(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】固相からの固相結合ペプチドの切断方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/04 20060101AFI20240213BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20240213BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C07K1/04 ZNA
C07K14/575
C07K1/06
(21)【出願番号】P 2020555353
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059083
(87)【国際公開番号】W WO2019197466
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・フィードラー
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・プロイス
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ヘンケル
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ゲルケン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517908(JP,A)
【文献】特表2003-505347(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148213(WO,A1)
【文献】特開2001-199997(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104844706(CN,A)
【文献】特表2015-525226(JP,A)
【文献】特表2014-521680(JP,A)
【文献】特表2008-503597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、該方法は、ポリペプチドが結合した固相を、
97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および
3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と23℃~29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、組成物はポリペプチドが結合した固相と3~5時間接触させられる、前記方法。
【請求項2】
固相はRinkアミド樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチドはリンカーによりRinkアミド樹脂に結合している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
組成物は、ポリペプチドが結合した固相と25℃~27℃の温度で接触させられる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
組成物は、ポリペプチドが結合した固相と26℃の温度で接触させられる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-3、リラグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、エキセンジン-4、ならびに、
H-desPro
36-エキセンジン-4-Lys
6-NH
2、
H-des(Pro
36,
37)-エキセンジン-4-Lys
4-NH
2、
H-des(Pro
36,
37)-エキセンジン-4-Lys5-NH
2、
desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39),
desPro
36[Met(O)
14,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4 (1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
H-(Lys)
6-desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
H-desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desMet(O)
14Asp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2からなる群から選択されるエキセンジン-4のアナログ、
およびこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、GLP-1アゴニストである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドは、エキセンジン-4、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
予め決定されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの固相合成の方法であって、該方法は(a)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端を固相に連結すること、
(b)アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ基を脱保護すること、
(c)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端を工程(b)の保護されていないN末端アミノ基に連結すること、ならびに
(d)請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法により固相からポリペプチドを切断すること
を含む、前記方法。
【請求項9】
工程(b)および(c)を繰り返すことを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記固相がRinkアミド樹脂である、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-3、リラグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、エキセンジン-4、ならびに、
H-desPro
36-エキセンジン-4-Lys
6-NH
2、
H-des(Pro
36,
37)-エキセンジン-4-Lys
4-NH
2、
H-des(Pro
36,
37)-エキセンジン-4-Lys5-NH
2、
desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4 (1-39)-Lys
6-NH
2,
desPro
36[Met(O)
14Trp(O
2)
25,IsoAsp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2,
H-(Lys)
6-desPro
36[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
H-desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desMet(O)
14Asp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-Lys
6-NH
2、
desAsp
28Pro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-NH
2、
desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14、Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-(Lys)
6-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2、
H-Asn-(Glu)5-desPro
36,Pro
37,Pro
38[Met(O)
14,Trp(O
2)
25,Asp
28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)
6-NH
2からなる群から選択されるエキセンジン-4のアナログ、
およびこれらの薬学的に許容される塩から選択される、GLP-1アゴニストである、請求項
8~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ポリペプチドは、エキセンジン-4、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される、請求項
8~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる固相からの固相結合ポリペプチドの切断のための切断組成物であって、該組成物が、97~99%v/vの量のトリフルオロ酢酸および1~3%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、前記組成物。
【請求項14】
97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
ポリペプチドの固相合成における請求項
13または
14に記載の組成物の使用。
【請求項16】
ポリペプチドの固相合成における請求項
13または
14に記載の組成物の使用であって
、請求項
13または
14に記載の組成物が、固相からポリペプチドを切断するために使用される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~29℃の範囲内の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物であって、95~99%v/vの量のトリフルオロ酢酸および1~5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、前記組成物に関する。
【0003】
本発明はさらに、固相からの、固相に結合したペプチドの切断のための、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物の使用であって、該組成物が、95~99%v/vの量のトリフルオロ酢酸および1~5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、前記使用に関する。
【背景技術】
【0004】
固相ペプチド合成の確立された方法は、合成されるアミノ酸鎖の予め決定されたC末端アミノ酸の、リンカーを介したポリマー担体へのカップリングを教示する。カップリングのために使用されるアミノ酸は、N末端が保護されたアミノ基を有するアミノ酸ビルディングブロックであり、前記保護基は一時的に連結されたFmoc基である。カップリングの成功後、Fmoc保護基は切断され、次のFmoc保護されたアミノ酸ビルディングブロックが、先行するアミノ酸ビルディングブロックの遊離アミノ官能基とカップリングされる。所望のアミノ酸鎖が合成された場合、それは固相から切断される。
図1は、記載したアプローチの概要を与える。
【0005】
参照によって本明細書に組み入れる特許文献1に記載のリキシセナチド(AVE0010またはZP-10としても公知)の固相合成は、それぞれ同じ様式での個々のFmoc保護されたアミノ酸ビルディングブロックのカップリングを含む。
【0006】
リキシセナチドは、配列desPro
36エキセンジン-4(1~39)-Lys
6-NH
2を有する。この物質は、特許文献1の配列番号93に開示されている(本出願の配列番号1および
図2を参照)。エキセンジンは、血中グルコース濃度を低下させることができるペプチドの群である。エキセンジンは、GLP-1(7~36)の配列とある特定の類似性を有する(53%、非特許文献1)。エキセンジン-3およびエキセンジン-4は、エキセンジン受容体との相互作用によりモルモットの膵腺房細胞において細胞cAMP産生の増加を刺激する(非特許文献2)。エキセンジン-4とは対照的に、エキセンジン-3は、膵腺房細胞におけるアミラーゼ放出の増加をもたらす。エキセンジンはGLP-1アンタゴニストとして作用する。
【0007】
グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)は、グルコースまたは脂肪の経口摂取後のインスリン応答を増進する内分泌ホルモンである。GLP-1は、概しては、グルカゴン濃度を低下させ、胃内容排出を減速させ、(プロ)インスリン生合成を刺激し、インスリンへの感受性を増加させ、インスリン非依存性グリコーゲン生合成を刺激する(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。ヒトGLP-1は37のアミノ酸残基を有する(非特許文献6、非特許文献7)。GLP-1の活性断片としては、GLP-1(7~36)およびGLP-1(7~37)が挙げられる。
【0008】
エキセンジン-3、エキセンジン-4およびエキセンジンアゴニストは胃内容排出および運動性を低減するので、糖尿病の治療および高血糖症の予防のためにそれらを使用できることが示唆された(特許文献2および特許文献3)。
【0009】
エキセンジンアナログは、天然エキセンジン-4配列のアミノ酸置換および/またはC末端切断により特徴付けることができる。そのようなエキセンジンアナログは、特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載されている。
【0010】
固相上、特に樹脂上に合成されたペプチドの切断は複雑な化学反応である。一方で、ペプチドは固相から切断されなければならない。他方で、アミノ酸ビルディングブロックの側鎖に存在する保護基を除去することができる。いまや液相中に存在する保護基および保護基断片は、依然としてペプチドと反応して望ましくない副生成物を形成できるので、いわゆる「スカベンジャー」により不活性化される。
【0011】
Fmoc保護されたアミノ酸ビルディングブロックを用いて製造されている固相結合ペプチドは、トリフルオロ酢酸(TFA)により固相から切断することができる。さらには、TFAは、アミノ酸ビルディングブロックの側鎖に存在し得る酸不安定性保護基を除去する。
【0012】
