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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】欠陥検査装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20240213BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240213BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G06T1/00 300
G06T7/00 610C
G01N21/88 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020155434
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049302
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 京佳
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 昭行
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-266747(JP,A)
【文献】特開2016-145887(JP,A)
【文献】特開2019-129169(JP,A)
【文献】特開2013-140468(JP,A)
【文献】特開2011-007553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/50
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 -20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G01N 21/84 -21/958
G01B 11/00 -11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計ソフトウェアにより作成された第1設計データに基づく第1設計画像と、前記第1設計データに基づき製造された欠陥がない第1検査対象を撮影した画像であって、前記第1設計画像に対応する第1撮影画像とを紐付けた辞書データを格納する格納部と、
前記設計ソフトウェアにより作成された第2設計データに基づく第2設計画像を取得する第1取得部と、
前記辞書データを参照して、前記第2設計画像と類似する第1設計画像を探索する探索部と、
前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を用いて、前記第2設計データに基づく欠陥がない場合の第2検査対象の疑似撮影画像である参照画像を生成する生成部と、
を具備し、
前記第1設計画像は、前記第1撮影画像よりも広い画像領域の情報を含む、欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第1設計画像のサイズは、前記第1撮影画像のサイズよりも大きい、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記第1設計画像は、前記第1撮影画像よりも大きい領域に対して、前記第1設計画像の周辺画素の情報が前記第1設計画像内に含まれるフィルタ処理が行なわれた画像である、請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記第1設計画像は、前記第1設計データに基づく設計画像全体のうちの部分画像であり、
前記第1撮影画像は、前記第1検査対象を撮影した撮影画像全体のうちの前記第1設計画像に対応する部分画像である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記格納部は、
前記第1設計データに基づく設計画像全体と、前記第1設計画像となる前記設計画像全体からの切り出し位置を特定する第1位置情報と、前記欠陥のない第1検査対象を撮影した撮影画像全体と、前記第1撮影画像となる前記撮影画像全体からの切り出し位置を特定する第2位置情報とをそれぞれ対応付けて前記辞書データとして格納する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記第2設計データに基づき製造された第2検査対象を撮影した画像である第2撮影画像を取得する第2取得部と、
前記第2撮影画像と前記参照画像とを比較して前記第2検査対象の欠陥位置を推定する推定部と、をさらに具備する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記探索部は、前記第2設計画像の一部である探索画像を切り出し、前記探索画像と類似する第1設計画像を探索し、
前記生成部は、前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を、前記探索画像の切り出し位置に対応させて貼り付けることで前記参照画像を生成する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記生成部は、複数の第1撮影画像が重畳した画素位置において、各第1撮影画像の中心からの距離に応じて画素値を重み付けすることにより、前記参照画像の前記画素位置の画素値を算出する、請求項7に記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記生成部は、複数の第1撮影画像が重畳した画素位置において、前記探索画像と第1設計画像との類似度に応じて各第1撮影画像の画素値を重み付けすることにより、前記参照画像の前記画素位置の画素値を算出する、請求項7または請求項8に記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記探索部は、前記類似する第1設計画像を前記切り出し位置に対して小数画素精度で位置合わせすることで対応位置を決定し、
前記生成部は、前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を前記対応位置に貼り付ける、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記格納部は、複数の前記第1設計画像を木構造で保持した前記辞書データを格納し、
