(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ニトリルゴムのメタセシスのための、ルテニウム触媒及びオスミウム触媒の使用
(51)【国際特許分類】
C08C 19/02 20060101AFI20240213BHJP
C08C 19/00 20060101ALI20240213BHJP
C08G 61/00 20060101ALI20240213BHJP
C07F 15/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C08C19/02
C08C19/00
C08G61/00
C07F15/00 A
(21)【出願番号】P 2020558043
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2019060717
(87)【国際公開番号】W WO2019207096
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア・シュニッツラー
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ダーヴィト
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344416(US,A1)
【文献】特表2005-520016(JP,A)
【文献】特表2013-503221(JP,A)
【文献】特開2008-056926(JP,A)
【文献】特表2015-501207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00-2/38
C08G 61/00-61/12
C08C 19/00-19/44
C07F 9/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴムをメタセシス分解させるための方法であって、式(I)又は(III)
【化1】
の触媒を使用する工程を含む、方法。
【請求項2】
使用される前記触媒の量が、使用される前記ニトリルゴムを基準にして、0.001~1phrである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタセシス反応が、共オレフィンの存在下に実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ニトリルゴムとして、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、及び場合によっては1種又は複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含むコポリマー又はターポリマーが使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共重合性モノマーとして、α,β-不飽和のモノカルボン酸若しくはジカルボン酸、それらのエステル若しくはアミド、それらのアルコキシアルキルエステル、又は一般式(X)
【化2】
[式中、
Rは、水素又は分岐状若しくは非分岐状のC
1~C
20アルキルであり、nは、1~8であり、及びR
1は、水素又はCH
3-である。]
のPEGアクリレート、並びに上述の共重合性モノマーの混合物が使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記メタセシス反応において使用される前記ニトリルゴムが、30~70の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物中の前記ニトリルゴムの濃度が、前記反応混合物全体を基準にして、1~20重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記メタセシス反応が、溶媒中で実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記メタセシス反応が、10℃~150℃の範囲の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分解させた後のニトリルゴム
を水素化させる
、その後の工程をさらに含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ニトリルゴムを、前記一般式(I)及び(III)の触媒の1つと接触させることを特徴とする、前記ニトリルゴムの分子量を低下させるための、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム(NBR)のメタセシス分解のための特定の触媒の使用に関する。
【0002】
本発明はさらに、特定の触媒を使用して、低減された分子量を有するニトリルゴムを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ニトリルゴムは、略して「NBR」とも呼ばれるが、これは、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、及び場合によっては1種又は複数のさらなる共重合性モノマーの、コポリマー又はターポリマーであるゴムである。
【0004】
水素化ニトリルゴム、略して「HNBR」は、ニトリルゴムを水素させることにより製造される。したがって、HNBRにおいては、共重合されたジエン単位のC=C二重結合は、全面的又は部分的に水素化されている。共重合されたジエン単位の水素化度は、典型的には、50~100%の範囲内である。
