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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】洋上作業員の移送で使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/30 20060101AFI20240213BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20240213BHJP
   B63B 79/15 20200101ALI20240213BHJP
【FI】
B63B27/30
B63B49/00 Z
B63B79/15
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020572728
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066719
(87)【国際公開番号】W WO2020007637
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】18181713.1
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ロストローム、モルテン・パラノス・ペルドモ・サントス
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドルフ、ミッケル・ハウガード
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン、ニールス・アグナー
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102015108882(DE,B3)
【文献】欧州特許出願公開第02520485(EP,A1)
【文献】特開2016-044556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081028(US,A1)
【文献】特表2016-515484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00 - 85/00
B63J 1/00 - 99/00
B63H 1/00 - 25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員移送船と構造物との間で、またはその逆で人員を移送するときに、人員の移送で使用するための方法であって、
前記作業員移送船が、
推進および操縦システムと、
海波を検出するために適合された波動検出装置と、
前記波動検出装置によって検出された海波に応答して、船首の動きを予測するための予測システムと、
前記予測システムに基づいて、第一の所定の期間内の船首の動きの第一の閾値を下回る船首の動きの予測を移送される人員および移送を補助する者に表示するよう適合されたインジケータと、を備え、
前記方法は、
前記推進および操縦システムを使用して前記作業員移送船を前記構造物に対して押し付ける工程と、
前記波動検出装置を使用して前記海波を検出する工程と、
前記検出された海波に基づいて、前記予測システムを使用して、船首の動きが前記第一の所定の期間内に前記船首の動きの第一の閾値を下回るかどうかを予測し、下回る場合に前記インジケータを使用してこれを示す工程と、
前記船首の動きが前記第一の所定の期間内に前記船首の動きの第一の閾値を下回ると示されるときにのみ前記人員を移送する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記インジケータが、前記予測システムに基づいて、第二の所定の期間内の船首の動きの第二の閾値を下回る船首の動きの第二の予測を示すように適合され、前記船首の動きの第二の閾値が前記船首の動きの第一の閾値よりも低く、前記船首の動きが前記第二の所定の期間内の前記船首の動きの第二の閾値を下回ると示されるときにのみ前記人員を移送する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記船首の動きが前記第一の所定の期間内の前記船首の動きの第一の閾値を下回ることが示されるまで、安全ロープを構造物に取り付け、前記人員の前記安全ロープへの取り付けが実行されない、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記構造物が固定された構造物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予測システムが、前記波動検出装置から、および船首の動きの検出器からの入力データセットを使用して、動作中に継続的に訓練される適合アルゴリズムを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
推進および操縦システムと、
波動検出装置と、
