(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】支保工ユニット、及び鋼製支保工建込方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240213BHJP
E21D 11/18 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
E21D11/40 A
E21D11/18
(21)【出願番号】P 2020078354
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】505356491
【氏名又は名称】株式会社マシノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】副島 幸也
(72)【発明者】
【氏名】日向 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】稲田 匠吾
(72)【発明者】
【氏名】土永 直毅
(72)【発明者】
【氏名】西原 直哉
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156261(JP,A)
【文献】実開昭57-004509(JP,U)
【文献】実開昭56-155096(JP,U)
【文献】実開昭51-116616(JP,U)
【文献】特開平07-091161(JP,A)
【文献】特開2005-097993(JP,A)
【文献】特開2018-178454(JP,A)
【文献】特開2019-112863(JP,A)
【文献】特開平08-326492(JP,A)
【文献】実開昭59-167899(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109113757(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの一次覆工に用いられ、
腹板を有する鋼製支保工とつなぎ材を含んで構成される支保工ユニットにおいて、
一の前記鋼製支保工には、
前記腹板を挟んで、一方側にさや管が設けられるとともに、
他方側に棒状の軸体を有する係止具が設けられ、
前記つなぎ材は、L字形の棒状部材のうち長尺側を形成する本体部と、短尺側を形成する第1挿入部と、該本体部の他端に設けられる第2挿入部と、を有し、
前記係止具は、前記鋼製支保工を建て込んだとき、前記軸体がトンネル断面方向に突出するように該鋼製支保工に取り付けられ、
前記第2挿入部は、ガイド溝と、
該ガイド溝よりも前記本体部から遠い下方側に配置される挿入孔と、が設けられた板状の部材であり、
前記挿入孔は、前記軸体を挿入し得る内径で、前記ガイド溝と連通するように形成され、
前記ガイド溝は、前記挿入孔の内径よりも小さい寸法であって前記軸体を挿入し得る幅で、前記本体部に近い上端部から前記挿入孔まで
該本体部の軸方向に対して垂直又は略垂直方向に延びるように形成され、
前後に建て込まれた2つの前記鋼製支保工のうち、一方の該鋼製支保工の前記さや管に前記第1挿入部を挿入し、他方の該鋼製支保工の前記係止具が前記第2挿入部に嵌合することによって、前記つなぎ材で前後2つの該鋼製支保工が連結され、
前記本体部を上方にした状態で前記挿入孔に前記軸体を挿入すると、該軸体が前記ガイド溝を通過して前記上端部に当接する、
ことを特徴とする支保工ユニット。
【請求項2】
前記軸体の断面形状は、円形又は略円形であり、
前記ガイド溝の前記上端部は、前記軸体の断面形状に合わせた曲線形状で形成され、
前記軸体が前記上端部に当接した状態で、前記つなぎ材は該軸体周りに回転可能である、
ことを特徴とする請求項1記載の支保工ユニット。
【請求項3】
前記係止具は、前記軸体の先端に固定されたストッパを、さらに有し、
前記ストッパは、前記挿入孔を通過するが、前記ガイド溝を通過し得ない、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の支保工ユニット。
【請求項4】
腹板を有する鋼製支保工の建て込みを行う方法であって、
一の前記鋼製支保工には、前記腹板を挟んで、一方側にさや管が設けられるとともに、他方側に棒状の軸体を有する係止具が設けられ、
前記鋼製支保工を、所定位置に設置する支保工設置工程と、
既に建て込まれた坑口側の前記鋼製支保工と、前記支保工設置工程で建て込まれた切羽側の
前記鋼製支保工のうち、一方の該鋼製支保工の前記さや管につなぎ材に設けられた第1挿入部を挿入するとともに、他方の該鋼製支保工の前記係止具が該つなぎ材に設けられた第2挿入部に嵌合することによって、2つの該鋼製支保工を該つなぎ材で連結する連結工程と、を備え、
前記つなぎ材は、L字形の棒状部材のうち長尺側を形成する本体部と、短尺側を形成する前記第1挿入部と、該本体部の他端に設けられる前記第2挿入部と、を有し、
前記係止具は、前記鋼製支保工を建て込んだとき、前記軸体がトンネル断面方向に突出するように該鋼製支保工に取り付けられ、
前記第2挿入部は、ガイド溝と、
該ガイド溝よりも前記本体部から遠い下方側に配置される挿入孔と、が設けられた板状の部材であり、
前記挿入孔は、前記軸体を挿入し得る内径で、前記ガイド溝と連通するように形成され、
前記ガイド溝は、前記挿入孔の内径よりも小さい寸法であって前記軸体を挿入し得る幅で、前記本体部に近い上端部から前記挿入孔まで
該本体部の軸方向に対して垂直又は略垂直方向に延びるように形成され、
前記連結工程では、前記本体部を上方にした状態で前記挿入孔に前記軸体を挿入し、該軸体が前記ガイド溝を通過して前記上端部に当接するまで、前記第2挿入部を自重によって降下させる、
ことを特徴とする鋼製支保工建込方法。
【請求項5】
腹板を有する鋼製支保工の建て込みを行う方法であって、
一の前記鋼製支保工には、前記腹板を挟んで、一方側にさや管が設けられるとともに、他方側に棒状の軸体を有する係止具が設けられ、
