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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20240213BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20240213BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20240213BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A01D41/127 130
A01F12/46
A01F12/60
G01N27/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113478
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022012001
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】森原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】増本 忠久
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097501(JP,A)
【文献】実開昭63-139545(JP,U)
【文献】特開2014-042502(JP,A)
【文献】特開2000-214118(JP,A)
【文献】特開平07-072104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01F 12/46
A01F 12/60
G01N 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留するグレンタンクと、
前記グレンタンクに貯留された穀粒を前記グレンタンクから搬出するアンローダと、
前記グレンタンク内に排出される穀粒を受け入れるように設けられ、検出動作により穀粒の水分量に応じた値を出力し、清掃動作により自己清掃を行う水分センサと、
前記水分センサが前記グレンタンク内に貯留された穀粒に埋もれる埋もれ状態の前段階である埋もれ懸念状態を検知したこと応じて、前記水分センサの前記検出動作および前記清掃動作の両方を禁止し、前記アンローダにより前記グレンタンクから穀粒が搬出されて、前記埋もれ懸念状態が解消されたことに応じて、前記水分センサを前記清掃動作させる制御装置と、を含む、コンバイン。
【請求項2】
前記水分センサは、1対の電極ローラを備えており、前記検出動作では、前記1対の電極ローラが前記電極ローラ間に穀粒を巻き込む方向に正転して、前記電極ローラ間で穀粒を圧砕し、当該圧砕時における前記電極ローラ間の電気抵抗値を検出して、穀粒に含まれる水分量に応じた値を出力前記清掃動作では、前記1対の電極ローラが逆転して、前記電極ローラの表面を清掃する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記グレンタンク内に貯留された穀粒が前記水分センサの位置よりも下方に設定された検出位置に到達したことを検知する到達センサ、をさらに含み、
前記制御装置は、前記到達センサにより前記検出位置への穀粒の到達が検知されている状態を前記埋もれ懸念状態として検知する、請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記水分センサを前記検出動作させる前に、前記水分センサを前記清掃動作させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでは、圃場に植立している穀稈の株元が刈取装置により刈られ、その刈られた穀稈が刈取装置から脱穀装置に搬送されて、脱穀装置で穀稈が脱穀される。穀稈から外れた籾などの穀粒は、脱穀装置からグレンタンクの上部に設けられた排出部に搬送され、その排出部からグレンタンク内に排出される。
【0003】
コンバインには、収穫された穀粒に含まれる水分量を測定するための水分センサ(水分計)を搭載したものがある。水分センサを搭載したコンバインにおいて、たとえば、排出部をグレンタンクの左側板の前後方向中央より前側の位置の上部に配置し、水分センサをグレンタンクの後面の左上端部に配置して、排出部で回転する回転体により穀粒を略水平方向に跳ね飛ばして、その跳ね飛ばされた穀粒を水分センサに受け入れる構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6451513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水分を多く含む穀粒は、穀粒の排出部からの飛散距離が短い。