【0005】
水素化ニトリルゴムは特殊ゴムであって、極めて良好な耐熱性、優れた耐オゾン性及び耐薬品性、並びに優れた耐油性を有している。
【0006】
上述のHNBRの物理的及び化学的性質が、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わさっている。この理由から、HNBRは、広く各種の異なった用途領域において幅広く使用されてきた。HNBRは、たとえば以下の分野において使用されている:自動車分野における、シール、ホース、伝動ベルト、及び制震要素、さらには採油分野における、ステーター、ウェルシール及びバルブシール、さらには航空産業、電気産業、機械工学及び造船における各種の部品。
【0007】
市場で入手可能な市販のHNBRのタイプは、典型的には、55~105の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有しているが、これは、およそ200,000~500,000の範囲の重量平均分子量Mw(測定法:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、標準ポリスチレンに対して)に相当する。ここで測定される多分散性指数PDI(PDI=Mw/Mn、ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)は、分子量分布の幅に関する情報を与え、一般的には3以上の値を有している。残存二重結合含量は、一般的には1~18%の範囲である(IR分光光度法により測定)。
【0008】
ムーニー粘度が比較的に高いことによって、HNBRの加工性には大きな制約が加わる。多くの用途においては、低分子量を有し、そのためにムーニー粘度が低いHNBRのタイプが望まれている。それによって、加工性が顕著に改良されるであろう。
【0009】
オレフィンのメタセシス(以後においては、メタセシス分解又はメタセシス反応とも呼ばれる)は、分子量を低下させるための反応であって、これは、経済的には極めて重要である。従来技術では、オレフィンたとえばNBRのメタセシスのための数多くの方法が開示されている。
【0010】
したがって、それはたとえば、(特許文献1)、(特許文献2)、及び(特許文献3)からも公知であり、そこでは、一般式(A)のルテニウム錯体を、メタセシス反応のための触媒として使用することが可能である。
【化1】
これらの錯体は、ベンジリデン配位子の上でのニトロ-置換を特徴としている。その触媒は、ファインケミカルス、天然物、さらには生物学的活性成分の合成に使用される。
【0011】
(特許文献3)には、一般式(B)の金属錯体及びメタセシス反応におけるその使用が開示されている。
【化2】
[式中、Mはルテニウム又はオスミウムであり、Lは、中性の配位子であり、X及びX
1は、アニオン性の配位子であり、R
1は水素であり、そしてR
6、R
7、及びR
8は、C
1~C
6アルキルである]。ニトリルゴムのメタセシスのためにそれらの触媒を使用することは、開示されていない。
【0012】
(特許文献4)には、式(C)のルテニウム錯体を製造するためのプロセス、及びオレフィンのメタセシス反応のための触媒としてのこれらのルテニウム錯体の使用が開示されている。
【化3】
【0013】
(特許文献5)には、オレフィンのメタセシスのための触媒として、一般式(D)のルテニウム錯体が開示されている。
【化4】
ニトリルゴムのメタセシスのためにそれらの触媒を使用することは、開示されていない。
【0014】
(特許文献6)には、ニトリルゴムのメタセシス分解のための、特定の触媒、たとえば市販の、nitro-Grela AS2032触媒、Hoveyda-Grubbs II触媒、又はZhan 1B触媒が開示されている。
【0015】
(特許文献7)には、Grubbs III触媒の存在下にニトリルゴムをメタセシス分解することを含む、ニトリルゴムを分子量分解するための方法が開示されている。
【0016】
(特許文献8)には、式(E)の化合物、及びそれらの製造、並びに各種のメタセシス反応における触媒としてのそれらの使用が開示されている。
【化5】
これらの触媒は、「Arlt触媒」の名称でも知られている。
【0017】
(特許文献9)には、特定のメタセシス触媒たとえば、「Arlt触媒」の存在下での、ニトリルゴムをメタセシス分解するための方法が開示されている。
【0018】
(特許文献10)には、以下のことを含むプロセスが開示されている:
最初にニトリルゴムを、共オレフィンの存在下又は非存在下に、一般式(A)で表される錯体触媒とそのニトリルゴムを接触させることによる、メタセシス反応における分子量分解にかけ、次いで
a)メタセシス反応の後で、その反応混合物の中に存在している錯体触媒を、少なくとも1種の助触媒と、錯体触媒対助触媒のモル比が、1:(1~550)、好ましくは1:(20~550)のモル比になるように接触させ(ここでその助触媒には、触媒組成物を形成させる目的で、少なくとも1個のビニル基が含まれていなければならない)、その後で
b)工程a)で形成された新規な触媒組成物の存在下に前記ニトリルゴムを水素化させる。
【化6】
【0019】
(非特許文献1)には、ヒドロキサム酸エステル基を担持する、新規なScorpioタイプの、オレフィンメタセシス触媒が開示されている。錯体5bは特に、RCM及びCMにおいて高い活性及び効率を示す。
