(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】三置換ベンゾトリアゾール誘導体の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4192 20060101AFI20240213BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K31/4192
A61P35/02
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020566525
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 US2019018472
(87)【国際公開番号】W WO2019164794
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/018679
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521281955
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウラネット, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソン ウン
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0224663(US,A1)
【文献】国際公開第2018/197997(WO,A1)
【文献】特表2020-517654(JP,A)
【文献】Translational Cancer Research,2017年,Vol.6, Suppl.1,S109-S111
【文献】Current Treatment Options in Oncology,2015年,Vol.16,Article 58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4192
A61P 35/02
A61P 35/00
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における、化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病
、骨髄異形成症候群、原発性滲出性リンパ腫
、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、
およびトリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択される癌を治療する方法において使用するための、化合物を含む医薬組成物であって、前記化合物は、以下の構造式:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩で表される、医薬組成物。
【請求項2】
前記癌が化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病がシタラビン耐性の急性骨髄性白血病である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記癌が骨髄異形成症候群である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記癌が原発性滲出性リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記癌がダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が、c-MYCおよびBCL2での遺伝子変化によって特徴付けられる、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が、c-MYCおよびBCL6での遺伝子変化によって特徴付けられる、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記癌がトリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年2月20日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/018679号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、式(I)の三置換ベンゾトリアゾール誘導体の使用方法、特にこれらの化合物での癌治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の詳細
リンパ腫、白血病、骨髄腫および骨髄異形成症候群は、血液癌または血液学的癌の四つの主なグループであり、さまざまなサブタイプにさらに分割される。米国では、三分に一人が血液学的癌と診断され、九分に一人がそれにより死亡すると推定される。
【0003】
注目すべきことに、急性単球性白血病は、急性骨髄性白血病(AML)の明確なサブタイプであり、骨髄中に20%を超える芽球を有する患者、そのうち80%を超えるものは単球系であるという独特な臨床的特徴を有する。急性単球性白血病は、AMLの他のサブタイプと比較して慎重を期すべき不良な予後であることが報告されており、疾患は化学療法、特にエピポドフィロトキシンおよびアントラサイクリンの曝露後に発症しうることが示されている。
【0004】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、別の白血病サブタイプであり、リンパ芽球の異常増殖が正常な造血を抑制し、進行性髄不全および死亡をもたらす、侵攻性の血液学的悪性腫瘍である。この特定のサブタイプは、二峰性の年齢分布を有し、最初のピークは小児期にあり、二番目は高齢者で増加する。小児のALLに対する転帰は、現代の化学療法レジメンで改善されているが、成人の転帰は依然として悪いままであり、これは有害な腫瘍生態の増加と、治療耐性の低下の組み合わせによるものである。その結果、初期寛解率が高いにもかかわらず、ほとんどの成人は再発に向かっている。再発ALLを有する成人のほとんどが、「現在の療法では救済できない」と宣言されている。これは、事実上すべての積極的な療法が一次治療中に使用されるという事実の結果である可能性がある。ALLのさらなる積極的な療法は明らかに必要である。
