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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20240213BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240213BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240213BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L21/88 J
H01L21/88 S
H01L21/88 Z
H01L27/04 H
H01L27/04 A
H01L25/08 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020152505
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022046884
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 佳弘
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0171226(US,A1)
【文献】特開2007-165461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248404(US,A1)
【文献】特開2017-152578(JP,A)
【文献】特表2014-523645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/822
H01L 25/07
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタ領域と非トランジスタ領域とを有する第1半導体チップと、
前記非トランジスタ領域に形成された複数の貫通ビアと、
を備える、半導体装置であって、
前記複数の貫通ビアは、
回路と電気的に接続されたアクティブビアと、
フローティング電位のフローティングビアと、
を含み、
平面視において、前記非トランジスタ領域は、前記第1トランジスタ領域と第2トランジスタ領域との間に配置されており、
平面視における前記第2トランジスタ領域と前記非トランジスタ領域との第2境界線に最も近い位置に配置されている複数の貫通ビアは、保護回路と電気的に接続された前記アクティブビアである、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視における前記第1トランジスタ領域と前記非トランジスタ領域との第1境界線に最も近い位置に配置されている複数の貫通ビアのうちの少なくとも一部の貫通ビアは、前記フローティングビアである、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1トランジスタ領域に形成された拡散層の配置密度は、前記非トランジスタ領域に形成された拡散層の配置密度よりも高い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1トランジスタ領域には、貫通ビアが形成されていない、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、前記第1半導体チップ上に積層された第2半導体チップを有し、
前記アクティブビアは、前記第2半導体チップと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記アクティブビアは、前記第2半導体チップに形成された回路に供給される電源の供給経路として機能する、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記第1半導体チップには、プラズマチャージアップに起因する前記アクティブビアの破壊を抑制するように構成された保護回路が形成されていない、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フローティングビアは、プラズマチャージアップに起因する前記アクティブビアの破壊を抑制する機能を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フローティングビアは、前記アクティブビアよりもプラズマチャージアップに起因する破壊が生じやすい位置に配置されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
平面視における前記第1トランジスタ領域と前記非トランジスタ領域との第1境界線は、平面視において前記非トランジスタ領域から前記第1トランジスタ領域に突出する凸部分を含み、
前記凸部分に前記フローティングビアが形成されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、複数の半導体チップを積層した積層構造を有し、
前記第1半導体チップは、前記積層構造を構成する前記複数の半導体チップのうちの最下層に配置される半導体チップである、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、貫通ビアを有する半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、プラズマチャージアップに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】神戸製鋼技報/Vol.52 No2 (Sep. 2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工知能用途やデータセンタ用途の半導体装置は、大規模の積和演算回路などのニューラルネットワークを搭載しており、多量のデータをリアルタイムに処理することが求められている。すなわち、人工知能用途やデータセンタ用途の半導体装置には、大量の画像データの保存や更新、大容量のニューラルネットワークの重みデータを高速で保存や更新する必要性から、広帯域で大容量のメモリデバイスを搭載されることが求められているとともに、さらには低電力化も要求されている。このことから、貫通ビアを介して、広帯域メモリなどの半導体チップを3次元的に積層した半導体装置が検討されている。
【0005】
