(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240213BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240213BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240213BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M10/052
H01M50/103
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/463 B
(21)【出願番号】P 2021148900
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小岩 永明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 舜也
(72)【発明者】
【氏名】泉本 貴昭
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-032575(JP,A)
【文献】特開2016-181409(JP,A)
【文献】特開2019-175655(JP,A)
【文献】特開2015-053113(JP,A)
【文献】特開2014-203583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 50/00-50/198
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体、非水電解液、及びこれらを収容する直方体状の電池ケースを備えた非水電解液二次電池の製造方法であって、
正極基材と正極合材層を含む正極と負極基材と負極合材層を含む負極を、比較的太い骨格部分と、この骨格部分に形成された比較的細い3次元状の網目状の部分を有する多孔性樹脂からなるセパレータを介して積層して電極体を形成する積層工程と、
積層された前記電極体を捲回軸を中心に捲回する捲回工程と、
前記捲回工程で捲回された前記電極体を前記捲回軸と直交する方向からプレスして、平面状の平坦部F及び、前記平坦部Fの両端に形成される一対の半円柱状の湾曲部Rを形成する扁平プレス工程と、
前記扁平プレス工程における弾性変形の復元を図る復元工程とを備え、
前記電極体の捲回軸と平行な方向を幅方向とし、前記電極体の捲回軸と直交しかつ前記平坦部Fの面と直交する方向を厚み方向をとし、前記幅方向及び厚み方向と直交する方向を長さ方向とし、前記半円柱状に形成された湾曲部Rの中心軸に位置する点を湾曲部Rの中心Cとし
て、
前記復元工程完了時の前記湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の当該湾曲部Rの外表面までを場所Dとし、
前記復元工程完了時の前記湾曲部Rの中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までを場所Bとし、
前記復元工程完了時の前記電極体の厚み方向の平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B′とし、
電極体の捲回工程完了時の厚さを電極体積層厚さEとし、
電極体のプレス工程完了時の前記電極体の厚み方向の平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B″としたとき、
前記場所Dの厚さ/場所Bの厚さの範囲を
1.01≦場所Dの厚さ/場所Bの厚さ≦1.10とし、
前記場所Bにおける透気度/場所Dにおける透気度を
0.90≦場所Bにおける透気度/場所Dにおける透気度≦0.99とし、
前記厚さ寸法B′/(2×電極体積層厚さE)を
0.98≦B′/2E≦1.00とし、
前記厚さ寸法
B″/厚さ寸法
B′の範囲を
0.88≦B″/B′≦0.98
と設定するとともに、
前記扁平プレス工程
及び復元工程における寸法管理を当該範囲において変更し
、前記扁平プレス工程で、前記セパレータの微細な開口を、降伏点を超して押しつぶし、塑性変形させることで平坦部Fの場所
Bの透気度を変更し、
場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rd2の合成抵抗Rdcを、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rb2の合成抵抗Rbcと等しくするように範囲を設定することを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池である
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法に係り、詳しくは金属が析出しにくい非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池では、電気自動車などの電源として利用するため、多数のセル電池を直列・並列に接続し、高電圧・高電流を供給するようになっている。そのため、多数のセル電池をコンパクトに積載するため、電極板を捲回した捲回型の電池が用いられている。さらに、冷却効率を高めるたり、極板同士を密着させるため、扁平状の捲回型電極体のセル電池が用いられることが多くなった。
【0003】
このような扁平状の電極体では、プレス工程で平坦になった平坦部と、平坦部の端部で折り返すための湾曲部を有している。このような電極体では、平坦部と湾曲部の構成が異なるため、構成の違いに起因して種々の問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の発明の非水電解質二次電池において、以下のような構成を備えている。負極合材層は、電極体の平坦部に位置する第1領域と、一対の湾曲部に位置する第2領域とを含む。第1領域の充填密度(A)に対する第2領域の充填密度(B)の比率(B/A)が、0.75以上0.95以下である。さらに、電極体の軸方向中央を通る当該軸方向に垂直な断面において、平坦部の断面積(SA)に対する一対の湾曲部の断面積(SB)の比率(SB/SA)が、0.28以上0.32以下である。
【0005】
このような構成によれば、容量維持率及び出力が高く、負極表面におけるリチウムの析出が起こり難い。
また、特許文献2に記載の発明では、捲回電極体の横断面において、内側湾曲頂点Vから外側湾曲頂点Pまでの厚みを、湾曲R部中心厚みDとする。且つ、内側湾曲頂点VからR部/F部境界線Wに沿って捲回電極体の外表面Sに至るまでの厚みを、湾曲R部境界厚みBとする。このとき、D/B比が1.01以上1.07以下とした。
【0006】
このような構成であれば、高い容量維持率と抵抗上昇の抑制とを実現し、高耐久性を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-57458号公報
【文献】特開2018-32575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように平坦部と湾曲部の密度を変えたり、特許文献2のように平坦部と湾曲部の厚さを変えたりしただけでは、電極体における電流密度の不均一は解消されず金属リチウムの析出などを十分に抑制することができないという問題があった。
【0009】
