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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240213BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S7/03 220
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021100700
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000084
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紘
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201280(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1630570(EP,A1)
【文献】国際公開第2011/108397(WO,A1)
【文献】特開2008-089614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナと複数の第1集積回路とを含む送信モジュールと、
受信アンテナと複数の第2集積回路とを含む受信モジュールと、
第3集積回路と、
を具備し、
前記複数の第1集積回路の各々は、複数の第1送信回路と、複数の第1受信回路と、第1信号生成回路と、を含み、
前記複数の第2集積回路の各々は、複数の第2送信回路と、複数の第2受信回路と、第2信号生成回路と、を含み、
前記第3集積回路は、複数の第3送信回路と、複数の第3受信回路と、第3信号生成回路と、を含む、レーダ装置。
【請求項2】
前記複数の第1送信回路は前記第3信号生成回路に接続される、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記複数の第2受信回路は前記第3信号生成回路に接続される、請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記送信モジュールは第1分配器を備え、
前記複数の第1送信回路は前記第1分配器を介して前記第3信号生成回路に接続される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第1分配器から前記複数の第1送信回路までの複数の信号線は等長である、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記受信モジュールは第2分配器を備え、
前記複数の第2受信回路は前記第2分配器を介して前記第3信号生成回路に接続される、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記第2分配器から前記複数の第2受信回路までの複数の信号線は等長である、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記送信アンテナは第1基板に配置され、
前記受信アンテナは第2基板に配置され、
前記送信アンテナは第1方向に第1間隔で配置される複数の送信アンテナ素子を備え、
前記受信アンテナは前記第1方向と直交する第2方向に前記第1間隔で配置される複数の受信アンテナ素子を備え、
前記複数の送信アンテナ素子の中の前記第2基板に最も近い送信アンテナ素子と前記複数の受信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い受信アンテナ素子との前記第2方向における距離は前記第1間隔である、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記複数の送信アンテナ素子の中の前記第2基板に最も近い送信アンテナ素子と前記複数の受信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い受信アンテナ素子との前記第1方向における距離は前記第1間隔である、請求項8に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記送信アンテナは複数の送信アンテナ素子を備え、
前記受信アンテナは複数の受信アンテナ素子を備え、
前記複数の送信アンテナ素子の給電方向は第1方向であり、
前記複数の受信アンテナ素子の給電方向は前記第1方向であり、
前記複数の送信アンテナ素子の一部又は前記複数の受信アンテナ素子の一部は第1の向きで給電され、
前記複数の送信アンテナ素子の他の一部又は前記複数の受信アンテナ素子の他の一部は第2の向きで給電され、
前記レーダ装置は前記複数の受信アンテナ素子の他の一部により受信された信号の位相を反転する回路をさらに具備する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項11】
第1送信アンテナと複数の第1集積回路とを含む第1送信モジュールと、
第2送信アンテナと複数の第2集積回路とを含む第2送信モジュールと、
第1受信アンテナと複数の第3集積回路とを含む第1受信モジュールと、
第2受信アンテナと複数の第4集積回路とを含む第2受信モジュールと、
第5集積回路と、
を具備し、
前記複数の第1集積回路の各々は、複数の第1送信回路と、複数の第1受信回路と、第1信号生成回路と、を含み、
前記複数の第2集積回路の各々は、複数の第2送信回路と、複数の第2受信回路と、第2信号生成回路と、を含み、
前記複数の第3集積回路の各々は、複数の第3送信回路と、複数の第3受信回路と、第3信号生成回路と、を含み、
前記複数の第4集積回路の各々は、複数の第4送信回路と、複数の第4受信回路と、第4信号生成回路と、を含み、
前記第5集積回路は、複数の第5送信回路と、複数の第5受信回路と、第5信号生成回路と、を含む、レーダ装置。
【請求項12】
前記複数の第1送信回路と前記複数の第2送信回路は、前記第5信号生成回路に接続される、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記複数の第3受信回路と前記複数の第4受信回路は、前記第5信号生成回路に接続される、請求項11又は請求項12に記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記第1送信アンテナは第1基板に配置され、
前記第2送信アンテナは第2基板に配置され、
前記第1送信アンテナは第1方向に第1間隔で配置される複数の送信アンテナ素子を備え、
前記第2送信アンテナは前記第1方向に前記第1間隔で配置される複数の送信アンテナ素子を備え、
前記第1基板に配置された複数の送信アンテナ素子の中の前記第2基板に最も近い送信アンテナ素子と前記第2基板に配置された複数の送信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い送信アンテナ素子との前記第1方向における距離は前記第1間隔である、請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項15】
前記第1受信アンテナは第1基板に配置され、
前記第2受信アンテナは第2基板に配置され、
前記第1受信アンテナは第1方向に第1間隔で配置される複数の受信アンテナ素子を備え、
前記第2受信アンテナは前記第1方向に前記第1間隔で配置される複数の受信アンテナ素子を備え、
前記第1基板に配置された複数の受信アンテナ素子の中の前記第2基板に最も近い受信アンテナ素子と前記第2基板に配置された複数の受信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い受信アンテナ素子との前記第1方向における距離は前記第1間隔である、請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項16】
前記第1送信アンテナは第1基板に配置され、
前記第1受信アンテナは第2基板に配置され、
前記第1送信アンテナは第1方向に第1間隔で配置される複数の送信アンテナ素子を備え、
