(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】均一なポリマー混合物、それに関連する方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20240213BHJP
C08L 1/14 20060101ALI20240213BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20240213BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240213BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240213BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20240213BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B65D65/02 E
C08L1/14
C08L67/02
C08K5/11
C08K3/36
B65D65/40 D
B29C51/08
C08J3/20 Z CEP
C08J3/20 CFD
(21)【出願番号】P 2020545538
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 FI2019050323
(87)【国際公開番号】W WO2019207204
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519440777
【氏名又は名称】ウッドリー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】アンッティラ ウピ
(72)【発明者】
【氏名】アシカイネン マルッタ
(72)【発明者】
【氏名】イモネン キルシ
(72)【発明者】
【氏名】カミネン ヤーッコ
(72)【発明者】
【氏名】ライネ クリスティアーネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴオリネン トンミ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/119657(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/160908(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146673(WO,A1)
【文献】特開2018-024781(JP,A)
【文献】特開2016-097576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一なポリマー組成物を含む
押出フィルムで構成される包装材料であって、前記組成物が、
酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)であって、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用するクロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定し、Waters 2414屈折率検出器を使用して溶離曲線を検出し、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3040000g/mol)標準に対するモル質量分布(MMD)を計算して、85,000~110,000Daの数平均モル質量を有する、少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、
ポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーとを含み、
前記ポリマー組成物の総重量を基準として、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量が少なくとも80重量%であり、前記セルロースエステルポリマーの量が50~95重量%であり、前記少なくとも1つの他のポリマーの量が5~50重量%であり、
前記組成物を30~100μm厚のフィルムとした場合の350~800nmの範囲の波長における透過率が80%を超えることを特徴とする、
包装材料。
【請求項2】
前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、少なくとも85重量%であり、残りが、他のポリマーおよび/またはプラスチック組成物に使用するための添加剤であることを特徴とする、請求項1に記載の
包装材料。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、クエン酸トリエチル(TEC)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の
包装材料。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他のポリマーがポリブチレンスクシネート(PBS)であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項5】
前記PBSが、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用するクロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定し、Waters 2414屈折率検出器を使用して溶離曲線を検出し、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3040000g/mol)標準に対するモル質量分布(MMD)を計算して、30,000~100,000Daの範囲のモル質量(Mn)を有することを特徴とする、請求項4に記載の
包装材料。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、前記組成物の総重量を基準として、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)を60~75重量%の量で、ならびにポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーを25~35重量%の量で、ならびに任意に、プラスチック組成物に使用するための少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、前記組成物の総重量を基準として、酢酸プロピオン酸セルロースを60~75重量%の量で、およびポリブチレンスクシネートを25~
35重量%の量で、および任意に、プラスチック組成物に使用するための少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項8】
前記セルロースエステルが、0.8~2.0重量%のアセチル含有量、および/または30~51重量%のプロピオニル含有量、および/または1.0~2.5重量%のヒドロキシル含有量を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、シリカ(SiO
2)を、
0.1重量%以上0.5重量%以下の量で含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項10】
前記ポリマー組成
物が、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリカプロラクトン(PCL)からなる群から選択される別の成分を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の
包装材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の
包装材料であって、実質的にクリアーかつ透明な材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の
包装材料であって、前記ポリマー組成
物で被覆された紙または厚紙材料押出物であることを特徴とする
、包装材料。
【請求項13】
深絞り適用製品であることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項14】
ブローフィルム
押出製品であることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項15】
押出フィルムで構成される包装材料の製造方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも210℃の温度で、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)である少なくとも1つのセルロースエステルポリマー、ならびにポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーを含むポリマー組成物を溶融混合し、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量が少なくとも80重量%であり、前記セルロースエステルポリマーの量が50~95重量%であり、前記少なくとも1つの他のポリマーの量が5~50重量%であって、均一なポリマー混合物を得るステップ、
ここで、前記セルロースエステルポリマーは、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用するクロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定し、Waters 2414屈折率検出器を使用して溶離曲線を検出し、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3040000g/mol)標準に対するモル質量分布(MMD)を計算して、85,000~110,000Daの数平均モル質量を有する、
b.任意に前記均一な混合物を顆粒化して、顆粒化されたポリマー混合物を得るステップ、ならびに
c,前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から