【化7】
【0020】
(特許文献11)には、交差メタセシスによる、不飽和脂肪族化合物を合成(特に、ニトリル-エステル/酸を合成)するためのプロセスが開示されているが、そこでは、ホモメタセシス反応から生じる共反応生成物の量が低下し、そして消費される触媒の量もまた低減される。その発明は、特定の順序で、少なくとも2種の異なった触媒を使用することによって、共反応生成物の点における収量を最小化することが可能となるという発見に基づいている。そのために、反応の性能レベルが、単一の触媒又は触媒の混合物を用いた場合よりは、改良される。上述の触媒の一つが、次式の触媒である:
【化8】
【0021】
従来技術は、ニトリルゴムとのメタセシス反応における高い活性を有し、そしてニトリルゴムのメタセシス反応の反応時間短縮を可能とする、安定で安価なメタセシス触媒が大いに必要とされていることを示している。さらに、従来技術は、公知のルテニウム錯体が、それぞれのオレフィンのすべてのタイプのメタセシスに同じように適しているとは、容易には考えられないということを教示している。
【0022】
公知のメタセシス触媒は、特定の末端用途、特にはニトリルゴムのメタセシスには、まだ不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】国際公開第A2004/035596号パンフレット
【文献】国際公開第A2013/127880号パンフレット
【文献】国際公開第A2014/001109号パンフレット
【文献】国際公開第A2017/055945号パンフレット
【文献】国際公開第A2014/076548号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第A1 826 220号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A2 028 194号明細書
【文献】国際公開第A2008/034552号パンフレット
【文献】国際公開第A2011/023674号パンフレット
【文献】国際公開第A2013/057289号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2015/344416号明細書
【非特許文献】
【0024】
【文献】Skowerski et al.,Tetrahedron,69(2013),7408~7415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明の目的は、メタセシス活性を有する、好ましくはニトリルゴムのメタセシス分解において改良されたメタセシス活性を有する、ニトリルゴム(NBR)をメタセシスさせるのに適した触媒を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0026】
驚くべきことには、この目的は、以下に示す式(I)及び(III)の触媒を使用することによって達成された。
【0027】
したがって、その目的の解決法及び本発明の主題は、以下において記述し詳細に説明する一般式(B)で表される触媒を使用する工程を含む、ニトリルゴムをメタセシスするための方法、並びに式(I)及び(III)の触媒を使用する工程を含む、ニトリルゴムをメタセシスするための方法である。
【化9】
【0028】
驚くべきことには、式(I)及び(III)の触媒を使用することによって、目立つほどのゲル生成もなく、ニトリルゴムのメタセシス分解を実施することが可能となる。式(I)の触媒はさらに、ニトリルゴムのメタセシスにおいて、従来技術から公知のGrubbs II触媒、Hoveyda-Grubbs II触媒又はnitro-Grela触媒よりも高いメタセシス活性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願の文脈において使用される「置換された(substituted)」という用語は、所定の基又は原子の上の水素原子が、それぞれの場合において特定される基の一つによって置換されていることを意味しているが、ただし、所定の原子の原子価が過剰にならず、またその置換が安定な化合物を与える場合に限られる。
【0030】
本明細書及び本発明の文脈において、一般的用語として又は「好ましくは」の範囲内で、これまで及び以後において与えられる基、パラメーター又は説明についての定義はすべて、各種所望の方式で相互に組み合わせることが可能であり、したがって、それぞれの領域と「好ましい」とされる領域との間も含まれる。
【0031】
触媒:
ニトリルゴムをメタセシスさせるための方法で使用するのに適した触媒は、一般式(B)のものである。
【化10】
[式中、
Mは、ルテニウム又はオスミウムであり、
X及びX
1は、それぞれ、互いに独立して、アニオン性の配位子であり、
Lは、中性の配位子であり、
R
1は、水素、C
1~C
20アルキル、又はC
5~C
10アリールであり:
【化11】
は、場合によっては置換されたo-フェニレンであるが、ここで、o-フェニレンの2個又はそれ以上の置換基は、場合によっては置換されたC
4~C
8環、或いは場合によっては置換された芳香族C
5~C
14環を形成し:そして
R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
6アルキル、場合によっては置換されたC
4~C
10複素環、又は場合によっては置換されたC
5~C
14アリールであるが、ここで、R
7とR
8とで、置換若しくは非置換のC