ただし、半導体チップを積層するための貫通ビアを半導体チップに形成する際、プラズマチャージアップに起因する貫通ビアの破壊が問題点として顕在化している。このような貫通ビアの破壊が発生すると、半導体チップの不良を招くことになり、半導体装置の信頼性低下や製造歩留まりの低下につながる。したがって、半導体装置の信頼性向上や製造歩留まりの向上を実現するために、プラズマチャージアップに起因する貫通ビアの破壊を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態では、非トランジスタ領域に形成された複数の貫通ビアのうちの一部の貫通ビアは、フローティング電位の貫通ビアである。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】半導体装置の模式的な構成を示す平面図である。
図2図1のA-A線で切断した断面図である。
図3】貫通孔を形成する際に発生するプラズマチャージアップによって、貫通ビアの破壊が生じるメカニズムの一例を説明する図である。
図4】絶縁破壊が生じた貫通孔を示す写真である。
図5】貫通ビアにショート不良が発生する様子を模式的に示す図である。
図6】関連技術を説明する図である。
図7】「アクティブビア」と「フローティングビア」とを模式的に示す図である。
図8】「フローティングビア」が「アクティブビア」よりもプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じやすくなる定性的なメカニズムを説明する図である。
図9】プラズマの空間的な不均一性が生じる箇所を説明する図である。
図10】ベースチップに形成されているトランジスタ領域と非トランジスタ領域との境界領域近傍を模式的に示す図である。
図11図10のA-A線で切断した断面図である。
図12】ベースチップに形成されているトランジスタ領域と非トランジスタ領域との境界領域近傍を模式的に示す図である。
図13図12のA-A線で切断した断面図である。
図14】境界線の凸部分に配置されたフローティングビアによれば、絶縁破壊を生じやすくなる理由を説明する図である。
図15】ベースチップに形成されている第1トランジスタ領域と非トランジスタ領域との第1境界領域近傍および第2トランジスタ領域と非トランジスタ領域との第2境界領域近傍を模式的に示す図である。
図16図15のA-A線で切断した断面図である。
図17】応用例における工夫を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0010】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0012】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0014】
<半導体装置の構成>
本実施の形態における技術的思想は、例えば、人工知能用途やデータセンタ用途の半導体装置などのように、ロジックICから構成される中央演算処理部(CPU)とともに、広帯域で大容量のメモリデバイスも搭載する半導体装置に適用される。
【0015】
図1は、半導体装置の模式的な構成を示す平面図である。
【0016】
図1において、半導体装置1は、例えば、矩形形状をした配線基板10を有している。そして、この配線基板10上には、ロジックICから構成される中央演算処理部が形成された半導体チップ11と、複数のメモリチップを3次元的に積層した積層チップ構造体12とが搭載されている。この半導体装置1は、次世代ネットワークシステムや人工知能/データセンタアクセラレータ向けの高性能メモリ製品として実用化される。
【0017】
図2は、図1のA-A線で切断した断面図である。
【0018】
図2において、積層チップ構造体12に着目すると、この積層チップ構造体12は、最下層に配置されたベースチップ13と、ベースチップ13上に積層配置された複数のメモリチップ14から構成されている。このように半導体装置1では、大容量のメモリデバイスを実現するために、積層チップ構造体12を有している。そして、積層チップ構造体12を構成するそれぞれのチップは、貫通ビアTSVを介して電気的に接続されている。つまり、積層チップ構造体12のそれぞれのチップには、貫通ビアTSVが形成されており、この貫通ビアTSV介して、それぞれのチップに形成されている回路が電気的に接続されている。これにより、半導体装置1によれば、積層チップ構造体12によって、3次元的なメモリデバイスが実現される。このような積層チップ構造体12を有する半導体装置1によれば、半導体装置1の平面サイズを大きくすることなく、大容量のメモリデバイスを搭載できる利点が得られる。
【0019】
積層チップ構造体12の最下層に配置されているベースチップ13には、ベースチップ13自体に形成される集積回路とこの集積回路に第1電源電位を供給する第1電源配線およびグランド電位を供給するグランド配線だけでなく、積層されるメモリチップ14に形成される集積回路に第2電源電位を供給する第2電源配線も形成される。なぜなら、ベースチップ13は、積層チップ構造体12の最下層に配置されることから、ベースチップ13を経由して上方に配置されるメモリチップ14に第2電源電位が供給されるからである。すなわち、ベースチップ13に形成されている第2電源配線は、ベースチップ13に形成されている貫通ビアTSVと接続されており、この貫通ビアTSVを介して、メモリチップ14に形成されている集積回路に第2電源電位が供給される。さらに、メモリチップ14にも貫通ビアTSVが形成されており、この貫通ビアTSVを介して、複数のメモリチップ14間の電気的な接続が行われる。したがって、貫通ビアTSVは、積層チップ構造体12を構成するそれぞれのチップを電気的に接続するために必要不可欠であり、この貫通ビアTSVの信頼性の向上を図ることが、積層チップ構造体12を含む半導体装置1の信頼性を向上する観点から非常に重要である。
【0020】
特に、半導体装置1の製造歩留まりを向上する観点からは、ベースチップ13に形成される貫通ビアTSVの信頼性を向上することが重要である。なぜなら、半導体装置1では、ベースチップ13に複数のメモリチップ14を搭載して積層チップ構造体12が製造される。このため、ベースチップ13の製造歩留まりが低下すると、不良品となるベースチップ13上に搭載される複数の良品のメモリチップ14も無駄となる結果、大幅な製造コストの上昇を招くことになるからである。
【0021】
