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特許7434141原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器
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  • 特許-原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/024 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
G21C13/024 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020209875
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096741
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】今村 祐一郎
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-233790(JP,A)
【文献】特開昭57-125887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 11/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の周囲に設置され、前記原子炉圧力容器を支持し、放射性物質の放出及び散乱に対する障壁となる円筒形の構造物であり、前記原子炉圧力容器の中心軸を中心に同心円状に、鋼板によって構成される内筒と鋼板によって構成される外筒との二重構造を有し、上部と下部との2つの構造によって構成され、
前記外筒と前記内筒との間であって、前記原子炉圧力容器の底部より上方である上部には、コンクリートが充填され、
前記外筒と前記内筒との間であって、前記原子炉圧力容器の底部より下方である下部には、空間が形成されると共に前記原子炉圧力容器を中心に放射状に縦リブが設置されることを特徴とする原子炉圧力容器ペデスタル。
【請求項2】
請求項1に記載する原子炉圧力容器ペデスタルであって、
前記内筒には、前記外筒と前記内筒との間に形成される空間に対して、検査員の出入が可能なアクセス経路が設置されることを特徴とする原子炉圧力容器ペデスタル。
【請求項3】
請求項1に記載する原子炉圧力容器ペデスタルを有することを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項4】
請求項3に記載する原子炉格納容器であって、
その底部に、その内部の気密性を確保する下鏡が設置されることを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項5】
請求項3に記載する原子炉格納容器であって、
前記外筒の内側であって、基礎部である基礎スラブ上に、その内部の気密性を確保するライナーが設置されることを特徴とする原子炉格納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉圧力容器ペデスタルは、原子炉圧力容器を支持する円筒形(円筒状)の構造物である。一般的に、原子炉圧力容器ペデスタルは、鋼板とコンクリートとによって構成され、原子炉圧力容器及びガンマ線遮蔽壁から伝達される鉛直荷重、地震荷重、事故時荷重及び熱荷重に対して、十分な耐力を有するように設計される。
【0003】
また、一般的に、原子力プラントは、原子炉格納容器の外側に、圧力障壁であり、放射性物質の放出・散乱に対する障壁である原子炉格納容器バウンダリを有する。
【0004】
こうした技術分野における背景技術として、特開2019-045433号公報(以下、特許文献1)がある。
【0005】
特許文献1には、原子炉の炉心を内包する原子炉圧力容器と、原子炉圧力容器を支持する円筒形の原子炉圧力容器ペデスタルと、原子炉圧力容器ペデスタルの内側において、原子炉圧力容器と床面との間の空間に設置され、冷却水が流通する伝熱管群と、を有する原子炉格納容器が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-045433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原子力プラントは、初期資本費の低減と避難準備区域の縮小とを目的として、その小型化が必要とされる。
【0008】
しかし、従来、原子力プラントは、原子炉圧力容器ペデスタルと原子炉格納容器バウンダリとが離れた構造であった。原子炉圧力容器ペデスタルと原子炉格納容器バウンダリとが離れた構造であった場合には、基礎部である原子炉格納容器の下部周囲にスペースを確保しなくてはならず、大型化を回避することができない。
【0009】
また、特許文献1には、原子力プラントの小型化を実現するための、原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器は記載されていない。
【0010】
