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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】調節性眼内レンズ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020072347
(22)【出願日】2020-04-14
(62)【分割の表示】P 2017111454の分割
【原出願日】2012-11-08
(65)【公開番号】P2020124542
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-05-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】61/557,237
(32)【優先日】2011-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】テラ・ホワイティング・スマイリー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヒルドブランド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・パトリック・フラハティ
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520010(JP,A)
【文献】特表2009-511230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0060878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプティック流体室を備えるオプティック部と、
該オプティック部に固定されかつ該オプティック部から周辺に延びるハプティックであって、該ハプティックは、前記オプティック流体室と流体連通するハプティック流体室を備えるハプティックとを備える調節性眼内レンズであって、
前記ハプティックは、嚢袋をはめ込むよう構成され、かつ調節性眼内レンズの光学パラメータを変えるために、前記ハプティック流体室と前記オプティック流体室との間で流体を動かす毛様体筋の動きによる嚢の再形成に応じて変形し、
前記ハプティックは、前記オプティック部に直接隣接した半径方向内側部と、前記オプティック部から半径方向においてさらに離れて配置されている半径方向外側部とを備え、前記ハプティックは、前記オプティック部には直接的に取り付けられていない、流体的に閉鎖された遠位端を備え、
前記ハプティック流体室は、半径方向外側室壁であって、前記半径方向外側部が前記半径方向外側室壁を備える、半径方向外側室壁と、半径方向内側室壁であって、前記半径方向内側部が半径方向内側室壁を備える、半径方向内側室壁の間において形成されており、
前記半径方向内側室壁は、前記半径方向外側室壁よりも湾曲が小さい、調節性眼内レンズ。
【請求項2】
断面図において前記ハプティック流体室の構造は、D字型を有する、請求項1に記載の調節性眼内レンズ。
【請求項3】
前記ハプティックは、前後方向の力に応じてよりも、半径方向の力に応じてより変形するように構成されている、請求項1に記載の調節性眼内レンズ。
【請求項4】
前記ハプティックは、前後方向における前記ハプティックへの力に応じてよりも、半径方向における前記ハプティックへの力に応じて、前記ハプティック流体室と前記オプティック流体室の間でより多くの体積の流体が動くように構成されている、請求項に記載の調節性眼内レンズ。
【請求項5】
前記半径方向内側部の厚さは前記半径方向外側部の厚さの約3倍の厚さである、請求項1に記載の調節性眼内レンズ。
【請求項6】
前記半径方向内側部の厚さは前記半径方向外側部の厚さの約2倍の厚さである、請求項1に記載の調節性眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当出願は、2011年11月8日に出願された米国仮出願61/557237の利点を主張するものであり、当該出願は、参照によって本願明細書に組み込まれる。
【0002】
当明細書において言及されるあらゆる出版物と特許出願は、それぞれ個々の出版物あるいは特許出願が、参照によって組み込まれると具体的かつ個々に述べられたかのように、同程度に参照によって本願明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
水晶体は目の中の透明かつ両凸の構造体であり、角膜とともに網膜上に集光する光を屈折させるのを助ける。水晶体は、形状を変えることで、目の焦点距離を変えるよう機能するので、様々な距離の物体に集光することができる。水晶体のこの調節は、遠近調節(accommodation)として知られる。水晶体嚢は、水晶体を完全に取り囲む滑らかで透明な膜組織である。水晶体嚢は弾性があり、コラーゲンから成る。水晶体はフレキシブルで、その曲率は、毛様小体を通じて毛様体筋(ciliary muscle)によってコントロールされ、当該毛様小体は、毛様体筋と水晶体嚢の赤道領域とを連結する。短焦点距離では、毛様体筋が収縮し、毛様小体(zonules)が緩み、水晶体が厚くなって、結果的により丸い形になって、それゆえ屈折力が高くなる。より大きい距離の物体へ焦点を変えるには、毛様体筋を弛緩させることが必要であり、毛様体筋の弛緩によって毛様小体の応力が増大し、水晶体を平たくし、それゆえ焦点距離を増大させる。
【0004】
水晶体は除去することができ、様々な理由で、一般的に眼内レンズと呼ばれる人工レンズと交換できる。いくつかの眼内レンズは、白内障の水晶体を交換するために使われ、白内障は、目の水晶体内で発症する混濁が光の通りを妨げる。眼内レンズは、非調節性あるいは調節性で特徴づけられ得る。調節性眼内レンズは、自然の水晶体と同様に機能するよう設計され、近視力と遠視力とをもたらすパワー(power)を変えるよう適合されている。
【0005】
自然の水晶体は通常、嚢外摘出と呼ばれる手術によって除去される。手術には、嚢切開すなわち嚢の前側で行われる輪状切開を行って、続いて水晶体物質が除去されることが含まれる。交換眼内レンズはその後、輪状切開で形成された開口部を通って嚢内に置かれ得る。
【0006】