本発明の非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法が解決しようとする課題は、金属リチウムの析出を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の非水電解液二次電池の製造方法では、電極体、非水電解液、及びこれらを収容する直方体状の電池ケースを備えた非水電解液二次電池の製造方法であって、正極基材と正極合材層を含む正極と負極基材と負極合材層を含む負極を多孔性樹脂からなるセパレータを介して積層して電極体を形成する積層工程と、積層された前記電極体を捲回軸を中心に捲回する捲回工程と、前記捲回工程で捲回された前記電極体を前記捲回軸と直交する方向からプレスして、平面状の平坦部F及び、前記平坦部Fの両端に形成される一対の半円柱状の湾曲部Rを形成する扁平プレス工程と、前記扁平プレス工程における弾性変形の復元を図る復元工程とを備え、前記電極体の捲回軸と平行な方向を幅方向とし、前記電極体の捲回軸と直交しかつ前記平坦部Fの面と直交する方向を厚み方向をとし、前記幅方向及び厚み方向と直交する方向を長さ方向とし、前記半円柱状に形成された湾曲部Rの中心軸に位置する点を湾曲部Rの中心Cとしたとき、前記復元工程完了時の前記湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の当該湾曲部Rの外表面までを場所Dとし、前記復元工程完了時の前記湾曲部Rの中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までを場所Bとし、前記復元工程完了時の前記電極体の厚み方向の平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B′とし、電極体の捲回工程完了時の厚さを電極体積層厚さEとし、電極体のプレス工程完了時の前記電極体の厚み方向の平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B″としたとき、場所Dの厚さ/場所Bの厚さ、場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度、厚さ寸法B′/(2×電極体積層厚さE)、厚さ寸法B′/厚さ寸法B″を設定した範囲内に調整することを特徴とする。
【0011】
前記場所Dの厚さ/場所Bの厚さ、前記場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度、前記厚さ寸法B′/(2×電極体積層厚さE)、前記厚さ寸法B′/厚さ寸法B″の設定を、場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rd2の合成抵抗Rdcを、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rb2の合成抵抗Rbcと等しくするように範囲を設定するようにすることが好ましい。
【0012】
前記場所Dの厚さ/場所Bの厚さの範囲を1.01≦場所Dの厚さ/場所Bの厚さ≦1.10とし、前記場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度を0.90≦場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度≦0.99とし、前記厚さ寸法B′/(2×電極体積層厚さE)を0.98≦B′/2E≦1.00とし、前記厚さ寸法B′/厚さ寸法B″の範囲を0.88≦B′/B″≦0.98と設定するようにしてもよい。
【0013】
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池の場合に好適に適用できる。
また、本発明の非水電解液二次電池では、電極体、非水電解液、及びこれらを収容する直方体状の電池ケースを備えた非水電解液二次電池であって、前記電極体は、正極基材と正極合材層を含む正極と、負極基材と負極合材層を含む負極とが、多孔性樹脂からなるセパレータを介して積層され、捲回軸を中心に捲回され、扁平に形成されており、電極体を前記捲回軸と直交する横断面において、平坦にプレスされた平面状の平坦部Fと、その両端に湾曲されて形成された一対の半円柱状の湾曲部Rを備え、前記電極体を捲回する軸と平行な方向を幅方向とし、前記電極体の捲回軸と直交しかつ前記平坦部Fの面と直交する方向を厚み方向をとし、前記幅方向及び厚み方向と直交する方向を長さ方向とし、前記半円柱状に形成された湾曲部Rの中心軸に位置する点を湾曲部Rの中心Cとしたとき、前記湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の当該湾曲部Rの外表面までを場所Dとし、前記湾曲部の中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までを場所Bとしたとき、前記場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rd2の合成抵抗Rdcを、前記場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1及び前記セパレータの透気度に起因する溶液抵抗Rb2の合成抵抗Rbcと等しくしたことを特徴とする。
【0014】
前記非水電解液二次電池が、リチウムイオン二次電池である場合に好適に適用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法によれば、金属リチウムの析出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】リチウムイオン二次電池1の電極体10の積層体の構成を示す模式図である。
【
図3】捲回された電極体10の幅方向の負極側の端部を示す斜視図である。
【
図4】幅方向Wから見た平坦部Fと湾曲部Rを示す模式図である。
【
図5】幅方向Wから見た集電体10の各寸法の場所を示す図である。
【
図6】本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造工程を示すフローチャートである。
【
図7】(a)捲回工程(S3)完了後の電極体を示す模式図である。(b)扁平プレス工程(S4)中の電極体を示す模式図である。(c)復元工程(S5)中の電極体を示す模式図である。
【
図8】捲回工程(S3)完了後、扁平プレス工程(S4)直後、復元工程(S5)における、「D/B比」、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~11を参照して、本発明の非水電解液二次電池の製造方法を、リチウムイオン二次電池1の製造方法を例に、説明する。
(本実施形態の概要)
<本実施形態の原理>
本実施形態は、リチウムイオン二次電池において、金属Liの析出を効果的抑制する発明である。リチウムイオン二次電池1において、Li析出の原因の一つとして、
図4に示す電極体10において正極板100及び負極板110の間の電流密度の不均一が挙げられる。前述のように、車載用のリチウムイオン二次電池1では、電極板を捲回した捲回型の電池が用いられている。さらに、コンパクト性や冷却効率を高めるため、扁平状の捲回型電極体をセル電池が用いられることが多くなった。
【0018】
このような扁平状の電極体では、扁平プレス工程で平坦になった平坦部Fと、平坦部Fの端部で折り返すための湾曲部Rを有している。このような電極体では、平坦部Fと湾曲部Rの構成が異なるため、構成の違いに起因して抵抗値が異なり、電流密度の不均一が生じやすい。
【0019】
しかしながら、特許文献1のように平坦部Fと湾曲部Rの密度を変えたり、特許文献2のように平坦部Fと湾曲部Rの厚さを変えたりしただけでは、金属リチウムの析出などを十分に抑制することができない。そこで、本発明者らは根本的に平坦部Fと湾曲部Rの合成抵抗を均一にすることとした。
【0020】
発明者らの解析によると、平坦部Fと湾曲部Rの合成抵抗が決定される要素の一つとして反応抵抗がある。反応抵抗は、極間距離により変動する。扁平プレス工程により平坦部Fの極間距離が湾曲部Rより近接し、極間距離を起因とする反応抵抗が小さくなる。扁平の捲回型リチウムイオン二次電池1においては、この扁平プレス工程に起因して、この反応抵抗の差をゼロとすることは困難であった。さらに、負極板100と正極板110との合成抵抗は、この極間距離に依存する反応抵抗を等しくしてもゼロにはならない。