前記第1受信アンテナは前記第1方向と直交する第2方向に前記第1間隔で配置される複数の受信アンテナ素子を備え、
前記複数の送信アンテナ素子の中の前記第2基板に最も近い送信アンテナ素子と前記複数の受信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い受信アンテナ素子との前記第2方向における距離は前記第1間隔である、請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項17】
前記複数の送信アンテナ素子は前記第1基板の前記第1方向に沿う辺から第2間隔で配置され、
前記複数の受信アンテナ素子の中の前記第1基板に最も近い受信アンテナ素子は、前記第2基板の前記第2方向に沿う辺から第3間隔で配置され、
前記第2間隔と前記第3間隔との和は前記第1間隔である、請求項16に記載のレーダ装置。
【請求項18】
前記第1送信アンテナは複数の送信アンテナ素子を備え、
前記第1受信アンテナは複数の受信アンテナ素子を備え、
前記複数の送信アンテナ素子の給電方向は第1方向であり、
前記複数の受信アンテナ素子の給電方向は前記第1方向であり、
前記複数の送信アンテナ素子の一部又は前記複数の受信アンテナ素子の一部は第1の向きで給電され、
前記複数の送信アンテナ素子の他の一部又は前記複数の受信アンテナ素子の他の一部は第2の向きで給電され、
前記レーダ装置は前記複数の受信アンテナ素子の他の一部により受信された信号の位相を反転する回路を具備する、請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載のレーダ装置と、
前記レーダ装置が受信した受信信号を処理する処理部と、
前記処理部の処理結果を表示する表示装置と、
を具備するレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置及びレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ機能を有する集積回路が商用化されている。この集積回路を用いることにより、レーダ装置が安価に利用できる。レーダ装置は、自動車、非破壊検査、医療、セキュリティなど、多様な分野への応用が期待されている。レーダ機能を有する集積回路に搭載できるアンテナの本数は少ない。そのため、アレイアンテナの開口長の拡大に限界があり、レーダ装置の空間分解能を高めることは容易ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】デザイン・ガイド:TIDEP-01012(カスケード接続のミリ波センサを使用したイメージング・レーダーの リファレンス・デザイン)、Texas Instruments、2019年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は空間分解能の高いレーダ装置及びレーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るレーダ装置は、送信モジュールと受信モジュールと第3集積回路を含む。送信モジュールは送信アンテナと複数の第1集積回路を含む。受信モジュールは受信アンテナと複数の第2集積回路を含む。複数の第1集積回路の各々は複数の第1送信回路と複数の第1受信回路と第1信号生成回路を含む。複数の第2集積回路の各々は複数の第2送信回路と複数の第2受信回路と第2信号生成回路を含む。第3集積回路は複数の第3送信回路と複数の第3受信回路と第3信号生成回路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るレーダ装置の一例を示す回路図。
図2】レーダ機能を有する集積回路(IC)の一例を示す回路図。
図3】第1実施形態に係るレーダ装置の具体的を示す回路図。
図4】第1実施形態に係るレーダ装置内の送信モジュール、受信モジュール及び信号生成モジュールの実装例を示す平面図。
図5】送信モジュールに含まれるICと送信アンテナ素子の接続例を示す図。
図6】受信モジュールに含まれるICと受信アンテナ素子の接続例を示す図。
図7】第2実施形態に係るレーダ装置の一例を示す回路図。
図8】第2実施形態に係るレーダ装置の実装例を示す平面図。
図9】第2実施形態に係るレーダ装置の隣接する一対の送信モジュールにおける送信アンテナ素子の配置例を示す図。
図10】第2実施形態に係るレーダ装置の隣接する一対の受信モジュールにおける受信アンテナ素子の配置例を示す図。
図11】第2実施形態に係るレーダ装置の送信モジュールと受信モジュールにおける送信アンテナ素子と受信アンテナ素子の配置例を示す図。
図12】第2実施形態に係るレーダ装置における給電方法の一例を示す図。
図13】第2実施形態に係るレーダ装置における給電方法の他の例を示す図。
図14】第3実施形態に係るレーダシステムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書によって開示される実施形態は、技術的思想の創作を具体化するための装置、及び方法等を例示するものである。そのため、本明細書によって開示される構成要素の構造、形状、配置等は、当該開示に限定されず、当業者が本開示から容易に想到し得る変形は、当然に、当該開示に含まれる。また、本明細書において参照される図面は、実施形態の説明を容易にするためのものである。そのため、図面は場合に応じて、実施される際に用いられる各要素より、抽象的、模式的に示される場合がある。従って、図面に示される各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等はこれに限定されない。なお、以下の説明において「接続」は、直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1乃至図6を参照して、第1実施形態に係るレーダ装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係るレーダ装置110の一例を示す回路図である。レーダ装置110は、送信モジュール10、受信モジュール20及び信号生成モジュール30を含む。レーダ装置110には、上位階層のプロセッサ90が接続される。
【0010】
信号生成モジュール30は、時間の経過に応じて周波数が直線的に増加する線形の周波数変調連続波(L-FMCW:Linear Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダ機能を有する集積回路(以下、ICと称される)32と分配器34を含む。IC32はL-FMCW信号(チャープ信号とも称される)とクロック信号を生成する。分配器34は、入力信号を2出力端子に分配して、信号生成モジュール30から出力させる。分配器34は、チャープ信号とクロック信号を送信モジュール10及び受信モジュール20に供給する。
【0011】
送信モジュール10は、L-FMCW方式のレーダ機能を有するIC12a、12b、12c、12d、送信アレイアンテナ及び分配器18a、18b、18cを含む。ICの数は4個に限らず、複数であれば、何個でもよい。送信アレイアンテナは複数の送信アンテナ素子16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g、16h、16i、16j、16k、16l、16m、16n、16o、16pを含む。送信アンテナ素子16a-16pの各々の例はパッチアンテナである。4個の送信アンテナ素子が4個のIC12a-12dに夫々接続される。例えば、送信アンテナ素子16a-16dがIC12aに接続され、送信アンテナ素子16e-16hがIC12bに接続され、送信アンテナ素子16i-16lがIC12cに接続され、送信アンテナ素子16m-16pがIC12dに接続される。
【0012】
各ICIC12a-12dに接続される送信アンテナ素子の数は4個に限らず、2個でもよいし、6個以上でもよいし、奇数でもよい。送信アンテナ素子16a-16pの中の隣接するアンテナ素子(例えば16aと16b)の間隔は一定間隔に設定されてもよいし、互いに素の関係の複数の間隔に設定されていてもよい。一定間隔の例は、一波長や半波長である。
