(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 76/00 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
A01B76/00
(21)【出願番号】P 2020155564
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】石川 新之助
(72)【発明者】
【氏名】越田 典志
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188862(JP,A)
【文献】特開2013-066452(JP,A)
【文献】特開2016-049029(JP,A)
【文献】特開2020-080786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0077557(US,A1)
【文献】特開2017-135995(JP,A)
【文献】特開2019-007356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113123(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0058637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 51/00 - 61/04
63/14 - 67/00
71/00 - 79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な作業車両と、
前記作業車両に連結された作業装置と、
前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、
前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、
を備え
、
前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の操舵を制御する作業機。
【請求項2】
走行可能な作業車両と、
前記作業車両に連結された作業装置と、
前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、
前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、
前記作業車両と
前記作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、
前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて前記連結装置を制御する作業機。
【請求項3】
走行可能な作業車両と、
前記作業車両に連結された作業装置と、
前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、
前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、
を備え、
前記切換装置は、前記作業車両に当該作業車両の自動運転を行う自動運転制御部が設けられていない場合、自動的に前記第2制御に切り換える作業機。
【請求項4】
前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の車速を制御する請求項
1~3のいずれかに記載の作業機。
【請求項5】
前記作業車両と
前記作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、
前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の車速、操舵、前記連結装置のいずれか1以上を選択し制御できる請求項
1~3のいずれかに記載の作業機。
【請求項6】
前記作業車両と
前記作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、
前記切換装置によって前記第1制御に切り換えられている場合、前記作業車両の指令に基づいて、前記作業装置の姿勢を制御する請求項1~5のいずれかに記載の作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記作業車両の自動運転を行う自動運転制御部を有し、
前記切換装置によって前記第1制御に切り換えられている場合、前記作業車両の自動運転に基づいて前記作業装置を制御する請求項1~6のいずれかに記載の作業機。
【請求項8】
前記切換装置は、前記制御装置において、前記第2制御を実行する設定が不能な場合、自動的に前記第1制御に切り換える請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
走行可能な作業車両と、
前記作業車両に連結された作業装置と、
前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、
車両仕様に基づいて運転者の操作によらずに、前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、を備える作業機。
【請求項10】
前記切換装置は、前記車両仕様に基づいて運転者の操作によらずに、前記第1制御から前記第2制御への切換、及び、前記第2制御から前記第1制御への切換を行う請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記作業車両の位置である作業車両位置を測位する測位装置を備え、
前記切換装置は、前記作業車両位置に応じて、前記切換を行う請求項請求項1~7のいずれかに記載の作業機。
【請求項12】
前記作業車両の作業範囲の設定し且つ、前記第1制御及び前記第2制御の前記切換を前記設定した作業範囲ごとに作成する切換エリア作成部を備えている請求項
11に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業車両に作業装置を連結した作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両に連結する作業装置を管理するシステムとして、特許文献1が知られている。
特許文献1の作業装置では、トラクタの車速に連動して散布量を変更することができるという車速連動が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業装置では、トラクタの車速に連動して散布量を変更することができ、散布量の均一化を図ることができる。しかしながら、特許文献1の車速連動は、予め作業装置側で車速と連動することが設定されていて、作業装置はトラクタから車速を取得することで、散布量を車速に連動することができる。つまり、特許文献1に示したように、作業装置は、トラクタの車速等の制御によって作動しているのが実情である。
【0005】