つなぎ材に設けられた第2挿入部を前記係止具に嵌合することによって、前記鋼製支保工に
該つなぎ材の一端を取り付けるつなぎ材仮設置工程と、
前記つなぎ材の一端が取り付けられた状態の前記鋼製支保工を、所定位置に設置する支保工設置工程と、
既に建て込まれた坑口側の前記鋼製支保工の前記さや管に、
前記つなぎ材に設けられた第1挿入部を挿入することによって、坑口側の該鋼製支保工と前記支保工設置工程で建て込まれた切羽側の該鋼製支保工を該つなぎ材で連結する連結工程と、を備え、
前記つなぎ材は、L字形の棒状部材のうち長尺側を形成する本体部と、短尺側を形成する前記第1挿入部と、該本体部の他端に設けられる前記第2挿入部と、を有し、
前記係止具は、前記鋼製支保工を建て込んだとき、前記軸体がトンネル断面方向に突出するように該鋼製支保工に取り付けられ、
前記第2挿入部は、ガイド溝と、
該ガイド溝よりも前記本体部から遠い下方側に配置される挿入孔と、が設けられた板状の部材であり、
前記挿入孔は、前記軸体を挿入し得る内径で、前記ガイド溝と連通するように形成され、
前記ガイド溝は、前記挿入孔の内径よりも小さい寸法であって前記軸体を挿入し得る幅で、前記本体部に近い上端部から前記挿入孔まで
該本体部の軸方向に対して垂直又は略垂直方向に延びるように形成され、
前記つなぎ材仮設置工程では、前記本体部を上方にした状態で前記挿入孔に前記軸体を挿入し、該軸体が前記ガイド溝を通過して前記上端部に当接するまで、
前記第2挿入部を自重によって降下させることによって、前記鋼製支保工に前記つなぎ材の一端を取り付ける、
ことを特徴とする鋼製支保工建込方法。
【請求項6】
腹板を有する鋼製支保工の建て込みを行う方法であって、
一の前記鋼製支保工には、前記腹板を挟んで、一方側にさや管が設けられるとともに、他方側に棒状の軸体を有する係止具が設けられ、
つなぎ材に設けられた第2挿入部を前記係止具に嵌合することによって、既に建て込まれた坑口側の前記鋼製支保工に、
該つなぎ材の一端を取り付けるつなぎ材仮設置工程と、
前記鋼製支保工を、所定位置に設置する支保工設置工程と、
前記支保工設置工程で建て込まれた切羽側の前記鋼製支保工の前記さや管に、
前記つなぎ材に設けられた第1挿入部を挿入することによって、坑口側の該鋼製支保工と切羽側の該鋼製支保工を該つなぎ材で連結する連結工程と、を備え、
前記つなぎ材は、L字形の棒状部材のうち長尺側を形成する本体部と、短尺側を形成する前記第1挿入部と、該本体部の他端に設けられる前記第2挿入部と、を有し、
前記係止具は、前記鋼製支保工を建て込んだとき、前記軸体がトンネル断面方向に突出するように該鋼製支保工に取り付けられ、
前記第2挿入部は、ガイド溝と、
該ガイド溝よりも前記本体部から遠い下方側に配置される挿入孔と、が設けられた板状の部材であり、
前記挿入孔は、前記軸体を挿入し得る内径で、前記ガイド溝と連通するように形成され、
前記ガイド溝は、前記挿入孔の内径よりも小さい寸法であって前記軸体を挿入し得る幅で、前記本体部に近い上端部から前記挿入孔まで
該本体部の軸方向に対して垂直又は略垂直方向に延びるように形成され、
前記つなぎ材仮設置工程では、前記本体部を上方にした状態で前記挿入孔に前記軸体を挿入し、該軸体が前記ガイド溝を通過して前記上端部に当接するまで、
前記第2挿入部を自重によって降下させることによって、前記鋼製支保工に前記つなぎ材の一端を取り付ける、
ことを特徴とする鋼製支保工建込方法。
【請求項7】
前記軸体の断面形状は、円形又は略円形であり、
前記ガイド溝の前記上端部は、前記軸体の断面形状に合わせた曲線形状で形成され、
前記連結工程では、前記軸体が前記ガイド溝の前記上端部に当接した状態とし、前記つなぎ材を該軸体周りに回転させながら、前記第1挿入部を前記さや管に挿入する、
ことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の鋼製支保工建込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トンネルの一次覆工に用いられる鋼製支保工とつなぎ材に関するものであり、より具体的には、鋼製支保工に設けられた係止具に板状部材の挿入孔を挿入することによってつなぎ材の一端を係止することができる支保工ユニットと、これを用いた建込方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の国土は、およそ2/3が山地であるといわれており、そのため道路や線路など(以下、「道路等」という。)は必ずといっていいほど山地部を通過する区間がある。この山地部で道路等を構築するには、斜面の一部を掘削する切土工法か、地山の内部をくり抜くトンネル工法のいずれかを採用するのが一般的である。トンネル工法は、切土工法に比べて施工単価(道路等延長当たりの工事費)が高くなる傾向にある一方で、切土工法よりも掘削土量(つまり排土量)が少なくなる傾向にあるうえ、道路等の線形計画の自由度が高い(例えば、ショートカットできる)といった特長があり、これまでに建設された国内のトンネルは10,000を超えるといわれている。
【0003】
山岳トンネルの施工方法としては、昭和50年代までは鋼アーチ支保工に木矢板を組み合わせて地山を支保する「矢板工法」が主流であったが、現在では地山強度を積極的に活かすNATM(New Austrian Tunneling Method)が主流となっている。NATMは、地山が有する強度(アーチ効果)に期待する設計思想が主な特徴であり、そのため従来の矢板工法に比べトンネル支保工の規模を小さくすることができ、しかも施工速度を上げることができることから施工コストを減縮することができる。
【0004】
