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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20240213BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240213BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/931
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020157620
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051244
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052978(JP,A)
【文献】特開2019-184545(JP,A)
【文献】特開2010-078364(JP,A)
【文献】特開2013-096905(JP,A)
【文献】特開2019-158693(JP,A)
【文献】特開2020-150128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を出射する光源を含む投光部と、
光検出器と、前記投光部から出射された前記光信号を外部の物体が反射した反射光を前記光検出器に導く光学系と、を含む受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記光検出器が前記反射光を検出した第2時刻とを用いて、前記物体との距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、前記計測部に距離値を算出させる制御部と、を備え、
前記計測部が、
第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを前記受光部から受け取り、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成し、
前記重み値に基づいて前記第1デジタル信号に前記第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成し、
前記第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、前記第1方向に存在する物体との距離値を算出し、
前記計測部が、底部の値として、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号のそれぞれの平均値を用いる
離計測装置。
【請求項2】
光信号を出射する光源を含む投光部と、
光検出器と、前記投光部から出射された前記光信号を外部の物体が反射した反射光を前記光検出器に導く光学系と、を含む受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記光検出器が前記反射光を検出した第2時刻とを用いて、前記物体との距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、前記計測部に距離値を算出させる制御部と、を備え、
前記計測部が、
第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを前記受光部から受け取り、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成し、
前記重み値に基づいて前記第1デジタル信号に前記第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成し、
前記第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、前記第1方向に存在する物体との距離値を算出し、
前記計測部が、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号のそれぞれを複数の期間に分割し、前記複数の期間の各々で、最大の値と最小の値との差を算出し、前記複数の期間の各々で算出された前記差の平均値を、底部の値として使用する
離計測装置。
【請求項3】
光信号を出射する光源を含む投光部と、
光検出器と、前記投光部から出射された前記光信号を外部の物体が反射した反射光を前記光検出器に導く光学系と、を含む受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記光検出器が前記反射光を検出した第2時刻とを用いて、前記物体との距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、前記計測部に距離値を算出させる制御部と、を備え、
前記計測部が、
第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを前記受光部から受け取り、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成し、
前記重み値に基づいて前記第1デジタル信号に前記第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成し、
前記第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、前記第1方向に存在する物体との距離値を算出し、
前記計測部が、
第1の底部の値として、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号のそれぞれの平均値を使用し、
第2の底部の値として、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号のそれぞれを複数の期間に分割し、前記複数の期間の各々で、最大の値と最小の値との差を算出し、前記複数の期間の各々で算出された前記差の平均値を使用し、
前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号の光量が第1の値である場合に、前記底部の値として前記第2の底部の値を使用し、
前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号の光量が前記第1の値よりも大きい第2の値である場合に、前記底部の値として前記第1の底部の値を使用する
離計測装置。
【請求項4】
前記計測部が、前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号の光量が前記第2の値よりも大きい第3の値である場合に、前記底部の値として前記第2の底部の値を使用する、
請求項に記載の距離計測装置。
【請求項5】
光信号を出射する光源を含む投光部と、
光検出器と、前記投光部から出射された前記光信号を外部の物体が反射した反射光を前記光検出器に導く光学系と、を含む受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記光検出器が前記反射光を検出した第2時刻とを用いて、前記物体との距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、前記計測部に距離値を算出させる制御部と、を備え、
前記計測部が、
第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを前記受光部から受け取り、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成し、
前記重み値に基づいて前記第1デジタル信号に前記第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成し、
前記第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、前記第1方向に存在する物体との距離値を算出し、
前記重み値は、前記第1デジタル信号の底部の値と前記第2デジタル信号の底部の値との比率に基づいて算出され、類似性が強いほど大きく設定される
離計測装置。
【請求項6】
前記重み値は、前記第1デジタル信号の突出している部分のピークの値と前記第2デジタル信号の突出している部分のピークの値との比率に基づいて算出され、類似性が強いほど大きく設定される、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項7】
前記計測部が、前記第3デジタル信号から突出している部分を含む期間を抽出し、前記第1デジタル信号の前記期間内で底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた前記第2時刻を算出する、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の距離計測装置。
【請求項8】
底部の値は、1回の計測時間における輝度の時間平均値である、
請求項に記載の距離計測装置。
【請求項9】
光信号を出射する光源を含む投光部と、
光検出器と、前記投光部から出射された前記光信号を外部の物体が反射した反射光を前記光検出器に導く光学系と、を含む受光部と、
前記光源が前記光信号を出射した第1時刻と、前記光検出器が前記反射光を検出した第2時刻とを用いて、前記物体との距離値を算出する計測部と、
前記光源に前記光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、前記計測部に距離値を算出させる制御部と、を備え、
前記計測部が、
第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを前記受光部から受け取り、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成し、
前記重み値に基づいて前記第1デジタル信号に前記第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成し、
前記第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、前記第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、前記第1方向に存在する物体との距離値を算出し、
前記光検出器が、基板上に2次元に配置された複数のセンサを含み、
前記複数のセンサの各々が、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、一端が第2電源ノードに接続され、他端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部が、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する
離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LiDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LiDARは、センサから出力される光強度信号に基づいて、LiDARから対象物までの距離を計測する。LiDARで使用されるセンサは多々有るが、今後有望なものとして、複数のシリコンフォトマルチプライヤを備えるセンサが知られている。LiDARの計測データは、車両の制御等に使用されることが想定されるため、高い精度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-052978号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0363740号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距離計測装置による距離の計測精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の距離計測装置は、投光部と、受光部と、計測部と、制御部とを含む。投光部は、光信号を出射する光源を含む。受光部は、光検出器と、投光部から出射された光信号を外部の物体が反射した反射光を光検出器に導く光学系とを含む。計測部は、光源が光信号を出射した第1時刻と、光検出器が反射光を検出した第2時刻とを用いて、物体との距離値を算出する。制御部は、光源に光信号を間欠的に出射させ、間欠的に出射された光信号毎に、計測部に距離値を算出させる。計測部が、第1方向に出射された第1光信号の反射光の受光結果を含む第1デジタル信号と、第1方向と異なる第2方向に出射された第2光信号の反射光の受光結果を含む第2デジタル信号とを受光部から受け取る。計測部が、第1デジタル信号と前記第2デジタル信号との間の、底部から突出している部分の値の類似性、又は底部の値の類似性の強さに基づいて重み値を生成する。計測部が、重み値に基づいて第1デジタル信号に第2デジタル信号を積算した第3デジタル信号を生成する。計測部が、第3デジタル信号のうち、底部から突出している部分の位置に基づいて、第1光信号に関連付けられた第2時刻を算出することによって、第1方向に存在する物体との距離値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の全体構成の一例を示す概略図。
