(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置およびカートリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
B41J2/175 315
B41J2/175 307
B41J2/175 121
B41J2/175 119
B41J2/175 151
B41J2/175 167
(21)【出願番号】P 2021152046
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰史
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089336(JP,A)
【文献】特開2008-087310(JP,A)
【文献】特開2018-122515(JP,A)
【文献】特開2019-025818(JP,A)
【文献】特開2018-122516(JP,A)
【文献】特開2010-228383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するカートリッジと接続可能であり、前記カートリッジから供給される液体を貯留する貯留室と、
前記貯留室内に配され、前記貯留室に貯留される液体よりも比重が小さいフロートと、被検知部と、前記フロートと前記被検知部との間に配される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能である回動部材と、
前記被検知部を検知する検知部と、
を備え、
前記回動部材は、前記貯留室の内部に貯留する液体の量が少なくなるにしたがって、前記被検知部の位置が、第3の位置から第2の位置を経由して第1の位置まで、前記回動軸を中心に回動可能であり、
前記カートリッジが、前記貯留室と接続された際の初期状態として、前記被検知部が前記第1の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、
前記被検知部が第2の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され、
前記被検知部が前記第3の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され
ず、
前記検知部は、前記被検知部を検知した場合と検知していない場合とで異なるレベルの信号を出力するように構成され、
前記検知部からの出力の変化に応じて前記被検知部の位置を3段階で判定する制御部を備える、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を貯留するカートリッジと接続可能であり、前記カートリッジから供給される液体を貯留する貯留室と、
前記貯留室内に配され、前記貯留室に貯留される液体よりも比重が小さいフロートと、被検知部と、前記フロートと前記被検知部との間に配される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能である回動部材と、
前記被検知部を検知する検知部と、
を備え、
前記回動部材は、前記貯留室の内部に貯留する液体の量が少なくなるにしたがって、前記被検知部の位置が、第3の位置から第2の位置を経由して第1の位置まで、前記回動軸を中心に回動可能であり、
前記カートリッジが、前記貯留室と接続された際の初期状態として、前記被検知部が前記第1の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、
前記被検知部が第2の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され、
前記被検知部が前記第3の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、
前記検知部は、前記被検知部を検知した場合と検知していない場合とで異なるレベルの信号を出力するように構成され、
前記検知部からの出力の変化に応じて前記貯留室に貯留されている液体の残量を
3段階で判定する制御部を備え
る、ことを特徴とす
る液体吐出装置。
【請求項3】
前記被検知部は、前記第1の位置から前記第3の位置までの範囲に移動可能であり、
前記被検知部が回動する方向における前記被検知部の幅は、前記範囲より狭い、請求項1
または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記回動軸の延在する方向と交差する方向に前記被検知部が延びている、請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記回動軸は、前記貯留室の底面から所定の高さ離れている、請求項
4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記所定の高さは、前記フロートが前記回動軸よりも前記貯留室の底面方向に下がることが可能な高さである、請求項
