(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】光学加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20240213BHJP
B23K 26/60 20140101ALI20240213BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/60
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2020155057
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-291026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0029240(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04239555(DE,A1)
【文献】特開平08-309573(JP,A)
【文献】特開2005-217213(JP,A)
【文献】米国特許第04689467(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの第1の位置から前記ワークの反対側の面の第2の位置に、前記ワークの溶融温度よりも低い温度の熱を伝熱させるように、前記第1の位置に第1のビームを照射する、第1の光源と、
前記第2の位置が前記伝熱により昇温した状態で、前記第2の位置に、前記ワークの溶融温度を超えるように第2のビームを照射する第2の光源と
を備え
、
前記第1のビームの前記第1の光源に前記第2のビームが照射されることを防止するように、前記ワークの法線に対し前記第1のビームの光軸は異なる方向を持ち、前記第1のビームの光軸と前記第2のビームの光軸は異なる方向を持つ、光学加工装置。
【請求項2】
前記ワークの法線に対し前記第2のビームの光軸は異なる方向を持つ、請求項1に記載の光学加工装置。
【請求項3】
前記第1の光源からの前記第1のビームの照射、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の光源からの前記第1の位置での前記第1のビームの照射による、前記第2の位置への前記伝熱に応じて、前記第2の光源から前記第2のビームを照射させる、請求項1
又は請求項2に記載の光学加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の光源からの前記第1のビームの照射タイミング、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射タイミングを制御し、
前記制御部は、前記ワークの情報に基づいて、前記第1の光源からの前記第1のビームの照射タイミング、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射タイミングを調整する、
請求項3に記載の光学加工装置。
【請求項5】
前記ワークの前記第2の位置から所定距離、離れた位置の表面温度を計測する温度モニター部を備え、
前記制御部は、前記温度モニター部で計測した温度測定値に基づいて前記第2の光源からの前記第2のビームの照射強度を調整する、
請求項3又は請求項4に記載の光学加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1のビームが照射される前記第1の位置、及び、前記第2のビームが照射される前記第2の位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との位置関係を保つように制御する、
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学加工装置。
【請求項7】
前記第1のビームの前記第1の位置での第1のビームスポット径を、前記第2のビームの前記第2の位置での第2のビームスポット径に対して大きくする、請求項1ないし
請求項6のいずれか1項に記載の光学加工装置。
【請求項8】
前記第1のビームの第1の波長は、
前記第2のビームの第2の波長とは異なり、
前記第1の波長は、溶融前の前記ワークに対し、前記第2の波長に対する吸収率に比べ、吸収率が高くなるようにする、
請求項1ないし
請求項7のいずれか1項に記載の光学加工装置。
【請求項9】
前記第1の光源と前記ワークとの間に設けられ、前記第1の光源から射出された前記第1のビームの前記第1の位置でのビーム形状を、第1の軸方向及び前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向のうち、前記第1の軸方向の1軸方向に延びる直線状に発散させる第1の光学素子を有する、第1の集光部と、
前記第2の光源と前記ワークとの間に設けられ、前記第2の光源から射出された前記第2のビームの前記第2の位置でのビーム形状を、前記第1の軸方向に平行な第3の軸方向と、前記第3の軸方向に直交する第4の軸方向とのうち、前記第3の軸方向の1軸方向に延びる直線状に発散させる第2の光学素子を有する、第2の集光部と
を備える、請求項1ないし
請求項5のいずれか1項に記載の光学加工装置。
【請求項10】
前記第1の集光部は、前記第1の光学素子と前記ワークとの間に設けられ、前記第1の光学素子で発散させた前記第2の軸方向に発散する前記第1のビームを前記第1の軸方向に集光する第3の光学素子を有し、
前記第2の集光部は、前記第2の光学素子と前記ワークとの間に設けられ、前記第2の光学素子で発散させた前記第4の軸方向に発散する前記第2のビームを前記第3の軸方向に集光する第4の光学素子を有する、
請求項9に記載の光学加工装置。
【請求項11】
ワークの第1の位置から前記ワークの反対側の面の第2の位置に、前記ワークの溶融温度よりも低い温度の熱を伝熱させるように、前記第1の位置に第1のビームを照射する、第1の光源と、
前記第2の位置が前記伝熱により昇温した状態で、前記第2の位置に、前記ワークの溶融温度を超えるように第2のビームを照射する第2の光源と
を備え、
前記ワークの前記第1の位置の側に設けられ、ガスを射出又は吸入する第1のアシストガス口を備え、
前記ワークの前記第2の位置の側に設けられ、前記ガスを射出又は吸入する第2のアシストガス口を備え、
前記第1の光源の光軸を、前記ワークの前記第1の位置を含む面の法線に対して傾け、
前記第1のアシストガス口と、前記第2のアシストガス口とを、前記ワークを間に配置した状態で、対向させる
、
光学加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工技術はワークに非接触であり、工具の摩耗の懸念がない。このため、様々な産業において、適用先が広がっている。レーザー加工技術は、レーザー加工時のワークに対する急峻な入熱に起因し、スパッタが発生して加工箇所を汚染することがあることが知られている。ワークに生じるスパッタを防ぐために、レーザー加工技術として、リング状のビームを用いる手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ワークの加工時にスパッタの発生を低減可能な光学加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、光学加工装置は、第1の光源と第2の光源とを備える。第1の光源は、ワークの第1の位置からワークの反対側の面に、ワークの溶融温度よりも低い温度の熱を伝熱させるように、第1の位置に第1のビームを照射する。第2の光源は、ワークの第1の位置とは反対側の面の第2の位置に、ワークの溶融温度を超えるように第2のビームを照射する。第1のビームの第1の光源に第2のビームが照射されることを防止するように、ワークの法線に対し第1のビームの光軸は異なる方向を持ち、第1のビームの光軸と第2のビームの光軸は異なる方向を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す模式図。
