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特許7434224情報処理装置、プログラム、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/10 20120101AFI20240213BHJP
【FI】
G06Q20/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021132861
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2023027627
(43)【公開日】2023-03-02
【審査請求日】2022-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593022629
【氏名又は名称】株式会社ジェーシービー
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】間下 公照
(72)【発明者】
【氏名】南井 享
(72)【発明者】
【氏名】河野 哲也
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135831(JP,A)
【文献】特開2003-296648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、前記支払者の支払者装置または前記受取者の受取者装置から取得する取引情報取得部と、
前記取引情報に基づいて、前記第1口座から資金移動業者が保有する前記第1決済機関の第1仲介口座に前記取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、前記第1決済機関の第1サーバに行う第1指示部と、
前記取引情報に基づいて、前記資金移動業者が保有する前記第2決済機関の第2仲介口座から前記第2口座に前記取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、前記第2決済機関の第2サーバに行う第2指示部と、
前記取引情報取得部により前記取引情報が取得された場合、前記取引情報に基づいて、前記資金の移動前に前記第1仲介口座の残高および前記第2仲介口座の残高により定まる額と前記取引金額との差額を、前記第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高として設定する残高設定部と、
前記残高設定部により前記第1目標残高が設定された場合、前記移動前の所定のタイミングで、前記第1仲介口座と前記第1目標残高との差額分を前記第1仲介口座から前記第2仲介口座に資金移動させる指示を前記第1サーバに行い、前記第1仲介口座の残高と前記第2仲介口座の残高とを調整する残高調整部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1目標残高は、一定期間ごとに設定され、
前記残高設定部は、
前記支払者または前記受取者が指定した資金移動予定日時に基づいて、前記一定期間ごとに、かつ入出金ごとに、前記第1仲介口座および前記第2仲介口座において予定される前記資金の移動を特定し、
前記一定期間ごとかつ入出金ごとに、前記第1仲介口座および前記第2仲介口座における前記特定した資金移動の予定金額の合計を算出し、
前記第1仲介口座および前記第2仲介口座において、前記一定期間ごとかつ入出金ごとの即時の資金移動の平均金額を算出し、
前記一定期間ごとかつ入出金ごとに前記予定金額および前記平均金額の合計を算出し、
前記入出金それぞれごとの前記予定金額および前記平均金額の合計を相殺して、前記第1目標残高を設定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取引情報取得部は、複数の支払者それぞれの支払者装置から、それぞれの前記取引を示す複数の取引情報を取得し、
前記情報処理装置は、
前記複数の取引情報それぞれが示す支払者と受取者との関係に基づいて、それぞれの前記取引をマッチングさせるマッチング部と、
前記マッチングされた取引の取引金額の少なくとも一部を互いに相殺する相殺部と、をさらに備え、
前記第1指示部は、前記相殺の結果にさらに基づいて、前記第1移動指示を前記第1サーバに行い、
前記第2指示部は、前記相殺の結果にさらに基づいて、前記第2移動指示を前記第2サーバに行う、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記残高設定部は、前記相殺の結果にさらに基づいて、前記第1目標残高を設定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1指示部により前記第1移動指示があった際に、前記第1サーバから前記第1仲介口座の第1仲介口座情報を取得する第1口座情報取得部と、
前記第1仲介口座情報に基づいて、前記第1仲介口座への前記第1移動指示による入金を検出する第1検出部と、をさらに備え、
前記第2指示部は、前記入金が検出された際に、前記第2移動指示を、前記第2決済機関の第2サーバに行う、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2指示部により前記第2移動指示があった際に、前記第2サーバから前記第2仲介口座の第2仲介口座情報を取得する第2口座情報取得部と、
前記第2仲介口座情報に基づいて、前記第2仲介口座からの前記第2移動指示による出金を検出する第2検出部と、
前記第1検出部により前記第1口座への入金が検出された際、または前記第2仲介口座からの出金が検出された際の少なくともいずれかの際に、前記支払者装置または前記受取者装置の少なくともいずれかに、前記第2口座への入金予定を通知する資金移動通知部と、をさらに備える、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記残高調整部は、前記取引情報に基づいて、前記第1仲介口座への将来の入金を予測する予測部を含み、
前記残高設定部は、前記予測の結果にさらに基づいて、前記第1目標残高を設定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1移動指示に対する資金移動の処理結果を、前記第1サーバから受け付ける第1受付部と、
前記第2移動指示に対する資金移動の処理結果を、前記第2サーバから受け付ける第2受付部と、
前記第1受付部または前記第2受付部の少なくともいずれかが前記資金移動の処理結果を受け付けた際、前記支払者装置または前記受取者装置の少なくともいずれかに、前記資金移動の処理結果を通知する処理結果通知部と、を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、前記支払者の支払者装置または前記受取者の受取者装置から取得する取引情報取得機能と、
前記取引情報に基づいて、前記第1口座から資金移動業者が保有する前記第1決済機関の第1仲介口座に前記取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、前記第1決済機関の第1サーバに行う第1指示機能と、
前記取引情報に基づいて、前記資金移動業者が保有する前記第2決済機関の第2仲介口座から前記第2口座に前記取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、前記第2決済機関の第2サーバに行う第2指示機能と、
前記取引情報取得機能により前記取引情報が取得された場合、前記取引情報に基づいて、前記資金の移動前に前記第1仲介口座の残高および前記第2仲介口座の残高により定まる額と前記取引金額との差額を、前記第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高として設定する残高設定機能と、
前記残高設定機能により前記第1目標残高が設定された場合、前記移動前の所定のタイミングで、前記第1仲介口座と前記第1目標残高との差額分を前記第1仲介口座から前記第2仲介口座に資金移動させる指示を前記第1サーバに行い、前記第1仲介口座の残高と前記第2仲介口座の残高とを調整する残高調整機能と、を実現させる、
プログラム。
【請求項10】
コンピュータが、
第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、前記支払者の支払者装置または前記受取者の受取者装置から取得し、
前記取引情報に基づいて、前記第1口座から資金移動業者が保有する前記第1決済機関の第1仲介口座に前記取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、前記第1決済機関の第1サーバに行い、
前記取引情報に基づいて、前記資金移動業者が保有する前記第2決済機関の第2仲介口座から前記第2口座に前記取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、前記第2決済機関の第2サーバに行い、
前記取引情報が取得された場合、前記取引情報に基づいて、前記資金の移動前に前記第1仲介口座の残高および前記第2仲介口座の残高により定まる額と前記取引金額との差額を、前記第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高として設定し、
前記第1目標残高が設定された場合、前記移動前の所定のタイミングで、前記第1仲介口座と前記第1目標残高との差額分を前記第1仲介口座から前記第2仲介口座に資金移動させる指示を前記第1サーバに行い、前記第1仲介口座の残高と前記第2仲介口座の残高とを調整する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インターネットバンキング等、支払者が保有する決済機関(例えば、金融機関等)の口座と受取者が保有する決済機関の口座とを用いる取引を支援するサービスが提供されている。このような異なる決済機関、例えば異なる銀行間の口座を用いる取引は、例えば、銀行間ネットワークシステム(いわゆる、「全銀システム」)を利用して行われる。下記特許文献1には、仕向銀行(送金側)から被仕向銀行(受取側)に対して全銀システムを利用して振込する銀行システムが開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、資金移動業者が保有する二つの口座(以下、「仲介口座」ともいう)を仲介することで、全銀システムを利用せずに異なる銀行間の口座を用いる取引(他行宛の送金)を実現する仲介サーバが開示されている。このようなサーバによれば、低コストで受取者の口座に入金することができる。また、この仲介サーバでは、仲介口座の残高に対して予め設定された閾値内に収まるように二つの仲介口座間で残高を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-191923号公報
【文献】特開2020-135831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、異なる決済機関の口座を用いて取引をする者が急増している。しかしながら、特許文献2に記載の技術では、他行宛の送金における支払者からの送金指示の件数が多くなってしまうと、設定された閾値内に二つの仲介口座の残高をおさめるためにはこれらの口座間の残高調整を頻繁に実行する必要がある。このため、特許文献2に記載の技術では、異なる決済機関の口座を用いる取引において拡張性が十分であるとはいえない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、異なる決済機関の口座を用いる取引において拡張性を改善できる情報処理装置、プログラム、および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置または受取者の受取者装置から取得する取引情報取得部と、取引情報に基づいて、第1口座から資金移動業者が保有する第1決済機関の第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバに行う第1指示部と、取引情報に基づいて、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバに行う第2指示部と、取引情報に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高、または第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高の少なくともいずれかを含む目標残高を設定する残高設定部と、設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する残高調整部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置または受取者の受取者装置から取得する取引情報取得機能と、取引情報に基づいて、第1口座から資金移動業者が保有する第1決済機関の第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバに行う第1指示機能と、取引情報に基づいて、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバに行う第2指示機能と、取引情報に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高、または第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高の少なくともいずれかを含む目標残高を設定する残高設定機能と、設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する残高調整機能と、を実現させる。