【0021】
そこで本発明者らは、平坦部Fと湾曲部Rの合成抵抗が決定されるもう一つの要素として溶液抵抗に着目した。さらに溶液抵抗は、電解液が同一でもセパレータ120の透気度に影響を受ける点に着目した。セパレータ120は、微細な開口部を備えた多孔質の樹脂シートであるが、この開口部の内径により、電極間の抵抗が変化する。透気度が小さければ溶液抵抗が大きく、透気度が大きければ溶液抵抗が小さくなる。しかしながら、扁平の捲回型電極体10は、連続した帯状のセパレータ120を使用しているので、透気度を平坦部Fと湾曲部Rにおいて、異なる透気度のものとすることは困難である。
【0022】
そこで、本発明者らは、均一な材質の帯状のセパレータ120を使用しながら、平坦部Fと湾曲部Rの透気度を変更することで、溶液抵抗を調整し、平坦部Fと湾曲部Rの合成抵抗を等しくする構成を開発した。
【0023】
具体的には、本発明者らは、セパレータ120は、一旦プレスされるとその厚みが復元しても、その透気度が変化することを見出した。これによって、透気度を平坦部Fと湾曲部Rにおいて、異なる透気度のものとするリチウムイオン二次電池1の製造方法を発明したものである。
【0024】
<リチウムイオン二次電池1の基本構成>
まず、本実施形態の前提となるリチウムイオン二次電池1の構成を簡単に説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池1の斜視図である。
図1に示すようにリチウムイオン二次電池1は、セル電池として構成される。上側に開口部を有する直方体形状の電池ケース11を備える。電池ケース11は、電池ケース11を封止する蓋体12を備える。電池ケース11の内部には電極体10が収容される。電池ケース11内には図示しない注液孔から非水電解液17が注入される。電池ケース11及び蓋体12はアルミニウム合金等の金属で構成されている。リチウムイオン二次電池は、電池ケース11に蓋体12を取り付けることで密閉された電槽が構成される。またリチウムイオン二次電池は、蓋体12に、電力の充放電に用いられる負極外部端子14、正極外部端子16を備えている。
【0025】
<電極体10>
図2は、リチウムイオン二次電池1の電極体10の積層体の構成を示す模式図である。
図2に示すように、リチウムイオン二次電池1の電極体10は、負極板100と正極板110とセパレータ120を備える。負極板100は、負極基材101の両面に負極合材層102を備える。正極板110は、正極基材111の両面に正極合材層112を備える。負極板100と、正極板110は、セパレータ120を介して重ねて積層された電極体10が構成される。この積層体が捲回軸を中心に長手方向に捲回され、扁平に整形されてなる電極体10を構成する。
【0026】
負極接続部103は、負極板100の負極合材層102から電気を取り出す集電部として機能する。正極接続部113は、正極板110の正極合材層112から電気を取り出す集電部として機能する。
【0027】
<電極体10の端部構成>
図3は、捲回された電極体10の幅方向の負極側の端部を示す斜視図である。電極体10は捲回軸AXを中心に中心C-Cの部分が支えられて捲回される(
図6:S3)。次に、幅方向Wと直交する厚さ方向Tから一対の対抗するプレス機2(
図7(b)参照)により扁平プレス工程(
図6:S4)で、幅方向Wから見た端部が競走用トラック状の扁平な形状に整形される。そして、
図1に示すように扁平な電極体10は、電池ケース11に収容され、
図2に示すように負極接続部103には、負極集電体13が溶接される。正極接続部113には正極集電体15が溶接される。接続部と集電体との溶接方法としては、例えば超音波溶接や抵抗溶接、電気溶接がある。そして、蓋体12を貫通して負極集電体13には負極外部端子14が接続され、正極集電体15には正極外部端子16が接続される。
【0028】
ここで、電極体10の捲回軸AXと平行な方向を「幅方向W」とする。また、電極体10の捲回軸AXと直交しかつ平坦部Fの面と直交する方向を「厚み方向T」という。また、幅方向W及び厚み方向Tと直交する方向を「長さ方向L」という。
【0029】
<平坦部Fと湾曲部R>
図4は、幅方向Wから見た電極体10の平坦部Fと湾曲部Rを示す模式図である。扁平にプレスされた電極体10の中央部は直線状で、負極板100、正極板110及びセパレータ120により平面状の「平坦部F」が形成されている。
【0030】
また、平坦部Fの上端及び下端は、積層された負極板100、正極板110、セパレータ120からなる電極体10が半円柱状に湾曲されて、湾曲部Rが形成される。
この湾曲部Rは、幅方向Wから見てほぼ同心円の半円状となっており、これらの半円の中心になっている位置を「中心C」とする。この中心Cは、幅方向Wに続く直線して観念できる。
【0031】
<集電体10の寸法>
図5は、幅方向Wから見た集電体10の各寸法の場所を示す図である。
図5に示すように、復元工程(
図7:S5参照)完了時の湾曲部Rの中心Cから、長さ方向Lの湾曲部Rの外表面までを場所Dとする。
【0032】
また、復元工程(S5)完了時の湾曲部Rの中心Cを結ぶ直線から、厚み方向Tの平坦部Fの外表面までを場所Bとする。ここで、復元工程(S5)については、詳細は後述するが、扁平プレス工程(S4)において変形された電極体10が、弾性力による反発により変形が戻り、製品として、その寸法が安定した状態になったものである。
【0033】
また、復元工程(S5)完了時の電極体10の厚み方向Tの平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B′とする。つまり、厚さ寸法B′は、場所Bの長さの概ね2倍の関係となる。
【0034】
電極体10の捲回工程(S3)完了時の厚さを電極体積層厚さEとする(
図7(a)参照)。ここで、詳細は後述するが、積層工程(S2)とは、負極板100、正極板110、セパレータ120を介して積層する工程である。また、捲回工程(S3)とは、積層した帯状の負極板100、正極板110、セパレータ120を捲回軸AXを中心に中心C-Cの部分が支持して捲回し、さらに環状に積層する工程である。捲回工程(S3)完了時の厚みは、扁平プレス工程(S4)の前の力を加えていないときの、元の負極板100、正極板110、セパレータ120の厚みである。
【0035】
電極体10の扁平プレス工程(S4)完了時の電極体10の厚み方向の平坦部Fの一方の外表面から他方の外表面までの距離を厚さ寸法B″とする(
図7(b)参照)。
<負極板100>
負極基材101の両面に負極合材層102が形成されて負極板100が構成されている。負極基材101は、実施形態ではCu箔から構成されている。負極基材101は、負極合材層102の骨材としてのベースとなるとともに、負極合材層102から電気を集電する集電部材の機能を有している。負極板100は、金属製の負極基材101上に負極合材層102が形成される。第1の実施形態では負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であり、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いる。
【0036】
負極板100は、例えば、負極活物質と、溶媒と、結着剤(バインダー)とを混練し、混練後の負極合材を負極基材101に塗布して乾燥することで作製される。
<正極板110>
正極基材111の両面に正極合材層112が形成されて正極板110が構成されている。正極基材111は、実施形態ではAl箔やAl合金箔から構成されている。正極基材111は、正極合材層112の骨材としてのベースとなるとともに、正極合材層112から電気を集電する集電部材の機能を有している。
【0037】
