IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 59/122 20230101AFI20240213BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240213BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20240213BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240213BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240213BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240213BHJP
   H10K 50/80 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
H10K59/122
H10K59/35
H10K59/124
H10K50/10
H10K59/10
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 349D
G09F9/30 349C
H10K50/80
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021103774
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2019231268の分割
【原出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021168297
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0173646
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】李 殷 亨
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085769(JP,A)
【文献】特開2002-098981(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0004221(KR,A)
【文献】特開2006-309957(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00-99/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを覆う平坦化膜と、
前記薄膜トランジスタの露出部と接続した電極と、
発光部を定義するために前記電極の一部を露出するバンクと、
前記バンク上のスペーサと、
前記発光部に対応する前記電極の上面を除く前記バンクおよび前記スペーサの複数の表面の紫外線範囲における光を少なくとも反射する紫外線遮断層と、
前記発光部における前記電極の前記上面、および前記発光部周辺の前記紫外線遮断層の両方の上に設けられた有機発光層と、
を備え、
前記紫外線遮断層は前記バンクおよび前記スペーサに直接接触する無機層を含む、有機発光表示装置。
【請求項2】
前記紫外線遮断層は、700Å~2000Åの厚さである、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
基板上の少なくとも一つの薄膜トランジスタと、
前記少なくとも一つの薄膜トランジスタと接続した電極と、
発光部を定義し前記電極の一部を露出するバンクと、
前記バンクの上面の一部上に設けられたスペーサと、
紫外線範囲の光を少なくとも反射するように、前記発光部に対応する前記電極の上面を除く前記バンクおよび前記スペーサの上面および側面に設けられた絶縁膜と、
前記発光部の前記電極および前記発光部周辺の前記絶縁膜の少なくとも側面の両方の上に備えられた有機発光層と、
を備え、
前記絶縁膜は前記バンクおよび前記スペーサに直接接触する無機層を含む有機発光表示装置。
【請求項4】
前記有機発光層は、前記バンクの前記上面の上に形成されていない、請求項3に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの薄膜トランジスタを覆う平坦化膜をさらに含む、請求項3に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記紫外線範囲は、10nm~400nmの波長光である、請求項3に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記無機層は、ZnOx、TiOx、SixNyおよびTaxOyの少なくともいずれか一つを含む、請求項3に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記絶縁膜は、無機膜と有機膜の交互積層を一対以上含み、前記絶縁膜の最下層は、前記バンクおよび前記スペーサに直接接触する前記無機層である、請求項3に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
前記無機膜は、ZnOx、TiOx、SixNyおよびTaxOyの少なくともいずれか一つであり、
前記有機膜は、PTFE(Polyetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidene fluoride)、PET(Polyethylene terephthalate)、COP(Cyclo Olefin Polymer)およびPC(Polycarbornate)のいずれか一つである、請求項8に記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
基板上の少なくとも一つの薄膜トランジスタと、
前記少なくとも一つの薄膜トランジスタと接続した電極と、
発光部を定義し前記電極の一部を露出するバンクと、
前記バンクの上面の一部上に設けられたスペーサと、
紫外線範囲の光を少なくとも反射するように、前記発光部に対応する前記電極の上面を除き、前記バンクおよび前記スペーサの上面および側面に設けられた絶縁膜と、
前記発光部の前記電極および前記発光部周辺の前記絶縁膜の少なくとも側面の両方の上に備えられた有機発光層と
を備え、
前記絶縁膜は前記バンクおよび前記スペーサに直接接触する無機層を含む、
前記絶縁膜は、前記スペーサの上部面で開口している、有機発光表示装置。
【請求項11】
