防施設1-4は、連結金網の上端に取り付けられた上端補強金網を備える点で実施形態4と異なっており、その他の点では基本的に実施形態4と同様である。実施形態4と同様の構成については、実施形態4と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0048】
連結金網12の上端に取り付けられる上端補強金網13は、実施形態3と同様のものである。上端補強金網13は、中間支柱14に対しても、その上端で折りたたまれて中間支柱14の両面から挟み込むように配置される。上端補強金網13に関するその他の構成については、実施形態3と同様であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
【0049】
本実施形態の予防施設1-4によれば、実施形態1、3、4で説明した各効果を併せ持つことができる。
【0050】
<実施形態6>
図7は実施形態6の予防施設を示す概略図であり、
図7(a)は設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図7(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-5は、荷重受け上側部材としての横部材を備える点で実施形態5と異なっており、その他の点では基本的に実施形態5と同様である。実施形態5と同様の構成については、実施形態5と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0051】
横部材15は、中間支柱14の上端付近に固定された梁状の部材である。横部材15は、予防施設の上端部にかかる雪圧に対する耐力をより向上させる部材である。
横部材15は、
図7(a)に示されるように、予防柵11との間で間隔を有して配される(短い)ものであってもよいし、
図7(c)に示される予防施設1-6のように、隣り合う予防柵11の間隔以上の長さを有しているものであってよい。後者のほうが、連結金網12の雪圧による変形やたるみ等をより確実に抑止することができる。後者の場合において、横部材15と、予防柵11の横部材を相互に接続するようにしてもよい。
上端補強金網13は、横部材15に対しても、折りたたまれて横部材15の両面から挟み込むように配置される(
図7(b)の拡大図参照)。
なお、本実施形態の横部材15は、予防柵11の横部材112と同様の鋼管を使用しているが、予防柵11の横部材112と異なる仕様の部材を用いてよいことは勿論である。例えば、積雪が多い場合や吹き溜まり等が予想される場合に、上横部材15により曲げ強度の高い部材を用いる等してもよい。
【0052】
本実施形態の予防施設1-5、1-6によれば、中間支柱14の上端付近に固定された横部材15を備えることにより、連結金網12の雪圧に対する耐力をより向上することができる。また、実施形態1、3、4、5で説明した各効果を併せ持つことができる。
なお、予防施設1-6(
図7(c))のように横部材15の長さを隣り合う予防柵11の間隔以上とする場合であって、横部材15と、予防柵11の横部材を相互に接続する場合には、中間支柱14を用いないようにすることもできる。
また、本実施形態では、上端補強金網13を設けるようにしているが、上端補強金網13を設けないものであってもよい。横部材15と連結金網12の上端部を結合コイルC等によって結合させることにより、連結金網12の雪圧に対する耐力を向上することができる。
【0053】
<実施形態7>
図8は実施形態7の予防施設を示す概略図であり、
図8(a)は、設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図8(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-7は、荷重受け下側部材として、連結金網の下端に取り付けられた下端補強金網を備えると共に、荷重受け下側部材としての横部材を備える点で実施形態6と異なっており、その他の点では基本的に実施形態6と同様である。実施形態6と同様の構成については、実施形態6と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0054】
積雪が高くなってくると、予防施設の下端部にかかる雪圧も大きくなる。雪圧による連結金網の撓み等による変形によって斜面との間に隙間が生じてしまうと、本来の性能を発揮できなくなる恐れがある。
このような問題を低減するために、連結金網の下端付近に荷重受け下側部材を備えさせるようにするとよい。本実施形態の予防施設1-7は、この“荷重受け下側部材”として、下端補強金網13-1と、横部材15-1を備えているものである。
下端補強金網13-1と、横部材15-1は、上下が逆になっていること以外は、上記説明した上端補強金網13と、横部材15と同様の構成である。
【0055】
