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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/487 20060101AFI20240213BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20240213BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240213BHJP
【FI】
G01S7/487
G01S17/894
G01S17/931
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020152720
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047025
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056567(JP,A)
【文献】特開2019-052978(JP,A)
【文献】特開2010-091378(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134707(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071465(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異な
前記制御部は、
前記第1反射光が極大となる第1ピーク候補を検出し、
前記第1ピーク候補に対応する時刻の近傍において、前記第1反射光が極大となる第2ピーク候補を更に検出し、
前記第1ピーク候補及び前記第2ピーク候補に基づき、前記第1反射光を同定する
ように構成された、
距離計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1ピーク候補に対応する時刻から前記第1間隔及び前記第2間隔の和の範囲において、前記第2ピーク候補を更に検出するように構成された、
請求項記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、
FIR(Finite impulse response)フィルタを含み、
前記FIRフィルタによって前記第1ピーク候補及び前記第2ピーク候補を検出するように構成された、
請求項記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記FIRフィルタのサンプリング間隔は、前記第1間隔及び前記第2間隔の短い方と等しい、
請求項記載の距離計測装置。
【請求項5】
前記第2ピーク候補の輝度は、前記第1ピーク候補の輝度より小さい、
請求項記載の距離計測装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記制御部は、前記第1画素と隣り合う第2画素において検出された第2反射光に更に基づいて、前記第1反射光を同定するように構成された、
離計測装置。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記第1パルス、前記第2パルス、及び前記第3パルスは、等しい輝度及び等しいパルス幅を有し
前記第1間隔及び前記第2間隔は、前記パルス幅と、前記第1画素のリカバリ応答の時定数との和より長い、
離計測装置。
【請求項8】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記第1間隔及び前記第2間隔は、前記計測された距離の精度より長い
離計測装置。
【請求項9】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記制御部は、前記第1反射光の輝度が第1閾値以上となる場合、前記第1出射光内の前記第1パルスが立ち上がる第1時刻と、前記第1反射光の輝度が前記第1閾値より小さい第2閾値を超える第2時刻との差に基づき、前記距離を計測するように構成された、
離計測装置。
【請求項10】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記制御部は、前記第1反射光の輝度が第1閾値以上となる場合、前記第1出射光内の前記第1パルスが立ち上がってから前記第3パルスが立ち下がるまでの間の第3時刻と、前記第1反射光の輝度が前記第1閾値より小さい第2閾値を上回ってから下回るまでの間の第4時刻との差に基づき、前記距離を計測するように構成された、
離計測装置。
【請求項11】
光源と、
前記光源からの出射光を投光し、前記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、
前記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、
前記同定された前記第1反射光の前記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測する
ように構成され、
前記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含み、
前記第1パルス及び前記第2パルスの第1間隔と、前記第2パルス及び前記第3パルスの第2間隔とは、異なり、
前記少なくとも1つのセンサは、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、第1端が第2電源ノードに接続され、第2端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部は、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、
離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LIDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LIDARは、センサから出力される光強度信号の時間変化に基づいて、LIDARから対象物までの距離を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-78602号公報
【文献】特開2010-48810号公報
【文献】特開2018-59826号公報
【文献】特公平5-79954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
計測距離のばらつきを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の距離計測装置は、光源と、上記光源からの出射光を投光し、上記出射光の反射光を受光するように構成された光学系と、上記受光した反射光を検出するように構成され、各々が少なくとも1つのセンサを含み、基板上の画素領域に配置された複数の画素と、制御部と、を備える。上記制御部は、第1画素において検出された第1反射光を第1出射光に対して同定し、上記同定された上記第1反射光の上記第1出射光に対する時間差に基づき、距離を計測するように構成される。上記第1出射光は、連続する第1パルス、第2パルス、及び第3パルスを含む。上記第1パルス及び上記第2パルスの第1間隔と、上記第2パルス及び上記第3パルスの第2間隔とは、異なる。上記制御部は、上記第1反射光が極大となる第1ピーク候補を検出し、上記第1ピーク候補に対応する時刻の近傍において、上記第1反射光が極大となる第2ピーク候補を更に検出し、上記第1ピーク候補及び上記第2ピーク候補に基づき、上記第1反射光を同定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の構成を説明するためのブロック図。
図2】第1実施形態に係る光検出器の平面レイアウトを説明するための平面図。
図3】第1実施形態に係る光検出器の構成を説明するための回路図。
図4】第1実施形態に係る画素の構成を説明するための回路図。
図5】アバランシェフォトダイオードの構造の一例とSPADの動作原理とを示す模式図。
図6】第1実施形態に係る距離計測装置のデジタル処理部の構成を説明するためのブロック図。
図7】第1実施形態に係る距離計測装置の第1フィルタ及び第2フィルタのハードウェア構成を説明するためのブロック図。
図8】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法を説明するための模式図。
図9】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法を説明するための模式図。
図10】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法を説明するための模式図。
図11】第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作を説明するためのフローチャート。
図12】第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作に関する各種信号の波形を説明するためのダイアグラム。
図13】第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作で第1フィルタが出力する出力データの波形を説明するためのダイアグラム。
図14】第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作で第1フィルタが出力する出力データの波形を説明するためのダイアグラム。
図15】第1実施形態に係る効果を説明するためのダイアグラム。
図16】第2実施形態に係る距離計測装置のデジタル処理部の構成を説明するためのブロック図。
図17】第2実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作を説明するためのフローチャート。
図18】第2実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作に関する各種信号の波形を説明するためのダイアグラム。
図19】第2実施形態の変形例に係る距離計測装置における距離計測動作に関する各種信号の波形を説明するためのダイアグラム。
図20】第2実施形態の変形例に係る距離計測装置のAFEの構成を説明するためのブロック図。
