(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】シンチレータ及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240213BHJP
G01T 1/203 20060101ALI20240213BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240213BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/203
G01T1/20 E
C09K11/06 601
C09K11/00 E
(21)【出願番号】P 2021023956
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】和田 淳
(72)【発明者】
【氏名】高須 勲
(72)【発明者】
【氏名】相賀 史彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕子
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-232284(JP,A)
【文献】特開2009-242385(JP,A)
【文献】特開2014-012791(JP,A)
【文献】特開2020-037523(JP,A)
【文献】特開2020-201163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
C09K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層を備え、
前記第1層は、
発光可能な第1有機物と、
第2有機物と、
を含み、
前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出可能であり、
前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上であ
り、
前記第1層は、高分子の第3有機物をさらに含み、
前記第3有機物は、前記第1有機物及び前記第2有機物の周りに設けられた、シンチレータ。
【請求項2】
前記第1有機物は、熱活性遅延蛍光材料を含む、請求項1記載のシンチレータ。
【請求項3】
第1層を備え、
前記第1層は、
発光可能な第1有機物と、
第2有機物と、
を含み、
前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出可能であり、
前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上であり、
前記第1層における前記第2有機物の第2重量濃度は、前記第1層における前記第1有機物の第1重量濃度よりも高い
、シンチレータ。
【請求項4】
前記第2重量濃度は、前記第1重量濃度の4倍以上である、請求項
3記載のシンチレータ。
【請求項5】
前記第2有機物は、芳香族化合物を含み、
前記芳香族化合物は、前記少なくとも1つを含む、請求項1~
4のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【請求項6】
第1層を備え、
前記第1層は、
発光可能な第1有機物と、
第2有機物と、
を含み、
前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出可能であり、
前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上であり、
前記第2有機物は、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシドを含む
、シンチレータ。
【請求項7】
第1層を備え、
前記第1層は、
発光可能な第1有機物と、
第2有機物と、
を含み、
前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出可能であり、
前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上であり、
前記第2有機物は、1,3―ビス(3-(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)ベンゼン、10―フェニル―10H,10’H―スピロ[アクリジンー9,9’―アントラセン]―10’―オン、及び、9,9’―(5-(フェニルスルフォニル)―1,3―フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む
、シンチレータ。
【請求項8】
前記第1有機物は、
2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル)、
2,4,6-トリス(4-(9,9-ジメチルアクリダン-10-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、
10-(4-(ビス(2,3,5-テトラメチルフェニル)ボラニル)-2,3,5-テトラメチルフェニル)-10H-フェニキサジン、
2,4,6-トリ(9H-カルバゾル-9-イル)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル、及び、
9-[1,4]ベンズオキサボリノ[2,3,4-kl]フェノオキサボリン-7-イル-1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾールよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~
7のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記第2有機物の吸収波長帯は、380nm以下である。請求項1~
8のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1つに記載のシンチレータと、
前記第1層からの前記光を検出可能な光検出部と、
を備えた放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シンチレータ及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射線検出器にシンチレータが用いられる。シンチレータにおいて、効率の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、効率を向上可能なシンチレータ及び放射線検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、シンチレータは、第1層を含む。前記第1層は、発光可能な第1有機物と、第2有機物と、を含む。前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出可能である。前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るシンチレータを例示する模式的斜視図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、第1実施形態に係るシンチレータの一部を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るシンチレータの一部を例示する模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るシンチレータの一部を例示する模式図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、シンチレータに関する実験結果を例示するグラフ図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、シンチレータに関する実験結果を例示するグラフ図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、シンチレータの特性を例示する模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るシンチレータを例示する模式的斜視図である。
図2(a)、
図2(b)、
図3、及び、
図4は、第1実施形態に係るシンチレータの一部を例示する模式図である。
図1に示すように、実施形態に係るシンチレータ10Sは、第1層10を含む。第1層10は、第1有機物11及び第2有機物12を含む。第1層10は、第3有機物13を含んでも良い。
【0009】
第1層10は、第1層10に入射する放射線(例えばベータ線)に基づいて光を放出可能である。例えば、第1有機物11は、発光可能である。例えば、第1有機物11に放射線が入射すると、第1有機物11から光が放出される。1つの例において、放射線は、ベータ線である。
【0010】
図2(a)は、第1有機物11の例を示している。この例では、第1有機物11は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルを含む。
図2(b)は、第1有機物11の別の例を示している。この例では、第1有機物11は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリ
ルを含む。
【0011】
後述するように、第1有機物11は、熱活性遅延蛍光材料を含んでも良い。例えば、第1有機物11の励起三重項状態のエネルギーと、第1有機物11の励起一重項状態のエネルギーと、の差は、500meV以下である。このような第1有機物11において、発光の寿命が長い。
【0012】
第3有機物13は、高分子である。第3有機物13は、第1有機物11及び第2有機物12の周りに設けられる。
【0013】
図4は、第3有機物13の例を示している。第3有機物13は、例えば、
図4に例示するポリビニルトルエンなどを含んで良い。第3有機物13は、例えば、ポリビニルトルエン、ポリビニルカルバゾール、及び、ポリメチルメタクリレートよりなる群から選択された少なくとも1つを含んで良い。第3有機物13は、光透過性の高分子である。
【0014】
第2有機物12は、カルボニル基(C=O)、ホスフィンオキシド(P=O)及びスルフィニル基(S=O)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0015】
図3は、第2有機物12の例を示している。第2有機物12は、例えば、
図3に例示するビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシドなどを含んで良い。第2有機物12の他の例については後述する。
【0016】
図1に示すように、第1層10は、例えば、X-Y平面に沿って広がる。Y軸方向は、X軸方向に対して垂直である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に対して垂直である。第1層10の厚さt1は、Z軸方向に沿う長さである。
【0017】
上記のような第1有機物11、第2有機物12及び第3有機物13を含む第1層10は、有機層である。このような第1層10を含むシンチレータ10Sは、有機シンチレータである。
【0018】
実施形態においては、第1層10は、発光する第1有機物11に加えて、第2有機物12を含む。このような構成により、高い発光効率が得られることが分かった。以下、発明者が行った実験結果の例について説明する。
【0019】
図5(a)及び
図5(b)は、シンチレータに関する実験結果を例示するグラフ図である。
図5(a)は、第1試料SP1に対応する。
