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特許7434154糖尿病および関連する疾患を治療するための医薬的組合せならびに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】糖尿病および関連する疾患を治療するための医薬的組合せならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20240213BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/343
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K36/28
A61K133:00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020528132
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 NZ2018050169
(87)【国際公開番号】W WO2019103629
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2017904756
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】510244891
【氏名又は名称】オタゴ イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘイワード フィリップ マイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】タップス アレクサンダー
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/150074(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/011671(WO,A1)
【文献】特開2008-247839(JP,A)
【文献】Phytotherapy Research,2015年,Vol.29,p.969-977
【文献】Phytomedicine,2014年,Vol.21,p.415-422
【文献】Experimental and Molecular Medicine,2010年,Vol.42, No.9,p.628-638
【文献】Botanical magazine Tokyo,1970年,Vol.83, No.985,p.229-232
【文献】Phytochemistry,1998年,Vol.47, No.6,p.1013-1016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K36/00-36/9068
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の障害の治療において使用するための医薬組成物であって、
ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(BTN)と、
イソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(ILQ)
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
さらに、スルフレチンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(SLF)を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ILQ:BTNの比が約0.4:1~約3:1の重量比である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
SLF:BTNの比が約0.4:1~約5:1の重量比である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記BTN、SLFおよび/またはILQがダリア植物の抽出物として提供される、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抽出物が前記ダリア植物の少なくとも花弁の抽出物である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ダリア植物が、エタノールを含む抽出剤を用いて抽出されたものである、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
糖尿病または、前糖尿病および/またはグルコース調節の障害を治療するための医薬の調製における、
ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(BTN)と、

イソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(ILQ)
の使用。
【請求項9】
さらに、スルフレチンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(SLF)の使用を含む、請求項に記載の使用。
【請求項10】
ILQ:BTNの比が約0.4:1~約3:1の重量比である、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
SLF:BTNの比が約0.4:1~約5:1の重量比である、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記BTN、SLFおよび/またはILQがダリア植物の抽出物として提供される、請求項8~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記抽出物が前記ダリア植物の少なくとも花弁の抽出物である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ダリア植物が、エタノールを含む抽出剤を用いて抽出されたものである、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(BTN)と、
イソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(ILQ)
を含む、抗糖尿病剤。
【請求項16】
さらに、スルフレチンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくはグリコシド、ジグリコシド、マロネートかメチル化誘導体(SLF)を含む、請求項15に記載の抗糖尿病剤。
【請求項17】
ILQ:BTNの比が約0.4:1~約3:1の重量比である、請求項15または16に記載の抗糖尿病剤。
【請求項18】
SLF:BTNの比が約0.4:1~約5:1の重量比である、請求項16に記載の抗糖尿病剤
【請求項19】
前記BTN、SLFおよび/またはILQがダリア植物の抽出物として提供される、請求項15~18のいずれか1項に記載の抗糖尿病剤
【請求項20】
前記抽出物が前記ダリア植物の少なくとも花弁の抽出物である、請求項19に記載の抗糖尿病剤
【請求項21】
前記ダリア植物が、エタノールを含む抽出剤を用いて抽出されたものである、請求項19または20に記載の抗糖尿病剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病および関連する疾患、状態および/または障害を治療するために使用され得るフラボノイドの組合せ、ならびにフラボノイドを使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース代謝は、身体中でグルコースを貯蔵し、放出し、産生しおよび加工する様々な生物学的プロセスを伴う。正常なグルコース代謝の鍵となる特徴は、血液中のグルコースの高度に調節された濃度である。グルコースホメオスタシスに関与する主なホルモンはグルカゴンおよびインスリンである。グルカゴンはα細胞により分泌され、β細胞はプロインスリンを分泌し、プロインスリンは後にインスリンに変換される。インスリン産生はより高い濃度の血中グルコースに応答して増加し、より低い血中グルコースレベルへの複数の経路を誘発する。グルカゴンはインスリンと反対の活性を有する。グルコース代謝に関与する他のホルモンとしては、アミリンおよびインクレチンホルモン、例えばグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が挙げられる。
【0003】
糖尿病は、グルコース代謝に関与する正常な生物学的プロセスに障害がある場合に結果として生じる疾患である。疾患の古典的な原因は、不充分なインスリン産生、または産生されるインスリンに身体が充分に応答しないことのいずれかである。疾患の多くの形態があり、3つの主な種類は1型、2型および妊娠糖尿病である。
【0004】
1型糖尿病は、患者が膵臓中で充分なインスリンを産生できないことにより特徴付けられる。1型糖尿病の発症は、通常、小児期においてである。
【0005】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性の期間により開始し、該期間では、インスリンの機能は血糖に応答して低減する。疾患が進行するにつれて、産生されるインスリンの量が減少することもある。前糖尿病は、正常なグルコース代謝と2型糖尿病との間の異常に上昇したグルコースレベルの状態を記載するために使用される用語である。世界中で7.5億人を超える人々が前糖尿病を有し、例えば、ニュージーランドの成人集団の25%が前糖尿病であると推定される。前糖尿病から2型糖尿病への進行率は1年当たり約10%、生涯にわたり70%である。疾患が疑われる患者において、2型糖尿病は生活様式の要因、例えば、過度の糖消費および運動不足と関連する。
【0006】
妊娠糖尿病は、妊娠の間の女性において現れる疾患の形態である。
【0007】
1980年以来、世界中で2型糖尿病を患う人々の数は4倍に増加し、2030年に5.52億人の推定数までさらに上昇することが予測される。IDF Diabetes Modelは、糖尿病を有する人の総数は4.15億(2015年)から6.42億(2040年)に増加して、世界中で8020億ドルの総年間コストを結果としてもたらすことを予測している。世界の医療費の12パーセントは糖尿病治療に費やされ、2040年までに10人の成人中1人がこの疾患を患うと予測される。この莫大な経済的負担に加えて、管理不良の糖尿病は重篤な合併症およびより短い平均余命に繋がる。現在、2型糖尿病の治療のために利用可能ないくつかの薬物があり、それらのほとんどは血中グルコースレベルを低下させるのに効果的であるが、それらは部分的に、低血糖症、体重増加および心不全のリスク増加などの副作用を有する。
【0008】
したがって、糖尿病ならびに前糖尿病および/またはグルコース調節における食事誘導性障害といった関連する疾患、状態および/または障害のための新たな療法を開発する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(BTN)と、スルフレチンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(SLF)ならびに/またはイソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(ILQ)のいずれかまたは両方との組合せを用いる治療は、食事誘導性の障害といったグルコース調節における障害の効果を逆転させ得ることを見出した。これらの組合せを用いる治療は、したがって、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害の治療において有用であり得る。
【0010】
一態様では、本発明は、BTNならびにSLFおよび/またはILQを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せはダリア(Dahlia)植物の抽出物として提供される。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のBTNならびにSLFおよび/またはILQを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療するための医薬の調製におけるBTNならびにSLFおよび/またはILQの使用を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害の治療において使用するための医薬組成物であって、BTNならびにSLFおよび/またはILQを含む、医薬組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、BTNならびにSLFおよび/またはILQを含む抗糖尿病剤を提供する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のILQを投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療するための医薬の調製におけるILQの使用を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害の治療において使用するための医薬組成物であって、ILQを含む、医薬組成物を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、ILQを含む抗糖尿病剤を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のSLFを投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害を治療するための医薬の調製におけるSLFの使用を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害の治療において使用するための医薬組成物であって、SLFを含む、医薬組成物を提供する。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、SLFを含む抗2型糖尿病および/または前糖尿病剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して、例示に過ぎない実施例によりさらに記載される。
図1図1A~Eは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびにその後のブテイン(A)、イソリキリチゲニン(B)、スルフレチン(C)、1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの混合物(D)およびダリア花弁の抽出物(E)を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおける腹腔内耐糖能試験(ipGTT)の結果のグラフを示す。図1Fは、図1A~Eに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図2図2A~Dは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびにその後のブテイン(A)、1:1のブテインおよびイソリキリチゲニンの組合せ(B)、1:1のブテインおよびスルフレチンの組合せ(C)および1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの混合物(D)を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図2Eは、図2A~Dに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図3図3A~Dは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびにその後のイソリキリチゲニン(A)、スルフレチン(S)、1:1のイソリキリチゲニンおよびスルフレチンの組合せ(C)および1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの混合物(D)を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図3Eは、図3A~Dに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図4図4A~Eは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびにその後ipGTTの1時間前に経口胃管栄養法により異なる濃度(20mg/kg(A)、10mg/kg(B)、3.3mg/kg(C)、1mg/kg(D)または0.33mg/kg(E)体重)において1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンのミックスの混合物を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図4Fは、図4A~Eに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図5図5A~Eは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびにその後ipGTTの1時間前に経口胃管栄養法により異なる濃度(50mg/kg(A)、20mg/kg(B)、10mg/kg(C)、3.3mg/kg(D)または1mg/kg(E)体重)においてブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンを含むダリア植物の抽出物を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図5Fは、図5A~Eに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図6図6A~Eは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびに最後の7日間の12時間毎に1日2回300mg/kg/d(A)、100mg/kg/d(B)、50mg/kg/d(C)、20mg/kg/d(D)および10mg/kg/d(E)において経口投与したメトホルミン(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈、pH7.7)を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図6Fは、図6A~Eに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフ(F)を示す。