図2】第1実施形態に係る距離計測装置の測距方法の一例を示す概略図。
図3】第1実施形態に係る距離計測装置の備える出射部及び受光部の構成の一例を示す概略図。
図4】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図5】第1実施形態に係る距離計測装置におけるSPADユニットの回路構成の一例を示す回路図。
図6】第1実施形態に係る距離計測装置におけるアバランシェフォトダイオードの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードの動作原理とを示す概略図。
図7】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器で設定されたアクティブ領域の一例を示す平面図。
図8】第1実施形態に係る距離計測装置における受光部に含まれた出力回路の構成の一例を示すブロック図。
図9】第1実施形態に係る距離計測装置における計測部の構成の一例を示すブロック図。
図10】第1実施形態に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示すテーブル。
図11】第1実施形態に係る距離計測装置における光検出器の受光結果の一例を示すタイムチャート。
図12】第1実施形態に係る距離計測装置における信号処理部の単純積算処理の一例を示すタイムチャート。
図13】第1実施形態に係る距離計測装置のスキャン領域内でターゲットの測定点の測距に使用される領域の一例を示す概略図。
図14】第1実施形態に係る距離計測装置における対象物毎の受光結果の一例を示すタイムチャート。
図15】第1実施形態に係る距離計測装置の計測動作の一例を示すフローチャート。
図16】第1実施形態に係る距離計測装置における積算データの一例を示すタイムチャート。
図17】第1実施形態に係る距離計測装置の計測動作における重み値の計算方法の一例を示すフローチャート。
図18】第1実施形態と第1実施形態の比較例との違いを模式的に示すタイムチャート。
図19】第1実施形態の変形例に係る距離計測装置における信号処理部の構成の一例を示すブロック図。
図20】第1実施形態の変形例に係る距離計測装置における光検出器の受光結果に対するACカップリングの効果の一例を示すタイムチャート。
図21】第2実施形態に係る距離計測装置における分割平均を用いたフロアノイズ値の算出方法を説明するためのタイムチャート。
図22】第2実施形態に係る距離計測装置における各領域の受光結果の一例を示すタイムチャート。
図23】第2実施形態に係る距離計測装置における重み値を用いた積算結果の一例を示すタイムチャート。
図24】第3実施形態に係る距離計測装置における環境光起因の励起フォトン数に対する受光結果の変化の一例を示すグラフ。
図25】第3実施形態に係る距離計測装置におけるアルゴリズム毎のノイズ値の変化の一例を示すグラフ。
図26】第3実施形態に係る距離計測装置の計測動作におけるフロアノイズ値の計算に使用されるアルゴリズムの選択方法の一例を示すフローチャート。
図27】第4実施形態に係る距離計測装置の計測動作の一例を示すフローチャート。
図28】第4実施形態に係る距離計測装置における積算データの一例を示すタイムチャート。
図29】第5実施形態に係る距離計測装置における計測部の構成の一例を示すブロック図。
図30】第5実施形態に係る距離計測装置の第1平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図。
図31】第5実施形態に係る距離計測装置の第2平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。図面に示された“X方向”及び“Y方向”は、互いに交差する方向に対応している。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。
【0008】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば当該距離計測装置1と対象物TGと間の距離を計測することが可能なLiDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。
【0009】
[1-1]構成
[1-1-1]距離計測装置1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、本例では、距離計測装置1の前方に、測距の対象物TGとして車両が配置されている。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば、制御部10、出射部20、受光部30、及び計測部40を備えている。
【0010】
制御部10は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、発振器を含んでいる(図示せず)。ROMは、距離計測装置1の動作に使用されるプログラム等を記憶している。CPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、出射部20、受光部30、及び計測部40を制御する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。制御部10は、様々なデータ処理や、演算処理を実行することも可能である。
【0011】
出射部20は、レーザ光を間欠的に生成及び出射する。生成及び出射されたレーザ光は、対象物TGに照射され、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測に使用される。本明細書では、出射部20から出射されたレーザ光のことを、“出射光L1”と呼ぶ。対象物TGによって反射された出射光L1のことを、“反射光L2”と呼ぶ。尚、出射部20は、投光部と呼ばれても良い。
【0012】
受光部30は、距離計測装置1に入射した光を検出して、受光結果を計測部40に転送する。言い換えると、受光部30は、距離計測装置1に入射した光を電気信号に変換して、変換した電気信号を計測部40に転送する。受光部30は、距離計測装置1に間欠的に入射する反射光L2の検出に使用される。
【0013】
計測部40は、受光部30から転送された受光結果に基づいて、受光部30が反射光L2を検出した時刻を計測する。そして、計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された時刻と、受光部30が反射光L2を検出した時刻とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。出射部20から出射光L1が出射された時刻は、例えば制御部10から通知される。
【0014】
図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1の測距方法の概要を示す概略図である。入力電圧の波形は、出射部20に含まれた光源に供給される電圧の時間変化を示している。受光結果の波形は、受光部30が検出した光に基づいた電気信号の強度の時間変化を示している。図2に示すように、出射部20の光源にパルス信号が供給されると、パルス信号の立ち上がりに基づいて出射光L1が生成及び出射される。そして、当該出射光L1が対象物TGに照射され、受光部30が、対象物TGから反射した反射光L2を検出する。
【0015】
計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された出射時刻T1と、受光部30が反射光L2を検出した受光時刻T2との差に基づいて、出射光L1の飛行時間(ToF:Time of Flight)を算出する。そして、計測部40は、出射光L1の飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測(測距)する。このような距離計測装置1の測距方法は、“ToF方式”とも呼ばれる。計測部40は、距離計測装置1が出射及び受光する出射光L1及び反射光L2の組毎に、測距結果を出力する。
【0016】
尚、計測部40は、少なくとも出射光L1の出射に関する時間に基づいて出射時刻T1を決定し、反射光L2の受光に関する時間に基づいて受光時刻T2を決定していれば良い。言い換えると、計測部40は、出射時刻T1及び受光時刻T2を、信号の突出部分に基づいて決定していれば良く、例えば、信号の立ち上がり時間やピーク時刻等に基づいて決定する。制御部10は、出射部20、受光部30、及び計測部40毎に設けられても良い。計測部40の処理が制御部10によって実行されても良い。距離計測装置1は、計測部40の測距結果に基づいた画像を生成する画像処理部を有していても良い。このような画像は、距離計測装置1を搭載した車両等の制御プログラムによって参照される。
【0017】
[1-1-2]出射部20の構成
図3は、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える出射部20及び受光部30の構成の一例を示す概略図である。図3に示すように、第1実施形態における出射部20は、例えば、駆動回路21及び22、光源23、光学系24、及びミラー25を含む。
【0018】
駆動回路21は、制御部10の発振器から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路21は、生成した駆動電流を光源23に供給する。つまり、駆動回路21は、光源23の電流供給源として機能する。
【0019】
駆動回路22は、制御部10による制御に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路22は、生成した駆動電流をミラー25に供給する。つまり、駆動回路22は、ミラー25の電源回路として機能する。
【0020】
光源23は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源23は、駆動回路21から供給された間欠的な駆動電流(パルス信号)に基づいて、レーザ光(出射光L1)を間欠的に出射する。光源23により出射されたレーザ光は、光学系24に入射する。
【0021】
光学系24は、複数のレンズや光学素子を含み得る。光学系24は、光源23により出射される出射光L1の光路上に配置される。例えば、光学系24は、入射した出射光L1をコリメートして、コリメートした出射光L1をミラー25に導光する。図3に示された光学系24は、いわゆる非同軸光学系であるが、本実施形態では、それに限定されない。光学系24は、同軸光学系でもよく、穴開きミラーや、ビームスプリッタ等を含んでいても良い。
【0022】
ミラー25は、駆動回路22から供給される駆動電流に基づいて駆動し、当該ミラー25に入射した出射光L1を反射する。例えば、ミラー25の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転可能に構成される。ミラー25によって反射された出射光L1が、距離計測装置1の外部の対象物TGに照射される。ミラーは、後述する様に、ポリゴンミラーの様な回転ミラーであってもよい。
【0023】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、制御部10は、ミラー25を制御して出射光L1の出射方向を変更することによって、測距したい領域をスキャンする。出射部20は、レーザ光を用いたスキャンをすることが可能な構成を有していれば良く、その他の構成であっても良い。例えば、出射部20は、ミラー25によって反射されたレーザ光の光路上に配置された光学系をさらに備えていても良い。
【0024】
本明細書では、距離計測装置1によって測距される領域のことを、“スキャン領域SA”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャン領域SA内で複数点の計測動作を実行し、様々な対象物TGとの距離を計測する。また、1回のスキャンに対応する複数点の測距結果の組のことを“フレーム”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャンを連続的に実行することによって、距離計測装置1の前方の対象物TGとの距離を逐次取得することが出来る。
【0025】
[1-1-3]受光部30の構成