近年、作業装置側からトラクタに対して要求を行って、作業装置側からトラクタを制御したいという要望があるものの、トラクタによる作業装置の制御と、作業装置からトラクタへの制御との両立が確立されておらず、この点で、作業性を向上させることができないのが実情である。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、作業車両と作業装置とのそれぞれの要求に応じて作動することができ、作業性を向上させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業機は、走行可能な作業車両と、前記作業車両に連結された作業装置と、前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、を備え、前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の操舵を制御する。
作業機は、走行可能な作業車両と、前記作業車両に連結された作業装置と、前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、前記作業車両と前記作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて前記連結装置を制御する。
作業機は、走行可能な作業車両と、前記作業車両に連結された作業装置と、前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、を備え、前記切換装置は、前記作業車両に当該作業車両の自動運転を行う自動運転制御部が設けられていない場合、自動的に前記第2制御に切り換える。
【0007】
作業機は、前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の車速を制御する。
【0008】
作業機は、前記作業車両と作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、前記切換装置によって前記第2制御に切り換えられている場合、前記作業装置の指令に基づいて、前記作業車両の車速、操舵、前記連結装置のいずれか1以上を選択し制御できる。
作業機は、前記作業車両と作業装置とを連結し且つ前記作業装置の姿勢を変更可能な連結装置を備え、前記切換装置によって前記第1制御に切り換えられている場合、前記作業車両の指令に基づいて、前記作業装置の姿勢を制御する。
【0009】
作業機は、前記制御装置は、前記作業車両の自動運転を行う自動運転制御部を有し、前記切換装置によって前記第1制御に切り換えられている場合、前記作業車両の自動運転に基づいて前記作業装置を制御する。
前記切換装置は、前記制御装置において、前記第2制御を実行する設定が不能な場合、自動的に前記第1制御に切り換える。
【0010】
作業機は、走行可能な作業車両と、前記作業車両に連結された作業装置と、前記作業車両から前記作業装置を制御する第1制御と、前記作業装置からの指令に基づいて前記作業車両を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置と、車両仕様に基づいて運転者の操作によらずに、前記第1制御と前記第2制御との切換を行う切換装置と、を備える。
前記切換装置は、前記車両仕様に基づいて運転者の操作によらずに、前記第1制御から前記第2制御への切換、及び、前記第2制御から前記第1制御への切換を行う。
作業機は、前記作業車両の位置である作業車両位置を測位する測位装置を備え、前記切換装置は、前記作業車両位置に応じて、前記切換を行う。
作業機は、前記作業車両の作業範囲の設定し且つ、前記第1制御及び前記第2制御の前記切換を前記設定した作業範囲ごとに作成する切換エリア作成部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業車両と作業装置とのそれぞれの要求に応じて作動することができ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5A】第2制御によって車速を制御する場合の動作フローである。
【
図5B】第2制御によって操舵を制御する場合の動作フローである。
【
図5C】第2制御によって連結装置を制御する場合の動作フローである。
【
図6A】作業機の制御ブロック図の第1変形例を示す図である。
【
図6B】作業機の制御ブロック図の第2変形例を示す図である。
【
図6C】作業機の制御ブロック図の第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図8は、作業機の一例を示している。作業機は、作業装置を牽引するトラクタ、作業装置を有する田植機及びコンバイン等の農業機械である。この実施形態では、作業機は、作業装置を牽引可能なトラクタである。
図8に示すように、作業機1は、作業装置2と、作業車両3とを有している。
【0014】
作業装置2は、圃場(対地)、圃場に作付けした作物等に対して様々な作業を行う装置であり、作業車両3に連結される。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0015】
作業車両3は、走行可能であって、走行装置7を有する車体6と、原動機4と、変速装置5と、操舵装置11とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジンである。
【0016】
変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体6にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
また、車体6の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8には、作業装置2が着脱可能である。この実施形態では、連結装置8は、装着された作業装置2を昇降する昇降装置である。
【0017】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、シャトル部5bと、主変速部5cと、副変速部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。
シャトル部5bは、シャトル軸5b1と、前後進切換部5b2とを有している。シャトル軸5b1には、推進軸5aからの動力が伝達される。前後進切換部5b2は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸5b1の回転方向、即ち、作業機1の前進及び後進を切り換える。
【0018】
主変速部5cは、入力された動力を無段に変更する無段変速機構である。無段変速機構は、油圧ポンプ5c1と、油圧モータ5c2と、遊星歯車機構5c3とを有している。油圧ポンプ5c1は、シャトル部5bの出力軸5b3からの動力により回転する。油圧ポンプ5c1は、例えば、斜板12を有する可変容量ポンプであって、斜板12の角度(斜板角)を変更することにより、当該油圧ポンプ5c1から吐出する作動油の流量を変更することができる。油圧モータ5c2は、配管等の油路回路を介して油圧ポンプ5c1から吐出された作動油によって回転するモータである。油圧ポンプ5c1の斜板角を変更したり、油圧ポンプ5c1へ入力する動力を変更することによって、油圧モータ5c2の回転数を変更することができる。
【0019】