船首の動きの検出システムと、を備える作業員移送船の船首の動きを予測するためのシステムであって、
前記波動検出装置から海波のパターンを示すデータセットを受信し、船首の動きを示すデータセットを受信し、かつ前記海波のパターンを示す前記データセットと船首の動きを示すデータセットとの間の相関に基づいて予測することができるようになるように、前記海波のパターンを示す前記データセットを、前記海波のパターンを示す前記データセットと相関させるように適合された予測器を備え、前記予測に基づいて、前記波動検出装置からの海波のパターンを示すデータセットの前記受信後、第一の期間内船首の動きの予測を出力し、
前記予測の結果を移送される人員および移送を補助する者に表示するインジケータをさらに備える、システム。
【請求項7】
前記予測器が、海波のパターンを示す前記データセットと、船首の動きを示すデータセットとの新しい相関を、前記相関に追加するようにさらに適合される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記予測器が、前記相関を所与の場所とさらに相関させるように適合されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記予測に基づいて、ドッキングの最適な角度の表示を出力するようにさらに適合される、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員移送船の船首の動きを予測するためのシステム、および作業員移送船と構造物との間で人員を移送するときに洋上作業員の移送で使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、洋上ウィンドファームの運転および点検修理の手始めに行われるが、その他の幅広い洋上事業に適用可能である。こうした事業は、点検修理作業員が、船(以下、作業員移送船と呼ばれる)で洋上の場所に航行することを必要とする場合がある。洋上の場所では、点検修理作業員の一部または点検修理作業員を形成する人員を、点検修理を実行するために、作業員移送船から構造物に移送する必要がある。また、機器や貨物を移送する必要がある場合もある。構造物は、典型的には、固定された基礎上の風車またはプラットフォームなどの固定された構造物であるが、錨で固定された、または固定されていない浮体構造物である場合もある。同様に、人員は、構造物から作業員移送船へと戻る必要がある。
【0003】
局地風による波であろうと、または遠くから来るうねりであろうと、海波のために、作業員移送船は動いている状態であり、そして典型的には移送が行われる構造物に対して動く。こうした相対的な動きは、人員の安全な移送にリスクをもたらす。
【0004】
通常の対策は、船首と構造物との間に摩擦を作り出すために、作業員移送船の推進および操縦システムを使用して、作業員移送船の船首を構造物に対して押し付けることである。緩衝し、摩擦を増加させるために、典型的には船首に、ゴムクッションが取り付けられている。海波が大きすぎない場合、これによって、安全な移送を危険にさらす可能性のある相対的な動きがないという意味で、船首を構造物との永久的な係合状態に保持する。しかしながら、海波が大きすぎるようになる場合、船首と構造物との間の係合の急な滑り、および構造物に沿って、垂直方向で上向きもしくは下向き、側方、または構造物から離れる船首の急な速い動きのリスクがある。
【0005】
この滑りのリスクが所与の海波のパターンに存在するかどうかは、現在のところ、作業員移送船上の船長または他の責任者の判断である。この判断を保守的にしすぎると、人員が移送されないため、貴重な時間とリソースが失われる。それ故に、例えば、風車の点検修理が遅延する場合がある。こうした遅延は一般に望ましくないが、より強い風はたいていより大きな波を発生させるため、生産の潜在性が非常に高いときに生産を行っていない風車の点検修理が遅延する場合があり、それ故に、不必要な追加的な損失を生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この背景において、本発明の目的は、作業員移送船と構造物との間の安全な移送が行われうる時間を増加させることである。
【0007】
本発明の第一の態様によれば、この目的は、作業員移送船と構造物との間で、またはその逆で人員を移送するときに、洋上作業員の移送で使用するための方法によって達成され、作業員移送船は推進および操縦システムと、海波を検出するために適合された波動検出装置と、上記の波動検出装置によって検出された海波に応答して船首の動きを予測するための予測システムと、上記の予測システムに基づいて、第一の所定の期間内の第一の船首の動きの閾値を下回る船首の動きの予測を表示するよう適合されたインジケータと、を備え、前記方法は、上記の推進および操縦システムを使用して上記の作業員移送船を上記の構造物に対して押し付ける工程と、上記の波動検出装置を使用して上記の海波を検出する工程と、上記の検出された海波に基づいて、前記の予測システムを使用して船首の動きが第一の所定の期間内に第一の船首の動きの閾値を下回るかどうかを予測し、下回る場合にインジケータを使用してこれを示す工程と、上記の船首の動きが第一の所定の期間内に第一の船首の動きの閾値を下回ることが示されるときにのみ人員を移送する工程と、を含む。
