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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置及び冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240213BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240213BHJP
   F25D 13/00 20060101ALN20240213BHJP
   F25D 23/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
F25B1/00 371C
F25B49/02 570Z
F25B1/00 361A
F25D13/00 A
F25D23/00 301D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020126431
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023472
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 勇太
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179088(WO,A1)
【文献】特開2013-231519(JP,A)
【文献】特開2004-116862(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109571(WO,A1)
【文献】特開平08-219564(JP,A)
【文献】特開平10-148377(JP,A)
【文献】特開2019-174048(JP,A)
【文献】特開2012-047395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 49/02
F25D 13/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱器及びこの吸熱器の設置場所の状況に応じた、圧縮機の動作に関する第1信号を出力する第1制御部を備えた冷却ユニットと、
この冷却ユニットに接続され、
前記吸熱器から排出された冷媒が供給される前記圧縮機、
この圧縮機から吐出された冷媒が供給される放熱器、
前記圧縮機の回転数を制御するインバータ、
前記第1信号が入力され、前記インバータの出力周波数を制御する第2制御部、
前記圧縮機に供給される冷媒の圧力を検出する圧力センサ、および
この圧力センサの検出した圧力を記録する記録部を有する冷凍機と、
を有する冷凍サイクル装置であって、
前記第2制御部は、前記第1信号が入力されない場合、前記記録部から読み出した圧力値に基づいて目標圧力信号を設定し、前記圧力センサの検出する圧力が前記目標圧力信号になるように前記インバータの出力周波数を可変して前記圧縮機の動作を制御する、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記記録部に記録された最新の圧力値を読み出して、この圧力値に基づいて前記目標圧力信号を設定する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第2制御部は、前記記録部に記録された複数の圧力値を読み出して平均値を算出し、この圧力値に基づいて前記目標圧力信号を設定する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
複数の冷却ユニットを有し、
前記複数の冷却ユニットは、それぞれ前記吸熱器および前記第1制御部を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷凍機は、前記第2制御部に前記第1信号が入力されない場合は、通信異常を報知する異常報知部をさらに有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
吸熱器の設置場所の状況に応じた、圧縮機の動作に関する第1信号を出力する冷却ユニットに接続され、
前記吸熱器から排出された冷媒が供給される前記圧縮機と、
この圧縮機から吐出された冷媒が供給される放熱器と、
前記圧縮機の回転数を制御するインバータと、
前記第1信号が入力され、前記インバータの出力周波数を制御する冷凍機制御部と、