【
図2】第1実施形態の変形例に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す模式図。
【
図3】第2実施形態に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す模式図。
【
図4】
図3に示す光学加工装置を用いてワークを加工しているときの、ワークの表面及び背面でのある温度測定点での時刻と温度との関係を示すグラフ。
【
図5】第2実施形態に係る光学加工装置を用いて固定されたワークを加工する際のフローチャート。
【
図6】第2実施形態に係る光学加工装置を用いて移動するワークを加工する際のフローチャート。
【
図7】第2実施形態の変形例に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す模式図。
【
図8】第3実施形態に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す概略的な斜視図。
【
図9】第3実施形態の変形例に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す概略的な斜視図。
【
図10】第4実施形態に係る光学加工装置を用いてワークを加工している状態を示す概略的な斜視図。
【
図11】第4実施形態に係る光学加工装置の第1の光源からのビームの発散状態を示す概略的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本実施形態に係る光学加工装置10について、図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係,部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の光学加工装置10の模式図を示す。
図1の光学加工装置10は、ワーク(加工対象物)8のある断面に沿う面上にあるとする。
【0009】
本実施形態の光学加工装置10は、第1のビームB1を射出し、ワーク8に照射する第1の光源12と、第2のビームB2を射出し、ワーク8に照射する第2の光源14とを備える。光学加工装置10は、さらに、制御部16を有する。制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を制御する。本実施形態に係る光学加工装置10は、第1のビームB1及び第2のビームB2を用いてワーク8に第2のビームB2のスポット形状の孔を形成する加工を行う。
【0010】
制御部16は、例えばCPU等のプロセッサがROM等のメモリに格納された制御プログラムをRAMに展開して実行する。制御部16の制御は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC等)によっても実現可能である。
【0011】
ワーク8は、例えばステンレス合金、鉄、銅、真鍮、チタン合金、アルミニウム合金などの金属の板材である。ワーク8は金属材に限られず、非接触で加工可能な素材が用いられる。
【0012】
本実施形態では、説明の簡略化のため、ワーク8は平面の表面8bと平面の背面8aとを持ち、それぞれの法線N1,N2が反対側を向くとする。すなわち、ワーク8の表面8b及び背面8aは平行である。表面8bと背面8aとの距離を厚さとする。
【0013】
本実施形態では、第1の光源12として例えばYAGレーザー発振器を用いる。第1のビームB1は、YAGレーザー発振器からのレーザー光であるとし、例えば波長が1064nmであるとする。ただし、これに限らず、第1のビームB1は電磁波ならば何でもよく、例えば、X線、深紫外線、紫外線、可視光、赤外線、近赤外線、遠赤外線、ミリ波、マイクロ波などでもよい。このため、第1のビームB1はレーザー光に限らず、例えば、高強度のLEDからの光などでもよい。すなわち、第1の光源12は、レーザー発振器に限らず、上述した高強度の光を出射可能な適宜の光源を用いることができる。
【0014】
第1の光源12から射出される第1のビームB1は、スポット状のビーム形状でワーク8の背面8aに照射される。第1のビームB1の照射位置は、ワーク8の背面8aの第1の加工点(第1の位置)P1である。ここでは、第1のビームB1のビーム形状は、長軸を第1のビームB1の径とする楕円であるとする。ただし、これに限らず、第1のビームB1のビーム形状は、円や、複数の点、多角形、線など、どのような形状でもよい。第1のビームB1の径は、例えば3.0mmとする。ただし、第1のビームB1の径は、これに限らず、適宜に設定可能である。
【0015】
本実施形態では、第2の光源14として例えばYAGレーザー発振器を用いる。第2のビームB2は、例えばYAGレーザー発振器からのレーザー光であるとし、例えば波長が1064nmであるとする。ただし、これに限らず、第2のビームB2は第1のビームB1と同様に、電磁波ならば何でもよい。このため、第2のビームB2は、レーザー光に限らず、例えば、高強度のLEDからの光などでもよい。すなわち、第2の光源14は、レーザー発振器に限らず、上述した高強度の光を出射可能な適宜の光源を用いることができる。
【0016】
第2の光源14から射出される第2のビームB2は、スポット状のビーム形状でワーク8の第2の位置として表面8bbに照射される。第2のビームB2の照射位置は、ワーク8の表面8bbの第2の加工点(第2の位置)P2である。ここでは、ビームB2のビーム形状は、直径が第2のビームB2の径の円であるとする。ただし、これに限らず、第2のビームB2の形状は、円や、複数の点、多角形、線など、どのような形状でもよい。第2のビームB2の径は、例えば、0.5mmとする。ただし、第2のビームB2の径は、これに限らず、適宜に設定可能である。
【0017】
本実施形態では、第1のビームB1の背面8aでの第1のビームスポット径(ワーク8の背面8aへの第1のビームB1の照射位置でのビームB1の径)は、第2のビームB2の表面8bでの第2のビームスポット径(ワーク8の表面8bへの第2のビームB2の照射位置でのビームB2の径)よりも大きい。
【0018】
なお、ワーク8の表面8bへの第1のビームB1の照射位置は、第2のビームB2の光軸O2の軸上にあることが好適である。第1のビームB1の光軸O1は、第2のビームB2の光軸O2に交差することが好適である。第1のビームB1の照射位置は、第2のビームB2の光軸O2の軸上から僅かにずれていてもよい。
【0019】
以上の構成のもとで、光学加工装置10の動作について説明する。
【0020】
ワーク8の素材、厚さ(伝熱距離)は、予めわかっている。このため、第1のビームB1がワーク8に照射した時点から、ある時間で、第1の加工点P1から第2の加工点P2に熱が伝熱される。第1の光源12及び第2の光源14には、予め、第1の光源12から第1のビームB1の出力を開始した後、第2の光源14から第2のビームB2の出力を開始するタイミングが設定されている。また、第1の光源12には、第1の光源12から第1のビームB1を射出し続ける時間も予め設定されている。第2の光源14には、第2の光源14から第2のビームB2を射出し続ける時間も予め設定されている。
【0021】
制御部16は、第1の光源12から第1のビームB1を射出し、
図1に示すように、第1のビームB1をワーク8の背面8aの第1の加工点(第1の位置)P1に対して斜入射(照射)する。ワーク8の背面8aでの第1のビームB1のビーム形状は、楕円である。第1のビームB1の入射によって、ワーク8の背面8aの第1の加工点P1が昇温する。ワーク8の第1の加工点P1への第1のビームB1の入射による熱は、第1の加工点P1からワーク8内の伝熱によって、第1の加工点P1から半楕円球状に3次元的に広がる。熱は、背面8aから表面8bへと伝搬する。つまり、ワーク8は、第1のビームB1が加工点P1に入射されると、背面8aから表面8bに向かって昇温される。なお、制御部16は、第1の光源12からの第1のビームB1の出力強度をワーク8の素材や厚さなどに基づいて制御し、ワーク8に実質的にダメージを与えないようにワーク8を昇温させる。このため、第1の光源12からの第1のビームB1により、実質的にダメージを受けない程度にワーク8の第1の加工点P1の反対側の第2の加工点P2が昇温する。このときの第2の加工点P2の温度は、ワーク8の溶融温度よりも低くする。