【0008】
本発明の第二の態様によると、目的は、推進および操縦システムと、波動検出装置と、船首の動きの検出システムと、を備え、作業員移送船の船首の動きを予測するためのシステムによって解決され、上記のシステムは、上記の波動検出装置から海波のパターンを示すデータセットを受信し、船首の動きを示すデータセットを受信し、かつ海波のパターンを示す上記のデータセットと船首の動きを示す上記のデータセットとの間の経験的な相関に基づいて予測することができるように、海波のパターン示す上記のデータセットを海波のパターン示す上記のデータセットと相関させるように適合された予測器を備え、上記の予測に基づいて、上記の波動検出装置からの海波のパターンを示すデータセットの受信後に、第一の期間内に経験される船首の動きの予測を出力する。
【0009】
作業員移送の方法にこの種の予測システムを導入することは、波動に関連した波動検出装置によって生成された各個別のデータセットに応答して、船首の動きのリスクのリアルタイムの評価を可能とし、そしてそれ故に、近未来以内のある一定の閾値を超える船の滑りのリスクの継続的なリアルタイム評価を可能にする。この予測は、各個別のデータセットに基づいてリアルタイムで行われることになり、したがって船長の推定より、船長が経験豊富である場合でさえも、はるかに正確である。これにより、安全な移送がその間に行われうる安全な時間枠が提供される。さらに、予測は、移送される人員および移送を補助する者に、インジケータ上で簡単に提示および解釈されることができる、決行か不決行かの単純な結果をもたらし得る。
【0010】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によると、インジケータは、上記の予測システムに基づいて、第二の所定の期間内の第二の船首の動きの閾値を下回る船首の動きの第二の予測を示すように適合され、上記の第二の船首の動きの閾値が上記の第一の船首の動きの閾値および上記の第二の所定の期間より低く、上記の船首の動きが第二の所定の期間内の第二の船首の動きの閾値を下回ることが示されるときにのみ人員を移送する。これは、経験の浅い人員を移送しうる時間と、より経験を積んだ人員のみを移送しうる時間との間の区別を可能にする、さらなる枠をもたらし得る。
【0011】
本発明の第一の態様のさらなる好ましい実施形態によると、上記の船首の動きが第一の所定の期間内の第一の船首の動きの閾値を下回ることが示されるまで、安全ロープを構造物に取り付け、人員の安全ロープへの取り付けが実行されないことが好ましい。移送のために十分に長い期間が可能になったときにのみ、予測およびインジケータが、移送する人員を安全ロープに取り付けることを許容するため、これは安全性をさらに高める。それ故に、船首が滑り、人員が移動の途中で安全ロープに吊り下げられたままになることになるリスクはほとんどない。
【0012】
本発明の第一の態様のまた別の好ましい実施形態によると、構造物は固定された構造物である。作業員移送船の動きは、固定された構造物に関しては予測がより簡単であり、したがってこうした移送のためにこれ自体を最も有用なものとする。しかしながら、構造物が、浮体構造物、例えば、錨で固定されたプラットフォームまたは別の船であることでさえある可能性は除外されない。
【0013】
本発明の第一の態様によるさらなる好ましい実施形態によると、予測システムは、波動検出装置から、および船首の動きの検出器からの入力データセットを使用して動作中に継続的に訓練される適合アルゴリズムを備える。これは、常に現在の予測を改善し、予測システムの予測の質を経時的に改善し、それ故に安全性を高める。
【0014】
本発明の第二の態様の好ましい実施形態によれば、予測器は、海波のパターンを示すデータセットと、上記の海波のパターンを示す前記データセットとの新たな相関を、上記の経験的な相関に追加するようにさらに適合される。このようにして、具体的な船の挙動のより良好な予測が、達成されることになり、したがってより多くの移送の機会を示し、そしてより多くの移送を実行することが可能になる。結果として、本発明の第二の態様のさらなる好ましい実施形態によると、システムは、上記の予測の結果を示すためのインジケータをさらに備える。
【0015】
本発明の第二の態様のさらなる好ましい実施形態によると、予測器は、所与の場所に経験をさらに相関させるように適合される。それ故に、一般的な波に対する船の独自の応答は因子となる場合があるだけでなく、所与の場所における波のパターンの特定の特性にもなる。それ故に、ウィンドファーム全般的に、またはその個別の風車にさえも、さらに良好な予測が達成される。これは、当然のことながら、サービスプラットフォーム、石油掘削装置など、特定の場所に位置する他の関連構造物にも当てはまることになる。
【0016】