図7図7A~Cは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD);(3)4週間の高脂肪食および最後の7日間のメトホルミン(12時間毎に1日2回経口的に100mg/kg/d;A);(4)4週間の高脂肪食ならびにipGTTの1時間前の1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの混合物(ミックス;0.33mg/kg;B)の投与;または(5)4週間の高脂肪食ならびに最後の7日間投与したメトホルミン(12時間毎に1日2回経口的に100mg/kg/d)およびipGTTの1時間前のミックス(0.33mg/kg;C)の投与を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTT試験の結果のグラフを示す。図7Dは、図7A~Cに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図8図8A~Eは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD)または(3)4週間の高脂肪食ならびに1000μg/kg/d(A)、200μg/kg/d(B)、40μg/kg/d(C)、8μg/kg/d(D)および1.6μg/kg/d(E)のプラムリンチド(処置の最後の5日間の12時間毎に1日2回の皮下注射)を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTTの結果のグラフを示す。図8Fは、図8A~Eに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフを示す。
図9図9A~Cは、(1)4週間の高脂肪食(HFD);(2)4週間の低脂肪食(LFD);(3)4週間の高脂肪食および最後の5日間のプラムリンチド(200μg/kg/d、皮下;1日2回;12時間毎;A)を用いた処置;(4)4週間の高脂肪食ならびにipGTTの1時間前の1:1:1のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの混合物(ミックス;0.33mg/kg;B)の投与;または(5)4週間の高脂肪食ならびに最後の5日間皮下に投与したプラムリンチド(200μg/kg/d;1日2回;12時間毎)およびipGTTの1時間前のミックス(0.33mg/kg;C)の経口投与を用いた処置を与えたC57BL/6マウスにおけるipGTT試験の結果のグラフを示す。図9Dは、図9A~Cに示すipGTTの結果についての曲線下面積を比較した棒グラフ(D)を示す。
図10図10A~Fは、4週間HFDを給餌し、かつ経心腔的灌流の1時間前に活性成分(10mg/kg)またはビヒクル(生理食塩水中の5%のEtOH(ビヒクル単独)、もしくはビヒクルおよびインスリン)を経口投与したC57BL/6マウスの免疫組織化学染色した脳切片の画像を示す。図10Aは、ビヒクル単独で処置したLFD給餌マウスの脳切片の画像を示し、図10Bは、インスリンおよびビヒクルで処置したLFD給餌マウスの脳切片の画像を示し、図10Cは、ビヒクル単独で処置したHFD給餌マウスの脳切片の画像を示し、図10Dは、インスリンおよびビヒクルで処置したHFD給餌マウスの脳切片の画像を示し、図10Eは、インスリンならびに1:1:1の重量のブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニンの組合せで処置したHFD給餌マウスの脳切片の画像を示し、図10Fは、インスリンおよびダリア植物の抽出物で処置したHFD給餌マウスの脳切片の画像を示す。弓状核(ARC)(囲った区画)内のリン酸化プロテインキナーゼB(pAKT)免疫応答性細胞の総数を各動物について3つの領域マッチの区画において計数した。
図11図11は、図10の脳切片画像についてARC(囲った区画)内のpAKT免疫応答性細胞の数の棒グラフを示す。
図12図12a~cは、(a、b)実施例1の実験11に記載するインスリン負荷試験からのグルコース濃度対時間のグラフならびに(c)図12aおよび図12bに示すグルコース濃度の曲線下面積(AUC)のグラフを示す。
図13図13は、(A)実施例1の実験12のマウス対象についての経時的な体重のグラフ;(B)図13Aに示す体重データについてのAUC;(C)実施例1の実験12から得られた経時的な血漿グルコース濃度のグラフ;および(D)図13Cに示す体重データについてのAUCを示す。
図14図14A~Dは、(A~C)(A)LFD、(B)HFDまたは(C)HFDおよび抽出物を用いた処置を与えたマウスから得られたグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)免疫応答性細胞の画像;ならびに(D)実施例1の実験13からの画像からのARC(囲った区画)内の細胞数のチャートを示す。
図15図15は、(A)実施例1の実験14にしたがって調製したH&EまたはORO染色細胞の画像;(B)図15Aに示すデータからの各対象群についてのORO染色細胞の割合のグラフ;および(C)実施例1の実験14にしたがって得られたマウス対象の肝臓重量を示す。
図16図16は、経時的なpH7の水性緩衝液中のブテインの溶液のRPLC分析のグラフを示す。このグラフはブテインのスルフレチンへの変換を示す。
図17図17は、市販のELISAにより測定した4週間のLFDまたはHFDのいずれかでのマウスにおけるインスリンレベルを比較したグラフを示す(n=33/群)。
図18図18は、アスター(Aster)頭状花の部分の図解を示す。
図19図19A~Bは、発生の異なるステージにおけるダリア頭状花の写真を示す。図19Aは中央が閉じたまま(閉じた中央)のダリア頭状花を示し、図19Bは満開(開いた中央)のダリア頭状花を示す。
図20図20は、異なる成熟ステージの新鮮なダリアの花の花弁から単離された主な化合物の量のグラフを示す(G1=ブテイングリコシド、G2=イソリキリチゲニングリコシド、S=スルフレチン、B=ブテイン、I=イソリキリチゲニン)。
図21図21は、経口耐糖能試験の間の実施例5の平均化したグルコース濃度の結果のグラフを示す。
図22図22は、図21に示す実施例5のグルコース濃度の結果から決定した曲線下面積(AUC)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、当然ながら変化し得る、医薬組成物、その使用または製造もしくは治療の方法などの特に例示される実施形態に限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される学術用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためのものに過ぎず、限定的であることは意図されないことも理解されるべきである。
【0026】
上掲のものであれ下記のものであれ、本明細書において参照される全ての刊行物、特許および特許出願は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書において言及される刊行物は、刊行物において報告されかつ本発明と組み合わせて使用され得るプロトコールおよび試薬を記載および開示する目的のために参照される。本明細書におけるいずれの記載も、本発明が先行発明を理由としてそのような開示より早いという権利を有しないと認めるものと解されるべきではない。
【0027】
本明細書において特許明細書、他の外部の文献、または他の情報源を参照する場合、これは、概して、本発明の特徴を議論するための文脈を提供する目的のためである。他に特に記載しなければ、そのような外部の文献への参照は、そのような文献、またはそのような情報源が、いかなる権限においても、先行技術であること、または当該技術分野における技術常識の部分を形成することを認めるものと解されるべきではない。
【0028】
「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される形態の少なくとも1つの活性成分を含む組成物に関する。「医薬組成物」という用語は、機能性食品製品(例えば、健康上の利益を提供するサプリメント)として販売されることが意図される組成物を包含し得る。一部の実施形態では、医薬組成物は機能性食品組成物である。
【0029】
「薬学的に許容される」は、成分が、医薬組成物中に含まれる他の成分と適合性であり、かつ投与時または投与後の有害な効果の回避および任意の規制上の考慮に基づいて対象への投与のために好適であることを意味する。
【0030】
「投与する」という用語は、治療すべき疾患(複数可)および/または状態(複数可)を患うまたはそのリスクがある対象に医薬組成物を提供することを指す。
【0031】
「有効量」は、対象に投与される場合に、薬物の量が効果を達成するために提供される充分な量を意味する。治療方法の場合、この効果は、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害の治療であってもよい。したがって、「有効量」は「治療有効量」であってもよい。「治療有効量」は、対象に投与される場合に、活性成分の量が疾患または疾患の症状を治療するために提供される充分な量を意味する。
【0032】
本明細書において使用される場合、「糖尿病」という用語は、インスリン抵抗性および秩序が崩れたグルコース代謝により特徴付けられる疾患に関し、多くの場合、脂質異常症、炎症、網膜症、ニューロパチー、腎症、大血管疾患および認知障害といった合併症が付随する。糖尿病としては、1型、2型および妊娠糖尿病ならびにその症状および/または合併症が挙げられる。1型および2型糖尿病は、典型的にはベータ細胞機能の喪失により特徴付けられる。
【0033】
本明細書において使用される場合、「治療すること」、「治療」、「治療する」などの用語は、対象(例えば、患者)、組織または細胞に影響を与えて、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患もしくは関連症状を完全もしくは部分的に予防し、もしくはその重篤度を低減させるという点で予防的であってもよく、かつ/または疾患の部分的もしくは完全な治癒の点で治療的であってもよい。例えば、糖尿病を「治療すること」への言及は、したがって、(a)疾患の進行を停止させる、例えば、症状もしくは合併症の経時的な悪化を予防すること;(b)糖尿病の効果を緩和もしくは改善すること、すなわち、糖尿病の少なくとも1つの症状もしくは合併症の改善を引き起こすこと;(c)糖尿病の追加の症状もしくは合併症の発生を予防すること;(d)糖尿病もしくは糖尿病と関連する症状もしくは合併症が前糖尿病もしくはインスリン抵抗性を有する対象において起こることを予防すること;および/または(e)疾患を発症するリスクの増加を予防すること、例えば、グルコース投与後の血中グルコースレベルを低減することなどにより、糖尿病のリスク因子の増加を予防することを包含する。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を規定しなければ、複数の指示対象を含むことが留意されるべきである。
【0035】
したがって、例えば、「賦形剤」(an excipient)への言及は、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい、などの意味を含むのである。別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の材料および方法を、本発明を実施または試験するために使用することができるが、好ましい材料および方法がこれより記載される。
【0036】
名詞の後の「(複数可)」という用語は、単数形または複数形、または両方を想定する。
【0037】
「および/または」という用語は、「および」または「または」を意味することができる。
【0038】
他に文脈が必要としなければ、本明細書において言及される全てのパーセンテージは、医薬組成物の重量によるパーセンテージである。
【0039】
他に文脈が必要としなければ、本明細書において言及される全ての量は、医薬組成物の重量による量であることが意図される。
【0040】
本発明の様々な特徴が、ある特定の値、または値の範囲を参照して記載される。これらの値は、様々な適切な測定技術の結果に関することが意図され、したがって、任意の特定の測定技術に本来備わっている誤差の余地を含むものとして解釈されるべきである。本明細書において言及される値の一部は、このばらつきを少なくとも部分的に説明するために「約」という用語により表される。「約」という用語は、値を記載するために使用される場合、その値の±25%、±10%、±5%、±1%または±0.1%以内の量を意味することができる。
【0041】
本明細書において使用される「含む」(comprising)という用語は、「少なくとも部分的にからなる」を意味する。その用語を含む本明細書中の記載を解釈する場合、各記載においてその用語により先行される特徴は全て存在する必要があるが、他の特徴もまた存在することができる。「含む」(comprise)および「含まれる」(comprised)などの関連する用語は同じ方式で解釈されるべきである。
【0042】
医薬組成物
医薬組成物は、ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(BTN)と、スルフレチンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(SLF)ならびに/またはイソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(ILQ)のいずれかまたは両方との組合せを含む。したがって、医薬組成物は、BTNおよびSLF、BTNおよびILQ、またはBTN、SLFおよびILQを含んでもよい。
【0043】
本発明者らは、驚くべきことに、BTNおよびSLF、BTNおよびILQ、またはBTN、SLFおよびILQの組合せを含む医薬組成物はグルコース調節の障害を治療できることを見出した。BTNの非存在下のSLFとILQとの組合せは同じ有効性を有しないこともまた驚くべきことであった。
【0044】
ブテインおよびイソリキリチゲニンはカルコンである。スルフレチンはオーロンであり、一部の条件下においてブテインの環化生成物である(実施例2を参照)。ブテイン、イソリキリチゲニンおよびスルフレチンは、植物の抽出物中に存在するものとして記載されてきた。ブテイン、イソリキリチゲニンおよびスルフレチンの構造を表1に示す。
【表1】
【0045】
本発明者らは、グルコース調節の食事誘導性障害の治療としてのBTN、SLFおよびILQの組合せを研究した。驚くべきことに、本発明者らは、これらの化合物の組合せの一部のみがグルコース調節の食事誘導性障害に対して有効性を示すことを見出した。BTNを含まないILQとSLFとの組合せはこの治療において有効性を欠いていることが見出された。驚くべきことに、これらの活性の組合せはまた、食事のみに誘導されるものではない場合でさえ、グルコース調節の障害に対して有効性を示す。したがって、BTNおよびILQ、BTNおよびSLF、ならびにBTN、SLFおよびILQの組合せが糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害の治療において有効性を有することは驚くべきことである。
【0046】
一部の実施形態では、SLFおよび/またはILQの相対量は、医薬組成物中に存在するBTNの量より多いまたはそれに等しくてもよい。SLFの量は、医薬組成物中に存在するBTNの量の1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3倍またはより多くの倍数であってもよい。ILQの量は、医薬組成物中に存在するBTNの量の1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍であってもよい。SLFおよびILQを合わせた量は、医薬組成物中に存在するBTNの量の1、1.05または1.1であってもよい。
【0047】
一部の実施形態では、SLFまたはILQの相対量は、医薬組成物中に存在するBTNの量より少なくてもよい。SLFの量は、医薬組成物中に存在するBTNの量の0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9倍であってもよい。BTNの量は、医薬組成物中に存在するSLFの量の1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8倍またはより多くの倍数であってもよい。ILQの量は、医薬組成物中に存在するBTNの量の0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9倍であってもよい。BTNの量は、医薬組成物中に存在するILQの量の1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7倍またはより多くの倍数であってもよい。
【0048】
SLF対BTNの重量比は、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1 0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3:1、3.1:1、3.2:1、3.3:1、3.4:1、3.5:1、3.6:1、3.7:1、3.8:1、3.9:1、4:1、4.1:1、4.2:1、4.3:1、4.4:1、4.5:1、4.6:1、4.7:1、4.8:1、4.9:1または5:1であってもよい。SLF対BTNの重量比は、これらの重量比のいずれかの間であってもよく、例えば、SLF対BTNの重量比は、1:1~5:1、1:1~2.5:1または1.5:1~2.5:1であってもよい。重量比は、代替的に、単一の数値として表されてもよく、該数値は、SLFの量をBTNの量で割ることにより算出されてもよい。このようにして表されるSLF対BTNの量は、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8. 0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5またはより大きくてもよい。この文脈においてより大きい重量比は、医薬組成物中に存在するBTNと比較してより多い量のSLFを意味する。
【0049】