【0013】
分配器18cは信号生成モジュール30からのチャープ信号とクロック信号を分配器18aと分配器18bに出力する。分配器18aは分配器18cからのチャープ信号とクロック信号をIC12aとIC12bに出力する。分配器18bは分配器18cからのチャープ信号とクロック信号をIC12cとIC12dに出力する。IC12a-IC12dはチャープ信号に応じた電波を送信アレイアンテナから対象物へ送信する。IC12a-IC12dはクロック信号に同期して動作する。
【0014】
受信モジュール20は、L-FMCW方式レーダ機能を有するIC22a、22b、22c、22d、受信アレイアンテナ及び分配器28a、28b、28cを含む。ICの数は4個に限らず、複数であれば、何個でもよい。受信アレイアンテナは複数の受信アンテナ素子26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26h、26i、26j、26k、26l、26m、26n、26o、26pを含む。受信アンテナ素子26a-26pの各々の例はパッチアンテナである。4個の受信アンテナ素子が4個のIC22a-22dに夫々接続される。例えば、受信アンテナ素子26a-26dがIC22aに接続され、受信アンテナ素子26e-26hがIC22bに接続され、受信アンテナ素子26i-26lがIC22cに接続され、受信アンテナ素子26m-26pがIC22dに接続される。
【0015】
各ICIC22a-22dに接続される受信アンテナ素子の数は4個に限らず、2個でもよいし、6個以上でもよいし、奇数でもよい。受信アンテナ素子26a-26pの中の隣接するアンテナ素子(例えば26aと26b)の間隔は一定間隔に設定されてもよいし、互いに素の関係の複数の間隔に設定されていてもよい。一定間隔の例は、一波長や半波長である。さらに、送信アンテナ素子間の一定間隔と受信アンテナ素子間の一定間隔は異なっていてもよい。
【0016】
分配器28cは信号生成モジュール30からのチャープ信号とクロック信号を分配器28aと分配器28bに出力する。分配器28aは分配器28cからのチャープ信号とクロック信号をIC22aとIC22bに出力する。分配器28bは分配器28cからのチャープ信号とクロック信号をIC22cとIC22dに出力する。IC22a-IC22dは対象物から反射された電波を受信アレイアンテナで受信する。IC22a-IC22dはクロック信号に同期して動作する。
【0017】
送信モジュール10と受信モジュール20はプロセッサ90に接続される。プロセッサ90は送信ビームと受信ビームのビームフォーミング処理を行う。プロセッサ90は送信モジュール10の初期設定やタイミング制御を行う。プロセッサ90は受信信号をアレイ信号処理して、対象物の有無、対象物の方向、対象物までの距離、対象物が危険物を所持しているか否か等を検出することができるし、対象物の画像を表示することもできる。
【0018】
アレイアンテナを用いるレーダ装置110の方向推定や画像表示に必要な空間分解能はアンテナ素子の数で決まる。レーダ機能を有する1つのICには限られた数のアンテナ素子しか接続できず、空間分解能を高めることができない。実施形態では、複数個、例えば4個のIC12a-12d、22a-22dを縦続接続し、16個のアンテナ素子からなるアレイアンテナを実現している。これにより、1個のICを用いる場合に比べてレーダ装置110の空間分解能を4倍とすることができる。
【0019】
IC12a-12d、IC22a-22d及びIC32はそれぞれ専用のICを用いてもよいが、同一のICを用いることもできる。図2は、IC12a-12d、IC22a-22d及びIC32の各々として用いられるICの一例を示す回路図である。IC12a-12d、IC22a-22d及びIC32の各々は、送信回路40、受信回路50及び信号生成回路60を含む。
【0020】
信号生成回路60は発振器62とクロック発生器64を含む。発振器62はチャープ信号を生成する。発振器62からのチャープ信号とクロック発生器64からのクロック信号は出力端子60aを介してIC外部へ出力される。
【0021】
送信回路40は、送信アンプ42a、42b、42c、42d、分配器44a、44b、44c及び制御部46を含む。入力端子40aにはIC外部からのチャープ信号とクロック信号が入力される。
【0022】
クロック信号は制御部46に入力される。制御部46は、クロック信号に基づいて送信回路40の送信タイミングを制御する。チャープ信号は分配器44cに入力される。分配器44cはチャープ信号を分配器44aと分配器44bに出力する。分配器44aは分配器44cからのチャープ信号を送信アンプ42aと送信アンプ42bに出力する。分配器44bは分配器44cからのチャープ信号を送信アンプ42cと送信アンプ42dに出力する。
【0023】
送信アンプ42a-42dは4個のアンテナ素子に夫々接続される。これにより、チャープ信号に応じた電波が送信アンテナ素子から放射される。さらに、分配器44a、44bの後段に位相シフタが設けられ、各送信アンテナ素子に供給されるRF信号の位相が調整され、送信ビームのビームフォーミングが行われてもよい。
【0024】
実施形態で用いられる電波としては、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの電波を利用してもよい。波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波、波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。さらに、テラヘルツ波と称される波長が100マイクロメートルから1ミリメートルの電波を用いてもよい。
【0025】
分配器44aは送信アンプ42aと送信アンプ42bと略等距離な位置に配置される。このため、分配器44aと送信アンプ42aの間の信号線S11の長さを、分配器44aと送信アンプ42bの間の信号線S12の長さと容易に等しくできる。分配器44bは送信アンプ42cと送信アンプ42dと略等距離な位置に配置される。このため、分配器44bと送信アンプ42cの間の信号線S13の長さを、分配器44bと送信アンプ42dの間の信号線S14の長さと容易に等しくできる。分配器44cは分配器44aと分配器44bと略等距離な位置に配置される。このため、分配器44cと分配器44aの間の信号線S15の長さを、分配器44cと分配器44bの間の信号線S16の長さと容易に等しくできる。
【0026】
このように入力端子40aからの信号を分配器44cで2分割し、2つの分割信号をさらに夫々2分割することにより、入力端子40aと4個の送信アンプ42a-42dの間の信号線を容易に等長とすることができる。これにより、4個の送信アンプ42a-42dへ夫々入力される4個のチャープ信号の伝送遅延のバラツキを抑えることができ、送信アレイアンテナの指向性を正確に制御することができる。もしも、入力端子40aからの信号を1つの分配器で4分割すると、4本の信号線を等長とするためには信号線を迂回配線しなければならず、ICの集積度を上げることができない。
【0027】
受信回路50は、受信アンプ52a、52b、52c、52d、ミキサ54a、54b、54c、54d、A/D変換器(ADC)56a、56b、56c、56d、分配器58a、58b、58c及び制御部59を含む。入力端子50aには、IC外部からのチャープ信号とクロック信号が入力される。
【0028】
クロック信号は制御部59に入力される。制御部59は、クロック信号に基づいて受信回路50の受信タイミングを制御する。これにより、送信回路40と受信回路50の動作が同期される。
【0029】