5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部が判定した結果を表示する表示部をさらに備える、請求項
1乃至
6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出装置に配された貯留室と接続可能であり、前記貯留室に供給する液体を貯留するカートリッジであって、
前記カートリッジ内に配され、前記カートリッジに貯留される液体よりも比重が小さいフロートと、被検知部と、前記フロートと前記被検知部との間に配される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能である回動部材を備え、
前記回動部材は、前記カートリッジの内部に貯留する液体の量が少なくなるにしたがって、前記被検知部の位置が、第1の位置から第2の位置を経由して第3の位置まで、前記回動軸を中心に回動可能であり、
前記カートリッジが、前記貯留室と接続された際の初期状態として、前記被検知部が前記第1の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記貯留室の外部に備えられている検知部によって検知されず、
前記被検知部が前記第2の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され、
前記被検知部が前記第3の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され
ず、
前記検知部は、前記被検知部を検知した場合と検知していない場合とで異なるレベルの信号を出力するように構成され、
前記貯留室の外部に備えられた制御部によって、前記検知部からの出力の変化に応じて前記被検知部の位置が3段階で判定される、ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出装置に配された貯留室と接続可能であり、前記貯留室に供給する液体を貯留するカートリッジであって、
前記カートリッジ内に配され、前記カートリッジに貯留される液体よりも比重が小さいフロートと、被検知部と、前記フロートと前記被検知部との間に配される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能である回動部材を備え、
前記回動部材は、前記カートリッジの内部に貯留する液体の量が少なくなるにしたがって、前記被検知部の位置が、第1の位置から第2の位置を経由して第3の位置まで、前記回動軸を中心に回動可能であり、
前記カートリッジが、前記貯留室と接続された際の初期状態として、前記被検知部が前記第1の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記貯留室の外部に備えられている検知部によって検知されず、
前記被検知部が前記第2の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され、
前記被検知部が前記第3の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、
前記検知部は、前記被検知部を検知した場合と検知していない場合とで異なるレベルの信号を出力するように構成され、
前記貯留室の外部に備えられた制御部によって、前記検知部からの出力の変化に応じて前記貯留室に貯留されている液体の残量が3段階で判定される、ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項10】
前記被検知部は、前記第1の位置から前記第3の位置までの範囲に移動可能であり、
前記被検知部が回動する方向における前記被検知部の幅は、前記範囲より狭い、請求項
8または9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記回動軸の延在する方向と交差する方向に前記被検知部が延びている、請求項
8乃至10のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記回動軸は、前記カートリッジの底面から所定の高さ離れている、請求項
11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記所定の高さは、前記フロートが前記回動軸よりも前記カートリッジの底面方向に下がることが可能な高さである、請求項