これを考慮して、水分センサの位置を下げれば、水分を多く含む穀粒も水分センサに良好に到達させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、水分センサの位置が低い場合、グレンタンク内に穀粒が貯まっていくと、水分センサが穀粒に埋もれてしまう。水分センサが穀粒に埋もれた状態では、水分センサから穀粒を排出できず、水分センサに穀粒が詰まるため、水分センサを作動させても良好に動作しないといった事態が生じ、水分センサの異常が誤発報されるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、水分センサが穀粒に埋もれた状態において、水分センサを作動させても良好に動作しないといった事態が生じることを防止できる、コンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係るコンバインは、穀粒を貯留するグレンタンクと、グレンタンク内に排出される穀粒を受け入れるように設けられ、穀粒の水分量を測定するための水分センサと、水分センサがグレンタンク内に貯留された穀粒に埋もれる埋もれ状態の前段階である埋もれ懸念状態を検知したこと応じて、水分センサの動作を禁止する制御装置とを含む。
【0009】
この構成によれば、穀粒の水分量を測定するための水分センサには、グレンタンク内に排出される穀粒が受け入れられる。グレンタンク内への穀粒の排出が進み、水分センサがグレンタンク内に貯留された穀粒に埋もれる状態の前段階の状態になると、水分センサの動作が禁止される。これにより、水分センサが穀粒に埋もれた状態になっても、水分センサの動作がそもそも禁止されており、水分センサの作動が指示されないので、水分センサを作動させても良好に動作しないといった事態が生じることを防止できる。その結果、水分センサの異常が誤発報されることを抑制できる。
【0010】
水分センサは、1対の電極ローラを備えており、1対の電極ローラが電極ローラ間に穀粒を巻き込む方向に正転して、電極ローラ間で穀粒を圧砕し、当該圧砕時における電極ローラ間の電気抵抗値を検出して、穀粒に含まれる水分量に応じた値を出力する検出動作を行い、1対の電極ローラが逆転して、電極ローラの表面を清掃する清掃動作とを行うものであってもよい。この場合、制御装置は、埋もれ懸念状態を検知したこと応じて、検出動作および清掃動作の両方を禁止することが好ましい。
【0011】
制御装置は、埋もれ懸念状態が解消されたことに応じて、水分センサの動作禁止を解除して、水分センサを清掃動作させることが好ましい。
【0012】
これにより、水分センサにおける穀粒の詰まりを解消することができ、水分センサの良好な動作を確保することができる。
【0013】
コンバインは、グレンタンク内に貯留された穀粒が水分センサの位置よりも下方に設定された検出位置に到達したことを検知する到達センサをさらに含む構成であってもよい。この場合、制御装置は、到達センサにより検出位置への穀粒の到達が検知されている状態を埋もれ懸念状態として検知してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水分センサが穀粒に埋もれた状態において、水分センサを作動させても良好に動作しないといった事態が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図2】グレンタンクの内部を右側から見た図である。
図3】グレンタンク内の前端上部の斜視図である。
図4】グレンタンク内の後端部の斜視図である。
図5】水分センサの斜視図である。
図6】コンバインの電気的構成の要部を示すブロック図である。
図7】水分センサの駆動制御の流れを示すフローチャートである。
図8】センサ埋もれ対策処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の右側面図である。
【0018】
コンバイン1は、圃場を走行しながら穀稈の刈り取りおよび穀稈からの脱穀を行う収穫機の一例である。コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右一対のクローラ2を採用しており、その左右一対のクローラ2に支持される機体3には、キャビン4およびグレンタンク5が設けられている。
【0019】
キャビン4は、クローラ2の前端部上に配置されている。キャビン4は、その内部に運転者が搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、運転者が着座する運転席や操作レバーおよび操作ペダルなどの操作部材が配置されている。キャビン4の右側面には、開閉可能なドア6が設けられており、運転者は、ドア6を開いて、キャビン4内に乗り込むことができる。
【0020】