前記絶縁膜は、前記スペーサの上部面および前記上部面に続く側部の一部まで開口している、請求項10に記載の有機発光表示装置。
【請求項12】
前記平坦化膜および前記バンクの間に、前記紫外線範囲の光を反射および/または吸収するように、補助絶縁膜をさらに備える、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項13】
前記補助絶縁膜は、前記電極が設けられていない領域に設けられる、請求項12に記載の有機発光表示装置。
【請求項14】
前記バンクとスペーサは、同じ物質である、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項15】
前記バンクとスペーサは、ポリイミド(polyimide)またはポリアミド(polyamide)からなる、請求項14に記載の有機発光表示装置。
【請求項16】
前記平坦化膜は、フォトアクティブ化合物(photoactive compound)を含む有機膜である、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項17】
前記絶縁膜は、複数の第1紫外線遮断膜と、前記複数の第1紫外線遮断膜上に備えられた少なくとも一つの第2紫外線遮断膜を含んでいる、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項18】
前記複数の第1紫外線遮断膜は無機膜であり、
前記少なくとも一つの第2紫外線遮断膜は有機膜である、請求項17に記載の有機発光表示装置。
【請求項19】
前記絶縁膜の最外フィルムはフレキシブルである、請求項17または請求項18に記載の有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、紫外線信頼性テスト或いは長時間の野外使用などの環境において装置内の有機膜におけるガス抜け(outgassing)を防止し、ガス抜けによる有機発光素子内の有機スタックの劣化を防止した有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、本格的な情報化時代に入るにつれて電気的情報信号を視覚的に表現するディスプレイ(display)分野が急速に発展してきており、それに相応して薄型化、軽量化、低消費電力化した優れた性能を持つ様々な平板表示装置(Flat Display Device)が開発され、急速に既存のブラウン管(Cathode Ray Tube:CRT)に取って代わっている。
【0003】
このような平板表示装置の具体的な例には、液晶表示装置(Liquid Crystal Display device:LCD)、プラズマ表示装置(Plasma Display Panel device:PDP)、電界放出表示装置(Field Emission Display device:FED)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Device:OLED)及び量子点表示装置(Quantum Dot Display Device)などを挙げることができる。
【0004】
その中でも、別途の光源を必要とせず、装置のコンパクト化及び鮮明なカラーを表示する目的から、有機発光表示装置のような自発光表示装置が競争力あるアプリケーション(application)として考慮されている。
【0005】
一方、表示装置は、製品の出荷に当たって様々なテストを行って信頼性を検証する。このようなテストのうち、最近では、表示装置が極暑や極寒などの野外環境でも一般的に用いられることを考慮して、紫外線信頼性テストが要求されている。
【0006】
有機発光表示装置は、発光する有機発光層の特性上、水分に弱いだけでなく、紫外線光に対して発光領域が収縮して正常発光できなく、寿命も低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであり、特に、紫外線遮断層を装置内部に適用し、紫外線信頼性テスト或いは長時間の野外使用などの環境においても安定した有機発光表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機発光表示装置は、内部構成を変更することにより、紫外線信頼性テスト或いは長時間の野外使用などの環境においても装置内の有機膜におけるガス抜け(outgassing)を防止し、ガス抜けによる有機発光素子内の有機スタックの劣化を防止することができる。
【0009】
本発明の一実施例に係る有機発光表示装置は、基板上の薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタを覆う平坦化膜と、前記薄膜トランジスタの露出部と接続した電極と、発光部を定義するために前記電極の一部を露出するバンクと、前記バンク上のスペーサと、前記発光部に対応する前記電極の上面を除く前記バンク及びスペーサの表面に設けられた紫外線遮断層と、前記発光部及び該発光部周辺の前記紫外線遮断層上で設けられた有機発光層と、を備えることができる。
【0010】
前記紫外線遮断層は、前記700Å~2000Åの厚さであることができる。
【0011】
本発明の他の実施形態による有機発光表示装置は、基板上の少なくとも一つの薄膜トランジスタと、前記少なくとも一つの薄膜トランジスタと接続した電極と、発光部を定義するために前記電極の一部を露出するバンクと、紫外線範囲の光を反射および/または吸収するように、前記バンク上に備えられた絶縁膜と、前記発光部及び該発光部周辺の絶縁膜上で、前記電極の露出部と重畳した有機発光層と、を備えることができる。
【0012】
前記有機発光層は、前記バンク上に形成されていないことができる。
【0013】
前記少なくとも一つの薄膜トランジスタを覆う平坦化膜と前記バンク上のスペーサをさらに含み、前記絶縁膜は、前記スペーサの上にさらに含まれることができる。
【0014】
前記紫外線範囲は、10nm~400nmの波長光であることができる。
【0015】
前記絶縁膜は、無機膜を含むことができる。
【0016】
前記無機膜は、ZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0017】
前記絶縁膜は、無機膜と有機膜の交互積層を一対以上含むことができる。
【0018】