引き続き図3を参照して、第1実施形態における受光部30の構成について説明する。図3に示すように、第1実施形態における受光部30は、例えば、光学系31、光検出器32、及び出力回路33を含む。
【0026】
光学系31は、少なくとも1つのレンズを含み得る。光学系31は、距離計測装置1に入射した反射光L2を光検出器32に集める。光検出器32は、例えば、半導体を用いた光電子像倍素子を含み、光学系31を介して当該光検出器32に入射した光を電気信号に変換する。光検出器32によって変換された電気信号(受光結果)は、出力回路33に転送される。出力回路33は、光検出器32から転送された電気信号をデジタル信号に変換する。そして、出力回路33は、受光結果に対応するデジタル信号を計測部40に出力する。
【0027】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、受光部30の光検出器32の光軸は、出射部20の光源23の光軸と異なっている。つまり、距離計測装置1は、出射部20及び受光部30の間で非同軸の光学系を有している。尚、受光部30は、距離計測装置1に入射した反射光L2を検出可能であれば、その他の構成、例えば同軸光学系や、分離光学系であっても良い。
【0028】
(光検出器32の構成)
図4は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器32の平面レイアウトの一例を示す平面図である。図4に示すように、第1実施形態における光検出器32は、2Dセンサであり、受光領域DAを含む。尚、光検出器32として、1Dセンサが使用されても良い。
【0029】
受光領域DAは、距離計測装置1に入射した光の検出に使用される領域である。受光領域DAは、複数の画素PXを含む。画素PXは、光検出器32から出力される受光結果の最小単位に対応している。複数の画素PXは、例えば、半導体基板の上に2次元に配置される、言い換えると、複数の画素PXは、半導体基板の上に、XY平面に沿ったマトリクス状に配置される。XY平面は、X方向とY方向とによって形成される平面であり、光検出器32の受光領域DAが形成される基板の表面と平行である。複数の画素PXのそれぞれには、X方向に対応する座標と、Y方向に対応する座標とが割り当てられる。
【0030】
複数の画素PXの各々は、少なくとも1つのSPADユニットSUを含む。SPADユニットSUは、光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。画素PXが複数のSPADユニットSUを含む場合、複数のSPADユニットSUは、例えばXY平面に沿ったマトリクス状に配置される。複数のSPADを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0031】
尚、光検出器32に含まれた画素PXの数と、画素PXに含まれたSPADユニットSUの数とのそれぞれは、任意の数に設計され得る。画素PXの形状とSPADユニットSUの形状とのそれぞれは、任意の形状に設計され得る。画素PXの形状とSPADユニットSUの形状とのそれぞれは、単一の形状で設けられていなくても良い。画素PXにおいて、X方向に並んだSPADユニットSUの数と、Y方向に並んだSPADユニットSUの数とは、異なっていても良い。画素PXの形状は、画素PXに含まれたSPADユニットSUの数や配置等に応じて設計され得る。
【0032】
(SPADユニットSUの回路構成)
図5は、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるSPADユニットSUの回路構成の一例を示す回路図である。図5に示すように、第1実施形態におけるSPADユニットSUは、少なくとも1つのアバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組と、高電圧ノードNhvと、低電圧ノードNlvと、P型トランジスタToutとを含む。アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組の数は、SPADユニットSUが含むSPADの数に対応している。
【0033】
アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの組は、高電圧ノードNhvと低電圧ノードNlvとの間に直列に接続される。具体的には、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが、低電圧ノードNlvに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが、クエンチ抵抗Rqの一端に接続される。クエンチ抵抗Rqの他端が、高電圧ノードNhvに接続される。距離計測装置1の計測動作において、高電圧ノードNhvに印加される電圧は、低電圧ノードNlvに印加される電圧よりも高い。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDには、逆バイアスが印加される。
【0034】
高電圧ノードNhvは、SPADユニットSUの出力ノードに対応している。高電圧ノードNhvには、P型トランジスタToutのドレインが接続される。N型トランジスタToutのゲートには、制御信号Soutが入力される。制御信号Soutの電圧が“L”レベルである場合、P型トランジスタToutのソースから、高電圧ノードNhvの電圧に基づいた出力信号IOUTが出力される。出力信号IOUTは、SPADユニットSUの受光結果に対応している。制御信号Soutの電圧が“H”レベルである場合、P型トランジスタToutが、SPADユニットSUによる受光結果の出力を遮断する。制御部10は、複数の画素PX毎に、制御信号Soutを制御することが出来る。
【0035】
尚、SPADユニットSUは、その他の回路構成であっても良い。例えば、高電圧ノードNhvにN型トランジスタのドレインを接続し、そのゲートに制御信号Soutを接続し、そのソースを適当な低い電位に接続しても良い。そして、P型トランジスタToutによる出力信号IOUTの出力が遮断されている場合に、当該N型トランジスタを介して電流が排出されても良い。例えば、クエンチ抵抗Rqが、トランジスタに置き換えられても良い。クエンチ抵抗Rqと異なるクエンチ用のトランジスタが、高電圧ノードNhvに接続されても良い。高電圧ノードNhv(出力ノード)の配置は、アバランシェフォトダイオードAPDによる受光結果を出力可能であれば、その他の配置であっても良い。P型トランジスタToutは、直列に接続された複数のトランジスタによって構成されても良い。トランジスタToutは、N型トランジスタであっても良い。トランジスタToutは、出力信号IOUTを選択的に出力可能であれば、その他のスイッチ素子であっても良い。画素PXが複数のSPADユニットSUを有する場合、当該画素PXの出力信号は、例えば、その画素PXに属するSPADユニットSUの出力信号IOUTの合計に対応する。
【0036】
(アバランシェフォトダイオードAPDの構造)
図6は、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるアバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードSPADの動作原理とを示す概略図である。図6に示すように、第1実施形態におけるアバランシェフォトダイオードAPDは、例えば、基板50、P型半導体層51及び52、及びN型半導体層53を含む。
【0037】
基板50は、例えばP型の半導体基板である。基板50の上に、P型半導体層51、P型半導体層52、及びN型半導体層53が、この順番に積層されている。例えば、P型半導体層51は、P型半導体層52よりも厚く形成される。P型半導体層52にドープされたP型不純物の濃度は、P型半導体層51にドープされたP型不純物の濃度よりも高い。P型半導体層52とN型半導体層53との接触部分には、PN接合が形成される。これにより、P型半導体層52及びN型半導体層53が、アバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードとしてそれぞれ使用される。
【0038】
第1実施形態におけるアバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで使用される。そして、当該アバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADは、フォトン単位の光を検出して、電気信号に変換する。以下に、図6に示されたアバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADの動作原理について説明する。本例では、基板50側が、SPADユニットSUの低電圧ノードNlvに対応している。N型半導体層53側が、SPADユニットSUの高電圧ノードNhvに対応している。
【0039】
アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加されると、P型半導体層52とN型半導体層53との間に強い電界が発生する(図6(1))。すると、P型半導体層52とN型半導体層53とのPN接合部分からP型半導体層51の領域に亘って、空乏層が形成される(図6(2))。このとき、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態(以下、アクティブ状態と呼ぶ)になる。アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光エネルギーの一部が空乏層に到達する(図6(3))。すると、空乏層に、電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する(図6(4))。空乏層に発生したキャリアは、PN接合の近傍の強い電界によりドリフトする(図6(5))。具体的には、発生したキャリアのうち正孔が、基板50側に向かって加速され、発生したキャリアのうち電子が、N型半導体層53側に向かって加速される。
【0040】
N型半導体層53側に向かって加速された電子は、PN接合の近傍の強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電子と正孔の対を発生させる。このような電子と正孔の対の発生は、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合に繰り返される(図6(6)アバランシェ降伏)。アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(図6(7)アバランシェ電流)。アバランシェ電流とその後のリカバリに関わる電気信号が、アバランシェフォトダイオードAPD、すなわち1つのSPADから出力される。
【0041】
アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。すると、SPADユニットSUの出力ノードにおいて、電圧降下が発生する(図6(8)クエンチング)。クエンチングによって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDに対するリカバリ電流の流入や、PN接合における容量の充電が行われるガイガー放電が止まった暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態に戻る。
【0042】
尚、SPADユニットSUが含むアバランシェフォトダイオードAPDは、その他の構造であっても良い。例えば、P型半導体層52が省略されても良い。P型半導体層51、P型半導体層52、及びN型半導体層53のそれぞれの厚さは、アバランシェフォトダイオードAPDの設計に応じて変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、基板50と基板50の上の半導体層との接触部分に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDは、図6に示されたP型半導体層とN型半導体層とが入れ替えられた構造を有していても良い。
【0043】
(光検出器32のアクティブ領域AA)
第1実施形態に係る距離計測装置1に入射する反射光L2は、例えば、出射光L1のスキャン位置と光学系31の設計とに基づいて、受光領域DAの一部に照射される。そして、制御部10は、各画素PXに含まれたSPADユニットSUを、反射光L2の照射位置に基づいて、アクティブ状態又は非アクティブ状態にする。
【0044】
本明細書では、光を検出可能な状態に制御されたSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オン状態の画素PXと呼ぶ。光を検出不可能な状態に制御されたSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オフ状態の画素PXと呼ぶ。制御部10が、受光領域DAに設定する少なくとも1つのオン状態の画素PXを含む領域のことを、“アクティブ領域AA”と呼ぶ。
