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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240213BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240213BHJP
   F16H 61/4017 20100101ALI20240213BHJP
   F16H 61/421 20100101ALI20240213BHJP
【FI】
E02F9/22 A
F15B11/02 D
F16H61/4017
F16H61/421
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020137183
(22)【出願日】2020-08-15
(65)【公開番号】P2022033081
(43)【公開日】2022-02-28
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 裕也
(72)【発明者】
【氏名】倉智 浩平
(72)【発明者】
【氏名】古賀 雄大
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優弥
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084334(JP,A)
【文献】特開2019-065996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
F16H 61/4017
F16H 61/421
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体の左側に設けられた左走行装置と、
前記機体の右側に設けられた右走行装置と、
前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、
前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、
作動油を受圧する第1受圧部及び第2受圧部を有し且つ、前記第1受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第2受圧部に作動油が作用したときに逆転する左走行ポンプと、
前記作動油を受圧する第3受圧部及び第4受圧部を有し且つ、前記第3受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第4受圧部に作動油が作用したときに逆転する右走行ポンプと、
走行操作部材を操作したときに、少なくとも第1受圧部、第2受圧部、第3受圧部及び第4受圧部のいずれかに作動油を作用させる走行操作装置と、
前記走行操作装置に供給する作動油の圧力を変更可能な作動弁と、
前記走行操作装置と前記作動弁とを接続する第1油路と、
前記第1受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第1受圧部に作用する作動油を通過させる第1走行油路と、
前記第2受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第2受圧部に作用する作動油を通過させる第2走行油路と、
前記第3受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第3受圧部に作用する作動油を通過させる第3走行油路と、
前記第4受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第4受圧部に作用する作動油を通過させる第4走行油路と、
前記第1油路と前記第1走行油路とを接続し、且つ、前記第2走行油路に接続されていない第2油路と、
前記第1油路と前記第3走行油路とを接続し、且つ、前記第4走行油路に接続されていない第3油路と、
を備えている作業機。
【請求項2】
前記第2油路に設けられ、前記第1走行油路から前記第1油路に向けて作動油が流れるのを許容し且つ前記第1油路から前記第1走行油路に向けて作動油が流れるのを阻止する第1逆止弁と、
前記第3油路に設けられ、前記第3走行油路から前記第1油路に向けて作動油が流れるのを許容し且つ前記第1油路から前記第3走行油路に向けて作動油が流れるのを阻止する第2逆止弁と、
を備えている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1走行油路に設けられ、当該第1走行油路と前記第2油路との接続部である第1接続部よりも前記左走行ポンプとは反対側に設けられた第1絞り部と、
前記第3走行油路に設けられ、当該第3走行油路と前記第2油路との接続部である第2接続部よりも前記右走行ポンプとは反対側に設けられた第2絞り部と、
を備えている請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
機体と、
前記機体の左側に設けられた左走行装置と、
前記機体の右側に設けられた右走行装置と、
前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、
前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、
作動油を受圧する第1受圧部及び第2受圧部を有し且つ、前記第1受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第2受圧部に作動油が作用したときに逆転する左走行ポンプと、
前記作動油を受圧する第3受圧部及び第4受圧部を有し且つ、前記第3受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第4受圧部に作動油が作用したときに逆転する右走行ポンプと、
走行操作部材を操作したときに、少なくとも第1受圧部、第2受圧部、第3受圧部及び第4受圧部のいずれかに作動油を作用させる走行操作装置と、
前記走行操作装置に供給する作動油の圧力を変更可能な作動弁と、
前記第1受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第1受圧部に作用する作動油を通過させる第1走行油路と、
前記第2受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第2受圧部に作用する作動油を通過させる第2走行油路と、
前記第3受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第3受圧部に作用する作動油を通過させる第3走行油路と、
前記第4受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第4受圧部に作用する作動油を通過させる第4走行油路と、
作動油が排出可能な排出部と、
前記排出部と前記第2走行油路とを接続する第4油路と、
前記排出部と前記第4走行油路とを接続する第5油路と、