また我が国におけるNATMは、本格的に実施されて以来、飛躍的に掘削技術が進歩しており、種々の補助工法が開発されることによって様々な地山に対応することができるようになり、さらに掘削機械(特に、自由断面掘削機)の進歩によって発破掘削のほか機械掘削も選択できるようになった。この機械掘削は、掘削断面積や線形にもよるものの一般的には比較的低い強度(例えば、一軸圧縮強度が49N/mm2以下)の地山に対して採用されることが多く、一方、対象地山に岩盤が存在する場合はやはり発破掘削が採用されることが多い。
【0005】
ここでNATMによる掘削手順について簡単に説明する。はじめに、トンネル切羽の掘削を行う。発破掘削の場合は、ドリルジャンボによって削孔して火薬(ダイナマイト)を装填し、作業者と機械が退避したうえで発破する。一方、機械掘削の場合は、自由断面掘削機によってトンネル切羽を切削していく。1回(1サイクル)の掘削進行長(スパン長)は地山の強度に応じて設定される支保パターンによって異なるが、一般的には1.0~2.0mのスパン長で掘削が行われる。1スパン長の掘削を行うと、不安定化した地山部分(浮石など)を落とす「こそく」を行いながらダンプトラック(あるいはレール工法)によってずりを搬出(ずり出し)する。そしてずり出し後に、鏡吹付けや1次コンクリート吹付けを行ったうえで必要に応じて(支保パターンによって)鋼製支保工を建て込み、2次コンクリート吹付けを行った後にロックボルトの打設を行う。なお、1次コンクリート吹付けと2次コンクリート吹付け、ロックボルト打設は、掘進したスパン長分、すなわち素掘り部分のトンネル内周面(側壁から天端にかけた周面)に対して行われる。
【0006】
このようにNATMは、削岩(例えば、切羽削孔~発破)、ずり出し、鋼製支保工建て込み、コンクリート吹付け、ロックボルト打設といった一連の工程を繰り返し行うことによって、1スパンずつ支保工(鋼製支保工、コンクリート吹付工、ロックボルト工)を構築して地山の安定を図りながら掘進していく工法である。つまりトンネル掘削の作業者(いわゆる坑夫)らは、まだ地山が安定していない切羽での作業が求められる。そのため、作業中は常に鏡面や天端など地山からの肌落ち、落石といったおそれがあり、実際に切羽で生じる労働災害も少なからず発生していた。そこで厚生労働省は、2016年12月に「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」を策定し、切羽における労働災害防止対策の推進を図るよう促しているところである。
【0007】
切羽作業のなかでも鋼製支保工の建て込みは、作業者にとって特に危険な作業といえる。ここで
図10を参照しながら、従来の鋼製支保工の建て込み作業について説明する。削岩後にずり出しを行い、そして1次コンクリート吹付けを行うと、
図10(a)に示すように、左右1組の鋼製支保工を切羽側の所定位置に設置し、天端付近で左右の鋼製支保工の継手板をボルトで連結する。また、既設の鋼製支保工(つまり、坑口側の鋼製支保工)と新設した鋼製支保工(つまり、切羽側の鋼製支保工)を連結するため、つなぎ材を設置する。このつなぎ材は、
図10(b)に示すように棒状の部材(例えば鋼棒)の両端を折り曲げたもので、その一端を既設の鋼製支保工に設けられたさや管に挿入するとともに、他端を新設の鋼製支保工に設けられたさや管に挿入することで、つなぎ材は設置される。
【0008】
鋼製支保工の建て込みのうち、つなぎ材の設置や継手板のボルト連結は、概ね作業者の手作業によって行われる。鋼製支保工を建て込む際には、1次コンクリート吹付けを行っているものの、地山に対していわば仮支保(仮吹付)を施した状態に過ぎず、しかも急結剤を添加しているとはいえコンクリ―トはまだ十分に硬化していない。このような環境下で、これらの作業を行わなければならないことから、鋼製支保工の建て込みは作業者にとって特に危険な作業となるわけである。すなわち、鋼製支保工の建て込み作業を改善することが、切羽における労働災害防止にとって極めて有効な手段となる。
【0009】
これまでも、鋼製支保工の建て込みにおける作業の効率化や省力化を図る種々の技術が提案されてきた。例えば特許文献1では、エレクタで鋼製支保工を把持した状態で2次コンクリート吹付けを行う技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示される技術によれば、鋼製支保工の建て込みとコンクリート吹付けに係る作業時間が短縮されるうえ、鋼製支保工の建て込みの際に作業者の省力化を図ることが期待できることから、切羽における労働災害防止の点においても好適といえる。
【0012】
しかしながら、エレクタで鋼製支保工を把持した状態で2次コンクリート吹付けを行うためには、吹付ロボット本体から支保に向かって伸びる両エレクタの間から吹付ノズルで吹き付ける必要があり、そのため腕をくぐらせるように吹き付けるなど、現実的には著しく困難な作業となる。また、把持するアームが邪魔となる部分については吹付を確実に行うことに支障があり、部分的に設計吹付厚が確保できないなど施工品質の劣化を招くおそれもある。さらに、従来は一旦地盤で鋼製支保工を支持していたところ、特許文献1の技術によれば鋼製支保工の足元は吹付コンクリートで支持されることになるが、急結剤を添加しているとはいえコンクリ―トが十分に硬化するまではある程度時間を要することから、鋼製支保工が徐々に沈下していくとともに天端や肩部の吹付コンクリートにひび割れが生じるおそれもある。
【0013】
さらに特許文献1では、作業時間の短縮と作業者の省力化を図るため、つなぎ材の設置も省略することとしている。鋼製支保工と吹付コンクリートを一体化することから、つなぎ材によって新設の鋼製支保工を安定させる必要がなく、これによりつなぎ材を省略することができるわけである。しかしながらつなぎ材は、新設の鋼製支保工を安定させる機能のほか、正確な間隔で鋼製支保工を設置する(つまり、計画された掘削進行長を確保する)機能や、鋼製支保工の捩れや開きなどを防ぐ機能なども有している。そのため特許文献1の技術によれば、鋼製支保工が正確な間隔で設置されなかったり、捩れや開きが生じたまま鋼製支保工が設置されたりするおそれもある。