図5(b)は、第2試料SP2に対応する。第1試料SP1おいて、第1層10は、第1有機物11、第2有機物12及び第3有機物13を含む。この例では、第1有機物11は、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-5-フルオロベンゾニトリルである。第2有機物12は、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシドである。第3有機物13は、ポリビニルトルエンである。第1試料SP1において、第1層10における第1有機物11の濃度は、6wt%である。第1層10における第2有機物12の濃度は、47wt%である。
【0020】
第2試料SP2おいて、第1層10は、第1有機物11及び第3有機物13を含む。第2有機物12を含まないことを除いて、第2試料SP2における他の条件は、第1試料SP1における条件と同じである。
【0021】
例えば、原料となる有機物と、溶剤と、を含む溶液を基板に塗布し、溶剤を除去することで、第1試料SP1及び第2試料SP2が得られる。第1試料SP1及び第2試料SP2において、第1層10の厚さt1(
図1参照)は、50nmである。これらの試料の光学特性が評価される。光学特性は、発光スペクトル及び吸収スペクトルである。
図5(a)及び
図5(b)の横軸は、波長λである。縦軸は、相対的な強度Intである。
【0022】
図5(b)に示すように、第2試料SP2において、第1層10は、吸収強度As1(吸収率)及び発光強度Es1を有する。吸収強度As1は、約500nm以下で高くなる。発光強度Es1は、約505nmの波長λにおいてピークとなる。波長λが450nm~500nmの範囲で、吸収スペクトルは、発光スペクトルと重なる。このため、第1層10において、第1有機物11から放出された光が、第1層10内で吸収され消失する。第2試料SP2において、発光が再吸収される割合は、0.34である。第2試料SP2において、発光効率は、約56%である。
【0023】
図5(a)に示すように、第1試料SP1においても、第1層10は、吸収強度As1(吸収率)及び発光強度Es1を有する。吸収強度As1は、約500nm以下で高くなる。一方、発光強度Es1は、約518nmの波長λにおいてピークとなる。このように、第1試料SP1においては、発光のピークの波長λが、第2試料SP2に比べて長くなる。その結果、第1試料SP1においては、吸収スペクトルが発光スペクトルと重なる領域が、第2試料SP2に比べて小さくなる。このため、第1層10において、第1有機物11から放出された光が、第1層10内で吸収されることが抑制される。第1試料SP1において、発光が再吸収される割合は、0.23である。第1試料SP1において、発光効率は、約73%である。
【0024】
このように、第1層10が第2有機物12を含むことで、発光スペクトルのピークが長波長化する。これにより、高い発光効率が得られる。実施形態によれば、効率を向上可能なシンチレータが提供できる。
【0025】
第2有機物12は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。このような構成により、高い分極が得られる。これにより、励起状態が安定化すると考えられる。これにより、発光のピーク波長を長くできると考えられる。
【0026】
実施形態において、第2有機物12の吸収波長帯は、例えば、380nm以下である。これにより、第1有機物11から放出された光が第2有機物12で吸収されることが抑制される。第2有機物12において、390nmの波長における吸収率は0.01%以下である。
【0027】
実施形態において、第2有機物12における三重項準位は、高い。これにより、第1有機物11から放出された光が第2有機物12で吸収されることが抑制される。三重項準位は、例えば、2.9eV以上である。第2有機物12における三重項準位は、第1有機物11または第3有機物13における三重項準位よりも高い。
【0028】
実施形態において、例えば、第2有機物12の分子量は、第3有機物13の分子量よりも小さい。第2有機物12の分子量は、例えば、100以上1,000以下である。第3有機物13の分子量は、例えば、5,000以上100,000以下である。第3有機物13は、例えば、樹脂マトリクスとして機能する。例えば、樹脂マトリクスが、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む場合、樹脂マトリクスが放射線により劣化し易くなる。
【0029】
実施形態において、第3有機物13は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基を実質的に含まないことが好ましい。これにより、第1層10において、安定した特性が得られる。実施形態においては、樹脂マトリクスとは別に、大きな分極を誘起する構造を含む第2有機物12を設けることで、放射線による劣化を抑制しつつ、発光のピーク波長を長くできる。
【0030】
以下、第1層10が第1~第3有機物11~13を含む場合における、第2有機物12の濃度が変更された実験の結果の例について説明する。この実験において、第1~第3有機物11~13の材料は、上記の第1試料SP1の材料と同じである。
【0031】
図6(a)及び
図6(b)は、シンチレータに関する実験結果を例示するグラフ図である。
図6(a)の横軸は、第1層10における第2有機物12の重量濃度(第2重量濃度C2)である。
図6(b)の横軸は、濃度比R1である。濃度比R1は、第1層10における第2有機物12の重量濃度(第2重量濃度C2)の、第1層10における第1有機物11の重量濃度(第1重量濃度C1)に対する比(C2/C1)である。これらの図の縦軸は、発光効率E1である。
【0032】
