(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】超電導ケーブルの損失の減少
(51)【国際特許分類】
H10N 60/81 20230101AFI20240213BHJP
H01R 4/68 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
H10N60/81
H01R4/68
(21)【出願番号】P 2020562748
(86)(22)【出願日】2019-04-27
(86)【国際出願番号】 US2019029521
(87)【国際公開番号】W WO2019217102
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】スミス,バートン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】タッカーマン,デイビッド ビー.
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-510290(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0267032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/81
H01R 4/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コンピューティングシステムにおいて相互接続を提供する方法であって、当該方法は、
超電導ケーブルを、第1のセットの超電導論理ベースのデバイス及び第2のセットの超電導論理ベースのデバイスに結合するステップと、
前記第1のセットの超電導論理ベースのデバイス、前記第2のセットの超電導論理ベースのデバイス、又は前記第1のセット及び前記第2のセットの超電導論理ベースのデバイスを第1の温度に冷却するステップと、
前記超電導ケーブルを前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記第1の温度
は4ケルビン度(K)であり、前記第2の温度は2ケルビン度以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の温度は、ケルビン度で表した前記第1の温度よりも少なくとも25%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記超電導ケーブルを冷却するステップは、
前記超電導ケーブルの少なくとも一部を取り囲む密閉封止した導管を提供するステップと、
ジュール-トムソン弁を介してヘリウム蒸気の流れを前記導管内に流入させるステップと、を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
排気弁を介してヘリウム蒸気の流れを前記導管の外に流出させるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記導管の外に流出する前記ヘリウム蒸気の流れの少なくとも一部を冷却して、前記ジュール-トムソン弁を介し
て冷却した蒸気を前記導管内に供給するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記超電導ケーブルを冷却するステップは、該超電導ケーブルと熱連通するヒートパイプ又は熱伝導性ストラップを提供するステップを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記超電導ケーブルは、少なくとも1つの超電導信号線と、少なくとも1つの導体面とを含み、
前記超電導ケーブルを冷却するステップは、前記少なくとも1つの導体面と熱連通する冷却プレートを提供するステップを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記超電導ケーブルを冷却するステップは、前記超電導ケーブルの少なくとも一部を取り囲む密閉封止したマニホルドに液相又は気相ヘリウムを供給するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
システムであって、当該システムは、
少なくとも2セットの超電導論理デバイスと、
該少なくとも2セットの超電導論理デバイスを第1の動作温度以下に冷却するように適合された冷却装置と、
前記少なくとも2セットの超電導論理デバイスを結合する少なくとも1つの相互接続であって、少なくとも1つの超電導信号線を含む少なくとも1つの相互接続と、
該少なくとも1つの相互接続と熱連通する冷却装置であって、前記少なくとも1つの超電導信号線を、前記少なくとも2セットの超電導論理デバイスの前記第1の動作温度よりも低い第2の動作温度に冷却するように適合される冷却装置と、を含む、
システム。
【請求項11】
前記冷却装置と前記少なくとも1つの相互接続との間の熱連通を提供するヒートパイプ又は熱伝導性ストラップをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ヒートパイプ又は熱導電性ストラップは、相互接続結合の絶縁体部分に配置された導体層を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記導体層は、銅、アルミニウム、銀、金、又はチタンのうちの少なくとも1つを含み、
前記絶縁体部分は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料の少なくとも1つを含み、
前記相互接続結合は、ニオブ、窒化モリブデン、又は窒化ニオブチタンのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの信号線を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの相互接続の少なくとも一部を取り囲む密閉封止した導管をさらに含み、該導管は、前記第1の動作温度よりも低い温度で供給される冷却剤を受け入れるようにさらに構成される、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、超電導(superconducting:超伝導)ケーブルの損失の減少に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン又はガリウム砒素デバイス技術に基づく技術等の従来の半導体ベースの集積回路技術は、デバイスサイズ、スイッチング周波数、及び電力消費の点でその物理的限界に達しつつある。さらに、データセンターに配備された集積回路は、益々多くの電力を消費している。これには、半導体デバイスがスイッチングしていないときにリーク電流によって消費される電力が含まれる。特定のタイプの有用な計算(量子化学等)を既存のデジタルコンピュータ技術よりも高速且つ費用効果の高い方法で実行できる量子コンピュータを構築することに大きな関心が寄せられている。
【0003】
従来の半導体技術の限界に対処するための1つのアプローチは、超電導論理ベースのデバイスの使用である。このようなデバイスは、典型的に、超電導状態で機能するために極低温に冷却される。この冷却を超電導論理デバイスに提供するための冷却装置は高価であり、かなりの量のエネルギーを消費する。こうして、超電導論理ベースのデバイスのセットの間で信号を送信するために使用される相互接続を含む、超電導論理ベースのデバイスで構築されたコンピュータを改善するための十分な機会が残っている。