チャープ信号は分配器58cに入力される。4個の受信アンテナ素子が受信アンプ52a-52dに夫々接続される。図示は省略するが、受信アンプ52a-52dの出力は位相シフタにより位相が調整され、受信アレイアンテナの指向性が可変されてもよい。受信アンプ52a-52dの出力はミキサ54a-54dを夫々介してADC56a-56dに供給される。分配器58cは入力端子50aからのチャープ信号とクロック信号を分配器58aと分配器58bに出力する。分配器58aは分配器58cからのチャープ信号をミキサ54a-54dに出力するともに、分配器58cからのクロック信号をADC56a-56dに出力する。ミキサ54a-54dは、チャープ信号を用いて、受信アンプ52a-52dからのRF信号をIF帯域の受信信号に変換する。ADC56a-56dはIF帯域の受信信号をクロック信号に同期してデジタル信号に変換する。ADC56a-56dからのデジタル信号は図示しない出力端子を介してプロセッサ90に供給される。
【0030】
分配器58aはミキサ54aとミキサ54bと略等距離な位置及びADC56aとADC56bと略等距離な位置に配置される。このため、分配器58aとミキサ54aの間の信号線S21の長さを、分配器58aとミキサ54bの間の信号線S22の長さと容易に等しくでき、分配器58aとADC56aの間の信号線S23の長さを、分配器58aとADC56bの間の信号線S24の長さと容易に等しくできる。
【0031】
分配器58bはミキサ54cとミキサ54dと略等距離な位置及びADC56cとADC56dと略等距離な位置に配置される。このため、分配器58bとミキサ54cの間の信号線S25の長さを、分配器58bとミキサ54dの間の信号線S26の長さと容易に等しくでき、分配器58bとADC56cの間の信号線S27の長さを、分配器58bとADC56dの間の信号線S28の長さと容易に等しくできる。
【0032】
分配器58cは分配器58aと分配器58bと略等距離な位置に配置される。このため、分配器58cと分配器58aの間の信号線S29の長さは、分配器58cと分配器58bの間の信号線S30の長さと容易に等しくなる。
【0033】
このように入力端子50aからの信号を分配器58cで2分割し、2つの分割信号をさらに夫々2分割することにより、入力端子50aと4個のミキサ54a-54dの間の信号線を容易に等長とすることができるとともに入力端子50aと4個のADC56a-56dの間の信号線を容易に等長とすることができる。これにより、4個のミキサ54a-54dへ夫々入力される4個のチャープ信号の伝送遅延のバラツキを抑えることができ、RF信号を位相ずれが生じることなくIF信号に変換することができる。さらに、4個のADC56a-56dへ夫々入力される4個のクロック信号のタイミングズレのバラツキを抑えることができ、IF信号を正しいタイミングでデジタル信号に変換することができる。もしも、入力端子50aからの信号を4分割すると、4本の信号線を等長とするためには、信号線を迂回配線しなければならず、集積回路の集積度を上げることができない。
【0034】
図3はレーダ装置110の具体的を示す回路図である。図2に示すように、IC12a-12d、IC22a-22d及びIC32の各々は3つの回路40、50、60を含む同一のICから構成されるが、全てのIC12a-12d、IC22a-22d及びIC32が3つの回路40、50、60を必要とする訳ではない。送信モジュール10内のIC12a-12dは送信回路40を必要とするが、受信回路50と信号生成回路60を必要としない。受信モジュール20内のIC22a-22dは受信回路50を必要とするが、送信回路40と信号生成回路60を必要としない。信号生成モジュール30内のIC32は信号生成回路60を必要とするが、送信回路40と受信回路50を必要としない。
【0035】
そのため、信号生成モジュール30内のIC32では、送信回路40の入力端子40aと受信回路50の入力端子50aはIC外部に接続されず、信号生成回路60の出力端子60aが分配器34に接続される。これにより、IC32内の発振器62からのチャープ信号が分配器34を介して送信モジュール10と受信モジュール20に供給され、IC32内のクロック発生器64からのクロック信号が送信モジュール10と受信モジュール20に供給される。
【0036】
送信モジュール10内のIC12a-12dでは、受信回路50の入力端子50aと信号生成回路60の出力端子60aは他のICに接続されず、送信回路40の入力端子40aが分配器18a、18bに接続される。これにより、信号生成モジュール30から分配器18c、18a、18bを介してIC12a-12dに入力されたチャープ信号とクロック信号は送信回路40に入力される。IC12a-12dは送信回路40の動作により送信アレイアンテナを介してチャープ信号に応じた電波を対象物へ放射する。対象物で反射された電波は受信アンテナ素子26a-26pからなる受信アレイアンテナで受信される。
【0037】
受信モジュール20内のIC22a-22dでは、送信回路40の入力端子40aと信号生成回路60の出力端子60aは他のICに接続されず、受信回路50の入力端子50aが分配器28a、28bに接続される。これにより、信号生成モジュール30から分配器28c、28a、28bを介してIC22a-22dに入力されたチャープ信号とクロック信号は受信回路50に入力される。IC22a-22dは受信回路50の動作によりアンテナ素子26a-26pで受信した信号をIF信号に変換し、IF信号をデジタル信号に変換する。IC22a-22dはデジタル信号をプロセッサ90に供給する。
【0038】
図4図5及び図6を用いてレーダ装置110の実装例を説明する。図4はレーダ装置110内の送信モジュール10、受信モジュール20及び信号生成モジュール30の実装例を示す平面図である。
【0039】
送信モジュール10の構成要素であるIC12a-12dと分配器18a-18cは基板72上に形成される。送信アンテナ素子16a-16pが直線状に配置されるように、IC12a-12dは略直線状に配置される。受信モジュール20の構成要素であるIC22a-22dと分配器28a-28cは基板74上に形成される。受信アンテナ素子26a-26pが直線状に配置されるように、IC22a-22dは略直線状に配置される。信号生成モジュール30の構成要素であるIC32は基板76上に形成される。
【0040】
送信アンテナ素子16a-16pは1本の直線状ではなく、複数本の直線状に配置されてもよい。受信アンテナ素子26a-26pも1本の直線状ではなく、複数本の直線状に配置されてもよい。基板72、74、76の形状は矩形でもよいが、矩形に限定されない。3個のモジュール10、20、30が3枚の基板72、74、76上に夫々形成されるのではなく、3個のモジュール10、20、30が1枚の基板上に形成されてもよい。さらに、各モジュール10、20、30が1枚の基板上に形成されるのではなく、複数枚の基板上に分割して形成されてもよい。
【0041】
信号生成モジュール30内の分配器34の2出力端子は同軸ケーブル78a、78bを夫々介して送信モジュール10内の分配器18cの入力端子と受信モジュール20内の分配器28cの入力端子に接続される。分配器34は、同軸ケーブル78aを介して分配器18cにチャープ信号を供給し、同軸ケーブル78bを介して分配器18cにチャープ信号とクロック信号を供給する。
【0042】
送信モジュール10において、分配器18cは信号線L4を介して分配器18aに接続されるとともに、信号線L5を介して分配器18bに接続される。分配器18cは分配器18aと分配器18bと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L4の長さを信号線L5の長さと容易に等しくできる。
【0043】
分配器18aは信号線L6を介してIC12aに接続されるとともに、信号線L7を介してIC12bに接続される。分配器18aはIC12aとIC12bと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L6の長さを信号線L7の長さと容易に等しくできる。
【0044】
分配器18bは信号線L8を介してIC12cに接続されるとともに、信号線L9を介してIC12dに接続される。分配器18bはIC12cとIC12dと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L8の長さを信号線L9の長さと容易に等しくできる。
【0045】