【0022】
制御部16は、第1の光源12から第1のビームB1を射出し、第1のビームB1のワーク8の第1の加工点P1への入射による熱が、背面8aから表面8bに伝搬(到達)する直前、同時、又は、直後のタイミングで、第2の光源14から第2のビームB2を射出し、第2のビームB2をワーク8の表面8bに入射する。
【0023】
第2のビームB2は、ワーク8の表面8bに直交する状態に入射される。第2のビームB2が入射される位置、すなわち第2の加工点P2は、第1のビームB1が入射される位置、すなわち、第1の加工点P1の反対側である。
【0024】
第1のビームB1からの伝熱により、温度が上昇した第2の加工点P2は、第2の光源14からの第2のビームB2によって、ワーク8の表面8bの第2の加工点P2がさらに昇温する。第2の加工点P2からワーク8内の伝熱によって、熱は表面8bから背面8aへと半球状に広がり、表面8bから背面8aに向かって伝搬する。つまり、ワーク8は、第2のビームB2が加工点P2に入射されると、表面8bから背面8aに向かって昇温される。
【0025】
ここで、第1の光源12からの第1のビームB1が照射されていない場合、第2の加工点P2は、ワーク8の溶融温度近くまで昇温していない。第1の光源12からの第1のビームB1が照射されている場合、第2の加工点P2を所定の温度(ワーク8の溶融温度)に到達させるための、第2の光源14からの第2のビームB2による入熱を低減することができる。つまり、第2の光源14からの第2のビームB2による瞬間的な入熱量を減らすことができる。これにより、瞬間的な入熱によるワーク8の急激な熱膨張による力積を低減することができる。したがって、ワーク8の第2の加工点P2の近傍へのダメージ、変形を低減することができる。具体的には、第2の加工点P2を加工するとき、第1の加工点P1からの伝熱により第2の加工点P2をプレヒートし、ワーク8に熱応力が発生することを防止し、残留応力の発生を防止する。
【0026】
第1の光源12から射出される第1のビームB1によって第2の加工点P2を予め昇温し、その後、第2の光源14から射出される第2のビームB2により、第2の加工点P2を所望の温度(溶融温度を超える温度)まで上昇させる。第2の光源14から射出される第2のビームB2のエネルギーは、第1のビームB1によって第2の加工点P2を昇温しない場合に比べ、予め昇温した場合のほうが小さく済む。つまり、第1の光源12からの第1のビームB1によってワーク8の表面8bの第2の加工点P2が昇温されることにより、第2の光源14からの第2のビームB2によりワーク8の表面8bの第2の加工点P2を所望の温度まで昇温させるために必要なエネルギーを小さくすることができる。このため、ワーク8を適切に加工するために必要な、第2の光源14からの第2のビームB2による入熱量(エネルギー量)を低減できる。
【0027】
そして、本実施形態の例では、第1の光源12から射出される第1のビームB1、及び、第2の光源14から射出される第2のビームB2のエネルギー出力に応じて、第2のビームB2の径である0.5mmの径の開口、又は、ワーク8の表面8bに対して凹む凹孔が形成される。なお、第2のビームB2がワーク8の表面8bから背面8aを貫通し、開口が形成されたとき、第2のビームB2の光軸O2上に第1の光源12がない。このため、第1のビームB1の第1の光源12に第2のビームB2が照射されることを防止する。
【0028】
本実施形態の光学加工装置10では、第1の光源12からの第1のビームB1により、ワーク8が溶融しない程度に加工位置を背面8a側から昇温させる。このとき、ワーク8の第1の加工点P1への第1のビームB1の照射によっては、ワーク8の第1の加工点P1及び第2の加工点P2は溶融温度に達しない。このため、第1のビームB1がワーク8の第1の加工点P1に照射されただけでは、ワーク8には、加工に伴うスパッタは生じない。そして、第1の光源12からの第1のビームB1により、ワーク8が溶融しない程度に加工位置(第2の加工点P2)を背面8a側から昇温させた状態で、第2の光源14からの第2のビームB2を照射して、ワーク8の第2の加工点P2を溶融温度以上にして加工する。
【0029】
ワーク8を加工する場合、ワーク8に対し、第1の光源12からの第1のビームB1の照射をしておくと、第1の光源12からの第1のビームB1の照射がない場合に比べて、第2の光源14からの第2のビームB2による入熱を低減することができる。つまり、第2の光源14からの第2のビームB2によるワーク8の表面8bへの瞬間的な入熱量を減らすことができる。これにより、ワーク8の第2の加工点P2に対し、瞬間的な入熱によるワーク8の急激な熱膨張による力積を低減することができる。したがって、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるスパッタの発生を低減することができる。また、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるドロスの発生を低減することができる。
【0030】
例えば、ワーク8の素材の一種として、アルミニウム合金は、高熱伝導率で、高反射率を有するため、光学加工を行うには難材とされている。本実施形態では、光学加工装置10は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射により、第1の加工点P1から第2の加工点P2にかけての伝熱経路を溶融温度よりも低い温度に昇温させる。この状態で、光学加工装置10は、第2の光源14からの第2のビームB2の照射により、第2の加工点P2を溶融温度以上にする。本実施形態では、第2の加工点P2への入熱量を、第2のビームB2のみで第2の加工点P2を加工しようとする場合に比べて低くすることができる。このため、光学加工装置10は、ワーク8が高反射率である材料であっても、第2のビームB2の照射によるワーク8への入熱量を低減することができる。したがって、高熱伝導率で、高反射率を有する素材であっても、光学加工装置10で加工することができる。また、このとき、光学加工装置10は、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるスパッタの発生を低減することができる。また、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるドロスの発生を低減することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、第1のビームB1及び第2のビームB2の波長を同じ波長として説明した。第1のビームB1及び第2のビームB2の波長は、互いに異なっていてもよい。第1のビームB1の第1の波長と第2のビームB2の第2の波長とが異なる場合、第1のビームB1の第1の波長は、溶融前のワーク8に対し、第2のビームB2の第2の波長に対する吸収率に比べ、吸収率が高くなるようにすることが好適である。この場合、第1の波長は、第2の波長よりも短いことが好適である。
【0032】
上述した実施形態によれば、光学加工装置10の第1の光源12は、ワーク8の背面8aの第1の加工点(第1の位置)P1からワーク8の反対側の表面8bに、ワーク8の溶融温度よりも低い温度の熱を伝熱させるように、第1の加工点(第1の位置)P1に第1のビームB1を照射する。光学加工装置10の第2の光源14は、ワーク8の第1の加工点(第1の位置)P1とは反対側の面の第2の加工点(第2の位置)P2に、ワーク8の溶融温度を超えるように第2のビームB2を照射する。
