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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】濁水処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/48 20060101AFI20240213BHJP
   B01D 29/60 20060101ALI20240213BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B01D23/26 Z
B01D23/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020075921
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021171683
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】中島 広志
(72)【発明者】
【氏名】冨貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玄太
(72)【発明者】
【氏名】長幡 逸佳
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129319(JP,A)
【文献】特開平07-132203(JP,A)
【文献】実開昭63-058606(JP,U)
【文献】米国特許第10363503(US,B1)
【文献】特開2017-000943(JP,A)
【文献】特開昭53-031266(JP,A)
【文献】特開昭52-069067(JP,A)
【文献】米国特許第4382423(US,A)
【文献】特開2014-234614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04
C02F 1/00
C02F 11/00-11/20
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水をフィルタによりろ過する濁水処理システムであって、
濁水を処理する処理水槽と、前記処理水槽を複数の区画に仕切るとともに、前記フィルタを備えた複数のパネルがアコーディオン形状に折り畳み可能に連結されたアコーディオン式ろ過装置と、前記処理水槽に貯留された濁水の浮遊物質量を測定する浮遊物質量測定器と、前記浮遊物質量測定器の測定値に応じて、前記アコーディオン式ろ過装置の折り畳み状態を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値以下の場合、前記アコーディオン式ろ過装置の一部のパネルが、隣り合うパネル同士で同一の平面を形成する展開状態で配置されるとともに、他の一部のパネルが、隣り合うパネル同士を対面させ前記フィルタに濁水が流通しないように折り畳まれた状態に制御し、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値より高くなった場合、前記アコーディオン式ろ過装置の全てのパネルが、隣り合うパネル同士を対面させることなく、略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれた状態に制御することを特徴とする濁水処理システム。
【請求項2】
前記アコーディオン式ろ過装置が複数並設されている請求項1記載の濁水処理システム。
【請求項3】
前記アコーディオン式ろ過装置は、前記パネルと、前記パネルが吊設される上ランナー装置と、前記上ランナー装置が走行可能な上レールとを備え、
前記上ランナー装置が最大間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル同士が展開状態で配置されるようになっており、前記上ランナー装置が最小間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル同士が対面して折り畳まれるようになっている請求項1、2いずれかに記載の濁水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルの掘削工事などで発生する濁水を処理する濁水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、山岳トンネルの掘削工事では、坑内で発生する湧水や工事用水に、削孔、ズリ積み、ズリ運搬などによって発生する細粒土(シルト及び粘土)が混入することで、浮遊物質量(SS)の排水基準(許容限度200mg/L)を超える濁水が排出される。
【0003】