このように信号生成モジュール30から送信モジュール10に供給されたチャープ信号を分配器18cで2分割し、2つの分割信号をさらに夫々2分割することにより、信号生成モジュール30と4個のIC12a-12d内の送信回路40の入力端子40aの間の信号線を容易に等長とすることができる。そのため、IC12a-12d内の送信回路40に入力されるチャープ信号の伝送遅延のバラツキを抑えることができる。さらに、信号線を迂回配線する必要がないので、送信モジュール10の設計が容易となり、迂回による信号減衰が生じないので、ダイナミックレンジの低下も防止することができる。
【0046】
受信モジュール20において、分配器28cは信号線L10を介して分配器28aに接続されるとともに、信号線L11を介して分配器28bに接続される。分配器28cは分配器28aと分配器28bと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L10の長さを信号線L11の長さと容易に等しくできる。
【0047】
分配器28aは信号線L12を介してIC22aに接続されるとともに、信号線L13を介してIC22bに接続される。分配器28aはIC22aとIC22bと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L12の長さを信号線L13と容易に等しくできる。
【0048】
分配器28bは信号線L14を介してIC22cに接続されるとともに、信号線L15を介してIC22dに接続される。分配器28bはIC22cとIC22dと略等距離な位置に配置される。このため、迂回配線することなく、信号線L14の長さを信号線L15の長さと容易に等しくできる。
【0049】
このように信号生成モジュール30から受信モジュール20に供給されたチャープ信号とクロック信号を分配器28cで2分割し、2つの分割信号をさらに夫々2分割することにより、信号生成モジュール30と4個のIC22a-22d内の受信回路50の入力端子50aの間の信号線を容易に等長とすることができる。そのため、IC12a-12d内の受信回路50に供給されるチャープ信号の伝送遅延のバラツキとクロック信号のタイミングズレのバラツキを抑えることができる。さらに、信号線を迂回配線する必要がないので、受信モジュール20の設計が容易となり、迂回による信号減衰が生じないので、ダイナミックレンジの低下も防止することができる。
【0050】
送信モジュール10と受信モジュール20の配置は図4の配置に限定されない。図4に示すように信号生成モジュール30の左右に送信モジュール10と受信モジュール20を配置すると、送信アンテナ素子16a-16pはX方向のプラスからマイナスの向きに給電され、受信アンテナ素子26a-26pはX方向のマイナスからプラスの向きに給電される。送信アンテナ素子16a-16pと受信アンテナ素子26a-26pの給電方向は同じX方向であるが、給電の向きが反転しているので、送信アンテナ素子16a-16pから放射される水平偏波と受信アンテナ素子26a-26pで受信される水平偏波は位相が反転する。水平偏波の送受信間の位相の反転は、送信回路40内の位相シフタ又は受信回路50内の位相シフタにより受信信号の位相を電気的に調整することにより、無くすことができる。水平偏波の送受信間の位相の反転は、プロセッサ90により受信信号の位相を反転することによっても補償できる。
【0051】
あるいは、送信モジュール10と受信モジュール20が同じ方向で同じ向きに給電されるように、送信モジュール10と受信モジュール20の配置を調整してもよい。例えば、送信モジュール10の基板72又は受信モジュール20の基板74を表裏反転すれば、送信アンテナ素子16a-16pと受信アンテナ素子26a-26pの給電方向を同じ方向とし、向きも同じ向きとすることができる。
【0052】
図5は送信モジュール10内のIC(一例として12a)と送信アンテナ素子(一例として16a-16d)の接続例を示すものであり、図4の左上の部分の拡大図である。
【0053】
送信アンテナ素子16aは、信号線S1を介して、IC12a内の送信回路40内の送信アンプ42aに接続される。送信アンテナ素子16bは、信号線S2を介して、送信回路40内の送信アンプ42bに接続される。送信アンテナ素子16cは、信号線S3を介して、送信回路40内の送信アンプ42cに接続される。送信アンテナ素子16dは、信号線S4を介して、送信回路40内の送信アンプ42dに接続される。送信アンテナ素子16a-16dどうしの間隔dは一波長でもよいし、半波長でもよいし、他の波長でもよい。
【0054】
信号線S1の長さ、信号線S2の長さ、信号線S3の長さ及び信号線S4の長さは略等しい。従って、信号生成モジュール30内のIC32内の信号生成回路60から送信アンテナ素子16a-16dまでの4本の信号線の長さは互いに等しい。
【0055】
送信モジュール10内の他のIC12b-12dと送信アンテナ素子の接続も同様である。
【0056】
図6は受信モジュール20内のIC(一例として22a)と受信アンテナ素子(一例として26a-26d)の接続例を示すものであり、図4の右上の部分の拡大図である。
【0057】
受信アンテナ素子26aは、信号線S5を介して、IC22a内の受信回路50内の受信アンプ52aに接続される。受信アンテナ素子26bは、信号線S6を介して、受信回路50内の受信アンプ52bに接続される。受信アンテナ素子26cは、信号線S7を介して、受信回路50内の受信アンプ52cに接続される。受信アンテナ素子26dは、信号線S8を介して、受信回路50の受信アンプ52dに接続される。受信アンテナ素子26a-26dどうしの間隔dは一波長でもよいし、半波長でもよいし、他の波長でもよい。
【0058】
信号線S5の長さ、信号線S6の長さ、信号線S7の長さ及び信号線S8の長さは略等しい。従って、信号生成モジュール30内のIC32内の信号生成回路60から受信アンテナ素子26a-26dまでの4本の信号線の長さは互いに等しい。
【0059】
受信モジュール20内の他のIC22b-22dと受信アンテナ素子の接続も同様である。
【0060】
第1実施形態に係るレーダ装置110によれば、レーダ機能を備えるICを縦続接続することにより、開口長の大きい送信アレイアンテナと受信アレイアンテナが構成される。このため、空間分解の高いレーダ装置110が実現される。レーダ装置110は、高分解能の方向推定や高精細イメージングを必要とするアプリケーションへ適用可能である。送信アレイアンテナと受信アレイアンテナの開口長は、縦続接続するICの増やすことにより、容易に大きくすることができる。
【0061】
各ICは信号生成回路60を含むが、送信アレイアンテナから電波を放射させる複数の送信用ICと受信アレイアンテナから電波を放射させる複数の受信用ICは、内蔵する信号生成回路60の機能を使用しない。信号生成回路60の機能のみを使用する信号生成専用の1個のICが設けられ、このICからの信号が複数の送信用ICと複数の受信用ICに供給される。このため、複数の送信用ICと複数の受信用ICの同期が担保される。
【0062】
さらに、信号生成専用ICからの信号が等長信号線を介して複数の送信用ICと複数の受信用IC分配されている。各送信用ICでは入力信号が等長信号線を介して複数の送信アンテナ素子に分配されている。各受信用IC内では入力信号が等長信号線を介して複数の受信アンテナ素子からの受信信号の信号処理部に分配されている。このため、同期制御が高精度に行われ、送信波どうしの干渉を防止し、送信処理タイミングに同期して受信波の信号とチャープ信号のミキシング等の受信処理を行うことができる。また、複数のアンテナ素子の複数の送信回路と受信回路が等長信号線を介して信号生成専用ICに接続されているので、アレイ処理の際の位相制御を正確に行うことができ、アレイアンテナの指向性を正確に制御することができる。
【0063】
(第2実施形態)
図7乃至図13を参照して第2実施形態に係るレーダ装置112について説明する。図7はレーダ装置112の一例を示す回路図である。レーダ装置112は、送信ユニット82、受信ユニット84及び信号生成モジュール30を含む。レーダ装置112はプロセッサ90に接続される。
【0064】
