IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社岡村製作所の特許一覧

<>
  • 特許-カート 図1
  • 特許-カート 図2
  • 特許-カート 図3
  • 特許-カート 図4
  • 特許-カート 図5
  • 特許-カート 図6
  • 特許-カート 図7
  • 特許-カート 図8
  • 特許-カート 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】カート
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20240213BHJP
   B62B 5/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B62B5/00 F
B62B5/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087215
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181264
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】辻 研章
(72)【発明者】
【氏名】村野 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松枝 栄次
(72)【発明者】
【氏名】森川 総士
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-159117(JP,A)
【文献】特開平09-301184(JP,A)
【文献】特開2013-226200(JP,A)
【文献】特開2014-018386(JP,A)
【文献】特開2010-105540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
B62B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を走行可能な走行手段と、物品を載置可能な底板及び天板と、前記底板の上方に配置されて前記天板を昇降させる昇降装置と、操作者が把持できるハンドル部を備えた前後一対のパイプフレームと、を有し、
各前記パイプフレームは、前記天板とは独立して立設され、起立する左右の支柱部と、前記天板から離間し、前記左右の支柱部の上端から前方向または後方向にそれぞれ延びる前記ハンドル部と、を備え、
前記昇降装置は、昇降杆の上端部が前記天板の下面に取り付けられ、該昇降杆の下端部が前方の前記パイプフレームの支柱部と後方の前記パイプフレームの支柱部との間に挟まれて配置されていることを特徴とするカート。
【請求項2】
前記前後一対のパイプフレームそれぞれの前記ハンドル部は、それぞれ前記天板よりも前後方向外方に張り出していることを特徴とする請求項1に記載のカート。
【請求項3】
前記前後一対のパイプフレームは、それぞれの前記ハンドル部が前記天板の前端部及び後端部に沿うように前記左右の支柱部の上端同士間に亘り形成され、前記左右の支柱部の下端同士間を連結するベース部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のカート。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記前後一対のパイプフレームそれぞれの前記支柱部間に支持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカート。
【請求項5】
前記前後一対のパイプフレームは、下端部にそれぞれ床面を走行可能な前記走行手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を載せて床面を走行可能なカートに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内外を問わず物品の運搬において、底板に物品を載せて床面を走行可能としたカートが使用されている。このようなカートには、底板の上方に物品を載置可能な天板を設けることで、底板及び天板それぞれに物品を載せることを可能としたカートもある。
【0003】
また、近年、病院や介護施設等における病室の巡回時、工場や物流センターにおける在庫管理時等、移動先で器具を用いた処置や情報端末等の電子機器を操作することが求められる環境においては、器具や電子機器等を載置可能な天板が設けられたカートが使用される傾向にある。
【0004】