【0009】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、第1決済機関が管理する支払者の第1口座と、第2決済機関が管理する受取者の第2口座と、を用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置または受取者の受取者装置から取得し、取引情報に基づいて、第1口座から資金移動業者が保有する第1決済機関の第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバに行い、取引情報に基づいて、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバに行い、取引情報に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高、または第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高の少なくともいずれかを含む目標残高を設定し、設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する。
【0010】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、支払者と受取者との間で行われた取引であって支払者の第1決済機関の第1口座を用いた取引を決済するための第1決済サーバから、第1口座から第3決済機関の第3口座への取引の取引金額に応じた資金を移動させるための第3移動指示を取得する取引情報取得部と、第3移動指示に基づいて、第1口座から資金移動業者が保有する第1決済機関の第1仲介口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバに行う第1指示部と、第3移動指示に基づいて第1指示部により第1口座から第1仲介口座に移動した資金の総額を記録し、第1決済機関の第1仲介口座から第3決済機関の第3口座へ総額に充当させる資金を移動するための処理を行う精算部と、第3移動指示に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高を設定する残高設定部と、設定された第1目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高を調整する残高調整部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、支払者と受取者との間で行われた取引であって受取者が保有する第2決済機関の第2口座を用いた取引を決済するための第2決済サーバから、第4決済機関の第4口座から第2口座への取引の取引金額に応じた資金をするための第4移動指示を取得する取引情報取得部と、第4移動指示に基づいて、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバに行う第2指示部と、第2移動指示に基づいて、第2指示部により第2仲介口座から第2口座に移動した資金の総額を記録し、第4決済機関の第4口座から第2仲介口座へ総額に充当させる資金を移動するための処理を行う精算部と、第4移動指示に基づいて、第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高を設定する残高設定部と、設定された第2目標残高に基づいて、第2仲介口座の残高を調整する残高調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異なる決済機関の口座を用いる取引において拡張性を改善できる情報処理装置、プログラム、および情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る取引支援システムのシステム構成例を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図3】第1実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る仲介サーバの機能構成の一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る仲介サーバの残高調整部の機能の一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る取引支援システムの動作例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る仲介サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図11】第3実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
図12】第4実施形態に係る取引支援システムの概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一または同様の構成を有する。
【0015】
[第1実施形態]
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態に係る取引支援システム1は、異なる決済機関の口座を用いる取引の決済において、資金移動業者が保有する口座(以下、「仲介口座」ともいう)を利用して、決済のための資金移動を制御し、即時化かつ低コスト化を実現させるインフラを提供する。また、取引支援システム1は、このインフラにおける仲介口座の資金最適化を図るため、仲介口座の残高等の管理(以下、「キャッシュマネジメント」ともいう)の自動化を実現する。
【0016】
本実施形態に係る資金移動において、例えば、(ア)決済機関が銀行の場合、口座振込や口座振替を利用する、(イ)決済機関が提供する、後述の更新系APIを利用する、(ウ)決済機関が銀行の場合、デビットカードシステムのデビット決済を利用する、(エ)決済機関が電子マネー事業者の場合、電子マネーの送金を利用する、等の様々な資金の移動方法が適用できる。
【0017】
本実施形態では、決済機関を銀行とする例を説明するが、決済機関を銀行に限る趣旨ではない。決済機関は、例えば、いわゆる金融機関(銀行や証券会社等)の他、クレジットカード会社、仮想通貨や電子マネーを運営する仮想通貨決済機関等であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る取引支援サービスは、資金移動業者が提供するサービスであり、異なる決済機関の口座を用いる取引を支援するサービスである。取引支援サービスでは、取引における代金を支払う者(以下、「支払者」ともいう)が、取引支援サービスを利用して、自身が保有する第1決済機関の口座から代金の支払いを受け取る者(以下、「受取者」ともいう)が保有する第2決済機関の口座に資金を移動させる。本実施形態では、口座間の送金により資金移動を行う例を説明する。支払者と受取者とは、特に区別の必要が無い場合は、総称して「取引者」という。なお、取引支援システム1のユーザは、支払者または受取者の少なくともいずれかを含む。
【0019】
本実施形態に係る支払者および受取者は、個人(一般消費者)であっても事業者であってもよい。取引支援システム1は、C2C(個人間取引)で他の決済機関に資金を移動する以外にも、C2BやB2B等の事業者を含めた資金移動にも用いることができる。
【0020】
本実施形態に係る資金移動業者(以下、単に「資金移動業者」ともいう)は、決済指示サービス提供者(PISP:Payment Initiation Service Provider)として、ユーザの指示に基づいて、銀行を含む決済機関に対して決済や資金移動を指示するサービスを提供するものとする。また、資金移動業者は、口座情報サービス提供者(Account Information Service Provider)として、ユーザの指示に基づいて、決済機関から口座情報を取得してユーザに提供するサービスを提供するものとする。
【0021】
<1.システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係る取引支援システム1のシステム構成例を説明する。
【0022】
取引支援システム1は、資金移動業者の取引支援サービスを提供するためのシステムである。図1に示すように、取引支援システム1は、資金移動業者の仲介サーバ100と、支払者が使用する支払者装置200aと、受取者が使用する受取者装置200bとを含む。仲介サーバ100と支払者装置200aと受取者装置200bとは、ネットワークNを介して互いに接続されている。なお、支払者装置200aと受取者装置200bとは、特に区別の必要が無い場合は、総称して「取引者装置200」という。
【0023】
仲介サーバ100は、決済機関の口座を利用した取引を支援するため、ネットワークNを介して第1決済機関の第1サーバ300aと第2決済機関の第2サーバ300bとに接続されている。第1サーバ300aと第2サーバ300bとは、特に区別の必要が無い場合は、総称して「決済機関サーバ300」ともいう。
【0024】
「第1決済機関」とは、支払者が使用する第1口座を管理する決済機関である。またここで「第2決済機関」とは、第1決済機関とは異なる機関であり、受取者が使用する第2口座を管理する決済機関である。またここで「第1口座」とは、第1決済機関が管理する支払者の口座であり、取引の支払いに支払者が使用する口座である。またここで「第2口座」とは、第2決済機関が管理する受取者の口座であり、取引の支払いの受け取りに受取者が使用する口座である。例えば、同じユーザaの〇〇銀行の口座であっても、取引ごとに、その用途によって第1口座となる場合もあれば第2口座となる場合もある。
【0025】
仲介サーバ100は、例えば、ネットワークNを介してユーザが利用する会計システム(不図示)等と接続されてもよい。
【0026】
ネットワークNは、無線ネットワークや有線ネットワークにより構成される。ネットワークの一例としては、携帯電話網や、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMax(登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、有線LAN、電話線、電灯線ネットワーク、IEEE1394等に準拠したネットワークがある。
【0027】
[仲介サーバ]
仲介サーバ100は、取引者装置200や決済機関サーバ300との通信が可能な情報処理装置である。仲介サーバ100は、所定のプログラムを実行することにより、取引者装置200等と連携して取引情報を管理し、同一決済機関内の口座間や第1決済機関の口座と第2決済機関の口座との間の振込等の資金移動を制御する。
【0028】
「取引情報」とは、取引に関する情報である。取引情報は、例えば、各取引を識別するための取引ID、各取引に用いる各口座の口座情報、各取引の関係者を識別するための関係者ID、各取引を決済するための決済指示、各取引の取引金額、各取引の処理状況(例えば、決済機関に対する資金移動の指示完了や決済完了等)、および/または各取引の属性(例えば、未収金や延滞金、即時払い等)を含む。
【0029】
決済指示は、取引を決済するための指示である。決済指示は、例えば、複数の決済機関それぞれの口座間の資金移動をさせる指示であってもよい。決済指示は、例えば、即時に資金移動をさせる指示であってもよいし、取引者が指定した日時(以下、「資金移動予定日時」ともいう)を含みこの資金移動予定日時に資金移動をさせる指示であってもよい。以降、即時に資金移動させる決済指示を「即時の決済指示」ともいい、資金移動予定日時に資金移動させる決済指示を「スケジューリングされた決済指示」ともいう。資金移動予定日時は、例えば、第1口座に関する資金移動の予定日時と第2口座に関する資金移動の予定日時それぞれを指定するものであってもよい。言い換えれば、資金移動予定日時は、第1移動指示を実行する日時と第2移動指示を実行する日時について、異なる日時が指定されていてもよい。
【0030】
取引金額は、例えば、商取引であれば、提供された商品やサービスの代金であってもよい。また、取引金額は、例えば、取引が個人間の送金であれば、取引者から指定された送金する金額であってもよい。
【0031】
関係者IDは、例えば、取引支援システム1が各関係者を一意に識別するために発行するユーザIDであってもよい。