遊星歯車機構5c3は、複数のギア(歯車)と、入力軸及び出力軸等の動力伝達軸とで構成された機構であって、油圧ポンプ5c1の動力が入力される入力軸13と、油圧モータ5c2の動力が入力される入力軸14と、動力を出力する出力軸15とを含んでいる。遊星歯車機構5c3は、油圧ポンプ5c1の動力と、油圧モータ5c2の動力とを合成して合成した動力を出力軸15に伝達する。
【0020】
したがって、主変速部5cによれば、油圧ポンプ5c1の斜板12の斜板角、原動機4の回転数等を変更することによって、副変速部5dに出力する動力を変更することができる。なお、主変速部5cは、無段変速機構で構成しているが、ギアによって変速を行う有段変速機構であってもよい。
副変速部5dは、動力を変速する有段の複数のギア(歯車)を有する変速機構であって、複数のギアの接続(噛合)を適宜変更することによって、遊星歯車機構5c3の出力軸15から当該副変速部5dに入力された動力を変更して出力する(変速する)。副変速部5dは、入力軸5d1と、第1変速クラッチ5d2と、第2変速クラッチ5d3と、出力軸5d4とを含んでいる。入力軸5d1は、遊星歯車機構5c3の出力軸15の動力が入力される軸であり、入力された動力を、ギア等を介して第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3に入力する。第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3のそれぞれの接合及び切断を切り換えることにより、入力された動力は変更され、出力軸5d4に出力される。出力軸5d4に出力された動力は、後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0021】
PTO動力伝達部5eは、PTOクラッチ5e1と、PTO推進軸5e2と、PTO変速部5e3とを有している。PTOクラッチ5e1は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達する状態(接続状態)と、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達しない状態(切断状態)とに切り換わる。PTO変速部5e3は、変速クラッチと複数のギア等を含んでいて、PTO推進軸5e2からPTO変速部5e3へ入力された動力(回転数)を変更して出力する。
PTO変速部5e3の動力は、ギア等を介してPTO軸16に伝達される。
【0022】
前変速部5fは、第1前変速クラッチ5f1と、第2前変速クラッチ5f2とを有している。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、副変速部5dからの動力が伝達可能であって、例えば、出力軸5d4の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0023】
第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、油圧クラッチ等で構成されている。第1前変速クラッチ5f1には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される制御弁23が接続されている。第1前変速クラッチ5f1は、制御弁23の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2前変速クラッチ5f2には油路が接続され、当該油路には制御弁24が接続されている。第2前変速クラッチ5f2は、制御弁24の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。制御弁23及び制御弁24は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0024】
第1前変速クラッチ5f1が切断状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、第2前変速クラッチ5f2を通じて副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪及び後輪が動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪と後輪との回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1前変速クラッチ5f1が接続状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪の回転速度が後輪の回転速度に比べて速くなる(4WD倍速状態)。また、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪が動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0025】
図2に示すように、昇降装置(連結装置)8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁34を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁34は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0026】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0027】
昇降装置8には、角度変更装置25が設けられている。角度変更装置25は、車体6に装着された作業装置2の姿勢を変更する装置である。角度変更装置25は、油圧シリンダから構成された変更シリンダ25aと、制御弁25bとを有している。変更シリンダ25aは、制御弁25bを介して油圧ポンプと接続されている。制御弁25bは、電磁弁等であって、変更シリンダ25aを伸縮させる。変更シリンダ25aは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。
【0028】
図3に示すように、作業機1は、複数の補助弁27を有している。複数の補助弁27は、油圧ポンプ28から作動油が供給される油圧切換弁である。複数の補助弁27は、出力ポートを有しており、任意の出力ポートに油圧ホース等が接続可能である。補助弁27の任意の出力ポートに接続した油圧ホースを、作業装置2の油圧アタッチメントに接続することにより、作業装置2に装着された様々な油圧アタッチメントを作動させることができる。
【0029】
操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、制御弁35と、ステアリングシリンダ32とを含んでいる。制御弁35は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁35は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ32は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁35の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁35の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ32が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0030】