【0014】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来どおりつなぎ材を設置することによってつなぎ材が有する機能を活かしつつ、従来に比して短時間かつ容易につなぎ材を設置することができる支保工ユニットと、これを用いた建込方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、さや管の一端に挿入孔を具備する板材を設けるとともに鋼製支保工には棒状材を取り付け、挿入孔を棒状材に嵌め込むことでさや管の一端を鋼製支保工に取り付ける、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0016】
本願発明の支保工ユニットは、トンネルの一次覆工に用いられ、鋼製支保工とつなぎ材を含んで構成されるものである。この鋼製支保工には、「さや管」と棒状の軸体を有する「係止具」が設けられており、一方、つなぎ材は、L字形の棒状部材のうち長尺側を形成する「本体部」と短尺側を形成する「第1挿入部」、本体部の他端(第1挿入部とは異なる側の端部)に設けられる「第2挿入部」を有している。なお係止具は、鋼製支保工を建て込んだときに軸体がトンネル断面方向に突出するように鋼製支保工に取り付けられる。また第2挿入部は、挿入孔とガイド溝が設けられた板状の部材であり、この挿入孔は、軸体を挿入し得る内径であってガイド溝と連通するように形成されており、ガイド溝は、挿入孔の内径よりも小さい寸法であって軸体を挿入し得る幅で上端部(本体部に近い方)から挿入孔まで形成されている。そして前後に建て込まれた2つの鋼製支保工のうち、一方の鋼製支保工のさや管に第1挿入部を挿入し、他方の鋼製支保工の係止具が第2挿入部に嵌合する(嵌め込む)ことによって、2つの鋼製支保工がつなぎ材で連結される。このとき、本体部を上方にした状態で挿入孔に軸体を挿入すると、つなぎ材の自重により軸体がガイド溝を通過して上端部に当接する。
【0017】
本願発明の支保工ユニットは、軸体の断面形状を略円形(円形含む)としたものとすることもできる。この場合、ガイド溝の上端部は、軸体の断面形状に合わせた曲線形状で形成される。これにより、軸体が上端部に当接した状態とすれば、第2挿入部は軸体周りに回転可能となる。
【0018】
本願発明の支保工ユニットは、係止具の軸体の先端にストッパが固定されたものとすることもできる。このストッパは、挿入孔を通過するが、ガイド溝を通過し得ない形状や寸法とされる。
【0019】
本願発明の鋼製支保工建込方法は、本願発明の支保工ユニットを用いた方法であって、支保工設置工程と連結工程を備えた方法である。このうち支保工設置工程では、鋼製支保工を所定位置に設置する。また連結工程では、既に建て込まれた坑口側の鋼製支保工と支保工設置工程で建て込まれた切羽側の鋼製支保工のうち、一方の鋼製支保工のさや管につなぎ材に設けられた第1挿入部を挿入するとともに、他方の鋼製支保工の係止具がつなぎ材に設けられた第2挿入部に嵌合することによって、2つの鋼製支保工をつなぎ材で連結する。なお連結工程では、本体部を上方にした状態で挿入孔に軸体を挿入し、軸体がガイド溝を通過して上端部に当接するまで第2挿入部を自重によって降下させる。
【0020】
本願発明の鋼製支保工建込方法は、あらかじめ建て込み前の鋼製支保工につなぎ材の一端を取り付けるつなぎ材仮設置工程を、さらに備えた方法とすることもできる。この場合、建て込まれたとき坑口側に係止具、切羽側にさや管が配置される鋼製支保工を用い、支保工設置工程では、つなぎ材の一端が取り付けられた状態の鋼製支保工を所定位置に設置し、連結工程では、坑口側(既設)の鋼製支保工のさや管に第1挿入部を挿入する。なお、つなぎ材仮設置工程では、本体部を上方にした状態で挿入孔に軸体を挿入し、軸体がガイド溝を通過して上端部に当接するまで第2挿入部を自重によって降下させる。
【0021】
本願発明の鋼製支保工建込方法は、あらかじめ坑口側(既設)の鋼製支保工につなぎ材の一端を取り付けるつなぎ材仮設置工程を、さらに備えた方法とすることもできる。この場合、建て込まれたとき坑口側にさや管、切羽側に係止具が配置される鋼製支保工を用い、連結工程では、切羽側(新設)の鋼製支保工のさや管に第1挿入部を挿入する。なお、つなぎ材仮設置工程では、本体部を上方にした状態で挿入孔に軸体を挿入し、軸体がガイド溝を通過して上端部に当接するまで第2挿入部を自重によって降下させる。
【0022】
本願発明の鋼製支保工建込方法は、断面形状が略円形(円形含む)の軸体を具備する鋼製支保工を用いた方法とすることもできる。この場合、ガイド溝の上端部は軸体の断面形状に合わせた曲線形状とされる。そして連結工程では、軸体がガイド溝の上端部に当接した状態とし、本体部を軸体周りに回転させながら第1挿入部をさや管に挿入する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の支保工ユニット、及び鋼製支保工建込方法には、次のような効果がある。
(1)容易かつ迅速につなぎ材を取り付けることができるため、鋼製支保工の建て込みにおける作業時間が短縮され、その結果、切羽における労働災害の防止を図ることができる。
(2)挿入孔の内径を係止具の軸体の径よりも相当程度大きくすることによって、離れた位置(例えば、坑口側鋼製支保工の位置)からでもつなぎ材を取り付けることができ、この点においても切羽における労働災害の防止を図ることができる。
(3)係止具がガイド溝に挿入された状態となれば、その係止具は前後、左右、上方の移動が拘束されるため、従来のつなぎ材よりも外れにくく、その結果、作業の手戻りも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)は左右1組の鋼製支保工を示す正面図、(b)は鋼製支保工の断面図。
【
図2】(a)はつなぎ材を示すその側面図、(b)はつなぎ材のうち第2挿入部を示す側面図。
