(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ガスリークの相対位置を特定する方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20240213BHJP
G01M 3/04 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G01M3/20 L
G01M3/04 M
(21)【出願番号】P 2020561672
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2019061245
(87)【国際公開番号】W WO2019211378
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】102018206877.1
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ルース・マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェツィヒ・ダニエル
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501919(JP,A)
【文献】特表2011-511294(JP,A)
【文献】特開2007-192748(JP,A)
【文献】特開昭54-128391(JP,A)
【文献】特表2004-515777(JP,A)
【文献】特表2005-513415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0240493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嗅気型漏洩検出器(10)に対するガスリークの相対的方向を特定する方法であって、
前記嗅気型漏洩検出器(10)は、
スニッファプローブおよび試験ガス入口(12)を有するハンドピース(44)と、
前記ハンドピース(44)において前記試験ガス入口(12)から離れた位置に設けられた基準ガス入口(14)と、
ガス分析器(16)と、
切換バルブ(20)と、を備え、
前記切換バルブ(20)は、前記試験ガス入口(12)を介して吸引されたガスまたは基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスが前記ガス分析器(16)により分析されるように、前記試験ガス入口(12)を前記ガス分析器(16)に、および前記基準ガス入口(14)を前記ガス分析器(16)にガス導通可能に交互に接続するように構成されており、
前記方法は、
a)前記試験ガス入口(12)を介して吸引されたガスを前記ガス分析器(16)に供給するステップと、
b)前記ガス分析器(16)に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を測定するステップと、
c)前記切換バルブ(20)を切り換えるステップと、
d)前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスを前記ガス分析器(16)に供給するステップと、
e)前記ガス分析器(16)に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を分析するステップと、
f)前記ステップb)に従って測定された前記試験ガス濃度と前記ステップe)に従って測定された前記試験ガス濃度との差から差信号を生成するステップと、
g)前記ハンドピース(44)の空間的アライメントを変更するステップと、
h)前記ステップa)からf)を繰り返すステップと、
i)前記ステップf)による前記差信号と比較して、前記ステップh)後に前記差信号が変化したかを判断するステップと、
j)前記差信号の変化により、前記ハンドピース(44)のアライメントに対する位置特定対象のガスリークの相対方向を推定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の方法において、前記ステップg)の間、前記ハンドピース(44)の位置を変更しない、方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の方法において、前記差信号が最小または最大となるまで前記ステップa)~i)を繰り返す、方法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法において、前記ステップa)と前記ステップd)との間で、前記スニッファプローブの空間的アライメントを変更しない、方法。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法において、前記ステップa)~i)を行う間、前記ステップc)に従って前記切換バルブ(20)を、少なくとも1H