ILQ対BTNの重量比は、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、または2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1または3:1であってもよい。ILQ対BTNの重量比は、これらの重量比のいずれかの間であってもよく、例えば、ILQ対BTNの重量比は、1:1~3:1、1:1~1.8:1、0.5:1~0.8:1または1.2:1~1.8:1であってもよい。重量比は、代替的に、単一の数値として表されてもよく、該数値は、ILQの量をBTNの量で割ることにより算出されてもよい。このようにして表されるILQ対BTNの量は、0.4、0.5、0.6、0.8. 0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3またはより大きくてもよい。この文脈において、より大きい重量比は、BTNと比較してより多い量のILQを意味する。
【0050】
BTN、SLFおよびILQの組合せを含む実施形態では、SLF:ILQ:BTNの比は、SLF:BTNおよびILQ:BTNの上記の比の任意の組合せに基づいて決定されてもよく、例えば、SLF:BTN:ILQの比は、1:1:1、1:1.8:1.1、1:1.8:1、1:2:1、1:2:1.1、1.1:1.8:1、5:3:1、2.5:2:1、2.5:1.4:1、2:2:1、1.4:1:1.1、2:1:1.6または2:1.4:1であってもよい。SLF:ILQ:BTNの比は、これらの重量比のいずれかの間であってもよく、例えば、BTN:SLF:ILQの重量比は、1:1:1~5:3:1、1:1:1~2.5:2:1、1:1:1~2:1:1、1:1:1~1:2:1、1:1:1~1:1.5:1、1:1:1~2:1.4:1、1:1:1~2:1:1.6または1.1:1.1:1~5:3:1であってもよい。
【0051】
BTN、SLFおよびILQの組合せを含む医薬組成物の一部の実施形態では、BTNの量は、医薬組成物中に存在するSLFまたはILQの量より多いまたはそれに等しい。これらの実施形態では、BTN:SLFの比は、約1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1またはより大きくてもよい。BTN:SLFの比は、これらの比のいずれかからこれらの比のいずれか他のものまでであってもよく、例えば、約1.1:1~約5:1または約1.5:1~約2:1であってもよい。これらの実施形態では、BTN:ILQの比は、約1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1またはより大きくてもよい。BTN:ILQの比は、これらの比のいずれかからこれらの比のいずれか他のものまでであってもよく、例えば、約1.1:1~約5:1または約1.8:1~約2.5:1であってもよい。
【0052】
一部の実施形態では、BTN、SLFおよびILQの組合せを含む医薬組成物において、SLFの量は、医薬組成物中に存在するILQの量より多いまたはそれに等しい。BTN、SLFおよびILQの組合せを含む医薬組成物の他の実施形態では、ILQの量は、医薬組成物中に存在するSLFの量より多いまたはそれに等しい。BTN、SLFおよびILQを含む医薬組成物の一部の実施形態では、SLFおよびILQの量は均衡が取られており、例えば、組成物の総重量に基づいて互いに約5%または10%以内である。BTN、SLFおよびILQの組合せを含む実施形態では、SLF:ILQの重量比は、約0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1または5:1であってもよい。SLF:ILQの比は、これらの重量比のいずれかの間であってもよく、例えば、SLF:ILQの重量比は、0.5:1~5:1、0.6:1~約3:1または0.8:1~1:1であってもよい。重量比は、代替的に、単一の数値として表されてもよく、該数値は、SLFの量をILQの量で割ることにより算出されてもよい。このようにして表されるSLF対ILQの量は、0.5、0.6、0.8. 0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3またはより大きくてもよい。この文脈において、より大きい重量比は、ILQと比較してより多い量のSLFを意味する。
【0053】
医薬組成物は、少なくとも約0.001wt%、約0.005wt%、約0.01wt% 約0.05wt%、約0.1wt%、約0.15wt%、約0.5wt%、約1wt%、約2wt%、約3wt%、約3.3wt%、約4wt%、約5wt%、約6wt%、約6.7wt%、約7wt%、約8wt%、約9wt%または約10wt%の量でBTNを含んでもよい。医薬組成物中に存在するBTNの最大量は、最大で約99.999wt%、約99wt%、約98wt%、約70wt%、約50wt%、約30wt%、約25wt%、約20wt%、約15wt%、約10wt%、約5wt%、約4wt%、約3wt%または約2wt%であってもよい。医薬組成物は、これらの最小量のいずれかからこれらの最大量のいずれかまでの量でBTNを含んでもよく、例えば、医薬組成物は、約0.001wt%~約99wt%、約1wt%~約99wt%、約1wt%~約98wt%、約1wt%~約70wt%、約1wt%~約50wt%、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約2wt%~約20wt%、約5wt%~約20wt%、約5wt%~約15wt%、約0.001wt%~約5wt%、約0.01wt%~約5wt%、約0.1wt%~約5wt%、または約0.1wt%~約2wt%の量でBTNを含んでもよい。
【0054】
医薬組成物は、少なくとも約0.001wt%、約0.005wt%、約0.01wt%、約0.05wt%、約0.1wt%、約0.5wt%、約1wt%、約2wt%、約3wt%、約3.3wt%、約4wt%、約5wt%、約6wt%、約6.7wt%、約7wt%、約8wt%、約9wt%または約10wt%の量でSLFを含んでもよい。組成物中に存在するSLFの最大量は、最大で約99.999wt%、約99wt%、約98wt%、約70wt%、約50wt%、約30wt%、約25wt%、約20wt%、約15wt%、約10wt%、約5wt%、約4wt%、約3wt%、約2wt%、約1.5wt%または約1wt%であってもよい。医薬組成物は、これらの最小量のいずれかからこれらの最大量のいずれかまでの量でSLFを含んでもよく、例えば、医薬組成物は、約0.001wt%~約99wt%、約1wt%~約99wt%、約1wt%~約98wt%、約1wt%~約70wt%、約1wt%~約50wt%、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約2wt%~約20wt%、約5wt%~約20wt%、約5wt%~約15wt%、約0.001wt%~約5wt%、約0.01wt%~約5wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.1wt%~約2wt%または約0.1wt%~約1wt%の量でSLFを含んでもよい。
【0055】
医薬組成物は、少なくとも約0.001wt%、約0.005wt%、約0.01wt% 約0.05wt%、約0.1wt%、約0.5wt%、約1wt%、約2wt%、約3wt%、約3.3wt%、約4wt%、約5wt%、約6wt%、約6.7wt%、約7wt%、約8wt%、約9wt%または約10wt%の量でILQを含んでもよい。医薬組成物中に存在するILQの最大量は、最大で約99.999wt%、約99wt%、約98wt%、約70wt%、約50wt%、約30wt%、約25wt%、約20wt%、約15wt%、約10wt%、約5wt%、約4wt%、約3wt%、約2wt%、約1.5wt%または約1wt%であってもよい。医薬組成物は、これらの最小量のいずれかからこれらの最大量のいずれかまでの量でILQを含んでもよく、例えば、医薬組成物は、約0.001wt%~約99wt%、約1wt%~約99wt%、約1wt%~約98wt%、約1wt%~約70wt%、約1wt%~約50wt%、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約2wt%~約20wt%、約5wt%~約20wt%、約5wt%~約15wt%、約0.001wt%~約5wt%、約0.01wt%~約5wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.1wt%~約2wt%または約0.1wt%~約1.5wt%の量でILQを含んでもよい。
【0056】
一部の実施形態では、医薬組成物は、任意選択的に、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。賦形剤は、担体、希釈剤、アジュバント、安定化剤または他の賦形剤、または任意のその組合せであってもよい。
【0057】
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は安定化剤であり、例えば、液体の形態、例えば、液体投与形態または医薬組成物の最終形態への中間体として調製された液体形態である場合にBTNのSLFへの変換を予防することができる安定化剤である。安定化剤は、天然または非天然(例えば、合成もしくは半合成)であってもよい。好適な安定化剤としては、極性有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシドならびにアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(iso-およびtert-プロパノールを含む)、ブタノール(iso-、sec-およびtert-ブタノールを含む);pH<4の緩衝液(例えば、水性緩衝液、例えば、pH4もしくはそれ未満のリン酸緩衝生理食塩水(PBS));またはその組合せが挙げられる。
【0058】
医薬組成物は、例えば、医薬配合物の技術分野において周知のものなどの技術にしたがって、従来の固体または液体ビヒクルまたは希釈剤の他に、所望の投与モードにとって適切な種類の医薬品添加物(例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定化剤、香料など)を用いることにより、配合されてもよい(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkinsを参照)。薬学的に許容される担体は、米国薬局方/国民医薬品集(USP/NF)、英国薬局方(BP)、欧州薬局方(EP)、日本薬局方(JP)または中国薬局方(ChP)に含まれる任意の担体であってもよい。一部の実施形態では、賦形剤は非天然(例えば、合成により製造されたもの)であってもよい。
【0059】
医薬組成物は、任意の好適な投与経路により投与されてもよく、したがって、任意のそのような投与経路のために好適な形態で配合されてもよい。例えば、投与経路は、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、経膣もしくは非経口(筋肉内、皮下、腹腔内および静脈内を含む)投与または吸入もしくは吹送による投与であってもよい。
【0060】
医薬組成物は、単位投与形態において調製されてもよい。そのような形態において、医薬組成物は、適切な量の活性成分(複数可)を含有する単位用量にさらに分割される。単位投与形態は、包装された調製物であり得、包装は別個の量の調製物を含有し得る。調製物は、固体、例えば、小包化された錠剤、カプセル(例えば、充填カプセル)、ロゼンジ、バイアルもしくはアンプル中の粉末、または液体、例えば、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、もしくはそれを充填したカプセルであってもよい。また、単位投与形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ自体であり得、または包装された形態の適切な数のこれらのいずれかであり得る。
【0061】
単位投与形態として調製された場合を含む、医薬組成物は、追加の活性成分(複数可)ありまたはなしで、従来の割合で従来の成分を含んでもよく、そのような単位投与形態は、用いられることを意図する1日当たりの投与量範囲に相応しい任意の好適な有効量の活性成分を含有してもよい。
【0062】
本明細書に記載される医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐剤、ロゼンジおよび分注可能な顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、または被包材料としても作用し得る1つまたは複数の物質であり得る。
【0063】
好適な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンなど)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融解性ワックス、ココアバター、微結晶セルロース(MCC)、ケイ化微結晶セルロース、粉末セルロース、アルギネート、ポリデキストロース、硫酸カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム二水和物、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリレートおよびメタクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アカシアガムなどが挙げられる。錠剤、粉末、カプセル、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与のために好適な固体形態として使用され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、活性成分(複数可)および担体、例えばMCCを含む。
【0064】
液体形態の調製物としては、溶液、分散液、懸濁液、およびエマルション、例えば、水または水-プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として配合され得る。液体調製物は、舌下投与を伴う実施形態のために好ましい。
【0065】
無菌の液体形態の医薬組成物としては、無菌溶液、懸濁液、エマルション、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分(複数可)は、薬学的に許容される担体、例えば、無菌水、無菌有機溶媒または両方の混合物中に懸濁されてもよい。
【0066】
水性溶液は、活性成分(複数可)を水中に溶解させ、所望により好適な着色剤、香料、安定化剤および濃化剤を加えることにより調製され得る。水性懸濁液は、微細に分割された活性成分(複数可)を粘性材料、例えば、天然もしくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または他の周知の懸濁化剤と共に水中に分散させることにより作製され得る。
【0067】
一部の実施形態では、医薬組成物の投与は経口投与である。医薬組成物は、任意の好適な形態での経口投与のために配合されてもよい。例えば、経口投与用の医薬組成物は、以下の形態の1つまたは複数において配合されてもよい:錠剤、トローチ、粉末、顆粒、ロゼンジ、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、シロップ、ウェーハまたは溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、シロップ、粉末、顆粒もしくはその組合せを充填したカプセル。典型的には、医薬組成物の好適な経口形態は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0068】
錠剤、トローチ、丸剤、ロゼンジ、カプセルなどはまた、以下に列記されるような成分のいずれかを含有してもよい:結合剤、例えば、アカシアガム、コーンスターチもしくはゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム、微結晶セルロース(MCC)、ケイ化微結晶セルロースもしくは粉末セルロース;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、アルギネート、ポリビニルピロリドン(PVP)など;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;甘味剤、例えば、スクロース、ラクトースもしくはサッカリンが加えられてもよく、または、着香剤、例えば、ペパーミント、冬緑油、もしくサクランボ香料。投与単位形態がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて液体担体を含有してもよい。
【0069】
一部の実施形態では、投与単位形態はカプセルである。カプセルを形成するために、典型的には、活性成分(複数可)を本明細書に記載される賦形剤(例えば、担体)の1つまたは複数と合わせて固体または液体配合物を得、それを次にカプセルシェル内に入れる。当該技術分野において公知の任意の好適なカプセルシェルが使用されてもよく、該カプセルシェルとしては、ハードおよびソフトカプセルシェルが挙げられる。好適なハードカプセルシェルは、ゼラチン、HPMC、デンプン、プルランおよび/またはポリビニルアセテート(PVA)を含んでもよい。好適なソフトカプセルは、ポリオール(例えば、グリセリンまたはソルビトール)などの濃化剤を用いて濃化されたゼラチンを含んでもよい。上記のように、カプセルシェルは、本明細書に記載される以下の投与形態のいずれかを用いて充填されてもよい:溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、シロップ、粉末、顆粒またはその組合せ。カプセルが固体投与形態を用いて充填される場合、それは、充填の前に乾燥されてもよい。一部の実施形態では、固体投与形態は、カプセルシェルの充填前にフリーズドライされる。代替的に、液体賦形剤をそれがなければ乾燥した固体投与形態に加えて、湿った投与形態、例えば、顆粒、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシルまたはシロップを提供してもよい。
【0070】
様々な他の材料が、コーティングとしてまたはそれ以外に投与単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、シェラック、糖または両方を用いてコーティングされてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性成分(複数可)、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、サクランボまたはオレンジ香料などの色素および香料を含有してもよい。当然、任意の投与単位形態の調製において使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、かつ用いられる量において実質的に非毒性であるべきである。加えて、活性成分(複数可)は、腸の特定の領域への活性成分(複数可)の特異的な送達を可能とするものといった、持続放出調製物および配合物に組み込まれてもよい。