【0005】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の先駆的な遺伝子評価は、MYCとBCL2/BCL6の二重再構成が、DLBCL患者の約5%~7%で発生することを明らかにした。この形態のDLBCLは、最近、「MYCおよびBCL2および/またはBCL6再構成を伴うハイグレードB細胞リンパ腫」として再分類され、現在、一般的に「ダブルヒットDLBCL」または「ダブルヒットリンパ腫」と呼ばれている。しばしば、3つの遺伝子-MYC、BCL2およびBCL6-のすべてが「トリプルヒットDLBCL」または「トリプルヒットリンパ腫」と呼ばれる表現型に同時に再構成される。ダブルヒットおよびトリプルヒットリンパ腫はどちらも、高度に増殖性および薬物耐性である。どちらの表現型も、リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン(R-CHOP)などの標準的治療では、極めて不良な予後に関連し、その全てが最適ではない。ダブルヒットリンパ腫を有する患者が、このアプローチで治癒することはほとんどない。エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびドキソルビシン+リツキシマブ(EPOCH-R)などのより集中的な治療が標準的治療よりも優れている可能性があることを示唆する遡及的検討がある。移植を受けることができない患者、または幹細胞移植後に再発する患者については、生存期間の中央値はおよそ6ヶ月である。
【0006】
すべての肺癌の約85%を占める非小細胞肺癌または非小細胞肺癌腫(NSCLC)では、手術が主要な治療である。しかしながら、患者の四分の一のみが、切除に成功し、再発率は50%である。進行した疾患における治療アプローチには、術後のアジュバント化学療法および/またはアジュバント放射線療法の両方が含まれるが、単剤療法としての化学療法(一次療法)は、比較的不良な結果に関連するアプローチであると考えられる。一般的に使用されている四つの併用化学療法レジメンの比較では、どれも優れていなかった。奏効率は15%~22%であり、1年生存率は31%~36%であった。したがって、手術前の化学療法が、平均余命の延長をもたらさなかったようであっても、アジュバント化学療法(放射線療法と組み合わせた場合も)は、平均余命の著しい延長を示した。
【0007】
数十年にわたる進行性卵巣癌を有する患者の全生存期間中央値の改善にもかかわらず、疾患経過は断続的な再治療を必要とする寛解および再発の一つである。漿膜(腹膜、胸膜、および心膜)腔内の滲出液中の癌細胞の存在は、進行ステージの卵巣癌の臨床徴候であり、生存率の低下と関連付けられている。大部分の固形腫瘍、特に原発部位とは異なり、滲出液中の卵巣癌細胞は、外科的除去に適しておらず、また根絶の失敗は、治療不成功の主要原因の一つである。
【0008】
上記の観点から、侵攻性リンパ腫および白血病サブタイプ、特に標準的な治療法に難治性のリンパ腫の形態を、より効果的に治療することができる新薬に対するアンメットニーズが残っている。骨髄異形成症候群およびびまん性混合細胞型リンパ腫など、比較的知られておらず、理解されてもいない、他の血液学的癌を治療できる新薬のニーズも存在する。一般に、優れた効力、特異性、および忍容性を有する抗癌薬に対する継続的ニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対象における、化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病、シタラビン耐性急性骨髄性白血病、急性単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、びまん性混合細胞型リンパ腫、骨髄異形成症候群、原発性滲出性リンパ腫、赤白血病、慢性骨髄性白血病、慢性単球性白血病、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胆道癌またはファーター膨大部の癌、非小細胞肺癌、細気管支肺胞上皮癌、肝臓癌、卵巣癌、および上気道消化管の癌から選択される癌を治療する方法に関する。本方法は、式(I):
【化1】
で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を一回または複数回対象に投与するステップを含む。構造では、環中の点線[...]は、任意の安定した組み合わせで存在する任意の結合を表す。R
1は水素およびアルキルから選択され、R
2は-A-R
4であり、Aはアリーレンまたは四置換アリーレンであり、ここで置換基はハロゲンであり、R
3はヒドロキシおよびアミノから選択され、R
4は一つまたは複数のR
5で任意に置換される、アリールおよびヘテロアリールから選択され、R
5はアルキルおよび-(CH
2)
nN(R
a)R
bから選択される。R
aおよびR
bは、水素、アルキル、および-C(O)アルキルから独立して選択され、あるいは、R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、OおよびNから独立して選択される0~2個の追加のヘテロ原子を含み、任意にアルキルで置換される、4~6員のヘテロシクリルを形成することができる。nは、0および1から選択される整数である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の化合物1による成長阻害に対する造血および非造血起源の約400のヒト癌株のパネルの感受性を示す。
【
図2】
図2は、本発明の化合物1による成長阻害に対するヘム系のヒト癌株の追加のパネルの感受性を示す。
【
図3】
図3は、化合物1で処置されたTHP-1細胞株の4日および7日の相対成長曲線を示す。
【
図4】
図4は、化合物1で処置されたHT細胞株の4日および7日の相対成長曲線を示す。
【
図5A】
図5Aは、さまざまな濃度の化合物1に対する、MV411、Kasumi-1、THP-1、DB、ToledoおよびWSU-DLCL2細胞株の相対成長率対濃度感受性プロファイルを示す。
【
図5B】
図5Bは、さまざまな濃度のシタラビンに対する、MV411、Kasumi-1、THP-1、DB、ToledoおよびWSU-DLCL2細胞株の相対成長率対濃度感受性プロファイルを示す。
【
図5C】
図5Cは、さまざまな濃度のドキソルビシンに対する、MV411、Kasumi-1、THP-1、DB、ToledoおよびWSU-DLCL2細胞株の相対成長率対濃度感受性プロファイルを示す。
【
図6】
図6は、さまざまな濃度の化合物1で96時間処置された、OCILY18、SC-1およびCARNAVALダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の相対成長率を示す曲線である。
【
図7A】