zの切換え頻度で切り換える、方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法において、前記差信号が最大または最小であるとき、前記ハンドピース(44)のアライメントを
、位置特定対象のリークの相対位置の指標として評価する、方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法において、前記差信号が最大または最小であるとき、位置特定対象のリークが、前記試験ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)を通る幾何学的軸心上に位置していると推定する、方法。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法において、前記差信号が実質的にゼロまたはゼロに等しいとき、位置特定対象のリークが、前記試験ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)を含む軸心に対して横方向にある幾何学的軸心上に位置していると推定する、方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法において、前記嗅気型漏洩検出器の位置および前記位置の変化の一方または両方を、位置センサおよび加速度センサの一方または両方により検出し、前記リークの位置を特定する際に考慮する、方法。
【請求項10】
請求項1か
9のいずれか一項に記載の方法において、前記ステップa)~i)の少なくとも1つを行う間、前記嗅気型漏洩検出器(10)の位置を検出し、前記位置の時間的経過を記録し、求められた前記差信号と相関させる、方法。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法において、前記ステップa)~i)の少なくとも1つを行う間、前記嗅気型漏洩検出器(10)のユーザに対して、前記差信号および前記差信号の変化の一方または両方を表示する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅気型漏洩検出器(Schnueffellecksucher)に対するガスリークの相対的な空間位置または方向を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅気型漏洩検出は、例えば、特許文献1にガス検出方法として記載されている。典型的には、嗅気型漏洩検出器は、分析対象のガス(試験ガス)が吸引される試験ガス入口と、比較用の基準ガスとして周辺環境からのガスが吸引される基準ガス入口とを備える。通常、嗅気型漏洩検出器の真空ポンプがガスを吸引するために機能する。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、試験ガス入口および基準ガス入口がいずれもスニッファプローブ(Schnueffelsonde)のスニッファチップの先端に設けられると記載されている。スニッファチップはハンドガイド装置(ハンドピース)の構成要素である。
【0004】
ガス調節バルブ(Gasmodulationsventil)は、試験ガス入口と基準ガス入口とをガス分析器に接続する。試験ガス入口は、試験ガス導管を介してガス調節バルブに接続されている。基準ガス入口は、基準ガス導管を介してガス調節バルブに接続されている。ガス調節バルブは、ガス導通可能にガス分析器に接続されている。ガス調節バルブは、試験ガス導管と基準ガス導管との間を切り換えることで、試験ガス入口または基準ガス入口をガス分析器に交互に接続する切換バルブである。これにより、ガス調節バルブの切換状態に応じて、試験ガス入口から吸引されたガスと、基準ガス入口から吸引されたガスとが交互にガス分析器に供給される。
【0005】
特許文献1では、ガス分析器は、分析対象のガスが吸引される入口を有する試験キュベットを備える赤外線ガス分析器である。ガスは試験キュベットの出口から排出される。赤外線光源が放射する赤外線は試験キュベットを通過し、反対側の端において赤外線検知器により受光される。
【0006】
通常、上記の種類の嗅気型漏洩検出器は高感度を実現するように構成されている。試験ガス入口と基準ガス入口との間の切換えは、試験ガスの測定信号から、周囲雰囲気に含まれる試験ガスまたは妨害ガスの量を計算上なくすことを目的とする。試験ガスとは、分析されたガス量中で特定されるガス(例えば、リークにより漏洩し検出が必要となるガス)である。
【0007】