作業機1は、複数の検出装置41を備えている。複数の検出装置41は、作業機1の状態を検出する装置であり、例えば、水温を検出する水温センサ41a、燃料の残量を検出する燃料センサ41b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)41c、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ41d、操舵装置11の操舵角を検出する操舵角センサ41e、リフトアーム8aの角度を検出する角度センサ41f、車体6の幅方向(右方向又は左方向)の傾きを検出する傾き検出センサ41g、車体6の速度(車速)を検出する速度センサ41h、PTO軸の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)41i、バッテリー等の蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ41j、測位衛星等の信号に基づいて車体6の位置を検出する測位センサ(測位装置)41k等である。なお、速度センサ41hは、例えば、前車軸21Fの回転数、後車軸21Rの回転数、前輪7Fの回転数、後輪7Rの回転数等を車速に変換することにより車速を検出する。また、速度センサ41hは、前車軸21F、後車軸21R、前輪7F及び後輪7Rのいずれかの回転方向も検出することができ、作業機1(車体6)が前進しているか、後進しているかも検出することができる。上述した検出装置41は一例であり、上述したセンサに限定されない。
【0031】
また、作業機1は、複数の操作部材(操作装置)42を備えている。複数の操作部材42は、車体6の前進又は後進を切り換えるシャトルレバー42a、原動機4の始動等を行うイグニッションスイッチ42b、PTO軸の回転数を設定するPTO変速レバー42c、自動変速及び手動変速のいずれかを切り換える変速切換スイッチ42d、変速装置5の変速段(変速レベル)を手動で切り換える変速レバー42e、車速を増減させるアクセル42f、昇降装置8の昇降を操作するポンパスイッチ42g、昇降装置8の上限を設定する高さ設定ダイヤル42h、車速を設定する車速レバー42i、油圧操作具42j、原動機回転数の上限を設定する回転設定具42k等である。
【0032】
変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、回転設定具42kなどの設定具は、運転席10の側方に設けたコンソールボックスに設けられている。設定具(変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、回転設定具42k)を運転者が操作することによって、車体6の動作を設定することができる。なお、上述した操作部材42は一例であり、上述したものに限定されない。
【0033】
図3に示すように、作業機1は、制御装置40と、記憶部45とを備えている。制御装置40は、作業機1の様々な制御を行う装置であり、CPU、電気電子回路等から構成されている。記憶部45は不揮発性のメモリ等から構成され、様々な情報を記憶する。
制御装置40は、変速制御部40Aと、エンジン制御部40Bと、PTO制御部40Cと、昇降制御部40Dと、自動運転制御部40Eと、角度制御部40Fと、補助油圧制御部40Gとを含んでいる。
【0034】
制御装置40と、作業装置2の制御装置2aとは、国際規格ISO11783(ISOBUS)に準拠した車載ネットワークN1に接続されている。即ち、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F及び補助油圧制御部40Gと、制御装置2aとは、車載ネットワークN1に接続されている。
【0035】
なお、制御装置40は、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F、補助油圧制御部40Gの全てを含んでいる必要はなく、作業機1の仕様に応じて作業機1に設けられている。また、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F及び補助油圧制御部40Gは、統合した制御装置40に設けられていてもよい。
【0036】
変速制御部40Aは、変速制御を行う。変速制御では、自動変速機能が有効である場合、作業機1の状態に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段(変速レベル)を予め定められた変速段(変速レベル)に自動的に変更する。変速制御では、変速切換スイッチ42dを手動変速に切り換えた場合、変速レバー42eで設定された変速段(変速レベル)に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段を変更する。
【0037】
変速制御部40Aは、走行装置7の走行駆動状態(走行装置7の動作)における制御(走行切換制御)を行う。走行切換制御では、シャトルレバー42aが前進に操作された場合、シャトル部5bの前後進切換部5b2を前進に切り換えることで、車体6を前進させる。また、進行切換制御は、シャトルレバー42aが後進に操作された場合、シャトル部5bの前後進切換部5b2を後進に切り換えることで、車体6を後進させる。
【0038】
走行切換制御では、4WDである場合、第1前変速クラッチ5f1を切断状態且つ第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。走行切換制御では、4WD倍速である場合、第1前変速クラッチ5f1を接続状態且つ第2前変速クラッチ5f2を切断状態にする。走行切換制御では、2WDである場合、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。
【0039】
エンジン制御部40Bは、エンジン制御を行う。エンジン制御では、イグニッションスイッチ42bがONに操作された場合、所定の処理を経て原動機4の始動を行い、イグニッションスイッチ42bがOFFに操作された場合、原動機4の駆動を停止させる。エンジン制御では、アクセル42fが操作された場合、当該アクセル42fの操作量に応じて原動機4の回転数(原動機回転数という)を変更することで、車体6の速度(車速)を変更する。
【0040】
PTO制御部40Cは、PTO制御を行う。PTO制御では、PTO変速レバー42cが操作された場合、変速装置5に内蔵されたPTO変速ギアを切り換えることでPTO軸の回転数(PTO回転数という)を変更する。
昇降制御部40Dは、昇降制御を行う。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、ポンパスイッチ42gが上昇させる方向(上昇側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、ポンパスイッチ42gが下降させる方向(下降側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させる。昇降装置8によって作業装置2を上昇させている場合に、当該作業装置2の位置、即ち、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤル42hで設定された上限(高さ上限値)に達すると、昇降装置8における上昇動作を停止する。