図7Aは、CB17 SCIDマウスにおけるOCILY-19ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を、未処置のまま(ビヒクル)、または10mg/kgの化合物1でBID処置、30mg/kgの化合物1でBID処置、100mg/kgの化合物1でBID処置、および200mg/kgの化合物1でQD処置した場合の、全て14日間にわたって測定した腫瘍成長曲線を示す。
【
図7B】
図7Bは、治験終了時の最終投与後の指示時点での、CB17 SCIDマウスの血漿における、
図7Aに記載の用量で投与された化合物1の薬物動態プロファイルを示す。
【
図7C】
図7Cは、治験終了時の最終投与後12時間にわたって測定された、未処置(ビヒクル)のOCILY-19腫瘍、および指示された用量で化合物1で処置された腫瘍におけるDHOレベルを示す。
【
図7D】
図7Dは、治験終了時の最終投与後12時間にわたって測定された、未処置(ビヒクル)のOCILY-19腫瘍、および指示された用量で化合物1で処置された腫瘍におけるウリジンレベルを示す。
【
図8】
図8は、未処置(ビヒクル)のまま、または100mg/kgの化合物1でBID処置された場合、CB17 SCIDマウスにおける患者由来のDLBCL_1(トリプルヒットDLBCL)腫瘍成長曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、対象における、化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病、シタラビン耐性急性骨髄性白血病、急性単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、びまん性混合細胞型リンパ腫、骨髄異形成症候群、原発性滲出性リンパ腫、赤白血病、慢性、骨髄性白血病、慢性単球性白血病、B細胞リンパ腫、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胆道癌またはファーター膨大部の癌、非小細胞肺癌、細気管支肺胞上皮癌、肝臓癌、卵巣癌、および上気道消化管の癌から選択される癌を治療する方法にさらに関し、式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、またはこれを含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む。
【0012】
一実施形態では、この方法で治療される癌は、化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、シタラビン耐性の急性骨髄性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、急性単球性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、急性リンパ芽球性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、びまん性混合細胞型リンパ腫である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、骨髄異形成症候群である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、原発性滲出性リンパ腫である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、赤白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、慢性骨髄性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、慢性単球性白血病である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、B細胞リンパ腫である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、胆道癌またはファーター膨大部の癌である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、非小細胞肺癌である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、細気管支肺胞上皮癌である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、肝臓癌である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、卵巣癌である。一実施形態では、この方法で治療される癌は、上気道消化管の癌である。
【0013】
本明細書において使用される場合、「化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病」は、急性骨髄性白血病の標準的な化学療法に対して抵抗性または難治性の急性骨髄性白血病の一形態を指す。一実施形態では、急性骨髄性白血病の標準的な化学療法は、シタラビン、ドキソルビシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、イダルビシン、クラドリビン(clardribine)(Leustatin(登録商標)、2-CdA)、フルダラビン(Fludara(登録商標))、トポテカン、エトポシド(VP-16)、6-チオグアニンまたは6-TG、ヒドロキシウレア(Hydrea(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾンまたはデキサメタゾン(デカドロン(登録商標))、メトトレキサートまたはMTX、6-メルカプトプリンまたは6-MP、アザシチジン(Vidaza(登録商標))、デシタビン(Dacogen(登録商標))から選択される一つまたは複数の承認された化学療法剤を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「シタラビン耐性の急性骨髄性白血病」は、シタラビンを単独で、または一つもしくは複数の追加的治療剤と組み合わせて行う、疾患の治療に対して抵抗性または難治性の急性骨髄性白血病の一形態を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は、リンパ腫細胞が二つの発癌遺伝子、c-MYCおよびBCL2またはBCL6で変化している、リンパ腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一形態を指す。一実施形態では、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫はこの方法で処置され、c-MYCおよびBCL2での遺伝子変化によって特徴付けられる。別の実施形態では、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫はこの方法で処置され、c-MYCおよびBCL6での遺伝子変化によって特徴付けられる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は、リンパ腫細胞が三つの発癌遺伝子、c-MYC、BCL2、およびBCL6で変化している、リンパ腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一形態を指す。一実施形態では、トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、この方法で処置される。