12に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置およびカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、インクを貯留するインク貯留室と、インク貯留室から供給されたインクをノズルから吐出する記録ヘッドとを備えるインクジェット記録装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、インク貯留室に貯留されたインクの残量を検知するために、インク貯留室内に回動可能に支持された回動部材を備えている。この回動部材は、インクよりも比重が小さいフロートと、センサによって検知される被検知部とを有している。そして、インク貯留室に貯留されたインクの液面が所定高さより上方にある場合、回動部材は、インクの浮力によって所定位置に位置し、被検知部がセンサで検知される。インク貯留室に貯留されたインクの液面が所定高さ以下となると、回動部材は重力によって回動し、被検知部がセンサで検知されなくなる。特許文献1では、このようにして、インク貯留室に貯留されたインクの残量を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、被検知部がセンサで検知されているか否かの2つのインクの残量状態しか把握できない。このため、詳細なインク残量の情報をユーザに与えることができない。
【0005】
従って、本開示は、センサ数を増やすことなく、インク残量の検知を詳細に行うことが可能な液体吐出装置およびカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る液体吐出装置は、液体を貯留するカートリッジと接続可能であり、前記カートリッジから供給される液体を貯留する貯留室と、前記貯留室内に配され、前記貯留室に貯留される液体よりも比重が小さいフロートと、被検知部と、前記フロートと前記被検知部との間に配される回動軸を有し、前記回動軸を中心に回動可能である回動部材と、前記被検知部を検知する検知部と、を備え、前記回動部材は、前記貯留室の内部に貯留する液体の量が少なくなるにしたがって、前記被検知部の位置が、第3の位置から第2の位置を経由して第1の位置まで、前記回動軸を中心に回動可能であり、前記カートリッジが、前記貯留室と接続された際の初期状態として、前記被検知部が前記第1の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、前記被検知部が第2の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知され、前記被検知部が前記第3の位置に存在するとき、前記被検知部は、前記検知部によって検知されず、前記検知部は、前記被検知部を検知した場合と検知していない場合とで異なるレベルの信号を出力するように構成され、前記検知部からの出力の変化に応じて前記被検知部の位置を3段階で判定する制御部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、センサ数を増やすことなく、インク残量の検知を詳細に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】インクカートリッジとインク貯留室とを示す図である。
【
図4】インク貯留室にインクが充填され始めた状態の図である。
【
図5】インク貯留室へのインク充填が完了した状態の図である。
【
図6】インク貯留室のインク残量が減っている状態の図である。
【
図7】インク貯留室のインク残量がほとんど残っていない状態の図である。
【
図8】センサからの信号レベルとインク残量判定の結果を示す図である。
【
図9】インクカートリッジとインク貯留室とを示す図である。
【
図10】インクカートリッジとインク貯留室とを接続させた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態を説明する。尚、以下の実施形態は、本開示事項を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本開示事項の解決手段に必須のものとは限らない。また、本実施形態に記載されている構成要素の相対位置、形状などは、特に限定していない限り、あくまで例示である。
【0010】
<<第1実施形態>>
<記録装置の構成>
本実施形態では、液体吐出装置として、記録媒体に対してインク(液体)を吐出して記録するインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)を例として説明することとする。
【0011】
図1は、本実施形態の記録装置10の概略を説明する図である。
図1(a)は、記録装置10の斜視図であり、
図1(b)は、記録装置10の記録部14の構成を説明する断面図である。尚、
図1に示す記録装置は、一例に過ぎず、この形態に限定されるものではない。
【0012】
図1に示す記録装置10は、原稿台にセットされた原稿を読み取り可能な読取部12と、読取部12で読み取った情報または外部装置から入力された情報などに基づいて、記録媒体に記録を行う記録部14とを備える、所謂、複合機である。表示部17は、記録装置10の各種情報を表示する。読取部12は、記録装置10の上部に位置する。記録部14は、記録装置10の下部に位置する。