当出願が優先権を主張する、2010年1月11日に出願された特許文献1においてより詳細に説明されているように、嚢袋のサイズには患者ごとにばらつきがあり、嚢のサイズを測定する技術は不完全であり、目の内部であるいは調節性眼内レンズに起こり得る、埋め込み後の変化がある。望ましい調節性眼内レンズは、当該調節性眼内レンズが目の内部に埋め込まれた後で、そのレンズの基本状態あるいは基本パワー(本願明細書では「設定値」と呼ばれてもよい)がより予測可能となるが、毛様体の動きに応じてなお遠近調節するであろう、調節性眼内レンズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願第12/685531号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0306588号明細書
【文献】米国特許出願第13/033474号明細書
【発明の概要】
【0008】
開示内容の一態様は、オプティック流体室を備えるオプティック部と、オプティック部に固定されかつ当該オプティック部から周辺に延びるハプティックであって、当該ハプティックは、複数の流体路を通ってオプティック流体室と流体連通するハプティック流体室を備えるハプティックとを備える調節性眼内レンズであり、ハプティックは、嚢袋をはめ込むよう適合され、かつ調節性眼内レンズの光学パラメータを変えるために、ハプティック流体室とオプティック流体室との間で流体を動かす毛様体筋の動きによる嚢の再形成に応じて変形する。
【0009】
いくつかの実施形態において、ハプティックは、オプティックの周辺の周囲180度より小さい角度で延在する箇所でオプティックに固定される。ハプティックは、オプティックの周辺の周囲90度より小さい角度で延在する箇所でオプティックに固定され得る。ハ
プティックは、オプティックの周辺の周囲約45度あるいはそれより小さい角度で延在する箇所でオプティックに固定され得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、オプティック部は、中に複数の流路が形成されているバットレス部を備える。ハプティックは、ハプティック流体室と流体連通するバットレス開口部を備えることができ、当該バットレス開口部は、その中にバットレス部を受容する大きさでありかつそのように構成されている。
【0011】
開示内容の一態様は、オプティック流体室を備えるオプティック部と、オプティック流体室と流体連通する周辺流体室を有する周辺非オプティック部であって、当該周辺非オプティック部は、嚢袋をはめ込むよう適合され、かつ調節性眼内レンズの光学パラメータを変えるために、周辺流体室とオプティック流体室との間で流体を動かす毛様体筋の動きによる嚢の再形成に応じて変形する周辺非オプティック部とを備える調節性眼内レンズであり、前後方向に延在する平面での周辺非オプティック部の断面において、周辺部の半径方向内側本体部は、周辺部の幅の約半分の厚さを有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、半径方向内側本体部は、周辺部の半径方向外側本体部の少なくとも2倍の厚さを有する。半径方向内側本体部は、周辺部の半径方向外側本体部の少なくとも3倍の厚さを有してよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、断面図において流体室の構造は、実質的にD字型である。
【0014】
開示内容の一態様は、オプティック流体室を備えるオプティック部と、オプティック流体室と流体連通する周辺流体室を有する周辺非オプティック部であって、当該周辺非オプティック部は、嚢袋をはめ込むよう適合され、かつ調節性眼内レンズの光学パラメータを変えるために、周辺流体室とオプティック流体室との間で流体を動かす毛様体筋の動きによる嚢の再形成に応じて変形する周辺非オプティック部とを備える調節性眼内レンズであり、嚢袋をはめ込むよう適合された周辺非オプティック部の領域において、周辺部は、ハプティックの外面が第1構造を有する前後方向に延在する平面で第1断面を有し、ハプティックの外面が第1構造とは異なる第2構造を有する前後方向に延在する平面で第2断面を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1断面は、一般的に楕円形の構造を有する外面を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1断面は、一般的なD字型の構造を有する外面を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1断面は、半径方向内側部が半径方向外側部よりも直線的になっている外面を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1断面において周辺流体室は第1流体室構造を有し、第2断面において周辺流体室は、第1流体室構造とほぼ同じである第2流体室構造を有する。第1流体室構造と第2流体室構造とは、半径方向外側面よりも直線的な半径方向内側面を有してよい。第1流体室構造と第2流体室構造とは、実質的にD字型であってよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1断面において周辺部は、半径方向外側部よりも厚さが大きい半径方向内側本体部を有する。第1断面において周辺部は、半径方向外側部より少なくとも2倍厚い半径方向内側本体部を有してよい。
【0020】
開示内容の一態様は、オプティック流体室を備えるオプティック部と、オプティック流体室と流体連通する周辺流体室を有する周辺非オプティック部であって、当該周辺非オプティック部は、嚢袋をはめ込むよう適合され、かつ調節性眼内レンズの光学パラメータを変えるために、周辺流体室とオプティック流体室との間で流体を動かす毛様体筋の動きによる嚢の再形成に応じて変形する周辺非オプティック部とを備える調節性眼内レンズであり、前後方向に延在する平面の周辺非オプティック部の断面において、周辺流体室は、周辺部の半径方向外側部のほぼ全体に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは模範的な調節性眼内レンズを示す図である。
図1B図1Bは模範的な調節性眼内レンズを示す図である。
図1C図1C図1A図1Bの調節性眼内レンズの断面図である。
図1D図1Dは調節性眼内レンズの模範的な後部要素の上面図である。
図1E図1Eは調節性眼内レンズの模範的なオプティック部の組立て断面図である。
図1F図1Fは模範的なハプティックを示す図である。
図1G図1Gは模範的なハプティックを示す図である。