グレンタンク5は、クローラ2上でキャビン4の後方に配置されている。
【0021】
また、コンバイン1の機体3には、刈取装置7および脱穀装置(図示せず)が設けられている。刈取装置7は、クローラ2の前側に配置されており、コンバイン1の前進に伴って、圃場に植立されている穀稈を刈り取る。脱穀装置は、グレンタンク5の左側に配置されており、刈取装置7に刈り取られた穀稈の株元側を脱穀フィードチェーンによって後側に搬送し、穀稈の穂先側を扱室に供給して脱穀する。そして、穀稈から外れた穀粒が脱穀装置からグレンタンク5に搬送されて、グレンタンク5に穀粒が貯留される。グレンタンク5には、アンローダ8が接続されており、グレンタンク5に貯留された穀粒は、アンローダ8により搬出して機外に排出することができる。
【0022】
<グレンタンクの内部構成>
図2は、グレンタンク5の内部を右側から見た図である。図3は、グレンタンク5内の前端上部の斜視図である。
【0023】
グレンタンク5内には、図2および図3に示されるように、前端上部に、搬送排出部11が設けられている。搬送排出部11は、図3に示されるように、脱穀装置から送出される穀粒をグレンタンク5内に搬送する搬送部12と、搬送部12により搬送される穀粒をグレンタンク5内に排出する排出部13とを一体に備えている。
【0024】
搬送部12は、グレンタンク5の左側壁14の前上端部から右側に延びている。搬送部12は、略円筒状の搬送ケース15内に、搬送スクリュー16を備えている。
【0025】
搬送ケース15は、左側壁14に接続されている。左側壁14には、搬送ケース15に囲まれる部分に、円形の開口が搬送ケース15の内径とほぼ同じ径で形成されている。
【0026】
搬送スクリュー16は、搬送ケース15の中心線上を延びるスクリュー軸17と、スクリュー軸17に支持される螺旋状のスクリュー羽根18とを備えている。スクリュー軸17は、左側壁14の開口を通して左側壁14の左側に延出している。スクリュー軸17の左側の端部には、プーリ(図示せず)が相対回転不能に取り付けられており、搬送スクリュー16は、そのプーリに入力される駆動力により回転する。
【0027】
排出部13は、搬送部12の右端に接続されており、搬送部12に支持されて、グレンタンク5内の左右方向の中央部において、グレンタンク5の前壁21に対して後側に間隔を空けて配置されている。
【0028】
排出部13は、排出ケース22を備えている。排出ケース22は、前側に膨出する半円筒状の周面部23と、周面部23の上端から後側に延びる板状の上板部24と、周面部23の下端から後上側に傾斜して延びる板状の案内板部25と、周面部23の内側の空間を右側から閉塞する端面部26とを有している。上板部24と案内板部25との間は、排出ケース22内をグレンタンク5内と連通させる排出口27として開放されている。
【0029】
スクリュー軸17は、排出ケース22内に進出し、排出ケース22の端面部26に回転可能に挿通されている。排出ケース22内において、スクリュー軸17には、2つの回転羽根28,29が支持されている。回転羽根28,29は、それぞれ略矩形板状に形成され、スクリュー軸17から互いに反対側に延出している。
【0030】
搬送スクリュー16は、回転羽根28,29が排出口27を下から上に通過する方向に回転する。脱穀装置から送出される穀粒は、スクリュー羽根18の回転により、搬送ケース15内を排出ケース22に向けて搬送される。そして、排出ケース22内に搬送された穀粒は、回転する回転羽根28,29により掃き飛ばされ、排出口27からグレンタンク5内に、主として排出ケース22の案内板部25の上面に沿う方向に飛び出す。
【0031】
図4は、グレンタンク5内の後端部の斜視図である。
【0032】
グレンタンク5の後壁31には、穀粒に含まれる水分量を測定するための水分センサ32が取り付けられている。水分センサ32は、後壁31を貫通し、その前端部が後壁31の内面、つまりグレンタンク5内の後面33からグレンタンク5内に露出している。水分センサ32は、後面33において、上下方向で中央よりも上方かつ排出部13の排出口27よりも低い位置であって、左右方向で中央よりも右側に片寄った位置(右端に近い位置)に配置されている。具体的には、排出口27から飛散する穀粒の流量を一定流量として、一定以上の水分を含む穀粒であって、排出口27から案内板部25に沿う方向に飛び出して放物線を描いて飛散する穀粒の後面33における到達位置が実験またはシミュレーションにより求められて、その求められた到達位置に水分センサ32が配置されている。
【0033】
図5は、水分センサ32の斜視図である。
【0034】