【0045】
図7は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器32の受光領域DAに設定されたアクティブ領域AAの一例を示す平面図である。図7に示すように、距離計測装置1の計測動作において、制御部10は、出射光L1毎に、受光領域DAのX座標Cx及びY座標Cyを、光検出器32に通知する。そして、光検出器32が、制御部10によって指定されたX座標Cx及びY座標Cyに基づいて、受光領域DA内にアクティブ領域AAを設定する。
【0046】
X座標Cx及びY座標Cyは、例えば、当該出射光L1が出射されたタイミングのミラー25の傾きに関連付けられ、アクティブ領域AAの左上の画素PXの座標を示している。アクティブ領域AAは、例えば、X座標Cx及びY座標Cyを基準として、X方向及びY方向にそれぞれ4画素及び3画素の広がりを有する領域に設定される。言い換えると、本例では、アクティブ領域AAが、4×3画素を含む矩形領域に設定される。このように、受光領域DA内にアクティブ領域AAが設定されると、反射光L2が照射されると推測される領域の画素PXのみが、受光結果を出力する。
【0047】
これにより、アクティブ領域AA外の画素PXからのノイズが、光検出器32の受光結果から除去され、受光結果のS/N比(Signal to Noise Ratio)が高くなる。また、アクティブ領域AA外の画素PXに対する電圧の印加が適宜省略されるため、光検出器32の消費電力が抑制される。尚、アクティブ領域AAの位置は、少なくとも制御部10によって指定された座標に基づいて設定されていれば良い。アクティブ領域AAの形状は、制御部10によって指定された座標に応じて変更されても良い。
【0048】
(出力回路33の構成)
図8は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力回路33の構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、第1実施形態における出力回路33は、例えば、スイッチ部SW及び信号処理部SPを含む。
【0049】
スイッチ部SWは、複数のスイッチ回路を含む。スイッチ部SWは、アクティブ領域AAの位置を示すX座標Cx及びY座標Cyに基づいて、複数のスイッチ回路を適宜繋ぎ替える。このようなスイッチ部SWによって、光検出器32において画素PXの出力に使用される信号線の本数が、削減され得る。また、スイッチ部SWは、受光領域DAから出力された複数の出力信号IOUTの順序を整列する。例えば、光検出器32からアクティブ領域AA内の12個の画素PXに対応する出力信号IOUTa1~12が出力される場合、スイッチ部SWは、入力された出力信号IOUTa1~12を整列して、整列された出力信号IOUTb1~12を信号処理部SPに出力する。アクティブ領域AA内の各画素PXの出力順番は、例えば図8の下部に示された順番に変更される。
【0050】
信号処理部SPは、スイッチ部SWから入力された複数の出力信号IOUTを用いて、様々な信号処理を実行する。信号処理部SPは、例えば増幅回路のようなアナログ回路、アナログ-デジタル変換器(ADC)、時間-デジタル変換器(TDC)、加算器のようなロジック回路を含み得る。例えば、信号処理部SPは、入力された出力信号IOUTb1~12のそれぞれにアナログ-デジタル変換を実行して、光検出器32の受光結果に基づくデジタル信号を生成する。そして、信号処理部SPは、受光結果に基づくデジタル信号を、計測部40に転送する。このように、スイッチ部SWによって整列された出力信号IOUTb1~12が入力されることによって、信号処理部SPは、アクティブ領域AA内における相対的な位置に関する順番を変更せずに、信号処理を実行することが出来る。
【0051】
尚、受光領域DA、スイッチ部SW、及び信号処理部SPは、互いに異なる基板上に形成されても良い。スイッチ部SWと信号処理部SPとは、一体で設けられても良い。アクティブ領域AA内の画素PXの出力信号は、アクティブ領域AA内の画素の配置に応じて統合されても良い。
【0052】
[1-1-4]計測部40の構成
図9は、第1実施形態に係る距離計測装置1における計測部40の構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、第1実施形態における計測部40は、例えば、単純積算部41、記憶部42、解析部43、積算部44、及び距離計測部45を含む。
【0053】
単純積算部41は、受光結果に関するデータの単純積算処理を実行する。具体的には、単純積算部41は、受光部30の信号処理部SPから転送された複数の画素PXの受光結果を単純に積算することによって、積算データSDを生成する。そして、単純積算部41は、出射光L1毎に得られた積算データSDを記憶部42に転送する。
【0054】
記憶部42は、出射光L1毎に得られた積算データSDを一時的に記憶する。記憶部42は、例えば1フレーム分の積算データSDを記憶し得る。記憶部42は、複数フレーム分の積算データSDを記憶しても良い。記憶部42に記憶された積算データSDは、後述される計測動作の進行に応じて、適宜破棄されても良い。
【0055】
解析部43は、ターゲットの測定点の積算データSDcと、ターゲットの近傍の測定点の積算データSDpとを記憶部42から読み出す。本明細書において、“ターゲットの測定点”は、測距の対象とされる出射光L1の反射光L2に対応する測定点のことを示している。距離計測装置1は、ターゲットの測定点における距離値の算出に、ターゲットの近傍の少なくとも1つの測定点の積算データSDpを利用する。
【0056】
また、解析部43は、例えば、底部算出部431、突出部検出部432、及び重み値生成部433を含む。底部算出部431は、積算データSDc及びSDpのそれぞれの底部の値を算出する。以下では、“積算データSDの底部の値”のことを、“フロアノイズ値”とも呼ぶ。突出部検出部432は、反射光L2の検出と推測され得る信号の突出部分を検出する。重み値生成部433は、底部算出部431及び突出部検出部432の出力に基づいて、各積算データSDpの重み値を生成する。具体的な重み値の算出方法の一例については後述する。
【0057】
積算部44は、各積算データSDpの重み値を用いて、積算データSDcに積算データSDpを加算する。そして、積算部は、生成した積算データSDwを距離計測部45に転送する。重み値を用いた積算処理の詳細については後述する。
【0058】
距離計測部45は、制御部10から出射光L1の出射時刻T1に関するデータを取得し、積算部44からターゲットの測定点に関する積算データSDwを取得する。そして、距離計測部45は、積算部44から転送された積算データSDwに基づいて、反射光L2の受光時刻T2を算出する。それから、距離計測部45は、出射時刻T1と光検出器32の受光時刻T2とを用いて、ToF方式に基づいた距離を計測する。計測結果は、例えば画像処理部に転送される。計測結果は、制御部10によって参照されても良い。
【0059】
[1-2]動作
[1-2-1]スキャン方法
図10は、第1実施形態に係る距離計測装置1における距離計測装置1のスキャン方法の一例を示すテーブルである。図10に示されたテーブルは、スキャン方法の名称とスキャン方法の具体例との3種類の組み合わせを示している。図10において、符号“L1”は、関連付けられたスキャン方法における出射光L1の形状及び出射タイミングを示している。“スキャン位置”の矢印は、スキャン領域SA内で、複数の出射光L1が順に照射される経路を模式的に示している。“左方向”及び“右方向”は、紙面上の左方向及び右方向をそれぞれ示している。
【0060】
図10(1)に示されたスキャン方法では、例えばドット状の照射面を有する出射光L1が使用される。そして、距離計測装置1は、左右方向のスキャンを繰り返し実行する。具体的には、距離計測装置1が、右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンして、再び左方向にスキャンした後に、再び折り返して右方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“ラスタスキャン”と呼ばれている。ラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、例えば2軸のミラーを使用すること等が考えられる。
【0061】
図10(2)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えばコリメータレンズ及びシリンドリカルレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素PXを同時に照射して、右方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、ポリゴンミラー、回転ミラーや1軸のMEMSミラーを使用することが考えられる。マルチチャネルスキャンは、ミラー25を使用せずに、距離計測装置1自身を回転させることによって実現されても良い。マルチチャネルスキャンは、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射することができる。このため、マルチチャネルスキャンが使用されることによって、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能とされる。
【0062】
図10(3)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えば異方性のある非球面コリメータレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素を同時に照射して、右方向にスキャンした後に、垂直位置がずらされたスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルラスタスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー及び2軸のミラー等を使用すること等が考えられる。マルチチャネルラスタスキャンも、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射できるため、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能となる。逆に、ある程度の高解像及び高フレームレートを得るためには、ラスタスキャン或いはマルチチャネルラスタスキャンが使用されることが好ましい。
【0063】
以上で説明されたスキャン方法は、あくまで一例である。図10(1)~(3)に示されたスキャン方法は、機械的な方法に対応している。距離計測装置1は、別のスキャン方法として、OPA方法(Optical Phased Array)を使用しても良い。1回のスキャンにおける直線経路の数やスキャン方向は、その他の設定であっても良い。第1実施形態に係る距離計測装置1による動作及び効果は、出射光L1のスキャン方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いて、スキャンを実行しても良い。以下では、説明を簡潔にするために、距離計測装置1がラスタスキャンを使用する場合について説明する。
【0064】
[1-2-2]受光結果のサンプリング
図11は、第1実施形態に係る距離計測装置1における光検出器32の受光結果の一例を示すタイムチャートである。図11のタイムチャートの縦軸は、画素PXの出力信号に基づく輝度を示している。図11に示すように、距離計測装置1が出射光L1毎に実行する計測動作の各々は、例えば、サンプリング期間及びブランキング期間を含む。
【0065】
サンプリング期間は、光検出器32の信号処理部SPが受光結果に対する信号処理を実行する期間である。サンプリング期間において、信号処理部SPは、受光領域DAから出力された電気信号を、所定のサンプリング間隔でデジタル信号に変換する。本例では、時刻t0~t32がサンプリング期間に対応し、信号処理部SPが、時刻t1~t32のそれぞれにおいて、受光領域DAから出力された電気信号をデジタル信号に変換する。尚、サンプリング期間やサンプリング間隔の長さは、任意の長さに設定され得る。
【0066】
ブランキング期間は、現在の出射光L1に対するサンプリング期間と、次の出射光L1に対するサンプリング期間との間に設定された期間である。ブランキング期間では、例えば信号処理部SPによる信号処理が省略される。本例では、時刻t32~t33が、ブランキング期間に対応している。距離計測装置1の計測動作において、ブランキング期間は適宜省略されても良い。また、出射光L1毎に設定されるアクティブ領域AAの位置が重なっていない場合に、連続した出射光L1のサンプリング期間が重なっていても良い。
