(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240213BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240213BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/20 B
H01L31/10 A
H01L27/144 K
(21)【出願番号】P 2020185114
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】高須 勲
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳
(72)【発明者】
【氏名】相賀 史彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕子
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0163237(US,A1)
【文献】国際公開第2015/129069(WO,A1)
【文献】特開2018-085387(JP,A)
【文献】特表2018-508758(JP,A)
【文献】特開2019-035703(JP,A)
【文献】特開2020-037523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
H01L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機物を含む第1層であって、前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出し、前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上である、前記第1層と、
第1導電層と、
前記第1層と前記第1導電層との間に設けられた第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられた有機半導体層と、
を備え
、
前記第1有機物は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル、2,4,6-トリス(4-(9,9-ジメチルアクリダン-10-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、10-(4-(ビス(2,3,5-テトラメチルフェニル)ボラニル)-2,3,5-テトラメチルフェニル)-10H-フェニキサジン、2,4,6-トリ(9H-カルバゾル-9-イル)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル、及び、9-[1,4]ベンズオキサボリノ[2,3,4-kl]フェノオキサボリン-7-イル-1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾールよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、放射線検出器。
【請求項2】
前記有機半導体層の厚さに対する前記時間は、0.1s/m以上100s/m以下である、請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記ベータ線が前記第1層に入射したときに前記第1導電層と前記第2導電層との間に生じる第1信号の感度は、ガンマ線、中性子線及びX線の少なくともいずれかが前記第1層に入射したときに前記第1導電層と前記第2導電層との間に生じる第2信号の感度よりも高い、請求項1または2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記有機半導体層は、ポリチオフェンと、フラーレン誘導体と、を含む、請求項1~
3のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記有機半導体層は、Poly(3-hexylthiophene)と、[6,6]-phenyl C61 butyric acid methyl esterと、を含む、請求項1~
4のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機半導体材料を用いた放射線検出器がある。放射線検出器において、検出精度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、検出精度の向上が可能な放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、放射線検出器は、第1層、第1導電層、第2導電層及び有機半導体層を含む。前記第1層は、第1有機物を含む。前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出し、前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上である。前記第2導電層は、前記第1層と前記第1導電層との間に設けられる。前記有機半導体層は、前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、第1実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、放射線検出器の特性を例示する模式図である。
【
図7】
図7は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図2(a)、
図2(b)、及び、
図3~
図5は、第1実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る放射線検出器110は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30を含む。
【0009】
第2導電層52は、第1層10と第1導電層51との間に設けられる。有機半導体層30は、第1導電層51と第2導電層52との間に設けられる。
【0010】