【0041】
昇降制御では、バックアップ機能が有効である場合、車体6が後進した場合に自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、オートアップ機能が有効である場合、操舵装置11の操舵角が所定以上になると、自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0042】
自動運転制御部40Eは、自動運転制御を行う。
図4に示すように、自動運転制御では、自動運転が有効である場合、予め定められた走行予定ラインL1と、測位センサ41kで検出された位置(作業車両位置)P1が一致するように、制御弁35を制御することで操舵装置11の操舵角を自動的に制御する。詳しくは、作業機1が走行予定ラインL1の直進部L1aに位置しているとき、自動運転制御では、直進部L1aと作業車両位置P1とが一致するように、作業機1(作業車両3)の操舵を行う。また、作業機1が走行予定ラインL1の旋回部L1bに位置しているとき、自動運転制御では、旋回部L1bと作業車両位置P1とが一致するように、作業機1(作業車両3)の操舵を行う。
【0043】
また、自動運転制御では、自動運転が有効である場合、走行予定ラインL1(直進部1a、旋回部1b)に対応付けられた車速(目標車速)と、実際の車速(実車速)とが一致するように、エンジン制御部40Bに指令して原動機回転数を変更したり、変速制御部40Aに指令して変速段を変更することにより、実車速を調整する制御を行う。
なお、自動運転の有効/無効は、スイッチ(運転切換スイッチ)42lで行う。運転切換スイッチ42lは、ON/OFFに切り換えが可能で且つ運転席10の周囲に設置されている。運転切換スイッチ42lがONである場合、自動運転が有効になり、OFFである場合、自動運転が無効になる。自動運転が無効であるときは、自動運転制御部40Eによる自動運転制御は実行されない。即ち、自動運転が無効であるときは、運転者が作業車両3を手動で運転(手動運転)をする。手動運転では、上述したように、操作部材42を運転者が操作することによって、手動運転を行うことができる。
【0044】
角度制御部40Fは、角度制御を行う。角度制御では、位置機能(固定機能)である場合、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aの長さを予め定められた長さに固定する。即ち、角度変更装置25で設定される作業装置2の幅方向の角度(水平に対するロアリンク8b、8bとを結ぶ直線の角度)を固定する。角度制御では、水平機能である場合、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aを伸縮させ、角度変更装置25で設定される作業装置2を水平に維持する。角度制御では、傾斜機能である場合、制御弁25bに制御信号を出力することで、変更シリンダ25aを伸縮させ、角度変更装置25で設定される作業装置2を圃場(地面)に平行に維持する。
【0045】
補助油圧制御部40Gは、複数の補助弁27のうち、油圧ホース等が接続された補助弁(作動制御弁)27を制御する。例えば、補助油圧制御部40Gは、揺動自在なレバー等の油圧操作具42jが操作された場合に所定の補助弁27から出力される作動油の流れを切り換える制御を行う。例えば、油圧操作具42jが左方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を一方向にする。また、油圧操作具42jが右方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を他方向にする。これにより、補助弁27によって、作業装置2の油圧アタッチメントを操作することができる。
【0046】
さて、
図3に示すように、車載ネットワークN1には、TIM (tractor implement management system)に対応した通信制御部43に接続されている。通信制御部43は、CPU、電気・電子部品等で構成されていて、予め定められた通信プロトコルによって作業装置2の制御装置2aと通信を行う。即ち、通信制御部43は、車載ネットワークN1を介して作業装置2と電気的に接続され双方向に通信が可能である。制御装置2aは、作業装置2に関する様々な情報(装置情報)を車載ネットワークN1に出力可能である。
【0047】
通信制御部43は、車載ネットワークN1を介して装置情報を取得し、制御装置40へ取得した装置情報を出力する。つまり、通信制御部43は、作業装置2の制御装置2aから作業車両3へ出力した装置情報を監視し、作業車両3の制御装置40に送信する機能を有している。
装置情報とは、作業装置2から作業車両3に対して要求する情報(要求情報)、作業装置2の状態を示す状態情報(ステータス情報)などである。例えば、要求情報は、車速(要求車速)、PTO回転数(要求回転数)、油圧(要求圧力)、シフト量(要求シフト量)、昇降(要求昇降)、高さ(要求高さ)などである。ステータス情報は、作業装置2のエラーなどの状態を示す情報である。
【0048】
一方、制御装置40は、作業車両3から作業装置2を制御する第1制御と、作業装置2からの指令、例えば、要求情報に基づいて作業車両3を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能である。
制御装置40は、第1制御では、作業車両3に搭載した機器等からの指令に基づいて、作業装置2を制御する。例えば、制御装置40は、第1制御において、作業車両3に設けた操作部材42の操作、又は、当該制御装置40が検出装置41から取得した検出値(原動機4の回転数、操舵装置11の操舵角、リフトアーム8aの角度、車体6の幅方向の傾き、車体6の車速、PTO軸の回転数、操舵方向及び操舵量)に基づいて、作業装置2を制御する。
【0049】
また、制御装置40は、第2制御において、作業装置2の制御装置2aからの指令(要求情報)に基づいて、作業車両3を制御する。
作業機1は、第1制御と第2制御とのいずれかに切り換える切換装置53を備えている。例えば、切換装置53は、ON/OFFに切り換えが可能で且つ、運転席10の周囲に設置されたスイッチである。切換装置53がOFFである場合、制御装置40で行われる制御は、第1制御に設定される。切換装置53がONである場合、制御装置40で行われる制御は、第2制御に設定される。
【0050】
なお、運転席10に運転者が着座しているときに、切換装置53の操作による第1制御と第2制御との切換が行え、運転席10に運転者が着座していないときは、切換を行えないようにしてもよい。例えば、運転席10に運転者が着座しているか否かを検出する着座センサを設け、着座センサが着座を検出しているときは、制御装置40は、切換装置53のON/OFFの受付を行い、着座センサが着座を検出していないときは、制御装置40は、切換装置53のON/OFFの受付を行わない。
【0051】