前記木構造の構築段階または更新段階において、画像の類似度が閾値以上となる複数の第1設計画像が削除または平準化される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項12】
前記格納部は、複数の前記第1設計画像を木構造で保持した前記辞書データを格納し、
前記木構造の構築段階または更新段階において、前記画像の類似度が閾値以上となる複数の第1設計画像それぞれに紐付く第1撮影画像が平均化される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項13】
前記類似する第1設計画像として選択される頻度が閾値以下となる第1設計画像と対応する第1撮影画像とを前記辞書データから削除する更新部をさらに具備する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項14】
前記格納部は、
前記設計画像全体として、前記類似する第1設計画像として選択される頻度が閾値以下となる第1設計画像の前記切り出し位置に、他の第1設計画像の部分画像を貼り付けた合成画像を格納する、請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項15】
設計ソフトウェアにより作成された第1設計データに基づく第1設計画像と、前記第1設計データに基づき製造された欠陥がない第1検査対象を撮影した画像であって、前記第1設計画像に対応する第1撮影画像とを紐付けた辞書データを格納部に格納し、
前記設計ソフトウェアにより作成された第2設計データに基づく第2設計画像を取得し、
前記辞書データを参照して、前記第2設計画像と類似する第1設計画像を探索し、
前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を用いて、前記第2設計データに基づく欠陥がない場合の第2検査対象の疑似撮影画像である参照画像を生成し、
前記第1設計画像は、前記第1撮影画像よりも広い画像領域の情報を含む、欠陥検査方法。
【請求項16】
コンピュータを、
設計ソフトウェアにより作成された第1設計データに基づく第1設計画像と、前記第1設計データに基づき製造された欠陥がない第1検査対象を撮影した画像であって、前記第1設計画像に対応する第1撮影画像とを紐付けた辞書データを格納する格納手段と、
前記設計ソフトウェアにより作成された第2設計データに基づく第2設計画像を取得する取得手段と、
前記辞書データを参照して、前記第2設計画像と類似する第1設計画像を探索する探索手段と、
前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を用いて、前記第2設計データに基づく欠陥がない場合の第2検査対象の疑似撮影画像である参照画像を生成する生成手段として機能させるための欠陥検査プログラムであって、
前記第1設計画像は、前記第1撮影画像よりも広い画像領域の情報を含む、欠陥検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検査装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの回路パターンに基づき製品を製造する工程では、製品の歩留まりの低下を抑えるため、欠陥検査が重要である。例えば半導体デバイスにおいては、Die to Database検査と呼ばれる、回路パターンの撮影画像と回路パターンから撮影画像を疑似的に生成したマスクとを比較する欠陥検査が一般に実施される。Die to Database検査では、欠陥がないマスクを生成することが重要である。
【0003】
マスクの生成手法としては、例えば、サイズが同じである、回路パターンの設計画像のパッチ画像と、当該回路パターンに基づき生成された製品の撮影画像のパッチ画像とをペアとした辞書を作成しておき、検査対象の画像に類似する設計画像のパッチ画像を辞書内で探索する。類似した設計画像のペアである撮影画像のパッチ画像を貼り合わせることでマスクを生成する手法がある。しかし、撮影画像のパッチ画像は、切り出し元となる撮影画像の露光方法および撮影方法によって、周囲のパターンの影響を受けやすい。よって、パッチ画像が類似であっても、当該パッチ画像を切り出し元となる設計画像の回路パターンが異なれば、同サイズである撮影画像の輝度や色合いなどが異なることが想定され、適切なマスクを生成することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-287419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、高精度な欠陥検査を支援できる欠陥検査装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る欠陥検査装置は、格納部と、第1取得部と、探索部と、生成部とを含む。格納部は、設計ソフトウェアにより作成された第1設計データに基づく第1設計画像と、前記第1設計データに基づき製造された欠陥がない第1検査対象を撮影した画像であって、前記第1設計画像に対応する第1撮影画像とを紐付けた辞書データを格納する。第1取得部は、前記設計ソフトウェアにより作成された第2設計データに基づく第2設計画像を取得する。探索部は、前記辞書データを参照して、前記第2設計画像と類似する第1設計画像を探索する。生成部は、前記類似する第1設計画像に紐付く第1撮影画像を用いて、前記第2設計データに基づく欠陥がない場合の第2検査対象の疑似撮影画像である参照画像を生成する。前記第1設計画像は、前記第1撮影画像よりも広い画像領域の情報を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る欠陥検査装置を示すブロック図。
図2】辞書格納部に格納される辞書データの第1例を示す図。
図3】辞書格納部に格納される辞書データの第2例を示す図。
図4】辞書格納部に格納される辞書データの第3例となる、画像情報の一例を示す図。
図5】辞書格納部に格納される辞書データの第3例となる、位置情報を示すテーブルの一例を示す図。
図6】第1の実施形態に係る欠陥検査装置の動作の第1例を示すフローチャート。
図7】第1の実施形態に係る欠陥検査装置の動作の第2例を示すフローチャート。