前記圧縮機に供給される冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
この圧力センサの検出した圧力を記録する記録部と、を備え、
前記冷凍機制御部は、前記第1信号が入力されない場合、前記記録部から読み出した圧力値に基づいて目標圧力信号を設定し、前記圧力センサの検出する圧力が前記目標圧力信号になるように前記インバータの出力周波数を可変して前記圧縮機の動作を制御する、
冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷凍サイクル装置及び冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍倉庫などの内部に配置される冷却ユニットと、外部に配置される冷凍機と、を有する冷凍サイクル装置が利用されている。冷却ユニットは、吸熱器と、第1制御部と、を有する。冷凍機は、放熱器、圧縮機および第2制御部を有する。第1制御部は、冷却ユニットの状況に応じて圧縮機の動作に関する指示を行うための第1信号を出力する。第2制御部は、第1信号を受信して、その指示に基づき圧縮機の動作を制御する。このような冷凍サイクル装置では、何らかの異常、例えば通信異常が発生して、第2制御部で第1信号が受信できなくなると、第2制御部は冷凍機をバックアップモード運転(以下、異常モード冷却運転、ともいう)に切替えて冷却運転を継続する。これは、冷凍倉庫の温度が上がってしまうと倉庫に保管されている物品の品質が低下もしくはき損されてしまうためである。
そして、近年圧縮機をインバータで可変速駆動して、冷凍能力を可変できる冷凍機が主流になってきている。インバータで圧縮機を可変速駆動する場合、その消費電力はインバータの出力周波数、すなわち冷凍能力にほぼ比例する。
上述のような異常モード冷却運転では、冷凍機は、冷却ユニットからの第1信号を受信できず、冷却ユニットの状況が不明であることから、余裕を持った大きな冷却能力を発揮する運転、すなわちインバータによる高周波数運転による圧縮機駆動を行わざるを得ない。その結果、冷凍サイクル装置や冷凍機では、必要以上の冷却を行うことになり、エネルギー消費量が増加してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6583779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量を抑制することができる冷凍サイクル装置及び冷凍機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷凍サイクル装置は、冷却ユニットと、冷凍機と、を持つ。冷却ユニットは、吸熱器及び第1制御部を備える。第1制御部は、この吸熱器の設置場所の状況に応じた、圧縮機の動作に関する第1信号を出力する。冷凍機は、圧縮機、放熱器、インバータ、第2制御部、圧力センサ、および記録部を有する。圧縮機には、吸熱器から排出された冷媒が供給される。放熱器には、この圧縮機から吐出された冷媒が供給される。インバータは、圧縮機の回転数を制御する。第2制御部は、第1信号が入力され、インバータの出力周波数を制御する。圧力センサは、圧縮機に供給される冷媒の圧力を検出する。記録部は、この圧力センサの検出した圧力を記録する。第2制御部は、第1信号が入力されない場合、記録部から読み出した圧力値に基づいて目標圧力信号を設定する。第2制御部は、圧力センサの検出する圧力が目標圧力信号になるようにインバータの出力周波数を可変して圧縮機の動作を制御する。
実施形態の冷凍機は、吸熱器の設置場所の状況に応じた、圧縮機の動作に関する第1信号を出力する冷却ユニットに接続される。冷凍機は、圧縮機、放熱器、インバータ、冷凍機制御部、圧力センサ、および記録部を有する。圧縮機には、吸熱器から排出された冷媒が供給される。放熱器には、この圧縮機から吐出された冷媒が供給される。インバータは、圧縮機の回転数を制御する。冷凍機制御部は、第1信号が入力され、インバータの出力周波数を制御する。圧力センサは、圧縮機に供給される冷媒の圧力を検出する。記録部は、この圧力センサの検出した圧力を記録する。冷凍機制御部は、第1信号が入力されない場合、記録部から読み出した圧力値に基づいて目標圧力信号を設定する。冷凍機制御部は、圧力センサの検出する圧力が目標圧力信号になるようにインバータの出力周波数を可変して圧縮機の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の冷凍サイクル装置のブロック図。