運転者が作業車両3を手動運転している状況において、切換装置53によって第1制御に切り換えられている場合、制御装置40は、作業装置2の対地に対する姿勢を制御する。具体的には、制御装置40の昇降制御部40Dは、上述したように、ポンパスイッチ42gの操作が行われた場合、第1制御として、作業装置2を上昇させたり、作業装置2を下降させることで、作業装置2の姿勢を変更する。
【0052】
一方、作業車両3が自動運転している状況において、切換装置53によって第1制御に切り換えられている場合、制御装置40は、作業車両3の自動運転に基づいて作業装置2を制御する。具体的には、制御装置40の昇降制御部40Dは、自動運転中に作業車両3が直進部L1aに位置しているときは、リフトシリンダ8eを収縮させ、作業装置2を下降させた姿勢に維持し、自動運転中に作業車両3が旋回部L1bに位置しているときは、リフトシリンダ8eを伸長させ、作業装置2を上昇させた姿勢に維持する。つまり、制御装置40は、第1制御に設定され且つ自動運転制御が有効になっている場合は、作業車両3が旋回部L1bに達した時に、作業装置2を自動的に上昇させるオートアップを行う。
【0053】
手動運転又は自動運転を行っている状況下において、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令(要求情報)に基づいて、制御装置40は、作業車両3の車速を制御する。具体的には、制御装置40が第2制御に切り換えられて手動運転又は自動運転を行っている状況下において、作業装置2から通信制御部43に要求車速が送信され、当該制御装置40が要求車速を取得した場合、作業車両3の実際の車速を、要求車速に一致させる制御を行う。
【0054】
図5Aは、第2制御における車速の制御の動作を示した図である。
図5に示すように、制御装置40が要求車速を取得すると(S1)、自動運転か否かを判断する(S2)。制御装置40が自動運転であると判断した場合(S2、Yes)は、制御装置40は、自動運転制御部40Eが設定した車速を無視し(S3)、作業車両3の実車速が、要求車速に一致するように、原動機回転数、変速段を制御することで、作業装置2が要求した車速に設定する(S4)。一方、制御装置40が自動運転でないと判断した場合、即ち、手動運転と判断した場合(S2、No)、制御装置40は、アクセル42fで設定された原動機回転数、変速レバー42eに設定された変速段を無視し(S5)、作業車両3の実車速が、要求車速に一致するように、原動機回転数、変速段を制御することで、作業装置2が要求した車速に設定する(S4)。
【0055】
手動運転又は自動運転を行っている状況下において、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令(要求情報)に基づいて、制御装置40は、作業車両3の操舵を制御する。具体的には、制御装置40が第2制御に切り換えられて手動運転又は自動運転を行っている状況下において、作業装置2から通信制御部43に要求シフト量が送信され、当該制御装置40が要求シフト量を取得した場合、作業車両3の作業車両位置を変更することで、要求シフト量に対応する位置に作業装置2の位置を調整する制御を行う。要求シフト量とは、作業装置2が直進している場合などに、作業装置2が現在の位置から、進行方向に対して左側又は右側に移動する移動量等である。例えば、要求シフト量は、左側へ3cm、右側へ5cmといったように、現在の位置から移動する方向と、移動量が含まれている。
【0056】
図5Bは、第2制御における操舵の制御の動作を示した図である。
図5Bに示すように、制御装置40が要求シフト量を取得すると(S11)、自動運転か否かを判断する(S12)。制御装置40が自動運転であると判断した場合(S12、Yes)は、制御装置40は、自動運転制御部40Eによって演算された操舵角を無視し(S13)、作業装置2の位置が要求シフト量で示された位置になるように、操舵方向及び操舵角を制御する(S14)。例えば、要求シフト量が左側へ3cmである場合、制御装置40は、操舵装置11の操舵方向を左に設定し、操舵角は、作業装置2の現在の位置から3cm程度、当該作業装置2が移動するように設定する。また、要求シフト量が右側へ5cmである場合、制御装置40は、操舵装置11の操舵方向を右に設定し、操舵角は、作業装置2の現在の位置から5cm程度、当該作業装置2が移動するように設定する。
【0057】
一方、制御装置40が自動運転でないと判断した場合、即ち、手動運転と判断した場合(S12、No)、制御装置40は、ハンドル(ステアリングホイール)11aで設定された操舵角を無視し(S15)、操舵方向及び操舵角を制御することで、作業装置2が要求した位置に設定する(S14)。
手動運転又は自動運転を行っている状況下において、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令(要求情報)に基づいて、制御装置40は、連結装置8を制御する。具体的には、制御装置40が第2制御に切り換えられて手動運転又は自動運転を行っている状況下において、作業装置2から通信制御部43に要求昇降が送信され、当該制御装置40が要求昇降を取得した場合、連結装置8を制御することで、要求昇降に対応するように、作業装置2を昇降させる。要求昇降とは、作業装置2を上昇するという要求(上昇要求)、作業装置2を下降する要求(下降要求)である。
【0058】
図5Cは、第2制御における操舵の制御の動作を示した図である。
図5Cに示すように、制御装置40が要求昇降を取得すると(S21)、自動運転か否かを判断する(S22)。制御装置40が自動運転であると判断した場合(S22、Yes)は、制御装置40は、自動運転制御部40Eによって設定された連結装置8の昇降を無視し(S23)、作業装置2が要求昇降で示されたように昇降するように、連結装置8の昇降を制御する(S24)。例えば、要求昇降が上昇要求である場合、制御装置40は、作業装置2が直進部L1aを走行していたとしても、連結装置8のリフトシリンダ8eを伸長させて、作業装置2を上昇させる。また、要求昇降が下降要求である場合、制御装置40は、作業装置2が旋回部L1bを走行していたとしても、連結装置8のリフトシリンダ8eを収縮させて、作業装置2を下降させる。
【0059】
一方、制御装置40が自動運転でないと判断した場合、即ち、手動運転と判断した場合(S22、No)、制御装置40は、ポンパスイッチ42gの操作を無視し(S25)、連結装置8を制御することで、作業装置2が要求昇降で示されたように昇降するように、
当該作業装置2の昇降を制御する(S24)。
作業機1は、作業車両の車速、操舵、前記連結装置のいずれか1以上を選択可能である。
図1Cに示すように、作業機1は、表示装置50を備えている。表示装置50は、作業機1に関する様々な表示を行う。