【発明の概要】
【0004】
超電導ケーブル及び相互接続を低温に冷却するための装置及び方法が開示される。いくつかの例では、可撓性の多導体マイクロストリップ又はストリップラインリボンケーブルが、導管又は他の収容装置に封入された低温ガス又は液体(例えば、ヘリウム)を使用して冷却される。いくつかの例では、冷却を提供するために、ケーブル又は相互接続と熱連通するヒートパイプ又は熱伝導性ストラップが提供される。2セット以上の論理デバイスを結合する超電導相互接続は、論理デバイスよりも低い温度に冷却でき、相互接続によって伝送される信号の減衰を低減するが、追加のエネルギーを使用して論理デバイスを冷却するためのより広範な冷却を提供する必要はない。
【0005】
可撓性ケーブル又は剛性基板等の相互接続に配置された超電導信号線は、相互接続に結合された少なくともいくつかの超電導論理デバイスが動作する温度よりも低い極低温に冷却され得る。いくつかの例では、気密導管、ヒートパイプ、又は熱伝導性ストラップが、超電導相互接続を冷却するために提供される。開示される技術の一例では、システムは、少なくとも2セットの超電導論理デバイスと、論理デバイスを第1の動作温度に冷却するように適合された冷却装置と、超電導論理デバイスを結合する相互接続とを含む。冷却装置は、相互接続と熱連通した状態で提供される。この装置は、相互接続上の超電導信号線を、超電導論理デバイスが動作する第1の動作温度よりも低い動作温度に冷却するように適合される。超電導信号線を、結合された論理デバイスよりも低い温度に冷却するだけで、システム全体の大幅なエネルギー節約を実現できる。信号線が冷却される温度は、使用される材料、距離の制約、周波数等の動作の制約、及びエネルギー消費に基づいて選択され得る。
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供される。この概要は、特許請求の範囲に記載される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、ましてや特許請求の範囲に記載される主題の範囲を制限するために使用されることも意図していない。開示される技術の前述した及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図を参照しながら進む、以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】開示される技術の特定の例で実施することができる、超電導相互接続を冷却するために使用することができる例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図2】開示される技術の特定の例で実施することができる、導管及び複数の接続を有する相互接続を含む例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図3A】開示される特定の導管又はヒートパイプを使用して冷却することができる例示的な相互接続を示す図である。
【
図3B】開示される特定の導管又はヒートパイプを使用して冷却することができる例示的な相互接続を示す図である。
【
図3C】開示される特定の導管又はヒートパイプを使用して冷却することができる例示的な相互接続を示す図である。
【
図4A】開示される技術の特定の例で使用することができる、代替の例示的な相互接続を示す図である。
【
図4B】開示される技術の特定の例で使用することができる、代替の例示的な相互接続を示す図である。
【
図5A】開示される技術の特定の例で実施することができる、超電導相互接続の別の例を示す図である。
【
図5B】開示される技術の特定の例で実施することができる、超電導相互接続の別の例を示す図である。
【
図6A】開示される技術の特定の例で実施することができる、熱伝導性ストラップで冷却される多分岐相互接続の例を示す図である。
【
図6B】開示される技術の特定の例で実施することができる、熱伝導性ストラップで冷却される多分岐相互接続の例を示す図である。
【
図7】開示される技術の特定の例で観察することができる、周波数及び温度の関数としての超電導伝送ラインにおける損失を示すチャートである。
【
図8】開示される技術の特定の例で実行することができる、超電導コンピュータシステムにおいて相互接続を提供する例示的な方法を概説するフローチャートである。
【
図9】開示される技術の特定の例で実行することができる、超電導論理デバイスに結合された導管を冷却する例示的な方法を概説するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.一般的な検討事項
そのような(導体及び/又は超電導体材料を担持する)基板同士の間に機械的及び/又は電気的接続を形成するコネクタを使用して、導体及び/又は超電導体材料を担持する基板の設計、製造、及び組立てのための方法、装置、及びシステムの代表的な実施形態が本明細書に開示される。この開示は、いかなる方法でも限定することを意図していない代表的な実施形態の文脈で説明される。
【0009】
本願で使用される場合に、単数形「1つの(a,an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形を含む。さらに、「含む、有する(includes)」という用語は「備える、有する、含む(comprises)」を意味する。さらに、「結合される(coupled)」という用語は、機械的、電気的、磁気的、光学的、及びアイテムを一緒に結合又はリンクする他の実用的な方法を含み、結合されたアイテム同士の間の中間要素の存在を排除しない。さらに、本明細書で使用される場合に、「及び/又は」という用語は、句内の任意の1つのアイテム又はアイテムの組合せを意味する。
【0010】
本明細書に記載のシステム、方法、及び装置は、いかなる方法でも限定的であると解釈すべきではない。代わりに、本開示は、単独で、及び互いに様々な組合せ及びサブ組合せで、開示される様々な実施形態の全ての新規で非自明な特徴及び態様を対象としている。開示されるシステム、方法、及び装置は、特定の態様又は特徴又はそれらの組合せに限定されず、開示されるもの及び方法は、任意の1つ又は複数の特定の利点が存在すること、又は問題が解決されることを必要としない。さらに、開示される実施形態の任意の特徴又は態様は、互いに様々な組合せ及びサブ組合せで使用することができる。
【0011】
開示される方法のいくつかの動作は、簡便な提示のために特定の順序で説明されるが、この説明の方法は、以下に示す特定の言語によって特定の順序が要求されない限り、再配置を含むことを理解されたい。例えば、順次記述された動作は、場合によっては、再配置又は同時に実行され得る。さらに、簡潔にするために、添付の図は、開示されるもの及び方法を他のもの及び方法と組み合わせて使用することができる様々な方法を示していない場合がある。さらに、詳細な説明は、開示される方法を説明するために、「生成する(produce)」、「生成する(generate)」、「製造する(fabricate)」、「受け取る(receive)」、「冷却する(cool)」、「提供/供給する(provide)」、及び「適合する(adapt)」等の用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの説明である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施態様によって異なり、本開示の利点を有する当業者によって容易に識別可能である。