【0032】
各取引の関係者は、典型的には、支払者および受取者であるが、これに限定されない。各取引の関係者は、例えば、取引にクレジットカードを利用する場合、このクレジットカードのクレジットカード会社であってもよい。この際、関係者IDは、このクレジットカード会社を識別するための情報である。
【0033】
取引情報は、例えば、請求情報を含んでもよい。「請求情報」とは、支払者と受取者との間の売買取引における支払いの請求を示す情報である。請求情報は、例えば、売買取引において発行される請求書に掲載される項目を含んでもよい。具体的には、請求情報は、支払対象の取引を識別するための取引ID、支払対象のサービスまたは商品を識別するためのサービスコードまたは商品コード、支払対象の取引において支払う金額を示す支払金額、支払先口座を指定するための支払先口座指定情報、その他請求明細、等を含んでもよい。支払先口座指定情報は、例えば、支払先口座を第2口座に指定する旨を含んでもよい。
【0034】
「口座情報」とは、決済機関の各口座を管理するための情報である。口座情報は、例えば、対象の決済機関を識別するための決済機関ID、各口座の口座種別、各口座の名義、各口座を識別するための口座番号、各口座に入金されている総額等の残高を示す口座残高、または口座を利用した資金移動に関する資金移動情報、各口座に関する属性情報(例えば、口座の名義等)等を含む。決済機関IDは、例えば、決済機関が銀行であれば、銀行コードや支店コードであってもよい。
【0035】
資金移動情報は、例えば、口座における資金移動の内容を示す情報である。資金移動情報は、例えば、各口座に対する入出金履歴を含む。入出金履歴は、例えば、口座ごとに、各入出金を識別するための入出金ID、入出金された日時を示す入出金日時、各口座に入金された金額を示す入金額、または各口座から出金された金額を示す出金額等を含む。
【0036】
本実施形態では、仲介サーバ100が、取引支援サービスを提供するためのWebサイト(以下、「取引支援サイト」ともいう)を生成し、生成した取引支援サイトのWebページを取引者装置200等に配信して、取引支援サービスを実現する例を説明する。仲介サーバ100は、取引者装置200等を介して関係者に取引支援サイトのURLを指定しログインさせることにより、許可された取引支援サイトのページにアクセスをさせることができる。このログインは、それぞれが取引支援システム1に予め登録したユーザアカウント(ユーザIDとパスワード)によって行われる。
【0037】
[支払者装置]
支払者装置200aは、仲介サーバ100との通信が可能な情報処理装置であり、支払者からの送金指示や売買取引における支払い指示の入力の受け付け、または支払者が保有する第1決済機関の第1口座からの出金等の通知の出力等を行う。支払者装置200aは、支払者が使用する購買管理機能を備えるERP等の業務システムや会計機能を備える経理システムを制御するサーバ装置であってもよいし、支払者の従業員が使用するスマートフォンやラップトップ等の端末装置であってもよい。支払者装置200aは、所定のプログラムを実行することにより、仲介サーバ100と連携して送金指示や支払い指示を含む取引情報を送受信したり、出金に関する画面を表示したり、支払者の指示を受け付けたりする。
【0038】
[受取者装置]
受取者装置200bは、仲介サーバ100との通信が可能な情報処理装置である。受取者装置200bは、受取者からの送金指示や売買取引における支払いの請求(以下、単に「支払請求」という)の指示の入力の受け付け、または受取者の保有する第2決済機関の第2口座への入金等の通知の出力を行う。受取者装置200bは、支払者装置200aと同様に、ERP等の業務システムや経理システムを制御するサーバ装置であってもよいし、受取者の従業員が使用する端末装置であってもよい。受取者装置200bは、所定のプログラムを実行することにより、仲介サーバ100と連携して支払請求の指示を含む取引情報を送受信したり、入金に関する画面を表示したり、受取者の指示を受け付けたりする。
【0039】
[決済機関サーバ]
決済機関サーバ300は、決済機関が管理する口座の口座情報を管理し、当該口座に対する資金移動処理や参照処理を行う決済システムのサーバである。決済機関サーバ300は、この資金移動処理等に関するサービスを提供するために、仲介サーバ100と連携する。
【0040】
<2.概要>
図2~4を参照して、本実施形態に係る取引支援システム1の概要の一例を説明する。本例では、支援する対象の取引を、支払者が受取者に500万円送金する取引とする。なお、図2~5において、太枠で囲ったボックスは、図6に示す仲介サーバ100の各機能部を表す。
【0041】
<2-1.全体像>
先ず図2(a)を参照して、取引支援システム1の全体像の一例を説明する。図2(a)に示すように、取引支援システム1全体が実現する機能は、「A.情報取得」、「B.リコンサイル/ネッティング」「C.精算・会計」の3つのセクションに分類される。取引支援システム1では、それぞれのセクションが互いに連携(情報連携および/または機能連携を含む。以下同じ。)して、取引支援サービスを提供する。また、それぞれのセクションは、決済機関サーバ300や取引者装置200とも連携を行う。
【0042】
<2-2.取引情報の取得と事前設定>
次に図2(b)を参照して、取引支援システム1における仲介口座のキャッシュマネジメントの一つである取引情報の取得から事前設定までのプロセスの一例を説明する。
【0043】
(1)図2(b)に示すように、A.情報取得の取引情報取得部1131は、支払者装置200aまたは受取者装置200bから、取引情報を取得する。本例では、この取引情報の資金移動予定日時が「2021年3月dd日」(dd:日付)と設定されているものとする
【0044】
(2)A.情報取得の口座情報取得部1132は、第1仲介口座の口座情報(以下、「第1仲介口座情報」ともいう)と、第2仲介口座の口座情報(以下、「第2仲介口座情報」ともいう)とを取得する。ここで「第1仲介口座」とは、資金移動業者が保有する第1決済機関の口座である。また、ここで「第2仲介口座」とは、資金移動業者が保有する第2決済機関の口座である。
【0045】
(3)C.精算・会計の照合部1151は、上記取得された口座情報に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを照合する。本例では、第1仲介口座の残高が1,200万円とし、第2仲介口座の残高が800万円とする。照合部1151は、照合の結果として、これらの仲介口座の残高の差分が400万円であり、平均が1,000万円であると算出する。
【0046】
(4)C.精算・会計の残高設定部114は、上記照合の結果と取引情報に基づいて、仲介口座の残高において目標とする残高(以下、「目標残高」ともいう)を設定する。
【0047】
目標残高は、例えば、仲介口座の残高に対して許容される範囲(言い換えれば、残高が取りうる額の、上限および/または下限)であってもよいし、特定の値(例えば、基準値等)であってもよい。
【0048】
目標残高は、例えば、口座の残高を一定に保つために設定する値(いわゆるターゲットバランス)であってもよいし、将来の資金移動に備えて口座の残高を一時的に増減させるために設定する値であってもよい。前者においては、例えば、残高設定部114は、上記算出された平均1,000万円に基づいて、第1仲介口座および第2仲介口座の目標残高を1,000万円と設定してもよい。後者においては、例えば、残高設定部114は、上記算出された平均値1,000万円と予定される取引金額500万円とに基づいて、取引の決済完了後にいずれの仲介口座の残高も1,000万円となるように、第1仲介口座の目標残高を500万円とし、第2仲介口座の目標残高を1,500万円と設定してもよい。
【0049】
(5)C.精算・会計の残高調整部115は、設定された目標残高となるように、仲介口座それぞれの残高を調整する。上記の前者の例では、残高調整部115は、第1仲介口座および第2仲介口座それぞれが目標残高1,000万円となるように、第1仲介口座から第2仲介口座に200万円の資金を移動(送金)させる。他方、上記の後者の例では、残高調整部115は、第1仲介口座が設定された目標残高500万円となるように、また第2仲介口座が設定された目標残高1,500万円となるように、第1仲介口座から第2仲介口座に700万円の資金を移動(送金)させる。
【0050】
<2-3.取引情報の連携と資金移動の指示>
次に図3(a)を参照して、取引支援システム1における取引情報の連携から資金移動の指示までのプロセスの一例を説明する。
【0051】
(1)図3(a)に示すように、A.情報取得の取引情報取得部1131は、指示部111に取引情報を連携する。
【0052】
(2)C.精算・会計の指示部111は、連携された取引情報に基づいて、2021年3月dd日に、第1移動指示を第1決済機関の第1サーバ300aに行う。ここで「第1移動指示」とは、第1口座から第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための指示である。指示部111は、第1移動指示として、第1サーバ300aに対して、取引金額500万円全額を、第1口座から第1仲介口座に移動(送金)させる指示をする。また、指示部111は、取引情報に基づいて、第2移動指示を第2決済機関の第2サーバ300bに行う。ここで「第2移動指示」とは、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座にこの取引金額に充当させる資金を移動させるための指示である。指示部111は、第2移動指示として、第2サーバ300bに対して、取引金額500万円全額を、第2仲介口座から第2口座に移動させる指示をする。
【0053】
<2-4.処理結果の後続処理への引継ぎ>
次に図3(b)を参照して、取引支援システム1における処理結果の後続処理への引継ぎまでのプロセスの一例を説明する。
【0054】
(1)図3(b)に示すように、C.の精算・会計の受付部112は、第1移動指示に対する資金移動の処理結果(第1口座から第1仲介口座への口座振込の結果)を、第1サーバ300aから受け付ける。また、受付部112は、第2移動指示に対する資金移動の処理結果(第2仲介口座から第2口座への口座振込の結果)を、第2サーバ300bから受け付ける。(2)C.精算・会計の受付部112は、上記の資金移動の処理結果を、通知部118に連携する。
【0055】
(3)C.精算・会計の通知部118は、支払者装置200aまたは受取者装置200bの少なくともいずれかに、上記の資金移動の処理結果を通知する。(4)支払者装置200aおよび/または受取者装置200bは、通知された資金移動の処理結果に基づいて、後続の処理を実行させる。例えば、受取者装置200bは、資金移動の処理結果を入力することで、後続の経理システムの経理処理(会計起票等)等を自動で実行する。
【0056】
<2-5.複数の取引に対するネッティングと残高設定・調整と資金移動指示>
次に図4を参照して、取引支援システム1における複数の取引に対するネッティング(いわゆるマルチラテラル・ネッティング)から、仲介口座のキャッシュマネジメントの一つである残高設定・調整を経て、資金移動の指示までのプロセスの一例を説明する。本例では、以下の取引A~Cの複数の取引を支援する例を説明する。
・取引A:ユーザaを支払者としユーザbを受取者として、500万円の送金
・取引B:ユーザbを支払者としユーザaを受取者として、ユーザbが提供する代金300万円の商品をユーザaが購入する売買取引
・取引C:ユーザcを支払者としユーザdを受取者として、ユーザdが提供するサブスクリプションサービスにおけるユーザcへの月々の利用料50万円の支払い
【0057】
本例では、説明を簡単にするために、支払者の口座はすべて第1決済機関の口座とし、受取者の口座はすべて第2決済機関の口座とする。すなわち、ユーザaおよびユーザbは、支払者の際に使用する第1決済機関の口座と、受取者の際に使用する第2決済機関の口座との両方を保有するものとする。
【0058】
(1)図4に示すように、A.情報取得の取引情報取得部1131は、ユーザaが使用する取引者装置200c、ユーザbが使用する取引者装置200d、およびユーザcが使用する取引者装置200eそれぞれの装置から、それぞれの取引A~Cを示す取引情報A~Cを取得する。
【0059】
(2)B.ネッティングのネッティング部116は、上記取得された取引情報A~Cそれぞれが示す支払者と受取者との関係に基づいて、それぞれの取引をマッチングさせる。ネッティング部116は、例えば、取引Aの支払者と取引Bの受取者とが同じユーザaであり、取引Aの受取者と取引Bの支払者とが同じユーザbである関係と判定する。ネッティング部116は、この判定結果に基づいて、取引A~Cのうち取引Aと取引Bとをマッチングさせる。
【0060】
(3)B.ネッティングのネッティング部116は、マッチングさせた取引Aと取引Bとの取引金額を互いに相殺する。ネッティング部116は、例えば、ユーザaからユーザbに500万円の送金と、ユーザbからユーザaに300万円の商品代金の支払いと、を相殺して、ユーザaからユーザbに資金移動させる200万円の差額を算出する。
