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特許7434160ジアンヒドロヘキシトールジアルキルカーボネート又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートのダイマーから得られるオリゴカーボネートポリオール、それらを製造するための方法、及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ジアンヒドロヘキシトールジアルキルカーボネート又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートのダイマーから得られるオリゴカーボネートポリオール、それらを製造するための方法、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20240213BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08G64/02
C08G18/44
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542205
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 FR2018052558
(87)【国際公開番号】W WO2019077250
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】1759690
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク コルパール
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506645(JP,A)
【文献】特表2014-510180(JP,A)
【文献】特表2010-539264(JP,A)
【文献】特開2014-080590(JP,A)
【文献】特開2012-072350(JP,A)
【文献】特開2013-010948(JP,A)
【文献】特開2013-018979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64/02
C08G18/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基及びフェノール性の官能基を含まない、オリゴカーボネートポリオールを製造するための、プロセスであって、
・ 工程(1)、反応器の中に以下のものを導入する工程:
- 式(A1)のモノマー:
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
・ 工程(2)、前記反応器の中に、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールから選択されるジオールモノマー(B1)を導入する工程;
- 前記反応器の中での、(A1)の(B1)に対するモル比が、次式に相当し、
[(A1)/(B1)]<1
- 前記反応器の中には、式(A2)のダイマーが含まれず:
【化2】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 前記反応器の中には、環状ジオールが含まれず:
・ それに続く工程(3)、前記モノマーの(A1)、及び(B1)をエステル交換により重縮合させて、5000g/mol未満の数平均モル質量(Mn)、及び少なくとも2個のヒドロキシルタイプの鎖末端基を有するオリゴカーボネートポリオールを得る工程、
・ 工程(4)、前記オリゴカーボネートポリオールを回収する工程、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記工程(2)において、前記反応器の中に、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールであるジオールモノマー(B1)が導入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応器の中での、(A1)の(B1)に対するモル比で、次式、
(A1)/(B1)
が、1未満且つ0.5より大であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
、及びRが、独立して、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記モノマー(A1)が、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(3)が、エステル交換による重縮合についての触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記モノマー(A1)の量に対する前記触媒のモル量が、10-7%~1重量%の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(3)が、不活性雰囲気下で実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(3)の少なくとも一部が、100℃~250℃の範囲の温度で実施されることを
特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
さらに、
・工程(5)、工程(4)で回収された前記オリゴカーボネートポリオールを、それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な、少なくとも2個の官能基を有するモノマーと反応させる工程を含む、接着剤、ペイント、ラッカー、ワニス、又は樹脂を調製するための、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な少なくとも2個の官能基を有する前記モノマーが、ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な少なくとも2個の官能基を有する前記モノマーが、直鎖状又は環状の脂肪族ジイソシアネートであることを特徴とする、請求項10又は11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異な反応条件下、特には、含まれる反応物質の相対量の特異な条件下での、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーと、他のジオール及び/又はトリオールとの反応により得られる新規なオリゴカーボネートポリオールに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに、以下のような利点を示す:バイオベースの由来であるジアンヒドロヘキシトールを使用するので、製造された製品の化石燃料フットプリントを低減させること;多くの従来からの解決法のように、ホスゲンを使用したり、フェノールを発生したりしないこと(これら2つの反応生成物は、使用者にとって有害であるだけでなく、食品と接触する各種の用途では禁止されている);調節された構成の製品が得られること;そして最後に、それらの製品を使用することによって、特に摩耗抵抗性、引掻き抵抗性及びUV照射抵抗性が高いコーティングを製造することが可能となること。
【0003】
ポリ-又はオリゴ-カーボネートジオールは、今日では周知の実体であり、接着剤のみならず、各種のコーティング、たとえば、ペイント、ラッカー、及びワニスの製造において、多くの用途を見出している。それらの周知の用途の一つが、ポリウレタン樹脂タイプのコーティングの製造である。エーテル成分(ポリテトラメチレングリコール)、エステル成分(特に、アジピン酸エステルから出発して)、及びポリラクトン成分(なかんずく、ポリカプロラクトンベース)と同様に、ポリカーボネートジオールは、これらポリウレタン樹脂のための出発物質の1つを構成している。