図2】冷凍サイクル装置の運転方法のフローチャート。
図3】通信異常前後の低圧圧力の変化を示すグラフ。
図4】実施形態の変形例の冷凍サイクル装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷凍サイクル装置および冷凍機を、図面を参照して説明する。以下には、冷凍サイクル装置の蒸発器の設置場所が冷凍庫(冷凍倉庫)である場合を例にして説明する。
図1は、実施形態の冷凍サイクル装置のブロック図である。冷凍サイクル装置1は、圧縮機2と、凝縮器(放熱器)4と、膨張装置(例えば膨張弁)6と、蒸発器(吸熱器)8と、これらに冷媒を流通させる冷媒流路9と、を有する。冷凍サイクル装置1は、R410A、R32もしくは二酸化炭素(CO)等の冷媒を含む。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1内を循環する。
【0008】
圧縮機2には、蒸発器8から排出された冷媒が供給される。圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒(流体)を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。圧縮機2の上流側には、アキュムレータ(気液分離器)3が配置される。アキュムレータ3は、気液二相冷媒を分離して、気体冷媒を圧縮機2に供給する。
【0009】
凝縮器4は、圧縮機2から吐出される高温・高圧の気体冷媒が流入し、その冷媒を放熱させて、高温・高圧の気体冷媒を常温高圧の液冷媒にする。なお、COを冷媒に使用した場合は、高温・高圧では臨界状態となるため、完全な気体冷媒とはならない。
膨張装置6は、凝縮器4から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の液体冷媒にする。
蒸発器8は、膨張装置6から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を吸熱させて気化させ、常温低圧の気体冷媒にする。蒸発器8において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。蒸発器8を通過した低圧の気体冷媒は、上述した圧縮機2の内部に取り込まれ、再び上記の冷凍サイクル動作が繰り返される。
【0010】
このように、冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら循環する。冷媒は、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。蒸発器8における冷媒の吸熱を利用して、冷凍庫の冷却が行われる。
【0011】
冷凍サイクル装置は、冷却ユニット10と冷凍機20を有する。
冷却ユニット10は、断面が四角もしくは三角形の筐体を備え、冷却する対象空間である冷凍庫や冷凍倉庫等の内部および近傍に配置される。一般的には冷却対象空間の天井や壁面に取り付け設置される。冷却ユニット10は、前述の蒸発器8および膨張装置6を収納する。さらに冷却ユニット10は、冷却ファン12と、冷却ファン駆動回路13と、庫内温度センサ15と、操作器16と、冷却ユニット制御部(第1制御部)11と、通信部18と、を有する。
【0012】
冷却ファン12は、蒸発器8に隣接して配置される。冷却ファン12の回転により、冷凍庫内の空気が蒸発器8を通過する。蒸発器8を流通する冷媒が、蒸発器8を通過する空気から吸熱して、冷凍庫内の空気が冷却される。
冷却ファン駆動回路13は、冷却ファン12を駆動する。冷却ファン駆動回路13の動作は、冷却ユニット制御部11により制御される。
【0013】
庫内温度センサ15は、冷凍庫内の温度を検出するセンサで、庫内の空気温度に対応する温度信号を、冷却ユニット制御部11に出力する。
操作器(温度設定器)16は、入力部と、表示部と、を有する。
入力部は、複数の押圧ボタン等を有する。入力部は、運転・停止や冷凍庫内の目標温度等の冷凍サイクル装置1の動作に関するユーザの入力を受け付ける。操作器16は、入力された目標温度に対応する目標温度信号を、冷却ユニット制御部11に出力する。これにより冷却ユニット制御部11には、蒸発器8の設置場所である冷凍庫の目標温度に対応する目標温度信号が入力される。
表示部は、ディスプレイ等を有する。表示部は、冷凍サイクル装置1の動作に関する情報を表示する。表示部は、後述する通信異常に関する情報を表示することにより、異常報知部として機能する。
【0014】