このことから、特に、ベースチップ13に着目して、貫通ビアTSVに関する技術的思想を説明する。ただし、本実施の形態における技術的思想は、ベースチップ13に形成される貫通ビアTSVに限定されるものではなく、例えば、メモリチップ14に形成される貫通ビアTSVにも幅広く適用することができる。
【0022】
<貫通ビアの信頼性に影響を与える改善の余地>
次に、貫通ビアの信頼性に影響を与える改善の余地について説明する。特に、貫通ビアの信頼性に影響を与える現象として、貫通孔を形成する際に発生するプラズマチャージアップに着目して、貫通孔を形成する際に顕在化する改善の余地について説明する。
【0023】
図3は、貫通孔を形成する際に発生するプラズマチャージアップによって、貫通ビアの破壊が生じるメカニズムの一例を説明する図である。なお、本明細書では、貫通孔に導電材料を埋め込んだ最終形態を「貫通ビア」と呼び、「貫通孔」と区別して使用する。
【0024】
図3において、例えば、シリコンからなる基板100の表面側(図3の下方)には、拡散層101が形成されるとともに、層間絶縁層となる酸化シリコン膜102が形成される。一方、基板100の裏面側(図3の上方)には、窒化シリコン膜103が形成されている。このような基板100に対して、貫通孔OPが形成される。
【0025】
この貫通孔OPは、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより形成される。具体的には、基板100の裏面側にレジスト膜を塗布した後、レジスト膜に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクとして、基板100をエッチングする。これにより、基板100に貫通孔OPが形成される。その後、パターニングしたレジスト膜を除去する。このレジスト膜を除去する工程は、アッシング工程と呼ばれる。
【0026】
ここで、例えば、図3に示すように、貫通孔OPのアスペクト比が高いと、電子とイオン(正イオン)の空間的な運動量の相違によって、貫通孔OPの上部周辺に電子が付着しやすくなって、貫通孔OPへの電子の流入が阻害される。一方、貫通孔OPの底面や側面には、正イオンやラジカルが選択的に蓄積される。特に、レジスト膜を除去するアッシング工程では、レジスト膜の分解によって生成される生成物(ポリマ)の内壁への再付着によって、貫通孔OPの内壁には、正イオンやラジカルが捉えられやすい。この結果、貫通孔OPの周辺で電子とイオンの平衡状態が崩れて、プラズマチャージアップが誘起される。この現象が、「電子シェーディング効果」と呼ばれる現象である。
【0027】
このような「電子シェーディング効果」が生じると、貫通孔OPの内部に蓄積した正イオンと貫通孔OPの上部周辺に付着した電子との間に高電界(図3の矢印参照)が発生する。そして、貫通孔OPの内壁においては、プラズマチャージアップに起因する高電界によって絶縁破壊が生じる。例えば、図4(a)および図4(b)は、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じた貫通孔を示す写真である。
【0028】
そして、絶縁破壊された貫通孔OPの内部に導電材料を埋め込んで貫通ビアを形成すると、絶縁破壊が生じた個所でショート不良が発生する。
【0029】
具体的に、図5は、貫通ビアにショート不良が発生する様子を模式的に示す図である。
【0030】
図5には、ベースチップに形成された電源配線VDDM1とグランド配線VSS1が図示されているとともに、ベースチップ上に搭載されたメモリチップに形成された電源配線VDDM2とグランド配線VSS2が図示されている。
【0031】
ベースチップに形成されている電源配線VDDM1は、メモリチップに形成されている回路に第2電源電位を供給するための配線であり、メモリチップに形成されている電源配線VDDM2と貫通ビアTSV1で電気的に接続されている。
【0032】
また、ベースチップに形成されているグランド配線VSS1は、グランド電位を供給する配線であり、メモリチップに形成されているグランド配線VSS2と貫通ビアTSV2で電気的に接続されている。
【0033】
なお、ベースチップには、電源配線VDDM1とグランド配線VSS1の他に、ベースチップ自体に形成されている回路に第2電源電位と異なる第1電源電位を供給する電源配線VDDLが形成されている。
【0034】
図5においては、例えば、ベースチップに形成されている電源配線VDDM1とメモリチップに形成されている電源配線VDDM2とを接続する貫通ビアTSV1に、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じると仮定する。この場合、絶縁破壊を生じている個所で、貫通ビアTSV1の周囲の基板(グランド電位)と貫通ビアTSV1の内部導体に加わる第2電源電位との間でショート不良が発生する。この結果、メモリチップに形成されている回路が破壊されてしまうことになる。
【0035】
一方、例えば、ベースチップに形成されているグランド配線VSS1とメモリチップに形成されているグランド配線VSS2とを接続する貫通ビアTSV2に、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じると仮定する。この場合、絶縁破壊を生じている個所で、貫通ビアTSV2の周囲の基板(グランド電位)と貫通ビアTSV2の内部導体とが導通することになる。ただし、貫通ビアTSV2の周囲の基板の電位と貫通ビアTSV2の内部導体の電位とは、ともにグランド電位であることから、ショート不良は発生しない。
【0036】
したがって、グランド電位が印加される貫通ビアTSV2においては、貫通孔OPを形成する際に絶縁破壊が生じても、絶縁破壊された箇所でのショート不良は発生しない。これに対し、グランド電位と異なる電位が印加される貫通ビアTSV1においては、貫通孔OPを形成する際に絶縁破壊が生じると、貫通ビアTSV2の周囲の基板(グランド電位)と貫通ビアTSV2の内部導体に加わる電位との間でショート不良が発生する。このことから、特に、グランド電位と異なる電位が印加される貫通ビアTSV2における絶縁破壊を抑制する必要があることがわかる。
【0037】
以上のようにして、例えば、「電子シェーディング効果」によって、貫通孔を形成する際にプラズマチャージアップが生じると、貫通孔の内壁に絶縁破壊が生じる結果、貫通孔に内部導体を埋め込んだ貫通ビアを介してショート不良が発生する場合がある。このことから、例えば、ベースチップの製造歩留まりを向上させるためには、貫通ビアの信頼性を向上することが必要であり、具体的には、ベースチップに形成されている貫通ビアの絶縁破壊を防止することが重要となる。この点に関し、プラズマチャージアップに起因する貫通ビアの絶縁破壊を低減するために、以下に示す関連技術がある。