水分センサ32は、箱型のセンサケース41を備えている。センサケース41の前面には、センサケース41内に穀粒を受け入れるための受入口42が形成されている。受入口42は、左右対称の形状であり、上側に開いたV字状の下辺43と、下辺43の左上端から上下方向(鉛直方向)に対して左側に相対的に小さい角度で傾斜して上方に延びる第1左辺44と、第1左辺44の上端から上下方向に対して左側に相対的に大きい角度で傾斜して上方に延びる第2左辺45と、下辺43の右上端から上下方向に対して右側に相対的に小さい角度で傾斜して上方に延びる第1右辺46と、第1右辺46の上端から上下方向に対して右側に相対的に大きい角度で傾斜して上方に延びる第2右辺47とを有している。第1左辺44、第2左辺45、第1右辺46および第2右辺47から後側に、それぞれ平面51,52,53,54が延びており、これらの平面51,52,53,54は、穀粒をセンサケース41内に案内する案内面として機能する。
【0035】
センサケース41内には、受入口42の後側のローラ収容空間に、1対の電極ローラ61,62が設けられている。電極ローラ61,62は、それぞれ互いに平行をなして前後方向に延びるローラ軸63,64を一体的に有している。電極ローラ61,62の周面は、左右方向に近接して並んでいる。電極ローラ61,62の周面には、微小な凹凸が多数形成されている。
【0036】
センサケース41内には、DCモータ(図示せず)が設けられており、そのDCモータの駆動力により、1対の電極ローラ61,62は、正転および逆転する。電極ローラ61,62の正転では、グレンタンク5内から見て、電極ローラ61が反時計回りに回転し、電極ローラ62が時計回りに回転する。電極ローラ61,62の逆転では、グレンタンク5内から見て、電極ローラ61が時計回りに回転し、電極ローラ62が反時計回りに回転する。
【0037】
また、センサケース41内には、案内部材65が設けられている。案内部材65は、左側の電極ローラ61のローラ軸63に相対回転可能に支持されているが、ローラ軸63との間に適度の摩擦抵抗を有するため、案内部材65にローラ軸63以外からの外力が作用しない状態では、ローラ軸63につられて回動する。センサケース41内には、案内部材65の回動範囲を規制するストッパが設けられている。これにより、案内部材65は、電極ローラ61,62の正転時には、電極ローラ61,62の前上側の位置に配置され、電極ローラ61,62の逆転時には、正転時の位置に対して左上側の位置(電極ローラ61,62の左前上側の位置)に配置される。案内部材65は、電極ローラ61,62の前上側の位置に配置された状態で、平面視で略三角形状、かつ前面視で上側に開いた略V字状をなしている。
【0038】
排出部13の排出口27から飛散する穀粒の一部は、センサケース41の位置に到達し、センサケース41の受入口42からセンサケース41内に受け入れられる。電極ローラ61,62の正転時には、案内部材65が電極ローラ61,62の前上側の位置に位置しているので、受入口42から飛入して案内部材65上に到達した穀粒は、案内部材65により、電極ローラ61,62上に案内される。また、受入口42からセンサケース41内に飛入する穀粒の一部は、電極ローラ61,62上に直接到達する。そして、電極ローラ61,62上の穀粒は、電極ローラ61,62の正転により、電極ローラ61,62に挟まれて圧砕される。水分センサ32では、穀粒の圧砕時における電極ローラ61,62間の電気抵抗値が検出されて、その電気抵抗値から穀粒に含まれる水分量の値が求められる。そして、その求められた値が水分センサ32から出力される(検出動作)。
【0039】
なお、水分センサ32からは、穀粒の圧砕時における電極ローラ61,62間の電気抵抗値が出力されて、その水分センサ32の出力値が入力される制御装置において、電気抵抗値から穀粒に含まれる水分量の値が求められてもよい。
【0040】
また、電極ローラ61,62の逆転時には、電極ローラ61,62の各周面にブラシ(図示せず)が当接し、電極ローラ61,62の周面(表面)が清掃される(清掃動作)。このとき、案内部材65は、電極ローラ61,62の前上側の位置に対して左上側の位置に退避しているので、電極ローラ61,62上から圧砕されていない穀粒が落下する妨げにならない。
【0041】
電極ローラ61,62が収容されるローラ収容空間は、その底面が開放されている。したがって、受入口42からセンサケース41内に受け入れられた穀粒は、電極ローラ61,62上を除いて、ローラ収容空間には溜まらず、ローラ収容空間から水分センサ32の下側に設けられている戻し通路66(図4参照)を通してグレンタンク5内に戻される。
【0042】
<コンバインの電気的構成>
図6は、コンバイン1の電気的構成の要部を示すブロック図である。
【0043】
コンバイン1には、水分センサ32の動作を制御するため、制御装置71が搭載されている。制御装置71は、マイクロコントローラユニット(MCU:Micro Controller Unit)を含む構成であり、マイクロコントローラユニットには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0044】