冷却ユニット制御部11は、複数の運転モードに基づいて、冷凍サイクル装置1の運転を制御する。複数の運転モードの一つとして、冷却ユニット制御部11は、後述されるインバータ回路24の周波数(以下、インバータ周波数と言う。)を決定する。冷却ユニット制御部11は、庫内温度センサ15からの温度信号および操作器16からの目標温度信号の温度差や温度差の変化等に基づいて、冷凍庫内を目標温度に保つために必要な冷却能力が発揮できるようにインバータ周波数を決定する。後述するように圧縮機2は内部にモータが収納されており、圧縮機の能力は、このモータの回転数にほぼ比例する。そして、モータの回転数はインバータ周波数に比例することから、インバータ周波数を制御することで冷凍能力が可変でき、冷却負荷と見合った冷凍能力が発揮できる。
冷却ユニット制御部11は、決定したインバータ周波数に対応する周波数指令信号(第1信号)を通信部18に出力する。冷却ユニット制御部11は、圧縮機2の動作に関する周波数指令信号を出力する。
通信部18は、有線または無線の通信経路19を介して、周波数指令信号を冷凍機20に送信する。
【0015】
一方、この冷却ユニット10とともに冷凍サイクル装置を構成する冷凍機20は、冷凍庫の外部、一般的には屋外、に設置される。冷凍機20は、前述した圧縮機2および凝縮器4を有する。さらに冷凍機20は、放熱ファン22と、放熱ファン駆動回路23と、低圧圧力センサ(圧力センサ)25と、記録部26と、インバータ回路24と、通信部28と、冷凍機制御部(第2制御部)21と、異常表示部(異常報知部)27と、を有する。
【0016】
放熱ファン22は、凝縮器4に対向して配置される。放熱ファン22の回転により、外部、通常は屋外の空気が凝縮器4を通過する。その際、凝縮器4を流通する冷媒が、凝縮器4を通過する空気に放熱する。逆に凝縮器4及びその内部を流れる冷媒は通過する空気によって冷却される。
放熱ファン駆動回路23は、放熱ファン22を駆動する。放熱ファン駆動回路23の動作は、冷凍機制御部21により制御される。
【0017】
低圧圧力センサ25は、冷媒流路9における冷媒の流通方向において、圧縮機2およびアキュムレータ3の上流側に配置される。低圧圧力センサ25は、圧縮機2に供給される冷媒の低圧圧力(蒸発圧力)に対応する圧力信号を出力する。
記録部26には、低圧圧力センサ25から出力された圧力信号が記録される。冷凍機制御部21は、運転中は、常に低圧圧力センサ25から入力された圧力信号を、所定時間毎(例えば5分毎)に記録部26に記録する。記録部26は、電気的なメモリであり、冷凍サイクル装置1への電源が遮断されても内部の記録(記憶)を保持させておく必要がある場合には不揮発性メモリを用いることが好ましい。
【0018】
インバータ回路24は、三相もしくは単相の商用電源を電源とし、この交流電源電圧を整流して、圧縮機2に可変周波数の3相交流の電力を供給して、圧縮機2を可変速駆動する。上述したようにインバータ周波数は、圧縮機2の回転数に対応する。
通信部28は、冷却ユニット10から通信配線等の通信経路19を介して周波数指令信号(第1信号)を受信する。通信部28は、受信した周波数指令信号を冷凍機制御部21に出力する。冷凍機制御部21に周波数指令信号が入力されたとき、冷凍機制御部21は受領信号を出力する。受領信号は、通信部28および通信経路19を介して冷却ユニット10に送信される。そして、受領信号は、冷却ユニット10内の通信部18を経由して冷却ユニット制御部11で受信される。
【0019】
冷凍機制御部21は、冷却ユニット10から入力された周波数指令信号に基づいて、インバータ回路24の動作、すなわち出力周波数を制御する。ちなみに停止時にはインバータ回路24の出力周波数は「0」となり、圧縮機2は停止する。後述するように、何らかの原因で周波数指令信号の通信異常が発生した場合には、冷凍機制御部21に周波数指令信号が入力されなくなる。このような場合に、冷凍サイクル装置1を停止させると、冷凍庫内の温度が上がってしまう。これを防止するために、冷凍サイクル装置1は異常モードでの冷却運転(バックアップ運転ともいう)を行う。バックアップ運転において、冷凍機制御部21は、記録部26から記録されている圧力信号(圧力値)を読み出す。冷凍機制御部21は、記録部26から読み出した圧力信号を目標圧力信号に設定する。冷凍機制御部21は、低圧圧力センサ25から入力される圧力信号と目標圧力信号との偏差に基づいて、インバータ周波数を決定する。冷凍機制御部21は、圧力信号が目標圧力信号に一致するように、圧縮機2の動作、すなわちインバータ回路24の出力するインバータ周波数をフィードバック制御する。例えば、フィードバック制御はPI(比例・積分)制御である。