固相結合ペプチドの切断のための先行技術の方法は、側鎖からの保護基の切断後に出現し、かつペプチド中のアミノ酸残基を共有結合的に改変する可能性がある高度に反応性の種を除去するためにTFAおよびいくつかのスカベンジャー、例えば、3、4または5つのスカベンジャーを含有する組成物を用いる。非特許文献8は、2~4つの異なるスカベンジャーを含むTFAの組成物との「試薬K」(82.5%のTFA、5%のフェノール、5%のH2O、5%のチオアニソール、2.5%の1,2-エタンジチオール)の比較を開示する。「試薬K」は、それぞれが20~50のアミノ酸残基を含有し、かつFmocベースの固相合成方法を用いて製造された10の異なるペプチドにおいて切断および望ましくない副反応の阻害において最も効果的であることが見出された。試験は室温で行われた。
【0013】
固相からの切断が不完全であるか、または側鎖の保護基が完全には除去されない場合、切断反応を繰り返すことができる。そのような追加の切断は、本明細書において「第2の切断」または「その後の切断」と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO01/04156
【文献】米国特許第5,424,286号
【文献】WO98/0535A1
【文献】WO99/07404
【文献】WO99/25727
【文献】WO99/25728
【非特許文献】
【0015】
【文献】Goke et al.、J. Biol. Chem. 268、19650~55頁
【文献】Raufman、1996年、Reg. Peptides 61:1~18頁
【文献】Holst(1999年)、Curr. Med. Chem. 6:1005頁
【文献】Nauck et al.(1997年)、Exp. Clin. Endocrinol. Diabetes 105:187頁
【文献】Lopez-Delgado et al.(1998年)、Endocrinology 139:2811頁
【文献】Heinrich et al.、Endocrinol. 115:2176頁(1984年)
【文献】Uttenthal et al.、J. Clin. Endocrinol. Metabol.(1985年)、61:472頁
【文献】King et al.、Int. J. Peptide Proteine Res:36、1990年、255~266頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、ペプチド、特にGLP-1アゴニストの固相合成におけるペプチド収率の向上である。固相結合アミノ酸鎖へのアミノ酸ビルディングブロックのカップリングが完了した場合、アミノ酸鎖は固相から切断される。ペプチドを含有する固相は切断試薬と接触させられ、ペプチド、特にGLP-1アゴニストは固相から切断され、場合によりアミノ酸側鎖上に存在する保護基は除去される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、反応温度および切断試薬の成分はペプチドの収率に有意に影響を及ぼすことを見出した。先行技術の切断方法を考慮して、本発明の切断方法は、
1.室温を上回る反応温度の増加、
2.切断試薬もしくは切断組成物中の成分の数の低減、または/および
3.場合により、「第2の切断」の省略
により特徴付けられる。
【0018】
本発明者らは、固相からの固相結合ペプチド(特に、GLP-1アゴニスト)の切断のための本発明の方法により、ペプチド(生ペプチド)の収率を5%増加させ、コストの低減および製造能力の増加を結果としてもたらすことができることを見出した。さらには、不純物プロファイルは有意に変化しなかった。
【0019】
(比較用のKingのカクテルにおける5つの成分を考慮して)切断カクテル中の成分の数の低減により、分析的品質管理が向上し、コストが低減され、製造処理の間の取扱いが促進される。
【0020】
第2の切断工程の省略はコストの低減に繋がり、製造処理の間の取扱いが促進される。TFAの量が低減され、それにより、TFAの除去が促進される。
【0021】
本発明の第1の態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含む、前記方法である。
【0022】
固相合成の方法は当業者に公知である。好ましい態様では、カップリングサイクルは、合成される配列のC末端からN末端へと行われる。アミノ酸ビルディングブロックによるC末端からN末端への固相ペプチド合成において適用される反応条件は当業者に公知である。固相合成のために好適なアミノ酸ビルディングブロックは本明細書に記載されている。特に、アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ基は、Fmocなどの塩基不安定性保護基により保護される。
図1は、Fmoc保護されたアミノ酸ビルディングブロックを用いる合成を示す。
【0023】
参照によって本明細書に組み入れるWO01/04156A1に記載のリキシセナチド(AVE0010またはZP-10としても公知)の固相合成は、それぞれ同じ様式での個々のFmoc保護されたアミノ酸ビルディングブロックのカップリングを含む。
【0024】
ペプチドの固相合成のために好適な全ての種類の固相を使用することができる。特に、樹脂を含む固相を使用することができる。樹脂はRink樹脂(Rinkアミド樹脂)またはTentagel(登録商標)樹脂であり得る。好ましい態様では、固相樹脂はRink樹脂またはRinkアミド樹脂である。
【0025】
特に、ポリペプチドは、リンカーにより樹脂、特にRinkアミド樹脂に結合している。好適なリンカーは当業者に公知である。
【0026】
本発明において、「約」または「おおよそ」という用語は、±10%、±5%または±1%の範囲を意味する。
【0027】
本発明において、「トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる」は、追加の化合物が小量で組成物中に存在できることを特に意味する。特に、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールは、一般的な程度の純度において本発明の方法において使用される。そのため、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる本発明の組成物は、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオール中に一般的に存在する不純物を含有することができる。本発明の組成物または本発明の方法におけるトリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールのパーセンテージは、トリフルオロ酢酸または/および1,2-エタンジチオール中に存在してもよい不純物を含めて、合わせて100%である。
【0028】
本発明において、「小量で」は、トリフルオロ酢酸または/および1,2-エタンジチオールの不純物などの追加の化合物が、1%v/vまで、0.5%v/vまで、0.2%v/vまで、0.1%v/vまで、0.05%v/vまで、または0.02%v/vまでの量で本発明の組成物中または本発明の方法において使用される反応混合物中に存在できることを特に意味する。固体であり得る不純物が存在する場合、パーセンテージはw/vとして表される。
【0029】
本発明の方法において、切断組成物は、特に約95~約99%v/vの量のトリフルオロ酢酸を含む。
【0030】
好ましくは、切断組成物は、約96~約98%v/vの量、または約97~約99%v/vの量のトリフルオロ酢酸を含む。
【0031】
より特には、組成物は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸を含む。
【0032】
本発明の方法において、切断組成物は、特に約1~約5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む。
【0033】
好ましくは、切断組成物は、約2~約4%v/vの量、または約1~約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む。
【0034】
より特には、組成物は、約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む。
【0035】
本発明の方法において、好ましい切断組成物は、約96~約98%v/vの量のトリフルオロ酢酸から本質的になり、かつ、残余は約4~約2%v/vの量の1,2-エタンジチオールである。
【0036】
本発明の方法において、好ましい切断組成物は、約97~約99%v/vの量のトリフルオロ酢酸から本質的になり、かつ、残余は約3~約1%v/vの量の1,2-エタンジチオールである。
【0037】
本発明の方法において、別の好ましい切断組成物は、約96.5~約97.5%v/vの量のトリフルオロ酢酸から本質的になり、かつ、残余は約3.5~約2.5%v/vの量の1,2-エタンジチオールである。
【0038】
本発明の方法において、別の好ましい組成物は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる。
【0039】
本明細書に記載の発明の方法において、別の好ましい組成物は、8.25:0.25(v:v)の比のトリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる。
【0040】
本発明の組成物は液体組成物であり得る。本発明の方法において、組成物は、固相上のペプチド1g当たり約5~12ml、特に、固相上のペプチド1g当たり7~9ml、または固相上のペプチド1g当たり約8.5mlの量で使用することができる。「固相上のペプチド」または「樹脂上のペプチド」の重量は、本発明の組成物と接触させる、ペプチドの重量と固相または樹脂の重量との和を意味する。
【0041】
より特には、固相上のペプチド1g当たり8.25mlのTFAおよび固相上のペプチド1g当たり約0.25mlの1,2-エタンジチオールを本発明の方法において使用することができる。
【0042】
本発明において、室温より高い温度での樹脂からのペプチドの切断は、ペプチド、特にGLP-1アゴニストの収率の増加を結果としてもたらすことが驚くべきことに見出された。
【0043】
本発明の方法において、組成物は、ポリペプチドが結合した固相と、特に約25℃~約27℃の温度、または約26℃~約29℃の温度、より特には約25.5℃~約26.5℃の温度、最も特には約26℃の温度で接触させられる。
【0044】
好ましくは、固相は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約25℃~約27℃の温度で接触させられる。
【0045】
固相が、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の温度で接触させられることもまた本発明において好ましい。
【0046】
より好ましくは、固相は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約25.5℃~約26.5℃、好ましくは約26℃の温度で接触させられる。
【0047】
本発明の方法において、組成物は、ポリペプチドが結合した固相と1~8時間、より特には4~8時間接触させられる。組成物をポリペプチドが結合した固相と約4時間、約5時間、約6時間、約7、または約8時間接触させることが好ましい。
【0048】
組成物をポリペプチドが結合した固相と3~5時間、特に4時間接触させることが本発明の方法において最も好ましい。
【0049】
より好ましくは、固相は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約25.5℃~約26.5℃の温度で約4時間、好ましくは、約26℃で約4時間接触させられる。
【0050】
本発明のさらに別の態様では、第2の切断もその後の切断も行われない。この態様では、ポリペプチドの固相合成において、本発明の方法による切断は単一の工程において行われる。
【0051】
本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、ペプチド合成の1つのサイクルにおいて1つまたはそれ以上のアミノ酸により合成されるアミノ酸鎖を伸長させる化合物である。好ましい態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、1、2、3、または4つのアミノ酸により合成されるアミノ酸鎖を伸長させる。特に好ましい態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、1または2つのアミノ酸により合成されるアミノ酸鎖を伸長させる。
【0052】
本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、好ましくは、1つのアミノ酸(モノアミノ酸ビルディングブロック)または2、3、4もしくはより多くのアミノ酸を含むオリゴペプチドを含む。好ましい態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、1つのアミノ酸、または、例えばPro-ProもしくはHis-Glyなどの2つのアミノ酸を含むペプチドを含む。1つより多くのアミノ酸を含むアミノ酸ビルディングブロックのアミノ酸は、好ましくは、ペプチド結合により連結される。2つのアミノ酸を含む特に好ましいアミノ酸ビルディングブロックはFmoc-Pro-Pro-OHおよびFmoc-His(Trt)-Gly-OHである。
【0053】
リキシセナチドおよびエキセンジン-4の合成において位置1および2におけるHisおよびGly用のアミノ酸ビルディングブロックの代わりにFmoc-His(Trt)-Gly-OHを使用することにより望ましくないDesGly(2)-リキシセナチドの防止が可能となることが見出された。さらに、得られたリキシセナチドは、ラセミ化の結果としてもたらされるD-Hisの値の増進を示さなかった。
【0054】
Fmoc-His(Trt)-Gly-OHは、例えば、
i)Fmoc-His(Trt)-OHおよびH-Gly-OBzlトシレートを反応させる工程、および
ii)工程i)において得られた生成物のベンジル基を切断してFmoc-His(Trt)-Gly-OHを得る工程
を含む方法により形成させることができる。
【0055】
例示的な反応条件は実施例3に示される。
【0056】
本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、所望の位置においてのみアミノ酸鎖を選択的に伸長させるために好適な改変を含むことができる。アミノ酸ビルディングブロックの改変は、N末端、C末端および/またはアミノ酸の側鎖において行うことができる。
【0057】
アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ官能基(すなわち、カップリングの成功後にアミノ酸鎖のN末端にあるアミノ基)を保護するために、ペプチドの合成、特にポリペプチドの固相合成のために一般的に使用される全ての種類の保護基を使用することができる。それらの種類の好適な一時的な保護基は当業者に公知である。好ましい態様では、アルカリ性環境中で不安定な保護基を使用することができる。好ましい態様では、アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ基はFmoc保護基により保護される。