図21】その他の変形例に係る距離計測装置における出射パルスを説明するためのダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。
【0008】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置について説明する。第1実施形態に係る距離計測装置は、例えば、レーザを使用して対象物との距離を測定するLiDAR(Light detection and ranging)であり、半導体基板上に集積可能なフォトマルチプライヤ(Semiconductor photo-multiplier、特にSiPM:Silicon photo-multiplier)である光検出器を備える。
【0009】
1.1 構成
第1実施形態に係る距離計測装置の構成について説明する。
【0010】
1.1.1 距離計測装置
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置の構成を説明するためのブロック図である。
【0011】
図1に示すように、距離計測装置1は、対象物TGとの間の距離を測定可能に構成される。距離計測装置1は、例えば、図示しない車載システムの一部に相当し得る。対象物TGは、例えば、距離計測装置1が搭載された乗用車の前方、後方又は側方に存在する、他の乗用車、歩行者、及び障害物等の有形の物体である。
【0012】
距離計測装置1は、出射部10、光学系20、光検出器30、及び計測処理部40を備える。
【0013】
出射部10は、距離計測装置1が対象物TGとの間の距離の計測に用いるためのレーザ光L1を生成及び出射する。出射部10は、例えば、出射制御部11、ドライバ12及び13、並びに光源14を含む。
【0014】
出射制御部11は、例えば距離計測装置1の動作の基準となるクロックに基づき、出射トリガを生成する。出射トリガは、距離計測装置1から対象物TGに向けて照射されるレーザ光L1の出射タイミングに対応するパルス信号を含み、例えば、ドライバ12及び13、光検出器30、及び計測処理部40に送出される。
【0015】
ドライバ12は、出射制御部11からの出射トリガに応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光源14に供給する。つまり、ドライバ12は、光源14の電流供給源として機能する。
【0016】
ドライバ13は、出射制御部11からの出射トリガに応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光学系20内のミラー22に供給する。つまり、ドライバ13は、ミラー22の電流供給源として機能する。
【0017】
光源14は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源14は、ドライバ12から供給された駆動電流に基づいて、レーザ光L1を間欠的に発光(出射)する。レーザ光L1は、後述する光学系20を介して対象物TGに照射される。
【0018】
光学系20は、光源14から入射したレーザ光L1を対象物TGに出射し、対象物TGからのレーザ光L1の反射光L2を受光する。光学系20は、例えば、レンズ21、ミラー22、及びレンズ23を含む。
【0019】
レンズ21は、光源14から出射されたレーザ光L1の光路上に配置される。レンズ21は、当該レンズ21を通過するレーザ光L1をコリメートして、ミラー22に導光する。
【0020】
ミラー22は、ドライバ13から供給される駆動電流に基づいて駆動し、レンズ21から入射したレーザ光L1を反射する。例えば、ミラー22の反射面は、1つの軸、又は互いに交差する2つの軸を中心として回転可能に構成される。ミラー22から反射されたレーザ光L1は、対象物TGに向けて、距離計測装置1の外部に出射される。
【0021】
レンズ23は、対象物TGから反射された反射光を集光して、集光した反射光を光検出器30に導光する。つまり、レンズ23は、距離計測装置1から照射されたレーザ光L1の反射光(レーザ光)L2を含む外部の光を光検出器30に集める。
【0022】
なお、レーザ光L1及びL2は、図1に示されるように距離計測装置1と対象物TGとの間において互いに異なる光路を形成してもよいし、図1とは異なり、同じ光路を形成してもよい。すなわち、距離計測装置1は、出射部10から出射されるレーザ光L1の光軸と、光検出器30が受光するレーザ光L2の光軸とが互いに異なる非同軸光学系を有してもよいし、2つの光軸が一致する同軸光学系を有してもよい。
【0023】
光検出器30は、例えば、ロウ及びカラムによって規定される2次元マトリクス状の画素領域に複数の画素が配置された受光部31を含む。光検出器30は、出射制御部11から受けた出射トリガに基づき、受光部31内の複数の画素の一部を、出射トリガ毎に、受光領域として選択する。
【0024】
受光部31は、レンズ23を介して入射したレーザ光L2を受光する。そして、受光部31は、受光した反射光L2の光強度に基づいて電気信号(アナログ信号)を生成し、当該アナログ信号を画素単位で計測処理部40に出力する。1回の距離計測動作期間において、受光部31は、レーザ光L2の複数(例えば3個の)のパルスを受光する。このため、受光部31は、1回の距離計測動作期間において、複数個のレーザ光L2のパルスを含む1つのアナログ信号を生成し、計測処理部40に出力する。光検出器30の詳細については後述する。
【0025】
計測処理部40は、光検出器30から受けた画素単位のアナログ信号をデジタル信号に変換した後、当該デジタル信号に基づいて距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。具体的には、例えば、計測処理部40は、AFE(Analog front end)41、及びデジタル処理部42を含む。
【0026】
AFE41は、例えばトランスインピーダンス増幅器(TIA:Trans-impedance amplifier)、アナログ-デジタル変換器(ADC:Analog to digital convertor)、及び時間-デジタル変換器(TDC:Time to digital convertor)等を含む。AFE41は、光検出器30から入力されたアナログ信号を増幅した後、当該増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。AFE41は、生成したデジタル信号をデジタル処理部42に送出する。
【0027】
デジタル処理部42は、出射制御部11から受けた出射トリガに基づき、レーザ光L1の出射タイミングを取得すると共に、AFE41から受けたデジタル信号に基づき、反射光L2の入射タイミングを取得する。デジタル処理部42は、上述した出射タイミングと入射タイミングとに基づいて、レーザ光L1及び反射光L2の飛行時間を算出する。そして、デジタル処理部42は、当該飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。なお、反射光L2の入射タイミングは、例えば、デジタル信号の立ち上がり時間に基づいて決定されてもよいし、デジタル信号のピーク時刻に基づいて決定されてもよい。このような距離の計測方法は、ToF(Time of flight)方式とも呼ばれる。
【0028】
デジタル処理部42は、計測された距離計測データを後段の画像処理回路(図示せず)へと送出する。後段の画像処理回路は、例えば、当該距離計測データに基づき、距離計測装置1の計測対象の領域にわたって距離情報がマッピングされた画像データを生成する。生成された画像データは、例えば距離計測装置1を備える車両等の制御プログラムによって参照される。
【0029】
以上のような構成により、距離計測装置1は、対象物TGとの間の距離を計測することができる。
【0030】
1.1.2 光検出器
次に、第1実施形態に係る光検出器の構成について説明する。
(平面レイアウト)
図2は、第1実施形態に係る光検出器の平面レイアウトの一例を示す。
【0031】
図2に示すように、受光部31は、例えば、半導体基板上において、ロウ方向及びカラム方向に広がるマトリクス状に配置される複数の画素PXを含む。複数の画素PXは、カラム方向に対応づけられたカラムアドレスと、ロウ方向に対応づけられたロウアドレスと、によって位置が特定可能に配置される。
【0032】
図2の例では、受光部31において、ロウ方向に沿ってi番目、かつカラム方向に沿ってj番目の画素PXが、画素PX<i、j>として示される(0≦i≦M、0≦j≦N、M及びNは任意の整数)。以下では、説明の便宜上、ロウ方向に沿ってi番目に位置する複数の画素PX<i>はロウアドレス<i>に対応し、カラム方向に沿ってj番目に位置する複数の画素PX<j>はカラムアドレス<j>に対応するものとして説明する。
【0033】
複数の画素PXの各々は、少なくとも1つの光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。以下では、単一光子アバランシェダイオードのことを“SPAD”とも呼ぶ。SPADの機能の詳細については後述する。画素PXに複数のSPADが設けられる場合、複数のSPADは、例えば画素PX内においてロウ方向及びカラム方向に広がったマトリクス状に配置される。複数のSPADを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0034】
尚、光検出器30に含まれる画素PXとSPADとのそれぞれの個数は、図2に示された個数に限定されず、任意の個数に設計され得る。画素PXとSPADとのそれぞれの平面形状は、必ずしも正方形でなくても良い。画素PXの形状は、各画素PXに含まれるSPADの形状及び配置に応じて変化し得る。例えば、各画素PXにおいて、ロウ方向に並ぶSPADの個数と、カラム方向に並ぶSPADの個数とは異なっていても良い。光検出器30は、異なる形状の画素PXを利用しても良い。SPADの形状は、その他の形状であっても良く、例えば長方形であっても良い。
(光検出器の回路構成)
次に、第1実施形態に係る光検出器の回路構成について説明する。
【0035】
図3は、第1実施形態に係る光検出器の構成を示す回路図である。図3では、受光部31内の6つの画素PX<m,n-1>、PX<m,n>、PX<m,n+1>、PX<m+1,n-1>、PX<m+1,n>、及びPX<m+1,n+1>と、当該6つの画素PXに接続され得る選択線群が示される(0≦m≦M-1、1≦n≦N-1)。
【0036】