図6(a)に示すように、第2重量濃度C2が上昇すると、発光効率E1が上昇する。実施形態において、第1層10における第2有機物12の濃度(第2重量濃度C2)は、例えば、10wt%以上50wt%以下であることが好ましい。これにより、高い発光効率E1が得易くなる。第2重量濃度C2は、20%以上でも良い。
【0033】
図6(b)に示すように、比(C2/C1)が上昇すると、発光効率E1が上昇する。実施形態において、第1層10における第2有機物12の第2重量濃度C2は、第1層10における第1有機物11の第1重量濃度C1よりも高いことが好ましい。これにより、高い発光効率E1が得易くなる。
【0034】
図6(b)に示すように、比(C2/C1)が4以上において、高い発光効率E1が得易い。実施形態において、第2重量濃度C2は、第1重量濃度C1の4倍以上であることが好ましい。これにより、高い発光効率E1が得易くなる。
【0035】
実施形態において、第2重量濃度C2は、第1重量濃度C1の10倍以下であることが好ましい。これにより、凝集などに起因する発光効率の低下を抑制できる。
【0036】
実施形態において、第1層10の厚さt1は、例えば、200μm以上1500μm以下であることが好ましい。第1層10の厚さt1が200μm以上であることで、高い強度の発光が得られる。厚さt1が1500μm以下であることで、均一な第1層10が、安定して得易い。
【0037】
実施形態において、第2有機物12は、1,3―ビス(3-(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)ベンゼン(1,3-Bis(3-(diphenylphosphoryl)phenyl)benzene)、10―フェニル―10H,10’H―スピロ[アクリジンー9,9’―アントラセン]―10’―オン(10-Phenyl-10H, 10’H-spiro[acridine-9,9’-anthracen]-10’-one)、及び、9,9’―(5-(フェニルスルフォニル)―1,3―フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)(9,9’-(5-(phenylsulfonyl)-1,3-phenylene)bis(9H-carbazole))よりなる群から選択された少なくとも1つを含んで良い。
【0038】
実施形態において、第2有機物12は、芳香族化合物を含むことが好ましい。芳香族化合物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2有機物12が芳香族化合物を含むことで、例えば、立体障害が生じ易い。立体障害により、第2有機物12と第1有機物11との間における相互作用が抑制され易くなる。これにより、第2有機物12が第1有機物11に与える悪影響が抑制される。他特性への悪影響を抑制しつつ、発光のピーク波長を長くすることができる。
【0039】
実施形態に係るシンチレータ10Sにおいて、発光の寿命が長いことが好ましい。これにより、シンチレータ10Sを光検出部と組み合わせたときに高い検出精度が得易くなる。
【0040】
以下、シンチレータ10Sの発光特性の例について説明する。
図7(a)及び
図7(b)は、シンチレータの特性を例示する模式図である。
これらの図の横軸は、時間tmである。
図7(a)の軸は、ベータ線の強度IBである。
図7(b)の縦軸は、ベータ線が有機材料に入射したときに有機材料で生じる光の強度ILである。
【0041】
図7(b)に示すように、ベータ線に基づいて光が生じる。光の強度ILは、最高値pkを有する。光の強度ILは、最高値pkが生じた後に減衰し、最高値pkの1/2.72の値になる時刻が存在する。ベータ線の照射後に、光の強度ILの最高値pkとなる時刻から、光の強度ILが、光の強度ILの最高値pkの1/2.72になるまでの時間を発光寿命tdとする。「最高値pkの1/2.72」は、例えば、「最高値pkの1/e」(eは、ネイピア数)に対応する。ネイピア数eは、自然対数の底であり、約2.71828である。
【0042】
第1有機物11においては、発光寿命tdが長い。例えば、第1有機物11における発光寿命tdは、例えば、10ns以上である。後述するように、第1有機物11の発光寿命tdが長いことが、ベータ線についての高い検出効率及び高い検出選択性が得られる。
【0043】
このように、実施形態に係るシンチレータ10Sにおいて、第1層10は、第1層10に入射するベータ線に基づいて光を放出する。この光の強度の最高値の時刻から、光の強度が最高値の1/2.72になるまでの時間(発光寿命td)は、例えば、10ns以上である。発光寿命tdは、100ns以上でも良い。発光寿命tdは、300ns以上でも良い。
【0044】
実施形態において、第1有機物11は、例えば、カルバゾール及びシアノ基を含むベンゼン誘導体を含む。これにより、例えば、有機溶媒への溶解が容易になる。例えば、高い発光効率が得やすくなる。
【0045】
実施形態において、例えば、第1有機物11は、例えば、2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル、2,4,6-トリス(4-(9,9-ジメチルアクリダン-10-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、10-(4-(ビス(2,3,5-テトラメチルフェニル)ボラニル)-2,3,5-テトラメチルフェニル)-10H-フェニキサジン、2,4,6-トリ(9H-カルバゾル-9-イル)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル、及び、9-[1,4]ベンズオキサボリノ[2,3,4-kl]フェノオキサボリン-7-イル-1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾール、よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態は、放射線検出器に係る。