【0033】
また、制御部16は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射、及び、第2の光源14からの第2のビームB2の照射を制御する。制御部16は、第1の光源12からの第1の加工点(第1の位置)P1で第1のビームB1の照射による、第2の加工点(第2の位置)P2及びその近傍への伝熱に応じて、第2の光源14から第2のビームB2を照射する。
【0034】
制御部16は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射タイミング、及び、第2の光源14からの第2のビームB2の照射タイミングを制御する。制御部16は、ワーク8の情報(熱伝導率、厚さ(伝熱距離)等)に基づいて、第1の光源12からの第1のビームB1の照射タイミング、及び、第2の光源14からの第2のビームB2の照射タイミングを調整する。
【0035】
本実施形態によれば、ワーク8の加工時にスパッタの発生を低減可能な光学加工装置10を提供することができる。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
図2は、第1実施形態の光学加工装置10の変形例を示す。
【0037】
図2に示すように、第1の光源12とワーク8の背面8aとの間には、反射ミラー22及び集光レンズ24が配設されている。第2の光源14とワーク8の表面8bとの間には、反射ミラー26及び集光レンズ28が配設されている。
【0038】
第1のビームB1は、反射ミラー22で折り返され、集光レンズ24で適宜の第1のビームスポット径に集光されて、ワーク8の背面8aの第1の加工点P1に照射される。第2のビームB2は、反射ミラー26で折り返され、集光レンズ24で適宜の第2のビームスポット径に集光されて、ワーク8の表面8bの第2の加工点P2に照射される。
【0039】
この場合、光学加工装置10は、反射ミラー22及び集光レンズ24といった光学素子を用いて、第1のビームB1の光路を制御することができる。光学加工装置10は、反射ミラー26及び集光レンズ28といった光学素子を用いて、第2のビームB2の光路を制御することができる。したがって、光学加工装置10の第1の光源12は、ワーク8の背面8aに対向する位置でなくてもよく、第2の光源14は、ワーク8の表面8bに対向する位置でなくてもよい。このため、光学加工装置10は、第1の光源12及び第2の光源14を、所望の配置にすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る光学加工装置10について、
図3から
図6を参照して詳細に説明する。本実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材に同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0041】
図3には、第2実施形態の光学加工装置10の模式図を示す。本実施形態の光学加工装置10は、第1の光源12と、第2の光源14と、制御部16と、温度モニター部32,34と、ワーク8を移動させるステージ36とを備える。
図3中に示すように、XYZ直交座標系を取る。
【0042】
ステージ36は、ワーク8を移動させる移動部として用いられる。ステージ36は、2方向(±X方向)のように一次元(直線)的に移動可能であってもよく、4方向(±X方向及び±Y方向)のように二次元的に平面内を移動可能であってもよい。ここでは、説明の簡略化のため、ステージ36が1方向に移動する場合について例示する。なお、ステージ36は、ワーク8をZ方向には動かさないことが好適である。
【0043】
制御部16は、例えば図示しないモータ等のアクチュエータの制御により、ステージ36の移動を制御可能である。制御部16は、ステージ36によりワーク8を適宜の速度で移動させながら、第1のビームB1が照射される第1の加工点(第1の位置)P1、及び、第2のビームB2が照射される第2の加工点(第2の位置)を、第1の加工点P1と第2の加工点P2との位置関係を保つように制御する。
【0044】
ワーク8は、ステージ36により、例えば
図3の紙面右方向(+X方向)に走査される。あるいは、ワーク8は、
図3の紙面右方向(+X方向)でなく、紙面左方向(-X方向)に走査されてもよい。また、ワーク8が固定されていて、第1のビームB1と第2のビームB2が紙面左方向(-X軸方向)に走査されてもよい。いずれにしても、本実施形態の光学加工装置10は、ワーク8と、第1のビームB1及び第2のビームB2との、互いの相対位置が時系列変化可能に構成されている。
【0045】
本実施形態の温度モニター部32は、ワーク8の背面8aの、第1の加工点P1から所定距離D、離れた位置である第1の温度測定点T1の表面温度を測定する。温度モニター部34は、ワーク8の表面8bの、第2の加工点P2から所定距離D、離れた位置である第2の温度測定点T2の表面温度を測定する。本実施形態では、第1の温度測定点T1は、第1の加工点P1から
図3中の紙面左方向(-X方向)に距離Dの位置である。本実施形態では、第2の温度測定点T2は、第2の加工点P2から
図3中の紙面左方向(-X方向)に距離Dの位置である。温度モニター部32,34は、温度を非接触で測定するサーモカメラ(赤外カメラ)を用いることが好ましい。
【0046】
温度モニター部32,34は、例えばステージ36に支持されている。このため、温度モニター部32,34は、ワーク8が走査される方向に一緒に移動し、ワーク8の加工点P1,P2に対し、等距離Dの温度測定点T1,T2の温度を計測し続ける。
【0047】
第1のビームB1の第1の加工点P1でのビーム形状(スポット形状)は、例えば楕円であり、楕円の長軸の長さを第1のビームB1の径(第1のビームスポット径)とする。第1のビームB1の楕円の長軸は、走査方向に沿う方向とする。ただし、第1のビームB1のスポット形状及びスポット径は、この限りではなく、適宜に設定可能である。
【0048】
第2のビームB2の第2の加工点P2でのビーム形状(スポット形状)は、例えば円形である。第2の加工点P2での第2のビームB2のスポット径は、第2のビームB2がワーク8の表面8bに形成するスポットの代表的な寸法とする。例えば、第2のビームB2の照射によりワーク8の表面8b上に形成される円の直径を、スポット径とする。ただし、第2のビームB2のスポット形状及びスポット径は、この限りではなく、適宜に設定可能である。
【0049】
第1のビームB1及び第2のビームB2は、ワーク8を挟んで互いに反対側にあるとする。すなわち、ワーク8の表面8bへの第1のビームB1の照射位置は、第2のビームB2の光軸O2の軸上にある。第1のビームB1の第1のビームスポット径は第2のビームB2の第2のビームスポット径に比べて大きいとする。
【0050】
なお、第1のビームB1の照射位置(第1の加工点P1)は、第1のビームB1の照射位置への照射により、第2の加工点P2を溶融温度よりも低い、設定可能な所望の温度以上に昇温することができれば、第2のビームB2の光軸O2の軸上から僅かにずれていてもよい。
【0051】
本実施形態の光学加工装置10の動作について説明する。
【0052】
まず、
図5を参照しながら、ワーク8が固定、すなわち、ステージ36が固定されている場合を例にして説明する。
【0053】
図3における、ワーク8の第1の温度測定点T1はワーク8の背面8aにあり、第2の温度測定点T2はワーク8の表面8bにある。第1の温度測定点T1及び第2の温度測定点T2は、ワーク8の反対側の位置関係にある。
図4には、温度モニター部32,34を用いてそれぞれの点T1,T2の温度を測定したときの、温度の時刻列変化を示す。
【0054】
なお、
図4中の溶融温度は、実際に第1の加工点P1、第2の加工点P2でワーク8が溶融する温度ではなく、第1の加工点P1でワーク8が溶融する温度に達したとしたときの、ワーク8の熱伝導率及び距離D等から算出される推定温度である。