【0061】
(4)C.精算・会計の残高設定部114は、上記の相殺の結果にさらに基づいて、仲介口座の残高における目標残高を設定する。残高設定部114は、例えば、取引Aと取引Bとの取引金額の差額200万円と、取引Cの取引金額50万円と、に基づいて、取引の決済完了後にいずれの仲介口座の残高も1,000万円となるように、第1仲介口座の目標残高を1,2500万円および第2仲介口座の目標残高を750万円と設定する。
【0062】
(5)C.精算・会計の残高調整部115は、第1仲介口座が設定された目標残高1,250万円となるように、また第2仲介口座が設定された目標残高750万円となるように、第2仲介口座から第1仲介口座に250万円の資金を移動(送金)させる。
【0063】
(6)C.精算・会計の指示部111は、上記の相殺の結果にさらに基づいて、第1移動指示を第1サーバ300aに行い、第2移動指示を第2サーバ300bに行う。指示部111は、第1移動指示として、第1サーバ300aに対して、差額の200万円をユーザaの第1口座から第1仲介口座に移動(送金)させる指示をする。また、指示部111は、第2移動指示として、第2サーバ300bに対して、差額の200万円を第2仲介口座からユーザbの第2口座に移動させる指示をする。
【0064】
上記構成によれば、取引支援システム1は、本システムを利用する取引が増加しても、それに応じて目標残高を設定しこの設定した目標残高に基づいて残高調整をすることができる。このため、取引支援システム1は、口座間の残高調整を頻繁に実行しなくても、増加した取引に仲介口座を対応させることができる。したがって、取引支援システム1は、異なる決済機関の口座を用いる取引において拡張性を改善できる。また、上記構成によれば、取引支援システム1は、異なる決済機関の口座を用いる取引の増減に応じた残高とすることができる。このため、取引支援システム1は、異なる決済機関の口座を用いる取引の増減に応じた仲介口座の残高の最適化を図ることができる。
【0065】
<2-7.資金移動の詳細>
図5を参照して、取引支援システム1が支援する資金移動の詳細を説明する。なお、本例では、第1決済機関とする第1銀行の第1口座から第2決済機関とする第2銀行の第2口座へ送金する取引の例を説明するが、仲介サーバ100での送金の態様はこれに限られない。仲介サーバ100は、例えば、第2銀行の第2口座から第1銀行の第1口座への送金を制御することもでき、また、第1銀行および第2銀行以外の他の銀行間の送金を制御することもできる。
【0066】
本実施形態では、説明を簡単にするために、第1銀行の第1サーバ300aおよび第2銀行の第2サーバ300bにおいて、それぞれの銀行が提供する銀行APIを実装しているものとする。なお、取引支援システム1では、第1サーバ300aと第2サーバ300bとが銀行APIを実装していることに限定されず、外部から利用できるインタフェースであって上記のような資金移動を指示したりや口座情報を取得したりするための何らかのインタフェースが備わっていればどのような態様でもよい。
【0067】
「銀行API(Application Programming Interface)」とは、資金移動や残高照会等、既存機能を個別にサービス化して、外部のアプリケーションから利用するために、ソフトウェアコンポーネントが互いにやり取りするために使用するインタフェースである。銀行APIには、「更新系API」と「参照系API」とが含まれる。「更新系API」は、口座の振込・振替等の資金移動のためのAPIであり、「参照系API」は、口座の残高照会等の口座情報を取得するためのAPIである。なお、更新系APIと参照系APIは、銀行が提供するAPIに限定されない。
【0068】
(1)図5に示すように、先ず、支払者は、支払者装置200aを使用して、仲介サーバ100が提供する取引支援サイトのWebページに対して、支払者が保有する仕向銀行である第1銀行の第1口座の口座番号等の口座情報を入力する。また、支払者は、このWebページに対して、受取者が保有する被仕向銀行である第2銀行の第2口座の口座情報を入力し送金する金額(取引金額)を入力してから、決済指示として、仲介サーバ100に第1口座から第2口座への他行宛の送金指示を行う。
【0069】
(2)仲介サーバ100の取引情報取得部1131は、支払者装置200aから決済指示を含む取引情報を取引支援サイトのWebページ経由で取得し、この取引情報に含まれる決済指示を支払者から受け付ける。
【0070】
(3)仲介サーバ100の第1指示部1111は、取引情報取得部1131が上記決済指示を受け付けると、第1銀行の第1サーバ300aに実装された更新系APIを利用して、第1移動指示として、第1口座から第1銀行の第1仲介口座への取引金額の振込処理を第1サーバ300aに指示する。第1サーバ300aは、この指示に応じて、第1口座から第1仲介口座に取引金額の振込処理を行う。
【0071】
(4)仲介サーバ100の第1検出部1171は、第1指示部1111が上記振込処理の指示をすると、第1サーバ300aに実装された参照系APIを利用して、第1仲介口座の第1仲介口座情報の参照を第1サーバ300aに指示する。第1サーバ300aは、第1仲介口座情報を検索し、参照する。
【0072】
(5)第1検出部1171は、上記参照系APIを介して第1サーバ300aから上記(4)の参照の結果を取得して、第1仲介口座への上記振り込まれた取引金額の入金を検出する。
【0073】
(6)仲介サーバ100の第2指示部1112は、第1検出部1171が上記第1仲介口座への入金を検出すると、第2銀行の第2サーバ300bに実装された更新系APIを利用して、第2移動指示として、第2銀行の第2仲介口座から受取者が保有する第2銀行の第2口座への取引金額の振込処理を第2サーバ300bに指示する。第2サーバ300bは、この指示に応じて、第2仲介口座から第2口座に取引金額の振込処理を行う。
【0074】
(7)検出部117は、第2指示部1112が上記振込処理の指示をすると、第2サーバに実装された参照系APIを利用して、第2仲介口の第2仲介口座情報の参照を第2サーバ300bに指示する。第2サーバ300bは、第2仲介口座の第2仲介口座情報を検索し、参照する。
【0075】
(8)検出部117は、上記参照系APIを介して第2サーバ300bから上記(7)の参照の結果を取得して、第2仲介口座からの取引金額の出金を検出する。また、検出部117は、この第2仲介口座からの出金を検出することで、間接的に、第2口座への入金を検出してもよい。
【0076】
(9)仲介サーバ100の通知部118は、検出部117が上記第2口座への入金を検出すると、支払者と受取者とに上記第2口座への入金を通知する。通知部118は、具体的には、それぞれが使用する支払者装置200aと受取者装置200bとに上記第2口座への入金を通知する通知情報を送信して、これら取引者装置200に当該通知情報によるアラートメッセージを表示させてもよい(いわゆる、プッシュ通知を行ってもよい)。
【0077】
(10)仲介サーバ100の残高調整部115は、サイクリックまたはイベントドリブンで、設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する。残高調整部115は、例えば、第1仲介口座と第2仲介口座とを監視する。残高調整部115は、この監視の結果、目標残高として設定された上限値を超過する残高または設定された下限値を下回る残高の少なくともいずれかを検出する。残高調整部115は、このような上限値の超過状態や下限値を下回る状態を検出した際には、資金移動業者が保有する第1仲介口座および第2仲介口座を含む口座間の資金移動によりこれらの状態を解消させてもよい。残高調整部115は、例えば、第1銀行の第1仲介口座から第2銀行の第2仲介口座へ送金するための処理をバッチ処理等によって所定のタイミングに一括で行ってもよい。
【0078】
上記構成によれば、取引支援システム1は、支払者の第1口座と受取者の第2口座のそれぞれの同一銀行内の資金移動業者の第1仲介口座と第2仲介口座とを仲介させて、支払者の1口座から出金し受取者の第2口座に入金することができる。これにより、支払者から受取者に対する他行宛の複数の送金に代わって、第1仲介口座から第2仲介口座への送金を利用して一括で行うことができる。このため、取引支援システム1は、支払者から受取者に対する他行宛の送金の都度にかかっていた振込手数料等のコストを低減することができる。
【0079】
上記構成によれば、取引支援システム1は、必ずしも上記他行宛の複数の送金を全件分代わりに行う必要はなく(これらの送金の総額と同額の送金をする必要はなく)、資金移動業者の任意のタイミング、および任意の金額で、第1仲介口座から第2仲介口座へ送金することができる。このため、資金移動業者に対して、使い勝手のよい取引支援システムを提供することができる。
【0080】
<3.仲介サーバの機能構成>
図6を参照して、本実施形態に係る仲介サーバ100の機能構成を説明する。図6に示すように、仲介サーバ100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。
【0081】
制御部110は、指示部111と、取得部113と、残高設定部114と、残高調整部115と、を備える。また、制御部110は、例えば、受付部112、ネッティング部116、検出部117、または通知部118を備えてもよい。
【0082】
[指示部]
指示部111は、各種決済機関のサーバを含む装置に対して、各装置が備える機能の処理を実行させるよう指示する。指示部111は、第1指示部1111と、第2指示部1112と、を含む。指示部111において、各装置に対して機能の処理を指示する態様はどのような態様でもよい。指示部111は、例えば、指示の旨を示したメッセージやデータファイルを送信してもよいし、また、指示先の装置が実装するAPI(更新系APIや参照系API)や指示先のシステムに対応するSDK(Software Development Kit)のライブラリ等を利用して指示してもよい。
【0083】
[第1指示部]
第1指示部1111は、取引情報に基づいて、第1決済機関の第1口座から第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバ300aに行う。
【0084】
第1指示部1111は、例えば、後述する相殺部1162の相殺の結果にさらに基づいて、第1移動指示を第1サーバ300aに行ってもよい。上記の図4(b)の取引A~Bの例において、第1指示部1111は、下記のとおり相殺部1162により相殺した結果に基づいて、ユーザaを支払者としてユーザaの第1口座から第1仲介口座に200万円の資金移動を第1サーバ300aに指示してもよい。また、第1指示部1111は、相殺部1162による下記のマッチングさせた取引A・B・Eの相殺の結果に基づいて、ユーザaの第1口座から第1仲介口座に400万円の資金移動を第1サーバ300aに指示してもよい。
【0085】
[第2指示部]
第2指示部1112は、取引情報に基づいて、第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバ300bに行う。
【0086】
第2指示部1112は、例えば、相殺部1162の相殺の結果にさらに基づいて、第2移動指示を第2サーバ300bに行ってもよい。上記の図4(b)の取引A~Bの例において、下記のとおり相殺部1162により相殺した結果に基づいて、ユーザbを受取者として第2仲介口座からユーザbの第2口座に200万円の資金移動を第2サーバ300bに指示してもよい。また、第2指示部1112は、相殺部1162による下記のマッチングさせた取引A・B・Eの相殺の結果に基づいて、第2仲介口座からユーザbの第2口座に200万円の資金移動と、第2仲介口座からユーザcの第2口座に250万円の資金移動とを、第2サーバ300bに指示してもよい。
【0087】
上記構成によれば、指示部111は、マッチングさせた複数の取引を相殺させた結果に基づいて決済機関サーバ300に資金移動を指示することができる。このため、指示部111は、必要最小限の指示に絞ることができ、資金移動の効率化を図ることができる。
【0088】
第2指示部1112は、例えば、第1検出部1171により第1仲介口座への第1移動指示による入金が検出された際に、第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバ300bに行ってもよい。言い換えると、第2指示部1112は、第1仲介口座への第1移動指示による入金が検出されたことをトリガーに、第2移動指示を第2サーバ300bに送信してもよい。
【0089】
[受付部]
受付部112は、取引者装置200や決済機関サーバ300等の各装置から、各種情報を受け付ける。受付部112が各種情報を受け付ける態様は、どのような態様でもよい。受付部112は、例えば、各種情報を示すデータファイルやメッセージを各装置から受信してもよい。また他の例として、受付部112は、各装置の表示部に表示させた取引支援サイトのWebページから各種情報を入力させて受け付けてもよい。また、受付部112は、例えば、仲介サーバ100が実装するAPIや取引支援システム1に対応するSDKのライブラリ等を各装置が利用することで、各種情報を受け付けてもよい。