前記第4油路に設けられ、前記第2走行油路から前記排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ前記排出部から前記第2走行油路に向けて作動油が流れるのを許容する第3逆止弁と、
前記第5油路に設けられ、前記第4走行油路から前記排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ前記排出部から前記第4走行油路に向けて作動油が流れるのを許容する第4逆止弁と、
を備えている作業機。
【請求項5】
前記第2走行油路に設けられ、当該第2走行油路と前記第4油路との接続部である第3接続部よりも前記左走行ポンプとは反対側に設けられた第3絞り部と、
前記第4走行油路に設けられ、当該第4走行油路と前記第5油路との接続部である第4接続部よりも前記右走行ポンプとは反対側に設けられた第4絞り部と、
を備えている請求項4に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機において作動弁の開度を変更したときの油圧機器の応答性を向上させる技術として特許文献1に示されているものがある。特許文献1の作業機の油圧システムは、作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプに接続された第1油路と、第1油路に設けられ且つ操作部材の操作に応じて出力する作動油の圧力を変更可能な操作弁と、操作弁から出力した作動油によって作動可能な油圧機器と、操作弁と油圧機器とを接続する第2油路と、第1油路であって、操作弁と油圧ポンプとの間に設けられた作動弁と、第1油路であって操作弁と作動弁との間の区間と、第2油路とを接続する第3油路と、第3油路に設けられ、第2油路から第1油路への作動油を許容し且つ第1油路から第2油路への作動油を阻止する逆止弁と、作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油の圧力に応じて複数の切換位置に切換可能な油圧切換弁と、油圧切換弁の切換位置に応じて速度が変更可能な走行油圧装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-84334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、第1油路であって操作弁と作動弁との間の区間と第2油路とを接続する第3油路とによって、作動弁の開度を変更したときに、第1油路の作動油を当該作動弁側に排出することが可能である。特許文献1では、作動弁の開度を変更したときの油圧機器の応答を向上させることができるものの、より応答を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、作動弁を作動させたときの左走行ポンプ及び右走行ポンプの正転時の応答性を向上させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の通りである。
作業機は、機体と、前記機体の左側に設けられた左走行装置と、前記機体の右側に設けられた右走行装置と、前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、作動油を受圧する第1受圧部及び第2受圧部を有し且つ、前記第1受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第2受圧部に作動油が作用したときに逆転する左走行ポンプと、前記作動油を受圧する第3受圧部及び第4受圧部を有し且つ、前記第3受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第4受圧部に作動油が作用したときに逆転する右走行ポンプと、走行操作部材を操作したときに、少なくとも第1受圧部、第2受圧部、第3受圧部及び第4受圧部のいずれかに作動油を作用させる走行操作装置と、前記走行操作装置に供給する作動油の圧力を変更可能な作動弁と、前記走行操作装置と前記作動弁とを接続する第1油路と、前記第1受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第1受圧部に作用する作動油を通過させる第1走行油路と、前記第2受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第2受圧部に作用する作動油を通過させる第2走行油路と、前記第3受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第3受圧部に作用する作動油を通過させる第3走行油路と、前記第4受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第4受圧部に作用する作動油を通過させる第4走行油路と、前記第1油路と前記第1走行油路とを接続し、且つ、前記第2走行油路に接続されていない第2油路と、前記第1油路と前記第3走行油路とを接続し、且つ、前記第4走行油路に接続されていない第3油路と、を備えている。
【0007】
作業機は、前記第2油路に設けられ、前記第1走行油路から前記第1油路に向けて作動
油が流れるのを許容し且つ前記第1油路から前記第1走行油路に向けて作動油が流れるのを阻止する第1逆止弁と、前記第3油路に設けられ、前記第3走行油路から前記第1油路に向けて作動油が流れるのを許容し且つ前記第1油路から前記第3走行油路に向けて作動油が流れるのを阻止する第2逆止弁と、を備えている。
【0008】
作業機は、前記第1走行油路に設けられ、当該第1走行油路と前記第2油路との接続部である第1接続部よりも前記左走行ポンプとは反対側に設けられた第1絞り部と、前記第3走行油路に設けられ、当該第3走行油路と前記第2油路との接続部である第2接続部よりも前記右走行ポンプとは反対側に設けられた第2絞り部と、を備えている
【0009】
作業機は、機体と、前記機体の左側に設けられた左走行装置と、前記機体の右側に設けられた右走行装置と、前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、作動油を受圧する第1受圧部及び第2受圧部を有し且つ、前記第1受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第2受圧部に作動油が作用したときに逆転する左走行ポンプと、前記作動油を受圧する第3受圧部及び第4受圧部を有し且つ、前記第3受圧部に作動油が作用したときに正転し、前記第4受圧部に作動油が作用したときに逆転する右走行ポンプと、走行操作部材を操作したときに、少なくとも第1受圧部、第2受圧部、第3受圧部及び第4受圧部のいずれかに作動油を作用させる走行操作装置と、前記走行操作装置に供給する作動油の圧力を変更可能な作動弁と、前記第1受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第1受圧部に作用する作動油を通過させる第1走行油路と、前記第2受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第2受圧部に作用する作動油を通過させる第2走行油路と、前記第3受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第3受圧部に作用する作動油を通過させる第3走行油路と、前記第4受圧部に接続し且つ走行操作部材を操作したときに前記第4受圧部に作用する作動油を通過させる第4走行油路と、作動油が排出可能な排出部と、前記排出部と前記第2走行油路とを接続する第4油路と、前記排出部と前記第4走行油路とを接続する第5油路と、前記第4油路に設けられ、前記第走行油路から前記排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ前記排出部から前記第走行油路に向けて作動油が流れるのを許容する第3逆止弁と、前記第5油路に設けられ、前記第走行油路から前記排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ前記排出部から前記第走行油路に向けて作動油が流れるのを許容する第4逆止弁と、を備えている。