正極板110は、正極基材111の表面に正極合材層112が形成されている。正極合材層112は正極活物質を有する。正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等を用いることができる。また、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2を任意の割合で混合した材料を用いてもよい。
【0038】
また、正極合材層112は、導電材を含む。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛(グラファイト)を用いることができる。
【0039】
正極板110は、例えば、正極活物質と、導電材と、溶媒と、結着剤(バインダー)とを混練し、混練後の正極合材を正極基材111に塗布して乾燥することで作製される。
<セパレータ120>
セパレータ120は、負極板100及び正極板110の間に非水電解液17を保持するためのポリプロピレン製等の不織布である。また、セパレータ120としては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、又は、リチウムイオンもしくはイオン導電性ポリマー電解質膜を、単独、又は組み合わせて使用することもできる。非水電解液17に電極体10に浸漬させるとセパレータ120の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0040】
<セパレータ120の機械的性質>
セパレータ120の構成は、全体として多孔性の構造であるが、その機械的な構成は、比較的太い骨格部分と、この骨格部分に形成された比較的細い3次元状の網目状の部分を有する。そして、扁平プレス工程(S4)で、このセパレータ120を圧縮すると、弾力がある樹脂であるので、その空隙部分がつぶれるように弾性変形をする。このとき、同じ力が掛かっても、比較的太い骨格部分よりも、この骨格部分に形成された比較的細い3次元状の網目状の部分の方がより大きく変形する。この圧縮された状態から、力を掛けない自由状態とすると、セパレータ120全体として、弾性復元力で、その厚みがほぼ復元する。このとき、より大きな変形をした比較的細い3次元状の網目状の部分は、降伏点を超える変形で、塑性変形する部分がある。これに対して比較的太い骨格部分は塑性変形しにくく、弾性復元力で、ほぼ元の形状に復元する。
【0041】
<セパレータ120の透気度[μm/(Pa・s)]>
ここで「透気度」とは、紙や不織布、フィルターの空気の通しやすさを示す数値である。「JIS P 8117(紙及び板紙の透気度試験方法)」規定のガーレー透気度試験機によるガーレー法による試験による。ガーレー試験機法では、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)~100μm/(Pa・s)、又は透気抵抗度が1.4s~1300sの紙及び板紙に適用する。液体に浮かぶ内筒の垂直方向の重さによって空気を圧縮し,この空気が試験片を透過し,内筒は徐々に下降する。一定体積の空気が透過するのに要した時間を測定し,その値から計算によってISO透気度を求める。
【0042】
ガーレー試験機法では、一定圧力差のもとで一定体積の空気が一定面積の紙を通過する秒数をガーレー秒数と呼び、透気度(JIS用語では「透気抵抗度」であるが、慣例にしたがって「透気度」と記す。)としている。また、ガーレー試験機法に替えて王研式試験機法による測定もできる。
【0043】
セパレータ120は、扁平プレス工程(S4)の前あった比較的細い3次元状の網目状の部分は、扁平プレス工程(S4)の後における降伏点を超える変形で、塑性変形し、空隙の径が、扁平プレス工程(S4)前より小さくなる。つまり、セパレータ120の「透気度」は、扁平プレス工程(S4)の前後で、変わってくる。上述のように、扁平プレス工程(S4)の前後で、骨格部分の復元力のため全体の寸法は、大きく変わらない。しかしながら、全体の寸法は復元しても非水電解液17の交換は、空隙が潰れて小さくなった分だけ、透気度が低下している。つまり、非水電解液17が交換されにくくなる。
【0044】
つまり、セパレータ120の「透気度」を管理することで、「溶液抵抗」を管理することが可能となる。
<非水電解液17>
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)を用いることができる。また、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料でもよい。また、支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等を用いることができる。またこれらから選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
【0045】
<リチウムイオン二次電池1の製造工程>
図6は、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造工程を示すフローチャートである。
図6を参照して、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造工程の概略を説明する。
【0046】
<源泉工程(S1)>
本実施形態では、まず源泉工程(S1)を行う。ここで源泉工程とは、リチウムイオン二次電池の電池要素の作成の工程である。具体的には、リチウムイオン二次電池の電池要素を構成する負極板100、正極板110及びセパレータ120をそれぞれ作成する工程である。
【0047】
<積層工程(S2)>
源泉工程(S1)で負極板100、正極板110及びセパレータ120をそれぞれ作成したら、積層工程(S2)を行う。
【0048】
図2に示すように、積層工程では、負極板100、セパレータ120、正極板110、セパレータ120の順に積層していく。このとき、負極合材層101と正極合材層111とは、セパレータ120を介して対面するように配置される。また、幅方向Wの一方の端部には、負極接続部103がセパレータ120から突出するように配置される。他方の端部には、正極接続部113がセパレータ120から突出するように配置される。
【0049】
<捲回工程(S3)>
積層工程(S2)で、負極板100、セパレータ120、正極板110、セパレータ120の順に積層された電極板10に対して捲回工程(S2)を行う。捲回工程(S2)では、幅方向Wの捲回軸AXを中心に、心材で中心C-Cの部分が支持されて巻き付けられる。
【0050】
図7(a)は、捲回工程(S3)完了後の電極体10を示す模式図である。
図7(a)に示すように、捲回された電極体10は競走用のトラックのような平坦部Fと、その両端に形成される湾曲部Rが形成される。
【0051】
<扁平プレス工程(S4)>
図7(b)は、扁平プレス工程(S4)中の電極体10を示す模式図である。
図7(b)に示すように、捲回工程(S3)において電極体10は、捲回された幅方向Wから見て平坦部Fと、その両端に形成される湾曲部Rが形成される。この電極体10は、厚み方向Tから、一対の対向する平面からなるプレス面2aを備えたプレス機2で平坦部Fが挟まれて押圧され圧縮される。一方、湾曲部Rは、基本的には、扁平プレス工程(S4)では、ほとんど変形しない。
【0052】
<復元工程(S5)>
図7(c)は、復元工程(S5)中の電極体10を示す模式図である。扁平プレス工程(S4)で、プレス機2により押圧された電極体10は、この復元工程(S5)において、弾性反発力により形状がほぼ回復する。なお、復元工程(S5)は、電極体10を自由状態に放置するだけで、積極的な処理はしない。放置時間は、材質や構造によっても異なるが、本実施形態では、概ね数秒間程度である。
【0053】
<端子溶接(S6)>
図2に示すように、扁平プレス工程(S4)で整形した電極体10は、一端に負極基材101が露出した負極接続部103が形成されており、他端に正極基材111が露出した正極接続部113が形成されている。