【0012】
本願及び特許請求の範囲で使用される場合に、単数形「1つの(a,an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形を含む。さらに、「含む、有する(includes)」という用語は「備える、有する、含む(comprises)」を意味する。さらに、文脈が他のことを指示しない限り、「結合される」という用語は、機械的、電気的、又は電磁的に接続又はリンクされることを意味し、直接接続又は直接リンクと、説明するシステムの意図する動作に影響を与えない1つ又は複数の中間要素を介した間接接続又は間接リンクとの両方を含む。
【0013】
さらに、「上」、「下」、「より上」、「より下」等の特定の用語を使用する場合がある。これらの用語は、該当する場合に、相対的な関係を扱うときに説明を明確にするために使用される。ただし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、及び/又は向きを意味することを意図したものではない。
【0014】
超電導相互接続、ストリップライン、マイクロストリップ、信号線、又は論理デバイス等の「超電導」コンポーネントへの参照は、材料のそれぞれの臨界温度以下の場合に超電導モードで動作する状態にあり得る超電導材料から製造されたコンポーネントを指す。ただし、参照される超電導コンポーネントは、本明細書に記載の特定の行為が実行される場合に、必ずしも超電導状態にあるとは限らない。例えば、超電導ケーブルを超電導論理デバイスのセットに結合することは、そのような結合を形成することを指し、その後、論理デバイス及び相互接続をそれらのそれぞれの臨界温度より下に冷却することによって、後の時点で超電導状態に置くことができる。
【0015】
本開示の装置又は方法に関して本明細書に提示される動作理論、科学的原理、又は他の理論的説明は、より良い理解を目的として提供されており、範囲を限定することを意図するものではない。添付の特許請求の範囲に記載の装置及び方法は、そのような動作理論によって説明される方法で機能する装置及び方法に限定されない。
【0016】
II.開示される技術の紹介
高周波信号は、ストリップライン、マイクロストリップ、又は同軸伝送ラインとして構成された超電導ケーブルを介して送信されるにもかかわらず、適度に減衰される。その理由は、超電導体内の通常の(不対)電子の小さいが有意な集団が、超電流によって生成される時間変化する電磁場によって通常の方法で加速されるためである。ただし、超電流とは異なり、通常の電流は、ワイヤの表面抵抗で電力を消費する。これにより、高周波成分が減少することにより、送信信号が歪む可能性がある。こうして、超電導線はDCで完全な超電導として機能し得るが、より高い周波数(GHz範囲等)では、通常の(normal)電子の存在により大きな損失が観察され得る。
【0017】
周波数が高いほど、この影響はより顕著である。所与の周波数で、減衰係数αは、信号がそのラインに沿って移動するときに信号がどれだけ減衰するかを記述する。例えば、α=10-3ネーパ(nepers)/cmの減衰係数は、信号の振幅が1センチメートルあたり0.1%、又はその信号が移動する際に1メートルあたり約10%減少することを意味する。減衰係数は、誘電損失と超電導損失との両方の組合せである。誘電損失による減衰は周波数に比例して増大するのに対し、超電導損失による減衰は周波数の2乗で増大することがよくある。従って、超電導損失は、高周波での最大の減衰源になる。
【0018】
ケーブルの温度を下げることにより、この減衰を減らすことができる。典型的に、誘電損失と超電導損失との両方は、温度が絶対零度に向けて低下するにつれて小さくなる。超電導体の損失は特に温度に敏感である。より高い温度では、損失に寄与するより多くの自由(非クーパー対)電子がある。
【0019】
BCS(Bardeen-Cooper-Schrieffer)理論は、クーパー対に対する通常の電子の密度比が温度に対して指数関数的に依存することを示している。(通常は9.3Kである臨界温度の1/2の)約4.65Kよりも低いニオブ(Nb、元素41)の場合に、結果として得られる表面抵抗は、f2×exp((-17.67/T)/T)に比例するように近似でき、ここで、Tはケーブルの絶対温度であり、fは信号周波数である。例えば、Nbの表面抵抗は、その温度を4.2K(1気圧での飽和液体ヘリウム(He)の温度)から2Kに下げるだけで、約49分の1に減少する。従って、超電導損失に起因する減衰係数の部分は、ケーブルが4.2Kから2.0Kに冷却されると、約49分の1に減少することになる。
【0020】
減衰係数への誘電損失の寄与は、温度にそれほど敏感ではない。ケーブルが冷却されると、最終的に超電導体の損失は無視できるようになり、減衰係数は主に誘電損失(「誘電正接(loss tangent)」)で構成される。ポリイミドケーブルとの相互接続の誘電正接は、1~20GHzの周波数で、超(deep)極低温で著しく低くなり、典型的に、対応する室温の値の100分の1である。これにより、マイクロ波範囲(~10GHz)の信号を過度に減衰させることなくかなり長距離(メートルスケール)で送信でき、また、過度の誘電加熱を発生させることなく、有用な高RF電力レベルを送信できる。超電導伝送ラインは、数ミクロンのトレース幅で良好に機能することができる。典型的な公称インピーダンスの場合に、誘電体の厚さも数ミクロンになる。
【0021】
導体を使用する従来のケーブルと比較して、マイクロストリップ、ストリップライン、又はコプレーナ導波路等の可撓性の超電導インピーダンス制御ケーブルは、最小の損失で長距離に亘って高速電気信号の伝送を可能にする。さらに、それらの物理的断面積は非常に小さい可能性があるため、1本のコンパクトなリボンケーブルで多数の信号を送信できる。ただし、極低温環境からより高温の電子装置に接続する場合等に、ケーブルの温度がTcに近づくか、それを超えると、パフォーマンス上の利点が失われる可能性がある。
【0022】
超電導ケーブル及び相互接続を低温に冷却するための装置及び方法が開示される。いくつかの例では、可撓性の多導体マイクロストリップ又はストリップラインリボンケーブルが、パイプに封入された低温ヘリウムガスを使用して冷却される。例えば、ジュール-トムソン弁を使用して、4.2K及び1気圧(14.70ポンド/平方インチ(psi)又は1.01325×105パスカル(Pa))で受け取ったヘリウムガスを32倍に約0.034気圧(0.5psi/3.447×103Pa)に膨張させることができ、これにより、ガスの温度が2Kに低下する。圧力降下が大きいほど温度が低くなり、より長いケーブルが可能になるか、信号速度がより速くなる。
【0023】
いくつかの例では、2Kでの単一の供給源からのヘリウムガスは、同じパイプ内の複数のリボンケーブルを通過することができる。損失が少ないということは、ヘリウムガスが複数のケーブルで殆ど加熱されていないことを意味する。複数のエンドポイントを接続するケーブルのネットワークは、エンドポイントに跨るパイプのネットワークでネットワークを取り囲むことによって冷却できる。各エンドポイントは、ヘリウムをパイプネットワークに供給するための独自のジュール-トムソン膨張弁を有することができる。大きな圧力勾配を生成するのに十分な直径の複数の排気ポイントを、パイプネットワークの中央に配置し、再圧縮及び再循環のためにヘリウム液化装置に接続することができる。