【0013】
記録部14は、記録媒体Mを収容する収容トレイ16と、収容トレイ16に収容された記録媒体Mを給送する給送ローラ18と、給送される記録媒体Mを記録ヘッド26による記録位置までガイドするガイド部20とを備えている。また、記録部14は、ガイド部20を介して給送された記録媒体Mを搬送する搬送ローラ22と、搬送ローラ22により搬送される記録媒体Mを支持するプラテン24と、プラテン24に支持される記録媒体Mにインクを吐出する記録ヘッド26とを備えている。さらに、記録部14は、記録された記録媒体Mを排出トレイ28に排出する排出ローラ30と、チューブ(不図示)を介して記録ヘッド26に供給するインクを貯留するインク貯留室200とを備えている。
【0014】
吐出ヘッドである記録ヘッド26は、複数色のインクを吐出可能であってもよいし、単色のインクのみを吐出可能であってもよい。また、記録前後の画像に所定の効果を付与するための処理液を吐出可能な構成であってもよい。複数種類のインク(処理液を含む)を吐出する場合には、それぞれ異なる種類のインクを貯留するインク貯留室200が複数設けられることとなる。記録ヘッド26は、キャリッジ34に搭載されている。キャリッジ34は、X方向に往復移動可能に構成されている。収容トレイ16に収容された記録媒体Mは、給送ローラ18により-Y方向に搬送され、ガイド部20によってUターンして、搬送ローラ22により+Y方向に搬送される。
【0015】
記録装置10では、記録ヘッド26がキャリッジ34を介してX方向に移動する際に、プラテン24に支持された記録媒体Mに対してインクを吐出して、記録媒体M上に1走査分の記録を行う記録動作を行う。次に、記録媒体を+Y方向に所定量だけ搬送し、記録媒体Mにおける記録ヘッド26と対向する位置に、まだ何も記録されていない領域を位置させる搬送動作を行う。その後、再度記録動作を行う。このようにして、記録装置10では、記録動作と搬送動作とを繰り返し実行することで、記録媒体Mに対して所定の画像を記録することとなる。
【0016】
尚、本実施形態では、キャリッジ34をX方向に往復移動させながら記録媒体Mにインクを吐出する、所謂、シリアルタイプの記録ヘッド26を例に挙げて説明するが、この例に限られない。例えば、記録媒体Mの幅方向を包含するように吐出口が形成されている、所謂、ラインヘッドタイプの記録ヘッドを用いる記録装置であってもよい。
【0017】
<ブロック図>
図2は、記録装置10の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、記録装置10は、制御部40、記録ヘッド26、モータ46、およびセンサ250を有する。また、記録装置10は、コンピュータ、スマートフォン、またはタブレットなどのホスト50と通信可能に構成されている。制御部40は、CPU41、ROM42、コントローラ43、RAM44、モータドライバ45、記録ヘッドドライバ47、およびEEPROM49を有する。
【0018】
CPU(中央処理装置)41は、ROM42に記憶された各種プログラムに従って、コントローラ43を介して記録装置10における各機構の制御を行う。ROM42は、各種のプログラムを記憶する。RAM44は、各種データの一時的な保存をしたり処理を実行したりする際のワークエリアとして使用される。CPU41は、ホスト50から受信した画像データを、記録装置10で記録可能な記録信号に変換するための画像処理を行う。CPU41は、画像処理した情報などに基づいて、モータドライバ45を介して各種のローラを回転駆動させるためのモータ46を駆動するとともに、記録ヘッドドライバ47を介して記録ヘッド26を駆動して、記録媒体に画像を記録する。尚、
図2では、理解を容易にするために、記録装置10における各種モータをモータ46で示し、各モータを駆動するモータドライバをモータドライバ45として示している。制御部40は、電気的に書き込み可能なEEPROM49を備えている。EEPROM49には、各種の設定値または更新されるデータが格納されている。EEPROM49に格納されたデータは、コントローラ43またはCPU41によって制御パラメータとして用いられる。センサ250は、後述するように、インク貯留室200の残量を検知するために用いられる。
【0019】
尚、
図2は、概略的な構成を示したものであり、他の構成が含まれていてもよい。また、
図2では、記録装置10とホスト50とが別装置である例を示しているが、ホスト50が記録装置10に組み込まれていてもよい。
【0020】
<インクカートリッジおよびインク貯留室>
図3は、本実施形態に係るインクカートリッジ100とインク貯留室200とを示す図である。
図3では、1色分のインクカートリッジ100とインク貯留室200とのセットを示している。