前記無機膜は、ZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyの少なくともいずれか一つであり、前記有機膜は、PTFE(Polyetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidene fluoride)、PET(Polyethylene terephthalate)、COP(Cyclo Olefin Polymer)及びPC(Polycarbornate)のいずれか一つであることができる。
【0019】
前記絶縁膜は、前記スペーサの上部面で開口していることができる。
【0020】
前記紫外線遮断層は、前記スペーサの上部面及び該上部面面に続く側部の一部まで開口していることができる。
【0021】
前記平坦化膜の上部面に、前記紫外線範囲の光を反射および/または吸収するように、補助絶縁膜をさらに備えることができる。
【0022】
前記電極が設けられていない領域に紫外線遮断をさらに備えることができる。
【0023】
前記バンクとスペーサは、同じ物質であることができる。
【0024】
前記バンクとスペーサは、ポリイミド(polyimide)またはポリアミド(polyamide)からなることができる。
【0025】
前記平坦化膜は、フォトアクティブ化合物(photoactive compound)を含む有機膜であることができる。
【0026】
前記絶縁膜は、複数の第1紫外線遮断膜と、前記複数の第1紫外線遮断膜上に備えられた少なくとも一つの第2紫外線遮断膜を含んでいることができる。
【0027】
前記複数の第1紫外線遮断膜は無機膜であり、前記少なくとも一つの第2紫外線遮断膜は有機膜であることができる。
【0028】
前記絶縁膜の最外フィルムはフレキシブルであることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有機発光表示装置は、次のような効果がある。
【0030】
第一に、紫外線遮断層を装置の内部に備えることによって、紫外線が装置に入射する時、紫外線遮断層が紫外線光を反射或いは吸収し、特に紫外線光を直接受ける場合にガス抜けを誘発する有機物質材料内に紫外線が透過されることを防止することができる。
【0031】
第二に、紫外線遮断層の存在により、紫外線透過の遮断によって下部ガス抜け誘発層におけるガス抜けを防止し、有機スタックにおける発光領域の収縮現象を防止することができる。したがって、発光素子内の安定性が維持され、有機発光表示装置の寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施例による有機発光表示装置の断面図である。
図2】本発明の第2実施例による有機発光表示装置の断面図である。
図3】本発明の第3実施例による有機発光表示装置の断面図である。
図4】比較例による有機発光表示装置の断面図である。
図5】平坦化膜のUV照射によってブリーチングの発生したか否かによる化学的反応を示す図である。
図6】バンク及びスペーサの主成分としてポリアミド酸を示す図である。
図7】UV信頼性実験後、収縮が発生する発光部を示す平面図である。
図8】本発明の第4実施例による紫外線遮断層を示す断面図である。
図9】本発明の第5実施例による紫外線遮断層を示す断面図である。
図10】本発明の第6実施例による紫外線遮断層を示す断面図である。
図11a】紫外線遮断層の有無による効率変化を赤色、緑色、青色の発光層で観察したグラフである。
図11b】紫外線遮断層の有無による効率変化を赤色、緑色、青色の発光層で観察したグラフである。
図11c】紫外線遮断層の有無による効率変化を赤色、緑色、青色の発光層で観察したグラフである。
図12】様々な成分による発光領域におけるガス抜け散布図行列を示すグラフである。
図13】様々な材料別紫外線領域帯の透過率を示すグラフである。
図14】TiO成分の厚さ別波長に対する透過率変化を示すグラフである。
図15】紫外線遮断層の厚さ別ソーラースペクトル重畳面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明する。明細書全体を通じて同一の参照番号は実質的に同一の構成要素を意味する。以下の説明において、本発明に係る技術或いは構成に関する具体的な説明が却って本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、以下の説明で使われる構成要素の名称は明細書作成の容易さを考慮して選択されたものであり、実製品の部品名と相違することもある。
【0034】
本発明の様々な実施例を説明するための図面に開示された形状、大きさ、比率、角度、個数などは例示的なものであり、本発明は図面に開示の事項に限定されない。本明細書全体を通じて同一の図面符号は同一の構成要素を示す。また、本発明を説明するとき、関連している公知技術に関する具体的な説明が却って本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。本明細書において‘含む’、‘有する’、‘からなる’などが使われる場合、‘~だけ(のみ)’が使用されない限り、他の部分が付加されてもよい。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合も含む。
【0035】
本発明の様々な実施例に含まれた構成要素を解釈するとき、特に明示的記載がなくても誤差範囲を含むものとして解釈する。
【0036】
本発明の様々な実施例の説明において、位置関係について説明するとき、例えば、‘~上に’、‘~上部に’、‘~下部に’、‘~側に’などによって2つの部分の位置関係が説明される場合、‘直に’又は‘直接’が使用されない限り、2つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置する場合も含むことができる。
【0037】
本発明の様々な実施例の説明において、時間関係について説明するとき、例えば、‘~後に’、‘~に続いて’、‘~次に’、‘~前に’などによって時間的先後関係が説明される場合、‘直に’又は‘直接’が使用されない限り、連続しない場合も含むことができる。
【0038】
本発明の様々な実施例の説明において、‘第1~’、‘第2~’などを様々な構成要素を説明するために使うことができるが、これらの用語は同一類似な構成要素を互いに区別するためのものに過ぎない。したがって、本明細書において‘第1~’と表現される構成要素は、特に言及がない限り、本発明の技術的思想内で‘第2~’と表現される構成要素と同一であり得る。
【0039】
本発明の様々な実施例の各特徴は部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、それぞれの様々な実施例が互いに独立して実施されてもよく、相互関連して実施されてもよい。
【0040】