図8は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る放射線検出器110は、第1実施形態に係るシンチレータ10S(その変形を含む)と、光検出部30Dと、を含む。光検出部30Dは、第1層10からの光を検出可能である。
【0047】
この例では、光検出部30Dは、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30を含む。第2導電層52は、第1層10と第1導電層51との間に設けられる。有機半導体層30は、第1導電層51と第2導電層52との間に設けられる。
【0048】
有機半導体層30は、例えば、p形領域32p及びn形領域32nを含む。p形領域32p及びn形領域32nは、有機半導体32に含まれる。
【0049】
この例では、検出回路70が設けられる。検出回路70は、第1導電層51及び第2導電層52と電気的に接続される。例えば、第1配線71により、検出回路70が第1導電層51と電気的に接続される。例えば、第2配線72により、検出回路70が第2導電層52と電気的に接続される。検出回路70は、第1層10に入射する放射線81の強度に応じた信号OSを出力する。
【0050】
放射線81は、例えば、ベータ線を含む。放射線81は、例えば、ガンマ線を含んでも良い。放射線81は、例えば、第1層10の側から入射する。
【0051】
放射線81が第1層10に入射すると、第1層10において、光が生じる。生じた光は、第2導電層52を通過して、有機半導体層30に入射する。入射した光に基づいて、有機半導体層30において、移動可能な電荷が生じる。検出回路70により、第1導電層51と第2導電層52との間に電圧が印加される。これにより、生じた電荷が第1導電層51または第2導電層52に向けて移動する。移動した電荷が検出回路70により検出される。これにより、検出対象の放射線81が検出できる。有機半導体層30は、例えば、光電変換層として機能する。
【0052】
図8に示すように、有機半導体層30は、Z軸方向に沿う厚さ(第2厚さt2)を有する。第2厚さt2は、例えば、500nm以上50μm以下であることが好ましい。例えば、高い検出精度が得られる。
【0053】
第1層10は、例えば、有機シンチレータの少なくとも一部として機能する。第1層10は、例えば、無機シンチレータではない。
【0054】
第1層10に入射するガンマ線は、第1層10を実質的に通過する。第1層10に入射するベータ線に基づいて第1層10から効率的に光が生じる。光は、例えば、蛍光である。この光の強度は高い。高い強度の光が、第2導電層52を通過して有機半導体層30に入射する。有機半導体層30において、高い強度の光が電荷に変換され、高い強度の信号OSが得られる。
【0055】
実施形態によれば、例えば、ガンマ線の影響を抑制して、ベータ線を高い感度で検出できる。実施形態において、ガンマ線の影響を抑制して、ベータ線を高い感度で検出できる。
【0056】
実施形態においては、光電変換層として有機半導体層30が用いられる。これにより、ガンマ線が光電変換特性に与える影響が抑制できる。一般に、有機半導体層30における電荷の移動の速度(移動度)は、無機半導体層における電荷の移動の速度(移動度)よりも遅い。このため、第1層10が、有機半導体層30中の電荷の移動に要する時間に適合するような発光寿命tdを有するときに、ベータ線についての高い検出効率及び高い検出選択性が得られる。
【0057】
発光寿命tdは、10ns以上であることが好ましい。発光寿命tdは、100ns以上でも良い。発光寿命tdは、300ns以上でも良い。発光寿命tdが過度に長いと、例えば、ベータ線の別の入射に基づく信号との分離が困難になり易くなる。発光寿命tdは、例えば、100μs以下でも良い。分離が容易になる。
【0058】
実施形態において、ベータ線が第1層10に入射したときに得られる信号OS(
図1参照)の強度は、他の放射線(ガンマ線、中性子線またはX線など)が第1層10に入射したときに得られる信号OSの強度よりも高い。例えば、ベータ線が第1層10に入射したときに第1導電層51と第2導電層52との間に生じる第1信号の感度(強度)は、ガンマ線、中性子線及びX線の少なくともいずれかが第1層10に入射したときに第1導電層51と第2導電層52との間に生じる第2信号の感度(強度)よりも高い。
【0059】
図9及び
図10は、第2実施形態に係る放射線検出器の一部を例示する模式図である。
図9は、p形領域32pを例示している。この例では、p形領域32pは、P3HT(Poly(3-hexylthiophene))を含む。
【0060】
図10は、n形領域32nを例示している。例えば、n形領域32nは、フラーレン誘導体を含む。この例では、n形領域32nは、PC
61BM([6,6]-phenyl C61 butyric acid methyl ester)を含む。このように、例えば、有機半導体層30は、ポリチオフェンと、フラーレン誘導体と、を含む。
【0061】
図11は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図11に示すように、実施形態に係る放射線検出器121は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30に加えて、第2層20をさらに含む。実施形態における、第1層10、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30は、上記と同様でも良い。以下、第2層20の例について説明する。
【0062】