工事で発生した濁水が河川、湖沼、海域などの公共用水域に多量に排出されると、清浄な河川水を汚濁し、浮遊物質によって水生生物、農作物等に影響を与える。濁水の浮遊物質が水生生物に与える影響としては、浮遊物質が魚のえらを傷つけたり、えらの弁膜に詰まり斃死させたりする原因となるとともに、川底の水生植物への太陽光を妨げ、かつ河床に沈殿して藻類の繁殖を妨げる結果、魚類の餌が欠乏し、魚類が棲息できなくなるなどがある。また、農作物に与える影響としては、浮遊物質が水田に蓄積すると水稲の根腐れを生ずる場合がある。
【0004】
トンネルの掘削工事によって発生する濁水の浮遊物質量の濃度は、掘削、ズリ積み、ズリ運搬など、坑内の作業内容により異なるが、一般に200~10000mg/Lの範囲で、その平均は1500~3000mg/L程度である。
【0005】
このような濁水の排水処理としては、従来より種々の方法が提案されている。例えば下記特許文献1、2に示されるように、濁水に薬剤(無機凝集剤及び高分子凝集剤)を投入してフロックを生成し、固液分離装置によってフロックと水に分離する方法(以下、「薬剤処理法」という。)が一般的である。
【0006】
また、例えば下記特許文献3に示されるように、薬剤の使用量の軽減を目的として、ヤシ繊維や木材チップなどからなるフィルタを通過させ、濁水に含まれる浮遊物質をフィルタによって捕捉する方法(以下、「フィルタ処理法」という。)も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-219471号公報
【文献】特開2007-38158号公報
【文献】特開2012-143702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記薬剤処理法では、薬剤(特に高分子凝集剤)の添加量が多い場合、魚のえらに薬剤が付着して窒息死を引き起こすなど、環境に対する悪影響が大きいとともに、コストが高価になるなどの問題がある。
【0009】
また、上記フィルタ処理法では、ヤシ繊維などの孔隙が大きいため、浮遊物質の除去効果が小さいとともに、濁水の浮遊物質量の濃度の変動に対応しにくいなどの問題がある。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、環境に与える影響を最小限に抑えるとともに、濁水の浮遊物質量に応じて処理能力が増減できるようにすることにより浮遊物質の除去効率を安定化させた濁水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、濁水をフィルタによりろ過する濁水処理システムであって、
濁水を処理する処理水槽と、前記処理水槽を複数の区画に仕切るとともに、前記フィルタを備えた複数のパネルがアコーディオン形状に折り畳み可能に連結されたアコーディオン式ろ過装置と、前記処理水槽に貯留された濁水の浮遊物質量を測定する浮遊物質量測定器と、前記浮遊物質量測定器の測定値に応じて、前記アコーディオン式ろ過装置の折り畳み状態を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値以下の場合、前記アコーディオン式ろ過装置の一部のパネルが、隣り合うパネル同士で同一の平面を形成する展開状態で配置されるとともに、他の一部のパネルが、隣り合うパネル同士を対面させ前記フィルタに濁水が流通しないように折り畳まれた状態に制御し、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値より高くなった場合、前記アコーディオン式ろ過装置の全てのパネルが、隣り合うパネル同士を対面させることなく、略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれた状態に制御することを特徴とする濁水処理システムが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明は、前記アコーディオン式ろ過装置によって複数の区画に仕切られた処理水槽に濁水が投入され、フィルタによるろ過を行う濁水処理システムである。このように本濁水処理システムでは、フィルタにより濁水のろ過が行われ、薬剤を極力使用しないようにしているため、環境に与える影響を最小限に抑えることができるようになる。
【0013】
また、前記制御装置による制御として、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値以下の場合、前記アコーディオン式ろ過装置の一部のパネルが、隣り合うパネル同士で同一の平面を形成する展開状態で配置されるとともに、他の一部のパネルが、隣り合うパネル同士を対面させ前記フィルタに濁水が流通しないように折り畳まれた状態に制御している。この状態では、前記平面状に展開された一部のパネルのフィルタに濁水が流通して濁水がろ過されるようになっている。また、前記浮遊物質量測定器の測定値が所定の値より高くなった場合、前記制御装置は、前記アコーディオン式ろ過装置の全てのパネルが、隣り合うパネル同士を対面させることなく、略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれた状態に制御する。