図1は、本発明の第1実施例による有機発光表示装置の断面図である。
【0041】
図1に示すように、本発明の第1実施例による有機発光表示装置は、基板100上に薄膜トランジスタTFTと、前記薄膜トランジスタTFTの一部を除いて覆う平坦化膜117と、前記平坦化膜117から露出された前記薄膜トランジスタの一部と接続した第1電極118と、前記第1電極118の一部を露出させて発光部を定義するバンク120と、前記バンク上のスペーサ121と、前記発光部に対応する前記第1電極118の上面を除いて前記バンク及びスペーサの表面に設けられた紫外線遮断層122と、前記発光部及び該発光部周辺の前記紫外線遮断層と重畳した有機発光層130とを備える。
【0042】
前記基板100は、ガラス基板、プラスチック基板或いは金属基板で構成され得る。最近では有機発光表示装置の可撓性のために主にプラスチック基板が用いられている。プラスチック基板の材質は、PI(Polyimide)、PET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PC(polycarbonate)、PES(polyethersulfone)、PAR(polyarylate)、PSF(polysulfone)、COC(ciclic-olefin copolymer)などの材質を用いることができる。
【0043】
図1に示す例は、可撓性(flexibility)を有するポリイミドの第1基材103を基板100に含むが、一般にポリイミのようなプラスチック材質のフィルムはアレイ工程中に丸まったり損傷する危険があるため、ガラス基板上に犠牲層を形成し、その上にプラスチック材質のフィルムを塗布し、アレイ工程を完了した後に、ガラス基板を除去する工程を適用することにより、装置のスリム化と工程上の便宜を同時に確保する。
【0044】
また、基板100は、アレイが上部に形成される主基材として第1基材103を含み、前記第1基材103の下部の傷や外部からの直接的な損傷を防止するように、保護基材101を接着層102を介してさらに付着することもできる。保護基材101はプラスチックフィルムでよく、場合によって有色性であってもよい。
【0045】
以下、前記基板100上にまず形成される薄膜トランジスタアレイについて説明する。基板100は、複数個の画素がマトリクス状に設けられ、各画素に対して薄膜トランジスタTFTとストレージキャパシタCstが設けられる。同図は、薄膜トランジスタTFT及びストレージキャパシタCstが位置した上下部の断面図であり、必要によって各画素は薄膜トランジスタTFT及びストレージキャパシタCstをさらに含むことができ、本発明でいう薄膜トランジスタアレイとは、薄膜トランジスタとストレージキャパシタなどの構成及びそれらと同一層に形成される配線などの構成を含むものを指す。
【0046】
前記第1基材103の上部のアレイを形成する前に、複数個の無機絶縁層の積層からなる複数のバッファ層104を備え、上部のアレイに第1基材103から不純物が流入することを防止し、アレイ形成の保護を担当する。複数のバッファ層104は、酸化膜(SiOx)、窒化膜(SiNx)、酸窒化膜(SiNxOy)であり得る。
【0047】
前記複数のバッファ層104上の所定部位に下部遮光金属105が設けられる。
【0048】
次に、前記下部遮光金属105上に半導体バッファ層106が設けられる。半導体バッファ層106の構成も、上述したバッファ層と同種の無機絶縁膜であり得る。
【0049】
前記半導体バッファ層106は、そこに形成される半導体層107,107aの平坦度を確保し、半導体層107,107aに下部層からの不純物が伝達されることを防止する。場合によって、水素が半導体層107,107aに流入することを遮断し、半導体層107,107aを含む薄膜トランジスタの特性変化無しに駆動特性を安定化させる。
【0050】
前記半導体バッファ層106上の所定部位に半導体層107,107aを形成する。同断面図では第1半導体層107及び第2半導体層107aが互いに分離されるとしているが、平面図に見られるように、前記第1半導体層107及び第2半導体層107aは互いに連結部位を有することができる。
【0051】
第1半導体層107は薄膜トランジスタの半導体層として用いられ、不純物がドープされていないチャネル領域107c、その両側の、不純物がドープされたソース領域107s及びドレイン領域107dを有する。そして、第2半導体層107aは、ソース領域107s及びドレイン領域107dと同じドーピング領域と定義される。前記第1半導体層107及び第2半導体層107aのドーピング工程は、前記第1及び第2半導体層107,107aの形状をパターニングした後、選択的にチャネル領域107cを覆い、露出された部位に不純物をドープする。前記第1及び第2半導体層107,107aは、例えば、非晶質シリコン、結晶質シリコン及び酸化物半導体の少なくともいずれか一つであるか、或いはいずれか2つ以上を積層して形成することができる。
【0052】
前記半導体層107,107aを覆いながら半導体バッファ層106上にゲート絶縁膜108を形成する。
【0053】
前記ゲート絶縁膜108及び半導体バッファ層106を選択的に除去して前記下部遮光金属105を部分的に露出する接続ホールを形成し、接続ホールを含めて前記ゲート絶縁膜108上に金属を蒸着し、これを選択的に除去して、前記第1半導体層107のチャネル領域107cと重畳するゲート電極110、及び前記ゲート電極110と離隔し、前記下部遮光金属105の電気的信号を安定化する第1接続配線109を形成する。
【0054】
前記ゲート電極110及び第1接続配線109が形成されたゲート絶縁膜108上に第1層間絶縁膜111が設けられる。
【0055】
そして、前記第1接続配線109と重畳して前記第1層間絶縁膜111上に第1ストレージ電極112が設けられる。
【0056】
前記第1ストレージ電極112を含む前記第1層間絶縁膜111上に第2層間絶縁膜113が設けられる。ここで、前記第1層間絶縁膜111及び第2層間絶縁膜113は酸化膜、窒化膜、酸窒化膜などの無機絶縁膜であり得る。
【0057】
前記第2層間絶縁膜113及び第1層間絶縁膜111を選択的に除去して、前記第1半導体層107の両側、すなわち、ソース領域107s及びドレイン領域107dを選択的に露出させる接続ホールを形成する。
【0058】
前記接続ホールを含む前記第2層間絶縁膜113上に金属を蒸着し、これを選択的に除去して、前記接続ホールを通じて第1半導体層107のソース領域107s及びドレイン領域107dと接続されるソース電極114及びドレイン電極115を形成し、同一層に第2ストレージ電極116を形成する。