4~C
8環状系を形成することもできる。]
【0032】
一般式(B)の触媒、及びそれらの製造は、国際公開第A2014/001109号パンフレットに開示されている。
【0033】
一般式(B)の好ましい触媒は、式(I)及び(III)の触媒であり、特に好ましくは式(I)の触媒である。
【0034】
ニトリルゴムをメタセシスさせるための方法で使用するのに特に適している触媒は、触媒(I)及び(III)である。
【化12】
【0035】
本発明の方法の文脈においては、式(I)及び(III)の触媒の存在下に、ニトリルゴムをメタセシス反応にかける。
【0036】
式(I)-「GreenCat AS2034」:[1,3-ビス(2,6-ジ-i-プロピルフェニル)イミダゾリジン-2-イリデン]{2-[[1-(メトキシ(メチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]オキシ]ベンジリデン}ルテニウム(II)ジクロリド(CAS番号:1448663-06-6):C39H53Cl2N3O3Ru:分子量:783.33g/mol:緑色粉体。この触媒は、Apeiron又はStremから市販されている。この触媒の製造は、国際公開第A2014/001109号パンフレットからも、当業者には公知である。
【0037】
式(III)-「GreenCat I2」:[1,3-ビス(2,6-ジ-i-プロピルフェニル)イミダゾリジン-2-イリデン][(2-((1-メトキシ(メチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)オキシ]ベンジリデンジヨードルテニウム(II):C39H53I2N3O3Ru:分子量:966.74g/mol:緑色粉体。この触媒は、Apeiron又はStremから市販されている。この触媒の製造は、国際公開第A2014/001109号パンフレットからも、当業者には公知である。
【0038】
ニトリルゴムをメタセシスさせるためには、式(I)の触媒(GreenCat AS2034)を使用するのが、特に好ましい。式(I)の触媒は、ニトリルゴムのメタセシス分解においては、従来技術から公知の触媒のGrubbs II、Hoveyda-Grubbs、及びnitro-Grelaよりも高いメタセシス活性を有している。
【0039】
本発明においてメタセシスのために使用される触媒の量は、その特定の触媒の素性、及びさらには触媒活性に依存する。使用される触媒の量は、使用されるニトリルゴムを基準にして、0.001~1phr、好ましくは0.002~0.1phr、特には0.004~0.008phrである。
【0040】
ニトリルゴムのメタセシスは、共オレフィンの非存在下、或いはそうでなければ存在下で実施することができる。そのものは好ましくは、直鎖状又は分岐状のC2~C16オレフィンである。適切な例は、エチレン、プロピレン、イソブテン、スチレン、1-ヘキセン、又は1-オクテンである。1-ヘキセン又は1-オクテンを使用するのが好ましい。
【0041】
2個以上の二重結合を有するか、又は1個の二重結合と1個のカルボン酸基若しくはヒドロキシル基とを含む共オレフィンもまた適している。その共オレフィンが(たとえば1-ヘキセンのように)液体である場合には、その共オレフィンの量は、使用されるニトリルゴムを基準にして、0.2重量%~20重量%の範囲内であるのが好ましい。その共オレフィンが、たとえばエチレンのように、気体である場合には、その共オレフィンの量は、その反応容器中、室温で、1×105Pa~1×107Paの範囲の圧力、好ましくは5.2×105Pa~4×106Paの範囲の圧力が得られるように選択される。
【0042】
メタセシス反応は、使用される触媒を失活させず、さらにはいかなる点でもその反応に悪影響を与えることがない、適切な溶媒の中で実施することができる。好適な溶媒としては、ジクロロメタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、及びシクロヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に好適な溶媒はクロロベンゼンである。いくつかの場合においては、たとえば1-ヘキセンの場合のように、その共オレフィン自体が溶媒として機能できるような場合には、さらなる追加の溶媒の添加なしで済ますことも可能である。
【0043】
メタセシスのための反応混合物中で使用されるニトリルゴムの濃度には厳しい制限はないが、ただし、当然のことではあるが、その反応混合物の粘度が過度に高すぎて、混合の問題が伴うようなことがあれば、その反応に悪影響が及ぶであろうことには、注意するべきである。反応混合物の中でのニトリルゴムの濃度は、その反応混合物全体を基準にして、好ましくは1~20重量%の範囲、特に好ましくは5~15重量%の範囲である。
【0044】
メタセシス分解は、典型的には10℃~150℃の範囲、好ましくは20℃~100℃の範囲の温度で実施される。
【0045】
反応時間はいくつかの因子に依存するが、そのような因子としてはたとえば、ニトリルゴムのタイプ、触媒のタイプ、使用される触媒濃度、及び反応温度などが挙げられる。典型的には、その反応は、通常の条件下では、3時間以内に終了する。メタセシスの進行状況は、標準的な分析法により、たとえばGPC測定によるか、又は粘度を測定することによってモニターすることができる。
【0046】
ニトリルゴム(NBR)