【0067】
[1-2-3]受光結果の単純積算処理
図12は、第1実施形態に係る距離計測装置1における計測部40の単純積算処理の一例を示すタイムチャートである。図12に示された2つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいたアナログ信号の輝度を示している。図12(1)は、アクティブ領域AA内の各画素PXの出力(受光結果)の一例を示している。図12(2)は、アクティブ領域AA内の複数の画素PXの出力の積算結果の一例を示している。
【0068】
図12(1)に示すように、各画素PXの出力は、反射光L2に基づくピーク部分と、ノイズとを含む。距離計測装置1には、何らかの物体により散乱された太陽光等の環境光が入射することがあり、環境光が、受光結果にランダムなノイズとして表れる。つまり、ノイズの発生箇所は、画素PX毎にばらついている。一方で、反射光L2に基づくピーク部分は、通常、ノイズよりも高い輝度を有している。画素PX毎の出力は、ダイナミックレンジが狭いため、ノイズと反射光L2によるピーク部分との差異は小さい。
【0069】
図12(2)に示すように、アクティブ領域AA内の複数の画素PXの出力に対して単純積算処理が実行されると、各出力の特徴的な部分が強調される。具体的には、対象物TGからの反射光L2が、ほぼ同じタイミングでサンプリングされる。このため、反射光L2が検出された部分の信号の強度が、単純積算処理によって増加する。一方で、ランダムなノイズは、再現性がない、つまり単純積算処理によって強調され辛い。
【0070】
これにより、単純積算処理を介した受光結果では、ランダムなノイズが、対象物TGからの反射光L2に対して相対的に低減される。言い換えると、反射光L2の受光結果におけるデジタル信号のS/N比が、単純積算処理によって改善される。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1では、単純積算処理によって得られた測定点毎の積算データSDが、記憶部42に記憶される。
【0071】
[1-2-4]測距に使用される領域
図13は、第1実施形態に係る距離計測装置1のスキャン領域SA内でターゲットの測定点の測距に使用される領域の一例を示す概略図である。図13に示すように、スキャン領域SAは、領域AR~IRを含んでいる。領域AR~IRのそれぞれは、出射光L1が照射される領域に対応している。以下では、出射光L1が照射されることにより1つの測距結果が得られる領域のことを、“測定点”とも呼ぶ。
【0072】
また、スキャン領域SAに、位置の異なる対象物TG1及びTG2が含まれている。具体的には、領域AR、BR、CR、ER、FR及びIRが、対象物TG1を主に含んでいる。領域DR、GR及びHRが、対象物TG2を主に含んでいる。例えば、ラスタスキャンが実行される場合、領域AR~IRは、互いに異なる出射光L1によって照射される。マルチチャネルスキャンが実行される場合、縦に並んだ複数の領域(例えば領域AR、DR及びGR)が、1回の出射光L1で同時に照射される。
【0073】
領域ERには、ターゲットの測定点の距離値を算出するための領域として、例えば領域AR、BR、CR、DR、FR、GR、HR及びIRが関連付けられる。この場合、積算部44が、領域ERに対応する積算データSDcに、重み付けされた領域AR、BR、CR、DR、FR、GR、HR及びIRのそれぞれの積算データSDpを累積する。尚、各領域において、積算データSDcに累積される積算データSDpは、ターゲットの測定点の周囲の少なくとも1箇所の測定点に対応して設定されていれば良い。
【0074】
図14は、第1実施形態に係る距離計測装置1における対象物TG1及びTG2毎の受光結果の一例を示すタイムチャートである。図14に示された2つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいた積算データSDの輝度を示している。図14(1)は、ターゲットの測定点に含まれた対象物TG1に対応する積算データSDの一例を示している。図14(2)は、対象物TG2に対応する積算データSDの一例を示している。
【0075】
図14(1)に示すように、対象物TG1に対応する積算データSDは、反射光L2に基づくピーク部分とノイズとを含む。一方で、図14(2)に示すように、対象物TG2に対応する積算データSDは、ターゲットの測定点と異なる物体からの反射光L2に基づくピーク部分とノイズとを含み得る。また、図14(1)に含まれたピーク部分と、図14(2)に含まれたピーク部分とは、検出される時刻と、輝度の強さとが異なっている。
【0076】
積算データSDに含まれたピーク部分の高さは、反射光L2の強度に応じて変化する。例えば、反射光L2の強度は、対象物TGの表面の反射率に応じて変化する。このため、異なる対象物TGからの反射光L2は、検出される時刻が異なり、且つ輝度の強さが異なる可能性が高い。そして、積算データSDに含まれたノイズの強度も、ピーク部分の強度と同様に、出射光L1の照射方向に応じて変化し得る。
【0077】
[1-2-5]計測動作の流れ
図15は、第1実施形態に係る距離計測装置1の計測動作の一例を示すフローチャートである。図15に示すように、計測動作が開始すると(開始)、距離計測装置1が、平均化に必要な領域のスキャンを実行して、各測定点の積算データを記憶部42に記憶させる(S10)。そして、記憶部42が、ターゲットの測定点の積算データSDcと、ターゲットの周辺の測定点の積算データSDpとを解析部43に転送する(S11)。それから、解析部43が、積算データSDc及びSDpの類似性に基づいて、積算データSDpの重み値を計算する(S12)。その後、解析部43が、算出した重み値を関連付けた積算データSDpと積算データSDcとを積算部44に転送する。
【0078】
次に、積算部44が、重み値が適用された積算データSDpを積算データSDcに加算して、積算データSDwを取得する(S13)。積算部44が積算データSDwを取得した後に、距離計測部45が、積算データSDwからフロアノイズ値を減算する(差し引く)(S14)。そして、距離計測部45が、積算データSDwの突出部に基づいて、ターゲットの測定点の出射光L1に対応する受光時刻T2を算出する(S15)。それから、距離計測部45が、ターゲットの測定点の出射時刻T1と受光時刻T2とに基づいて、当該測定点の距離値を計測する(S16)。これにより、1つのフレーム内の1つの測定点に対応する距離値の計測が終了する(終了)。
【0079】
図16は、第1実施形態に係る距離計測装置1における積算データの一例を示すタイムチャートである。図16に示された2つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいた積算データSDの輝度を示している。図16(1)は、積算データSDwの一例と、当該積算データSDwに対応するフロアノイズ値FNとを示している。図16(2)は、フロアノイズ値が減算された積算データSDwの一例を示している。
【0080】
図16(1)に示すように、積算データSDwは、ランダムなノイズ成分を含んでいる。積算データSDwからフロアノイズ値FNが減算されると、図16(2)に示すように、積算データSDwの全体の値が低くなる。これにより、フロアノイズ値が減算された積算データSDwでは、反射光L2に基づいた突出部におけるS/N比が向上する。
【0081】
尚、フロアノイズ値の減算において、マイナスの数値は、切り捨てられても良い。積算データSDwから減算されるフロアノイズ値FNは、単純平均により算出されても良いし、分割平均により算出されても良い。積算データSDwが、クラスタ内で重み値が適用された積算データSDの平均値である場合には、底部算出部431が算出したフロアノイズ値が、ステップS14の処理におけるフロアノイズ値として使用されても良い。
【0082】
図17は、第1実施形態に係る距離計測装置1の計測動作における重み値の計算方法の一例を示すフローチャートである。図17は、ステップS12の処理の流れの具体例を示している。図17に示すように、ステップS12の処理が開始すると(開始)、底部算出部431が、積算データSDc及びSDpのそれぞれの底部の値(すなわち、フロアノイズ値)を計算する(S121)。尚、底部の値は、例えば、1回の計測時間における輝度の時間平均値である。また、突出部検出部432が、積算データSDc及びSDpから、該当する底部の値を減算し、その後、それぞれの突出部のピーク値を検出する(S122)。
【0083】
次に、底部算出部431が、積算データSDc及びSDpのそれぞれのフロアノイズ値の比率を計算して、比率値RV1を取得する(S123)。比率値RV1は、ターゲットの測定点と、ターゲットの周辺の測定点との間のフロアノイズ値の類似度を示している。また、突出部検出部432が、積算データSDc及びSDpのそれぞれの突出部のピーク値の比率を計算して、比率値RV2を取得する(S124)。比率値RV2は、ターゲットの測定点における受光結果の最大強度(ピーク値)と、ターゲットの周辺の測定点における受光結果の最大強度(ピーク値)との類似度を示している。
【0084】
そして、重み値生成部433が、比率値RV1及びRV2に基づいて、積算データSDpの重み値を計算する(S125)。それから、重み値生成部433が、算出した重み値を関連付けた積算データSDpと積算データSDcとを積算部44に転送する(終了)。尚、距離計測装置1は、少なくともターゲットの測定点の積算データSDcと、ターゲットの周辺の測定点の積算データSDpとの類似度に基づいて重み値を計算していれば良い。例えば、重み値の計算には、比率値RV1及びRV2の一方のみが使用されても良いし、その他の部分の類似度が使用されても良い。ステップS123~S125に関する詳細な処理の一例については、第2実施形態で説明する。
【0085】
なお、本実施形態では、図15のフローのS14にてフロアノイズ値を減算しているが、その代わりに、S12にて、或いはその前段階にて、積算データSDcと積算データSDpに対して、該当画素に対応するフロアノイズ値を減算してもよい。
【0086】
[1-3]第1実施形態の効果
以上で説明されたように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、積算データSDwの突出部の位置を検出する前に、積算データSDwからフロアノイズ値(環境光の強さ)を差し引いている。すなわち、第1実施形態に係る距離計測装置1は、重み値を用いた積算データSDwの算出後に、当該積算データSDwに含まれたノイズ成分を除去する。これにより、前述した通り、S/N比が向上する。その結果、第1実施形態に係る距離計測装置1の測距成功率および測距精度が改善する。
【0087】
積算データSDwの突出部は、他の部分と同様に、フロアノイズの成分を含んでいる。このため、積算データSDwでは、反射光L2に対応する突出部の信号値が、フロアノイズ値が減算されることによって正しい値になる。図18は、第1実施形態と第1実施形態の比較例との違いを模式的に示すタイムチャートである。図18(a)及び(b)は、それぞれフロアノイズの成分F1及びF2を含む積算データに対応している。フロアノイズの成分F2は、フロアノイズの成分F1よりも大きい。“S1c”及び“S2c”は、第1実施形態の比較例における信号値である。“S1”及び“S2”は、第1実施形態における信号値である。
【0088】
第1実施形態の比較例における信号値S1c及びS2cは、それぞれフロアノイズの成分F1及びF2を含んでいる。一方で、第1実施形態における信号値S1及びS2では、それぞれフロアノイズの成分F1及びF2が除かれている。つまり、フロアノイズの成分F1及びF2が除かれた信号値が、反射光L2に基づく正しい信号値に対応する。例えば、第1実施形態の比較例では、“S2c>S1c”であり、図18(b)に示された信号値S2cの方が、図18(a)に示された信号値S1cよりも大きい。しかしながら、正しくは“S1>S2”であり、図18(a)に示された信号値S1の方が、図18(b)に示された信号値よりも大きい。
【0089】
このように、第1実施形態の比較例では、信号の大小関係が間違えられるおそれがある。一方で、第1実施形態に係る距離計測装置1は、正しく信号の大小関係を判別することが出来る。尚、本例では信号の大小関係の判別について述べたが、S/N比等についても同様に、第1実施形態によって正確な値を得ることが出来る。これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、計測のS/N比を改善することが出来る。その結果、第1実施形態に係る距離計測装置1は、積算データSDwにおける反射光L2の突出部の検出精度を向上させることが出来、ToF方式に基づく距離の計測精度を向上させ、また、測距成功率を改善することが出来る。