しかしながら、嗅気型漏洩検出においては、分析されたガス中の少量の試験ガスを検出するために高感度のガス分析が望ましいだけでなく、多くの場合、リークが想定される大きな領域内における速やかなオリエンテーションが可能であることも望ましいといえる。このようなことは、従来の信号分析において感度を向上させることによってでは実現できない。
【0008】
工業的な漏洩試験では、多くの場合、リークの位置特定のためにスニッファプローブが用いられ、スニッファプローブは空気を吸引し検知システムを通して空気を案内する。測定入口において吸引された空気流が検知システムを通して連続的に案内される装置と、2つの異なる入口の間で空気流がバルブにより切り替えられる装置とが存在する。後者の装置は、対応する入口開口における混合気体の濃度を絶え間なく比較することができる。また、試験ガス入口からの信号と、基準ガス入口からの信号との差を求めることにより、漏洩速度信号が生成される。この方法はガススイッチング調節(Gaswechselmodulation)と称される。測定プローブにより吸引された試験ガスが、ガスで加圧された状態の、リークを有する被験体から漏洩している場合、空気および試験ガスの混合気の濃度に応じた測定信号が生成される。ガススイッチング調節の間、この混合気の濃度が両ガス流において同一である場合、漏洩速度は測定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO02/48686A2
【文献】WO2009/098302A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、本発明の目的は、手持ち式嗅気型漏洩検出器に対するガスリークの空間的方向性(raeumlichen Richtung)を速やかに特定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る方法は、請求項1により定義される。
【0012】
よって、嗅気型漏洩検出器に対するガスリークの相対的方向(rilativen Richtung)を特定するために、
a)前記試験ガス入口を介して吸引されたガスを前記ガス分析器に供給するステップと、
b)前記ガス分析器に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を測定するステップと、
c)前記切換バルブを切り換えるステップと、
d)前記基準ガス入口を介して吸引されたガスを前記ガス分析器に供給するステップと、
e)前記ガス分析器に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を分析するステップと、
f)前記ステップb)に従って測定された前記試験ガス濃度と前記ステップe)に従って測定された前記試験ガス濃度との差から差信号を生成するステップと、
g)前記ハンドピースの空間的アライメント(raeumlichen Ausrichtung)を変更するステップと、
h)前記ステップa)からf)を繰り返すステップと、
i)前記ステップf)による前記差信号と比較して、前記ステップh)後に前記差信号(Differenzsignal)が変化したかを判断するステップと、が行われる。
【0013】
ステップa)~e)は、差信号が最小または最大となるまで繰り返すことが好ましい。前記試験ガス入口を介して吸引されたガス中の試験ガス濃度と、前記基準ガス入口を介して吸引されたガス中の試験ガス濃度との差がほぼゼロである場合、前記試験ガス入口からリークまでの距離と、前記基準ガス入口からリークまでの距離とはほぼ等しい。差信号が最大である場合、前記基準ガス入口からリークまでの距離と比較して前記試験ガス入口からリークまでの距離が特に小さい。前記試験ガス入口がスニッファチップの前側の先端に設けられ、前記基準ガス入口がハンドピースの後端に設けられている場合、差信号が最大であれば、前記スニッファチップはガスリークの方を向いており、差信号が最小であれば、ガスリークとは反対方向を向いている。
【0014】
好ましくは、当該リークに対する前記試験ガス入口および前記基準ガス入口のそれぞれの距離を変化させないように、ステップa)およびd)を行う間、前記スニッファプローブの空間的アライメントは変更するべきではない。
【0015】
差信号の変化により、位置特定されるリークのハンドピースに対する相対的方向を推定することができる。特に、差信号が最大または最小である場合、前記ハンドピースのオリエンテーションは、位置特定されるリークのハンドピースに対する相対位置または方向の指標として評価することもできる。前記試験ガス入口がスニッファチップに設けられ、前記基準ガス入口がハンドピースの後端に設けられている場合、例えば、上記のとおり、差信号が最大のとき、前記スニッファチップはリークの方向を向いている。差信号が最小のとき、前記スニッファチップはリークとは反対方向を向いており、前記ハンドピースの後端が同リークに面している。