【0071】
経口および/または舌下投与などのための液体形態の調製物に使用の直前に変換されることが意図される固体形態の調製物もまた含まれる。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液、およびエマルションが挙げられる。これらの調製物は、活性成分(複数可)に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝液、人工および天然甘味剤、分散剤、濃化剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0072】
鼻腔内配合物といった、気道への投与を目的とする配合物において、医薬組成物は、例えば5~10ミクロンまたはそれ未満のオーダーの小粒子サイズを有してもよい。そのような粒子サイズは、当該技術分野において公知の手段、例えば微粒子化により得られてもよい。
【0073】
気道への投与は、エアロゾル配合物により達成されてもよく、エアロゾル配合物では、活性成分(複数可)は、好適な噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体を用いて加圧パック中で提供される。
【0074】
エアロゾルはまた、好都合には、界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量は、計量弁の提供により制御されてもよい。
【0075】
代替的に、活性成分(複数可)は、乾燥粉末、例えば、好適な粉末基剤、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP)中の活性成分(複数可)の粉末ミックスの形態で提供されてもよい。粉末形態の医薬組成物は、単位用量形態、例えば、例えばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジ、またはブリスターパック中で提供されてもよい。
【0076】
スプレーの場合、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプにより達成されてもよい。そのようなスプレーのために、活性成分(複数可)は、シクロデキストリンを用いて被包されてもよく、または、鼻粘膜中の送達および保持を増進することが期待される他の剤と共に配合されてもよい。
【0077】
口腔内の局所投与(例えば、舌下投与)のために好適な配合物としては、本明細書に記載される任意の液体配合物が挙げられ、好ましくは、ドロッパーまたはシリンジによる投与のために好適な粘度を有する液体配合物;香料基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分(複数可)を含むロゼンジ;不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア中に活性成分(複数可)を含むパステル剤;ならびに好適な液体担体中に活性成分(複数可)を含むマウスウォッシュである。
【0078】
鼻腔への投与のために、溶液または懸濁液は、従来の手段、例えば、ドロッパー、ピペットまたはスプレーを用いる手段により、鼻腔に直接的に適用されてもよい。配合物は、単回または複数回用量形態において提供されてもよい。ドロッパーまたはピペットの後者の場合、これは、対象が適切な予め決定された体積の溶液または懸濁液を投与することにより達成されてもよい。
【0079】
表皮への局所投与のために、活性成分(複数可)は、軟膏、クリームもしくはローションとして、または経皮パッチとして配合されてもよい。軟膏およびクリームは、例えば、好適な濃化剤および/またはゲル化剤の添加と共に、水性または油性基剤と共に配合されてもよい。ローションは、水性または油性基剤と共に配合されてもよく、一般にはまた、1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、濃化剤、または着色剤を含有する。
【0080】
医薬組成物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入による)のために配合されてもよく、アンプル、事前充填シリンジ、小体積注入において単位用量形態で、または任意選択的に防腐剤の添加と共に複数用量容器において提供されてもよい。医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合剤を含有してもよい。代替的に、活性成分は、好適なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質非含有水を用いて使用前に構成するために、無菌固体の無菌単離または溶液からの凍結乾燥により得られる粉末形態であってもよい。
【0081】
非経口投与用の医薬組成物はまた、投与の容易さおよび投与量の均一性のために単位投与形態において提供されてもよい。本明細書において使用される単位投与形態は、治療される対照のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬的賦形剤と組み合わせて所望の治療効果を生成するために算出された予め決定された量の活性材料を含有する。単位投与形態のための仕様は、(a)活性成分(複数可)の特有の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)身体の健康が損なわれた疾患状態を有する生きた対象の治療のためのそのような活性成分(複数可)の配合の当該技術分野における本来的な制限により定められ、これらに直接的に依存する。
【0082】
注射での使用のために好適な投与形態としては、無菌注射溶液または分散液、および無菌注射溶液の即席調製のための無菌粉末が挙げられる。それらは、製造および貯蔵の条件下において安定であるべきであり、酸化作用および細菌または真菌などの微生物の汚染作用から保護されてもよい。
【0083】
注射溶液または分散液のための溶媒または分散媒体は、従来の溶媒または担体系のいずれかを含有してもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、好適なこれらの混合物、および植物油を含有してもよい。
【0084】
注射での使用のために好適な投与形態は、静脈内、筋肉内、脳内、髄腔内、腹腔内、硬膜外の注射または注入といった任意の適切な経路により送達されてもよい。
【0085】
無菌注射溶液は、必要に応じて、上記に列記したものなどの様々な他の成分と共に、適切な担体中に必要とされる量の活性成分を組み込んだ後、滅菌を行うことにより調製される。概して、分散液は、基本的な分散媒体および上記に列記したものからの必要とされる他の成分を含有する無菌のビヒクル中に様々な滅菌された活性成分を組み込むことにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、活性成分および任意の追加の所望の成分の以前に滅菌された懸濁液の真空乾燥または凍結乾燥である。
【0086】
一部の実施形態では、医薬組成物は、食品製品の形態において提供される。好適な食品製品としては、焼成食品といった固形食品製品および飲料などの液体食品製品が挙げられる。活性成分(複数可)は、製造の間に食品製品中に組み込まれてもよく、または既存の製品に加えられてもよい。したがって、本明細書に開示される食品製品は、BTNおよびSLFおよび/またはILQおよび少なくとも1つの一般に安全と認められる(GRAS)成分を含んでもよい。GRAS成分は、米国食品医薬品局(FDA)により維持されるGRASデータベース中に含まれる任意の成分であってもよい。
【0087】
任意の投与経路のために、治療的に有用な医薬組成物中の活性成分(複数可)の量は、好適な投与量が得られる充分なものであるべきである。したがって、活性成分(複数可)は、好ましくは、有効量において提供される。
【0088】
薬学的に許容される担体および/または希釈剤としては、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0089】
所望の場合、活性成分(複数可)の持続放出を与えるように適合された配合物が用いられてもよい。
【0090】
本発明の実施は、そうでないことを指し示さなければ、当該分野の技術的範囲内の従来の製薬および/または医療技術を用いる。そのような技術は当業者に周知であり、文献中に充分に説明されている。
【0091】
ダリア抽出物
BTN、SLFおよびILQは、化合物の精製形態から合わせられてもよく、化合物の精製形態は、天然の供給源からの抽出後に精製されたものであってもよく、または合成もしくは半合成により製造されたものであってもよい。ブテイン(Sigma)、イソリキリチゲニン(AK Scientific)およびスルフレチン(BBP)は市販されている。BTN、SLFおよびILQを製造するための当該技術分野において公知の任意の手段が想定され、例えば、SLFはBTNの酸化的環化により得られてもよい(例えば、実施例2を参照)。
【0092】
本発明者らは、ダリア植物の抽出物はBTNとSLFおよび/またはILQとの組合せを提供できることを見出した。これらの抽出物の活性は、1:1:1のSLF:ILQ:BTNを含む医薬組成物の活性と同等であることが示される(実施例1;実験4および5を参照)。
【0093】
抽出物中のBTN、SLFおよびILQの相対量は、液体クロマトグラフィー(LC)などの当該技術分野における標準技術を使用して決定されてもよい。LCは、UV検出を伴う逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)または質量分析と連結させたLC(LC-MS)であってもよい。RPLCは、20℃においてC18カラム上で、Agilent OpenLabを用いて制御されるAgilent(登録商標)HP1100を使用して、好ましくは、共に0.1体積%のギ酸を含む、水(HO)中のアセトニトリル(MeCN)の移動相を使用して、2×4mm C18ガードカラムと共にPhenomenex Luna ODS(3)5μm 100Å 150×3mmを使用して、行われてもよい。UV検出は、206nm、262nm、348nmおよび382nmにおいて実行されてもよく、UVスペクトルは、Agilent(登録商標)ダイオードアレイ検出器を使用して190nm~600nmにおいて記録されてもよい。LC-MSは、20℃においてC18カラム上で、Dionex Ultimate 3000 HPLCシステムにより、好ましくは、共に0.1体積%のギ酸を含む、水(HO)中のアセトニトリル(MeCN)の移動相を使用して、2×4mm C18ガードカラムと共にPhenomenex Luna ODS(3)5μm 100Å 150×3mmにより、行われてもよい。MS検出は、Bionex Ultimate 3000 HPLCに連結させたBruker Micro-TOF-Q質量分光計においてエレクトロスプレーイオン化(ESI)供給源を使用して陽イオン質量スペクトルとして得られてもよい。
【0094】
ダリア属(キク科)は、多くの場合にダリア・バリアビリス(Dahlia variabilis)と呼ばれる、その様々な栽培形態で最もよく知られる。様々なダリア変種のための簡便な命名上の慣習は、ダリア「変種名」である。中央および南アメリカからの天然のダリア種は、異なる構造クラスの、および様々なグリコシド共役体としての、多様なフラボノイドを含有する。任意のダリア変種の抽出物が使用されてもよく、該抽出物としては、ダリア「Ruskin Diane」、ダリア「Paroa glow」、ダリア「Eastwood moonlight」、ダリア「Megan」、ダリア「Trengrove millennium」、ダリア「Highward cliff」およびダリア「Hamari accord」の抽出物が挙げられる。
【0095】
抽出物は、ILQおよび/またはBTNを含むダリア植物の任意の部分から形成されてもよい。抽出物を形成するために使用される植物部分がSLFを含む必要はなく、その理由は、BTNの部分は、別々のステップとしてまたは抽出プロセスの間に行われてもよい酸化的環化によりSLFに変換され得るからである。BTN、SLFおよびILQのそれぞれは黄色の色素沈着を提供する。抽出物は、黄色の色素沈着を含むダリア植物の任意の部分から形成されてもよい。BTN、SLFおよびILQはダリア植物の花弁中に最も濃縮していることが見出されている。したがって、一部の実施形態では、抽出物はダリア植物の花弁から形成される。ダリアの花は、異なる種類の花弁を含み(図14および図15を参照)、花の中央に位置する円盤状花弁および花の中央の周囲に位置する放射状花弁を有する。実験は、BTN、SLFおよびILQの濃度は全ての花弁種において実質的に類似であることを示した。抽出物は、放射状花弁、円盤状花弁またはその組合せといった任意のダリア花弁から調製されてもよい。一部の実施形態では、抽出物は、ダリア植物の少なくとも放射状花弁から形成される。放射状花弁の抽出が好ましく、その理由は、花の中央部分(円盤状花弁を含む)を「叩く」ことによる放射状花弁の回収を可能とするからである。この回収技術は、花弁を手で摘む必要性を低減するので、加工コストを低減する。
【0096】
一部の実施形態では、抽出物は、ダリア植物の花全体から形成される。他の実施形態では、抽出物は、少なくとも花弁ならびに花の1つまたは複数の他の部分、例えば、雄ずい、心皮および子房を含む花の部分から形成される。
【0097】
一部の実施形態では、抽出物は、花弁、およびダリア植物の1つもしくは複数の他の部分から形成されてもよく、該部分は、種子、根、葉、茎、がく、鱗茎、塊茎、その部分、もしくはその組合せから選択されてもよく、または抽出物は植物全体から形成されてもよい。がく、葉および茎といった、ダリア植物の一部の部分は有意な量のBTN、SLFおよび/またはILQを含まないことが見出されているが、これらの植物部分は、抽出前の除去と関連するコストを回避するために抽出物を形成するために使用されてもよい。
【0098】
ダリア植物は、比較的高濃度のBTN、SLFおよびILQを含む抽出物を提供することができ、それにより抽出物は、コスト効果の高いものとなり、かつこれらの活性成分の高度に適合性の資源となる。ダリア植物中に存在するBTN、SLFおよびILQの濃度は回収前に植物が受ける多数の環境要因に依存し得ることが見出されており、該環境要因としては、UV曝露、1日当たりの光曝露の総量(すなわち、光周期)、空気の温度、土壌の温度、土壌の種類および利用可能な栄養分濃度が挙げられる。一部の実施形態では、抽出物を形成するために使用されるダリア植物は、ニュージーランドのサウスランドにおいて経験される条件と類似の環境条件に曝露されたものである。
【0099】
BTN、SLFおよび/またはILQの最も高い濃度はダリア植物の花弁中に見出され得るので、抽出物は、発生の開花ステージにある時のダリア植物から形成されてもよい。抽出物をダリア植物の発生の異なるステージにおいて解析した。活性成分(複数可)の濃度は、植物が満開にあるまたは満開に近付いているが、中央の花が露出されておらず、かつ花が生殖的成熟に達していない時に最も高いことが見出された(実施例4および図14~16を参照)。したがって、一部の実施形態では、抽出物は、植物が満開にあるまたは満開に近付いている時のかつ生殖的成熟に達する前のダリア植物から形成される。
【0100】
ダリアの花の抽出物中に同定される主なフラボノイドとしては、ブテイン、イソリキリチゲニン、スルフレチン、アピゲニン、ルテオリン、およびその誘導体が挙げられる。一部の実施形態では、BTN、SLFおよびILQに加えて、医薬組成物は、アピゲニン、その誘導体もしくはその薬学的に許容される塩、および/またはルテオリン、その誘導体もしくはその薬学的に許容される塩を含んでもよい。
【0101】
本明細書において使用されるブテイン、スルフレチンおよびイソリキリチゲニン(および任意の他の天然生成物)への言及は、関連する化合物ならびにその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/または誘導体を含む。
【0102】
これらの化合物の誘導体としては、グリコシド、ジグリコシド、マロネートおよびメチル化誘導体が挙げられる。これらの誘導体は、典型的には、フェノール酸素基の1つまたは複数において形成される。ダリア抽出物中に存在することが示されている特定の誘導体は、ブテイン4’-O-β-グルコピラノシド、イソリキリチゲニン4’-O-β-グルコピラノシドおよび4-メトキシブテインを含む。そのような誘導体は、加水分解を受けやすいことが示されており、したがって、本発明の医薬組成物のための別の化合物の量に対して1つの化合物およびその誘導体の全相対比率を比較することが適切である。したがって、「BTN」への言及は、ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体を含み、「SLF」への言及は、スルフレチンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体を含み、「ILQ」への言及は、イソリキリチゲニンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体を含む。
【0103】
「互変異性体」は、化合物の別の構造異性体と平衡にある化合物の構造異性体である。この平衡は、典型的には、従来技術によっては不可能な互変異性を呈する化合物の1つの互変異性体のみを単離させる熱力学により推進される。本発明の任意の化合物が互変異性を呈する限り、本発明は、BTN、SLFおよびILQといった様々な化合物およびその誘導体の全ての互変異性体を含むことが意図される。
【0104】
活性成分(複数可)は、非溶媒和形態の他に、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態において存在してもよい。活性成分(複数可)の溶媒和形態もまた本明細書に開示されると考えられる。溶媒和物は、化学量論量または非化学量論量の溶媒を含有する。水和物は、溶媒が水である場合に形成される。アルコラートは、溶媒がアルコールである場合に形成される。一般に、溶媒和形態は、本明細書において提供される医薬組成物および方法の目的のために非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0105】