【0090】
[1-4]第1実施形態の変形例
第1実施形態に係る距離計測装置1は、種々の変形が可能である。以下に、第1実施形態の変形例について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0091】
図19は、第1実施形態の変形例に係る距離計測装置1Aにおける信号処理部SPの構成の一例を示すブロック図である。図19に示すように、第1実施形態の変形例における信号処理部SPは、例えば、増幅回路60、キャパシタ61、及びAD変換回路(ADC:Analog to Digital Converter)62を含む。
【0092】
増幅回路60は、入力された電気信号を増幅する。増幅回路60は、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA)である。増幅回路60には、例えば、出力信号IOUTb1~12のいずれかに対応する1種類の信号INが入力される。キャパシタ61の一方電極は、増幅回路60の出力に接続され、キャパシタ61の他方電極は、ADC62の入力に接続される。キャパシタ61は、増幅回路60から入力された電気信号の直流成分を除去して、ADC62に出力する。つまり、キャパシタ61は、増幅回路60とADC62との間でACカップリングを形成している。ADC62は、入力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。ADC62は、信号INに基づく出力信号OUTを計測部40に出力する。
【0093】
以上で説明された信号処理部SPの構成は、あくまで一例である。信号処理部SPは、複数のADCを含んでいても良い。信号処理部SPに含まれた各構成は、計測部40に含まれていても良い。信号処理部SPにおいて、1つまたは複数のADCが、アナログ-デジタル変換処理を逐次実行しても良い。
【0094】
図20は、第1実施形態の変形例に係る距離計測装置1Aにおける光検出器32の受光結果に対するACカップリングの効果の一例を示すタイムチャートである。図20のタイムチャートの縦軸は、画素PXの出力信号に基づく輝度を示している。図20(1)は、ACカップリングの前の各画素PXの出力(受光結果)の一例を示している。図20(2)は、ACカップリングの後の各画素PXの出力の一例を示している。
【0095】
図20(1)に示すように、ACカップリングの前の各画素PXの出力の輝度値(電圧値)は、ゼロ以上で変動している。これに対して、ACカップリングの後の平均出力電圧は、ゼロになる。具体的には、図20(2)に示すように、ACカップリングの前の各画素PXの出力が、全体的に下がる。そして、平均の出力電圧が、ノイズ部分と反射光L2に基づくピーク部分とを含めた領域でゼロになる。ACカップリングは、DC成分を遮断して後段にそれを伝達しない。DC成分は、第1実施形態に記したフロアノイズの平均値に概ね該当するため、ACカップリングの後の出力は、輝度値からフロアノイズの平均値を減じられたものに相当する。
【0096】
その結果、第1実施形態の変形例に係る距離計測装置1Aは、フロアノイズ分を差し引くことにより、ACカップリングの後の出力信号におけるS/N比を改善させることが出来る。そして、このようにS/N比が改善された出力信号が、例えばADC62に入力され、第1実施形態で説明されたアナログ-デジタル変換が実行される。
【0097】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置2は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様の構成を備える。第2実施形態は、第1実施形態で説明されたステップS123~S125の処理の詳細に関する。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置2について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0098】
[2-1]動作
図21は、第2実施形態に係る距離計測装置1における分割平均を用いたフロアノイズ値の算出方法を説明するためのタイムチャートである。図21に示すように、フロアノイズ値の算出には、分割平均が使用されても良い。フロアノイズ値の算出に分割平均が使用される場合、サンプリング期間内の所定の期間が、複数の領域に分割される。本例では、説明を簡潔にするために、当該所定の期間が領域RG1~RG5に分割された場合について説明する。本実施形態では、第1実施形態の変形例と同じく、図19の信号処理部を有する、ACカップリングの構成を採用しても、採用しなくてもよい。
【0099】
分割平均では、底部算出部431が、領域RG1~RG5毎の信号の最小値及び最大値を検出する。そして、底部算出部431が、領域RG1~RG5毎に、信号の最大値及び最小値の差を計算する。それから、底部算出部431が、領域RG1~RG5毎に算出された信号の最大値及び最小値の差の平均値を算出する。底部算出部431は、このように算出された平均値を、フロアノイズ値として取り扱う。
【0100】
尚、反射光L2が検出される期間は、サンプリング期間内で極めて短い期間に相当する。このため、底部算出部431は、所定の期間を適切に設定することによって、反射光L2の信号がフロアノイズ値に与える影響を小さくすることが出来る。分割平均においてフロアノイズ値の算出に使用される所定の期間の長さ及び位置は、距離計測装置1の設計に応じて変更され得る。底部算出部431は、フロアノイズ値の算出に、サンプリング期間の全体を所定の期間として設定しても良いし、サンプリング期間の一部を所定の期間として設定しても良い。分割平均における所定の期間の分割数は、4つ以下又は6つ以上であっても良い。
【0101】
図22は、第1実施形態に係る距離計測装置1における各領域AR~HRの受光結果の一例を示すタイムチャートである。図22に示された3つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいた積算データSDの輝度を示している。図22(1)は、領域ERにおける積算データSDcの一例を示している。図22(2)は、領域AR、BR、CR、FR及びIRにおける積算データSDpの一例を示している。図22(3)は、領域DR、GR及びHRにおける積算データSDpの一例を示している。図22(1)に示されたピーク値及びフロアノイズ値をそれぞれ“P1”及び“N1”と呼ぶ。図22(2)に示されたピーク値及びフロアノイズ値をそれぞれ“P2”及び“N2”と呼ぶ。図22(1)に示されたピーク値及びフロアノイズ値をそれぞれ“P3”及び“N3”と呼ぶ。
【0102】
図22に示す一例では、“1-(P2/P1)”の絶対値が、“1-(P3/P1)”の絶対値よりも小さく、“1-(N2/N1)”の絶対値が、“1-(N3/N1)”の絶対値よりも小さい。“1-RV1”の絶対値が小さいほど、積算データSDc及びSDpのフロアノイズ値の類似性が高いことを示している。“1-RV2”の絶対値が小さいほど、積算データSDc及びSDpのピーク値の類似性が高いことを示している。一般に、昼間など明るい場合には、太陽光に基づくフロアノイズ値が大きい。この場合に、解析部43が、そのフロアノイズ値に基づく類似性の指標により、2つの画素に対応する対象が同一か否かを判別し易い。しかし、ピーク値は、pile upを起こし易く、解析部43は、pile upしている値を基に、類似性を判別できない。逆に、夜間など暗い場合には、太陽光に基づくフロアノイズ値が小さい。この場合に、解析部43が、そのフロアノイズ値を基に類似性を判断し難い。一方で、ピーク値はpile upし難くなり、解析部43は、そのフロアノイズ値に基づく類似性の指標により、2つの画素に対応する対象が同一か否かを判別し易い。フロアノイズ値とピーク値の両方について、その類似性が高いと考えられる場合は、明るい場合と暗い場合とのいずれにおいても、2つの画素に対応する対象が同一である可能性が高い。なお、同一でない、異なる対象からの反射光の積算データは、ノイズでしかない。 つまり、領域ERにおける積算データSDcは、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれの積算データSDpとの類似度が高い。一方で、領域ERにおける積算データSDcは、領域DR、GR及びHRのそれぞれの積算データSDpとの類似度が低い。この場合、重み値生成部433は、例えば、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれから取得される積算データSDpの重み値を大きく設定し、領域DR、GR及びHRのそれぞれから取得される積算データSDpの重み値を小さく設定する。尚、重み値は、例えば類似度が高いほど大きく設定されるが、部分的な例外も許容され得る。
【0103】
図23は、第1実施形態に係る距離計測装置1における重み値を用いた積算結果の一例を示すタイムチャートである。図23(1)~(3)は、それぞれ図22(1)~(3)に対応している。図23(4)は、積算部44により算出された積算データSDwの一例を示している。図23に示すように、領域ERから取得された積算データSDcに領域内の他の領域から取得された積算データSDpが、重み値に基づいて累積される。
【0104】
本例では、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれから取得される積算データSDpの類似度が高いことから、領域AR、BR、CR、ER及びIRのそれぞれから取得された積算データSDpが、例えば高い重み値で積算データSDcに累積される。領域DR、GR及びHRのそれぞれから取得された積算データSDpの類似度が低いことから、領域DR、GR及びHRのそれぞれから取得される積算データSDpが、例えば低い重み値で積算データSDcに累積される。
【0105】
類似度の高い積算データSDpの重み値に基づく累積は、同じ対象からの反射光L2、すなわち信号Sのピーク値を加算することが出来、積算データSDwにおける反射光L2のS/N比を高くすることが出来る。一方で、類似度の低い積算データSDp、つまりノイズNの可能性の高いデータの重み値に基づく累積は、積算データSDwに与える変化が小さいため、積算データSDwにおける反射光L2のS/N比の悪化を抑制することが出来る。そして、距離計測部45が、積算データSDwから、反射光L2に対応する突出部を検出して、当該突出部に基づいて受光時刻T2を算出する。それから、距離計測部45が、出射時刻T1及び受光時刻T2に基づいてターゲットの測定点における距離値を算出する。
【0106】
[2-2]第2実施形態の効果
以上で説明されたように、第2実施形態に係る距離計測装置2は、間欠的にレーザ光(出射光L1)を出射しつつ所定の領域のスキャンを実行する出射部20と、出射光L1毎に反射光L2を受ける受光部30と、受光部30の受光結果に基づいて対象物TGとの距離を算出する計測部40とを含む。計測部40は、同じフレーム内で、光源23から第1方向に照射された出射光L1に対応する第1デジタル信号(積算データSDc)と、第1方向の近傍に照射された複数の出射光L1に対応する複数の第2デジタル信号(積算データSDp)から正しくフロアノイズの影響を除去し、その除去された結果の類似性に基づいて、複数の第2デジタル信号の重み値を生成する。そして、計測部40が、重み値に基づいて各第2デジタル信号を第1デジタル信号に累積する。
【0107】
これにより、第2実施形態に係る距離計測装置2は、複数の第2デジタル信号を、フロアノイズが低減された状態で類似度に基づいて、第1デジタル信号に累積させることが出来る。累積結果に対応する第3デジタル信号(積算データSDw)のS/N比は、第1デジタル信号よりも高くなる。その結果、計測部40が、第1方向に照射された出射光L1の反射光L2に基づく突出部を第3デジタル信号から容易に検出することが出来、受光時刻T2の計測精度が向上する。従って、第2実施形態に係る距離計測装置2は、ToF方式に基づく距離の計測精度を向上させることが出来る。
【0108】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る距離計測装置3は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様の構成を備える。そして、第3実施形態に係る距離計測装置3は、環境光の強さに応じて、フロアノイズ値の算出に用いるアルゴリズムを変更する。以下に、第3実施形態に係る距離計測装置2について、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
【0109】
[3-1]動作
[3-1-1]環境光の感度