【0004】
エーテルは、加水分解に対しては良好な抵抗性を示すものの、それらは、光及び熱に対する抵抗性が低い。エステルは、それらと同じ性質に関しては、全く逆の挙動を示す。ポリカプロラクトンに関しては、それらもやはり、加水分解現象に関連する欠陥を有している。この理由のため、ポリカーボネートジオールが、現時点では、最終製品での、加水分解、熱、及び光に対する抵抗性の面での長続きする品質を得る目的で最適な妥協点を呈すると認識されている。このことは、とりわけ、まさに上述のような攻撃に晒される外用のペイントのような用途での、ポリウレタンタイプのコーティングでは特に重要である。
【0005】
ポリカーボネートポリオールをベースとするポリウレタンタイプの物質の製造は、今日では、多くの文献に記載されている。例を挙げれば、文献の国際公開第2015/026613号パンフレットには、水圧ポンプのためのピストンシールが記載されているが、前記シールは、ポリウレタンタイプのものであり、ポリカーボネート-イソシアネートプレポリマー、ポリカーボネートポリオール、ジオール、及び硬化剤の間の反応によって得られている。
【0006】
オリゴカーボネートジオールに関しては、それらの合成法もまた、従来技術において広範囲な教示がある。それらの反応生成物は、脂肪族ポリオールを、ホスゲン、ビスクロロカルボン酸エステル、ジアリールカーボネート、それらの環状カーボネート、又はジアルキルカーボネートと反応させることにより調製される。これに関しては、文献の米国特許出願公開第2005/065360号明細書を参照されたい。
【0007】
したがって、当業者は、製造するポリ-又はオリゴ-カーボネートジオールの優れた性
能品質レベルの維持を目指しながらも、今日では、新しい制約、とりわけ環境に関わる制約にも取り組まなくてはならない。化石資源、たとえば石油の枯渇やコスト上昇に直面して、短期間で再生可能である生物資源から得られるポリマー物質の開発が、疑いもなく、エコロジー的及び経済的に主たる緊急課題となってきた。この文脈において、ジヒドロキシル化モノマーとしての植物の(ポリ)サッカライドから得られるジアンヒドロヘキシトールを重縮合反応において使用することが、石油化学由来のモノマーを置き換えるのに有望と考えられる。
【0008】
ジアンヒドロヘキシトールを組み入れたポリカーボネートジオールを製造するために、いくつかの試みがなされてきた。この点に関しては、特開2014-62202号公報及び特開2014-80590号公報が公知である。第一の出願には、リンベースの化合物、フェノール性化合物、及びポリカーボネートジオールを含む組成物が記載されており、後者は、250~5000の間の数平均分子量を有し、少なくとも95%に等しい、ヒドロキシル基の末端基に対するモル比を呈している。第二の出願には、ジオールと、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディドから選択されるジアンヒドロヘキシトールとからなるポリカーボネートジオールが記載されており、それは、NMRで測定して250~5000の間の重量平均分子量を有していながらも、それと同時に、末端基を合計した数に対して、5%以上のアルキルオキシ又はアリールオキシ末端基の比率を有している。
【0009】
それでもなお、これらの反応生成物はジオールとジアンヒドロヘキシトールとの間の反応により得られるが、ただし、さらにジフェニルカーボネートの存在下でもある。そのために、ポリカーボネートジオールを合成する際にフェノールが発生する。実際、フェノールは、(その反応生成物について、及び最終用途についての両方で)使用者に有害であると同時に、食品と接触する用途では禁止されている反応生成物である。したがって、フェノールの存在は完全に受容不能となっていて、次いでそれを除去するためには蒸留をしなければならない。このことは、上述の2件の特許出願を説明する試験でも明瞭に記述されていることである。
【0010】
文献の欧州特許第2 559 718号明細書もまた公知であり、そこには、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディドから選択されるジオール、他のジオール、並びにジエステルカーボネート、たとえばジフェニルカーボネートの間の並発反応が記載されている。この場合、そのようにしてポリカーボネートジオールが得られるものの、それはまったくランダムな構造を有しているが、その理由は、ジエステルカーボネートの反応性が高いので、それが、ジアンヒドロヘキシトールと他のジオールとの両方に非選択的に反応するからである。その製品の、たとえば加水分解、光、及び熱に対する抵抗性のような最終的な性質は、その構造に直接関係するので、前記ポリカーボネートジオールは、その最終的な構造の関数として変動するような性質を呈することになるであろう。このように、性質の調節ができないということは、問題の製品の工業的な使用には、適応させることができない。
【0011】
したがって、天然由来のモノマーたとえばジアンヒドロヘキシトールを採用して有利にオリゴカーボネートポリオールを製造するが、ホスゲンを採用することなく且つ反応の際にフェノールを発生させることなく製造し、最後に、それと同時に、合成された反応生成物の構造を規制することが可能となるように製造する目的で、本出願会社は、以下に示すプロセス、すなわちジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーを、他のジオール及び/又はトリオールと反応させて、完全に調節することが可能で、調節された交互構造(alternating architecture)を呈するオリゴカーボネートポリオールを得ることからなるプロセスを開発するのに成功した。ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーに対して、他のジ
オール及び/又はトリオールを過剰モル使用することによって、ヒドロキシル末端基を得ることが可能となる。
【0012】
そうすることによって、先に述べた技術的な制約の解決を達成することに成功した。さらに、最終的には、接着剤並びに、各種のコーティングたとえば、ペイント、ラッカー、及びワニスの製造において使用することが可能な、ポリカーボネートジオールが得られる。これらのオリゴカーボネートポリオールは、特に摩耗抵抗性、引掻き抵抗性及びUV照射抵抗性の点で、特に有利な性質を有するポリウレタン樹脂を製造するために使用することができる。
【0013】
反応に与るイソソルビドビス(アルキルカーボネート)は、特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレットに記載の方法に従って製造するのが有利である。この方法は、少なくとも1種のジアンヒドロヘキシトール、少なくとも2モル当量のジ(アルキル)カーボネート、及びエステル交換反応触媒を反応させることからなっている。従来技術に記載されているプロセスとは異なった、この方法では、人にとって有害であったり、又は環境に対して危険であったりする、いかなる化合物も発生しない。したがって、特許出願の欧州特許第2 033 981号明細書に合成法が記載されているが、それの欠点はフェノールが生成することであって、フェノールは、次いで、反応副生物として蒸留除去する必要がある。文献の米国特許出願公開第2004/241553号明細書、及び特開06-261774号公報に関しては、それらは、毒性のあるクロロギ酸エステルの使用をベースとするものであった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、第一の態様においては、本発明は、芳香族基及びフェノール性の官能基を含まないオリゴカーボネートポリオールを製造するためのプロセスに関し、それには以下が含まれる:
・ 工程(1)、反応器の中に以下のものを導入する工程:
- 式(A1)のモノマー:
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は、式(A2)のダイマー:
【化2】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は(A1)と(A2)との混合物;
・ 工程(2)、その反応器の中に、ジオールモノマー(B1)又はトリオールモノマー(B2)、又は(B1)と(B2)との混合物を導入する工程(ここで、(B1)及び(B2)は共に、(A1)及び(A2)とは異なる);
- その反応器の中での、(A1)及び(A2)の、(B1)及び(B2)に対するモル比が、次式に相当し、
【数1】
・ それに続く工程(3)、モノマー及びダイマーの(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)をエステル交換により重縮合させて、5000g/mol未満のモル質量、及び少なくとも2個のヒドロキシルタイプの鎖末端基を有するオリゴカーボネートポリオールを得る工程、
・ 工程(4)、そのオリゴカーボネートポリオールを回収する工程。
【0015】
第二の態様においては、本発明は、本発明のプロセスによって得ることが可能なオリゴカーボネートポリオールに関する。
【0016】
第三の態様においては、本発明は、特に、接着剤、ペイント、ラッカー、ワニス、又は樹脂たとえばポリウレタン樹脂を調製することを目的とした、ポリマー物質を調製するためのプロセスに関し、本発明によるオリゴカーボネートポリオールを、それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な、少なくとも2個の官能基を示すモノマーと反応させることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、「オリゴカーボネートポリオール」という用語は、カーボネート結合を介して結合された、モノマー又はダイマーの反応により形成された繰り返し単位、特には先に述べた繰り返し単位を含み、その鎖末端基がヒドロキシル官能基である各種のポリマーを意味していると理解されたい。これらの繰り返し単位は、上で先に示してように、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)とモノマー(B1)及び/又は(B2)
との反応により形成される。
【0018】
本発明の意味合いにおいて、「モノマー」という用語は、このモノマーの混合物に適用される。別の言い方をすれば、「モノマー(A1)」又は「式(A1)のモノマー」という表現は、式(A1)の1種だけのモノマーが使用されるか、又はそうでなければ、式(A1)の異なるモノマーの混合物が使用されるということを意味している。同様の意味合いが、「モノマー(A2)」又は「式(A2)のダイマー」、「モノマー(B1)」又は「式(B1)のモノマー」、或いは「モノマー(B2)」又は「式(B2)のモノマー」などの表現にもあてはまる。
【0019】
上に説明したように、本発明は、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)と、モノマー(B1)及び/又は(B2)との重縮合によりヒドロキシテレケリックオリゴカーボネートの製造のためのプロセスにも関する。
【0020】
本発明において使用される「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」又は「ジアンヒドロヘキシトール」という用語には、イソソルビド(D-グルシトールの脱水により得られる)、イソマンニド(D-マンニトールの脱水により得られる)、及びイソイディド(D-イジトールの脱水により得られる)が包含される。
【0021】
本発明においては、「ジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマー」という用語は、式(A2)の、すなわち、二価のカーボネート官能基によって互いに結合されたジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートの2つの分子からなる、化合物を意味しているものと理解される。したがって、その化合物には、合計して2個のカーボネート末端基が含まれる。
【0022】
モノマー(A1)及び(A2)
工程(1)において使用されるモノマー(A1)は、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)、イソマンニドビス(アルキルカーボネート)、及びイソイディドビス(アルキルカーボネート)から選択することが可能である。
【0023】
モノマー(A1)は、1種又は複数種のジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)を含むことができるが、1種だけのジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)、特にはイソソルビドビス(アルキルカーボネート)が含まれているのが好ましく、このものは、他の2つの立体異性体よりも大量且つ安価に入手することが可能である。
【0024】
モノマー(A1)に担持されるアルキル基のR及びRには、1~10個の炭素原子、特には1~6個の炭素原子、たとえば1~4個の炭素原子を含むことができ、極めて特には、メチル基又はエチル基から選択される。
【0025】
一つの実施態様においては、そのモノマー(A1)が、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)、特にはイソソルビドビス(エチルカーボネート)又はイソソルビドビス(メチルカーボネート)である。
【0026】
モノマー(A1)は、たとえば、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)の製造のための、すでに公知のプロセスを使用して得ることができる。
【0027】
モノマー(A1)は、特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレット(Roquette Freresの代理)に記載のプロセスに従って、ジアンヒドロヘキシトールを、少なくとも2モル当量のジ(アルキル)カーボネート及びエステル交換反応
触媒と反応させることによって調製するのが有利である。大過剰のジアルキルカーボネートを使用することによって、ダイマーの生成を抑制することができる。この方法は、人にとって有害であったり、又は環境に対して危険であったりする化合物を発生しないという利点を有している。
【0028】
モノマー(A1)はさらに、ジアンヒドロヘキシトールとアルキルクロロホーメートと反応させることによっても製造することができるが、これらの反応剤を、1:2のモル比で反応器の中に導入する。このタイプのプロセスは、たとえば、文献の特開06-261774号公報の実施例5に記載されている。本願出願会社が見出すことができたところでは、このプロセスに従うと、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)のみが生成し、ダイマーはまったく生成しない。
【0029】
工程(1)において使用されるダイマー(A2)は、(A1)のダイマーである。使用するジアンヒドロヘキシトールに依存して、ダイマー(A2)の1種又は複数種の「立体配座」を得ることができる。
【0030】
ダイマー(A2)は、イソソルビドカーボネートダイマー、イソマンニドカーボネートダイマー、又はイソイディドカーボネートダイマーから選択することができる。
【0031】
ダイマー(A2)には、1種又は複数種のジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーを含むことができるが、1種だけのジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマー、特にはイソソルビドカーボネートダイマーが含まれているのが好ましく、このものは、他の2つの立体異性体よりも大量且つ安価に入手することが可能である。