活性成分(複数可)はまた、薬学的に許容される塩として提供されてもよい。薬学的に許容される塩の例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容される陽イオンの塩が挙げられる。塩は、従来の手段、例えば、フラボノイドのフェノール部分の1つまたは複数を、無機および有機塩基といった適切な塩基の1つまたは複数の同等物と反応させることにより、形成されてもよい。
【0106】
薬学的に許容される塩への言及は、関連する化合物の塩形態の溶媒付加形態を含むことが理解されるべきである。
【0107】
実施例2および図16は、pH7の緩衝液およびエタノール中に懸濁された場合に酸化性条件下においてブテインをスルフレチンに変換できることを示す。この分子内環化は、ブテインのフェニル環上のカルボニル基に対してオルトのフェノールが、ブテインのカルボニル基のsp混成アルファ炭素と共に環化してスルフレチンのオーロン6,5-二環式環を形成する場合に起こる。図16は、ブテインのエタノール(EtOH)またはジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれかの溶液が室温で水性緩衝液(pH7)を用いて希釈された場合のブテインのスルフレチンへの経時的な線形(0次速度論)変換を示す。抽出後のこの観察される環化に起因して、一部の実施形態では、抽出物中に存在するスルフレチンの量は非天然量である。スルフレチンの非天然量は、ブテインからの変換により得られてもよい。加えて、植物中のBTNおよびILQの大部分は、ブテイングリコシドおよびイソリキリチゲニングリコシドの形態において存在すると考えられる。したがって、一部の実施形態では、医薬組成物は、非天然量の脱グリコシド化ブテインおよび/または脱グリコシド化イソリキリチゲニンを含む。
【0108】
ダリア植物の抽出物は、当該技術分野において公知の任意の手段により調製されてもよい。抽出物の医薬組成は、選択される植物材料、植物変種、その生育条件および抽出方法に依存して変化する。
【0109】
一部の実施形態では、抽出物は、ダリア植物の1つまたは複数の部分を抽出剤と接触させることにより形成される。当該技術分野において公知の任意の好適な抽出剤が使用されてもよく、該抽出剤としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールなど)、または極性有機溶媒(例えば、酢酸エチル、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシドなど)、またはその組合せが挙げられる。一部の実施形態では、抽出剤は、水または緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)などの担体と合わせられてもよい。一部の実施形態では、抽出物は、ダリア植物の1つまたは複数の部分を、エタノールなどのアルコール、および任意選択的に1つまたは複数の担体、好ましくは水(例えば、1:1のアルコール:水の比)を含む抽出剤と接触させることにより形成されてもよい。抽出剤は、所望の化合物を抽出するために充分な期間にわたり植物材料との接触状態に維持される。一部の実施形態では、抽出剤は、少なくとも約0.5時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間またはより長い時間にわたり植物材料との接触状態に維持される。実験は、ダリア「Ruskin Diane」から得られた凍結乾燥した花弁の抽出において、最適な抽出時間は約2時間であることを示した。最適な抽出時間は、抽出される植物材料(例えば、花弁、花全体など)の性質、植物材料が新鮮なものであるのかそれとも乾燥したものであるのか、選択される抽出剤、および抽出条件といった様々な要因に依存して変化し得ることが理解されるであろう。抽出は、高温(例えば、50℃より高い、好ましくは、約90℃または約70℃以下)、周囲温度(例えば、約20~25℃)、または低温(例えば、約5℃未満)において実行されてもよい。
【0110】
抽出は、酸素の存在下または非存在下において行われてもよい。例えば、抽出は、酸素の存在下で行われてもよく、酸素は、BTNのSLFへの変換を補助すると考えられる。酸素を除外する抽出は、植物材料との接触前の抽出剤の任意選択のスパージングと共に、窒素雰囲気下で行われてもよい。そのような実施形態では、抽出は、抽出物へのSLFの添加または抽出物を酸化性条件に曝露してBTNの部分をSLFに変換させることをさらに含んでもよい。好適な酸化性条件としては、抽出物を水性緩衝液(例えば、pH7の水性緩衝液)の存在下で酸素に曝露することまたは酸化剤を加えることが挙げられる。
【0111】
酸素の存在下でのまたは酸化剤を加えるステップを含む植物材料の抽出は、酸化性条件下において実行される。そのような条件は、植物中のBTNの部分のSLFへの変換を補助し得る。したがって、ダリア植物の抽出物を形成する方法であって、ダリア植物の少なくとも花弁を酸化性条件下で抽出剤と接触させることを含む、方法もまた提供される。
【0112】
抽出剤は、医薬組成物へのダリア抽出物の組込みの前に完全もしくは部分的に除去されてもよく、または、それは担体として医薬組成物中に含まれてもよい。抽出剤は、任意選択的に減圧下(例えば、真空下)において、抽出物を加熱することにより除去されてもよい。より揮発性の植物代謝物の一部もまた抽出剤を用いて除去されてもよいことが理解されるであろう。したがって、一部の実施形態では、抽出剤の除去は、抽出物中の二次代謝物(例えば、フラボノイド)の濃度を濃縮してもよい。一部の実施形態では、抽出物は、粒子状物質を除去するために濾過され、該濾過は、例えば、抽出物を濾紙、細かい篩もしくはスクリーン(例えば、粒子状物質のサイズに依存して5μmまたは最大0.5mmの孔径を有する篩もしくはスクリーン)に通すことによりおよび/または遠心分離により行われる。抽出剤の少なくとも一部分の除去後、抽出物は、粉末、フィルム、油、溶液、懸濁液、エマルションまたはコロイドの形態であってもよい。
【0113】
抽出物を形成するために使用されるダリア植物の1つまたは複数の部分は、新鮮であってもよく、または抽出前に乾燥されてもよい。新鮮な植物材料は、好ましくは、収集の約1週間以内、例えば、収集の約6、5、4、3、2もしくは1日以内、または本質的に直ちに、例えば、収集の1、2、3、4、5、6、12、もしくは24時間以内に抽出される。ダリア植物の少なくとも花弁などの植物材料は、凍結乾燥といった当該技術分野において公知の任意の好適な手段により乾燥されてもよい。
【0114】
一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の化合物(例えば、BTN、SLFおよびILQの1つまたは複数)がダリア抽出物に加えられてもよい。化合物の添加は、ダリア植物中で発現されるある特定の化合物の相対量における天然のばらつきを相殺するため、またはBTNならびにSLFおよび/もしくはILQの相対量を補うためであってもよい。加えられる化合物は、所望の化合物(例えば、BTN、SLFおよび/もしくはILQ)の合成型であってもよく、それらは、他のダリア抽出物といった他の植物抽出物から得られた精製化合物であってもよく、またはそれらは、2つもしくはそれより多くのダリア抽出物をブレンドすることにより加えられてもよい。
【0115】
一部の実施形態では、特定のフラボノイドは存在しなくてもよく、または検出不可能な量(例えば、約0.001重量%未満のアナライト)において存在してもよい。
【0116】
ダリア植物の一部の抽出物中に同定されるBTN、SLF、ILQおよび他のフラボノイド化合物の量を表2に記載する。表2に記載される抽出物は、様々なダリア植物からの花をエタノールと接触させることにより得られた(約3部のEtOH対1部の植物材料)。
【表2】
【0117】
治療方法
本発明者らは、驚くべきことに、BTNおよびILQ、BTNおよびSLFならびにBTN、ILQおよびSLFの組合せがグルコース調節の障害を治療できることを見出した。これらの組合せの良好な効果は、活性成分のあらゆる組合せが同じ有効性を有するものではなく、顕著なことに、BTNの非存在下でのSLFとILQとの組合せを用いる治療は充分な有効性を欠いていたので、特に驚くべきであった。グルコース調節の食事誘導性障害の逆転は、活性のある組合せを用いる治療は、耐糖能および/またはインスリン感受性を少なくとも部分的に回復させることによりグルコースホメオスタシスに正の影響を与えることができることを示唆する。したがって、活性のある組合せは、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害の治療において有用であり得る。
【0118】
本発明は、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のBTNならびにSLFおよび/またはILQを含む医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。これらの方法において、医薬組成物は、任意の比においてBTNならびにSLFおよび/またはILQを含んでもよい。本明細書に記載されるBTNならびにSLFおよび/またはILQの少なくとも1つを含む任意の医薬組成物は、これらの方法において使用され得る。
【0119】
方法は、1型糖尿病、2型糖尿病および妊娠糖尿病といった任意の形態の糖尿病を治療し得る。
【0120】
糖尿病と関連する疾患、状態および/または障害としては、糖尿病、その症状、その合併症または糖尿病の基礎となる原因、例えば、in vivoにおけるグルコースの調節の障害および/もしくはインスリン抵抗性と関連する任意の疾患、状態および/または障害が挙げられる。これらの疾患、状態および/または障害としては、前糖尿病、糖尿、高血糖症、高インスリン血症、インスリン抵抗性、およびその組合せが挙げられる。一部の実施形態では、方法は、治療後の期間にわたり血漿グルコース濃度の低減を結果としてもたらしてもよい。組成物の投与後の血漿グルコース濃度は、標準的な経口耐糖能試験(OGTT;試験手順について実施例6を参照)により決定されるベースライン血漿グルコース濃度と比べて少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%またはより多く低減されてもよい。治療後の期間は、少なくとも約30分、60分、90分、120分、180分、240分、300分またはより長くてもよい。一部の実施形態では、血漿グルコース濃度は、インスリンおよび/またはCペプチド濃度に有意に影響することなく低減される。一部の実施形態では、インスリンおよび/またはCペプチド濃度は、医薬組成物の投与により有意に低減されない。インスリンまたはCペプチドの濃度は、治療後の濃度の変動が、例えば分散分析により決定される、統計的に有意な量だけ治療前の濃度から異なる場合に、有意に影響(例えば、低減)されると考えられる。Cペプチドは、インスリン生合成の間にプロインスリンから切除される。Cペプチド濃度は、糖尿病の種類の診断において有用なことがあり、その血漿濃度はB細胞中のインスリン産生に相関する。
【0121】
一部の実施形態では、本発明は、糖尿病および/または前糖尿病を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、好ましくは前糖尿病が糖尿病に進行しないように、前糖尿病を治療する方法を提供する。
【0122】
前糖尿病は、典型的には、治療されないままの場合に糖尿病に進行し得る、異常に調節された血中グルコースレベルの状態に関する。一部の事例では、前糖尿病は、正常より高いが糖尿病の定義された閾値より低い血中グルコースレベルを有するとして定義される状態に関する。前糖尿病は、2つの基準:(1)空腹時グルコースの障害(IFG)および(2)耐糖能障害(IGT)により定義される中間的な高血糖症の状態として世界保健機関により定義されている。米国糖尿病学会はまた、IFGおよびIGTの点で前糖尿病を定義し、追加のヘモグロビンA1c(HbA1c)に基づく基準を含む。前糖尿病の定義、診断および治療は、Bensal, N. World J Diabetes 2015; 6(2): 296-303(その内容は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)において議論されている。一部の実施形態では、対象は、HbA1cレベルが約41mmol/mol~約60mmol/molである場合に、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害のための治療を必要としている。典型的には、約41~約49mmol/molのHbA1cレベルを有する対象は、前糖尿病のための治療を必要としていると考えられる。
【0123】
一部の実施形態では、本発明は、グルコース代謝を正常に戻す方法を提供する。
【0124】
一部の実施形態では、本発明は、グルコース調節の食事誘導性障害といったグルコース調節の障害を治療する方法を提供する。
【0125】
糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害は、ある特定の合併症に関連付けられる。例えば、糖尿病の公知の合併症としては、糖尿病関連炎症、糖尿病網膜症、糖尿病性ネフロロジー(diabetic nephrology)および糖尿病性ニューロパチーが挙げられる。本発明は、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害の治療に関し、これらの疾患、状態および/または障害の合併症の治療に関しないが、糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療することにより、合併症は、回避され、重篤度が低減され、または発症が遅延され得る。
【0126】
方法は、有効量のBTNならびにSLFおよび/またはILQを投与することを伴う。有効量は、多数の要因に基づいて当業者により決定されてもよく、該要因としては、対象の症状の重篤度および種類、対象の病歴、対象の身体的特性(体重、性別など)、投与される医薬組成物中に含まれる活性成分の特定の組合せならびに投与経路が挙げられる。
【0127】
一部の実施形態では、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せの有効量は、少なくとも約0.001mg/kgであってもよく、例えば、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せの有効量は、対象に少なくとも約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.33mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約3mg/kg、約3.3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgを投与するために充分な量であってもよい。一部の実施形態では、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せの有効量は、約0.001mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.05mg/kg~約5mg/kgであってもよい。一部の実施形態では、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せの有効量は、少なくとも約0.5mg/m、約0.6mg/m、0.7mg/m、0.8mg/m、0.9mg/m、1.0mg/m、1.1mg/m、1.2mg/m、1.3mg/m、1.4mg/m、1.5mg/m、1.6mg/m、1.7mg/m、1.8mg/m、1.9mg/m、2.0mg/m、2.1mg/m、2.2mg/m、2.3mg/m、2.4mg/m、2.5mg/m、2.6mg/m、2.7mg/m、2.8mg/m、2.9mg/m、3.0mg/m、3.5mg/m、4.0mg/m、4.5mg/m、5.0mg/m、5.5mg/m、5.6mg/m、5.7mg/m、5.8mg/m、5.9mg/m、6.0mg/m、7.0mg/m、8.0mg/m、9.0mg/m、10mg/m、またはより多くであってもよい。BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せの有効量は、これらの任意の用量の間、例えば、約0.5mg/m~約10mg/mまたは約1.5mg/m~約6.0mg/mであってもよい。
【0128】
BTNの有効量は少なくとも約0.001mg/kgであってもよく、例えば、BTNの有効量は、対象に少なくとも約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.33mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約3.3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgを投与するために充分な量であってもよい。一部の実施形態では、BTNの有効量は、約0.001mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.01mg/kg~約5mg/kgであってもよい。一部の実施形態では、BTNの有効量は、少なくとも約0.1mg/m、例えば、少なくとも約0.2mg/m、約0.3mg/m、約0.4mg/m、約0.5mg/m、約0.6mg/m、0.7mg/m、0.8mg/m、0.9mg/m、1.0mg/m、1.1mg/m、1.2mg/m、1.3mg/m、1.4mg/m、1.5mg/m、1.6mg/m、1.7mg/m、1.8mg/m、1.9mg/m、2.0mg/m、2.1mg/m、2.2mg/m、2.3mg/m、2.4mg/m、2.5mg/m、2.6mg/m、2.7mg/m、2.8mg/m、2.9mg/m、3.0mg/m、3.5mg/m、4.0mg/m、4.5mg/m、5.0mg/m、5.5mg/m、5.6mg/m、5.7mg/m、5.8mg/m、5.9mg/m、6.0mg/mまたはそれより多くてもよい。BTNの有効量は、これらの任意の用量の間、例えば、約0.1mg/m~約6mg/mまたは約2.0mg/m~約4.0mg/mであってもよい。
【0129】