【0059】
ここで、ストレージキャパシタ形成部位に位置する前記第2ストレージ電極116は、ソース電極114又はドレイン電極115と異なる部位で電気的連結を有するか、或いはそれらの層と同一層に形成されるデータライン(図示せず)又は別途の配線に連結されて電気的信号を受信し、前記第1ストレージ電極112は、ゲート電極110と同一層に形成される別途の配線に連結されて電気的信号を受信して、前記第1及び第2ストレージ電極112,116と、該第1及び第2ストレージ電極112,116の間に設けられた第2層間絶縁膜113の重畳部位においてストレージキャパシタをなす。
【0060】
上述した薄膜トランジスタTFT及びストレージキャパシタCstの構成は必要によって変更されてもよく、場合によって、前記第1ストレージ電極112は省略され、下部構成である第1接続配線109などがその機能を代替してもよい。
【0061】
一方、前記薄膜トランジスタTFTに接続された有機発光素子を構成するとき、平坦な表面における光効率の向上のために前記薄膜トランジスタTFT及びストレージキャパシタCstを覆う平坦化膜117がさらに設けられる。平坦化膜117は、光活性化合物(PAC:Photo Active Compound)を含む有機膜であり、その厚さは1μm~5μmと下部構成を平坦に覆う程度に厚い。前記光活性化合物の例にDNQスルホネート(Di-azonaphthoquinone sulfonate)を含み、光硬化後に内部架橋結合(crosslinkaing)してその膜質が稠密であり、平坦性が良い。
【0062】
前記平坦化膜117は、前記薄膜トランジスタTFT、すなわち、ドレイン電極115が露出されるように接続ホールが設けられており、該接続ホールを通じて有機発光素子(OLED)の第1電極118がドレイン電極115に接続される。
【0063】
バンク120は、そのオープン領域に発光部が定義されるものであり、発光部定義膜とも呼ばれる。
【0064】
バンク120の上部に設けられるスペーサ121は、各画素に有機発光層130を形成するときに微細開口付き微細金属マスクを利用するが、微細金属マスクの荷重による垂れによって微細金属マスクがバンク120に当たってバンク120が崩れることを防止し、前記バンク120が微細金属マスクに直接当たることを防止する役割を担う。この場合、前記バンク120に比べて前記スペーサ121が小さい幅を有し、バンク120の一部領域に前記スペーサ121が設けられ得る。バンク120とスペーサ121は同一材料によって単一工程で共に定義され得る。
【0065】
一方、前記バンク120及びスペーサ121は、ポリアミド或いはポリイミドからなる。
【0066】
先に言及した平坦化膜117は光活性化合物を含み、バンク120及びスペーサ121もポリアミド酸を含む。これらはいずれも、各膜をなす化合物の末端基としてカルボキシル基(-COOH)を含むが、特に、紫外線光が照射されると内部化合物の末端基であったカルボキシル基(-COOH)が光反応しつつ二酸化炭素(CO)として脱離し、このような二酸化炭素が装置内でガス抜けとして作用し得る。
【0067】
本発明の有機発光表示装置は、このようなガス抜けを防止するために、紫外線光がバンク120及びスペーサ121の下部へ透過しないようにバンク120及びスペーサ121の表面に紫外線遮断層122を備える。
【0068】
前記紫外線遮断層122は、略10nm~400nmの紫外線領域帯の光を反射又は吸収することができる。すなわち、紫外線遮断層122に紫外線光が入射すると、紫外線遮断層122は紫外線光を反射させるか、自分が吸収し得る。一部の光が通過してもその透過量を40%未満に制限し、紫外線によって前記バンク120及びスペーサ121或いはそれらの下部側の層で紫外線と反応してガス抜けを誘発することを防止することができる。
【0069】
紫外線遮断層122は、紫外線光の十分且つ効果的な吸収及び反射のために一定厚さを有することができ、その好ましい厚さは700Å~2000Åであり得る。また、紫外線遮断性に優れた無機遮断膜、例えば、ZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyの少なくともいずれか一つを含むことができる。前記紫外線遮断層122が700Å以上の厚さを有する理由は、その以下の厚さであれば、紫外線遮断が特定波長において不連続的であるか、一部の紫外線が透過し得るためである。また、紫外線遮断層122が2000Å以下の厚さを有する理由は、それを超える厚さであれば、可視光領域帯の光の損失が発生し得るためである。
【0070】
前記紫外線遮断層122は、上述した材料の無機遮断膜を一定厚さ以上の単一層にし、紫外線光を効果的に反射及び吸収してもよく、或いは複数層を積層して紫外線光領域帯の光を効果的に遮断してもよい。
【0071】
そして、紫外線遮断層122は、バンク122と重畳しない第1電極118の上面には設けられず、この部位における光損失を減らすことができる。
【0072】
一方、前記有機発光素子(OLED)は、発光部に順次に蒸着された第1電極118及び有機発光層130と第2電極(図示せず)によって形成される。図示してはいないが、第2電極は、基板100上の全体画素を覆いつつ一体形に設けられるものであり、有機発光層130の上部の他に紫外線遮断層122にも均一に形成されている。前記第2電極は、半透過或いは透明電極からなり、有機発光層130から光が透過する。
【0073】
一方、前記有機発光層130は単一膜として示されているが、有機発光層130の他に、その下部に正孔輸送層及び正孔注入層をさらに含むことができ、その上部に電子輸送層及び電子注入層をさらに含むことができる。そして、前記有機発光層130は、電荷生成層を挟んで複数の有機発光層を配置させたスタック構造であってもよい。
【0074】
本発明の有機発光表示装置において、紫外線遮断層122は、スペーサ121の形成後にPVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)及びALD(Atomic Layer Deposition)のいずれか一つの蒸着方式によって特定の開口部に選択的に形成されてもよく、或いは非形成部、すなわち、バンク120と重畳しない第1電極118の上面にのみ感光膜を設け、上述した蒸着方式で全面蒸着した後、感光膜が設けられている部位を選択的にリフトオフし、バンク120と重畳しない第1電極118の上面以外の部位にのみ残してもよい。
【0075】