【0017】
本発明によると、この治療方法で使用される化合物は、式(I):
【化2】
によって表されるか、または薬学的に許容可能な塩であり、式中、環中の点線[...]は、任意の安定した組み合わせで存在する任意の結合を表し、R
1は水素およびアルキルから選択され、R
2は-A-R
4であり、Aはアリーレンまたは四置換アリーレンであり、ここで置換基はハロゲンであり、R
3はヒドロキシおよびアミノから選択され、R
4は一つまたは複数のR
5で任意に置換される、アリールおよびヘテロアリールから選択され、R
5はアルキルおよび-(CH
2)
nN(R
a)R
bから選択される。R
aおよびR
bは、水素、アルキル、および-C(O)アルキルから独立して選択され、あるいは、R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、OおよびNから独立して選択される0~2個の追加のヘテロ原子を含み、任意にアルキルで置換される、4~6員のヘテロシクリルを形成することができる。nは、0および1から選択される整数である。
【0018】
本明細書に記載の式(I)で表される化合物は、以下の構造:
【化3】
のいずれか一つを有する位置異性体を含む。
【0019】
位置異性体の医薬活性は異なる場合があるため、特定の位置異性体または位置異性体の混合物を使用することが望ましい場合がある。このような場合、位置異性体は、当業者に周知の一つまたは複数のプロセスによって、中間体として、または最終生成物として、可能な段階のいずれかで分離され得るか、または合成においてそのように用いられ得る。
【0020】
一実施形態によると、式(I)によって表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が提供され、式中、R1はアルキルであり、特にアルキルはメチルである。
【0021】
別の実施形態によれば、式(I)で表される化合物が提供され、式中、R2は-A-R4であり、-A-はアリーレンおよび四置換アリーレンから選択される。
【0022】
別の実施形態によると、式(I)によって表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が提供され、式中、R
2は
【化4】
から選択される。
【0023】
別の実施形態によれば、式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が提供され、式中、R
4は任意で置換されるフェニルから選択され、ここで、任意の置換基は、メチル、アセチルアミノ、イソプロピルアミノメチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、
【化5】
から選択される。
【0024】
別の実施形態によると、式(I)によって表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が提供され、式中、R4は2,5-ジメチル-1H-ピロールから選択される。
【0025】
別の実施形態によると、式(I)によって表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が提供され、式中、R3は-OHおよび-NH2である。
【0026】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明の化合物は、式(Ia):
【化6】
で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、式中、点線[---]、R
1、R
3およびR
4は、式(I)で定義したものと同じである。
【0027】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明の化合物は、式(Ib):
【化7】
で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であり、式中、点線[---]、R
1、R
3およびR
4は、式(I)に記載したものと同じである。
【0028】
開示された治療方法で使用できる化合物の例には、以下:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
またはその薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、示される数の炭素原子を含む、直鎖または分岐鎖であり得る炭化水素鎖を指し、例えば、C1-C6アルキル基は、その中に1~6個(包含)の炭素原子を有し得る。C1-C4アルキル基およびC1-C6アルキル基の例には、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびイソヘキシルが含まれる。アルキル基は、非置換、または一つもしくは複数の適切な基で置換されてもよい。
【0030】
本明細書において使用される場合、「アミノ」とは、-N-基を指し、該基の窒素原子は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたは任意の適切な基に結合している。アミノ基の代表例には、-NH2、-NHCH3および-NH-シクロプロピルが含まれるが、これらに限定されない。アミノ基は、非置換、または適切な基の一つもしくは複数で置換されてもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アリール」とは、約6~14個の炭素原子の、任意で置換される単環式、二環式または多環式芳香族炭素環系を指す。C6-C14アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アンスリル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル、ビフェニルエニル、およびアセナフチルが挙げられる。非置換、または一つもしくは複数の適切な基で置換されてもよいアリール基。