【0010】
作業機は、前記第1走行油路に設けられ、当該第1走行油路と前記第4油路との接続部である第3接続部よりも前記左走行ポンプとは反対側に設けられた第3絞り部と、前記第3走行油路に設けられ、当該第3走行油路と前記第4油路との接続部である第4接続部よりも前記右走行ポンプとは反対側に設けられた第4絞り部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作動弁を作動させたときの左走行ポンプ及び右走行ポンプの正転時の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】作業機の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
図2】走行一次圧(制御信号)と原動機の回転数との関係を示す図である。
図3】作業機の油圧システム(油圧回路)の変形例を示す図である。
図4】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明に係る作業機の側面図を示している。図4では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0014】
作業機1は、図4に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(図4の左側)を前方、運転者の後側(図4の右側)を後方、運転者の左側(図4の手前側)を左方、運転者の右側(図4の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0015】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機32が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
【0016】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)
に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0017】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0018】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0019】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0020】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0021】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0022】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
左側及び右側の各走行装置(第1走行装置、第2走行装置)5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
【0023】
原動機32は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機32は、ディーゼルエンジンであるが限定はされない。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、作業機の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを備えている。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タン
ク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0024】
第2油圧ポンプP2は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能であって、例えば、作業系の油路に作動油を供給する。例えば、第2油圧ポンプP2は、ブーム10を作動させるブームシリンダ14、バケットを作動させるバケットシリンダ15、予備油圧アクチュエータを作動させる予備油圧アクチュエータを制御する制御弁(流量制御弁)に作動油を供給する。
【0025】
また、作業機の油圧システムは、一対の走行モータ36L、36Rと、一対の走行ポンプ53L、53Rと、を備えている。一対の走行モータ36L、36Rは、一対の走行装置5L、5Rに動力を伝達するモータである。一対の走行モータ36L、36Rのうち、一方の走行モータ36Lは、走行装置(左走行装置)5Lに回転の動力を伝達し、他方の走行モータ36Rは、走行装置(右走行装置)5Rに回転の動力を伝達する。
【0026】
一対の走行ポンプ53L、53Rは、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、例えば、斜板形可変容量アキシャルポンプである。一対の走行ポンプ53L、53Rは、駆動することによって、一対の走行モータ36L、36Rのそれぞれに作動油を供給する。一対の走行ポンプ53L、53Rのうち、一方の走行ポンプ53Lは、走行ポンプ53Lに作動油を供給し、他方の走行ポンプ53Rは、走行ポンプ53Rに作動油を供給する。
【0027】
以下、説明の便宜上、走行ポンプ53Lのことを左走行ポンプ53L、走行ポンプ53Rのことを右走行ポンプ53R、走行モータ36Lのことを左走行モータ36L、走行モータ36Rのことを右走行モータ36Rということがある。
左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rには、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)の圧力(パイロット圧)が作用する受圧部53aと受圧部53bとを有している、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0028】