図4は、インクカートリッジ100とインク貯留室200と接続して、インク貯留室200にインクが充填され始めた状態の図である。
図5は、
図4の状態からさらにインクが充填され、インク貯留室200へのインク充填が完了した状態の図である。
図6は、インクカートリッジ100のインクが無く、インク貯留室200のインク残量が減っている状態の図である。
図7は、
図6の状態からさらにインクが使用され、インク貯留室200のインク残量がほとんど残っていない状態の図である。以下、
図3を中心にしつつ、
図3から
図7を適宜参照して、インクカートリッジ100とインク貯留室200とを説明する。
【0021】
インクカートリッジ100は、インク130が貯留される容器であり、大気連通口105とインク供給部140とを有する。インクカートリッジ100とインク貯留室200とは接続可能に構成されている。インクカートリッジ100のインク供給部140をインク貯留室200に接続することで、インク貯留室200内にインク130が供給される(
図4参照)。
【0022】
記録装置10に設けられたインク貯留室200には、インクカートリッジ100のインク供給部140と接続するための接続ニードル150が設けられている。接続ニードル150を介してインクカートリッジ100内のインク130がインク貯留室200内へ流入する。インク貯留室200に溜められたインクは、例えばインク貯留室200の底面270に設けられた流出口(不図示)からインクチューブ(不図示)を通じて記録ヘッド26へ供給される。また、インク貯留室200は、大気連通口205を備える。
【0023】
インク貯留室200は、回動可能に支持された回動部材210を内部に備えている。また、インク貯留室200は、インク貯留室内部のインクの残量を検知するためのセンサ250を備える。
【0024】
<回動部材>
回動部材210は、インク130よりも比重が小さいフロート220と、センサ250によって検知される被検知部240とを備えている。インク貯留室200に貯留されたインクの液面が所定の高さ(例えば
図3の高さA)よりも高くなると、回動部材210は、インクの浮力によって
図4の方向160の向きに回動する。一方、インク貯留室200に貯留されたインクの液面が所定の高さ(例えば
図3の高さB)より低くなると、回動部材210は、重力によって
図6の方向170の向きに回動する。このような回動部材210の回動によって、回動部材210の上方の先端部分に設けられている被検知部240が移動する。この被検知部240の移動が、センサ250によって検知される。これにより、インク貯留室200に貯留されているインクの残量が検知されることになる。本実施形態では、後述するように、回動部材210の回動範囲の概略中間に相当する位置にセンサ250が設けられている。これにより、インク貯留室200のインク残量を3段階で検知することが可能となる。詳細は、後述する。
【0025】
本実施形態の回動部材210は、インク貯留室200の底面270から上方へ延びた位置に配置された回動軸260を軸として回動する。回動軸260の延在方向(軸方向)と交差する方向に、被検知部240が配されている。インク貯留室200の底面270と回動軸260との距離を所定値よりも離すことで、回動部材210の回動範囲が広がり、被検知部240の移動範囲が広がる。これにより、被検知部240の移動範囲の中間に相当する位置にセンサ250を配置することが容易になる。回動軸260の高さ位置は、接続ニードル150の孔の位置と概略等しい位置が好ましいが、インク貯留室200の底面270よりも上方であればよい。また、回動部材210の回動範囲の概略中間の位置に設けられたセンサ250で被検知部240が検知できれば、回動軸260の高さは、必ずしも底面270より上方でなくてもよい。本実施形態では、回動軸260の高さ位置は、フロート220が回動軸260よりもインク貯留室200の底面方向に下がることが可能な位置に配されている。
【0026】
<センサ>
本実施形態のセンサ250は、光学的な検知を行うものである。即ち、センサ250は、発光部及び受光部(いずれも不図示)を備える。発光部及び受光部は、
図3の紙面方向手前から奥方向に間隔を空けて配置されている。センサ250は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて、異なる検知信号を出力する。例えば、センサ250は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号を、制御部40へ出力する。尚、ローレベル信号とは、「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。一方、センサ250は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号を制御部40へ出力する。ハイレベル信号とは、「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。