第1層10は、第1有機物11を含む。第1層10は、第2有機物12をさらに含んでも良い。第2有機物12は、光透過性である。可視光の波長の光に対する第2有機物12の透過率は、例えば、85%以上である。
図1に示すように、第1層10は、第1有機物11を含む複数の領域11Rを含んでも良い。複数の領域11Rの周りに第2有機物12がある。
【0011】
第2有機物12は、例えば、
図3に例示するポリビニルトルエンなどを含んで良い。第2有機物12は、例えば、ポリビニルトルエン、ポリビニルカルバゾール、及び、ポリメチルメタクリレートよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0012】
実施形態において、第1層10における第1有機物11の濃度は、例えば、0.05wt%以上40wt%以下である。
【0013】
図2(a)は、第1有機物11の例を示している。この例では、第1有機物11は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルを含む。
図2(b)は、第1有機物11の別の例を示している。この例では、第1有機物11は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリ
ルを含む。後述するように、第1有機物11は、熱活性遅延蛍光材料を含んでも良い。例えば、第1有機物11の励起三重項状態のエネルギーと、第1有機物11の励起一重項状態のエネルギーと、の差は、500meV以下である。このような第1有機物11において、発光の寿命が長い。
【0014】
図1に示すように、有機半導体層30は、p形領域32p及びn形領域32nを含む。p形領域32p及びn形領域32nは、有機半導体32に含まれる。
【0015】
図4は、p形領域32pを例示している。この例では、p形領域32pは、P3HT(Poly(3-hexylthiophene))を含む。
【0016】
図5は、n形領域32nを含む。例えば、n形領域32nは、フラーレン誘導体を含む。この例では、n形領域32nは、PC
61BM([6,6]-phenyl C61 butyric acid methyl ester)を含む。このように、例えば、有機半導体層30は、ポリチオフェンと、フラーレン誘導体と、を含む。
【0017】
図1に示すように、第2導電層52から第1導電層51への第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1方向は、積層方向である。
【0018】
例えば、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30は、X-Y平面に沿って広がる。第1層10は、X-Y平面に沿って広がる。
【0019】
図1に示すように、第1層10は、Z軸方向に沿う厚さ(第1厚さt1)を有する。後述するように、実施形態において、第1厚さt1は、50μm以上5000μm以下であることが好ましい。例えば、高い検出精度が得られる。
【0020】
図1に示すように、有機半導体層30は、Z軸方向に沿う厚さ(第2厚さt2)を有する。後述するように、実施形態において、第2厚さt2は、500nm以上50μm以下であることが好ましい。例えば、高い検出精度が得られる。
【0021】
この例では、検出回路70が設けられる。検出回路70は、第1導電層51及び第2導電層52と電気的に接続される。例えば、第1配線71により、検出回路70が第1導電層51と電気的に接続される。例えば、第2配線72により、検出回路70が第2導電層52と電気的に接続される。検出回路70は、第1層10に入射する放射線81の強度に応じた信号OSを出力する。
【0022】
放射線81は、例えば、ベータ線を含む。放射線81は、例えば、ガンマ線を含んでも良い。放射線81は、例えば、第1層10の側から入射する。
【0023】
放射線81が第1層10に入射すると、第1層10において、光が生じる。生じた光は、第2導電層52を通過して、有機半導体層30に入射する。入射した光に基づいて、有機半導体層30において、移動可能な電荷が生じる。検出回路70により、第1導電層51と第2導電層52との間に電圧が印加される。これにより、生じた電荷が第1導電層51または第2導電層52に向けて移動する。移動した電荷が検出回路70により検出される。これにより、検出対象の放射線81が検出できる。有機半導体層30は、例えば、光電変換層として機能する。
【0024】
第1層10は、例えば、シンチレータとして機能する。第1層10は、無機シンチレータではない。
【0025】
無機シンチレータを用いる第1参考例の場合、ベータ線だけでなく、ガンマ線が入射したときにも、光が発生する。このため、第1参考例においては、ベータ線をガンマ線と分離して検出する用途の場合、ガンマ線の影響を受けて、ベータ線を高い精度で検出することが困難である。
【0026】
実施形態においては、第1層10は、有機材料による層である。第1層10が過度に厚くない場合、ガンマ線が第1層10に入射したときに、ガンマ線は、第1層10を実質的に通過する。第1層10において、ガンマ線に起因する光はわずかである。このため、第1層10は、ガンマ線についての感度を実質的に有しない。ベータ線の検出において、ガンマ線の影響を抑制できる。
【0027】
第2参考例においては、第1有機物11を含まない有機シンチレータが用いられる。第2参考例においても、有機シンチレータが過度に厚くない場合は、ガンマ線は、第1層10を通過する。このため、第2参考例においても、ベータ線の検出において、ガンマ線の影響を抑制できる。しかしながら、第1有機物11を用いない第2参考例においては、ベータ線に対する感度が低い。すなわち、第2参考例において、有機シンチレータが過度に厚くない場合は、ガンマ線及びベータ線の両方の感度が低い。有機シンチレータを厚くすると、ベータ線の感度だけではなく、ガンマ線の感度も上昇してしまう。このため、第2参考例において、ガンマ線の影響を抑制しつつ、ベータ線を高い精度で検出することが困難である。
【0028】