【0058】
アミノ酸ビルディングブロックのC末端カルボキシ基は、好ましくは、保護されないままである。
【0059】
本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、互いに独立して、D-アミノ酸およびグリシン、L-アミノ酸およびグリシンならびに/またはこれらの組合せを含むことができる。好ましい態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックのアミノ酸は、互いに独立してL-アミノ酸およびグリシンから選択される。好ましい態様では、アミノ酸は、α-アミノ酸から選択することができる。さらなる態様では、アミノ酸は、ポリペプチド中に天然に存在するアミノ酸などの天然に存在するアミノ酸から選択することができる。別の態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、Met(O)(メチオニンスルホキシドもしくはメチオニンスルホン)、Trp(O2)(N-ホルミルキヌレニン)および/またはisoAsp(β-アスパラギン酸もしくはイソアスパラギン酸)などの人工アミノ酸を含むことができる。いっそうさらなる好ましい態様では、アミノ酸は、特にそれぞれD型またはそれぞれL型の、Ser、Thr、Trp、Lys、Ala、Asn、Asp、Val、Met、Phe、Ile、Pro、Arg、Glu、Gln、Leu、およびGlyから選択される。特に好ましい態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックは、特にそれぞれD型またはそれぞれL型の、Arg、Glu、Gln、Leu、およびGlyから選択されるアミノ酸を含む。
【0060】
特に、アミノ酸は、互いに独立して選択され、例えば、特にそれぞれD型またはそれぞれL型の、Ser、Thr、Trp、Lys、Ala、Asn、Asp、Val、Met、Phe、Ile、Pro、Arg、Glu、Gln、Leu、およびGlyから独立して選択される。
【0061】
一態様では、本発明によるアミノ酸ビルディングブロックの少なくとも1つの側鎖は、さらなる保護基により保護することができる。さらなる保護基は、好ましくは、N末端保護基に対して直交性である。前記側鎖のための好適な保護基は当業者に公知である。好適な保護基の例は、例えば、Trt、Boc、Bzl、Pdf、tBuおよびOtBuであり、これらは特定の側鎖の保護のために使用することができる。当業者は、いずれの側鎖がいずれの種類の保護基により保護される必要があるかを認識している。一態様では、実施例1.4に記載されるようなアミノ酸ビルディングブロックを使用することができる。アミノ酸ビルディングブロックが1つより多くの側鎖を含む場合、これらの側鎖の1つまたはそれ以上を、当業者に公知であるような好適な保護基から独立して選択される保護基により保護することができる。
【0062】
合成されるポリペプチドは、予め決定された配列を有するそれぞれ可能なペプチドであってもよい。好ましい態様では、合成されるポリペプチドはGLP-1アゴニストである。ポリペプチドはGLP-1アゴニストであり得、GLP-1アゴニストは、GLP-1ならびにそのアナログおよび誘導体、エキセンジン-3ならびにそのアナログおよび誘導体、エキセンジン-4ならびにそのアナログおよび誘導体からなる群から選択される。好ましい態様では、ポリペプチドは、エキセンジン-4およびリキシセナチドからなる群から選択される。最も好ましいペプチドはリキシセナチドである。さらなる好ましい態様では、ポリペプチドは、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される。
【0063】
エキセンジン-3、エキセンジン-3のアナログおよび誘導体、エキセンジン-4ならびにエキセンジン-4のアナログおよび誘導体は、WO01/04156、WO98/30231、米国特許第5,424,286号、EP第99610043.4号およびWO2004/005342に記載されている。これらの文献を参照によって本明細書に組み入れる。これらの文献に記載のエキセンジン-3、エキセンジン-4ならびにこれらのアナログおよび誘導体は、本発明による方法により合成することができる一方、追加の改変を合成の完了後に行うことができる。
【0064】
リキシセナチド(配列番号1、
図2)、エキセンジン-4(配列番号2、
図2)およびエキセンジン-3(配列番号3、
図2)は、高い程度の配列同一性を有する。リキシセナチドおよびエキセンジン-4の配列は位置1~37において同一である。エキセンジン-4の配列1~39は39の位置のうちの37(94%)においてエキセンジン-3と同一である(J. Biol. Chem. 267、1992年、7402~7405頁)。配列位置は、本明細書においてリキシセナチドまたはエキセンジン-4の配列に関して与えられる。これらの配列から開始して、当業者は、他の配列中の対応する位置を容易に決定することができる。
【0065】
エキセンジン-3ならびに/またはエキセンジン-4のアナログおよび誘導体は、特に、改変されたアミノ酸配列を含む。一態様では、アミノ酸配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、エキセンジン-4中のdesPro36、desPro37、desAsp28、desMet(O14)およびエキセンジン-3中の各々の位置)の欠失により改変される。一態様では、1つまたはそれ以上のアミノ酸を置換することができる一方(例えば、エキセンジン-4中のMet(O14)、Trp(O2)25、isoAsp28、Asp28、Pro38およびエキセンジン-3中の各々の位置)、天然に存在するまたは人工アミノ酸、例えば、Met(O)(メチオニンスルホキシドもしくはメチオニンスルホン)、Trp(O2)(N-ホルミルキヌレニン)および/またはisoAsp(β-アスパラギン酸もしくはイソアスパラギン酸)などを導入することができる。人工アミノ酸は、合成サイクルにおいて各々のアミノ酸ビルディングブロックを使用することにより配列に容易に導入することができる。
【0066】
一態様では、ポリペプチドのC末端および/またはN末端は、例えば、-(Lys)-、-(Lys)2-、-(Lys)3-、-(Lys)4-、-(Lys)5-、-(Lys)6-、および-Asn-(Glu)5-などの配列の付加により、改変することができる。好ましい態様では、追加のアミノ酸配列は、例えば、-(Lys)4-、-(Lys)5-、-(Lys)6-および-Asn-(Glu)5-である。C末端カルボキシ基は、好ましくは、酸アミン基(-NH2)である。場合により、C末端および/またはN末端の改変は、本発明による方法の合成サイクルの完了後に別々の工程において行われる。
【0067】
本発明による方法の合成サイクルの完了後、合成されたポリペプチドの薬学的に許容される塩を、場合により追加の工程において形成することができる。ポリペプチドの薬学的に許容される塩の形成方法は当業者に公知である。好ましい薬学的に許容される塩は、例えば、酢酸塩である。
【0068】
さらなる好ましいGLP-1アゴニストは、
H-desPro36-エキセンジン-4-Lys6-NH2、
H-des(Pro36,37)-エキセンジン-4-Lys4-NH2、
H-des(Pro36,37)-エキセンジン-4-Lys5-NH2、およびこれらの薬学的に許容される塩
からなる群から選択されるエキセンジン-4のアナログである。
【0069】
さらなる好ましいGLP-1アゴニストは、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1~39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1~39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39),
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1~39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-2(1~39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-2(1~39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1~39)、およびこれらの薬学的に許容される塩
からなる群から選択されるエキセンジン-4のアナログである。
【0070】
さらなる好ましいGLP-1アゴニストは、C末端において-Lys6-NH2ペプチドでさらに改変された、上記のような群から選択されるエキセンジン-4のアナログである。
【0071】
さらなる好ましいGLP-1アゴニストは、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-Lys6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14、Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14、Trp(O2)25]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14、Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14、Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1~39)-(Lys)6-NH2、およびこれらの薬学的に許容される塩
からなる群から選択されるエキセンジン-4のアナログである。
【0072】
さらなる態様では、好ましいGLP-1アゴニストは、GLP-1(特に、GLP-1(7~36)アミド、配列番号4)、Arg34,Lys26(Nε(γ-グルタミル(Nαヘキサデカノイル)))GLP-1(7~37)(リラグルチド)、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチドおよびこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。特に、好ましいGLP-1アゴニストは、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチドおよびこれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0073】
さらなる好ましいGLP-1アゴニストは、リキシセナチド(配列番号1)の他に、その薬学的に許容される塩である。
【0074】
本発明の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0075】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0076】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0077】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0078】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0079】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0080】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0081】
本発明の別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0082】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0083】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0084】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0085】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0086】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0087】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約26℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0088】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含む、前記方法に関する。
【0089】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含み、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0090】
本発明のさらに別の好ましい態様は、固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、97%の量のトリフルオロ酢酸および3%の量の1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と26℃の温度で接触させることを含み、固相はRinkアミド樹脂であり、かつ、ポリペプチドはリキシセナチドである、前記方法に関する。
【0091】
本発明のさらに別の態様は、予め決定されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの固相合成の方法であって、
(a)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端をRinkアミド樹脂のような固相にカップリングすること、
(b)アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ基を脱保護すること、
(c)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端を工程(b)の保護されていないN末端アミノにカップリングすること、
(d)場合により工程(b)および(c)を繰り返すこと、ならびに
(e)本明細書に記載されるような発明の方法により固相からポリペプチドを切断すること
を含む、前記方法である。
【0092】
本発明の固相合成の方法において好適なアミノ酸ビルディングブロックは本明細書に記載されている。