前記紫外線遮断層122は光学的に紫外線光の遮断性を有する必要があるので、膜の緻密度が重要であり、内部ピンホールを防止するようにパルス蒸着方式を用いることができ、この方式の蒸着時にはプラズマパワーの強度を均等調節する。
【0076】
一方、前記紫外線遮断層122は、有機発光表示装置の形成を完了した後、装置の紫外線信頼性テストにおいて加えられる苛酷な実験条件の紫外線光、或いは有機発光表示装置の製品使用中に日照量の大きい太陽光への露出による紫外線光に対する影響を全て抑えることができる。また、本発明の有機発光表示装置は、紫外線遮断層122の存在により、バンク120及びスペーサ121或いはその下部の平坦化膜117が紫外線光によって変性すること及び紫外線光と反応して各膜におけるガス抜けが他の層に影響を与えることを防止し、有機発光表示装置の信頼性を改善することができる。
【0077】
図2は、本発明の第2実施例による有機発光表示装置の断面図である。
【0078】
図2に示すように、本発明の第2実施例による有機発光表示装置は、構造的に、前記第1実施例の有機発光表示装置に、前記平坦化膜117の上部面に紫外線遮断補助層128をさらに備えることができる。前記紫外線遮断補助層128は、上述した紫外線遮断層118の材料と同一系列の材料、すなわち、紫外線遮断性に優れた無機遮断膜、例えば、ZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyの少なくともいずれか一つを含むことができる。そして、前記紫外線遮断補助層128は、第1電極118が反射電極を含み、第2電極が半透過性或いは透過性の電極からなって上部発光方式を有するとき、紫外線遮断特性を持つ略700Å以上であれば、上限厚さに制限がない。これは、第1電極118の下部に光が伝達されず、前記紫外線遮断補助層128の可視光領域帯の透過を考慮しなくてもいいためである。
【0079】
前記紫外線遮断補助層128は、平坦化膜117の上部面及び前記第1電極118の下部に位置する。この場合、紫外線遮断補助層128は、第1電極118の上部から入射する一部の紫外線がその下側の平坦化膜117の成分と反応することを防止でき、平坦化膜117の上部とバンク120及びスペーサ121の下部で二重の紫外線遮断が可能であり、上述した第1実施例に比べて安定的に紫外線光を遮断することができる。前記平坦化膜の上部面に、前記紫外線範囲の光を反射および/または吸収するように、補助絶縁膜128をさらに備えることができる。
【0080】
図3は、本発明の第3実施例による有機発光表示装置の断面図である。
【0081】
図3に示すように、上述した本発明の第2実施例の変形例であり、本発明の第3実施例の有機発光表示装置は、第1電極118の位置する部位に紫外線遮断補助層138を備えることができる。前述したように、第1電極118が反射性電極を含むので、紫外線遮断補助層138が外部、即ち第1電極118が設けられていない部位に設けられ、同一面の紫外線遮断補助層138と第1電極118が上部から入射する紫外線がこれらの膜を通過できないようにし、紫外線光を遮断することができる。
【0082】
図4は、比較例による有機発光表示装置の断面図である。
【0083】
図4は、比較例による有機発光表示装置であり、上述した本発明の有機発光表示装置とは違い、紫外線遮断層及び紫外線遮断補助層が設けられておらず、上部から入射する紫外線光がスペーサ21、バンク20及び平坦化膜117に垂直方向に透過し、平坦化膜117、バンク20及びスペーサ21においてそれぞれガス抜け40,20a,21aが発生している。また、スペーサ21及びバンク20の側部からもガス抜け21a,20aが移動して有機発光層30の側部劣化部30aを発生させ、発光領域の縮小を招くことがある。
【0084】
以下では、平坦化膜、バンク及びスペーサの成分の化学式と紫外線テスト時の変化について述べ、これらの膜で紫外線テスト時に発生するガス抜けの原因について説明する。
【0085】
図5は、平坦化膜のUV照射によってブリーチング(bleaching)の発生するか否かによる化学的反応を示す図である。
【0086】
図5に示すように、平坦化膜は光活性化合物(PAC:Photo Active Compound)のDNQスルホネート(Di-azonaphthoquinone sulfonate)を含んでなる。
【0087】
すなわち、平坦化膜は、薄膜トランジスタが形成された基板上にDNQスルホネートを成膜し、これを一般光硬化させてなる。
【0088】
光硬化段階で、窒素成分が除去され、化学式1で表示される化合物(Indene carboxylic acid sulfonate)の末端基のカルボキシル基から脱水素化され、CO-基を有し、該CO-が隣接化合物と結合しつつ架橋結合がなされる。
【0089】
平坦化膜の内部において架橋結合が正常に行われた部分ではポリマー状に稠密な連結を有するが、硬化に反応できなかった部分は、紫外線信頼性テスト時の強い紫外線照射によって、化学式1の化合物(Indene carboxylic acid sulfonate)の末端基であったカルボキシル基(COOH-)から二酸化炭素が発生してガス抜け(outgassing)のガスとして作用し、周辺層、特に有機発光素子内の有機発光層に劣化を招くことがあり、平坦化膜の内部においてもポリマー状の化合物の架橋結合も一部損傷させ、ガス抜けの継続した発生を招くことがある。このようなガス抜けによって平坦化膜の変性及び平坦化膜などの変性による有機発光層の縁の劣化、すなわち、有機発光層の縁が黒く見える現象が発生する。
【0090】
【化1】
【0091】
図6は、バンク及びスペーサの主成分としてポリアミド酸を示す図である。
【0092】
図6に示すように、バンク及びスペーサは、ポリアミド酸を硬化させてポリマー化したポリアミドからなる。
【0093】
このようなポリアミド酸の構成では対称的にカルボキシル基(COOH)が位置するが、ポリアミドのカルボキシル基が紫外線信頼性テスト時の強い紫外線によって脱水化し、二酸化炭素として脱離され得る。
【0094】
このように紫外線照射によって発生した二酸化炭素は隣接層に移動し、平坦化膜におけると同様に有機発光層の劣化を招くことがある。
【0095】
図7は、UV信頼性実験後に、収縮の発生する発光部を示す平面図である。
【0096】
図7に示すように、バンクの開口部と定義されていた発光領域は、図4及び図5に見られるように、紫外線信頼性テスト後に平坦化膜或いはバンク及びスペーサにおける二酸化炭素によるガス抜けの影響によって発光部の縁で劣化領域30aが発生して発光部領域が縮小し、これによって有機発光表示装置の寿命が縮むことがある。
【0097】