【0090】
受付部112は、例えば、第1受付部1121を備えてもよい。第1受付部1121は、第1移動指示に対する資金移動の処理結果を、第1サーバ300aから受け付ける。また、受付部112は、例えば、第2受付部1122を備えてもよい。第2受付部1122は、第2移動指示に対する資金移動の処理結果を、第2サーバ300bから受け付ける。
【0091】
[取得部]
取得部113は、取引者装置200や決済機関サーバ300等の各種装置から、各種情報を取得する。取得部113が各種情報を取得する態様に関してはどのような態様でもよい。取得部113は、例えば、取引情報の場合、取引支援サイトで表示する画面に取引者から取引情報が入力された際、この入力された取引情報を示すメッセージを随時受信してもよい。また他の例として、取得部113は、例えば、取引者装置200から取引情報のデータファイルをサイクリックまたはイベントドリブンで受信してもよい。また他の例として、取得部113は、例えば、取引者装置200が実装するAPIに取引情報の参照を指示して、その結果として取引情報を取得してもよい。
【0092】
[取引情報取得部]
取得部113は、取引情報取得部1131を備えてもよい。取引情報取得部1131は、第1口座と第2口座とを用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置200aまたは受取者の受取者装置200bから取得する。
【0093】
取引情報取得部1131は、例えば、複数の支払者それぞれの支払者装置200aから、それぞれの取引を示す複数の取引情報を取得してもよい。
【0094】
[口座情報取得部]
取得部113は、口座情報取得部1132を備えてもよい。口座情報取得部1132は、決済機関サーバ300から、各口座の口座情報を取得する。口座情報取得部1132は、例えば、第1口座情報取得部1132aを備えてもよい。第1口座情報取得部1132aは、第1指示部1111により第1移動指示があった際等に、第1サーバ300aから第1仲介口座の第1仲介口座情報を取得する。また、口座情報取得部1132は、例えば、第2口座情報取得部1132bを備えてもよい。第2口座情報取得部1132bは、第2指示部1112により第2移動指示があった際等に、第2サーバ300bから第2仲介口座の第2仲介口座情報を取得する。
【0095】
[残高設定部]
残高設定部114は、取引情報と口座情報と指示部111が指示した資金移動の処理結果とに基づいて、目標残高を設定する。目標残高は、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高、または第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高の少なくともいずれかを含む。
【0096】
残高設定部114は、例えば、取引情報に基づいて、一定期間ごとに目標残高を設定してもよい。残高設定部114は、例えば、資金移動予定日時に基づいて、月ごと、かつ入金ごとおよび出金ごと(以下、「入出金ごと」ともいう)に、各口座において予定される資金移動を特定する。残高設定部114は、月ごとかつ入出金ごとに、各口座における特定した資金移動の予定金額の合計を算出する。また、残高設定部114は、各仲介口座において(または複数の口座共通で)、即時に資金移動された金額の月ごとかつ入出金ごとの合計を算出し、月ごとかつ入出金ごとの即時の資金移動の平均金額を算出する。この「即時」とは、例えば、取引者からの資金移動予定日時の指定がなく、取引情報の取得、言い換えれば決済指示の受け付けをトリガーとして資金移動指示を行うことをいう。残高設定部114は、この算出した月ごとかつ入出金ごとの各口座の予定金額および平均金額の合計を算出し、入出金それぞれごとの合計を相殺して各口座の目標残高として設定してもよい。
【0097】
上記構成によれば、残高設定部114は、本システムを利用する取引が増加しても、それに応じた目標残高を設定することができる。このため、残高設定部114は、口座間の残高調整を頻繁に実行させないように、受け付けた取引の状況に応じて目標残高を最適化することができる。
【0098】
残高設定部114は、例えば、相殺部1162による相殺の結果にさらに基づいて、目標残高を設定してもよい。残高設定部114は、例えば、上記のとおり、月ごとに、各仲介口座における特定した資金移動の予定金額の合計を算出する際、マッチングさせた取引については相殺させてその差額を用いて資金移動の予定金額の合計を算出してもよい。また、残高設定部114は、上記のとおり、即時に資金移動された金額の合計を算出する際においても、マッチングさせた取引については相殺させてその差額を用いて月ごとの即時の資金移動の平均金額を算出してもよい。
【0099】
上記構成によれば、残高設定部114は、マッチングさせた複数の取引を相殺させた結果に基づいて目標残高を設定することができる。このため、残高設定部114は、正味の資金移動に対応する残高を残すように目標残高を設定することができるため、残高調整を効率化させることができる。
【0100】
残高設定部114は、例えば、後述する予測部1152による予測の結果にさらに基づいて、目標残高を設定してもよい。残高設定部114は、例えば、予測部1152による予測の結果にさらに基づいて、第1仲介口座の第1目標残高と第2仲介口座の第2目標残高とを設定してもよい。すなわち残高調整部115は、即時の決済指示またはスケジューリングされた決済指示を含む取引情報に加えて(または、取引情報に替えて)、この予測した結果に基づき、第1目標残高と第2目標残高とを設定してもよい。
【0101】
残高設定部114は、例えば、月ごとに予測される各口座の入金総額または出金総額を、上記の算出した月ごとかつ入出金ごとの各口座の予定金額および平均金額の合計に加えた上で、各口座の目標残高として設定してもよい。また、残高設定部114は、例えば、月ごとに予測される各口座の入金総額または出金総額と、上記の算出した月ごとかつ入出金ごとの各口座の予定金額および平均金額の合計とを比較して、比較の結果その絶対値が大きい方を各口座の目標残高として設定してもよい。
【0102】
上記構成によれば、残高設定部114は、予測される処理状況や口座状況に応じた目標残高に設定することができる。このため、残高設定部114は、本システムを利用する取引の増加に対応するだけでなくさらに余裕度を持たせた目標残高、または余裕度のより高い目標残高を設定することができる。したがって、残高設定部114は、口座間の残高調整を頻繁に実行させないように、目標残高を受け付けた取引の状況に応じてより最適化することができる。
【0103】
[残高調整部]
残高調整部115は、目標残高、後述する照合部1151による照合の結果、取引情報および/または口座情報等に基づいて、第1仲介口座および第2仲介口座を含む資金移動業者が保有する複数の口座の残高を調整する。残高調整部115は、例えば、残高設定部114により設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する。残高調整部115は、例えば、第1仲介口座から第2決済機関の第2仲介口座へ資金移動するための処理を行うことで、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整してもよい。残高調整部115における資金移動するための処理は、例えば、日次や月次等のバッチ処理によって所定のタイミングにおいて一括で行ってもよい。なお以下、資金移動業者が保有する口座を総称して、「業者口座」ともいう。
【0104】
上記構成によれば、残高調整部115は、取引情報に基づいて設定された目標残高に基づいて、仲介口座等の業者口座の残高を調整することができる。この取引情報は、即時の資金移動または指定されたタイミングでの資金移動を指示するものである。このため、残高調整部115は、取引支援システム1を利用する取引が増加しても、それに応じて目標残高を設定しこの設定した目標残高に基づいて残高調整をすることができる。また、上記構成によれば、残高調整部115は、口座間の残高調整を頻繁に実行しなくても、増加した取引に仲介口座を対応させることができる。したがって、残高調整部115は、異なる決済機関の口座を用いる取引において拡張性を改善できる。また、残高調整部115は、異なる決済機関の口座を用いる取引の増減に応じた残高とすることができる。
【0105】
残高調整部115は、例えば、照合部1151の照合の結果と取引情報と仲介口座情報とにさらに基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整してもよい。
【0106】
残高調整部115は、例えば、照合部1151の処理等のために、取引ごとの処理状況や各口座の口座状況を判定してもよい。
【0107】
残高調整部115は、例えば、サイクリックまたはイベントドリブンで、取引者からの取引情報の取得から取引者装置200に対する資金移動の処理結果の通知までの処理のフローを追跡して、取引情報が示す取引ごとに処理状況を判定する。残高調整部115は、例えば、図2~5に示すような仲介サーバ100の各機能部の処理の処理履歴(例えば、ログデータなど)を収集し、収集した処理履歴に基づき第1所定期間における処理状況を判定する。ここで「第1所定期間」とは、取引ごとの過去の処理状況を判定するための期間である。ここで「第1所定期間における処理状況」とは、例えば、第1所定期間における、取引情報の取得件数または取引金額の合計等である。
【0108】
残高調整部115は、第1仲介口座の第1仲介口座情報(入出金履歴)と、第2仲介口座の第2仲介口座情報とに基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とをサイクリックまたはイベントドリブンで監視してもよい。残高調整部115は、例えば、これらの口座情報に基づいて、第1所定期間における口座の状況(以下、「口座状況」ともいう)を判定する。「第1所定期間における口座状況」とは、例えば、第1所定期間における、各口座の入出金回数、または各口座の入金総額と出金総額等である。具体的には、残高調整部115は、第1仲介口座情報に基づいて、口座状況として、第1仲介口座への入金とその入金額とを判定してもよい。また残高調整部115は、例えば、第2仲介口座情報に基づいて、口座状況として、第2仲介口座からの出金とその出金額とを判定してもよい。残高調整部115は、これらの判定した口座状況に基づき、第1所定期間における第1仲介口座への入金の総額と第2仲介口座からの出金の総額を算出してもよい。
【0109】
残高調整部115は、例えば、第1所定期間における処理状況と口座状況と併せてその時々の外部状況を判定してもよい。ここで「外部状況」とは、例えば、天気、季節(時期)、時間帯、株価の変動、災害発生状況、社会的イベントの状況(例えば、選挙の結果など)などが含まれる。残高調整部115は、例えば、処理状況「第1移動指示」と、この第1移動指示が実行された日時の外部状況と、を関連付けて記憶部120に記憶してもよい。
【0110】
第1目標残高に第1仲介口座の閾値(例えば、上限値または下限値等)を設定する場合、残高調整部115は、上記監視の結果第1仲介口座の残高が第1目標残高を超過したり下回ったりした際に、第1目標残高内に収まるよう第1仲介口座と2仲介口座との間で送金するための処理を行ってもよい。また第2仲介口座においても同様に、第2目標残高に第2仲介口座の閾値を設定する場合、残高調整部115は、第2目標残高内に収まるよう第1仲介口座と第2仲介口座との間で送金するための処理を行ってもよい。
【0111】
残高調整部115は、例えば、照合部1151の照合の結果「OK」の場合、第1仲介口座と第2仲介口座の残高それぞれと目標残高との差異を解消するよう第1仲介口座と第2仲介口座との間で送金するための処理を行ってもよい。
【0112】
残高調整部115は、例えば、第1仲口座情報および第2仲介口座情報、ならびに後述の予測部1152による予測の結果に基づいて、第1仲介口座の残高および第2仲介口座の残高を調整してもよい。
【0113】
残高調整部115は、例えば、予測部1152による予測の結果にさらに基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整してもよい。残高調整部115は、例えば、この予測の結果に基づいて、第1仲介口座から第2仲介口座へ資金移動するための処理を行ってもよい。すなわち残高調整部115は、即時の決済指示またはスケジューリングされた決済指示を含む取引情報に加えて(または、取引情報に替えて)、この予測した結果に基づき、第1仲介口座と第2仲介口座との間の残高調整を行ってもよい。残高調整部115は、残高設定部114と同様に、月ごとに予測される各口座の入金総額または出金総額を、上記の算出した月ごとかつ入出金ごとの各口座の予定金額および平均金額の合計に加えた上で、各口座の残高を調整してもよい。また、残高設定部114は、例えば、月ごとに予測される各口座の入金総額または出金総額と、上記の算出した月ごとかつ入出金ごとの各口座の予定金額および平均金額の合計とを比較して、比較の結果その絶対値が大きい方に基づいて各口座の残高を調整してもよい。