送信ユニット82は、送信モジュール10a、10b、10c、10d及び分配器86a、86b、86cを含む。送信モジュール10a、10b、10c、10dの各々は第1実施形態の送信モジュール10と等価である。送信ユニット82に含まれる送信モジュールの数は4個に限らず、複数であれば、何個でもよい。分配器86cは信号生成モジュール30からのチャープ信号を分配器86aと分配器86bに出力する。分配器86aは分配器86cからの信号を送信モジュール10aと送信モジュール10bに出力する。分配器86bは分配器86cからの信号を送信モジュール10cと送信モジュール10dに出力する。
【0065】
分配器86cは分配器86aと分配器86bと略等距離な位置に配置される。分配器86aは送信モジュール10aと送信モジュール10bと略等距離な位置に配置される。分配器86bは送信モジュール10cと送信モジュール10dと略等距離な位置に配置される。このため、信号生成モジュール30からのチャープ信号は略等長の信号線を介して送信モジュール10a-10dの各々に供給される。
【0066】
受信ユニット84は、受信モジュール20a、20b、20c、20d及び分配器88a、88b、88cを含む。受信モジュール20a、20b、20c、20dの各々は第1実施形態の受信モジュール20と等価である。受信ユニット84に含まれる受信モジュールの数は4個に限らず、複数であれば、何個でもよい。分配器886cは信号生成モジュール30からのチャープ信号とクロック信号を分配器88aと分配器88bに出力する。分配器88aは分配器88cからの信号を受信モジュール20aと受信モジュール20bに出力する。分配器88bは分配器88cからの信号を受信モジュール20cと受信モジュール20dに出力する。
【0067】
分配器88cは分配器88aと分配器88bと略等距離な位置に配置される。分配器88aは受信モジュール20aと受信モジュール20bと略等距離な位置に配置される。分配器88bは受信モジュール20cと受信モジュール20dと略等距離な位置に配置される。このため、信号生成モジュール30からのチャープ信号とクロック信号は略等長の信号線を介して受信モジュール20a-20dの夫々に供給される。
【0068】
送信モジュール10a、10b、10c、10dと受信モジュール20a、20b、20c、20dがプロセッサ90に接続される。
【0069】
図8はレーダ装置112の実装例を示す平面図である。送信モジュール10a、10b、10c、10dはそれぞれ矩形の基板92a、92b、92c、92d上に形成される。受信モジュール20a、20b、20c、20dはそれぞれ矩形の基板94a、94b、94c、94d上に形成される。基板92a-92d、94a-94dは正方形領域の4辺に沿って2枚ずつ配置される。
【0070】
送信アンテナ素子が正方形領域の外周でX方向に沿って配置されるように、一対の基板92a、92bが正方形領域の上辺に沿って隣接して配置され、一対の基板92c、92dが正方形領域の下辺に沿って隣接して配置される。受信アンテナ素子が正方形領域の外周でY方向に沿って配置されるように、一対の基板94a、92bが正方形領域の右辺に沿って隣接して配置され、一対の基板94c、94dが正方形領域の左辺に沿って隣接して配置される。
【0071】
4枚の基板92a、92b、92c、92d上の64個の送信アンテナ素子が1個の送信アレイアンテナを構成し、4枚の基板94a、94b、94c、94d上の64個の受信アンテナ素子が1個の受信アレイアンテナを構成する。
【0072】
送信と受信は互換性があるので、図8の例とは異なり、受信アレイアンテナがX方向に沿って配置されるように、受信モジュール20a-20dの基板94a-94dをX方向に隣接するように配置し、送信アレイアンテナがY方向に沿って配置されるように、送信モジュール10a-10dの基板92a-92dをY方向に隣接するように配置してもよい。
【0073】
信号生成モジュール30は図示しないが、任意の場所に配置可能である。例えば、信号生成モジュール30を正方形領域の内側に配置し、略等長の複数の同軸ケーブルを介して送信モジュール10a-10d、受信モジュール20a-20dと接続してもよい。あるいは、信号生成モジュール30を送信モジュール10a-10d、受信モジュール20a-20dの外側に配置してもよい。
【0074】
図9はレーダ装置112の隣接する一対の送信モジュールにおける送信アンテナ素子の配置例を示す図である。図9は一例として送信モジュール10a、10bの基板92a、92b上の送信アンテナ素子を示す。基板92a上の送信アンテナ素子16a-16pはX方向に沿って間隔dで配置される。間隔dは一波長でもよいし、半波長でもよいし、他の波長でもよい。基板92b上の送信アンテナ素子16a-16pもX方向に沿って間隔dで配置される。
【0075】
送信アレイアンテナを構成するために、アンテナ素子16a-16pがX方向に沿って配置されるように基板92a、92bがX方向に沿って隣接して配置された場合、基板92a上の右端の送信アンテナ素子16pと基板92b上の左端の送信アンテナ素子16aの間隔も間隔dであることが必要である。このため、各基板において隣接する基板に最も近いアンテナ素子は当該基板の端部の間隔ができるだけ短くなるように配置される。
【0076】
基板92a上の送信アンテナ素子16a-16pの中の基板92bに最も近い右端の送信アンテナ素子16pは、基板92aのY方向の2辺のうち基板92bに最も近い辺e1から第2間隔d2で配置される。基板92b上の送信アンテナ素子16a-16pの中の基板92aに最も近い左端の送信アンテナ素子16aは、基板92bのY方向の2辺のうち基板92aに最も近い辺e2から第3間隔d3で配置される。第2間隔d2と第3間隔d3は、第2間隔d2と第3間隔d3の和が間隔d以下となるように設計されている。
【0077】
こうすると、基板92a上の右端の送信アンテナ素子16pと基板92b上の左端の送信アンテナ素子16aの間隔を他のアンテナ素子の間隔dと等しくすることができる。これにより、2つの送信モジュール10a、10bを縦続接続して、32個の送信アンテナ素子からなる送信アレイアンテナを実現することができる。もし、第2間隔d2と第3間隔d3をともにd/2と設計しておくと、製造誤差が無ければ、基板92a、92bを隙間なく隣接することにより間隔dを実現できる。第2間隔d2と第3間隔d3をともにd/2より多少小さくしておくと、製造誤差があっても間隔dを実現することができる。
【0078】
他の一対の送信モジュール10c、10dの基板92c、92dについても同様である。
【0079】
送信と受信は互換性があるので、図9の例とは異なり、受信アレイアンテナがX方向に沿って配置されるように受信モジュール20a、20bの基板94a、94bをX方向に沿って隣接して配置してもよい。
【0080】
図10はレーダ装置112の隣接する一対の受信モジュールにおける受信アンテナ素子の配置例を示す図である。図10は一例として受信モジュール20a、20bの基板94a、94b上の受信アンテナ素子を示す。基板94a上の受信アンテナ素子26a-26pはY方向に沿って間隔dで配置される。基板94b上の受信アンテナ素子26a-26pもY方向に沿って間隔dで配置される。
【0081】
受信アレイアンテナを構成するために、アンテナ素子26a-26pがY方向に沿って配置されるように基板94a、94bがY方向に隣接して配置された場合、基板94a上の下端の受信アンテナ素子26pと基板94b上の上端の受信アンテナ素子26aの間隔も間隔dであることが必要である。このため、各基板において隣接する基板に最も近いアンテナ素子は当該基板の端部の間隔ができるだけ短くなるように配置される。
【0082】
基板94a上の受信アンテナ素子26a-26pの中の基板94bに最も近い下端の受信アンテナ素子26pは、基板94aのX方向の2辺のうち基板94bに最も近い辺e3から第4間隔d4で配置される。基板94b上の受信アンテナ素子26a-26pの中の基板94aに最も近い上端の受信アンテナ素子26aは、基板94bのX方向の2辺のうち基板94aに最も近い辺e4から第5間隔d5で配置される。第4間隔d4と第5間隔d5は、第4間隔d4と第5間隔d5の和が間隔d以下となるように設計されている。