【0054】
そこで、
図3に示すように、端子溶接(S6)において負極接続部103に負極集電体13が、溶接され、電気的・機械的に接続される。
また、
図1に示すように正極接続部113にも負極集電体15が、溶接され、電気的・機械的に接続される。
【0055】
<ケース挿入(S7)>
そして、
図1に示すように、捲回され扁平になった電極体10と、ここに溶接された正極集電体15、負極集電体13は、ケース挿入(S7)の工程で、電池ケース11に挿入される。
【0056】
<封缶溶接(S8)>
封缶溶接(S8)の工程で、電池ケース11と蓋体12がレーザ溶接などにより、密封される。この段階ではまだ非水電解液は注液されておらず、蓋体12の注液口が開口している。
【0057】
<セル乾燥(S9)>
セル乾燥(S9)の工程では、電池ケース内に残存している水分などを加熱するなどして十分に乾燥させる。
【0058】
<注液・封止(S10)>
注液・封止(S10)の工程で注液口から非水電解液17を注液する。注液が完了したら、注液口を密封する。これで、セル電池の組み立てが完了する。
【0059】
<活性化(S11)>
セル電池の組み立てが完了したら、SEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜の形成などを目的として、活性化(S11)の工程を行う。ここでは、初充電、エージングなどを行い、セル電池を化学的に安定化・活性化をする。
【0060】
<検査(S12)>
そして検査(S12)の工程では、セル電圧や、電池内部抵抗、自己放電などの検査が行われ、所定の性能を発揮するものが製品となる。検査が完了した車載用のリチウムイオン二次電池のセル電池は、6~12個程度スタックされて電池モジュールとされる。さらに複数の電池モジュールが容器に収容され、制御装置や各種センサなどが装着されて車両用の電池パックとなる。
【0061】
<電極体10の寸法・透気度の管理>
次に、上述のようなリチウムイオン二次電池1の製造工程における電極体10の寸法及び透気度の管理について説明する。
【0062】
本実施形態の寸法管理は、平坦部Fと湾曲部Rの透気度を変更することで、溶液抵抗を調整し、平坦部Fと湾曲部Rの合成抵抗を等しくすることを目的とするものである。
図8は、捲回工程(S3)完了後、扁平プレス工程(S4)直後、復元工程(S5)完了後のそれぞれにおける、「D/B比」、「B部/D部の透気度比」、「B′/(2×電極体積層厚さE)比」を示す表である。
【0063】
<捲回工程(S3)後の調整>
図7(a)に示すように、捲回工程(S3)の完了後は、電極体10の湾曲部Rの中心Cを結ぶ直線から、厚みT方向の平坦部Fの外表面まで厚さを「電極体積層厚さE」とする。この段階では、セパレータ120は、プレスなどで圧縮する力を受けておらず、製造当初の本来の厚さを維持しており、平坦部Fも湾曲部Rも一定の厚さである。また、セパレータ120の多孔質組織も製造当初の空間を保持し、本体の透気度を維持している。このため、「B′/(2×電極体積層厚さE)比」は、1.00となっている。
【0064】
また、「透気度[μm/(Pa・s)]」もセパレータ120が製造当初の構造を維持しているため、平坦部Fも湾曲部Rも一定の透気度である。このため、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は、1.00となっている。
【0065】
<扁平プレス工程(S4)完了直後の寸法>
次に、
図7(b)に示す扁平プレス工程(S4)においては、電極体10をプレス機2の対抗するプレス面2aにより圧縮し、電極体10の厚み方向Tの平坦部Fの一方外表面から他方の外表面までの距離を「厚さ寸法B″」とする。このとき、元の電極体10の厚み「2×電極体積層厚さE」は圧縮され、「厚さ寸法B″」まで小さくなる。具体的には、「B″/(2×電極体積層厚さE)比」は、0.88~0.98となるまで圧縮される。
【0066】
一方、湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の当該湾曲部Rの外表面までの場所Dは圧縮されない。そのため、
図8に示すように、「D/B比」は、1.03~1.25となる。
なお、この扁平プレス工程(S4)において圧縮した電極体10は、その後の回復工程(S5)で圧縮した寸法が変化する。この扁平プレス工程(S4)で「厚さ寸法B″」とすることは、その寸法自体が重要であるのではなく、その後の透気度[μm/(Pa・s)]比に影響がある点が重要である。つまり、扁平プレス工程(S4)により、セパレータ120の微細な開口が押しつぶされて降伏点を超し、塑性変形する。このため、透気度[μm/(Pa・s)]は低下する。この「厚さ寸法B″」を制御することで、場所Bの透気度を管理することができる。具体的には、
図8に示すように「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は、0.90~0.99程度になる。
【0067】
<復元工程(S5)完了後の寸法>
扁平プレス工程(S4)後に、電極体10は、自由状態とされ、回復工程(S5)が実施される。復元工程(S5)では、湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の当該湾曲部Rの外表面まで長さDは変化しない。一方、湾曲部の中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までの場所Bの長さは、電極体の厚み方向の平坦部Fの一方外表面から他方の外表面までの距離B′となる。電極体10の厚みは、D/B比=D/(B′/2)は、1.01~1.10となる。
【0068】
また、「B′/(2×電極体積層厚さE)比」は、復元工程(S5)においてセパレータ120の骨格部分が弾性反発力で、ほとんど元の寸法に戻るため、0.98~1.00となる。
【0069】
また、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は、復元工程(S5)で自由状態となっても、扁平プレス工程(S4)でセパレータ120の微細な開口が押しつぶされて降伏点を超し、塑性変形している。このため、復元工程(S4)完了後も、扁平プレス工程(S4)直後と変わらない。そのため、場所Bの透気度[μm/(Pa・s)]は変化がなく、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は、0.90~0.99となっている。
【0070】
<合成抵抗Rdc及び合成抵抗Rbc>
合成抵抗Rdc及び合成抵抗Rbcは、例えば以下のような方法で導かれる。まず、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1と場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1を求める。次に、場所Dにおける透気度に起因する溶液抵抗Rd2と場所Bにおける透気度に起因する溶液抵抗Rb2を求める。そして、場所Dの合成抵抗Rdc=反応抵抗Rd1+溶液抵抗Rd2により求める。また、場所Bの合成抵抗Rbc=反応抵抗Rb1+溶液抵抗Rb2により求める。そして、場所Dの合成抵抗Rdcと場所Bの合成抵抗Rbcとを比較して、Rdc-Rbcの差が、設定した閾値より小さければ、電流密度の不均一が金属Liの析出を生じにくい範囲であると判断できる。
【0071】
<反応抵抗と溶液抵抗の測定>
リチウムイオン二次電池1において、反応抵抗と溶液抵抗は、交流インピーダンス法により測定することができる。交流インピーダンス法とは、微小振幅で、段階的に周波数を変えて交流電圧を前記二次電池の電極系に印加することにより、インピーダンススペクトルを観察する方法である。
【0072】