図8】第1の実施形態に係る欠陥検査装置による参照画像の生成処理の概念図。
図9】参照画像の生成処理の第1例を示す図。
図10】参照画像の生成処理の第2例を示す図。
図11】設計パッチ画像を縮小してパターンマッチングを行なう一例を示す図。
図12】辞書データの木構造の一例を説明する概念図。
図13】辞書データの木構造に基づく探索例を説明する概念図。
図14】第2の実施形態に係る欠陥検査装置を示すブロック図。
図15】欠陥検査装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る欠陥検査装置、方法およびプログラムについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行なうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る欠陥検査装置について図1のブロック図を参照して説明する。
第1の実施形態に係る欠陥検査装置10は、辞書格納部101と、設計画像取得部102と、探索画像生成部103と、パッチ探索部104と、参照画像生成部105とを含む。
【0010】
辞書格納部101は、1以上の第1設計画像と、対応する1以上の第1撮影画像とのペアを複数有する辞書データを格納する。第1設計画像は、設計ソフトウェアにより作成された第1設計データに基づく画像である。設計ソフトウェアは、例えばCAD(Computer Aided Design)のようなコンピュータ設計で用いられる設計データに基づき生成された画像である。第1撮影画像は、第1設計データに基づき製造された第1検査対象において、欠陥がない場合の第1検査対象を撮影した撮影画像である。第1撮影画像としては、例えば目視または他の外観検査システムにより撮影画像に欠陥がないと判定された画像を用いればよい。ここで第1設計画像は、第1撮影画像よりも広い画像領域の情報を含む。
【0011】
設計画像取得部102は、例えば外部から、設計ソフトウェアにより作成された、第1設計データとは異なる第2設計データに基づく第2設計画像を取得する。第2設計データは、例えば、欠陥検査の対象となる検査対象品の設計データである。
【0012】
探索画像生成部103は、設計画像取得部102から第2設計画像を取得し、第2設計画像から探索画像を生成する。探索画像は、第2設計画像の一部を切り出した画像であり、探索のキーとなる。なお、探索画像生成部103は、辞書格納部101に格納される辞書データのデータ構造によって、探索画像の生成処理が異なる。探索画像の生成処理の具体例については、図6および図7を参照して後述する。
【0013】
パッチ探索部104は、辞書格納部101に格納される辞書データから、第2設計画像と類似する第1設計画像を探索し、類似する第1設計画像と当該第1設計画像に紐づく第1撮影画像とを取得する。
【0014】
参照画像生成部105は、設計画像取得部102から第2設計画像を受け取り、パッチ探索部104から第2設計画像に類似する第1設計画像と当該第1設計画像に紐づく第1撮影画像とを受け取り、第1撮影画像を用いて参照画像を生成する。参照画像は、複数の第1撮影画像から生成される、第2設計データに基づく欠陥がない場合の第2検査対象の疑似的な撮影画像である。
具体的に、参照画像生成部105は、第2設計画像から切り出された探索画像と第1設計画像とが対応する対応位置を特定し、参照画像を生成する領域(以下、参照画像領域という)において当該対応位置に第1撮影画像を貼り付ける。第2設計画像の全ての領域について処理されることで、例えば欠陥検査に用いられるマスクとなる参照画像が設計される。
【0015】
次に、辞書格納部101に格納される辞書データの第1例について図2を参照して説明する。
辞書データの第1例では、第1設計画像として、第1設計データに基づく設計画像全体のうちの部分画像である設計パッチ画像21を想定する。また、第1撮影画像として、第1検査対象を撮影した撮影画像全体のうちの、設計パッチ画像21に対応する部分画像である撮影パッチ画像22を想定する。図2は、辞書データとして保持される、設計パッチ画像21と、設計パッチ画像21に対応する撮影パッチ画像22とのペアの一例を示す。なお、以下では、設計パッチ画像および撮影パッチ画像両方を指す場合は、単にパッチ画像ともいう。
【0016】
ここで、設計パッチ画像21のサイズは、撮影パッチ画像22のサイズよりも大きく設定される。すなわち、設計パッチ画像21と同じサイズの領域は、撮影パッチ画像22を囲む領域23であり、撮影パッチ画像22は、領域23よりも小さいサイズとなるように設定されればよい。具体的に、撮影パッチ画像22が5×5画素のサイズであるとすると、設計パッチ画像21は、5×5画素よりも大きいサイズの画像、例えば9×9画素のサイズであればよい。このように、設計パッチ画像21のサイズが大きいため、設計パッチ画像21は、撮影パッチ画像22よりも広い画像領域の情報を含む。
【0017】
また、第1の実施形態では、設計パッチ画像21と撮影パッチ画像22とは、中心を共通とした対応関係を想定する。例えば、設計パッチ画像21が9×9画素のサイズであれば、撮影パッチ画像は、中心部分の5×5画素の領域に対応する。なお、これに限らず、撮影パッチ画像22は、設計パッチ画像21の左上の5×5画素の領域に対応する画像としても良く、露光の方向など撮影条件を考慮して設計パッチ画像21と撮影パッチ画像22との対応関係を決めてもよい。
【0018】
また、パッチ画像の形状は、ここでは、正方形の場合を想定するが、これに限らず、台形、平行四辺形など他の四角形でもよいし、三角形や五角形以上の多角形でもよい。または、円形、十字形状など、どのような形状であってもよい。例えば、直線が多い、曲線が多いなどの検査対象の回路パターンに応じて、パッチ画像の形状を決定してもよい。
【0019】
次に、辞書格納部101に格納される辞書データの第2例について図3を参照して説明する。
図3図2と同様に、設計パッチ画像と対応する撮影パッチ画像とのペアを示す。図3では、設計パッチ画像31は、撮影パッチ画像22と同じサイズであるが、設計パッチ画像31は、設計パッチ画像31よりも大きい領域32の画像をフィルタ処理対象として、フィルタ処理が行なわれた画像である。つまり、フィルタ処理が施された設計パッチ画像31と、設計パッチ画像31に対応する同じサイズの撮影パッチ画像22とのペアが辞書データとして保持される。