【0032】
ダイマー(A2)により担持されるアルキル基のR及びRには、1~10個の炭素原子、特には1~6個の炭素原子、たとえば1~4個の炭素原子が含まれることができ、極めて特には、メチル基又はエチル基から選択される。
【0033】
一つの実施態様においては、そのダイマー(A2)が、イソソルビドカーボネートダイマー、特には、イソソルビドエチルカーボネートダイマー又はイソソルビドメチルカーボネートダイマーである。
【0034】
ダイマー(A2)は、たとえば、第一の工程において、1モルのジアンヒドロヘキシトールを1モルのアルキルクロロホーメートと反応させて、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートを形成させ、次いで第二の工程において、1モルのホスゲンを2モルの、第一の工程で形成されたジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートと反応させることにより、製造することができる。
【0035】
モノマー(A1)及びダイマー(A2)を製造することが可能なまた別な方法では、それらの同時合成を可能にするプロセスを使用する。詳しくは、本願出願会社は、そのような混合物の製造を可能にするプロセスも開発した。このプロセスは、国際特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレットに詳しく記載されている。
【0036】
この調製プロセスには、順に以下の工程が含まれる:
(a)以下のものを含む初期反応混合物を調製する工程:
- 少なくとも1種のジアンヒドロヘキシトール、
- 存在しているジアンヒドロヘキシトールの量を基準にして、少なくとも2モル当量の、少なくとも1種のジアルキルカーボネート、及び
- エステル交換反応触媒、たとえば、炭酸カリウム、
(b)反応混合物から、得られたアルコール、又は反応混合物の中に存在している成分の
内の別のものと形成する共沸混合物を分離するのに十分な理論蒸溜段数を有する精留塔を備えた反応器の中で、反応混合物を加熱して、エステル交換反応によって形成されるアルコールR-OHの沸点以上、又は得られたアルコールR-OHが、その反応混合物の中に存在している成分の内の別のものと形成する共沸混合物の沸点以上、最大でもその反応混合物の沸点に等しい温度とする工程。
【0037】
プロセスの最後に得られる溶液には、ジアルキルカーボネートと共に、モノマー(A1)及びダイマー(A2)の混合物が含まれる。蒸留を実施して、ジアルキルカーボネートを欠く、(A1)と(A2)との混合物を回収する。(A1)/(A2)の比率は、初期反応混合物を変化させることにより変えることが可能であり、初期反応混合物に、反応媒体中に最初に存在していたジアンヒドロヘキシトールの量を基準にして、有利には2.1~100モル当量、好ましくは5~60モル当量、特には10~40モル当量のジアルキルカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートの量が多いほど、(A1)/(A2)の比率が高い。
【0038】
たとえば、本願出願会社の見出したところでは、先に記載したプロセス条件の下で、炭酸カリウムの存在下に、イソソルビドとジメチルカーボネートとを反応させることによって、約4(ジアルキルカーボネート/イソソルビド比が10の場合)から約20(ジアルキルカーボネート/イソソルビド比が40の場合)までの範囲の(A1)/(A2)比で、(A1)及び(A2)を含む溶液を得ることが可能となった。
【0039】
次いで(A1)と(A2)とを、真空蒸留技術により、たとえば強制薄膜式(wiped-film)蒸発器を使用して分離することができる。
【0040】
(A1)と(A2)とを同時に合成するこのプロセスは、たとえば文献特開06-261774号公報に記載のプロセスにおいて使用されているアルキルクロロホーメートよりは毒性が低い反応剤を使用するという利点を呈しており、合成副生物も、クロロホーメートを用いた合成の際に発生する塩素化実体よりは毒性が低い(そのアルキルがメチルの場合にはメタノール、そのアルキルがエチルの場合にはエタノール)。
【0041】
一つの実施態様においては、モノマー(A1)のみが合成される。工程(1)において反応器に導入されるのはこのモノマーのみである、つまり、反応器の中にはダイマー(A2)は一切導入されない。
【0042】
また別な実施態様においては、モノマー(A1)とダイマー(A2)との混合物が合成される。工程(1)において、この混合物が反応器の中に導入される。
【0043】
モノマー(B1)及び(B2)
ジオールモノマー(B1)及びトリオールモノマー(B2)は、脂肪族ジオール又はトリオールから選択することができるが、それらは具体的には、直鎖状若しくは分岐状、又はそうでなければ環状、芳香族、若しくは非芳香族のジオール又はトリオールである。
【0044】
一つの実施態様においては、そのジオール(B1)又はトリオール(B2)には、2~14個の炭素が含まれる。
【0045】
直鎖状(非分岐状)の脂肪族ジオールは、以下のジオールから選択することができる:エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、好ましくはエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオール。
【0046】
直鎖状の脂肪族トリオールは、以下のトリオールから選択することができる:グリセロール、1,2,4-トリヒドロキシブタン、1,2,5-トリヒドロキシペンタン、又は1,2,6-トリヒドロキシヘキサン。
【0047】
分岐状の脂肪族ジオール(非反応性のペンダント鎖を持つ)は、以下のジオールから選択することができる:1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、又は2-メチル-1,3-プロパンジオール。
【0048】
環状ジオール又はトリオールには、1個又は複数の環、たとえば2~4個の環、好ましくは2個の環を含むことができる。それぞれの環には、4~10個の原子が含まれているのが好ましい。それらの環の中に含まれる原子は、炭素、酸素、窒素、又は硫黄から選択することができる。環の成分原子が、炭素であるか、又は炭素及び酸素であるのが好ましい。
【0049】
芳香族ジオールには、好ましくは、6~24個の炭素原子が含まれる。
【0050】
非芳香族の環状ジオールは、4~24個の炭素原子、有利には6~20個の炭素原子を含むことができる。
【0051】
環状脂肪族ジオールは、具体的には以下のジオールから選択することができる:
・ ジアンヒドロヘキシトール、たとえばイソソルビド、イソマンニド、及びイソイディド(バイオ原料の複素環式ジオール);
・ シクロヘキサンジメタノールたとえば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール;
・ トリシクロデカンジメタノール;
・ ペンタシクロペンタンジメタノール;
・ デカリンジメタノールたとえば、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、及び2,3-デカリンジメタノール;
・ ノルボルナンジメタノールたとえば、2,3-ノルボルナンジメタノール、及び2,5-ノルボルナンジメタノール;
・ アダマンタンジメタノールたとえば、1,3-アダマンタンジメタノール;
・ シクロヘキサンジオールたとえば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジオール;
・ トリシクロデカンジオール;
・ ペンタシクロペンタデカンジオール;
・ デカリンジオール;
・ ノルボルナンジオール;