【0093】
本発明の固相合成の方法において、第2のまたはその後の切断工程は省略することができる。ポリペプチドの固相合成において、切断工程(e)は、好ましくは、1回行われる。
【0094】
工程(a)または/および(c)におけるカップリング、ならびに工程(b)による脱保護のための好適な条件は当業者に公知である。
【0095】
合成されるペプチドは、本明細書に記載されるようなペプチドであり得る。固相合成の方法において、ポリペプチドは、本明細書に記載されるような、GLP-1、そのアナログおよび誘導体、エキセンジン-3、そのアナログおよび誘導体、ならびにエキセンジン-4、そのアナログおよび誘導体から選択することができる。特に、ポリペプチドは、エキセンジン-4およびリキシセナチドから選択される。好ましいポリペプチドはリキシセナチドである。ポリペプチドはまた、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択することができる。
【0096】
一態様では、合成されるポリペプチドは、好ましくは、リキシセナチドまたはエキセンジン-4であり、アミノ酸ビルディングブロックArg(20)、Glu(17)、Gln(13)、Leu(10)または/およびGly(4)のカップリング後、キャップ付加工程を工程(c)と工程(d)との間に行うことができる。本発明によれば、「キャップ付加」は、これらの分子において鎖伸長を終了させるための、アミノ酸ビルディングブロックがカップリングされていない遊離の保護されていないN末端アミノ基のアセチル化である。そのようなキャップ付加された分子は、精製の間に生成物から除去することができる。キャップ付加は
図1に記載されている。
【0097】
特に、本発明による「キャップ付加」は、工程(c)において得られた生成物を、キャップ付加化合物を含むキャップ付加試薬またはキャップ付加組成物と接触させ、キャップ付加化合物が、工程(c)においてビルディングブロックがカップリングされなかったアミノ酸鎖の保護されていないN末端アミノ基に結合することを意味する。
【0098】
一態様では、キャップ付加組成物は、0.5~5%v/vの濃度の無水酢酸を含む。好ましい態様では、無水酢酸の濃度は、1~3%v/v、より好ましくは2%v/vである。
【0099】
一態様では、キャップ付加組成物はジイソプロピルエチルアミンを含み、ジイソプロピルエチルアミンの濃度は0.2~2%v/vであり得、好ましくは0.5~2%v/vである。ジイソプロピルエチルアミンの好ましい濃度は1%v/vである。
【0100】
一態様では、キャップ付加組成物はジイソプロピルエチルアミンおよび無水酢酸を含み、ジイソプロピルエチルアミンの濃度は0.2~2%v/vであり得、好ましくは0.5~2%v/vであり、かつ、無水酢酸の濃度は0.5~5%v/vであり得、好ましくは1~3%v/vである。
【0101】
キャップ付加組成物は2%v/vの無水酢酸および1%v/vのジイソプロピルエチルアミンを含むことが好ましい。
【0102】
キャップ付加は、5~15分間、特に約10分間行うことができる。
【0103】
好ましいキャップ付加は、2%v/vの無水酢酸および1%v/vのジイソプロピルエチルアミンを含むキャップ付加試薬またはキャップ付加組成物を用いて約10分間行われる。
【0104】
本発明によるキャップ付加反応は、室温で行うことができる。本発明による室温は、おおよそ15~25℃の温度、おおよそ20~23℃の範囲内の温度、おおよそ19~21℃の範囲内の温度またはおおよそ20℃の温度に関する。
【0105】
キャップ付加工程において使用される溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、塩化メチレン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン、またはこれらの混合物などの極性非水性溶媒である。好ましい態様では、キャップ付加工程において使用される溶媒はDMFである。
【0106】
本発明のさらに別の態様は、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物であって、95~99%v/vの量のトリフルオロ酢酸および1~5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、前記組成物である。
【0107】
より特には、本発明の組成物は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる。
【0108】
別の好ましい組成物は、8.25:0.25(v:v)の比のトリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる。
【0109】
組成物のさらなる構成は、本発明の方法との関連で上記される。特に、本発明の組成物は、本明細書に記載されるように固相からポリペプチドを切断するために、本明細書に記載されるようにポリペプチドの固相合成において使用することができる。
【0110】
略語
Ac(N1~N2):位置N1~N2のポリペプチドのN末端がアセチル化された断片。
H(N1~N2)または(N1~N2):遊離のN末端アミノ官能基を含む位置N1~N2のポリペプチドの断片。
Fmoc(N1~N2):保護基がFmocである、保護されたN末端アミノ官能基を含む位置N1~N2のポリペプチドの断片。
(N-1)不純物:ある特定の位置においてビルディングブロックを欠いている、ペプチド合成の間の意図しないペプチドの出現に関する。意図する合成ポリペプチドが長さNを有する場合、不純物はN-1の長さを有する。(N-1)不純物の出現はキャップ付加により防止される。
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
Boc tert-ブトキシカルボニル
Bzl ベンジル
Pbf 2,2,5,7,8-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
tBu tert-ブチル
OtBu O-tert-ブチル
Trt トリチル
DIPE ジイソプロピルエーテル
【0111】
本発明は、以下の図面および実施例によりさらに特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図2】リキシセナチド(配列番号1)、エキセンジン-4(配列番号2)、エキセンジン-3(配列番号3)およびGLP-1(GLP-1(7~36)アミド、配列番号4)の配列。
【
図3】リキシセナチドの合成の間のアセチル化された誤った配列の出現。Fmoc-Arg(20)-OHのカップリングおよびその後のキャップ付加/Fmocの切断。位置21(Leu)を合成から省略したことに留意すべきである。(1)Fmoc-(22~44)+Arg、(2)(22~44)+Arg、(3)Ac(22~44)+Arg、(4)Fmoc-(22~44)+Arg+Val。データは、アセチル化された断片がキャップ付加工程の間に既に形成されているが、誤った位置がアセチル化されている[Ac(22~24)+ArgがArgのキャップ付加の間に既に出現している]ことを示す。
【
図4】リキシセナチドの合成の間のアセチル化された誤った配列の出現。Fmoc-Gln(13)-OHのカップリングおよびその後のキャップ付加/Fmocの切断。(1)Ac(14~44)、(2)Fmoc(13~44)、(3)Ac(13~44)、(4)(13~44)、(5)(14~44)。データは、アセチル化された断片がキャップ付加工程の間に既に形成されているが、誤った位置がアセチル化されている(Ac(13~44))ことを示す。
【
図5】リキシセナチドの合成の間のアセチル化された誤った配列の出現。Fmoc-Lys(12)-OHのカップリングおよびその後のキャップ付加/Fmocの切断。(1)Ac(13~44)、(2)Fmoc(12~44)、(3)Ac(12~44)、(4)(12~44)。データは、アセチル化された断片がキャップ付加工程の間に既に形成されているが、誤った位置がアセチル化されている(Ac(12~44))ことを示す。
【
図6】HPLCクロマトグラフィーによるDMF中の10%の無水酢酸および5%v/vのDIPEAを用いた20分間のキャップ付加(A)と比較した本発明によるキャップ付加の方法(B)を使用したリキシセナチドの合成の比較。(C)(A)および(B)のHPLCクロマトグラムのオーバーラップ。
【
図7】リキシセナチド(未加工生成物)のHPLC。赤:望ましくないアセチル化された副生成物。
【
図8】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(36~44)の形成。
【
図9】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(23~44)の形成。
【
図10】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(21~44)の形成。
【
図11】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(19~44)の形成。
【
図12】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(18~44)の形成。
【
図13】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(15~44)の形成。
【
図14】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(12~44)の形成。
【
図15】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(8~44)の形成。
【
図16】キャップ付加カクテルおよび温度に依存したAc(6~44)の形成。
【
図17】15℃、室温(RT)および30℃でのリキシセナチド合成における9つの異なる位置でのキャップ付加におけるAc(X~44)含有量の比較。
【
図18】15℃、室温(RT)および30℃でのリキシセナチド合成における9つの異なる位置でのキャップ付加におけるAc[(X-1)~44]含有量の比較。
【
図19】異なるキャップ付加条件下でのリキシセナチド合成における9つの異なる位置での異なる条件下でのキャップ付加、またはキャップ付加なしでのAc(X~44)含有量の比較。
【
図20】異なるキャップ付加条件下でのリキシセナチド合成における9つの異なる位置での異なる条件下でのキャップ付加、またはキャップ付加なしでのAc[(X-1)~44]含有量の比較。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0113】
リキシセナチドの合成
活性物質リキシセナチドは、44アミノ酸から構成されるポリペプチドアミドであり、酢酸塩は対イオンとして機能する。
【0114】
1文字表記において、リキシセナチドのアミノ酸配列は以下の通りである:
H-G-E-G-T-F-T-S-D-L-S-K-Q-M-E-E-E-A-V-R-L-F-l-E-W-L-K-N-G-G-P-S-S-G-A-P-P-S-K-K-K-K-K-K-NH2
【0115】
C末端、Lys-44から開始する直鎖固相合成によりペプチド鎖を構築した。
【0116】
合成の方法はFmoc固相ペプチド合成であり、ペプチドアミドを得るためにRinkアミド樹脂を使用した。反応はDMF中で室温で実行した。反応の間に、主にDMFを用いて、洗浄を繰り返し実行し、中間洗浄工程の1つはイソプロパノールを用いて実行した。
【0117】
ポリマー支持体上のリキシセナチドの合成は、以下の工程に分けることができる:
・Rink樹脂への第1のFmoc-アミノ酸(Fmoc-Lys(Boc)-OH)のカップリング
・未反応アミノ基のキャップ付加
・一時的な保護基Fmocの切断
・さらなるFmoc-アミノ酸またはFmoc-ジペプチドのカップリング
・未反応アミノ基のキャップ付加
・最終のFmocの切断
・樹脂からのリキシセナチドの切断および側鎖保護基の同時の除去
【0118】
【0119】
1.1 Rink樹脂への第1のFmoc-アミノ酸(Fmoc-Lys(Boc)-OH)のカップリング
合成を開始する前に、Rinkアミド樹脂をDMF中で膨潤させた。膨潤は、2~15時間実行した。その後に、DMF中の25%のピペリジンを使用して一時的な保護基FmocをRinkアミド樹脂から切断した。この切断は、5分および20分の切断時間で2回行った。Fmocの切断後、DMFを用いて繰り返しでおよびイソプロパノールを用いて1回、樹脂を洗浄した。
【0120】
樹脂をロードするために、第1のFmoc-アミノ酸、Fmoc-Lys(Boc)-OHのカップリングを過剰量の2.4当量において実行した。HOBt水和物、HBTUおよびDIPEAはカップリング試薬として働いた。カップリング時間は60~120分であった。
【0121】
Rink樹脂をFmoc-Lys(Boc)-OHと完全にロードするために、カップリング試薬HOBt水和物およびDICを用いてさらなるローディングを実行した。カップリング時間は6~18時間であった。工程1.1を実行しながら混合物を撹拌した。キャップ付加をその後に実行した。
【0122】
1.2 未反応アミノ基のキャップ付加
樹脂の不完全なローディングの帰結は、まだ未反応のアミノ基が樹脂上に見出されることである。無水酢酸/DIPEA/DMF(10:5:85)の混合物を加えることにより、これらを不活性化し、それゆえさらなるカップリングのために利用不可能とした。撹拌しながらキャップ付加混合物を樹脂上に20分間残留させた。残留する遊離アミノ基をアシル化した。その後に、DMFを用いて繰り返しでおよびイソプロパノールを用いて1回、樹脂を洗浄した。
【0123】
リキシセナチド合成の少なくとも5つの位置における本発明によるキャップ付加方法は実施例4および5に記載される。
【0124】
1.3.一時的な保護基Fmocの切断
DMF中の25%のピペリジンを使用して一時的な保護基Fmocを切断した。この切断は、5分および20分の切断時間で2回行った。Fmocの切断後、DMFを用いて繰り返しでおよびイソプロパノールを用いて1回、樹脂を洗浄した。
【0125】
1.4 さらなるFmoc-アミノ酸またはFmoc-ジペプチドのカップリング
次のFmoc-アミノ酸を樹脂上の脱保護されたアミノ基にカップリングした。カップリングは、異なる当量においてDMF中で実行した。カップリング時間は2時間~18時間であった。HOBt/DIC、そしてまたHBTU/DIPEAをカップリング試薬として使用した。
【0126】
以下の誘導体をFmoc-アミノ酸として使用した:
・Fmoc-Lys(Boc)-OH
・Fmoc-Ser(tBu)-OH
・Fmoc-Pro-OH
・Fmoc-Ala-OH×H2O
・Fmoc-Gly-OH
・Fmoc-Asn(Trt)-OH
・Fmoc-Leu-OH
・Fmoc-Trp(Boc)-OH