制御装置71には、水分センサ32から出力される値(検出信号)のほか、メインキースイッチ72のオン/オフ信号、穀稈センサ73の検出信号および籾センサ74の検出信号が入力される。メインキースイッチ72は、コンバイン1の運転開始(始動)および運転終了の際に、ユーザがキーをキーシリンダに挿入して操作することにより、オン/オフするスイッチである。穀稈センサ73は、刈取装置7に設けられて、刈取装置7における穀稈の存在を検出するセンサである。穀稈センサ73は、刈取装置7に穀稈が存在するときにオンレベルの検出信号を出力し、刈取装置7に穀稈が存在しないときにオフレベルの検出信号を出力する。籾センサ74は、図4に示されるように、たとえば、水分センサ32の下端付近に設定された検出位置に配置されて、グレンタンク5内に堆積した穀粒の高さが検出位置まで達すると、穀粒によって感圧部が押圧されて、その押圧によりリミットスイッチがオンになる構成である。
【0045】
<センサ駆動制御>
図7は、水分センサ32の駆動制御の流れを示すフローチャートである。
【0046】
メインキースイッチ72がオンされると、制御装置71により、水分センサ32の駆動(動作)の制御が開始される。水分センサ32の駆動制御は、メインキースイッチ72がオフにされるまで続けられる。
【0047】
水分センサ32の駆動制御では、メインキースイッチ72がオンされたことに応じて、水分センサ32のDCモータが制御されて、予め定められた通常時間にわたって、電極ローラ61,62が逆転される(ステップS1)。これにより、水分センサ32は、通常時間にわたる清掃動作を行う。清掃動作により、電極ローラ61,62の周面が清掃される。
【0048】
その後、刈取装置7および脱穀装置が作動(オン)しているか否かが判断される(ステップS2)。刈取装置7および脱穀装置が作動していない非作動状態(オフ)である場合(ステップS2のNO)、刈取装置7および脱穀装置が作動するまで、水分センサ32の駆動制御は先に進まない。
【0049】
刈取装置7および脱穀装置が作動していると判断されると(ステップS2のYES)、通常時間にわたって、電極ローラ61,62が逆転される。これにより、水分センサ32は、通常時間にわたる清掃動作を行う。
【0050】
清掃動作の開始から通常時間が経過すると、所定時間にわたって、電極ローラ61,62が正転される(ステップS4)。所定時間は、電極ローラ61,62の左前上側の位置に配置されている案内部材65が電極ローラ61,62の前上側の位置に移動するのに必要な時間に設定されている。したがって、電極ローラ61,62が所定時間にわたって正転されることにより、案内部材65が電極ローラ61,62の左前上側の位置から電極ローラ61,62の前上側の位置に移動する。
【0051】
その後、穀稈センサ73の検出信号がオンレベルであるか否かが判断される(ステップS5)。穀稈センサ73の検出信号がオフレベルである間は(ステップS5のNO)、水分センサ32の駆動制御は先に進まない。
【0052】
刈取装置7に穀稈が進入し、穀稈センサ73の検出信号がオンレベルになると(ステップS5のYES)、電極ローラ61,62間の電気抵抗値が検出されて、その電気抵抗値から、電極ローラ61,62上における穀粒(作物)の有無が判定される(ステップS6)。電極ローラ61,62上に穀粒が存在する場合、その穀粒が圧砕されていなくても、電極ローラ61,62上に穀粒が存在しない場合と電極ローラ61,62間の電気抵抗値が異なる。したがって、電極ローラ61,62間の電気抵抗値から、電極ローラ61,62上における穀粒の有無を判定することができる。
【0053】
電極ローラ61,62上に穀粒がない場合(ステップS6のNO)、穀稈センサ73の検出信号がオンレベルであるか否かが再び判断される(ステップS5)。
【0054】
電極ローラ61,62上に穀粒が乗り、電極ローラ61,62上に穀粒があると判定されると(ステップS6のYES)、電極ローラ61,62が正転されて、電極ローラ61,62による穀粒の圧砕時における電極ローラ61,62間の電気抵抗値が検出され、その電気抵抗値から穀粒に含まれる水分量の値が求められる。すなわち、水分センサ32は、穀粒に含まれる水分量を測定するために、穀粒の圧砕時における電極ローラ61,62間の電気抵抗値を検出する検出動作を行う。
【0055】
穀粒の水分量が測定されると、通常時間にわたって、電極ローラ61,62が逆転される(ステップS8)。これにより、水分センサ32は、通常時間にわたる清掃動作を行う。
【0056】
水分センサ32の清掃動作の終了後は、刈取装置7および脱穀装置が作動(オン)しているか否かが再び判断されて(ステップS2)、刈取装置7および脱穀装置が作動している状態であれば(ステップS2のYES)、前述したステップS3以降の処理が実行される。これにより、刈取装置7および脱穀装置が作動している状態では、穀粒の水分量が周期的に測定される。