左走行ポンプ53Lと、左走行モータ36Lとは、接続油路57hによって接続され、左走行ポンプ53Lが吐出した作動油が左走行モータ36Lに供給される。右走行ポンプ53Rと、右走行モータ36Rとは、接続油路57iによって接続され、右走行ポンプ53Rが吐出した作動油が右走行モータ36Rに供給される。
左走行モータ36Lは、左走行ポンプ53Lから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。左走行モータ36Lには、斜板切換シリンダ37Lが接続され、当該斜板切換シリンダ37Lを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても左走行モータ36Lの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Lを収縮した場合には、左走行モータ36Lの回転数は低速(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Lを伸長した場合には、左走行モータ36Lの回転数は高速(第2速度)に設定される。つまり、左走行モータ36Lの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0029】
右走行モータ36Rは、右走行ポンプ53Rから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。右走行モータ36Rには、斜板切換シリンダ37Rが接続され、当該斜板切換シリンダ37Rを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても右走行モータ36Rの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Rを収縮した場合には、右走行モータ36Rの回転数は低速(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Rを伸長した場合には、右走行モータ36Rの回転数は高速(第2速度)に設定される。つまり、右走行モ
ータ36Rの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0030】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、走行切換弁34を備えている。走行切換弁34は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度(回転数)を第1速度にする第1状態と、第2速度にする第2状態とに切換可能である。走行切換弁34は、第1切換弁71L、71Rと、第2切換弁72と、を有している。
第1切換弁71Lは、左走行モータ36Lの斜板切換シリンダ37Lに油路を介して接続されていて、第1位置71L1及び第2位置71L2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Lは、第1位置71L1である場合、斜板切換シリンダ37Lを収縮し、第2位置71L2である場合、斜板切換シリンダ37Lを伸長する。
【0031】
第1切換弁71Rは、右走行モータ36Rの斜板切換シリンダ37Rに油路を介して接続されていて、第1位置71R1及び第2位置71R2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Rは、第1位置71R1である場合、斜板切換シリンダ37Rを収縮し、第2位置71R2である場合、斜板切換シリンダ37Rを伸長する。
第2切換弁72は、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを切り換える電磁弁であって、励磁により第1位置72aと第2位置72bとに切り換え可能な二位置切換弁である。第2切換弁72、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rは、油路41により接続されている。第2切換弁72は、第1位置72aである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第1位置71L1、71R1に切り換え、第2位置72bである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第2位置71L2、71R2に切り換える。
【0032】
つまり、第2切換弁72が第1位置72a、第1切換弁71Lが第1位置71L1、第1切換弁71Rが第1位置71R1である場合に、走行切換弁34は第1状態になり、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度を第1速度にする。第2切換弁72が第2位置72b、第1切換弁71Lが第2位置71L2、第1切換弁71Rが第2位置71R2である場合に、走行切換弁34は第2状態になり、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度を第2速度にする。
【0033】
したがって、走行切換弁34によって、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに切り換えることができる。
操作装置(走行操作装置)54は、走行操作部材59を操作したときに、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の受圧部53a、53bに作動油を作用させる装置であり、走行ポンプの斜板の角度(斜板角度)を変更可能である。操作装置54は、走行操作部材59と、複数の操作弁55とを含んでいる。
【0034】
走行操作部材59は、操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動する操作レバーである。即ち、走行操作部材59は、中立位置Nを基準とすると、中立位置Nから右方及び左方に操作可能であると共に、中立位置Nから前方及び後方に操作可能である。言い換えれば、走行操作部材59は、中立位置Nを基準に少なくとも4方向に揺動することが可能である。尚、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向(機体幅方向)のことを第2方向ということがある。
【0035】
また、複数の操作弁55は、共通、即ち、1本の走行操作部材59によって操作される。複数の操作弁55は、走行操作部材59の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。
【0036】
操作弁55Aは、前後方向(第1方向)のうち、走行操作部材59を前方(一方)に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Bは、前後方向(第1方向)のうち、走行操作部材59を後方(他方)に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。左右方向(第2方向)のうち、操作弁55Cは、走行操作部
