(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240213BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240213BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
E02F9/22 Z
E02F9/00 M
F15B11/00 W
(21)【出願番号】P 2020137194
(22)【出願日】2020-08-15
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太樹
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優弥
(72)【発明者】
【氏名】小西 裕也
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045808(JP,A)
【文献】特開2010-236556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/00
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで気流を発生させる第1ファンと、
作動油によって駆動して前記第1ファンを回転させるファンモータと、
前記ファンモータに供給される作動油の流量を調節する流量調節弁と、
前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換えて前記第1ファンの回転方向を切り換える方向切換弁と、
前記流量調節弁及び前記方向切換弁を制御する制御装置と、
前記ファンモータに供給される作動油を排出するアンロード油路と、
前記アンロード油路に設けられ、前記制御装置から出力される制御信号によって前記
アンロード油路を閉鎖する全閉位置と前記アンロード油路を開放する全開位置とに切り換え可能なアンロード弁と、
を備え、
前記制御装置は、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に
、前記アンロード弁が全閉位置の状態で前記流量調節弁を徐々に開いていくと共に前記流量調節弁
が全開
になると前記アンロード弁を前記全開位置に切り換えて前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換え
、
さらに、前記制御装置は、前記第1ファンの回転方向を切り換えてから所定時間経過後に、前記アンロード弁を前記全閉位置に切り換えると共に前記アンロード弁が前記全閉位置の状態でファン回転数が最高回転数になるまで前記流量調節弁を徐々に閉じる作業機。
【請求項2】
前記アンロード弁とは異なる弁であって、前記ファンモータに供給される作動油の圧力が予め設定される設定圧以上の高圧になった場合に、該圧力を高圧側から低圧側に逃がすオーバーリリーフ弁を備えている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1ファンによって冷却される冷却対象であって、一方面側に前記第1ファンが配置される冷却対象と、
前記冷却対象の他方面側に配置された第2ファンと、
を備え、
前記制御装置は、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態を挟む前後の一方で、前記第2ファンの回転開始を行う請求項
1または2に記載の作業機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2ファンの回転開始を、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態において、前記第1ファンの回転方向の切り換えと同時、又は前記第1ファンの回転方向の切り換えの前、或いは前記第1ファンの回転方向の切り換えの後に行う請求
項3に記載の作業機。
【請求項5】
回転することで気流を発生させる第1ファンと、
作動油によって駆動して前記第1ファンを回転させるファンモータと、
前記ファンモータに供給される作動油の流量を調節する流量調節弁と、
前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換えて前記第1ファンの回転方向を切り換える方向切換弁と、
前記流量調節弁及び前記方向切換弁を制御する制御装置と、
前記第1ファンによって冷却される冷却対象であって、一方面側に前記第1ファンが配置される冷却対象と、
前記冷却対象の他方面側に配置された第2ファンと、
を備え、
前記第1ファンは、第1方向に回転することで前記冷却対象の前記他方面側から前記一方面側に向かう方向の第1気流を発生させると共に、前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転することで前記冷却対象の前記一方面側から前記他方面側に向かう方向の第2気流を発生させ、
前記制御装置は、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に前記流量調節弁を徐々に開いていくと共に前記流量調節弁を全開して前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換え、
さらに、前記制御装置は、前記第1ファンを前記第2方向に回転させる際に前記第2ファンを前記第2気流が発生する方向に回転させ
る作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態
を挟む前後の一方で、前記第2ファンの前記回転
の開始を行う請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2ファンの前記回転を行った後に、或いは前記第2ファンの前記回転を行う前に、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換える請求項6に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、油圧駆動されるファンモータによって回転して気流を発生させるファンを有している。また、ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を方向切換弁によって切り換えることで、ファンモータは正逆転可能とされている。ファンモータを正転することで、ファンの気流によって冷却対象を冷却し、ファンモータを逆転することで、ファンの気流によって冷却対象に付着したダストを吹き飛ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばファンモータの回転方向を正転から逆転に切り換える際、切り換え時のファンモータの回転数が高い場合にファンモータの上流側の油圧ポンプ等の油圧機器にサージ圧が生じる。
本発明は、前記問題点に鑑み、ファンモータの回転方向の切り換え時における油圧回路内のサージ圧の発生を良好に抑制することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る作業機は、回転することで気流を発生させる第1ファンと、作動油によって駆動して前記第1ファンを回転させるファンモータと、前記ファンモータに供給される作動油の流量を調節する流量調節弁と、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換えて前記第1ファンの回転方向を切り換える方向切換弁と、前記流量調節弁及び前記方向切換弁を制御する制御装置と、前記ファンモータに供給される作動油を排出するアンロード油路と、前記アンロード油路に設けられ、前記制御装置から出力される制御信号によって前記アンロード油路を閉鎖する全閉位置と前記アンロード油路を開放する全開位置とに切り換え可能なアンロード弁と、を備え、前記制御装置は、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に、前記アンロード弁が全閉位置の状態で前記流量調節弁を徐々に開いていくと共に前記流量調節弁が全開になると前記アンロード弁を前記全開位置に切り換えて前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換え、さらに、前記制御装置は、前記第1ファンの回転方向を切り換えてから所定時間経過後に、前記アンロード弁を前記全閉位置に切り換えると共に前記アンロード弁が前記全閉位置の状態でファン回転数が最高回転数になるまで前記流量調節弁を徐々に閉じる。
【0006】
また、前記アンロード弁とは異なる弁であって、前記ファンモータに供給される作動油が予め設定される設定圧以上の高圧になった場合に、該圧力を高圧側から低圧側に逃がすオーバーリリーフ弁を備えている。
【0007】
また、作業機は、前記第1ファンによって冷却される冷却対象であって、一方面側に前記第1ファンが配置される冷却対象と、前記冷却対象の他方面側に配置された第2ファンと、を備え、前記制御装置は、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態を挟む前後の一方で、前記第2ファンの回転開始を行う。