そこで、本発明は、基礎部である原子炉格納容器の下部周囲のスペースを削減し、原子力プラントの小型化を実現する、原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するため、本発明の原子炉圧力容器ペデスタルは、原子炉圧力容器の周囲に設置され、原子炉圧力容器を支持し、放射性物質の放出及び散乱に対する障壁となる円筒形の構造物であり、原子炉圧力容器の中心軸を中心に同心円状に、鋼板によって構成される内筒と鋼板によって構成される外筒との二重構造を有し、上部と下部との2つの構造によって構成され、外筒と内筒との間であって、原子炉圧力容器の底部より上方である上部には、コンクリートが充填され、外筒と内筒との間であって、原子炉圧力容器の底部より下方である下部には、空間が形成されると共に原子炉圧力容器を中心に放射状に縦リブが設置さることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の原子炉格納容器は、上記した原子炉圧力容器ペデスタルを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基礎部である原子炉格納容器の下部周囲のスペースを削減し、原子力プラントの小型化を実現する、原子炉圧力容器ペデスタル及び原子炉圧力容器ペデスタルを有する原子炉格納容器を提供することができる。
【0016】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する説明図である。
図2】実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4と基礎スラブ3との関係を説明する説明図である。
図3】実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する上面図である。
図4】実施例2に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する上面図である。
図5】実施例3に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して、説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0019】
先ず、実施例1に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する。
【0020】
図1は、実施例1に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する説明図である。
【0021】
沸騰水型原子力プラント20は、原子炉格納容器2と、原子炉格納容器2の内部に設置され、その内部に沸騰水型原子炉が設置される原子炉圧力容器1と、原子炉格納容器2の内部に配置され、原子炉圧力容器1の周囲に設置され、原子炉圧力容器1を支持する円筒形(円筒状)の構造物である原子炉圧力容器ペデスタル4と、を有する。
【0022】
なお、原子炉格納容器2が、地上に設置される場合には、原子炉格納容器2は、原子炉建屋11の内部に設置される。また、原子炉格納容器2が、地中に設置される場合には、原子炉格納容器2は、地中の側壁11の内部に設置される。
【0023】
そして、原子炉格納容器2は、基礎部であり、コンクリートからなる基礎スラブ3上に設置される。
【0024】
また、原子炉格納容器2の底部(原子炉圧力容器2の下方)には、原子炉格納容器2の内部の気密性を確保するために、下鏡9が設置される。なお、下鏡9は炭素鋼からなる。なお、原子炉圧力容器1が設置される原子炉圧力容器ペデスタル4の内側であって、下鏡9の上方は、全てドライウェルとなる。
【0025】
つまり、原子炉格納容器2は、原子炉圧力容器1と、原子炉圧力容器ペデスタル4と、下鏡9と、を有する。
【0026】
特に、原子炉圧力容器1を支持し、遮蔽効果を有する原子炉圧力容器ペデスタル4は、円筒形を有し、その上部は鋼板(炭素鋼)とコンクリートとによって構成され、その下部は鋼板(炭素鋼)によって構成される。つまり、原子炉圧力容器ペデスタル4は、上部と下部との2つの構造によって、構成される。
【0027】
なお、上部は、外筒5である鋼板(炭素鋼)、コンクリート、内筒6である鋼板(炭素鋼)の構造を有し、下部は、外筒5である鋼板(炭素鋼)、空間、内筒6である鋼板(炭素鋼)の構造を有する。
【0028】
このように、原子炉圧力容器ペデスタル4は、原子炉圧力容器1の周囲に設置され、原子炉圧力容器1を支持する円筒形の構造物であり、鋼板によって構成される内筒6と鋼板によって構成される外筒5との二重構造(二重円筒構造体)を有し、外筒5と内筒6との間には、空間が形成される。
【0029】
そして、原子炉圧力容器ペデスタル4は、上部と下部との2つの構造によって構成され、上部は、外筒5と内筒6との間にコンクリートが充填され、下部は、外筒5と内筒6との間に空間が形成される。
【0030】
また、上部とは、原子炉圧力容器1の底部より概ね上方を意味し、下部とは、原子炉圧力容器1の底部より概ね下方を意味する。つまり、原子炉格納容器2の内部における原子炉圧力容器1の設置位置の上下方向に対して、上部は、概ねこの原子炉圧力容器1が設置されている位置であり、下部は、概ねこの原子炉圧力容器1が設置されていない位置である。
【0031】
次に、実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4と基礎スラブ3との関係を説明する。
【0032】
図2は、実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4と基礎スラブ3との関係を説明する説明図である。
【0033】
原子炉圧力容器ペデスタル4の下部(以下、単に、原子炉圧力容器ペデスタル4)は、炭素鋼からなる外筒5と炭素鋼からなる内筒6とを有し、外筒5と内筒6とは、アンカーボルト7によって、基礎スラブ3に固定される。そして、下鏡9は、原子炉格納容器2の内部の気密性を確保するため、内筒6を貫通し、外筒5に設置される。つまり、下鏡9は、原子炉圧力容器ペデスタル4の内側に設置される。