図3に示すように、全ての画素PXは、互いに異なる1つのロウ選択線row_sel及び1つのカラム選択線col_selの組に対応づけられる。すなわち、任意の1つの画素PXの第1端及び第2端はそれぞれ、対応するロウ選択線row_sel及び対応するカラム選択線col_selに接続される。このため、1つのロウ選択線row_sel及び1つのカラム選択線col_selの組を選択することにより、1つの画素PXを選択することができる。
【0037】
より具体的には、ロウアドレス<m>に対応づけられた複数の画素PX<m>(…、PX<m,n-1>、PX<m,n>、PX<m,n+1>、…)の各々の第1端は、ロウ選択線row_sel<m>に共通接続される。同様に、ロウアドレス<m+1>に対応づけられた複数の画素PX<m+1>(…、PX<m+1,n-1>、PX<m+1,n>、PX<m+1,n+1>、…)の各々の第1端は、ロウ選択線row_sel<m+1>に共通接続される。
【0038】
また、カラムアドレス<n-1>に対応づけられた複数の画素PX<n>(…、PX<m,n-1>、PX<m+1,n-1>、…)の各々の第2端は、カラム選択線col_sel<n-1>に共通接続される。同様に、カラムアドレス<n>に対応づけられた複数の画素PX<n>(…、PX<m,n>、PX<m+1,n>、…)の各々の第2端は、カラム選択線col_sel<n>に共通接続される。カラムアドレス<n+1>に対応づけられた複数の画素PX<n+1>(…、PX<m,n+1>、PX<m+1,n+1>、…)の各々の第2端は、カラム選択線col_sel<n+1>に共通接続される。
(受光部の回路構成)
次に、第1実施形態に係る受光部の回路構成について説明する。
【0039】
図4は、第1実施形態に係る受光部の備える画素の回路構成の一例を示している。図4では、一例として、画素PX<m,n>の回路構成が示される。
【0040】
図4に示すように、画素PX<m,n>は、例えば、複数のSPAD、並びにトランジスタTr1、Tr2、Tr3、及びTr4を含む。複数のSPADの各々は、アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqを含む。例えば、トランジスタTr1及びTr2はn型のMOSトランジスタであり、トランジスタTr3及びTr4はp型のMOSトランジスタである。
【0041】
複数のSPADは、高電位ノードN0と低電位電源ノードSUBとの間に並列接続される。そして、複数のSPADの各々について、アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqは、高電位ノードN0と低電位電源ノードSUBとの間に直列に接続される。具体的には、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが、低電位電源ノードSUBに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードは、クエンチ抵抗Rqの一端に接続される。クエンチ抵抗Rqの他端が、高電位ノードN0に接続される。
【0042】
距離計測装置1の距離計測動作において、高電位ノードN0の電位は、低電位電源ノードSUBに印加される電圧よりも高い。つまり、距離計測動作において、逆バイアスが、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される。高電位ノードN0は、SPADに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDによる光検出結果の出力端に対応する。
【0043】
トランジスタTr1は、ノードN0に接続された第1端と、電圧VSSが供給される第2端と、ロウ選択線row_sel<m>に接続された制御端と、を含む。トランジスタTr2は、ノードN0に接続された第1端と、電圧VSSが供給される第2端と、カラム選択線col_sel<n>に接続された制御端と、を含む。電圧VSSは、高電位ノードN0より低く、低電位電源ノードSUBよりも高い電圧であり、例えば-5Vである。なお、上記した電圧値は一例であり、電圧VSSは接地電圧、例えば0Vであってもよい。
【0044】
トランジスタTr3は、ノードN0に接続された第1端と、トランジスタTr4の第1端に接続された第2端と、ロウ選択線row_sel<m>に接続された制御端と、を含む。トランジスタTr4は、出力ノードOUT<m,n>に接続された第2端と、カラム選択線col_sel<n>に接続された制御端と、を含む。
【0045】
以上のように構成されることにより、ロウ選択線row_sel<m>及びカラム選択線col_sel<n>がいずれも選択された場合に、画素PX<m,n>内の複数のSPADにおける光検出結果に対応する出力信号IOUTを、出力ノードOUT<m,n>に出力することができる。また、ロウ選択線row_sel<m>及びカラム選択線col_sel<n>の少なくとも一方が選択されない場合には、出力信号IOUTを出力ノードOUT<m,n>を介することなく、排出することができる。
【0046】
なお、画素PXの回路構成は、以上で説明した構成に限定されない。例えば、クエンチ抵抗Rqは、トランジスタに置き換えられても良い。高電位ノードN0には、クエンチ用のトランジスタがさらに接続されても良い。トランジスタTr1~Tr4は、出力信号IOUTを選択的に出力可能であれば、その他のスイッチング素子であっても良い。
【0047】
1.1.3 SPAD
以下に、図5を参照して、アバランシェフォトダイオードAPDの構成の一例と、SPADの動作原理とについて説明する。図5は、アバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例とSPADの動作原理との概略を示す。
【0048】
まず、アバランシェフォトダイオードAPDの構成について説明する。アバランシェフォトダイオードAPDは、例えば、基板90、p型半導体層91、p型半導体層92、及びn型半導体層93を含んでいる。
【0049】
基板90は、例えばp型の半導体基板である。基板90上に、p型半導体層91、p型半導体層92、及びn型半導体層93が、この順番に積層されている。p型半導体層92におけるp型不純物の濃度は、p型半導体層91におけるp型不純物の濃度よりも高い。n型半導体層93は、n型不純物がドープされた半導体層である。例えば、n型半導体層93上には、図示が省略された電極が接続される。
【0050】
次に、SPADの動作原理について説明する。第1実施形態に係る距離計測装置1では、基板90側が低電位電源ノードSUBに対応し、n型半導体層93が高電位側(カソード)に対応している。
【0051】
距離計測装置1の距離計測動作において、アバランシェフォトダイオードAPDには、基板90側に負の高い電圧が印加される。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加され、p型半導体層92とn型半導体層93との間に強い電界が発生する(図5(1))。一方、p型半導体層92とn型半導体層93との接合(すなわち、PN接合)領域の付近に、空乏層が形成される(図5(2))。距離計測動作では、この状態のアバランシェフォトダイオードAPDが、光信号を検知可能な状態に対応している。
【0052】
そして、アバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光のエネルギーの一部が空乏層に到達する(図5(3))。空乏層に光が照射されると、空乏層において電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する場合がある(図5(4))。空乏層に発生したキャリアは、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電界によりドリフトする(図5(5))。例えば、発生したキャリアのうち正孔は、基板90側に向かって加速される。一方で、発生したキャリアのうち電子は、n型半導体層93側に向かって加速される。
【0053】
型半導体層93側に向かって加速された電子は、PN接合の付近に発生した強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電気と正孔の対を発生させる。アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合、このような電子と正孔の対の発生が繰り返される。このような現象は、アバランシェ降伏と呼ばれている(図5(6))。
【0054】
アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(図5(7))。SPADの場合は、そのままでは放電が止まらない。このような放電は、ガイガー放電と呼ばれている。ガイガー放電が発生すると、SPADの出力ノードを通じて電流が流れる。これにより、ガイガー放電とその後のリカバリに関わる電気信号が、アバランシェフォトダイオードAPD、すなわち1つのSPADから出力される。
【0055】
また、アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。その結果、電圧降下が、SPADの出力ノードにおいて発生する(図5(8))。SPADにおけるこのような電圧降下は、クエンチングとも呼ばれる。電圧降下によって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合における容量の充電がなされ、リカバリ電流が流れる。ガイガー放電が止まり、更にアバランシェ現象も終わって暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDは、次の光を検知することが可能な状態に戻る。
【0056】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える受光部31は、ガイガーモードで使用されるアバランシェフォトダイオードAPDを有している。そして、これらのアバランシェフォトダイオードAPDは、光入射に応じてアバランシェ降伏を起こし、光検出結果に対応する電気信号を出力する。これにより、受光部31は、フォトン単位の受光を検知して、電気信号に変換することが出来る。
【0057】
尚、SPADユニットSUに使用されるアバランシェフォトダイオードAPDの構造は、以上で説明された構造に限定されない。例えば、p型半導体層92は省略されても良い。p型半導体層91、p型半導体層92、及びn型半導体層93のそれぞれの厚さは、適宜変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、基板90との境界近傍に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDの構造において、p型半導体層とn型半導体層とが反転されて構成されても良い。