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アリーレン」は、非置換、または一つもしくは複数の適切な基で置換されてもよい、6~14個の炭素原子を有する、二価の単環式または二環式、飽和、不飽和、または芳香族炭素環を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシ」は、-OH基を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、「ヘテロシクロアルキル」および「ヘテロアリール」の定義を含む。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、O、N、S、S(O)、S(O)2、NHおよびC(O)から選択される、少なくとも一つのヘテロ原子またはヘテロ基を有する、3~10員の非芳香族、飽和または部分的に飽和した、単環式または多環式環系を指す。例示的なヘテロシクロアルキル基としては、ピペルジニル(piperdinyl)、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、非置換、または一つもしくは複数の適切な基で置換されてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」とは、酸素、硫黄および窒素から選択される、少なくとも一つのヘテロ原子を含む、不飽和、単環式、二環式、または多環式芳香族環系を指す。C5-C10ヘテロアリール基の例には、フラン、チオフェン、インドール、アザインドール、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、N-メチルピロール、ピラゾール、N-メチルピラゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-メチル-1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、1-メチルテトラゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾイソオキサゾール、ベンズイミダゾール、N-メチルベンズイミダゾール、アザベンズイミダゾール、インダゾール、キナゾリン、キノリン、およびイソキノリンが含まれる。二環式ヘテロアリール基には、フェニル、ピリジン、ピリミジンまたはピリダジン環が、環中に一個または二個の窒素原子、環中に一個の酸素原子または一個の硫黄原子のいずれかと共に一個の窒素原子、または一個のOまたはS環原子を有する、5員または6員の単環式ヘテロシクリル環に縮合するものが含まれる。ヘテロアリール基は、非置換、または一つもしくは複数の適切な基で置換されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」は、硫黄、窒素または酸素原子を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「任意で置換または置換」は、任意で置換された基の少なくとも一つの水素原子が、例示されるハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、チオ(=S)、-N(C1-C3アルキル)C(O)(C1-C6アルキル)、-NHC(O)(C1-C6アルキル)、-NHC(O)(シクロアルキル)、-NHC(O)(アリール)、-NHC(O)(ヘテロシクリル)、-NHC(O)(ヘテロアリール)、-NHC(O)H、-C(O)NH2、-C(O)NH(C1-C6アルキル)、-C(O)NH(シクロアルキル)、-C(O)NH(ヘテロシクリル)、-C(O)NH(ヘテロアリール)、-C(O)N(C1-C6アルキル)(C1-C6アルキル)、-S(O)NH(C1-C6アルキル)、-S(O)2NH(C1-C6アルキル)、 -S(O)NH(シクロアルキル)、 -S(O)2NH(シクロアルキル)、 カルボキシ、-C(O)O(C1-C6アルキル)、-C(O)(C1-C6アルキル)、=N-OH、置換または非置換アルキル、置換または非置換ハロアルキル、置換または非置換アルコキシ、置換または非置換ハロアルコキシ、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アリール、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換シクロアルキル、 置換または非置換シクロアルケニルアルキル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換アミノ、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換複素環に限定されないが、適切な置換基で置換されていることを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」は、特にこの塩の形態が、前に使用されていた活性成分の遊離形態または活性成分の他の任意の塩の形態と比較して、活性成分に改善された薬物動態特性を与える場合、その塩の一つの形態で式(I)の化合物を含む、活性成分を意味すると解釈される。活性成分の薬学的に許容可能な塩の形態はまた、この活性成分に、それ以前にはなかった所望の薬物動態特性を初めて提供することができ、さらに体内での治療効果に関して、この活性成分の薬物動態学的に好ましい影響を与えることもできる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用することができ、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、治療的であってもよく、それには部分的または実質的に以下の結果の一つまたは複数を達成することを含む:疾患、障害または症候群の程度を部分的または完全に低減させること;障害に関連する臨床症状または指標を緩和または改善すること;および疾患、障害、または症候群の進行の可能性を遅延、抑制、または減少させること。
【0042】
「治療有効量」という用語は、例えば、体重1kg当たり0.1mg~1000mgを対象に投与した場合に、臨床結果、すなわち、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩によって治療可能な疾患または状態の進行を逆転、緩和、抑制、低減または遅延させ、式 (I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩によって治療可能な疾患または状態またはその一つまたは複数の症状の再発の可能性を、対照と比較して、例えば臨床症状によって決定されるように減少させることを含む、有益なまたは所望の結果をもたらす、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の量を意味する。「治療有効量」という表現は、正常な生理作用を向上させるために有効な量も包含する。