【
図3】(a)はトンネル掘削方向に隣接する2つの鋼製支保工につなぎ材を設置した状態を示す部分側面図、(b)はトンネル掘削方向に隣接する2つの鋼製支保工につなぎ材を設置した状態を示す部分断面図。
【
図4】(a)は係止具の軸体を第2挿入部の挿入孔に挿入した状態を模式的に示す側面図、(b)は軸体がガイド溝の上端部に当接した状態を模式的に示す側面図。
【
図5】軸体を中心として回転するつなぎ材を模式的に示す側面図。
【
図6】第1の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図。
【
図7】第2の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図。
【
図8】第3の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図。
【
図9】第4の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図。
【
図10】(a)は従来方法によって建て込まれた鋼製支保工を示す斜視図、(b)は従来のつなぎ材を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明の支保工ユニット、及び鋼製支保工建込方法の実施の例を図に基づいて説明する。なお、本願発明の鋼製支保工建込方法は、本願発明の支保工ユニットを用いて鋼製支保工の建て込みを行う方法である。したがって、まずは本願発明の支保工ユニットについて説明し、その後に本願発明の鋼製支保工建込方法について説明することとする。
【0026】
1.支保工ユニット
本願発明の支保工ユニットは、鋼製支保工100(鋼アーチ支保工)とつなぎ材200を含んで構成されるものである。このうち鋼製支保工100は、
図1に示すように、H形鋼を略半円形に曲げ加工した主部材130と、その主部材130の一端に固定された継手板140、他端に固定された底板150、さらに係止具110とさや管120を含んで構成される。
図1は、本願発明の支保工ユニットを構成する鋼製支保工100を示す図であり、(a)は左右1組の鋼製支保工100を示す正面図、(b)は鋼製支保工100の断面図である。
【0027】
図10で説明したように、従来技術ではつなぎ材の両端をさや管に差し込むため、H形鋼のウェブ(腹板)を挟んだ両側ともにさや管が設けられていた。一方、本願発明の鋼製支保工100は、
図1(b)に示すように、主部材130のウェブを挟んで一方側には係止具110が取り付けられ、他側にはさや管120が取り付けられる。なお便宜上ここでは、ウェブ両面のうち係止具110が設けられる側を「第1面」、さや管120が設けられる側を「第2面」ということとする。また係止具110とさや管120は、従来技術と同様、主部材130の周方向における複数個所(
図1では3個所)に設けることができる。なお、
図1(a)の右側に示す鋼製支保工100では3個所に係止具110を設けているが、例えば足元側の1個所のみ係止具110として残りの2箇所をさや管120とするなど、ウェブの第1面側に関しては係止具110とさや管120の組み合わせは適宜設計することができる。
【0028】
係止具110は、
図1(b)に示すように棒状(あるいは筒状)の軸体111を含むもので、さらにストッパ112や固定部113を含んで構成することもできる。この係止具110は、鋼製支保工100を建て込んだときに軸体111がトンネル断面方向(トンネル掘削方向に対して垂直方向)に突出するように主部材130に取り付けられる。例えば
図1では、鋼製支保工100を建て込んだときに地山側(掘削面側)となるフランジの内側(ウェブ側)に、軸体111がトンネルの内空側に突出するように係止具110は取り付けられている。これに限らず、鋼製支保工100を建て込んだときに内空側となるフランジの内側に、軸体111が地山側に突出するように係止具110を取り付けることもできるが、つなぎ材120の設置を考えると
図1(b)のように取り付ける方が望ましい。
【0029】
係止具110は、溶接など従来用いられている種々の接合技術によって主部材130に取り付けることができる。溶接によって係止具110を取り付ける場合、
図1(b)に示すように軸体111よりも径が大きい固定部113を設け、この固定部113を利用して溶接接合するとよい。一方、さや管120は、中空の筒状部材であり、従来と同様のものを利用することができる。
【0030】
図2は、本願発明の支保工ユニットを構成するつなぎ材200を示す図であり、(a)はその側面図、(b)はつなぎ材200のうち第2挿入部230を示す側面図である。この図に示すようにつなぎ材200は、棒状の本体部210と第1挿入部220、第2挿入部230を含んで構成される。本体部210と第1挿入部220は、棒状の部材(例えば、鋼棒)の一端(図では左端)を折り曲げることで形成された一連のL字形部材であり、このうち長尺側を形成する部分が本体部210、短尺側を形成する部分が第1挿入部220である。つまりつなぎ材200は、第2挿入部230を除く部分については
図10(b)に示す従来のつなぎ材と同様の構成とされる。
【0031】
第2挿入部230は、本体部210のうち第1挿入部220とは異なる側の端部(図では右端)に設けられる板状(あるいは箱状)の部材である。この第2挿入部230を本体部210に取り付けるにあたっては、その端部を本体部210に突き当てた状態で溶接接合することもできるし、第2挿入部230に設けられた管状(あるいはリング状)部材内に本体部210に挿通した状態で溶接接合することもできるし、あるいは溶接に限らず従来用いられている種々の接合技術によって接合することもできる。なお便宜上ここでは、本体部210の軸方向(
図2では左右方向)に対する垂直方向(
図2では上下方向)に沿って見たとき、第2挿入部230のうち本体部210に近い側を「上方」、遠い側を「下方」ということとする。