これによって、濁水の浮遊物質量が高くなった場合、フィルタと濁水との接触面積を増加するため、アコーディオン式ろ過装置をジグザグ状に折り畳んで、全てのパネルのフィルタに濁水を流通させ、濁水に含まれる浮遊物質をフィルタによってより多く捕捉できるようにしている。このように、前記制御装置は、濁水の浮遊物質量に応じてアコーディオン式ろ過装置の折り畳み状態を制御することにより、濁水の処理能力を増減させているため、浮遊物質の除去効率を安定化させることができるようになる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記アコーディオン式ろ過装置が複数並設されている請求項1記載の濁水処理システムが提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記アコーディオン式ろ過装置を複数併設することにより、それぞれのアコーディオン式ろ過装置を別々に制御することが可能となり、より細かな浮遊物質量の変動にも対応できるようになる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記アコーディオン式ろ過装置は、前記パネルと、前記パネルが吊設される上ランナー装置と、前記上ランナー装置が走行可能な上レールとを備え、
前記上ランナー装置が最大間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル同士が展開状態で配置されるようになっており、前記上ランナー装置が最小間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル同士が対面して折り畳まれるようになっている請求項1、2いずれかに記載の濁水処理システムが提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、前記アコーディオン式ろ過装置を折り畳み可能にするための具体的な構造について規定している。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、環境に与える影響が最小限に抑えられるとともに、濁水の浮遊物質量に応じて処理能力が増減できるようにすることにより浮遊物質の除去効率を安定化させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る濁水処理システム1を示す、(A)は浮遊物質量が低いとき、(B)は浮遊物質量が高いときの平面図である。
図2】アコーディオン式ろ過装置5の全体正面図である。
図3】アコーディオン式ろ過装置5の要部正面図である。
図4】浮遊物質量が低いときにおけるアコーディオン式ろ過装置5の要部平面図(図3のIV-IV線矢視図)である。
図5】浮遊物質量が低いときにおけるアコーディオン式ろ過装置5の要部平面図である。
図6】浮遊物質量が高いときにおけるアコーディオン式ろ過装置5の要部平面図である。
図7】上レール13と上ランナー装置12との納まりを示す横断面図である。
図8】上ランナー装置12の上レール13への装着要領を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
本発明に係る濁水処理システム1は、濁水に含まれる浮遊物質(粒子)をフィルタで捕捉することにより、濁水をろ過するシステムである。このため、薬剤(特に高分子凝集剤)の使用を極力抑えることができ、環境に与える影響を最小限に抑制することができるようになる。
【0022】
前記濁水処理システム1は、図1に示されるように、濁水を処理する処理水槽2と、前記処理水槽2を複数の区画に仕切るとともに、フィルタ3を備えた複数のパネル4、4…がアコーディオン形状に折り畳み可能に連結されたアコーディオン式ろ過装置5と、前記処理水槽2に貯留された濁水の浮遊物質量(SS)を測定する浮遊物質量測定器6と、前記浮遊物質量測定器6の測定値に応じて前記アコーディオン式ろ過装置5のパネル4、4…の折り畳み状態を制御する制御装置7とを備えている。
【0023】
前記制御装置7による制御方法として、前記制御装置7は、前記浮遊物質量測定器6の測定値が所定の値以下の場合、図1(A)に示されるように、アコーディオン式ろ過装置5の一部のパネル4…が、隣り合うパネル4、4同士で同一の平面を形成する展開状態で配置されるとともに、他の一部のパネル4…が、隣り合うパネル4、4同士を対面させ前記フィルタ3に濁水が流通しないように折り畳まれた状態に制御し、前記浮遊物質量測定器6の測定値が所定の値より高くなった場合、図1(B)に示されるように、前記アコーディオン式ろ過装置5の全てのパネル4…が、隣り合うパネル4、4同士を対面させることなく、略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれた状態に制御する。
【0024】