【0114】
上記構成によれば、残高調整部115は、仲介口座の残高を、予測される処理状況や口座状況に応じた残高に調整することができる。このため、残高調整部115は、取引の増加に対応するだけでなくさらに余裕度を持たせた残高、または余裕度のより高い残高に調整することができる。
【0115】
残高調整部115は、例えば、上記のように業者口座間で残高を調整する他に、業者口座以外の口座やその他の仕組みを利用して各業者口座の残高を調整してもよい。残高調整部115は、例えば、業者口座全体または一部の口座の残高が不足している場合、外部からの資金調達を行ってもよい。例えば、まず残高調整部115は、調達候補先の事業者の事業者装置(不図示)に対して資金調達依頼を行う。残高調整部115は、この事業者装置から資金調達依頼に対する承認の結果を受け付けた場合、この事業者が保有する口座を管理する決済機関のサーバに対して、この口座から調整対象の業者口座に資金移動をするための指示を行う。この指示の結果、調整対象の業者口座には調達した資金が入金され、この業者口座の残高が調整される。
【0116】
[照合部]
残高調整部115は、例えば、照合部1151を備えてもよい。照合部1151は、例えば、上記算出された第1所定期間における第1仲介口座への入金の総額と第2仲介口座からの出金の総額とを照合してもよい。照合部1151は、照合の結果これらが同額であって場合は照合の結果を「OK」とし、他方これらに同額ではない場合は照合の結果を「NG」とする。
【0117】
照合部1151は、例えば、上記監視の結果、第1仲介口座の残高と第1目標残高を照合してもよい。照合部1151は、例えば、上記監視の結果、第2仲介口座の残高と第2目標残高を照合してもよい。照合部1151は、照合の結果、これらが合致する場合は照合の結果を「OK」とし、他方これらが合致しない場合は照合の結果を「NG」としてもよい。
【0118】
照合部1151は、例えば、以下の(1)~(8)のいずれか一つ以上の突合を行ってもよい。
(1)取引情報の取引金額と、第1口座または第2口座での資金移動の処理結果(出金額または入金額)との突合
(2)取引情報の取引金額と、第1仲介口座または第2仲介口座での資金移動の処理結果との突合
(3)第1指示部1111が送信する第1移動指示における金額と、第1口座または第1仲介口座での資金移動の処理結果との突合
(4)第2指示部1112が送信する第2移動指示における金額と、第2口座または第2仲介口座での資金移動の処理結果との突合
(5)第1口座での出金額と第2口座の入金額との突合
(6)第1仲介口座の入金額と第2仲介口座の出金額との突合
(7)第1仲介口座の入金額と第1口座の出金額との突合
(8)第2口座の入金額と第2仲介口座の出金額との突合
【0119】
<照合部による照合と取引情報とによる残高調整>
ここで図7を参照して、残高調整部115における照合と取引情報とによる残高調整の一例を説明する。図7は第1サーバ300aの更新系APIを利用して第1仲介口座に即日(X日)とX+3日に資金移動が行われる場合のフローの一例を示す図である。なお、本例における目標残高は一律「100万円」とし、取引金額を「50万円」とする。また、本例では、第1決済機関である第1銀行の第1サーバ300aおよび第2決済機関である第2銀行の第2サーバ300bが、銀行APIを実装しているものとする。
【0120】
図7に示すように、X-1日において、まず残高設定部114は、第1仲介口座の第1目標残高と第2仲介口座の第2目標残高を一律同じ金額(100万円)に設定する。残高調整部115は、この設定した目標残高となるように第1仲介口座および第2仲介口座それぞれの残高が100万円になるように調整する。
【0121】
X日において、取引情報取得部1131は、取引Dの取引情報(以下、「取引情報D」ともいう)を取得する。取引情報Dには、第1口座および第2口座における資金移動について、以下のように指定されていたものとする。
・第1口座からの出金を、「X+3日」に行う(言い換えれば、「X+3日」に、第1サーバ300aに第1移動指示を行い、第1口座から第1仲介口座への資金移動を行う)
・第2口座への入金を、「即時(X日)」に行う(言い換えれば、「即時(X日)」に、第2サーバ300bに第2移動指示を行い、第2仲介口座から第2口座への資金移動を行う)
【0122】
X日において、取引情報Dに基づいて第2指示部1112が行った第2移動指示により、第2サーバ300bは第2仲介口座から第2口座に、取引金額に充当させる資金50万円を移動させる。
【0123】
X+1日において、照合部1151は、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを照合する場合、取引情報Dをふまえないと、それぞれの残高と目標残高との差額が合わないため、照合の結果を「NG」と一旦判定する。
【0124】
照合部1151は、取引情報Dにさらに基づいて、X+3日に第1口座から第1仲介口座への50万円の資金移動、すなわちX+3日に第1仲介口座に50万円の入金があることを検出する。照合部1151は、この検出の結果に基づいて、上記の照合の結果を「NG」から「OK」に更新する。
【0125】
残高調整部115は、上記照合の結果が「OK」に更新されたため、第1仲介口座の残高および第2仲介口座の残高それぞれと目標残高との差額を解消するよう第1仲介口座から第2仲介口座へ差額50万円の資金移動をするための処理を行う。この時点では第1仲介口座は第1目標残高と差額がある状況だが、X+3日に第1口座から50万円入金されるため、この時点で目標残高との差額が解消する。
【0126】
上記構成によれば、残高調整部115は、第1口座と第2口座それぞれの資金移動のタイミングが異なる場合でも、取引情報により補うことができる。このため、残高調整部115は、精度よく残高を調整することができる。
【0127】
[予測部]
残高調整部115は、例えば、予測部1152を備えてもよい。予測部1152は、取引情報に基づいて、第1仲介口座や第2仲介口座等の各口座における将来の入金を予測する。言い換えれば予測部1152は、取引情報に示された将来予定されている取引ではなく、取引情報に示されているか否かに関わらず将来発生しうる取引を予測する。予測部1152は、例えば、第1所定期間における処理状況もしくは口座状況、またはこれらの状況に関連付けられた外部状況に基づいて、将来の処理状況や口座状況を予測してもよい。
【0128】
予測部1152は、例えば、(1)移動平均法、(2)指数平滑法、(3)回帰分析、等の手法を用いて、将来の第2所定期間における送金指示や第1仲介口座・第2仲介口座の入出金を予測してもよい。
【0129】
予測部1152は、例えば、上記(3)回帰分析にあたって、SVM(Support Vector Machine)などの機械学習の技法を用いて、将来の第2所定期間における処理状況や口座状況(例えば、口座ごとの入金総額・出金総額など)を予測してもよい。ここで「第2期間における処理状況」とは、例えば、第2期間における、取引情報の取得件数または取引金額の合計等である。またここで「第2期間における口座状況」とは、例えば、第2期間における、各口座の入出金回数、または各口座の入金総額と出金総額等である。
【0130】
予測部1152において上記(3)回帰分析における目的変数を取得件数または入出金回数とする場合、説明変数は第1所定期間における取得件数および/または入出金回数としてもよい。また、この説明変数は、第1所定期間における外部状況をさらに加えても、取得件数または入出金回数の少なくともいずれかと外部状況とを替えてもよい。予測部1152は、これらの目的変数と説明変数の特徴量の組み合わせを学習データとして、取引支援の需要を予測するための予測モデルに入力させて学習させてもよい。予測部1152は、この学習させた予測モデルを用いて第2所定期間における取引情報の取得件数または入出金回数を予測する。なお本例では第2所定期間における取引情報の取得件数または入出金回数を予測する例を説明したが、同様に、第2所定期間における各口座の入金総額や出金総額、決済金額の合計等を予測してもよい。
【0131】
[ネッティング部]
ネッティング部116は、取引支援システム1が取り扱う複数の取引における債権・債務を相殺させてその差額を決済する、いわゆるネッティングのための処理を行う。
【0132】
[マッチング部]
ネッティング部116は、例えば、マッチング部1161を備えてもよい。マッチング部1161は、複数の取引情報それぞれが示す支払者と受取者との関係に基づいて、それぞれの取引情報が示す取引をマッチングさせる。マッチング部1161は、例えば、上記の図4(b)の取引A~Bの例において、取引Aの支払者と取引Bの受取者が同じユーザaであり、取引Aの受取者と取引Bの支払者が同じユーザbである関係と判定する。ネッティング部116は、この判定結果に基づいて、取引Aと取引Bとをマッチングさせる(組み合わせる)。
【0133】
マッチング部1161は、例えば、以下の取引A・B・Eのように3者以上の取引者が関係する複数の取引をマッチングさせてもよい。
・取引A:ユーザaを支払者としユーザbを受取者として、500万円の送金
・取引B:ユーザbを支払者としユーザcを受取者として、ユーザbが提供する代金300万円の商品をユーザaが購入する売買取引
・取引E:ユーザcを支払者としユーザaを受取者として、ユーザaが提供するサブスクリプションサービスにおけるユーザcの月々の利用料50万円の支払い
【0134】
例えば、第1仲介口座と第2仲介口座とを含む資金移動業者が保有する複数の口座間で残高調整部115により残高調整する際に、マッチング部1161は、残高調整する複数の口座をマッチングさせてもよい。
【0135】
マッチング部1161は、例えば、調整対象の業者口座ごとに、現在の残高と目標残高との差額を算出する。マッチング部1161は、この算出された差額に基づき、資金移動させる移動元の業者口座と移動先の業者口座を特定し、これらをマッチングさせる。
【0136】
マッチング部1161は、例えば、プラスの差額とマイナスの差額の絶対値がもっとも近い複数の業者口座の組み合わせを抽出してマッチングしてもよい。またマッチング部1161は、他の例として、プラスの差額が算出された業者口座とマイナスの差額が算出された業者口座との全ての組み合わせパターンにおけるこれらの口座間の残高調整にかかるコスト(例えば、口座間の口座振込のための手数料など)を算出し、所定の閾値以下のコストもしくは下から1~N番目に小さいコストにおける組み合わせを抽出してもよい。そしてマッチング部1161は、この抽出された組み合わせにおいて、プラスの差額が算出された業者口座を移動元の口座とし、他方マイナスの差額が算出された業者口座を移動先の口座として特定してもよい。
【0137】
[相殺部]
ネッティング部116は、例えば、相殺部1162を備えてもよい。相殺部1162は、マッチングされた取引の取引金額の少なくとも一部を互いに相殺する。相殺部1162は、例えば、マッチングさせた取引Aと取引Bとの取引金額を互いに相殺する。相殺部1162は、上記の図4(b)の取引A~Bの例において、ユーザaからユーザbに500万円の送金と、ユーザbからユーザaに300万円の商品代金の支払いと、を相殺して、ユーザaからユーザbに資金移動させる200万円の差額、すなわちユーザaにおいて200万円の出金とユーザbにおいて200万円の入金とを算出する。
【0138】
相殺部1162は、例えば、上記の取引A・B・Eの3者以上の取引者をマッチングさせた場合、以下のとおり取引者であるユーザa~cそれぞれの差額を算出してもよい。
・ユーザa:500万円の出金と50万円の入金とを相殺させて、450万円の出金を差額として算出
・ユーザb:300万円の出金と500万円の入金とを相殺させて、200万円の入金を差額として算出
・ユーザc:50万円の出金と300万円の入金とを相殺させて、250万円の入金を差額として算出
【0139】
[検出部]
検出部117は、各口座における入金や出金を検出する。検出部117は、例えば、決済機関サーバ300が実装する参照系APIを利用して、決済機関が管理する各口座の口座情報の参照を決済機関サーバ300に指示してもよい。検出部117は、この参照の結果を決済機関サーバ300から取得して、各口座における入金や出金を検出してもよい。
【0140】
検出部117は、例えば、第1検出部1171を備えてもよい。第1検出部1171は、第1仲介口座情報に基づいて、第1仲介口座への第1移動指示による入金を検出する。また、検出部117は、例えば、第2検出部1172を備えてもよい。第2検出部1172は、第2仲介口座情報に基づいて、第2仲介口座からの第2移動指示による出金を検出する。
【0141】
[通知部]
