(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ポリマーフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240213BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240213BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240213BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
B32B17/10
B32B27/00 A
C08G61/12
(21)【出願番号】P 2020560973
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(86)【国際出願番号】 FI2019000006
(87)【国際公開番号】W WO2019211510
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】PCT/FI2018/050330
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:平成29年11月6日 公開物:11th ANNUAL MATSURF SEMINAR予稿集,第26頁
(73)【特許権者】
【識別番号】513323128
【氏名又は名称】トゥルン イリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クヴァーンストレーム カリタ
(72)【発明者】
【氏名】ダムリン ピア
(72)【発明者】
【氏名】サロマキ ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】ナウマ マウリ
(72)【発明者】
【氏名】イェワレ ラフル バル
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02123731(EP,A1)
【文献】特表2010-533219(JP,A)
【文献】FABRETTO, M. et al.,The role of water in the synthesis and performance of vapour phase polymerised PEDOT electrochromic devices,J. Mater. Chem.,2009年,Vol. 19,p. 7871-7878
【文献】FABRETTO, M. et al.,In-situ QCM-D analysis reveals four distinct stages during vapour phase polymerisation of PEDOT thin films,Polymer,2010年,Vol. 51,p. 1737-1743
【文献】KIM, J.-Y. et al.,Highly Conductive and Transparent Poly(3,4-ethylenedioxythiophene):p-Toluene Sulfonate Films as a Flexible Organic Electrode,Jpn. J. Appl. Phys.,2009年,Vol. 48,091501-1 - 091501-6
【文献】WINTHER-JENSEN, B. et al.,Base inhibited oxidative polymerization of 3,4-ethylenedioxythiophene with iron(III)tosylate,Synthetic Metals,2005年,Vol. 152,p. 1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT
)層とを含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)フィルムの製造方法であって、
前記PEDOT層は、モノマーの1つが3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)であるコポリマーから形成されるポリマー層であり、
a)前記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、前記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
b)ステップa)で形成された酸化剤コーティングされた前記基板が、酸化剤コーティングされた前記基板の前記表面を重合温度で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)
をモノマーとして含有するモノマー蒸気に暴露することによって重合ステップを受けることで、酸化剤コーティングされた前記基板の前記表面上にPEDOT層を形成するステップと、
を含み、
前記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた前記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された前記基板温度は、前記重合温度より2~40℃低く、前記重合温度は55~95℃であり、制御された前記基板温度は
45~70℃である、製造方法。
【請求項2】
前記基板が非導電性基板である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記製造方法が、
c)ステップb)で形成された前記PEDOT層の少なくとも1つの表面上に前記酸化剤および前記塩基阻害剤を含む前記溶液を塗布して、前記PEDOT層の前記少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
d)ステップc)で形成された酸化剤コーティングされた前記PEDOT層が、酸化剤コーティングされた前記PEDOT層の前記表面を重合温度で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー蒸気に暴露することによって重合ステップを受けることで、酸化剤コーティングされた前記PEDOT層の前記表面上に後続のPEDOT層を形成するステップと、
を含み、
前記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた前記PEDOTフィルムの温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された前記基板温度は、前記重合温度よりも2~40℃低く、前記重合温度は55~95℃であり、制御された前記基板温度は
45~70℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
モノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であるコポリマーから形成されるポリマーフィルムであって、基板と、前記基板の少なくとも1つの表面上にモノマーの1つがEDOTモノマーであるコポリマーから形成される少なくとも1つのポリマー層とを含む、ポリマーフィルムの製造方法であって、
a)前記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、前記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
b)ステップa)で形成された酸化剤コーティングされた前記基板が、酸化剤コーティングされた前記基板の表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、前記モノマーの1つがEDOTモノマーである、モノマーの蒸気に、重合温度で暴露することによって重合ステップを受け、酸化剤コーティングされた前記基板の前記表面上にポリマー層を形成するステップと、
を含み、
前記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた前記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された前記基板温度は、前記重合温度より2~40℃低く、前記重合温度は55~95℃であり、制御された前記基板温度は
45~70℃である、製造方法。
【請求項5】
前記製造方法が、
c)ステップb)で形成された前記ポリマー層の少なくとも1つの表面上に前記酸化剤および前記塩基阻害剤を含む前記溶液を塗布して、前記ポリマー層の前記少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
d)ステップc)で形成された酸化剤コーティングされた前記ポリマー層が、酸化剤コーティングされた前記ポリマー層の前記表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、前記モノマーの1つがEDOTである、モノマーの蒸気に重合温度で暴露することによって重合ステップを受け、酸化剤コーティングされた前記基板の前記表面上にポリマー層を形成するステップと、
を含み、
前記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた前記ポリマーフィルムの温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された前記基板温度は、前記重合温度よりも2~40℃低く、前記重合温度は55~95℃であり、制御された前記基板温度は
45~70℃である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法が、ステップc)およびステップd)を少なくとも1回繰り返すことを含む、請求項3または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの異なるモノマーの蒸気が、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、アズレン、ピロール、アニリン、チオフェン、およびフェニレンからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーとを含
む、請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
酸化剤コーティングされた前記基板の温度は、前記重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された前記基板温度は、前記重合温度よりも2~30