図24は、第3実施形態に係る距離計測装置3における環境光起因の励起フォトン数に対する環境光の受光結果の変化の一例を示すグラフである。図24に示されたグラフにおいて、横軸は環境光起因の励起フォトン数/nsを示し、縦軸は測定結果に対応する信号の強度を示している。図24に示すように、受光結果に対応する信号の強度は、環境光が強くなるほど単調増加で高くなる傾向がある。
【0110】
図25は、第3実施形態に係る距離計測装置3におけるアルゴリズム毎のノイズ値の変化の一例を示すグラフである。図25に示されたグラフにおいて、横軸は環境光起因の励起フォトン数/nsを示し、縦軸は測定結果の標準偏差/Δ環境光起因の励起フォトン数を示している。図25に示されたグラフの意味は、環境光ノイズが増加分に対する、環境光のばらつき増加の程度を表しており、縦軸の値が小さい程望ましい。尚、図25に示されたグラフの横軸のスケールは、図24に示されたグラフの横軸のスケールと同じである。また、当該グラフにおいて、細線が単純平均のデータを示し、破線が分割平均のデータを示している。
【0111】
単純平均のデータは、環境光起因の励起フォトン数/nsに依存して、凹状の傾向を有している。分割平均のデータは、図24のグラフと同じ条件による分割平均の算出結果に対する標準偏差に対応している。分割平均のデータは、環境光起因の励起フォトン数/nsに依存して、凸状の傾向を有している。図25に示されたデータは、数値が小さい方が対象物TGの検出がし易いことを意味している。すなわち、単純平均を用いた場合の対象物TGの感度は、環境光が大/小の両端で悪くなっている。分割平均を用いた場合の対象物TGの感度は、環境光が大/小の両端で、単純平均よりも良好になっている。
【0112】
言い換えると、環境光の強さに応じて、低い方から順に第1条件、第2条件及び第3条件を定義された場合、第1条件における対象物TGの感度は、単純平均よりも分割平均の方が良好である。第2条件における対象物TGの感度は、分割平均よりも単純平均の方が良好である。第3条件における対象物TGの感度は、単純平均よりも分割平均の方が良好である。
【0113】
環境光が極めて少ない場合、分割平均は、SiPMセンサのダークカウントの程度を求めることに該当し、通常の平均値より大きな値を取る。一方、その場合、環境光ノイズの影響も、通常の平均値による推定より大きくなり(量子的な効果)、結果として、分割平均の方が、通常の平均より、正しく環境光の影響を反映する。また、分割平均の方が、環境光の変化を安定的に表し、例えば、分割平均を用いることにより、画素間の類似性の判別などがし易くなる。
【0114】
一方、環境光が極めて強い場合は、パイルアップが著しくなり、平均値が、環境光の変化に鈍感になる。しかし、分割平均の方は、環境光の変化により敏感であり、分割平均の方が、通常の平均より、正しく環境光の影響を反映すると、考えられる。
【0115】
[3-1-2]アルゴリズムの選択方法
図26は、第3実施形態に係る距離計測装置3の計測動作におけるフロアノイズ値の計算に使用されるアルゴリズムの選択方法の一例を示すフローチャートである。図26に示すように、計測動作が開始して、記憶部42に積算データSDが蓄積されると(開始)、底部算出部431が、フロアノイズの大きさVNを確認する(S20)。
【0116】
そして、底部算出部431が、VNが第1の閾値VNref1よりも大きいか否かを確認する(S21)。VN>VNref1が満たされない場合(S21、NO)、底部算出部431が、フロアノイズ値の算出に、分割平均を使用する(S22)。VN>VNref1が満たされる場合(S21、YES)、続けて底部算出部431は、VNが第2の閾値VNref2よりも大きいか否かを確認する(S23)。VN>VNref2が満たされない場合(S23、NO)、底部算出部431が、フロアノイズ値の算出に、単純平均を使用する(S24)。VN>VNref2が満たされる場合(S23、YES)、底部算出部431が、フロアノイズ値の算出に、分割平均を使用する(S25)。
【0117】
尚、VNref1は、図25に示された第1条件と第2条件との境界近傍に設定されることが好ましい。VNref2は、図25に示された第2条件と第3条件との境界近傍に設定されることが好ましい。第3実施形態に係る距離計測装置2は、フロアノイズ値の算出に使用するアルゴリズムを、少なくとも2種類使用していれば良い。例えば、距離計測装置2は、第2条件と第3条件との場合分けを省略し、環境光の光量が第1条件に対応する場合に分割平均を使用し、第2条件に対応する場合に単純平均を使用しても良い。距離計測装置2は、第1条件と第2条件との場合分けを省略し、環境光の光量が第2条件に対応する場合に単純平均を使用し、第3条件に対応する場合に分割平均を使用しても良い。
【0118】
[3-2]第3実施形態の効果
距離計測装置において、例えば角度分解能を向上させるためには、画素PXを小さくすることが好ましい。しかしながら、画素PXが小さくなる、すなわち各画素PXが含むSPADの数が少なくなると、環境光の影響が大きくなる。特に2Dセンサでは、環境光によるS/N比の悪化や信号の飽和によって、測距精度が低下するおそれがある。また、環境光の大きさの値(フロアノイズ値)は、例えば第1実施形態で説明された距離値の算出に使用される。このため、環境光の測定精度は、高められることが好ましい。
【0119】
これに対して、第3実施形態に係る距離計測装置3は、積算データSDの底部の値の大きさに応じて、フロアノイズ値の計算に使用されるアルゴリズムを変更する。言い換えると、第3実施形態に係る距離計測装置3は、環境光の強さに応じて、フロアノイズ値の算出に最適なアルゴリズムを選択する。
【0120】
このように、フロアノイズ値を算出するアルゴリズムが変更されることによって、積算データSDpの解析精度が向上する。つまり、第3実施形態に係る距離計測装置3は、重み値の算出に用いるフロアノイズ値を最適な値にすることが出来、積算データSDwのS/N比を向上させることが出来る。その結果、第3実施形態に係る距離計測装置3は、第1実施形態よりも、ToF方式に基づく距離の計測精度を向上させることが出来る。
【0121】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る距離計測装置4は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様の構成を備える。そして、第4実施形態に係る距離計測装置4は、積算データSDwの解析結果に基づいて積算データSDcを参照することにより、ターゲットの測定点の距離値を算出する。以下に、第4実施形態に係る距離計測装置4について、第1~第3実施形態と異なる点を説明する。
【0122】
[4-1]動作
図27は、第4実施形態に係る距離計測装置4の計測動作の一例を示すフローチャートである。図27に示すように、第4実施形態における計測動作のフローチャートは、第1実施形態における計測動作のフローチャートのステップS14がステップS30及びS31に置き換えられた構成を有する。
【0123】
具体的には、ステップS13の処理において積算部44が積算データSDwを取得した後に、距離計測部45が、積算データSDwの突出部に基づいて受光期間DPを算出する(S30)。そして、距離計測部45が、積算データSDcの受光期間DP内の突出部に基づいて、受光時刻T2を算出する(S31)。その後、距離計測部45が、ターゲットの測定点の出射時刻T1と、S40の処理により算出された受光時刻T2とに基づいて、当該測定点の距離値を計測する(S15)。第4実施形態におけるその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0124】
図28は、第4実施形態に係る距離計測装置4における積算データの一例を示すタイムチャートである。図28に示された2つのタイムチャートの縦軸は、受光結果に基づいた積算データSDの輝度を示している。図28(1)は、算出された積算データSDwの一例を示している。図28(2)は、当該積算データSDwに関連付けられた積算データSDcの一例を示している。
【0125】
図28(1)に示すように、例えば突出部検出部432が、積算部44により算出された積算データSDwから、反射光L2を含むと推測される受光期間DPを抽出する。そして、距離計測部45が、図28(2)に示すように、当該積算データSDwに関連付けられた積算データSDcにおいて、受光期間DPに対応する部分を参照する。それから、距離計測部45が、受光期間DP内の検出結果(突出部)に基づいて、反射光L2の受光時刻T2を算出する。言い換えると、距離計測部45は、積算データSDwにおける突出部に対応する期間に基づいて、累積前の積算データSDcから受光時刻T2を算出する。
【0126】
[4-2]第4実施形態の効果
以上で説明されたように、第4実施形態に係る距離計測装置4は、積算データSDwの突出部の位置を検出した後に、当該位置に基づいて、累積前の積算データSDcから受光時刻T2を算出する。これにより、第4実施形態に係る距離計測装置4は、累積前の積算データSDcにおける受光時刻T2の算出においても、ランダムなノイズ成分の影響を抑制することが出来る。第4実施形態に係る距離計測装置4は、周囲の積算データSDpの影響を含まない、積算データSDcを用いて距離を計測することが出来るため、対象が細かい凹凸を有す場合に、測距結果は、その凹凸を表す様な、細かい距離の違いを反映することが出来る。その結果、第1実施形態よりも立体的で、解像感の高い測距結果を得ることが出来る。
【0127】
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る距離計測装置5は、積算データSDc及びSDpに基づいて信頼度を算出し、算出した信頼度に基づいて測距結果を確定させる。以下に、第5実施形態に係る距離計測装置2について、第1~第4実施形態と異なる点を説明する。
【0128】
[5-1]構成
図29は、第5実施形態に係る距離計測装置5における計測部40の構成の一例を示すブロック図である。図29に示すように、第5実施形態における計測部40は、第1実施形態における計測部40の解析部43に信頼度生成部434が追加された構成を有する。
【0129】
信頼度生成部434は、積算データSDc及びSDpの類似性に基づいて、信頼度を生成する。信頼度生成部434は、信頼度の生成に、後述する第1平均化アルゴリズム又は第2平均化アルゴリズムを使用する。第5実施形態に係る距離計測装置5のその他の構成は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様である。
【0130】
[5-2]動作
第5実施形態に係る距離計測装置5は、信頼度に基づいて測距結果を確定させる。簡潔に述べると、距離計測部45が、積算データSDwから抽出された複数のピークから、信頼度が最も高いピークを採用する。そして、距離計測部45が、採用したピークに対応する突出部分に基づいて受光時刻T2を計測し、測距結果を確定させる。以下に、信頼度に関する第1及び第2平均化アルゴリズムについて順に説明する。
【0131】
[5-2-1]平均化と信頼度推定
1平均化アルゴリズムは、信号の強度と環境光情報とを使用してターゲットの反射データを認識することによって、積算データを選択的に蓄積する。以下に、第1平均化アルゴリズムに基づく平均化と、その後の信頼度の算出フローの一例について説明する。
【0132】
図30は、第5実施形態に係る距離計測装置5の平均化と信頼度の算出フローの一例を示す概略図である。図30に示すように、受光部30が反射光L2を受けると、信号処理部SPがAD変換を実行する(S40)。AD変換により得られたデジタルデータは計測部40に転送され、単純積算部41が測定点毎の単純積算データを出力し、出力された単純積算データを記憶部42が記憶する。そして、解析部43が、平均化アルゴリズムに基づいた平均化処理を実行する(S41)。
【0133】
平均化アルゴリズムにおいて、突出部検出部432は、現在のフレームの積算データから、ピークの候補を抽出する。本例では、突出部検出部432が、現在のフレームの累積結果の出力候補として、2つのピークP1及びP2を選択している。そして、信頼度生成部424が、積算部44によって生成された積算データSDwに対して、後述するR2に基づく信頼度R2を算出する(S42)。それから、距離計測部45が、積算データSDwに付加された信頼度R2に基づいて、出力候補のピークを選択、或いは棄却する(S43)。
【0134】
信頼度に関連する数式について、以下に説明する。
【0135】
【数1】
【0136】
数式(1)は、閾値kを用いて、2点の距離データが同じか否かを決める関数である。“i”は、測距するターゲットの測定点の識別子(ID)を示している。“j”は、領域内のターゲット以外の測定点のIDを示している。p(i,j)は、例えば、距離値Diと距離値Djとの距離が“k”以内であれば“1”を示し、“k”より大きければ“0”を示す。距離値Diは、ターゲットの測定点の測距結果に対応している。距離値Djは、クラスタ内のターゲット以外の測定点の測距結果に対応している。“k”は、0を超える数値であり、例えば2メートルである。