【0055】
ワーク8を加工するとき、制御部16は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射を開始させる(ステップS101)。第1の加工点P1から第1の温度測定点T1までの伝熱距離により、第1の光源12からの第1のビームB1の照射開始から時間t1で第1の温度測定点T1が昇温を開始する。第1の温度測定点T1の温度は、第1のビームB1による第1の加工点P1からの伝熱によってワーク8の溶融温度近くまで上昇する。第1の温度測定点T1の温度は、しばらくワーク8の溶融温度を超えないが、その近傍の温度を保つ。
【0056】
第2の温度測定点T2の温度は、第1のビームB1による第1の加工点P1からの伝熱によって、第1の温度測定点T1の温度よりも遅れて、徐々に昇温する。
【0057】
制御部16は、第1の温度測定点T1の温度が所定時間、所定範囲内の温度を維持しているか否か判断する(ステップS102)。
【0058】
なお、第1の温度測定点T1の温度が所定時間、所定範囲内の温度を維持していない場合(ステップS102-No)、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度が適正か否か判断する(ステップS103)。強度が適正でなく、強度調整が必要である場合(ステップS103-Yes)、制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度を調整する(ステップS104)。強度が適正で、強度調整が不要である場合(ステップS103-No)、制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度を維持する。
【0059】
制御部16は、第1の温度測定点T1の温度が所定時間、所定の温度範囲に維持されていること(ステップS102-Yes)をトリガーとし、時間t2において、第1の光源12からの第1のビームB1の照射を停止するとともに、第2の光源14からの第2のビームB2の照射を開始する(ステップS105)。第1の温度測定点T1の温度は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射の停止の直後から下降する。
【0060】
適宜の強度の第2のビームB2の照射による第2の加工点P2への入熱により、第2の温度測定点T2の温度は、溶融温度を超えて上昇する。制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えていないと判断した場合(ステップS106-No)、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度が適正か否か判断する(ステップS107)。強度調整が必要で、適正でない場合(ステップS107-Yes)、制御部16は、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を調整する(ステップS108)。強度調整が不要で、適正である場合(ステップS107-No)、制御部16は、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を維持する。
【0061】
制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えたと判断した(ステップS106-Yes)ら、第2の光源14からの第2のビームB2の照射を停止する(ステップS109)。
【0062】
このため、第2の温度測定点T2の温度は、第2の光源14からの第2のビームB2の照射の停止に伴って下降する。
【0063】
この場合、ワーク8には、第2のビームB2の径である0.5mmの径の開口が形成される。そして、第2のビームB2がワーク8の表面8bから背面8aを貫通したとき、第1のビームB1の第1の光源12に第2のビームB2が照射されることを防止する。
【0064】
次に、
図6を参照しながら、ワーク8がステージ36により、
図3中の紙面右方向(+X方向)に走査され、直線状の孔を形成する場合、又は、ワーク8を切断する場合を例にして説明する。ここでは、ワーク8の適宜の位置から所定の長さの直線状の孔を形成する場合を例にする。ここでは、光学加工装置10の制御部16の制御の一例を説明する。
【0065】
なお、温度モニター部32,34は、ステージ36によるワーク8の移動に伴って、ワーク8の加工点P1,P2に対し、等距離Dの温度測定点T1,T2の温度を計測し続ける。すなわち、ワーク8に対する温度測定点T1,T2は、相対的に変化する。
【0066】
ステージ36の移動によるワーク8の移動距離は予め設定されている。
【0067】
ワーク8を加工するとき、制御部16は、第1の光源12からの第1のビームB1の照射を開始させる(ステップS201)。なお、
図6のフローチャートにおいて、ステップS201からステップS204の処理は、
図5に示すフローチャートのステップS101からステップS104の処理と同じである。
【0068】
第2の温度測定点T2の温度は、第1のビームB1による第1の加工点P1からの伝熱によって、第1の温度測定点T1の温度よりも遅れて、徐々に昇温する。
【0069】
制御部16は、第1の温度測定点T1の温度が所定時間、所定の温度範囲に維持されていること(ステップS202-Yes)をトリガーとし、第2の光源14からの第2のビームB2の照射を開始する(ステップS205)。ここでは、第1の光源12からの第1のビームB1の照射を維持するため、第1の温度測定点T1の温度は、所定範囲内の温度を維持する。
【0070】
適宜の強度の第2のビームB2の照射による第2の加工点P2への入熱により、第2の温度測定点T2の温度は、溶融温度を超えて上昇する。制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えていないと判断した場合(S206-No)、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度が適正か否か判断する(ステップS207)。強度が適正でなく、強度調整が必要である場合(ステップS207-Yes)、制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を調整する(ステップS208)。強度が適正で、強度調整が不要である場合(ステップS207-No)、制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を維持する。
【0071】
制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えたと判断した(ステップS206-Yes)ら、貫通孔が形成されたと判断し、ステージ36によるワーク8の移動を開始する(ステップS209)。
【0072】
制御部16は、予め設定された距離ステージ36が移動し、ステージ36の移動の終点に到達したか否か判断する(ステップS210)。ステージ36の移動の終点に到達していないと判断したとき(ステップS210-No)、制御部16は、第1の温度測定点T1の温度が所定範囲内の温度を維持し、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えているか判断する(ステップS211)。
【0073】
制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えたと判断した(ステップS211-Yes)ら、再び、ステップ210に戻る。
【0074】