【0020】
フィルタ処理は、移動平均フィルタ、ガウシアンフィルタなどの平滑化フィルタを想定するが、フィルタ処理により領域32の画像情報(例えば、輝度値および色情報)、つまり設計パッチ画像31の周辺画素の情報が設計パッチ画像31内に含まれるようなフィルタ処理であればよい。このように、設計パッチ画像31は、撮影パッチ画像22よりも広い画像領域の情報を含む。
【0021】
次に、辞書格納部101の格納される辞書データの第3例について図4および図5を参照して説明する。辞書データの第3例では、第1例および第2例のようなパッチ画像ではなく、画像全体を保持し、パッチ画像として切り出す位置情報を併せて保持する。
【0022】
図4に示すように、辞書データの第3例では、第1設計画像41は、第1設計データに基づいて生成された設計画像全体であり、第1撮影画像42は、設計画像41に対応する画像であって、欠陥のない第1検査対象を撮影した撮影画像全体である。第1撮影画像42は、上述の場合と同様、例えば検査者の目視により製品に欠陥がないと判定された画像とする。ここで、第1設計画像41から切り出される設計パッチ画像のサイズは、第1撮影画像42から切り出される撮影パッチ画像のサイズよりも大きい。具体的に、図4に示す設計パッチ画像のサイズAが、対応する撮影パッチ画像のサイズBよりも大きくなるように設定される。
【0023】
図5は、第1設計画像41から切り出される設計パッチ画像の切り出し位置、および第1撮影画像42から切り出される撮影パッチ画像の切り出し位置をそれぞれ特定する位置情報を示すテーブルである。
【0024】
図5のテーブルでは、画像IDと、パッチ番号と、座標と、パッチサイズとがそれぞれ対応付けられて格納される。画像IDは、第1設計画像41または第1撮影画像42を一意に識別するための識別子である。図5の例では、第1設計画像の場合は(設計)、第1撮影画像の場合は(撮影)と表現する。
パッチ番号は、第1設計画像41から切り出される設計パッチ画像、または第1撮影画像42から切り出される撮影パッチ画像を識別する番号である。なお、パッチ番号は、設計パッチ画像と撮影パッチ画像とを同じ値とすることを想定するが、設計パッチ画像と撮影パッチ画像との対応関係が分かれば、どのような値を設定してもよい。
【0025】
座標は、第1設計画像41の場合は、第1設計画像41において規定された座標に基づく設計パッチ画像の中心座標であり、第1撮影画像42の場合は、第1撮影画像42において規定された座標に基づく撮影パッチ画像の中心座標を示す。なお、座標は、パッチ画像の中心座標に限らず、パッチの左上の座標とするなど、パッチ画像の位置を特定できる値であればよい。パッチサイズは、パッチ画像のサイズを示す。ここでは、図4に対応して、予めサイズを規定した「A」または「B」といった記号で示すが、サイズを指定する数値でもよい。
【0026】
具体的に図5の例では、画像ID「1(設計)」、パッチ番号「0」、座標「(x0,y0)」およびパッチサイズ「A」がそれぞれ対応付けられて格納される。例えば、パッチ探索部104が設計パッチ画像を探索する場合は、画像IDが「1(設計)」の第1設計画像41から座標「(x0,y0)」を中心としたパッチサイズ「A」の部分画像をパッチ番号「0」の設計パッチ画像として切り出せばよい。このとき、対応する設計パッチ画像は、パッチ番号が同じ「0」の画像ID「2(撮影)」のデータエントリが選択されればよい。
【0027】
なお、図示していないが、辞書データの第3例においても、設計パッチ画像として、辞書データの第2例のようなフィルタ処理後の画像を用いてもよい。この場合、フィルタ処理を施す対象となるフィルタ対象の領域(図3では領域32)のサイズを、パッチサイズとして格納すればよい。
【0028】
具体的に、図5のパッチサイズ「A」がフィルタ対象の領域とし、パッチ探索部104が設計パッチ画像を探索する場合を想定する。パッチ探索部104は、画像IDが「1(設計)」の第1設計画像41から座標「(x0,y0)」を中心としたパッチサイズ「A」のフィルタ対象領域を決定し、当該フィルタ対象領域に対してフィルタ処理を行ない、パッチサイズ「B」に相当する部分画像を、パッチ番号「0」の設計パッチ画像として切り出せばよい。なお、予め第1設計画像41全体にフィルタ処理を施し、撮影パッチ画像のパッチサイズと同じサイズの設計パッチ画像を切り出すようにしてもよい。
【0029】
次に、第1の実施形態に係る欠陥検査装置10の動作の第1例について図6のフローチャートを参照して説明する。第1例では、辞書格納部101に格納される設計パッチ画像のサイズが撮影パッチ画像のサイズよりも大きい場合を想定する。
ステップS601では、設計画像取得部102が、第2設計画像を取得する。
ステップS602では、探索画像生成部103が、第2設計画像から探索画像を切り出す。
【0030】
ステップS603では、パッチ探索部104が、探索画像に類似する設計パッチ画像を探索し、類似する設計パッチ画像を選択する。ここでは、探索画像と設計パッチ画像との類似度が最も高い画像を選択することを想定するが、類似度が高い順に複数の設計パッチ画像を選択し、平均画像としてもよい。探索手法としては、探索画像と設計パッチ画像との画素値の差分に関するSSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Squared Difference)などのパターンマッチングといった、画像間の類似度を算出する手法であれば、どのような手法を用いてもよい。
【0031】
なお、辞書格納部101において、複数の設計パッチ画像と対応する撮影パッチ画像とが辞書データとして格納される場合、パッチ探索部104は、探索画像と複数の設計パッチ画像それぞれとパターンマッチングを行ない、類似度が最大の設計パッチ画像を、探索画像に類似する設計パッチ画像として選択すればよい。
また、辞書格納部101において、設計画像と複数の設計パッチ画像の切り出し位置の位置情報とが辞書データとして格納される場合、パッチ探索部104は、位置情報に応じて順次設計パッチ画像を切り出し、切り出した設計パッチ画像と探索画像とのパターンマッチングを行なってもよい。
【0032】
ステップS604では、パッチ探索部104が、ステップS603で選択した設計パッチ画像に対応する撮影パッチ画像を参照部分画像として決定する。