フィルム押出によって包装材料を製造するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記溶融混合が、210℃~300℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融混合が、10秒~5時間の時間で行われることを特徴とする、請求項
15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造することが、210℃~500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップaにおける前記ポリマー組成物が、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物であることを特徴とする、請求項
15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造することが、紙または厚紙材料を、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成
物で押出コーティングすることによって行われ、前記押出コーティングが、210℃~300℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記均一なポリマー混合物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを60~75重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを25~40重量%の量で含むポリマー組成物、ならびに任意に添加剤を含むことを特徴とする、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造することが深絞り適用によって行われ、前記深絞り適用が210℃~500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記均一なポリマー混合物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを60~85重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを15~40重量%の量で含むポリマー組成物、ならびに任意に添加剤を含むことを特徴とする、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から
フィルム押出によって包装材料を製造することが、ブローフィルム処理によって行われ、前記ブローフィルム処理が210℃~250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記均一なポリマー混合物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを60~75重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを25~40重量%の量で含むポリマー組成物、ならびに任意に添加剤を含むことを特徴とする、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造することが、キャストフィルム処理によって行われ、前記キャストフィルム処理が、210℃~250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項
15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記均一なポリマー混合物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを60~95重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、5~40重量%の量で含むポリマー組成物、ならびに任意に添加剤を含むことを特徴とする、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、ブローフィルム加工、キャストフィルム加工
、押出ブロー成形、フィルム押出
、積層、回転成形、深絞り適用
、熱成形、および真空成形からなる群から選択されるプロセスを用いて包装材料を製造することを含むことを特徴とする、請求項
15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~10のいずれか一項に記載の
包装材料の使用であって、クリングフィルム、収縮フィルム、延伸フィルム、袋フィルム、容器ライナー、消費者包装を意味するフィルム、積層フィルム、バリアフィルム、医療製品の包装のためのフィルム、農業フィルム
、袋、箱、容器、ケーシング、ハウジング
、および包装製品から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物、その使用、ならびにその製造された包装材料、および包装材料の製造方法に関する。特に、本発明は、ポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物に関し、当該組成物は、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)と、ポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーとを含み、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも80重量%であり、少なくとも200℃の温度で前記ポリマー組成物を処理することによって得られる。
【背景技術】
【0002】
環境的に持続可能な開発を確実にするためには、石油または天然ガスなどの化石原料から作られたプラスチック材料を、新しい環境に優しい材料に置き換える必要がある。これらの新しい材料は、バイオプラスチックと呼ばれることが多い。
【0003】
いくつかの新しい合成バイオプラスチック材料が開発されている。これらの合成材料は、必ずしも再生可能な資源を基準としているわけではなく、人工的な方法で生分解されている場合がある。したがって、バイオプラスチックは、一般に、2つの別々の群:天然および合成ポリマーに分けられる。天然ポリマーは、バイオポリマー、例えば、タンパク質または多糖(すなわち、デンプンおよびセルロース)に基づく。合成バイオポリマーは、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、水溶性ポリビニルアルコールおよびある種のポリウレタンである。生分解性物質は、典型的には、細菌の酵素活性によって、または加水分解によって、合理的な時間で分解する塊として定義される。
【0004】
化石源からの原料を尚使用している大きな分野のひとつに、プラスチック材料(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの包装および包み材料がある。ほとんどの家庭用プラスチック包装および包みは、炭化水素から誘導されたポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはポリ塩化ビニリデン(PVDC)から作製される。プラスチックから作られた包装は、食品または他の消費財を包装するためのように、広範囲の目的のために使用される。このような包みまたは包装材料は、環境に優しい代替物と置き換える必要がある。多くの用途において、材料が製品を示すために透明であり、消費者にとって魅力的なものにすることが重要である。
【0005】
セルロースは天然ポリマーであり、再生可能な資源と考えられている。既知のセルロース系材料は、例えば、Cellophane、Celluloid、Transparit、Cellidor、およびCellblendである。セルロース系材料は、典型的には生分解性である。しかしながら、これらの材料の多くは、石油系製品と比較して経済的に実現可能であるとは考えられていない。これには、加工性などに関連する他の欠点があった。例えば、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、ベンジルセルロース、およびエチルセルロースは、溶融加工性を得るために高いDSを必要とする。熱可塑性および生分解性は、必ずしも両立しない。
【0006】
刊行物特許文献1は、セルロースエステルおよび脂肪族-芳香族コポリエステル、セルロースエステルおよび脂肪族ポリマー化合物の二成分ブレンドを開示している。
【0007】
刊行物特許文献2は、環境的に非難分解性、かつ寸法安定性の物品の調製に有用であるセルロースエステルブレンドを開示している。
【0008】
石油系プラスチック材料に代わるいくつかの新しいバイオプラスチックが開発されたが、持続可能な開発を保証し、包装材料およびプラスチックに関連する廃棄物問題を軽減するために、新しい持続可能な解決策を見出すことが依然として定常的に必要である。特に、純粋に化石資源をベースとした包装材料と比較して同等に良好であるかまたはより良好である特性を有する、良好な品質を有する様々な目的のための材料を開発する必要がある。さらに、リサイクル可能であるバイオプラスチック材料を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第9209654 A1号
【文献】米国特許第5594068 A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題に対する解決策を達成することである。特に、本発明の目的は、均一なポリマー混合物を形成するために使用することができる、主に再生可能な材料に基づくポリマー組成物を明らかにすること、および様々な包装関連適用に適した材料を製造することである。均一な混合物から製造することができる材料は、純粋に化石資源をベースとした包装材料と比較して同等に良好であるかまたはより良好である特性を有することが必須である。新しい組成物およびそれから製造される材料は、純粋に化石原料に基づく包装材料に取って代わることができる。したがって、組成物、それを含む混合物、およびそれから製造される材料は、食料品業者および消費者のためのより持続可能な包装材料選択肢を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、独立請求項に記載された特徴を有するポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物、方法および使用を用いて達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に提示されている。