℃低い、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記製造方法が気相重合(VPP)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記重合温度が60~85℃
である、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記製造方法が、バッチプロセスまたは連続プロセスとして実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
酸化剤コーティングされた前記基板および/または酸化剤コーティングされた前記PEDOTフィルム、または酸化剤コーティングされた前記基板および/または
前記コポリマーから形成された酸化剤コーティングされた前記ポリマーフィルムの温度が、前記重合ステップの全体にわたって、制御された前記基板温度に保たれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記重合ステップが、2つの連続する処理期間であって、前記基板が制御された前記基板温度に保たれる処理期間と、前記基板が制御された前記基板温度に保たれない処理期間を含み、酸化剤コーティングされた前記基板および/または酸化剤コーティングされた前記PEDOTフィルム、または酸化剤コーティングされた前記基板および/または
前記コポリマーから形成された酸化剤コーティングされた前記ポリマーフィルムの温度が、前記処理期間のうちの1つを通して、制御された前記基板温度に保たれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記重合ステップが、3つの連続する処理期間であって、前記基板が制御された前記基板温度に保たれる処理期間と、前記基板が制御された前記基板温度に保たれない処理期間を含み、酸化剤コーティングされた前記基板および/または酸化剤コーティングされた前記PEDOTフィルム、または酸化剤コーティングされた前記基板および/または
前記コポリマーから形成された酸化剤コーティングされた前記ポリマーフィルムの温度が、中間の前記処理期間を通して、制御された前記基板温度に保たれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップa)の前に前記基板を洗浄するステップを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記酸化剤および前記塩基阻害剤を含む前記溶液が、ステップa)において前記基板の少なくとも1つの表面上に、および/またはステップc)において形成された前記PEDOT層または
前記コポリマーから形成された前記ポリマー層の少なくとも1つの表面上に、またはステップa)において前記基板の少なくとも1つの表面上に、および/またはステップc)において形成された
前記コポリマーから形成された前記ポリマー層上にスピンコーティングされる、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
ステップb)の前に、酸化剤コーティングされた前記基板、および/またはステップd)の前に、ステップc)からの前記PEDO
Tフィルム、および/またはステップd)の前に、ステップc)からの
前記コポリマーから形成された前記ポリマーフィルムを洗浄、乾燥および/または加熱するステップを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
重合後に50~100℃の温度で前記PEDOTフィルムまたは
前記コポリマーから形成された前記ポリマーフィルムをアニールするステップと、任意選択でアニールした前記PEDOTフィルムまたは
前記コポリマーから形成された前記ポリマーフィルムをそれぞれ洗浄、乾燥するステップとを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
ステップc)の前に、ステップb)から受け取った前記PEDO
Tフィルムまたは
前記コポリマーから形成された前記ポリマーフィルムを洗浄するステップを含む、請求項3、5~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記重合ステップの持続時間が、1~20
分である、請求項1~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
酸化剤コーティングされた前記基板および/または酸化剤コーティングされた前記PEDOTフィルムの温度、または酸化剤コーティングされた前記基板および/または
前記コポリマーから形成された前記ポリマーフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる前記重合ステップの処理期間の持続時間が、前記重合ステップの持続時間の20~80
%である、請求項1~20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前
記基板がガラスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項1~21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記酸化剤がp-トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(FETOS)である、請求項1~22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記塩基阻害剤がピリジンである、請求項1~23のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)フィルムの製造方法に関する。本開示は、さらに、導電性PEDOTフィルムに関する。本開示は、さらに、導電性PEDOTフィルムを含む電子デバイスと、電子デバイス内の/電子デバイスの帯電防止コーティングまたは電極としての導電性PEDOTフィルムの使用に関する。本開示は、また、コポリマーから形成されるポリマーフィルムの製造方法と、導電性ポリマーフィルムを含む電子デバイスと、電子デバイス内の/電子デバイスの帯電防止コーティングまたは電極としての導電性ポリマーフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性PEDOTフィルムおよびそのコポリマーフィルムは、帯電防止コーティング、ペロブスカイト太陽電池、有機太陽電池、色素増感太陽電池、電気化学トランスデューサ、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロルミネセントデバイス、熱電デバイス、スマートウィンドウ、OLED、光電子工学およびスーパーキャパシタなどの異なる分野で使用されている。導電性PEDOTフィルムは、例えば、導電性基板上でのPEDOTの電気化学重合、酸化化学気相堆積(oCVD)または真空気相重合(VVPP)技術によって製造することができる。電子デバイス用の導電性PEDOTフィルムを形成する場合、その導電性、低いシート抵抗、形態(粗さ平均)および光透過性が重要である。
【発明の概要】
【0003】
基板と、その基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのPEDOT層とを含む、基板の上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)フィルムを製造するための方法が開示される。この方法は、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、形成された酸化剤コーティングされた上記基板が、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面を重合温度で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー蒸気に暴露することによって重合ステップを受けることで、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面上にPEDOT層を形成するステップと、を含み、上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度より2~40℃低い。
【0004】
モノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であるコポリマーから形成されるポリマーフィルムを、基板と、上記基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのポリマー層とを含む、基板上に、製造するための方法が開示される。この方法は、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面の上に酸化剤コーティングを形成するステップと、形成された酸化剤コーティングされた上記基板が、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、上記モノマーの1つがEDOTモノマーである、モノマーの蒸気に、重合温度で暴露することによって、重合ステップを受け、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面上にポリマー層を形成するステップと、を含み、上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度より2~40℃低い。
【0005】
さらに、導電性PEDOTフィルムが開示される。導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板と、PEDOT層であって、上記非導電性基板上の上記PEDOT層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有する、PEDOT層とを備えることができ、上記導電性PEDOTフィルムは、2100S/cm超の導電率および200Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0006】
さらに、本開示に開示されるように、非導電性基板と、非導電性基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのPEDOT層とを備えるPEDOTフィルムを製造するための方法によって取得可能な導電性PEDOTフィルムが開示される。
【0007】