これに対して、実施形態においては、シンチレータとして機能する第1層10は、第1有機物11を含む。第1層10に入射するガンマ線は、第1層10を実質的に通過する。第1層10に入射するベータ線に基づいて第1有機物11から効率的に光が生じる。光は、例えば、蛍光である。この光の強度は高い。高い強度の光が、第2導電層52を通過して有機半導体層30に入射する。有機半導体層30において、高い強度の光が電荷に変換され、高い強度の信号OSが得られる。
【0029】
実施形態によれば、例えば、ガンマ線の影響を抑制して、ベータ線を高い感度で検出できる。実施形態によれば、検出精度の向上が可能な放射線検出器が提供できる。
【0030】
実施形態において、第1層10が上記のような第1有機物11を含む場合において、ガンマ線の影響を抑制して、ベータ線を高い感度で検出できることが分かった。以下、本願発明者が行った実験の結果の例について説明する。
【0031】
第1試料において、第1層10は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルと、ポリビニルカルバゾールと、を含む。第1層10における、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルの濃度は、10wt%である。第1層10の第1厚さt1は、220μmである。有機半導体層30は、P3HT及びPC61BMを含む。有機半導体層30の第2厚さt2は、5μmである。
【0032】
第2試料において、第1層10は、2-(4-ターシャリーブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾールを含む。第1層10は、上記の第1有機物11を含まない。第2試料におけるこれ以外の条件は、第1試料と同じである。
【0033】
これらの試料にベータ線を照射してベータ線の検出効率が測定される。実験では、ストロンチウム90から生じるベータ線が用いられる。第1試料におけるベータ線の検出効率は、第2試料におけるベータ線の検出効率の約15倍である。
【0034】
これらの試料にベータ線とガンマ線とを含む放射線81を照射して、これらの放射線81におけるベータ線の検出選択性が測定される。ベータ線の検出選択性は、ガンマ線の検出信号の強度に対するベータ線の検出信号の強度の比である。第1試料におけるベータ線の検出選択性は、第2試料におけるベータ線の検出選択性2.5倍である。
【0035】
このように、第1層10が、第1有機物11を含むことで、ベータ線について、高い検出効率が得られることが分かった。ベータ線について、高い検出選択性が得られることが分かった。
【0036】
第3試料において、第1層10は、無機シンチレータを含む。第1層10の第1厚さt1は、220μmである。第3試料におけるこれ以外の条件は、第1試料と同じである。第3試料においては、ベータ線の検出効率が低い。さらに、ベータ線の検出選択性が低い。これは、第1層10が無機シンチレータを含む場合、第1層10がガンマ線を吸収し易く、ガンマ線に基づく光が生じやすいためであると考えられる。
【0037】
第4試料における第1層10は、上記の第1試料における第1層10と同じである。第4試料においては、有機半導体層30の代わりに、無機半導体層が設けられる。第4試料においては、ベータ線の検出効率が低い。さらに、ベータ線の検出選択性が低い。これは、無機半導体層において、ガンマ線に基づく電荷が生じやすいためであると考えられる。
【0038】
このように、第1試料においては、ベータ線についての高い検出効率及び高い検出選択性が得られる。これは、第1有機物11で生じる光の特性が、有機半導体層30における光電変換特性に適合しているからであると考えられる。第1有機物11で生じる光の寿命は、上記の第2試料における2-(4-ターシャリーブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾールで生じる光の寿命よりも長い。
【0039】
図6(a)及び
図6(b)は、放射線検出器の特性を例示する模式図である。
これらの図の横軸は、時間tmである。
図6(a)の軸は、ベータ線の強度IBである。
図6(b)の縦軸は、ベータ線が有機材料に入射したときに有機材料で生じる光の強度ILである。
図6(b)に示すように、ベータ線に基づいて光が生じる。光の強度ILは、最高値pkを有する。光の強度ILは、最高値pkが生じた後に減衰し、最高値pkの1/2.72の値になる時刻が存在する。ベータ線の照射後に、光の強度ILの最高値pkとなる時刻から、光の強度ILが、光の強度ILの最高値pkの1/2.72になるまでの時間を発光寿命tdとする。「最高値pkの1/2.72」は、例えば、「最高値pkの1/e」(eは、ネイピア数)に対応する。ネイピア数eは、自然対数の底であり、約2.71828である。
【0040】
第1有機物11においては、発光寿命tdが長い。例えば、第1有機物11における発光寿命tdは、例えば、10ns以上である。第2試料における有機材料にける発光寿命は、例えば、5ns以下である。このように、第1有機物11の発光寿命tdが長いことが、ベータ線についての高い検出効率及び高い検出選択性が得られることと関係していると考えられる。
【0041】
実施形態においては、光電変換層として有機半導体層30が用いられる。これにより、ガンマ線が光電変換特性に与える影響が抑制できる。一般に、有機半導体層30における電荷の移動の速度(移動度)は、無機半導体層における電荷の移動の速度(移動度)よりも遅い。このため、第1層10が、有機半導体層30中の電荷の移動に要する時間に適合するような発光寿命tdを有するときに、ベータ線についての高い検出効率及び高い検出選択性が得られる。
【0042】
このように、実施形態においては、ベータ線が第1層10に入射してから光の強度ILが光の強度ILの最高値pkの1/2.72になるまでの時間(発光寿命td)が10ns以上であることが好ましい。発光寿命tdは、100ns以上でも良い。発光寿命tdは、300ns以上でも良い。発光寿命tdが過度に長いと、例えば、ベータ線の別の入射に基づく信号との分離が困難になり易くなる。発光寿命tdは、例えば、100μs以下でも良い。分離が容易になる。
【0043】