リチウムイオン二次電池1は等価回路で表すことができる。すなわち、溶液抵抗と、ここに直列につながれた電荷移動抵抗と電気二重層の反応抵抗の並列回路として表現できる。電極間に非水電解液を有した構成は電気二重層と観念され、コンデンサとして機能する。このため、電気二重層の交流抵抗は低周波領域では誘電体の分極の遅延による誘電損失に相当する抵抗成分となり、高周波領域では、電極の表皮効果や近接効果に相当する抵抗成分となる。これが反応抵抗に相当する。このようにインピーダンスは周波数によって変わる。理論的には直流では電気二重層は電気を通さず、交流電圧の周波数が高くなるにつれて抵抗値がゼロになる。したがって、周波数が高周波(例えば100Hz以上)では、回路の合成抵抗は、溶液抵抗と等しくなり、周波数が高くなるにつれて(100Hz~100mHz)では、溶液抵抗に加えて、電荷移動抵抗と電気二重層と合成抵抗となる。そして、低周波(100mHz未満)では、回路の合成抵抗は、溶液抵抗に加えて電荷移動抵抗との和になる。
【0073】
交流インピーダンス法によれば、説明は省略するが、横軸に実数、縦軸に虚数を採ったナイキストプロット(Nyquist plots・不図示)により、極間距離に起因する反応抵抗Rb1、Rd1と、透気度に起因する溶液抵抗Rd2、Rb2をそれぞれ求めることができる。
【0074】
ナイキストプロットによれば、インピーダンスと位相差から、二次電池の電極反応速度、電解質の電気伝導率,電気二重層容量などの特性が測定できる。ナイキストプロットは、縦軸に抵抗の虚数値Zimg[Ω]、横軸にZreal[Ω]をとり、高周波から微小振幅で、段階的に周波数を変えて交流電圧を二次電池1の電極系に印加する。これにより左下の原点Poから横軸に沿って右側にシフトした位置のゼロクロスPxから、中心を横軸上に有する円弧状のグラフが上方に延びる。そして、右上の所定の点から半径方向外側に直線状のグラフが延びる。「溶液抵抗(電子移動抵抗)」は、原点PoからゼロクロスPxまでの距離で表わせられる。つまりゼロクロスPxの抵抗の実数値Zreal[Ω]で表され、100Hz以上の高周波数での電解液や極柱、集電板などの電子が移動する際の抵抗を解析することができる。
【0075】
「反応抵抗」は、中間の周波数(100Hzから0.1Hz)では、電極での化学反応で、電荷(イオン)移動が生じる際の抵抗である「反応抵抗Pct」を解析することができる。ゼロクロスPxから、横軸上に中心を有する円弧状のグラフで表され、電極性能が劣化すると半径が大きな弧となる。
【0076】
(本実施形態の実験例)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1及び製造方法は、上述のような構成を備える。ここで、本実施形態の実験例について説明する。実験例1~3は、基本的に上記したリチウムイオン二次電池1の製造方法において、数値の設定を変えて実験したものである。
【0077】
<実験例1:D/B比とLi析出耐性>
図9は、実験例1の結果を示す表である。
図9では、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」を0.95に固定し、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を0.99に固定し、「D/B比」を1.00~1.11まで変化させた場合のLi析出耐性を測定した結果を示す。「〇」は、製品として望ましいLi析出耐性を示したものであり、「×」は、製品として望ましくないLi析出耐性を示したものである。
【0078】
図8に示すように、D/B比1.00の場合には、平坦部Fと湾曲部Rの極間距離が等しい。つまり、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1と場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1が等しい。一方、セパレータ120の透気度は、平坦部Fと湾曲部Rとで異なる。つまり、場所Dにおける透気度に起因する溶液抵抗Rd2と場所Bにおける透気度に起因する溶液抵抗Rb2が相違する。したがって、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcが相違し、負極板100と正極板110の間の電流密度の不均一が生じ、Li析出耐性が低下する。
【0079】
一方、D/B比1.01~1.10の場合には、平坦部Fと湾曲部Rの極間距離が相違する。つまり、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1と場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1が相違する。一方、セパレータ120の透気度も、平坦部Fと湾曲部Rとで異なる。つまり、場所Dにおける透気度に起因する溶液抵抗Rd2と場所Bにおける透気度に起因する溶液抵抗Rb2が相違する。この範囲では、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1との差と、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2との差が相互に相殺する。したがって、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの相違が許容範囲となり、負極板100と正極板110の間の電流密度の不均一がなく、Li析出耐性が向上する。
【0080】
さらに、D/B比1.11の場合には、平坦部Fと湾曲部Rの極間距離が相違する。つまり、場所Bにおける極間距離に起因する反応抵抗Rb1と場所Dにおける極間距離に起因する反応抵抗Rd1が相違する。一方、セパレータ120の透気度も、平坦部Fと湾曲部Rとで異なる。つまり、場所Dにおける透気度に起因する溶液抵抗Rd2と場所Bにおける透気度に起因する溶液抵抗Rb2が相違する。この範囲では、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1との差が大きすぎて、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2との差によっては相殺できない。したがって、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの相違が許容範囲外となり、負極板100と正極板110の間の電流密度の不均一を生じ、Li析出耐性が悪化する。
【0081】
以上のような結果から、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」を0.95に固定し、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を0.99に固定する。一方、「D/B比」を1.00~1.11まで変化させた。この場合、「D/B比」が1.00の場合には、Li析出耐性が低くかった。また、「D/B比」を1.01~1.10とした場合は、Li析出耐性が良好であった。さらに、「D/B比」を1.11とした場合には、Li析出耐性が再び悪化した。
【0082】
ここからわかることは、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」及び、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」の値に対して、「D/B比」を適正に設定する。このことで、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとを許容範囲とすることで、Li析出耐性を向上させることができる。
【0083】
<実験例2:B部/D部の透気度比とLi析出耐性>
図10は、実験例2の結果を示す表である。