メタセシス反応におけるニトリルゴムとしては、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、そして場合によっては1種又は複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含む、コポリマー又はターポリマーを使用することができる。
【0047】
各種の共役ジエンを使用することができる。(C4~C6)共役ジエンを使用するのが好ましい。1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン、又はそれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はそれらの混合物が特に好ましい。極めて特に好ましいのは1,3-ブタジエンである。
【0048】
使用されるα,β-不飽和ニトリルは、各種公知のα,β-不飽和ニトリルであってよいが、(C3~C5)-α,β-不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのはアクリロニトリルである。
【0049】
したがって、特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとのコポリマーである。
【0050】
共役ジエン及びα,β-不飽和ニトリルと同様に、1種又は複数のさらなる当業者公知の共重合性モノマー、たとえば、α,β-不飽和のモノカルボン酸若しくはジカルボン酸、又はそれらのエステル若しくはアミドを使用することも可能である。好ましいα,β-不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸は、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸である。使用されるα,β-不飽和モノカルボン酸のエステルは、好ましくは、それらのアルキルエステル及びアルコキシアルキルエステルである。特に好ましい、α,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸オクチルである。特に好ましい、α,β-不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、及び(メタ)アクリル酸エトキシエチルである。上述の共重合性モノマーの混合物を使用することもまた可能である。
【0051】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位及び共役ジエン単位と同様に、さらなる共重合性モノマーとして、一般式(X)のPEGアクリレートを使用してもよい。
【化13】
[式中、
Rは、水素、又は分岐状若しくは非分岐状のC
1~C
20アルキル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、若しくはエチルヘキシルであり、
nは、1~8、好ましくは2~8、特に好ましくは2~5、及び極めて特に好ましくは2であり、そして
R
1は、水素又はCH
3-である。]
【0052】
本発明の文脈においては、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び「メタクリレート」を表している。一般式(I)のR1基が、CH3-である場合には、それはメタクリレートである。
【0053】
「ポリエチレングリコール」又は略して「PEG」という用語は、本発明の文脈においては、1個のエチレングリコール繰り返し単位を有するモノエチレングリコールセクション(PEG-1;n=1)と、2~8個のエチレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコールセクション(PEG-2~PEG-8;n=2~8)との両方を表している。
【0054】
「PEGアクリレート」という用語もまた、略してPEG-X-(M)Aとされるが、ここで「X」は、エチレングリコールの繰り返し単位の数であり、「MA」はメタクリレートであり、及び「A」はアクリレートである。
【0055】
一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるアクリレート単位は、本発明の文脈においては、「PEGアクリレート単位」と呼ばれる。
【0056】
好ましいPEGアクリレート単位は、次の式no.1~no.10のPEGアクリレートから誘導されるが、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、又は8、好ましくは2、3、4、5、6、7、又は8、特に好ましくは2、3、4、5、又は5、極めて特に好ましくは2である。
【0057】
【0058】
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(式no.3)についての他の一般的に使用される名称は、たとえば、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、アクリロイル-PEG、メトキシ-PEGアクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノアクリレート、又はmPEGアクリレートである。
【0059】
これらのPEGアクリレートは、市場で購入することが可能で、たとえばArkemaからSartomer(登録商標)の商品名として、EvonikからVisiomer(登録商標)の商品名として、或いはSigma Aldrichから販売されている。