【0027】
<インク充填時>
これまで構成を説明してきた
図3は、工場出荷時の記録装置10(インク貯留室200)を示している。
図3の状態からインクカートリッジ100とインク貯留室200とを接続すると、
図4に示す状態を経て、
図5に示す状態に遷移することになる。
【0028】
図3に示すように、工場出荷時の記録装置10では、インク貯留室200内のインクが空である。従って、当然のことながら、インクの液面は、所定高さA
未満である。そのため、被検知部240は、センサ250の発光部と受光部との間から外れた位置にある。この位置を第1の位置という。この状態においてセンサ250は、発光部から出力された光が受光部で受光できる(または減衰されずに受光部に到達する)。従って、センサ250は、ハイレベル信号を制御部40へ出力する。
【0029】
制御部40は、現在の記録装置10の状態(例えば、工場出荷時など)をメモリ(例えばEEPROM49)に格納している。制御部40は、記録装置10の状態と、センサ250からの信号レベルとに基づいてインク残量を3段階で把握することができる。
【0030】
図8は、センサ250からの信号レベルとインク貯留室200内のインク量と制御部40で行われるインク残量判定の結果とを示す図である。
図8(a)は、インク貯留室200内のインク量を示す。
図8(b)は、センサ250からの信号レベルを示す。
図8(c)は、制御部40で行われるインク残量判定の結果を示す。
図8において横軸は、時間を示しており、
図8(a)から(c)において共通の時間軸を示している。以下、
図8も適宜参照しながら説明する。
【0031】
図3に示すような工場出荷時の記録装置10では、制御部40は、工場出荷時の初期設定としてインク液面が所定高さA
未満である判定(例えば、Empty)を出力する(
図8のt0)。即ち、記録装置10の状態が工場出荷時であることと、センサ250からの信号がハイレベル信号であることとに基づいて、制御部40は、インク貯留室200内のインク量をEmpty(第1の段階)であると判定する。尚、制御部40は、この判定出力結果を記録装置10の表示部17等に表示して、ユーザにインク残量情報を提供することができる。
【0032】
次に、
図4に示すように、ユーザがインクカートリッジ100をインク貯留室200に接続して、インク貯留室200内にインク130を充填する場合を説明する。
図4のように、インクカートリッジ100とインク貯留室200とがインク供給部140と接続ニードル150とを介して接続されると、インクカートリッジ100内のインク130がインク貯留室200内に流入する。流入したインクにより、フロート220が受ける浮力が重力に勝ることで、回動部材210が方向160の向きに回動し始める。インク貯留室200内の液面が所定高さA以上になると、被検知部240がセンサ250の発光部と受光部との間に位置される。この位置を第2の位置という。被検知部240により発光部と受光部との間が遮蔽されることにより、発光部から出力された光が受光部で受光できない(または減衰されて受光部に到達する)ため、センサ250は、ローレベル信号を制御部40へ出力する。センサ出力のハイレベルからローレベルへの信号変化を受けた制御部40は、インク液面が所定高さA以上かつ所定高さB
未満である判定(例えば、Low)を出力する(
図8のt1)。即ち、制御部40は、インク貯留室200内のインク量をLow(第2の段階)であると判定し、判定出力結果を表示部17等に表示する。尚、ここで、所定高さBは、所定高さAよりも高い位置である。
【0033】
次に、
図5に示すように、さらに、インクカートリッジ100内のインク130がインク貯留室200内に流入し続けると、回動部材210は方向160の向きに回動し続ける。
図5に示すように、インク貯留室200内の液面が所定高さB以上になると、再び、被検知部240は、センサ250の発光部と受光部との間から外れた位置まで回動する。この位置を第3の位置という。第3の位置では、被検知部240による遮蔽が解消されるため、センサ250は、ハイレベル信号を制御部40へ出力する。センサ出力のローレベルからハイレベルへの信号変化を受けた制御部40は、インク液面が所定高さB以上である判定(例えば、High)を出力する(
図8のt2)。即ち、制御部40は、インク貯留室200内のインク量をHigh(第3の段階)であると判定し、判定出力結果を表示部17等に表示する。
【0034】
このように、センサ250が被検知部240の回動範囲(移動範囲)の概略中間に位置していることにより、第1の位置から第2の位置を経由して、第3の位置に被検知部240が位置していることを制御部40で特定することができる。
【0035】
尚、上記の例では、インク貯留室200内のインク量の変化があった場合に表示部17等に表示出力を行う例を示したが、表示出力はしてもよいし、しなくてもよい。例えば、インク量がHigh(第3の段階)にある場合には、インク量を表示出力しなくてもよい。