第2層20は、第1層10と第2導電層52との間に設けられる。第2層20は、有機層25を含む。有機層25は、例えば、PET、PEN、透明ポリイミド、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びポリカーボネートよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。有機層25は、例えば、有機フィルムである。
【0063】
第2層20の厚さt20は、例えば、10μm以上300μm以下である。有機層25の厚さt25は、例えば、10μm以上300μm以下である。この例では、厚さt20は、厚さt25に対応する。
【0064】
第2層20は、光透過性である。第1層10で生じた光は、第2層20及び第2導電層52を通過して、有機半導体層30に入射可能である。
【0065】
第2層20を設けることで、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0066】
第2層20が有機層25を含むことで、ガンマ線が入射した場合にも、ガンマ線が第2層20で光に変換されることが抑制できる。ガンマ線の影響を抑制しつつベータ線を高い精度で検出できる。第2層20は、例えば、基体として機能する。第2層20により、放射線検出器121の機械的な強度が向上する。
【0067】
図12は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、実施形態に係る放射線検出器122においても、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20が設けられる。放射線検出器122においては、第2層20は、第1中間層21を含む。第1中間層21は、例えば、酸窒化シリコンを含む。第1中間層21は、酸化シリコン、窒化シリコン、または、酸化アルミニウムなどを含んでも良い。第1中間層21により、例えば、高いバリア性が得られる。例えば、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0068】
第1中間層21の厚さt21が薄いことが好ましい。厚さt21が過度に厚いと、ガンマ線が入射したときに、第1中間層21で光に変換される場合がある。厚さt21が薄いことで、ガンマ線の影響を抑制できる。厚さt21は、例えば、2μm以下である。
【0069】
図13及び
図14は、実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図13に示すように、実施形態に係る放射線検出器123においては、第2層20は、有機層25及び第1中間層21を含む。
図14に示すように、実施形態に係る放射線検出器124においては、第2層20は、有機層25、第1中間層21及び第2中間層22を含む。第2層20は、第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかを含んでも良い。
【0070】
第1中間層21は、有機層25と第2導電層52との間に設けられる。第1中間層21は、シリコン及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む第1元素を含む。第2中間層22は、第1層10と有機層25との間に設けられる。第2中間層22は、シリコン及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む第2元素を含む。第1中間層21は、例えば、酸素及び窒素の少なくともいずれかと、上記の第1元素と、を含む。第1中間層21は、例えば、酸窒化シリコンを含む。第2中間層22は、酸素及び窒素の少なくともいずれかと、上記の第2元素と、を含む。第2中間層22は、例えば、酸窒化シリコンを含む。
【0071】
第1中間層21の厚さt21(
図13参照)は、有機層25の厚さt25(
図11参照)の1/600倍以上1/5倍以下である。第2中間層22の厚さt22は、有機層25の厚さt25の1/600倍以上1/5倍以下である。これらの中間層の厚さが薄いことで、ガンマ線の影響を抑制しつつ、ベータ線を高精度で検出できる。
【0072】
第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかにより、例えば、高いバリア性が得られる。例えば、第1層10に含まれる物質が第2導電層52及び有機半導体層30に向けて移動することが抑制できる。高い信頼性が得易くなる。
【0073】
図15は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的断面図である。
図15に示すように、実施形態に係る放射線検出器130は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20に加えて、構造体40を含む。放射線検出器130における、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20には、上記の構成が適用できる。この例では、第2層20は、有機層25、第1中間層21及び第2中間層22を含む。放射線検出器130において、第2層20は、第1中間層21及び第2中間層22の少なくともいずれかを含んでも良い。以下、構造体40の例について説明する。
【0074】
構造体40は、第1部分領域41、第2部分領域42及び第3部分領域43を含む。第1方向(例えば、Z軸方向)において、第1層10と第1部分領域41との間に第2層20がある。第1方向において、第2層20と第1部分領域41との間に、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30がある。このように、第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30を含む積層体SBが、第2層20と第1部分領域41との間に設けられる。
【0075】