図1H図1Hはオプティック部とハプティックとの間の模範的な連結を示す図である。
図2A図2Aは模範的なハプティックを示す図である。
図2B図2Bは模範的なハプティックを示す図である。
図2C図2Cは模範的なハプティックを示す図である。
図2D図2D図2Aのハプティックの断面図である。
図2E図2E図2Aのハプティックの断面図である。
図2F図2F図2Aのハプティックの断面図である。
図2G図2G図2Aから図2Cのハプティックの第1端部における開口部を示す図である。
図3図3は調節性眼内レンズの模範的な直径を示す図である。
図4図4は模範的なハプティックを示す図である。
図5A図5Aは模範的な力に応じた、模範的なハプティックの変形を示す図である。
図5B図5Bは模範的な力に応じた、模範的なハプティックの変形を示す図である。
図6図6は模範的なハプティックにおける模範的な流体開口部を示す図である。
図7図7は模範的なハプティックにおける模範的な流体開口部を示す図である。
図8図8は模範的な調節性眼内レンズの断面図である。
図9図9は相対的にハプティックが短い模範的な調節性眼内レンズの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示内容は一般的に、調節性眼内レンズに関する。いくつかの実施形態において、本願明細書に記述される調節性眼内レンズは、自然の水晶体が除去された自然の嚢袋の内部に位置するのに適合されている。これらの実施形態において、周辺非オプティック部(すなわち、網膜に光を集めるよう特に適合されていない部分)は、毛様体筋の弛緩と収縮とによる嚢袋の再形成に反応するよう適合されている。反応は、眼内レンズの光学パラメータ(たとえばパワー)を変えるために、周辺部とオプティック部との間で流体を移動させる、周辺部の変形である。
【0023】
本願明細書に記述される調節性眼内レンズの周辺部は、当該周辺部の少なくとも1つが、あるタイプの嚢の力に対して、他のタイプの嚢の力に対してほど反応しないか、あるいは敏感でないように、適合されている。本願明細書で使われるような、あまり反応しない、あるいはあまり敏感でないというのは、一般的に、調節性眼内レンズの光学パワーが、周辺部が他のタイプの力に対してほど敏感ではない力のタイプに応じてあまり変化しないであろうことを意味する。一般的に、周辺部は、前後方向の力に対して、半径方向の力に対してほど反応しない。いくつかのケースにおいては、前後方向の力は、たとえば嚢袋と
眼内レンズとの間のサイズの不一致あるいは嚢袋の治癒反応からの、非毛様体筋が関連する嚢の力である。本願明細書に記述されるような半径方向の力は、嚢の再形成と、毛様体筋の収縮と弛緩とに起因し、調節性眼内レンズの調節をもたらす嚢の力とである。それゆえ本願明細書における調節性眼内レンズは、前後方向の力に対してよりも、半径方向の力に対してより敏感であると見なされ、それゆえ調節性眼内レンズの光学パワーは、前後方向の力に応じてよりも、半径方向の力に応じて、より変化するであろう。
【0024】
本願明細書に記述される周辺部の利点の1つは、調節性レンズをして調節可能にする半径方向の力に対する周辺部の半径方向の敏感性をまだ維持している間に、予測可能なやり方で、周辺部が嚢を、原則的に「支えて」開けておくことによって、再形成することである。嚢サイズにおける1つあるいは複数の解剖学的変動による、調節性眼内レンズの基本状態における変動、不正確な嚢測定、あるいは嚢における埋め込み後の変化は減少している。なぜなら、周辺部が、少なくとも1つの方向で嚢をより予測可能に再形成するよう適合されるからである。いくつかの実施形態において、周辺部は、より予測可能なやり方で嚢を再形成するよう適合されている。なぜなら、嚢は少なくとも1つの方向でより硬いからである。たとえばいくつかの実施形態において、周辺部は、半径方向においてよりも前後方向においてより硬い。これらの実施形態において、周辺部は、前後方向に嚢を支えて開けておくよう適合されている。
【0025】
本願明細書で使われるような、「前後」あるいはその派生語は、光軸に対して完全に平行な方向に限定されるよう意図されておらず、前後方向と通常呼ばれる一般的な方向を意味すると解釈される。たとえば、限定されることなしに、「前後」方向は、調節性眼内レンズの光軸から10度の方向あるいは軸を含む。本願明細書に記述される「半径方向の」力は、前後方向にあると見なされるべきではない。
【0026】
図1Aは、調節性眼内レンズ10を説明する上面図であり、当該調節性眼内レンズ10は、オプティック部12と、この実施形態においては、オプティック部12に連結され、かつ当該オプティック部12から周辺に延在する第1ハプティック14と第2ハプティック14とを含む周辺部とを含む。オプティック部12は、目の網膜に入る光を屈折させるよう適合されている。ハプティック14は、嚢袋をはめ込むように構成され、嚢袋の再形成に関連する毛様体筋に応じて変形するように適合されている。図1Bは、オプティック部12と、オプティック部12に連結されたハプティック14とを示す、眼内レンズ10の斜視図である。
【0027】
ハプティックは、オプティック部と流体連通している。各ハプティックは、オプティック部内のオプティック流体室と流体連通する流体室を有する。ハプティックは変形可能な材料で形成されており、嚢袋をはめ込むよう適合され、嚢袋の再形成に関連する毛様体筋に応じて変形する。ハプティックが変形すると、ハプティック流体室の容積が変化し、ハプティック流体室内とオプティック流体室内に配置された流体を、ハプティック流体室からオプティック流体室内に移動させるか、あるいはオプティック流体室からハプティック流体室内に移動させる。ハプティック流体室の容積が減ると、流体はオプティック流体室内に移動する。ハプティック流体室の容積が増えると、流体はオプティック流体室からハプティック流体室内に移動する。オプティック流体室への、およびオプティック流体室からの流体の流れは、オプティック部の構造と眼内レンズのパワーとを変化させる。
【0028】
図1Cは、図1Aで表わされたセクションA-Aを通る側断面図である。オプティック部12は、変形可能な後部要素20に固定された変形可能な前部要素18を含む。各ハプティック14は、オプティック部12内のオプティック流体室24と流体連通している流体室22を含む。図中で左側のハプティック14とオプティック部12との間の連結部のみが、(隠されてはいるが)図1Cの断面図で示されている。図中で左側のハプティック