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、均一な混合物を形成することができ、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)である少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、ポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーとを含むポリマー組成物を提供することである。酢酸プロピオン酸セルロースポリマーおよび少なくとも1つの他のポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも80重量%である。前記均一な混合物は、前記ポリマー組成物を少なくとも200℃の温度で加工することによって得られる。
【0013】
本発明はまた、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む、包装材料および/または実質的にクリアーかつ透明な材料に関する。さらに、本発明は、包装材料の製造のための、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物の使用に関する。
【0014】
本発明はさらに、包装材料の製造方法に関する。本方法は、以下のステップを含む:
a.少なくとも200℃の温度で、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)である少なくとも1つのセルロースエステルポリマー、ならびにポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーを含むポリマー組成物を溶融混合し、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量が、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも80重量%であって、均一なポリマー混合物を得るステップ、
b.任意に均一な混合物を顆粒化して、顆粒化されたポリマー混合物を得るステップ、ならびに
c,前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造するステップ。
【0015】
本発明は、特に引張強度および剛性(弾性率)のような特性に関する良好な品質の組成物から得られる環境に優しい均一なポリマー混合物が、酢酸プロピオン酸セルロースである少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、PBSおよびPPSからなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーとを含む混合物から調製され得るという知見に基づく。驚くべきことに、ポリマーのこの組み合わせは、非常に高い品質の材料を提供し、これは、種々の包装材料用途に適していることが見出された。引張強度および/または剛性は、特に、優れた透明性およびクラリティーと組み合わせると、いくつかの伝統的な化石をベースとする材料、例えばPE-HD、PP、PETまたはPSを交換するのに適した材料となる。従って、本発明のポリマー組成物から得られる均一なポリマー混合物の重要な利点は、その高い品質である。
【0016】
本発明による組成物から得られる均一なポリマー混合物の利点の1つは、熱可塑性材料の製造および加工に現在使用されている従来の機械で加工できることである。したがって、高価な装置の投資を行う必要がない。
【0017】
本発明の別の利点は、原料が食品グレードの品質であり得、これにより、本発明による組成物から製造された材料が、食品および/または医療製品を包装するのに適したものとなることである。
【0018】
さらに、均一な混合物は、いくつかの種々の材料用途に適している。組成物を含む混合物はまた、良好な耐熱性を有し、これは、種々の用途での使用を可能にする。
【0019】
本発明の組成物から得られる均一なポリマー混合物を用いるさらに別の利点は、それがリサイクルされ得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】以下では、本発明を、添付した
図1を参照することによって、より密接に説明し、
図1は、本発明による組成物から得られる均一なポリマー混合物から製造される材料とPPとの間の透明性の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本出願および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、以下に定義されるような意味を有する。
【0022】
「均一なポリマー混合物」は、2つ以上の熱可塑性ポリマーを含むブレンドである。均一なポリマー混合物は、1つの相のみを有する。それはまた、純粋な状態の混合物の成分ポリマーと比較して、異なる物理的特性を有することができる。例えば、本発明において、CAPおよびPBSおよび/またはPPSは、一緒になって、均一なポリマー混合物を形成し、これは、別個にポリマーとは異なる特性を有する。
【0023】
「セルロース系」は、セルロース含有材料から得られるポリマーを含むものとして定義される。したがって、セルロース含有材料から誘導されたセルロースから得られたポリマーは、バイオポリマーである。セルロース系ポリマーは、典型的には、セルロースのエーテルまたはエステルなどの誘導体である。セルロースエステルは、セルロース系材料にも再生可能資源にも由来するものではない化学物質を部分的に使用して製造することができる。セルロース含有材料は、種々の原料、例えば、木材、樹皮もしくは植物の葉から、または植物ベースの材料から得ることができる。一般に、セルロース系すなわちセルロースポリマーは、再生可能資源である。「セルロースエステル」は、セルロース系材料に由来するものであり、したがってセルロース系ポリマーの例である。セルロースのヒドロキシル基(-OH)は、種々の試薬と部分的または完全に反応させることができる。このようにして、有用な特性を有する多数の誘導体、主にセルロースエステルおよびセルロースエーテル(-OR)が形成され得る。「酢酸プロピオン酸セルロース」(CAP)ポリマーは、セルロース誘導体および特定のセルロースエステルの例である。それは、繰り返しグルコース単位上のセルロースポリマー鎖中のいくつかの水酸基のエステル化によって生成される。酢酸プロピオン酸セルロースは、種々の基材のためのコーティング用途における結合剤および添加剤として一般に使用される。これらの製品は、そのプロピル、アセチルおよびヒドロキシ含有量を基準として、広範囲の特性を提供する。
【0024】
「包装材料」または「包装物品」は、例えば、クリングフィルム、収縮フィルム、延伸フィルム、袋フィルムもしくは容器ライナー、消費者包装を意味するフィルム(例えば、凍結製品のための包装フィルム、輸送包装のための収縮フィルム、食品ラップフィルム、包装袋、もしくは形態、充填およびシール包装フィルム)、積層フィルム(例えば、ミルクもしくはコーヒーを包装するために使用するアルミニウムもしくは紙の積層)、バリアフィルム(例えば、食品、例えば冷肉およびチーズの包装のために使用される芳香もしくは酸素バリアとして作用するフィルム)、押出コーティング用途、医療製品の包装のためのフィルム、農業フィルム(例えば、温室フィルム、作物促成栽培フィルム、サイレージフィルム、サイレージ延伸フィルム)、袋、箱、容器、ケーシング、ハウジングもしくは成形3D物体、および/または食品、医療製品などの包装製品における他の用途または化粧品であり得る。
【0025】
「ブローフィルムプロセス」または「フィルムブロープロセス」または「ブローフィルム押出」は、フィルム製造の最も一般的な方法の1つである。ブローフィルムプロセスはまた、管状フィルム押出と呼ばれることがある。このプロセスは、円形ダイを通してプラスチックを押出すことを含み、続いて「バブル状」膨張を伴う。
【0026】
「キャストフィルムプロセス」または「キャストフィルム押出」は、プラスチックからシートを形成する方法である。溶融ポリマーは、通常、スロットダイを通して内部冷却されたチルロール上に押し出され、次いで、ローラーを通過し、これは、キャストしたフィルムの性質および特性(厚さなど)を決定するであろう。最終製品は、膨大な範囲の色、仕上げ、積層および印刷を含むことができる。
【0027】
「射出成形」は、成形品を製造するためのプロセスであり、溶融ポリマーは、製造される成形品の形状を規定する金型ツールに射出される。
【0028】
「リサイクル可能」とは、使用済み/廃棄物から新しい材料、物品または物体に変換される能力を有することを意味する。材料は、例えば、材料を溶融し、新しい物体を形成することによってリサイクルすることができる。1つの側面において、リサイクル可能性とは、材料の機械的特性が、リサイクルに関連する加工の間、本質的に変化しないことを意味する。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、主に再生可能資源から作ることができるために環境に優しい組成物に関する。新しい組成物は、包装材料または包装フィルムを製造するのに適した均一なポリマー混合物に形成することができ、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンをベースとする、一般に使用されている化石プラスチック材料に代わる包みおよび包装に使用することができる。新しい組成物は、酢酸プロピオン酸セルロースである少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、ポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択されるポリマーの少なくとも1つとの混合物を含む。新しい組成物は、好適には環境に優しいバイオプラスチック材料である。
【0030】