【0016】
本発明によると、試験ガス中の試験ガス量は、基準ガス中の試験ガス量と比較される。これら2つの信号の差を求め、前記嗅気型漏洩検出器または前記ハンドピースの空間的アライメントを変化させる際の差信号の変化を監視することにより、前記ハンドピースまたは前記嗅気型漏洩検出器のアライメントに対するリークの空間的位置または方向を検出することができる。この差信号が最大または最小である場合、前記ハンドピースがリークの方向もしくはその反対方向を向いているということ、または試験ガス入口および基準ガス入口を含む幾何学的軸心上に位置しているということを推定することができる。
【0017】
方法ステップg)に従って前記ハンドピースの空間的アライメントを変更する際には、前記ハンドピースの空間的アライメントの変化に対して、前記ハンドピースの位置および特に前記ハンドピースと前記位置特定対象のリークとの間の距離が変化しないように、または無視できる程度にしか変化しないようにするべきである。「空間的アライメント」とは、空間においてハンドピースが向いている方向、または、試験ガス入口および基準ガス入口を通る幾何学的軸心が向いている方向を指す。
【0018】
測定ガス入口と基準ガス入口との間が空間的に十分に大きく離間(少なくとも10cm、より良好には50cm、好ましくは100cm)していることにより、測定セルにおける冷媒勾配に応じて差信号が増大するので、ガススイッチング調節(Gaswechselmodulation)および空間内を移動する際の差信号の観察により、冷媒雲(Kaeltemittelwolken)におけるリークの大まかな位置特定が可能である。このため、前記測定ガス入口をグースネック(Schwanenhals)の先端に設け、前記基準ガス入口をハンドルの下部に設けることが望ましい。十分に大きな入口距離を設けた相対測定により、装置を回転させるだけで濃度勾配(差信号)を検出することができ、これにより大まかな方向を特定することで、ユーザをさらに速やかに冷媒雲の漏洩元へと案内することができる。負の差信号は、リークが当該装置の後ろ側に面する位置にあることを示す。測定ガスと基準ガスとの間の切換え頻度は、前記漏洩検出器の移動および冷媒雲の移動を空間内でマッピングするために十分に高い頻度(少なくとも1Hz、より良好には10Hz、好ましくは約100Hz)とする必要がある。
【0019】
数値またはグラフで差信号を表示し、これを観察することで、ユーザは空間内における予備的な位置特定を行うことができる。前記漏洩検出器の移動と相関する時間的経過を図示することにより、位置特定がさらに簡易となる。位置センサを用いることで、ユーザによる冷媒雲の位置の分析をソフトウェアにより補助し、予測される漏洩元の方向を直接示すことができる。
【0020】
リークを有するシステム(冷媒雲の漏洩元としてその近傍において冷媒濃度が最も高くなる)を適切に特定した後は、当該システムにおいてリークの位置特定をすることができる。これを行うために、前記バルブは測定ガス位置で保持されて、ガススイッチング調節を行わない、確立された連続位置特定モードに切り換えられる。
【0021】
求めた差信号がおよそゼロである(実質的にゼロまたはゼロに等しい)場合、位置特定対象のリークは、前記試験ガス入口と前記基準ガス入口とを含む軸心に対して横方向にある幾何学的軸心上に位置していると推定される。このとき、位置特定対象のリークは嗅気型漏洩検出器の真横に位置している。
【0022】
また、加速度センサ(Beschleunigungssensor)および/または位置センサ(Lagesensor)を用いて嗅気型漏洩検出器の位置を検出し、前記位置特定対象のリークの相対位置または方向を特定する際にこれを考慮することもできる。これを行うために、前記嗅気型漏洩検出器の位置/方向の時間的経過または位置/方向の変化を記録して、得られた差信号と相関させることができる。さらに、前記嗅気型漏洩検出器のユーザに対して差信号またはその変化を表示することができる。例えば、信号またはその変化をディスプレイに表示および/または音響的に再生することができる。
【0023】
以下において、図面に言及しつつ、本発明の例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1の例示的な実施形態において、嗅気型漏洩検出器は、試験ガス入口12と、基準ガス入口14とを備える。本発明で用いられるガス分析器は、吸光キュベット18を備える赤外線吸収分析器である。
【0026】