このようなカート(ワゴン)としては、例えば特許文献1に記載されているように、キャスタを有する基部と、基部の左右両側の前後方向の中央部より起立する左右の第一の支持杆と、基部の後端部の左右方向の中央部より起立する第二の支持杆と、第二の支持杆とハンドル部とを連結する連結杆とを備え、第二の支持杆が、外殻を構成する外杆材と、外杆材内に挿通され天板が固定された内杆材と、内杆材に内蔵された昇降機構(昇降手段)と、から主に構成される昇降装置を兼ねているものある。このようなカートは、昇降機構を操作し外杆材に対して内杆材を昇降させることで天板の高さ調節可能となっており、天板の高さ位置に合わせて使用者が屈んだり、立ち上がったりすることなく物品載置用のトレーに載せた器具や電子機器等を取り扱うことが可能となるため、使用者にかかる負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5331446号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなカートにおいては、昇降装置を構成する外杆材や内杆材が他物に接触した際の衝撃力に限らず、ハンドル部を把持してカートを移動させる際の操作力や、ハンドル部に加わる衝撃力が昇降装置に直接作用しやすいことから、これら外力により昇降装置が破損する虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、天板を昇降させる昇降装置を簡素な構成で確実に保護することができるようにしたカートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のカートは、
床面を走行可能な走行手段と、物品を載置可能な底板及び天板と、前記底板の上方に配置されて前記天板を昇降させる昇降装置と、操作者が把持できるハンドル部を備えた前後一対のパイプフレームと、を有し、
各前記パイプフレームは、前記天板とは独立して立設され、起立する左右の支柱部と、前記天板から離間し、前記左右の支柱部の上端から前方向または後方向にそれぞれ延びる前記ハンドル部と、を備え、
前記昇降装置は、昇降杆の上端部が前記天板の下面に取り付けられ、該昇降杆の下端部が前方の前記パイプフレームの支柱部と後方の前記パイプフレームの支柱部との間に挟まれて配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、天板を昇降させる昇降装置は、操作者が把持できるハンドル部を有する前後一対のパイプフレームの前後の支柱部に挟まれているため、昇降装置が直接他物に衝突しないように保護することができる。加えて、パイプフレームは支柱部が天板とは独立して立設されるため、操作時にハンドル部に加わる力が天板に直接作用しないため、天板に接続された昇降装置の破損を簡素な構成で確実に防止することができる。
【0009】
前記前後一対のパイプフレームそれぞれの前記ハンドル部は、それぞれ前記天板よりも前後方向外方に張り出していることを特徴としている。
この特徴によれば、操作者が把持できるハンドル部が天板より前後方向外方に張り出すことから、ハンドル部により天板が保護されるため、昇降装置に天板からの衝撃力等が直接が加わることがなく、昇降装置の破損を防止することができる。
【0010】
前記前後一対のパイプフレームは、それぞれの前記ハンドル部が前記天板の前端部及び後端部に沿うように前記左右の支柱部の上端同士間に亘り形成され、前記左右の支柱部の下端同士間を連結するベース部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、パイプフレームを無端状に形成することができるので、パイプフレームの剛性が大なる。
【0011】
前記昇降装置は、前記前後一対のパイプフレームそれぞれの前記支柱部間に支持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、昇降装置を支持するための構造として前方のパイプフレームと後方のパイプフレームとを用いる構成としたことで、簡素な構造で昇降装置を保護できる。
【0012】
前記前後一対のパイプフレームは、下端部にそれぞれ床面を走行可能な走行手段を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、前後のパイプフレームはそれぞれ独立して別体をなしているとともに、それぞれ走行手段を備え、互いの動作に干渉しにくいため、一方に加わる衝撃力や振動等が他方に作用せず、カートが振動するのを抑制して昇降装置が破損するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1に係るカートの斜視図である。
図2】同じく正面図である。
図3】同じく平面図である。
図4】同じく右側面図である。
図5】ベース部の一部を示す平面図である。
図6図5のVI-VI線で示す矢視図である。
図7図4のVII-VII線で示す矢視図である。
図8図2のVIII-VIII線で示す矢視図である。
図9】本発明の実施例2に係るカートの下部側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るカートを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係るカートにつき、図1から図8を参照して説明する。なお、カートの前後左右については、図1に示す矢印方向に基づいて説明する。本実施例のカート1は、例えば工場や物流センター等において使用されるもので、図1ないし図4に示されるように、前後に独立する一対のパイプフレーム2,2と、前後のパイプフレーム2,2の下端に設けられた床面を走行可能な走行手段であるキャスタ3,3と、情報端末などの電子機器(パソコン等)を載置する天板4と、この天板4を支持するとともに、前後のパイプフレーム2,2同士を連結する左右一対の支持体5,5と、工具等の物品を載置する底板6とを備えている。