また、有機発光層の他にも、その上部に設けられた電子注入層には、第2電極からの電子の注入を容易にするためにリチウムのようなアルカリイオンが含まれているが、移動した二酸化炭素及び内部水素がリチウムと反応してLiHCOのような金属化合物を形成し、上述した有機発光層の縮小現象を加速化し得る。
【0098】
以下、上述した紫外線遮断層の他の形態について説明する。
【0099】
図8は、本発明の第4実施例による紫外線遮断層を示す断面図である。
【0100】
以上では紫外線遮断層がZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyなどの無機遮断膜である例を挙げた。
【0101】
ところが、スペーサ231は有機発光層の蒸着時に微細金属マスク250とその上部面が当たることがあり、硬度のある無機遮断膜が表面に設けられた場合には破れる恐れがある。また、有機発光層の蒸着後に破れた無機遮断膜は装置に残り続き、不良として視認される恐れがある。
【0102】
そこで、本発明の第4実施例による紫外線遮断層232は、スペーサ231の上部表面及び該上部表面に続く側部の一部に開口部を有するように形成し、有機発光層の蒸着時に微細金属マスク250がスペーサ231に接触し、軟性のスペーサ231と微細金属マスクとが接するようにし、無機遮断膜の紫外線遮断層232の損傷を防止する。前記スペーサ231はバンク(図1の220参照)の一部の幅にのみ形成されており、且つ下部よりも上部の幅が小さくなっているため、実質的に紫外線遮断層232に設けられる開口部は小さい幅に過ぎず、実質的に紫外線遮断機能を低下させる程度ではない。場合によって、前記紫外線遮断層232はスペーサ231の上部表面のみから除去されてもよい。
【0103】
図9は、本発明の第5実施例による紫外線遮断膜を示す断面図である。
【0104】
図9に示すように、本発明の第5実施例による紫外線遮断膜242は、バンク(図1の220参照)及びスペーサ241上に無機膜成分の第1紫外線遮断膜242a、及び弾性力を有する有機膜成分の第2紫外線遮断膜242bの二重層構造で形成されている。
【0105】
この場合、弾性力の良い有機膜成分の第2紫外線遮断膜242bが、有機発光層を形成するための微細金属マスク250と対応するので、両者間の接触があっても第2紫外線遮断膜242bの損傷が防止されるだろう。
【0106】
この場合、第1紫外線遮断膜242aは無機遮断膜であり、ZnOx、TiOx、SixNy及びTaxOyの少なくともいずれか一つであり、前記第2紫外線遮断膜242bは、PTFE(Polyetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidene fluoride)、PET(Polyethylene terephthalate)、COP(Cyclic Olefin Polymer)及びPC(Polycarbornate)のいずれか一つであり得る。
【0107】
この場合にも、紫外線遮断層242の合計厚さは、一定厚さを適用することができ、その好ましい厚さとして700Å~2000Åの範囲を挙げることができる。前記紫外線遮断層242を備えることによって、外部光のうち、紫外線光の他にも可視光領域帯の光の損失も防止することができる。
【0108】
図10は、本発明の第6実施例による紫外線遮断膜を示す断面図である。
【0109】
図10に示すように、本発明の第6実施例による紫外線遮断膜252は、上述した第5実施例の変形例であり、無機膜の第1紫外線遮断膜252a,252c,252eと有機膜の第2紫外線遮断膜252b,252d,252fとを積層した一対を複数対有するものであり、この場合、最上部に位置した紫外線遮断膜は有機遮断膜であり、微細金属マスク250との接触においても紫外線遮断膜250の損傷が防止される。本発明の他の実施形態による有機発光表示装置で前記絶縁膜は、複数の第1紫外線遮断膜と、前記複数の第1紫外線遮断膜上に備えられた少なくとも一つの第2紫外線遮断膜を含んでいることができる。前記複数の第1紫外線遮断膜は無機膜であり、前記少なくとも一つの第2紫外線遮断膜は有機膜であることができる。前記絶縁膜の最外フィルムはフレキシブルであることができる。
【0110】
図11a~図11cは、紫外線遮断層の有無による効率変化を赤色、緑色、青色の発光層で評価したグラフである。
【0111】
図11aは、赤色光に対して、紫外線遮断層適用の有無によって紫外線信頼性テスト時に時間変化による効率を評価したものであり、赤色光の場合、紫外線遮断層が設けられていない場合、240時間後には効率がほとんど初期状態の10%レベルとなる。これに対し、本発明の紫外線遮断層が設けられている場合には、同一条件で240時間が経過しても初期状態の100%以上の効率を維持している。
【0112】
図11bは、緑色光に対して、紫外線遮断層適用の有無によって紫外線信頼性テスト時に時間変化による効率を評価したものであり、緑色光の場合、紫外線遮断層が設けられていない場合、240時間後には効率がほとんど初期状態の10%レベルとなる。これに対し、本発明の紫外線遮断層を備えている場合には、同一条件で240時間が経過しても初期状態の100%以上の効率を維持している。
【0113】
図11cは、青色光に対して、紫外線遮断層適用の有無によって紫外線信頼性テスト時に時間変化による効率を評価したものであり、青色光に場合、紫外線遮断層が設けられていない場合、240時間後には効率がほとんど初期状態の10%レベルとなる。これに対し、本発明の紫外線遮断層を備えている場合には、同一条件で240時間が経過しても初期状態の100%以上の効率を維持している。
【0114】
一方、図11a~図11cにおいて、紫外線遮断層が設けられているときは、赤色、緑色、青色光のいずれも略220時間まではむしろ効率が増加する傾向を示している。実質的に、紫外線遮断層が設けられている場合にも、紫外線信頼性テストで要求する条件では効率の低下がないことが確認でき、これは、紫外線照射による製品内の有機発光層の変性がほとんど発生しないことを意味する。
【0115】
図12は、様々な成分によって発光領域においてガス抜け散布図行列を示すグラフである。
【0116】
図12は、成分による発光領域の変化を示す図であり、二酸化炭素の増加によって発光領域が著しく減少することが確認できる。特に、これは、水分に比べて、量による発光領域の増加が深刻な場合、紫外線信頼性テストにおいて、製品内の二酸化炭素のガス抜けによって装置内変性を深刻に招き得ることを意味する。
音を意味する。
【0117】
本発明の有機発光表示装置は、紫外線遮断層を備えることによってそれを防止することができる。