材59を右方(一方)に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Dは、左右方向(第2方向)のうち、走行操作部材59を、左方(他方)に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
【0037】
複数の操作弁55と、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)とは、走行油路45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)は、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)から出力した作動油によって作動可能な油圧機器である。
走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dと、第5走行油路45eとを有している。第1走行油路45aは、左走行ポンプ53Lの受圧部(第1受圧部)53aに接続された油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第1受圧部)53aに作用する作動油を通過させる油路である。第2走行油路45bは、左走行ポンプ53Lの受圧部(第2受圧部)53bに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第2受圧部)53bに作用する作動油を通過させる油路である。第3走行油路45cは、右走行ポンプ53Rの受圧部(第3受圧部)53aに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第3受圧部)53aに作用する作動油を通過させる油路である。第4走行油路45dは、右走行ポンプ53Rの受圧部(第4受圧部)53bに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第4受圧部)53bに作用する作動油を通過させる油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを接続する油路である。
【0038】
第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dのそれぞれには、作動油を排出する排出油路91が接続されている。排出油路91には、絞り部が設けられている。排出油路91は、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55D)の排出ポートに接続された排出油路92に合流している。排出油路92は、作動油タンク22等の排出部に接続されている。
【0039】
また、第1走行油路45aと第4走行油路45dとが連通油路93aによって接続され、第2走行油路45bと第3走行油路45cとが連通油路93bによって接続されている。
走行操作部材59を前方(図1図2では矢印A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが正転(前進回転)して作業機1が前方に直進する。
【0040】
また、走行操作部材59を後方(図1図2では矢示A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に第4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
【0041】
また、走行操作部材59を右方(図1図2では矢示A3方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが正転し且つ右走行モータ36Rが逆転して作業機1が右側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0042】
また、走行操作部材59を左方(図1図2では矢示A4方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧
は第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが逆転し且つ右走行モータ36Rが正転して作業機1が左側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0043】
また、走行操作部材59を斜め方向(図2では矢示A5方向)に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右へ信地旋回又は左へ信地旋回する。
すなわち、走行操作部材59を左斜め前方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回し、走行操作部材59を右斜め前方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回し、走行操作部材59を左斜め後方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回し、走行操作部材59を右斜め後方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
【0044】
図1に示すように、作業機1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、作業機1の様々な制御を行うもので、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されている。制御装置60には、アクセル65と、モードスイッチ66と、速度切換スイッチ67、回転検出装置68とが接続されている。
モードスイッチ66は、自動減速を有効又は無効に切り換えるスイッチである。例えば、モードスイッチ66は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであり、ONである場合に自動減速を有効に切り換え、OFFである場合には自動減速を無効に切り換える。
【0045】
速度切換スイッチ67は、運転席8の近傍に設けられ、運転者(オペレータ)が操作可能である。速度切換スイッチ67は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度及び第2速度のいずれかに手動で切り換えることができるスイッチである。例えば、速度切換スイッチ67は、第1速度側と第2速度側とに切り換えるシーソスイッチであり、第1速度側から第2速度側とに切り換える増速操作と、第2速度から第1速度に切り換える減速操作とを行うことができる。
【0046】
回転検出装置68は、回転数を検出するセンサ等で構成されていて、原動機32の回転数である原動機回転数を検出することができる。
制御装置60は、自動減速が有効である場合には自動減速制御を行い、自動減速が無効である場合には自動減速制御を行わない。