また、前記制御装置は、前記第2ファンの回転開始を、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態において、前記第1ファンの回転方向の切り換えと同時、又は前記第1ファンの回転方向の切り換えの前、或いは前記第1ファンの回転方向の切り換えの後に行う。
【0008】
また、作業機は、回転することで気流を発生させる第1ファンと、作動油によって駆動して前記第1ファンを回転させるファンモータと、前記ファンモータに供給される作動油の流量を調節する流量調節弁と、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換えて前記第1ファンの回転方向を切り換える方向切換弁と、前記流量調節弁及び前記方向切換弁を制御する制御装置と、前記第1ファンによって冷却される冷却対象であって、一方面側に前記第1ファンが配置される冷却対象と、前記冷却対象の他方面側に配置された第2ファンと、を備え、前記第1ファンは、第1方向に回転することで前記冷却対象の前記他方面側から前記一方面側に向かう方向の第1気流を発生させると共に、前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転することで前記冷却対象の前記一方面側から前記他方面側に向かう方向の第2気流を発生させ、前記制御装置は、前記ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に前記流量調節弁を徐々に開いていくと共に前記流量調節弁を全開して前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換え、さらに、前記制御装置は、前記第1ファンを前記第2方向に回転させる際に前記第2ファンを前記第2気流が発生する方向に回転させる。
【0009】
また、前記制御装置は、前記第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態を挟む前後の一方で、前記第2ファンの前記回転の開始を行う。
また、前記制御装置は、前記第2ファンの前記回転を行った後に、或いは前記第2ファンの前記回転を行う前に、前記方向切換弁に制御信号を出力して前記第1ファンの回転方向を切り換える。
【発明の効果】
【0010】
上記の作業機によれば、ファンモータを駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に流量調節弁を徐々に開いていくと共に流量調節弁を全開して第1ファンの回転数を最低回転数に低下させた状態で第1ファンの回転方向を切り換えることにより、ファンモータの回転方向の切り換え時における油圧回路内のサージ圧の発生を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】作業機の油圧制御システムを示す回路図である。
【
図2】ダスト清掃が行われるときの流量調節弁、方向切換弁、第2ファン装置、アンロード弁の動作を示すタイムチャートである。
【
図3】他の実施形態に係る油圧制御システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図5は、本発明に係る作業機1の側面図を示している。
図5では、作業機1の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機1はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0013】
図5に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、一対の走行装置5とを備えている。
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3の室内にはオペレータが着座する運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。一対の走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機6が搭載されている。
【0014】
本実施形態においては、作業機1の運転席8に着座したオペレータの前側(
図5の左側)を前方、オペレータの後側(
図5の右側)を後方、オペレータの左側(
図5の手前側)を左方、オペレータの右側(
図5の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向(機体2の幅方向)として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2の幅方向の中心部に近づく方向である。
【0015】
作業装置4は、油圧駆動型の装置であって、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0016】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸(機体幅方向に延伸する軸心)回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0017】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0018】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0019】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0020】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の管材とを接続する装置である。接続部材50は、油圧カプラ50aと、油圧カプラ50aをブーム10に支持する支持部材(取付ステー)50bとで構成されている。
【0021】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
一対の走行装置5は、油圧駆動型の装置であって、油圧モータで構成される走行モータM1で駆動される。一対の走行装置5のうち、一方の走行装置5は機体2の左側に設けられ、他方の走行装置5は機体2の右側に設けられている。一対の走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
【0022】
原動機6は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機6は、ディーゼルエンジンであるが限定はされない。以下、原動機6をエンジンという。
図1は、作業機1に搭載された油圧制御システムH1を示している。
油圧制御システムH1は、
図1に示すように、第1ポンプP1(第1油圧ポンプ)と、第2ポンプP2(第2油圧ポンプ)とを備えている。第1ポンプP1及び第2ポンプP2は、エンジン6の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプであって、作動油を貯留したタンクT1から作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプである。第1ポンプP1は、油圧アクチュエータを駆動する作動油を吐出する油圧ポンプである。第1ポンプP1から吐出される作動油によって駆動される油圧アクチュエータは、例えば、作業装置4のブームシリンダ14及びバケットシリンダ15や、走行装置5の走行モータM1や、バケット11の代わりに装着されるアタッチメントに装備される油圧アクチュエータ等である。第2ポンプP2から吐出される作動油は、信号用や制御用の作動油(パイロット油)を供給するために使用される。
【0023】
図5に示すように、第1ポンプP1及び第2ポンプP2を含むポンプユニットPUは、エンジン6の前方に設けられている。詳しくは、
図5に示すように、エンジン6の前方には、HSTポンプHPが取り付けられ、HSTポンプHPの前方にポンプユニットPUが取り付けられている。HSTポンプHPは、HST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速機)の一部を構成し、エンジン6の動力によって駆動される。HSTポンプHPは、走行モータM1と一対の変速用油路によって閉回路接続され、走行モータM1を回転駆動する。
【0024】
図1に示すように、油圧制御システムH1は、制御装置60を有している。制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などを備えたマイクロコンピュータを利用して構成される。
図1に示すように、第2ポンプP2の吐出ポートには、当該第2ポンプP2から吐出した作動油が流れる油路である吐出油路81が接続されている。吐出油路81の下流側には、冷却装置82が設けられている。冷却装置82は、冷却対象83を冷却する装置である。冷却対象83は、例えば、エンジン6を冷却する冷却水を冷却するラジエータ24、エアコン(エア・コンディショナ)の冷媒を凝縮するコンデンサ27、油圧機器を作動する作動油を冷却する図示省略のオイルクーラを含む。
【0025】
冷却装置82は、冷却対象83を冷却するファン装置(第1ファン装置という)25と、第1ファン装置25の回転を制御するファン回転制御装置70とを有している。