実施形態において、第1有機物11は、熱活性遅延蛍光材料を含むことが好ましい。これにより、長い発光寿命tdが得易くなる。例えば、第1有機物11の励起三重項状態のエネルギーと、第1有機物11の励起一重項状態のエネルギーと、の差は、500meV以下である。これにより、長い発光寿命tdが得易くなる。
【0044】
実施形態において、ベータ線が第1層10に入射したときに得られる信号OS(
図1参照)の強度は、他の放射線(ガンマ線、中性子線またはX線など)が第1層10に入射したときに得られる信号OSの強度よりも高い。例えば、ベータ線が第1層10に入射したときに第1導電層51と第2導電層52との間に生じる第1信号の感度(強度)は、ガンマ線、中性子線及びX線の少なくともいずれかが第1層10に入射したときに第1導電層51と第2導電層52との間に生じる第2信号の感度(強度)よりも高い。
【0045】
図7は、放射線検出器の特性を例示するグラフ図である。
図7の横軸は、発光寿命tdである。縦軸は、ベータ線検出効率E1(相対値)である。
図7には、第1層10として、異なる材料が用いられたときの実験結果の例が記載されている。第1試料において、第1層10は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルを含む。第1試料において、発光寿命tdは、約10000nsである。第2試料において、第1層10は、2-(4-ターシャリーブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾールを含む。第2試料において、発光寿命tdは、1.4nsである。第5試料において、第1層10は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリ
ルを含む。第5試料において、発光寿命tdは、約3400nsである。第6試料における発光寿命tdは、316nsである。これらの試料において、有機半導体層30は、P3HT及びPC
61BMを含む。有機半導体層30の第2厚さt2は、5μmである。
【0046】
図7に示すように、発光寿命tdが長いと、高いベータ線検出効率E1が得られる。実施形態において、発光寿命tdは、10μs以上であることが好ましい。
図7の例の試料において、有機半導体層30の第2厚さt2は、5μmである。有機半導体層30の第2厚さt2に対する発光寿命tdの比は、例えば、10μs/5μm以上、すなわち、2s/m以上であることが好ましい。
【0047】
実施形態において、有機半導体層30の第2厚さt2が厚いことで、第1導電層51と第2導電層52との間の静電容量が小さくできる。これにより、例えば、測定系におけるノイズを低減できる。有機半導体層30の第2厚さt2が厚くなると、有機半導体層30で生じた電荷の移動距離が長くなる。例えば、有機半導体層30の第2厚さt2が厚く、電荷の長い移動距離に対応して、発光寿命tdを長くすることで、高いベータ線検出効率E1が得られると考えられる。
【0048】
有機半導体における電荷の移動度は、無機半導体(例えば結晶シリコンなど)に比べて、著しく低い。結晶シリコンの場合は、電荷の輸送は、バンド伝導に基づく。これに対して、有機半導体においては、電荷の輸送は、非晶質性または多結晶の膜におけるホッピング伝導に基づく。伝導機構の違いが、電荷の移動度の違いに関係している。例えば、シリコンフォトダイオードの場合、応答時間は、0.1μs以上1μs以下程度である。これに対して、有機半導体による光検出系においては、応答時間は、10μs以上100μs以下程度である。このような長い応答時間に対応した長い発光寿命tdにより、高いベータ線検出効率E1が得られると考えられる。
【0049】
実施形態において、第2厚さt2は、500nm以上50μm以下であることが好ましい。第2厚さt2が500nm以上であることで、ノイズを低減でき、高い検出精度が得られる。第2厚さt2が50μm以下であることで、ベータ線の検出において、高い検出時間分解能が得られる。このような厚さの範囲において、有機半導体層30の第2厚さt2に対する発光寿命tdの比は、例えば、0.1s/m以上100s/m以下であることが好ましい。低いノイズと、高い検出時間分解能と、を得つつ、高いベータ線検出効率E1が得られる。
【0050】
実施形態において、第1層10は、原子番号が19以上の金属元素を含まないことが好ましい。または、第1層10における原子番号が19以上の金属元素の濃度は、10wt%以下であることが好ましい。第1層10がこのような金属元素を実質的に含まないことで、ベータ線の検出選択性が高い。
【0051】
実施形態において、第1層10の第1厚さt1は、有機半導体層30の第2厚さt2の5倍以上1000倍以下であることが好ましい。例えば、低いノイズと、高い検出時間分解能と、が得易い。高いベータ線検出効率E1が得られる。
【0052】
第1有機物11は、例えば、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル、2,4,6-トリス(4-(9,9-ジメチルアクリダン-10-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、10-(4-(ビス(2,3,5-テトラメチルフェニル)ボラニル)-2,3,5-テトラメチルフェニル)-10H-フェニキサジン、2,4,6-トリ(9H-カルバゾル-9-イル)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル、及び、9-[1,4]ベンズオキサボリノ[2,3,4-kl]フェノオキサボリン-7-イル-1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾール、よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。
【0053】