【0060】
採用されるニトリルゴムの中での共役ジエンとα,β-不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンの比率又は合計は、ポリマー全体を基準にして、典型的には40~90重量%の範囲、好ましくは55~75重量%の範囲である。α,β-不飽和ニトリルの比率又は合計は、ポリマー全体を基準にして、典型的には10~60重量%、好ましくは25~45重量%である。いずれの場合においても、モノマーの比率を合計したものが100重量%となる。追加のモノマーは、ポリマー全体を基準にして、0~5重量%、好ましくは0.1~40重量%、特に好ましくは1~30重量%の範囲で存在させることができる。この場合、共役ジエンの及び/又はα,β-不飽和ニトリルの相当する比率を、追加のモノマーの比率で置き換えるが、それぞれの場合において、全部のモノマーの比率を合計して100重量%とする。
【0061】
上述のモノマーを重合させることによるニトリルゴムの製造は、当業者には十分に周知であり、ポリマー関連文献に詳しく記載されている。
【0062】
本発明の意味合いで使用することが可能なニトリルゴムはさらに、たとえば、以下の製品シリーズからの製品として、市販されている:商品名Perbunan(登録商標)及びKrynac(登録商標)(ARLANXEO Deutschland GmbH社製)、商品名Nipol(登録商標)(Zeon社製)、商品名Europrene(登録商標)(Versalis社製)、商品名Nancar(登録商標)(Nantex社製)、又は商品名KNB(Kumho社製)。
【0063】
メタセシスのために使用されるニトリルゴムは、30~70、好ましくは30~50の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。これは、200,000~500,000の範囲、好ましくは200,000~400,000の範囲の重量平均分子量Mwに相当する。使用されるニトリルゴムはさらに、2.0~6.0の範囲、好ましくは3.0~5.0の範囲、特に好ましくは3.5~4.5の範囲の多分散度、PDI=Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、そしてMnは数平均分子量である)を有している。
【0064】
ムーニー粘度は、ここでは、ASTM標準D 1646に従って求める。
【0065】
本発明のメタセシス分解方法によって得られたニトリルゴムは、5~30、好ましくは5~20の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。これは、10,000~200,000の範囲、好ましくは10,000~150,000の範囲の重量平均分子量Mwに相当する。得られたニトリルゴムはさらに、1.5~4.0の範囲、好ましくは1.7~3の範囲の多分散度、PDI=Mw/Mn(ここでMnは数平均分子量である)を有している。
【0066】
水素化
得られた、分解させたニトリルゴムの水素化を、本発明のメタセシス分解方法に組み合わせてもよい。これは、当業者公知の方法で実施することができる。
【0067】
均一系又は不均一系の水素化触媒を使用して、水素化を実施することが可能である。水素化反応をインサイチューで、すなわち、前もってメタセシス分解を実施したのと同一の反応混合物の中で、その分解されたニトリルゴムを単離する必要もなく、実施することもまた可能である。その水素化触媒は、反応容器の中に単に添加する。
【0068】
使用される触媒は、典型的には、ロジウム、ルテニウム又はチタンをベースとするものであるが、白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト、又は銅を、金属、又はそうでなければ好ましくは金属化合物の形態として使用することも可能である(たとえば、米国特許第A-3,700,637号明細書、独国特許出願公開第A-2 539 132号明細書、欧州特許出願公開第A-0 134 023号明細書、独国特許出願公開第OS-35 41 689号明細書、独国特許出願公開第OS-35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A-0 298 386号明細書、独国特許出願公開第OS-35 29 252号明細書、独国特許出願公開第OS-34 33 392号明細書、米国特許第A-4,464,515号明細書、及び米国特許第A-4,503,196号明細書を参照されたい)。
【0069】
均一相における水素化のために好適な触媒及び溶媒は、以下において記述する、独国特許出願公開第A-25 39 132号明細書及び欧州特許出願公開第A-0 471 250号明細書からも公知である。
【0070】
選択的水素化は、たとえば、ロジウム含有又はルテニウム含有触媒の存在下で達成することができる。たとえば、一般式(R1