図7Aに示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、制御装置40は、表示装置50に設定画面M1を表示させる。設定画面M1では、第2制御において制御を実行する項目60として、車速、操舵、連結装置等の複数の項目60を表示可能である。設定画面M1には、制御装置40が第2制御に設定された場合、複数の項目60に対応する制御を実行するか否かを指定する複数の選択部61が表示されている。複数の選択部61と、複数の項目60とは互いに対応付けられている。例えば、車速に対応する選択部61aを選択すると、第2制御において車速を制御することが設定され、操舵に対応する選択部61bを選択すると、第2制御において操舵を制御することが設定され、連結装置に対応する選択部61cを選択すると、第2制御において連結装置8の操舵を制御することが設定される。複数の選択部61(61a、61b、61c)の選択/非選択は、運転者が運転席の周りに設置したスイッチ又は、表示装置50を操作することによって行うことができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、要求情報として、要求車速、要求シフト量、要求昇降を例にあげて説明したが、要求回転数、要求圧力、要求高さに応じて、作業装置2から作業車両3を制御してもよい。例えば、制御装置40は、要求回転数を取得した場合、PTO制御部40CのPTO制御によってPTO回転数を要求回転数に設定する。制御装置40は、要求圧力を取得した場合、作動制御弁27から出力される圧力を制御する。制御装置40は、要求高さを取得した場合、昇降制御部40Dの昇降制御によって、昇降装置8が要求高さになるように、下降動作又は上昇動作を行う。
【0061】
また、要求情報は、その他、PTO軸の回転停止(要求停止)であってもよい。この場合、制御装置40は、要求停止を取得した場合、PTOクラッチ5e1を切断状態にする。要求情報は、作動油の供給方向の設定(要求供給方向)であってもよく、制御装置40は、要求供給方向を取得した場合、作動油の流れる方向が要求供給方向に示された方向と一致するように、補助弁27の切換の位置を変更する。
【0062】
上述したように、スイッチで構成された切換装置53は、自動運転を有効/無効に切り換える運転切換スイッチ42lと兼用化してもよい。切換装置53と運転切換スイッチ42lとを兼用化した場合、切換装置53がOFFであるときは、第1制御に設定され且つ、自動運転は無効に切り換わり、切換装置53がONであるときは、第2制御に設定され且つ自動運転は有効に切り換わる。
【0063】
制御装置40において、第2制御を実行する設定が不能な場合、切換装置53は、自動的に第1制御に切り換えてもよい。
図6Aに示すように、切換装置53は、制御装置40に設けられたCPU、電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。切換装置53は、作業車両3の仕様(車両仕様)を参照する。車両仕様は、制御装置40に記憶されていて、作業車両3が自動運転をすることができるか否か(自動運転制御部40Eが搭載されているか否か)、作業装置2から要求情報を受信することができるか否か(通信制御部43が搭載されているか否か)などの情報である。
【0064】
切換装置53は、車両仕様を参照し、車両仕様において通信制御部43が搭載されていないことが示されている場合、制御装置40において、第2制御を実行する設定が不能であるとして、自動的に第1制御に切り換え、第1制御を保持する。なお、上述したように、切換装置53として、スイッチが作業車両3に設けられている場合は、当該スイッチを運転者が操作しても、第2制御には切り換えない。
【0065】
図6Bに示すように、制御装置40において、切換装置53は、作業車両3に当該作業車両3の自動運転を行う自動運転制御部40Eが設けられていない場合、自動的に第2制御に切り換えてもよい。具体的には、切換装置53は、車両仕様を参照し、車両仕様において自動運転制御部40Eが搭載されていないことが示されている場合、自動的に第1制御に切り換え、第1制御を保持する。この場合も上述したように、切換装置53として、スイッチが作業車両3に設けられている場合は、当該スイッチを運転者が操作しても、第2制御には切り換えない。
【0066】
切換装置53は、作業車両位置に応じて、第1制御と第2制御との切換を行ってもよい。具体的には、切換装置53は、自動運転を行っているときに、作業車両位置を参照し、作業車両位置が直進部L1aであるときは、第2制御に切り換え、作業車両位置が旋回部L1bであるときは、第1制御に切り換える。この場合も上述したように、切換装置53として、スイッチが作業車両3に設けられている場合は、当該スイッチを運転者が操作しても、第1制御又は第2制御には切り換えない。
【0067】
図6Cに示すように、作業機1は、切換エリア作成部40Hを備えていてもよい。切換エリア作成部40Hは、CPU、電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。
図7Bに示すように、切換エリア作成部40Hは、作業車両3の作業範囲A1、A2を作成する。また、切換エリア作成部40Hは、作業範囲A1、A2、A3ごとに、第1制御及び第2制御の切換を設定する。
【0068】
具体的には、
図7Bに示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、切換エリア作成部40Hは、表示装置50に設定画面M2を表示させる。設定画面M2は、例えば、複数の作業範囲A1、A2、A3を設定するフィールド部65と、作業範囲A1、A2、A3において第1制御又は第2制御を行うかを設定する制御設定部66とが含まれている。フィールド部65には、位置情報(緯度、経度)が割り当てられている。設定画面M2に設けられたソフトウェアスイッチ、又は、作業車両3に設けられたハードウェアスイッチの操作によって、フィールド部65に、圃場H1の範囲と、圃場H1内に作業範囲A1、A2、A3を設定することが可能である。
【0069】
制御設定部66は、作業範囲の名称など作業範囲A1、A2、A3を識別する識別情報と、第1制御、第2制御のいずれかを選択する部分を表示していて、ソフトウェアスイッチ、又は、作業車両3に設けられたハードウェアスイッチの操作によって、作業範囲A1、A2、A3と制御(第1制御、第2制御)との対応付けを行うことで、作業範囲A1、A2、A3ごとに、第1制御及び第2制御の切換を設定することができる。
【0070】
なお、
図7Bのフィールド部65に自動運転時の走行予定ラインL1を設定できるようにしてもよい。
上述した実施形態では、制御装置40は、電気電子回路、プログラム等であるが、当該制御装置40に人工知能の深層学習で構築されたモデルを搭載してもよい。制御装置40は、当該制御装置40が取得した様々な情報(検出装置41が検出した検出値などの検出情報、操作装置42の操作情報、制御情報)などを取得し、人工知能による深層学習によって、作業車両3又は作業装置2の操作を支援する作動モデルを構築する。作動モデルは、作業機1が走行、作業等により動作する毎に強化学習を行う。制御装置40が作動モデルを有している場合は、作業機1を走行又は作業させたときの、現在の情報を作動モデルに適用し、作動モデルが出力した結果(出力結果)に基づいて、作業車両3又は作業装置2の制御を行う。
【0071】
なお、人工知能のモデル(作動モデル)を用いて、作業機1の制御(操作)するにあたっては条件を設けることが好ましい。例えば、運転者が人工知能モデル(作動モデル)を搭載した作業機1を運転したことがある場合には、制御装置40は、作動モデルによる制御を有効に設定し、人工知能モデル(作動モデル)を搭載した作業機1を運転したことが無い又は経験が少ない場合には、作動モデルによる制御を無効に設定する。