【0043】
「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、それと共に製剤化される化合物の薬理作用に悪影響を及ぼさず、かつヒトの使用に安全でもある、無毒性担体、希釈剤、アジュバント、ビヒクルまたは賦形剤を指す。本開示の組成物において使用することができる薬学的に許容可能な担体には、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース-水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
医薬製剤は、例えば、経口(頬側または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(頬側、舌下または経皮を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)方法など、任意の所望の適切な方法による投与に適合させることができる。こうした製剤は、例えば、有効成分を賦形剤またはアジュバントと組み合わせることによって、医薬品技術分野で公知のすべてのプロセスを使用して調製することができる。
【0045】
経口投与に適合された医薬製剤は、例えば、カプセルもしくは錠剤、粉末もしくは顆粒、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液、食用泡もしくは泡食品、または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンなどの別個の単位で投与することができる。
【0046】
例えば、錠剤またはカプセルとしての経口投与の場合、有効成分構成要素は、例えば、エタノール、グリセロール、水などの経口、非毒性および薬学的に許容可能な不活性賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに粉砕し、それを例えば、澱粉またはマンニトールなどの食用炭水化物など、類似の方法で粉砕された医薬品賦形剤と混合することによって調製される。同様に、風味剤、防腐剤、分散剤および染料が存在しうる。
【0047】
カプセルは、上述のように粉末混合物を調製し、形成されたゼラチンシェルにそれを充填することによって製造される。滑剤および潤滑剤、例えば、高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固形形態のポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に添加することができる。カプセルが摂取された後の薬剤の有効性を改善するために、例えば、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムをなどの崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
【0048】
さらに、所望または必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに染料を同様に混合物に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコースまたはベータラクトース、トウモロコシから作られた甘味料、天然および合成ゴム、例えば、アラビアゴム、トラガント、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤は、それに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒または乾式プレスし、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体を圧縮して錠剤を得ることによって製剤化される。粉末混合物は、粉砕された化合物を、上述のように、希釈剤または基剤と、および任意に、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、例えば第四級塩などの吸収促進剤、および/または、例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムなどの吸収剤と、適切な方法で混合することにより調製される。粉末混合物は、例えば、シロップ、デンプンペースト、アカディア粘液またはセルロースまたはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿らせ、およびふるいを通して圧縮することによって造粒することができる。造粒の代替として、粉末混合物を打錠機に通して、不均一な形状の塊を与え、これは粉砕されて顆粒を形成することができる。顆粒は、錠剤成形型への付着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加することによって潤滑することができる。次に、潤滑された混合物を圧縮して錠剤を得る。有効成分はまた、自由流動性の不活性賦形剤と組み合わせ、その後、造粒または乾式プレス工程を経ることなく、直接圧縮して錠剤を得ることができる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料の層、およびワックスの光沢層から成る透明または不透明な保護層が存在してもよい。異なる投与単位間を区別できるように、これらのコーティングに染料を添加することができる。
【0049】
経口液体、例えば、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤などは、所与の量が、予め指定された量の化合物を含むように、投与単位の形態で調製されうる。シロップ剤は、適切な風味を有する水溶液に化合物を溶解することによって調製することができ、エリキシル剤は、非毒性のアルコール性ビヒクルを使用して調製される。懸濁剤は、非毒性のビヒクルに化合物を分散させることによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル、防腐剤、風味添加剤、例えばペパーミントオイルもしくは天然甘味料もしくはサッカリン、または他の人工甘味料なども同様に添加することができる。
【0050】
経口投与用の投与単位製剤は、所望に応じて、マイクロカプセル内に封入されうる。製剤はまた、例えば、粒子材料をコーティング、またはポリマー、ワックスなどに埋め込むことなどにより、放出を延長または遅延させるような方法で調製することもできる。
【0051】