【0016】
前後一対のパイプフレーム2,2は、それぞれ前方及び後方に延びる平面視コ字状のベース部2a,2aと、前後のベース部2a,2aの対向端からそれぞれ連続的に起立する左右一対ずつ設けられた支柱部2b,2b,2b,2bと、天板4の下方において天板4の前後端部に沿うように、左右の支柱部2b,2b,2bの上端から前後方向外方にそれぞれ連続的に延びる平面視コ字状のハンドル部2c,2cとからなっている。
【0017】
前後のパイプフレーム2,2は、それぞれ1本の金属製パイプを連続的に折曲し、両端を任意の箇所で接合することにより無端状に形成されている。前後に対向する支柱部2b,2b及びハンドル部2c,2c同士は、前後に所定寸法離間し、前後の支柱部2b,2b同士はそれぞれ天板4の支持体5,5により連結されている。
【0018】
図3及び図4に示されるように、カート1の操作者が把持可能な前後のハンドル部2c,2cの左右方向を向く把持部2d,2dは、それぞれ天板4よりも前後方向外方に張り出すとともに、ベース部2a,2aに対しても前後方向外方に張り出している。また、ハンドル部2c,2cと天板4との左右幅をほぼ等しくしてある。
【0019】
図5及び図6に示されるように、前後のパイプフレーム2,2におけるベース部2a,2aの屈曲隅部の下端部(前後同一構造であるため、後部側のベース部のみ図示する)には、内方に突出する平面視扇状をなす支持片7,7が溶接により固着され、上述した左右のキャスタ3,3は、支持片7,7に形成された雌ねじ孔8に下方からボルト9を螺合することにより固定されている。また、上述した底板6は、上面がベース部2a,2aの上面よりも下方に位置するようにして四隅部の支持片7,7,7,7により支持され、前後のベース部2a,2aにより囲まれた内部に収容されている。
【0020】
図4図7及び図8に示されるように、上述した左右の支持体5,5は、パイプフレーム2,2の前後の支柱部2b,2b間に配設される金属製の側板10,10と、側板10,10の外側面に取り付けられる金属製または合成樹脂製のカバー12,12とを備え、天板4を昇降させる昇降装置11を構成している。
【0021】
図7に示されるように、左右の側板10,10(左右対称であるため右方の側板10のみ図示する)は、上端部の前後幅が下部の前後幅よりも若干短寸とされた平面視外向きコ字状断面をなし、前後の端縁は、前後の支柱部2b,2bの対向面同士を連結するための連結片10a,10aが左右方向外向きに連設されている。両側板10の上下寸法は、支柱部2bの長さと同等か若干短寸に形成されている。
【0022】
左右の側板10,10の前後の連結片10a,10aは、前後の支柱部2b,2bの対向面に上下複数のビス13,13,…により固定されている。左右の側板10,10は、支柱部2b,2b,2b,2bより内方に突出するとともに、下端が底板6より若干上方に離間するように支柱部2b,2b,2b,2bに固定されている。左右の側板10,10の上端部の対向面同士は、側面視下向きコ字状断面をなす連結部材14(図1,8参照)により連結されている。側板10,10の左右方向外側の開口面は、カバー12を装着することで覆われている。なお、装着後のカバー12の外側面と前後の支柱部2b,2bの外側端とはほぼ同一面に整合するようにしてある。
【0023】
左右の側板10,10の前後の連結片10a,10aにおける支柱部2bから内方に突出する部分には、前後方向に開口するスリット状の係止孔15が上下方向に多数列設されている(図2参照)。図1に示されるように、左右の連結片10a,10aの係止孔15には、例えばトレー16の左右のフック16aを係止することができ、左右の支柱部2b,2b間にトレー16等を支持することができる。
【0024】
また、左右の側板10,10は、図4図7及び図8に示されるように、左右の側板10,10の外側面に沿って昇降する昇降杆17,17と、ラックアンドピニオン式の昇降手段18と、平面視内向きコ字状断面をなす上下2個のガイド部材20,20(図4参照)と共に昇降装置11を構成している。昇降杆17,17の上半部は平面視L字状断面をなして(図7及び図8参照)前後2本に分離された分離昇降杆17a,17aであり(図4参照)、前後の分離昇降杆17a,17aの上端部は、天板4の左右両側部下面に取り付けられた前後方向を向く天板取付部材19の中央部に固定されている。
【0025】
側板10,10の外側面の前後方向の中央部には、上下2個のガイド部材20,20が(図4参照)、ボルト21とナット22により固定され(図7参照)、昇降杆17は上下のガイド部材20,20により上下方向に移動可能に保持されている。前後の分離昇降杆17a,17aの上部は、左右の側板10,10の上部の幅狭部から上方に突出している。
【0026】