流体室22は、後部要素20内に形成された2つの開孔部26を介して、オプティック流体室24と流体連通して示されている。図1Cで右側のハプティック14は、示された開孔部からほぼ180度で後部要素内に形成された(図示されず)、2つのさらなる開孔部を介して、オプティック流体室24と流体連通している。
【0029】
図1Dは、後部要素20の上面図である(前部要素18とハプティック14とは図示されず)。後部要素20は、中に流路32が形成されているバットレス部29を含む。流路32は、オプティック部12とハプティック14との間の流体連通をもたらす。開孔部26は、流路32の一端部に配置されている。したがってオプティック流体室24は、2つの流路を介して唯一のハプティックと流体連通している。バットレス部29は、以下に記述されるように、ハプティック流体室の一端部を画成する、ハプティック14内に形成された開口部内部に配置されるように構成されかつ寸法づけられる。バットレス部29の各々は、その中に形成された2つの流路を含む。第1バットレス内の第1流路は、第2バットレス内の第1流路と一直線になっている。第1バットレス内の第2流路は、第2バットレス内の第2流路と一直線になっている。
【0030】
1つの流路とは対照的に、各バットレス内に2つの流路を有することには有利な点がある。1つの流路ではなく2つの流路を有する設計は、フレキシブルで薄いコンポーネントを組み立てるときに重要となり得る、組立て中の寸法安定性を維持するのを助ける。その上、1つの流路を有する設計のいくつかは、調節域にわたって充分な光学上の品質をもたらさないことが、実験を通じて観測された。本願明細書で記述された、2流路バットレスの設計は、特にレンズが調節されたときに、非点収差を減らすことが分かった。バットレスの剛性が、2つの流路間のリブ部によって増すので、これらの実施形態において、非点収差は減少する。さらなる剛性は、流路内の圧力変化によって偏差をより小さくする。流路内の圧力変化によって偏差がより小さくなると、非点収差が少なくなる。いくつかの実施形態において、流路の直径は、約0.4mmから約0.6mmである。いくつかの実施形態において、流路の直径は、約0.5mmである。いくつかの実施形態において、開孔部間の距離は、約0.1mmから約1.0mmである。
【0031】
図1Eは、前部要素18と後部要素20とを含む、オプティック部12のセクションA-Aを通る組立て側面図である(明確にするために、ハプティックは図示されず)。後部要素20内に流体流路32を含むことによって、後部要素20は、流路32が通って形成され得る充分な構造体を有する必要がある。バットレス部29は、中に流路32が形成され得るその構造体を提供する。最周辺部では、後部要素20は、前後方向において前部要素18よりも長い。代替的な実施形態において、流路は、後部要素20ではなく前部要素18に形成されてよい。前部要素は、バットレス部29あるいは、中に流路が形成され得る構造体を提供する他の類似の構造体を含むであろう。これらの代替的な実施形態において、後部要素は、前部要素18と類似して形成されてよいであろう。
【0032】
図1Eに示されているように、後部要素20は、後部要素20の周辺の周囲に延在しかつ平坦面である周辺面28で前部要素18に固定されている。要素18、20は、既知の生体適合性接着剤を使って、互いに固定され得る。前部要素18と後部要素20は、2つの要素を互いに固定する必要をなくすために、1つの材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、前部要素18と後部要素20とが互いに固定される領域の直径は、約5.4mmから約6mmである。
【0033】
いくつかの実施形態において、(前後方向で測定された)前部要素18の厚さは、周辺よりも光軸(図1Cの「OA」)に沿った方が大きい。いくつかの実施形態において、厚さは、周辺から、光軸に沿った最厚部に向かって増大する。
【0034】
いくつかの実施形態において、後部要素20の厚さは、光軸に沿った箇所から、図1Cで識別される中央域「CR」の縁部に向かって減少する。厚さは再び、図1Cに見られ得るように、中央域CRの半径方向外側へ、周辺に向かって増大する。いくつかの特別な実施形態において、中央域CRは、直径が約3.75mmである。開孔部は、傾斜面30に形成されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.45mmから約0.55mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.0mmから約1.3mmである。
【0036】
いくつかの実施形態において、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.5mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.14mmである。
【0037】
いくつかの実施形態において、光軸に沿った前部要素18の厚さは、約0.45mmから約0.55mmであり、いくつかの実施形態においては、約0.50mmから約0.52mmである。いくつかの実施形態において、前部要素18の周辺の厚さは、約0.15mmから約0.4mmであり、いくつかの実施形態においては、約0.19mmから約0.38mmである。
【0038】
特別な一実施形態において、光軸に沿った前部要素18の厚さは、約0.52mmであり、前部要素18の周辺の厚さは、約0.38mmであり、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.5mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.14mmである。
【0039】
特別な一実施形態において、光軸に沿った前部要素18の厚さは、約0.5mmであり、前部要素18の周辺の厚さは、約0.3mmであり、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.5mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.14mmである。
【0040】
特別な一実施形態において、光軸に沿った前部要素18の厚さは、約0.51mmであり、前部要素18の周辺の厚さは、約0.24mmであり、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.5mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.14mmである。