【0024】
マイクロストリップ形状を使用する伝導性又は超電導性の可撓性ケーブルを含む、基板の様々な構成の設計及び製造のための方法、装置、及びシステムが開示される。いくつかの例では、可撓性の超電導ケーブルは、一方の側に配置された多数の信号導体と、もう一方の側(例えば、反対側又は表面側)に配置された電源面又は接地面とを有する。いくつかの例では、可撓性ケーブル表面に配置された典型的な信号線は、幅が50ミクロンである。いくつかの例では、信号線の幅は、10~100ミクロンの間で変化し得る。いくつかの例では、選択したニオブ合金を含むニオブを含む信号線は、超(deep)極低温(例えば、約4K以下)で動作するように意図される。このような可撓性ケーブルの対の間で高密度接続を行うことができる。いくつかの例では、接続される2本のケーブルは、両端の間に小さなギャップがある状態で、端から端まで正確に位置合わせされる。他の例では、ケーブルが当接又は僅かにオーバーラップする場合がある。短い電気接続のアレイを含む「ブリッジコネクタ」がジョイント領域の上にクランプされ、2本の可撓性ケーブルのそれぞれの信号線の間に電気的導通を提供する重ね継手電気接点を形成する。同様に、別のブリッジコネクタがジョイント領域の下にクランプされ、2本の可撓性ケーブルの電源面又は接地面の間の電気接点を提供する。そのような例では、精密な微細加工された柱(ピラー)が微細加工された孔と係合して、ブリッジコネクタ及びケーブルの機械的自己整列を提供する。いくつかの例では、簡素な薄膜導体がブリッジコネクタに使用される。いくつかの例では、金の接点が使用され得る。例えば、超電導体の上の金めっきは、近接効果のために金層が超電導になることができるように、十分に薄く(例えば、20nm以下に)することができる。他の例では、より厚い導体層(銅、アルミニウム、銀、金、チタン等)が使用されるが、ライン(線)にある程度の抵抗が発生する。
【0025】
III.相互接続と導管の例
図1は、開示される技術の特定の例において超電導相互接続を冷却するために使用することができる例示的なシステムを示すブロック
図100である。例示的なシステムでは、封止可能な導管は、超電導相互接続の少なくとも一部を取り囲むように適合される。導管は、超電導論理デバイスの1つ又は複数のセットに結合するようにさらに適合させることができる。導管は、液体又は気体冷却剤を受け取り、超電導相互接続を、相互接続に結合される超電導論理デバイスよりも低い温度に冷却するようにさらに適合させることができる。
【0026】
図1に示されるように、導管110は、超電導相互接続ケーブル120の一部を取り囲む(封入する)。超電導相互接続ケーブルは、第1のセットの論理デバイス130と第2のセットの論理デバイス135との間で信号を伝送するように配置される。第1及び第2のセットの論理デバイスは、極低温の熱環境で動作できる超電導デバイスを含む。例えば、このデバイスには、約70K以下の温度で動作できる従来のCMOSベース又は他のタイプのデバイスを含めることができる。論理デバイスはまた、さらに低い温度、例えば4K以下、又は20mK以下で動作する超電導論理ベースのデバイスを含み得る。いくつかの例では、超電導論理デバイスは、ジョセフソン接合ベースのデバイスに基づく回路を含み得る。超電導論理デバイスは、1つ又は複数のジョセフソン接合デバイスを有する回路を含むことができる。典型的なジョセフの接合(Joseph injunction)には、2つの超電導体材料の間に挟まれた薄い絶縁体又は導体が含まれる。提供される薄層は、電流が超電導体材料のある部分から薄層の反対側の超電導体材料の他の部分に流れることを可能にするのに十分に薄い。例えば、超電導体材料は、酸化アルミニウムの薄い(例えば、5~20オングストローム)層によって提供されるニオブ及び絶縁体を含むことができる。例示的な超電導体として、ニオブ(Nb)は、約9.2ケルビンの臨界温度(Tc)を有する。Tc未満の温度では、ニオブは超電導であるが、Tcを超える温度では、ニオブは電気抵抗のある通常の金属としてふるまう。超電導体-絶縁体-超電導体(SIS)タイプのジョセフソン接合では、超電導体層はニオブから形成することができ、絶縁体層は酸化アルミニウムから形成することができる。超電流は、2つの接合電極の間の位相差の符号の関数としてジョセフ接合部を通過する。
【0027】
層の厚さ、アスペクト比、ピッチ、長さ、及び幅を含む寸法は、所望の回路性能に従って選択することができる。いくつかの例では、1メートル以上の長さの相互接続を構築することができる。望ましくは、相互接続温度は、信号の減衰がケーブルの長さ全体で10%未満になるように選択される。さらに、論理デバイスを相互接続よりも高い温度に維持できるため、システムの相互接続部分への冷却を制限することで、大幅なエネルギー節約を実現できる。
【0028】
超電導論理デバイスは、これらデバイスを1つ又は複数の低温槽(cryostat:クライオスタット)140及び145内に封入することによって動作温度に維持される。低温槽は、超電導論理デバイスに冷却を提供し、導管110による超電導相互接続ケーブル120の受け取りを可能にする少なくとも1つの端子又は開口部を有する。超電導相互接続ケーブル120は、絶縁体の上に配置された超電導材料を含む少なくとも1つの信号線を含む。例えば、超電導体又は材料から形成された複数のストリップライン又はマイクロストリップは、剛性又は可撓性の絶縁体の上に配置することができる。ケーブル120等の適切な超電導相互接続ケーブルの構造及び使用を詳述する更なる例について、以下の例を参照して説明する。
【0029】
導管110は、相互接続の少なくとも一部を取り囲む(封入する)ように構成され、気密シールを有する。論理デバイスから端子にケーブルを相互接続するための適切な接続が提供される。導管は気密であり、密閉封止され得る。シールは、気密シールを維持しながら、相互接続120が導管の外側に延びるのを可能にする気密シールクランプ130及び135によって部分的に提供される。導管は、少なくとも1つのジュール-トムソン弁150を含む。ジュール-トムソン弁は、導管110に結合され、且つ第1の温度及び第1の圧力で供給されるガスを受け入れるように適合される。ジュール-トムソン弁は、第1の圧力よりも低い圧力及び第1の温度よりも低い第2の温度で導管110の内部に気体冷却剤を供給するようにさらに適合される。導管に結合されたジュール-トムソン弁150は、導管の内部に気体冷却剤を供給するように適合される。ジュール-トムソン弁150は、より高圧のガス状ヘリウムを受け入れ、このヘリウムをより低い温度及び圧力で導管内に供給するように構成される。例えば、ジュール-トムソン弁は、1気圧で4.2Kのヘリウムを受け入れ、且つ0.5psiで2Kの低圧ヘリウムを導管110内に放出するように構成できる。冷却されたガス状ヘリウムは、冷却装置160によってジュール-トムソン弁に供給される。例えば、冷却装置160は、Leiden Cryogenics CF450 3He/4H希釈冷却装置等の希釈冷却装置であり得る。しかしながら、本開示の利点を有する当業者に容易に理解されるように、任意の適切な冷却装置を使用することができる。
【0030】