さらによると、上記の予測に基づいて、ドッキングの最適な角度の表示を出力するようにさらに適合される。これは、船長が、所定の閾値を上回る滑りのリスクを最小化するように予測された構造物に対する角度で作業員移送車両をドッキングすることを可能にする。
【0017】
ここで、本発明を非限定的な例示の実施形態に基づいて、かつ図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、洋上構造物に対して押し付けられた作業員移送船を示す。
図2図2は、作業員移送船のレーダーで検出された波のパターンを図示する。
図3図3は、作業員移送船上の動き検出装置によって検出される、経時的な船首変位の大きさを概略的に図示する。
図4図4は、予測された船首変位を、作業員移送船に搭載されたインジケータに対する二つのレベル出力信号とともに、経時的に図示する。
図5図5は、予測された船首変位を、作業員移送船に搭載されたインジケータに対する三つのレベル出力信号とともに、経時的に図示する。
【0019】
最初に図1を参照すると、船首2が洋上風車のモノパイル基礎などの構造物3に対して押し付けられた状態で作業員移送船1が示されており、より具体的には、船首2における緩衝材4が、構造物3へのアクセスを提供する入口はしごを保護する垂直の柱5に対して押し付けられている。作業員移送船1は係留されておらず、単にその推進および操縦システム(例えば、エンジン13、プロペラ6、舵7、および場合によっては船首プロペラ8を含む)によって構造物3に対して押し付けられている。理想的には、構造物に対して十分にしっかりと押し付けられた場合、船首は動かないが、枢動点を形成し、作業員移送船1がこれを中心としてピッチ、ロール、およびヨーの動きを行う。しかしながら、実際には、ある一定のエネルギーの波(例えば、大きさおよび速度、ならびに方向に依存する)は、依然として、船首2を構造物3に対して急な動きで移動させることができる(以下では、滑りと称される)。こうした急な動きは、作業員移送船と構造物との間、またはその逆の移送プロセスにおいて発生する場合、ハーネスを装着し、かつ構造物3に取り付けられた安全ロープに取り付けられている場合でさえも、人員、貨物、または機器にリスクをもたらす場合がある。本発明は、こうした滑りがいつ、どのくらいの間生じそうにないかについて、また逆に、いつこうした滑りが起こりそうかについての、適格な予測を行うことによって、このリスクを低減する。
【0020】
この予測の根拠は、Xバンドレーダーなどの作業員移送船1の波動検出装置9によって記録された継続的な一連のデータセットである。波の遠隔検出のためのレーダーの代替として、LIDARまたは他のレーザー測距、マイクロ波検出、またはこれに類するものなどの他の手段を使用することが可能である。好ましい実施形態の以下の説明では、レーダーの使用が想定されるが、本発明はそれに限定されるものではない。これらのデータセットは、図2に例示されるように、レーダー9からの返されたレーダー信号からフィルターされた海波のパターンを表す。これらのデータセットは、好ましくは作業員移送船1上に位置するコンピュータ10上で実行されている予測アルゴリズムに入力される。予測アルゴリズムには、作業員移送船1の船首の動きを示す継続的なデータセットも入力される。船首の動きは、船首2における加速度計、微細解像度GNSS受信機、または任意の他の適切な検出器などの船首の動きの検出器11を使用して検出され得る。
【0021】
予測アルゴリズムは、以前の作業員の移送動作および/または訓練セッション中に記録された、レーダーからのデータセットおよび船首の動きを示すデータセットに基づいて、検出された波のパターンを相関付けるように訓練された機械学習アルゴリズムであることが好ましい。適正に訓練されたとき、予測アルゴリズムは、検出された海波のパターンから所定の期間内に、作業員移送船1の船首2が特定の閾値を超える滑りを経験するかどうかを示す単純な結果を出力することができる。したがって、これは、船首2が滑るリスクのない移送が今は可能であることを、移送される人員およびその人員を補助する人員に対する容易に理解可能な表示として機能し得、これにより、人員はこうした表示の間にのみ移送される。典型的には、30秒の時間間隔は、人員の安全ロープへの取り付けを含む移送に十分であり、したがって、予測アルゴリズムは、例えば、30cmを上回る滑りが今後30秒以内に発生しない場合、インジケータ12を「決行」または「青」に設定してもよい。そうでない場合は、代わりに「不決行」または「赤」を表示してもよい。心理的理由のために、「決行」に対する追加として「不決行」の表示が望ましいが、原理上はどちらか一方の表示のみでも十分である。ほとんどの人は、交通信号の概念をよく知っており、したがって「決行」または「不決行」の信号に対してインジケータ12上で単純に赤色灯および青色灯を使用することが好ましい。類似体が、以下の説明においても黙示的に使用される。
【0022】
所与の閾値、すなわち上記に述べた30秒を下回る船首の動きの期間は、構造物3に取り付けられた安全ロープにハーネスを装着した人員を取り付けるのに十分な時間がある限り選択される。それ故に、人員を安全ロープから吊り下げたまま、作業員移送船1の船首2が、人員の下へと急に離れる危険性はない。