【0058】
1.1.4 デジタル処理部

次に、第1実施形態に係るデジタル処理部の構成について説明する。
【0059】
図6は、第1実施形態に係る距離計測装置のデジタル処理部の構成を示すブロック図である。
【0060】
図6に示すように、受光部31から出力された画素PX毎のアナログ信号の時系列データが、AFE41によってデジタル変換されて入力される。デジタル処理部42は、前処理部71、メモリ72、平均化部73、第1フィルタ74、第1ピーク候補検出部75、第2フィルタ76、第2ピーク候補検出部77、信頼度算出部78、及び距離計測部79を含む。
【0061】
前処理部71は、例えばFIR(Finite impulse response)フィルタ及びビットシフタを含み、AFE41から入力されたデジタル信号に対して前処理を実行する。具体的には、前処理部71は、FIRフィルタによって、デジタル信号を整形する。そして、前処理部71は、FIRフィルタによって大きくなった信号の値の桁をビットシフタによって小さくする。これにより、データの格納に必要なメモリ量の増加を抑制しつつ、デジタル信号のうち複数のパルス成分を整形することができる。前処理部71によって生成されたデータは、メモリ72に記憶される。
【0062】
メモリ72は、前処理部71によって生成されたデータを、画素領域において隣り合う複数の画素PX毎に独立に記憶する。メモリ72は、まず、1回(1画素)の計測に関わる、AFE41内のADCが出力する時系列のサンプリングデータを格納する。また、メモリ72は、前処理部71からのデータに対応するレーザ光L2の受光期間において受光した環境光データ、及び後述する平均化部73において生成される平均化処理後データのピーク値等を、前処理部71によって生成されたデータと関連づけて記憶する。メモリ72は、距離計測動作の対象画素に対応するデータを、当該対象画素に隣り合う複数の画素に対応するデータと併せて、平均化部73に出力する。
【0063】
平均化部73は、距離計測動作の対象画素に対応するデータを、当該対象画素の近傍の画素に対応する複数のデータを使用して平均化する、又は積算する処理(以下、「平均化処理」とも呼ぶ)を実行する。平均化処理により、対象画素に対応するデータに含まれるノイズ成分を、信号成分に対して減少させることができる。平均化部73は、生成した平均化処理後データを、入力データとしてFIRINを第1フィルタ74及び第2フィルタ76に送出する。
【0064】
第1フィルタ74は、例えばFIRフィルタであり、平均化部73からの入力データFIRIN内の複数個のパルス成分のうち、予め決定された1つのパルス成分に対応する時刻に最も大きなピークが立つように設定されたフィルタ関数Fを有する。第1フィルタ74は、フィルタ関数Fを用いて入力データFIRINをサンプリング時刻全域にわたってフィルタリングし、出力データFIR1OUTを生成する。第1フィルタ74は、生成した出力データFIR1OUTを第1ピーク候補検出部75に出力する。
【0065】
第1ピーク候補検出部75は、出力データFIR1OUTをサーチし、当該出力データFIR1OUTから、予め定めされたq個のピークに対応するサンプリング時刻を第1ピーク候補として検出する。qは、任意の自然数が適用可能であるが、例えば2が設定され得る。第1ピーク候補検出部75は、検出したq個の第1ピーク候補を、第2フィルタ76及び信頼度算出部78に送出する。
【0066】
第2フィルタ76は、FIRフィルタであり、例えば、第1フィルタ74と同じフィルタ関数Fを有する。第2フィルタ76は、フィルタ関数Fを用いて入力データFIRINをフィルタリングし、出力データFIR2OUTを生成する。なお、第1フィルタ74が入力データFIRINをサンプリング時刻全域にわたってフィルタリングするのに対して、第2フィルタ76は、第1ピーク候補検出部75から受けたq個の第1ピーク候補の各々の近傍の時刻領域にわたって、入力データFIRINを選択的にフィルタリングする。第2フィルタ76は、生成した出力データFIR2OUTを第2ピーク候補検出部77に出力する。
【0067】
第2ピーク候補検出部77は、出力データFIR2OUTをサーチし、当該出力データFIR2OUTから、第1ピーク候補と同数(q個)のピークに対応するサンプリング時刻を第2ピーク候補として検出する。具体的には、第2ピーク候補検出部77は、q個の第1ピーク候補の各々について、その近傍において最も出力データFIR2OUTの値が大きいサンプリング時刻を第2ピーク候補として検出する。第2ピーク候補検出部77は、検出したq個の第2ピーク候補を、信頼度算出部78に送出する。
【0068】
信頼度算出部78は、第1ピーク候補検出部75から受けたq個の第1ピーク候補と、第2ピーク候補検出部77から受けたq個の第2ピーク候補と、に基づき、当該2q個のピーク候補のサンプリング時刻における入力データFIRINの信頼度を算出する。信頼度算出部78は、例えば、信頼度の算出に際して、当該入力データFIRINに対応する距離計測動作の対象画素PXの隣接画素PXにおける入力データFIRINとの整合性を考慮する。すなわち、信頼度算出部78は、2q個のピーク候補のうち、隣接画素PXにおいて高い信頼度が算出されたサンプリング時刻に対応するピーク候補に対して、より高い信頼度を算出する。信頼度算出部78は、算出されたピーク候補毎の信頼度に基づき、最も信頼度の高いピーク候補を真のピークとして抽出し、当該真のピークのサンプリング時刻を距離計測部79に送出する。
【0069】
距離計測部79は、信頼度算出部78から受けた真のピークのサンプリング時刻と、出射制御部11から受けた出射トリガと、に基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測し、距離計測データを生成する。距離計測部79は、生成された距離計測データを外部の画像処理回路へと送出する。
【0070】
図7は、第1実施形態に係る距離計測装置の第1フィルタ及び第2フィルタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0071】
図7に示すように、第1フィルタ74及び第2フィルタ76の各々は、ハードウェアとして、例えば図7のような構成により実現される。具体的には、第1フィルタ74及び第2フィルタ76の各々は、3個のレジスタ81(81_1、81_2、81_3)、4個の乗算器82(82_0、82_1、82_2、82_3)、及び3個の加算器83(83_1、83_2、83_3)を含む。
【0072】
レジスタ81_1~81_3の各々は、入力端に供給される1つ前のサイクル(サンプリング時刻)のデータを保持する機能を有する。具体的には、レジスタ81_1は、入力データFIRINが供給される入力端と、レジスタ81_2の入力端及び乗算器82_1の入力端に共通接続された出力端と、を有する。レジスタ81_2は、レジスタ81_3の入力端及び乗算器82_2の入力端に共通接続された出力端を有する。レジスタ81_3は、乗算器82_3の入力端に接続された出力端を有する。
【0073】
乗算器82_0~82_3の各々はそれぞれ、入力端に供給されるデータを所定の係数H0~H3で増幅、又は乗算し、出力端から出力する機能を有する。具体的には、乗算器82_0は、入力データFIRINが供給される入力端と、加算器83_1の第1入力端に接続された出力端と、を有する。乗算器82_0の係数H0には例えば“1”が設定される。乗算器82_1は、加算器83_2の第1入力端に接続された出力端を有する。乗算器82_0の係数H1には例えば“1”が設定される。乗算器82_2は、加算器83_3の第1入力端に接続された出力端を有する。乗算器82_2の係数H2には例えば“0”が設定される。乗算器82_3は、加算器83_3の第2入力端に接続された出力端を有する。乗算器82_3の係数H3には例えば“1”が設定される。
【0074】
加算器83_1~83_3の各々は、第1入力端に供給されるデータと第2入力端に供給されるデータとを加算するデータを出力する機能を有する。具体的には、加算器83_3は、加算器83_2の第2入力端に接続された出力端を有する。加算器83_2は、加算器83_1の第2出力端に接続された出力端を有する。加算器83_1は、出力データFIR1OUT又はFIR2OUTを出力する出力端を有する。
【0075】
以上のような構成により、出力データFIR1OUT及びFIR2OUTは、3サイクル分の入力データFIRINによって決定される。
【0076】
なお、図6図7を含む)の処理は、実際には、パイプラインに基づき並列処理される。具体的には、メモリ72の数は、平均化処理に必要な数に加え、更にもう1つ多く設けられる。これにより、メモリ72への書込みと読出しが、同じパイプラインステージにて並列処理される。ここで、平均化処理に必要な数とは、例えばカラム方向に沿って4画素の積算をする場合、4個である。すなわち、平均化処理に必要なメモリ72の数が4個の場合のメモリ72の総数は5個となる。以下、5個のメモリ72を、それぞれメモリ72_1、72_2、72_3、72_4、及び72_5と区別する。
【0077】
ある画素のデータをメモリ72_1に格納した場合、次の画素のデータはメモリ72_2に格納される。同様に、画素のデータは、メモリ72_2の次にはメモリ72_3に格納され、メモリ72_3の次にはメモリ72_4に格納され、メモリ72_4の次にはメモリ72_5に格納される。そして、画素のデータは、メモリ72_5の次にはメモリ72_1に格納される。このように、メモリ72_1~72_5は、サイクリックに流用される。
【0078】
また、平均化処理においては、SAT(Smart accumulation technique)を用いてもよい。SATでは、近傍の画素のデータのうち、その環境光の強さとピークの大きさとの類似性が弱い画素のデータは積算しない。当該環境光とピークのデータは、本実施形態では、メモリ72に記憶される。SATにより、同じ対象からの反射光を選んで積算し、他の対象からの反射光(ノイズ)を除外できる。本実施形態では、後述の通り複数のパルスを用いるため、信号を受光する時間が長く、他の対象からの反射光が重なる可能性が高いが、SATにより、その影響を排除することができる。SATについては、例えば、米国特許出願公開2017/0363740号公報(米国特許出願15/625,138号)に記載されている。当該特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0079】