式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、米国特許第9,630,932号に記載される方法および手順を使用して調製されてもよく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
本発明は以下の特定の実施例によって例示されているが、それによって限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は、本明細書で前に開示した一般的な領域を包含する。その趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な修正および実施形態を作成することができる。
【実施例】
【0053】
実施例1
化合物1による複数のヒト癌細胞株のインビトロでの成長阻害
化合物1を用いたDHODH阻害に特に感受性である腫瘍細胞サブセットを特定することを目的とした腫瘍細胞株パネルスクリーニングが実施された。以下の構造式で表される化合物1:
【化15】
これらの細胞株を合計72時間、化合物1で処置した。
【0054】
図1および表1に示すように、72時間の処置後の腫瘍成長率の評価は、細胞株の別個のサブセット(
図1で灰色の点によって示す)が化合物1に感受性であることを明らかにした。いくつかの固形腫瘍株も高感度示したが、化合物1に対して高感度を示す細胞株の大部分は、造血由来である(表1)。
図1を作製する目的で、感受性細胞株は、75%以上の最大成長阻害および1.5μM未満のlog GI
50値を示すものと定義された。表1では、100の最大阻害は、完全な成長阻害を表し、>100の最大阻害値は細胞殺滅を表す。
【0055】
フォローアップスクリーニングは、4日間の成長アッセイで、ヘム系統の細胞株の拡張パネルで実施した。0日目および4日目にCell-Titer Glo測定によって成長を評価した。
図2に示されるように、スクリーニングされたヘム株の25%(20/80)が、化合物1に対する感受性を示した。このフォローアップスクリーニングで、化合物1に対して中程度の感受性(50%超および75%未満の成長率阻害として定義)または非感受性(50%未満の成長率阻害として定義)であった、ヘム株のサブセットを拡張成長アッセイに供し、延長した処置時間がそれらの感受性プロファイルを調節したかどうかを評価した。具体的には、これらのヘム株を、指定された濃度で3日間、化合物1で前処置し、次いで、新鮮な培地/薬物での標準的な4日間の成長アッセイのために再びプレーティングした。再試験されたヘム株の大部分は、7日間の処置後に化合物1に対する強い感受性を示した(表2)。
図3および
図4は、それぞれ化合物1で処置されたTHP-1細胞株およびHT細胞株の4日および7日の相対成長曲線を示す。成長率は式: ln(T
96/T
0)/時間(時間)を使用して計算され、DMSO処理細胞に対してプロットされた。このアッセイでの化合物1に対するTHP-1細胞の強い感受性は、報告によると活性代謝物Ara-CTPを不活性化するSAMHD1の高い発現により、AMLの標準治療薬シタラビン(Ara-C)に対する耐性があることから特に興味深い。言い換えれば、THP-1細胞はSAMHD1を高度に発現するが、これはシタラビンに対する耐性のメカニズムに相関している(Schneider et al.,Nature Medicine, 2017,23(2),250-254;Herold et al.,Cell Cycle,2017,16(11):1029-1038)。また細胞株は、7日間のアッセイで化合物1に感受性であることが示された。したがって、化合物1は、標準化学療法剤に対する耐性を発達させたAML患者の治療に特に有益であり得る。
【0056】
表1.化合物1で処置されたさまざまな細胞株のGI
50 および最大成長阻害
【表1】
【0057】
表2.化合物1で処置されたさまざまなヘム細胞株の4日および7日の感受性
【表2-1】
【表2-2】
【0058】
実施例2
シタラビンおよびドキソルビシン感受性プロファイルに対する化合物1の感受性プロファイルの比較
ヘム株のサブセットに対する化合物1の感受性プロファイルを、ヘム悪性腫瘍の標準治療(SOC)として使用される他の薬剤の感受性プロファイルと比較した。化合物1は、シタラビン(
図5B)およびドキソルビシン(
図5C)感受性プロファイルとは異なる感受性プロファイル(
図5A)を示し、それによって化合物1の作用機序がシタラビンおよびドキソルビシンのものとは異なることを示唆する。
【0059】
実施例3
化合物1によるダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ヒト癌細胞株のインビトロでの成長阻害
ダブルヒットDLBCLとして分類された三つの患者由来のDLBCLリンパ腫細胞株、すなわち、OCILY18、SC-1、およびCARNAVALは、96時間の成長アッセイで化合物1による阻害に対して感受性が高いことが判明した(
図6)。
【0060】
実施例4
化合物1は、患者由来のダブルヒットDLBCL異種移植片モデルの腫瘍成長を効果的に阻止する
OCILY-19ダブルヒットびまん性大きなB細胞リンパ腫(DLBCL)異種移植片モデルにおいて、化合物1による強力な腫瘍成長阻害がインビボで観察された。7×106 OCILY-19細胞をCB17 SCIDマウスに皮下移植した。マウス(n=15~18/群)を、腫瘍が平均約150mm3に達したら、指示された用量/頻度でビヒクルまたは化合物1で処置した。PKおよびバイオマーカー分析のために、最後の投与後の指示された時点で、組織を採取した。
【0061】
経路調節および腫瘍成長阻害の程度は、用量およびスケジュールに依存することが実証された(
図7A)。100mg/kgのBID投与レジメンは、10および30mg/kgのBID投与群と比較して優れた有効性をもたらし、これは腫瘍DHOのより高い上昇(
図7C)、および全腫瘍ウリジンプールの減少と相関した(
図7D)。200mg/kgのQDレジメンは、マウスでの化合物1の半減期が短いことに起因して、100mg/kgのBID投与レジメンよりも有効性が低く、QD投与ではトラフ薬物濃度がより低かった(
図7B参照)。
【0062】
実施例5
化合物1は、患者由来のトリプルヒットDLBCL異種移植片モデルの腫瘍成長を効果的に阻止する
トリプルヒットDLBCL患者由来の異種移植片モデル(DLBCL_1)における化合物1の有効性は、血液由来のPDXモデルにおける感受性に関するより大きなスクリーニングの一部として評価された。担腫瘍マウス(n=3/群)を、100mg/kgのBID POで、ビヒクルまたは化合物1で処置した。
【0063】