図1に示すように、第1ファン装置25は、第2ポンプP2から吐出した作動油(油圧)により駆動される油圧ファンである。第1ファン装置25は、冷却対象83の一方面側X1(ラジエータ24の一方面側X1)に配置されている。ラジエータ24の他方面側X2(第1ファン装置25の配置側とは反対側)にコンデンサ27が配置されている。
【0026】
第1ファン装置25は、ファン(第1ファンという)25Aと、第1ファン25Aを駆動するファンモータ85を有するファン駆動装置25Bとを備えている。
第1ファン25Aは、中心ボス部の外周に放射状に設けられた複数の羽根を有し、回転することで気流を発生させる。第1ファン25Aは、冷却対象83(ラジエータ24)の一方面側X1に配置されている。第1ファン25Aは、ファンモータ85の出力軸85Aに連結され、ファンモータ85が回転駆動されることで回転する。第1ファン25Aは、ファンモータ85を正転させることで第1方向に回転し、該第1方向に回転することで冷却対象83の他方面側X2から一方面側X1に向かう方向の第1気流(冷却風)FL1を発生させる。
【0027】
また、第1ファン25Aは、ファンモータ85を逆転させることで第1方向とは逆方向である第2方向に回転し、該第2方向に回転することで冷却対象83の一方面側X1から他方面側X2に向かう方向の第2気流FL2を発生させる。第1方向及び第2方向は、ファンモータ85の出力軸85A回りの回転方向であって、第1方向と第2方向とは互いに反対方向である。
【0028】
なお、本実施形態では、第1気流FL1は、機体2内部に外気を取り入れる方向の気流であり、第2気流FL2は、機体2内部の空気を外部に排出する方向の気流である。第1気流FL1で冷却対象83を冷却する。第2気流FL2で冷却対象83(ラジエータ24、コンデンサ27、オイルクーラ)に付着したダストを吹き飛ばすことができる。また、第1ファン25Aの風量は、該第1ファン25Aを第1方向に回転(正転)させたときの方が第2方向に回転(逆転)させたときよりも大である。つまり、第1気流FL1の風量が第2気流FL2の風量よりも大である。
【0029】
図1に示すように、ファン駆動装置25Bは、ファンモータ85と、方向切換弁73と、モータハウジング86とを有している。
ファンモータ85は、第1ファン25Aを回転駆動するモータであって、第2ポンプP2からの作動油によって駆動する油圧モータによって構成されている。詳しくは、ファンモータ85は、第1モータポート85aと第2モータポート85bとを有し、第1モータポート85a及び第2モータポート85bの一方から作動油が流入し、流入した作動油が他方から流出することで、つまり、ファンモータ85を作動油が通過することで、該ファンモータ85が回転駆動される。ファンモータ85は、該ファンモータ85を駆動する作動油の流れ方向を切り換えることで正逆転可能である。ファンモータ85の出力軸85Aは、モータハウジング86から外部に突出している。
【0030】
方向切換弁73は、ファンモータ85の正逆転を切り換える弁であって、ファンモータ85を駆動する作動油の方向を切り換えて第1ファン25Aの回転方向を切り換える。方向切換弁73は、電磁弁によって構成されている。詳しくは、方向切換弁73は、ソレノイド73aを有する電磁式の切換弁によって構成され、ソレノイド73a(方向切換弁73)は、制御装置60に接続されている。つまり、制御装置60は、方向切換弁73に制御信号を出力することで該方向切換弁73を制御可能である。具体的には、方向切換弁73は、第1位置(OFF位置)73bと、第2位置(ON位置)73cとの2位置に切り換え可能な弁であって、バネ73dの付勢力によって第1位置73bに保持され、ソレノイド73aに印加された電流で生じる磁力がバネ73dの付勢力に打ち勝つことで第2位置73cに切り換えられる。方向切換弁73が第1位置73bに在ると、作動油が第1モータポート85aから第2モータポート85bに流れ、例えば、ファンモータ85が、正転する。また、方向切換弁73が第2位置73cに切り換えられると、作動油が第2モータポート85bから第1モータポート85aに流れ、例えば、ファンモータ85が、逆転する。
【0031】
モータハウジング86は、ファンモータ85及び方向切換弁73を収容するケーシングである。つまり、モータハウジング86にファンモータ85及び方向切換弁73が内蔵されている。モータハウジング86は、油路が形成可能なブロック体であり、導入ポート(第1導入ポートという)86aと、排出ポート(第1排出ポートという)86bと、モータ駆動油路87とを有している。
【0032】
第1導入ポート86aは、ファンモータ85に供給される作動油が導入される(流入する)ポートである。第1排出ポート86bは、ファンモータ85を通過した作動油をモータハウジング86から排出するポートである。
モータ駆動油路87は、第1導入ポート86a及び第1排出ポート86bに接続され且つ作動油を第1導入ポート86aからファンモータ85を通過して第1排出ポート86bに流す油路である。つまり、モータ駆動油路87は、ファンモータ85を駆動する作動油が流通する油路である。モータ駆動油路87は、例えば、モータハウジング86に孔を穿孔することで形成される。モータ駆動油路87は、第1油路87aと、第2油路87bと、第3油路87cと、第4油路87dとを有している。モータ駆動油路87には、ファンモータ85と方向切換弁73とが設けられる。
【0033】
第1油路87aは、第1導入ポート86aと方向切換弁73とを接続している。第2油路87bは、方向切換弁73と第1モータポート85aとを接続している。第3油路87cは、第2モータポート85bと方向切換弁73とを接続している。第4油路87dは、方向切換弁73と第1排出ポート86bとを接続している。
第1ファン装置25にあっては、方向切換弁73が第1位置73bにあるときは、第1導入ポート86aから流入した作動油は、第1油路87a→方向切換弁73→第2油路87b→ファンモータ85→第3油路87c→方向切換弁73→第4油路87dを経て第1排出ポート86bから流出する。また、方向切換弁73が第2位置73cにあるときは、第1導入ポート86aから流入した作動油は、第1油路87a→方向切換弁73→第3油路87c→ファンモータ85→第2油路87b→方向切換弁73→第4油路87dを経て第1排出ポート86bから流出する。
【0034】
第1排出ポート86bには、該第1排出ポート86bから排出される作動油が流れる油路である排出用流路88が接続されている。排出用流路88は、モータハウジング86の外部に設けられた油路である。排出用流路88における第1排出ポート86bよりも下流側には、油圧フィルタ89が設けられている。排出用流路88は、タンクT1に連通していて、第1排出ポート86bから排出される作動油はタンクT1に戻る。
【0035】
排出用流路88における油圧フィルタ89より上流側には、リリーフ油路107が接続されている。リリーフ油路107には、排出用流路88を流れる作動油の最高圧力(リリーフ圧)を設定するリリーフ弁106が設けられている。したがって、排出用流路88を流れる作動油がリリーフ圧以上の高圧となったときに、作動油をタンクT1へ逃がすことができ、油圧フィルタ89を保護することができる。
【0036】
モータハウジング86には、第2油路87bと第3油路87cとを接続する第1接続油路90と、第1油路87aと第4油路87dとを接続する第2接続油路91とが形成されている。第1接続油路90には、オーバーリリーフ弁92が設けられている。オーバーリリーフ弁92は、第2油路87bと第3油路87cとのうちの一方が、予め設定される設定圧以上の高圧になった場合に、該圧力を高圧側から低圧側に逃がす。オーバーリリーフ弁92の設定圧は調節可能である。第2接続油路91には、第1油路87aから第4油路87dへの作動油の流通を阻止する逆止弁93が設けられている。
【0037】
図1に示すように、ファン回転制御装置70は、バルブハウジング94と、流量調節弁72と、アンロード弁71とを有している。ファン回転制御装置70は、第1ファン装置25(ファン駆動装置25B)とは離れた位置に配置される。
バルブハウジング94は、流量調節弁72及びアンロード弁71を収容するケーシングである。つまり、バルブハウジング94に流量調節弁72及びアンロード弁71が内蔵されている。バルブハウジング94は、油路が形成可能なブロック体であり、導入ポート(第2導入ポートという)94aと、出力ポート94bと、排出ポート(第2排出ポートという)94cと、第1内部油路95と、第2内部油路96とを有している。
【0038】
第2導入ポート94aには、吐出油路81が接続されている。したがって、第2導入ポート94aに、第2ポンプP2から吐出した作動油が導入される。言い換えると、第2ポンプP2から吐出した作動油が第2導入ポート94aを介してファン回転制御装置70に供給される。出力ポート94bは、バルブハウジング94及びモータハウジング86の外部に形成された外部油路(第1外部油路)97を介して第1導入ポート86aに接続されている。第2排出ポート94cは、外部油路(第2外部油路)98を介して排出用流路88に接続されている。
【0039】