【0041】
特別な一実施形態において、光軸に沿った前部要素18の厚さは、約0.52mmであり、前部要素18の周辺の厚さは、約0.19mmであり、光軸に沿った後部要素20の厚さは、約0.5mmであり、後部要素20の周辺の厚さは、約1.14mmである。
【0042】
オプティック部は、調節の間光学上の品質を維持するよう適合されている。このことによって、調節性眼内レンズが非調節構造と調節構造との間を移行する時に、オプティック部が光学上の品質を維持することが確実となる。いくつかの要因が、本願明細書の調節性眼内レンズの有利な特徴に寄与する。これらの要因は、前部要素18が後部要素20に固定される周辺領域と、オプティック部の中央域CR(図1C参照)内部の前部要素18と後部要素20との形状プロファイルと、前部要素18と後部要素20との厚さプロファイルとを含む。これらの寄与要因によって、光学パワーの範囲すべてで光学上の品質を維持するのに必要な形状を維持するように、前部要素と後部要素の両方が屈曲することが確実となる。
【0043】
図1Fは、眼内レンズ10の1つのハプティック14を説明している。(明確にするために、オプティック部12と第2ハプティックとは図示されず)。ハプティック14は、毛様小体の方向に向くのに適合された半径方向外側部13と、オプティックの周辺(図示されず)に向く半径方向内側部11とを含む。ハプティック14は、オプティック部12に固定される第1端部領域17と、閉じている第2端部領域19とを含む。ハプティック
14は、第1端部領域17に、ハプティックとの流体連通をもたらす開口部15も含む。この実施形態においては、開口部15は、その中にオプティック部12のバットレス部29を受容するように寸法づけられかつ構成される。
【0044】
図1Gは、中にバットレス部29を受容するよう適合されている、ハプティック14の開口部15の拡大図である。開口部15は、オプティックバットレス29の湾曲面と一致するよう形作られている湾曲面33、35を有する。面31は開口部15を取り囲み、オプティックの対応する面が固定され得る面を提供する。
【0045】
図1Hは、ハプティック14の開口部15内に配置された、後部要素20のバットレス部29(透視図)の上面拡大図である(明確にするために、オプティックの前部要素は図示されず)。流路32は、透視図で示されている。ハプティック14は、内面21で画成される流体室22を含む。流体は、ハプティック14の変形で流路32を通って、オプティック流体室とハプティック流体室22との間を移動する。
【0046】
図2Aは、図1A図1Hで示された1つのハプティック14を示す上面図である。オプティック部と第2ハプティックとは、示されていない。4つのセクションA-Dは、ハプティックを通って識別される。図2Bは、開口部15と閉鎖端部19とを示す、ハプティック14の側面図を説明している。図2Cは、半径方向外側部13と閉鎖端部19とを示す、ハプティック14の側面図である。
【0047】
図2Dは、図2Aで示されたセクションA-Aを通る断面図である。図2Aで示された4つのセクションのうち、セクションA-Aは、閉鎖端部19に最も近いセクションである。半径方向内側部11と半径方向外側部13とが識別される。面21で画成される流体流路22も示されている。このセクションにおいて、半径方向内側部40は、半径方向外側部42よりも半径方向に(「T」方向に)厚い。内側部40は、前後方向で嚢をより予測可能に再形成する、前後方向でのハプティックの剛性をもたらす。半径方向内側部40は、この断面図の対称軸に沿っている最大の厚さ寸法41を有する。ハプティック14の外面は一般的に、前後方向(「A-P」)の最大高さ寸法が、(「T」寸法で計測された)最大厚さ寸法よりも大きい楕円形の構造を有する。流体室22は、半径方向内側壁43が、半径方向外側壁45よりも湾曲が小さい(しかし、完全には直線状ではない)、一般的なD字型の構造を有する。半径方向外側部42は、毛様小体が付随する嚢袋をはめ込むが、より厚い半径方向内側部40は、オプティックに隣接して配置されている。
【0048】
図2Eは、図2Aで示されたセクションB-Bを説明している。セクションB-Bは、セクションA-Aとほぼ同じであり、図2Eは、両セクションの模範的な寸法をもたらす。半径方向内側部40は、(半径方向「T」に)中心線に沿って約0.75mmの最大厚さを有する。半径方向外側部42は、中心線に沿って約0.24mmの厚さを有する。流体室22は、約0.88mmの厚さを有する。ハプティック14は、中心線に沿って約1.87mmの厚さを有する。前後寸法でのハプティックの高さは、約2.97mmである。流体室の高さは、約2.60mmである。この実施形態においては、半径方向内側部40の厚さは、半径方向外側部42の厚さの約3倍である。いくつかの実施形態において、半径方向内側部40の厚さは、半径方向外側部42の厚さの約2倍である。いくつかの実施形態において、半径方向内側部40の厚さは、半径方向外側部42の厚さの約2倍から約3倍である。いくつかの実施形態において、半径方向内側部40の厚さは、半径方向外側部42の厚さの約1倍から約2倍である。
【0049】
流体室22は、ハプティック14の半径方向外側部内に配置されている。実質的に、このセクションにおけるハプティック14の半径方向内側領域全体は、バルク材である。流体室22は、面43、45によって画成されているので(図2D参照)、流体室22の位
置と寸法とは、半径方向外側部42と半径方向内側部40の厚さに左右される。
【0050】
図2Fは、図2Aで示されたセクションC-Cを説明している。セクションC-Cにおいて半径方向内側部40は、半径方向外側部42よりも若干厚いが、セクションC-Cにおいて半径方向内側部40は、セクションA-AやセクションB-Bにおける半径方向内側部40ほど厚くはない。この特別な実施形態においては、半径方向内側部40は、セクションC-Cにおいて約0.32mmである。半径方向外側部42は、厚さが、セクションA-AやセクションB-Bにおける半径方向外側の厚さと大体同じで、約0.24mmである。ハプティック14の外面は、セクションA-AやセクションB-Bにおける外面と同じ構造を有してはいない。セクションC-Cにおいて、ハプティック51の半径方向内側の外面は、セクションA-AやセクションB-Bにおけるよりもより直線状であり、セクションC-Cにおけるハプティックの外面に、一般的なD字型形状を与える。セクションC-Cにおいて流体室22は、セクションA-AやセクションB-Bのように、一般的なD字型である。セクションC-Cにおけるハプティックは、セクションA-AやセクションB-Bにおける流体室構造とほぼ同じ流体室構造を有するが、セクションA-AやセクションB-Bにおけるハプティック14の外面の構造とは異なる構造を有する外面を有する。