1.2 動作
次に、第1実施形態に係る距離計測装置の動作について説明する。
【0080】
1.2.1 スキャン動作
まず、第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光L1のスキャン方法の一例について説明する。図~図10は、対象物TGに対した互いに異なるスキャン方法を適用した場合におけるレーザ光L1の照射方法を示す。
【0081】
の例では、距離計測装置1が、紙面の右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンし、紙面の左方向にスキャンした後に、再び折り返して右方向にスキャンする場合が示される。距離計測装置1は、このような左右方向のスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば2軸のミラーを使用することが考えられる。
【0082】
の例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いはシリンドリカルレンズを追加することにより、レーザ光L1を対象物TGの縦方向に沿った一連の部分に同時に照射しつつ、当該レーザ光L1を紙面右方向にスライドさせる場合が示される。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、回転ミラーや1軸のミラーを使用することが考えられる。また、ミラーを使用せずに、距離計測装置1をそのまま回転させても良い。
【0083】
10の例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いは異方性のある非球面コリメータレンズを用いて縦一列に複数の画素を同時に照射しつ、当該レーザ光L1を横方向にスライドさせるスキャン動作を、垂直方向に位置がずらして複数回繰り返し実行する場合が示される。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー、及び2軸のミラー等が挙げられる。
【0084】
以上で例示されたスキャン方法は、機械的なものであるが、別のスキャン方法としては、OPA方法(Optical Phased Array)が知られている。第1実施形態に係る距離計測装置1による効果は、光をスキャンする方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いてレーザ光L1のスキャンを実行しても良い。以下では、説明を簡潔にするために、距離計測装置1が、図7に示された方法を用いてレーザ光L1のスキャンを実行する場合について説明する。
【0085】
1.2.2 距離計測動作
次に、第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作について説明する。
(フローチャート)
11は、第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作を示すフローチャートである。
【0086】
11に示すように、ステップST10において、前処理部71、メモリ72、及び平均化部73は、AFE41から出力されたデジタル信号に前処理及び平均化処理を施し、入力データFIRINを生成する。平均化部73は、生成した入力データFIRINを第1フィルタ74及び第2フィルタ76に送出する。
【0087】
ステップST20において、第1フィルタ74は、フィルタ関数Fを使用して入力データFIRINをサンプリング時刻全域にわたってフィルタリングし、出力データFIR1OUTを生成する。第1ピーク候補検出部75は、当該出力データFIR1OUTをサーチし、q個の第1ピーク候補を検出する。第1ピーク候補検出部75は、検出したq個の第1ピーク候補を、第2フィルタ76及び信頼度算出部78に送出する。
【0088】
ステップST30において、第2フィルタ76は、フィルタ関数Fを使用して入力データFIRINをq個の第1ピーク候補の各々の近傍にわたってフィルタリングし、出力データFIR2OUTを生成する。第2ピーク候補検出部77は、当該出力データFIR2OUTをサーチし、q個の第1ピーク候補の近傍にそれぞれ対応するq個の第2ピーク候補を検出する。第2ピーク候補検出部77は、検出したq個の第2ピーク候補を、信頼度算出部78に送出する。
【0089】
ステップST40において、信頼度算出部78は、q個の第1ピーク候補及びq個の第2ピーク候補の各々の信頼度を算出する。
【0090】
ステップST50において、信頼度算出部78は、信頼度を算出した2q個のピーク候補のうち、信頼度が最も高いピーク候補のタイミング時刻を距離計測部79に送出する。距離計測部79は、当該信頼度が最も高いピーク候補を真のピークと見なし、当該真のピークに基づく距離計測データを生成する。
【0091】
以上のように動作することにより、距離計測動作が終了する。
(レーザ光L1と入力データFIRINとの関係)
12は、第1実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作に関する各種信号の波形を示すダイアグラムである。具体的には、図12(A)は、1回の距離計測動作に使用されるレーザ光L1の波形を示す。図12(B)は、図12(A)に示されるレーザ光L1に対応して受光部31で受光されるレーザ光L2のアナログ信号を、AFE41によってデジタル信号に変換した後の波形を、「AFE出力」として示す。図12(C)は、図12(B)に示したAFE出力に基づき、平均化部73によって生成される入力データFIRINを示す。
【0092】
まず、第1実施形態における距離計測動作に使用されるレーザ光L1について、図12(A)を参照して説明する。
【0093】
12(A)に示すように、光源14は、基準時刻t0に対して所定時間が経過した時刻t1において、レーザ光L1の1回目のパルスを出射する。また、光源14は、時刻t1に続いて、時刻t2及びt3においてそれぞれ2回目及び3回目のパルスを出射する。このように、第1実施形態では、1回の距離計測動作に用いられるレーザ光L1内に、3個のパルスを含む。連続する3個のパルスの高さ(輝度)は、同等になるように設定される。ここで、3個のパルスが「連続する」とは、当該3個のパルスを構成する1つ目のパルスと2つ目のパルスとの間、又は2つ目のパルスと3つ目のパルスとの間に、1回の距離計測動作に用いられないレーザ光L1のパルスが含まれないことを意味する。
【0094】
また、1回目のパルス及び2回目のパルスの間隔と、2回目のパルス及び3回目パルスの間隔とは、出射間隔が均一とならないように設定される。具体的には、例えば、時刻t2及び時刻t3の間隔2Dは、例えば、時刻t1及び時刻t2の間隔Dの2倍となるように設定されるが、必ずしも間隔Dの2倍に設定されなくてもよい。間隔Dは、受光部31において3つのパルス同士(特に、1回目のパルスと2回目のパルス)を区別するために、フォトマルチプライヤのリカバリ応答の時定数の係数倍と、パルス幅と、の和より長くなるように設定される(時定数の係数は、1以上の整数)。また、間隔Dは、一般に、当該距離計測動作において想定される測距精度(を時刻換算したもの)よりも長くなる。
【0095】
具体的には、1回目のパルスと2回目のパルスの間隔Dは、例えば、30ナノ秒に設定され得る。この場合、2回目のパルスと3回目のパルスの間隔2Dは、間隔Dの2倍である60ナノ秒に設定されてもよいし、60ナノ秒より短い間隔(例えば45ナノ秒)に設定されてもよい。
【0096】
また、受光量が多く、リカバリ応答の時定数が長くなる場合には、1回目のパルスと2回目のパルスの間隔Dは、例えば、50ナノ秒以上100ナノ秒以下の範囲に設定され得る。この場合、2回目のパルスと3回目のパルスの間隔2Dは、1回目のパルスと2回目のパルスの間隔Dに対して固定時間(例えば50ナノ秒)を加算した値が設定され得る。なお、受光量が多い場合のパルスの間隔Dは、測距毎に変動するのではなく、デバイスに起因して決定される。
【0097】
次に、レーザL1に対応するAFE出力、及びAFE出力に対応する入力データFIRINについて、図12(B)及び図12(C)を参照して説明する。
【0098】
12(B)に示すように、受光部31は、レーザ光L1から所定の時間Δtだけ経過した時刻k0から、時刻kfまでの間、オン状態の画素PXからのアナログ信号を出力する。AFE41は、時刻k0から時刻kfまでの当該アナログ信号をサンプリングし、AFE出力としてデジタル信号に変換する。AFE出力には、レーザ光L1に対応する信号成分の他に、環境光等に起因するノイズ成分が含まれる。
【0099】
12(C)に示すように、前処理部71、メモリ72、及び平均化部73による前処理及び平均化処理によって、入力データFIRINからは、AFE出力に含まれるノイズ成分が低減される。これにより、後続するピーク候補検出処理においてピーク候補の検出負荷が軽減される。
【0100】
AFE出力及び入力データFIRINには、3つのパルスを受光部31で全て受光できた場合、当該3つのパルスに対応する3つのピーク状の信号成分が含まれる。なお、図12(B)及び図12(C)の例では、3つのパルスを受光部31で全て受光できた場合が示されるが、必ずしも当該3つのパルスの全てを受光できるとは限らない。
【0101】
AFE出力及び入力データFIRINにおいて、3つのパルスに対応する3つの信号成分の高さ(輝度)は、必ずしも同等とはならない。また、時刻k2及び時刻k3の間隔2D’は、例えば、時刻k1及び時刻k2の間隔D’の概ね2倍となり得るが、厳密に2倍になるとは限らない。また、間隔D’は、間隔Dと近い値となるが、必ずしも厳密に等しいとは限らない。
【0102】
なお、時刻t0~t3、及びサンプリング時刻k0及びkfが既知であるのに対して、(図12(B)及び図12(C)の例では、説明の便宜上、3つのパルスをそれぞれ受光したサンプリング時刻k1、k2、及びk3が明示されているが、)AFE出力及び入力データFIRINの生成時において、時刻k1、k2、及びk3は、未知である。すなわち、時刻k1、k2、及びk3のいずれか1つを同定(検出)し、対応する時刻t1、t2、及びt3のいずれか1つとの時間差を計測することが、後続の距離計測動作において実行される。
【0103】