排出用流路88と第2外部油路98との接続部98aより下流側であって該接続部98aの近傍にリリーフ油路107の接続部98bが在る。接続部98aは、リリーフ弁106の近傍に在る。なお、接続部98aは、排出用流路88とリリーフ油路107との接続部98bと、第1排出ポート86bとの間に在ればよい。また、第2外部油路98は、リリーフ油路107に接続されていてもよい。さらに、排出用流路88と第2外部油路98とリリーフ油路107とを一カ所で合流させてもよい。
【0040】
第1内部油路95及び第2内部油路96は、バルブハウジング94に形成されている。第1内部油路95及び第2内部油路96は、例えば、バルブハウジング94に孔を穿孔することで形成される。
第1内部油路95は、少なくとも第2導入ポート94aと出力ポート94bとを接続する油路であって流量調節弁72が設けられた油路である。詳しくは、第1内部油路95は、第2導入ポート94aと出力ポート94bとを接続するポンプ油路99と、ポンプ油路99から分岐して第2排出ポート94cに接続されるバイパス油路100とを含み、バイパス油路100に流量調節弁72が設けられている。
【0041】
ポンプ油路99は、第2導入ポート94aから流入した作動油をファン駆動装置25Bに供給すべく案内する。詳しくは、第2ポンプP2から吐出した作動油は、第2導入ポート94a→ポンプ油路99→出力ポート94bを経てバルブハウジング94(ファン回転制御装置70)から出力されると共に、第1外部油路97を介して第1導入ポート86aからモータハウジング86(ファン駆動装置25B)に供給される。
【0042】
バイパス油路100は、ポンプ油路99と流量調節弁72とを接続する油路である第1区間100aと、流量調節弁72に接続されると共に第2排出ポート94cに連通する油路である第2区間100bとを有している。バイパス油路100は、第2導入ポート94aから流入した作動油を流量調節弁72を介して第2排出ポート94cから排出すべく案内する。
【0043】
第2内部油路96は、第1内部油路95に連通する油路であって、ポンプ油路99から分岐し且つ第2排出ポート94cに接続されるアンロード油路101を含む。本実施形態では、第2内部油路96は、アンロード油路101である。アンロード油路101(第2内部油路96)は、第2排出ポート94cとの接続部分において、バイパス油路100(第1内部油路95)と一部分を共有している。
【0044】
アンロード油路101にアンロード弁71が設けられている。詳しくは、アンロード油路101は、ポンプ油路99とアンロード弁71とを接続する油路である第1部位101aと、アンロード弁71に接続されると共に第2排出ポート94cに接続される(連通する)油路である第2部位101bとを有する。アンロード油路101は、第2導入ポート94aから流入した作動油をアンロード弁71を介して第2排出ポート94cから排出すべく案内する。
【0045】
流量調節弁72は、バイパス油路100を流れる作動油の流量を調節する。言い換えると、流量調節弁72は、ファンモータ85に供給される作動油の流量を調節する。厳密に言えば、流量調節弁72は、第2ポンプP2から吐出されてファンモータ85に供給される作動油圧力を規定するバルブであって、ファンモータ85に供給される作動油圧力を制御(調節)することで、結果としてバイパス油路100を流れる作動油流量を調節する。
【0046】
流量調節弁72は、電磁弁によって構成されている。詳しくは、流量調節弁72は、可変ソレノイド72aを有する電磁式の比例弁(可変リリーフ弁)によって構成されている。可変ソレノイド72a(流量調節弁72)は、制御装置60に接続されている。制御装置60は、流量調節弁72に制御信号を出力することで該流量調節弁72を制御可能である。詳しくは、制御装置60は、可変ソレノイド72aに印加する電流(電流値)を調節することにより、流量調節弁72の開度(弁の開き度合い)を調整可能である。流量調節弁72の開度を調節することにより、ファンモータ85に供給される作動油の流量を調節している。
【0047】
言い換えると、流量調節弁72でファンモータ85の作動油供給側の圧力を設定し、第2ポンプP2からの作動油が上記設定した圧力を超えることにより生じる余剰油が第1区間100a→流量調節弁72→第2区間100bを通って流れてファンモータ85をバイパスすることで、ファンモータ85に供給される作動油の流量を制御している。
また、バイパス油路100を流れる作動油の流量(圧力)を調節することにより、第2導入ポート94a、ポンプ油路99、出力ポート94b、第1外部油路97を介してファン駆動装置25Bに供給される作動油の流量が調節される。つまり、ファンモータ85に供給される作動油の流量が調節される。ファンモータ85に供給される作動油の流量を調節することにより、第1ファン25Aの回転数を調節(制御)することができる。
【0048】
アンロード弁71は、電磁弁によって構成されている。詳しくは、アンロード弁71は、ソレノイド71aを有する電磁式の開閉弁によって構成され、流量調節弁72と並列に搭載されている。ソレノイド71a(アンロード弁71)は、制御装置60に接続されている。制御装置60は、アンロード弁71に制御信号を出力することで該アンロード弁71を制御可能である。詳しくは、アンロード弁71は、全閉位置(OFF位置)71bと全開位置(ON位置)71cとの2位置に切り換え可能であって、バネ71dの付勢力によって全閉位置71bに保持され、ソレノイド71aに印加された電流で生じる磁力がバネ71dの付勢力に打ち勝つことで全開位置71cに切り換えられる。全閉位置71bは、アンロード油路101(第2内部油路96)を閉鎖する位置であり、全開位置71cは、アンロード油路101(第2内部油路96)を開放する位置である。
【0049】
流量調節弁72を全閉すると共にアンロード弁71を全閉位置71bにすることで、第1導入ポート86aから流入した殆どの作動油がファンモータ85へ流入する。これにより、第1ファン25Aの回転数であるファン回転数が最高回転数となる。また、アンロード弁71を全開位置71cにすることで、ポンプ油路99へ流れる作動油の殆どが第2排出ポート94cから排出される。これにより、ファン回転数が最低回転数(零回転数を含む)となる。つまり、アンロード弁71を全開位置71cにすると、第1ファン装置25は、停止或いは停止に近い回転状態となる。なお、ファン回転数を最低回転数にする場合、アンロード弁71及び流量調節弁72の両方を開くようにしてもよい。
【0050】
また、アンロード弁71を全閉位置71bにして、流量調節弁72の開度を調節してバイパス油路100を流れる作動油の流量を調節することで、ファン回転数を変更することができる。
第1ファン装置25は、例えば、冷却対象83の温度である冷媒や冷却水や作動油の温度を下げるための回転数の制御(冷却対象83の温度に基づく回転数の制御)、エンジン6に作用する負荷(エンジン6の目標回転数と、エンジン6の実際の回転数であるエンジン実回転数との差)に基づく回転数の制御が行われる。
【0051】
上記実施形態では、アンロード弁71を設けることで、流量調節弁72だけでファン回転数を最低回転数にするよりも、ファン回転数の最低回転数を低くできるようにしている。しかしながら、アンロード弁71を設けないで、流量調節弁72だけでファン回転数を最低回転数から最高回転数まで制御するようにしてもよい。したがって、ファン回転制御装置70は、アンロード弁71を内蔵しないで流量調節弁72だけを内蔵する構成としてもよい。
【0052】
ところで、例えばファン駆動装置25Bに、流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵することも考えられるが、ファン駆動装置25Bに、流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵したものにあっては、モータハウジング86の内部の限られたスペースに3つのバルブ、つまり、方向切換弁73と流量調節弁72とアンロード弁71とを搭載することとなり、内部油路形成の制約が大きい。そのため、ファン駆動装置25Bに流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵したものにあっては、ファン駆動装置25Bをコンパクトに形成しようとすると、内部油路は十分な内径を確保できず、圧力損失(ロス馬力)が大きくなる場合がある。
【0053】
これに対し、本実施形態では、流量調節弁72及びアンロード弁71をファン駆動装置25Bとは別のバルブハウジング94に内蔵して、ファン駆動装置25Bとは別置きにすることにより、内部油路の内径を十分に確保することができ、油圧回路内の圧力損失(ロス馬力)を低減させることができる。
また、ファン駆動装置25Bに流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵し、且つファン駆動装置25Bをコンパクトに形成しようとすると、低温時に作動油の粘性の影響で圧力損失が増加し、ファンモータ85の上流の第2ポンプP2に許容量以上の圧力が生じる場合が考えられるため、第2ポンプP2直近には保護用のリリーフ弁が必要であり、コスト面の影響が大きい。
【0054】
これに対し、本実施形態では、流量調節弁72及びアンロード弁71をバルブハウジング94に内蔵して、ファン駆動装置25Bとは別置きにすることにより、内部油路の内径を十分に確保することができることから、低温時の圧力も低下させることができ、第2ポンプP2直近の保護リリーフ弁を廃止することが可能である。