【0051】
セクションC-Cにおけるより薄い半径方向内側部40は、図1Aにおいて示されたアクセス経路23も作り出す。オプティック部12とハプティック14との間のこのスペースによって、医師は、手術中に1つあるいは複数の洗浄装置および/あるいは吸引装置をスペース23に挿入することができ、眼内レンズを目の中に運ぶのに用いられてよい粘弾性の流体を取り除くための吸引を行うことができる。経路23はハプティックの長さに沿ってどこにあってもよく、1つ以上の経路23が存在してよいであろう。本出願は、参照によって、ハプティック内に複数の経路を含む特許文献2の図23図24の開示内容と、そのテキストの記述とを組み込む。
【0052】
図2Gは、図2AのセクションD-Dを通る図を示している。ハプティック14は中に、本願明細書に記述されるようなオプティック部のバットレスを受容するよう適合されている開口部15を含む。この実施形態における開口部15の高さは、約0.92mmである。開口部の幅あるいは厚さは、約2.12mmである。
【0053】
図3は、オプティック部12(図示されず)と、2つのハプティック14(1つのハプティックだけが示されている)を含む周辺部との相対的な直径を説明している。この実施形態においては、オプティックは約6.1cmの直径を有するが、周辺部を含む調節性眼内レンズ全体では、約9.95cmの直径を有する。与えられた寸法に厳密に限定するように意図されてはいない。
【0054】
図4は、ハプティック14がオプティックの周囲約175度(すなわち、ほぼ180度)の角度に対することを示している、ハプティック14の上面図である。明確にするために、オプティック部は示されていない。それゆえ2つのハプティックはそれぞれ、オプティックの周囲約180度の角度に対する。ハプティック14の第1領域61は、約118度の模範的角度に対することが示されている。これはハプティック14の半径方向最外側部であり、嚢袋をはめ込むよう適合されており、嚢の形状変化に最も反応するように適合されている。領域61は、ハプティック14の最も反応する部分と考えられ得る。
【0055】
ハプティックのより硬い半径方向内側部の境界と見なされるセクションA-AとセクションB-Bとの間の角度は、約40度である。ハプティック14の硬い半径方向内側部は、オプティックの周辺に直接隣接して位置する。与えられた寸法や角度に厳密に限定するように意図されてはいない。
【0056】
図5A図5Bは、自然の水晶体が嚢袋(「CB」)から除去された後にCB内に位置する調節性眼内レンズ10の一部を説明している。それぞれの図において、前方向が上になり、後方向が下になる。図5Aは、図5Bで示される高パワーあるいは調節された構造と比べて、より低パワーのあるいは非調節の構造での調節性眼内レンズを示している。
【0057】
弾性のある嚢袋「CB」は毛様小体「Z」と連結されており、当該毛様小体は毛様体筋「CM」と連結されている。図5Aに示されるように、毛様体筋が弛緩すると、毛様小体が伸びる。この伸びが、嚢袋と毛様小体との間の一般的な赤道連結箇所による半径方向外側への力「R」によって、一般的に半径方向外側への方向に嚢袋を引っ張る。毛様小体の伸びは、嚢袋の一般的な伸長と薄化とを招く。自然の水晶体が嚢袋内にまだあれば、自然の水晶体は(前後方向に)より平らになり、半径方向により長くなり、水晶体にあまりパワーを与えない。図5Aで示されるような毛様体筋の弛緩は、遠視力をもたらす。しかしながら、目が近くの物体に焦点を合わせようとするときに起こるように、毛様体筋が収縮すると、筋肉の半径方向内側部が半径方向内側に動き、毛様小体を緩ませる。これは、図5Bに説明されている。毛様小体の緩みによって、嚢袋は、前面が非調節構造よりもより大きな曲率を有する、一般的により湾曲した構造に向かって動くことが可能になり、より高いパワーをもたらし、目が近くの物体に集光するのを可能にする。これは一般的に「遠近調節」と呼ばれ、レンズは「調節性」構造にあると考えられる。
【0058】
図5A図5Bとで説明された、ハプティック14のセクションA-A(セクションB-Bと同じ)において、半径方向内側部40は、ハプティック14に前後方向での剛性を与える、より厚いバルク材を含む。嚢袋の力が、前後方向でハプティックに加えられると、内側部40はその剛性によって、レンズの基本状態をより予測可能にするより反復可能かつ予測可能な方法で、変形する。その上、ハプティックはそのより硬い内側部によって、前後方向に反復可能なやり方で嚢を変形させる。その上、ハプティックはその長手方向に沿ってあまりフレキシブルでないので、調節性眼内レンズの基本状態はより予測可能である。なぜなら、ハプティックの長手方向に沿った曲げは、流体がオプティック内に移動できる1つのやり方であるからである(したがって、レンズのパワーを変える)。より硬い内側部で実現されるさらなる利点は、ハプティックが、内側部の追加バルクゆえに、トルクや傾きのような他の力に対してより硬いということである。
【0059】
半径方向外側部42は、毛様小体に連結されている嚢袋の一部を直接はめ込む、ハプティックの一部である。ハプティックの外側部42は、毛様小体が弛緩して伸びると一般的に半径方向に加えられる嚢の再形成力「R」に反応するよう適合されている。これによって、ハプティックが、力(すなわち、嚢の収縮と弛緩)に関連する毛様体筋に応じて変形でき、その結果流体は、毛様体筋の弛緩と収縮とに応じて、ハプティックとオプティックとの間を流れる。これは、図5Bで説明されている。毛様体筋が収縮すると(図5B)、弾性のある嚢袋の周辺領域が再形成され、ハプティック14の半径方向外側部42に、半径方向内側への力「R」を加える。半径方向外側部42は、この嚢の再形成に応じて変形するよう適合されている。変形は流体室22の容積を減らし、これにより流体がハプティック室22からオプティック室24へと追いやられる。これによって、オプティック室24内の流体圧力が増加する。流体圧力の増加は、フレキシブルな前部要素18とフレキシブルな後部要素20とを変形させ、曲率が増加し、それにより眼内レンズのパワーを増加させる。
【0060】