以降の説明では、距離計測動作の具体例として、入力データFIRINから時刻k2を同定する場合について説明する。また、説明を簡単にするため、入力データFIRINにおける間隔D’は、レーザ光L1における間隔Dと等しいものとして説明する。
(第1ピーク候補検出)
上述の通り、受光部31は、1回の距離計測動作において出射されるレーザ光L1の3つのパルスを全て受光できるとは限らない。このため、入力データFIRIN内には、受光部31が受光したパルスの数に応じて、0~3つのピーク状の信号成分が含まれ得る。これに対して、第1フィルタ74は、例えば、以下に示すフィルタ関数Fを用いて、k0+D≦k≦kf-2Dの範囲において入力データFIRINをフィルタリングし、出力データFIR1OUT(k)を生成する。
FIR1OUT(k)=F(FIRIN)
=FIRIN(k-D)+FIRIN(k)+FIRIN(k+2D)
当該フィルタ関数Fを使用する場合、出力データFIR1OUT(k)は、2つ目のパルスに対応する時刻k2において、最も出力値が増幅される。すなわち、フィルタ関数Fを使用して得られる出力データFIR1OUTの時刻kにおける出力値は、時刻kが時刻k2であることの確からしさを示している、ともいえる。
【0104】
このため、第1ピーク候補検出部75は、出力データFIR1OUT(k)の出力値が大きいサンプリング時刻をk0+D≦k≦kf-2Dの範囲にわたってサーチすることにより、時刻k2であることが最も確からしいq個の候補を第1ピーク候補として検出することができる。
【0105】
13及び図14は、第1実施形態に係る距離計測装置の第1フィルタが出力する出力データの波形を示すダイアグラムである。
【0106】
13(A)では、受光部31が3つのパルスを全て検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。図13(B1)~図13(B3)では、受光部31が3つのパルスのうちの2つを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。より具体的には、図13(B1)では、受光部31が3つのパルスのうちの2つ目のパルス及び3つ目のパルスを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。図13(B2)では、受光部31が3つのパルスのうちの1つ目のパルス及び3つ目のパルスを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。図13(B3)では、受光部31が3つのパルスのうちの1つ目のパルス及び2つ目のパルスを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。
【0107】
14(C1)~図14(C3)では、受光部31が3つのパルスのうちの1つを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。より具体的には、図14(C1)では、受光部31が3つのパルスのうちの3つ目のパルスのみを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。図14(C2)では、受光部31が3つのパルスのうちの2つ目のパルスのみを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。図14(C3)では、受光部31が3つのパルスのうちの1つ目のパルスのみを検出できた場合における出力データFIR1OUTが示される。
【0108】
まず、受光部31が3つのパルスを全て検出した場合について、図13(A)を参照して説明する。
【0109】
13(A)に示すように、受光部31が3つのパルスを全て検出した場合、出力データFIR1OUT(k)は、ある時刻kxにおいて、時刻k1、k2、及びk3における3つの信号成分の和に対応する大きなピークが現れる。また、出力データFIR1OUTには、時刻kx-3D、kx-2D、kx-D、kx+D、kx+2D、及びkx+3Dの6つの時刻において、時刻k1、k2、及びk3における信号成分のうちのいずれか1つに対応する小さなピークが現れる。
【0110】
このため、受光部31が3つのパルスを全て検出した場合、第1ピーク候補検出部75は、最も大きなピークが現れる時刻kx、及び6つの小さなピークのうち値が大きい(q-1)個のピークに対応する(q-1)個の時刻の合計q個の時刻を、時刻k2の候補(第1ピーク候補)として検出することができる。
【0111】
次に、受光部31が3つのパルスのうちの2つを検出した場合について、図13(B1)~図13(B3)を参照して説明する。
【0112】
13(B1)に示すように、受光部31が2つ目のパルス及び3つ目のパルスを検出した場合、出力データFIR1OUTには、ある時刻kxにおいて、時刻k2及び時刻k3における2つの信号成分の和に対応する中程度の高さのピーク(中ピーク)が現れる。また、出力データFIR1OUTには、時刻kx-2D、kx+D、kx+2D、及びkx+3Dの4つの時刻において、時刻k2又は時刻k3における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0113】
13(B2)に示すように、受光部31が1つ目のパルス及び3つ目のパルスを検出した場合、出力データFIR1OUTには、ある時刻kxにおいて、時刻k1及び時刻k3における2つの信号成分の和に対応する中程度の高さのピーク(中ピーク)が現れる。また、出力データFIR1OUTには、時刻kx-3D、kx-D、kx+2D、及びkx+3Dの4つの時刻において、時刻k1又は時刻k3における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0114】
13(B3)に示すように、受光部31が1つ目のパルス及び2つ目のパルスを検出した場合、出力データFIR1OUTには、ある時刻kxにおいて、時刻k1及び時刻k2における2つの信号成分の和に対応する中程度の高さのピーク(中ピーク)が現れる。また、出力データFIR1OUTには、時刻kx-3D、kx-2D、kx-D、及びkx+Dの4つの時刻において、時刻k1又は時刻k2における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0115】
このため、第1ピーク候補検出部75は、受光部31が3つのパルスのうちの2つを検出した場合、中ピークが現れる時刻kx、及び4つの小さなピークのうち値が大きい(q-1)個のピークに対応する(q-1)個の時刻の合計q個の時刻を、時刻k2の候補(第1ピーク候補)として検出することができる。
【0116】
このように、レーザ光L1の3つのパルスを全て受光した場合、及び3つのパルスのうちの2つを受光した場合では、出力データFIR1OUT(k)には、複数のパルスに対応する信号成分の和が出力値となる時刻(=kx)が存在する。このため、第1ピーク候補検出部75は、真に検出すべき時刻k2(図13における時刻kx)を、q個の第1ピーク候補のうちの1つとして高い確率で検出することができる。
【0117】
次に、受光部31が3つのパルスのうちの1つを検出した場合について、図14(C1)~図14(C3)を参照して説明する。
【0118】
14(C1)に示すように、受光部31が3つ目のパルスのみを検出した場合、出力データFIR1OUTには、時刻kx、kx+2D、及びkx+3Dの3つの時刻において、時刻k3における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0119】
14(C2)に示すように、受光部31が2つ目のパルスのみを検出した場合、出力データFIR1OUTには、時刻kx-2D、kx、及びkx+Dの3つの時刻において、時刻k2における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0120】
14(C3)に示すように、受光部31が1つ目のパルスのみを検出した場合、出力データFIR1OUTには、時刻kx-3D、kx-D、及びkxの3つの時刻において、時刻k1における信号成分に対応する小さなピークが現れる。
【0121】
このため、第1ピーク候補検出部75は、受光部31が3つのパルスのうちの1つを検出した場合、3つの小さなピークのうち値が大きいq個のピークに対応するq個の時刻を、時刻k2の候補(第1ピーク候補)として検出することができる。
【0122】
しかしながら、レーザ光L1の3つのパルスのうちの1つを受光した場合では、出力データFIR1OUT(k)には、複数のパルスに対応する信号成分の和が出力値となる時刻が存在しない。このため、第1ピーク候補検出部75は、出力データFIR1OUT(k)に現れる複数個のピークのうち、真に検出すべき時刻k2(図14における時刻kx)を、q個の第1ピーク候補のうちの1つとして検出できない場合がある。また、第1ピーク候補検出部75は、時刻kxを第1ピーク候補の1つとして検出したとしても、当該時刻kxにおける出力データFIR1OUTの出力値は、出力データFIR1OUTの最大値ではない場合がある。つまり、第1ピーク候補検出部75は、時刻k2であることが最も確からしい時刻として、時刻kxを検出しない場合がある。
(第2ピーク候補検出)
第2フィルタ76及び第2ピーク候補検出部77は、第1ピーク候補検出部75において真に検出すべき時刻(=kx)を検出できない場合において、当該真に検出すべき時刻を第2ピーク候補として検出する機能を有する。
【0123】
第2フィルタ76には、第1フィルタ74と同等のフィルタ関数Fが設定される場合、第1ピーク候補の時刻kp(kp1、…、kpq)の各々について、時刻kpの近傍の6点(kp-3D、kp-2D、kp-D、kp+D、kp+2D、及びkp+3D)において入力データFIRINをフィルタリングし、合計6q個の出力データFIR2OUTを生成する。
【0124】
例えば、図14(C3)において、第1ピーク候補検出部75が時刻kx-3Dを第1ピーク候補として検出した場合、第2フィルタ76は、6個の出力データFIR2OUT(kx-6D)、FIR2OUT(kx-5D)、FIR2OUT(kx-4D)、FIR2OUT(kx-2D)、FIR2OUT(kx-D)、及びFIR2OUT(kx)を生成する。このように、第1ピーク候補検出部75が真に検出すべき時刻kxから最も(3D程度)離れているピークを第1ピーク候補として検出した場合においても、第2フィルタ76は、第2ピーク候補を検出するための候補に、時刻kxを含めることができる。なお、第2ピーク候補は、第1ピーク候補として検出されなかったピークであるから、第2ピーク候補における輝度は、必然的に第1ピーク候補における輝度よりも小さい。