・ アダマンタンジオール;
・ スピログリコール;
・ 2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール;
・ ジ-O-メチレン-D-グルシトール、及びジメチル-ジ-O-メチレン-D-グルカレート。
【0052】
芳香族環状ジオールは、具体的には以下のジオールから選択することができる:
・ 1,4-ベンゼンジメタノール;
・ 1,3-ベンゼンジメタノール;
・ 1,5-ベンゼンジメタノール;
・ 2,5-フランジメタノール;
・ ナフタレン-2 6-ジカルボキシレート。
【0053】
芳香族環状トリオールは、以下のトリオールから選択することができる:ピロガロール、ヒドロキシキノール、又はフロログルシノール。
【0054】
本発明のプロセスに従って、(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)以外のモノマーを導入することができる。
【0055】
たとえば、3個以上のアルコール又はアルキルカーボネート官能基を含むモノマーを導入することも可能である。カルボン酸、カルボン酸エステル、若しくはアミン官能基、又はそれらの官能基の混合したものから選択される数個の官能基を含むモノマーを導入することもまた可能である。その他のモノマー、たとえば、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネート、3以上の重合度を有する(A1)のオリゴマーを、導入することもできる。
【0056】
その他の反応生成物、又はそうでなければ、たとえばジアンヒドロヘキシトールジアルキルエーテル、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルエーテル、又はジアンヒドロヘキシトールモノアルキルエーテルモノアルキルカーボネート(これらは、(A1)又は(A2)の合成副生物であることができる)のような生成混合物を導入することもまた可能である。アルコール又はカーボネート官能基と反応することが可能な官能基を1つだけ含んでいる化合物である、鎖停止剤を導入することもまた可能である。
【0057】
しかしながら、反応器の中に導入されるモノマーの合計量に関して言えば、(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)を合計したものが、導入されるモノマーの合計量の、90モル%より大、有利には95%より大、さらには99%より大を占めているのが好ましい。反応器の中に導入されるモノマーが、実質的に(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)からなるのが、極めて好ましい。導入されるジアリールカーボネート及びハロゲン化モノマーの量が、たとえば導入されるモノマーの合計モノマー数の5%未満の量に制限されるのが、極めて明らかに好ましい。特に好ましい実施態様においては、ジアリールカーボネート及びハロゲン化モノマーから選択されるモノマーがまったく導入されない。
【0058】
(B1)及び(B2)に対する(A1)及び(A2)のモル比
反応器の中での、(A1)及び(A2)の(B1)及び(B2)に対するモル比は、次式に従う:
【数2】
【0059】
有利には、上で定義されたような、反応器の中での、(A1)及び(A2)の(B1)及び(B2)に対するモル比は、厳密には、1未満且つ0.5より大、特に厳密には1未満且つ0.7より大、より特に厳密には、1未満且つ0.9より大である。
【0060】
このモル濃度、及び他のジオール(B1)及び/又はトリオール(B2)の過剰量の極めて特殊な選択をした結果、それぞれの鎖末端にヒドロキシル官能基を呈するオリゴカーボネートポリオールが得られ、それによって、それらがポリマーたとえば、ポリウレタン
の調製に有用なものとなる。
【0061】
その比率が低いほど、得られるオリゴカーボネートのモル質量も小さくなる。
【0062】
導入工程(1)と(2)の順序は、重要ではない。工程(2)の前に工程(1)を実施してもよいし、或いはその逆であってもよい。これら2つの工程を同時に実施することもまた可能である。一つの変形においては、(A1)及び/又は(A2)と、(B1)及び/又は(B2)とのプレミックスを調製し、その後でそれらを反応器の中に導入する。プロセスにおいてダイマー(A2)を使用する場合、それを(A1)との混合物として導入することができる。この混合は、たとえば、国際特許出願の国際公開第2012/136942号パンフレットに記載の合成プロセスに直接従って実施することができる。モノマー又はダイマーの混合物を導入するような場合には、これらのモノマーのそれぞれの量を、クロマトグラフ法、たとえばガスクロマトグラフィー(GC)によって求めることができる。
【0063】
たとえば、混合物の(A1)及び(A2)の量を求めるためには、成分のそれぞれの量を、トリメチルシリル誘導体の形態にして、GCにより分析を実施することにより、測定することができる。
【0064】
そのサンプルは、次の方法に従って調製することができる:ビーカーの中に、500mgのサンプルと、50mgの純度公知のグルコースペンタアセテート(内部標準)とを量り込む。50mLのピリジンを添加し、完全に溶解するまで撹拌を続ける。コップに1mLを採取し、0.5mLのビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドを添加してから、70℃で40分間加熱する。
【0065】
クロマトグラムを作製するには、以下のものを備えたVarian 3800クロマトグラフを使用することができる:
- 長さ30m、直径0.32mmで、膜厚0.25pmのDB1カラム
- ガラスウールを用い、300℃に加熱したFocus Linerを備えた1177タイプのインゼクター、スプリット比;30、ヘリウム流量;1.7mL/分、
- 温度300℃に加熱し、感度10-11に調節したFID検出器。
【0066】
クロマトグラフの中に1.2μLのサンプルをスプリットモードで導入することが可能であるが、カラムは、100℃から320℃まで勾配7℃/分で加熱してから、320℃で15分間固定相に保持する。これらの分析条件下では、(A1)がイソソルビドビス(メチルカーボネート)且つ(A2)が(A1)のダイマーである場合、(A1)が約0.74の相対保持時間、(A2)が約1.34~1.79の範囲の相対保持時間を有し、内部標準が、約15.5分の保持時間を有する。
【0067】
クロマトグラムを使用すれば、それぞれの成分の質量パーセントは、相当するピークの面積を求め、それぞれの成分について、全部のピーク(内部標準のピークは除く)の合計した面積に対して、それらのピークの面積の比率を計算することによって、計算することができる。
【0068】
エステル交換による重縮合反応
本発明のプロセスによりポリカーボネートの形成を可能とするためには、エステル交換反応によって、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)を、モノマー(B1)及び/又は(B2)と反応させるが、この反応は、反応器の中で行わせる。
【0069】
この反応は、触媒無しで行わせることも可能である。しかしながら、適切な触媒を存在
させることによって、反応を加速させたり、及び/又は工程(3)の際に形成されるポリカーボネートの重合度を増大させたりすることが可能となる。
【0070】
工程(3)の縮合エステル交換反応のタイプ及び条件には、特段の制限はない。
【0071】
しかしながら、工程(3)は、エステル交換による重縮合についての公知の触媒の存在下で実施するのが有利であり、触媒が、少なくとも1種のアルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオン、1種の四級アンモニウムイオン、1種の四級ホスホニウムイオン、1種の環状窒素含有化合物、1種の塩基性ホウ素ベース化合物、又は1種の塩基性リンベース化合物を含んでいれば有利である。