【0032】
第2挿入部230には、
図2(b)に示すように挿入孔231とガイド溝232が設けられる。挿入孔231は、第2挿入部230のうち下方に形成され、一方のガイド溝232は、第2挿入部230のうち挿入孔231よりも上方であって、本体部210の軸方向に対して略垂直(垂直含む)方向に延びるように形成される。挿入孔231とガイド溝232は連通(連続)しており、挿入孔231とガイド溝232はともに係止具110の軸体111を挿入することができる内径や幅を有しているが、ガイド溝232の幅は挿入孔231の内径よりも小さな寸法(長さ)にするとよい。またガイド溝232の上端部は、軸体111の断面形状に合わせた曲線形状(例えば円弧上)で形成するとよい。
【0033】
図3は、トンネル掘削方向(つまり前後)に隣接する2つの鋼製支保工100につなぎ材200を設置した状態を部分的に示す図であり、(a)はトンネル中心から地山の側壁方向を見た側面図、(b)は水平面で切断して上方から見た断面図である。この図に示すように本願発明の支保工ユニットを用いて鋼製支保工を建て込む場合、トンネル掘削方向に隣接する2つの鋼製支保工100はウェブの第1面と第2面が向かい合うように設置される。そして、一方(図では右側)の鋼製支保工100のさや管120に第1挿入部220を挿入し、他方(図では左側)の鋼製支保工100の係止具110が第2挿入部230に嵌合することによって、つなぎ材200は設置される。
【0034】
ここで
図4を参照しながら、係止具110と第2挿入部230を嵌合するにあたっての好適な手順について説明する。まず
図4(a)に示すように、つなぎ材200の本体部210を上方にした状態で、係止具110の軸体111を第2挿入部230の挿入孔231に挿入する。そして、軸体111を挿入孔231に挿入した状態でつなぎ材200のうち第2挿入部230側の持つ手を離すと、
図4(b)に示すように軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで第2挿入部230は落下する。つまり見かけ上は、軸体111がガイド溝232に案内されながらその上端部まで移動していく。なお
図4では、後述するストッパ112を見た図となっているため、ガイド溝232の幅よりも大きな径で係止具110を示している(軸体111の径はガイド溝232の幅よりも小さい)。このように、挿入孔231の内径を大きくした効果で軸体111が挿入しやすくなっており、またガイド溝232を設けた効果で自動的に軸体111が所定位置に配置され、これにより係止具110がつなぎ材200の一端を適切に支持することができるわけである。
【0035】
既述したとおり係止具110には、ストッパ112を設けることもできる。このストッパ112は、係止具110が第2挿入部230(特にガイド溝232)から抜け外れるのを防止するためのものであり、
図1(b)に示すように軸体111の先端に設けられる。そのためストッパ112は、ガイド溝232の幅より大きな寸法の外径とするなど、ガイド溝232を通過しない寸法や形状とされる。ただしストッパ112は、挿入孔231には挿入する必要があるため、挿入孔231の内径よりも小さな寸法の外径とするなど、挿入孔231を通過することができる寸法や形状とされる。
【0036】
係止具110にストッパ112を設けた場合、
図4(a)では挿入孔231にストッパ112を通し、さらに挿入孔231が軸体111に位置するまで押し込む。そして
図4(b)に示すように、軸体111を挿入孔231に挿入した状態でつなぎ材200のうち第2挿入部230側の持つ手を離して、軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで落下させる。ストッパ112を設けた効果で、軸体111がガイド溝232の上端部に当接した状態では、係止具110は第2挿入部230から(少なくともトンネル断面方向には)外れないわけである。
【0037】
既述したとおりガイド溝232の上端部は、
図5に示すように軸体111の断面形状に合わせた曲線形状で形成することができる。なお
図5では、係止具110のみ断面図で示しており、すなわち係止具110のうち軸体111を示している。この場合、ガイド溝232の上端部に軸体111が当接した状態とすれば、つなぎ材200を回転させることができる。より詳しくは、つなぎ材200は、軸体111を中心として、トンネル掘削方向の面内で回転することができる。この結果、先行して第2挿入部230と係止具110を嵌合しておけば、つなぎ材200を回転させるだけで容易に第1挿入部220をさや管120に挿入することができるわけである。
【0038】
2.鋼製支保工建込方法
続いて、本願発明の鋼製支保工建込方法ついて、図を参照しながら説明する。なお、本願発明の鋼製支保工建込方法は、ここまで説明した支保工ユニットを用いて鋼製支保工の建て込みを行う方法である。したがって、支保工ユニットについて説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の鋼製支保工建込方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.支保工ユニット」で説明したものと同様である。
【0039】
また本願発明の鋼製支保工建込方法は、係止具110が切羽側に配置されるケースと坑口側に配置されるケースに大別され、さらに後述する「つなぎ材仮設置工程」を備えるか否かの2ケースに大別される。すなわち、係止具110が切羽側に配置され「つなぎ材仮設置工程」を備えていないケース(以下、「第1の実施形態」)、係止具110が坑口側に配置され「つなぎ材仮設置工程」を備えていないケース(以下、「第2の実施形態」)、係止具110が切羽側に配置され「つなぎ材仮設置工程」を備えているケース(以下、「第3の実施形態」)、係止具110が坑口側に配置され「つなぎ材仮設置工程」を備えているケース(以下、「第4の実施形態」)の4つの実施形態に大別される。以下、それぞれ実施形態ごとに順に説明していく。なお便宜上ここでは、トンネル掘削方向に隣接する2つの鋼製支保工100のことを「前後の鋼製支保工100」ということとし、さらに前後の鋼製支保工100のうち新たに設置する鋼製支保工100(つまり切羽側の鋼製支保工100)のことを「新設の鋼製支保工100」、既に設置された鋼製支保工100(つまり坑口側の鋼製支保工100)のことを「既設の鋼製支保工100」ということとする。