導管110は、導管の内部から気体冷却剤を受け取るように適合された少なくとも1つの排気ポート170をさらに含む。排気ポート170は、導管110からヘリウムガスを受け取り、そのヘリウムガスを冷却装置160に戻して、再圧縮し、冷却し、そして導管に再循環するように結合される。いくつかの例では、同じ冷却装置を使用して、超電導体論理デバイスを含む低温槽に冷却剤も供給する。他の例では、別のユニットが超電導体論理デバイスに冷却を提供する。
【0031】
IV.複数の接続を有する導管及び相互接続の例
図2は、開示される技術の特定の例で使用することができる、複数の接続を有する例示的な導管及び相互接続を含む例示的なシステムを示すブロック
図200である。システムは、1つ、2つ、又はそれ以上のセットの超電導論理デバイス、論理デバイスを第1の動作温度以下に冷却するように適合された冷却装置、及び導管内に少なくとも部分的に封入され、超電導信号線を含む相互接続を含むことができる。冷却装置は、相互接続と熱連通するように配置され、相互接続上の超電導信号線を、超電導論理デバイスのセットの第1の動作温度よりも低い第2の動作温度に冷却するように適合される。
【0032】
図2に示されるように、導管210は、気密であり、相互接続220、221、222等の複数の分岐部を取り囲む。相互接続220は、密閉封止することができ、導管内に封入した相互接続220を、1つ又は複数のセットの低温論理デバイス、例えば230又は235に結合された他の相互接続に接続する密閉封止クランプ225及び227等の接続を含む。導管210の各分岐部は、導管210の分岐部の一端で冷却ガスを供給するジュール-トムソン弁(例えば、ジュール-トムソン弁240)に結合される。導管210は、複数の排気ポート、例えば排気ポート250及び255をさらに含み、これにより、冷却ガスを導管210の内部から排出して、それを回収して、ヘリウム冷却装置に送ることができる。相互接続220を冷却するためにヘリウムガスを供給することにより、導管内の相互接続220の温度が、結合された低温論理デバイスが動作する温度よりも実質的に低くなるので、相互接続のQ係数が減少する。
【0033】
V.超電導相互接続の例
図3A~
図3Cは、本明細書で議論されるように、封入された導管又はヒートパイプを使用して冷却することができる例示的な相互接続300を示している。
図3Aは、複数の超電導ストリップライン、例えばストリップライン320、321、及び322が配置された基板310(ポリイミドベースのフィルム又は他の適切な材料から製造することができる)を含む相互接続の平面図である。ストリップラインは、例えば、チタンから形成されたオプションの10nmの接着層の上に堆積された例えば250ナノメートル(nm)の厚さのニオブの層から作製することができる。いくつかの例では、可撓性の超電導ケーブルは、ガラス基板を使用して製造され得る。約20ミクロン(μm)の厚さを有する最初のポリイミドフィルム(例えば、ピラリンPI-2611又はHD-4100)をガラス基板上にスピンコーティングすることができる。プラズマプロセスとそれに続く物理蒸着(PVD)プロセスを使用して、薄いチタンフィルムを、硬化したポリイミドフィルムに適用することができる。次に、超電導金属層、例えばニオブ層から形成された信号線を堆積させることができる。次に、オプションのチタン/ニオブスタックは、銅層又は金や銀等の他の適切な導体でキャップすることができる。例えば、500nmの銅層を使用できる。最後に、リソグラフィー及び薄膜処理技術を使用して、導体のトラックをパターン化し、信号線(例えば、マイクロストリップ、ストリップライン、又は基板上の他の経路)を形成することができる。次に、ポリイミド層を導体の上に適用して硬化させることができる。これらのプロセスを繰り返して、複数の導体層を有する構造を形成することができる。本開示の利点を有する当業者に容易に理解されるように、層の厚さ、幅、長さ、線のピッチ、及び他の態様の選択は、相互接続の所望の性能特性に基づいて選択することができる。
【0034】
例えば、ニオブ、窒化モリブデン、窒化ニオブチタン、窒化ニオブ、又はそのような材料の合金を含む、任意の適切な超電導材料を超電導ライン(線)に使用することができる。ニオブ薄膜は、特に可撓性ケーブルの場合のように屈曲した場合に、下にある基板からの亀裂及び層間剥離の影響を受け易くなる。超電導ストリップラインは、例えばチタンから作製することができる、基板上に配置されたオプションの介在接着層の上に配置することができる。チタンは、その後に堆積される金属層の接着及び遷移層として使用することができる。相互接続300は、超電導ストリップラインの端部の上に配置された接点メタライゼーションをさらに含む。いくつかの例では、接点材料は超電導体から作製され得るが、他の例では、銅、アルミニウム、銀、金、又はチタン等の材料の薄層が使用され得る。
図3Bは、破線340によって示されるように切り取られた相互接続300の断面図である。示されるように、基板310の上に配置されたストリップライン320、321、及び322を含む複数のストリップラインが存在する。相互接続300の表側には、相互接続300の裏側の上に配置された平面層350を含む。平面層350は、超電導体材料、例えば上で議論したニオブ又は他の材料から作製され得るか、又は上で列挙した導体のうちの1つ等の導体層から作製され得る。いくつかの例では、平面層350は、相互接続300の接地面として機能するように構成され得る。いくつかの例では、平面層350は、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップを用いて熱伝導性で配置され得る。例えば、銅から形成された熱伝導性ストラップを使用して、以下でさらに説明するように、平面層から冷却プレートに熱を伝導させることができる。
図3Cは、破線360によって示される断面で切り取られた相互接続300の断面図である。示されるように、ストリップラインのそれぞれは、ストリップラインの端部の上に配置された接点メタライゼーション330、331、及び332の一部を有する。適切な材料の例には、鉛、インジウム、又は銅が含まれる。
【0035】
いくつかの例では、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)又はビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(BSCCO)等の高温超電導材料を使用して、相対的により高い温度(例えば、これらの材料に対して最大約70K)で超電導相互接続を提供することができる。
【0036】
VI.追加の相互接続の例
図4A~
図4Bは、開示される技術の特定の例で使用することができる、代替の相互接続構成の断面を示している。
図4Aは、基板、例えばポリイミドベースのフィルム420の上に配置された複数の超電導ストリップライン410を有する相互接続400を示している。相互接続は、複数の平面層、例えば平面層430及び435並びに基板425を含むことができる。いくつかの例では、平面層の1つは超電導材料で作製してもよく、別の層は導体材料で作製される。他の例では、両方の平面層が超電導体材料又は導体材料から作製される。
図4Bは、絶縁体の表側に超電導体又は導体材料437で作製された平面層を有する追加の基板427の後の相互接続400を示している。平面層430、435、及び/又は437のうちの1つ又は複数は、ヒートパイプ又は他の冷却手段を用いて熱伝導性で配置することができることに留意されたい。いくつかの例では、1つ又は複数の平面層を電力信号又は接地信号に接続することができる。
【0037】
図5A及び