・Fmoc-Glu(OtBu)-OH×H2O
・Fmoc-Ile-OH
・Fmoc-Phe-OH
・Fmoc-Arg(Pbf)-OH
・Fmoc-Val-OH
・Fmoc-Met-OH
・Fmoc-Gln(Trt)-OH
・Fmoc-Asp(OtBu)-OH
・Fmoc-Thr(tBu)-OH
・Fmoc-His(Trt)-OH
【0127】
代替的に、Fmoc-ジペプチドを使用することも可能であった(本発明による方法):
・Fmoc-Pro-Pro-OH(CAS 129223-22-9)
・Fmoc-Ala-Pro-OH(CAS 186023-44-9)
・Fmoc-Ser(tBu)-Gly-OH(CAS 113247-80-6)
・Fmoc-Gly-Pro-OH(CAS 212651-48-4)
・Fmoc-Gly-Gly-OH(CAS 35665-38-4)
・Fmoc-Asn(Trt)-Gly-OH(Bachem B-3630より)
・Fmoc-Glu(OtBu)-Gly-OH(CAS 866044-63-5)
・Fmoc-His(Trt)-Gly-OH
【0128】
カップリングがカイザー試験にしたがって不完全であると見出された場合(E. Kaiser et al、Anal. Biochem. 34、1970年、595頁)、さらなるカップリングが可能であった。この目的のために、HBTU/DIPEA/HOBt水和物と共に、Fmoc-アミノ酸を再びカップリングさせた。
【0129】
1.5 未反応アミノ基のキャップ付加
要点1.2の記載を参照。
【0130】
1.6 最終のFmocの切断
最終のFmocの切断を要点1.3に記載したように実行した。ジイソプロピルエーテルを用いて樹脂を最後に再び洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0131】
1.7 樹脂からのリキシセナチドの切断および側鎖保護基の同時の除去
実施例6に記載したようにRink樹脂からのリキシセナチドの切断を実行した。
【0132】
1.8 ジペプチドの本発明の使用を用いたリキシセナチドの合成
HBTU/DIPEA/HOBt水和物を用いて樹脂への第1のFmoc-Lys(Boc)-OHのカップリングを実行した。Rinkアミド樹脂の遊離アミンへの第1のアミノ酸Fmoc-Lys(Boc)-OHのカップリング後、以下の処理工程を際限なしの繰り返しのサイクルで実行した(工程1.3~1.6も参照):
・Fmocの切断
・カップリング
・必要な場合、さらなるカップリング
・キャップ付加
・最終のアミノ酸単位のカップリング後、N末端Fmoc基を切断する。
【0133】
DIC/HOBtを用いて標準的なFmoc保護されたアミノ酸をカップリングし、過剰量のアミノ酸およびカップリング試薬は2~4当量であった。
【0134】
位置Pro(36)およびPro(37)において、2つのFmoc-Pro-OHアミノ酸誘導体の代わりにHBTU/DIPEAを用いてジペプチドFmoc-Pro-Pro-OHをカップリングした。
【0135】
位置Pro(31)において、HBTU/DIPEA/HOBt水和物を用いてカップリングを実行した。
【0136】
位置His(1)およびGly(2)において、アミノ酸誘導体Fmoc-His(Boc)-OHおよびFmoc-Gly-OHの代わりにジペプチドFmoc-His(Trt)-Gly-OHをカップリングした。
【0137】
カップリング後に、実施例4および5に記載されるように、Ac2O/DIPEAを用いて各場合においてキャップ付加を実行した。
【0138】
DMF中の25%のピペリジンを用いてFmocの切断を行い、各場合において連続的に最初に5分の反応時間、次に20~40分の反応時間とした。
【0139】
カップリングの完了はカイザー試験により確認した。
【0140】
最後のカップリングおよびFmoc基の最後の切断後、最初にDMFを用いて繰り返しで、次にイソプロパノールを用いておよび最後にジイソプロピルエーテルを用いて樹脂を洗浄し、その後に減圧下35℃で乾燥させた。
【0141】
1,2-エタンジチオールなどのスカベンジャーを用いて樹脂からの生ペプチドの切断をトリフルオロ酢酸中で実行した。
【0142】
固相としてC18 RPシリカゲルを用いて2工程HPLC処理において生ペプチドを精製した。第1の精製工程において、0.1%のTFAと共にアセトニトリル/水を含む緩衝系を使用し;第2の工程において、AcOHと共にアセトニトリル/水を含む緩衝系を使用した。プールした溶液の濃縮後、純粋なペプチドをフリーズドライにより得た。
【0143】
0.3mmol/gのローディングを伴うRinkアミド樹脂3500g(すなわち、1.05molバッチ)の使用は樹脂上のペプチド9970gを与えた。生ペプチド4636gをそこから得た。
【0144】
精製後、純粋なペプチド576gをそこから得た。MS:4855.5(モノアイソトピックモル質量);測定値4855.6。アミノ酸シークエンシング:正しい配列が見出された。アッセイ:89.0%(そのまま)。
【0145】
1.9 ジペプチドを使用しないリキシセナチドの合成
C末端、Lys-44から開始して、直鎖固相合成によりペプチド鎖を構築した。
【0146】
DIC/HOBtを用いて標準的なFmoc保護されたアミノ酸をカップリングし、過剰量のアミノ酸およびカップリング試薬は2~4当量であった。
【0147】
位置Pro(37)、Pro(36)、Pro(31)において、HBTU/DIPEA/HOBt水和物を用いてカップリングを実行した。
【0148】
各カップリングに続いてAc2O/DIPEAを用いてキャップ付加を行った。DMF中の25%のピペリジンを用いてFmocの切断を行い、各場合において連続的に最初に5分の反応時間、次に20分の反応時間とした。
【0149】
カップリングの完了はカイザー試験により確認した。最後のカップリングおよびFmoc基の最後の切断後、最初にDMFを用いて繰り返しで、次にイソプロパノールを用いておよび最後にジイソプロピルエーテルを用いて樹脂を洗浄し、その後に減圧下35℃で乾燥させた。
【0150】
1,2-エタンジチオール、チオアニソール、フェノールおよび水などのスカベンジャーを用いて樹脂からの生ペプチドの切断をトリフルオロ酢酸中で実行した。
【0151】
固相としてC18 RPシリカゲルを用いて2工程HPLC処理において生ペプチドを精製した。プールした溶液の濃縮後、純粋なペプチドをフリーズドライにより得た。表1は、ジペプチドを使用した合成とジペプチドなしの合成との間のラセミ化D-His-リキシセナチドの含有量および純粋なペプチド中の何らかの不純物の含有量を比較する。
【0152】
【0153】
データは、ジペプチドFmoc-His(Trt)-GIy-OHの使用は、ラセミ化から生じるD-Hisの上昇した値を含有しないリキシセナチドを与えることを示す。さらに、Fmoc-His(Trt)-GIy-OHを使用した場合、desGly(2)-リキシセナチドはもはや見出されない。さらには、鎖位置Pro(36)およびPro(37)の付近のN-1およびN+1ペプチド(例えば、desPro(36)-リキシセナチドまたはdiPro(36)リキシセナチド)は出現しなかった。
【実施例2】
【0154】
(本発明による)エキセンジン-4の合成、精製および特徴付け
活性物質エキセンジン-4は39アミノ酸から構成されるポリペプチドアミドであり、酢酸塩は対イオンとして機能する。
【0155】
1文字表記において、アミノ酸配列は以下の通りである:
H-G-E-G-T-F-T-S-D-L-S-K-Q-M-E-E-E-A-V-R-L-F-I-E-W-L-K-N-G-G-P-S-S-G-A-P-P-P-S-NH2
MW 4186.66g/mol;MW(モノアイソトピック)=4184.03g/mol。
【0156】
上記の配列にしたがって、リキシセナチドの合成において詳細に記載したようにエキセンジン-4の合成を実行した。位置1および2において、Fmoc-His(Trt)-Gly-OHを用いて1サイクルでカップリングを実行した。位置37および38において、Fmoc-Pro-Pro-OHを用いて1サイクルでカップリングを実行した。他の位置において、Fmoc-アミノ酸(モノアミノ酸単位)を用いてカップリングを実行した。
【0157】
0.42mmol/gのローディングを伴うRinkアミド樹脂26.666g(すなわち、11.2mmolバッチ)の使用は樹脂上のペプチド74gを与えた。これから、樹脂上のペプチド65gを切断し、生ペプチド28gを得た。精製のために、これから、生ペプチド21.3gを使用し、純粋なペプチド4.01gを得た。MS:4184.03(モノアイソトピックモル質量):測定値4185.1[M+H]。純度98.25 FI%。
【0158】
ジペプチドの使用は、リキシセナチドについて得られた結果を裏付けた。ジペプチドFmoc-His(Trt)-GIy-OHの使用は、ラセミ化から生じるD-Hisの上昇した値を含有しないエキセンジン-4を与える。さらに、Fmoc-His(Trt)-GIy-OHを使用した場合、desGly(2)-エキセンジン-4はもはや見出されない。さらには、鎖位置Pro(36)およびPro(37)の付近のN-1およびN+1ペプチド(例えば、desPro(36)-エキセンジン-4またはdiPro(36)エキセンジン-4)は出現しなかった。
【実施例3】
【0159】
Fmoc-His(Trt)-Gly-OHの合成
3.1 Fmoc-His(Trt)-Gly-OBzl
【化1】
【0160】
酢酸エチル400ml中のH-Gly-OBzlトシレート32.7gおよびHBTU 29.37gと共にFmoc-His(Trt)-OH 40gを溶解した。その後、N-エチルモルホリン33.32mlを加えた。反応混合物を30℃で4時間撹拌した。その後、各回に8%の重炭酸ナトリウム溶液256gを用いて抽出を3回実行し、次に水250mlを用いて洗浄を1回実行した。結果として得られた酢酸エチル溶液の半分を蒸発させ、次の工程においてさらに処理した。
【0161】
3.2 Fmoc-His(Trt)-Gly-OH
【化2】
【0162】
5:2:2(w/w/w)のTHF/酢酸エチル/MeOH混合物が形成されるようにTHFおよびメタノールを酢酸エチル相に加えた。その後に、炭素触媒(5%)上のパラジウム10gを加え、この混合物を30℃および1.1barの水素圧力において2.5時間水素化した。その後、触媒を濾過し、結果として得られた溶液を沈殿物の形成が始まるまで蒸発させた。その後の撹拌を1時間実行し、溶液を室温で4日間静置した。生成物を濾過した後、2-ブタノン中80℃で4時間撹拌することにより抽出した。収率:Fmoc-His(Trt)-Gly-OH 32.9g(75%)。
【実施例4】
【0163】
リキシセナチドの合成の間のアセチル化された誤った配列
4.1 リキシセナチドの合成の間のアセチル化された誤った配列の含有量の決定
ある程度のアセチル化された誤った配列を粗リキシセナチド生成物のHPLCプロファイル中に見ることができる。これらは、通常、キャップ付加されている樹脂上の未反応アミノ基から生じる。キャップ付加により達成されるのは、(N-1)不純物が出現し得ないということであり、(N-1)不純物は所望の生成物からわずかにのみ異なり、それゆえ精製による除去が困難である。
【0164】
完了および選択された位置におけるカップリング速度論をエドマン分解によりモニターした。樹脂試料をリキシセナチドの合成から取り、Fmoc基をそれから切断した。この樹脂試料を次にエドマン分解に供し、このようにして(N-1)アミノ酸に対するカップリングされたアミノ酸の比を決定することができ、それからカップリング収率を直接的に推定することができた。エドマン分解の結果(表2)は高いカップリング値を示す。これらの値は非常に高いため、アセチル化された誤った配列の量を説明し得ない(表2中のHPLCデータ)。これは、これらの副生成物を形成する代替的な様式があるに違いないことを意味する。この状況の解明は以下のセクションに記載される。
【0165】
【0166】
4.2 アセチル化された誤った配列の形成
アセチル化された誤った配列が形成される合成サイクル中の時点を調べるために、樹脂試料をカップリングサイクルにわたり採取し、ペプチドを切断し、LC-MSを使用して調べた。これらの調査は、Fmoc-Arg(20)-OHのカップリングおよびFmoc-Gln(13)-OHのカップリングの位置において実行した。
【0167】
リキシセナチド部分配列H(22~24)の固相結合ペプチドへのFmoc-Arg(20)-OHのカップリングにおいて、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間のカップリング時点の後、ならびにキャップ付加、その後のFmocの切断およびバリン(19)のカップリングの後にも試料を採取した。
図3に見ることができるように、誤った配列Ac(22~44)+Argはキャップ付加工程の間に初めて出現した(3.1%)。したがって、キャップ付加の間に、小部分のFmoc基は切断(損失)され、直ちにアシル化される。呼称Ac(22~24)+Argを説明するために、位置21(Leu)は合成から省略したことを留意すべきである。
【0168】
リキシセナチド合成の間のFmoc-Gln(13)-OHのカップリングについて同じ実験を実行した(
図4)。この場合、誤った配列Ac(13~44)は、グルタミン(13)のカップリングおよびキャップ付加の後のFmocの切断の間に初めて観察された(4.6%)。Fmoc-Lys(12)-OHのカップリング後の合成の残りの経過中に、キャップ付加の間にAc(12~44)もまた形成された(4.1%)ことを見ることができる(
図5を参照)。
【0169】
実験は、使用される混合物のキャップ付加能力が、潜在的な(N-1)不純物がもはやキャップ付加されないような顕著な程度まで低減されることなく、N個目のアミノ酸(カップリングされる最後のもの)のアセチル化された誤った配列の望ましくない形成が防止されるキャップ付加条件をサーチすることが必要であることを示す。
【0170】
4.3 キャップ付加条件におけるバリエーション
Fmoc-Arg(20)-OH、Fmoc-Leu(10)-OH、Fmoc-Gly(4)-OHおよびFmoc-Thr(5)-OHのカップリングを調べた。様々なキャップ付加条件を互いに比較した。
【0171】
キャップ付加条件をリキシセナチドの実験室合成において変化させた。望ましくないAc(N~44)および所望のAc([N-1]~44)の含有量に特に注目した。試験した条件は以下の通りである:
・20分間のDMF中の10%の無水酢酸/5%のDIPEA
・10分間のDMF中の10%の無水酢酸/5%のDIPEA
・20分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA
・10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA。
【0172】