ステップS605では、参照画像生成部105が、探索画像の切り出し位置に対応する参照画像領域上の対応位置に参照部分画像を貼り付ける(配置する)。例えばステップS602に示す探索画像の切り出し位置の中心座標と、参照部分画像の中心位置とを位置合わせし、対応位置に参照画像領域に配置すればよい。
【0033】
ステップS606では、参照画像生成部105が、参照画像が完成したか否かを判定する。参照画像が完成したか否かは、第2設計画像から全ての画素が探索画像の一部として切り出され、探索画像に対応する参照部分画像が参照画像領域に配置されることで、1枚の参照画像が完成したか否かを判定すればよい。参照画像が完成した場合、処理を終了し、参照画像が完成していない場合、ステップS607に進む。
【0034】
ステップS607では、探索画像生成部103が、第2設計画像から未処理領域を含む探索画像を切り出し、ステップS602に戻り、同様の処理を繰り返す。探索画像の切り出し方法としては、例えば、第2設計画像の左上からラスタスキャンで切り出すことを想定し、右に1画素ずらした探索画像を切り出せばよい。第2設計画像の右端まで探索画像が到達した場合は、左端の画素を含みかつ下に1画素ずらした探索画像を切り出せばよい。
【0035】
なお、上述の辞書データの第3例のように、第1設計画像全体と位置情報とが辞書データで保持される場合は、位置情報に基づいて設計パッチ画像を切り出すのではなく、第1設計画像全体に対して探索画像によるパターンマッチングを行ない、類似する部分画像が存在するか否かを全探索してもよい。
【0036】
次に、第1の実施形態に係る欠陥検査装置10の動作の第2例について図7のフローチャートを参照して説明する。第2例では、辞書格納部101にフィルタ処理後の設計パッチ画像が格納される場合を想定する。ステップS601、ステップS603からステップS607までの処理については、図6と同様であるため説明を省略する。
【0037】
ステップS701では、探索画像生成部103が、設計画像において探索画像を生成するためのフィルタ対象領域を決定する。フィルタ対象領域は、辞書格納部101に格納される設計パッチ画像で設定されたフィルタ対象領域と同じサイズである。
ステップS702では、探索画像生成部103が、フィルタ対象領域にフィルタ処理を施す。
ステップS703では、探索画像生成部103が、フィルタ処理後の設計画像から、設計パッチ画像と同じサイズの探索画像を切り出せばよい。
【0038】
次に、第1の実施形態に係る欠陥検査装置10による参照画像生成処理の概念について図8を参照して説明する。
図8は、欠陥検査装置10が設計画像81の参照画像を生成する場合を想定する。まず、探索画像生成部103により、探索画像82-1が切り出される。パッチ探索部104は、辞書格納部101に格納される辞書から、探索画像82-1に類似する設計パッチ画像を探索する。
【0039】
ここで、パッチ探索部104により、探索画像82に類似する設計パッチ画像83-1と、対応する撮影パッチ画像84-1とが取得されたと想定する。参照画像生成部105は、参照画像となる参照画像領域85において、探索画像82-1が切り出された切り出し位置86と対応する対応位置87に、撮影パッチ画像84-1を参照部分画像として貼り付ける。これにより、1つの探索画像82-1についての処理が終了する。
【0040】
続いて探索画像生成部103は、直前の探索画像82-1を抽出した領域から、例えば1画素右にずらした領域を次の探索画像82-2として切り出す。その後、同様の処理を行ない、設計パッチ画像83-2および対応する撮影パッチ画像84-2が取得され、参照画像生成部105が、撮影パッチ画像84-2を参照部分画像として参照画像領域85に貼り付けるまで、同様の処理が順次実行されればよい。切り出された探索画像82-2が探索画像82-1と重複して切り出されるため、参照部分画像となる撮影パッチ画像84-2も撮影パッチ画像84-1と重複して貼り付けられることになる。
【0041】
ここでは、設計画像81の左上を始点とし、設計画像81の右下を終点としたラスタスキャンにより、順次探索画像82を取得し、最終的に参照画像を生成すればよい。また、設計画像81の四隅の領域から探索画像82を切り出す場合は、探索画像生成部103は、設計画像81端部の画素値をコピーするなどして、他の探索画像82のサイズと揃うように、探索画像のサイズを確保してもよい。
【0042】
次に、参照画像の生成処理の第1例について図9を参照して説明する。
図9は、図8に示す参照画像領域85の一部の領域に、複数の参照部分画像91が貼り付けられた状態を示す図である。図9の例では、5つの参照部分画像91-1から91-5までが重複して貼り付けられる。参照画像生成部105は、重複している参照部分画像91の画素値の平均値を、参照画像の画素位置92の画素値として決定する。ここでは、画素位置92には5つの画素値が重複しているため、5つの画素値の平均値を画素位置92の画素値として決定されればよい。このように、複数の参照部分画像の画素値の平均値を画素位置92の画素値とすることで、ノイズを低減でき、参照画像の画質を向上させることができる。
【0043】
また、探索画像に対する設計パッチ画像の類似度が算出されている場合は、類似度に応じて重み付けしてもよい。例えば、参照部分画像91-1に対応する設計パッチ画像と探索画像との類似度が、参照部分画像91-2に対応する設計パッチ画像と探索画像との類似度よりも高い場合、参照部分画像91-1の画素値の重みを参照部分画像91-2の画素値よりも大きく設定して加重平均を計算し、画素位置92の画素値を決定すればよい。
【0044】
さらに、参照部分画像の中心位置からの距離に応じて、重み付けしてもよい。例えば、画素位置92の画素値を算出する際、画素位置92は、参照部分画像91-5の中心に位置する一方、参照部分画像91-1の右下に位置する。よって、参照部分画像91-5の画素値の重みを参照部分画像91-1の画素値よりも大きく設定した重み付け平均を計算し、画素位置92の画素値を決定すればよい。
【0045】
また、探索画像によって、必ずしも参照部分画像を重畳させて平均値を算出する処理を実行しなくてもよい場合もある。例えば、背景などの領域が探索画像として切り出された場合、背景の値は一定値であることが多いため、参照部分画像を重畳させず1枚の撮影パッチ画像を参照部分画像として貼り付けるだけでよいこともある。よって、参照画像生成部105は、探索画像が所定の条件を満たす画像であれば、1枚の撮影パッチ画像を参照部分画像として、参照画像の領域において他の参照部分画像を貼り付けないようにしてもよい。