制御部16は、第2の温度測定点T2の温度が、溶融温度を超えていないと判断した(ステップS211-No)ら、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度が、適正か否か判断する(ステップS212)。強度が適正でなく、強度調整が必要である場合(ステップS212-Yes)、制御部16は、第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度、及び、第2の光源14から射出する第2のビームB2の強度を調整する(ステップS213)。強度が適正で、強度調整が不要である場合(ステップS212-No)、ステップS211の判断に戻る。
【0075】
ステップS213の第1の光源12から射出する第1のビームB1の強度の調整は、第1の温度測定点T1の温度が所定範囲内を維持するように、射出及び射出停止を繰り返すことを含む。
【0076】
ステージ36の移動の終点に到達したと判断したとき(ステップS210-Yes)、制御部16は、ワーク8に、予め設定した長さ分の貫通孔が形成されたと判断し、第1の光源12からの第1のビームB1の出力、第2の光源14からの第2のビームB2の出力を停止する(ステップS214)。
【0077】
このように、制御部16は、第1の光源12の第1のビームB1を第1の加工点P1に照射させ、照射を停止させるとともに、第2の光源14の第2のビームB2を第2の加工点P2に照射を開始させ、第2の温度測定点T2が溶融温度を超えた時点から、ステージ36を動作させる。ステージ36の移動に伴って第1の加工点P1、第2の加工点P2が移動する。このとき、制御部16は、第1の加工点P1に第1のビームB1を照射し続け、又は、照射及び照射停止を繰り返しながら、第1の温度測定点T1を、溶融温度の近傍まで近づける。
【0078】
制御部16は、第1のビームB1の照射により、第2の加工点P2が溶融温度に近づけられた状態で、第2の加工点P2に第2のビームB2を照射し続け、直線状の貫通孔を形成する。このとき、制御部16は、温度モニター部32,34で計測した温度測定値に基づいて第2の光源14からの第2のビームB2の照射強度を調整する。
【0079】
第1のビームB1と第2のビームB2がワーク8を挟んで対向するが、第1のビームB1の第1のビームスポット径は第2のビームB2の第2のビームスポット径に比べて大きい。このため、ワーク8が移動しながらも、第1の加工点P1への第1のビームB1の照射により、ワーク8の背面8aとは反対側の表面8bの第2の加工点P2は、溶融温度近くの温度まで昇温させられやすい。
【0080】
制御部16は、ワーク8に所望の長さの貫通孔が形成される直前に第1の光源12からの第1のビームB1の射出を停止させてもよい。
【0081】
この場合、ワーク8には、例えばステージ36による走査量の長さ分、第2のビームB2の径である0.5mmの幅の直線状の開口が形成される。
【0082】
なお、ワーク8の走査方向が
図3の紙面右方向(+X方向)から紙面左方向(-X方向)に切り替わった場合においても、光学加工装置10は、上記で述べたのと同様に機能する。
【0083】
図6では、ワーク8をステージ36により移動させるときの光学加工装置10の制御フローについて説明した。
図6に示す制御フローは、ワーク8を固定した状態で、例えば貫通孔を形成する場合に用いることができる。
【0084】
また、第1のビームB1の第1のビームスポット径は第2のビームB2の第2のビームスポット径に比べて小さくてもよい。その場合、第1のビームB1は第2のビームB2に比べ、走査方向に対して正方向の側にあるとする。すなわち、第2のビームB2の光軸O2上から、第1のビームB1の照射位置がずれていてもよい。この場合、伝熱により、第2の加工点P2をプレヒートすることになる。
【0085】
本実施形態では、ワーク8が、適宜の熱伝導率を有する金属の板材(例えばアルミニウム合金)であるとする。ワーク8である金属の板材は、適宜の熱伝導率を有し、第1の加工点P1から適宜の距離D、離れたとしても、時間差が少なく、第1の温度測定点T1が昇温を開始する。このため、光学加工装置10は、光学加工装置10による加工の際の制御に、温度測定値を用いながら、ワーク8を適切に加工することができる。
【0086】
したがって、光学加工装置10は、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるスパッタの発生を低減することができる。また、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるドロスの発生を低減することができる。
【0087】
(第2実施形態の変形例)
図7に示すように、光学加工装置10は、第1の光源12、第2の光源14、第1の集光レンズ24、第1のガルバノノミラー72、第2の集光レンズ28、第2のガルバノミラー74を有する。
【0088】
第1のガルバノミラー72は、第1の光源12と第1の集光レンズ24との間に配設される。第2のガルバノミラー74は、第2の光源14と第2の集光レンズ28との間に配設される。第1のガルバノミラー72及び第2のガルバノミラー74は、
図1から
図3に示す制御部16により制御される。このため、第1のビームB1は、第1のガルバノミラー72で走査される。第2のビームB2は、第2のガルバノミラー74で走査される。第1のビームB1が照射される第1の加工点P1(第1の位置)と第2のビームB2が照射される第2の加工点(第2の位置)P2とは、制御部16により、ワーク8の互いにほぼ反対側の面である位置関係を保ちながら移動するように制御される。
【0089】
この場合、光学加工装置10は、ワーク8を走査する必要がない。このため、本変形例では、第2実施形態で説明したステージ36は不要になる。本変形例では、ワーク8を例えばステージ36を用いて走査する場合に比べて、第1の光源12からの第1のビームB1、及び、第2の光源14からの第2のビームB2を高速で走査することができる。したがって、本変形例の光学加工装置10は、ワーク8を例えばステージ36を用いて走査する場合に比べて、高速で加工することができる。
【0090】
本変形例の
図7に示す光学加工装置10では、第1のビームB1と第2のビームB2に対するガルバノミラー72,74を独立に配置する。光学加工装置10は、1つのガルバノミラー(図示せず)を動作させて、第1のビームB1及び第2のビームB2を適宜に走査するようにしてもよい。
【0091】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る光学加工装置10について、
図8を参照して説明する。
【0092】
図8に、第3実施形態の光学加工装置10の模式的な斜視図を示す。本実施形態の光学加工装置10は、第1の光源12と、第2の光源14と、制御部16(
図1から
図3参照)とを備える。光学加工装置10は、さらに、第1のアシストガス口42と、第2のアシストガス口44とを備える。
【0093】
第1のアシストガス口42は、ワーク8の背面8a側に設けられている。第1のアシストガス口42は、例えばアシストガス吸入部として用いられる。第2のアシストガス口44は、ワーク8の表面8b側に設けられている。第2のアシストガス口44は、例えばアシストガス噴出部として用いられる。制御部16は、第2のアシストガス口44から噴出するアシストガスGの噴出タイミング、流量等を制御する。制御部16は、第1のアシストガス口42でのガスGの吸入タイミング、吸入量等を制御する。
【0094】
第2のアシストガス口44からは、アシストガスGが噴出され、第2の加工点P2をアシストガス雰囲気にする。アシストガスGとして使用するガスは酸素ガスが多いが、窒素ガスも用いることができる。酸素ガスは金属の切断において酸化反応熱を切断に利用できるため、切断速度や加工限界を向上させることができる。アシストガスGとして酸素ガスを用いる場合、切断面に酸化皮膜を生成するため、酸化皮膜を生成せずに切断するときには、窒素ガスやアルゴンガスなどの他のガスが用いられる。光学加工装置10は、ワーク8の第2の加工点P2をアシストガスGでパージして覆い、第2の加工点P2の酸化の度合いを調整することにより、ワーク8の加工精度を向上できる。