【0038】
<関連技術の説明>
本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0039】
図6は、関連技術を説明する図である。
【0040】
図6において、ベースチップに形成されている電源配線VDDM1とグランド配線VSS1との間には、保護回路PCが設けられている。この保護回路PCは、貫通孔OPを形成する際に発生する電荷の蓄積をリークさせる機能を有している。この結果、保護回路PCを有する関連技術では、貫通孔OPにおけるプラズマチャージアップを抑制できることから、貫通孔OPでの絶縁破壊を防止することができる。これにより、関連技術によれば、プラズマチャージアップに起因する貫通ビアTSV1のショート不良を抑制できる。
【0041】
<関連技術に存在する改善の余地>
ところが、ベースチップに保護回路PCを搭載すると、ベースチップのチップ面積が増大する。特に、ベースチップに搭載される保護回路PCは、メモリチップに形成されている回路で使用されるメモリチップ専用電源に関する保護回路である。つまり、図6に示すように、メモリチップに第2電源電位を供給する電源配線VDDM1と接続される貫通ビアTSV1でのショート不良を防止するために保護回路PCが設けられる。このことは、本来ベースチップに形成される回路自体を保護する目的ではない余計な保護回路PCをベースチップに形成しなければならないことを意味する。すなわち、関連技術によれば、ベースチップには直接関係のない保護回路PCを設けなければならず、ベースチップにおけるチップ面積の増大が顕在化する。この点が、関連技術に存在する改善の余地である。
【0042】
一方で、ベースチップに保護回路PCを設けないと、プラズマチャージアップに起因する貫通ビアTSV1のショート不良が顕在化してしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態では、保護回路PCを設けることなく、メモリチップに第2電源電位を供給する電源配線VDDM1と接続される貫通ビアTSV1でのショート不良を防止するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0044】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、意図的にプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊を生じさせる貫通ビアを設けることにより、回路と接続されるその他の貫通ビアを絶縁破壊から保護する思想である。すなわち、本実施の形態における基本思想は、絶縁破壊しても回路のショート不良を引き起こさない貫通ビアを意図的に設けて、この貫通ビアにおいてプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊を生じさせることにより、回路と接続されるその他の貫通ビアの絶縁破壊を防止する思想である。この基本思想によれば、プラズマチャージアップが生じても、回路と接続される貫通ビアにおいて絶縁破壊が抑制される結果、回路と接続される貫通ビアでのショート不良が防止される。これにより、基本思想によれば、貫通ビアを含む半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0045】
具体的に、基本思想では、回路と接続される貫通ビアの他に、回路と接続されずにフローティング電位となる貫通ビアを意図的に設けて、このフローティング電位の貫通ビアで絶縁破壊を生じさせる。この結果、基本思想では、フローティング電位の貫通ビアでの意図的な絶縁破壊によって、電子と正イオンとの結合が生じる。このことは、電荷のアンバランスが解消されて、絶縁破壊を生じさせる高電界が緩和されることを意味し、これによって、回路と接続されるその他の貫通ビアを絶縁破壊から保護することができることになる。そして、回路と接続されていないフローティング電位の貫通ビアに絶縁破壊が発生しても、回路でのショート不良の発生とならない結果、半導体装置に形成されている回路を保護することができる。例えば、フローティング電位の貫通ビアに絶縁破壊が生じても、フローティング電位の貫通ビアは、この貫通ビアの周囲を囲む基板(グランド電位)と電気的に接続されることになるだけであるから、グランド電位と異なる電位とグランド電位との間のショート不良を招くことはない。したがって、本実施の形態における基本思想によれば、上述した関連技術のように保護回路を設けなくても、半導体装置に形成されている回路でのショート不良を効果的に抑制することができる。つまり、この基本思想は、ベースチップのチップサイズを大きくすることなく、貫通ビアの絶縁破壊に起因するショート不良を抑制できる点で優れた技術的思想ということができる。
【0046】
ここで、本明細書における貫通ビアの定義について説明する。
【0047】
まず、本明細書における貫通ビアは、「アクティブビア」と「グランドビア」と「フローティングビア」とに区別される。「アクティブビア」とは、半導体装置の完成状態において回路と接続される貫通ビアを意味し、例えば、電源電位が印加されるように構成されたビアや、グランド電位が印加されるように構成されたビアを含む総称として使用される。ただし、半導体装置の未完成状態においては、フローティング電位であっても、最終的な半導体装置の完成状態において回路と接続される貫通ビアであれば、「アクティブビア」に含まれる。そして、特に、「アクティブビア」のうち、グランド電位が印加されるように構成されているビアを「グランドビア」と呼ぶ。
【0048】
一方、「フローティングビア」とは、半導体装置の完成状態においても回路と接続されておらず、フローティング電位となるように構成された貫通ビアを意味する。さらに、「フローティングビア」に絶縁破壊が生じた結果、「フローティングビア」を囲む周囲の基板(グランド電位)と導通することになった「フローティングビア」を「ダメージビア」と呼び、「グランドビア」と区別する。
【0049】