【0125】
第2ピーク候補検出部77は、第2フィルタ76によって第1ピーク候補毎に生成された6個の出力データFIR2OUTのうち、最大値となる時刻を第2ピーク候補として検出する。
【0126】
以上のような動作により、第2ピーク候補検出部77は、第1ピーク候補に真に検出すべき時刻kxが含まれない場合においても、当該時刻kxを第2ピーク候補として検出することができる。
(信頼度算出)
上述の通り、レーザ光L1の3つのパルスのうちの1つしか受光できない場合、出力データFIR1OUT及びFIR2OUT内には、他のピークに対して有意に大きいピークが現れない。つまり、レーザ光L1の3つのパルスのうちの1つしか受光できない場合、第1ピーク候補及び第2ピーク候補から、時刻k2であることが最も確からしい時刻を選ぶことは、困難である場合がある。一方、ある画素PXでは1つのパルスしか受光できない場合でも、当該画素PXの近傍に位置する少なくとも1つの画素PXでは、2つ以上のパルスを受光できる場合がある。
【0127】
信頼度算出部78は、q個の第1ピーク候補及びq個の第2ピーク候補の各々の信頼度を、距離計測動作の対象画素PXに隣り合う少なくとも1つの画素PXの入力データFIRINに基づいて算出する。これにより、信頼度算出部78は、当該隣り合う画素PXに関する入力データFIRINに整合するピーク候補が第2ピーク候補であった場合、当該第2ピーク候補に、第1ピーク候補を含む他の全てのピーク候補よりも高い信頼度を設定することができる。
【0128】
なお、上述した(第1ピーク候補検出)及び(第2ピーク候補検出)における説明と式は、第一実施形態の第1フィルタ74及び76における処理ついて純粋機能的に表現をしている。しかしながら、実際には、図7に示したとおり、当該処理はハードウェアにより行われる。このため、例えば、入力データFIRIN(k+2D)が入力されていない時刻kの処理を行う時点において、出力データFIR1OUT(k)が求まる訳ではない。すなわち、実際には、出力データFIR1OUT(k)は、時刻k+2Dの処理を行う時点以降(2サイクル後)にて、遅れて出力される。当該遅延は、適宜、関連データのレジスタへの格納による時間調整で実現される。
【0129】
1.3 本実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、出射制御部11は、1回の距離計測動作に対応して、3つの連続するパルスを含むレーザ光L1を出射する。計測処理部40は、光検出器30によって受光したレーザ光L1の反射光L2に基づき、レーザ光L1に対して反射光Lを同定し、対象物TGと距離計測装置1との間の距離を計測する。1つ目のパルス及び2つ目のパルスの間隔と、2つ目のパルス及び3つ目のパルスの間隔とは、互いに異なる。これにより、光検出器30で受光した反射光L2において3つのパルスのうちのいくつかが欠損した場合においても、どのパルスが欠損したかを特定することができる。このため、反射光L2に含まれるパルスが欠損し得る程度に対象物TGが距離計測装置1に対して(例えば、数百メートル程度)離れている場合においても、レーザ光L1に対して反射光L2を同定することができる。本効果について、図15を参照して説明する。
【0130】
15は、第1実施形態に係る効果を示すダイアグラムである。図15では、対象物TGまでの距離に対して、計測した距離のばらつきをプロットした線EMB、COMP1、及びCOMP2が示される。線EMBは、第1実施形態に係る距離計測装置1によって距離を計測した場合に対応し、線COMP1及びCOMP2は、比較例に係る距離計測装置によって距離を計測した場合に対応する。
【0131】
線COMP1に係る距離計測装置では、例えば、第1実施形態に係る距離計測装置1から出射されるレーザ光L1のうちの1つ分のパルスを使用して、距離を計測する場合が想定される。また、線COMP2に係る距離計測装置では、第1実施形態に係る距離計測装置1から出射されるレーザ光L1のうちの1つ分のパルスの、3倍のパルス幅を有するパルス1つを使用して距離を計測する場合が想定される。線COMP1におけるレーザパワーは、線EMBの1/3であり、線COMP2におけるレーザパワーは、線EMBにおけるレーザパワーと同等である。なお、レーザのパルス高(レーザ出力)については、いずれにおいても最大仕様にて使用することを想定する。LiDARにて重要な測距可能距離は、レーザパワー(パルス幅)によって決まるため、第1実施形態では、線COMP1に示される比較例よりも、測距可能距離において大きく優れる(大まかに、測距可能距離は3割程度優れる)。
【0132】
第1実施形態及び比較例のいずれについても、対象物TGまでの距離が遠くなるにしたがい、反射光L2に含まれるパルスが欠損する。線COMP1では、1つのパルスを用いて距離を計測するため、当該1つのパルスが欠損してしまうと、正しく距離を計測することができない。このため、パルスの欠損が発生するにしたがって、誤差のばらつきが急激に悪化し得る。これに対し、第1実施形態では、3つのパルスを用いて距離を計測する。このため、パルスの欠損に対して比較例よりもロバストに距離を計測することができる。また、パルス数が3つと比較的小数であるため、レーザ光L1に対して反射光L2を同定できない場合の距離誤差を小さく抑えることができる。したがって、計測距離のばらつきを抑制することができる。一方、線COMP2では、パルスが全て欠損してしまう可能性は低い。しかしながら、パルス幅は、反射光を受光できた場合の誤差の最大値を表すため、線COMP2では、誤差の最大値も線COMP1の場合の3倍となる。これに対して、第1実施形態のパルス幅は、線COMP1と変わらず、パルスの欠損を特定できる場合、誤差の最大値が線COMP1の場合と変わらない。以上のような理由により、第1実施形態は、線COMP1及びCOMP2よりも、距離の精度において優れる。
【0133】
また、第1フィルタ74は、入力データFIRINをサンプリング時刻全域にわたってフィルタリングし、出力データFIR1OUTを生成する。第1ピーク候補検出部75は、出力データFIR1OUTから、出力値が大きい順にq個のピークを第1ピーク候補として検出する。第2フィルタ76は、q個の第1ピーク候補の各々の近傍(±3Dの範囲)において、入力データFIRINをフィルタリングし、6点の出力データFIR2OUTを生成する。第2ピーク候補検出部77は、q個の第1ピーク候補の各々について、6点の出力データFIR2OUTから、出力が最も大きいピークを第2ピーク候補として検出する。これにより、真に検出すべき時刻kxに対応するピークが第1ピーク候補から漏れた場合に、当該ピークを第2ピーク候補として検出することができる。このため、3つのパルスのうちの2つが欠損し、第1ピーク候補の検出の際に出力値が有意に大きなピークが現れない場合において、真に検出すべき時刻kxに対応するピークを検出し損ねる(同定に失敗する)可能性を低減することができる。
【0134】
また、信頼度算出部78は、第1ピーク候補及び第2ピーク候補の各々について、距離計測対象の画素PXと隣り合う画素PXで検出された反射光L2に基づき、信頼度を算出する。これにより、距離計測対象の画素PXでは反射光L2を同定するために十分な数のパルスを検出できなかった場合においても、反射光L2を同定可能な数のパルスを検出できた隣り合う画素PXの情報を使用して、正しい距離を計測する可能性を高めることができる。したがって、計測距離のばらつきを抑制することができる。
【0135】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る距離計測装置について説明する。第1実施形態では、受光部31において、閾値を超えない程度の大きさの出力信号IOUTが得られることにより、複数のパルスが分離できる場合について説明した。第2実施形態は、受光部31において、閾値を超える程度の大きさの出力信号IOUTが得られることにより、出力信号IOUTがパイルアップし、複数のパルスが分離できない点において、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と同等の構成及び動作についてはその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。
【0136】
2.1 デジタル処理部の構成
16は、第2実施形態に係るデジタル処理部の構成を説明するためのブロック図であり、第1実施形態の図6に対応する。
【0137】
16に示すように、デジタル処理部42は、判定部80を更に含む。
【0138】
判定部80は、AFE41から入力されたAFE出力がパイルアップしているか否かを判定する。具体的には、例えば、判定部80は、AFE出力の値が所定の閾値S1以上である場合にはパイルアップしていると判定し、当該AFE出力を距離計測部79に送出する。判定部80は、AFE出力の値が所定の閾値S1未満の場合にはパイルアップしていないと判定し、当該AFE出力を前処理部71に送出する。なお、パイルアップの判定手法としては、上述したAFE出力値が閾値S1以上か否かを判定する手法に限られない。例えば、判定部80は、AFE出力値が閾値S1以上となる時間が閾値以上であるか否かにより、パイルアップしているか否かを判定してもよい。また、判定部80は、AFE出力の時間積分値の大小により、判定を行ってもよい。
【0139】
距離計測部79は、判定部80からパイルアップしたAFE出力を受けた場合、レーザ光L1に対して、当該AFE出力の所定位置を同定し、その同定結果に基づいて、距離を計測する。
【0140】
2.2 距離計測動作
17は、第2実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作を示すフローチャートであり、第1実施形態の図11に対応する。図17では、図11に示したステップST10~ST50に加え、ステップST5及びST60が更に追加される。
【0141】
17に示すように、ステップST5において、判定部80は、受光部31によって受光した反射光L2がパイルアップしているか否かを判定する。受光した反射光L2がパイルアップしていない場合(ステップST5;no)、処理はステップST10に進む。ステップST10以降の動作は、第1実施形態と同等であるため、説明を省略する。
【0142】