図5Bは、開示される技術の特定の例で使用することができる、超電導「同軸」相互接続500の断面図及び平面図をそれぞれ示している。例えば、図示のケーブルは、導管内に封入して液体ヘリウム等の冷却剤で冷却することができる、又はヒートパイプ又は熱伝導性ストラップと熱連通状態で配置できる相互接続である。
【0038】
図5Aの断面に示されるように、単一の超電導体信号線520は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料等の絶縁体内に取り囲まれている(封入されている)。例示的なケーブルは、相互接続500の別の部分に取り囲まれた(封入された)信号線の対525、526をさらに含む。信号線の対は、信号線の対上で差動信号を通信するように配置することができる。相互接続500は、信号線520、525、及び526の上下に位置する平面層530及び535を含む。平面層は、電気接続及び機械的剛性を相互接続500アセンブリに提供することができる一連のシールドビア、例えばシールドビア540、541、及び542によって接続される。
【0039】
図5Aの断面図は、点線550で示される。
図5Bの平面図に示されるように、信号線同士の間、例えば信号線520と、破線で示される平面層530の下に位置する差動対525及び526との間の電磁場及び干渉を遮蔽するように作用することができる複数の追加のシールドビアが提供される。ビアは、例えば銅、アルミニウム、金、銀、又はタングステンのうちの1つ又は複数を含む、任意の適切な導体から製造することができる。
【0040】
VII.多分岐相互接続及び熱伝導性ストラップの例
図6Aは、開示される技術の代替の例で使用することができる、熱伝導性ストラップを使用して多分岐相互接続610を冷却するための例示的なシステムを示す
図600である。他の例では、熱伝導性ストラップの代わりに、又はそれに加えて、ヒートパイプを使用することができる。
【0041】
図6Aに示されるように、1つ又は複数の超電導信号線620、621、及び622が、絶縁基板630の上に配置される。絶縁基板は、次に、信号線620から相互接続610の表側にある超電導体又は導体材料の平面層の上に配置される。複数の熱伝導性ストラップ、例えばストラップ640、641、642、及び643は、例えば平面層と接触して配置されることによって、平面層と熱連通状態で配置される。ストラップの遠位端は、低温に保たれた冷却プレートに結合される。相互接続610からの熱は、ストラップを介して冷却プレート650に伝達される。いくつかの例では、熱伝導性ストラップは、それらの相互接続結合の絶縁体部分に配置された導体層を含む。いくつかの例では、導体層は、銅、及びアルミニウム、銀、金、又はチタンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、絶縁体は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。他の例では、伝導性ストラップに加えて、又はその代わりに、ヒートパイプを使用することができる。
【0042】
図6Bは、多分岐相互接続610の
図6Aの破線670における断面
図680である。示されるように、信号線620の反対側の平面層は、熱伝導性ストラップ640と接触して配置される。ヒートパイプの遠位端は、冷却プレート650にクランプされる。冷却プレート650は、熱伝導性ストラップを、論理デバイス660及び/又は665が動作している温度よりも低い温度に熱的に冷却するように構成される。
【0043】
VIII.超電導材料の性能例
図8は、開示される技術の特定の例で観察することができる、周波数及び温度の関数としての超電導伝送ラインにおける損失を示すチャート800である。損失は、伝達ラインを共振器として構成することによって測定され、この場合に、ラインの両端は、開回路であり、ネットワークアナライザに弱く結合される。例えば、第1のデータ系列710は、4.2Kでの、ある周波数範囲に亘った超電導伝送ラインの損失を示している。第2及び第3の系列720及び730は、3.6K及び3Kでの損失を示している。第4及び第5の系列740及び750は、1.2K及び20mKでの損失を示している。共振器の品質係数(Q)は、各共振周波数で測定された。共振器の損失はQの逆数(1/Q)に比例し、いくつかの異なる温度に対してプロットされる。チャート800に示されるように、4.2K未満に冷却すると損失が劇的に減少し、これらの減少はより高い周波数でより顕著になることが明らかである。
【0044】
IX.超電導相互接続を冷却する方法の例
図8は、開示される技術の特定の例で実行することができる、超電導コンピュータシステムにおいて相互接続を提供する例示的な方法を概説するフローチャート800である。例えば、冷却剤を受け入れるように構成された導管、熱伝導性ストラップ、又はヒートパイプを有するものを含む上記の装置を使用して、図示の方法を実施することができる。
【0045】
プロセスブロック810において、ケーブル等の超電導相互接続は、第1及び第2のセットの超電導論理デバイスに結合される。例えば、上記のような可撓性又は剛性の超電導ケーブルを結合することができる。いくつかの例では、表面に配置された少なくとも1つの超電導体ストリップラインを含むポリアミドケーブルが、クランプ又は他の適切な接続技術を使用して超電導論理デバイスに結合される。いくつかの例では、導体層はまた、超電導ケーブルの少なくとも一部の上に配置され得る。
【0046】
プロセスブロック820において、第1及び/又は第2のセットの超電導論理デバイスは、第1の温度に冷却される。例えば、低温槽又は希釈冷却装置等の他の冷凍技術を使用して、超電導論理デバイスを選択した温度に冷却することができる。
【0047】
プロセスブロック830において、プロセスブロック810で結合された超電導相互接続又はケーブルは、超電導論理デバイスが冷却される第1の温度よりも低い第2の温度に冷却される。例えば、超電導論理デバイスは、約4Kに冷却することができ、超電導ケーブル又は相互接続は、2K以下になるように冷却することができる。いくつかの例では、第2の温度は、第1の温度より少なくとも25%低い、ケルビン度(degrees Kelvin)で測定される。いくつかの例では、超電導ケーブルは、完全に密封された導管、熱伝導性ストラップ、又はヒートパイプを提供し、超電導ケーブルと熱連通することによって冷却される。
【0048】
X.導管を使用して相互接続を冷却する方法の例
図9は、開示される技術の特定の例で実行することができる、超電導論理デバイスに結合された導管を冷却する例示的な方法を概説するフローチャート900である。例えば、上で議論された密封された導管を使用して、図示された方法を実行することができる。
【0049】
プロセスブロック910において、1つ又は複数のセットの超電導論理デバイスに結合された超電導ケーブルの少なくとも一部を取り囲む(封入する)導管が提供される。導管は、導管の内部に供給される冷却液又はガスを封入するために、気密又は密閉封止することができる。導管は、1つ又は複数の入口弁、例えばジュール-トムソン弁に結合された入口弁、及び1つ又は複数の出口ポートを有することができる。こうして、冷却剤を冷却装置に循環させて、導管内に封入された相互接続を冷却することができる。
【0050】