また、ファン駆動装置25Bに流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵したものにあっては、第2ポンプP2とファン駆動装置25Bとの間の区間(第1配策区間という)、ファン駆動装置25Bと油圧フィルタ89との間の区間(第2配策区間という)の油圧ホースの長さがレイアウト上の制約で長くなる場合がある。第1配策区間、第2配策区間の油圧ホースの長さが長くなると、アンロード弁71を作動させた時の、第1配策区間及び第2配策区間での圧力損失が大きくなる。
【0055】
これに対し、本実施形態では、ファン駆動装置25Bとは別置きであるファン回転制御装置70は、ファン駆動装置25Bのレイアウト影響の制約を受けずに配置することが可能となるので、アンロード弁71を作動させた時の、第2ポンプP2-油圧フィルタ89間の区間(第2ポンプP2-ファン回転制御装置70間の区間、ファン回転制御装置70-ファン駆動装置25B間の区間、ファン駆動装置25B-油圧フィルタ89間の区間)における圧力損失を最大限まで低減させることができる。
【0056】
図5に示すように、第1ファン装置25とファン回転制御装置70とは機体2の内部に配置されている。第1ファン装置25は、エンジン6の上方に配置されている。また、第1ファン装置25は、導風ダクト108内に収容されている。導風ダクト108(第1ファン装置25)の上方には、ラジエータ24、コンデンサ27及びオイルクーラを含む冷却対象83が配置されている。第1ファン装置25が発生する第1気流FL1によって、外気が冷却対象83の上方から冷却対象83を通って導風ダクト108内に取り入れられると共に、導風ダクト108から機体2側方の外部へ排出される。
【0057】
導風ダクト108の前方側には、油圧フィルタ89が配置されている。詳しくは、油圧フィルタ89は、HSTポンプHPの側方(右側方)且つ上方に配置されている。
油圧フィルタ89を保護する前記リリーフ弁106は、油圧フィルタ89の近傍に配置される。詳しくは、
図5に示すように、リリーフ弁106は、油圧フィルタ89の前方且つ下方に配置されている。
【0058】
ポンプユニットPU、油圧フィルタ89及びファン回転制御装置70は、導風ダクト108の外に配置されている。
ファン回転制御装置70は、例えば、ポンプユニットPUの近傍に配置される。図例では、ファン回転制御装置70は、ポンプユニットPUの前部の側方(右側方)且つ上方に配置されている。本実施形態では、ファン回転制御装置70と油圧フィルタ89とは、機体幅方向の同じ側(右側)に配置されている。
【0059】
なお、ファン回転制御装置70の配置位置は、
図5に示す位置に限定されることはなく、機体2内部のどこに配置されていてもよい。例えば、ファン回転制御装置70(バルブハウジング94)はポンプユニットPUに取り付けられていてもよい。また、ファン回転制御装置70は、機体2の外部に配置されていてもよい。つまり、ファン回転制御装置70は、他の機器の配置場所に制約を受けることなく、自由に配置することができる。
【0060】
上記の油圧部品等の配置構成では、ポンプユニットPU(第2ポンプP2)と油圧フィルタ89とを短い距離で結ぶ油路(吐出油路81,第1区間100a,第2区間100b,第1部位101a,第2部位101b,第2外部油路98等)にファン回転制御装置70(アンロード弁71)が設けられている。この短い油路に対し、ファン回転制御装置70から第1ファン装置25を経て油圧フィルタ89に至る油路経路は、
図5を参照すると、ファン回転制御装置70から導風ダクト108を介して第1ファン装置25に至ると共に第1ファン装置25から導風ダクト108を介して油圧フィルタ89に戻ってくる。
【0061】
また、油圧フィルタ89近傍に該油圧フィルタ89を保護するリリーフ弁106が取り付けられている。
なお、第2ポンプP2から吐出する作動油の全量が流れる第2ポンプP2とファン回転制御装置70(アンロード弁71)との間の区間(吐出油路81)は、太いホースが採用され、ファン回転制御装置70(アンロード弁71)下流側の流量が少ない油路及び第1ファン装置25(ファンモータ85)下流側の油路は、吐出油路81を形成するホースよりも細いホースが採用される。
【0062】
図1に示すように、冷却対象83の他方面側X2(第1ファン装置25の配置側とは反対側)には、第1ファン装置25とは異なる他のファン装置(第2ファン装置という)26が配置されている。第2ファン装置26は、機体2に搭載されたバッテリ等から供給される電力によって駆動する電動ファンである。
第2ファン装置26は、ファン(第2ファンという)26Aと、該第2ファン26Aを駆動する電動モータ26Bとを有する。
【0063】
第2ファン26Aは、中心ボス部の外周に放射状に設けられた複数の羽根を有し、回転することで気流を発生させる。また、第2ファン26Aは、電動モータ26Bが電力によって駆動することによって第2方向と同じ方向に回転する。つまり、第2ファン装置26は、冷却対象83の一方面側X1から他方面側X2に向かう方向の第2気流FL2を発生させる。第2ファン装置26は、第2方向にのみ回転可能であり、第2気流FL2を発生させることができるが、第1気流FL1を発生させることができない。
【0064】
第2ファン装置26の回転軸中心は、第1ファン装置25の回転軸中心と同一直線上に配置されている。また、第2ファン装置26は、制御装置60に接続されている。制御装置60は、第2ファン装置26に制御信号を出力することで該第2ファン装置26をON状態またはOFF状態に切り換えることができる。ON状態は、第2ファン装置26が回転する状態であり、OFF状態は、第2ファン装置26が停止する状態である。
【0065】
本実施形態にあっては、冷却対象83(ラジエータ24、コンデンサ27、オイルクーラ)を冷却するときには、第1ファン装置25を正転させて第1気流FL1を発生させるが、第2ファン装置26は回転させない。つまり、第1ファン装置25を正転させて第1気流FL1を発生させる場合は、第2ファン26Aの回転を停止させる。
また、冷却対象83に付着したダストを吹き飛ばすときには、第1ファン装置25を逆転させて第2気流FL2を発生させるが、第1ファン装置25の回転のみでは、ダストを吹き飛ばすために十分な風量が得られない場合がある。特に、第1ファン25Aの中心付近(回転軸に近い部分)で発生する風量は、外周付近(回転軸から離れた部分)で発生する風量に比べて小さいため、当該中心付近に対応する部分ではダストを十分に吹き飛ばすことができない場合がある。
【0066】
そこで、冷却対象83に付着したダストを吹き飛ばすときには、第2ファン装置26も回転させて、第2ファン装置26によっても第2気流FL2を発生させる。この第2ファン装置26の回転により発生する風量によって、第1ファン装置25の回転のみでは不足する風量を補うことができる。つまり、第2ファン装置26の回転によって、冷却対象83の一方面側X1から他方面側X2に向かう方向の第2気流FL2の風量が増加する。そのため、第1ファン装置25の回転のみでは吹き飛ばすことができないダストを吹き飛ばすことができる。
【0067】
図1に示すように、制御装置60には、第1スイッチ64Aと第2スイッチ64Bと操作部材64Cとが接続されている。制御装置60は、第1スイッチ64A、第2スイッチ64B及び操作部材64Cからの操作信号を取得可能である。
第1ファン装置25及び第2ファン装置26の第2気流FL2によってダストを吹き飛ばす「ダスト清掃」は、自動で行われる場合と、オペレータによる手動操作によって行われる場合とがある。
【0068】
「ダスト清掃」が自動で行われる場合は、制御装置60は、予めユーザー(オペレータ)が設定した時間間隔で自動的に一定時間「ダスト清掃」を行う。つまり、第1ファン装置25の逆転動作及び第2ファン装置26の回転駆動が設定した時間間隔(例えば、10分間隔、20分間隔・・・90分間隔等)で自動的に行われる。例えば、時間間隔を60分に設定した場合、60分毎に「ダスト清掃」が自動で行われる。設定する時間間隔は、複数の時間間隔から選択することができる。また、無段階で時間間隔を設定できるようにしてもよい。この時間間隔の設定は、制御装置60に接続された操作部材64Cによって行うことができる。
【0069】
オペレータの手動操作によって「ダスト清掃」が行われる場合は、オペレータが第1スイッチ64AをON操作することにより行われる。つまり、オペレータが第1スイッチ64Aを操作したタイミングで手動で即時「ダスト清掃」が実施される。
また、「ダスト清掃」が行われている際に、第2スイッチ64BをON操作すると、「ダスト清掃」をキャンセルすることができる。
【0070】
なお、「ダスト清掃」を自動で行う場合と、「ダスト清掃」を自動では行わない場合とを選択するスイッチを設けてもよい。
次に、「ダスト清掃」が行われるときの流量調節弁72、方向切換弁73、第2ファン装置26、アンロード弁71の動作について説明する。
図2は、制御装置60により制御された流量調節弁72、方向切換弁73、第2ファン装置26、アンロード弁71の動作パターンの一例を示す図であり、横軸は時間軸である。
【0071】