第1方向と交差する第2方向において、第2部分領域42と第3部分領域43との間に、積層体SB(第1導電層51、第2導電層52及び有機半導体層30)がある。第2方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する任意の方向である。この例では、第2方向は、X軸方向である。例えば、第2部分領域42と第3部分領域43は、X-Y平面内(第1方向と交差する平面内)で、積層体SBの周りに設けられる。例えば、第2部分領域42と第3部分領域43は、X-Y平面内で、積層体SBを囲む。第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と接合される。例えば、第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と直接的に接合されても良い。例えば、第2部分領域42及び第3部分領域43は、第2層20と、接着層などを介して接合されても良い。
【0076】
例えば、有機半導体層30は、第2層20及び構造体40により封止される。例えば、第2層20及び構造体40は、封止部として機能する。第2層20及び構造体40により、高い信頼性が得られる。
【0077】
図16は、第2実施形態に係る放射線検出器を例示する模式的斜視図である。
図16に示すように、実施形態に係る放射線検出器140は、第1層10、第1導電層51、第2導電層52、有機半導体層30及び第2層20を含む。放射線検出器140において、構造体40が設けられても良い。
図16においては、図の見やすさのために、放射線検出器140に含まれる要素の一部が互いに離されて描かれている。
【0078】
放射線検出器140においては、複数の第2導電層52が設けられる。複数の第2導電層52は、Z軸方向と交差する面(例えばX-Y平面)に沿って並ぶ。複数の第2導電層52は、例えば、X軸方向及びY軸方向に沿って、マトリクス状に並ぶ。この例では、第1導電層51及び有機半導体層30は、連続的に設けられる。
【0079】
実施形態において、第2導電層52は、例えば、金属酸化物膜を含む。金属酸化物膜、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及び、ITOよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0080】
第1導電層51は、例えば、金属薄膜を含む。第1導電層51は、例えば、合金を含む膜を含む。第1導電層51は、例えば、導電性の金属酸化物を含んでも良い。第1導電層51は、例えば、光反射性を有しても良い。有機半導体層30における光電変換の効率が向上できる。
【0081】
有機半導体層30と第1導電層51との間、及び、有機半導体層30と第2導電層52との間の少なくともにいずれかに中間層が設けられても良い。中間層は、例えば、PEDOT:PSSを含む。中間層は、ポリチオフェン系ポリマーを含む。
【0082】
実施形態において、放射線検出器は、第1導電層51及び第2導電層52と電気的に接続された検出回路70(
図8などを参照)を含んでも良い。検出回路70は、第1層10に入射する放射線81の強度に応じた信号OSを出力する。ベータ線に対する信号OSの感度は、ガンマ線に対する信号OSの感度よりも高い。ベータ線の強度の変化に対する信号OSの変化の比は、ガンマ線の強度の変化に対する信号OSの変化の比よりも高い。実施形態において、ガンマ線の影響を抑制しつつ、ベータ線を高い精度で検出できる。高い効率で放射線81を検出できる。
【0083】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1層を備え、
前記第1層は、
発光可能な第1有機物と、
第2有機物と、
を含み、
前記第2有機物は、カルボニル基、ホスフィンオキシド及びスルフィニル基よりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第1層は、前記第1層に入射するベータ線に基づいて光を放出し、
前記光の強度の最高値の時刻から、前記光の前記強度が前記最高値の1/2.72になるまでの時間が10ns以上である、シンチレータ。
【0084】
(構成2)
前記第1有機物は、熱活性遅延蛍光材料を含む、構成1記載のシンチレータ。
【0085】
(構成3)
前記第1層は、高分子の第3有機物をさらに含み、
前記第3有機物は、前記第1有機物及び前記第2有機物の周りに設けられた、構成1または2に記載のシンチレータ。
【0086】
(構成4)
前記第2有機物の分子量は、前記第3有機物の分子量よりも小さい、構成3記載のシンチレータ。
【0087】
(構成5)
前記第2有機物の分子量は、100以上1,000以下である、構成3記載のシンチレータ。
【0088】
(構成6)
前記第1層における前記第2有機物の濃度は、10wt%以上50wt%以下である、構成1~5のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0089】
(構成7)
前記第1層における前記第2有機物の第2重量濃度は、前記第1層における前記第1有機物の第1重量濃度よりも高い、構成1~6のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0090】
(構成8)
前記第2重量濃度は、前記第1重量濃度の4倍以上である、構成7記載のシンチレータ。
【0091】
(構成9)
前記第2重量濃度は、前記第1重量濃度の10倍以下である、構成7または8に記載のシンチレータ。
【0092】
(構成10)
前記第1層の厚さは、200μm以上1500μm以下である、構成1~9のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0093】
(構成11)
前記第2有機物は、芳香族化合物を含み、