ハプティックは、半径方向においてよりも前後方向においてより硬いように適合されている。この実施形態においては、ハプティック14の半径方向外側部42は半径方向において、前後方向におけるより硬い内側部40よりも、フレキシブルである(すなわち、硬くない)。これは、外側部42と内側部40との相対的な厚さによるものである。それゆえハプティックは、半径方向の力よりも前後方向の力に応じて、より変形が小さい。また、このことによって、半径方向の力に応じてオプティック内に移動させる流体よりも、前後方向の力に応じてハプティックからオプティック内に移動させる流体の方が少なくなる。ハプティックは、そのより硬い半径方向内側部によって、より予測可能かつ反復可能な方法で、変形もするであろう。
【0061】
それゆえ周辺部は、前後方向における嚢袋の再形成に対してよりも、半径方向における嚢袋の再形成に対して、より敏感である。ハプティックは、前後方向におけるよりも、半径方向に、より大きな程度に変形するよう適合されている。したがって、本願明細書での開示内容は、第1軸に沿った嚢の力に対してはあまり敏感ではないが、第2軸に沿った力に対してはより敏感な周辺部を含む。上述の例において、周辺部は、前後軸に沿ってはあまり敏感ではなく、半径方向軸においてはより敏感である。
【0062】
上述された周辺部の模範的な利点は、当該周辺部が嚢袋を予測可能なやり方で変形させるが、調節中は半径方向の力に対して高い敏感性をなお維持することである。上述された周辺部は、半径方向よりも前後方向において、より硬い。
【0063】
前後方向における嚢の力のさらなる例は、調節性眼内レンズが嚢袋内に位置し、かつ嚢袋が一般的に治癒反応を起こした後の周辺部での嚢の力である。治癒反応は一般的に、図5Aで力「A」で識別される、前後方向におけるハプティックの収縮力を引き起こす。これらのかつ他の埋め込み後のたとえば非調節関連の嚢袋の再形成力は、参照によって本願明細書に組み込まれる、2010年1月11日に出願された特許文献1に記述されている。たとえば、2010年1月11日に出願された特許文献1にも詳細に記述されているように、嚢袋のサイズには患者ごとにいくつかの変動がある。眼内レンズが嚢袋内に位置すると、嚢と眼内レンズとのサイズの差異が、前後方向に眼内レンズの一部分あるいは複数の部分に及ぼされる力を引き起こすかもしれない。
【0064】
前後方向における嚢の治癒力の例において、いかなる調節も起こる前に、変形可能なハプティックを変形できてよい。この変形は、ハプティック流体室の容積を変化させ、オプティック流体室とハプティック流体室との間で流体を流れさせる。これは、レンズの基本パワーを、場合によっては望ましからずシフトさせ得る。たとえば、流体は、嚢の治癒中のオプティック内に送り込まれることができ、調節性眼内レンズのパワーを増大させ、調節性眼内レンズに恒久的な近視シフトを作り上げる。流体は、オプティックからハプティックへ送り込まれることができ、調節性眼内レンズのパワーを減少させる。
【0065】
本願明細書で使われるように、「半径方向」は、前後平面に対して厳密な直交に限定される必要はなく、前後平面から45度にある平面を含む。
【0066】
模範的な流体は、2010年1月11日に出願された特許文献1と、2011年2月23日に出願された特許文献3とに記述されており、これら2つの特許文献ともに、参照によって本願明細書に組み込まれる。たとえば流体は、前部要素と後部要素のポリマー材料と屈折率が整合するあるいは整合しないシリコンオイルであってよい。オプティック部のバルク材と屈折率が整合する流体を使えば、オプティック部全体は、外側曲率がオプティック部内の流体圧力の増減で変化する単レンズとして働く。
【0067】
上述の図2Aから図2Gの実施形態において、ハプティックは、セクションA-A、セクションB-B、セクションC-Cでほぼ一様な組成を有する変形可能なポリマー材料である。より硬い半径方向内側本体部40は、その厚さに起因する。代替的な実施形態においては、半径方向内側本体部は、外側本体部とは異なる組成を有し、半径方向内側本体部の材料は、半径方向外側本体部の材料よりも硬い。これらの代替的な実施形態において、半径方向内側部と半径方向外側部の厚さは、同じであってよい。
【0068】
図6は、図2Bで示されたのと同じハプティック構造のハプティック50を説明している。半径方向外側部54が識別される。ハプティックは、ハプティックの高さの半ばを通る軸A-Aを有する。中にオプティックバットレスが配置されている開口部52は、軸Aの後側にある。この実施形態においては、オプティックは、ハプティックの最前部よりもハプティックの最後部に若干近くなっている。
【0069】
図7は、代替的なハプティック60を説明しており(オプティックは図示されず)、半径方向外側部64が識別される。ハプティック60は、ハプティックの厚さの半ばを通る軸A-Aを含む。開口部62は、軸Aに対して対称的である。その上、軸A-Aは、ハプティック60の対称軸である。軸Aに沿ったハプティックの対称性は、比較的低い応力成分を成形する能力を改善する。図8は、眼内レンズ70の一実施形態を示しており、当該実施形態において、オプティック72は、図7で示されたハプティックである2つのハプティック60に連結されている。さらにオプティックは、開口部がハプティックの中心線に沿っていない実施形態よりも、前方向にある。ハプティック60の断面図A-A、断面図B-B、断面図C-Cは、上で示された別の実施形態で示されたこれらの断面図と同じである。
【0070】
図9は、オプティック82と2つのハプティック84とを含む眼内レンズ80を説明している。オプティックは、本願明細書で記述されたオプティック部と同じである。ハプティック84は、前後方向で測定して、ハプティック60、ハプティック50あるいはハプティック14ほど長くない。模範的な実施形態において、ハプティック84は、長さが約2.0mmから約3.5mmであり、いくつかの実施形態においては、長さが約2.8mmである。眼内レンズ80は、ある閾値のサイズを下回る嚢袋を有する患者のための、サイズの「小さい」調節性眼内レンズと見なされ得る。後部要素86の後部面は、ハプティック84の最後部90よりも若干後方向に配置されている。
【0071】
本願明細書で記述される眼内レンズの特徴は、非流体駆動の調節性眼内レンズにも同様に適用され得る。たとえば、非調節性眼内レンズは、第1の方向で敏感でない周辺部の領域を備える、第1のより硬い領域を有する周辺部を含んでよい。たとえば、レンズのパワーを変えるために、互いに離れて動かされるように適合された2つのレンズを有する眼内レンズにおいては、レンズの周辺部は、第1のタイプの嚢の再形成がレンズの間の距離を変えさせず、それゆえ眼内レンズのパワーが同じままであるように、適合され得る。