図2において、点aは、第1スイッチ64Aが操作されたとき又は自動で「ダスト清掃」が行われるときの開始点を示している。制御装置60からの制御信号によって「ダスト清掃」が開始されると、先ず、アンロード弁71がOFF(全閉位置71b)の状態で流量調節弁72を徐々に開いていくと共に、流量調節弁72が全開になった時点(点b)でアンロード弁71をON動作して全開位置71cに切り換えて、第1ファン25Aの回転数を最低回転数にする(STEP1)。つまり、アンロード弁71が全閉位置71bの状態で流量調節弁72を徐々に開いていくと共に流量調節弁72が全開になるとアンロード弁71を全開位置71cに切り換える。
【0072】
次に、流量調節弁72を全開状態にし且つアンロード弁71を全開位置71cにした状態を所定時間t1継続する(STEP2)。つまり、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に所定時間t1継続する。
そして、この第1ファン25Aの回転数を最低回転数に継続している間(点b-点c間)に、方向切換弁73をON動作して第2位置73cに切り換える。即ち、制御装置60は、ファンモータ85を駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に流量調節弁72を徐々に開いていくと共に流量調節弁72を全開して第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換える。本実施形態では、制御装置60は、流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えて第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン装置25の回転方向を切り換える。
【0073】
また、制御装置60は、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、第2ファン装置26をON動作させて第2ファン26Aの回転を行う。
なお、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転(回転開始)は、第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転数を最低回転数に低下させた状態の前或いは後に行うこともできる。
【0074】
本実施形態では、STEP2開始時点(点b)から第2ファン装置26をONするまでの経過時間t2は、STEP2開始時点(点b)から方向切換弁73をONするまでの経過時間t3よりも短い。つまり、第2ファン装置26のON動作は、第1ファン25Aの回転方向を切り換える前に行う。言い換えると、制御装置60は、第2ファン26Aの回転を行った後に、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換える。
【0075】
なお、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転を開始する前に、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転方向を切り換えるようにしてもよい。また、第2ファン26Aの回転開始と、方向切換弁73の切り換えとを同時に行うこともできる。
次に、制御装置60は、第1ファン25Aの回転方向を切り換えてから所定時間経過した時点(点c)でアンロード弁71をOFF動作して全閉位置71bに切り換えると共にファン回転数が最高回転数に至る(点d)まで流量調節弁72を徐々に閉じる(STEP3)。
図2に示す例では、アンロード弁71をOFF動作して全閉位置71bに切り換えたとき(点c)には、第2ファン装置26はON状態(回転状態)である。
【0076】
次に、点dから点eまで所定時間t4、第1ファン25Aの回転数を最高回転数に継続する(STEP4)。このとき、第2ファン装置26はON状態である。つまり、第1ファン25Aの回転数が最高回転数のときに、第2ファン装置26は回転している。言い換えると、制御装置60は、第1ファン25Aを第2方向に回転させる際に第2ファン26Aを第2気流FL2が発生する方向に回転させる。これにより、第1ファン25Aによる風量と第2ファン26Aによる風量とで、ダストを良好に吹き飛ばすことができる。
【0077】
次に、制御装置60は、STEP4の終了時点(点e)から、流量調節弁72を徐々に開くと共に、流量調節弁72を全開した時点(点f)でアンロード弁71をON動作して全開位置71cに切り換えて、第1ファン25Aの回転数を最低回転数にする(STEP5)。
図2に示す例では、流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えたとき(点f)には、第2ファン装置26は、回転状態である。
【0078】
次に、流量調節弁72を全開状態にし且つアンロード弁71を全開位置71cにした状態を所定時間t5継続する(STEP6)。つまり、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に所定時間t5継続する。
そして、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に継続している間(点f-点g間)に、方向切換弁73をOFF動作して第1位置73bに切り換える。
【0079】
この場合にあっても、制御装置60は、ファンモータ85を駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に流量調節弁72を徐々に開いていくと共に流量調節弁72を全開して第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換える。本実施形態では、制御装置60は、流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えて第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン装置25の回転方向を切り換える。
【0080】
また、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に継続している間(点f-点g間)に、第2ファン装置26をOFF動作させて第2ファン26Aの回転を停止する。STEP6開始時点(点f)から第2ファン装置26をOFFするまでの経過時間t6は、STEP6開始時点(点f)から方向切換弁73をOFFするまでの経過時間t7よりも長い。つまり、第2ファン装置26のOFF動作は、第1ファン25Aの回転方向を切り換えた後に行う。言い換えると、制御装置60は、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換えた後に、第2ファン26Aの回転停止を行う。
【0081】
なお、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転方向を切り換える前に、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転停止を行ってもよい。また、方向切換弁73の切り換えと第2ファン26Aの回転停止とを同時に行うこともできる。
また、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転停止は、第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転数を最低回転数に低下させた状態の前であって、STEP4の終了時点(点e)から、流量調節弁72を全開した時点(点f)までの間に行うこともできる。また、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転停止は、第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転数を最低回転数に低下させた状態の後に行うこともできる。
【0082】
次に、STEP6終了時点(点g)でアンロード弁71をOFF動作して全閉位置71bに切り換えた後、流量調節弁72を徐々に閉じることにより、第1ファン25Aの回転数を、冷却対象83の温度である冷媒、冷却水、作動油の温度や、エンジン6に作用する負荷に基づいて設定された第1ファン25Aの目標回転数まで上昇させる(STEP7)。
【0083】
「ダスト清掃」が終了した時点(点h)以降は、「ダスト清掃」が解除されて、冷却対象83の温度である冷媒、冷却水、作動油の温度や、エンジン6に作用する負荷に基づく第1ファン装置25の回転数の自動制御が行われる。
ところで、従来にあっては、「ダスト清掃」を行う場合において、例えばファンモータ85の回転方向を正転から逆転に切り換える際、切り換え時のファンモータ85の回転数が高いと、ファンモータ85の上流側の第2ポンプP2等にサージ圧が生じる。
【0084】
なお、上記した「ダスト清掃」が行われるときの流量調節弁72、方向切換弁73、第2ファン装置26の動作は、アンロード弁71を設けない場合も略同様に行うことができる。
本実施形態では、流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えて第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、つまり、第1ファン25Aの回転を十分に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換えるようにしているので、ファンモータ85の回転方向の切り換え時における油圧回路内のサージ圧の発生を良好に抑制することができる。