【0057】
<センサ埋もれ対策処理>
図8は、センサ埋もれ対策処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
刈取装置7および脱穀装置の作動が継続すると、グレンタンク5内に穀粒が堆積していき、その堆積した穀粒の高さが高くなっていく。刈取装置7および脱穀装置が作動している状態では、穀粒の水分量が周期的に測定されるが、水分センサ32が穀粒に埋もれると、水分センサ32のセンサケース41内に穀粒が詰まり、水分センサ32を作動させても良好に動作しない事態が生じる可能性がある。
【0059】
そのため、制御装置71により、図8に示されるセンサ埋もれ対策処理が実行される。
【0060】
センサ埋もれ対策処理では、まず、現在の水分センサ32の状態(グレンタンク5内の状態)が埋もれ懸念状態であるか否かが判定される(ステップS11)。埋もれ懸念状態は、水分センサ32がグレンタンク5内に堆積した穀粒に埋もれる状態の前段階の状態であり、具体的には、堆積した穀粒の高さが籾センサ74の検出位置に到達し、籾センサ74がオンになった状態である。
【0061】
埋もれ懸念状態が判定されない場合(ステップS11のNO)、センサ埋もれ対策処理は、一旦終了されて、所定時間が経過した後に再び実行される。
【0062】
埋もれ懸念状態が判定されると(ステップS11のYES)、水分センサ32の動作が禁止される(ステップS12)。禁止対象の動作は、検出動作だけでなく、清掃動作も含まれる。すなわち、水分センサ32の一切の動作が禁止される。
【0063】
水分センサ32の動作の禁止後、埋もれ懸念状態が解消されたか否かが判断される(ステップS13)。すなわち、オン状態であった籾センサ74がオフ状態に切り替わったか否かが判定される。
【0064】
アンローダ8(図1参照)により、グレンタンク5から穀粒が搬出されて、グレンタンク5内の穀粒の量が減り、グレンタンク5内に堆積した穀粒の高さが籾センサ74の検出位置よりも低くなると、籾センサ74がオン状態からオフ状態に切り替わる。籾センサ74がオフ状態になると、埋もれ懸念状態が解消されたと判断される(ステップS13のYES)。
【0065】
埋もれ懸念状態が解消されると、水分センサ32の動作禁止が解除される。そして、水分センサ32のDCモータが制御されて、通常時間にわたって、電極ローラ61,62が逆転される(ステップS14)。これにより、水分センサ32は、通常時間にわたる清掃動作を行う。清掃動作により、電極ローラ61,62の周面が清掃されるとともに、電極ローラ61,62上に残っている穀粒が落とされる。
【0066】
<作用効果>
以上のように、穀粒の水分量を測定するための水分センサ32には、グレンタンク5内に排出される穀粒が受け入れられる。グレンタンク5内への穀粒の排出が進み、水分センサ32がグレンタンク5内に貯留された穀粒に埋もれる状態の前段階の状態である埋もれ懸念状態になると、水分センサ32の動作が禁止される。これにより、水分センサ32が穀粒に埋もれた状態になっても、水分センサ32の動作がそもそも禁止されており、水分センサ32の作動が指示されないので、水分センサ32を作動させても良好に動作しないといった事態が生じることを防止できる。その結果、水分センサ32の異常が誤発報されることを抑制できる。
【0067】
また、埋もれ懸念状態が解消されたことに応じて、水分センサ32の動作禁止が解除される。そして、電極ローラ61,62の逆転により、水分センサ32が清掃動作を行う。これにより、水分センサ32における穀粒の詰まりを解消することができ、水分センサ32の良好な動作を確保することができる。
【0068】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0069】
たとえば、前述の実施形態では、水分センサ32の下端付近に設定された検出位置に籾センサ74が配置されて、籾センサ74のオンにより、グレンタンク5内に堆積した穀粒の高さが検出位置に到達したことが検知される。籾センサ74に代えて、到達センサとして、グレンタンク5内に堆積した穀粒を非接触で検知する近接センサが検出位置に配置されて、近接センサのオンにより、グレンタンク5内に堆積した穀粒の高さが検出位置に到達したことが検知されてもよい。
【0070】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:コンバイン
5:グレンタンク
32:水分センサ
61,62:電極ローラ
62:電極ローラ
71:制御装置
74:籾センサ(到達センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8