【0083】
こうすると、基板94a上の下端の受信アンテナ素子26pと基板94b上の上端の受信アンテナ素子26aの間隔を間隔dとすることができる。これにより、2つの受信モジュール20a、20bを縦続接続して、32個の受信アンテナ素子からなる受信アレイアンテナを実現することができる。もし、第4間隔d4と第5間隔d5をともにd/2と設計しておくと、製造誤差が無ければ、基板94a、94bを隙間なく隣接することにより間隔dを実現できる。第4間隔d4と第5間隔d5をともにd/2より多少小さくしておくと、製造誤差があっても間隔dを実現できる。
【0084】
他の一対の受信モジュール20c、20dの基板94c、94dについても同様である。
【0085】
送信と受信は互換性があるので、図10の例とは異なり、送信アレイアンテナがY方向に沿って配置されるように送信モジュール10a、10bの基板92a、92bをY方向に沿って隣接して配置してもよい。
【0086】
図11はレーダ装置112の正方形領域の角部に配置される送信モジュールおける送信アンテナ素子と受信モジュールにおける受信アンテナ素子の配置例を示す図である。図11は一例として正方形領域の右上の角部に配置される送信モジュール10bの基板92bと受信モジュール20aの基板94aを示す。
【0087】
基板92b上のX方向に沿って間隔dで配置される送信アンテナ素子16a-16pの中の基板94aに最も近い右端の送信アンテナ素子16pは、基板92bのY方向の2辺のうち基板94aに最も近い辺e5から第6間隔d6で配置され、基板92bのX方向の2辺のうち基板94aに最も近い辺e6から第7間隔d7で配置される。
【0088】
基板94a上のY方向に沿って間隔dで配置される受信アンテナ素子26a-26pの中の基板92bに最も近い上端の受信アンテナ素子26aは、基板94aのX方向の2辺のうち基板92bに最も近い辺e7から第8間隔d8で配置され、基板94aのY方向の2辺のうち基板92bに最も近い辺e8から第9間隔d9で配置される。
【0089】
第6間隔d6と第9間隔d9は、第6間隔d6と第9間隔d9の和が間隔d以下となるように設計されている。第7間隔d7と第8間隔d8は、第7間隔d7と第8間隔d8の和が間隔d以下となるように設計されている。
【0090】
こうすると、基板92b上の右端の送信アンテナ素子16pと基板94a上の上端の受信アンテナ素子26aのX方向に沿った間隔を間隔dとすることができる。また、基板92b上の右端の送信アンテナ素子16pと基板94a上の上端の受信アンテナ素子26aのY方向に沿った間隔も間隔dとすることができる。この位置関係が成立することにより、プロセッサ90の受信信号処理により、送信アンテナ素子の位置と受信アンテナ素子の位置の中間点に仮想的な信号点を作ることができ、仮想アレーアンテナを実現することができる。
【0091】
正方形領域の他の角部に配置される送信モジュールの基板と受信モジュールの基板についても同様である。
【0092】
送信と受信は互換性があるので、図11の例とは異なり、受信アレイアンテナがX方向に沿って配置されるように受信モジュール20a、20bの基板94a、94bをX方向に沿って隣接して配置してもよいし、送信アレイアンテナがY方向に沿って配置されるように送信モジュール10a、10bの基板92a、92bをY方向に沿って隣接して配置してもよい。
【0093】
図11の配置関係は、第1実施形態にも適用できる。すなわち、第1実施形態の送信モジュール10を第2実施形態の送信モジュール10bの位置に配置し、基板と送信アンテナ素子の位置関係を図11のように設定し、第1実施形態の受信モジュール20を第2実施形態の受信モジュール20aの位置に配置し、基板と受信アンテナ素子の位置関係を図11のように設定してもよい。
【0094】
図12はレーダ装置112における給電方法の一例を示す図である。
【0095】
正方形領域の上辺に配置される送信モジュール10bの基板92b上では、IC12aと送信アンテナ素子16a-16dがY方向に沿って配置され、IC12bと送信アンテナ素子16e-16hがY方向に沿って配置され、IC12cと送信アンテナ素子16i-16lがY方向に沿って配置され、IC12dと送信アンテナ素子16m-16pがY方向に沿って配置される。IC12a-12dと送信アンテナ素子16m-16pを接続する信号線は、IC12a-12dから引き出される際は、一部はY方向に対して傾いているが、送信アンテナ素子16a-16pへ接続される際は、全てY方向に沿った状態となり、送信アンテナ素子16a-16pの給電方向はY方向である。このため、送信アンテナ素子16a-16pは垂直偏波を放射する。
【0096】
図示していないが、送信モジュール10aは送信モジュール10bと全く同様であり、垂直偏波を放射する。
送信モジュール10c、10dも送信モジュール10a、10bと同様に垂直偏波を放射する。しかし、給電方向が同じY方向でも、給電の向きにより垂直偏波は位相が異なる。送信モジュール10a、10bと送信モジュール10c、10dとでは、IC12a-12dと送信アンテナ素子16a-16pのY方向における位置関係が異なるので、給電の向きが異なる。
【0097】
送信モジュール10a、10bでは、IC12a-12dは送信アンテナ素子16a-16pよりY方向においてプラス側に配置されているので、信号線と送信アンテナ素子16a-16pとの接続点、すなわち送信アンテナ素子16a-16pの給電点は、X軸を0度とした場合、90度の位置になる。すなわち、送信アンテナ素子16a-16pの給電方向はY方向であり、Y方向においてプラスからマイナスの向きに給電される。これに対して、送信モジュール10c、10dでは、IC12a-12dは送信アンテナ素子16a-16pよりY方向においてマイナス側に配置されているので、信号線と送信アンテナ素子16a-16pとの接続点、すなわち送信アンテナ素子16a-16pの給電点は、-90度の位置になる。すなわち、送信アンテナ素子16a-16pの給電方向はY方向であり、Y方向においてマイナスからプラスの向きに給電される。
【0098】
このため、送信モジュール10c、10dから放射される垂直偏波は、送信モジュール10a、10bから放射される垂直偏波と位相が反転している。この放射電波の位相の反転は、プロセッサ90が受信信号を処理する際、受信信号の位相を反転させることにより電気的に無くすことができる。
【0099】
正方形領域の右辺に配置される受信モジュール20aの基板94a上では、IC22aと受信アンテナ素子26a-26dがY方向に沿って配置され、IC22bと受信アンテナ素子26e-26hがY方向に沿って配置され、IC22cと受信アンテナ素子26i-26lがY方向に沿って配置され、IC22dと受信アンテナ素子26m-26pがY方向に沿って配置される。IC22a-22dと受信アンテナ素子26m-26pを接続する信号線は、IC22a-22dから引き出される際は、一部はX方向に対して傾いているが、受信アンテナ素子26a-26pに近づく際は、全てX方向に沿った状態となる。しかし、このまま信号線を受信アンテナ素子26a-26pに接続すると、受信アンテナ素子26a-26pの給電点は、0度の位置になる。受信アンテナ素子26a-26pの偏波方向は水平となり、送信アンテナ素子16a-16pから放射された垂直偏波を受信できない。
【0100】
そのため、X方向に沿った信号線は先端部が-90度の向きに曲げられてY方向に沿った状態にされてから、受信アンテナ素子26a-26pに接続される。信号線と受信アンテナ素子26a-26pとの接続点、すなわち受信アンテナ素子26a-26pの給電点は、90度の位置になる。受信アンテナ素子26a-26pの偏波方向は垂直方向となり、送信アンテナ素子16a-16pの偏波方向と揃えられる。しかも、送信モジュール10a、10b、10c、10dの給電点の角度と、受信モジュール20a、20b、20c、20dの給電点の角度が一致するので、垂直偏波の位相も揃えられる。
【0101】