【0072】
少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒の例としては、セシウム、リチウム、カリウム又はナトリウム塩を挙げることができる。それらの塩は、具体的には、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩、ステアリン酸、ホウ水素化物、ホウ化物、リン酸塩、アルコキシド、又はフェノキシド、及びさらにはそれらの誘導体であってよい。
【0073】
少なくとも1種のアルカリ土類金属イオンを含む触媒としては、カルシウム、バリウム、マグネシウム、又はストロンチウムの塩を挙げることができる。塩は、具体的には、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩、又はステアリン酸塩、及びさらにはそれらの誘導体であってよい。
【0074】
塩基性ホウ素ベース化合物に関しては、それらは、好ましくは、アルキル若しくはフェニルホウ素誘導体、たとえばテトラフェニルホウ素の塩である。
【0075】
塩基性リンベース化合物を含む触媒としては、ホスフィンを挙げることができる。四級アンモニウムイオンを含む触媒は、好ましくは水酸化物、たとえばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0076】
環状窒素含有化合物を含む触媒は、好ましくは、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピコリン、ピペリジン、ピリジン、アミノキノリン、又はイミダゾールの誘導体である。
【0077】
触媒は、少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒、環状窒素含有化合物を含む触媒、及び四級アンモニウムイオンを含む触媒、たとえば炭酸セシウム、トリアゾール又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドから選択するのが好ましく、極めて好ましくは炭酸セシウムである。
【0078】
任意成分の触媒の、(A1)及び(A2)の量に対するモル量は、有利には10-7%~1%の範囲、好ましくは10-4%~0.5%の範囲である。その量は、使用した触媒の関数として調整することができる。例としては、10-3%~10-1%の、少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒を使用するのが好ましい。
【0079】
場合によっては、添加剤たとえば安定剤を、(A1)及び/又は(A2)並びに(B1)及び/又は(B2)に対して添加することもできる。
【0080】
その安定剤は、たとえば、リン酸をベースとする化合物たとえば、リン酸トリアルキル、亜リン酸をベースとする化合物たとえば、亜リン酸塩若しくはリン酸塩誘導体、又はそれらの酸の塩たとえば、亜鉛塩であってよく、この安定剤によって、ポリマー製造の際にその着色を抑制することが可能となる。溶融状態で重縮合を実施する場合には特に、それを使用するのが有利となりうる。しかしながら、安定剤の使用量は、一般的には、(A1
)、(A2)、(B1)、及び(B2)の合計モル数の0.01%未満である。本発明におけるポリカーボネート製造プロセスにおいては、(A1)及び/又は(A2)並びに(B1)及び/又は(B2)の重縮合工程は、工程(3)の間に実施される。その重合のタイプ及び条件には、特段の制限はない。この反応は、溶融状態で、すなわち、溶媒を使用せずに反応媒体を加熱することによって実施することができる。この重合はさらに、溶媒の存在下で実施することもまた可能である。溶融状態でこの反応を実施するのが好ましい。
【0081】
工程(3)は、ポリカーボネートを得るのに十分な時間をかけて実施する。工程(3)の実施時間が、1時間~24時間、たとえば2~12時間であるのが有利である。
【0082】
本発明におけるプロセスの工程(3)の少なくとも一部を、100℃~250℃、好ましくは150℃~235℃の範囲の温度で実施することができる。工程(3)の際に、反応器を、100℃~250℃、好ましくは150℃~235℃の範囲の温度に温度調節するのが好ましい。
【0083】
工程(3)の全部を、等温条件下で実施することも可能である。しかしながら、一般的には、この工程の間に、温度を段階的に上げるか、又は温度勾配を使用するかのいずれかで、温度を上昇させるのが好ましい。工程(3)の間にこのように昇温させることによって、エステル交換による重縮合反応の進行度を改良し、それにより、最終的に得られるポリカーボネートの分子質量を増大させることが可能となるが、後者はさらに、プロセスの工程(3)を全部、その最高温度で実施した場合よりは、着色の程度が低い。
【0084】
言うまでもないことではあるが、工程(3)は、不活性雰囲気下、たとえば窒素下で実施するのが好ましい。
【0085】
本発明におけるプロセスの際に、発生するアルコールを除去するために反応器の中を真空にすることは必要ないが、その理由は、発生するアルコールは、フェノールよりは容易に蒸留除去することが可能であるからである。したがって、本発明におけるプロセスは、エステル交換による重縮合の工程を、高真空下で実施する必要はないという利点を呈する。したがって、本発明のプロセスの一つの変形においては、工程(3)の少なくとも一部が、30kPa~110kPa、有利には50~105kPa、好ましくは90~105kPaの範囲の圧力で、たとえば大気圧で実施される。工程(3)の全期間の少なくとも半分を、この圧力で実施するのが好ましい。
【0086】
しかしながら、工程(3)の全期間又は一部期間を、少し高い真空下、たとえば反応器の圧力を100Pa~20kPaの間として、実施することも可能である。言うまでもないことではあるが、この真空は、反応器の内温及び重合度に合わせて調節するが、重合度が低いときに、圧力が低すぎたり、温度が高すぎたりすると、反応がうまく進行しない可能性があり、その理由は、蒸留によってモノマーが、反応器から抜き出されてしまうからである。少し高い真空で実施するこの工程は、反応の最後のところで、実施することができ、それによって、残存している実体のいくつかを除去することがさらに可能となる。
【0087】
その反応器は、一般的に、重縮合反応の際にエステル交換によって発生するアルコールを除去するための手段、たとえば凝縮器に接続された蒸留塔頂を備えている。
【0088】
その反応器は、一般的に、撹拌手段、たとえばパドル撹拌システムを備えている。
【0089】
工程(3)の際にモノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)は、モノマー(B1)及び/又は(B2)と交互に反応するという利点を呈する。そのために、その反応によっ
て、交互構造を有するオリゴマーが生成する。
【0090】
モノマー(B1)及び/又は(B2)の追加の導入の、1段又は複数段の工程を実施することも可能であるが、これは、縮合エステル交換工程(3)が開始された後に実施される。
【0091】
このプロセスは、バッチ式、連続式、又は半連続半バッチ式で実施することができる。
【0092】
このプロセスで形成されたオリゴカーボネートは、工程(4)で回収する。このオリゴカーボネートは、造粒機の手段によって粒状物の形状や、各種他の形状に、直接変換させることができる。工程(4)に続く工程で、そのようにして得られた反応生成物の精製を、たとえば溶媒たとえばクロロホルムの中にその反応生成物を溶解させることにより、次いで非溶媒たとえばメタノールを添加することにより沈殿させることにより、実施することも可能である。
【0093】
本発明のプロセスのおかげで、採用されたモノマー又はダイマーの合計重量に対する、回収されたオリゴカーボネートの重量の比率で定義される重量収率で、60%以上、有利には70%より大、好ましくは80%より大の値を得ることができる。
