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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】円筒カットアウトの下部電極
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/58 20060101AFI20240213BHJP
   H01H 85/02 20060101ALI20240213BHJP
   H01H 85/042 20060101ALI20240213BHJP
   H01H 85/20 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01H85/58
H01H85/02 S
H01H85/042
H01H85/20 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021183662
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023071072
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克昌
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博光
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-044748(JP,U)
【文献】米国特許第05289154(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/58
H01H 85/02
H01H 85/042
H01H 85/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、高圧機器側配線と電力ヒューズの双方に接続させる下部電極であって、
下部電極は、
円筒カットアウト本体に固定されている台座部と、
台座部に固定されており、電力ヒューズの下部側電極部の外周面に接触する接触部と、
台座部に取り付けられており、円筒カットアウト本体の位置変動によって電力ヒューズに対して電力ヒューズが円筒カットアウト本体の外部に移動する離脱力が加わったときに、電力ヒューズの下部側電極部を保持するロック機構と、を備えており、
ロック機構は、前記接触部と接触して前記接触部の変形を規制する規制部材を有しており、
規制部材は、円筒カットアウト本体の位置変動に伴って位置変動したときに規制部材自身に生じる慣性力によって台座部に対する位置が変化する、円筒カットアウトの下部電極。
【請求項2】
前記接触部は、電力ヒューズを円筒カットアウト本体内に着脱する際に径方向に変形する構造を有しており、
ロック機構は、電力ヒューズに前記離脱力が加わったときに、前記接触部の径方向の変形を規制する請求項1に記載の下部電極。
【請求項3】
下部電極の周方向に複数の前記接触部が設けられており、
ロック機構は、リング状の環状部材を備えており、
環状部材の周方向の複数個所に、規制部材が設けられている請求項1又は2に記載の下部電極。
【請求項4】
規制部材が、前記接触部に対応する位置において環状部材の表面から突出する状態で環状部材に設けられている請求項3に記載の下部電極。
【請求項5】
規制部材は、リング状の環状部材である請求項1又は2に記載の下部電極。
【請求項6】
環状部材が、ばね部材を介して台座部に取り付けられている請求項3から5のいずれか一項に記載の下部電極。
【請求項7】
環状部材に、ばね部材の付勢力に抗して台座部に対する環状部材の位置決めを行う位置決め部材が設けられている請求項3又は4を引用する請求項6に記載の下部電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、円筒カットアウトで用いられる下部電極に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、円筒カットアウトに関する技術が開示されている。円筒カットアウトは、腕金等の取付金具を用いて被取付部(例えば電柱)に取り付けられる。円筒カットアウトでは、事故時の大電流を遮断することにより、電力ヒューズ(ヒューズ筒)内のヒューズからガスが発生する。ヒューズから発生したガスは、円筒カットアウトの内部から円筒カットアウトの外部へ放出される。すなわち、事故時の大電流を遮断することにより、放出ガスが発生する。放出ガスが発生すると、円筒カットアウトに上方への推力(円筒カットアウトを上方へ移動させる力)が加わる。円筒カットアウトに加わる上方への推力は、大電流の遮断が完了すると(放出ガスの発生が停止すると)喪失する。