自動減速制御では、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において所定の条件(自動減速条件)を満たしたときに、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に自動的に切り換える。自動減速制御では、少なくとも走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である状況において、自動減速条件を満たすと、制御装置60は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、当該第2切換弁72を第2位置72bから第1位置72aに切り換えることにより、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する。つまり、制御装置60は、自動減速制御において、自動減速を行う際は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方を、第2速度から第1速度に減速する。
【0047】
なお、制御装置60は、自動減速を行った後、復帰条件を満たすと、第2切換弁72のソレノイドを励磁することで、当該第2切換弁72を第1位置72aから第2位置72bに切り換えることにより、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に増速、即ち、走行モータの速度を復帰させる。つまり、制御装置60は、第1速度から第2速度に復帰する場合は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方を、第1速度から第2速度に増速する。
【0048】
制御装置60は、自動減速が無効である場合に、速度切換スイッチ67の操作に応じて
、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度及び第2速度のいずれかに切り換える手動切換制御を行う。手動切換制御では、速度切換スイッチ67が第1速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度にする。また、手動切換制御では、速度切換スイッチ67が第2速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度にする。
【0049】
さて、制御装置60は、原動機32の負荷が高い場合に、エンジンストールを防止する制御(アンチストール制御)を行う。即ち、制御装置60は、原動機32の負荷に応じてアンチストール制御を行う。
例えば、アクセル65で設定された目標回転数と回転検出装置68で検出した実回転数との差であるドロップ量が閾値以上である場合は、原動機32の負荷が高いため、制御装置60は、アンチストール制御を行う。アンチストール制御では、図1に示す作動弁69の開度を低下させることで、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)の出力を低下させる。
【0050】
図1に示すように、作動弁69は、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)を作動させるパイロット油のパイロット圧を変更可能な弁である。作動弁69と操作装置54とは第1油路40aで接続されている。詳しくは、作動弁69は、吐出油路40の中途部に設けられていて、吐出油路40において、作動弁69と操作装置54とを接続する区間が第1油路40aである。
【0051】
作動弁69は、開度を変更することによって、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)を作動させるパイロット油のパイロット圧(受圧部53a、53bに作用する作動パイロット圧)を変更する。例えば、作動弁69は、制御装置60の制御信号(例えば、電圧、電流)に基づいて開度が変更可能な電磁比例弁である。作動弁69は、制御信号の値(制御値)が大きくなるにしたがって開度が大きくなり、制御値が小さくなるにしたがって開度が小さくなる弁である。
【0052】
制御装置60は、制御信号を作動弁69に出力して、当該作動弁69のソレノイドを励磁することによって、作動弁69から操作装置54へ向かうパイロット圧(走行一次圧)を変更する。これにより、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)を作動させるパイロット圧は変更することになる。
図2は、アンチストールにおける走行一次圧と原動機の回転数との関係を示す制御マップの一例を示す図である。図2に示す制御マップにおいて、走行一次圧は、作動弁69の開度に対応して決まることから、走行一次圧と作動弁69に出力する制御信号の大きさとは相関性があり、走行一次圧を制御信号に置き換えることができる。即ち、制御マップの縦軸の走行一次圧は、制御信号と読み替えることができる。制御マップは、記憶部63に記憶されている。
【0053】
制御装置60は、アクセル65で設定された目標回転数と回転検出装置68で検出した実回転数との差であるドロップ量を演算する。制御装置60は、ドロップ量が閾値未満である場合には、制御マップのラインL1に一致するように、原動機の回転数(目標回転数又は実回転数)に応じて、制御信号で示す制御値を設定する。
一方で、制御装置60は、ドロップ量が閾値以上である場合には、制御マップのラインL2に一致するように、原動機の回転数(目標回転数又は実回転数)に応じて、制御信号の制御値を設定する。即ち、制御装置60は、制御マップに基づいて、電流値、電圧値等の制御値を設定する。
【0054】
したがって、アンチストール制御では、ラインL2に基づいて、制御値を設定して、当該制御値を示す制御信号を作動弁69に出力することにより、操作弁55に入る作動油のパイロット圧(走行一次圧)を低く抑えることができる。その結果、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)の斜板角が調整され、原動機32に作用する負荷が減少し、エンジンのストールを防止することができる。なお、図2では、1本のラインL2を示しているが、ラインL2は複数であってもよい。
【0055】
図1に示すように、作業機の油圧システムには、作動弁69が作動した時の応答性を向上させる回路が設けられている。具体的には、作動弁69の出力側である第1油路40aには、第2油路102と、第3油路103とが接続されている。第2油路102は、第1油路40aと第1走行油路45aとを接続する油路である。第3油路103は、第1油路40aと第3走行油路45cとを接続する油路である。
【0056】
第2油路102の中途には、第1逆止弁111が設けられている。第1逆止弁111は、第1走行油路45aから第1油路40aに向けて作動油が流れるのを許容し且つ第1油路40aから第1走行油路45aに向けて作動油が流れるのを阻止する弁である。
第3油路103の中途には、第2逆止弁112が設けられている。第2逆止弁112は、第3走行油路45cから第1油路40aに向けて作動油が流れるのを許容し且つ第1油路40aから第3走行油路45cに向けて作動油が流れるのを阻止する弁である。
【0057】
