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特許7434142燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20240213BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240213BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/10 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020209943
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096773
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 将一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 尚登
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】前川 全
(72)【発明者】
【氏名】下道 剛
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-163940(JP,A)
【文献】特開2010-251096(JP,A)
【文献】特開2007-141717(JP,A)
【文献】特開2007-273276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04858
H01M 8/04537
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水供給手段と、前記冷却水を熱交換するためのラジエータとからなる補機群と、
を具備した燃料電池システムの運転方法において、
現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる際に、
前記補機群のうちの少なくとも1つの補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力より低い状態としたまま、出力電流を上昇させるステップと、
この後、前記目標の出力電流に応じた補機動力より低い状態とした補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力に上昇させるステップと、
を具備したことを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記出力電流を上昇させるステップにおいて、前記ラジエータの動力を、現在の動力より低い状態とすることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックの電圧を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記燃料電池スタックの電圧が安定した後に、前記ラジエータの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックを冷却する冷却水の出口温度を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記出口温度が予め設定した基準温度以上となった際に前記ラジエータの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項5】
燃料電池スタックと、
少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水ポンプとからなる補機群と、
を具備した燃料電池システムの運転方法において、
現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる、出力電流を上昇させるステップにおいて、前記冷却水ポンプの動力を、現在の動力より低い状態とすることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックの電圧を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記燃料電池スタックの電圧が安定した後に、前記冷却水ポンプの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項7】
請求項5に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックを冷却する冷却水の出口温度を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記出口温度が予め設定した基準温度以上となった際に前記冷却水ポンプの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項8】
燃料電池スタックと、
少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給ブロアと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水供給手段とからなる補機群と、
を具備した燃料電池システムの運転方法において、
現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる、出力電流を上昇させるステップにおいて、前記燃料ガス供給ブロアの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力より低い状態とすることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックの電圧を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記燃料電池スタックの電圧が安定した後に、前記燃料ガス供給ブロアの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項10】
燃料電池スタックと、
少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給ブロアと、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水供給手段とからなる補機群と、
を具備した燃料電池システムの運転方法において、
現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる、出力電流を上昇させるステップにおいて、前記空気供給ブロアの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力より低い状態とすることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料電池システムの運転方法において、
前記燃料電池スタックの電圧を監視し、前記出力電流を上昇させるステップの後に、前記燃料電池スタックの電圧が安定した後に、前記空気供給ブロアの動力を、前記目標の出力電流に応じた動力に上昇させることを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
【請求項12】
燃料電池スタックと、