【0072】
また、制御装置40は、作業機1で作業を行っている圃場の角度が閾値以上(例えば、10度以上)である場合には、人工知能モデル(作動モデル)による制御を無効に設定し、圃場の角度が閾値未満である場合には、人工知能モデル(作動モデル)による制御を有効に設定する。
作業機1は、走行可能な作業車両3と、作業車両3に連結された作業装置2と、作業車両3から作業装置2を制御する第1制御と、作業装置2からの指令に基づいて作業車両3を制御する第2制御との少なくともいずれかを実行可能な制御装置40と、第1制御と第2制御との切換を行う切換装置53と、を備えている。これによれば、作業車両3から作業装置2を制御することができる一方で、作業装置2からも作業車両3を制御することができ、必要に応じて、作業車両3から作業装置2を制御するのか、作業装置2から作業車両3を制御するのかを簡単に切り換えることができる。即ち、業車両と作業装置とのそれぞれの要求に応じて、動作することができて作業性を向上させることができる。
【0073】
作業機1は、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令に基づいて、作業車両3の車速を制御する。これによれば、作業装置2が作業車両3の車速を制御することができる。例えば、作業装置2が作業を行うにあたって、作業装置2が現在の車速よりも車速を上げたい場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで車速を上げることができ、車速を下げたい場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで車速を下げることができ、作業装置2によって速度調整を行うことができる。
【0074】
作業機1は、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令に基づいて、作業車両3の操舵を制御する。これによれば、作業装置2が作業車両3の操舵を制御することができる。例えば、作業装置2が作業を行うにあたって、現在位置により左側に作業位置をシフトした場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで作業位置を左側にシフトすることができ、右側に作業位置をシフトした場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで作業位置を右側にシフトすることができ、作業装置2によって水平方向の位置調整を行うことができる。
【0075】
作業機1は、作業車両3と作業装置2とを連結し且つ作業装置2の姿勢を変更可能な連結装置8を備え、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令に基づいて連結装置8を制御する。これによれば、作業装置2が連結装置8を制御することができる。例えば、作業装置2が作業を行うにあたって、現在位置により当該作業装置2を上昇させたい場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで作業装置2を上昇させることができ、作業装置2を下降させたい場合には作業装置2から作業車両3へ要求することで作業装置2を下降させることができ、作業装置2によって垂直方向の位置調整を行うことができる。
【0076】
作業機1は、作業車両3と作業装置2とを連結し且つ作業装置2の姿勢を変更可能な連結装置8を備え、切換装置53によって第2制御に切り換えられている場合、作業装置2の指令に基づいて、作業車両3の車速、操舵、連結装置8のいずれか1以上を選択し制御できる。これによれば、作業装置2から作業車両3を制御する際の制御対象として、作業車両3の車速、操舵、連結装置8のいずれか1以上を任意に選択することができ、作業に合わせて制御対象を選択することもできる。
【0077】
作業機1は、作業車両3と作業装置2とを連結し且つ作業装置2の姿勢を変更可能な連結装置8を備え、切換装置53によって第1制御に切り換えられている場合、作業車両3の指令に基づいて、作業装置2の姿勢を制御する。これによれば、作業装置2から作業車両3への制御に加えて、作業車両3からも作業装置2の姿勢を変更することができるため、作業車両3側からも作業に応じて作業装置2の姿勢の調整を行うことができる。
【0078】
制御装置40は、作業車両3の自動運転を行う自動運転制御部40Eを有し、切換装置53によって第1制御に切り換えられている場合、作業車両3の自動運転に基づいて作業装置2を制御する。これによれば、作業車両3の自動運転を行う場合には、作業車両3側から作業装置2を制御することを優先させることができる。
切換装置53は、制御装置40において、第2制御を実行する設定が不能な場合、自動的に第1制御に切り換える。これによれば、作業装置2からの要求に応じた制御が行えない、即ち、作業装置2からの要求に応じて作動をすることができないような仕様では、作業車両3から作業車両3を制御することに固定することができ、運転者が、作業装置2からの要求に応じて作動をすることができないような仕様であるか否かを調べて、第1制御に切り換えるようなことをしなくても、簡単に作業機1を作動させることができる。
【0079】
切換装置53は、作業車両3に当該作業車両3の自動運転を行う自動運転制御部40Eが設けられていない場合、自動的に第2制御に切り換える。これによれば、作業車両3の自動運転が行えないような仕様である場合には、作業装置2から作業車両3側を制御することに固定することができ、運転者が、自動運転ができるか否かの仕様であるかを調べて、第2制御に切り換えるようなことをしなくても、簡単に作業機1を作動させることができる。
【0080】
作業機1は、作業車両3の位置である作業車両位置を測位する測位装置41k、切換装置53は、作業車両位置に応じて、切換を行う。これによれば、例えば、作業車両3の位置である車両位置を参照するだけで、第1制御と第2制御とを簡単に切り換えることができ、操作性を向上させることができる。例えば、圃場の内外で、第1制御と第2制御とのいずれかに自動的に切り換えることができる。或いは、圃場内であっても所定の位置毎に設定された第1制御の優先、第2制御の優先のいずれかを自動的に切り換えることができる。
【0081】
作業機1は、作業車両3の作業範囲の設定し且つ、第1制御及び第2制御の切換を設定した作業範囲ごとに作成する切換エリア作成部60Hを備えている。これによれば、作業車両3の作業範囲において、第1制御と第2制御とを簡単に設定することができ、作業範囲における状況に応じて、第1制御と第2制御とを簡単に切り換えることもできる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 :作業機
2 :作業装置
2a :制御装置
3 :作業車両
8 :連結装置
40 :制御装置
40H :切換エリア作成部
41k :測位装置
53 :切換装置
60H :切換エリア作成部
A1 :作業範囲
A2 :作業範囲
P1 :作業車両位置