【0036】
<インク吐出時>
次に、インク液面が所定高さB以上の状態(例えば、
図5の状態)から、記録ヘッド26を介してインクを吐出させた場合を説明する。インク貯留室200から流出口を介して記録ヘッド26へインクが供給されることで、インクカートリッジ100及びインク貯留室200内のインクの液面が低下していく。すると、
図6に示すように、インク貯留室200内の液面が所定の高さBより低くなる。この状態において、回動部材210のフロート220に掛かる浮力が減少し、重力が勝る。それにより、回動部材210が方向170の向きに回動し、被検知部240は、センサ250の発光部と受光部との間の位置まで移動する。被検知部240により発光部と受光部とが遮蔽されるため、センサ250は、ローレベル信号を制御部40へ出力する。
【0037】
インクが充填された後、記録装置10は、インク充填済みの状態となる。このインク充填済みの状態は、EEPROM49に記憶されている。インク充填済みの状態は、インク充填後に所定のユーザ操作をトリガーとしてEEPROM49に記憶されてもよい。あるいは、初期状態である工場出荷時から、信号レベルのハイレベルからローレベルへの信号変化およびそのローレベルからハイレベルへの信号変化を検知したことをトリガーとしてEEPROM49にインク充填済み状態が記憶されてもよい。その他、任意の方法でインク充填済み状態であることがEEPROM49に記憶されてもよい。
【0038】
ローレベル信号を受けた制御部40は、インク吐出時における、センサ出力のハイレベルからローレベルへの信号変化に対応して、インク液面が所定高さB
未満かつ所定高さA以上である判定(例えば、Low)を出力する(
図8のt3)。例えば、このt3の時点で、記録装置10の表示部17には、ユーザに対して新しいインクカートリッジの交換準備を促す表示がされる。
【0039】
特許文献1のように、インク貯留室200内のインク量を、2段階で検知するような装置では、インク貯留室200内にインクがほぼ無い状態で、インクカートリッジ交換の表示をする形態を採らざるを得ない。そのため、新しいインクカートリッジを準備する猶予がない状態である。また、ユーザの使用状況によっては、インクが空のまま放置されてしまいインク貯留室200内の残留したインクが増粘し、最終的には固着して動作不良を起こす等の可能性がある。これに対して、本実施形態の記録装置10では、インク貯留室200内にある程度のインクが残っている状態で、ユーザに新しいインクカートリッジの準備を始めさせることができる。
【0040】
図6の状態から、さらに記録ヘッド26からインクを吐出させ続けると、インク貯留室200内の液面が低下していく。すると、
図7に示すように、回動部材210は、方向170の向きに回動し続け、被検知部240はセンサ250の発光部と受光部との間から外れた位置まで回動する。被検知部240による遮蔽が解消されるため、センサ250は、ハイレベル信号を制御部40へ出力する。この信号を受けた制御部40は、インク吐出時における、センサ出力のローレベルからハイレベルへの信号変化に対応して、インク液面が所定高さA
未満である判定(例えば、Empty)を出力する(
図8のt4)。
【0041】
図8のt4の時点では、記録装置10の表示部17には、ユーザに対して新しいインクカートリッジへの交換を促す表示が出力される。一段階前のt3の時点において既に交換準備を促す表示をしているため、t4の時点では、新しいインクカートリッジを準備する時間が確保できている状態である。このため、すぐにユーザがインクカートリッジを交換できる状態である可能性が高い。そのため、上述したようなインク固着による動作不良等を起こす可能性を軽減することができる。
【0042】
尚、被検知部240の移動方向における被検知部240の幅を変えると、インク残量判定の間隔を変えることができる。例えば、被検知部240の幅を
図3に示す例よりもより広く(長く)すれば、被検知部240がセンサ250に検知されている間隔が長くなる。つまり、上述したインク残量判定がLowである間隔を長く確保できるので、ユーザが新しいインクカートリッジへの交換準備の時間を長く確保できる。ただし、被検知部240の移動範囲より被検知部240の幅を広くしてしまうと、センサ250の発光部と受光部との間に常に被検知部240が存在してしまうことになる。このため、被検知部240の幅は、被検知部240の移動方向における移動範囲よりも狭くするとよい。
【0043】