図10では「D/B比」を1.05に固定し、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を0.99に固定し、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」を0.88~1.00まで変化させた場合のLi析出耐性を測定した結果を示す。「〇」は、製品として望ましいLi析出耐性を示したものであり、「×」は、製品として望ましくないLi析出耐性を示したものである。
【0084】
「B部/D部の透気度比」を0.88とした場合は、前提として「D/B比」が1.05に固定されている。このことから、D部(湾曲部R)の極間距離は、B部(平坦部F)の極間距より大きい。すなわち、D部(湾曲部R)の反応抵抗Rd1は、B部(平坦部F)の反応抵抗Rb1より大きい。「B部/D部の透気度比」を0.88とした場合は、D部(湾曲部R)の溶液抵抗Rd2は、B部(平坦部F)の溶液抵抗Rb2より小さい。この場合、Li析出耐性は、低下していた。このことから、「B部/D部の透気度比」を0.88とした場合は反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差よりも、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2の差が過大となる。その結果、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が許容範囲外となり、Li析出耐性が低下したものと考えられる。
【0085】
次に、「B部/D部の透気度比」を0.90~0.99とした場合は、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差と、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2の差のバランスが取れる。その結果、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が許容範囲内となり、Li析出耐性が向上するものと考えられる。
【0086】
また、「B部/D部の透気度比」を1.00とした場合は、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2が等しくなり、前提となる反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差を解消することができない。そのため、その結果、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が許容範囲外となり、Li析出耐性が低下したものと考えられる。
【0087】
ここからわかることは、「D/B比」及び、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」の値に対して、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」を適正に設定する。このことで、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差と、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2の差のバランスを取ることで、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差を許容範囲内とし、Li析出耐性を向上させることができる。
【0088】
<実験例3:B′/2E比とLi析出耐性>
図11は、実験例3の結果を示す表である。
図11では、「D/B比」を1.05に固定し、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」を0.95に固定し、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を0.97~1.01まで変化させた場合のLi析出耐性を測定した結果を示す。「〇」は、製品として望ましいLi析出耐性を示したものであり、「×」は、製品として望ましくないLi析出耐性を示したものである。
【0089】
図11に示すように、「B′/2E比」を0.97とした場合には、復元工程(S5)が完了した後も、扁平プレス工程(S4)によって圧縮された電極体10のセパレータ120の厚さが十分に復元していない状態である。すなわち、その結果、平坦部Fの極間距離は小さくなった状態が維持されている。極間距離が短くなった結果、平坦部Fの場所Bの反応抵抗Rb1は、湾曲部Rの場所Dの反応抵抗Rd1よりかなり小さくなる。一方、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は0.95に固定されているので、B部(場所B)の溶液抵抗Rb2は、D部(場所D)の溶液抵抗Rd2より大きい。この場合、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差と、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2の差とを比較すると、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差がより大きい。そのため、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が許容範囲外となり、Li析出耐性が低下する。
【0090】
次に、「B′/2E比」を0.98~1.00とした場合には、復元工程(S5)が完了した後は、扁平プレス工程(S4)によって圧縮された電極体10のセパレータ120の厚さが十分に復元している状態である。すなわち、その結果、平坦部Fの極間距離は扁平プレス工程(S4)以前の状態に戻っている。極間距離が戻った結果、平坦部Fの場所Bの反応抵抗Rb1は、湾曲部Rの場所Dの反応抵抗Rd1よりわずかに小さくなる。一方、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は0.95に固定されているので、B部(場所B)の溶液抵抗Rb2は、D部(場所D)の溶液抵抗Rd2より大きい。この場合、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差と、溶液抵抗Rd2と液抵抗Rb2の差とを比較すると、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差が均衡する。そのため、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が許容範囲内となり、Li析出耐性が向上する。
【0091】
さらに、「B′/2E比」を1.01とした場合には、復元工程(S5)が完了した後は、扁平プレス工程(S4)によって圧縮された電極体10のセパレータ120の厚さが、過剰に復元している状態である。すなわち、その結果、平坦部Fの極間距離は扁平プレス工程(S4)以前より大きな状態になっている。極間距離が大きくなった結果、平坦部Fの場所Bの反応抵抗Rb1は、湾曲部Rの場所Dの反応抵抗Rd1より大きくなっている。一方、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」は0.95に固定されているので、B部(場所B)の溶液抵抗Rb2は、D部(場所D)の溶液抵抗Rd2より大きい。この場合、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差と、溶液抵抗Rd2と溶液抵抗Rb2の差とを比較すると、反応抵抗Rd1と反応抵抗Rb1の差が小さい。そのため、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差が大きくなって許容範囲外となり、Li析出耐性が悪化する。
【0092】