すなわち、濁水のSSが低い場合、一部のパネル4…を展開して平面状態とし、他の一部のパネル4…を互いに対面させてフィルタ3に濁水が流通しない状態で折り畳んでおく。この場合、濁水の処理は、主に、平面状態に展開した一部のパネル4…によってなされている。また、濁水のSSが高くなった場合、フィルタ3によって濁水に含まれる浮遊物質がより多く捕捉できるようにするため、フィルタ3と濁水との接触面積が増加するように、アコーディオン式ろ過装置5をジグザグ状に折り畳んで、全てのパネル4…に設置されたフィルタ3に濁水が流通できるようにしている。このように、前記制御装置7は、濁水の浮遊物質量に応じてアコーディオン式ろ過装置5の折り畳み状態を制御することにより、濁水の処理能力を増減させているため、浮遊物質の除去効率を安定化させることができる。
【0025】
以下、更に具体的に詳述する。
【0026】
山岳トンネル又はシールドトンネルなどの各種トンネル工事、地盤改良工事、地中連続壁造成工事などの工事において発生した濁水は、まず図示しない原水槽に貯留される。この原水槽への貯留によって、比較的粒子径の大きい礫や砂が沈殿し、分離される。なお、この原水槽を設けずに、工事で発生した濁水を直接処理水槽2に投入してもよい。
【0027】
前記原水槽に貯留された濁水は、図示しないポンプによって処理水槽2に送られる。この処理水槽2は、上方が開放された略直方体状の水槽であり、コンクリート等で形成してもよいし、自然の地形を利用して形成してもよい。
【0028】
前記処理水槽2の内部は、前記アコーディオン式ろ過装置5によって複数の区画、図示例では、上流側区画2Aと下流側区画2Bとの2つの区画に仕切られている。前記原水槽からの濁水は、前記上流側区画2Aに投入され、前記アコーディオン式ろ過装置5の各パネル4に備えられたフィルタ3を通過して浄化された水が前記下流側区画2Bに貯留される。そして、下流側区画2Bに貯留された水は、水質(浮遊物質量など)を管理した上で、図示しない配管を通って排水される。
【0029】
前記アコーディオン式ろ過装置5は、図2図6に示されるように、フィルタ3を備えた複数のパネル4、4…と、隣接するパネル4、4同士を連結する蝶番10と、隣接するパネル4、4の隙間を覆う水密部材11と、前記パネル4を吊設する上ランナー装置12と、この上ランナー装置12が走行自在とされる上レール13とからなる。前記上ランナー装置12は、隣接するパネル4、4同士の連結部に対して1つ置きに設けられ、各パネル4の幅方向一端部を鉛直方向軸回りに回動自在に支持している。前記アコーディオン式ろ過装置5は、前記上ランナー装置12が設けられたパネル連結部が谷折り部とされ、隣接する上ランナー装置12、12間のパネル連結部が山折り部とされて折り畳み可能に形成されている。また、図示例では、前記蝶番10は、隣接する上ランナー装置12、12間のパネル4、4の連結部のみに用いられており、前記上ランナー装置12の配置部におけるパネル4、4の連結は、前記上ランナー装置12によって成されている。
【0030】
図4に示されるように、前記上ランナー装置12が最大間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル4、4同士が展開状態で配置されるようになっており、図5に示されるように、前記上ランナー装置12が最小間隔となる状態とした時は、隣り合うパネル4、4同士が対面して折り畳まれるようになっており、図6に示されるように、前記上ランナー装置12がその中間となる状態とした時は、隣り合うパネル4、4同士が略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれるようになっている。
【0031】
前記パネル4は、正面視略矩形の平板状に形成され、枠材によって周囲が囲まれた内部に平板状の前記フィルタ3が組み込まれている。前記フィルタ3は、前記枠材に対して、例えば上端部から挿脱することにより着脱自在とされており、簡単に交換できるようになっている。
【0032】
前記フィルタ3は、水を通過し、濁水に含まれる粒子を捕捉するための複数の孔を有するものであり、濁水のろ過用として用いられる公知のフィルタを制限なく用いることができる。
【0033】
前記水密部材11は、ゴムや樹脂などからなる可撓性を有する部材であり、隣接するパネル4、4間に鉛直方向の全長に亘って架設されている。隣接する上ランナー装置12、12間の山折りされるパネル連結部には、水平方向中間部に、鉛直方向に沿うとともに水平方向に間隔を空けて形成された複数の折り線からなる蛇腹部が備えられた水密部材11aが設けられ、前記上ランナー装置12が取り付けられる谷折りされるパネル連結部には、平板状の水密部材11bが設けられている。山折りされるパネル連結部に前記蛇腹部が備えられた水密部材11aを用いることにより、図5に示されるように、前記蛇腹部が延びて山折りされた外部を水密部材11aが覆うことができるようになる。
【0034】