さらに、コポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムであって、上記コポリマーのモノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)である、導電性ポリマーフィルムが開示される。 導電性ポリマーフィルムは、非導電性基板と、上記非導電性基板上の上記ポリマー層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有するコポリマーから形成されるポリマー層フィルムとを含むことができ、上記導電性ポリマーフィルムの厚さは、10~500nmまたは10~200nmである。
【0008】
さらに、モノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であるコポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムであって、本開示で開示されるように、非導電性基板と、上記非導電性基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのポリマー層とを含むポリマーフィルムを製造する方法によって取得可能である、導電性ポリマーフィルムが開示される。
【0009】
さらに、電子デバイスが開示される。電子デバイスは、導電性PEDOTフィルム、またはモノマーの1つが本開示に開示されるようなEDOTであるコポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムを含むことができる。
【0010】
さらに、導電性PEDOTフィルム、およびモノマーの1つが本開示に開示されるようなEDOTであるコポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムの使用が開示される。
【0011】
添付の図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】気相重合を実施するための気相重合セルを示す。
【
図2】気相重合法によって製造された6層PEDOTフィルムのラマンスペクトルを示す。
【
図3】1Lは1層のPEDOT、2Lは2層のPEDOT、3Lは3層のPEDOT、4Lは4層のPEDOT、5Lは5層のPEDOT、6Lは6層のPEDOTのAFM画像を示し、1L、3Lおよび6LはPEDOTのSEM画像を示す。
【
図4】1L~6LのPEDOTのサイクリックボルタモグラム(掃引速度は100mV/sで、MeCN中に0.1MのTBABF
4を含む)を示す。
【
図5】ガラス上と、6mMのフェロセン溶液中でITOコーティングされたガラス上の1LのPEDOTのサイクリックボルタモグラムを示し、その掃引速度は、20mV/sである。
【
図6】可撓性基板のための連続気相重合を実施するための連続セットアップを示す。
【
図7】硬質基板のための連続気相重合を実施するための連続セットアップを示す。
【
図8】気相重合をより大きなスケールで実施するためにスケールアップされた気相重合セルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、基板と、上記基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのPEDOT層とを含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)フィルムを製造するための方法に関し、上記方法は、
a)上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
b)ステップa)で形成された酸化剤コーティングされた上記基板が、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面を重合温度で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー蒸気に暴露することによって重合ステップを受けることで、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面上にPEDOT層を形成するステップと、
を含み、
上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度より2~40℃低い。
【0014】
本出願は、また、モノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であるコポリマーから形成されるポリマーフィルムであって、基板と、モノマーの1つが上記基板の少なくとも1つの表面上に、EDOTモノマーであるコポリマーから形成される少なくとも1つのポリマー層とを含む、ポリマーフィルムを製造するための方法に関し、上記方法は、
a)上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
a)上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
b)ステップa)で形成された酸化剤コーティングされた上記基板が、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、上記モノマーの1つがEDOTモノマーである、モノマーの蒸気に、重合温度で暴露することによって重合ステップを受け、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面上にポリマー層を形成するステップと、
を含み、
上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度より2~40℃低い。
【0015】
PEDOT層またはポリマー層がPEDOTフィルム中の基板の表面「上」にあるという表現は、本明細書では、特に断らない限り、PEDOT層またはポリマー層がそれぞれ重合または形成されるか、基板の上に横たわるように形成されるか、あるいはその中に少なくとも部分的に埋め込まれることを意味するものとして理解されるべきである。基板は、PEDOT層またはポリマー層のためのキャリアまたは支持構造として働くことができる。基板は変更することができ、基板の材料は、PEDOTフィルムまたはポリマー層がそれぞれ使用される用途に応じて変えることができる。
【0016】
「フィルム」という表現は、本明細書において、特に断らない限り、その厚さよりも実質的に大きい横方向寸法を有する構造を指すものとして理解されるべきである。その意味で、フィルムは「薄い」構造であると考えることができる。
【0017】
重合温度は、重合ステップの間のモノマー蒸気の温度である。
【0018】
一実施形態では、基板は、非導電性基板である。基板が「非導電性」であるという表現は、特に断らない限り、本明細書では、基板が10MΩ/□以上のシート抵抗を有することを意味するものとして理解されるべきである。
【0019】
非導電性基板は、ガラス、ポリマー、紙、セルロース、織物、布、木材、皮革、綿、陶器、セルロース-木材複合材料のような複合材料、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、ゴム、石英、塗料、炭素材料および/または非導電性鉱物のような基板であってもよい。非導電性ポリマー基板は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PI)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリスチレン樹脂(PS)、および非晶質ポリエステル(A-PETまたはPET-G)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるプラスチック材料からなる群から選択されてもよい。非導電性基板は、可撓性の非導電性基板であってもよい。可撓性基板は、曲げて折り畳むことができる可撓性PEDOTフィルムの製造に使用することができる。
【0020】
酸化剤は、モノマーの重合を誘導する物質であり、導電性ポリマーの重合後にドーパントとして作用することができる。埋め込まれたアニオンは、ドーパントイオンとして作用するためにPEDOT構造内に残ることができる。PEDOTポリマーの導電率は、酸化(ドーピング)時の電子または正孔の非局在化によるものであり得る。酸化剤は、p-トルエンスルホン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、塩化鉄(III)、p-トルエンスルホン酸、ヨウ素、臭素、モリブドリン酸、過硫酸アンモニウム、DL-酒石酸、ポリアクリル酸、塩化銅、臭化銅、塩化第二鉄、ナフタレンスルホン酸、カンフルスルホン酸、トルエンスルホン酸鉄(III)、過塩素酸塩鉄(III)、Cu(ClO4)2・6H2O、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、硫酸セリウム(IV)およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0021】
塩基阻害剤は、酸化剤の活性を低下させ、重合速度を低下させる。これによって、堆積されたポリマーの導電率を変化させることがある。塩基阻害剤は、アミン系化合物および窒素原子含有飽和または不飽和複素環化合物、例えば、ピリジン系、イミダゾール系、またはピロール系化合物、水蒸気、グリセロール、およびグリコール誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の酸化剤溶液は、酸化剤と、塩基阻害剤と、溶媒とを含む。溶媒は、n-ブタノールメチルアルコール、2-ブチルアルコール、エチルセロソルブ、エチルアルコール、シクロヘキサン、酢酸エチル、トルエン、アセトニトリルおよびメチルエチルケトン、ならびにそれらの混合物などの有機溶媒からなる群から選択することができる。
【0023】
一実施形態では、酸化剤溶液の濃度は、60~500mM、または70~480mM、または120~320mM、または180~240mMである。
【0024】
一実施形態では、PEDOT層が、ドープされる。
【0025】
一実施形態では、モノマーの1つがEDOTであるコポリマーから形成されるポリマー層が、ドープされる。
【0026】
一実施形態では、この方法は、気相重合によって実施される。
【0027】
気相重合は、(1つまたは複数の)モノマーのみが気相に変換される重合技術である。VPP法は、酸化剤および塩基阻害剤の溶液で基板をコーティングし、続いて、乾燥させて、溶媒のトレースを除去するステップを含むことができる。一実施形態では、気相重合は、大気圧下で行われる。大気圧下で行われる気相重合は、制御が容易である。圧力制御も、あるいは洗練されたデバイスまたは真空炉も必要ない。この方法は、大面積フィルムの製造にも使用することができる。一実施形態では、気相重合は、大面積フィルムを製造するためのロールツーロール技術によって実施される。
【0028】