【0040】
(第1の実施形態)
図6を参照しながら第1の実施形態について説明する。
図6は、第1の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図である。
【0041】
図6(a)は、既設の鋼製支保工100が設置され、次の掘削サイクルの削岩、ずり出し、1次コンクリート吹付けが行われた状態である。なお、この図に示すように当該実施形態では、既設の鋼製支保工100の切羽側にさや管120(つまり第2面)が配置されている。そして1次コンクリート吹付けが行われると、
図6(b)に示すように、係止具110(つまり第1面)が坑口側に配置されるように新設の鋼製支保工100を設置する(支保工設置工程)。新設の鋼製支保工100を設置するにあたっては、従来技術と同様、エレクタ吹付け機やドリルジャンボを使用して行うことができる。
【0042】
新設の鋼製支保工100を設置すると、
図6(c)に示すように、第2挿入部230に新設の鋼製支保工100の係止具110を嵌合し、第1挿入部220を既設の鋼製支保工100のさや管120に挿入することによって、つなぎ材200を設置し、前後の鋼製支保工100を連結する(連結工程)。
【0043】
係止具110と第2挿入部230を嵌合するにあたっては、
図4を参照しながら説明したように、つなぎ材200の本体部210を上方にした状態で係止具110の軸体111を第2挿入部230の挿入孔231に挿入し、軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで第2挿入部230を自重により落下させることができる。このとき作業者は、2次コンクリート吹付けが完了した既設の鋼製支保工100側(つまり坑口側)に立ち、つなぎ材200のうち第1挿入部220側を持ち、いわば片持ち梁(キャンチレバー)の状態としたうえで第2挿入部230を係止具110に挿入するとよい。作業者が仮支保(仮吹付)ともいえる1次コンクリート吹付けの直下に入る時間を短くすることができ、すなわち地山からの肌落ちや落石に伴う労働災害を回避することができるからである。
【0044】
ガイド溝232の上端部を曲線形状(軸体111の断面形状に合わせた形状)としたつなぎ材200を用いる場合、
図5を参照しながら説明したように、先行して係止具110と第2挿入部230を嵌合し、ガイド溝232の上端部に軸体111が当接した状態で、つなぎ材200を回転させながら第1挿入部220をさや管120に挿入することもできる。
【0045】
つなぎ材200を設置すると、後続の工程(例えばロックボルト工)に進む。なお、係止具110とさや管120が周方向に複数個所(
図1では3個所)設けられた鋼製支保工100を用いる場合、その数だけ繰り返しつなぎ材200を設置して後続の工程に進む。
【0046】
(第2の実施形態)
図7を参照しながら第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図である。
【0047】
図7(a)は、既設の鋼製支保工100が設置され、次の掘削サイクルの削岩、ずり出し、1次コンクリート吹付けが行われた状態である。なお、この図に示すように当該実施形態では、既設の鋼製支保工100の切羽側に係止具110(つまり第1面)が配置されている。そして1次コンクリート吹付けが行われると、
図7(b)に示すように、さや管120(つまり第2面)が坑口側に配置されるように新設の鋼製支保工100を設置する(支保工設置工程)。新設の鋼製支保工100を設置するにあたっては、従来技術と同様、エレクタ吹付け機やドリルジャンボを使用して行うことができる。
【0048】
新設の鋼製支保工100を設置すると、
図7(c)に示すように、第2挿入部230に既設の鋼製支保工100の係止具110を嵌合し、第1挿入部220を新設の鋼製支保工100のさや管120に挿入することによって、つなぎ材200を設置し、前後の鋼製支保工100を連結する(連結工程)。
【0049】
係止具110と第2挿入部230を嵌合するにあたっては、
図4を参照しながら説明したように、つなぎ材200の本体部210を上方にした状態で係止具110の軸体111を第2挿入部230の挿入孔231に挿入し、軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで第2挿入部230を自重により落下させることができる。
【0050】
ガイド溝232の上端部を曲線形状(軸体111の断面形状に合わせた形状)としたつなぎ材200を用いる場合、
図5を参照しながら説明したように、先行して係止具110と第2挿入部230を嵌合し、ガイド溝232の上端部に軸体111が当接した状態で、つなぎ材200を回転させながら第1挿入部220をさや管120に挿入することもできる。このとき作業者は、既設の鋼製支保工100側に立ち、つなぎ材200のうち第2挿入部230側を持ち、いわば片持ち梁(キャンチレバー)の状態としたうえで第1挿入部220をさや管120に挿入するとよい。
【0051】
つなぎ材200を設置すると、後続の工程(例えばロックボルト工)に進む。なお、係止具110とさや管120が周方向に複数個所(
図1では3個所)設けられた鋼製支保工100を用いる場合、その数だけ繰り返しつなぎ材200を設置して後続の工程に進む。
【0052】
(第3の実施形態)
図8を参照しながら第3の実施形態について説明する。