このような定義に基づいて、本実施の形態における基本思想を表現しなおすと、本実施の形態における基本思想は、意図的にプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊を生じさせる「フローティングビア」を設けることにより、回路と接続されるその他の「アクティブビア」を絶縁破壊から保護する思想ということができる。そして、本実施の形態における基本思想が採用された半導体装置においては、複数の貫通ビアの中に、少なくとも「フローティングビア」と「ダメージビア」のいずれか一方が含まれる。すなわち、基本思想が具現化された半導体装置においては、「フローティングビア」のすべてが絶縁破壊して「フローティングビア」がすべて「ダメージビア」になる態様、「フローティングビア」の一部が絶縁破壊して「フローティングビア」と「ダメージビア」が混在する態様、すべての「フローティングビア」が絶縁破壊せずに残存する態様のいずれかが実現される。
【0050】
以下では、図面を参照しながら本実施の形態における基本思想を説明する。
【0051】
図7は、「アクティブビア」と「フローティングビア」とを模式的に示す図である。
【0052】
図7においては、ベースチップに形成されている電源配線VDDM1とメモリチップに形成されている電源配線VDDM2とが、貫通ビアTSV1で接続されている。このとき、メモリチップに形成されている電源配線VDDM2は、メモリチップに形成されている集積回路(メモリ回路など)に第2電源電位を供給する機能を有していることから、電源配線VDDM2は、回路と接続されていることになる。この結果、電源配線VDDM1と電源配線VDDM2とを接続する貫通ビアTSV1も回路と接続されることになる。したがって、電源配線VDDM1と電源配線VDDM2とを接続する貫通ビアTSV1は、「アクティブビア」となる。同様に、ベースチップに形成されているグランド配線VSS1とメモリチップに形成されているグランド配線VSS2とが、貫通ビアTSV2で接続されている。そして、グランド配線VSS1およびグランド配線VSS2は、集積回路にグランド電位を供給する機能を有していることから、グランド配線VSS1とグランド配線VSS2とを接続する貫通ビアTSV2も回路と接続される。この結果、貫通ビアTSV2は、「アクティブビア」となり、特に、グランド電位が印加されることから、貫通ビアTSV2は、「アクティブビア」のうちの「グランドビア」となる。
【0053】
一方、図7において、貫通ビアTSV3は、ベースチップに形成されている回路やメモリチップに形成されておらず、フローティング電位となることから、「フローティングビア」となる。ここで、本実施の形態における基本思想は、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊から「アクティブビア」を保護するため、意図的に絶縁破壊させる「フローティングビア」を設ける思想であるが、この思想を実行あらしめるためには、「フローティングビア」が「アクティブビア」よりも絶縁破壊しやすい必要がある。
【0054】
この点に関し、「フローティングビア」が「アクティブビア」よりも絶縁破壊しやすくなるためには、「フローティングビア」が、半導体装置の未完成状態だけでなく、半導体装置の完成状態においても回路と接続されておらず、フローティング電位にある点が重要である。つまり、「フローティングビア」は、フローティング電位にされているからこそ、「アクティブビア」よりも絶縁破壊しやすくなるのである。
【0055】
以下では、「フローティングビア」が「アクティブビア」よりもプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じやすくなる定性的なメカニズムについて説明する。
【0056】
図8は、「フローティングビア」が「アクティブビア」よりもプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じやすくなる定性的なメカニズムを説明する図である。
【0057】
図8には、アクティブビアAVの貫通孔OP1と、フローティングビアFVの貫通孔OP2とが示されている。ここで、アクティブビアAVは、回路と電気的に接続されていることから、例えば、図8に示すように、長く延在する配線WLと接続されることになる。一方、フローティングビアFVは、回路と電気的に接続されないことから、長く延在する配線と接続されていない。この相違点によって、フローティングビアFVの貫通孔OP2では、アクティブビアAVの貫通孔OP1よりも絶縁破壊が生じやすくなる。
【0058】
例えば、図8に示すように、アクティブビアAVの貫通孔OP1を形成する際、「電子シェーディング効果」によって、貫通孔OP1の内壁に正イオンが蓄積するが、アクティブビアAVの貫通孔OP1は、長く延在する配線WLと接続されているため、正イオンは、貫通孔OP1の内壁に局在することなく、配線WLにも拡散する。この結果、アクティブビアAVの貫通孔OP1の内壁に蓄積する正イオンの密度は小さくなる。このことは、貫通孔OP1の内部に高電界が発生しにくくなることを意味するから、アクティブビアAVの貫通孔OP1では、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じにくくなる。
【0059】
これに対し、フローティングビアFVの内壁にも「電子シェーディング効果」によって、正イオンが蓄積する。ここで、フローティングビアFVの貫通孔OP2は、回路と電気的に接続されていない。つまり、フローティングビアFVの貫通孔OP2は、長く延在するか配線と接続されていない。このことから、フローティングビアFVの貫通孔OP2の内壁に蓄積される正イオンは、拡散することができず、貫通孔OP2の内壁に留まることになる。この結果、フローティングビアFVの貫通孔OP2における正イオンの密度は大きくなる。このことは、貫通孔OP2の内部に高電界が発生しやすくなることを意味するから、フローティングビアFVの貫通孔OP2では、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じやすくなる。以上の定性的なメカニズムによって、フローティングビアFVの貫通孔OP2では、アクティブビアAVの貫通孔OP1よりも、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊が生じやすくなるのである。
【0060】
このようにして、本実施の形態における基本思想によれば、意図的にプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊を生じさせる「フローティングビア」を設けることにより、回路と接続されるその他の「アクティブビア」を絶縁破壊から保護することができる。