重合温度は、モノマーの揮発速度および/または高分子鎖の移動度を制御することによって、得られるPEDOTフィルムまたはコポリマーから形成されるポリマーフィルムの特性、例えば、重合速度に影響を及ぼす。温度が低下すると、蒸気分子の濃度が増加する。基板温度および重合温度は、重合速度を制御する。重合温度および基板温度は、形成されたPEDOTフィルムの特性、例えば、導電率、透明性、シート抵抗および形態に影響を及ぼす。制御された基板温度は、PEDOTフィルムまたはコポリマーから形成されるポリマーフィルムの形態を制御する重合速度を制御する際の因子である。制御された基板温度は、PEDOTフィルムまたはコポリマーから形成されるポリマーフィルムに均一で均質な性質をもたらす。
【0029】
一実施形態では、酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を基板の一方の表面に塗布し、基板の酸化剤コーティング表面を重合温度でEDOTモノマー蒸気に暴露して、酸化剤コーティングされた基板の表面上に1つのPEDOT層を形成し、したがって1層PEDOTフィルムを生成する。
【0030】
一実施形態では、酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を基板の一方の表面に塗布し、基板の酸化剤コーティングされた表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、上記モノマーの1つがEDOTである、モノマーの蒸気に重合温度で暴露し、酸化剤でコーティングされた基板の表面上に1つのポリマー層を形成し、こうして、1層ポリマーフィルムを生成する。
【0031】
多層PEDOTフィルムの製造方法またはコポリマーから形成される多層ポリマーフィルムの製造方法は、層ごとの気相重合によって実施することができる。PEDOTフィルムは、間に洗浄ステップを挟んで、PEDOT層を堆積させることによって形成することができる。コポリマーから形成されるポリマーフィルムは、間に洗浄ステップを挟んで、ポリマー層を堆積させることによって形成することができる。
【0032】
一実施形態では、PEDOTフィルムを製造するための方法は、
c)ステップb)で形成された上記PEDOT層の少なくとも1つの表面上に上記酸化剤および上記塩基阻害剤を含む上記溶液を塗布して、上記PEDOT層の上記少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
d)ステップc)で形成された酸化剤コーティングされた上記PEDOT層が、酸化剤コーティングされた上記PEDOT層の上記表面を重合温度で3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー蒸気に暴露することによって重合ステップを受けることで、酸化剤コーティングされた上記PEDOT層の上記表面上に後続のPEDOT層を形成するステップと、
を含み、
上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記PEDOTフィルムの温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度よりも2~40℃低い。
【0033】
一実施形態では、
モノマーの1つがEDOTであるコポリマーから形成されるポリマーフィルムを製造するための方法は、
c)上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液を塗布して、上記基板の少なくとも1つの表面上に酸化剤コーティングを形成するステップと、
d)ステップa)で形成された酸化剤コーティングされた上記基板が、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面を少なくとも2つの異なるモノマーであって、上記モノマーの1つがEDOTモノマーである、モノマーの蒸気に、重合温度で暴露することによって重合ステップを受け、酸化剤コーティングされた上記基板の上記表面上にポリマー層を形成するステップと、
を含み、
上記重合ステップの間、酸化剤コーティングされた上記基板の温度は、制御された基板温度に保たれ、制御された上記基板温度は、上記重合温度より2~40℃低い。
【0034】
少なくとも2つの異なるモノマーの蒸気は、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、アズレン、ピロール、アニリン、チオフェン、フェニレンフラン、エチレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、プロピレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、スチレン、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、およびイソブチレン(メチルプロピレングリコール)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン-1(PB-1)、ポリオレフィンエラストマー(POE):ポリイソブチレン(PIB)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレングリコールジエンモノマー(M-クラス)ゴム(EPDMゴム)、またはモノマーとして製造される任意のタイプのポリマー、環状オレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステルおよびアリルエステルからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるモノマーの蒸気を含むか、またはそれらからなる。
【0035】
VPP法は、重合において、触媒を使用することができる。 一実施形態では、ステップb)および/またはd)において、少なくとも1つの触媒および/または少なくとも1つの触媒添加剤が使用される。一実施形態では、少なくとも1つの触媒および/または触媒添加剤は、以下、チーグラー・ナッタ触媒、AlCl3、硝酸セリウムアンモニウム、セリウムトシレート、Fe(III)トシレートイサルスーセダサンオキシダント(Fe(III)tosylateisalsousedasanoxidant)、ピリジン、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、ジエチレングリコール(DEG)、モリブドリン酸、モリブド-2-バナドホスホリカシド、ポリ(スチレンスルホネート)(PSS)、Fe(III)アルキルベンゼンスルホネート、ヨウ素、臭素、ピロカテコールバイオレット、ベンゼンスルホン酸(BSA)、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ブチルベンゼンスルホン酸(BBSA)、グリセロール、トリアルキルアルミニウムフリー修飾メチルアルミノキサン。TEMPO((2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルまたは(2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル)、過酸化物、炭化水素溶媒中のアルキルアルミニウム化合物を含むTi、V、Zr、W、Coおよびアルミニウム(MgまたはLi)のアルキルTiCl4化合物、マグネシウム塩に担持されたチタン、アルミニウムアルキルRAlCl2を含むVOCl3、VCl4またはVO(OR)3、シクロペンタジエニル環の間に挟まれた遷移金属(Zr、TiまたはHf)、アルミナ、シリカ、ジルコニアおよび活性炭上に担持されたCr、Mo、CoまたはNi、ビス(アレーン)CrO、酸化クロムに担持されたCr/SiO2、Zr/Al2O3およびTi/MgO、シリカ、アルミナまたはチタニアから選択される。
【0036】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも2~30℃低い。
【0037】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも2~25℃、または2~22℃、または2~20℃、または2~15℃、または3~25℃、または3~22℃低い。
【0038】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも3~20℃低い。
【0039】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも3~15℃低い。
【0040】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも5~20℃低い。
【0041】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも5~15℃低い。
【0042】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板の温度は、重合ステップの間、制御された基板温度に保たれ、制御された基板温度は、重合温度よりも8~12℃低い。
【0043】
一実施形態では、酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液は、ステップb)で形成された1つのPEDOT層、すなわち、1層PEDOTフィルムの表面上に塗布され、PEDOT層の酸化剤コーティングされた表面は、重合温度でEDOTモノマー蒸気に暴露されて、酸化剤コーティングされたPEDOT層の表面上に第二のPEDOT層を形成し、こうして、2層PEDOTフィルムを製造する。
【0044】
一実施形態では、この方法は、多層PEDOTフィルムを製造するために、ステップc)およびステップd)を少なくとも1回繰り返すことを含む。
【0045】
一実施形態では、酸化剤および塩基阻害剤を含む溶液は、ステップb)で形成されたコポリマーから形成された1つのポリマー層、すなわち、1層ポリマーフィルムの表面上に塗布され、ポリマー層の酸化剤コーティングされた表面は、少なくとも2つの異なるモノマーであって、モノマーの1つがEDOTモノマーである、モノマーの蒸気に重合温度で暴露されて、酸化剤コーティングされたポリマー層の表面上に第二のポリマー層を形成し、こうして、2層ポリマーフィルムを製造する。
【0046】
一実施形態では、この方法は、多層ポリマーフィルムを製造するために、ステップc)およびステップd)を少なくとも1回繰り返すことを含む。
【0047】