また、第2油路102が接続される第1走行油路45aには、第1絞り部121が設けられ、第3油路103が接続される第3走行油路45cには、第2絞り部122が設けられている。
第1絞り部121は、第1走行油路45aと第2油路102との接続部である第1接続部130aよりも左走行ポンプ53Lとは反対側に設けられている。即ち、第1絞り部121は、第1走行油路45aにおいて、第1接続部130aよりも操作装置54側に設けられている。
【0058】
第2絞り部122は、第3走行油路45cと第3油路103との接続部である第2接続部130bよりも右走行ポンプ53Rとは反対側に設けられている。即ち、第2絞り部122は、第3走行油路45cにおいて、第2接続部130bよりも操作装置54側に設けられている。
以上によれば、アンチストール制御によって作動弁69の開度を小さくした場合、第1走行油路45aの作動油が第2油路102を通過して作動弁69のドレイン側に流れるため、左走行ポンプ53Lの正転時の応答性を向上させることができる。また、アンチストール制御によって作動弁69の開度を小さくした場合、第3走行油路45cの作動油も第3油路103を通過して作動弁69のドレイン側に流れるため、右走行ポンプ53Rの正転時の応答性を向上させることができる。言い換えれば、左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53Rを逆転させるための作動油を流す第2走行油路45b及び第4走行油路45dには、作動弁69側のドレイン側に作動油を流さないような構成であるため、特に、作業機1の前進時のエンジンストールを防止するための応答性を向上させることができる。
【0059】
図3は、作業機の油圧システムの変形例を示している。
図3も作動弁69が作動した時の応答性を向上させる回路である。図3に示すように、作業機の油圧システムは、第4油路104と、第5油路105とを備えている。
第4油路104は、作動油の排出先である作動油タンク22等の排出部と第2走行油路45bとを接続する油路である。第5油路105は、排出部と第4走行油路45dとを接続する油路である。
【0060】
第4油路104の中途には、第3逆止弁113が設けられている。第3逆止弁113は、第2走行油路45bから排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ排出部から第2走行油路45bに向けて作動油が流れるのを許容する弁である。
第5油路105の中途には、第4逆止弁114が設けられている。第4逆止弁114は、第4走行油路45dから排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ排出部から第4走行油路45dに向けて作動油が流れるのを許容する弁である。
【0061】
また、第4油路104が接続される第2走行油路45bには、第3絞り部123が設けられ、第5油路105が接続される第4走行油路45dには、第4絞り部124が設けられている。
第3絞り部123は、第2走行油路45bと第4油路104との第3接続部130cよりも左走行ポンプ53Lとは反対側に設けられている。即ち、第3絞り部123は、第2走行油路45bにおいて、第3接続部130cよりも操作装置54側に設けられている。
【0062】
第4絞り部124は、第4走行油路45dと第5油路105との第4接続部130dよ
りも右走行ポンプ53Rとは反対側に設けられている。即ち、第4絞り部124は、第4走行油路45dにおいて、第4接続部130dよりも操作装置54側に設けられている。
以上によれば、左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作動油が作用している場合(正転側の受圧部53aに作動油が作用している場合)において、アンチストール制御によって作動弁69の開度を小さくすると、左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用した作動油の圧力によってサーボピストンが逆転側(受圧部53b側)から中立側に移動することになる。ここで、左走行ポンプ53Lの逆転側の作動油を受圧する受圧部53bに接続された第2走行油路45bに排出部に繋がる第4油路104が接続されていることから、サーボピストンが中立側に移動することによって、第2走行油路45bが負圧になることを軽減することができる。
【0063】
同様に、右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作動油が作用している場合(正転側の受圧部53aに作動油が作用している場合)において、アンチストール制御によって作動弁69の開度を小さくすると、右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用した作動油の圧力によってサーボピストンが逆転側(受圧部53b側)から中立側に移動することになる。ここで、右走行ポンプ53Rの逆転側の作動油を受圧する受圧部53bに接続された第4走行油路45dに排出部に繋がる第5油路105が接続されていることから、サーボピストンが中立側に移動することによって、第4走行油路45dが負圧になることを軽減することができる。
【0064】
上述したように、図3に示す変形例では、アンチストール制御によって作動弁69の開度を小さくしたときに、第2走行油路45b及び第4走行油路45dが負圧になることが軽減されることから、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの応答性を向上させることができる。
なお、上述した実施形態では、排出部は作動油タンク22であったが、作動油が排出する先である排出部は、作動油タンク22以外であってもよく限定されない。例えば、排出部は、油圧ポンプP1において作動油を排出する吸い込み部であってもよいし、それ以外であってもよい。
【0065】
作業機1は、機体2と、機体2の左側に設けられた左走行装置5Lと、機体2の右側に設けられた右走行装置5Rと、左走行装置5Lに動力を伝達可能な左走行モータ36Lと、右走行装置5Rに動力を伝達可能な右走行モータ36Rと、作動油を受圧する第1受圧部53a及び第2受圧部53bを有し且つ、第1受圧部53aに作動油が作用したときに正転し、第2受圧部53bに作動油が作用したときに逆転する左走行ポンプ53Lと、作動油を受圧する第3受圧部53a及び第4受圧部53bを有し且つ、第3受圧部53aに作動油が作用したときに正転し、第4受圧部53bに作動油が作用したときに逆転する右走行ポンプ53Rと、走行操作部材59を操作したときに、少なくとも第1受圧部53a、第2受圧部53b、第3受圧部53a及び第4受圧部53bのいずれかに作動油を作用させる走行操作装置54と、走行操作装置54に供給する作動油の圧力を変更可能な作動弁69と、走行操作装置54と作動弁69とを接続する第1油路40aと、第1受圧部53aに接続し且つ走行操作部材59を操作したときに第1受圧部53aに作用する作動油を通過させる第1走行油路45aと、第2受圧部53bに接続し且つ走行操作部材59を操作したときに第2受圧部53bに作用する作動油を通過させる第2走行油路45bと、第3受圧部53aに接続し且つ走行操作部材59を操作したときに第3受圧部53aに作用する作動油を通過させる第3走行油路45cと、第4受圧部53bに接続し且つ走行操作部材59を操作したときに第4受圧部53bに作用する作動油を通過させる第4走行油路45dと、第1油路40aと第1走行油路45aとを接続する第2油路102と、第1油路40aと第3走行油路45cとを接続する第3油路103と、を備えている。