実施形態において、p形領域32pは、例えば、ポリチオフェン及びポリチオフェンの誘導体の少なくともいずれかを含む。これらの化合物は、例えば、π共役構造を有する導電性高分子である。ポリチオフェン及びポリチオフェンの誘導体は、例えば、優れた立体規則性を有する。これらの材料においては、溶媒への溶解性が比較的高い。ポリチオフェン及びポリチオフェンその誘導体は、チオフェン骨格を有する。p形領域32pは、例えば、ポリアリールチオフェン、ポリアルキルイソチオナフテン及びポリエチレンジオキシチオフェンよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。上記のポリアリールチオフェンは、例えば、ポリアルキルチオフェン、ポリ(3-フェニルチオフェン)、及び、ポリ(3-(p-アルキルフェニルチオフェン))よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。ポリアルキルチオフェンは、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、及び、ポリ(3-ドデシルチオフェン)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0054】
上記のポリアルキルイソチオナフテンは、例えば、ポリ(3-ブチルイソチオナフテン)、ポリ(3-ヘキシルイソチオナフテン)、ポリ(3-オクチルイソチオナフテン)、及び、ポリ(3-デシルイソチオナフテン)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。p形領域32pは、ポリチオフェン誘導体を含んでも良い。このポリチオフェン誘導体は、例えば、カルバゾール、ベンゾチアジアゾール、及び、チオフェンの共重合体よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このチオフェンの共重合体は、例えば、ポリ[N-9”-ヘプタ-デカニル-2,7-カルバゾール-アルト-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT)を含む。p形領域32pがポリチオフェン及びポリチオフェンの誘導体を含むことにより、例えば、高い変換効率が得られる。
【0055】
実施形態において、n形領域32nは、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体を含む。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格を有する。フラーレン及びフラーレン誘導体は、例えば、C60、C70、C76、C78及びC84よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。フラーレン誘導体は、酸化フラーレンを含む。酸化フラーレンにおいて、これらのフラーレンの炭素原子の少なくとも一部が酸化されている。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格の一部の炭素原子が任意の官能基で修飾される。フラーレン誘導体は、これらの官能基どうしが互いに結合して形成された環を含んでも良い。フラーレン誘導体は、フラーレン結合ポリマーを含んでも良い。n形領域32nは、溶剤に親和性の高い官能基を有するフラーレン誘導体を含むことが好ましい。この化合物においては、溶媒への可溶性が高い。フラーレン誘導体に含まれる官能基は、例えば、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、シアノ基、芳香族炭化水素基、及び、芳香族複素環基よりなる群から選択された少なくともいずれかを含んでも良い。ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子及び塩素原子よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。アルキル基は、例えば、メチル基及びエチル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。アルケニル基は、例えば、ビニル基を含む。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基及びエトキシ基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル基及びナフチル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。芳香族複素環基は、例えば、チエニル基及びピリジル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0056】
フラーレン誘導体は、例えば、水素化フラーレンを含んでも良い。水素化フラーレンは、例えば、C60H36及びC70H36よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。フラーレン誘導体は、例えば、酸化フラーレンを含む。酸化フラーレンにおいて、C60またはC70が酸化される。フラーレン誘導体は、例えば、フラーレン金属錯体を含んでも良い。
【0057】
フラーレン誘導体は、例えば、[6,6]-フェニルC61酪酸メチルエステル(60PCBM)、[6,6]-フェニルC71酪酸メチルエステル(70PCBM)、インデン-C60ビス付加物(60ICBA)、ジヒドロナフチル-C60ビス付加物(60NCBA)、及び、ジヒドロナフチル-C70ビス付加物(70NCBA)よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。60PCBMは、未修飾のフラーレンである。60PCBMにおいては、光キャリアの移動度が高い。
【0058】
p形領域32p及びn形領域32nの少なくともいずれかは、例えば、サブフタロシアニン系化合物、サブナフタロシアニン系化合物、メロシアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、キナクリドン系化合物、及び、ペリレン系化合物よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。これらの材料は、低分子系化合物である。