【0023】
しかしながら、移送するすべての人員が、等しく訓練され、経験豊かで、かつ機敏であるわけではないため、上記の単純な「決行」および「不決行」表示だけを有するのでなく、より良好に訓練され、より経験豊かな人員のために中間レベルも有することが好ましい場合がある。こうした人員は、一般に、船首2の滑りにより良好に対処し、かつより迅速に移動を実行することができるので、彼らは船首2の滑りのリスクがより高い閾値を下回る(一般的にリスクがより起こりやすく、したがって、より長い期間を有する場合)ときに移動できる可能性がある。
【0024】
そのため、第一の閾値が、例えば、60cmに設定され、そしてこれが、例えば、30秒もしくは15秒、またはより短い時間でさえも超えない場合、インジケータ12は、次の30秒の予測が30cmを下回り「青」になるまで、または期間内に両方の閾値を超えることが予測されるため「赤」になるまで、「可能」または「黄」を示す。そのため、良好な条件、すなわち、経験豊かな人員が移動してもよい「黄の条件」と、非常に良好な状態、すなわち、経験の浅い人員も移動してもよい「青の条件」とを区別することができるため、移送期間は長くなる。また、本発明のこの実施形態では、交通信号と同様な提示が好ましい。
【0025】
これは、30秒の期間内に、それぞれ「青の条件」および「黄の条件」に対して、それぞれ30cmおよび60cmの閾値を有する上述の滑り予測および結果として生じる表示を図示する、図4図5との間の比較によってわかる。
【0026】
最初に図4を参照すると、時間t=0における所与の時点から240秒の時間間隔にわたる、予測された船首変位が図示されている。多数の上下の有意な滑りs~s10が予測されている。有意とは、30cmより大きいことを意味する。分かるように、t=0における予測は、次の30秒間に30cmより大きい二つの滑りsおよびsを有し、それ故に表示は「赤」である。滑りsの時点で、次の予測される滑りsは依然として30秒以内に予測され、そして表示は「赤」のままになることになる。その後、かなり大きい滑りsまで滑りは予測されず、そして予測される滑りsの30秒前まで表示は「青」のままであることになる。sの後、長い連続の有意な滑りs~s10が予測され、そして表示は滑りs10の後まで赤のままになることになる。これに関して、レーダー9から、および船首の動きの検出器11からの各々の新しいデータセットによって、予測は更新され、そして時間の経過とともに予測が近づくのにつれて、予測は改善される場合があるので、上記の「なることになる」はすべて変化する場合があることに留意されたい。それ故に、滑りsが発生したおよそ40秒後に、予測が変化している場合があり、そのためsは閾値を下回ると予測され、そしてその時すでに、表示は「青」に変化する場合がある。これはすべて予測に関するものであるため、sが最初に起こると予測され、そしてその前に表示が「青」(または「赤」)に設定される時間の前に、sおよびsの両方の予測が変化する場合さえもある。
【0027】
ここで図5を参照すると、t=0における同一の状況が、それぞれ30cmおよび60cmの二つの閾値を使用する表示に対して考慮される。分かるように、ここでは最大の滑りsのみが「赤」の表示をもたらすことになる。滑りs4~s10は、30cm~60cmになると予測され、それ故に「黄」の条件およびその表示をもたらす。予測された「赤」条件の期間は、図4と比較して実質的に減少する。
【0028】
上述の閾値および期間は、本発明の例示のための単なる例であることが強調されるべきである。
【0029】
上記に示したように、予測は、新しいレーダーデータセットおよび船首の動きのデータセットに基づいて常に更新され、また予測アルゴリズムは、構造物3に対して押し付けられたときに、作業員移送船の挙動について常により多くを学習する。作業員移送船1を単に構造物に対して押し付けることでは予測が困難になり、また船1の風、波、潮流等に対する応答が全般的にある程度既知であってさえも(例えば、自由に浮動しているとき)、構造物3に対して押し付けることで、その状況での応答の正確なモデリングは不可能である。予測アルゴリズムは、構造物3に対して押し付けられたときに経験するであろう、ありとあらゆる状況の正確なモデリングなしに、レーダーデータおよび船首の動きのデータのみに基づいていても、有用な結果をもたらすことが見出された。
【0030】
しかしながら、予測アルゴリズムを追加的な入力パラメータで訓練する場合、予測は改善され得る。一つのこうしたパラメータは、作業員移送船1が構造物3に対して押し付けられる力(例えば、利用したエンジン動力または推力に基づく)であり得る。別のこうしたパラメータは、作業員移送船1の地理的な場所であり得る。これは、予測アルゴリズムが、その場所の典型的な地域的要因(風、波、うねり、潮流など)を学習すること、または組み込むことを可能にする。代替的に、アルゴリズムは、特定の場所について特異的に訓練され得、これにより移送の場所について訓練されたアルゴリズムを利用することが可能である。これは、特定の構造物(モノパイル、ジャケット、浮体基礎、または当業者に公知の任意の他の構造物)のための特定の訓練、または洋上ウィンドファームなどのより大きい領域のためのより一般的な訓練であり得る。