mB)lMXnの触媒を使用することができるが、ここで、Mは、ルテニウム又はロジウムであり、R1は、同一であっても異なっていてもよく、C1~C8アルキル基、C4~C8シクロアルキル基、C6~C15アリール基、又はC7~C15アラルキル基である。Bは、リン、ヒ素、硫黄又はスルホキシド基(S=O)であり、Xは水素又はアニオン、好ましくはハロゲン、特に好ましくは塩素又は臭素であり、lは2、3又は4であり、mは2又は3であり、及びnは1、2又は3、好ましくは1又は3である。好適な触媒は、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)、及び塩化トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)、さらにはテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム水素化物、式((C6H5)3P)4RhH、及びそれに対応するトリフェニルホスフィンが全面的又は部分的にトリシクロヘキシルホスフィンによって置換された化合物である。触媒の使用量は少量でよい。ポリマーの重量を基準にして、0.01~1重量%の範囲、好ましくは0.03~0.5重量%の範囲、より好ましくは0.1~0.3重量%の範囲の量が適切である。
【0071】
典型的には、その触媒を助触媒と共に使用することが推奨されるが、その助触媒は、式R1mBの配位子であり、ここでR1、m、及びBはそれぞれ、上で触媒について定義されたものである。好ましくは、mが3であり、Bがリンであり、R1基は同一であっても異なっていてもよい。その助触媒が、トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリールモノアルキル、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアルキルモノシクロアルキル、ジシクロアルキルモノアリール、又はジシクロアルキルモノアリール基を有しているのが好ましい。
【0072】
助触媒の例は、たとえば米国特許第A-4,631,315号明細書に見出すことができる。好適な助触媒はトリフェニルホスフィンである。助触媒は、水素化されるニトリルゴムの重量を基準にして、0.3~5重量%の範囲、好ましくは0.5~4重量%の範囲で使用するのが好ましい。好ましくは、さらに、ロジウム含有触媒の助触媒に対する重量比は、1:3~1:55の範囲、好ましくは1:5~1:45の範囲である。水素化されるニトリルゴムの100重量部を基準にして、好適には0.1~33重量部の助触媒、好ましくは0.5~20、極めて特に好ましくは1~5重量部、特には2重量部を超えるが5重量部未満の助触媒を使用する。
【0073】
この水素化の実務的な遂行は、米国特許第A-6,683,136号明細書からも当業者には十分に公知である。典型的には、トルエン又はモノクロロベンゼンのような溶媒の中で、100~150℃の範囲の温度と50~150バールの範囲の圧力で2~10時間かけて、水素化されるニトリルゴムを水素と接触させることによって実施される。
【0074】
本発明の文脈においては、水素化とは、出発ニトリルゴムの中に存在している二重結合の、少なくとも50%、好ましくは70~100%、特に好ましくは80~100%を転化させることを意味していると理解されたい。
【0075】
不均一系触媒を使用する場合においては、それらは典型的には、パラジウムをベースとする担持触媒であって、それらは、たとえば木炭、シリカ、炭酸カルシウム又は硫酸バリウムの上に担持されている。
【0076】
水素化が完了すると、水素化されたニトリルゴムが得られるが、それは、ASTM標準D1646で測定して、10~50、好ましくは10~30の範囲のムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有している。これは、2000~400,000g/molの範囲、好ましくは20,000~200,000の範囲の重量平均分子量Mwに相当する。さらに、そのようにして得られた水素化ニトリルゴムは、1~5の範囲、好ましくは1.5~3の範囲の多分散度、PDI=Mw/Mn(ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)を有している。
【0077】
触媒(I)及び(III)を、ニトリルゴムの水素化において使用して、水素化ニトリルゴム(HNBR)を得ることができる。
【0078】
したがって、本発明はさらに、ニトリルゴムを、一般式(I)及び(III)の触媒の一つと接触させることを特徴とする、ニトリルゴムの分子量を低減させるための方法にも関する。
【0079】
本発明の利点は、特に、ニトリルゴムのメタセシス分解における触媒の高いメタセシス活性である。
【実施例】
【0080】
各種の触媒の存在下におけるニトリルゴムのメタセシス分解
以下の実施例では、それぞれの場合において同一の使用量で、式(I)の触媒が、ニトリルゴムのメタセシス分解におけるメタセシス活性を有していることを示している。
【0081】
以下の触媒を使用した:
「Grubbs II触媒」(比較例1):[1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(CAS番号:246047-72-3)、C
46H
65Cl
2N
2PRu、分子量:848.97g/mol:(Grubbs II触媒は、Materia Inc社から入手した)。
【化14】
【0082】
「Hoveyda-Grubbs II触媒」(比較例2):[1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(CAS番号:301224-40-8):C
31H
38Cl
2N
2ORu、分子量:626.62g/mol(Hoveyda-Grubbs II触媒は、Materia Inc社から入手した)。
【化15】
【0083】