【0046】
次に、参照画像の生成処理の第2例について図10を参照して説明する。図10では、小数画素精度(サブピクセル精度)で参照部分画像の貼り付け位置を設定する例を示す。
参照画像生成部105は、辞書データから選択した類似する設計パッチ画像と紐付く撮影パッチ画像を対応位置に貼り付けることで、参照画像を生成する。しかし、探索画像と設計パッチ画像とで画像の位相が異なる場合もあり、探索画像を切り出した位置そのものよりも少しずれた位置のほうが、すなわち、画素単位よりもサブピクセル単位で調整したほうが、より精度よく第2設計画像に対して設計パッチ画像が対応する場合がある。よって、参照画像生成部105は、類似する設計パッチ画像を、探索画像を切り出した第2設計画像上でサブピクセル精度で位置合わせし、最適な貼り付け位置を決定すればよい。
【0047】
図10に示すように、類似する設計パッチ画像を第2設計画像上でサブピクセル精度で位置合わせした結果、決定された対応位置に、参照部分画像を貼り付ける。図10の例では、参照部分画像91-2から参照部分画像91-4が、画素位置92に対して、画素単位ではなくサブピクセル精度で貼り付けられる。これによって、位相ずれを吸収し参照画像の精度をより向上させることができる。
【0048】
なお、設計パッチ画像の解像度が撮影パッチ画像および探索画像の解像度よりも高くかつサイズも大きい状態で、辞書格納部101に格納されている場合もある。この場合、解像度が異なるため設計パッチ画像と探索画像とを画像の比較をできないため、設計パッチ画像を探索画像と同じサイズとなるまで縮小してからパターンマッチングを行なえばよい。
【0049】
具体的に、縮小した設計パッチ画像と探索画像とのパターンマッチングの一例について図11を参照して説明する。
図11は、設計パッチ画像1100と探索画像1101とのパターンマッチングの模式図である。図11の例では、設計パッチ画像1100の解像度は、探索画像1101および撮影パッチ画像1102の解像度の2倍を想定する。つまり、探索画像1101と比較して縦横2倍のサイズとなるため、直接、設計パッチ画像1100と探索画像1101とを比較できない。
そこで、例えばパッチ探索部104が、設計パッチ画像1100を縮小し、設計パッチ画像1100を探索画像1101と同じ解像度となるまで、つまり同じ画像サイズとなるまで縮小する。図11の例では設計パッチ画像1100の解像度が探索画像1101に対して2倍であるため、対象領域113に属する設計パッチ画像1100の縦横が、それぞれ2分の1に縮小される。結果として、探索画像1101と同じ解像度の縮小された設計パッチ画像(以下、縮小設計パッチ画像1104ともいう)が生成される。
【0050】
なお、画像を縮小する際の位相ずれを吸収するため、設計パッチ画像1100に対して対象領域1103を縮小する画素サイズにあわせて1画素ずらし、複数の縮小設計パッチ画像1104を生成する。図11の例では、設計パッチ画像1100の2×2画素の領域が、探索画像1101の1画素の領域に対応するため、4つの縮小設計パッチ画像1104が生成される。具体的には、対象領域を、設計パッチ画像1100と同じ領域、設計パッチ画像1100から1画素右にずれた領域、設計パッチ画像1100から1画素下にずれた領域、および、設計パッチ画像1100から1画素右かつ下にずれた領域から、それぞれ縮小設計パッチ画像1104が生成される。
【0051】
一方、設計パッチ画像1100に対応する撮影パッチ画像1102からも、縮小設計パッチ画像1104のそれぞれとペアとなる4つの撮影パッチ画像116を生成する。ここで、設計パッチ画像1100の1画素は撮影パッチ画像1102の半画素に相当するため、撮影パッチ画像に対する対象領域1105を半画素ずらし、設計パッチ画像1100の場合と同様に、4つの撮影パッチ画像1106が生成される。
これにより、縮小設計パッチ画像1104と探索画像1101との解像度が揃うため、画像縮小による位相ずれを吸収しつつ、縮小設計パッチ画像1104と探索画像1101とに対してパターンマッチング処理が可能となる。
【0052】
なお、パターンマッチングを行なう際に、縮小設計パッチ画像1104および対応する撮影パッチ画像1106とのペアを生成してもよいし、辞書データの作成時に、縮小設計パッチ画像1104と撮影パッチ画像1106とのペアを予め作成しておいてもよい。
パッチ探索部104が設計パッチ画像1100を縮小する場合、予め辞書データに設計パッチ画像1100および撮影パッチ画像1102の解像度に関する情報を格納しておく。パッチ探索部104は、探索画像生成部103から探索画像1101を生成した際の当該探索画像の解像度の情報を受け取り、辞書データに格納される設計パッチ画像1100の解像度に関する情報に基づいて、探索画像1101の解像度と一致するように、設計パッチ画像1100を縮小すればよい。
【0053】
撮影パッチ画像1102についても、パッチ探索部104が、設計パッチ画像1100の解像度と撮影パッチ画像1102との解像度の関係に基づいて、縮小設計パッチ画像1104に対応する撮影パッチ画像1106を生成すればよい。このように、設計パッチ画像と撮影パッチ画像との解像度の関係を記憶しておけば、辞書データ側の情報によっても画像間の位相ずれを吸収できる。
【0054】
次に、辞書データのデータ構造の一例について図12を参照して説明する。
図12は、辞書データに含まれる設計パッチ画像がプロットされ、パターンによって2軸で分類されたプロット図である。プロット間の距離が近いほど、設計パッチ画像が類似していることを示す。図12において、設計パッチ画像がパターンの類似度に応じてクラスタリングされ、設計パッチ画像破線と座標軸とで区切られる複数の小領域に分割される。各小領域が木構造で関連づけられる例を示す。言い換えれば、辞書データが木構造で保持される例を示す。
【0055】
各小領域では代表点が求められる。代表点は、小領域に含まれる複数の設計パッチ画像1201を代表するパターンを示す画像であり、小領域に含まれる複数の設計パッチ画像の中から1つ選択されてもよいし、複数の設計パッチ画像の平均画像など、新たなに算出される画像でもよい。各代表点をノードとして、木構造が形成される。