本発明に関連して実施される試験において、本発明者らは、本発明の組成物中の組み合わせが非常に高い品質のバイオプラスチック材料を提供することを見出した。例に提示したように、特に引張応力および剛性(弾性率)特性は、材料について非常に高かった。これは、プラスチック物品およびフィルムを製造するための従来のプロセスにおいて、材料が良好な加工性特性を有することを確実にする。材料はまた、印刷基材として使用され得、すなわち、グラフィックは、材料上に印刷され得る。さらに、それらは、優れた透明性を有し、すなわち、材料はクリアーであり、これはバイオプラスチックにとって非常に珍しい。組成物が均一なポリマー混合物を形成することができることは、高品質のために重要である。試験はまた、透明性に加えて、製造された材料が無色であることを示した。本発明の組成物から製造することができる物品および製品は、種々の包装材料、物品および容器、例えばプラスチックフィルムまたは箔または成形3D物品(容器、箱など)である。消費財を包装する場合、製品を消費者にとってより魅力的なものにするために、材料が良好な透明性およびクラリティーを有することがしばしば非常に重要である。したがって、本発明の材料を使用して、PE-HD、PP、PETおよびPSプラスチックなどの従来の材料を置き換えることができる。
【0031】
均一なポリマー混合物およびそれから製造される材料の良好な特性は、使用されるポリマー原料、すなわち、セルロースエステルポリマーと少なくとも1つの他のポリマーとの組み合わせの相乗効果に起因すると考えられる。本発明による組成物中の組み合わせは、原料単独よりも良好な機械的品質を与える。本発明に関連して実施した試験(実施例参照)では、原料の混和性が優れていた。試験自体で使用されたPBSポリマーはクリアーではないが、CAPと混合した場合、その組み合わせは、キャップ単独の場合よりさらに良好な透明性およびクラリティーを示した。本発明者らは、試験において、PBSがセルロースエステルポリマー(実施例におけるCAP)の柔軟剤として機能し、別個の柔軟剤または可塑剤を使用する必要性が解消されることに気付いた。他の類似のポリマーPPSは、PBSと類似の構造のために、同様に機能することが予想される。セルロースエステル単独ではかなり脆いが、他のポリマー(PBSなど)と組み合わせると、機械的特性が明らかに改善された。これは、おそらく、他のポリマーと混合した場合、セルロースエステル中で内部水素結合の形成が減少するためである。1つの利点は、さらに、柔軟剤が必要でない場合、より少ない添加剤が必要とされることである。この組み合わせの良好な品質は、特に、先行技術がCAPおよびPBSが適合性でないことを教示しているので、驚くべきことであった。
【0032】
したがって、本発明は、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)である少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、ポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーとを含むポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物に関する。セルロースエステルポリマーおよび少なくとも1つの他のポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも80重量%であり、均一なポリマー混合物は、少なくとも200℃の温度で前記ポリマー組成物を加工することによって得られる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、包装材料を製造するための均一なポリマー混合物に関し、それは、酢酸プロピオン酸セルロースである少なくとも1つのセルロースエステルポリマーと、PPSおよびPBSからなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーと、任意に添加剤、例えば柔軟剤、顔料、安定剤および/またはプラスチック組成物に使用するための他の添加剤とからなる。
【0034】
一実施形態によれば、ポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%の量で含む。
【0035】
一実施形態によれば、セルロースエステルポリマーおよび少なくとも1つの他のポリマーの総量は、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%であり、残りは、他のポリマーおよび/または添加剤、例えば柔軟剤、顔料、安定剤および/またはプラスチック組成物に使用するための他の添加剤である。
【0036】
一実施形態によれば、ポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、少なくとも1つの柔軟剤、好ましくはクエン酸トリエチル(TEC)を含む。
【0037】
一実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物中の少なくとも1つの他のポリマーは、ポリブチレンスクシネート(PBS)である。その場合、好ましくは、PBSは、30,000~100,000Da;好ましくは50,000~80,000Da;より好ましくは60,000~70,000Daの範囲の数平均モル質量を有する。
【0038】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、セルロースエステルポリマーを含み、それは、組成物の総重量を基準として、55~80重量%、好ましくは60~75重量%、より好ましくは65~75重量%の量での酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、ならびに20~40重量%、好ましくは25~40重量%、より好ましくは25~35重量%の量でのポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマー、ならびに任意に少なくとも1つの添加剤、例えば、柔軟剤、顔料、安定剤および/またはプラスチック組成物に使用するための他の添加剤である。
【0039】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、組成物の総重量を基準として、55~80重量%、好ましくは60~75重量%、より好ましくは65~75重量%の量の酢酸プロピオン酸セルロースと、20~40重量%、好ましくは25~40重量%、より好ましくは25~35重量%の量のポリブチレンスクシネートと、任意に、少なくとも1つの添加剤、例えば柔軟剤、顔料、染料、安定剤および/またはプラスチック組成物に使用するための他の添加剤とを含む。
【0040】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、組成物の総重量を基準として、55~80重量%、好ましくは60~75重量%、より好ましくは65~75重量%の量の酢酸プロピオン酸セルロース、および20~40重量%、好ましくは25~35重量%の量のポリブチレンスクシネート、ならびに任意に、少なくとも1つの添加剤、例えば柔軟剤、顔料、染料、安定剤および/またはプラスチック組成物に使用するための他の添加剤からなる。
【0041】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物中のセルロースエステルは、30,000~110,000Da;好ましくは50,000~100,000Da;より好ましくは65,000~95,000Daの数平均モル質量を有する。
【0042】
一実施形態によれば、セルロースエステルは、0.8~2.0重量%、より好ましくは1.0~1.5重量%のアセチル含有量、および/または30~51重量%、より好ましくは40~50重量%のプロピオニル含有量、および/または1.0~2.5重量%、さらに好ましくは1.5~2.0重量%のヒドロキシル含有量を有する。
【0043】
本発明はまた、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む、実質的にクリアーかつ透明な材料に関する。
【0044】
本発明はまた、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む包装材料に関する。本発明はまた、包装材料の製造に関連する方法に関する。包装材料および包装材料の製造方法の5つの具体的な実施形態を、以下に提示する。
【0045】
1)一実施形態によると、包装材料は、本発明によるポリマー組成物を含む均一な混合物でコーティングされた紙または厚紙材料押出物である。押出コーティングに使用される温度は、200℃~300℃、好ましくは210℃~260℃、最も好ましくは225℃~250℃であり得る。接着性は、加工温度によって調整し、接着剤またはポリマー層を添加することができる。「剥離」適用またはより強い接着は、両方とも、適用の要件に応じて可能である。
【0046】
好ましい押出コーティングの実施形態によれば、均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを、少なくとも50重量%、好ましくは60~90重量%、より好ましくは60~75重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、50重量%以下、好ましくは10~40重量%、より好ましくは25~40重量%の量で含むポリマー組成物、および任意に添加剤を含む。本発明に関連して実施された試験において、これらの比は、最高品質の生成物を与えた。好ましくは、ポリマー組成物は、少なくとも1つの他のポリマーとしてPBSと組み合わせたCAPを含む。
【0047】
2)一実施形態によると、包装材料は射出成形品である。射出成形に用いる温度は、200℃~300℃、好ましくは200℃~250℃、最も好ましくは210℃~230℃とすることができる。
【0048】
好ましい射出成形の実施形態によれば、均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを、少なくとも50重量%、好ましくは60~95重量%、より好ましくは65~90重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、50重量%以下、好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~35重量%の量で含むポリマー組成物を含む。本発明に関連して実施された試験において、これらの比は、最高品質の生成物を与えた。非常に具体的な実施形態によれば、セルロースエステルの量は70重量%または約70重量%であり、少なくとも1つの他のポリマーの量は30重量%または約30重量%である。好ましくは、ポリマー組成物は、少なくとも1つの他のポリマーとしてPBSと組み合わせたCAPを含む。