送信と受信は互換性があるので、図12の例とは異なり、受信アレイアンテナが正方形領域の上辺に沿って配置されるように受信モジュール20a、20bの基板94a、94bをX方向に沿って隣接して配置してもよいし、送信アレイアンテナが正方形領域の右辺に沿って配置されるように送信モジュール10a、10bの基板92a、92bをY方向に沿って隣接して配置してもよい。
【0102】
図13はレーダ装置112における給電方法の他の例を示す図である。図12の例では、全ての受信アンテナ素子26a-26pの給電点の角度が90度であるので、受信アンテナ素子26a-26pから信号線はY方向のマイナスからプラスの向きに引き出される。基板94aの上側の端辺に最も近い受信アンテナ素子26aと端辺との間隔は、図11に示すように狭く、信号線をアンテナ素子26aから90度の向きに引き出すことが困難である場合がある。図13の例では、IC22a、22bから引き出されX方向に沿った信号線は、図12に示すように、先端部が-90度の向きに曲げられてY方向に沿った状態にされてから、受信アンテナ素子26a-26hに接続され、IC22a、22bから引き出されX方向に沿った信号線は、図12とは逆に、先端部が90度の向きに曲げられてY方向に沿った状態にされてから、受信アンテナ素子26i-26pに接続される。このため、基板94aの端部の受信アンテナ素子26a、26pとも端辺までに信号線を引き出すスペースを確保できる。
【0103】
受信アンテナ素子26a-26hの給電点は-90度の位置であり、受信アンテナ素子26i-26pの給電点は90度の位置である。受信アンテナ素子26a-26hと受信アンテナ素子26i-26pの給電方向はY方向で同じであるが、向きは異なる。そのため、受信アンテナ素子26a-26hが受信する垂直偏波と受信アンテナ素子26i-26pが受信する垂直偏波は位相が反転している。受信アンテナ素子26a-26hが受信する垂直偏波と送信アンテナ素子16a-16pが放射する垂直偏波も位相が反転している。
【0104】
受信モジュール20a-20dの出力はプロセッサ90に供給される。プロセッサ90は受信モジュール20a-20d内のADC56a-56dの出力を処理する。さらに、プロセッサ90は受信モジュール20a-20dの出力信号の中の受信アンテナ素子26a-26hの受信信号の位相を反転させる。これにより、受信アンテナ素子26a-26hが受信する垂直偏波と送信アンテナ素子16a-16pが放射する垂直偏波の位相を揃えることができる。プロセッサ90により位相を反転する代わりに、受信モジュール20a-20d内の受信回路50の位相シフタによって受信アンテナ素子26a-26hの受信信号の位相を反転させてもよい。
【0105】
送信と受信は互換性があるので、図13の例とは異なり、受信アレイアンテナがX方向に沿って配置されるように受信モジュール20a、20bの基板94a、94bをX方向に沿って隣接して配置してもよいし、送信アレイアンテナがY方向に沿って配置されるように送信モジュール10a、10bの基板92a、92bをY方向に沿って隣接して配置してもよい。
【0106】
第2実施形態のレーダ装置112によれば、第1実施形態の送信モジュール10と受信モジュール20を夫々従属接続することにより、空間分解能をさらに向上することができる。また、隣接するモジュールの基板の辺とアンテナ素子との間隔を狭くすることにより、隣接する基板間のアンテナ素子の間隔も他の間隔と等しく一定間隔とすることができる。さらに、アンテナ素子の給電方向と向きが揃うようにICからの信号線をアンテナ素子に配線して接続しているので、送信モジュール10と受信モジュール20の偏波方向と位相を揃えることができる。
【0107】
図14は、上述した実施形態によるレーダ装置110、112の応用例であるレーダシステムを示す。レーダシステムは、レーダ装置110又は112と、プロセッサ90と、表示装置118からなる。レーダ装置110又は112はターゲット(例えば、人物)126の検査面(X-Y平面)124に対向してX-Y平面に配置される。レーダ装置110又は112のサイズはターゲット126のサイズに応じている。そのため、ターゲット126のサイズが大きい場合は、例えば図8に示した1つのレーダ装置112がターゲット126全体を検査できない場合がある。その場合は、例えば図8に示したレーダ装置112と対応する複数(ここでは、6個)のレーダ装置112a、112b、112c、112d、112e、112fを平面上に配列して、全体として大きなサイズのレーダ装置を構成してもよい。あるいは、図8に示したレーダ装置112の正方形領域の外周に配置される基板の枚数を増やして1つの大きなレーダ装置を構成してもよい。
【0108】
プロセッサ90は、レーダ装置112a-112fから送信される電波の送信方向に位置する3次元空間122内の平面であってレーダ装置112a-112fと平行な検査面124内のターゲット126の画像を得ることができる。画像が得られる検査面124の位置は電波の送信から受信までの時間に応じている。電波の送信から受信までの時間を3次元空間122内の多数の検査面124の位置に応じて設定し、多数の異なる位置の検査面124の画像を得ることにより、ターゲット126の3次元画像を得ることができる。このレーダシステムの利用の一例としては、空港や駅等の利用者のボディチェックがある。
【0109】
プロセッサ90はレーダ装置112に含まれる各アンテナに接続される送信処理部132と受信処理部134を含む。送信処理部132は送信モジュール10a-10dを制御し、受信処理部134は受信モジュール20a-20dを制御する。
【0110】
送信処理部132と受信処理部134はタイミング処理部140により制御される。送信処理部132と受信処理部134は有線又は無線によりタイミング処理部140に接続される。タイミング処理部140は、送信処理部132の送信周波数、帯域、アンテナ毎の送信タイミング等を制御し、アンテナ毎の受信処理部134の受信タイミング(送信から受信までの時間)等を制御する。1つのアンテナの受信信号はターゲット126の1つの画素の画像信号に対応する。タイミング処理部140は、アンテナを順次変更(スキャンとも称する)するとともに、受信タイミングを変更する。各送信アンテナから送信された電波のターゲット126による反射波が受信アンテナで受信される。
【0111】
受信処理部134で受信した受信信号は信号処理部136に供給され、ターゲット126の3次元画像を示す画像信号が生成される。あるいは、信号処理部136は、受信処理部134で受信した受信信号から、ターゲット126やターゲット126の所持物の危険の有無や危険度に関する表示信号を生成してもよい。受信処理部134と信号処理部136は有線又は無線により接続される。信号処理部136もタイミング処理部140により制御される。信号処理部136の画像再構成アルゴリズムは時間領域法や周波数領域法やその他の任意のアルゴリズムを用いることができる。
【0112】
信号処理部136により生成された画像信号は表示装置118に供給され、表示される。この画像を観察することにより、ターゲット126が危険物(例えば、銃)128を所持していることを検知することができる。信号処理部136と表示装置118も有線又は無線により接続される。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を生成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本明細書に記載した長さ及び距離は、製造誤差等が生じる可能性があることから、最大で25パーセントのずれを許容する。長さと距離のずれは、10パーセント以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
10…送信モジュール、11…信号生成回路、20…受信モジュール、21、22、23、24…送信回路、30…信号生成モジュール、31、32、33、34…受信回路、100…分配器、200、201、202…分配器、300、301、302…分配器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14