SLFの有効量は少なくとも約0.001mg/kgであってもよく、例えば、SLFの有効量は、対象に少なくとも約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.33mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約3.3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgを投与するために充分な量であってもよい。一部の実施形態では、SLFの有効量は、約0.001mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.01mg/kg~約5mg/kgであってもよい。一部の実施形態では、SLFの有効量は、少なくとも約0.1mg/m、例えば、少なくとも約0.2mg/m、約0.3mg/m、約0.4mg/m、約0.5mg/m、約0.6mg/m、0.7mg/m、0.8mg/m、0.9mg/m、1.0mg/m、1.1mg/m、1.2mg/m、1.3mg/m、1.4mg/m、1.5mg/m、1.6mg/m、1.7mg/m、1.8mg/m、1.9mg/m、2.0mg/m、2.1mg/m、2.2mg/m、2.3mg/m、2.4mg/m、2.5mg/m、2.6mg/m、2.7mg/m、2.8mg/m、2.9mg/m、3.0mg/m、3.5mg/m、4.0mg/mまたはより多くであってもよい。SLFの有効量は、これらの任意の用量の間、例えば、約0.1mg/m~約4mg/mまたは約1.0mg/m~約2.0mg/mであってもよい。
【0130】
ILQの有効量は少なくとも約0.001mg/kgであってもよく、例えば、ILQの有効量は、対象に少なくとも約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約0.33mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約3.3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgを投与するために充分な量であってもよい。一部の実施形態では、ILQの有効量は、約0.001mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.01mg/kg~約5mg/kgであってもよい。一部の実施形態では、ILQの有効量は、少なくとも約0.1mg/m、例えば、少なくとも約0.2mg/m、約0.3mg/m、約0.4mg/m、約0.5mg/m、約0.6mg/m、0.7mg/m、0.8mg/m、0.9mg/m、1.0mg/m、1.1mg/m、1.2mg/m、1.3mg/m、1.4mg/m、1.5mg/m、1.6mg/m、1.7mg/m、1.8mg/m、1.9mg/m、2.0mg/m、2.1mg/m、2.2mg/m、2.3mg/m、2.4mg/m、2.5mg/m、2.6mg/m、2.7mg/m、2.8mg/m、2.9mg/m、3.0mg/m、3.5mg/m、4.0mg/mまたはより多くであってもよい。ILQの有効量は、これらの任意の用量の間、例えば、約0.1mg/m~約4mg/mまたは約1.2mg/m~約2.3mg/mであってもよい。
【0131】
BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せがダリア抽出物の形態において提供される実施形態では、方法は、有効量のダリア抽出物を対象に投与することを含んでもよい。一部の実施形態では、抽出物の有効量は、少なくとも約5mg/m、例えば、少なくとも約10mg/m、15mg/m、20mg/m、25mg/m、30mg/m、35mg/m、40mg/m、45mg/m、50mg/m、55mg/m、60mg/m、65mg/m、70mg/m、75mg/m、80mg/m、85mg/m、90mg/m、95mg/m、100mg/m、またはより多くであってもよい。抽出物の有効量は、これらの任意の用量の間、例えば、約5mg/m~約100mg/mまたは約55mg/m~約65mg/mであってもよい。
【0132】
一部の実施形態では、有効量は、医薬組成物および/または活性成分のホルミシス量に関する。ホルミシスは、活性成分に対する二相的用量応答であって、典型的には、低用量において活性成分の有益な活性および高用量において活性の喪失または有害な活性のいずれかを伴うものを指す。ホルミシスは、Mattson, M. P. Ageing Res Rev. 2008; 7(1): 1-7(その内容は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。本発明の医薬組成物の一部の実施形態は、有効性が低用量においてより大きいことが示されたという点でホルミシスを実証し、例えば、1:1:1のSLF:ILQ:BTNを含む医薬組成物は、約1mg/kgにおいて投与された場合にグルコース調節の食事誘導性障害の際立った逆転を示した(実施例1;実験4および図4を参照)。
【0133】
方法はまた、BTN、SLFおよび/またはILQ以外の活性成分を投与することを含んでもよい。この活性成分は、BTNならびにSLFおよび/またはILQと同時に、別々にまたは連続的に投与されてもよい。同時にとは、医薬組成物および他の活性成分のそれぞれが同じ医薬組成物中で同時に投与されることを意味する。別々にとは、医薬組成物および他の活性成分のそれぞれが異なる医薬組成物中で同時にかつ任意選択的に異なる投与経路により投与されることを意味する。連続的にとは、医薬組成物および他の活性成分のそれぞれが、任意選択的に異なる投与経路により、別々に投与され、異なる時点であってもよいことを意味する。典型的には、医薬組成物および他の活性成分が連続的に投与される場合、それらは、互いに24時間以内、または12、8、6、5、4、3、2、もしくは1時間以内に投与される。医薬組成物は、他の活性成分の前または後に投与されてもよい。さらに、医薬組成物および他の活性成分のための投与経路は、同じまたは異なるものであってもよい。
【0134】
一部の実施形態では、他の活性成分は、糖尿病のための任意の既存の療法、例えば、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-IV)阻害剤(例えば、シタグリプチン、サキサグリプチン、ビルダグリプチン(vidagliptin)、リナグリプチンおよびアログリプチン)、ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT2)阻害剤(例えば、カナグリフロジン、ダパグリフロジン(dapaglifozin)およびエンパグリフロジン)、インスリン(例えば、短期作用性レギュラーインスリン(例えば、ヒューマリン、ノボリン)、中間型NPHインスリン、長期作用性インスリングラルギン(例えば、ランタス)、インスリンデテミル(例えば、レベミル)、インスリンデグルデク(例えば、トレシーバ)、即効型ヒューマログ(例えば、リスプロ)、ノボログ(例えば、アスパルト)、グルリジン(例えば、アピドラ)、予備混合型75%インスリンリスプロプロタミン/25%インスリンリスプロ(例えば、ヒューマログミックス75/25)、50%インスリンリスプロプロタミン/50%インスリンリスプロ(例えば、ヒューマログミックス50/50)、70%インスリンリスプロプロタミン/30%インスリンアスパルト(例えば、ノボログ70/30)、70% NPHインスリン/30%レギュラー)、GLP-1アゴニスト(例えば、リラグルチド、エキセナチドおよびデュラグルチド)、スルホニル尿素(SU)(例えば、グリメピリド、グリピジドおよびグリブリド)、チアゾリジンジオン(TZD)(例えば、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾン)、アミリンアゴニスト(例えば、プラムリンチド)、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)およびその組合せの投与であってもよい。好適な他の活性成分に関する追加の情報は、Chaundry, A., et al. Frontiers in Endocrinology, 2017;8:Article 6(その内容は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0135】
一部の実施形態では、方法は、医薬組成物およびアミリンアゴニスト、例えばプラムリンチドを投与することを含む。本発明者らは、アミリンアゴニストおよび医薬組成物の投与を含む実施形態においてグルコース調節の食事誘導性障害に対する有効性の点で相乗効果を観察した(実施例1;実験8を参照)。したがって、一部の実施形態では、方法は、相乗量の医薬組成物およびアミリンアゴニスト、例えばプラムリンチドを投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、対象に医薬組成物中の約0.01mg/kg~約10mg/kgまたは約0.1mg/m~約4.0mg/mの各活性成分をアミリンアゴニスト、例えばプラムリンチドと共に投与するために充分な量で医薬組成物を投与することを含む。方法は、BTNとSLFおよび/またはILQとの組合せをアミリンアゴニスト、例えばプラムリンチドと共に含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。アミリンアゴニストがプラムリンチドである実施形態では、方法は、それ単独で有効性を観察するために必要とされる量より少ない量でプラムリンチドを投与することを含んでもよい。臨床用量未満の用量のプラムリンチドを投与することにより、関連する副作用が低減または回避され得る。方法は、対象に最大で約1000mg/kg、例えば、最大で約500mg/kg、400mg/kg、300mg/kg、200mg/kgまたはより少量を投与するために充分な量のプラムリンチドを投与することを含んでもよい。
【0136】
方法は、本明細書に記載される任意の投与経路といった、任意の好適な投与経路を含んでもよい。
【0137】
別の態様では、本発明は、別々の部分において、
(a)ブテインまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(BTN)、ならびに
(b)スルフレチンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(SLF)、および/または
(c)イソリキリチゲニンもしくはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(ILQ)
を含むキットを提供する。
【0138】
一部の実施形態では、部分(b)または(c)は存在しない。
【0139】
一部の実施形態では、キットの部分(a)は、SLFおよび/またはILQをさらに含む。一部の実施形態では、キットの部分(b)は、BTNおよび/またはILQをさらに含む。一部の実施形態では、キットの部分(c)は、BTNおよび/またはSLFをさらに含む。
【0140】
一部の実施形態では、キットの部分(a)、(b)および/または(c)の1つまたは複数は、独立して、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。他の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、キットのさらなる部分、すなわち部分(d)中に提供される。
【0141】
一部の実施形態では、キットは、別々の部分において、(e)BTN、SLFおよび/またはILQ以外の活性成分を含んでもよい。部分(e)は、部分(a)、(b)、(c)および/または(d)に加えて、キット中に含まれてもよい。
【0142】
一部の実施形態では、キットは、別々の部分において、(f)糖尿病または関連する疾患、状態および/もしくは障害を治療するための使用のための指示を含んでもよい。
【0143】
本発明者らは、イソリキリチゲニンは単独で、グルコース調節の食事誘導性障害を治療できることを示した(実施例1;実験1、図1B;実験3、図3A)。
【0144】
したがって、別の態様では、本発明は、糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のイソリキリチゲニンまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、溶媒和物および/もしくは誘導体(ILQ)を投与することを含む、方法を提供する。これらの方法は、本明細書に記載されるような任意の形態または糖尿病ならびに任意の関連する疾患、状態および/もしくは障害の治療において使用されてもよい。
【0145】
糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害を治療するための医薬の調製におけるILQの使用もまた提供される。
【0146】
糖尿病ならびに関連する疾患、状態および/または障害の治療において使用するための医薬組成物であって、ILQを含む医薬組成物もまた提供される。
【0147】
ILQを含む抗糖尿病剤もまた提供される。
【0148】
ILQは、本明細書に記載される任意の形態において単独で(すなわち、唯一の活性成分として)またはBTN、SLFならびに/もしくはSLF、BTNおよび/もしくはILQ以外の活性成分と組み合わせて投与されてもよい。ILQを含む医薬組成物は、本明細書に記載される任意の量でILQを含んでもよい。ILQは、合成または半合成起源のILQの形態といった、本明細書に記載される任意の供給源から得られたものであってもよい。
【0149】
本発明者らは、驚くべきことに、スルフレチンを単独で用いる治療は、グルコース調節の食事誘導性障害を治療できることを見出した。以前に、スルフレチンは、サイトカイン誘導性のベータ細胞損傷を遮断できることが示された。しかしながら、本発明者らは、HFDのマウスは高インスリン血症であったので、スルフレチンの有効性はベータ細胞損傷とは独立していることを示した(実施例3および図17を参照)。実施例1は、スルフレチンは、ベータ細胞不全の前に高インスリン血症の状態の間に食事により誘導されたグルコース調節の障害を治療できることを示す。したがって、SLFは、2型糖尿病および前糖尿病といった、ベータ細胞不全とは独立した食事誘導性のインスリン抵抗性およびグルコース調節の障害の治療において有効性を有することは驚くべきことであった。
【0150】
したがって、2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のSLFを投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0151】
2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害を治療するための医薬の調製におけるSLFの使用もまた提供される。
【0152】
2型糖尿病、前糖尿病および/またはグルコース調節の食事誘導性障害の治療において使用するための医薬組成物であって、SLFを含む、医薬組成物もまた提供される。
【0153】
SLFを含む抗2型糖尿病および/または前糖尿病剤もまた提供される。
【0154】
SLFは、本明細書に記載される任意の形態において単独で(すなわち、唯一の活性成分として)またはBTN、ILQならびに/もしくはSLF、BTNおよび/もしくはILQ以外の活性成分と組み合わせて投与されてもよい。SLFを含む医薬組成物は、本明細書に記載される任意の量でSLFを含んでもよい。SLFは、合成または半合成起源のSLFの形態といった、本明細書に記載される任意の供給源から得られたものであってもよい。
【実施例
【0155】
本発明を非限定的な実施例によりさらに記載する。本発明の精神および範囲から離れることなく多くの改変が為され得ることが本発明の技術分野の当業者に理解されるであろう。
【0156】
実施例1:実験1~10
この実施例は、マウスにおける食事誘導性のグルコース感受性の逆転におけるBTN、SLFおよび/またはILQの有効性を示す一連の実験を記載する。使用したマウスは、ヒト糖尿病および前糖尿病のモデルと考えられる。この実施例の目的のために、表3に示す略語を使用する。
【表3】
【0157】
実験動物
全ての実験のために、12~14週齢の雄C57BL/6マウスをオタゴ大学の動物施設から得た。全ての手順はオタゴ大学動物倫理委員会により承認された。マウスを12:12hの明/暗サイクル下で個々に飼育し、周囲温度は23℃であった。動物は、4週の継続期間にわたり低脂肪食(LFD、10%の脂肪を含有する;カタログ番号D12450B;Research Diets)または高脂肪食(HFD、60%の脂肪を含有する;カタログ番号D12492;Research Diets)のいずれか、および水への自由なアクセスを有した。各実験のために、動物の新たなコホートを用いた。
【0158】
配合物
全ての実験のために、選択された活性成分、すなわち、個々にB、IもしくはS、ミックスまたは抽出物のエタノール溶液を形成した後、0.9wt%のNaCl水性溶液を用いて所望の濃度に希釈することにより配合物を調製した。
【0159】
代表的な配合物を調製するための概略の実施例は以下の通りである。活性成分(10mg)に500μlのエタノールおよびその後に9500μlの0.9wt%のNaCl水性溶液を加えて投与用の10mlの溶液を作製した。
【0160】
2つまたはそれより多くの活性成分の組合せの配合物は、2つまたはそれより多くの活性成分を予備計量し、5部のエタノールおよびその後に95部の0.9%のNaCl水性溶液を加えることにより調製されてもよい。代替的に、配合物は、1つの活性成分の既に調製された溶液(例えば、上記の方式で調製される)からアリコートを取り、組合せの他の活性成分(複数可)の溶液と合わせることにより調製されてもよい。
【0161】
抽出物
全ての実験のために、ダリア「Ruskin Diane」から得た新鮮な閉じたままの花弁(1部)を96%のエタノール(約3部)と接触させることにより抽出物を調製した。必要とされるまで抽出物を-18℃でエタノール溶液として貯蔵した。この抽出物中のRPLC分析により見出されたフラボノイドの量を以下の表4に示す。
【表4】
【0162】
耐糖能試験
実験1~3:化合物の抗糖尿病特性
個々にいずれかの化合物、3つ全ての化合物の混合物(B、SおよびI;以下、「ミックス」と称する)または黄色ダリア「Ruskin Diane」花弁の全抽出物がグルコースホメオスタシスに激しく影響するかどうかを調べるために、ヒト前糖尿病およびグルコース代謝における障害を模倣するためのモデルとしての食事誘導性肥満(DIO)マウスにおいて腹腔内耐糖能試験(ipGTT)を行った。個々の化合物、ミックスまたは全抽出物を、5%のエタノールを含有する0.9%のNaCl中に溶解させ、経口投与した。マウス(n=7~8/群)に4週間の高脂肪食(HFD)または各々の低脂肪食(LFD)のいずれかを給餌し、16時間絶食させ、経口胃管栄養法により異なる化合物/組合せまたはビヒクル(5%のエタノールを含有する0.9%のNaCl)を与えた。例えば、50gのマウスへの投与のために、500μlの体積を有する経口胃管栄養を調製し、経口胃管栄養は、500μgの抽出物または50μgの化合物(複数可)を含有した。投与する胃管栄養の体積をマウス対象の体重に基づいて調整した。経口胃管栄養処置の60分後にグルコース(1.5g/kg体重;0.9%のNaCl中に溶解させた)を腹腔内注射(i.p.)し、ipGTTを行った。新たな外科用メスの刃を用いて尾の先端を切断しながら市販の血糖値測定器(Accu-Check Performa;Roche)を使用して血中グルコースレベルを測定した。統計的検証のために、曲線下面積(AUC)を算出した。