【0034】
また、外筒5と内筒6との間には、外筒5と内筒6とを安定させる縦リブ12(図3参照)が設置される。
【0035】
そして、外筒5、内筒6及び縦リブ12は、原子炉圧力容器1から伝達される鉛直荷重、地震荷重、事故時荷重及び熱荷重を、受け、これら荷重を、アンカーボルト7を介して、基礎スラブ3へ伝達させる。
【0036】
次に、実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する。
【0037】
図3は、実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する上面図である。
【0038】
原子炉圧力容器ペデスタル4は、原子炉圧力容器1の周囲の位置に設置され、原子炉圧力容器1の中心軸を中心に、同心円状に、外筒5と内筒6とが設置され、二重構造を有する。
【0039】
このように、二重構造を有する外筒5と内筒6とは、原子炉圧力容器1のシビアアクシデント(事故)時に発生する圧力(圧力上昇)に対して、十分な厚さを有する。
【0040】
また、外筒5と内筒6との間(下部)には、縦リブ12が、原子炉圧力容器1を中心に、放射状に、溶接によって、設置される。そして、外筒5と内筒6との間には、コンクリートは充填されず、空間が形成される。
【0041】
そして、原子炉圧力容器ペデスタル4は、上部及び下部を有する構造、並びに、外筒5、内筒6及び縦リブ12を有する構造により、シビアアクシデント時に発生する圧力に対して、耐圧機能を維持する。
【0042】
つまり、外筒5(鋼板)及び内筒6(鋼板)を有する原子炉圧力容器ペデスタル4を、シビアアクシデント時に発生する圧力に対して、耐えることができる構造にすることにより、原子炉格納容器バウンダリとしての機能も兼ね備えることができる。
【0043】
このように、実施例1に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4(上部及び下部)は、原子炉格納容器バウンダリの機能を兼ね備え、放射性物質の放出・散乱に対する障壁となる。
【0044】
この沸騰水型原子力プラント20はサプレッションプールを設置せず、これにより、従来あった原子炉圧力容器ペデスタルと原子炉格納容器バウンダリとの間のスペースを省略することができ、基礎部である原子炉格納容器2の下部周囲のスペースを削減し、沸騰水型原子力プラント20の小型化を実現し、沸騰水型原子力プラント20の建設コストを低減することができる。
【0045】
また、下部の内筒6には、外筒5と内筒6との間に形成される空間に対して、検査員の出入が可能なように、マンホール8などのアクセス経路が設置される。
【0046】
このように、原子炉圧力容器ペデスタル4は、外筒5と内筒6との間には、コンクリートが充填されず、空間が形成され、この空間に出入するためのアクセス経路が設置されるため、原子炉圧力容器ペデスタル4を、外筒5と内筒6との間から、目視にて、検査することができる。
【0047】
更に、この空間に、梯子を設置することにより、作業効率を向上することができる。
【0048】
また、これにより、外筒5と内筒6との間から溶接補修や再塗装など、メンテナンスをすることができ、原子炉圧力容器ペデスタル4としての信頼性を維持すると共に、原子炉格納容器バウンダリとしての信頼性を維持することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する。
【0050】
図4は、実施例2に記載する原子炉圧力容器ペデスタル4を説明する上面図である。
【0051】
実施例1では、内筒6に、外筒5と内筒6との間に形成される空間に対して、検査員の出入が可能なように、マンホール8などのアクセス経路が設置される。一方、実施例2では、内筒6に、外筒5と内筒6との間に形成される空間に対して、検査員の出入が可能なように、内筒6の一部と縦リブ12とにより、カットティーを形成し、アクセス経路を形成する。
【0052】
これにより、原子炉圧力容器ペデスタル4を、外筒5と内筒6との間から、目視検査することができ、溶接補修と再塗装などのメンテナンスをすることができる。
【実施例3】
【0053】
次に、実施例3に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する。
【0054】
図5は、実施例3に記載する原子炉格納容器2が設置される沸騰水型原子力プラント20を説明する説明図である。
【0055】
実施例1では、原子炉格納容器2の底部に、原子炉格納容器2の内部の気密性を確保するため、下鏡9が設置される。一方、実施例3では、外筒5の内側であって、基礎スラブ3上に、原子炉格納容器2の内部の気密性を確保するため、炭素鋼からなるライナー10が設置される。
【0056】
これにより、シビアアクシデント時に発生する圧力に対する、気密性を維持することができる。
【0057】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0058】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…原子炉圧力容器、2…原子炉格納容器、3…基礎スラブ、4…原子炉圧力容器ペデスタル、5…外筒、6…内筒、7…アンカーボルト、8…マンホール、9…下鏡、10…ライナー、11…原子炉建屋、12…縦リブ、20…沸騰水型原子力プラント。
図1
図2
図3
図4
図5