「Nitro-Grela触媒 AS2032」(比較例3):[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニルイミダゾリジン-2-イリデン)]-(2-i-プロポキシ-5-ニトロベンジリデン)ルテニウム(II)ジクロリド(CAS番号:502964-52-5):C
31H
37Cl
2N
3O
3Ru:分子量:671.62g/mol:緑色粉体。この触媒は、Apeiron又はStremから市販されている。触媒の製造は、以下の文献から、当業者には公知である:国際公開第A2004/035596号パンフレット、さらには、K.Grela,S.Harutyunyan,A.Michrowska,”A New Highly Efficient Ruthenium Catalyst for Metathesis Reaction”,Angew.Chem.Int.Ed.,41,4038~4040、(2002)、又はJ.Org.Chem.,2004,69,6894~6896。
【化16】
【0084】
実施例(I)「GreenCat AS2034」:[1,3-ビス(2,6-ジ-i-プロピルフェニル)イミダゾリジン-2-イリデン]{2-[[1-(メトキシ(メチル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]オキシ]ベンジリデン}ルテニウム(II)ジクロリド(CAS番号:1448663-06-6):C
39H
53Cl
2N
3O
3Ru:分子量:783.33g/mol。この触媒は、Apeiron又はStremから市販されている。
【化17】
【0085】
以下に記述する分解反応は、ARLANXEO Deutschland GmbH製のニトリルゴムを使用して実施した(アクリロニトリル含量;34重量%、ムーニー粘度(ML1+4@100℃);34MU、残存二重結合含量(RDB);100)。以下においては、このニトリルゴムをNBRと略記する。
【0086】
実施したメタセシス反応の一般的な説明:
メタセシス分解には、それぞれの場合において、425gのクロロベンゼン(MCB:Aldrich)を使用した。その中に、室温で24時間かけて75gのNBRを溶解させた。
【0087】
【0088】
それぞれの場合において、3.1g(4phr)の1-ヘキセンを、NBR溶液に添加し、かくはん機で120分かけて完全に混合して均質化させた。
【0089】
室温で5mLのMCBの中に、0.0049gのルテニウム含有触媒をそれぞれ溶解させた。触媒溶液が調製されたら直ちに、それらの触媒溶液をNBR溶液に添加した。
【0090】
24時間後には、メタセシス反応が終了するので、それぞれの場合において、5mLの反応溶液をGPCに使用した。
【0091】
DIN-55672-1(2007年版)に従い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。以下のものを含むモジュラーシステムを使用した:Shodex RI-71示差屈折計、S 5200オートサンプラー(SFD製)、カラムオーブン(ERC-125)、Shimadzu LC 10ATポンプ、及びAgilent製の、3本のPLgel 10μm Mixed B 300×7.5mmカラムのカラム組合せ。
【0092】
使用した溶媒は、テトラヒドロフランであって、表示される分子量は、PSS(Mainz)製のポリスチレン標準をベースとしたものである。出来上がったサンプルのTHF溶液を、0.45μm、直径25mmのPTFE膜を用いたシリンジフィルターで濾過する。測定は40℃で実施し、流量は、テトラヒドロフラン中1mL/分であった。
【0093】
数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、及びそれらから得られる多分散性指数PDIのような分子パラメーターは、Waters製の「Empower 2 data base」ソフトウェアを用いて、RI信号から求める。
【0094】
GPC分析の手段によって、原料のNBRゴム(分解前)と分解させたニトリルゴムとの両方について、次の特性指標を求めた:
Mw[g/mol]:重量平均分子量
Mn[g/mol]:数平均分子量
PDI:分子量分布の幅(Mw/Mn)。
【0095】
4phrの1-ヘキセン存在下での、「Grubbs II触媒」、「Hoveyda-Grubbs II触媒」、及び「nitro-Grela触媒」と、式(I)の触媒との活性比較
式(I)の触媒と共に、「Grubbs II触媒」、「Hoveyda-Grubbs II触媒」、及び「nitro-Grela触媒」の活性は、本発明の式(I)の触媒と共に、触媒濃度0.0065phr(0.0049g)、及び助触媒の1-ヘキセン使用量4.0phr(3.1g)で実施した。
【0096】
【0097】
触媒(I)*を使用すると、目立つほどのゲル生成もなく、ニトリルゴムのメタセシス分解が進む。
【0098】
本発明の実施例(I)*における、ニトリルゴムの重量平均分子量Mwの低下の比較から、触媒(I)(GreenCat AS2034)の活性が、比較例V1~V3で使用した比較例触媒の、Grubbs II触媒、Hoveyda-Grubbs II触媒、及びnitro-Grela触媒よりも、顕著に高いことがわかる。それぞれの場合において、同一の反応時間では、触媒(I)(GreenCat AS2034)を用いると、比較例触媒V1~V3を用いた場合よりも低い分子量が達成される。したがって、本発明触媒は、ニトリルゴムをメタセシスさせるための方法で使用することに適している。