図8に示されるように、昇降手段18は、左右の昇降杆17,17における後部側の分離昇降杆17a,17aの内面(前面)にそれぞれ固着され上下方向を向くラック23,23と、左右の側板10,10及び連結部材14を貫通する左右方向を向く連結軸24と、左右の側板10,10の上端部のコ字状空間内に収容されるとともに、連結軸24の両端部に固定された左右一対のピニオン25,25とを備え、左右のピニオン25,25は、ラック23,23の前面に上下方向に沿って形成された歯部23aにそれぞれ噛合している。連結軸24の右端部は、カバー12から外方に突出し、その突出端部には、連結軸24を回転させる円形の操作つまみ26が取り付けられている。
【0027】
操作つまみ26を回転させると、左右のピニオン25,25が同期して同方向に回転し、それに噛合するラック23,23を介して左右の昇降杆17,17が同期して左右の側板10,10に対して相対的に昇降する。これにより、左右の昇降杆17,17に取り付けられた天板4の高さを調節することができる。このラックアンドピニオン式の昇降手段18には、天板4を任意の高さで停止保持するために、昇降杆17の下降を停止させる公知の停止機構(図示略)を備えている。なお、ラックアンドピニオン式の昇降手段18の代わりに、互いに同期して作動させうるロック機構付きの左右一対のガススプリング等の昇降手段を用いることもできる。
【0028】
以上説明したように、実施例1に係るカート1においては、前後一対のパイプフレーム2,2のハンドル部2c,2cの把持部2d,2dは、それぞれ天板4よりも前後方向外方に張り出しているので、両ハンドル部2c,2cの把持部2d,2dにより天板4を保護することができる。加えて、パイプフレーム2,2はハンドル部2c,2cを支持する支柱部2b,2b,2b,2bが天板4とは独立して起立しており、操作時にパイプフレーム2,2にかかる外力が天板4に直接作用しないため、天板4の破損を防止でき、天板4の支持に大きな構造体を必要とせず、簡素な構成でカート1を制作できる。また、ハンドル部2c,2cにより天板4が保護されるため、昇降装置11に天板4からの衝撃力等が直接が加わることがなく、昇降装置11の破損を防止することができる。また、把持部2d,2dを操作者が上方から容易に把持できるとともに、天板4の下方に位置するハンドル部2c,2cを前後左右から把持してカート1を自在に取り回すことができる。
【0029】
また、前後一対のパイプフレーム2,2は独立しているので、前後のハンドル部2c,2cに加わる操作力やパイプフレーム2,2全体に加わる衝撃力が天板4に直接作用することがない。加えて、一方のパイプフレーム2にかかる衝撃は他方のパイプフレーム2に伝達されにくく、操作性に優れる。さらに、ハンドル部2c,2cの把持部2d,2dは、ベース部2a,2aよりも前後方向外方に張り出しているので、ハンドル部2c,2cの把持部2d,2dを操作する操作者の足がベース部2a,2aと干渉しにくくなる。
【0030】
前後のパイプフレーム2,2のハンドル部2c,2cは、平面視コ字状をなすように、それぞれ左右の支柱部2b,2b,2b,2bの上端に連続的に形成されているとともに、左右のベース部2a,2aも平面視コ字状をなすように左右の支柱部2b,2b,2b,2bの下端に連続的に形成されているので、ハンドル部2c,2c及びベース部2a,2aの強度が高まる。また、パイプフレーム2を1本のパイプにより無端状に形成できるので、パイプフレーム2の剛性が大となる。さらに、ハンドル部2cに加わる下向きの荷重が平面視コ字状のベース部2aにより受けられるので、下向き荷重に対しハンドル部2cの強度が高まる。
【0031】
左右のパイプフレーム2,2の支柱部2b,2b及びハンドル部2c,2c同士は、前後に離間しているので、前後の支柱部2b,2b,2b,2b及びハンドル部2c,2c同士を近接させて配設した場合よりも、ハンドル部2c,2cの前後方向のアーム長さが短くなるので、ハンドル部2c,2cに作用する曲げモーメントが小さくなり、支柱部2b,2b,2b,2bとハンドル部2c,2cとが連続する屈曲部に大きな曲げ荷重が作用することがなくなる。また、前後の支柱部2b,2b,2b,2b同士を天板4の支持体5,5により連結するだけで、前後のパイプフレーム2,2を容易にかつ強固に連結することができるとともに、天板4に加わる荷重を左右の支持体5,5を介して前後のパイプフレーム2,2より均等に受けることができる。
【0032】
キャスタ3,3,3,3は、別体をなす前後のパイプフレーム2,2のベース部2a,2aの下端に設けられ、互いの動作に干渉しにくいため、一方に加わる衝撃力や振動等が他方に作用せず、カート1が振動するのを抑制して昇降装置11が破損するのを効果的に防止することができるばかりでなく、天板4上に載置された物品の落下を防止することができる。また、前後のパイプフレーム2,2及びキャスタ3,3,3,3に加わる衝撃力や振動等が前後のキャスタ3,3,3,3に互いに伝わりにくくなるため、キャスタ3,3,3,3の耐久性を向上させることができる。
【0033】