前記芳香族化合物は、前記少なくとも1つを含む、構成1~10のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0094】
(構成12)
前記第2有機物は、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシドを含む、構成1~11のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0095】
(構成13)
前記第2有機物は、1,3―ビス(3-(ジフェニルフォスフォリル)フェニル)ベンゼン、10―フェニル―10H,10’H―スピロ[アクリジンー9,9’―アントラセン]―10’―オン、及び、9,9’―(5-(フェニルスルフォニル)―1,3―フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~11のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0096】
(構成14)
前記第1有機物は、カルバゾール及びシアノ基を含むベンゼン誘導体を含む、構成1~13のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0097】
(構成15)
前記第1有機物は、
2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル、
2,4,6-トリス(4-(9,9-ジメチルアクリダン-10-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、
10-(4-(ビス(2,3,5-テトラメチルフェニル)ボラニル)-2,3,5-テトラメチルフェニル)-10H-フェニキサジン、
2,4,6-トリ(9H-カルバゾル-9-イル)-3,5-ジフルオロベンゾニトリル、及び、
9-[1,4]ベンズオキサボリノ[2,3,4-kl]フェノオキサボリン-7-イル-1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾールよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~14のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【0098】
(構成16)
前記第2有機物の吸収波長帯は、380nm以下である、構成1~15のいずれか1つに記載のシンチレータ。
【0099】
(構成17)
構成1~16のいずれか1つに記載のシンチレータと、
前記第1層からの前記光を検出可能な光検出部と、
を備えた放射線検出器。
【0100】
(構成18)
前記光検出部は、
第1導電層と、
前記第1層と前記第1導電層との間に設けられた第2導電層と、
前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられた有機半導体層と、
を含む、構成17記載の放射線検出器。
【0101】
(構成19)
前記ベータ線が前記第1層に入射したときに前記第1導電層と前記第2導電層との間に生じる第1信号の感度は、ガンマ線、中性子線及びX線の少なくともいずれかが前記第1層に入射したときに前記第1導電層と前記第2導電層との間に生じる第2信号の感度よりも高い、構成17または18に記載の放射線検出器。
【0102】
(構成20)
前記有機半導体層は、ポリチオフェンと、フラーレン誘導体と、を含む、構成17~19のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【0103】
実施形態によれば、効率を向上可能なシンチレータ及び放射線検出器が提供できる。
【0104】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0105】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0106】
以上、例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの例に限定されるものではない。例えば、シンチレータに含まれる、第1層及び有機物などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0107】
各例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0108】
本発明の実施の形態として上述したシンチレータ及び放射線検出器を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのシンチレータ及び放射線検出器も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0109】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
10…第1層、 10S…シンチレータ、 11~13…第1~第3有機物、 20…第2層、 21、22…第1、第2中間層、 25…有機層、 30…有機半導体層、 30D…光検出部、 32…有機半導体、 32n…n形領域、 32p…p形領域、 40…構造体、 41~43…第1~第3部分領域、 51、52…第1、第2導電層、 70…検出回路、 71、72…第1、第2配線、 81…放射線、 110、121~124、130、140…放射線検出器、 As1…吸収強度、 C1、C2…第1、第2重量濃度、 E1…発光効率、 Es1…発光強度、 IB…強度、 IL…強度、 Int…強度、 OS…信号、 SB…積層体、 SP1、SP2…第1、第2試料、 pk…最高値、 t1、t2、t20、t21、t22、t25…厚さ、 td…発光寿命、 tm…時間