図8は、第3の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図である。
【0053】
図8(a)は、既設の鋼製支保工100が設置され、次の掘削サイクルの削岩、ずり出し、1次コンクリート吹付けが行われた状態である。なお、この図に示すように当該実施形態では、既設の鋼製支保工100の切羽側にさや管120(つまり第2面)が配置されている。
【0054】
また本実施形態では、あらかじめ新設の鋼製支保工100につなぎ材200の一端を取り付けておく(つなぎ材仮設置工程)。より詳しくは、新設の鋼製支保工100の係止具110を第2挿入部230に嵌合することによって、つなぎ材200の一端を取り付ける。このとき、
図4を参照しながら説明したように、つなぎ材200の本体部210を上方にした状態で係止具110の軸体111を第2挿入部230の挿入孔231に挿入し、軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで第2挿入部230を自重により落下させることができる。
【0055】
新設の鋼製支保工100につなぎ材200の一端を取り付けると、
図8(b)に示すように、つなぎ材200の一端を取り付けた状態で、しかも係止具110(つまり第1面)が坑口側に配置されるように新設の鋼製支保工100を設置する(支保工設置工程)。新設の鋼製支保工100を設置するにあたっては、従来技術と同様、エレクタ吹付け機やドリルジャンボを使用して行うことができる。
【0056】
新設の鋼製支保工100を設置すると、
図8(c)に示すように、第1挿入部220を既設の鋼製支保工100のさや管120に挿入することによって、つなぎ材200を設置し、前後の鋼製支保工100を連結する(連結工程)。
【0057】
ガイド溝232の上端部を曲線形状(軸体111の断面形状に合わせた形状)としたつなぎ材200を用いる場合、
図5を参照しながら説明したように、ガイド溝232の上端部に軸体111が当接した状態で、つなぎ材200を回転させながら第1挿入部220をさや管120に挿入することもできる。
【0058】
つなぎ材200を設置すると、後続の工程(例えばロックボルト工)に進む。なお、係止具110とさや管120が周方向に複数個所(
図1では3個所)設けられた鋼製支保工100を用いる場合、その数だけ繰り返しつなぎ材200を設置して後続の工程に進む。
【0059】
(第4の実施形態)
図9を参照しながら第4の実施形態について説明する。
図9は、第4の実施形態における本願発明の鋼製支保工建込方法の主な工程を示すステップ図である。なお当該実施形態では、既設の鋼製支保工100の切羽側に係止具110(つまり第1面)が配置されている。
【0060】
また本実施形態では、
図9(a)に示すように、あらかじめ既設の鋼製支保工100につなぎ材200の一端を取り付けておく(つなぎ材仮設置工程)。より詳しくは、既設の鋼製支保工100の係止具110を第2挿入部230に嵌合することによって、つなぎ材200の一端を取り付ける。このとき、
図4を参照しながら説明したように、つなぎ材200の本体部210を上方にした状態で係止具110の軸体111を第2挿入部230の挿入孔231に挿入し、軸体111がガイド溝232の上端部に当接するまで第2挿入部230を自重により落下させることができる。
【0061】
既設の鋼製支保工100につなぎ材200の一端を取り付けると、
図9(b)に示すように、さや管120(つまり第2面)が坑口側に配置されるように新設の鋼製支保工100を設置する(支保工設置工程)。新設の鋼製支保工100を設置するにあたっては、従来技術と同様、エレクタ吹付け機やドリルジャンボを使用して行うことができる。
【0062】
新設の鋼製支保工100を設置すると、
図9(c)に示すように、第1挿入部220を既設の鋼製支保工100のさや管120に挿入することによって、つなぎ材200を設置し、前後の鋼製支保工100を連結する(連結工程)。
【0063】
ガイド溝232の上端部を曲線形状(軸体111の断面形状に合わせた形状)としたつなぎ材200を用いる場合、
図5を参照しながら説明したように、ガイド溝232の上端部に軸体111が当接した状態で、つなぎ材200を回転させながら第1挿入部220をさや管120に挿入することもできる。このとき作業者は、既設の鋼製支保工100側に立ち、つなぎ材200のうち第2挿入部230側を持ち、いわば片持ち梁(キャンチレバー)の状態としたうえで第1挿入部220をさや管120に挿入するとよい。
【0064】
つなぎ材200を設置すると、後続の工程(例えばロックボルト工)に進む。なお、係止具110とさや管120が周方向に複数個所(
図1では3個所)設けられた鋼製支保工100を用いる場合、その数だけ繰り返しつなぎ材200を設置して後続の工程に進む。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本願発明の支保工ユニット、及び鋼製支保工建込方法は、道路トンネルや鉄道トンネル、人道トンネルなど種々のトンネル掘削工事で利用することができる。本願発明によれば、切羽での作業時間を短縮することができ、その結果、労働災害の防止につながることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0066】
100 (本願発明の支保工ユニットの)鋼製支保工
110 (鋼製支保工の)係止具
111 (係止具の)軸体
112 (係止具の)ストッパ
113 (係止具の)固定部
120 (鋼製支保工の)さや管
130 (鋼製支保工の)主部材
140 (鋼製支保工の)継手板
150 (鋼製支保工の)底板
200 (本願発明の支保工ユニットの)つなぎ材
210 (つなぎ材の)本体部
220 (つなぎ材の)第1挿入部
230 (つなぎ材の)第2挿入部
231 (第2挿入部の)挿入孔
232 (第2挿入部の)ガイド溝