【0137】
【数2】
【0138】
数式(2)は、クラスタのサイズを示す関数である。Niは、ターゲットの測定点から所定範囲A内の測定点のうち、ターゲットの測定点の距離値Diとの差が所定の“k”以内である距離値Djを有する測定点の数を示している。
【0139】
【数3】
【0140】
数式(3)は、信頼度R2を与える関数である。信頼度R2iは、ターゲットの測定点から所定範囲A内の他の測定点のうち、ターゲットの測定点と距離が等しいと考えられる測定点の、信号値Ljの2乗平均に基づく値である。信号値Ljは、ターゲットの測定点の距離値Diとの差が閾値k以内である距離値Djを有する測定点に対応している。
【0141】
以上で説明された数式(1)~(3)に基づいて、信頼度生成部434が、ターゲットの測定点における信頼度R2を算出する。本例では、ピークP1の信頼度R2が“122”になり、ピークP2の信頼度R2が“101”になっている。この場合、距離計測部45は、信頼度R2がピークP2よりも高いピークP1を、受光時刻T2の計測に採用する。
【0142】
[5-2-2]フレーム間平均化アルゴリズム
フレーム間平均化アルゴリズムは、前のフレームで測定された距離と動きに応じて検索ウィンドウを定義して、現在のフレームのウィンドウ内で検出された戻り値(ピーク)から追加の出力候補を選択する。そして、フレーム間平均化アルゴリズムでは、前のフレームからの情報を含めるように拡張された信頼度R3に従ってピークが選択される。以下に、フレーム間平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例について説明する。
【0143】
図31は、第5実施形態に係る距離計測装置5のフレーム間平均化アルゴリズムに基づく信頼度の算出フローの一例を示す概略図である。図31に示すように、受光部30が反射光L2を受けると、信号処理部SPがAD変換を実行する(S50)。AD変換により得られたデジタルデータは計測部40に転送され、記憶部42が、複数フレーム分の測定点毎の積算データを記憶する。そして、解析部43が、フレーム間平均化アルゴリズムに基づいた平均化処理を実行する(S51)。
【0144】
フレーム間平均化アルゴリズムにおいて、突出部検出部432は、現在のフレームの積算データで、先の平均化アルゴリズムと同様に、ピークの候補を抽出する。本例では、突出部検出部432が、現在のフレームの累積結果の出力候補として2つのピークP1及びP2を選択している。さらに、距離計測部45が、前のフレームで検出されたピークに基づいて検索ウインドウW1~W3を定義する。例えば、距離計測部45が、現在のフレームにおいて、検索ウインドウW1~W3内で検出されたピークP3及びP4を追加する。それから、信頼度生成部434が、フレーム間平均化アルゴリズムを介した積算データSDwに対して、後述するR3に基づく信頼度を算出する(S52)。その後、距離計測部45が、積算データに付与された信頼度に基づいて、距離データを選択・棄却する(S53)。
【0145】
フレーム間平均化アルゴリズムに関連する数式について、以下に説明する。
【0146】
【数4】
【0147】
数式(4)は、信頼度R3を算出するための関数である。“i”は、ターゲットの測定点のIDを示している。“a”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのIDを示している。R2i,a 2は、先の平均化アルゴリズムにおける信頼度R2に対応している。つまり、R2i,a 2は、現在のフレームの測距結果が信頼性に与える純粋な重み値を示している。RPi,a 2は、前のフレームの測距結果に基づいて追加された重み値を示している。
【0148】
【数5】
【0149】
数式(5)は、2つの距離値が同じであるかどうかを判断するための関数である。“k(D)”は、フレーム間平均化アルゴリズムにおける閾値に対応しており、“D”の関数である。P(D,D)は、例えば、距離値Dと距離値Dとの距離が“k(D)”以内であれば“1”を示し、“k(D)”より大きければ“0”を示す。
【0150】
【数6】
【0151】
数式(6)は、フレーム間平均化アルゴリズムにおける信頼度R2を算出するための関数である。“N”は、現在のフレームのIDを示している。つまり、“N-1”は、1つ前のフレームのIDを示し、“N-2”は、2つ前のフレームのIDを示している。“Ss(j)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのセットを示している。“b”は、1つ前のフレームにおいて抽出されたピークのIDを示している。
【0152】
つまり、L(j,b,N)は、現在のフレームにおける、1つ前のフレームで抽出されたピークのIDの輝度を示している。“D(i,a,N)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのうちターゲットの測定点に対応する距離値を示している。“D(j,b,N)”は、現在のフレームにおいて抽出されたピークのうち1つ前のフレームにおいて信頼度の高いピークの距離値を示している。
【0153】
【数7】
【0154】
数式(7)は、検索ウインドウを定義するための関数である。検索ウインドウは、連続した2つのフレームで取得された距離値の変化量ΔDによって決定される。例えば、ΔDは、前のフレームと2つ前のフレームとの距離値の差を表している。つまり、ΔDは、対象物TGの動き(速度)を表している。速度が小さいほど、検索ウインドウが狭くなり、環境光の影響が抑制される。
【0155】
【数8】
【0156】
数式(8)は、検索ウインドウの設定条件を示す関数である。k(D)は、ターゲットの測定点における距離値に基づいて算出された閾値である。C1×ΔDは、領域内の他の測定点における距離値が、所定の定数C1で倍された数値である。
【0157】
【数9】
【0158】
数式(9)は、前のフレームの測距結果に基づいて追加される重み値を算出するための関数である。“B”は、1つ前のフレームにおける領域内の複数の測定点を示している。b’は、2つ前のフレームにおいて抽出された信頼度の高いピークのIDを示している。つまり、“D(j,b',N-2)”は、2つ前のフレームにおいて、抽出されたピークのうち信頼度の高いピークの距離値を示している。
【0159】
以上で説明された数式(4)~(9)に基づいて、信頼度生成部434は、ターゲットの測定点における信頼度R3を算出する。本例では、ピークP1~P4の信頼度R3が、それぞれ“122”、“101”、“120”、及び“156”になっている。この場合、距離計測部45は、信頼度R2が他のピークよりも高いピークP4を、受光時刻T2の計測に採用する。
【0160】
[5-3]第5実施形態の効果
以上で説明されたように、信頼度が使用されることによって、ターゲットからの反射データが、積算データSDwにおいて抽出される。つまり、ターゲットからの反射光L2を含む可能性が高い突出部分が、積算データSDwにおいて抽出される。その結果、第5実施形態に係る距離計測装置5は、反射光L2の検出精度を向上させることが出来、距離の計測精度を向上させることが出来る。
【0161】
[6]その他
第1実施形態では、制御部10が、出射光L1の出射時刻T1を計測部40に通知する場合について例示したが、これに限定されない。出射時刻T1は、出射光L1が出射部20内で分光され、分光された出射光L1が受光部30に設けられたセンサによって検出された時刻に基づいて設定されても良い。この場合、出射時刻T1は、受光部30から計測部40に通知される。また、距離計測装置1は、出射部20と受光部30との間で同軸の光学系を使用しても良い。この場合、反射光L2は、出射部20のミラー25及び光学系24を介して、光検出器32に入射する。
【0162】
第1実施形態に係る距離計測装置1の構成は、あくまで一例である。例えば、出力回路33に含まれた信号処理部SPは、ADCとTDCとの両方を含んでいても良い。信号処理部SPがADC及びTDCを含む場合に、アクティブ領域AA内の複数の画素PXが、ADCによってデジタル信号に変換される画素PXのグループと、TDCによってデジタル信号に変換される画素PXのグループとに分類されても良い。ACカップリングを使用しない場合に、キャパシタ61が省略されても良い。
【0163】
第1実施形態に係る距離計測装置1の各構成の分類は、その他の分類であっても良い。計測部40は、上記実施形態で説明された動作を実現することが可能であれば、その他の分類であっても良い。制御部10に含まれたCPUは、その他の回路であっても良い。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されても良い。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されても良い。ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していても良いし、どちらか一方のみであっても良い。各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートでは、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられても良いし、その他の処理が追加されても良い。
【0164】
上記実施形態は、組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態は、第3~第5実施形態とのいずれとも組み合わされ得る。第3実施形態は、第4及び第5実施形態のいずれとも組み合わされ得る。第4実施形態は、第5実施形態と組み合わされ得る。さらに、3つ以上の実施形態が組み合わされても良い。複数の実施形態が組み合わされた距離計測装置は、組み合わされた実施形態のそれぞれの効果を得ることが出来る。
【0165】
本明細書において“アクティブ領域AA”は、受光領域と呼ばれても良い。制御部10の制御に基づきパルス信号が入力された光源23が出射する出射光L1が、パルス信号と呼ばれても良い。“パルス幅”は、例えば、対象のパルス信号の半値幅で算出される。“デジタル信号”は、例えば光検出器32の出力(受光結果)がアナログ-デジタル変換、又は時間-デジタル変換された信号のことを示している。“輝度”は、光検出器32の出力に基づく信号の大きさのことを示しており、その他の単位に置き換えられても良い。制御部10及び計測部40の組が、“制御回路”又は“コントローラ”と呼ばれても良い。この場合、距離計測装置1のコントローラが、計測動作に関する各構成の制御と、計測部40による距離値の算出との両方を実行する。“累積”は、“積算”と同義である。
【0166】
本明細書において、“積算データSD”は、反射光L2の受光結果を含むデジタル信号と呼ばれても良い。“デジタル信号の底部”は、当該デジタル信号に含まれたフロアノイズのことを示している。“底部の値”は、例えば、1回の計測時間における輝度の時間平均値である。つまり、“デジタル信号の底部の値”は、例えば、1回の計測時間に対応する積算データSDにおける、輝度の時間平均値のことを示している。“1回の計測時間”は、1回のサンプリング期間に対応している。“底部から突出している部分の値”は、例えば、反射光L2の受光結果を含むデジタル信号のうち反射光L2の受光結果に対応する突出部の輝度のことを示している。尚、“底部から突出している部分の値”は、当該突出部のピーク値に限定されず、突出部の輝度が利用された値であれば良い。“信号のピーク”は、受光結果を含むデジタル信号の底部からの突出部において、最も高い輝度の部分のことを示している。
【0167】
本明細書において“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧である。
【0168】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
1~6…距離計測装置、10…制御部、20…出射部、21…駆動回路、22…駆動回路、23…光源、24…光学系、25…ミラー、30…受光部、31…光学系、32…光検出器、33…出力回路、40…計測部、41…単純積算部、42…記憶部、43…解析部、44…積算部、45…距離計測部、431…底部算出部、432…突出部検出部、433…重み値生成部、50…基板、51…P型半導体層、52…P型半導体層、53…N型半導体層、IOUT…出力信号、L1…出射光、L2…反射光、PX…画素、T1…出射時刻、T2…受光時刻
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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