【0094】
本発明のまた別の主題は、先に定義された本発明におけるプロセスにより得ることが可能なオリゴカーボネートポリオールである。
【0095】
有利なことには、本発明におけるオリゴカーボネートポリオールは、50ppb未満のフェノール含量を含む。
【0096】
残存フェノール含量は、酸加水分解によって予め完全に加水分解させておいたサンプルについての、ガスクロマトグラフィーによって測定される。当業者ならば、オリゴカーボネートの酸加水分解、及び定量的な応答を測定する目的の内部標準を用いたガスクロマトグラフィーによるその粗反応生成物の分析は、容易に実施することができる。
【0097】
本発明におけるプロセスにより得られるオリゴカーボネートポリオールは、5000g/mol未満のモル質量、及びヒドロキシルタイプの鎖末端基を呈する。
【0098】
工程(3)において採用される、(A1)及び/又は(A2)の量に対する、モノマー(B1)及び/又は(B2)の量を減らすか、又はそれぞれ増やすことによって、オリゴカーボネートのモル質量を下げるか、又はそれぞれ上げることが可能である。
【0099】
工程(3)において採用される、(B1)の量に対するモノマー(B2)の量を減らすか、又はそれぞれ増やすことによって、オリゴカーボネートの分岐度を下げるか、又はそれぞれ上げることも可能である。
【0100】
オリゴカーボネートの分岐度が高いほど、このオリゴマーから得られるポリマー物質の架橋密度が高くなる。
【0101】
本発明におけるプロセスによって得られるオリゴカーボネートポリオールはさらに、100mgKOH/gより大のOH価を示す。
【0102】
本発明のまた別の主題は、ポリマー物質を調製するためのプロセスであって、それが特徴とするところは、本発明によるオリゴカーボネートポリオールを、それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な少なくとも2個の官能基を有するモノマーと反応させる
点にある。
【0103】
本発明によるポリウレタン物質は、特に、接着剤、ペイント、ラッカー、ワニス、又は樹脂、特にポリウレタン樹脂を調製することを目的とすることができる。
【0104】
一つの実施態様においては、それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な少なくとも2個の官能基を有するモノマーが、ポリイソシアネート、特にはジイソシアネートである。その結果、本発明におけるプロセスでは、ポリカーボネート-ウレタンが得られる。
【0105】
特定の実施態様においては、それぞれヒドロキシル官能基と反応することが可能な少なくとも2個の官能基を有するモノマーが、直鎖状若しくは環状の脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートである。
【0106】
本発明のまた別の主題は、上述のプロセス、すなわち本発明によるオリゴカーボネートポリオールをポリイソシアネート、特にジイソシアネートと反応させることによって得ることが可能なポリカーボネートである。
【0107】
そのポリイソシアネートは、ポリイソシアネート、又はポリイソシアネートの混合物からなっている。
【0108】
「ポリイソシアネート」という用語は、本発明の意味合いの範囲内では、2以上の-NCO官能性を有する化合物を意味していると理解されたい。したがって、「ポリイソシアネート」という用語には、具体的には、2に等しい-NCO官能性を有するジイソシアネート、3に等しい-NCO官能性を有するトリイソシアネート、さらには、厳密には2よりは多く、且つ厳密には3よりは少ないNCO官能性を有するポリイソシアネートが含まれる。
【0109】
「-NCO官能性」という用語は、本発明の意味合いの範囲内では、1モルの化合物あたりの反応性イソシアネート官能基の数を合計したものを意味していると理解されたい。
【0110】
「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、本発明の意味合いの範囲内では、芳香族環を含まないポリイソシアネートを意味していると理解されたい。したがって、「脂肪族ポリイソシアネート」という用語には、非環状脂肪族ポリイソシアネート及び脂環状ポリイソシアネートが含まれる。
【0111】
一つの実施態様においては、そのポリイソシアネートが、具体的にはジイソシアネートの三量体、より具体的には、次式に相当するジイソシアネートイソシアヌレート又はジイソシアネートビウレットから選択される、厳密には2より大の-NCO官能性を有する脂肪族ポリイソシアネートである。
【化3】
式中、Rは、C~C30アルキレン基、好ましくはC~C20アルキレン基である。
【0112】
「C~C30アルキレン基」という用語は、本発明の意味合いの範囲内では、飽和又は部分飽和で、直鎖状又は分岐状で、そして脂肪族環を含んでいてよい4~30個の炭素原子を含む二価のヒドロカルビル基を意味していると理解されたい。
【0113】
特定の実施態様においては、厳密に2を超える-NCO官能性を有するその脂肪族ポリイソシアネートが、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体又はそれらの混合物の一つ、好ましくはIPDI三量体又はPDI三量体から選択される。
【0114】
一つの実施態様においては、そのポリイソシアネートが、非環状の脂肪族ジイソシアネートである。好ましくは、その非環状の脂肪族ジイソシアネートが、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(HMDI又は水素化MDI)、又はそれらの混合物の一つであり、より好ましくはIPDIである。
【0115】
一つの実施態様においては、その芳香族ポリイソシアネートが、1,3-フェニレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニル-3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニル-3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジメチル-3,3’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、メチレンビス(4,4’-フェニルイソシアネート)若しくはそれらの混合物の一つ、そうでなければ、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリレン-2,4,6-トリイソシアネート、若しくはそれらの混合物の一つから選択される。
【0116】
本発明におけるポリカーボネートは、そのモル質量が5000g/molより大であることを特徴としている。
【0117】
一つの実施態様においては、本発明におけるポリカーボネートが、標準ISO 178:2010に従って測定して、1800MPaより大の最大曲げ応力を示す。
【0118】
一つの実施態様においては、本発明におけるポリカーボネートが、DIN EN ISO 179:2010のシャルピー法に従って測定して、20kJ/mより大の、ノッチ有り衝撃強度を示す。
【0119】
一つの実施態様においては、本発明におけるポリカーボネートが、標準DIN EN ISO 179:2010に従ったノッチ無しシャルピー試験で、破断しない。
【0120】
一つの実施態様においては、本発明におけるポリカーボネートが、標準ISO 527-1:2012に従って測定して、50%より大の張力における破断時伸びを示す。
【0121】
ここで、以下の実施例により、実施態様を詳しく説明する。これら説明のための実施例が、いかなる点においても、本発明の範囲を限定するものではないということを指摘しておく。
【実施例
【0122】
使用した分析法:
DSC:Tgの測定