重合ステップの間、基板温度および重合温度は別々に制御される。一実施形態では、重合温度は55~95℃で、制御された基板温度は40~70℃である。一実施形態では、重合温度は60~85℃で、制御された基板温度は45~70℃である。一実施形態では、重合温度は65~80℃で、制御された基板温度は55~70℃であり、または重合温度は67~77℃で、制御された基板温度は56~66℃であり、あるいは重合温度は72~77℃で、制御された基板温度は61~66℃である。本発明の気相重合では、高温を必要としない。
【0048】
一実施形態では、プロセスは、バッチプロセスとして実施される。すなわち、1つのフィルムを、一度に、例えば、セルまたは反応チャンバ中で調製することができ、その中で、様々な方法ステップを実施することができる。一実施形態では、この方法は、連続プロセスとして実施される。すなわち、基板は、一つの方法ステップから別の方法ステップに、中断することなく、移動することができる。例えば、最初に、酸化剤コーティングして、次いで、モノマーの蒸気に暴露する。連続プロセスでは、複数のフィルムを同時に調製することができる。
【0049】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度は、実質的に重合ステップの全体にわたって、制御された基板温度に保たれる。
【0050】
一実施形態では、重合ステップは、重合速度を調整するために、連続する処理期間に細分される。
【0051】
一実施形態では、重合ステップは、2つの連続する処理期間を含み、酸化剤コーティングされた基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度は、処理期間のうちの1つを通して制御された基板温度に保たれる。
【0052】
一実施形態では、重合ステップは、2つの連続する処理期間を含み、酸化剤コーティングされた基板および/または酸化剤コーティングされたコポリマーから形成されたポリマーフィルムの温度は、処理期間のうちの1つを通して制御された基板温度に保たれる。
【0053】
一実施形態では、重合ステップは、3つの連続する処理期間を含み、酸化剤コーティングされた基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度は、中間の処理期間を通して制御された基板温度に保たれる。
【0054】
一実施形態では、重合ステップは、3つの連続する処理期間を含み、酸化剤コーティングされた基板および/または酸化剤コーティングされたコポリマーから形成されたポリマーフィルムの温度は、中間の処理期間を通して制御された基板温度に保たれる。
【0055】
基板が制御された基板温度に保たれていない処理期間中、基板温度は、周囲温度、すなわち、重合温度に向かって変化し得る。基板温度が重合温度よりも高い場合には、基板温度を重合温度に向けて冷却し、あるいは、基板温度がそのような処理期間の開始時の重合温度よりも低い場合には、基板温度を重合温度に向けて加熱する。
【0056】
一実施形態では、本出願の方法は、ステップa)の前に基板を洗浄するステップを含む。一実施形態では、基板を、溶媒を用いた超音波処理によって洗浄した。溶媒は、アセトンおよびEtOHなどの有機溶媒、水、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。洗浄ステップは、同じ溶媒または異なる溶媒を用いて繰り返されてもよい。
【0057】
一実施形態では、洗浄された基板は、容積比が5:1:1のH2O:NH4OH(25%):H2O2(30%)の高温溶液に浸漬され、表面に残された有機不純物を除去し、続いて、酸素プラズマ処理が行われる。
【0058】
一実施形態では、酸化剤溶液は、ステップa)で基板の少なくとも1つの表面上にスピンコーティングされる。一実施形態では、酸化剤溶液は、ステップc)で形成されたPEDOT層の少なくとも1つの表面の少なくとも1つの表面上にスピンコーティングされる。一実施形態では、酸化剤溶液は、ステップc)で形成されたコポリマーから形成されたポリマー層の少なくとも1つの表面の少なくとも1つの表面上にスピンコーティングされる。一実施形態では、酸化剤溶液は、800~3500rpmで基板上にスピンコーティングされる。一実施形態では、酸化剤溶液は、基板上に5~30秒間にわたってスピンコーティングされる。
【0059】
一実施形態では、この方法は、ステップb)の前に、ステップa)からの酸化剤コーティングされた非導電性基板を洗浄、乾燥、および/または加熱するステップを含む。一実施形態では、この方法は、ステップd)の前に、ステップc)からのPEDOTフィルムを洗浄、乾燥、および/または加熱するステップを含む。一実施形態では、この方法は、ステップd)の前に、ステップc)からのコポリマーから形成されたポリマーフィルムを洗浄、乾燥および/または加熱するステップを含む。一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板は、80~100℃で加熱される。一実施形態では、ステップc)からのPEDOTフィルムは、80~100℃で加熱される。一実施形態では、ステップc)からのコポリマーから形成されたポリマーフィルムは、80~100℃で加熱される。
【0060】
一実施形態では、この方法は、重合後に50~100℃の温度でPEDOTフィルムをアニールするステップを含む。一実施形態では、この方法は、重合後に50~100℃の温度で、コポリマーから形成されたポリマーフィルムをアニールするステップを含む。PEDOTフィルムまたはポリマーフィルムは、洗浄ステップ中のフィルムの応力破壊を回避するために、アニールすることができる。消費されていない酸化剤およびモノマーのトレースがコンダクタンスを低下させることがあるので、アニールしたPEDOTフィルムまたはポリマーフィルムを洗浄して、未反応の酸化剤、モノマー、および任意の他の不純物を除去することができる。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを、エタノール中で完全に浸漬リンスし、続いて、MeCNによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを乾燥する。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを、乾燥窒素ガス流下で乾燥する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを、エタノール中で完全に浸漬リンスし、続いて、MeCNによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを乾燥する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを、乾燥窒素ガス流下で乾燥する。
【0061】
一実施形態では、この方法は、ステップc)の前に、ステップb)から受け取ったPEDOTポリマーフィルムを洗浄するステップを含む。一実施形態では、PEDOTポリマーフィルムを、重合後に温度50~100℃でPEDOTフィルムをアニールすることによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを、エタノール中で完全に浸漬リンスし、続いて、MeCNによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを乾燥する。一実施形態では、アニールしたPEDOTフィルムを、乾燥窒素ガス流下で乾燥する。
【0062】
一実施形態では、この方法は、ステップc)の前に、ステップb)から受け取ったコポリマーから形成されたポリマーフィルムを洗浄するステップを含む。一実施形態では、コポリマーから形成されたポリマーフィルムを、重合後に温度50~100℃でポリマーフィルムをアニールすることによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを、エタノール中で完全に浸漬リンスし、続いて、MeCNによって洗浄する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを乾燥する。一実施形態では、アニールしたコポリマーから形成されたポリマーフィルムを、乾燥窒素ガス流下で乾燥する。
【0063】
重合時間は、それぞれ形成されたPEDOTフィルムまたはコポリマーから形成されたポリマーフィルムのシート抵抗および粗さ平均などの特性に影響を及ぼすことがある。
【0064】
一実施形態では、重合ステップの持続時間は1~20分である。一実施形態では、重合ステップの持続時間は1~10分である。一実施形態では、重合ステップの持続時間は2~8分である。重合ステップは、速い。
【0065】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の20~80%である。
【0066】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたコポリマーから形成されたポリマーフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の20~80%である。
【0067】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の30~60%である。一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたPEDOTフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の35~40%である。
【0068】
一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたコポリマーから形成されたポリマーフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の30~60%である。一実施形態では、酸化剤コーティングされた非導電性基板および/または酸化剤コーティングされたコポリマーから形成されたポリマーフィルムの温度が、制御された基板温度に保たれる、重合ステップの処理期間の持続時間は、重合ステップの持続時間の35~40%である。
【0069】
一実施形態では、非導電性基板は、ガラスである。一実施形態では、非導電性基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0070】
一実施形態では、酸化剤は、p-トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(FETOS)である。
【0071】
一実施形態では、酸化剤は、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)Fe(OTF)3である。
【0072】
一実施形態では、塩基阻害剤は、ピリジンである。
【0073】