【0049】
3)一実施形態によると、包装材料は、深絞り適用によって製造された製品である。深絞り適用に使用する温度は、200℃~500℃とすることができる。したがって、本発明の均一なポリマー混合物は、500℃までの温度に耐えることができる。本発明に関連して実施される試験において、これらの範囲の温度が使用され、適切な温度は、装置および加工パラメータ、例えば、時間に依存した。深絞り加工は熱成形である。深絞り適用では、絞り部分の深さは、典型的には、少なくとも部分的にその直径を超える。深絞り加工された物体は、材料の3D形状を形成する機械的作用によって形成される。
【0050】
好ましい深絞り実施形態によれば、均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを、少なくとも50重量%、好ましくは50~95重量%、より好ましくは60~85重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、50重量%以下、好ましくは5~50重量%、より好ましくは15~40重量%の量で含むポリマー組成物、および任意に添加剤を含む。本発明に関連して実施された試験において、これらの比は、最高品質の生成物を与えた。好ましくは、ポリマー組成物は、少なくとも1つの他のポリマーとしてPBSと組み合わせたCAPを含む。
【0051】
4)一実施形態によると、包装材料は、フィルムブロープロセスによって製造された製品である。フィルムブロープロセスで使用される温度は、200℃~250℃、好ましくは210℃~230℃であり得る。
【0052】
好ましいフィルムブロープロセスの実施形態によれば、均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを、少なくとも50重量%、好ましくは60~90重量%、より好ましくは60~75重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、50重量%以下、好ましくは10~40重量%、より好ましくは25~40重量%の量で含むポリマー組成物、および任意に添加剤を含む。本発明に関連して実施された試験において、これらの比は、最高品質の生成物を与えた。好ましくは、ポリマー組成物は、少なくとも1つの他のポリマーとしてPBSと組み合わせたCAPを含む。
【0053】
5)一実施形態によれば、前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物からの包装材料は、キャストフィルム処理によって実施され、キャストフィルム処理は、200℃~250℃、好ましくは200℃~230℃、より好ましくは210~225℃の温度で実施される。
【0054】
1つのキャストフィルム処理の実施形態によれば、均一なポリマー混合物は、ポリマー組成物の総重量を基準として、セルロースエステルポリマーを、少なくとも50重量%、好ましくは60~95重量%、より好ましくは70~95重量%の量で、および少なくとも1つの他のポリマーを、50重量%以下、好ましくは1~40重量%、より好ましくは5~30重量%の量で含むポリマー組成物、ならびに任意に添加剤を含む。PBSの一部は、組成物の総量を基準として1~10重量%などの添加剤で任意に置き換えることができる。本発明に関連して実施された試験において、これらの比は、最高品質の生成物を与えた。好ましくは、ポリマー組成物は、少なくとも1つの他のポリマーとしてPBSと組み合わせたCAPを含む。
【0055】
さらに、本発明は、例えば、クリングフィルム、収縮フィルム、延伸フィルム、袋フィルムまたは容器ライナー、消費者包装を意味するフィルム(例えば、凍結製品のための包装フィルム、輸送包装のための収縮フィルム、食品ラップフィルム、包装袋、または形態、充填およびシール包装フィルム)、積層フィルム(例えば、ミルクまたはコーヒーを包装するために使用するアルミニウムまたは紙の積層)、バリアフィルム(例えば、食品、例えば冷肉およびチーズの包装のために使用される芳香または酸素バリアとして作用するフィルム)、押出コーティング、医療製品の包装のためのフィルム、農業フィルム(例えば、温室フィルム、作物促成栽培フィルム、サイレージフィルム、サイレージ延伸フィルム)、袋、箱、容器、ケーシング、ハウジングまたは成形3D物体、および/または食品、医療製品などの包装製品における他の用途または化粧品から選択される包装材料の製造のための、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物の使用に関する。
【0056】
適切には、少なくとも1つのセルロースエステル、すなわち酢酸プロピオン酸セルロースポリマーの数平均モル質量は、20,000Daを超える。一実施形態によれば、数平均モル質量は、30,000~110,000Da、好ましくは50,000~100,000Da、より好ましくは65,000~95,000Daである。数平均モル質量は、85,000~95,000Da、または85,000~91,000Da、例えば90,000Da、91,000Daまたは92,000Daであり得る。全ての成分のモル質量が低すぎる場合、材料がブローフィルムプロセスに十分な強度または弾性を有しないので、組成物が押出およびブローフィルム加工に適さない危険性がある。したがって、上記の規定された範囲内の数平均モル質量は、加工に耐える機械的特性を有する弾性材料を提供する。
【0057】
本発明に関連して実施した数平均モル質量測定はすべて、数平均モル質量測定のためにクロロホルム溶離液を使用してサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定した。SEC測定は、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用して、クロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中で行った。溶出曲線は、Waters 2414 Refractive Index検出器を用いて検出した。モル質量分布(MMD)を、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3040000g/mol)標準に対して計算した。
【0058】
種々のグレードのセルロースエステル、例えば酢酸プロピオン酸セルロースは、いくつかの供給業者から市販されている。本発明による組成物において、ポリマー原料の混合物は、形成された組成物の特性に影響を及ぼす。言い換えれば、本発明による組成物を形成する場合、ポリマーの組み合わせた特性を評価する必要がある。例えば、ポリマーの1つが、90,000Daまたは70,000Daなどの高い数平均モル質量を有する場合、このポリマーを、より低い数平均モル質量を有する別のポリマーと組み合わせることが適切であり得る。あるいは、またはさらに、より多量の柔軟剤を、高いモル質量を有するポリマーと一緒に使用することができる。適切な数平均モル質量は、組成物の最終用途に依存し、すなわち、最も適切なセルロースエステルグレードは、目的が、例えば、フィルム材料または成形品、例えば、容器を製造することであるかどうかに依存して異なり得る。
【0059】
本発明による溶液に使用されるセルロースエステルポリマーは、酢酸プロピオン酸セルロース、CAPである。セルロースエステルは、種々のグレードの置換を有し得る。本発明の組成物に好適なCAPは、アセチル含有量が0.8~2.0重量%であることが好ましく、1.0~1.5重量%であることがより好ましく、例えば1.3重量%である。本発明の組成物に好適なCAPは、プロピオニル含有量が30~51重量%であることが好ましく、40~50重量%であることがより好ましく、例えば48重量%である。本発明の組成物に好適なCAPは、ヒドロキシル含有量が1.0~2.5重量%であることが好ましく、1.5~2.0重量%であることがより好ましく、例えば1.7重量%である。さらに、ガラス転移温度は、好ましくは140~155℃、より好ましくは142~152℃、例えば147℃である。
【0060】
一実施形態によれば、少なくとも1つの他のポリマーは、ポリブチレンスクシネート、PBSである。本発明の組成物に好適なPBSは、30,000~100,000Da、好ましくは50,000~80,000Da、より好ましくは60,000~70,000Daの範囲の数平均モル質量を有することが好ましい。PBSの数平均モル質量は、例えば、65,000~70,000Da、例えば68,000Da、69,000Daまたは70,000Daであり得る。
【0061】
メルトフローインデックス(またはメルトフローレート)は、熱可塑性ポリマーまたはプラスチックの溶融物の流れの容易さを記述するための尺度である。メルトフローインデックスは、ポリマーまたはポリマー混合物を特徴付けるために使用することができる。ポリオレフィン、すなわち、ポリエチレン(PE、190℃で)およびポリプロピレン(PP、230℃で)については、MFIは、その溶融粘度の指標を示すために一般に使用される。標準化されたMFI測定機器では、一定の圧力が、溶融プラスチックをダイを通して押し出すせん断応力を発生する。典型的には、MFIは、分子量に反比例する。本発明のポリマー組成物を含むポリマー混合物について、MFIを、2つの温度215および240℃で測定した。1つの非常に具体的な実施形態によれば、本発明の均一なポリマー混合物は、215℃で6~8g/10分、または好ましくは約7g/10分、または6.9g/10分、荷重2.16kg、および/または、240℃で約26~28g/10分、27g/10分、または27.1g/10分、荷重2.16kgのメルトフローインデックスを有する。
【0062】
本発明による組成物のポリマーは、好適には熱可塑性ポリマーである。包装材料での使用に適しているために、本発明の組成物に使用されるポリマーは、水溶性であってはならない。したがって、ポリマーは、適切には、水に可溶でない。したがって、一態様によれば、本発明の組成物に使用されるポリマーは、熱可塑性であり、非水溶性である。酢酸プロピオン酸セルロースおよび/または酢酸酪酸セルロースと同様の特性を有し、また本発明による組成物に適した他のセルロース系ポリマーが、存在し得る。したがって、本発明による組成物は、酢酸酪酸セルロース(CAB)などの他のセルロース系ポリマーも含み得る。