【0020】
異常表示部27は、7セグメントのLED等のディスプレイを有する。異常表示部27は、異常モードにおいて、周波数指令信号の通信異常に関する情報を表示する。異常表示部27は、画像表示に加えて、音声出力により、周波数指令信号の通信異常を報知してもよい。
【0021】
冷凍サイクル装置1の運転方法について説明する。
図2は、冷凍サイクル装置の運転方法のフローチャートである。周波数指令信号の通信異常が発生していない場合に、冷凍サイクル装置1は正常モードで冷却運転される(S10)。正常モードにおいて、冷却ユニット制御部11は、圧縮機2の動作に関するインバータ周波数を決定する。冷却ユニット制御部11は、決定したインバータ周波数に対応する周波数指令信号を出力する。冷凍機制御部21は、入力された周波数指令信号に基づいて、インバータ回路24の動作を制御する。
低圧圧力センサ25は、圧力信号Pを冷凍機制御部21に出力する。冷凍機制御部21は、入力された圧力信号Pを、所定時間毎に記録部26に記録する(S12)。
【0022】
周波数指令信号は、通信経路19を介して、冷却ユニット10から冷凍機20に送信される。通信経路19の故障等により通信異常が発生すると、冷凍機制御部21に周波数指令信号が入力されなくなる。冷凍機制御部21は、周波数指令信号の通信異常が発生しているか判断する(S14)。S14の判断がNoの場合には、S10に戻り、冷凍サイクル装置1は周波数指令信号に従った正常モードでの冷却運転を継続する。S14の判断がYesの場合に、冷凍サイクル装置1は、異常モード冷却運転を実施する。
【0023】
異常モードにおいて、冷凍機制御部21は、異常表示部27により周波数指令信号の通信異常を報知する(S16)。冷凍機制御部21は、異常表示部27に、周波数指令信号が受信できない旨を表示させる。
周波数指令信号の通信異常の場合には、冷凍機制御部21が受領信号を出力しないので、冷却ユニット制御部11に受領信号が入力されない。この場合に、冷却ユニット制御部11は、操作器16の表示部により周波数指令信号の通信異常を報知する。冷却ユニット制御部11は、操作器16の表示部に、何らかの原因で周波数指令信号が送信できていない旨を表示させる。
【0024】
異常報知のステップS16に続いて冷凍機制御部21は、記録部26から圧力信号Pを読み出す。冷凍機制御部21は、所定時間毎に記録された圧力信号(圧力値)Pのうち、最新の圧力信号Pを読み出す。冷凍機制御部21は、読み出した圧力信号Pを目標圧力信号PTに設定する(S18)。
冷凍機制御部21は、直近の3個の圧力信号Pの平均値を、目標圧力信号(目標圧力値)PTに設定してもよい。直近の圧力信号Pが過去の3個の圧力信号Pの最大値と最小値との差分以上の場合は、この直近の圧力信号Pを圧力異常値(無効値)としてカウントしない。すなわち、平均値を算出する対象から除外しても良い。
また、起動直後などで圧力信号Pが安定していない過渡期にあたると、正確な負荷状態と対応しないため、検出した圧力信号P(圧力値)が安定したことを判断して、安定後の圧力信号を目標圧力値としても良い。
【0025】
冷凍機制御部21は、常に低圧圧力センサ25から入力される圧力信号Pを検出しており、圧力信号(圧力値)Pが、目標圧力信号PTに一致するように、PI制御などの演算によりインバータ周波数を決定する。冷凍機制御部21は、決定したインバータ周波数に基づいて、インバータ回路24の動作を制御する。これにより、冷凍サイクル装置1は異常モード冷却運転を実施する(S20)。
【0026】
図3は、通信異常前後の低圧圧力の変化を示すグラフである。図3には、冷凍サイクル装置1の運転開始から、通信異常の発生時間T1の後までの低圧圧力の変化が示されている。一般に、冷凍庫外の温度と冷凍庫内の目標温度との差が大きいほど、冷凍サイクル装置の負荷が大きくなり、低圧圧力が低くなる。夏季には低圧圧力が最も低くなる。周波数指令信号の通信異常が夏季に発生した場合でも、冷凍庫内を目標温度に近づける必要がある。どの季節においても冷凍庫内を所望の温度以下に維持するために、通信異常の発生時間T1から、夏季に目標とする低圧圧力に相当する圧力信号を目標圧力信号PSに設定して、異常モード冷却運転を実施することが考えられる。この場合の低圧圧力の変化が、図3に破線で示される。この場合には、通信異常が冬季に発生した場合でも、目標圧力信号PSに基づいて異常モード冷却運転を実施することになる。冬季には、冷凍庫外の温度と冷凍庫内の目標温度との差が小さいので、低圧圧力は高くてもよい。目標圧力信号PSに基づいた異常モード冷却運転を冬季に実施すると、冷凍サイクル装置1の能力が過大になり、消費電力量からなるエネルギー消費量が不必要に大きくなる。