【0031】
さらに、構造物に近づいている間に、すでに波のパターンの事前知識に基づく予測を実際に使用してもよい。例えば、「ドッキング可能性」の予測を予報してもよい。そのため、滑りのリスクが高いという予測が予測システムによってもたらされる場合、これは船長に示され、それ故にドッキングするかどうかの船長の決定が軽減され得る。
【0032】
また、滑りのリスクは、波のパターン角に対する作業員移送船1の向き、波のパターンに対する作業員移送船1の応答の事前知識に依存するため、予測システムは、接近およびドッキングの方法(例えば、作業員移送船1を構造物に対して押し付けるための所与の波のパターンに対する最適な角度、すなわち、所定の閾値下での滑りについて最良の予測をもたらす角度)に関して、船長に指示し得る。
【0033】
理解されるように、本発明によると、上述の予測および表示システムは、上記の船首の動きが第一の所定の期間内に第一の船首の動きの閾値を下回ると表示されるときにのみ人員が移送される方法で使用される。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 作業員移送船と構造物との間で、またはその逆で人員を移送するときに、洋上作業員の移送で使用するための方法であって、
前記作業員移送船が、推進および操縦システムと、
海波を検出するために適合された波動検出装置と、
前記波動検出装置によって検出された海波に応答して、船首の動きを予測するための予測システムと、
前記予測システムに基づいて、第一の所定の期間内の第一の船首の動きの閾値を下回る船首の動きの予測を表示すよう適合されたインジケータと、を備え、
前記方法は、
前記推進および操縦システムを使用して前記作業員移送船を前記構造物に対して押し付ける工程と、
前記波動検出装置を使用して前記海波を検出する工程と、
前記検出された海波に基づいて、前記予測システムを使用して、船首の動きが前記第一の所定の期間内に前記第一の船首の動きの閾値を下回るかどうかを予測し、下回る場合に前記インジケータを使用してこれを示す工程と、
前記船首の動きが前記第一の所定の期間内に前記第一の船首の動きの閾値を下回ると示されるときにのみ前記人員を移送する工程と、を含む、方法。
[2] 前記インジケータが、前記予測システムに基づいて、第二の所定の期間内の第二の船首の動きの閾値を下回る船首の動きの第二の予測を示すように適合され、前記第二の船首の動きの閾値が前記第一の船首の動きの閾値よりも低く、前記船首の動きが前記第二の所定の期間内の前記第二の船首の動きの閾値を下回ると示されるときにのみ前記人員を移送する、[1]に記載の方法。
[3] 前記船首の動きが前記第一の所定の期間内の前記第一の船首の動きの閾値を下回ることが示されるまで、安全ロープを構造物に取り付け、前記人員の前記安全ロープへの取り付けが実行されない、[1]または[2]のいずれか一項に記載の方法。
[4] 前記構造物が固定された構造物である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記予測システムが、前記波動検出装置から、および船首の動きの検出器からの入力データセットを使用して、動作中に継続的に訓練される適合アルゴリズムを備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 推進および操縦システムと、
波動検出装置と、
船首の動きの検出システムと、を備える作業員移送船の船首の動きを予測するためのシステムであって、
前記波動検出装置から海波のパターンを示すデータセットを受信し、船首の動きを示すデータセットを受信し、かつ前記海波のパターンを示す前記データセットと船首の動きを示すデータセットとの間の経験的な相関に基づいて予測することができるようになるように、前記海波のパターンを示す前記データセットを、前記海波のパターンを示す前記データセットと相関させるように適合された予測器を備え、前記予測に基づいて、前記波動検出装置からの海波のパターンを示すデータセットの前記受信後、第一の期間内に経験される船首の動きの予測を出力する、システム。
[7] 前記予測器が、海波のパターンを示すデータセットと、海波のパターンを示す前記データセットとの新しい相関を、前記経験的な相関に追加するようにさらに適合される、[6]に記載のシステム。
[8] 前記予測の結果を示すためのインジケータをさらに備える、[6]または[7]のいずれか一項に記載のシステム。
[9] 前記予測器が、前記経験を所与の場所とさらに相関させるように適合されている、[6]に記載のシステム。
[10] 前記予測に基づいて、ドッキングの最適な角度の表示を出力するようにさらに適合される、[6]に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5