少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給ブロアと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給ブロアと、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水ポンプと、前記冷却水を熱交換するためのラジエータとからなる補機群と、
出力電流を制御する電流制御部と、
前記補機群及び前記電流制御部の動作を制御する制御部と、
を具備した燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、
現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる際に、
前記補機群のうちの少なくとも1つの補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力より低い状態とし、出力電流を上昇させるステップと、
この後、前記目標の出力電流に応じた動力より低い状態とした補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力に上昇させるステップと、
を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、燃料極に水素を含む燃料ガス、空気極に酸素を含む空気を供給し、燃料電池反応によって発電する。燃料電池セルの電解質として、プロトン導電性のイオン交換膜を適用する固体高分子形燃料電池は、60~80℃で動作することから、起動時間が短い利点がある。その利点を活かし、定置用、家庭用、燃料電池自動車用、携帯電話の基地局用、船舶用など、幅広い用途向けに開発が進められて、実用化されている。
【0003】
燃料電池システムは、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックと、燃料ガスを供給するためのブロア、空気を供給するためのブロア、冷却水タンクおよびポンプ、ラジエータ等の補機と、制御装置とで構成される。燃料電池スタック以外の補機の動力は、燃料電池スタックで発電された電力を用いる。
【0004】
燃料電池反応は発熱反応であるため、燃料電池スタックに冷却水を循環させる。燃料電池スタックから出てくる冷却水は60~80℃で排熱される。二次冷却水との間で熱交換させるコージェネレーションシステムであれば、温められた二次冷却水を温水として利用することができる。あるいは、ラジエータによって冷却水の温度を下げて循環させて利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-145037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池セルは電気化学反応であるため、その発電性能は、電流‐電圧曲線に従い、電流が増加するにしたがって、電圧は低下する。出力を増加させる際には、電流を増やす操作を行うが、電流に従って電圧が低下するため、電圧の低下分を加えた分だけ電流を増加する必要がある。
【0007】
さらに、電流を増加すると、反応ガスの消費量も増えるため、ブロアの出力を高めて燃料ガスおよび空気の供給量も増やす必要がある。また、冷却のためのラジエータ及び冷却水を供給するためのポンプの出力も高める必要がある。このため、ブロアやポンプ等の補機動力が増え、必要な出力がさらに増える。
【0008】
燃料電池システムにおいて出力を増加させる際の従来の運転方法は、図6に示すように、出力増加要求があった場合に(ステップ601)、まず、燃料ガス、空気の増量を行い(ステップ602)、流量が安定した後に電流を増加させる(ステップ603)。図7は、縦軸を燃料ガス流量、横軸を電流として、これらの間系を示したグラフであり、燃料ガス流量と電流との関係は、通常の場合リニアな関係となっている。そして、出力電流増加要求により、現在のA点から目標のB点に電流を増加させる場合は、図中点線で示すように、まず、燃料ガス流量を必要な量まで増加させ、この後、電流を増加させる。
【0009】
燃料電池システムの運転が長期間になると、燃料電池セルの発電性能が劣化し、電圧が低下する。そのような状態では、定格出力を得るのに必要な電流が初期よりも増加し、補機動力がさらに増えて、さらに電圧が低下し、運転に必要な電圧が得られなくなる、という課題がある。
【0010】
本発明は、上述の従来の事情に対処してなされたもので、効率良く必要な出力を得ることのできる燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の燃料電池システムの運転方法は、燃料電池スタックと、少なくとも、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気供給手段と、前記燃料電池スタックに冷却水を供給する冷却水供給手段と、前記冷却水を熱交換するためのラジエータとからなる補機群と、を具備した燃料電池システムの運転方法において、現在の出力電流を、目標の出力電流まで上昇させる際に、前記補機群のうちの少なくとも1つの補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力より低い状態としたまま、出力電流を上昇させるステップと、この後、前記目標の出力電流に応じた補機動力より低い状態とした補機動力を、前記目標の出力電流に応じた補機動力に上昇させるステップと、を具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、効率良く必要な出力を得ることのできる燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を模式的に示す図。
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの運転方法の手順を示すフロー図。
図3】第2実施形態に係る燃料電池システムの運転方法の手順を示すフロー図。
図4】第3実施形態に係る燃料電池システムの運転方法の手順を示すフロー図。
図5】実施形態における燃料ガス流量と電流との関係を示すグラフ。
図6】従来の燃料電池システムの運転方法の手順を示すフロー図。
図7】従来技術における燃料ガス流量と電流との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る燃料電池システムの運転方法及び燃料電池システムについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を模式的に示す図である。図1に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタック101と、この燃料電池スタック101に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給ブロア102と、燃料電池スタック101に酸化剤ガスである空気を供給するための空気供給ブロア103とを具備している。
【0016】
また、燃料電池システム100は、燃料電池スタック101を冷却するための冷却水を貯留するための冷却水タンク104と、この冷却水タンク104内の冷却水を燃料電池スタック101に供給するための冷却水ポンプ105とを具備している。冷却水系は燃料電池スタック101に冷却水を循環する一次冷却水系と、二次冷却水系とで構成されており、熱交換器108を介して、両系統で熱交換を行う。二次冷却水系には、冷却水を冷却するためのラジエータ106を具備している。
【0017】