【0118】
図13は、様々な材料別紫外線領域帯の透過率を示すグラフである。
【0119】
図13は、材料Si、SiO、ZrO、Ta、ZnOに対してそれぞれ厚さを2000Åにし、製品別波長による透過度を評価したグラフである。350nm以下の波長の紫外線に対して遮断特性に最も優れているものはTiOであり、Taは、概略的に250nm以下の波長の紫外線に対して効果的であり、Siは、200nm以下の波長の紫外線に対して効果的である。ZrOやZnOは、200nm~400nmの範囲で透過度が60%以上であるため、単一材料としては紫外線遮断特性を期待し難く、これらの材料は紫外線遮断層に用いられるとき、より紫外線遮断特性に優れた材料を複数層蒸着させて紫外線遮断効果を増大させることができよう。
【0120】
図14は、TiO成分の厚さ別波長に対する透過率変化を示すグラフである。
【0121】
図14に示すように、TiO成分は、100Åの厚さのように薄い膜として設けられるとき、略350nm以下の波長で40%以下の透過度を有する。ところが、厚さを漸次増やすと350nm以下の波長において透過率が減ることが確認できる。TiOの厚さを略500Åにする場合は、350nm以下の波長で透過率が5%程度であり、700Å以上の厚さでは350nm以下の波長で透過率がさらに減ることが分かる。すなわち、TiO膜を700Å以上の厚さにすると、350nm以下の波長においてほとんど透過率がなく、これはTiO膜を700Åの厚さ以上にすると、紫外線を安定して遮断できるということを意味する。
【0122】
図15は、紫外線遮断層の厚さ別ソーラースペクトル重畳面積を示すグラフである。
【0123】
図15に示すように、紫外線遮断層の厚さを700Å以上にした場合、太陽光スペクトルとの重畳が同一に17%以下と示されている。これは、紫外線遮断層の厚さを700Å以上にする場合、紫外線領域帯の波長の影響及び透過を十分に防止し、紫外線遮断層の下層及び内部構成が紫外線と反応して変性されることを防止できるということを意味する。
【0124】
一方、太陽光スペクトル(Solar Irradiation Spectrum)について簡略に説明する。これは、異なるメーカー及び研究室で作られた光電子素子の効率比較のために定義された基準の一つである。標準太陽光スペクトル(solar spectrum)としては1985 Wehrli standard Extraterrestrial Solar Irradiance Spectrumを利用する。略199.50nmから10075nmまでに1nm単位に太陽エネルギーを測定(単位Wm-2nm-1)して定義したものである。そして、図14で太陽光スペクトルとの重畳は、前記測定された太陽エネルギーを100%としたとき、これと比較して示したものである。本発明の表示装置では紫外線領域における影響の有無を判断し、太陽光スペクトルとの重畳は、すなわち図15に提示された太陽光スペクトルとの重畳は、紫外線領域帯、すなわち波長200nm~450nmでの重畳を示している。
【0125】
図14に提示されたTiOの透過率を考慮すれば、TiOを紫外線遮断層として具現するとき、透過エネルギーは、紫外線遮断層の厚さに対する標準太陽光スペクトルのエネルギーと厚さ別透過率を乗じた値である。
【0126】
この場合、TiO膜を100Åにした場合にも、TiO膜が設けられていない場合(太陽光スペクトルの100%重畳)に比べて50%の重畳面積を有し、効果が得られるが、略700Åまでは太陽光スペクトルの面積に対して順次減る特性を示している。これは、万一本発明の有機発光表示装置において紫外線遮断層をTiOで構成し、その厚さを100Åにしたとき、工程偏差によって紫外線遮断層の厚さにおいて10%前後の偏差があると、太陽光スペクトル重畳面積値も領域別にばらつくことがあり、全体領域において均一な紫外線遮断特性が得られなくなる。そこで、本発明の有機発光表示装置では紫外線遮断層を厚さ700Å以上にし、工程偏差によって厚さにばらつきがあっても、700Å以上であれば厚さに関係なく紫外線遮断層のない構造に比べて太陽光スペクトル重畳面積が略17%以下である太陽光スペクトルとの重畳特性によって高い紫外線遮断レベルを維持し、工程偏差による紫外線特性差を防止した。
【0127】
本発明の有機発光表示装置は、紫外線との反応性が最も大きいバンク及びスペーサの表面に紫外線遮断層を備えることにより、紫外線が上部に入射する時に紫外線遮断層が紫外線光を反射或いは吸収し、特に紫外線光を直接受ける場合にガス抜けが起きる有機物質材料内への紫外線の透過を防止することができる。
【0128】
また、紫外線遮断層を備えることによって、紫外線の透過を遮断して下部ガス抜け誘発層におけるガス抜けを防止し、有機スタックにおける発光領域の収縮現象を防止することができる。したがって、発光素子内の安定性が維持され、有機発光表示装置の寿命が向上する。
【0129】
場合によって、バンク及びスペーサの下部層にも紫外線遮断層を形成することにより、バンク及びスペーサ形成前或いは形成後にも、一部の紫外線遮断層が設けられていない領域から入射した紫外線によって薄膜トランジスタアレイ内の素子特性に影響が及ぶことを防止する。
【0130】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明したが、本発明は必ずしもそれらの実施例に限定されなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で様々に変形実施が可能である。したがって、本発明に開示された様々な実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されない。したがって、以上に述べた様々な実施例はいずれの面においても例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈しなければならず、特許請求の範囲と同等な範囲内における技術思想はいずれも本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきであろう。
【符号の説明】
【0131】
100:基板 101:第1基材
TFT:薄膜トランジスタ Cst:ストレージキャパシタ
114:ソース電極 115:ドレイン電極
117:平坦化膜 118:第1電極
120:バンク 121:スペーサ
122:紫外線遮断層 130:有機発光層
128:紫外線遮断補助層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図12
図13
図14
図15