一実施形態では、酸化剤溶液は、n-ブタノール中のFETOSおよびピリジンを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、酸化剤溶液は、酸化剤溶液の容積に対して5重量%~50重量%の割合で酸化剤を含む。
【0074】
本出願は、さらに、導電性PEDOTフィルムに関し、この導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板と、非導電性基板上のPEDOT層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有するPEDOT層とを備え、この導電性PEDOTフィルムは、2100S/cm超の導電率および200Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0075】
本出願は、さらに、本出願の方法によって取得可能な導電性PEDOTフィルムに関し、上記導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板と、上記非導電性基板上のPEDOT層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有する、導電性PEDOT層を備え、上記導電性PEDOTフィルムは、2100S/cm超の導電率および200Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0076】
一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、250Ω/□未満のシート抵抗を有する。一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、240Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0077】
一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、3200S/cm超の導電率および21Ω/□未満のシート抵抗を有する。一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、3200S/cm超の導電率および12Ω/□のシート抵抗を有する。
【0078】
Van der Pauw法を用いてPEDOTフィルムのシート抵抗(rsheet)を計算することができる。フィルムの比抵抗(r)は、シート抵抗に膜厚(d)を乗じることによって、以下の式(1)得られる:
r=rsheetd (1)
【0079】
フィルムの導電率(s)は、以下の式(2)に従って得られる:
s=1/r (2)
【0080】
CVおよびEIS技術は、電気化学的特性の評価に使用することができる。電荷(Q)は、Originソフトウェアで、電位範囲-0.25~0.75Vにおけるサイクリックボルタモグラムの積分により計算する。これは、以下の式を用いて、さらに処理し、容量値を得る。
面積容量: CA=Q/(ΔV*A) (3)
体積容量: CV=Q/(ΔV*V) (4)
ここで、「ΔV」は電位窓で、「A」は面積で、「V」は作用電極の体積である。
【0081】
一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板上に1つ~20のPEDOT層を含む。一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板上に1つ~15のPEDOT層を含む。一実施形態では、導電性PEDOTフィルムは、非導電性基板上に1つ~10のPEDOT層を含む。
【0082】
一実施形態では、導電性PEDOTフィルムの粗さ平均は、3.5nm未満である。
【0083】
PEDOTフィルムの粗さ平均値は、WSXMソフトウェアを用いてAFM画像から得られる。粗さ平均(Ra)は、サンプルの平均高さと、そのそれぞれの単一点の高さの差の平均(絶対値)である。この数は、間隔の範囲によって異なる。それは、PEDOTフィルムがどの程度均一であるか、あるいは粗いかを示す。
【0084】
一実施形態では、550nmにおける導電性PEDOTフィルムの%透過率は、30%T超である。一実施形態では、導電性PEDOTフィルムの%透過率は、80%T超である。
【0085】
Agilent 8453分光光度計を使用して、UV-Visスペクトラムを記録できる。%透過率(%T)は、吸光度データから、以下の式(5)を用いて算出する。
(%T)=(10^(Abs))*100 (5)
【0086】
一実施形態では、PEDOTフィルムの非導電性基板は、ガラスである。一実施形態では、PEDOTフィルムの非導電性基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0087】
一実施形態では、PEDOT層は、非導電性基板上のPEDOT層に埋め込まれたp-トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物(FETOS)からのアニオンを有する。
【0088】
導電性PEDOTフィルムの厚さは、導電性PEDOTフィルムの特性、特に導電性、抵抗、粗さ平均または透過率、あるいはこれらの特性の組合せに従って設計することができる。一実施形態では、PEDOTフィルムの厚さは、10~500nm、または10~300nm、または20~200nmである。
【0089】
本出願は、さらに、モノマーの1つが(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であるコポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムに関し、この導電性ポリマーフィルムは、非導電性基板と、モノマーの1つがEDOTであるコポリマーから形成されるポリマー層であって、上記非導電性基板上でコポリマーから形成される上記ポリマー層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有する、ポリマー層と、を備え、導電性ポリマーフィルムの厚さが10~500nmまたは10~200nmである。
【0090】
一実施形態では、550nmにおけるフィルムの透過率は、10~95%、または20~85%、または30~75%である。
【0091】
一実施形態では、フィルムの面積容量は、0~10mF/cm2、または0.01~9mF/cm2、または0.05~8mF/cm2、または0.2~7mF/cm2、または1~5mF/cm2、または2~4mF/cm2である。一実施形態では、フィルムの面積容量は、0~25mFmF/cm2、または0.01~15mF/cm2、または0.05~10mF/cm2、または0.2~7mF/cm2、または1~5mF/cm2、または2~4mF/cm2である。
【0092】
一実施形態では、フィルムの体積容量は、200~2000F/cm3、または250~1500F/cm3、または300~1200F/cm3、または500~1000F/cm3、または600~800F/cm3である。一実施形態では、フィルムの体積容量は、5000~18000F/cm3、または6000~17500F/cm3、または7000~17000F/cm3である。
【0093】
一実施形態では、フィルムの導電率は、0~3S.cm、または0.01~2S.cm、または0.05~1.5S.cm、または0.1~1.0S.cm、または0.3~0.8S.cm、または0.4~0.6S.cmである.導電率は、フィルムの洗浄の前または後に測定することができる。洗浄後の導電率値は、洗浄ステップ前よりも高いことも、低いこともある。重合温度が低いと、導電率は、洗浄ステップの前が、より低い。重合温度が高いと、導電率は、洗浄ステップの後に、より低くなる。
【0094】
円筒形の四点プローブヘッドを備えたJandelモデルRM3000+を使用して、PEDOTコポリマーフィルムのシート抵抗(rsheet)値を取得した。一実施形態では、フィルムのシート抵抗は、1~80MΩ/□、または2~70MΩ/□、または5~50MΩ/□、または10~40MΩ/□、または15~30MΩ/□である。一実施形態では、フィルムのシート抵抗は、0.01~2MΩ/□、または0.05~1.5MΩ/□、または0.08~1.1MΩ/□、または0.2~1.1MΩ/□、または0.6~1MΩ/□である。シート抵抗は、フィルムの洗浄の前に測定しても、後に測定してもよい。洗浄後のシート抵抗値は、洗浄ステップ前よりも高いことも、低いこともある。
【0095】
本発明は、さらに、コポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムに関し、この導電性ポリマーフィルムは、上記コポリマーのモノマーの1つが、本出願の方法によって取得可能な(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)であり、非導電性基板と、モノマーの1つがEDOTであるコポリマーから形成されるポリマー層であって、上記非導電性基板上のコポリマーから形成される上記ポリマー層に埋め込まれた1つ/複数の酸化剤からのアニオンを有する、ポリマー層と、を備え、上記導電性ポリマーフィルムの厚さが10~500nmまたは10~200nmである。
【0096】
一実施形態では、モノマーの1つが請求項34~35のいずれか一項に記載のEDOTであるコポリマーから形成される導電性ポリマーフィルムは、非導電性基板上に1つ~20または1つ~15のポリマー層を含む。
【0097】
一実施形態では、導電性ポリマーフィルムは、EDOTおよびアズレンから形成される。一実施形態では、導電性ポリマーフィルムは、EDOTおよびピロールから形成される。一実施形態では、導電性ポリマーフィルムは、EDOTおよびチオフェンから形成される。一実施形態では、導電性ポリマーフィルムは、EDOTおよびフェニレンから形成される。導電性ポリマーフィルムはまた、EDOTと、アズレン、ピロール、アニリン、チオフェン、およびフェニレンからなる群から選択されるモノマーの少なくとも1つとから形成することができる。
【0098】
本出願は、さらに、本出願の導電性PEDOTフィルムを含む電子デバイスに関する。
【0099】
本出願は、さらに、本出願のコポリマーから形成された導電性ポリマーフィルムを含む電子デバイスに関する。
【0100】