受光した反射光L2がパイルアップしている場合(ステップST5;yes)、判定部80はAFE出力を距離計測部79に送出し、処理はステップST60に進む。
【0143】
ステップST60において、距離計測部79は、レーザ光L1及び反射光L2に基づくAFE出力の所定位置同士の時刻差に基づき、距離計測データを生成する。所定位置とは、例えば、レーザ光L1及びAFE出力の各々の立ち上がりの位置を含む。
【0144】
以上の動作により、パイルアップした場合の距離計測動作が終了する。
【0145】
18は、第2実施形態に係る距離計測装置における距離計測動作に関する各種信号の波形を示すダイアグラムであり、第1実施形態における図12に対応する。図18では、AFE出力がパイルアップしている場合の波形が示され、入力データFIRINは省略される。
【0146】
18に示すように、距離計測部79は、AFE出力の値が閾値S2未満から閾値S2以上に切り替わる時刻k1’をAFE出力の立ち上がりと見なし、当該時刻k1’と、レーザ光L1の1つ目のパルスの立ち上がり時刻t1との時刻差Dtを算出する。時刻k1’の検出は、AFE41内のTDCが行う。閾値S2は、閾値S1より小さく、例えばAFE出力内のノイズ成分よりも大きい値として、予め設定される。一般に、TDCは、ADCより時間分解能が高く、距離計測部79は、時刻差Dtに基づく対象物TGまでの距離を時間精度よく計測することができる。
【0147】
一般に、パイルアップする場合、1パルス目が欠損する可能性はほとんど無いため、AFE41は、時刻k1’として、1パルス目に関する時刻を検出する。一方、第2実施形態では、距離計測部79は、2パルス目に関する時刻を検出するため、AFE41において検出される時刻と、距離計測部79から検出される時刻との間に、原理的に1サイクル分の時間差が生じる。そこで、距離計測部79は、ステップST60において、ステップST50にて出力される時刻と整合するように、1サイクル分の補正を加えた結果を出力する。
【0148】
また、距離計測部79は、ステップST50ではパルスのピーク時刻を検出し、ステップST60ではパルスの立ち上がりを検出するため、それぞれ、波高値と波形に基づく補正を検出時刻に対して実行する。すなわち、距離計測部79は、上述した1サイクル分の補正に加えて、当該波高値と波形に基づく補正を加えて到着時刻を算出し、時刻差Dtを算出する。
【0149】
なお、判定部80における判定処理は、AFE61における処理と前処理部80における処理との間に実行される必要は無い。例えば、距離計測部79は、ステップST50及びST60のいずれの処理も常に実行して2種類の距離等を出力し、当該2つの処理の後段において判定部80が判定処理を行ってもよい。
【0150】
2.3 本実施形態に係る効果
対象物TGが距離計測装置1から比較的近い位置にある場合、受光部31において大光量の反射光L2を受光し、出力信号IOUT及びこれに後続して出力されるAFE出力がパイルアップする場合がある。
【0151】
第2実施形態によれば、距離計測部79は、パイルアップしたAFE出力が閾値S2を上回る時刻k1’を受光パルスの所定位置として検出する。これにより、AFE出力が強すぎるために、3つのパルスに対応する信号成分が分離できない場合においても、対象物TGまでの距離を精度よく計測することができる。
【0152】
また、パイルアップしていない場合でも、TDCは時間分解能が高いため、高い精度の結果が得られる可能性が高い。また、時刻補正なしでは、第1実施形態の結果に対して1サイクル異なる結果となるが、時刻補正によって、第1実施形態の結果と矛盾しない結果を得ることができる。
【0153】
2.4 変形例
上述の第2実施形態では、AFE出力が閾値S2以上となる時刻k1’に基づいてレーザ光L1との時間差が計測される場合について説明したが、これに限られない。
【0154】
例えば、距離計測部79は、AFE出力が閾値S2以上となる期間から選択される所定の時刻に基づいて、レーザ光L1との時間差を計測してもよい。
【0155】
19は、第2実施形態の変形例に係る距離計測装置における距離計測動作を説明するための模式図であり、第2実施形態における図18に対応する。
【0156】
19に示すように、距離計測部79は、時刻k1’から、AFE出力の値が閾値S2以上から閾値S2未満に切り替わる時刻k3’までの期間の間の時刻kmを検出してもよい。時刻kmは、時刻k1’及び時刻k3’の重み平均にて得られる時刻C1×k1’+(1-C1)×k3’+C2でもよい。ここで、C1は、波高値や時間積分値等により、異なる値をとる。C2は定数であり、例えば、+0.5サイクルに相当する時刻である。そして、距離計測部79は、当該時刻kmと、レーザ光L1の1つ目のパルスの立ち上がり時刻t1から3つ目のパルスの立ち下がり時刻t3’までの期間の中間の時刻tmとの時刻差Dtを算出してもよい。これにより、距離計測部79は、時刻差Dtに基づく対象物TGまでの距離を計測することができる。また、C1により、主に、SiPM固有の立ち下がり波形の、波高依存性の影響を除去することができ、C2により複数パルスを用いた影響を除去することができ、距離精度が向上する。
【0157】
また、例えば、AFE41は、閾値の波高値依存性を排除するため、TDCの前段にCFD(Constant Fraction Discriminator)を設置してもよい。

【0158】
図20は、第2実施形態の変形例に係る距離計測装置のAFEの構成を説明するためのブロック図である。
【0159】
図20に示すように、AFE41は、上述したTIA41a及びTDC41cに加えて、CFD41bを更に含み得る。CFD41bは、減衰回路41b_1、反転回路41b_2、遅延回路41b_3、及び加算器41b_4を含む。
【0160】
減衰回路41b_1の入力端及び反転回路41b_2の入力端は、TIA41aの出力端に共通接続される。反転回路41b_2の出力端は、遅延回路41b_3の入力端に接続される。減衰回路41b_1の出力端及び遅延回路41b_3の出力端はそれぞれ、加算器41b_4の第1入力端及び第2入力端に接続される。加算器41b_4の出力端は、TDC41cに接続される。
【0161】
以上のような構成により、AFE出力の波高値の高さに応じて閾値S1に到達する時刻が変化することの影響を抑制することができ、距離精度を向上させることができる。
【0162】
3. その他
以上、種々の実施形態について説明したが、上述の第1実施形態及び第2実施形態は、これに限られず、種々の変形が適宜適用可能である。
【0163】
例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、複数の画素PXが半導体基板上に二次元に配置される場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の画素PXは、一次元に配置されてもよい。
【0164】
また、例えば、1回の測距に使用される出射パルスの構成は、上述の第1実施形態及び第2実施形態において示した例に限られない
図21は、その他の変形例に係る距離計測装置における出射パルスの例を示すダイアグラムである。
【0165】
図21(A)に示すように、1回の測距に使用される出射パルスの組は、1つ目の出射パルス及び2つ目の出射パルスの間隔に対して、2つ目の出射パルス及び3つ目の出射パルスの間隔が短くなるように設定されてもよい。この場合、図7に示した第1フィルタ74及び第2フィルタ76内の乗算器82の係数H0~H3はそれぞれ、“1”、“0”、“1”、“1”に設定される。これにより、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0166】
また、図21(B)に示すように、1回の測距に使用される出射パルスの数は、3つより多くてもよい(例えば、4つでもよい)。この場合、第1フィルタ74及び第2フィルタ76の各々は、図7に示した構成に加えて、レジスタ81_4、乗算器82_4、及び加算器83_4(いずれも図示せず)を更に含む。
【0167】
レジスタ81_4は、レジスタ81_3の出力端に接続された入力端を含む。乗算器82_4は、レジスタ81_4の出力端に接続された入力端を含み、係数H4が設定される。加算器83_4は、乗算器82_3の出力端に接続された第1入力端と、乗算器82_4の出力端に接続された第2入力端と、加算器83_3の第2入力端に接続された出力端と、を含む。この場合における乗算器82の係数H0~H4はそれぞれ、“1”、“1”、“1”、“0”、“1”に設定される。これにより、出射パルスが1つ欠けた場合に、どの出射パルスが欠けたか同定できる。更に、出射パルスが2つ欠けた場合でも、例えば、2つ目の出射パルス及び3つ目の出射パルスが欠けた場合などは、同定が可能である。
このように、出射パルス数には制限はない。出射パルスが時間に対して非対称であることが重要であり、当該非対称性によって、欠けたパルスを同定できる可能性が高くなるという効果がうまれる。
【0168】
また、例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、第2フィルタ76が第1フィルタ74と同じフィルタ関数Fに基づいて動作する場合について説明したが、これに限られない。例えば、第2フィルタ76は、第1フィルタ74と異なるフィルタ関数に基づいて動作するように構成されてもよい。なお、第2フィルタ76が第1フィルタ74と同じフィルタ関数Fに基づいて動作するように構成される場合、第1フィルタ74と第2フィルタ76は、1つのフィルタによって実現されていてもよい。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0170】
1…距離計測装置、10…出射部、11…出射制御部、12,13…ドライバ、14…光源、20…光学系、21,23…レンズ、22…ミラー、30…光検出器、31…受光部、40…計測処理部、41…AFE、41a…TIA、41b…CFD、41b_1…減衰回路、41b_2…反転回路、41b_3…遅延回路、41b_4…加算器、41c…TAC、42…デジタル処理部、71…前処理部、72…メモリ、73…平均化部、74…第1フィルタ、75…第1ピーク候補検出部、76…第2フィルタ、77…第2ピーク候補検出部、78…信頼度算出部、79…距離計測部、80…判定部、81…レジスタ、82…乗算器、83…加算器、90…基板、91…p型半導体層、92…p型半導体層、93…n型半導体層。
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