【0085】
また、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させる場合、第1ファン25Aの回転数の低下速度(電流の上げ速度)を速くしすぎると(アンロード弁71や流量調節弁72による急減圧を行うと)、ファンモータ85下流側の油圧フィルタ89等の油圧機器にサージ圧が生じる可能性があるが、本実施形態では、アンロード弁71と流量調節弁72とを組み合わせて制御し、緩やかに第1ファン25Aの回転数を低下させることで、ファンモータ85下流側の油圧機器にサージ圧が生じるのを抑制することができる。
【0086】
また、第1ファン25Aの回転数を最高回転数に上昇させる場合、第1ファン25Aの回転数の上昇速度(電流の下げ速度)を速くしすぎると(アンロード弁71や流量調節弁72による急加圧を行うと)ファンモータ85上流側の第2ポンプP2等の油圧機器にサージ圧が生じる可能性があるが、本実施形態では、アンロード弁71と流量調節弁72とを組み合わせて制御し、緩やかに第1ファン25Aの回転数を上昇させることで、ファンモータ85上流側の油圧機器にサージ圧が生じるのを抑制することができる。
【0087】
以上のように、ファンモータ85の回転方向の切り換えを緩やかに実施することで、油圧回路内のサージ圧発生を抑制し、油圧機器の破損を防止することができる。また、異常な騒音の発生や油圧回路昇圧によるロス馬力抑制に貢献できる。
また、第1ファン装置25と並列に配置した第2ファン装置26については、電動モータ26Bが停止している状態で、第2ファン26Aが全く回転しないように構成される場合もあるし第2ファン26Aの回転がフリーとなる状態に構成される場合もある。第2ファン26Aの回転がフリーとなる状態に構成される場合、第1ファン25Aによって生じる第1気流FL1によって第2ファン26Aが連れ回りする可能性がある。第2ファン26Aが第1ファン25Aと連れ回りすると、第2ファン装置26のON/OFF切り換え時に電気回路にサージ電圧が発生する懸念がある。
【0088】
これに対し、第1ファン装置25が最低回転数となった状態で第2ファン装置26のON/OFF切り換えをしてもよいし、必要に応じて独自のタイミングで、第1ファン装置25の最低回転時とずらせて第2ファン装置26のON/OFF切り換えをすることもできる。言い換えれば、制御装置60は、第1ファン25A(第1ファン装置25)の回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態の前或いは後で、第2ファン26A(第2ファン装置26)の回転を行う。
【0089】
図3は、他の実施形態に係る油圧制御システムH1を示している。
この
図3に示す他の実施形態に係る油圧制御システムH1は、予備用制御弁(SP制御弁という)130を備えていると共に、冷却装置82の下流側に、SP制御弁130を操作する一対の電磁弁である予備用電磁弁(SP電磁弁という)131,132と、HST172とを備えている点が上記実施形態の油圧制御システムH1と構成が異なる。
【0090】
図3に係る他の実施形態にあっても、第2ポンプP2の下流側に冷却装置82が設けられている。
図3では、冷却装置82は簡略化して図示しているが、冷却装置82は、上記
図1に示す実施形態と同様に構成されている。つまり、冷却装置82は、冷却対象83を冷却する第1ファン装置25と、第1ファン装置25の回転を制御するファン回転制御装置70とを有している。第1ファン装置25は、第1ファンという25Aと、第1ファン25Aを駆動するファンモータ85を有するファン駆動装置25Bとを備えている。冷却装置82の詳細説明は省略する。
【0091】
また、排出用流路88及び第2外部油路98の下流側にリリーフ弁106及び油圧フィルタ89が設けられている。制御装置60は、測定装置(温度センサ)148が検出した油温及び水温のいずれか一方又は両方に応じて、第1ファン装置25(ファン25A)を適切な回転数で回転させるように、ファン回転制御装置70(流量調節弁72)の操作を実行してファンモータ85の一次側に供給される作動油の量を変更する。なお、制御装置60と測定装置148とを一体化してもよい。
【0092】
図3に示すように、第1ポンプP1は、バケット11の代わりに装着される予備アタッチメントの油圧アクチュエータ133を駆動するのに使用される。説明の便宜上、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ133のことを、予備アクチュエータという。この予備アクチュエータ133を操作する操作部材125は制御装置(コントローラ)60に接続されている。
【0093】
SP制御弁130は、パイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。SP制御弁130は、パイロット圧によって中立位置135aと第1位置135bと第2位置135cとに切換自在である。なお、SP制御弁130は、バネによって中立位置135aに戻される。
SP制御弁130には、第1ポンプP1の吐出路e1に連通する作業系供給油路f1が接続されている。また、SP制御弁130には、排油路k1を介してバイパス油路h1が接続され、タンクT1側に戻るドレン油路g1も接続されている。
【0094】
また、SP制御弁130と接続部材50との間には、作動油供給路139が接続されている。作動油供給路139は、2つの流路から構成されており、一方の流路139iは、第1逃がし路m1を介してバイパス油路h1に接続され、他方の流路139jは、第2逃がし路n1を介してバイパス油路h1に接続されている。第1,第2逃がし路m1,n1には、それぞれリリーフ弁140,141Aが設けられている。
【0095】
接続部材50は、SP制御弁130と予備アクチュエータ133とを接続するものであって、作動油供給路139及び油圧ホース等を介してSP制御弁130と予備アクチュエータ133とを接続する。
一方のSP電磁弁131は、第1パイロット油路q1を介してSP制御弁130の一側の受圧部142aに接続されている。他方のSP電磁弁132は、第2パイロット油路r1を介してSP制御弁130の他側の受圧部142bに接続されている。SP電磁弁131,132には、パイロット圧供給油路t12を介して第2ポンプP2からのパイロット油(圧油)が供給可能である。したがって、SP電磁弁131によって、SP制御弁130を第1位置135bに切り換えると、一方の流路139iから予備アクチュエータ133へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に予備アクチュエータ133からの戻りの油が他方の流路139jから排油路k1に流れる。
【0096】
また、SP電磁弁132によって、SP制御弁130を第2位置135cに切り換えると、他方の流路139jから予備アクチュエータ133へと第1ポンプP1からの作動油が供給されると共に予備アクチュエータ133からの戻りの油が一方の流路139iから排油路k1に流れる。
以上の油圧制御システムH1では、SP電磁弁131,132を作動させることにより、SP制御弁130を介して予備アタッチメントの予備アクチュエータ133を作動させることができる。
【0097】
このSP電磁弁131,132の制御は、作業機1に搭載された制御装置60によって行う。制御装置60は、操作部材125に設けられたスイッチ等の操作に応じて、SP電磁弁131,132(SP制御弁130)の操作を実行する。
さて、油圧制御システムH1にあっては、SP電磁弁131,132は、油圧フィルタ89の下流側に設けられている。第1ファン装置25(ファン駆動装置25B)及びファン回転制御装置70から排出されて油圧フィルタ89を通過したパイロット油(圧油)は、パイロット圧供給油路t12を介してSP電磁弁131,132に供給される。
【0098】
HST172は、エンジン6によって駆動されるHSTポンプHPと、該HSTポンプHPと一対の変速用油路176a,176bによって閉回路接続された走行モータ(HSTモータ)M1とを有している。
また、HST172は、低圧側の変速用油路176a,176bに作動油を補充するチャージ回路175を有している。チャージ回路175は、高圧側の変速用油路176a,176bの圧が設定以上になると低圧側の変速用油路176a,176bに逃がす高圧リリーフ弁177a,177bと、高圧リリーフ弁177aと高圧リリーフ弁177bとの間の油路180とを有している。油路180は、補充油路179を介してパイロット圧供給油路t12に接続されている。したがって、第2ポンプP2から吐出されてファンモータ85、油圧フィルタ89を通過した作動油が補充油路179を介してチャージ回路175に流れる。また、チャージ回路175は、該チャージ回路175の回路圧を設定するチャージリリーフ弁178を有しており、該チャージリリーフ弁178は補充油路179及びタンクT1に連通している。
【0099】
図4は、第1ファン装置25の変形例を示している。