【0095】
第2のアシストガス口44である、アシストガスGを噴射する装置は、第2のビームB2の入熱によって溶融した金属を吹き飛ばすために高速ガス流を発生させる装置でよい。第2のアシストガス口44は、例えば、ガスボンベとガス圧調整器(レギュレーター)で構成される。ワーク8の加工時に溶融金属を吹き飛ばす能力は、アシストガスGの圧力、第2のアシストガス口(切断用ノズル)44のサイズや設定に左右される。
【0096】
ワーク8の第2の加工点P2を切断するカッティング加工を行う場合、第1のアシストガス口42からアシストガスGを吸入してもよい。この場合、第2のアシストガス口44から噴射されたアシストガスGは第2の加工点P2を通って第1のアシストガス口42に向かう。このようなアシストガスGの流路が形成されることにより、第2の加工点P2で生じたスパッタやドロス等をアシストガスGとともに除去できる。
【0097】
ここで、第1のビームB1によってワーク8の背面8aの第1の加工点P1が昇温されている。このため、ワーク8の切断によって形成されたアシストガスGの流路は、背面8a側での先細りが低減される。これにより、アシストガスGが第2のアシストガス口44から第1のアシストガス口42に流れやすくなる。
【0098】
なお、第1のアシストガス口(アシストガス吸入部)42と、第2のアシストガス口(アシストガス噴出部)44は、互いの配置を入れ替えてもよい。あるいは、第1のアシストガス口42及び第2のアシストガス口44は、両者ともアシストガス噴出部として形成されていてもよい。
【0099】
(第3実施形態の変形例)
以下、第3実施形態の変形例に係る光学加工装置10について、
図9を参照して説明する。本変形例の光学加工装置10は、基本的には、第3実施形態の光学加工装置10と主な構成は同じである。
【0100】
図9に、第3実施形態の変形例に係る光学加工装置10の模式図を示す。光学加工装置10は、第1のビームB1の光路上に第1の集光レンズ24を有する。光学加工装置10は、第2のビームB2の光路上に第2の集光レンズ28を備える。第1の集光レンズ24の光軸O1は、ワーク8の法線N1に対して傾いている。第2の集光レンズ28の光軸O2はワーク8の法線N2に沿う。
【0101】
第1のアシストガス口42は、ワーク8の背面8a側に設けられている。第1のアシストガス口42は、例えばアシストガス吸入部として用いられる。第2のアシストガス口44は、ワーク8の表面8b側に設けられている。第2のアシストガス口44は、例えばアシストガス噴出部として用いられる。
【0102】
第1のアシストガス口42は第1のノズル壁面42aを備える。第1の光源12の光軸O1を、ワーク8の第1の加工点(第1の位置)P1を含む背面8aの法線N1に対して傾ける。
【0103】
第2のアシストガス口44は第2のノズル壁面44aを備える。第2の集光レンズ28は、第2のアシストガス口44の第2のノズル壁面44aの内側に配設されている。アシストガスGは、第2の集光レンズ28と、第2のノズル壁面44aとの間を通って、第2の加工点P2に供給される。このため、第2の光源14からの第2のビームB2の光軸O2と、第2のアシストガス口44の中心軸とを、一致させることができる。
【0104】
第1のビームB1のスポットは、例えば矩形状で、
図9中の紙面垂直方向を長辺とする。第1のアシストガス口42もそれにしたがって矩形状でよい。ただし、第1のビームB1のスポットの形状は、これに限らない。
【0105】
第2のビームB2のスポットは、例えば矩形状で、
図9中の紙面垂直方向を長辺とする。第2のアシストガス口44もそれにしたがって矩形状でよい。ただし、第2のビームB2のスポットの形状は、これに限らない。
【0106】
第1のビームB1の第1の光軸O1がワーク8の背面8aに対して傾いている。このため、ワーク8の背面8a側の第1のアシストガス口42と、ワーク8の表面8b側の第2のアシストガス口44とを、ワーク8を間に配置した状態で、実質的に対向させることができる。これにより、アシストガスGがワーク8の加工に伴って、表面8b側から背面8a側に流れやすくなる。したがって、本変形例の光学加工装置10を用いることで、ワーク8の加工時に生じるスパッタやドロスを除去しやすくなる。
【0107】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係る光学加工装置10について、
図10及び
図11を参照して説明する。
【0108】
本実施形態の光学加工装置10は、第1の光源12と、第2の光源14と、制御部16(
図1から
図3参照)とを備える。光学加工装置10は、さらに、第1の集光部62と第2の集光部64を備える。本実施形態はさらに、ワーク8の表面8bの第2の加工点P2から所定距離D、離れた位置である温度測定点T2の温度を非接触で測定する温度モニター部(赤外カメラ)34(
図3参照)を備えることが好ましい。
【0109】
図10には、第4実施形態の第1の集光部62及び第2の集光部64の斜視図を示す。
図11には、第4実施形態の
図10中の第1の集光部62を拡大した斜視図を示す。
【0110】
ここで、本実施形態では、第1のビームB1、第2のビームB2はレーザー光であるとする。第1の光源12は固体レーザーの発光面でもよく、ファイバーレーザーの射出端面でもよい。第2の光源14は固体レーザーの発光面でもよく、ファイバーレーザーの射出端面でもよい。
【0111】
第1の集光部62は、第1のレンズ62a、第2のレンズ(第1の光学素子)62b、第3のレンズ(第3の光学素子)62cを備える。第1のレンズ62aは、第1の光源12から射出された第1のビームB1の光路上に配置される。第2のレンズ62bは、第1のレンズ62aを通した第1のビームB1の光路上に配置される。第3のレンズ62cは、第2のレンズ62bを通した第1のビームB1の光路上に配置される。
【0112】
第1のレンズ62aは、第1の光源12から射出された光線群を平行光(互いに平行な光線群)に変換する。第1のレンズ62aは例えば凸レンズでよい。
【0113】
第2のレンズ62bは、平行光を、1軸方向に発散する発散光とする。すなわち、第2のレンズ62bは、第1の光源12から射出された第1のビームB1の第1の加工点(第1の位置)P1でのビーム形状を、ワーク8の背面8a上の任意の第1の軸方向及び第1の軸方向に直交する第2の軸方向のうち、第1の軸方向の1軸方向に延びる直線状にする。第2のレンズ62bは例えば、パウエル(Powell)レンズを用いる。
【0114】
第3のレンズ62cは、1軸方向に発散する発散光を発散させた状態を維持し、発散光と直交する方向の光を集光する。第3のレンズ62cは、第2のレンズ62bとワーク8との間に設けられ、第2のレンズ62bで発散させた第2の軸方向に発散する第1のビームB1を第1の軸方向に集光する。第3のレンズ62cは、例えばシリンドリカルレンズを用いる。
【0115】
以上により、第1の光源12から射出される第1のビームB1は、第1のレンズ62a、第2のレンズ62b、第3のレンズ62cを順に通ると、ワーク8の背面8a上に矩形状のビームスポットを形成する。矩形の短辺が十分に小さい場合、ワーク8の背面8a上の第1のビームB1のビームスポット形状は直線とみなしてもよい。
【0116】
同様に、第2の集光部64は、第1のレンズ64a、第2のレンズ(第2の光学素子)64b、第3のレンズ(第4の光学素子)64cを備える。
【0117】
第1のレンズ64aは、第2の光源14から射出された光線群を平行光(互いに平行な光線群)に変換する。第1のレンズ64aは例えば凸レンズでよい。
【0118】
第2のレンズ64bは、平行光を、1軸方向に発散する発散光とする。すなわち、第2のレンズ64bは、第2の光源14から射出された第2のビームB2の第2の加工点(第2の位置)P2でのビーム形状を、第1の集光部62で説明した第1の軸方向に平行な第3の軸方向と、第3の軸方向に直交する第4の軸方向とのうち、第3の軸方向の1軸方向に延びる直線状にする。第2のレンズ64bは例えば、パウエル(Powell)レンズを用いる。