【0027】
実施形態の冷凍サイクル装置1は、通信異常の発生時間T1から、記録部26から読み出した最新の圧力信号Pを目標圧力信号PTに設定して、異常モード冷却運転を実施する。この場合の低圧圧力の変化が、図3に実線で示される。最新の圧力信号Pは、その時点の冷凍庫外の温度と冷凍庫内の目標温度の環境状態に対応するものである。すなわち、圧力信号Pは、冬季であれば高い値、夏季であれば低い値となる。これにより、冷凍サイクル装置1が、その時点における適正負荷に近くなり、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量が抑制される。
【0028】
故障等から復旧して通信異常が解消されると、冷却ユニット10から冷凍機制御部21に周波数指令信号が入力される。図2に示されるように、冷凍機制御部21は、通信が復旧したか判断する(S22)。S22の判断がNoの場合には、S20に戻り、冷凍サイクル装置1は異常モードでの冷却運転を継続する。S22の判断がYesの場合は、S20に戻り、冷凍サイクル装置1が正常モードでの冷却運転に復帰する。
【0029】
以上に詳述されたように、実施形態の冷凍サイクル装置1は、蒸発器8と、圧縮機2と、冷却ユニット制御部11と、冷凍機制御部21と、低圧圧力センサ25と、記録部26と、を持つ。圧縮機2には、蒸発器8から排出された冷媒が供給される。冷却ユニット制御部11には、蒸発器8の設置場所である冷凍庫の目標温度が入力される。冷却ユニット制御部11は、圧縮機2の動作に関する周波数指令信号を出力する。冷凍機制御部21には、周波数指令信号が入力される。冷凍機制御部21は、圧縮機2の動作、すなわち回転数を制御する。低圧圧力センサ25は、圧縮機2に供給される冷媒の低圧圧力に対応する圧力信号Pを出力する。記録部26には、圧力信号Pが記録される。冷凍機制御部21は、周波数指令信号が入力されない場合に、記録部26から圧力信号Pを読み出して、圧縮機2の動作(回転数)を制御する。
【0030】
冷却ユニット制御部11は、冷凍庫の目標温度に基づいて、周波数指令信号を決定して出力する。冷凍機制御部21は、入力された周波数指令信号に基づいて、圧縮機2の動作を制御する。記録部26には、最近の目標温度に対応した圧力信号Pが記録されている。その圧力信号Pを利用することにより、最近の目標温度に対応した適正負荷に近い状態で、異常モード冷却運転が実施される。したがって、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0031】
冷凍機制御部21は、記録部26に記録された最新の圧力信号Pを読み出して、圧縮機2の動作を制御する。
冷凍機制御部21は、記録部26に記録された複数の圧力信号Pを読み出して平均値を算出し、圧縮機2の動作を制御してもよい。
これらの構成によれば、最新の目標温度に対応した適正負荷の状態で、異常モード冷却運転が実施される。
【0032】
冷凍機制御部21は、周波数指令信号が入力されない場合に、記録部26から読み出した圧力信号Pに基づいて目標圧力信号PTを設定する。冷凍機制御部21は、低圧圧力センサ25から入力される圧力信号Pが目標圧力信号PTに一致するように、圧縮機2の動作を制御する。
この構成によれば、最近の冷凍負荷に合致した冷凍能力で異常モード冷却運転が実施される。
【0033】
冷凍サイクル装置1は、第1信号である周波数指令信号の通信異常を報知する異常表示部27を有する。
この構成によれば、通信異常の早期復旧が可能になり、異常モード冷却運転の時間が短縮される。したがって、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、冷却ユニット10の冷却ユニット制御部11が庫内温度と庫内の目標温度に基づいてインバータ回路24の出力する周波数を決定し、これを周波数指令信号として冷凍機20側に送信したが、冷却ユニット制御部11が庫内温度と庫内の目標温度に対応する信号を冷凍機制御部21に送信し、これらのデータに基づいて冷凍機制御部21が周波数を決定しても良い。ここでは、庫内温度と庫内の目標温度に対応する信号が第1信号となる。そして、この場合も、冷却ユニット10と冷凍機20間の通信が途絶えると、冷凍機制御部21は、庫内温度と庫内の目標温度のデータを入手できなくなるため、通信異常と判断し、異常モードでの運転処理を実行することになる。さらに、PI制御ではインバータ回路24の周波数は、庫内温度と庫内の目標温度の差のみで決定可能であるため、冷却ユニット制御部11において庫内温度と庫内の目標温度の温度差を算出し、この温度差のデータを第1信号として冷凍機制御部21に送信するようにしても良い。