嗅気型漏洩検出器10は、さらに、第1の導管22を介してガス分析器16(つまり、キュベット18)に接続された切換バルブ20を備える。試験ガス入口12は、試験ガス導管24を介して切換バルブ20に接続されている。基準ガス入口14は、基準ガス導管26を介して切換バルブ20に接続されている。切換バルブ20は、試験ガス導管24または基準ガス導管26を第1の導管22およびこれによりガス分析器16に接続して、基準ガス入口14と試験ガス入口12とを交互に切り換えるように構成されている。これにより、試験ガス入口12を介して吸引されたガスまたは基準ガス入口14を介して吸引されたガスが、分析のために切換バルブ20を介してガス分析器16に供給される。ガス分析器16の吸光キュベット18は、ガス搬送ポンプ32を備える第2の導管30を介して嗅気型漏洩検出器10のガス出口28に接続されている。ガスポンプ32は、連続的なガス流を生じさせるように構成されている。
【0027】
試験ガス導管24は試験ガスフィルタ34を備える。試験ガス導管26は基準ガスフィルタ36を備える。
【0028】
図2に示された例示的な実施形態において、嗅気型漏洩検出器は、嗅気型漏洩検出器10のオペレータにより保持され案内される形態のハウジング46を有する手持ち式装置44を備える。ハウジング46は、切換バルブ20、吸光キュベット18を有するガス分析器16、およびガスポンプ32、ならびに試験ガス導管24、基準ガス導管26、第1の導管22、および第2の導管30を囲んでいる。基準ガス入口14およびガス出口28は、ハウジング46の開口により形成されている。
【0029】
ハンドピース44は細長いスニッファプローブ48を備え、このスニッファプローブの先端に試験ガス入口12が設けられている。試験ガス導管24は、スニッファプローブ48を通って試験ガス入口12からハウジング46の内部まで延びている。スニッファプローブ48の基端はハウジング46に着脱自在に接続されている。
【0030】
試験ガス入口12がスニッファプローブ48の最も前側の先端に設けられており、基準ガス入口14がハンドピース44のハウジング46の最も後側の基端に設けられていることにより、試験ガス入口12と基準ガス入口14との間の距離ができるだけ大きく取られている。ガス出口28はハウジングの一方の側においてその先端部に形成されていることにより、ガス出口28と基準ガス入口14との間の距離およびガス出口28と試験ガス入口12との間の距離は等しく且つできるだけ大きくなっている。
【0031】
オペレータがハンドピース44を保持し空間内を案内する間、すなわち、ハンドピースの空間的アライメントおよびこれにより特にハンドピースの位置に対する位置特定対象のリークの相対方向を変更する間、切換バルブ20が一定の頻度(約10Hz)で切り換えられることで、試験ガス入口12を介して吸引されたガスおよび基準ガス入口14を介して吸引されたガスの短ガスパルスが交互かつ連続的にガス分析器16に供給される。切換バルブ20の切換え頻度は、ハンドピース44の空間的アライメントの変化により、試験ガス入口12を介してガスが吸引されたときと、続いて基準ガス入口14を介してガスが吸引されたときとにおいて、吸引されたガス中の試験ガス濃度が変化しないように、または無視できる程度にしか変化しないように高頻度(約8~12Hz)に選択される。あるいは、試験ガス入口12を介してガスが吸引される間と、続いて基準ガス入口14を介してガスが吸引される間とにおいて、ハンドピース44の空間的アライメントを変化させず、続いて試験ガス入口12を介した測定が繰り返される際にのみ空間的アライメントを変化させることも可能である。
【0032】
本発明において検討される例示的な実施形態において、位置特定対象のリークは、冷媒システムにおけるリークである。ガス状冷媒はリークを介して漏洩し、冷媒雲を形成する。
【0033】
ガススイッチング調節において、2つの測定開口間の濃度差は、測定信号と基準信号との間に差を生じさせることにより求められる。測定/試験ガス入口と基準ガス入口との間を空間的に十分に大きく離間させることにより、測定セルにおける冷媒勾配が増大するので、ガススイッチング調節および漏洩検出器が空間内を移動する際の差信号の観察により、冷媒雲におけるリークの大まかな位置特定が可能である。
【0034】
このため、試験ガス入口12をグースネックの先端に設け、基準ガス入口14を前記ハンドルの下部に設けることが望ましい。
【0035】
試験ガス入口と基準ガス入口との間に十分に大きな入口距離を設けた相対測定により、装置を回転させるだけで濃度勾配を検出することができ、これにより大まかな方向を特定することで、ユーザをさらに速やかに冷媒雲の漏洩元へと案内することができる。負の差信号は、リークが当該装置の後ろ側に面する位置にあることを示す。
【0036】