【0066】
これによれば、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rを正転させるための、作動油を流す第1走行油路45a及び第3走行油路45cに対して、第2油路102及び第3油路103を接続している。このため、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの正転時において、作動弁69を作動させたときは、第2油路102及び第3油路103を通じて、第1走行油路45a及び第3走行油路45cの作動油を作動弁69から排出するこ
とができ、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rが正転時において当該左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに作用させる作動油の圧力を素早く低下させることができ、正転時の応答性を向上させることができる。
【0067】
作業機1は、第2油路102に設けられ、第1走行油路45aから第1油路40aに向けて作動油が流れるのを許容し且つ第1油路40aから第1走行油路45aに向けて作動油が流れるのを阻止する第1逆止弁111と、第3油路103に設けられ、第3走行油路45cから第1油路40aに向けて作動油が流れるのを許容し且つ第1油路40aから第3走行油路45cに向けて作動油が流れるのを阻止する第2逆止弁112と、を備えている。これによれば、第1走行油路45a及び第3走行油路45cを第2油路102及び第3油路103に排出することができる回路構成でありながら、作動油の圧力を左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに安定的に作用させることができる。
【0068】
作業機1は、第1走行油路45aに設けられ、当該第1走行油路45aと第2油路102との接続部である第1接続部130aよりも左走行ポンプ53Lとは反対側に設けられた第1絞り部121と、第3走行油路45cに設けられ、当該第3走行油路45cと第2油路102との接続部である第2接続部130bよりも右走行ポンプ53Rとは反対側に設けられた第2絞り部122と、を備えている。
【0069】
これによれば、第1走行油路45a及び第3走行油路45cを第2油路102及び第3油路103に排出することができる回路構成でありながら、作動油の圧力を左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに安定的に作用させることができる。
作業機1は、作動油が排出可能な排出部と、排出部と第1走行油路45aとを接続する第4油路104と、排出部と第3走行油路45cとを接続する第5油路105と、を備えている。
【0070】
これによれば、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rを正転させるための、作動油を流す第2走行油路45b及び第4走行油路45dに対して、第4油路104及び第5油路105を接続している。このため、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの正転時において、作動弁69を作動させたときは、第4油路104及び第5油路105を通じて、第2走行油路45b及び第4走行油路45dが負圧になることを軽減でき、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rが正転時において当該左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに作用させる作動油の圧力を素早く低下させることができ、正転時の応答性を向上させることができる。
【0071】
作業機1は、第4油路104に設けられ、第2走行油路45bから排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ排出部から第2走行油路45bに向けて作動油が流れるのを許容する第3逆止弁113と、第5油路105に設けられ、第4走行油路45dから排出部に向けて作動油が流れるのを阻止し且つ排出部から第4走行油路45dに向けて作動油が流れるのを許容する第4逆止弁114と、を備えている。これによれば、第2走行油路45b及び第4走行油路45dが第4油路104及び第5油路105に連通する回路構成でありながら、作動油の圧力を左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに安定的に作用させることができる。
【0072】
作業機1は、第2走行油路45bに設けられ、当該第2走行油路45bと第4油路104との接続部である第3接続部130cよりも左走行ポンプ53Lとは反対側に設けられた第3絞り部123と、第4走行油路45dに設けられ、当該第4走行油路45dと第4油路104との接続部である第4接続部130dよりも右走行ポンプ53Rとは反対側に設けられた第4絞り部124と、を備えている。これによれば、第2走行油路45b及び第4走行油路45dが第4油路104及び第5油路105に連通する回路構成でありながら、作動油の圧力を左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rに安定的に作用させることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 :作業機
2 :機体
5 :走行装置
5L :走行装置(左走行装置)
5R :走行装置(右走行装置)
32 :原動機
34 :走行切換弁
36L :左走行モータ
36R :右走行モータ
40 :吐出油路
40a :第1油路
45 :走行油路
45a :第1走行油路
45b :第2走行油路
45c :第3走行油路
45d :第4走行油路
45e :第5走行油路
50 :接続部材
53L :左走行ポンプ
53R :右走行ポンプ
53a :受圧部
53b :受圧部
54 :操作装置
55 :操作弁
57h :接続油路
57i :接続油路
59 :走行操作部材
60 :制御装置
69 :作動弁
71L :第1切換弁
71R :第1切換弁
72 :第2切換弁
91 :排出油路
92 :排出油路
93a :連通油路
93b :連通油路
102 :第2油路
103 :第3油路
104 :第4油路
105 :第5油路
111 :第1逆止弁
112 :第2逆止弁
113 :第3逆止弁
114 :第4逆止弁
121 :第1絞り部
122 :第2絞り部
123 :第3絞り部
124 :第4絞り部
130a :第1接続部
130b :第2接続部
130c :第3接続部
130d :第4接続部
図1
図2
図3
図4