【0061】
特に、基本思想で設けられる「フローティングビア」は、2つの重要な技術的意義を有している。すなわち、1つ目の技術的意義は、フローティング電位であるがゆえに回路と接続するための配線と接続されない結果、「フローティングビア」では、「アクティブビア」よりも正イオンの電界密度が高くなって、「アクティブビア」よりも絶縁破壊しやすくなるということである。そして、2つ目の技術的意義は、「フローティングビア」に絶縁破壊が生じても、異電位間のショート不良が発生しないということである。
【0062】
基本思想では、「フローティングビア」に備わるこれらの2つの技術的意義に鑑み、意図的に絶縁破壊させるための「フローティングビア」を設けて、絶縁破壊するとショート不良が懸念される「アクティブビア」を保護しているのである。これにより、基本思想によれば、プラズマチャージアップに起因するショート不良から半導体装置に形成されている回路を保護することができる結果、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0063】
<本発明者が見出した新たな知見>
次に、本発明者が見出した新たな知見について説明する。
【0064】
プラズマチャージアップの原因の1つは、「電子シェーディング効果」であるが、その他の原因として、プラズマの空間的な不均一性が知られている。ただし、どのような場所でプラズマの空間的な不均一性が顕在化するかについては検討されていないのが現状である。この点に関し、本発明者は、鋭意検討した結果、プラズマの空間的な不均一性について、以下に示すような新規な知見を見出したので、この点について説明する。
【0065】
図9は、プラズマの空間的な不均一性が生じる箇所を説明する図である。
【0066】
図9には、例えば、ベースチップの一部領域を拡大した平面図が示されている。図9において、トランジスタ領域TRとは、例えば、電界効果トランジスタを含む集積回路が形成されている領域である。具体的に、このトランジスタ領域TRには、電界効果トランジスタのソース領域やドレイン領域となるアクティブ拡散層が形成されている。
【0067】
一方、非トランジスタ領域NTRとは、例えば、電界効果トランジスタを含む集積回路が形成されていない領域である。この非トランジスタ領域NTRにおいては、電界効果トランジスタが形成されていないことから、ソース領域やドレイン領域となるアクティブ拡散層を形成する必要はないが、ベースチップ全体の微細加工精度を高める観点から、この非トランジスタ領域NTRにも拡散層が形成されている。ただし、非トランジスタ領域NTRに形成される拡散層は、ソース領域やドレイン領域として機能しないことから、非アクティブ拡散層と呼ぶことにする。さらに、非トランジスタ領域NTRには、複数の貫通ビアTSVが形成されている。
【0068】
本発明者は、図9に示すようなトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界領域BRでプラズマの空間的な不均一性が顕在化することを新規に見出した。例えば、トランジスタ領域TRに形成されているアクティブ拡散層の配置密度と非トランジスタ領域NTRに形成されている非アクティブ拡散層の配置密度とは相違し、かつ、トランジスタ領域TRには、貫通ビアTSVが形成されていない。このことから、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRでは、拡散層の配置密度と貫通ビアTSVの配置密度が相違する。そして、本発明者は、拡散層の配置密度と貫通ビアTSVの配置密度との相違によって、トランジスタ領域TRに蓄積されるプラズマ電荷密度と非トランジスタ領域NTRに蓄積されるプラズマ電荷密度との間に不均一性が生じることを新規に見出した。すなわち、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの間の境界領域BRでは、拡散層の配置密度と貫通ビアTSVの配置密度との相違に起因するプラズマの空間的な不均一性が顕在化し、これによって、境界領域BRでは、プラズマの空間的な不均一性に基づく高電界が発生する。この結果、境界領域BRに最も近い位置に配置される貫通ビアTSVは、「電子シェーディング効果」だけでなく、プラズマの空間的な不均一性も加わって、絶縁破壊が生じやすくなる。
【0069】
この知見と本実施の形態における基本思想とを組み合わせることにより、以下に示す具体的態様が実現されており、続いて、この具体的態様について説明する。
【0070】
<具体的態様1>
図10は、ベースチップに形成されているトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界領域近傍を模式的に示す図である。ベースチップとは、例えば、複数の半導体チップを積層した積層構造を有する半導体装置において、積層構造を構成する複数の半導体チップのうちの最下層に配置される半導体チップである。このようなベースチップには、図10に示すように、電界効果トランジスタが形成されたトランジスタ領域TRと、電界効果トランジスタが形成されていない非トランジスタ領域NTRとが存在する。そして、図10に示すように、トランジスタ領域TRには、貫通ビアが形成されていない一方、非トランジスタ領域NTRには、複数の貫通ビアTSVが形成されている。ここで、非トランジスタ領域NTRに形成されている複数の貫通ビアTSVには、アクティブビアAVとフローティングビアFVとが存在する。このとき、平面視におけるトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界線BLに最も近い位置に配置されている複数の貫通ビアTSVのうちの少なくとも一部の貫通ビアは、フローティングビアFVとなっている。
【0071】
次に、図11は、図10のA-A線で切断した断面図である。
【0072】
図11に示すように、表面200aと裏面200bとを有する半導体基板200の表面側において、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRには、ともに拡散層が形成されている。トランジスタ領域TRに形成されている拡散層は、電界効果トランジスタのソース領域やドレイン領域として機能するアクティブ拡散層201である。一方、非トランジスタ領域NTRに形成されている拡散層は、ソース領域やドレイン領域として機能しない非アクティブ拡散層202である。ここで、トランジスタ領域TRに形成されたアクティブ拡散層201の配置密度は、非トランジスタ領域NTRに形成された非アクティブ拡散層202の配置密度よりも高い。