ここからわかることは、固定した「D/B比」、「B部(場所B)/D部(場所D)の透気度比」に対して、「B′(B″)/(2×電極体積層厚さE)比」を適正に設定する。このことで、場所Dにおける合成抵抗Rdcと場所Bにおける合成抵抗Rbcとの差を許容範囲内とし、Li析出耐性を向上させることができる。
【0093】
<実験例1~3のまとめ>
以上の実験例1~3から導かれることは、以下の条件がLi析出耐性を高めることができる条件であるということである。
【0094】
まず、「所Dの厚さ/場所Bの厚さの範囲を1.01≦場所Dの厚さ/場所Bの厚さ≦1.10」と設定する。また、「場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度を0.90≦場所Dにおける透気度/場所Bにおける透気度≦0.99」と設定する。また、「厚さ寸法B′/(2×電極体積層厚さE)を0.98≦B′/2E≦1.00」と設定する。また、「厚さ寸法B′/厚さ寸法B″の範囲を0.88≦B′/B″≦0.98」と設定する。このように設定することで、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、良好なLi析出耐性を得ることができる。
【0095】
(本実施形態の作用)
本実施形態のリチウムイオン二次電池及びその製造方法によれば、以下の作用を奏する。電極体10における負極板100及びここに対向する正極板110において、平坦部Fと湾曲部Rにおいて扁平プレス工程(S4)により極板距離に起因する反応抵抗Rd1、Rb1の差が生じる。
【0096】
そこで、この反応抵抗の差を解消するため、セパレータ120を扁平プレス工程(S4)で所定の寸法B″まで圧縮することで、透気度を変化させる。透気度が変化すると溶液抵抗が変化する。そして、平坦部Fと湾曲部Rにおいて、溶液抵抗Rd2、Rb2に差を生じさせる。この、溶液抵抗Rd2、Rb2の差により、反応抵抗Rd1、Rb1の差を相殺し、合成抵抗Rdc、Rbcの差を解消する。そのため、平坦部Fと湾曲部Rにおける合成抵抗Rdc、Rbcの差に起因する電流密度の差を解消する。その結果、電流密度の不均一を起因とする金属Liの析出を有効に抑制できるという作用を奏する。
【0097】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態のリチウムイオン二次電池及びその製造方法によれば、金属リチウムの析出を抑制することができる。
【0098】
(2)平坦部Fと湾曲部Rでの合成抵抗を一致させるため、金属リチウムの析出を効果的に抑制することができる。
(3)平坦部Fと湾曲部Rでの合成抵抗を、反応抵抗と溶液抵抗に分けて解析し、それぞれを制御したため、平坦部Fと湾曲部Rでの合成抵抗を正確に一致させることができる。
【0099】
(4)反応抵抗と溶液抵抗は、交流インピーダンス法により測定しているので、それぞれの抵抗を正確に特定することができる。
(5)溶液抵抗は、セパレータ120の開口径の調整で制御しているので、任意の値に調整することができる。
【0100】
(6)セパレータ120の開口径の調整は、扁平プレス工程(S4)における押圧力で制御できる。
(7)扁平プレス工程(S4)における押圧力でセパレータ120の開口径の調整は、透気度により管理することができる。
【0101】
(8)本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法では、数値管理だけで、一般的な製造工程のまま、実施することができる。そのため、特別な設備や、特別な工程などを必要としない。
【0102】
(9)特に、電極体10の負極板100、正極板110、セパレータ120の製造においては、特別な加工や処理を必要とせず、従来からの負極板100、正極板110、セパレータ120をそのまま用いることができる。
【0103】
(10)本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法では、数値管理のみで適切な実施ができるため、熟練などを必要とせず、客観的に制御することができる。
(11)そのため、生産効率を落とすことなく高品質なリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
【0104】
(12)また、特別な材料や、特別な設備、ジグなども必要が無いため、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法を付加的なコストを生じさせないで実施することができる。
【0105】
(別例)
○本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、本発明の非水電解液二次電池の一例であり、図示したような板状の車載用のリチウムイオン二次電池1の形状に限定されるものではない。また、車載用に限定されるものでもない。
【0106】
○例示した数値範囲は、本実施形態における望ましい実施形態の例示であり、本発明はこれらの数値限定に限定されるものではない。
○また、実験例1~3は、従来の一般的な構成のリチウムイオン二次電池における実験であり、その結果は、広く適用できるものであるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0107】
○平坦部Fの厚みを測定する場所Bは、平坦部Fの表面がほぼ平面であるため、復元工程(S5)完了時の湾曲部Rの中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までを場所Bとした。しかしながら、平坦部Fは概ね平坦な状態であるので、例えば平坦部Fの中央部で測定するようにしてもよい。要は、寸法の変化が客観的に把握できるように測定場所が一定であれば、計測場所が限定されるものではない。
【0108】
○反応抵抗と溶液抵抗の測定は、交流インピーダンス法を例示したが、反応抵抗と溶液抵抗を正確に取得できれば、その方法は限定されない。
○
図6に示すフローチャートは、例示であり、当業者によりその手順を付加し削除し変更し、順序を変えて実施することができる。
【0109】
○本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、当業者により、その構成を付加し、削除し、又は変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0110】
1…リチウムイオン二次電池
2…プレス機
2a…プレス面
10…電極体
11…電池ケース
12…蓋体
13…負極集電体
14…負極外部端子
15…正極集電体
16…正極外部端子
17…非水電解液
100…負極板
101…負極基材
102…負極合材層
103…負極接続部
110…正極板
111…正極基材
112…正極合材層
113…正極接続部
120…セパレータ
AX…捲回軸
F…平坦部
R…(平坦部の両端に形成される一対の半円柱状の)湾曲部
C…湾曲部Rの中心(半円柱状に形成された湾曲部Rの中心軸に位置する点)
D…(復元工程完了時の湾曲部Rの中心Cから、長さ方向の湾曲部Rの外表面までの)場所
B…(復元工程完了時の湾曲部の中心Cを結ぶ直線から、厚み方向の平坦部Fの外表面までの)場所
E…電極体積層厚さ(電極体の積層工程完了時の厚さ)
B″…厚さ寸法(電極体のプレス工程完了時の前記電極体の厚み方向の平坦部Fの一方外表面から他方の外表面までの距離)
W…(電極体を捲回する軸と平行な方向を)幅方向
T…(電極体を捲回する軸と直交しかつ平坦部の面と直交する方向を)厚み方向
L…(幅方向及び厚み方向と直交する方向を)長さ方向
Rd1…(場所Dにおける極間距離に起因する)反応抵抗
Rd2…(場所Dにおける透気度に起因する)溶液抵抗
Rdc…(場所Dにおける)合成抵抗
Rb1…(場所Bにおける極間距離に起因する)反応抵抗
Rb2…(場所Bにおける透気度に起因する)溶液抵抗
Rbc…(場所Bにおける)合成抵抗