通知部118は、取引者装置200や決済機関サーバ300等の各装置に、資金移動の処理結果等の各種情報を通知する。通知部118が各装置に各種情報を通知する態様は、どのような態様でもよい。通知部118は、例えば、取引者装置200に、各種情報を示すデータファイルやメッセージを送信してもよい。また他の例として、通知部118は、各種情報を通知するプッシュ通知を取引者装置200に送信し、取引者装置200の表示部にアラートメッセージとして表示してもよいし、取引支援サイトのWebページに各種情報を出力させてもよい。通知部118は、例えば、取引者装置200が備える業務システム等に各種情報を入力させるために、業務システムとの間のI/Fの仕様に従って各種情報を通知してもよい。
【0142】
[処理結果通知部]
通知部118は、例えば、処理結果通知部1181を備えてもよい。処理結果通知部1181は、例えば、第1受付部1121または第2受付部1122の少なくともいずれかが資金移動の処理結果を受け付けた際、支払者装置200aまたは受取者装置200bの少なくともいずれかに、この資金移動の処理結果を通知する。
【0143】
支払者装置200aまたは受取者装置200bが資金移動の処理結果の入力をトリガーとする後続の処理を備えている場合、上記構成によれば、処理結果通知部1181は、支払者装置200aまたは受取者装置200bに資金移動の処理結果を連携し、これら取引者装置200の後続の処理を実行させることができる。
【0144】
[資金移動通知部]
通知部118は、例えば、資金移動通知部1182を備えてもよい。資金移動通知部1182は、第1検出部により第1口座への入金が検出された際、または第2仲介口座からの出金が検出された際の少なくともいずれかの際に、支払者装置200aまたは受取者装置200bの少なくともいずれかに、第2口座への入金予定を通知する。
【0145】
上記構成によれば、資金移動通知部1182は、支払者や受取者に対して、第2口座への入金予定、すなわち取引の決済が完了する予定を通知することができる。
【0146】
[記憶部]
記憶部120は、取引情報と、ユーザ情報と、口座情報とを記憶してもよい。記憶部120は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、上記情報ごとにテーブを設けて、当該テーブル間を関連付けて各情報を管理してもよい。
【0147】
「ユーザ情報」とは、支払者や受取者等のユーザに関する情報である。ユーザ情報は、例えば、ユーザを識別するためのユーザID、ユーザの氏名を示すユーザ名、ユーザが保有する口座の口座番号、若しくはユーザの連絡先を示すメールアドレス、住所または電話番号等を含む。
【0148】
[通信部]
通信部130は、ネットワークNを介して、取引者装置200、決済機関サーバ300または外部システム等に各種情報を送受信する。通信部130は、例えば、ネットワークNを介して、支払者装置200aから送信された取引情報を受信したり、この取引情報の決済指示による資金移動の結果等を受取者装置200bに送信したりする。
【0149】
<4.動作例>
図8を参照して、本実施形態に係る仲介サーバ100の動作例を説明する。図8(a)は、支払者装置200aまたは受取者装置200bから取引情報を取得した際の一連の処理の流れの一例を示すフロー図である。図8(b)は、取引情報に基づいて目標残高を設定し、仲介口座の残高を調整する際の一連の処理の流れの一例を示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0150】
図8(a)に示すように、仲介サーバ100の取引情報取得部1131は、第1口座と第2口座とを用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置200aまたは受取者の受取者装置200bから取得する(S10)。
【0151】
第1指示部1111は、取引情報に基づいて、第1口座から第1仲介口座に取引の取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバ300aに行う(S11)。また、第2指示部1112は、取引情報に基づいて、第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバ300bに行う(S12)。
【0152】
受付部112は、第1移動指示に対する資金移動の処理結果を第1サーバ300aから受け付け、第2移動指示に対する資金移動の処理結果を第2サーバ300bから受け付ける(S13)。
【0153】
処理結果通知部1181は、第1移動指示または第2移動指示の少なくともいずれかによる資金移動の処理結果を受付部112が受け付けた際、支払者装置200aまたは受取者装置200bの少なくともいずれかに、この受け付けられた資金移動の処理結果を通知する(S14)。
【0154】
図8(b)に示すように、仲介サーバ100の取引情報取得部1131は、第1口座と第2口座とを用いる取引を決済するための、決済指示および取引金額を含む取引情報を、支払者の支払者装置200aまたは受取者の受取者装置200bから取得する(S20)。
【0155】
残高設定部114は、取引情報に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高、または第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高の少なくともいずれかを含む目標残高を設定する(S21)。
【0156】
残高調整部115は、設定された目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高と第2仲介口座の残高とを調整する(S22)。
【0157】
<5.ハードウェア構成>
図9を参照して、上述してきた仲介サーバ100をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0158】
図9に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801と、メモリ803と、記憶装置805と、入力I/F部807と、データI/F部809と、通信I/F部811、および表示装置813を含む。
【0159】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、仲介サーバ100の制御部110が備える各機能部等は、メモリ803に一時記憶されたプログラムをプロセッサ801が実行することにより実現可能である。
【0160】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0161】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、取引情報や口座情報、ユーザ情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0162】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイス等が挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0163】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0164】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線または無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。
【0165】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイ等が挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブル等を介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0166】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る取引支援システム1の資金移動の制御機能を応用して、支払者と受取者である店舗との間で行われた商品購入等の取引の決済において、支払者側の取引の決済を支援する形態である。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0167】
本実施形態では、支払者側の取引の決済にあたって、仲介サーバ100に対して決済指示を行う事業者を、「第1事業者」という。第1事業者は、例えば、支払者に対して当該取引に対する支払いの立替を行う事業者(例えば、イシュア等)、当該取引の決済にあたって決済ネットワークや決済の仲介を提供する事業者(例えば、CAFIS(登録商標:Credit And Finance Information System)やJCN(登録商標:Japan Card Network)の運用者、カードブランド等)、この取引の決済の代行業者(例えば、PSP:Payment Service Provider)等である。本実施形態に係る取引支援システムは、クレジットカードのチャージバック等を含めた支払者側の取引が取り消された際の返金にも用いることができる。本実施形態では、第3決済機関は第3銀行であり、第3銀行の第3口座は、このクレジットカード決済における支払い先の口座であり、例えば、当該クレジットカードの発行会社であるイシュアが保有する口座等である。
【0168】
図10を参照して、本実施形態に係る取引支援システムの概要の一例を説明する。本実施形態では、商品等の取引をする際の決済にクレジットカード決済が用いられる例を用いて説明する。また、本実施形態では、第1事業者がこの取引の決済のために使用するサーバを第1決済サーバ400aとする。本実施形態に係る取引支援システムは、ネットワークNを介して第1決済サーバ400aと接続される。
【0169】
(1)図10に示すように、支払者と受取者である店舗との間で行われた取引であって支払者の第1決済機関の第1口座を用いた取引を決済するための第1決済サーバ400aは、第1口座から第3決済機関の第3口座への取引金額に応じた資金を移動させるための第3移動指示を含む取引情報を仲介サーバ100に送信する。具体的には、支払者と店舗との間で支払者が保有する第1銀行(第1決済機関)の第1口座を利用するクレジットカードでの取引が行われた際に、この取引の決済のための第1決済サーバ400aは、仲介サーバ100に、この取引の取引金額の支払請求依頼とする第3移動指示を含む取引情報を送信する。
【0170】
(2)仲介サーバ100の取引情報取得部1131は、第1決済サーバ400aから取引情報を取得して、上記の第3移動指示を受け付ける。なお、第1決済サーバ400aからの上記第3移動指示は、オーソリ承認都度行われるケース、または所定のサイクル(例えば、数時間ごと、日次、隔日等)ごと行われるケースが考えられる。
【0171】
(3)仲介サーバ100の第1指示部1111は、第3移動指示に基づいて、第1口座から資金移動業者が保有する第1決済機関の第1仲介口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第1移動指示を、第1決済機関の第1サーバ300aに行う。第1指示部1111は、例えば、取引情報取得部1131が上記の第3移動指示を含む取引情報を取得した場合、第3移動指示に基づいて、第1移動指示として、第1口座から第1仲介口座への取引金額の振込処理を第1サーバ300aに指示する。この際、第1指示部1111は、第1銀行の第1サーバ300aに実装された更新系APIを利用する。第1サーバ300aは、この振込処理の指示に応じて、第1口座から第1仲介口座への取引金額の振込処理を行う。
【0172】
(4)仲介サーバ100の第1検出部1171は、第1指示部1111が上記振込処理の指示をすると、第1サーバ300aに実装された参照系APIを利用して、第1仲介口座の第1仲介口座情報の参照を第1サーバ300aに指示する。第1サーバ300aは、第1仲介口座情報を検索し、参照する。
【0173】
(5)検出部117は、上記参照系APIを介して、第1サーバ300aから上記(4)の参照の結果を取得して、第1仲介口座への上記振り込まれた取引金額の入金を検出する。なお、検出部117は、第1口座から引き落とされた取引金額の出金を検出してもよい。
【0174】
(6)仲介サーバ100の処理結果通知部1181は、第1検出部1171が上記第1仲介口座への入金を検出すると、支払者に上記第1仲介口座への入金に代えて上記第1口座からの出金を通知する。
【0175】
(7)仲介サーバ100の精算部119は、第3所定期間において、第3移動指示に基づいて第1指示部1111により第1口座から第1仲介口座に移動した資金の総額を記録する。精算部119は、第1決済機関の第1仲介口座から第3決済機関の第3口座へこの記録された総額に充当させる資金を移動するための処理を行う。
【0176】
(8)仲介サーバ100の残高設定部114は、第3移動指示に基づいて、第1仲介口座の残高の目標とする第1目標残高を設定する。(9)残高調整部115は、この設定された第1目標残高に基づいて、第1仲介口座の残高を調整する。