特許文献1では、取付金具を用いて円筒カットアウトを被取付部に固定することにより、円筒カットアウトが上方に移動する際に取付金具が変形し、円筒カットアウトに加わる推力のエネルギーを減少させている。その結果、円筒カットアウトが上方から下方へ移動する速度(円筒カットアウトを振り下げる速度)を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭57-029491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1の円筒カットアウトは、取付金具を用いて円筒カットアウトを被取付部に固定することにより、円筒カットアウトに加わる推力のエネルギーを減少させ、円筒カットアウトの上方から下方への移動速度を低減している。しかしながら、円筒カットアウトの下方への移動が終了すると、次に、取付金具の弾性力によって円筒カットアウトが上方に移動する。すなわち、円筒カットアウトは、放出ガスの発生及び停止により、上下に振動運動(位置変動)を行う。
【0005】
円筒カットアウトの上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウトの下方への移動が終了して上方に移動を開始し、上方への移動速度が増加する時点までの間、電力ヒューズ(ヒューズ筒)に対して大きな力が加わる。具体的には、電力ヒューズに対し、電力ヒューズ(電力ヒューズの下部側電極部)が円筒カットアウトの下部電極から離脱する力が加わる。電力ヒューズに離脱力が加わった際、さらに電力ヒューズ(ヒューズ筒)に取り付けられているばねの付勢力により絶縁筒が下方に移動する力が加わると、電力ヒューズに対する下部電極の挟持力を上回り、電力ヒューズが下部電極から外れることが起こり得る。そのため、円筒カットアウトが上下に振動運動を行った際に、電力ヒューズ(ヒューズ筒)が円筒カットアウトの下部電極から外れることを防止する技術が必要とされている。本明細書は、円筒カットアウトの動作に伴って電力ヒューズが円筒カットアウトの下部電極から外れること防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する下部電極は、配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、高圧機器側配線と電力ヒューズの双方に接続させるものである。下部電極は、円筒カットアウト本体に固定されている台座部と、台座部に固定されている接触部と、台座部に取り付けられているロック機構を備えていてよい。接触部は、電力ヒューズの下部側電極部の外周面に接触してよい。また、ロック機構は、円筒カットアウト本体の位置変動によって電力ヒューズに対して電力ヒューズが円筒カットアウト本体の外部に移動する離脱力が加わったときに、電力ヒューズの下部側電極部を保持してよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】円筒カットアウトの断面図を示す。
図2】第1実施例の下部電極の斜視図を示す。
図3】第1実施例の下部電極の部分断面図を示す。
図4】第1実施例の下部電極で用いられるロック機構の構成部品(環状部材)の斜視図を示す。
図5図4に示す環状部材にばね部材を取り付けた状態の断面図を示す。
図6図4に示す環状部材に規制部材を取り付けた状態の断面図を示す。
図7】第1実施例において、円筒カットアウトが上下動したときの、ロック機構(環状部材)の動作を説明するための断面図を示す。
図8】第1実施例において、円筒カットアウトが上下動したときの、接触部とロック機構の関係を説明するための断面図を示す。
図9】環状部材と台座部の位置関係を説明するための断面図を示す。
図10】第2実施例の下部電極の斜視図を示す。
図11】第2実施例の下部電極で用いられるロック機構の構成部品(環状部材)の平面図を示す。
図12】第2実施例の下部電極で用いられるロック機構の部分断面図を示す。
図13】第2実施例において、円筒カットアウトが上下動したときの、接触部とロック機構の関係を説明するための断面図を示す。
図14】第3実施例の下部電極で用いられるロック機構の構成部品(環状部材)の平面図を示す。