本実施形態の予防施設1-7によれば、下端補強金網13-1と、横部材15-1を備えることにより、連結金網12の雪圧に対する耐力を向上することができ、積雪が高くなった際にも性能を維持することができる。
【0056】
<実施形態8>
図9は実施形態8の予防施設を示す概略図であり、
図8(a)は、設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図8(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-8は、中間支柱14、横部材15及び横部材15-1を備えていない点で実施形態7と異なっており、その他の点では基本的に実施形態7と同様である。実施形態7と同様の構成については、実施形態7と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0057】
例えば、予防柵11の柵間が狭く、中間支柱14や横部材15及び横部材15-1が必要ない場合には、本実施形態の予防施設1-8のようにすることで、経済性を高めることができる。
【0058】
<実施形態9>
図10は実施形態9の予防施設を示す概略図であり、
図10(a)は、設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図10(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-9は、予防柵の間を連結する第2の連結金網をさらに備える点で実施形態2と異なっており、その他の点では基本的に実施形態2と同様である。実施形態2と同様の構成については、実施形態2と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
【0059】
実施形態2と同様に、連結金網12-1は、その列線が垂直方向となるように配されている。これに対して、第2の連結金網12-2は、その列線が水平方向となるように配されている。
本実施形態における連結金網12-1と、第2の連結金網12-2の、予防柵11への取り付けは、
図1(c)で説明したフラットバー16及びUボルトUBを使用した取り付けと同様である。
図10に該当部分を拡大して示したように、各UボルトUBを予防柵11の各横部材にかけつつ、連結金網12-1と第2の連結金網12-2を通して、フラットバー16に形成された孔に挿通させ、ナットNを取り付けて締めることによって、連結金網12-1と第2の連結金網12-2の予防柵11への取り付けが同時に行われる。UボルトUB及びフラットバー16による締結箇所は、実施形態1で説明したのと同様に、予防柵11の支柱の内側となる箇所にするとよい。第2の連結金網12-2は、その上端部付近で折り返されて、連結金網12-1の両サイドから挟み込むように配置される。当該構成により、実施形態3で説明した上端補強金網13と同様の機能も併せ持つものである。同様に、第2の連結金網12-2は、その下端部付近で折り返されて、連結金網12-1の両サイドから挟み込むように配置される。当該構成により、実施形態7で説明した下端補強金網13-1と同様の機能も併せ持つものである。
また、コイルC2によって、連結金網12-1と連結金網12-2を相互に締結している。これにより、連結金網12-1と連結金網12-2が一体化され、多方向の荷重に対して優れた耐力を有する。設置時には金網の柔軟性を有しつつ、連結金網12-1と第2の連結金網12-2を一体化した後は、ある程度の剛性を有し、高い耐力を備えるようにすることができるものである。コイルC2はコイルCと同様のものである。
なお、第2の連結金網12-2は、金網としては実施形態1の連結金網12と同じものであるが、第2の連結金網12-2が連結金網12と違う金網であっても勿論良い。
また、本実施形態では、実施形態2(全面的に連結金網が設けられているもの)に対して第2の連結金網12-2を設けるものを例としているが、これに限られるものではなく、上記説明した任意の実施形態に対して第2の連結金網12-2を設けることができる。
【0060】
金網の展開方向に関し、斜面雪圧を受け止める展開としては、金網を設置延長方向に横展開(列線が垂直方向)することが好ましい。一方で、金網を横展開(列線が垂直方向)にすると、沈降圧に対しては弱い面がある。
これに対し、金網を設置延長方向に縦展開(列線が水平方向)する場合、斜面雪圧により、側面視でくの字となるように撓みやすい傾向となる。
本実施形態の予防施設1-9では、連結金網12-1と第2の連結金網12-2の列線方向の向きを異なるように配置していることで、多方向の荷重に対しての耐力が向上されるようにしている。
また、第2の連結金網12-2の上端部付近を折り返して連結金網12-1の両サイドから挟み込むような配置とすることにより、沈降圧に対する耐力も有することができる。
さらに、連結金網12-1と連結金網12-2を相互に締結することで、連結金網12-1と連結金網12-2が一体化することにより、高い剛性を得ることができ、“撓み”そのものを低減することができる。加えて、例えば、上記説明したように柵の姿勢や位置に変動が生じることによる、予期せぬ方向からの荷重に対しても“面”としての抵抗が期待でき、また、柵本体の異常な傾きの抑止にも繋がるという効果も期待できる。