前記上レール13は、図7及び図8に示されるように、断面略矩形状を成す部材であり、アルミ合金又は鋼材より構成されている。具体的には、上壁面13aと、この上壁面13aの一方端から垂下する一方側壁面13bと、前記上壁面13aの他方端から垂下する他方側壁面13cと、前記一方側壁面13bの下端から水平方向に延びる一方側下壁面13dと、その先端から上方に延びる走行軌条13eと、この走行軌条13eの上部位置であって前記上壁面13aの下面から垂下する垂下片13fと、前記他方側壁面13cの下端から水平方向に延びる他方側下壁面13gとからなる。
【0035】
後述するように、前記走行軌条13eが上ランナ装置12の主ローラ23が走行するレールRとなり、前記一方側下壁面13dと他方側下壁面13gとの間に形成されたスリット状の溝が水平ガイドローラ24が走行する水平ガイド溝Uとなる。更に、前記他方側下壁面13gの下面が傾動抑止ローラ25が転動する上面側水平面Sとなる。
【0036】
前記上ランナー装置12は、図7及び図8に示されるように、平面視で略U字状のランナ基体21と、その上面に設けられた起立壁22とからなるランナー本体20に対して、水平方向軸回りに回転自在とされ、上レール13に設けられた走行軌条13e(R)上を走行可能とされる主ローラ23、23と、鉛直方向軸回りに回転自在とされ、前記上レール13に設けられたスリット上の水平ガイド溝U内を走行可能とされる水平ガイドローラ24、24と、水平方向軸回りに回転自在とされ、前記主ローラ23の配設位置を境として荷重作用点O側とは反対側に設けられるとともに、前記上レール13に設けられた上面側水平面Sを転動する傾動抑止ローラ25、25とを備えるものである。前記主ローラ23、水平ガイドローラ24、傾動抑止ローラ25は、それぞれ一つずつ設けるようにしてもよいが、走行安定性を図るために複数個ずつ設けるようにするのが望ましい。図示例ではそれぞれ、2つずつ配設している。
【0037】
更に、詳しく説明すると、前記ランナー基体21は、水平方向に2本のアーム片21A、21Bを有するように平面視で略U字状に形成されている。前記アーム片21A、21Bの先端にはそれぞれ、鉛直配向で上面側に起立する支軸26が設けられており、前記支軸26に対して、鉛直軸回りに回転自在とされる翼板27A(27B)が設けられている。この翼板27A、27Bは、端部に前記支軸26が挿入される軸受孔27aを備えるとともに、パネル4を固定するための2つのビス孔27b、27bを備えている。
【0038】
前記起立壁22は正面視で略T字状を成し、走行方向に間隔を空けて、水平方向軸回りに回転自在とされ、上レール13に設けられた走行軌条13e(R)上を走行可能とされる主ローラ23、23が支持されている。また、前記ランナー基体21の上面に、走行方向に間隔を空けて、鉛直方向軸回りに回転自在とされ、前記上レール13に設けられたスリット状の水平ガイド溝U内を走行可能とされる水平ガイドローラ24、24が配設されている。更に、前記ランナー基体21の背面側(前記アーム片21A、21Bとは反対側)の側面に、走行方向に間隔を空けて、水平方向軸回りに回転自在とされ、前記上レール13に設けられた上面側水平面Sを転動する傾動抑止ローラ25、25が配設されている。
【0039】
そして、前記上ランナー装置12は、図8に示されるように、上レール13の端部開口から挿入され、図7に示されるように、前記主ローラ23が走行軌条R上に、前記水平ガイドローラ24が水平ガイド溝U内に、前記転動抑止ローラ25が上面側水平面S(上レール13の下面)に接触するように設置される。
【0040】
一方、前記パネル4は、図4に示されるように、前記上ランナー装置12の翼板27A、27Bに対してそれぞれビス止めされるとともに、隣接する上ランナー装置12、12間において、隣接するパネル4、4同士が蝶番10により連結され、かつこれら隣接するパネル4、4間が水密部材11によってシールされている。
【0041】
また、前記アコーディオン式ろ過装置5に備えられた複数のパネル4、4…のうち、両端部に備えられたパネル4、4はそれぞれ、側縁が、処理水槽2の側壁又は処理水槽2の中間部に設けられた柱体8に対して回動可能に支持されるとともに、これらの間が図示しない水密部材によってシールされている。
【0042】
前記アコーディオン式ろ過装置5は、処理水槽2の両側壁間に跨がるように1基配置してもよいが、図1に示されるように、処理水槽2の両側壁間に1又は複数の柱体8を配置し、この柱体8で分断された複数基のアコーディオン式ろ過装置5が並設されるようにするのが好ましい。複数基のアコーディオン式ろ過装置5を並設することにより、濁水の浮遊物質量に応じて、それぞれ異なる折り畳み状態に制御することも可能となる。例えば、図示例のように2基のアコーディオン式ろ過装置5、5を並設した場合、一方のアコーディオン式ろ過装置5については、一部のパネル4…を平面状態に展開した折り畳み状態とし、他方のアコーディオン式ろ過装置5については、全てのパネル4…をジグザグ状に折り畳んだ状態とすることができる。これにより、より細かく除去効率を安定化させることができる。