【0119】
第3のレンズ64cは、1軸方向に発散する発散光を発散させた状態を維持し、発散光と直交する方向の光を集光する。第3のレンズ64cは、第2のレンズ64bとワーク8との間に設けられ、第2のレンズ64bで発散させた第4の軸方向に発散する第2のビームB2を第3の軸方向に集光する。第3のレンズ64cは、例えばシリンドリカルレンズを用いる。
【0120】
以上により、第2の光源14からの第2のビームB2は、第1のレンズ64a、第2のレンズ64b、第3のレンズ64cを順に通ると、ワーク8の表面8b上に矩形状のビームスポットが形成される。矩形の短辺が十分に小さい場合、第2のビームB2のビームスポット形状は直線とみなしてもよい。
【0121】
このようにビームB1,B2スポットが矩形であり、ビームB1,B2の発散光の長辺がワーク8に対して十分に長く、ビームB1,B2がワーク8を挟んで対向する位置に照射される場合、第1の加工点P1として、略直線状にワーク8を加熱し、第2の加工点P2として、略直線状にワーク8を加熱する。第1のビームB1により、直線状の第2の加工点P2を溶融温度近傍まで加熱(プレヒート)し、第2のビームB2の照射により、直線状の第2の加工点P2を略直線状に切断することができる。したがって、本実施形態に係る光学加工装置10は、ワーク8に対して第1のビームB1及び第2のビームB2を走査することなく、ワーク8に対し、適宜の長さの加工距離を加工することができる。つまり、本実施形態の光学加工装置10を用いて切断加工を行う場合、一回あるいは少ない回数のビーム照射で、第1のビームB1及び第2のビームB2を走査することなくワーク8を切断することができる。
【0122】
光学加工装置10が温度モニター部(赤外カメラ)34(
図3参照)を備える場合、制御部16は、温度測定点T2の温度を監視しながら、第1の光源12から第1のビームB1を射出し、その後、第2の光源14から第2のビームB2を射出してもよい。これにより、光学加工装置10は、ワーク8の温度を適正な温度に保ちながら切断等の加工を行うことができる。
【0123】
制御部16は、第1のビームB1の照射、第2のビームB2の照射を、第1実施形態及び第2実施形態で説明したように行うことができる。この場合、光学加工装置10は、温度モニター部34が不要となる。
【0124】
したがって、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるスパッタの発生を低減することができる。また、光学加工装置10は、ワーク8の加工時に、ワーク8の第2の加工点P2が溶融することによるドロスの発生を低減することができる。
【0125】
なお、第1の集光部62の第1のレンズ62aは、第1のビームB1が第1の光源12から平行光として射出されるのであれば、不要となる。同様に、第2の集光部64の第1のレンズ64aは、第2のビームB2が第2の光源14から平行光として射出されるのであれば、不要となる。
【0126】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、ワーク8の加工時にスパッタの発生を低減可能な光学加工装置10を提供することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、特許出願時の請求項を付記する。
[1]
ワークの第1の位置から前記ワークの反対側の面の第2の位置に、前記ワークの溶融温度よりも低い温度の熱を伝熱させるように、前記第1の位置に第1のビームを照射する、第1の光源と、
前記第2の位置が前記伝熱により昇温した状態で、前記第2の位置に、前記ワークの溶融温度を超えるように第2のビームを照射する第2の光源と
を備える、光学加工装置。
[2]
前記第1の光源からの前記第1のビームの照射、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の光源からの前記第1の位置での前記第1のビームの照射による、前記第2の位置への前記伝熱に応じて、前記第2の光源から前記第2のビームを照射させる、付記[1]に記載の光学加工装置。
[3]
前記制御部は、前記第1の光源からの前記第1のビームの照射タイミング、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射タイミングを制御し、
前記制御部は、前記ワークの情報に基づいて、前記第1の光源からの前記第1のビームの照射タイミング、及び、前記第2の光源からの前記第2のビームの照射タイミングを調整する、付記[2]に記載の光学加工装置。
[4]
前記ワークの前記第2の位置から所定距離、離れた位置の表面温度を計測する温度モニター部を備え、
前記制御部は、前記温度モニター部で計測した温度測定値に基づいて前記第2の光源からの前記第2のビームの照射強度を調整する、付記[2]又は付記[3]に記載の光学加工装置。
[5]
前記制御部は、前記第1のビームが照射される前記第1の位置、及び、前記第2のビームが照射される前記第2の位置を、前記第1の位置と前記第2の位置との位置関係を保つように制御する、付記[2]ないし付記[4]のいずれか1に記載の光学加工装置。
[6]
前記第1のビームの前記第1の位置での第1のビームスポット径を、前記第2のビームの前記第2の位置での第2のビームスポット径に対して大きくする、付記[1]ないし付記[5]のいずれか1に記載の光学加工装置。
[7]
前記第1のビームの第1の波長は、
前記第2のビームの第2の波長とは異なり、
前記第1の波長は、溶融前の前記ワークに対し、前記第2の波長に対する吸収率に比べ、吸収率が高くなるようにする、
付記[1]ないし付記[6]のいずれか1に記載の光学加工装置。
[8]
前記第1の光源と前記ワークとの間に設けられ、前記第1の光源から射出された前記第1のビームの前記第1の位置でのビーム形状を、第1の軸方向及び前記第1の軸方向に直交する第2の軸方向のうち、前記第1の軸方向の1軸方向に延びる直線状に発散させる第1の光学素子を有する、第1の集光部と、
前記第2の光源と前記ワークとの間に設けられ、前記第2の光源から射出された前記第2のビームの前記第2の位置でのビーム形状を、前記第1の軸方向に平行な第3の軸方向と、前記第3の軸方向に直交する第4の軸方向とのうち、前記第3の軸方向の1軸方向に延びる直線状に発散させる第2の光学素子を有する、第2の集光部と
を備える、付記[1]ないし付記[4]のいずれか1に記載の光学加工装置。
[9]
前記第1の集光部は、前記第1の光学素子と前記ワークとの間に設けられ、前記第1の光学素子で発散させた前記第2の軸方向に発散する前記第1のビームを前記第1の軸方向に集光する第3の光学素子を有し、
前記第2の集光部は、前記第2の光学素子と前記ワークとの間に設けられ、前記第2の光学素子で発散させた前記第4の軸方向に発散する前記第2のビームを前記第3の軸方向に集光する第4の光学素子を有する、付記[8]に記載の光学加工装置。
[10]
前記ワークの前記第1の位置の側に設けられ、ガスを射出又は吸入する第1のアシストガス口を備え、
前記ワークの前記第2の位置の側に設けられ、前記ガスを射出又は吸入する第2のアシストガス口を備え、
前記第1の光源の光軸を、前記ワークの前記第1の位置を含む面の法線に対して傾け、 前記第1のアシストガス口と、前記第2のアシストガス口とを、前記ワークを間に配置した状態で、対向させる、
付記[1]ないし付記[9]のいずれか1に記載の光学加工装置。
【符号の説明】
【0128】
8…ワーク、8a…背面、8b…表面、10…光学加工装置、12…第1の光源、14…第2の光源、16…制御部、B1…第1のビーム、B2…第2のビーム、N1,N2…法線、O1…第1の光軸、O2…第2の光軸、P1…第1の加工点、P2…第2の加工点、T1…第1の温度測定点、T2…第2の温度測定点。