プロセスブロック920において、冷却剤は、相互接続が結合される超電導論理デバイスの温度よりも低い温度で導管内に供給される。例えば、ヘリウム蒸気の流れは、ジュール-トムソン弁を介して導管内に供給することができる。さらに、ヘリウム蒸気の流れは、更なる冷却のために排気弁を介して導管の外部に供給することができる。いくつかの例では、液相ヘリウムは、超電導相互接続の少なくとも一部を取り囲む導管に供給される。冷却剤は、超電導論理デバイスのセットのうちの少なくとも1つよりも低い温度で供給される。例えば、冷却剤は、2K、1K、100mK、20mK、又は他の適切な温度で供給することができる。温度及び冷却剤の選択は、封入された相互接続の電気的特性に基づいて選択できる。いくつかの例では、相互接続を介して送信される信号の減衰が20%以下又は10%以下に保たれるように、冷却剤及び特性を選択することが望ましい。
【0051】
プロセスブロック930において、導管排気ポートを介して受け取られた排気冷却剤は、その冷却材が導管に再び導入され得るような温度に冷却される。
【0052】
XI.開示される技術の追加の例
開示される技術の追加の例は、上記の例に従って開示される。
【0053】
開示される技術のいくつかの例では、超電導コンピューティングシステムにおいて相互接続を提供する方法は、超電導ケーブルを、第1のセットの超電導論理ベースのデバイス及び第2のセットの超電導論理ベースのデバイスに結合するステップと、第1のセット、第2のセット、又は第1のセット及び第2のセットの超電導論理ベースのデバイスを第1の温度に冷却するステップと、超電導ケーブルを第1の温度よりも低い第2の温度に冷却するステップと、を含む。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4.2ケルビン度(K)であり、第2の温度は3ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約3.6ケルビン度(K)であり、第2の温度は1.2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は20ミリケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は、4.2、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度から構成されるグループから選択される温度より低く、第2の温度は、第1の温度より低い温度であり、第2の温度は、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度で構成されるグループから選択される。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも25%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度よりも少なくとも50%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも75%低い。
【0054】
いくつかの例では、この方法は、超電導ケーブルの少なくとも一部を取り囲む(enclosing:封入する)密閉封止された導管を提供するステップと、ジュール-トムソン弁を介してヘリウム蒸気の流れを導管内に流入させるステップとをさらに含む。いくつかの例では、この方法は、排気弁を介してヘリウム蒸気の流れを導管の外に流出させるステップをさらに含む。いくつかの例では、超電導ケーブルを冷却するために液体ヘリウムが供給される。いくつかの例では、相互接続に使用される超電導体の特性に応じて、より高い沸点を有するガスが導管内に供給される。いくつかの例では、この方法は、導管の外に流出するヘリウム蒸気の流れの少なくとも一部を冷却して、ジュール-トムソン弁を介して冷却した蒸気を導管内に供給するステップをさらに含む。いくつかの例では、この方法は、冷却蒸気又は液体を超電導相互接続に供給することに加えて、又はその代わりに、超電導ケーブルと熱連通するヒートパイプ又は熱伝導性ストラップを提供することをさらに含む。
【0055】
いくつかの例では、超電導ケーブルは、少なくとも1つの超電導信号線及び少なくとも1つの導体面を含み、超電導ケーブルを冷却するステップは、少なくとも1つの導体面と熱連通する少なくとも1つの冷却プレートを提供するステップを含む。いくつかの例では、超電導ケーブルを冷却するステップは、超電導ケーブルの少なくとも一部を取り囲む密閉封止されたマニホールドに液相又は気相ヘリウムを供給するステップを含む。いくつかの例では、2セットの超電導論理デバイスは2つの異なる基板上に配置される。いくつかの例では、2セットの超電導論理デバイスは2つの別々のエンクロージャ内に配置される。いくつかの例では、2セットの超電導論理デバイスは同じ極低温冷却器によって冷却されるが、他の例では、別々の冷却器が使用される。
【0056】
方法のいくつかの例では、冷却した液体ヘリウム又は気体ヘリウムを供給する弁に加えて、又はその代わりに、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップが提供される。ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、冷却装置と少なくとも1つの相互接続との間の熱連通を提供する。いくつかの例では、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、相互接続結合の絶縁体部分に配置された導体層を含む。いくつかの例では、導体層は金属である。いくつかの例では、導体層は、銅、アルミニウム、銀、金、又はチタンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、絶縁体は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、超電導相互接続結合は、ニオブ、窒化モリブデン、又は窒化ニオブチタンのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの信号線を含む。
【0057】
開示される技術のいくつかの例では、装置は、超電導相互接続の少なくとも一部を取り囲む(enclose:封入する)ように適合された封止可能な導管を含み、導管は、超電導相互接続を冷却するために液体又は気体冷却剤を受け取るようにさらに適合され、導管は、超電導相互接続を1つ又は複数の超電導論理デバイスに結合するようにさらに適合される。いくつかの例では、装置は、導管に結合され、且つ導管の内部に気体冷却剤を供給するように適合された少なくとも1つのジュール-トムソン弁を含む。いくつかの例では、装置は、導管に結合され、且つ導管の内部から気体冷却剤を受け取るように適合された排気ポートを含む。いくつかの例では、装置は、冷却剤としてヘリウムガス又は液体を受け取るように適合される。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4.2ケルビン度(K)であり、第2の温度は3ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約3.6ケルビン度(K)であり、第2の温度は1.2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は20ミリケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は、4.2、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度から構成されるグループから選択される温度より低く、第2の温度は、第1の温度より低い温度であり、第2の温度は、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度で構成されるグループから選択される。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも25%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度よりも少なくとも50%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも75%低い。いくつかの例では、相互接続に使用される超電導体の特性に応じて、ヘリウムよりも高い沸点を有するガスが導管内に供給される。