【0163】
実験4~5:ミックスおよび抽出物の用量応答
これらの実験は、異なる濃度(20、10、3.3、1、0.33mg/kg体重)を使用する個々の化合物、ミックス(20、10、3.3、1、0.33mg/kg体重)または抽出物(50、20、10、3.3、1mg/kg)の用量応答を確立して最大非有効用量を決定することにより、その後の実験における市販の糖尿病薬と組み合わせた相乗効果の試験を可能とする。マウスに4週のLFDまたはHFDのいずれかを給餌した(実験4および5)。マウスを16時間絶食させた後、以前に記載したようにpGTTを実行した。
【0164】
実験6および8:メトホルミンおよびプラムリンチドの用量応答
BならびにSおよび/またはIが、良好に記載される糖尿病薬メトホルミンおよびプラムリンチドと相乗的に作用してグルコースホメオスタシスに影響するかどうかを解析するために、これらの2つの薬剤についての用量応答実験を実行した。マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、慢性的にメトホルミン(最後の7日間の経口胃管栄養法、1日2回(12時間の間隔);300、100、50、20、10mg/kg/d、PBS中)またはプラムリンチド(最後の5日間の皮下注射、1日2回(12時間の間隔);1000、200、40、8、1.6μg/kg/d、0.9%のNaCl中)を用いて処置した。マウスの別々のコホートを各々の対照注射を用いて処置した。マウスを16h絶食させ、記載したようにipGTTを行った。
【0165】
実験7および9:メトホルミンおよびプラムリンチドとの組合せ
糖尿病剤および我々の化合物について用量応答が確立されたので、この実験では、メトホルミンまたはプラムリンチドの最大非有効用量を選択し、最大非有効用量のミックスと組み合わせて投与して、グルコースホメオスタシスの改善における相乗効果について試験した。したがって、マウスに4週間HFDまたはLFDのいずれかを給餌し、メトホルミン(最後の7日間の経口胃管栄養法、1日2回(12時間の間隔);100mg/kg/d体重、PBS中)またはプラムリンチド(最後の5日間の皮下注射、1日2回(12時間の間隔);200μg/kg/d体重、0.9%のNaCl中)を用いて処置した。良好に記載されている抗糖尿病薬を用いた慢性処置後、マウスを16h絶食させ、激しくミックス(0.33mg/kg;5%のエタノールを含有する)を与えた。60分後、以前に記載したようにipGTTを実行した。
【0166】
実験10:中心的なインスリンシグナリングに対する効果
化合物、配合物および抽出物がグルコースホメオスタシスに影響する方法の作用モードを同定するために、AKTのリン酸化(pAKT)を測定することにより中心的なインスリンシグナリングに対する効果を調べた。AKTは視床下部の弓状核におけるインスリンの主な標的である。視床下部におけるインスリン作用の程度を評価するために、リン酸化AKT陽性細胞を計数した。マウスに4週間LFDまたはHFDを給餌し、16h絶食させ、体重をマッチさせた。経心腔的灌流の60分前に、マウスに経口胃管栄養法によりB(10mg/kg)、I(10mg/kg)、S(10mg/kg)、ミックス(3.3mg/kgの各化合物)、抽出物(10mg/kg)またはビヒクル(5%のエタノールを含有する0.9%のNaCl)を与えた。さらに、マウスに経心腔的灌流の15分前にインスリン(1mg/kg)またはビヒクル注射を与えた。抗ホスホAKT Ser473抗体(カタログ番号4058;Cell Signaling Technology)を使用して、Benzler J, et al. Diabetes. 2015;64:2015-27(その内容は、参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)において以前に記載されたようにマウス脳冠状凍結切片に対して免疫組織化学を実行した。
【0167】
統計
GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を使用して、一元配置分散分析または反復測定分散分析およびその後に適宜の多重比較検定によりデータを解析した。結果を平均±SEMとして表し、p≦0.05の場合に差異を有意と考えた。
【0168】
結果
実験1:化合物の抗糖尿病特性
実験1:抽出物およびある特定の化合物の抗糖尿病特性の初めての証明
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、10mg/kg(0.9%のNaCl/5%のエタノール中に希釈)のB、I、S、3つ全てのミックスまたはダリア花弁の抽出物を経口により与え、1時間後にipGTTを行った(n=6~7/群)。S、ミックスおよび抽出物は耐糖能を有意に改善させた。
【0169】
この実験では、HFD給餌マウスにおけるグルコースホメオスタシスの改善を個々のいずれかの化合物(10mg/kg)、3つ全ての化合物のミックス(3.3mg/kgの各化合物)またはダリア花弁の全抽出物(10mg/kg)について調べた。4週間の給餌後、予想の通りLFD群と比較してHFD群において耐糖能は有意に障害を受けた(p<0.0001)。ipGTTの1時間前に経口胃管栄養法により激しく与えたところ、S(p=0.027)、ミックス(p=0.0013)および抽出物(p=0.0081)は耐糖能を有意に改善でき、Iは対照群と比較してグルコースホメオスタシスの改善の傾向を示した(図1)(p=0.10)。Bは、ipGTTを通じていずれの時点においても耐糖能を改善させなかった。これらのデータは、これらの試験した用量においてS、ミックスおよびダリア抽出物は食事誘導性肥満(DIO)マウスにおいてグルコースホメオスタシスを改善させるための効果的な薬剤であることを示唆する。
【0170】
実験2~3:B、IおよびSの間の相互作用
実験2:BはIまたはSのグルコース低下効果に影響を及ぼさない
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、3.3mg/kgの各化合物(0.9%のNaCl/5%のエタノール中に希釈)においてB、IおよびB(I+B)、SおよびB(S+B)ならびにミックスを経口により与え、1時間後にipGTTを行った(n=4~10/群)。I+B、S+Bおよびミックスは耐糖能を有意に改善させた。
【0171】
実験2は、IまたはSのいずれかとのBの相互作用を試験する。予想の通り、4週間のHFDの給餌は、LFD給餌マウスと比較してグルコース不耐性に繋がった(p<0.0001)。化合物および配合物を経口により与え、1時間後にipGTTを行った。B(3.3mg/kg)は単独で、実験1における発見に合致して、いずれの時点においても耐糖能に対する効果を示さなかった。しかしながら、Iと組み合わせたB(各3.3mg/kg体重;p=0.0230)およびSと組み合わせたB(各3.3mg/kg体重;p=0.0142)は、耐糖能を有意に改善させた。さらに、3つ全ての化合物のミックス(3.3mg/kg体重の各化合物)を用いて処置したマウスは、HFDにおけるビヒクル処置マウスと比較してグルコースホメオスタシスの改善を示した(p=0.0216)(図2D)。実験1と同様に、B単独の経口適用はグルコースホメオスタシスを改善させなかった。しかしながら、IまたはSと共に投与した場合、これらの化合物のグルコース低下能力はBにより負に影響されず、反対に、データは、BはIの作用を改善させ得ることを示唆する(実験1を参照)。
【0172】
実験3:I+SはBの非存在下で互いに阻害し合う。
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、3.3mg/kg(0.9%のNaCl/5%のエタノール中に希釈)においてIまたはS、IおよびS(I+S)、またはミックスを経口により与え、1時間後にipGTTを行った(n=5~7/群)。IまたはSは耐糖能を改善させる傾向があり、この効果は両方の存在下で無効化された。
【0173】
B単独での経口適用はグルコースホメオスタシスの改善に効果的でないがIおよびSの作用に負に影響しないことが確立されたので、我々は次に、IおよびSは互いに相互作用し、それにより、グルコースホメオスタシスの調節に対するそれらの効果を変化させるかどうかを試験した。したがって、HFD給餌マウスを個々にIもしくはS、IおよびSの組合せまたはI、SおよびBのミックスのいずれかを用いて処置した。マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌した後、HFD給餌動物は予想の通りグルコース不耐性であった(p=0.0005)。個々にI(図3A;3.3mg/kg;p=0.0308)もしくはS(図3B;3.3mg/kg;p=0.0257)またはミックス(図3D;各3.3mg/kg;p=0.0561)を用いて処置したマウスは、耐糖能の改善または強い傾向をそれぞれ示したが、驚くべきことに、効果は、Sと組み合わせてI(各3.3mg/kg)を用いてマウスを処置した場合に完全に無効化された。
【0174】
実験4~5:ミックスおよび抽出物の用量応答
グルコースホメオスタシスを改善させる化合物の相対力価を決定するために、ミックスおよび抽出物の用量応答を行った。それぞれ0.33mg/kgから20mg/kgおよび50mg/kg体重に及ぶ5つの異なる濃度を用いてマウスを処置した。
【0175】
実験4:ミックスについての用量応答(4週の食餌)
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、異なる濃度(0.9%のNaCl/5%のエタノール中に希釈)においてミックスを経口により与え、1時間後にipGTTを行った(n=4~6/群)。
【0176】
LFDまたはHFDのいずれかを4週間給餌した後、マウスを異なる濃度(20、10、3.3、1または0.33mg/kg体重)のミックスを用いて経口胃管栄養法により処置し、1時間後にipGTTを行った(図4)。予想の通り、HFDでの4週後にマウスは、LFDのマウスと比較して有意に改善された耐糖能障害を示した(p=0.0002)。ミックスは全ての濃度において耐糖能の改善の傾向を示した。特に、1mg/kg体重においてDIO誘導性グルコース不耐性の際立った逆転が観察され(p=0.0060)、AUCはもはやLFDの健常マウスと異ならなかった(図4F)。これらのデータは、ミックスは有効量において投与された場合にグルコース不耐性の逆転において高度に強力であることを示唆する。
【0177】
実験5:抽出物についての用量応答(4週の食餌)
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、異なる濃度(0.9%のNaCl/5%のエタノール中に希釈)において抽出物を経口により与え、1時間後にipGTTを行った(n=6~7/群)。
【0178】
研究のこの部分のために、4週間HFDを与えたマウスにダリア花弁の抽出物を投与した。抽出物(1mg)中の3つの主な活性化合物の濃度はそれぞれ約0.076mgであり、したがって、同等の濃度の混合物(1mg)と比較して13倍低かった。したがって、実験4と比較して、抽出物中の個々の化合物の相対的により低い濃度に起因して、および抽出物はビヒクル(5%のエタノールを含有する0.9%のNaCl)中でより可溶性であるという事実に起因して、50mg/kg体重のより高用量を最大用量として選択した。予想の通り、4週間のHFDの給餌により、LFDのマウスと比較してマウスにおいて耐糖能は障害を受けた(p<0.0001)。抽出物は、ホルミシス方式で耐糖能の改善の傾向を示し、10mg/kg体重の中用量が最も効果的であり、HFD対照マウスと比較して有意性(p=0.0482)を達成した(図5)。さらに、異なる時点における個々の解析は、抽出物は、HFD対照群と比較して20mg/kg(p=0.0212)、10mg/kg(p=0.0402)および3.3mg/kg(p=0.0375)において30分の時点においてグルコースレベルを有意に減少させたことを明らかにした(図5)。
【0179】
抽出物の最も効果的な用量は、ミックス(実験4;1mg/kg)より10倍高い(実験5;10mg/kg)。しかしながら、3つの化合物の総量はミックス(実験4;1mg/kg)と比較して抽出物(実験5;0.76mg/kg)中で類似である。したがって、これらの実験は、最大の観察される抗糖尿病効果を誘発するために必要とされるB、SおよびIの濃度はミックスおよび抽出物について類似であることを示し、BとSおよび/またはIとの組合せは観察される有効性の大部分を提供することを示唆する。
【0180】
実験6~7:ミックスおよびメトホルミンの相互作用
用量応答実験は、ミックスは4週間HFDを給餌したマウスにおいて1mg/kg体重においてグルコース不耐性を逆転できることを明らかにした。いずれも最大有効用量より低い、広く処方される糖尿病薬メトホルミンと組み合わせたミックスの効果を評価するために、我々は最初に、メトホルミンが耐糖能を改善させることができなくなる最大用量を評価した(実験6)。メトホルミンのこの臨床未満用量の組合せを次にミックスと組み合わせて試験する(実験7)。
【0181】
実験6:メトホルミンについての用量応答(4週の食餌)
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、実験の最後の7日間に1日2回(12時間毎)異なる濃度(PBS中に希釈、pH7.7)においてメトホルミンを経口投与した。HFD-CおよびLFD-Cマウスにビヒクル(PBS)を与えた。ipGTTを行ったところ(n=5~7/群)、300mg/kg/dにおいて与えた場合にメトホルミンは耐糖能を有意に改善させた。
【0182】
マウスに4週間HFDを給餌し、最後の週に経口胃管栄養法によりメトホルミンを1日2回与えた。予想の通り、HFDを4週間給餌した後にマウスはLFDマウスと比較して有意に障害を受けた耐糖能を示した(p=0.0001)。予想の通り、1日2回のメトホルミンの注射は、HFD対照群と比較して耐糖能を改善させたが、これは用量依存的であり、300mg/kgの非常に高濃度でのみ効果的であった(図6;p=0.004)。メトホルミンが耐糖能を改善させない最大用量は100mg/kg体重であると決定された。
【0183】
実験7:ミックス(4週の食餌)と組み合わせたメトホルミン
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、最後の7日間(12時間毎)1日当たり100mg/kg(PBS中に希釈、pH7.7)においてメトホルミンを経口投与した。ipGTTの1時間前にマウスにそれぞれミックスまたは生理食塩水を与えた(n=6~7/群)。
【0184】
実験6においてメトホルミンの最大非有効用量は100mg/kg体重であると決定され、最大非有効用量のミックス(0.33mg/kg体重、実験4)とのこの濃度のメトホルミンの併用投与により潜在的な相乗効果を決定した。マウスに4週間LFDまたはHFDのいずれかを与え、実験の最後の7日間経口胃管栄養法によりメトホルミンを連日与えた(実験6と同様)。ipGTTの1時間前に、マウスにミックスを経口により与えた。予想の通り、耐糖能はLFDマウスと比較してHFD対照動物において有意に障害を受けた(図6;p=0.0002)。実験6と同様に、メトホルミン処置マウスとHFD対照マウスとの間に差異はなく、単独での用量は効果的でないことが確認された(図6A)。この実験において、ミックスは単独で耐糖能をわずかに改善させることができ(図6B;p=0.0308)、メトホルミンおよびミックスを与えた群においてAUCの有意な減少の強い傾向があった(図6D、p=0.081)。
【0185】
実験8および9:ミックスと組み合わせたプラムリンチド
実験6および7におけるメトホルミンを用いて使用した同じ手順をプラムリンチドを用いても使用した。最初に、HFD給餌マウスにおけるプラムリンチドの最大非有効用量を決定した後、最大非有効用量のミックスおよび最小非有効用量のプラムリンチドの併用投与を行った。
【0186】
実験8:プラムリンチドについての用量応答(4週の食餌)
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、最後の5日間(12時間毎)連日で異なる濃度(PBS中に希釈、pH7.7)においてプラムリンチドをs.c.により与えた。ipGTTを行ったところ(n=5~7/群)、1mg/kg/dにおいて与えた場合にプラムリンチドは耐糖能を有意に改善させた。
【0187】
マウスに4週間HFDを給餌し、5日間1日2回プラムリンチドを皮下(s.c.)に与えた。予想の通り、HFDのマウスはLFDのマウスと比較して有意に障害を受けた耐糖能を有した(p=0.0002)。1000μg/kg/d体重の試験した最大用量において、プラムリンチドはHFDのマウスに注射したビヒクルと比較して耐糖能を有意に改善させた一方(p=0.0497)、他の濃度はグルコースホメオスタシスに対して有意な効果を有しなかった(図8)。
【0188】
実験9:ミックス(4週の食餌)と組み合わせたプラムリンチド
C57BL/6マウスに4週間HFDまたはLFDを給餌し、最後の5日間200μg/kg/d(PBS中に希釈、pH7.7)においてプラムリンチドをs.c.により投与した。ipGTTの1時間前にマウスにそれぞれミックスまたは生理食塩水を与えた(n=12~15/群)。
【0189】
マウスに4週間LFDまたはHFDのいずれかを与え、最後の5日間に最大非有効用量のプラムリンチド(200μg/kg/d体重)またはビヒクル(PBS)を用いて処置した。2群のマウスにipGTTの1時間前に経口胃管栄養法によりプラムリンチドまたは生理食塩水に加えて最大非有効用量(0.33mg/kg体重)のミックスを与えた。予想の通り、耐糖能はLFDマウスと比較してHFD対照マウスにおいて有意に障害を受けた(p<0.0001)。予期した通り、200μg/kg/d体重の単独のプラムリンチド(図9A)および0.33mg/kg体重のミックス(図9B)のいずれも個々に耐糖能を改善させることはできなかったが、組合せで与えた場合、耐糖能はビヒクルを与えたHFDマウスと比較して有意に改善された(図9Cおよび図9D;p=0.0178)。これらのデータは、プラムリンチドおよびミックスは耐糖能の改善に関する相乗効果を明らかにすることをサポートする。
【0190】
実験10:視床下部におけるインスリンシグナリングに対するミックスおよび抽出物の効果