また、燃料電池システム100は、燃料電池スタック101にて発生させた電気を昇圧し、交流に変換して所定の電流出力として出力する電流制御部107と、燃料電池システム100の全体を制御するための制御部110とを具備している。燃料ガス供給ブロア102、空気供給ブロア103、冷却水ポンプ105、ラジエータ106等の燃料電池スタック101以外の補機の動力は、燃料電池スタック101で発電された電力を用いている。また、これらの補機の運転状態は、制御部110によって制御される。
【0018】
(第1実施形態)
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る燃料電池システム100の運転方法を説明する。図2に示すように、第1実施形態では、現在の出力電流値から、目標の出力電流値まで出力電流を増加させる、出力電流増加要求があった際に(ステップ201)、先ず、先行して補機動力を低減する(ステップ202)。
【0019】
その後、燃料ガス及び空気ガスの流量を増量し(ステップ203)、しかる後、電流を増加させる(ステップ204)。この場合、燃料ガス及び空気ガスの流量を増量するために、燃料ガス供給ブロア102及び空気供給ブロア103の補機動力が増加するが、予め他の補機動力(後述するように、ラジエータ106又は冷却水ポンプ105)を低減しているため、電圧の低下を抑制することができる。なお、このような電圧の低下は、例えば、性能的に限界に近い状態となる際に生じ易く、例えば、定格電力の80%以上に出力を向上させる場合等において、本実施形態を有効に適用することができる。
【0020】
そして、燃料電池スタック101の出力を監視し、電圧が安定化したことが確認された後に(ステップ205)、補機動力を復旧する(ステップ206)。すなわち、補機動力を、目標の出力電流値に対応する補機動力値に上昇させる。これによって、安定に燃料電池システム100を運転することが可能になる。
【0021】
補機動力を低減する方法としては、例えば、ラジエータ106の出力(ラジエータの空冷のためのファンの回転数)を低減する、或いは、冷却水ポンプ105の出力(吐出量)低減する方法を使用することができ、これらを併用してもよい。
【0022】
この場合、補機動力を復旧させるタイミングは、電圧が安定化した後としているが、この他に、燃料電池スタック101の出口における冷却水の出口温度を監視し、この温度が予め設定した所定の基準値となった際に補機動力を復旧させるようにしても良い。この場合、冷却水の出口温度については、通常、運転中の温度の上限値が設定されているので、この上限値より低い温度に上記の基準値を設定することが好ましい。これによって、冷却水の出口温度が上限値を超えてシステムが停止してしまうようなことを防止することができる。
【0023】
通常、燃料電池スタック101の発電量を増加させるタイミングと、冷却水の出口温度の上昇するタイミングとには、タイムラグがあるため、一時的にラジエータ106の出力や冷却水ポンプ105の出力を低減させても問題が生じる可能性は低い。また、場合によっては、これらを一時的に停止してもよい。
【0024】
なお、上記の説明では、現在の出力電流値から、目標の出力電流値まで出力電流を増加させる、出力電流増加要求があった際に、先行して補機動力を現在の状態より低減する場合について説明した。しかし、補機動力を現在の状態より低減する場合に限らず、目標の出力電流値に応じた補機動力に上昇させることなく、現在の補機動力を維持するようにしてもよい。なお、出力電流を増加させると燃料電池スタック101の発熱量も多くなるため、出力電流を増加させる場合、通常はラジエータ106の出力や冷却水ポンプ105の出力を上昇させる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、第2実施形態に係る燃料電池システム100の運転方法を説明する。図3に示すように、第2実施形態では、現在の出力電流値から、目標の出力電流値まで出力電流を増加させる、出力電流増加要求があった際に(ステップ301)、先ず、先行して空気だけを増量する(ステップ302)。
【0026】
次に、電流を増やし(ステップ303)、燃料電池スタック101の出力を監視して電圧が安定化したことが確認された後に(ステップ304)、燃料ガスを増量する(ステップ305)。
【0027】
図5は、縦軸を燃料ガス流量、横軸を電流として、第2実施形態におけるこれらの間系を示したグラフであり、燃料ガス流量と電流との関係は、通常の場合リニアな関係となっている。そして、出力電流増加要求により、現在のA点から目標のB点に電流を増加させる場合は、図中点線で示すように、まず、電流を増加させ、この後、燃料ガス流量を必要な量まで増加させることになる。
【0028】
この場合、燃料ガス及び空気を同時に増量した場合に比べて、電流を増やしたタイミングにおいて、燃料ガス供給ブロア102の出力増加の分の動力だけ、補機動力を低減することが可能となる。燃料ガス流量については、燃料電池スタック101における発電量に対して裕度を持たせた設定となっているので、電流の増加のタイミングに対して、燃料ガスを増量するタイミングが遅れても問題が生じる可能性は低い。但し、電流増加量との兼ね合いとなる。このため、目標となる電流値までの電流増加量が多い場合は、段階的に目標となる電流値に近付けることもできる。また、前述した第1実施形態と組み合わせて行ってもよい。
【0029】
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、第3実施形態に係る燃料電池システム100の運転方法を説明する。図4に示すように、第3実施形態では、現在の出力電流値から、目標の出力電流値まで出力電流を増加させる、出力電流増加要求があった際に(ステップ401)、先ず、先行して燃料ガスだけを増量する(ステップ402)。
【0030】
次に、電流を増やし(ステップ403)、燃料電池スタック101の出力を監視して電圧が安定化したことが確認された後に(ステップ404)、空気を増量する(ステップ405)。
【0031】
この場合、燃料ガス及び空気を同時に増量した場合に比べて、電流を増やしたタイミングにおいて、空気供給ブロア103の出力増加の分の動力だけ、補機動力を低減することが可能となる。空気流量については、燃料電池スタック101における発電量に対して裕度を持たせた設定となっているので、電流の増加のタイミングに対して、空気を増量するタイミングが遅れても問題が生じる可能性は低い。但し、電流増加量との兼ね合いとなる。このため、目標となる電流値までの電流増加量が多い場合は、段階的に目標となる電流値に近付けることもできる。また、前述した第1実施形態と組み合わせて行ってもよい。
【0032】
燃料電池スタック101において反応に使用されるのは、空気中の酸素であるが、必要な酸素の量を得るためには、空気中の酸素濃度は21%程度であるため、空気の流量は、燃料ガスの流量に比べて多くなる。このため、空気の流量の増加を遅らせることによる補機動力の低減効果は、燃料ガスの流量の増加を遅らせた場合より顕著になる。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
100……燃料電池システム、101……燃料電池スタック、102……燃料ガス供給ブロア、103……空気供給ブロア、104……冷却水タンク、105……冷却水ポンプ、106……ラジエータ、107……電流制御部、108……熱交換器、110……制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7