【0058】
いくつかの例では、装置は、絶縁体の上に配置された超電導材料を含む少なくとも1つの信号線を含む超電導相互接続を含む。いくつかの例では、装置は、導管に結合され、且つ導管の内部に液体冷却剤を供給するように適合された少なくとも1つの弁と、導管に結合され、且つ気体又は液体状の液体冷却剤を受け取るように適合された排気ポートとさらに含む。いくつかの例では、排気ポートは、冷却剤を再冷却して装置の弁に再循環させることができる極低温冷却器に結合される。いくつかの例では、超電導相互接続は、ケーブルの表面に配置された少なくとも1つの超電導ストリップラインを含むポリイミドケーブルを含み、ポリイミドケーブルは超電導相互接続の一部を形成する。いくつかの例では、装置は、導管に結合され、且つ第1の温度及び第1の圧力で供給される気体冷却剤を受け入れるように適合された弁をさらに含み、この弁は、第1の圧力よりも低い圧力で且つ第1の温度よりも低い第2の温度である気体冷却剤を導管の内部に供給するようにさらに適合される。いくつかの例では、装置は、冷却剤としてヘリウムガス又は液体を受け取るように適合される。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4.2ケルビン度(K)であり、第2の温度は3ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約3.6ケルビン度(K)であり、第2の温度は1.2ケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は約4ケルビン度(K)であり、第2の温度は20ミリケルビン度以下である。いくつかの例では、第1の温度は、4.2、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度から構成されるグループから選択される温度より低く、第2の温度は、第1の温度より低い温度であり、第2の温度は、4.0、3.6、3.0、2.4、2.0、又は1.2ケルビン度で構成されるグループから選択される。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも25%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度よりも少なくとも50%低い。いくつかの例では、第2の温度は、ケルビン度で表した第1の温度より少なくとも75%低い。いくつかの例では、相互接続に使用される超電導体の特性に応じて、ヘリウムよりも高い沸点を有するガスが導管内に供給される。いくつかの例では、装置は、冷却した液体ヘリウム又は気体ヘリウムを供給する弁に加えて、又はその代わりに、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップを含む。ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、冷却装置と少なくとも1つの相互接続との間の熱連通を提供する。いくつかの例では、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、相互接続結合の絶縁体部分に配置された導体層を含む。いくつかの例では、導体層は金属である。いくつかの例では、導体層は、銅、アルミニウム、銀、金、又はチタンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、絶縁体は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、相互接続結合は、ニオブ、窒化モリブデン、又は窒化ニオブチタンのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの信号線を含む。
【0059】
開示される技術のいくつかの例では、システムは、少なくとも2セットの超電導論理デバイスと、少なくとも2セットの超電導論理デバイスを第1の動作温度以下に冷却するように適合された冷却装置と、少なくとも2セットの超電導論理デバイスを結合する少なくとも1つの相互接続であって、少なくとも1つの超電導信号線を含む少なくとも1つの相互接続と、少なくとも1つの相互接続と熱連通する冷却装置であって、少なくとも1つの超電導信号線を、少なくとも2セットの超電導論理デバイスの第1の動作温度よりも低い第2の動作温度に冷却するように適合される冷却装置と、を含む。いくつかの例では、システムは、冷却した液体ヘリウム又は気体ヘリウムを供給する弁に加えて、又はその代わりに、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップを含む。ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、冷却装置と少なくとも1つの相互接続との間の熱連通を提供する。いくつかの例では、ヒートパイプ又は熱伝導性ストラップは、相互接続結合の絶縁体部分に配置された導体層を含む。いくつかの例では、導体層は金属である。いくつかの例では、導体層は、銅、アルミニウム、銀、金、又はチタンのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、絶縁体は、ポリイミド、Kapton(登録商標)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Ceraflex(登録商標)、フッ素化エチレンプロピレン、Teflon(登録商標)、Mylar(登録商標)、又はセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの例では、相互接続結合は、ニオブ、窒化モリブデン、又は窒化ニオブチタンのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの信号線を含む。いくつかの例では、システムは、少なくとも1つの相互接続の少なくとも一部を取り囲む密閉封止された導管をさらに含み、導管は、第1の動作温度よりも低い温度で供給される冷却剤を受け入れるようにさらに構成される。
【0060】
開示される主題の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示される実施形態は、開示される技術の好ましい例に過ぎず、特許請求の範囲に記載の主題を限定するものと見なすべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。従って、我々は、これらの特許請求の範囲内にある全てのものを発明として主張する。