調査は、位置Arg(20)、Leu(10)、Thr(5)およびGly(4)において実行した。結果を表3~6にまとめている。
【0173】
データをまた、リキシセナチドのGMP合成の結果(表3~6における「GMPキャップ付加」)と比較した。キャップ付加条件は、DMF中の10%の無水酢酸/5%のDIPEAの条件に対応した。GMPバッチにおけるキャップ付加混合物との樹脂の接触時間はさらに7~8分長く、したがって27~28分であった。これは、キャップ付加混合物を排出するためにより長い時間を要したことから生じた。
【0174】
4.3.1 位置Arg(20)におけるカップリング
Fmoc-Arg(Pbf)-OHをLeu(21)にカップリングした。カップリングが起こらなかった鎖(生成物H(21~44))において、生成物Ac(21~44)をその後のキャップ付加により形成した。生成物Ac(20~44)およびH(20~44)の両方は、キャップ付加の間にFmoc基が望ましくなく切断される場合(H(20~44)の形成)およびアセチル化が起こる場合(Ac(20~44)の形成)に形成される。
【0175】
望ましくない生成物H(20~44)およびAc(20~44)の形成の程度はキャップ付加時間ならびに無水酢酸およびDIPEAの量の両方に依存することを表3において明確に見ることができる(Ac(20~44)%の列を参照)。最も高いパーセンテージ値はGMPキャップ付加において見ることができる。Ac(20~44)の最も低い含有量は、「10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA」の条件下で見出される。
【0176】
様々なキャップ付加混合物(およびそれゆえ元々の意図した使用)のキャップ付加能力はおおよそ同じであり(列Ac(21~44)を参照)、すなわち、全てのキャップ付加混合物はH(21~44)を変換する。「10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA」の混合物はまた、(N-1)不純物を回避するという所望の目的を達成する。
【0177】
【0178】
4.3.2 位置Leu(10)、Gly(4)およびThr(5)におけるカップリング
Leu(10)についての結果を表4に与え、これは、位置Arg(20)について得られた結果を裏付ける。生成物H(11~44)の遊離アミノ基のキャップ付加の間に形成される望ましくない生成物Ac(10~44)およびH(10~44)の含有量は、「10分間の2%の無水酢酸、1%のDIPEA」の条件下で最も低い。キャップ付加能力は異なるキャップ付加混合物において同等である。
【0179】
【0180】
Gly(4)のカップリングについても、望ましくない生成物Ac(4~44)の含有量はキャップ付加混合物および反応時間に依存している。キャップ付加能力は異なる混合物において同じである(表5)。
【0181】
【0182】
位置Arg(20)、Leu(10)およびGly(4)に加えて、位置Thr(5)もまた調べた。3つの以前の位置とは対照的に、望ましくない生成物Ac(N~44)(位置5におけるAc(5~44))の含有量は様々なキャップ付加条件下でおおよそ同じである。しかしながら、異なる混合物のキャップ付加能力もまたここでは同等である(表6)。
【0183】
【0184】
4.3.3 要約
位置Arg(20)、Leu(10)およびGly(4)において、穏やかなキャップ付加混合物(10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA)は、アシル化による(N-1)不純物を回避するという所望の効果を維持するために充分である。しかしながら、これらの3つの場合において、Ac(20~44)、Ac(10~44)およびAc(4~44)の各々の形成は、キャップ付加時間、そしてまたキャップ付加混合物に依存している。これは位置Thr(5)には当てはまらない。
【実施例5】
【0185】
リキシセナチドの合成
本実施例は、リキシセナチド(配列番号1を参照)の合成に関する。合成の開始時に、固相結合リンカーはFmoc保護基を有する。カップリングサイクルにおいてC末端(位置44)から開始してN末端へと個々のアミノ酸単位をカップリングさせた。カップリングサイクルは、
・Fmocの切断
・Fmoc保護されたアミノ酸単位のカップリングおよび
・キャップ付加
の工程からなる。
【0186】
位置Arg(20)、Glu(17)、Gln(13)、Leu(10)およびGly(4)において、本発明によるキャップ付加方法(10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA)を使用した。これらの位置について、カップリングサイクルについての指示は以下に記載される。他の位置において、20分間のDMF中の10%の無水酢酸/5%のDIPEAを用いてキャップ付加を実行した。このキャップ付加は、例として、位置Thr(5)において記載される。本発明によるキャップ付加方法は、より穏やかな条件を含む。
【0187】
バッチサイズはRink樹脂1050mmolであった。
【0188】
5.1 位置20におけるFmoc-Arg(Pbf)-OHのカップリング
5.1.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を30分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0189】
5.1.2 Fmoc-Arg(Pbf)-OHのカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、FmocArg(Pbf)-OH 2.125kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)502gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)413gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0190】
5.1.3 キャップ付加(本発明による)
反応器をDMF 26.3lで満たした。同時に、DMF 1.2l、無水酢酸0.53lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)0.26lを2l Schottボトル中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を10分間撹拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0191】
5.2.位置17におけるFmoc-Glu(OtBu)-OH水和物のカップリング
5.2.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を30分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0192】
5.2.2 Fmoc-Glu(OtBu)-OH水和物のカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、FmocGlu(OtBu)-OH水和物1.453kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)502gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)413gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0193】
5.2.3 キャップ付加(本発明による)
反応器をDMF 26.3lで満たした。同時に、DMF 1.2l、無水酢酸0.53lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)0.26lを2l Schottボトル中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を10分間撹拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0194】
5.3 位置13におけるFmoc-Gln(Trt)-OHのカップリング
5.3.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を35分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0195】
5.3.2 Fmoc-Gln(Trt)-OHのカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、FmocGln(Trt)-OH 2.001kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)502gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)413gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0196】
5.3.3 キャップ付加(本発明による)
反応器をDMF 26.3lで満たした。同時に、DMF 1.2l、無水酢酸0.53lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)0.26lを2l Schottボトル中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を10分間撹拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0197】
5.4 位置10におけるFmoc-Leu-OHのカップリング
5.4.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を35分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0198】
5.4.2 Fmoc-Leu-OHのカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、Fmoc-Leu-OH 1.158kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)502gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)413gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0199】
5.4.3 キャップ付加(本発明による)
反応器をDMF 26.3lで満たした。同時に、DMF 1.2l、無水酢酸0.53lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)0.26lを2l Schottボトル中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を10分間撹拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0200】
5.5 位置4におけるFmoc-Gly-OHのカップリング
5.5.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を35分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0201】
5.5.2 Fmoc-Gly-OHのカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、Fmoc-Gly-OH 1.217kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)627gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)517gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0202】
5.5.3 キャップ付加(本発明による)
反応器をDMF 26.3lで満たした。同時に、DMF 1.2l、無水酢酸0.53lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)0.26lを2l Schottボトル中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を10分間撹拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0203】
5.6 位置5におけるFmoc-Thr(tBu)-OHのカップリング
5.6.1 Fmocの切断
DMF 7l、続いてDMF 16.6l中のピペリジン7.9lの混合物を反応器に加えた。この混合物を5分間撹拌し、次に吸引を用いて濾過した。この処理を繰り返し、撹拌を35分間実行し;次に吸引を用いる濾過を再び実行した。Fmocの切断後、以下の順序で樹脂を7回洗浄した:DMF(31.1l)、DMF(31.1l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.1l)、DMF(31.1l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0204】
5.6.2 Fmoc-Thr(tBu)-OHのカップリング
DMF 21lを反応器に加えた。その後、FmocThr(tBu)-OH 1.628kgを秤量して入れ、DMF 5.3lを加えた。完全な溶解後、この溶液を全て、続いてDMF 2.2l中のヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)627gの溶液を反応器に注いだ。最後に、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)517gを反応器に加えた。カップリング時間は6~18時間であった。カップリング後、溶媒を吸引により樹脂から濾過し、キャップ付加を直ちに続けた。
【0205】
5.6.3 キャップ付加
反応器をDMF 10.5lで満たした。同時に、DMF 15.8l、無水酢酸3.2lおよびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)1.6lを混合容器中で混合し、反応器中の樹脂に加えた。反応器を20分間攪拌し、次に吸引を用いる濾過を実行した。キャップ付加後、以下の順序で樹脂を5回洗浄した:DMF(24l)、イソプロパノール(31.1l)、DMF(8l)、DMF(31.5l)、DMF(31.5l)。ここで反応器を各回に各々の洗浄溶媒で満たし、次に撹拌を3分間実行し、吸引を用いる濾過を再び実行した。
【0206】
5.7 結果