一実施形態では、電子デバイスは、ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)などの光電子デバイス、有機太陽電池、色素増感太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、スマートウィンドウ、燃料電池、有機電気化学トランジスタ、電気化学トランスデューサ、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロルミネセントデバイス、エレクトロルミネセントディスプレイ、有機キャパシタ、スーパーキャパシタ、センサ、バイオセンサ、エネルギーハーベスティングデバイス、帯電防止材料、光起電デバイス、ストレージデバイスまたは熱電デバイスである。一実施形態では、電子デバイスは、光電子デバイスである。一実施形態では、電子デバイスは、透明電極である。一実施形態では、電子デバイスは、スーパーキャパシタである。
【0101】
本出願はさらに、電子デバイス内/電子デバイスの帯電防止コーティングまたは電極としての、本出願の導電性PEDOTフィルムの使用に関する。
【0102】
本出願はさらに、電子デバイス内/電子デバイスの帯電防止コーティングまたは電極としての、本出願のコポリマーから形成された導電性ポリマーフィルムの使用に関する。
【0103】
本出願の方法は、大気圧制御された重合のために、シンプルで、低コストで、迅速であるという付加的な有用性を有する。さらに、本出願の方法は、ナノメートルスケールで薄い多層PEDOTフィルムまたはコポリマーから形成された導電性ポリマーフィルムを製造するという付加的な有用性を有する。さらに、この方法は、広い表面積に使用することができ、導電性基板に限定されない。本出願のPEDOTフィルムまたはコポリマーから形成された導電性ポリマーフィルムは、非常に均一で均質であり、滑らかで可撓性であるという付加的な有用性を有する。さらに、本出願のPEDOTフィルムまたはコポリマーから形成された導電性ポリマーフィルムは、高い導電率および透過率を有するという付加的な有用性を有する。
【実施例】
【0104】
次に、様々な実施形態を詳細に参照し、その一例を添付の図面に示す。
【0105】
以下の説明は、当業者が本開示に基づく実施形態を利用することができるように、詳細でいくつかの実施形態を開示する。実施形態の全てのステップまたは特徴が詳細に論じられるわけではなく、ステップまたは特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者には明らかであろう。
【0106】
簡潔にするために、以下の例示的な実施形態では、構成要素を繰り返す場合には、アイテムの番号が保たれる。
【0107】
図1は、気相重合を実施するための気相重合セルを示す。重合セル1は、基板4および金属ブロック5のためのスタンド3を有する。モノマー蒸気6の温度を重合温度に保つために、恒温槽7が重合セル1に取り付けられている。恒温槽8は、基板4の温度を制御された基板温度に保つために、金属ブロック5に取り付けられている。重合セル1は、重合セル1を閉じるために使用されるリード2を含む。
【0108】
図6および
図7は、本出願に記載される一実施形態による、可撓性基板(
図6)および剛性基板(
図7)のための連続VPPプロセスのためのセットアップを示す。酸化剤10を含む溶液を、ロールツーロール技術によって基板4上に堆積し、続いて、酸化剤11を乾燥させ、炉の中で、あるいはヒータ12を用いて予熱する13。次のステップでは、酸化剤で覆われた基板4を、重合チャンバまたはセル1の中でモノマー蒸気に暴露する。ローラの速度は、基板がチャンバの中で費やす時間を決定する。基板または堆積表面の温度を、ヒータ/温度コントローラ14によって制御する。次に、フィルムをアニールし15、続いて、溶媒を洗浄する16。最後に、フィルムを(窒素ガスで)乾燥し17、フィルム18で覆われた基板を得る。
【0109】
図8は、本出願に記載された一実施形態に従って、VPPを実行するためのスケールアップされたVPPセルを示す。重合セル1は、基板4と、基板用のヒータ/温度コントローラ14とを含む。加熱コイル19は、セル内のモノマーを気化させ、それを所望の重合温度に加熱するために使用される。セルは、さらに、蒸気ホモジナイザ20と、重合セル1を閉じるための調整可能なリード線2とを含む。ホモジナイザは、基板4の表面上に蒸気を均質に分布させる。重合セルにおける基板4の高さなどの位置は、基板サイズおよびセルサイズに基づいて調整することができる。高さは、ヒータ/温度コントローラ14を昇降させることによって、VPPセル内で制御することができる。
【0110】
(実施例1:PEDOTフィルムの調製)
ガラススライド(基板)(37.5mm×25mm)を、それぞれアセトン、水およびEtOHで5分間にわたって超音波処理して洗浄した。洗浄した基板を、容積比が5:1:1のH2O:NH4OH(25%):H2O2(30%)の高温溶液(80℃)に5分間にわたって浸漬し、表面に残った有機不純物を除去した後、5分間にわたって酸素プラズマ処理した。酸化剤溶液60μLを1450rpmで20秒間にわたって基板上にスピンコーティングした。酸化剤コーティングした基板を、90℃のホットプレート上で90秒間乾燥した。乾燥した基板を、コーティングされた表面が蒸気に面するように、75℃で予熱したEDOTモノマー6を含むセル1に移した。重合を3つの異なるステップで4分間にわたって行った。最初の90秒間にわたって、セル1をガラス蓋2で覆った。その後、セル1の覆いを外し、次の90秒間にわたって、加熱された金属ブロック5によって、基板温度を65℃に保った。金属ブロック5を除去し、セル1をガラス蓋2で60秒間にわたって覆った。フィルムのアニールは、90℃のホットプレート上で90秒間にわたって重合した後に行った。アニール後、フィルムを室温まで冷却し、エタノール、続いてMeCN中で十分にすすぎ、未反応の酸化剤、モノマーおよび任意の他の不純物を除去した。洗浄を行って、消費されていない酸化剤およびモノマーのトレースを除去した。洗浄しなければ、コンダクタンスを低下させることもあるからである。洗浄後、フィルムを乾燥窒素ガス流下で乾燥させた。この手順をスピンコーティングするステップから繰り返し、ガラス基板4上に1層~6層のPEDOT(1L~6LのPEDOT)を調製した。セル1および金属ブロック5の温度は、恒温槽7、5によって制御した。
【0111】
酸化剤溶液の量は、50~120μLの間で変化し得る。酸化剤溶液の量は、基板のサイズに応じて変えることができる。
【0112】
PEDOTフィルムのシート抵抗値および表面形態を、VPP法のパラメータを変化させることによってモニターした。この方法の残りのパラメータは、一度に1つの特定のパラメータをモニターしながら一定に保った。重合は、VPPセル温度をモニターすることで、重合温度であるセル1内の温度を55℃、65℃、75℃、85℃に保って、重合時間には2分、4分、6分および8分を用いて、PEDOTフィルムを調製した。VPPセル温度および重合時間をモニターしたものの、基板温度は、制御しなかった。PEDOTフィルムは、45℃~75℃の異なる基板温度で調製した。金属ブロック5の温度を制御して、基板温度を変化させた。PEDOTフィルムのアニールは、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、および110℃で行った。
【0113】
(特性評価)
Renishaw社製のQontor inViaラマン顕微鏡を使用して、ラマンスペクトル(785nm励磁)を記録した。Agilent8453(最大1000nmまで)およびCary 5E分光光度計(VARIAN)(最大2400nmまで)を用いて、UV-Vis-NIR測定を記録した(バックグラウンド補正は、コーティングされていない顕微鏡ガラススライドを用いて行った)。Van der Pauw法を用いて、1L~6LのPEDOTのシート抵抗(rsheet)を計算した。抵抗値は、四点プローブ(一辺a=2.2mmの正方形)およびKeithley社製マルチメーター(モデル2000)を用いた3つの測定値の平均として記録した。フィルムの比抵抗(r)と導電率(s)は、式(1)と式(2)から算出した。
【0114】
AFM測定は、室温にて、タッピングモードで作動するVeeco社製diCaliber走査型プローブ顕微鏡を用いて行った。Bruker社製TESP-MTプローブ(共振周波数320kHz、ばね定数42N/m、長さ125μm、幅30μm、カンチレバー仕様:0.01~0.025Ωcmアンチモン(n)ドープシリコン、厚さ4μm、先端仕様:高さ10~15μm、半径8nm)を使用して、全てのAFM画像を記録した。WSXMソフトウェアを用いて、PEDOTフィルムの平均粗さ(粗さ平均(Ra))を決定した。
【0115】
CVおよびEIS技術を、電気化学的特性決定のために使用した。CV測定は、0.1MのTBA-BF4/MeCNを用いて、従来の三極構成で行った。異なる数のPEDOT層で覆われたガラススライド上のVPP調製PEDOTフィルムを作用電極として使用した。作用極の面積は、1.13cm2であった。Ag/AgClワイヤおよび白金ワイヤを、それぞれ基準電極および対電極として使用した。Ag/AgCl基準電極は、フェロセンレドックス対(E1/2(Fe/Fe+)=0.47V)を用いた電気化学的測定の前後で較正した。サイクリックボルタモグラムは、Metrohm Autolab社製ポテンショスタットPGSTAT101を用いて、1L~6LのPEDOTについて、掃引速度100mV/sで-0.25V~0.75Vの電位範囲で記録した。電荷(Q)は、Originソフトウェアで、電位範囲-0.25~0.75Vにおけるサイクリックボルタモグラムの積分により計算する。これは、式(3)および(4)を使用して、さらに処理し、容量値を得る。
【0116】
(結果)
PEDOTフィルムのシート抵抗および粗さ平均に対する重合温度の影響を表1に示す。
【0117】
【0118】
PEDOTフィルムのシート抵抗および粗さ平均に対する基板温度の影響を表2に示す。
【0119】
【0120】
重合温度は、モノマー(反応物)の揮発速度、高分子鎖の移動度、導電率、および形態を制御することによって、得られるPEDOTフィルムの特性、例えば、重合速度に影響を及ぼす因子である。PEDOTフィルムの粗さ平均(Ra)は、VPPセル1の温度の上昇とともに増加した(表1)。この粗さ平均の増加は、高温で高濃度の蒸気が、基板の表面の蒸気を強制的に凝縮するためである。調製されたPEDOTフィルムは、非常に均一で均質であった。
【0121】
PEDOTフィルムの粗さ平均は、基板温度が上昇すると、減少した(表2)。この現象は、モノマー蒸気が低温で急速に凝縮し、その結果、フィルムの均一性が低下するためである。温度が上昇するにつれて、凝縮速度は低下し、より均一な膜形成をもたらす。同じ挙動は、また、65℃までの基板温度の上昇に伴って、PEDOTフィルムのシート抵抗が低下することを説明する。シート抵抗は、75℃で調製されたフィルムについて増加したが、これは、基板温度が高いので、モノマー蒸気の堆積が少ないためである。
【0122】
PEDOTフィルムのシート抵抗および粗さ平均に対する重合時間の影響を表3に示す。