ポリエステルの熱的性質は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した:まず最初
にサンプルを、窒素雰囲気下、オープンな「るつぼ」の中で、10℃から280℃へと加熱し(10℃・min-1)、冷却して10℃とし(10℃・min-1)、次いで、第一の工程と同じ条件下でもう一度加熱して320℃とする。ガラス転移温度(Tg)としては、第二の加熱の中点をとる。各種の融点は、第一の加熱における吸熱ピーク(ピーク開始点)として求める。同様にして、第一の加熱において、融解エンタルピー(曲線より下の面積)を求める。
【0123】
サイズ排除クロマトグラフィー:Mnの測定
Mnに関しては、ポリスチレン標準を使用し、THF中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって求める。そのサンプルは、THF中に5mg/mLの濃度で溶解させることにより調製する。
【0124】
アルコール数(OHN)の決定
OH価は、無水トリフルオロ酢酸の添加による誘導体化法、及び内部標準としてα,α,α-トリフルオロトルエンを使用するH NMRにより求める。
【0125】
このために、10mgのオリゴカーボネートジオールを0.6mLのCDCl3の中に溶解させ、次いでTFAAを過剰に添加し、24hかけて反応させる。10μLのα,α,α-トリフルオロトルエン(内部標準)を添加してから、H NMRにより分析する。
【0126】
OH含量は、5.4~5.6ppmの間のピーク(誘導体化されたOH基に対してα位のプロトンの信号を示す)の積分値を、1.4~1.9ppmの間及び4.05~4.15ppmの間のピークの積分値を合計したものと比較することにより求める。当業者ならば、OH価を直ちに容易に求めることができる。
【0127】
接着性
接着性は、標準ASTM D3359-09に従って測定する。
【0128】
機械的性質
ポリマーの機械的性質は、次の標準に従って評価した:
曲げ試験:最大曲げ応力を測定(標準ISO 178:2010)。
引張試験:引張における破断時伸びを測定(標準ISO 527-1:2012)。
衝撃強度:シャルピー衝撃特性の測定(標準DIN EN ISO 179-1:2010;ノッチ無し:ISO 179/1eU又はノッチ有り:ISO 179/1eA)。
【0129】
本発明によるオリゴカーボネートの合成例
本発明におけるポリカーボネートジオールオリゴマーの製造プロセスで使用するイソソルビドビス(メチルカーボネート)は、下記のプロトコルに従って得られる。
【0130】
イソソルビドビス(メチルカーボネート)(IBMC)の合成
800gのイソソルビド(5.47mol)、次いで5362gのジメチルカーボネート(=20当量のジメチルカーボネート)、及び2266gの炭酸カリウムを、サーモスタット調節伝熱流体浴により加熱する、機械的パドル撹拌システム、反応媒体の温度を調節するためのシステム、及び還流ヘッドを搭載した精留塔を備えた、20リットルの反応器の中に導入する。その反応混合物を、全還流で1時間加熱し、その時間が経過した後、塔頂での蒸気温度が64℃に達したら、生成したメタノールの除去を開始する。次いで、68℃~75℃の間の温度での反応媒体の加熱を13時間続けると、その時間の終わりでは塔頂での蒸気温度が90℃に達し、この温度(ジメチルカーボネートの沸点)で安定化する。この現象は、エステル交換が完了し、メタノールがもはや生成しないことを示すも
のである。
【0131】
合成1により得られた反応生成物の一部を、高真空下(<1mbar)、ショートパス配置とした強制薄膜式蒸発器で蒸留除去する。蒸発器を加熱して140℃とし、その反応生成物を、70℃で、140g/hの流量で導入する。
【0132】
そのようにして得られた留出物は、白色の固形物であり、それには、イソソルビドビス(メチルカーボネート)を100重量%含み、ダイマーは痕跡量も含まない。
【0133】
オリゴカーボネートの調製
イソソルビドビス(メチルカーボネート)(A1)及びジオール(B1)の量:下記の表1に示した量の、ヘキサンジオール又はブタンジオール、及び任意選択的にイソソルビド、並びに炭酸セシウムを、セラミックオーブンにより加熱され、機械式パドル撹拌システムと、反応媒体の温度を調節するためのシステムと、窒素入口パイプと、凝縮器及び凝縮物を捕集するための受器に結合された蒸留塔頂と、調節可能な真空システムとを備えた、200mLの反応器の中に導入する。(A1)/(B1)のモル比は、0.9/1である。炭酸セシウムの量は17.1mg(2.5×10-4mol)である。
【0134】
その装置を窒素雰囲気下に置き、伝熱流体の手段により反応媒体を加熱する。溶融させた反応媒体を均一にするために、温度を徐々に上げて65℃とし、5回の「真空(300mbar)-窒素(気流)」のサイクルを加えてから、温度上昇を続ける。それぞれの固定相の間での温度上昇は、15分実施する。第一の固定相は、温度100℃、5mL/分の窒素気流下で、2時間実施する。次いで、15分かけて温度を180℃とし、50mbarの真空をかける。このステージを3時間続ける。
【0135】
次いで、その反応生成物を窒素下に冷却し、温度が60℃の領域に達したら、サンプルチューブに注ぎ込む。
【0136】
実施例1~5は、合成と反応物の性質を示しているが、ここで、1種だけのジオール(B1)ヘキサンジオール又はブタンジオールを採用し、ジオール(B1)のタイプを変化させた。
【0137】
【表1】
【0138】
実施例6及び7は、可変ジオール(B1)(ヘキサンジオール又はブタンジオール)から、及びイソソルビドからの合成である。
【0139】
【表2】
【0140】
本発明によるオリゴカーボネートの使用例
実施例においては、次の製品を使用した:
・ ジイソシアネート:
- イソホロンジイソシアネート三量体(t-IPDI)、又は
- イソホロンジイソシアネート(IPDI)
・ 触媒:ジブチルスズジラウレート(DBTDL)
【0141】
実施例8:ポリウレタン(PU)タイプの熱硬化性樹脂の製造における本発明によるオリゴカーボネートポリオールの使用
5グラムの、実施例2に従って合成したオリゴカーボネートポリオールを、5mLのアセトンの中に溶解させ、2.34グラムのt-IPDI(NCO価、12.3)及び7mgのDBTDLを加え、均一で透明な混合物が得られるまで撹拌する。この混合物で、超音波浴の中で5分かけて均質化させ、スチール製のQパネル基材の上に析出させる。その生成物を、検討のため、90℃に24時間置いた。
【0142】
反応させた後のアセトン不溶分の含量は、生成物を基準にして、99.95であり、このことは、その生成物が十分に架橋されたことを示している。
【0143】
Qパネルシートに対するコーティングの接着性は、標準ASTM D3359-09によると「4」である。
【0144】
実施例9:ジイソシアネートを用いた鎖伸長によるポリカーボネートの合成
50グラムの、実施例3により合成したオリゴカーボネートポリオールを、250mLのアセトンの中に溶解させ、それに対して、6.3mgのDBTDL及び12.33グラムのIPDIを添加する。その混合物を60℃で3時間加熱してから、ロータリーエバポレーター上で、次にオーブン中、真空下、60℃で24時間かけて溶媒を蒸発させる。
【0145】
得られた反応生成物のTgは、DSCで測定して、105℃である。このポリカーボネートのモル質量(Mn)は、ポリスチレン標準を用いTHF溶媒中でSECにより測定して、12,600g/molである。
【0146】
次いで、そのようにして得られた反応生成物を、溶融させ、型の中に注入して、曲げの機械的性質の検討及びシャルピー衝撃に対する抵抗性の評価のための試験片を得る。
【0147】
その曲げモジュラスは、2030MPaである。
【0148】
ノッチ無しの試験片は、シャルピー試験の際に破断しない。
【0149】
ノッチ有りの試験では、5つの試験片で、30kJ/mの平均値を示す。