具体的に図12の例では、小領域aおよびbの代表点1202-1と、小領域c、dおよびeの代表点1202-2が同一層のノードとして形成される。代表点1202-1の下位層として、小領域aの代表点1203-1と、小領域bの代表点1203-2とが同一層のノードとして形成される。同様に、代表点1202-2の下位層として、小領域cの代表点1203-3と、小領域dおよびeの代表点1203-4とが同一層のノードとして形成される。さらに代表点1203-4の下位層として、小領域dの代表点1204-1と小領域eの代表点1204-2とが同一層のノードとして形成される。
【0056】
次に、パッチ探索部104が木構造に基づいて設計パッチ画像を探索する一例について、図13を参照して説明する。
図13は、図12と同様の辞書データの木構造を示す。ここで、パッチ探索部104は、探索画像1301と、木構造のノードを形成する代表点とを比較し、パターンが類似するノードを下位層に向かって順に辿る。具体的に図13の例では、木構造の一番上の層の2つの代表点1202-1および1202-2とのそれぞれの類似度を比較、例えば画像間の距離を計算する。ここでは、代表点1202-2のほうが探索画像と距離が近い(つまり類似する)場合を想定し、パッチ探索部104は、探索画像と代表点1202-2の下位層(代表点1203-3および1203-4)との間の距離を計算する。ここで、探索画像が代表点1203-4との距離が近い場合を想定し、同様に、探索画像と代表点1203-4の下位層(代表点1204-1および1204-2)との間の距離を計算する。ここで最終的に探索画像と代表点1204-2との距離が近いと想定すると、パッチ探索部104は、図13の破線の囲みで示すように、代表点1204-2の小領域eに含まれる設計パッチ画像とのみ、探索画像との距離計算を行なえばよい。
【0057】
上述の様に、図12および図13に示す木構造によれば、パッチ探索部104は、探索画像に一致する撮影パッチ画像を探索する際、類似するパターンを有する設計パッチ画像について木構造を辿って探索することにより、木構造の上位層から順にたどることで探索回数(距離計算)を減らすことができる。これは、辞書データに格納されるデータ数が多いほど実益があり、探索時間が短縮でき、探索効率を向上させることができる。
【0058】
なお、木構造の構築段階または更新段階において、ノード画像が同一、つまり重複するノード画像は1つのペアが存在すればよいため、画像の類似度が閾値以上となる複数のノード画像(設計パッチ画像および対応する撮影パッチ画像)は削除されてもよい。また、ノード画像に対して平準化処理が行なわれてもよい。例えば、木構造の構築段階または更新段階において、ノード画像である設計パッチ画像では同一の画像であるが、対応する撮影パッチ画像は実際に撮影した画像であるため、撮影パッチ画像は輝度などが異なる場合がありうる。よって、画像の類似度が閾値以上となるノード画像を1つとし、ノード画像である設計パッチ画像にそれぞれ紐付く撮影パッチ画像を平均化することで、ノード画像を減らし、辞書データのデータサイズを減らすことができる。
【0059】
なお、図12および図13の例では、パッチ画像に含まれる検査対象の形状(凹凸、直線であるか曲線であるかといった曲率度など)の類似度に基づく木構造を想定したが、輝度値の分布など他の類似度指標を基準として木構造を構築し、辞書データとして保持してもよい。
【0060】
また、図12および図13の例では、木構造のノードでの分岐に小領域の代表点との類似度を用いたが、探索画像がどちらの小領域に属するかを判定できるルールであれば何でもよい。例えば、領域を分割する超平面を利用してもよく、この場合は各ノードに代表点の代わりに超平面を保存しておくと同様の処理が行なえる。
【0061】
他にも、木構造を用いずに探索を効率化する方法もある。例えば、図12で一番小さい領域の代表点(1203-1、1203-2、1203-3、1204-1、1204-2)を保存しておき、パッチ探索部104による探索時は探索画像とそれぞれの代表点の距離計算をして探索画像が属する小領域を特定することも可能である。
【0062】
以上に示した第1の実施形態によれば、第1撮影パッチ画像よりも広い画像領域の情報を含む複数の第1設計パッチ画像の中から、第2設計画像の部分画像である探索画像と類似する第2設計パッチ画像を探索し、第1撮影パッチ画像を用いて欠陥のない疑似的な撮影画像である参照画像を生成する。これにより、辞書データに含まれる撮影画像の撮影状態によらない適切な撮影パッチ画像を選択でき、結果として高精度な参照画像を生成することができ、高精度な欠陥検査を支援できる。
【0063】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、参照画像を用いて検査対象の撮影画像について欠陥検査を行なう。
第2の実施形態に係る欠陥検査装置について図14のブロック図を参照して説明する。
第2の実施形態に係る欠陥検査装置10は、辞書格納部101と、設計画像取得部102と、探索画像生成部103と、パッチ探索部104と、参照画像生成部105と、撮影画像取得部106と、推定部107と、辞書更新部108とを含む。
【0064】
辞書格納部101と、設計画像取得部102と、探索画像生成部103と、パッチ探索部104と、参照画像生成部105とは、第1の実施形態と同様でるため、ここでの説明は省略する。
【0065】
撮影画像取得部106は、例えば外部から、第2設計データ(または第2設計画像)に基づき製造された第2検査対象を撮影した画像である第2撮影画像を取得する。
【0066】
推定部107は、撮影画像取得部106から第2撮影画像を、参照画像生成部105から第2設計画像に基づき生成された参照画像をそれぞれ受け取り、参照画像をマスクとして第2撮影画像に重畳する。推定部107は、参照画像と第2撮影画像との画素値の差分が閾値以上となる場合、第2撮影画像には欠陥があると推定する。
【0067】
辞書更新部108は、推定結果が誤りである場合に辞書データを更新する。例えば、推定部107において欠陥と判定されたが、実際は欠陥ではない場合、該当部分の参照画像に不備があり、欠陥と判定されてしまった第2撮影画像の部分画像に対応する設計パッチ画像および撮影パッチ画像のペアが辞書データにないといえる。よって、該当部分に関する第2設計パッチ画像および撮影パッチ画像のペアを取得して更新する。
【0068】