【0063】
一実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、セルロースエステル、例えば酢酸セルロースまたは酢酸酪酸セルロース(CAB)、脂肪族または脂肪族芳香族ポリエステル、例えばポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、例えばポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリカプロラクトン(PCL)からなるリストから選択される、別の成分を含む。一実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、CAPおよびPBSおよび/またはPPSと適合性である他の同様のポリマーも含む。
【0064】
本発明による組成物はまた、プラスチックに典型的に使用される添加剤などの他の成分を含んでもよい。これらの添加剤は、例えば、柔軟剤または可塑剤、充填剤、助剤、顔料、安定剤または他の薬剤である。典型的には、これらの添加剤の量は、組成物の重量を基準として0.01~10重量%で変化する。1つの添加剤の量は、例えば、組成物の重量を基準として0.1~5重量%であり得る。
【0065】
本発明はまた、包装材料に関し、それは、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む。
【0066】
一実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、ブローフィルム押出(フィルムブローイングプロセス)またはキャストフィルム押出のいずれかを使用してフィルムに加工されてもよい。
【0067】
一実施形態によれば、ポリマー組成物は生分解性である。ポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物から製造された新しい包装材料はまた、生分解性であり得る。一定の基準に従って生分解性であるために、生分解性増強添加剤を、組成物に添加してもよい。
【0068】
本発明のポリマー組成物は、PBSおよび/またはPPSに加えて、他の脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(ヘキサメチレングルタレート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(ブチレングルタレート)、ポリ(エチレングルタレート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(エチレングルタレート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレングルタレート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンスクシネート)またはポリ(ヘキサメチレンスクシネート)、好ましくはPBSAを含有してもよい。
【0069】
ポリマー組成物はまた、任意に、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの従来のプラスチック原料と混合されてもよい。このようにして、ある有利な特性を有する包装材料を製造するのに適した組成物を得ることができる。原料ブレンドの選択は、材料の要件および最終用途に依存する。
【0070】
1つの実施形態によれば、本発明による組成物を含む新しい均一なポリマー混合物は、本質的に、再生可能な供給源に由来する原料のみを含有する。新しい組成物は、再生可能な供給源からの原料から完全になることさえある。一実施形態によれば、新しい組成物は、再生可能な供給源から誘導された生分解性原料から完全になる。
【0071】
本発明による組成物を含む均一なポリマー混合物は、ブローフィルム加工、キャストフィルム加工、または射出成形に適したものにすることができる。本発明のポリマー組成物を加工するのに好適であり得る他の方法は、例えば、カレンダー仕上げ、押出ブロー成形、フィルム押出成形、射出ブロー成形、ガスアシスト射出成形、射出延伸ブロー成形、ラミネート加工、回転成形、深絞り加工、3D印刷、熱成形および/または真空成形である。
【0072】
本発明に関連して実施された試験において、本発明者らは、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物およびそれから製造された材料が優れた耐熱性を有することを発見した。良好な結果を得るためには、比較的高い温度が必要である。例えば、使用されるポリマーのピーク融点は、CAPについては約190℃、PBSについては115℃であるが、加工温度はより高い必要がある。好ましくは、全てのプロセス(配合、フィルムブロー、射出成形、押出コーティング、熱成形)の加工温度は、ポリマーの溶融温度より明らかに高い。加工が成功するためには、すべての成分が完全に溶融相になければならない。本発明の組成物およびそれから製造される(包装)材料の製造の各ステップにおける加工温度は、少なくとも200℃または200℃より高温であることが高度に重要である。少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃の温度を使用することによって、高い引張強度および剛性、ならびに優れた透明性およびクラリティーを有する、様々な包装材料用途に適した高品質の均一なポリマー混合材料を、得ることができる。
【0073】
材料が500℃までの温度に耐えることができることが、驚くべきことに発見された。これにより、本発明のポリマー組成物およびそれから製造された材料を、例えば深絞り適用またはある種のシーミング適用に使用することができる。CAPおよびPBSが単独でより低い温度で分解を開始するので、これは驚くべきことであった。
【0074】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、前記セルロースエステルポリマーと前記少なくとも1つの他のポリマーとを、少なくとも200℃の温度で溶融混合することによって得られる。典型的には、温度は、200℃~300℃である。好ましくは、温度は、200℃~270℃または210℃~250℃であり、より好ましくは210℃~235℃である。例えば、温度は、215℃または220℃であり得る。1つの特定の好ましい実施形態によれば、温度は、205℃~230℃、好ましくは210~225℃である。少なくとも200℃の温度および上述の実施形態によれば、実質的に均一、実質的にクリアーかつ実質的に透明なポリマー混合物を得ることができる。
【0075】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物は、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーを少なくとも200℃、好ましくは200℃~300℃または210℃~270℃、より好ましくは210℃~225℃の温度で、少なくとも30秒、好ましくは1分~5時間、より好ましくは1.5分~2時間、最も好ましくは2分~1時間加工、好ましくは溶融混合することにより得られる。典型的には、溶融混合などの加工ステップのための時間は、少なくとも2分、例えば2分~15分または2分~10分である。本発明に関連して実施される試験において、かなり短い時間、例えば30秒未満または30秒~2分が、加工の温度が200℃を超える、または好ましくは少なくとも210℃である場合、均一なポリマー混合物を得るために必要であることが、驚くべきことに発見された。正確な所要時間は、混合ステップにおける使用される装置、ならびに混合速度および混合ステップの他のパラメータに依存する。
【0076】
一実施形態によれば、本発明のポリマー組成物は、シリカ(SiO2)を0.5重量%以下の量で、好ましくは0.1重量%以下の量で含む。組成物にシリカ粉末を添加することにより、加工性を向上させることができる。それにより、結果は、本発明による組成物から製造される材料の改善された均一性およびより均一な品質である。
【0077】
本発明はさらに、包装材料の製造方法に関する。本方法は、以下のステップを含む:
a.少なくとも200℃の温度で、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)である少なくとも1つのセルロースエステルポリマー、ならびにポリブチレンスクシネート(PBS)およびポリプロピレンスクシネート(PPS)からなる群から選択される少なくとも1つの他のポリマーを含むポリマー組成物を溶融混合し、前記セルロースエステルポリマーおよび前記少なくとも1つの他のポリマーの総量が、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも80重量%であって、均一なポリマー混合物を得るステップ、
b.任意に均一な混合物を顆粒化して、顆粒化されたポリマー混合物を得るステップ、ならびに
c,前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化されたポリマー混合物から包装材料を製造するステップ。
【0078】
一実施形態によれば、ステップa.で得られる均一なポリマー混合物は、本明細書に記載の本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物である。
【0079】
一実施形態によれば、本方法は、ブローフィルム加工、キャストフィルム加工、射出成形、カレンダー加工、押出ブロー成形、フィルム押出、射出ブロー成形、ガスアシスト射出成形、射出延伸ブロー成形、積層、回転成形、深絞り適用、3D印刷、熱成形、および真空成形、好ましくはブローフィルム加工、キャストフィルム加工、または射出成形からなる群から選択されるプロセスを使用して、包装材料を製造するステップを含む。
【0080】
一実施形態によれば、本発明による方法は、溶融混合が、少なくとも200℃、好ましくは200℃~300℃、またはより好ましくは210℃~250℃、さらにより好ましくは210℃~225℃の温度で行われることを含む。
【0081】
一実施形態によれば、本発明による方法は、前記均一なポリマー混合物および/または前記顆粒化ポリマー混合物から包装材料を製造することを、少なくとも200℃の温度で行うことを含む。