【0073】
アクティブ拡散層201は、第1層配線L1や第2層配線L2と接続されており、トランジスタ領域TRにおいては、電界効果トランジスタと第1層配線L1と第2層4配線L2の電気的な接続によって集積回路が構成される。すなわち、トランジスタ領域TRには、集積回路が形成されていることになる。一方、非トランジスタ領域NTRにおいては、アクティブビアAVとフローティングビアFVが形成されており、アクティブビアAVは、例えば、第1層配線L1や第2層配線L2と接続されている。そして、アクティブビアAVは、第1層配線L1や第2層配線L2を介して、トランジスタ領域TRに形成されている集積回路と電気的に接続されている。これに対し、フローティングビアFVは、第1層配線L1や第2層配線L2と電気的に接続されていない。すなわち、フローティングビアFVは、回路と接続されておらず、フローティング電位となっている。
【0074】
このように構成されているベースチップ上には、図示しないが、例えば、メモリチップが搭載される。そして、図11に示すアクティブビアAVは、メモリチップと電気的に接続されている。具体的に、アクティブビアAVは、メモリチップに形成された回路に供給される電源の供給経路として機能する。
【0075】
本実施の形態におけるベースチップには、プラズマチャージアップに起因するアクティブビアAVの破壊を抑制するように構成された保護回路が形成されていない。なぜなら、本実施の形態においては、プラズマチャージアップに起因するアクティブビアAVの破壊を抑制する機能を有するフローティングビアFVが設けられているからである。特に、フローティングビアFVは、アクティブビアAVよりもプラズマチャージアップに起因する破壊が生じやすい位置に配置されている。具体的には、図11に示すように、複数のフローティングビアFVのうちの少なくとも1つは、平面視におけるトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界線BLに最も近い位置に配置されている。
【0076】
<<具体的態様1の特徴>>
続いて、具体的態様1の特徴点について説明する。
【0077】
具体的態様1の特徴点は、例えば、図10および図11に示すように、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界線BLに最も近い位置に配置されている複数の貫通ビアTSVのうちの少なくとも1つがフローティングビアFVである点である。これにより、具体的態様1によれば、非トランジスタ領域NTRに形成されているアクティブビアAVをプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊から保護することができる。なぜなら、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRの境界線BL近傍では、「電子シェーディング効果」だけでなく、拡散層の配置密度と貫通ビアTSVの配置密度との相違に起因するプラズマの空間的な不均一性が顕在化する結果、プラズマチャージアップに起因する高電界が発生するからである。すなわち、このような高電界が発生する境界線BLに最も近い位置にアクティブビアAVよりも絶縁破壊しやすいフローティングビアFVを設けることによって、意図的にフローティングビアFVで絶縁破壊を生じさせることができる結果、それ以外のアクティブビアAVでの絶縁破壊を防止することができる。この場合、フローティングビアFVが絶縁破壊しても、フローティングビアFVは、回路と接続されていないことから回路のショート不良を招くこともないため、半導体装置の信頼性を確保できる。
【0078】
以上のことから、具体的態様1によれば、「電子シェーディング効果」とプラズマの空間的な不均一性によって最も高電界が発生しやすいトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界線BL近傍に意図的に絶縁破壊させるためのフローティングビアFVを設けることにより、絶縁破壊するとショート不良が懸念されるアクティブビアAVを保護している。この結果、具体的態様1によれば、絶縁破壊してもショート不良の懸念のないフローティングビアFVでの意図的な絶縁破壊によって、プラズマチャージアップに起因するショート不良から半導体装置に形成されている回路を保護することができる。すなわち、具体的態様によれば、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0079】
<具体的態様2>
次に、具体的態様2について説明する。
【0080】
図12は、ベースチップに形成されているトランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界領域近傍を模式的に示す図である。また、図13は、図12のA-A線で切断した断面図である。図12において、トランジスタ領域TRと非トランジスタ領域NTRとの境界線BLは、平面視において非トランジスタ領域NTRからトランジスタ領域TRに突出する凸部分300を含み、この凸部分300にフローティングビアFVが形成されている。
【0081】
これにより、具体的態様2によれば、フローティングビアFVにおいて意図的に絶縁破壊を生じさせることができる。以下に、この理由について説明する。
【0082】
図14は、境界線BLの凸部分300に配置されたフローティングビアFVによれば、絶縁破壊を生じやすくなる理由を説明する図である。図14において、境界線BLの凸部分300に配置されたフローティングビアFVには、図14の4つの矢印で示す方向からプラズマの空間的な不均一性に基づく高電界が印加される。これにより、境界線BLの凸部分300に配置されたフローティングビアFVは、その他の位置に配置された貫通ビアTSVよりも絶縁破壊しやすくなる。このことから、具体的態様2によれば、境界線BLの凸部分300に配置されたフローティングビアFVが絶縁破壊される確率が高くなるため、その他の位置に配置されたアクティブビアAVをプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊から効果的に保護できる。このように、具体的態様2では、境界線BLの形状を工夫することにより、効果的に高電界が生じる個所を作り出して、この個所にフローティングビアFVを配置することにより、フローティングビアFVでの絶縁破壊を高確率で生じさせることができる。この結果、具体的態様2によれば、プラズマチャージアップに起因するショート不良から半導体装置に形成されている回路を保護することができ、これによって、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0083】