以上のように、第1信号は、この吸熱器の設置場所の状況に応じた、圧縮機の動作に関する信号、すなわち圧縮機の回転数を決定するための基礎となる情報が含まれた信号、であればよい。
【0034】
実施形態の変形例について説明する。
図4は、実施形態の変形例の冷凍サイクル装置101の構成図である。変形例の冷凍サイクル装置101は、複数の冷却ユニット10a-10nを有する点で、実施形態の冷凍サイクル装置1とは異なる。実施形態の冷凍サイクル装置1と同様である点についての変形例の冷凍サイクル装置101の説明は省略される。
【0035】
冷凍サイクル装置101は、複数の冷却ユニット10a-10nを有する。図4の例では、複数の冷却ユニット10a-10nが、1個の冷凍庫Fの異なる領域を冷却する。複数の冷却ユニット10a-10nは、複数の冷凍庫をそれぞれ冷却してもよい。
【0036】
複数の冷却ユニット10a-10nは、それぞれ蒸発器8a-8nおよび冷却ユニット制御部11a-11nを有する。蒸発器8a-8nは、冷凍庫Fの内部に配置される。複数の蒸発器8a-8nは、冷凍機20に対して並列に接続される。冷却ユニット制御部11a-11nは、冷凍庫Fの外部に配置される。冷却ユニット制御部11a-11nの近傍に、操作器16a-16nが配置される。隣り合う冷却ユニット制御部11a-11nの間の通信は、通信配線19a-19mを介して実施される。第1冷却ユニット10aの第1冷却ユニット制御部11aと冷凍機20との間の通信は、通信経路19を介して実施される。
【0037】
複数の冷却ユニット10a-10nにおいて、個別に目標温度が設定される。複数の冷却ユニット制御部11a-11nは、それぞれインバータ周波数を決定し、周波数指令信号を出力する。第1冷却ユニット制御部11aは、複数の冷却ユニット制御部11a-11nから入力された周波数指令信号を、冷凍機20に出力する。冷凍機制御部21は、複数の冷却ユニット制御部11a-11nの周波数指令信号を加算する。冷凍機制御部21は、加算された周波数指令信号に基づいて、インバータ回路24の動作を制御する。これにより、複数の冷却ユニット10a-10nの目標温度が実現される。
【0038】
通信経路19に故障が発生すると、複数の冷却ユニット制御部11a-11nから出力された周波数指令信号が、冷凍機制御部21に入力されなくなる。複数の通信配線19a-19mの何れかに故障が発生すると、故障した通信配線の上流側の冷却ユニット制御部から出力された周波数指令信号が、冷凍機制御部21に入力されなくなる。この場合に、冷凍サイクル装置1は、実施形態と同様の異常モード冷却運転を実施する。これにより、複数の冷却ユニット10a-10nの最近の目標温度に対応した適正負荷に近い条件で、異常モード冷却運転が実施される。したがって、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0039】
前述された実施形態またはその変形例において、温度や周波数、圧力などの物理量は、対応する電気信号に変換されて、入出力や送受信などの取り扱いが実施されてもよい。
【0040】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、周波数指令信号が入力されない場合に、記録部26から圧力信号Pを読み出して圧縮機2の動作を制御する冷凍機制御部21を持つ。これにより、異常モード冷却運転時のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
P…圧力信号(圧力値)、PT…目標圧力信号、1,101…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、4…凝縮器(放熱器)、8,8a-8n…蒸発器(吸熱器)、10,10a-10n…冷却ユニット、11,11a-11n…冷却ユニット制御部(第1制御部)、20…冷凍機、21…冷凍機制御部(第2制御部)、24…インバータ回路(インバータ)、25…低圧圧力センサ(圧力センサ)、26…記録部、27…異常表示部(異常報知部)。
図1
図2
図3
図4