【0082】
一実施形態によれば、溶融混合は、少なくとも10秒、好ましくは少なくとも30秒、より好ましくは1分~5時間、例えば2分~1時間の時間で行われる。典型的には、溶融混合ステップの時間は、2分~1時間、好ましくは2分~0.5時間である。いくつかの場合において、それは、さらに約30秒以下であってもよい。本発明による混合物の成分の非常に効率的な混合が得られるからである。これは、必要とされる製造時間およびエネルギーを減少させるので、有益である。
【0083】
一実施形態によれば、本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物のフィルムを製造するためのフィルムブロープロセスのための加工温度は、200℃~250℃、好ましくは210℃~230℃、より好ましくは215~220℃である。この温度範囲は、良好な品質および優れた機械的特性を有するクリアーかつ透明なフィルムを得ることを確実にする。
【0084】
溶融混合は、連続配合プロセスで行うことができる。溶融混合は、例えば、溶融ポンプユニットを装備し、直接適切な押出ダイを連結した2スクリューコンパウンダーで行われる。したがって、化合物は、ポリマー組成物の別個の顆粒化なしに、最終生成物に直接押し出すことができる。本発明のポリマー組成物のための市販の出発物質は、典型的には、それ自体顆粒化される。顆粒は、例えば、ドラムミキサーなど中で機械的に混合することができる。この顆粒の混合物は、押出機、例えば、マドックミキサーヘッドを備えたスクリュー押出機に供給することができる。その後、ポリマー溶融物は、例えばブローフィルムダイに押し出すことができる。したがって、本発明によるポリマー組成物は、別個の配合および顆粒化ステップなしに、フィルムブロープロセスを使用して、例えばプラスチックフィルムに形成することができる。これは、本発明に従って実施された試験(実施例)で示された。原料が、別個の配合/顆粒化ステップが必要ではない程度に良好に混合することは、驚くべきことであった。
【0085】
溶融混合を別個の相として行ってポリマー組成物の顆粒を製造する場合、コンパウンダーからの生産物(ストランド、フィラメント、または任意の他の連続的に流動する形状)を冷却し、顆粒中で切断する。生産物の冷却は、空気または冷却されたベルト/バンドでの乾式冷却によって適切に行うことができる。さらに、または代わりに、配合からの生産物は、それを水浴に通すことによって、または水中切断、またはポリマー材料の水との直接接触を可能にする任意の同様の冷却システムを使用することによって冷却することができる。本発明に関連して実施される試験によれば、水冷は、本発明のポリマー組成物中の成分の加水分解を引き起こさない。したがって、乾式冷却および水冷却は、両方とも本発明の方法に適している。したがって、本発明の一実施形態では、本方法は、乾式冷却および/または水冷却を含む、セルロースエステルポリマーおよび少なくとも1つの他のポリマーの配合および顆粒化ステップを含む。
【0086】
溶融混合はまた、バッチミキサーまたはポリマー溶融物に適した任意のミキサー中で行うことができる。ミキサーは、連続的な材料フラックスを生成する必要はない。
【0087】
任意に、この方法は、ステップaで形成される混合物の成分のいくつかについて、予備混合または含浸ステップを含むことができる。
【0088】
当業者に公知の標準的な試験を行って、ステップa.の得られた混合物が、ブローフィルム加工、キャストフィルム加工、射出成形または他のプロセスに適していることを保証することができる。本発明の組成物は、これらの要件を満たす必要がある。
【0089】
本発明による組成物は、プラスチックフィルム、箔、物品または他の材料を形成するための従来の装置で加工することができる。
【0090】
本発明による組成物から製造されるフィルムまたは箔、物品または包装材料の特性、例えば、厚さ、密度などは、それらがそれらの意図される使用または適用に適しているように調整される必要がある。
【0091】
さらに、例えば、プラスチックラップまたはパッケージ材料が有効であることを確実にするための標準的な試験が存在する。重要な試験のいくつかは、例えば、透過性(水蒸気およびガス)、耐衝撃性、吸水性、および引裂強度である。形成された包装フィルムまたは箔は、食品を包装するための使用など、意図される適用に応じて、ある特定の要件を満たす必要がある。
【0092】
本発明はまた、包装材料の製造のための本発明によるポリマー組成物の使用に関する。
【0093】
本発明に関連して実施された試験によれば、製造されたフィルムは、優れた透明性を有していた。
図1に見られるように、本発明による材料から製造された全てのフィルムは、PPと比較しても良好な透過率を有した。透明であることに加えて、本発明による組成物から製造された材料は、無色であった。透明かつ無着色の包装材料は、特に消費者製品を包装する場合、製品を消費者に対してより魅力的にするので、包装材料において有益である。
【0094】
一般的に使用されるバイオプラスチック材料の多くに関連するいくつかの問題がある。バイオプラスチック材料のいくつかは、例えば、全く透明でない。別の問題は、多くのバイオプラスチック材料の機械的特性が、例えば、PE、PPまたはPETほど良好でないことであり、これは、これらの材料をバイオプラスチックで置き換えることを困難にする。さらに別の問題は、いくつかのバイオプラスチック材料が容易にリサイクル可能ではないことであり、例えば、ポリ乳酸(PLA)をリサイクルすることは、高価かつ困難である。しかしながら、本発明による組成物は、より慣用的な方法によってリサイクル可能である。材料は、溶融され、新しい材料に加工され得る。選択的抽出によって、材料を例えばポリオレフィンから分離することも可能である。提示した材料は、水および広く使用されているポリオレフィングレードのほとんどよりも緻密である。これにより、密度ベースの分離が可能になる。
【0095】
本発明による均一なポリマー混合物の重要な利点は、そこから製造される包装材料が、既存の製造プロセスおよび技術を使用して製造され得ることである。したがって、新たな製造装置に大規模な投資を行う必要がないため、それは、経済的に実現可能な代替方法である。さらに、原料は、いくつかの製造業者から市販されている。
【0096】
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物から製造される包装材料に関連するさらなる利点は、組成物が分解可能であり得るので、プラスチック廃棄物が低減されることである。さらに、本発明による組成物は、主に再生可能資源で作ることができるので、化石原料の使用を減らすことができる。また、本発明による組成物の一部は木材に由来し得るので、生産は耕地を占有しない。
【0097】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0098】
実施例で使用した以下の原料を、以下の表1に提示する:
【0099】
【0100】
表1において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートである。
【0101】
数平均モル質量測定(Mn)は、数平均モル質量測定について、クロロホルム溶離液を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて行い、試料(項目1~4)を、クロロホルム(濃度1mg/ml)を用いて一晩溶解した。測定前に試料をろ過した(0.45μm)。
【0102】
SEC測定は、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用して、クロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中で行った。溶出曲線は、Waters 2414 Refractive Index検出器を用いて検出した。モル質量分布(MMD)を、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3,040,000g/mol)標準に対して計算した。
【0103】
CAP1の置換度:
- アセチル含有量1.3重量%
- プロピオニル含有量48重量
- ヒドロキシル含有量1.7重量%
【0104】
CAP2の置換度:
- アセチル含有量1.3重量%
- プロピオニル含有量48重量
- ヒドロキシル含有量1.7重量%
【0105】
実施例1:CAP1およびPBS1を用いたフィルムブロープロセスのための組成物
本発明によるポリマー組成物の均一な混合物を、フィルムブロープロセスを用いてプラスチックフィルムに形成した。均一なポリマー混合物は、溶融混合によって得られた。混合は、210℃の温度で30秒~3.5分の時間行った。
【0106】
組成物およびフィルムに関する詳細は、表2に見ることができる。
【0107】
【0108】
表2において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートである。
【0109】
ポリマー組成物はまた、0.1重量%のシリカを含んでいた。
【0110】
表2中の組成物は、良好な機械的特性、特に高い引張強度および弾性率を有する無色、クリアー、透明なフィルムを与えた。製造されたフィルム1~4の機械的特性を、表3に記載する。
【0111】
【0112】
実施例2:CAP1、PBS1およびTECを有するフィルムブロープロセスのための組成物
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、フィルムブロープロセスを用いてプラスチックフィルムに形成した。均一なポリマー混合物は、溶融混合によって得られた。混合は、210℃の温度で2分~3.5分の時間行った。
【0113】
組成物およびフィルムに関する詳細は、表4に見ることができる。
【0114】
【0115】
表4において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートであり、TECはクエン酸トリエチルである。
【0116】
表2および4の組成物は、良好な品質のクリアー、透明なフィルムを与え、これは包装材料の製造に適していた。
【0117】
作製されたフィルムの透明性の比較は、