また、本実施形態では、回動部材の回動によってインク残量を検知する例を説明したが、これに限られない。例えば、インク液面に浮かべた浮き(図示せず)の移動によってインク残量を検知してもよい。浮きも、インク130よりも比重が軽いフロートの一種である。インク貯留室200内に浮きを収容し、インク残量、即ち、液面に応じて、浮きが鉛直方向に沿って移動する。この浮きの位置をセンサ250で検知してもよい。即ち、浮きが、フロートであり、かつ被検知部として機能することになる。そして、浮きの移動範囲の中間に相当する位置にセンサ250を配置することで、インク残量を3段階に検知することができる。このように、回動部材ではなく、浮きなどの浮遊体そのものを、所定の方向へ移動する移動部材として用いてもよい。そして、移動部材による移動をセンサ250で検知することで、インク残量を3段階に検知してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、インクジェット記録装置の状態が、工場出荷時の状態を初期状態とし、センサ250の信号レベルの変化に応じて3段階のインク量を判定する例を説明したが、この限りではない。例えば、センサ250での信号レベルの検知は、電源オンの場合に行われるが、電源オフの場合に初期充填をした場合でも、その後、ユーザ指示などにより、充填済みの状態がEEPROM49に記憶されていれば、その状態を用いて処理してもよい。つまり、本実施形態では、
図8において時刻t0の状態が工場出荷時の状態であり、この時刻t0を基準とした制御部40の判定を説明したが、時刻tmを基準とした制御部40の判定が行われてもよい。また、インクカートリッジを交換して、インクを再充填した場合には、
図8で示した制御部40の判定が再度行われることになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサ数を増やすことなく、インク残量の検知を詳細に行うことが可能となる。即ち、本実施形態では、インク貯留室200に貯留されたインク残量の検知を3段階で行うことが可能となる。このため、インク残量の詳細な情報をユーザに与えることが可能となる。
【0046】
<<第2実施形態>>
第1実施形態では、記録装置10のインク貯留室200内に回動部材210が配され、インク貯留室200内のインク量を検知する例を説明した。本実施形態では、インクカートリッジ100内に回動部材210が配され、インクカートリッジ100内のインク量を検知する例を説明する。
【0047】
図9は、本実施形態に係るインクカートリッジ100とインク貯留室200とを示す図である。
図9は、
図3と同様に、1色分のインクカートリッジ100とインク貯留室200とのセットを示している。
【0048】
インク貯留室200には、回動部材が設けられていない。また、インク貯留室200の外部には、インクカートリッジ100が接続されたときにインクカートリッジ100内の被検知部240を検知するセンサ250が配されている。
【0049】
インクカートリッジ100は、インクカートリッジ内部に回動可能に支持された回動部材210を備えている。第1実施形態と同様に、回動部材210は、インク130よりも比重が小さいフロート220と、センサ250によって検知される被検知部240とを備えている。インクカートリッジ100内のインク液面の高さに応じて回動部材210が回動し、それに対応して被検知部240が移動する。
図9において実線で示した回動部材210の位置が、
図9に示すようにインクカートリッジ100内の液体がHighの状態となる。また、
図9では、点線の位置P2で示した回動部材210が、Lowの状態を示し、位置P3で示した回動部材210が、Emptyの状態を示している。
【0050】
図10は、インクカートリッジ100とインク貯留室200とを接続させた状態の図である。
図10のように、インク貯留室200には、インクカートリッジ100をインク貯留室200に接続すると被検知部240の移動範囲の中間に相当する位置にセンサ250が配置されている。このような構成を用いることで、第1実施形態で説明した例と同様に、インク残量の検知を3段階で行うことが可能となる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサ数を増やすことなく、インク残量の検知を詳細に行うことが可能となる。即ち、本実施形態では、インクカートリッジ100に貯留されたインク残量の検知を3段階で行うことが可能となる。このため、インク残量の詳細な情報をユーザに与えることが可能となる。
【0052】
尚、本実施形態では、回動部材210を例に説明したが、第1実施形態で説明したように、浮きを用いてもよい。
【0053】
<<その他の実施形態>>
上述した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた形態としてもよい。即ち、インク貯留室200およびインクカートリッジ100の両方に回動部材をそれぞれ設けて、両方のインク残量を検知してもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 インクカートリッジ
200 インク貯留室
210 回動部材
220 フロート
240 被検知部
250 センサ