分子メカニズムを調べるためならびにミックスおよび抽出物の分子標的を同定するために、マウスに4週間HFDまたはLFDのいずれかを給餌した後、経口胃管栄養法によりミックス(各3.3mg/kg体重)または抽出物(10mg/kg)を激しく用いた処置を行った。経口胃管栄養の1時間後、マウスに経心腔的灌流を行い、灌流の15分前にインスリンをi.p.(1mg/kg体重)により与え、脳を分子解析のために調製した。インスリンシグナル伝達経路の標的タンパク質pAKTを免疫組織化学により可視化し、pAKT免疫応答性細胞を計数することにより定量化した。
【0191】
経心腔的灌流の15分前に、インスリン(1mg/kg)またはビヒクルのいずれかを注射してインスリンシグナル伝達経路を活性化させた。インスリンの投与は、ビヒクル注射群と比較してそれぞれLFD(p<0.0001)給餌マウスおよびHFD(p<0.0001)給餌マウスの両方の視床下部の弓状核においてpAKT陽性細胞を著しく増加させた。pAKT陽性細胞の基本的な数は、LFDと比較してHFDを給餌したマウスにおいてより多かったが、インスリンはHFD(p=0.0479)マウスと比較してLFDマウスにおいてより大きい程度でpAKT陽性細胞の数を増加させた。これは、4週間HFDを給餌したマウスは弓状核においてインスリン感受性が低減したことを示唆する。ミックス(p=0.0257)および抽出物(p=0.0419)は共に、この低減されたインスリン感受性を逆転させることができ、弓状核内のpAKT陽性細胞の数は健常LFD対照マウスと同等であった(図10および図11)。
【0192】
実験11:インスリン負荷試験(ITT)
この実験は、インスリン感受性を改善させる抽出物の潜在的な力価を決定するために実行し、ITTを行った。マウスを抽出物(10mg/kg体重)を用いて激しく処置した後、インスリン注射(1mg/kg)を与えた。
【0193】
マウスに4週間LFDまたはHFDのいずれかを与えた後、経口胃管栄養法により激しく抽出物(10mg/kg)、ミックス(1mg/kg体重)またはビヒクル(0.9%のNaCl)を用いてHFD給餌マウスを処置し、1時間後にITTを行った。4週間のHFDの後、LFDと比較してインスリン感受性は有意に障害を受けた(p<0.001)。ミックス(図12b)はインスリン感受性に対して効果を有しなかったが、抽出物(図12a)はインスリン感受性を有意に改善させた(p=0.0416;図12c)。
【0194】
実験12~14:抽出物の慢性投与-GTT、脳炎症の免疫組織化学解析(GFAPおよびpIκBα)ならびに肝臓組織のOil-Red-O染色(ORO)
これらの実験は、抽出物の長期効果について試験するために実行し、マウスに4週間(GTT)または5週間(免疫組織化学および肝臓病理組織診断)HFDまたはLFDのいずれかを給餌し、同時に経口胃管栄養法により1日1回抽出物(10mg/kg/d)を投与した。4週後にGTTを行い、5週後にマウスに経心腔的灌流(4%のPFA)を行い、脳を分子解析のために調製した。免疫組織化学解析を炎症性マーカーGFAP(星状膠細胞)およびpIκBα(NFκBシグナル伝達経路)について脳切片に対して実行した。さらには、肝臓組織を切除した後、灌流を行って肝臓病理について解析した。
【0195】
実験12:抽出物の慢性投与-GTT(4週の食餌)
マウスに4週間LFDまたはHFDのいずれかを与え、1日目から経口胃管栄養法により1日1回抽出物(10mg/kg/d体重)を与えた。4週後、HFDを給餌したマウスにおいて体重増加は有意に増加したが(p<0.001)、HFD-C群とHFD-抽出物群との間で変化しなかった。体重増加と類似して、累積の摂食はHFD群において有意に増加したが(p<0.0001)、HFD-C動物とHFD-抽出物動物との間で同一であった。さらには、HFD給餌動物はLFD給餌動物と比較して有意に障害を受けた耐糖能を示した(p<0.0001)。体重増加および摂食に変化はなかったにもかかわらず、4週間の抽出物を用いた慢性処置は、HFD-C動物と比較して耐糖能を有意に改善させた(p=0.0166、一元分散分析;図13)。
【0196】
実験13:抽出物の慢性投与-GFAP染色(5週の食餌)
マウスに5週間LFDまたはHFDのいずれかを与え、同時に経口胃管栄養法により1日1回抽出物(10mg/kg/d体重)を用いて処置した。5週後、マウスに経心腔的灌流(4%のPFA)を行い、脳を分子解析のために調製した。マウス脳冠状切片(30μm)をGFAPについて染色し、視床下部の弓状核(ARC)内の免疫応答性細胞を処置に対して盲検とされた2人の研究者により計数した。マウス脳の免疫組織化学解析は、HFDにより引き起こされた視床下部の弓状核の星状膠細胞の数の有意な増加を明らかにした(p=0.0045)。対照的に、抽出物の投与は、この効果を部分的に逆転させ、抽出物を用いて処置したマウスは、HFD-Cマウスと比較して星状膠細胞の数の有意な低減を示した(p=0.0479;図14)。
【0197】
実験14:抽出物の慢性投与-肝臓重量、H&EおよびORO染色
この実験は肝臓脂肪含有量を評価し、脂肪組織における起こり得る形態学的変化を解明するために、我々は肝臓組織のORO染色の他にH&E染色を行った。マウスに5週間LFDまたはHFDのいずれかを与え、同時に経口胃管栄養法により1日1回抽出物(10mg/kg/d体重)を用いて処置した。5週後、経心腔的灌流の直前に肝臓組織を切除し、液体窒素中にスナップ凍結した。肝臓を8μmの切片に切断し、H&EおよびORO染色を行って肝臓形態を解析した。さらには、肝臓を解剖することにより総肝臓重量を決定した。
【0198】
肝臓H&E染色、肝臓ORO染色および総肝臓重量のいずれにおいても群間の差異は検出されなかった(図15)。
【0199】
実施例2:抽出物および純粋なアントクロールのin vitroでの安定性
ダリア「Ruskin Diane」抽出物の水性緩衝液への溶解/分散の実験を実行した。RPLC分析は、経時的に組成の大きな変化を示した。
【0200】
緩衝化された抽出物の不安定性の原因を確認するために、pH7の水性緩衝液中でブテインの安定性を評価した(ブテインはpH4において安定であった)。ブテインのエタノール(EtOH)またはジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれかの溶液を室温で水性緩衝液中に希釈した場合にブテインのスルフレチンへの経時的な線形(0次速度論)変換があった(図16)。対照的に、ブテインは、EtOH中に希釈して周囲条件下で貯蔵した場合に安定であった(図16)。ブテインは、pH7の緩衝溶液中の限られた溶解性を有し、したがって、ある程度のEtOHが溶解性の目的のために必要とされた。
【0201】
ブテインのスルフレチンへの変換は酸化的環化である。酸素を除外しようとする試みは反応を緩慢化させたが、光の除外およびラジカル阻害剤の添加は反応速度に対して効果を有しなかった。
【0202】
ダリア抽出物はブテインのスルフレチンへの同じ変換を示したが、イソリキリチゲニンははるかにより緩徐に濃度を減少させ、イソリキリチゲニンについて対応するオーロンのRPLCピークは観察されなかった。
【0203】
実施例3:高脂肪食または低脂肪食を給餌したマウスにおける血清インスリン濃度
マウスに60%の脂肪を含有する高脂肪食(HFD;カタログ番号D12492;Research Diets)または10%の脂肪を含有する低脂肪食(LFD;カタログ番号D12450B;Research Diets)のいずれかを4週間給餌した。各試験群におけるインスリンレベルをELISAにより決定した(n=33/群)。HFDのマウスの平均血清インスリン濃度は約0.75ng/ml(p=/<0.001)であり、LFDのマウスの平均血清インスリン濃度(約0.48ng/ml)より有意に高かった(図17を参照)。これらの結果は、HFDのマウスは高インスリン血症であったことを示唆する。
【0204】
実施例4:植物の異なる成熟ステージにおいて回収されたダリア花弁の抽出物中に含有される化合物の分析
花弁(小花)を異なる成熟ステージの5つの新鮮なダリアの花の包葉および花托から除去した。これらは、中央が閉じたまま(intact)(閉じている)の小さい花から、中央が完全に開いた完全に成熟した大きい花まで多様であった。1部の花弁対3部のエタノールの比を使用して、新鮮な花弁をエタノール(96%)中に抽出し、T=2時間およびT=2日においてサンプリングした。抽出物をRPLCにより分析し、結果を図20に示す。
【0205】
実施例5:前糖尿病および2型糖尿病の治療におけるBTN、SLFおよびILQの組合せの有効性を評価する臨床試験
この臨床試験は、ヒトにおけるグルコース代謝の改善における本発明の組成物の安全性および有効性の最初の証拠を提供する。
【0206】
研究の設計および方法:
【0207】
設計:この試験は、経口グルコース負荷後のグルコース代謝に対する異なる用量の本発明の組成物の効果の逐次的なクロスオーバー二重盲検研究として設計された。
【0208】
参加者:前糖尿病または糖尿病を有する14人の男性参加者をこの研究に登録した。これらの参加者のうち、10人は治療を完了し、全ての投与量レベルが試験され、これらの参加者についての結果を以下の表6~9に概説する。全ての参加者は41mmol/mol~60mmol/molのHbA1cレベルを記録した。ヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルが41~49mmol/molの場合に参加者は前糖尿病を有すると考え、HbA1cレベルが50~60mmol/molの場合に参加者は糖尿病を有すると考えた。
【0209】
除外:
a.メトホルミン以外の経口医薬を必要とするもしくはインスリン療法を必要とする2型糖尿病の任意の以前もしくは現在の病歴;
b.1型糖尿病の任意の以前もしくは現在の病歴;
c.生活様式管理もしくはメトホルミン単独治療以外の前糖尿病/糖尿病のための任意の他の治療を受けている;
d.以前の肥満手術;
e.肝臓疾患もしくは正常値上限(ULN)の少なくとも3倍のアスパラギン酸トランスアミナーゼ対アラニントランスアミナーゼの比(AST/ALT);
f.腎疾患もしくは60未満の推定糸球体濾過量(eGFR);ならびに/または
g.既知の心臓疾患。
【0210】
組成物の調製:本明細書に記載した液体抽出方法論にしたがってダリア植物材料を抽出した。残留抽出剤を除去して、粉末状固体として抽出物を得た。3単位用量の配合物を調製して3つの異なる濃度の活性物質の組合せのカプセルを得た:(i)5mg;(ii)20mg;および(iii)50mg。各単位用量の配合物を調製するために、適切な量の粉末状固体抽出物を、総質量を構成するための適切な量の微結晶セルロースと合わせ、それを次にヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルシェルに充填した。各カプセルについて指定される用量は、カプセル中に含有される粉末状固体抽出物の質量に関する。例えば、50mgのカプセルを調製するために、50wt%の粉末状固体抽出物と50wt%のMCCとの混合物を調製した後、凍結乾燥し、HPMCカプセルシェルに充填した。各カプセル内に含有される医薬組成物(例えば、BTN、SLFおよびILQならびに1つまたは複数の賦形剤を含む)の総質量は約110mg~約120mgであった。5mgのカプセルおよび20mgのカプセルについて、50mgのカプセルのために調製した適切な量の混合物をカプセルシェルに充填し、追加のMCCを加えて、各カプセルシェルが満たされることを確実にした。この実施例において使用される場合、「5mgのカプセル」は約5.85mgの抽出物を含有し、「20mgのカプセル」は約23.4mgの抽出物を含有し、「50mgのカプセル」は約58~59mgの抽出物を含有した。
【0211】
以下のプロトコールにしたがって各カプセル中のB、SおよびIの相対量を測定し、この分析の結果を以下の表5に提供する。各カプセルの含有量を計量し、50:50のEtOH:HO(1ml)中への抽出を超音波処理と共に行った。試料を濾過し(0.45μmナイロン)、HPLC分析の前に1/10において50:50のEtOH:HO中に希釈して、HPLCの検出限界内にそれらを保った。全カプセルの結果を、測定された質量および希釈について訂正した。2×4mm C18ガードカラムを用いてC18カラム(Phenomenex Luna ODS(3)5μm 100Å 150×3mm)上で20℃において、Agilent OpenLabを用いて制御されたAgilent HP1100を使用して分析的逆相HPLCを実行した。移動相の流速は0.5ml/分であり、共に0.1%のギ酸を含む、HO(B)中にMeCN(A)を含み、以下の通りにプログラムした:0分(t0)においてA 10%、12.5分(t12.5)におけるA 100%まで線形的に増加させ、15分(t15)までA 100%に保持し、16分(t16)におけるA 10%まで線形的に減少させ、20分(t20)まで10%に保持する。ピークを382nmにおいて検出し、純粋な化合物を用いた軟正からの応答係数を使用して定量化した。
【表5】
【0212】
5mgの単位用量(表5のエントリー1~3)について、SLFの濃度は約0.09wt%~約0.15wt%であり、BTNの濃度は約0.18wt%~約0.25wt%であり、ILQの濃度は約0.1wt%~約0.15wt%であった。20mgの単位用量(表5のエントリー4~6)について、SLFの濃度は約0.4wt%~約0.5wt%であり、BTNの濃度は約0.75wt%~約0.85wt%であり、ILQの濃度は約0.45wt%~約0.55wt%であった。50mgの単位用量(表5のエントリー7~9)について、SLFの濃度は約0.95wt%~約1.05wt%であり、BTNの濃度は約1.7wt%~約2wt%であり、ILQの濃度は約1wt%~約1.2wt%であった。これらの3つの単位用量のそれぞれについて、SLF:BTN:ILQの比は約1:約1.8:約1.1であった。
【0213】
研究プロトコール:登録および組成物への曝露は逐次的な拡大的順序で行った。登録された1人目は、次の2人の参加者への投与の前に全ての用量を完了した。これらの2人は、次の4人の参加者の前に研究を完了した、などのことを行った。
【0214】
研究における登録の前に、参加者は、過去3か月以内にこれらが行われなかった場合、(a)HbA1c、(b)肝臓機能、(c)腎臓機能、および(d)スクリーニングの時点において医師により適切であるとみなされる任意の追加の試験について、心電図(ECG)およびスクリーニング血液検査を受けた。
【0215】
参加者は、12時間の終夜の絶食後に標準的な75gの経口耐糖能試験(OGTT)を受けた。標準的なOGTTでは、222mLのグルコーラの形態で5分にわたり75gのグルコース溶液が経口投与される。各参加者は、グルコース、インスリンおよびCペプチド濃度の分析のために、-5分および0分および次に3時間にわたり30分間隔で静脈血試料を採取された。各時点は、グルコース投与と比較して測定された。血液試料を各時点においてシュウ酸塩/フッ化物チューブおよびEDTAチューブ中に採取した。EDTAチューブは氷上で収集した。全てのチューブを収集の30分以内に遠心分離した後、ピペットを介してクライオバイアルに移し、分析まで収集の1時間以内に-80度に凍結した。血漿グルコース、cペプチドおよびインスリン濃度を各試料から決定した。初期OGTTの結果は、参加者によるグルコース調節についての「ベースライン」または対照として働く。
【0216】
参加者はまた、少なくとも1週間の間隔で3つのさらなる機会に研究センターに通い、漸増用量の以下の投与量レベル:(1)15mg/m、(2)30mg/mおよび(3)60mg/mを与えられる。これらのその後の訪問のそれぞれにおいて、各参加者は、繰返しの75gのOGTTの1時間前に本発明の組成物を用いた処置を受けた。所望の投与量の投与を達成するために、必要とされる数の上記したようなカプセルを水と共に経口投与した。血液収集およびサンプリングを上記のベースラインOGTT試験プロトコールと同様に実行し、追加の血液試料を組成物の投与の前に収集した。
【0217】
心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和および温度といった観察の全セットもまた組成物の摂取後計5時間にわたり30分毎に記録した。
【0218】
結果
【0219】
4つ全ての処置セッションを完了した10人の参加者についての結果を表6(グルコース濃度)、表7(インスリン濃度)および表8(Cペプチド濃度)に概説する。本出願の出願時において、各投与量レベルにおける完全な処置が完了していない他の参加者が研究に登録されており(結果は示さず)、さらなる参加者の登録が継続中である。
【表6】
【表7】
【表8】
【0220】
データ解析:ベースラインから180分まで30分間隔で測定したグルコース濃度を各投与量レベル(1)~(3)における処置および対照介入(ベースライン)の結果について要約した。分析者は分析の間にいずれの投与量が各投与量レベル(1)~(3)に対応するかの詳細について盲検とされた。血中グルコース濃度を、各投与量レベルについて各参加者についての「曲線下面積」(AUC)として180分にわたり合わせた。分析は、特定の投与量レベルにおける処置および/またはベースラインを完了したが全ての投与量レベルにおける処置を完了していない参加者からのデータを含む全ての利用可能なデータを含む(未加工データは示さず)。AUCはそのため、180分にわたる総グルコース「曝露」を表す。反復測定分散分析(分散分析)を使用してAUCを群間で比較し、反復測定分散分析(分散分析)は、クロスオーバーデザインを可能とし、各参加者は用量介入の範囲を受ける。分散分析からの結果を95%信頼区画と共に平均として要約し、最小有意差検定を使用してペアワイズ方式で用量群を比較した。両側p値<0.05を統計的有意性を指し示すものとした。この分析の結果を表9ならびに図17および図18に示す。類似の分析をインスリンおよびCペプチド濃度の結果について行った(図示せず)。
【表9】
【0221】
全ての投与量は血中グルコースレベルの低減を実証した。AUCの結果は、60mg/mの投与量の投与後の参加者についてのグルコース曝露の統計的に有意(p=0.01)な低減を示す。OGTTにわたるグルコース曝露の総低減は、ベースラインと比較した場合にAUCにおける約9%の差異に対応する(表9および図22を参照)。より低い投与量レベルについての結果は、追加の参加者からのさらなるデータの追加と共に試験の完了時に有意性を示す可能性がある。さらに、任意の用量(15mg/m~60mg/m)を与えられた後の参加者により副作用は報告されなかった。有害効果は、安全性の血液検査、腎臓機能、肝臓機能または全血球数において観察されなかった。
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