【0043】
前記浮遊物質量測定器6は、濁水の浮遊物質量(SS)をリアルタイムで測定し、その測定データを前記制御装置7に電送できるようにしたものであれば、市販されているものを制限なく使用することができる。前記浮遊物質量測定器6は、工事で発生した濁水が投入される上流側区画2Aに貯留された濁水のSSが測定できるように配置されるのが好ましい。
【0044】
前記制御装置7は、プログラム制御によって動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、前記浮遊物質量測定器6の測定データを受信する受信機能と、測定データを解析する解析機能と、前記アコーディオン式ろ過装置5の折り畳み状態を制御する制御機能とを有している。
【0045】
前記制御装置7による前記アコーディオン式ろ過装置5の制御について詳細に説明すると、前記浮遊物質量測定器6の測定値が所定の値以下の場合、制御装置7は、図4に示されるように、一部のパネル4…が、隣り合う上ランナー装置12、12を最大間隔で配置することにより、隣り合うパネル4、4同士で同一の平面を形成する展開状態で配置されるとともに、図5に示されるように、他の一部のパネルが、隣り合う上ランナー装置12、12を最小間隔で配置することにより、隣り合うパネル4、4同士を対面させ前記フィルタ3に濁水が流通しないように折り畳まれた状態に制御する。この場合、濁水のSSが比較的低いため、濁水をろ過するのは、平面状態に展開されたパネル4…に備えられたフィルタ3が主であり、折り畳まれたパネル4…に備えられたフィルタ3は濁水のろ過にほとんど寄与しない。このため、折り畳まれたパネル4…に備えられたフィルタ3の目詰まりが防止でき、SSが高くなったときにそのろ過効果が発揮されやすくなる。
【0046】
平面状態に展開するパネル4…は、図1(A)に示される例では、処理水槽2の側壁に近い一方側の数枚であるが、中央の柱体8に近い他方側の数枚でもよいし、これらの中間の数枚でもよい。また、展開するパネル4…は、一定時間毎に、又はフィルタ3の通水量とSSとの積が所定の値以上になった時点で、一方側の数枚、中間の数枚、他方側の数枚などの順で入れ替えるのが好ましい。これにより、特定のフィルタ3が目詰まりするのが防止でき、常に安定した除去効率が得られるようになる。
【0047】
次に、前記浮遊物質量測定器6の測定値が所定の値より高くなった場合、図6に示されるように、制御装置7は、アコーディオン式ろ過装置5の全てのパネル4…が、隣り合うパネル同士を対面させることなく、略三角形状の山折り部と谷折り部が交互に繰り返し形成されるジグザグ状に折り畳まれた状態に制御する。この場合、前記上ランナー装置12は、隣り合う上ランナー装置12、12が最大離隔位置と最小離隔位置の中間に配置されている。この中間に配置された状態を保持するため、図6に示されるように、山折りされたパネルの頂部と上レール13とに懸架される位置保持杆28を配置してもよい。前記位置保持杆28は、全ての山折り部に設けてもよいし、1つ置き又は複数個置きの山折り部に設けることとしてもよい。
【0048】
濁水のSSが高くなった場合に、アコーディオン式ろ過装置5の全てのパネル4…をジグザグ状に配置して、全てのフィルタ3に濁水が流通できるようにすることによって、濁水とフィルタ3との接触面積が増加し、濁水に含まれる浮遊物質がフィルタ3に捕捉される機会が増加する。
【0049】
〔他の形態例〕
(1)上記濁水処理システム1の前段又は後段に、凝集剤を混合してフロックを生成し、生成されたフロックを分離する凝集沈降分離装置を設けてもよい。本システム1と薬剤処理法とを併用することにより、薬剤処理法における薬剤の使用量が低減でき、環境に対する影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0050】
(2)上記形態例では、処理水槽2の中央部に1段のアコーディオン式ろ過装置5を設置することによって、処理水槽2が上流側区画2Aと下流側区画2Bの2区画に仕切られていたが、2段以上のアコーディオン式ろ過装置5、5…を設けることによって、処理水槽2が3区画以上に仕切られるようにしてもよい。このようにアコーディオン式ろ過装置5を多段で設けることにより、濁水処理システム1のろ過性能が高度化できる。
【符号の説明】
【0051】
1…濁水処理システム、2…処理水槽、3…フィルタ、4…パネル、5…アコーディオン式ろ過装置、6…浮遊物質量測定器、7…制御装置、8…柱体、10…蝶番、11…水密部材、12…上ランナー装置、13…上レール、20…ランナー本体、21…ランナ基体、22…起立壁、23…主ローラ、24…水平ガイドローラ、25…傾動抑止ローラ、26…支軸、27A・27B…翼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8