この変形例にあっては、ファンモータ85を収容するモータハウジング86に、方向切換弁73、流量調節弁72及びアンロード弁71が収容されている。したがって、バイパス油路100及びアンロード油路101もモータハウジング86に形成されている。したがって、冷却装置82は、第1ファン装置25によって構成されている。
【0100】
図4に示すように、モータハウジング86の導入ポート86aに吐出油路81が接続されている。モータハウジング86の排出ポート86bに排出用流路88が接続されている。
また、方向切換弁73は、バネ73dの付勢力によって第2位置73cに保持され、ソレノイド73aに印加された電流で生じる磁力がバネ73dの付勢力に打ち勝つことで第1位置73bに切り換えられる。
【0101】
バイパス油路100の第1区間100aは、シャトル弁103と流量調節弁72とに接続されている。シャトル弁103は、第1ライン104aを介して第2油路87bに接続され、第2ライン104bを介して第3油路87cに接続されている。したがって、ファンモータ85に供給される作動油がシャトル弁103を介して流量調節弁72へ流れる。第2区間100bは、第4油路87dと流量調節弁72とに接続されている。流量調節弁72を通過した作動油は排出ポート86bから排出される。
【0102】
アンロード油路101の第1部位101aは、第1油路87aとアンロード弁71とに接続されている。アンロード油路101の第2部位101bは、アンロード弁71と第4油路87dとに接続されている。アンロード弁71を全開位置71cにすることにより、第1油路87aを流れる作動油が排出ポート86bに排出される。
また、吐出油路81には、リリーフ弁102が接続されている。
【0103】
その他の構成は、上記した実施形態と同様に構成される。
本実施形態の作業機は、第1導入ポート86aを含むモータハウジング86と、モータハウジング86に収容され且つ第1導入ポート86aに導入された作動油によって回転するファンモータ85と、を有するファン駆動装置25Bと、モータハウジング86とは離れた位置に配置され且つ出力ポート94bを含むバルブハウジング94と、バルブハウジング94に収容され且つ第1導入ポート86aに導入する作動油の流量を調節する流量調節弁72とを有するファン回転制御装置70と、モータハウジング86の第1導入ポート86aと、バルブハウジング94の出力ポート94bとを接続する外部油路97と、を備えている。
【0104】
この構成によれば、流量調節弁72をファンモータ85を収容するモータハウジング86とは別のバルブハウジング94に収容し、流量調節弁72をファン駆動装置25Bとは別置きとすることで、内部油路の内径を十分に確保することができ、油圧回路内の圧力損失を低減させることができる。
また、作動油を吐出する油圧ポンプP2を備え、バルブハウジング94は、油圧ポンプP2から吐出した作動油が導入される第2導入ポート94aと、出力ポート94bと第2導入ポート94aとを接続し且つ流量調節弁72が設けられた第1内部油路95と、を有している。
【0105】
この構成によれば、流量調節弁72を含むファン回転制御装置70を簡潔に形成することができる。
また、バルブハウジング94は、第1内部油路95に連通する第2内部油路96と、第2内部油路96に設けられ且つ第2内部油路96を閉鎖する全閉位置71bと第2内部油路96を開放する全開位置71cとに切り換え可能なアンロード弁71と、第2内部油路96に連通し且つ当該第2内部油路96の作動油を排出する排出ポート94cと、を有している。
【0106】
この構成によれば、ファン回転制御装置70にアンロード弁71を組み込んで、アンロード弁71及び流量調節弁72をファン駆動装置25Bとは別置きとすることで、ファン駆動装置25Bに方向切換弁73と流量調節弁72とアンロード弁71とを内蔵した場合に比べて、内部油路の内径を十分に確保することができ、油圧回路内の圧力損失を低減させることができる。
【0107】
また、第1内部油路95は、出力ポート94bと第2導入ポート94aとを接続するポンプ油路99と、ポンプ油路99から分岐して排出ポート94cに接続されるバイパス油路100とを含み、第2内部油路96は、ポンプ油路99から分岐し且つ排出ポート94cに接続されるアンロード油路101を含んでいる。
この構成によれば、流量調節弁72及びアンロード弁71を含むファン回転制御装置70を簡潔に形成することができる。
【0108】
また、前記ファン駆動装置25Bは、モータハウジング86に収容され且つ前記ファンモータ85に導入する作動油の向きを切り換える方向切換弁73を有する。
この構成によれば、流量調節弁72がファン駆動装置25Bとは別置きであるので、モータハウジング86に方向切換弁73を収容してもモータハウジング86に形成される内部油路の内径を十分に確保できる。
【0109】
また、本実施形態の作業機1は、回転することで気流を発生させる第1ファン25Aと、作動油によって駆動して第1ファン25Aを回転させるファンモータ85と、ファンモータ85に供給される作動油の流量を調節する流量調節弁72と、ファンモータ85を駆動する作動油の流れ方向を切り換えて第1ファン25Aの回転方向を切り換える方向切換弁73と、流量調節弁72及び方向切換弁7を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、ファンモータ85を駆動する作動油の流れ方向を切り換える際に流量調節弁72を徐々に開いていくと共に流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えて第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換える。
【0110】
この構成によれば、ファンモータ85の回転方向の切り換え時における油圧回路内のサージ圧の発生を良好に抑制することができる。
また、ファンモータ85に供給される作動油を排出するアンロード油路101と、アンロード油路101に設けられ、当該アンロード油路101を閉鎖する全閉位置71bと当該アンロード油路101を開放する全開位置71cとに切り換え可能なアンロード弁71と、を備え、制御装置60は、アンロード弁71を制御可能であり、流量調節弁72を全開し且つアンロード弁71を全開位置71cに切り換えて第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させる。
【0111】
この構成によれば、第1ファン25Aの回転数を十分に低下させることができる。
また、制御装置60は、アンロード弁71が全閉位置71bの状態で流量調節弁72を徐々に開いていくと共に流量調節弁72が全開になるとアンロード弁71を全開位置71cに切り換える。
この構成によれば、第1ファン25Aの回転数を低下させる際における流量調節弁72及びアンロード弁71による急減圧を抑制することにより、サージ圧の発生を抑制することができる。
【0112】
また、制御装置60は、第1ファン25Aの回転方向を切り換えてから所定時間経過後に、アンロード弁71を全閉位置71bに切り換えると共に流量調節弁72を徐々に閉じる。
この構成によれば、第1ファン25Aの回転数を上昇させる際における流量調節弁72及びアンロード弁71による急加圧を抑制することにより、サージ圧の発生を抑制することができる。
【0113】
また、第1ファン25Aによって冷却される冷却対象83であって、一方面側X1に第1ファン25Aが配置される冷却対象83と、冷却対象83の他方面側X2に配置された第2ファン26Aと、を備え、第1ファン25Aは、第1方向に回転することで冷却対象83の他方面側X2から一方面側X1に向かう方向の第1気流FL1を発生させると共に、第1方向とは逆方向である第2方向に回転することで冷却対象83の一方面側X1から他方面側X2に向かう方向の第2気流FL2を発生させ、制御装置60は、第1ファン25Aを第2方向に回転させる際に第2ファン26Aを第2気流FL2が発生する方向に回転させる。
【0114】
この構成によれば、第1ファン装置25による第2気流FL2と第2ファン装置26による第2気流FL2とで、冷却対象83に付着したダストを良好に吹き飛ばすことができる。
また、制御装置60は、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、又は当該状態の前或いは後で、第2ファン26Aの回転を行う。
【0115】
この構成によれば、第2ファン装置を停止させた状態で第2ファン26Aが第1ファン25Aと連れ回りするよう構成される場合において、第1ファン25Aの回転数を最低回転数に低下させた状態で、第2ファン26Aの回転を行うことで、電気回路にサージ圧が立つのを抑制することができる。
また、制御装置60は、第2ファン26Aの回転を行った後に、或いは第2ファン26Aの回転を行う前に、方向切換弁73に制御信号を出力して第1ファン25Aの回転方向を切り換えるようにしてもよい。
【0116】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
25A 第1ファン
26A 第2ファン
60 制御装置
71 アンロード弁
71b 全閉位置
71c 全開位置
72 流量調節弁
73 方向切換弁
83 冷却対象
85 ファンモータ
101 アンロード油路
FL1 第1気流
FL2 第2気流
X1 一方面側
X2 他方面側