<具体的態様3>
続いて、具体的態様3について説明する。
【0084】
図15は、ベースチップに形成されている第1トランジスタ領域TR1と非トランジスタ領域NTRとの第1境界領域近傍および第2トランジスタ領域TR2と非トランジスタ領域NTRとの第2境界領域近傍を模式的に示す図である。また、図16は、図15のA-A線で切断した断面図である。図15において、第1トランジスタ領域TR1と非トランジスタ領域NTRとの境界線BL1は、平面視において非トランジスタ領域NTRから第1トランジスタ領域TR1に突出する凸部分300を含み、この凸部分300にフローティングビアFVが形成されている。一方、第2トランジスタ領域TR2から非トランジスタ領域NTRとの境界線BL2には、凸部分が設けられていない。そして、非トランジスタ領域NTRには、フローティングビアFVの他に、アクティブビアAVとアクティブビアAV2が設けられている。アクティブAVは、回路と接続されているが、プラズマチャージアップからアクティブビアAVを保護する保護回路とは電気的に接続されていない貫通ビアである。これに対し、アクティブビアAV2は、プラズマチャージアップからアクティブビアAV2を保護する保護回路と電気的に接続されている貫通ビアである。ここで、保護回路と接続されているアクティブビアAV2は、少なくとも第2トランジスタ領域TR2と非トランジスタ領域NTRとの境界線BL2に最も近い位置に配置されている。例えば、図16に示すように、アクティブビアAV2は、第1層配線L1と第2層配線L2と第3層配線L3を介して、第1トランジスタ領域TR1に形成されている集積回路に含まれる保護回路と電気的にされている。
【0085】
このように構成されている具体的態様3によれば、以下に示す利点が得られる。すなわち、図15に示すように、プラズマチャージアップに起因する高電界が発生する境界線BL1の凸部分300にフローティングビアFVが形成されているため、意図的にフローティングビアFVで絶縁破壊を生じさせることができる。このことから、非トランジスタ領域NTRに形成されているアクティブビアAVを絶縁破壊から保護することができる。また、具体的態様3では、プラズマチャージアップに起因する高電界が発生する境界線BL2の近傍領域においては、保護回路と接続されたアクティブビアAV2が配置されているため、境界線BL2の近傍領域において、プラズマチャージアップに起因する高電界が発生しても、アクティブビアAV2の絶縁破壊を防止することができる。
【0086】
特に、具体的態様3では、境界線BL1の近傍と境界線BL2の近傍の両方に保護回路と接続された貫通ビアTSVを設けなくてもよいため、ベースチップに形成される保護回路の数を削減できる。このことから、具体的態様3によれば、ベースチップのチップサイズを大きくすることなく、貫通ビアTSVをプラズマチャージアップに起因する絶縁破壊から保護することができる(第1利点)。また、具体的態様3では、境界線BL1の近傍と境界線BL2の近傍の両方に凸部分300を設けなくてもよいため、トランジスタ領域(第1トランジスタ領域TR1および第2トランジスタ領域TR2)の占有面積を確保できるとともに、意図的に絶縁破壊させるためのフローティングビアFVの数を必要以上に設ける必要がなくなる利点が得られる(第2利点)。したがって、具体的態様3によれば、フローティングビアFVと保護回路と接続されたアクティブビアAV2を利用することによって、上述した第1利点と第2利点の両方を得ることができる。
【0087】
<応用例>
実施の形態では、プラズマチャージアップに起因する絶縁破壊を意図的に生じさせるために、フローティング電位のフローティングビアFVを設けている。このフローティングビアFVは、絶縁破壊が生じると、絶縁破壊を生じた個所を通じて、グランド電位の基板と導通することになり、「ダメージビア」となる。
【0088】
ここで、「ダメージビア」自体は、集積回路でのショート不良を引き起こさないため、そのままの状態で放置しておいても構わない。ただし、例えば、温度変化などによる経年変化によって、この「ダメージビア」を起点に半導体装置の信頼性が低下する可能性も考えられる。そこで、本応用例では、「ダメージビア」に起因する信頼性低下のポテンシャルを低減する工夫について説明する。
【0089】
図17は、応用例における工夫を説明する図である。
【0090】
図17において、フローティンビアに絶縁破壊が生じて形成されたダメージビアDVは、グランド電位が供給される再配線(裏面配線)RDLと接続されている。これにより、ダメージビアDVに存在する絶縁破壊個所が再配線RDLで修復されるとともに覆われることになる。この結果、応用例によれば、ダメージビアDVに存在する絶縁破壊個所が露出しなくなることから、半導体装置の信頼性低下を招くポテンシャルを低減できる。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体装置
10 配線基板
11 半導体チップ
12 積層チップ構造体
13 ベースチップ
14 メモリチップ
100 基板
101 拡散層
102 酸化シリコン膜
103 窒化シリコン膜
200 半導体基板
200a 表面
200b 裏面
201 アクティブ拡散層
202 非アクティブ拡散層
300 凸部分
AV アクティブビア
AV2 アクティブビア
BL 境界線
BL1 境界線
BL2 境界線
BR 境界領域
DV ダメージビア
FV フローティングビア
L1 第1層配線
L2 第2層配線
L3 第3層配線
NTR 非トランジスタ領域
OP 貫通孔
OP1 貫通孔
OP2 貫通孔
PC 保護回路
RDL 再配線
TR トランジスタ領域
TR1 第1トランジスタ領域
TR2 第2トランジスタ領域
TSV 貫通ビア
TSV1 貫通ビア
TSV2 貫通ビア
TSV3 貫通ビア
VDDL 電源配線
VDDM1 電源配線
VDDM2 電源配線
VSS1 グランド配線
VSS2 グランド配線
WL 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17