図8に示すように、化合物1の抗腫瘍活性は、試験されたDLBCL_1モデルで、70%超のTGIが観察された。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における、化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病、シタラビン耐性急性骨髄性白血病、急性単球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、びまん性混合細胞型リンパ腫、骨髄異形成症候群、原発性滲出性リンパ腫、赤白血病、慢性骨髄性白血病、慢性単球性白血病、ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胆道癌またはファーター膨大部の癌、非小細胞肺癌、細気管支肺胞上皮癌、肝臓癌、卵巣癌、および上気道消化管の癌から選択される癌を治療する方法であって、以下の構造式:
【化16】
で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の治療有効量を前記対象に投与することを含み、式中、
前記環中の前記点線[...]は、任意の安定した組み合わせで存在する任意の結合を表し、
R
1
は、水素およびアルキルから選択され、
R
2
は-A-R
4
であり、
Aは、アリーレンまたは四置換アリーレンであり、前記置換基はハロゲンであり、
R
3
は、ヒドロキシおよびアミノから選択され、
R
4
は、一つまたは複数のR
5
で任意に置換されるアリールおよびヘテロアリールから選択され、
R
5
は、アルキルおよび-(CH
2
)
n
N(R
a
)R
b
から選択され、
R
a
およびR
b
は独立して、水素、アルキル、および-C(O)アルキルから選択され
、
あるいは、R
a
およびR
b
は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、OおよびNから独立して選択される0~2個の追加のヘテロ原子を含み、任意にアルキルで置換される、4~6員のヘテロシクリルを形成することができ、
nは、0および1から選択される整数である、方法。
(項目2)
前記癌が化学療法抵抗性の急性骨髄性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記癌がシタラビン耐性の急性骨髄性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記癌が急性単球性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記癌が急性リンパ芽球性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記癌がB細胞リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記癌がびまん性混合細胞型リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記癌が骨髄異形成症候群である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記癌が原発性滲出性リンパ腫である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記癌が赤白血病である、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記癌が慢性骨髄性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記癌が慢性単球性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目13)
ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が処置され、c-MYCおよびBCL2での遺伝子変化によって特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目14)
ダブルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が処置され、c-MYCおよびBCL6での遺伝子変化によって特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目15)
トリプルヒットびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が処置される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記癌が胆道癌またはファーター膨大部の癌である、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記癌が非小細胞肺癌である、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記癌が細気管支肺胞上皮癌である、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記癌が肝臓癌である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記癌が前記卵巣の癌である、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記癌が前記上気道消化管の癌である、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記化合物が、以下:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
またはその薬学的に許容可能な塩から選択される、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記化合物が、
【化24】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記化合物が、
【化25】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、
【化26】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記化合物が、
【化27】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記化合物が、
【化28】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記化合物が、
【化29】
またはその薬学的に許容可能な塩である、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。