位置Arg(20)、Glu(17)、Gln(13)、Leu(10)およびGly(4)における発明によるキャップ付加方法、ならびに5.6.3に記載されるような他のカップリングにおけるキャップ付加を用いたリキシセナチド合成の粗生成物のHPLCクロマトグラムを
図6に示す。不純物アセチル(20~44)、アセチル(17~44)、アセチル(13~44)、アセチル(10~44)およびアセチル(4~44)/アセチル(6~44)を有するピークを指し示す。
【0207】
5.8 比較
5.6.3に記載されるような全てのカップリングのキャップ付加工程を実行したところ、望ましくない誤った配列Ac(20~44)、Ac(17~44)、Ac(13~44)、Ac(10~44)およびAc(4~44)/Ac(6~44)の形成の増加に繋がった。この試験からの粗リキシセナチドのHPLCクロマトグラムを
図6Aに示す。
【0208】
図6Bは、位置Arg(20)、Glu(17)、Gln(13)、Leu(10)およびGly(4)において本発明によるキャップ付加方法を用いて合成された粗リキシセナチドのHPLCクロマトグラムを示す。
【0209】
図6Cは、
図6AおよびBからのHPLCクロマトグラムの重ね合わせを示す。バッチ操作での本発明によるキャップ付加方法を使用したリキシセナチドの合成は、誤った配列Ac(20~44)、Ac(17~44)、Ac(13~44)、Ac(10~44)およびAc(4~44)/Ac(6~44)の明白な低減に繋がったことが明らかである。
【0210】
より穏やかなキャップ付加混合物(10分間のDMF中の2%の無水酢酸/1%のDIPEA)を使用することにより、リキシセナチドの粗生成物中のAc(20~44)、Ac(17~44)、Ac(13~44)、Ac(10~44)およびAc(4~44)というアセチル化された誤った配列のレベルを低減することまたはそれらを粗生成物から除去することが可能であった。本発明によるキャップ付加により製造されたリキシセナチド粗生成物は、特にかなり低減された量で、アセチル化された副生成物Ac(17~44)、Ac(13~44)およびAc(10~44)を含むので、リキシセナチドの精製が単純化された。結果として、リキシセナチドの第1の分取クロマトグラフィーの実行後の画分のプールは、仕様基準を満たすより多くの画分を与え、そのため廃棄される必要はなかった。これは、収率の向上に繋がった。
【実施例6】
【0211】
リキシセナチドの合成における9つの特定の位置におけるキャップ付加
実施例5において議論したように、位置Arg(20)、Glu(17)、Gln(13)、Leu(10)または/およびGly(4)でのリキシセナチドの合成における「穏やか」なキャップ付加条件の使用は、望ましくない副生成物のプロファイルを向上させることができた。
【0212】
この実施例は、アセチル化されたおよびアセチル化されていない副生成物の形成に対するキャップ付加条件の影響を記載する。温度(15℃、室温[20℃~23℃]、30℃)、キャップ付加期間およびキャップ付加組成物の成分のバリエーションを行った:
・キャップ付加なし
・穏やかなキャップ付加条件:2%の無水酢酸および1%のDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を用いる10分のキャップ付加
・「通常」のキャップ付加条件:10%の無水酢酸および5%のDIPEAを用いる20分のキャップ付加
・10%の無水酢酸および5%のDIPEAを用いる40分のキャップ付加
【0213】
本発明のキャップ付加条件は、「穏やかな条件」である。これらの条件を実施例5において使用した。これらの条件は有利であることが見出された。
【0214】
この実施例において選択された9つの位置において、アセチル化された配列が(N-1)位置のキャップ付加において得られた(
図7)。追加的に、アミノ酸ビルディングブロックにおけるFmoc基の望ましくない除去がキャップ付加工程の間に起こることがある。保護されていないアミノ基は、キャップ付加試薬またはキャップ付加組成物によりアセチル化されることがある。これに関して、向上したキャップ付加条件はFmoc基の望ましくない切断を回避し得る。
【0215】
6.1 ジペプチドビルディングブロックPro-Proのカップリング後(36~44)の位置36/35におけるキャップ付加
ペプチドFmoc-(36~44)-AVE0010を固相合成により製造した。樹脂を4つの部分に分割して乾燥させた。室温(20℃~23℃)で上記の4つのキャップ付加手順の1つを各部分に行った。試料を乾燥させ、ペプチドを樹脂から切断した。この手順を繰り返し、キャップ付加を15℃または30℃で行った。
【0216】
計12のペプチド試料を得た。LCMSを用いて12のペプチド試料を分析した。分子量をTIC(総イオン電流)から決定した。以下の化合物の分子量を決定した:
【0217】
【0218】
【0219】
結果を
図8に記載する。化合物(36~44)、(38~44)およびAc(38~44)は見出されなかったか、または小量で見出された。望ましくない生成物Ac(36~44)の量は、ほとんどの場合、キャップ付加カクテルの強度およびキャップ付加期間と共に増加する。この生成物の量は温度と共に増加する。
【0220】
6.2 ビルディングIleのカップリング後(23~44)の位置23におけるキャップ付加
Fmoc(23~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0221】
【0222】
結果を
図9に記載する。RTおよび30℃でのキャップ付加試薬に依存して、望ましくない化合物Ac(23~44)の含有量は増加する。20℃での「通常」のキャップ付加は0.26%のAc(23~44)を結果としてもたらす。キャップ付加の延長(20分の代わりに40分)はAc(23~44)含有量に負の影響力を有する。
【0223】
所望の生成物Ac(24~44)の形成はキャップ付加組成物から独立している。
【0224】
6.3 ビルディングブロックLeuのカップリング後(21~44)の位置21におけるキャップ付加
Fmoc(21~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0225】
【0226】
結果を
図10に記載する。望ましくない化合物Ac(21~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(21~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0227】
所望の化合物Ac(22~44)の形成はキャップ付加組成物から独立している。キャップ付加なしでさえ、この化合物が形成される。
【0228】
6.4 ビルディングブロックValのカップリング後(19~44)の位置19におけるキャップ付加
Fmoc(19~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0229】
【0230】
結果を
図11に記載する。化合物Ac(19~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(19~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0231】
所望の化合物Ac(20~44)の形成はキャップ付加組成物の強度と共に増加する。望ましくない化合物(20~44)の含有量はキャップ付加組成物の強度の増加と共に減少する。
【0232】
6.5 ビルディングブロックAlaのカップリング後(18~44)の位置18におけるキャップ付加
Fmoc(18~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0233】
【0234】
結果を
図12に記載する。望ましくない化合物Ac(18~44)の含有量は、15℃および30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(18~44)の含有量は15℃から30℃への温度の増加と共に増加する。
【0235】
所望の化合物Ac(19~44)の形成はキャップ付加組成物の強度と共に15℃および30℃において増加する。
【0236】
6.6 ビルディングブロックGluのカップリング後(15~44)の位置15におけるキャップ付加
Fmoc(15~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0237】
【0238】
結果を
図13に記載する。望ましくない化合物Ac(15~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(15~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0239】
所望の化合物Ac(16~44)の形成はキャップ付加組成物から独立している。キャップ付加なしでさえ、この化合物が形成される。
【0240】
6.7 ビルディングブロックLysのカップリング後(12~44)の位置12におけるキャップ付加
Fmoc(12~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃/30℃および室温での実験を異なるバッチで行った。
【0241】
【0242】
結果を
図14に記載する。望ましくない化合物Ac(12~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(12~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0243】
所望の化合物Ac(13~44)の形成はキャップ付加組成物から独立している。キャップ付加なしでさえ、この化合物が形成される。
【0244】
6.8 ビルディングブロックSerのカップリング後(8~44)の位置8におけるキャップ付加
Fmoc(8~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃、RTおよび30℃での実験を同じバッチで行った。
【0245】
【0246】
結果を
図15に記載する。望ましくない化合物Ac(8~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(8~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0247】
6.9 ビルディングブロックPheのカップリング後(6~44)の位置6におけるキャップ付加
Fmoc(6~44)の合成をセクション6.1に記載したように行った。15℃、RTおよび30℃での実験を同じバッチで行った。
【0248】
【0249】
結果を
図16に記載する。望ましくない化合物Ac(6~44)の含有量は、15℃、RTおよび30℃において「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」で最大である。化合物Ac(6~44)の含有量は温度と共に増加する。
【0250】
所望の化合物Ac(7~44)の形成はキャップ付加組成物から独立している。キャップ付加なしでさえ、この化合物が形成される。
【0251】
温度は、所望の化合物Ac(7~44)の形成に対してわずかな影響のみを有する。望ましくない化合物Ac(7~44)の含有量はキャップ付加組成物の強度の増加と共に減少する。
【0252】
6.10 要約
Ac(X~44)化合物の望ましくない形成は、キャップ付加期間、キャップ付加組成物およびキャップ付加温度に強く依存する。キャップ付加期間の増加、キャップ付加温度の増加、ならびにキャップ付加組成物中の無水酢酸およびDIPEAの含有量の増加と共に、望ましくないAc(X~44)化合物の含有量は増加する。
【0253】
6.11 温度に依存する、「通常」の条件下でのキャップ付加
図17および18は、この実施例に記載されるような、「通常」の条件「20分、10%のAc2O、5%のDIPEA」の下でのリキシセナチドの合成における9つの位置での異なる温度でのキャップ付加において得られたデータを要約する。
【0254】
図17は、反応温度に依存した、Ac(X~44)のGMPキャップ付加の比較を示す。15℃および30℃について与えた値は、「室温」値(灰色区画)からの正および負の偏差である。
【0255】
望ましくない生成物Ac(X~44)の形成は、9つの位置のうちの5つにおいて≦0.5%、3つの位置において0.5%~1%、1つの位置のみにおいて>1%である。大きい増加が30℃において観察され、15℃においてAc(X~44)の形成はわずかに減少する。
【0256】
これは、15℃~室温(20~23℃であり得る)で異なる位置においてGMPキャップ付加「20分、10%のAc2O、5%のDIPEA」を行うことができることを意味する。
【0257】
図18は、反応温度に依存した、Ac[(X-1)~44]のGMPキャップ付加の比較を示す。15℃および30℃について与えた値は、「室温」値(灰色区画)からの正および負の偏差である。
【0258】
RTでのAc[(X-1)~44]化合物の所望の形成に関して、15℃での偏差は+0.23~-0.25%である。30℃での偏差は+0.29~-0.33%である。所望のキャップ付加生成物Ac[(X-1)~44]の形成は、そのため、Ac(X~44)の望ましくない形成よりも温度に依存しない。
【0259】
15℃および30℃において、室温でのキャップ付加を考慮して所望の化合物Ac[(X-1)~44]の含有量の負の偏差が観察される。これは、「通常」の条件を用いるキャップ付加は室温で行うべきであることを意味する。
【0260】
6.12 室温での異なるキャップ付加組成物を用いたキャップ付加
図19および20は、この実施例に記載されるような、リキシセナチドの合成における9つの位置での室温での異なるキャップ付加組成物を用いたキャップ付加において得られたデータを要約する。
【0261】
図19は、室温でのキャップ付加組成物に依存したAc(X~44)含有量の比較を示す。「キャップ付加なし」、「穏やか」および「40分」の条件について与えた値は、「通常のキャップ付加」の値(灰色区画)からの正および負の偏差である。
【0262】
「20分、10%のAc2O、5%のDIPEA」および「40分、10%のAc2O、5%のDIPEA」の下での望ましくない生成物Ac(X~44)の形成は最大である。「通常」の条件(40分、10%のAc2O、5%のDIPEA)下のAc(X~44)の形成は0.2%~1.12%である。強い減少が穏やかなキャップ付加条件において観察される。
【0263】
図20は、室温でのキャップ付加組成物に依存したAc[(X-1)~44]含有量の比較を示す。「キャップ付加なし」、「穏やか」および「40分」について与えた値は、「通常のキャップ付加」の値(灰色区画)からの正および負の偏差である。
【0264】
「キャップ付加なし」、「穏やか」および「40分」の条件における所望の生成物Ac[(X-1)~44]の形成は、「通常」の条件を考慮して-0.14%~+0.16%である。