また、辞書更新部108は、辞書データをメンテナンスしてもよい。例えば、欠陥検査装置10で複数回検査を実行している場合、辞書データにおいてパッチ画像ごとの選択頻度を算出できる。よって、辞書更新部108は、探索画像に類似する設計パッチ画像として選択される頻度が閾値以下の設計パッチ画像および撮影パッチ画像のペアを辞書データから削除してもよい。
【0069】
また、設計画像および対応する撮影画像の全体と、切り出し位置を特定する位置情報とを辞書データで保持する場合、辞書更新部108は、選択頻度が閾値以下の設計パッチ画像の切り出し位置に異なる設計パッチ画像を貼り付けた合成画像を、辞書データで保持させてもよい。つまり、設計画像自体は、何らかの検査対象を示すものではない部分画像の集合となるが、無駄な画像領域を有効活用できる。このように辞書データをメンテナンスすることで、できるだけ辞書データ内のパッチ画像およびデータ量を減らしつつ、辞書の精度を維持することができる。
【0070】
以上に示した第2の実施形態によれば、検査対象を撮影した第2撮影画像に対し、第2設計画像に基づき生成された参照画像をマスクとして欠陥検査を行なうことで、高精度の欠陥検査を実現できる。また、欠陥の推定結果に応じて辞書データをメンテナンスすることで、辞書データのデータ量を減らしつつ、辞書の精度を維持することができる。すなわち、高精度の欠陥検査を支援できる。
【0071】
次に、上述の実施形態に係る欠陥検査装置10のハードウェア構成の一例を図15に示す。
欠陥検査装置10は、CPU(Central Processing Unit)51と、RAM(Random Access Memory)52と、ROM(Read Only Memory)53と、ストレージ54と、表示装置55と、入力装置56と、通信装置57とを含み、それぞれバスにより接続される。
【0072】
CPU51は、プログラムに従って演算処理および制御処理などを実行するプロセッサである。CPU51は、RAM52の所定領域を作業領域として、ROM53およびストレージ54などに記憶されたプログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0073】
RAM52は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などのメモリである。RAM52は、CPU51の作業領域として機能する。ROM53は、プログラムおよび各種情報を書き換え不可能に記憶するメモリである。
【0074】
ストレージ54は、HDD等の磁気記録媒体、フラッシュメモリなどの半導体による記憶媒体、または、HDD(Hard Disc Drive)などの磁気的に記録可能な記憶媒体、または光学的に記録可能な記憶媒体などにデータを書き込みおよび読み出しをする装置である。ストレージ54は、CPU51からの制御に応じて、記憶媒体にデータの書き込みおよび読み出しをする。
【0075】
表示装置55は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである。表示装置55は、CPU51からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。
入力装置56は、マウスおよびキーボード等の入力デバイスである。入力装置56は、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、指示信号をCPU51に出力する。
通信装置57は、CPU51からの制御に応じて外部機器とネットワークを介して通信する。
【0076】
上述の実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した欠陥検査装置の制御動作による効果と同様な効果を得ることも可能である。上述の実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RW、Blu-ray(登録商標)Discなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータまたは組み込みシステムが読み取り可能な記録媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の欠陥検査装置の制御と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを取得する場合又は読み込む場合はネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
また、記録媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
さらに、本実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
また、記録媒体は1つに限られず、複数の媒体から本実施形態における処理が実行される場合も、本実施形態における記録媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0077】
なお、本実施形態におけるコンピュータまたは組み込みシステムは、記録媒体に記憶されたプログラムに基づき、本実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
また、本実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10…欠陥検査装置、21,83-1,83-2…設計パッチ画像、22,84-1,84-2,1102,1106…撮影パッチ画像、23,32…領域、51…CPU、31,1100,1201…設計パッチ画像、52…RAM、53…ROM、54…ストレージ、55…表示装置、56…入力装置、57…通信装置、41,81…設計画像、42…撮影画像、82-1,82-2,1101…探索画像、85…参照画像領域、86…切り出し位置、87…対応位置、91(91-1~91-5)…参照部分画像、92…画素位置、101…辞書格納部、102…設計画像取得部、103…探索画像生成部、104…パッチ探索部、105…参照画像生成部、106…撮影画像取得部、107…推定部、108…辞書更新部、1103,1105…対象領域、1104…縮小設計パッチ画像、1202~1204…代表点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15