【0072】
その上、本願明細書での調節性眼内レンズは、自然の嚢袋の外側に位置するようにも適合され得る。たとえば、自然の水晶体が除去された後に、あるいは自然の水晶体がまだ嚢袋の中にあるうちに、調節性眼内レンズは、嚢袋の前あるいは前部に位置するように適合されることができ、レンズの周辺部は、嚢の再形成に頼るよりはむしろ、毛様体筋に直接反応するよう適合される。
また、本発明は以下の発明も含む。
本発明の第9の態様は、
調節性眼内レンズにおいて、
前記調節性眼内レンズは、
前部要素と、後部要素と、部分的に前記前部要素と前記後部要素の間に配置されているオプティック流体室とを備えるオプティック部であって、前記オプティック部は、前記オプティック部のほぼ中心において前後方向に延びている光軸を有し、前記前部要素の厚さは、前記光軸における前記前部要素の領域から前記前部要素の周辺領域へ半径方向外側に向けて減少する、オプティック部と、
前記オプティック部に連結されているハプティックであって、前記ハプティックは、前記ハプティックを通して延びているハプティック流体室を備え、前記ハプティック流体室が前記オプティック流体室と流体連通している、ハプティックとを備える、調節性眼内レンズである。
本発明の第10の態様は、
前記後部要素の厚さは、前記光軸における前記後部要素の領域から、前記光軸から半径方向外側にある中央域へ半径方向外側に向けて減少する、第9の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第11の態様は、
前記後部要素の厚さは、半径方向において前記後部要素の前記中央域から前記後部要素の周辺縁部に向かって減少する、第10の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第12の態様は、
前記オプティック部は補強部をさらに備え、前記ハプティック流体室は、前記補強部を通して形成されている少なくとも1つの流路を通して前記オプティック流体室と流体連通されている、第9の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第13の態様は、
前記ハプティックは、前記オプティック部に隣接した半径方向内側部と、前記オプティック部から半径方向においてさらに離れて配置されている半径方向外側部とを備え、前記半径方向内側部の厚さは前記半径方向外側部の厚さよりも大きい、第9の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第14の態様は、
前記ハプティックは、前記オプティック部には直接的に取り付けられていない、流体的に閉鎖された遠位端を備える、第9の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第15の態様は、
調節性眼内レンズにおいて、
前記調節性眼内レンズは、
前部要素と、後部要素と、部分的に前記前部要素と前記後部要素の間に配置されているオプティック流体室とを備えるオプティック部と、
前記オプティック部に連結されているハプティックであって、前記ハプティックは、前記ハプティックを通して延びているハプティック流体室を備え、前記ハプティック流体室が前記オプティック流体室と流体連通している、ハプティックとを備え、
前記オプティック部は、前後方向で測定された前記ハプティックの高さの正中線に対して前後方向において中心合わせされており、
前記ハプティックの最前部は、前記前部要素の最前表面よりもさらに前方に配置されており、
前記ハプティックの最後部は、前記後部要素の最後表面よりもさらに後方に配置されている、調節性眼内レンズである。
本発明の第16の態様は、
前記オプティック部は補強部をさらに備え、前記ハプティック流体室は、前記補強部を通して形成されている少なくとも1つの流路を通して前記オプティック流体室と流体連通されている、第15の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第17の態様は、
前記少なくとも1つの流路は、前記オプティック部の前記後部要素を通して形成されている、第16の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第18の態様は、
前記ハプティックは、前記ハプティック流体室と流体連通している開口部を備える近位端部を備え、前記近位端部は、前記オプティック流体室が前記少なくとも1つの流路及び前記開口部を通して前記ハプティック流体室と流体連通されるように、前記補強部に取り付けられるように構成されている第16の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第19の態様は、
前記ハプティックは、前記オプティック部には直接的に取り付けられていない、流体的に閉鎖された遠位端を備える、第19の態様における調節性眼内レンズである。
本発明の第20の態様は、
前記ハプティックは、前記オプティック部に隣接した半径方向内側部と、前記オプティック部から半径方向においてさらに離れて配置されている半径方向外側部とを備え、前記半径方向内側部の厚さは、半径方向において、前記半径方向外側部の厚さよりも大きい、第15の態様における調節性眼内レンズである。
【符号の説明】
【0073】
10 調節性眼内レンズ
11 半径方向内側部
12 オプティック部
13 半径方向外側部
14 ハプティック
15 開口部
17 第1端部領域
18 前部要素
19 第2端部領域
20 後部要素
21 内面
22 ハプティック流体室
23 アクセス経路
24 オプティック流体室
26 開孔部
28 周辺面
29 バットレス部
30 傾斜面
31 面
32 流路
33 湾曲面
35 湾曲面
40 半径方向内側部
41 厚さ寸法
42 半径方向外側部
43 半径方向内側壁
45 半径方向外側壁
50 ハプティック
51 ハプティック
52 開口部
54 半径方向外側部
60 ハプティック
61 第1領域
62 開口部
64 半径方向外側部
70 眼内レンズ
72 オプティック
80 眼内レンズ
82 オプティック
84 ハプティック
86 後部要素
90 最後部
A 収縮力
CB 嚢袋
CR 中央域
CM 毛様体筋
OA 光軸
R 半径方向の力
Z 毛様小体
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9