【0265】
特に、本発明の「穏やか」な条件(10分、2%のAc2O、1%のDIPEA)下で、リキシセナチドの合成において充分なキャップ付加を達成することができる。
【0266】
要約すると、穏やかなキャップ付加条件、特に、溶媒中の2%のAc2Oおよび1%のDIPEAを用いた10分間のキャップ付加は、本明細書に記載されるように、リキシセナチドの固相合成において有利である。
【0267】
ある特定のアミノ酸位置においてカップリング後のキャップ付加を省略した場合、小量で存在する不完全なアミノ酸配列を含む望ましくない副生成物は、精製処理の間に除去することが困難であり得る。
【実施例7】
【0268】
固相からのリキシセナチドの切断
この実施例は、固相からのリキシセナチドの本発明による切断に関する。ペプチドリキシセナチドが結合した固相(Rink樹脂)を用意した。アミノ酸単位の段階的なカップリングにより樹脂上でペプチドを合成した。
【0269】
比較用試験として、先行技術(King et al.、Int. J. Peptide Protein Res. 1990年、36:255~266頁)による切断を実行した。
【0270】
本発明による切断方法は、以下の変更により先行技術の方法から区別される:
・20℃~26℃の反応温度
・使用される切断混合物に対する樹脂の比の増加と組み合わせた、5つの成分から2つの成分への切断混合物中の成分の数の低減。
【0271】
【0272】
本発明による切断を使用することにより、先行技術による切断と比較して、粗リキシセナチドの収率をおおよそ5%増加させることが可能であり(20%から25%へ)、不純物プロファイルはわずかにのみ変化した。
【0273】
この実施例の方法は、パイロットプラントおよび製造スケールへのスケールアップのために好適である。
【0274】
表18は、比較用の方法(表17を参照)において得られた結果を要約する。リキシセナチド-樹脂(1~44)の3つの異なるバッチ2E002、2B008および2B006を使用した。平均および標準偏差を各バッチについて別々に算出した。異なる切断条件間の比較は、リキシセナチド-樹脂(1~44)の同じバッチを使用した試験において為されるべきである。異なるバッチにおいて、固相合成が収率に影響力を有する可能性がある。指し示されなければ、リキシセナチド-樹脂(1~44)10gを出発材料として使用した。
【0275】
【0276】
7.1 20℃~35℃の切断温度に依存した切断収率
リキシセナチド-樹脂(1~44)からの切断を標準条件(比較用の方法、表17を参照)下で4時間行った。
【0277】
【0278】
結果:標準条件下での切断後のリキシセナチドの収率は、約26℃の最適条件までの温度の増加と共に増加する。驚くべきことに、23℃から26℃への温度の増加は収率の有意な増加を結果としてもたらす。
【0279】
7.2 切断期間に依存した切断収率
リキシセナチド-樹脂(1~44)からの切断を20℃での標準条件(比較用の方法、表17を参照)下で行った。
【0280】
【0281】
結果:リキシセナチドの収率は切断期間の増加と共に増加する。最大収率は約8時間の切断後に到達される。
【0282】
7.3 12時間の切断期間での温度に依存した切断収率
リキシセナチド-樹脂(1~44)からの切断を標準条件(比較用の方法、表17を参照)下で4時間行った。
【0283】
【0284】
結果:反応温度を増加させた場合に収率は12時間の切断期間において増加する。実施例7.1において4時間の切断について記載されるように、最大収率は26℃において得られる。試験70586-044(4時間、26℃、実施例7)および70586-045(12時間、26℃)は類似した収率を結果としてもたらす(14.8%対14.0%)。
【0285】
7.4 20℃までの切断温度に依存した切断収率
リキシセナチド-樹脂(1~44)からの切断を標準条件(比較用の方法、表17を参照)下で4時間行った。
【0286】
【0287】
結果:20℃より低い温度での切断は、予期されたように、20℃での4時間の切断(標準条件、比較用の方法、表17)により得られた収率に達するためにより長い切断期間を必要とする。
【0288】
7.5 改変された切断カクテル
標準的な方法は、5つの成分:フェノール、チオアニソール、1,2-エタンジチオール、水およびTFAを含有する切断カクテルを使用する。実施例の対象は、チオアニソール、フェノールおよび水の1~3つを省略した簡略された切断カクテルである。リキシセナチド-樹脂(1~44)からのリキシセナチド切断の収率を決定した。「改変なし」のカクテルは、表17「比較用の方法」において記載される。
【0289】
【0290】
結果:1つまたはそれ以上の成分の省略は、試験71002-010(チオアニソールの省略)を除いて、収率の増加を結果としてもたらす。
【0291】
簡略化された切断混合物(切断カクテル)はいくつかの利点を有する:
(a)分析および品質管理の簡略化、
(b)コストの低減、
(c)製造方法の取扱いの促進。
【0292】
7.6 切断カクテル中のTFAおよび1,2-エタンジチオールの含有量
試験71002-042から開始して、切断収率に対するTFA:1,2-エタンジチオール比の影響を調べた:
【0293】
【0294】
結果:1,2-エタンジチオール含有量の増加は、リキシセナチド収率の有意な減少を結果としてもたらす。8.25:0.25のTFA:1,2-エタンジチオール比は、最大収率を有する比であることが見出された(バッチ2E002)。この発見は、バッチ2B008を使用する実験により確認された。
【0295】
7.7 切断カクテルの体積
切断カクテルの体積(およびそのため濃縮)の影響を調べた。
【0296】
【0297】
結果:30%までの低減は切断収率に影響を有しない。より大きい体積低減は収率の低減に繋がる。
【0298】
7.8 切断前の共溶媒(トルオールまたはCH2Cl2)を用いた「樹脂上のペプチド」の膨潤
この実験の根拠は、樹脂からのリキシセナチドの切断は、5~8℃までの温度の増加を結果としてもたらすことがあり、それが望ましくない副生成物の形成に繋がることがあり、安定性およびそのため切断収率に負の影響力を潜在的に有するという発見である。有機溶媒中の「樹脂上のペプチド」の膨潤は、発熱を低減する可能性があり、そのため収率を増加させる可能性がある。
【0299】
【0300】
結果:有機共溶媒を用いた膨潤は切断収率を増加させない。
【0301】
7.9 共溶媒の存在下での濃縮
TFAより高い沸点を有し、リキシセナチドが不溶性である共溶媒の存在は、樹脂からの切断後の収率を増加させる可能性があり、その理由は、濾液からのTFAの蒸留の間に、共溶媒の存在がリキシセナチドの沈殿に繋がる可能性があり、したがって、Kingのカクテル中での切断の間にリキシセナチドの分解を防止し得るからである。
【0302】
【0303】
結果:樹脂からのリキシセナチドの切断後の濾液の蒸留におけるトルオールの存在は収率のわずかな増加に繋がる。
【0304】
7.10 本発明の最適化された切断手順
この実施例において得られた上記の結果に基づいて、以下のような最適化された切断条件を選択し、試験した:
(a)26℃の反応温度、
(b)TFAおよび1,2-エタンジチオールからなる切断カクテル。カクテルは、約97%のTFAおよび約3%の1,2-エタンジチオールを含有した。「樹脂上のペプチド」1g当たり8.25mlの量のTFAおよび「樹脂上のペプチド」1g当たり0.25mlの量の1,2-エタンジチオールを使用した。
【0305】
標準的な比較用カクテルと比較してこのカクテルの切断収率をバッチ2E002および2B008において試験した。
【0306】
【0307】
結果:両方のバッチにおいて、収率は約5%増加し、本発明の方法による固相からのペプチド切断の有意な向上を指し示した。
【0308】
7.11 第2(その後)の切断
切断後、比較用カクテル(Kingのカクテル)または本発明の切断カクテルを使用して、第2(その後)の切断を行った(表17を参照)。
【0309】
第1の切断を行い、濾液を得た。TFAをTFA湿潤樹脂に加えた。1時間の撹拌後、樹脂を濾過した。濾液を合わせ、濃縮した。
【0310】
リキシセナチド収率に対する第2の、その後の切断の効果を調べた。
【0311】
【0312】
結果:その後の切断は、約0.7%のみの収率の増加を結果としてもたらす。この増加は、出発材料(TFA)のためのコストの顕著な増加、およびペプチド製造物からTFAを除去するための追加の努力と関連付けられる。第1および第2の切断工程の濾液の組合せにより、TFAの量は顕著に増加することを考慮しなければならない。
【0313】
収率の小さい増加を考慮して、第2の切断の省略はコストの低減に繋がり、製造処理の間の取扱いが促進されることが結論される。TFAの量が低減され、それにより、TFAの除去が促進される。
【0314】
7.12 分析
2つのバッチ、71001-016(比較用バッチ、標準的な方法によるKingのカクテルを用いた切断)、および71001-013(本発明によるリキシセナチドの切断)を製造した。
【0315】
【0316】
結果:バッチはほぼ同一の純度を示した。本発明にしたがって製造されたバッチの含有量はわずかに減少した。本発明のバッチにおいて、出力重量は増加し、収率の増加を結果としてもたらす。
【0317】
7.13 要約
本発明の切断方法は以下の利点を有する:
(a)コストの低減および製造能力の増加を結果としてもたらす、リキシセナチド収率の約5%の増加、
(b)2つの成分のみが切断カクテル中に存在するため(比較用のKingのカクテルにおける5つの成分を考慮して)、分析的品質管理が向上し、コストが低減される、
(c)第2の切断の省略はコストの低減に繋がり、製造処理の間の取扱いが促進される。TFAの量が低減され、それにより、TFAの除去が促進される。
【0318】
以下の態様もまた本発明の対象である:
1.固相からの固相結合ポリペプチドの切断方法であって、ポリペプチドが結合した固相を、トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物と約23℃~約29℃の範囲内の温度で接触させることを含む、前記方法。
2.固相はRinkアミド樹脂を含む、項目1の方法。
3.ポリペプチドはリンカーによりRinkアミド樹脂に結合している、項目1または2の方法。
4.組成物は約95~約99%v/vの量のトリフルオロ酢酸を含む、項目1~3のいずれか1つの方法。
5.組成物は約1~約5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、項目1~4のいずれか1つの方法。
6.組成物は、約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる、項目1~5のいずれか1つの方法。
7.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と約25℃~約27℃の温度で、または約26℃~約29℃の温度で接触させられる、項目1~6のいずれか1つの方法。
8.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と約26℃の温度で接触させられる、項目1~7のいずれか1つの方法。
9.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と1~8時間接触させられる、項目1~8のいずれか1つの方法。
10.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と4~8時間接触させられる、項目1~9のいずれか1つの方法。
11.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と3~5時間接触させられる、項目1~9のいずれか1つの方法。
12.組成物は、ポリペプチドが結合した固相と約4時間接触させられる、項目1~11のいずれか1つの方法。
13.ポリペプチドは、GLP-1、そのアナログおよび誘導体、エキセンジン-3、そのアナログおよび誘導体、ならびにエキセンジン-4、そのアナログおよび誘導体から選択される、項目1~12のいずれか1つの方法。
14.ポリペプチドは、エキセンジン-4およびリキシセナチドから選択される、項目13の方法。
15.ポリペプチドは、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される、項目13の方法。
16.ポリペプチドはリキシセナチドである、項目13または14の方法。
17.予め決定されたアミノ酸配列を含むポリペプチドの固相合成の方法であって、
(a)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端をRinkアミド樹脂のような固相にカップリングすること、
(b)アミノ酸ビルディングブロックのN末端アミノ基を脱保護すること、
(c)保護されていないC末端カルボキシル基および保護されたN末端アミノ基を含むアミノ酸ビルディングブロックのC末端を工程(b)の保護されていないN末端アミノにカップリングすること、
(d)場合により工程(b)および(c)を繰り返すこと、ならびに
(e)項目1~16のいずれか1つの方法により固相からポリペプチドを切断すること
を含む、前記方法。
18.ポリペプチドは、GLP-1、そのアナログおよび誘導体、エキセンジン-3、そのアナログおよび誘導体、ならびにエキセンジン-4、そのアナログおよび誘導体から選択される、項目17の方法。
19.ポリペプチドは、エキセンジン-4およびリキシセナチドから選択される、項目17または18の方法。
20.ポリペプチドは、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される、項目17または18の方法。
21.ポリペプチドはリキシセナチドである、項目17~19のいずれか1つの方法。
22.トリフルオロ酢酸および1,2-エタンジチオールから本質的になる組成物であって、95~99%v/vの量のトリフルオロ酢酸および1~5%v/vの量の1,2-エタンジチオールを含む、前記組成物。
23.約97%v/vの量のトリフルオロ酢酸および約3%v/vの量の1,2-エタンジチオールから本質的になる、項目22の組成物。
24.ポリペプチドの固相合成における項目22または23の組成物の使用。
25.組成物は、固相からポリペプチドを切断するために使用される、項目24の使用。
26.ポリペプチドは、GLP-1、そのアナログおよび誘導体、エキセンジン-3、そのアナログおよび誘導体、ならびにエキセンジン-4、そのアナログおよび誘導体から選択される、項目24または25の使用。
27.ポリペプチドは、エキセンジン-4、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチドおよびセマグルチドから選択される、項目24~26のいずれか1つの使用。
28.ポリペプチドはリキシセナチドである、項目24~27のいずれか1つの使用。
【配列表】