【0177】
上記構成によれば、本実施形態に係る取引支援システムは、支払者と店舗との間で商品購入等の取引であって異なる決済機関の口座を用いる取引をする際の決済において、支払者側の取引の決済にあたって、拡張性を改善できる。
【0178】
仲介サーバ100は、上記取引が取り消された際には、第1指示部1111において第1仲介口座から第1口座への資金移動(振込)を指示して支払者への返金を行う。また、精算部119において、第1仲介口座から第1口座に振込された総額分を第3口座から第1仲介口座に資金移動するための処理を行う。
【0179】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に係る取引支援システム1の資金移動の制御機能を応用して、支払者と受取者である店舗との間で商品等の取引をする際、店舗側の取引の決済を支援する形態である。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0180】
本実施形態では、店舗側の取引の決済にあたって、仲介サーバ100に対して資金移動指示を行う事業者を、「第2事業者」という。第2事業者は、例えば、この取引に対する店舗への支払いの立替を行う事業者(例えば、アクワイアラ)、この取引の決済にあたって決済ネットワークや決済の仲介を提供する事業者(例えば、カードブランド、CAFISやJCNの運用者、当該取引の決済の代行業者等である。本実施形態に係る取引支援システムは、クレジットカードのチャージバック等を含めた店舗側の取引が取り消された際の返金にも用いることができる。
【0181】
図11を参照して、本実施形態に係る取引支援システムの一例を説明する。本実施形態では、第2実施形態同様、商品等の取引をする際の決済にクレジットカード決済が用いられる例を用いて説明する。また、本実施形態では、第2事業者が当該取引の決済のために使用するサーバを第2決済サーバ400bとする。本実施形態に係る取引支援システムは、ネットワークNを介して第2決済サーバ400bと接続される。本実施形態において、第4決済機関は第4銀行であり、第4銀行の第4口座は、このクレジットカード決済における店舗に対する支払い元の口座であり、例えば、このクレジットカードの加盟店管理者であるアクワイアラが保有する口座等である。
【0182】
(1)図11に示すように、支払者と受取者である店舗との間で行われた取引であって受取者の第2決済機関の第2口座を用いた取引を決済するための第2決済サーバ400bは、第4銀行の第4口座から第2口座への取引金額に応じた資金をするための第4移動指示を仲介サーバ100に送信する。具体的には、支払者と受取者である店舗との間でこの店舗が保有する第2銀行(第2決済機関)の第2口座を利用するクレジットカードでの取引が行われた際に、この取引の決済のための第2決済サーバ400bは、仲介サーバ100に、この取引の取引金額の支払請求依頼とする第4移動指示を含む取引情報を送信する。
【0183】
(2)仲介サーバ100の取引情報取得部1131は、第2決済サーバ400bから取引情報を取得して、第4移動指示を受け付ける。なお、第2決済サーバ400bからの上記4移動指示は、オーソリ承認都度行われるケース、または所定のサイクル(例えば、数時間ごと、日次、隔日等)ごと行われるケースが考えられる。
【0184】
(3)仲介サーバ100の第2指示部1112は、第4移動指示に基づいて、資金移動業者が保有する第2決済機関の第2仲介口座から第2口座に取引金額に充当させる資金を移動させるための第2移動指示を、第2決済機関の第2サーバ300bに行う。第2指示部1112は、例えば、取引情報取得部1131が上記の第4移動指示を含む取引情報を取得した場合、第4移動指示に基づいて、第2移動指示として、第2仲介口座から第2口座への取引金額の振込処理を第2サーバ300bに指示する。この際、第2指示部1112は、第2銀行の第2サーバ300bに実装された更新系APIを利用する。第2サーバ300bは、この振込処理の指示に応じて、第2仲介口座から第2口座への取引金額の振込処理を行う。
【0185】
(4)仲介サーバ100の第2検出部1172は、第2指示部1112が上記振込処理の指示をすると、第2サーバ300bに実装された参照系APIを利用して、第2仲介口座の第2仲介口座情報の参照を第2サーバ300bに指示する。第2サーバ300bは、第2仲介口座情報を検索し、参照する。
【0186】
(5)仲介サーバ100の第2検出部1172は、上記参照系APIを介して第2サーバ300bから上記(4)の参照の結果を取得して、第2仲介口座から上記振り込まれた取引金額の出金を検出する。
【0187】
(6)仲介サーバ100の資金移動通知部1182は、第2検出部1172が上記第2仲介口座からの出金を検出すると、この出金に代えて第2口座への入金を店舗に通知する。
【0188】
(7)仲介サーバ100の精算部119は、第4所定期間において、第2移動指示に基づいて、第2指示部1112により第2仲介口座から第2口座に移動した資金の総額を記録する。精算部119は、第4銀行の第4口座から第2仲介口座へこの記録された総額に充当させる資金を移動するための処理を行う。
【0189】
(8)仲介サーバ100の残高設定部114は、第3移動指示に基づいて、第2仲介口座の残高の目標とする第2目標残高を設定する。(9)残高調整部115は、この設定された第2目標残高に基づいて、第2仲介口座の残高を調整する。
【0190】
上記構成によれば、本実施形態に係る取引支援システムは、支払者と店舗との間で商品購入等の取引であって異なる決済機関の口座を用いる取引をする際の決済において、店舗側の取引の決済にあたって、拡張性を改善できる。
【0191】
仲介サーバ100は、上記取引が取り消された際には、第2指示部1112において第2口座から第2仲介口座への資金移動(振込)を指示して店舗からの返金を受け取る。また、精算部119において、第2口座から第2仲介口座に振込された総額分を第2仲介口座から第4口座に資金移動するための処理を行う。
【0192】
なお、上記実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0193】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、上記実施形態に係る取引支援システムを、取引における未払債権の回収として、資金移動業者自らがまたは受取者の代わりに支払い予定の未収金を支払者から受け取る際に利用する例を説明する。具体的には、所定の口座(本例では、第1仲介口座とする)に支払者から未収金が入金された際の取引情報と口座情報との照合(リコンサイル)において本実施形態に係る取引支援システムを利用する例について説明する。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0194】
「未収金」とは、例えば、支払者をクレジットカードの会員等の個人とする場合、リボ残高やローン残高の繰り上げ返済入金、または延滞金の返済入金等を含んでもよい。また、他の例として、未収金は、例えば、支払者をクレジットカードの提携カード会社や加盟店等の事業者とする場合、取引が取り消された際の返金(チャージバック)による入金や加盟店Fee支払のための入金等を含んでもよい。
【0195】
取引情報取得部1131が取得する取引情報は、取引における未収金を受け取る場合、例えば、資金移動予定日時として支払い予定日時または支払い期日、取引金額として支払い予定金額、関係者IDとして支払者のID、各取引の属性として「未払金」、等を含んでもよい。
【0196】
本実施形態に係る取引支援システムを利用可能な仲介口座に対する入金は、未収金の回収のための入金に限定されない。例えば、資金移動業者は、支払者、受取者、第1事業者、および/または第2事業者等の本実施形態に係る取引支援システムのユーザに、このシステムの利用にあたって手数料を課してもよい。この手数料の支払いの入金について、取引情報と口座情報との照合の機能やこの照合の結果の他機能への連携の機能を利用可能としてもよい。
【0197】
<1.取引情報と口座情報との照合>
図12を参照して、本実施形態に係る取引支援システムにおける取引情報と口座情報との照合からこの照合の結果の連携までのプロセスの一例を説明する。
【0198】
(1)図12に示すように、A.情報取得の口座情報取得部1132は、未収金が入金された口座が第1仲介口座の場合、第1サーバ300aから第1仲介口座の口座情報(入金履歴)を取得する。
【0199】
(2)B.リコンサイルの照合部1151は、取引情報および口座情報を照合する。本例では、照合部1151は、この照合の結果として、取引情報に示された取引の中から、口座情報の入金履歴に該当する支払い予定の取引を特定する。(3)照合部1151は、この照合の結果を通知部118と残高調整部115とに連携する。
【0200】
(4)C.精算・会計の通知部118は、支払者装置200aまたは受取者装置200bの少なくともいずれかに、上記連携された照合の結果を通知する。(5)支払者装置200aおよび/または受取者装置200bは、通知された照合の結果(入金済みと特定された取引)に基づいて、後続の処理を実行させる。例えば、支払者装置200aは、照合の結果を入力することで、後続の請求情報を管理するシステムにおいて該当する取引のステータスを未収金から入金済に自動で更新する。
【0201】
(6)C.精算・会計の残高調整部115は、上記連携された照合の結果に基づいて、第1仲介口座および第2仲介口座を含む資金移動業者が保有する複数の口座の残高を調整する。
【0202】
[変形例]
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0203】
[変形例1]
上記実施形態に係る仲介サーバ100における各構成の少なくとも一部は、取引者装置200が備えていてもよい。例えば、取引者装置200に取引支援システム1の専用アプリケーションとして仲介サーバ100の機能を全て実装させて、取引者装置200と、決済機関サーバ300、第1決済サーバ400aまたは第2決済サーバ400bとのやり取りのみで本発明を実現させてもよい。
【0204】
[変形例2]
上記実施形態に係る仲介サーバ100が備える各構成の少なくとも一部は、取引者装置200や決済機関サーバ300、外部システムが備えていてもよい。取引者装置200は、例えば、取引支援システム1専用のアプリケーションプログラム(ネイティブアプリ)(以下、「取引支援アプリ」ともいう)をインストールしてこの取引支援アプリを実行することでこれらの構成を実現させてもよい。言い換えれば、取引支援システム1では、仲介サーバ100が配信する取引支援サイトを利用することもでき、また代わりに取引支援アプリを利用することもできる。取引支援システムにおいて、取引支援アプリを利用する場合、装置200がオフラインであっても、関係者は少なくとも一部の取引支援システムの機能を利用することができる。
【0205】
[変形例3]
第1実施形態で示した上記「(ウ)決済機関が銀行の場合、デビットカードシステムのデビット決済を利用する」において、例えば、上記実施形態に係る仲介サーバ100は、第1デビットカードシステムに対して、第1デビットカードの利用者口座を第1口座とし、第1デビットカードの加盟店口座を第1仲介口座とするデビット決済指示をしてもよい。このデビット決済指示に基づいて、第1デビットカードシステムは、デビット決済により第1口座から第1仲介口座への資金移動を行う。また、上記実施形態に係る仲介サーバ100は、第2デビットカードシステムに対して、第2デビットカードの利用者口座を第2仲介口座とし、第2デビットカードの利用者口座を第2口座とするデビット決済指示をしてもよい。このデビット決済指示に基づいて、第2デビットカードシステムは、デビット決済により第2仲介口座から第2口座への資金移動を行う。
【0206】
本例では、前提として、第1デビットカードシステムについて利用者口座を第1口座とする第1デビットカードの発行が予め行われているものとする。また第1デビットカードシステムの加盟店として資金移動業者が登録されているものとする。他方第2デビットカードシステムについて、利用者口座を資金移動業者が保有する第2仲介口座とする第2デビットカードの発行が予め行われているものとする。また第2デビットカードシステムの第2デビットカードの加盟店として受取者が登録されているものとする。
【符号の説明】
【0207】
1…取引支援システム、100…仲介サーバ、110…制御部、111…指示部、112…受付部、113…取得部、114…残高設定部、115…残高調整部、116…ネッティング部、117…検出部、118…通知部、120…記憶部、130…通信部、200a…支払者装置、200b…受取者装置、300…決済機関サーバ、300a…第1サーバ、300b…第2サーバ、300c…第3サーバ、300d…第4サーバ、400a…第1決済サーバ、400b…第2決済サーバ、800…コンピュータ、801…プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12