【0123】
【0124】
PEDOTフィルムは、異なる重合時間、すなわち、2分、4分、6分、および8分で調製した。6分間の間に調製されたPEDOTフィルムは、粗さ平均値が最も小さく、4分間の重合時間で調製されたPEDOTフィルムは、シート抵抗が最も低かった(表3)。シート抵抗は、アニール後に、低下した。60℃、70℃、80℃、90℃でアニールしたフィルムは、全て同様なシート抵抗を示した。アニール温度の範囲が60℃~90℃で、シート抵抗が低下するので、硬化および重合プロセスの完了が保証される。
【0125】
(多層PEDOTフィルムの特性評価)
図2は、6層PEDOTフィルムのラマンスペクトルを示す。577、699、989、1095、1255、1367、1415、および1530cm
-1のバンドは、それぞれ、オキシエチレン環変形、対称C-S-C変形、オキシエチレン環変形、C-O-C変形、C
α-C
α’環間伸縮、C
β-C
β’伸縮、対称C
α=C
β(-O)伸縮、およびC
α=C
β伸縮に割り当てられる。
【0126】
図3では、1Lは1層のPEDOT、2Lは2層のPEDOT、3Lは3層のPEDOT、4Lは4層のPEDOT、5Lは5層のPEDOT、6Lは6層のPEDOTのAFM画像を示し、1L、3Lおよび6LはPEDOTのSEM画像を示す。
図3は、1L~6LのPEDOTのAFM画像と、1L、3Lおよび6LのSEM画像を示し、フィルムの性質が非常に均一で均質なシート状である。光電子工学に使用される材料は、高い表面平滑性を備えている必要がある。AFM画像と粗さ平均値(表4)から、1LのPEDOTでは1nmを超えず、6LのPEDOTでは4nmを越えないことが観察できる。これは、表面粗さがわずかに増加しても、均一で均質なシート状の性質は、追加の層の増分に影響されなかったことを示す。厚さ測定は、PEDOTフィルムの大きな走査面積にわたって複数の測定の平均で検証した。1LのPEDOTは、導電率が2178S/cmで、6LのPEDOTは、最大値の3208S/cmである(表4)。酸化剤としてFETOSを用いて調製された気相重合PEDOTフィルムは、面内導電率を増加させる密に充填された大きな導電性領域を形成する。シート抵抗は、1LのPEDOTでは194.56Ω/□だが、6LのPEDOTでは20.55Ω/□まで低下する(表4)。2LのPEDOTでは、1LのPEDOTからシート抵抗が57.7%低下したが、厚さの増加に起因して、ほぼ同じ導電率を示した。3LのPEDOTでは、2LのPEDOTからシート抵抗が35.4%低下したが、導電率は、わずかに増加した。3LのPEDOTから6LのPEDOTへ進むときのシート抵抗の低下は、ほぼ線形であるが、3LのPEDOTと4LのPEDOTとは、ほぼ同じ導電率の値を示す。1LのPEDOTから6LのPEDOTへ進むと、シート抵抗が低下し、コンダクタンスが増加することも、また電荷が層から層へ高速で移動したことを示す(表4)。これは、異なる層にわたるポーラロンおよびポーラロン対またはバイポーラロンPEDOT鎖の効率的な非局在化によって促進される。この拡張された共役は、フィルムを横切るより速い電荷/電子移動を可能にする。
【0127】
表4は、VPPで製造された1~6層のPEDOTフィルムの層数(L)、厚さ(d)、シート抵抗(rsheet)、導電率(s)、面積容量(CA)、体積容量(Cv)、パーセント透過率(%T)、粗さ平均(Ra)を示す。
【0128】
【0129】
導電性のポーラロン理論によれば、電子移動は、ポリマー鎖に沿ったポーラロンおよびバイポーラロン/ポーラロン対の動作を通して生じ、二重結合および単結合の再編成を伴う。ドーピングレベルが増加すると、導電率が増加する。
【0130】
表4から分かるように、PEDOTの単一の層は、非常に透明である。
【0131】
図4は、1L~6LのPEDOTのサイクリックボルタモグラム(掃引速度は100mV/sで、MeCN中に0.1MのTBABF
4を含む)を示す。
【0132】
図5は、ガラス上と、6mMのフェロセン溶液中でITOコーティングされたガラス上の1LのPEDOTのサイクリックボルタモグラムを示し、その掃引速度は、20mV/sである。
【0133】
図4において、矩形形状のサイクリックボルタモグラムは、可逆的で効率的な充放電プロセスを示す。表4は、PEDOTフィルムの各層で容量値の増加があることを示している。6層のフィルムは、10.67mF/cm
2(面積容量)および703.58F/cm
3(体積容量)の容量値を示した。
図5において、PEDOTの単一層のサイクリックボルタモグラムを、6mMフェロセン溶液中の裸のITOコーティングガラスと比較する。ピーク電位の差から、PEDOTは、ITOコーティングガラスよりも60mV小さい必要がある。計算による電荷値は、1LのPEDOTおよびITOコーティングガラスについて、それぞれ42.93mCおよび36.48mCである。これは、ITOコーティングガラスと比較すると、PEDOTの表面積が大きいことによって説明することができる。全体として、1LのPEDOTのフェロセン応答は、ITOコーティングガラスよりも優れている。
【0134】
1層および複数層のPEDOTフィルムは透明性が高く、表面積が広く、導電性が高く、表面粗さが非常に小さいので、光電子デバイスおよびITOコーティング材料の代替としての使用が可能になる。
【0135】
当業者には、技術の進歩に伴い、基本概念を様々な方法で実施することができることが明らかである。したがって、実施形態は、上述の例に限定されず、代わりに、特許請求の範囲内で変更することができる。
【0136】
上述の実施形態は、互いに任意の組合せで使用することができる。いくつかの実施形態を一緒に組み合わせて、さらなる実施形態を形成することもできる。本明細書で開示される方法、導電性PEDOTフィルム、電子デバイス、または使用は、本明細書で前述した実施形態のうちの少なくとも1つを含むことができる。上記の利益および利点は、1つの実施形態に関連し得るか、あるいは複数の実施形態に関連し得ることが理解される。実施形態は、記載された問題のいずれか、または全てを解決するもの、または記載された利益および利点のいずれか、または全てを有するものに限定されない。さらに、「1つの(an)」アイテムへの言及は、それらのアイテムのうちの1つまたは複数を指すことを理解されたい。「含む」という用語は、本明細書において、1つまたは複数の追加の特徴または行為の存在を除外することなく、その後に続く特徴または行為を含むことを意味するために使用される。
【0137】
(実施例2;PEDOTフィルムの調製)
80μLの酸化剤溶液を基板上に2400rpmで20秒間にわたって、スピンコーティングしたことを除き、実施例1について上述した手順に従った。
【0138】
表5は、最初に、基板温度(ほぼ室温)および重合時間(4分)を一定に保ちながら重合温度(セル温度)を変化させ、次いで、重合温度(75℃)および重合時間(4分)を一定に保ちながら基板温度を変化させ、最後に、重合温度(75℃)および基板温度(ほぼ室温)を一定に保ちながら重合時間(2~8分)を変化させることによって調製された1層PEDOTフィルムの粗さおよびシート抵抗の変化を説明する。全てのフィルムは、80μLの酸化剤溶液を用いて調製した。酸化剤を2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90℃で90秒間にわたって乾燥させた。アニールは、90℃で90秒間にわたって行った。フィルムは、アセトニトリルで洗浄し、窒素ガス流下で乾燥した。
【0139】
【表5】
*円筒形の四点プローブヘッドを備えたJandelモデルRM3000+を使用して、シート抵抗値を取得した。
15層のPEDOTフィルムのシート抵抗は、4~6Ω/□である。
【0140】
(実施例3:PEDOTフィルムの調製)
異なるスピン速度、酸化剤の量、酸化剤放出時間および全スピン時間を用いたことを除き、実施例1について上述した手順に従った。
【0141】
表6は、異なるスピン速度、酸化剤の量、酸化剤放出時間、および全スピン時間を用いて調製したPEDOTフィルムのシート抵抗および%透過率の変化を記載する。
【0142】
【表6】
*円筒形の四点プローブヘッドを備えたJandelモデルRM3000+を使用して、シート抵抗値を取得した。
【0143】
(実施例3:コポリマーで形成されたポリマーフィルムの調製)
ポリマー層は、モノマーの1つがEDOTであり、追加のモノマーがアズレンであるコポリマーから形成されたことを除き、実施例1および2について上述した手順に従った。両方のモノマーを基板に同時に暴露した。実施例中のパラメータおよび結果を、表7に関連して以下に論じる。
【0144】
表7は、モノマーが異なる酸化剤を用いて調製されたEDOTおよびアズレンであるコポリマーから形成されたポリマー層を含むフィルムのシート抵抗、透過率および粗さの値を記載する。全てのフィルムは、80μLの酸化剤溶液を用いて調製した。酸化剤を2400rpmのスピンコーティング速度で、基板上にスピンコーティングした。酸化剤層は、90℃で90秒間にわたって乾燥させた。エントリ1および2で、1層当たりの重合時間は4分であり、重合温度(セル温度)は65℃であった。アニールは、全てのフィルムについて行った。フィルムは、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。エントリ1および2の基板温度は、55℃であった。全てのシート抵抗値は、フィルム調製直後に測定される。
【0145】
表7:異なる酸化剤を用いて調製した1LのCOPOLフィルムのシート抵抗値および粗さ値
【表7】
*エントリ1~3の層数は1つ(1L)で、酸化剤濃度は240mMであった。
*円筒形の四点プローブヘッドを有するJandelモデルRM3000+を使用して、シート抵抗値を取得した。
【0146】
PEDOTから形成されたポリマー層も、酸化剤として鉄トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)Fe(OTF)3を使用し、重合温度75℃で調製したことを除き、上記と同様の手順を用いて調整した。
【0147】
表8:1LのCOPOL(240mM、CuCl2)の電気化学的特性評価
【表8】
*アセトニトリル中で0.1MのTBABF
4(テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート)を電解質溶液として使用する。掃引速度=50mV/s。
【0148】
最初に、PEDOTの1つの層を調製し、次いで、1層のPAzを調製することによって、層間技術によってポリマーを作製することも可能であり、この層形成を続けることさえ可能である。また、PAzおよびPEDOTを上にして層ごとに開始することも可能であり、ここでも連続的な層形成を行うことができる。