図1に見ることができ、番号1~5は、上記のようにフィルム1~5を表す。図面からわかるように、全てのフィルムは、透過率%によって示される非常に高い透明性を有し、本発明による材料によって製造された全てのフィルムについて80%を超える。参考例として、PPフィルム(ポリプロピレンフィルム)が用いられている。PPフィルムは、250nmを超える波長で、本発明によるすべてのフィルムより明らかに低い透明性を有した。フィルム1~4の測定の点でのフィルムの厚さは約30μm、フィルム5について約100μm、PPについて約55μmであった。
【0118】
実施例3:CAP2およびPBS2を用いたフィルムブロープロセス
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、フィルムブロープロセスを用いてプラスチックフィルムに形成した。第1のステップでは、均一なブレンドを形成するために、CAP2およびPBS2を、2スクリューコンパウンダー/押出機で混合した。混合は、210℃の温度で行った。フィルム7の場合、コンパウンダーからのストランドを、顆粒物の切断の前に水の存在なしにテフロン(Teflon)ベルト上で冷却した。フィルム8の場合、コンパウンダーからのストランドは、顆粒物の切断の前に水浴中で冷却した。第2のステップでは、フィルム7および8の両方を、フィルム1~6と同様に吹き付けた。
【0119】
フィルムブロープロセスの加工温度は、210~230℃であった。温度は、良好な品質および機械的特性を有するクリアーかつ透明なフィルムを得るために高い重要性があると結論された。
【0120】
組成物およびフィルムに関する詳細は、表5に見ることができる。
【0121】
【0122】
表5において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートである。
【0123】
フィルム7および8で、両方の組成物は、クリアーかつ透明なフィルム生成物を与えた。
【0124】
実施例4:別個の配合工程および顆粒化ステップを伴わない、CAP2およびPBS2を伴うフィルムブロー工程
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、別個の配合および顆粒化ステップなしに、フィルムブロープロセスを使用してプラスチックフィルムに形成した。顆粒化された出発物質70重量%のCAP2および30重量%のPBS2を、ドラムミキサー中で室温で2分間機械的に混合した。この顆粒の混合物を、マドックミキサーヘッドを備えた一軸スクリュー押出機に供給した。ポリマー溶融物を、溶融フィルターパック(50メッシュ)を通してブローフィルムダイに押し出した。包装材料としての使用に適した透明なフィルム材料を得た。
【0125】
実施例5:射出成形用組成物
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、射出成形プロセスを用いて固体成形した物品に成形した。配合し、顆粒化したポリマー組成物を溶融し、温度210℃~230℃で温度30℃の金型に注入した。射出成形した組成物は、70%のCAP2および30%のPBS2から構成された。
【0126】
材料の射出成形により、クリアー、透明かつ堅い試験棒が得られた。射出成形した材料の機械的特性を、表6に提示する。
【0127】
【0128】
表6において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートである。
【0129】
試験は、本発明のポリマー混合物が射出成形プロセスにおいてリサイクルされ得ることを示した。プロセスで形成されるあらゆる廃棄物は、小片に粉砕され、プロセスの供給漏斗に供給して戻され得る。最終製品の機械的および光学的性質を損なうことなく、リサイクルした材料の20%超を使用することができる。
【0130】
実施例6:材料のリサイクル
本発明による組成物から製造された材料のリサイクル性を調査し、複数の熱混合サイクルを繰り返し、ポリマーブレンドについてモル質量の変化を測定することによって検証した。表7に提示する結果は、少なくとも10回のリサイクルサイクルを表す特定の混合時間の後、ポリマー鎖長に顕著な変化がないことを示した。
【0131】
したがって、本発明によるポリマー組成物は、熱機械的加工方法によってリサイクル可能である。
【0132】
【0133】
表7において、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースであり、PBSはポリブチレンスクシネートである。
【0134】
数平均モル質量測定は、クロロホルム溶離液を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で、数平均モル質量測定のために行い、試料(項目1~5)を、クロロホルム(濃度1mg/ml)を用いて一晩溶解した。測定前に試料をろ過した(0.45μm)。
【0135】
SEC測定は、プレカラムを有するStyragel HR 4および3カラムを使用して、クロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)中で行った。溶出曲線は、Waters 2414 Refractive Index検出器を用いて検出した。モル質量分布(MMD)を、Waters Empower 3ソフトウェアを使用して、10×PS(580~3040000g/mol)基準に対して計算した。
【0136】
実施例7:工業的規模での配合
配合は、工業プロセスでトンスケールで行われ、次のパラメータが均一なポリマー混合物を製造するために使用された:溶融ポンプ温度225℃、スクリュー速度560~620rpmおよび210~235℃の温度に設定した加熱ゾーン(11加熱ゾーン)。この方法で生成した混合物は、70%のCAP2と30%のPBS2から構成されていた。
【0137】
実施例8:紙基材の押出コーティング
実施例7に従って得られた本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、紙の押出コーティングのために使用した。
【0138】
配合し、顆粒化した均一なポリマー混合物を溶融し、紙基材上に押し出した。加工温度は、クリアーかつ平坦なコーティングのために225~250℃から変化した。押出コーティングに使用される本発明の組成物は、70%のCAP2および30%のPBS2から構成された。
【0139】
このコーティングの接着性は、プロセス温度ならびに追加のポリマーおよび接着剤層によって調整することができることが発見された。特定の加工パラメータを用いて、ポリマーコーティングを紙基材から剥離し、剥離適用に使用することができる。これは、コーティングされた紙およびコーティング自体のリサイクルを容易にすることができる。特定のプロセスパラメータまたは押し出したポリマーもしくは接着剤層の添加により、接着力は、強力な接着力が必要とされる用途のために、より強く調整することができる。
【0140】
得られた被覆した製品を用いて実施した試験は、ポリマー被覆がヒートシール可能であり、印刷可能であり、良好なバリア特性を有することを示した。
【0141】
実施例9:フィルムからの熱成形カップの製造
1)実施例7に従って得られた本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む、厚さ40μmの積層ブローフィルムを、深絞りに使用した。熱成形は、200℃で行った。製品は、クラリティーに優れ、耐穿刺性も良好な透明なカップ(1)であった。熱成形に使用される本発明の組成物は、70%のCAP2および30%のPBS2から構成された。
【0142】
熱成形カップ(1)の特性:
・ 優れた透明性およびクラリティー
・ 耐穿刺性(EN 14477) 6.11N
【0143】
2)実施例7に従って得られた本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を含む、厚さ170μmの積層ブローフィルムを、深絞りに使用した。熱成形は、200℃で行った。製品は、クラリティーに優れ、耐穿刺性も良好な透明なカップ(2)であった。熱成形に使用される本発明の組成物は、70%のCAP2および30%のPBS2から構成された。
【0144】
熱成形カップ(2)の特性:
・ 優れた透明性およびクラリティー
・ 耐穿刺性(EN 14477) 19.6N
【0145】
実施例10:キャストフィルム押出
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、キャストフィルム押出のために使用した。配合し、顆粒化した均一なポリマー混合物を溶融し、キャストフィルムとして押し出した。加工温度は、クリアーなフィルムについて200~225℃で変化した。キャストフィルム押出に使用される本発明の組成物は、表8(フィルム9~14)に列挙される。
【0146】
【0147】
すべてのフィルム9~14を、深絞り適用で試験した。結果は、すべてのフィルムが深絞りに適していることを示した。フィルム9~12は、特に高い品質の製品を形成することが注目された。
【0148】
実施例11:添加剤を含むキャストフィルム
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、キャストフィルム押出に使用し、種々の添加剤を、ポリマー混合物に添加した。配合し、顆粒化した均一なポリマー混合物を溶融し、キャストフィルムとして押し出した。クリアーなフィルムの場合、加工温度は210~225℃で変化した。キャストフィルム押出に使用される本発明の組成物は、表9(フィルム18~23)に列挙される。
【0149】
【0150】
使用した添加剤は、A1(SUKANO PBS dc S724)、A2(SUKANO PBS ao S723)、A3(SUKANO PLA uv S547)であった。提示された全ての重量%値は、組成物の総重量を基準とする。
【0151】
実施例12:多層キャストフィルム
本発明によるポリマー組成物を含む均一なポリマー混合物を、EVOH(エチレンビニルアルコールコポリマー)での多層キャストフィルム押出のために使用した。配合し、顆粒化した均一なポリマー混合物を溶融し、多層キャストフィルムとして押し出した。クリアーな多層フィルム製品の場合、加工温度は210~225℃で変化した。多層フィルム製造に使用した本発明の組成物は、CAP2が72.5%、PBS2が27.5%であった。AがCAP2(72.5%)およびPBS2(27.5%)の均一なポリマー混合物であり、BがEVOHポリマー顆粒であるフィルム構造ABA。
【0152】
使用したEVOHは、Soarnol DC3203RBであった。