底板6は、平面視コ字状をなす前後のベース部2a,2aに囲まれた内部に設けられているので、底板6を前後のベース部2a,2aにより保護することができ、工場や物流センター等のように狭小なスペースでの操作が求められる環境でカート1を使用した際でも、底板6が他物に衝突して損傷したり位置ずれしたりすることがない。また、キャスタ3,3,3,3はベース部2a,2aに設けられているので、キャスタ3,3,3,3に加わる衝撃力が直接底板6に作用することがない。さらに、底板6は、前後のベース部2a,2aの屈曲隅部に固着した支持片7,7,7,7により、上面がベース部2a,2aの上面よりも下方に位置するように支持されているので、底板6に載置された物品が滑り落ちるのを防止することができる。
【0034】
天板4を昇降させる昇降装置11は、操作者が把持できるハンドル部2c,2cを有する前後一対のパイプフレーム2,2の前後の支柱部2b,2b,2b,2bに挟まれているため、昇降装置11が直接他物に衝突しないように保護することができる。加えて、パイプフレーム2,2は支柱部2b,2b,2b,2bが天板4とは独立して立設されるため、操作時にパイプフレーム2,2にかかる外力が天板4に直接作用しないため、天板4に接続された昇降装置11の破損を簡素な構成で確実に防止することができる。
【0035】
また、昇降装置11を支持するための構造として前方のパイプフレーム2と後方のパイプフレーム2とを用いる構成としたことで、簡素な構造で昇降装置11を保護できるカート1を制作することができる。
【0036】
また、天板4の昇降装置11は、ベース部2a,2aより上方に離間しているので、ベース部2a,2aが他物に衝突した際の衝撃力やカート移動時の振動等が昇降装置11に直接作用するのが防止される。加えて、天板4の昇降装置11は、ベース部2a,2aより上方に離間しているので、カート1の移動時に振動した底板6が昇降装置11に衝突せず、昇降装置11の破損を防止することができる。
【0037】
また、天板4は、左右の支持体5,5によって支持されているため、天板4に係る荷重が左右の支持体5,5に分散される。すなわち、左右の支持体5,5によって構成される昇降装置11に作用する外力を軽減することができる。
【実施例2】
【0038】
実施例2に係るカート1につき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例1と同じ構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。実施例2に係るカート1は、前後のパイプフレーム2,2のベース部2a,2aを平面視コ字状に形成しないで、左右の支柱部2b,2b,2b,2bの下端から前方及び後方に直線的に延びる形状とし、前後のベース部2a,2aの前端部と後端部の下面にそれぞれキャスタ3,3を設け、左右のベース部2a,2a同士をそれぞれ底板6により連結したものである。この実施例2のカート1においても、前後のパイプフレーム2,2は独立しているので、前記実施例1のカートとほぼ同様の作用効果が得られる。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0040】
例えば、前記実施例では、ラックアンドピニオン式の昇降手段18を備える昇降装置11を、前後の支柱部2b,2b,2b,2b間に、側板10,10を介して設けている形態として説明したが、これに限らず、ガススプリング等の昇降手段を使用してもよい。このようにすることで、シリンダまたはシリンダの保持部材を、前後の支柱部2b,2b,2b,2bにより直接挟持することができる。
【0041】
また、前記実施例では、前後のパイプフレーム2,2のハンドル部2c,2cと天板4との左右幅をほぼ等しい形態として説明したが、これに限らず、ハンドル部2c,2cの左右幅を天板4よりも若干長寸としてもよい。このようにすることで、天板4の左右両側面もハンドル部2c,2cの左右両側部により保護することができるので、昇降装置11に天板4から加わる衝撃力を効果的に緩和することができる。
【0042】
また、前記実施例では、天板4は、左右の支持体5,5によって支持されている形態として説明したが、一方の支持体だけで支持されるいわゆる片持ちであってもよく、昇降装置についても、一方の支持体側にのみ構成されていてもよい。このようにすることで、支持体および昇降装置を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 カート
2 パイプフレーム
2a ベース部
2b 支柱部
2c ハンドル部
2d 把持部
3 キャスタ(走行手段)
4 天板
5 支持体
6 底板
7 支持片
8 雌ねじ孔
9 ボルト
10 側板
10a 連結片
11 昇降装置
12 カバー
13 ビス
14 連結部材
15 係止孔
16 トレー
16a フック
17 昇降杆
17a 分離昇降杆
18 昇降手段
19 天板取付部材
20 ガイド部材
21 ボルト
22 ナット
23 ラック
23a 歯部
24 連結軸
25 ピニオン
26 操作つまみ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9