【0059】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、第2実施形態に係る放射線検出器121は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30に加えて、第2層20をさらに含む。第2実施形態における、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30は、第1実施形態における、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30と同様でも良い。以下、第2層20の例について説明する。
【0060】
第2層20は、第1層10と第2導電層52との間に設けられる。第2層20は、有機層25を含む。有機層25は、例えば、PET、PEN、透明ポリイミド、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びポリカーボネートよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。有機層25は、例えば、有機フィルムである。
【0061】
第2層20の厚さt20は、例えば、10μm以上300μm以下である。有機層25の厚さt25は、例えば、10μm以上300μm以下である。この例では、厚さt20は、厚さt25に対応する。
【0062】
第2層20は、光透過性である。第1層10で生じた光は、第2層20及び第2導電層52を通過して、有機半導体層30に入射可能である。
【0063】
第2層20を設けることで、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0064】
第2層20が有機層25を含むことで、ガンマ線が入射した場合にも、ガンマ線が第2層20で光に変換されることが抑制できる。ガンマ線の影響を抑制しつつベータ線を高い精度で検出できる。第2層20は、例えば、基体として機能する。第2層20により、放射線検出器121の機械的な強度が向上する。
【0065】
図9は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る放射線検出器122においても、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20が設けられる。放射線検出器122においては、第2層20は、第1中間層21を含む。第1中間層21は、例えば、酸窒化シリコンを含む。第1中間層21は、酸化シリコン、窒化シリコン、または、酸化アルミニウムなどを含んでも良い。第1中間層21により、例えば、高いバリア性が得られる。例えば、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0066】
第1中間層21の厚さt21が薄いことが好ましい。厚さt21が過度に厚いと、ガンマ線が入射したときに、第1中間層21で光に変換される場合がある。厚さt21が薄いことで、ガンマ線の影響を抑制できる。厚さt21は、例えば、2μm以下である。
【0067】
図10及び
図11は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、第2実施形態に係る放射線検出器123においては、第2層20は、有機層25及び第1中間層21を含む。
図11に示すように、第2実施形態に係る放射線検出器124においては、第2層20は、有機層25、第1中間層21及び第2中間層22を含む。第2層20は、第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかを含んでも良い。
【0068】
第1中間層21は、有機層25と第2導電層52との間に設けられる。第1中間層21は、シリコン及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む第1元素を含む。第2中間層22は、第1層10と有機層25との間に設けられる。第2中間層22は、シリコン及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む第2元素を含む。第1中間層21は、例えば、酸素及び窒素の少なくともいずれかと、上記の第1元素と、を含む。第1中間層21は、例えば、酸窒化シリコンを含む。第2中間層22は、酸素及び窒素の少なくともいずれかと、上記の第2元素と、を含む。第2中間層22は、例えば、酸窒化シリコンを含む。
【0069】
第1中間層21の厚さt21(
図10参照)は、有機層25の厚さt25(
図8参照)の1/600倍以上1/5倍以下である。第2中間層22の厚さt22は、有機層25の厚さt25の1/600倍以上1/5倍以下である。これらの中間層の厚さが薄いことで、ガンマ線の影響を抑制しつつ、ベータ線を高精度で検出できる。
【0070】
第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかにより、例えば、高いバリア性が得られる。例えば、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0071】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、第3実施形態に係る放射線検出器130は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20に加えて、構造体40を含む。放射線検出器130における、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20には、第1実施形態及び第2実施形態に関して説明した構成が適用できる。この例では、第2層20は、有機層25、第1中間層21及び第2中間層22を含む。放射線検出器130において、第2層20は、第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかを含んでも良い。以下、構造体40の例について説明する。
【0072】