本発明の方法により、リークを有するシステム(冷媒雲の漏洩元としてその近傍において冷媒濃度が最も高くなる)を適切に特定した後は、当該システムにおいてリークの位置特定をすることができる。これを行うために、前記バルブは試験ガス入口12がガス分析器16に接続されている測定ガス位置で保持されて、ガススイッチング調節を行わない、確立された連続位置特定モードに切り換えられる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕嗅気型漏洩検出器(10)に対するガスリークの相対的方向を特定する方法であって、
前記嗅気型漏洩検出器(10)は、
スニッファプローブおよび試験ガス入口(12)を有するハンドピース(44)と、
前記ハンドピース(44)において前記試験ガス入口(12)から離れた位置に設けられた基準ガス入口(14)と、
ガス分析器(16)と、
切換バルブ(20)と、を備え、
前記切換バルブ(20)は、前記試験ガス入口(12)を介して吸引されたガスまたは基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスが前記ガス分析器(16)により分析されるように、前記試験ガス入口(12)を前記ガス分析器(16)に、および前記基準ガス入口(14)を前記ガス分析器(16)にガス導通可能に交互に接続するように構成されており、
前記方法は、
a)前記試験ガス入口(12)を介して吸引されたガスを前記ガス分析器(16)に供給するステップと、
b)前記ガス分析器(16)に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を測定するステップと、
c)前記切換バルブ(20)を切り換えるステップと、
d)前記基準ガス入口(14)を介して吸引されたガスを前記ガス分析器(16)に供給するステップと、
e)前記ガス分析器(16)に供給された前記ガス中の試験ガス濃度を分析するステップと、
f)前記ステップb)に従って測定された前記試験ガス濃度と前記ステップe)に従って測定された前記試験ガス濃度との差から差信号を生成するステップと、
g)前記ハンドピース(44)の空間的アライメントを変更するステップと、
h)前記ステップa)からf)を繰り返すステップと、
i)前記ステップf)による前記差信号と比較して、前記ステップh)後に前記差信号が変化したかを判断するステップと、を含む方法。
〔態様2〕態様1に記載の方法において、前記差信号の変化により、前記ハンドピース(44)のアライメントに対する位置特定対象のガスリークの相対方向を推定する、方法。
〔態様3〕態様1または2に記載の方法において、前記ステップg)の間、前記ハンドピース(44)の位置を変更しない、方法。
〔態様4〕態様1から3のいずれか一態様に記載の方法において、前記差信号が最小または最大となるまで前記ステップa)~i)を繰り返す、方法。
〔態様5〕態様1から4のいずれか一態様に記載の方法において、前記ステップa)と前記ステップd)との間で、前記スニッファプローブの空間的アライメントを変更しない、方法。
〔態様6〕態様1から5のいずれか一態様に記載の方法において、前記ステップa)~i)を行う間、前記ステップc)に従って前記切換バルブ(20)を、少なくとも1Hz、好ましくは約10Hz~100Hzの切換え頻度で切り換える、方法。
〔態様7〕態様1から6のいずれか一態様に記載の方法において、前記差信号が最大または最小であるとき、前記ハンドピース(44)のアライメントを、前記位置特定対象のリークの相対位置の指標として評価する、方法。
〔態様8〕態様1から7のいずれか一態様に記載の方法において、前記差信号が最大または最小であるとき、位置特定対象のリークが、前記試験ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)を通る幾何学的軸心上に位置していると推定する、方法。
〔態様9〕態様1から8のいずれか一態様に記載の方法において、前記差信号が実質的にゼロまたはゼロに等しいとき、位置特定対象のリークが、前記試験ガス入口(12)および前記基準ガス入口(14)を含む軸心に対して横方向にある幾何学的軸心上に位置していると推定する、方法。
〔態様10〕態様1から9のいずれか一態様に記載の方法において、前記嗅気型漏洩検出器の位置および前記位置の変化の一方または両方を、位置センサおよび加速度センサの一方または両方により検出し、前記リークの位置を特定する際に考慮する、方法。
〔態様11〕態様1から10のいずれか一態様に記載の方法において、前記ステップa)~i)の少なくとも1つを行う間、前記嗅気型漏洩検出器(10)の位置を検出し、前記位置の時間的経過を記録し、求められた前記差信号と相関させる、方法。
〔態様12〕態様1から11のいずれか一態様に記載の方法において、前記ステップa)~i)の少なくとも1つを行う間、前記嗅気型漏洩検出器(10)のユーザに対して、前記差信号および前記差信号の変化の一方または両方を表示する、方法。