【0061】
本実施形態の予防施設1-9によれば、実施形態2の予防施設と同様の作用効果が得られると共に、さらに第2の連結金網12-2を備えることにより、柵間における受面としての耐力を向上することができる。
特に、連結金網12-1と第2の連結金網12-2の列線方向の向きを異なるようにすることで、多方向の荷重に対しての耐力が向上される。
なお、ここでは連結金網12-1の列線が垂直方向となるように配され、第2の連結金網12-2の列線が水平方向となるように配されているものを例としているが、連結金網12-1の列線が水平方向となるように配され、第2の連結金網12-2の列線が垂直方向となるように配されるようにしてもよい。加えて、連結金網12-1の列線の方向と第2の連結金網12-2の列線の方向が直交するものに限るものではなく、両者の方向が相違するものであれば、相応の効果を得ることができる。
また、ここでは、金網が2重のものであるものを例としているが、3重以上に金網を重ねるものであってもよい。3重以上にする場合においても、相互に列線の方向を異ならせるようにするとよい点や、相互に締結して一体化しするとよい点等は、上述の通りである。
【0062】
なお、2重以上に金網を重ねる場合において、予防柵と連結金網の連結方法として
図13で説明した連結金網の中にフラットバーを挿入させる方法を用いる場合の施工方法を
図14に示した。
先ず、
図13で説明したフラットバー16´を使用した連結金網の締結と同様に、連結金網12-1を敷設する(
図14(a))。ただし、ナットNは仮止めの状態でよい。
次に、第2の連結金網12-2を連結金網12-1に重ねて敷設する(
図14(b))。その際、連結金網12-1の敷設で仮止めしていたナットNを外し、第2の連結金網12-2を密接させる。更に、その上からフラットバー16´-1を使用し、2枚の金網を挟み込み締め付けるようにナットNを適度に締め付ける(
図14(c))。なお、ここでは、フラットバー16´-1として、UボルトUB1個あたりに対応する長さのフラットバー16´-1を例としているが、フラットバー16´-1の長さは、第2の連結金網12-2を取り付けることが可能な任意の長さとすることができる。
金網にかかる荷重は基本的に斜面に平行にかかる雪圧の方が大きく、従って横展開の金
網(連結金網12-1)が負担する割合が多い。連結金網12-1中にフラットバー16´を挿入させる構成により、横展開の金網強度を100%発揮できるよう、金網交点の全てを掴み、しっかりと柵本体に固結することで、2枚目(以降)の沈降圧対応の縦展開金網(第2の連結金網12-2)も、その効果を有効に発揮することが出来る。
【0063】
<実施形態10>
図11は実施形態10の予防施設を示す概略図であり、
図11(a)は、設置状態において山側になる方から見た概略平面図、
図11(b)は概略側面図である。
本実施形態の予防施設1-10は、実施形態1の予防施設1に対して、予防柵の間を連結する第2の連結金網をさらに備えさせたものである。即ち、実施形態9との比較においては、連結金網12-1に替えて、連結金網12としたものである。実施形態1や9と同様の構成については、実施形態1や9と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
【0064】
以上、各実施形態で示したように、本発明の予防施設によれば、起伏がある斜面において複数の予防若しくは防護柵を設置する予防若しくは防護施設においても経済性に優れている。
また、それぞれが個別に変位し得る複数の吊柵において、その柵間を、柔軟性を有して連結することが可能であり、経済性においても優れている。
加えて、本発明の予防若しくは防護施設の施工方法によれば、既存の予防若しくは防護柵に対して連結金網を追加することができるため、既存の施設を有効利用することができる。
【0065】
なお、各実施形態では、図面の都合上、2つ若しくは3つの予防柵11の間を連結金網12で接続するものを図示しているが、上記説明からも理解されるように、より多数の予防若しくは防護柵を、連結金網にて連結することができる。
また、各実施形態では、予防若しくは防護施設の例として、雪崩予防施設について説明したが、本発明の予防若しくは防護施設をこれに限るものではなく、例えば、落石及び土砂(崩壊)に対する防護柵や予防柵等、各種の予防若しくは防護柵に対して用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1...予防施設
11...予防柵
12...連結金網
12-2...第2の連結金網
13...上端補強金網(荷重受け上側部材)
13-1...下端補強金網(荷重受け下側部材)
14...中間支柱
15...横部材(荷重受け上側部材)
15-1...横部材(荷重受け下側部材)