構造体40は、第1部分領域41、第2部分領域42及び第3部分領域43を含む。第1方向(例えば、Z軸方向)において、第1層10と第1部分領域41との間に第2層20がある。第1方向において、第2層20と第1部分領域41との間に、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30がある。このように、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30を含む積層体SBが、第2層20と第1部分領域41との間に設けられる。
【0073】
第1方向と交差する第2方向において、第2部分領域42と第3部分領域43との間に、積層体SB(第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30)がある。第2方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する任意の方向である。この例では、第2方向は、X軸方向である。例えば、第2部分領域42と第3部分領域43は、X-Y平面内(第1方向と交差する平面内)で、積層体SBの周りに設けられる。例えば、第2部分領域42と第3部分領域43は、X-Y平面内で、積層体SBを囲む。第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と接合される。例えば、第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と直接的に接合されても良い。例えば、第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と、接着層などを介して接合されても良い。
【0074】
例えば、有機半導体層30は、第2層20及び構造体40により封止される。例えば、第2層20及び構造体40は、封止部として機能する。第2層20及び構造体40により、高い信頼性が得られる。
【0075】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
図13に示すように、第4実施形態に係る放射線検出器140は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20を含む。放射線検出器140において、構造体40が設けられても良い。
図13においては、図の見やすさのために、放射線検出器140に含まれる要素の一部が互いに離されて描かれている。
【0076】
放射線検出器140においては、複数の第2導電層52が設けられる。複数の第2導電層52は、Z軸方向と交差する面(例えばX-Y平面)に沿って並ぶ。複数の第2導電層52は、例えば、X軸方向及びY軸方向に沿って、マトリクス状に並ぶ。この例では、第1導電層51及び有機半導体層30は、連続的に設けられる。
【0077】
実施形態において、第2導電層52は、例えば、金属酸化物膜を含む。金属酸化物膜、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及び、ITOよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0078】
第1導電層51は、例えば、金属薄膜を含む。第1導電層51は、例えば、合金を含む膜を含む。第1導電層51は、例えば、導電性の金属酸化物を含んでも良い。第1導電層51は、例えば、光反射性を有しても良い。有機半導体層30における光電変換の効率が向上できる。
【0079】
有機半導体層30と第1導電層51との間、及び、有機半導体層30と第2導電層52との間の少なくともにいずれかに中間層が設けられても良い。中間層は、例えば、PEDOT:PSSを含む。中間層は、ポリチオフェン系ポリマーを含む。
【0080】
実施形態において、放射線検出器は、第1導電層51及び第2導電層52と電気的に接続された検出回路70(
図1などを参照)を含んでも良い。検出回路70は、第1層10に入射する放射線81の強度に応じた信号OSを出力する。ベータ線に対する信号OSの感度は、ガンマ線に対する信号OSの感度よりも高い。ベータ線の強度の変化に対する信号OSの変化の比は、ガンマ線の強度の変化に対する信号OSの変化の比よりも高い。実施形態において、ガンマ線の影響を抑制しつつ、ベータ線を高い精度で検出できる。
【0081】
実施形態によれば、検出精度の向上が可能な放射線検出器が提供できる。
【0082】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0083】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0084】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、放射線検出器に含まれる導電層、第1層、有機半導体層及び第1有機物などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0085】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0086】
本発明の実施の形態として上述した放射線検出器を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての放射線検出器も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0087】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10…第1層、 11…第1有機物、 11R…領域、 12…第2有機物、 20…第2層、 21、22…第1、第2中間層、 25…有機層、 30…有機半導体層、 32…有機半導体、 32n…n形領域、 32p…p形領域、 40…構造体、 41~43…第1~第3部分領域、 51、52…第1、第2導電層、 70…検出回路、 71、72…第1、第2配線、 81…放射線、 110、121~124、130、140…放射線検出器、 E1…ベータ線検出効率、 IB…強度、 IL…強度、 OS…信号、 SB…積層体、 pk…最高値、 t1、t2、t20、t21、t22、t25…厚さ、 td…発光寿命、 tm…時間