図15】第3実施例において、円筒カットアウトが上下動したときの、接触部とロック機構の関係を説明するための断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示する下部電極は、配電線と高圧機器側配線に接続される円筒カットアウトにおいて、高圧機器側配線と電力ヒューズの双方に接続させる。下部電極は、円筒カットアウト本体の内部で、円筒カットアウト本体に固定されていてよい。下部電極は、円筒カットアウト本体に固定されている台座部と、台座部に固定されている接触部と、台座部に取り付けられているロック機構を備えていてよい。下部電極は、接触部とロック機構を台座部に取り付けた状態で、台座部を円筒カットアウト本体に固定することにより円筒カットアウト本体の内部に配置されてよい。接触部は、金属製であり、電力ヒューズの下部側電極部の外周面に接触してよい。また、接触部は、電力ヒューズの外周面(下部側電極部の外周面)を挟持してよい。ロック機構は、円筒カットアウト本体の位置変動によって電力ヒューズに対して電力ヒューズが円筒カットアウト本体の外部に移動する離脱力が加わったときに、電力ヒューズの下部側電極部を保持してよい。すなわち、ロック機構は、円筒カットアウト本体で放出ガスが発生し、円筒カットアウト本体が上下方向に振動運動を行ったときに、電力ヒューズの慣性力によって電力ヒューズが下部電極から外れることを規制してよい。この下部電極は、電力ヒューズが下部電極から外れることを防止することにより、電力ヒューズが円筒カットアウト本体の外部に放出されること防止することができる。
【0009】
下部電極に設けられている接触部は、電力ヒューズを円筒カットアウト本体内に着脱する際に径方向に変形する構造を有していてよい。これにより、円筒カットアウト本体に対して電力ヒューズを挿入・引き抜きする際に、電力ヒューズの着脱を容易に行うことができる。また、ロック機構は、電力ヒューズに対して離脱力が加わったときに、接触部の径方向の変形を規制してよい。接触部の径方向の変形を規制することによって電力ヒューズが接触部に挟持され続け、電力ヒューズが下部電極から外れることを防止することができる。
【0010】
ロック機構は、電力ヒューズに対して離脱力が加わっていないときは接触部と非接触であるとともに、電力ヒューズに離脱力が加わったときに接触部と接触して接触部の変形を規制する規制部材を備えていてよい。このような規制部材を備えることにより、電力ヒューズの着脱を確実に容易に行うことができるとともに、電力ヒューズに対して離脱力が加わったときは、確実に電力ヒューズが下部電極から外れることを防止することができる。
【0011】
本明細書で開示する下部電極では、下部電極の周方向に複数の接触部が設けられていてよい。この場合、各接触部は、下部電極の周方向に等間隔(下部電極の中心に対して等角度の位置)に設けられていてよい。これにより、電力ヒューズをより確実に挟持することができる。また、ロック機構は、リング状の環状部材を備えており、環状部材の周方向の複数個所に、規制部材が設けられていてよい。規制部材は、各接触部に対応する位置(各接触部毎に)設けられていてもよいし、複数の接触部のうちの幾つかに対応する位置に設けられていてもよい。すなわち、複数の接触部のうち、電力ヒューズに離脱力が加わったときに規制部材と接触しない接触部が存在してもよい。但し、好ましくは、規制部材を各接触部に対応する位置(各接触部毎に)設け、電力ヒューズに離脱力が加わったときに、全ての接触部の変形が規制されることである。
【0012】
環状部材が、ばね部材を介して台座部に取り付けられていてよい。円筒カットアウトが静止しているときと、円筒カットアウトが上下動しているとき(特に、下方に移動した状態から上方に移動する状態に変化するとき)で、台座部の軸方向における環状部材(規制部材)の位置を変化させることができる。円筒カットアウトが静止している際に接触部が規制部材に接触することを確実に防止することができるとともに、円筒カットアウトが上下動している際に接触部を規制部材に確実に接触させることができる。
【0013】
規制部材が、接触部に対応する位置において環状部材の表面から突出する状態で環状部材に設けられていてよい。これにより、接触部を規制部材に確実に接触させることができる。例えば、ばね部材の劣化等により環状部材の軸方向位置が設計上の位置からずれた場合であっても、円筒カットアウトが下方に移動した状態から上方に移動する状態に変化したときに、接触部が規制部材に接触し、接触部の変形を規制することができる。
【0014】
環状部材に、ばね部材の付勢力に抗して台座部に対する環状部材の位置決めを行う位置決め部材が設けられていてよい。これにより、円筒カットアウトが静止しているときに、環状部材の軸方向位置が位置決めされ、接触部が規制部材に接触することを確実に防止することができる。
【0015】
環状部材と別部品の規制部材が、環状部材に取り付けられていてよい。環状部材と規制部材の材料、サイズ等を個別に選択することができるので、ロック機構の設計の自由度が増す。
【0016】
台座部の外周面に切欠部が設けられていてよい。また、環状部材の周方向の一部に、径方向外側に突出しており、切欠部に接触可能な突出部が設けられていてよい。環状部材が台座部に対して回転することを防止することができる。また、切欠部と突出部を利用し、環状部材が上下動する際、環状部材をスムーズに移動させることができる。
【実施例
【0017】
(円筒カットアウト)
図1を参照し、円筒カットアウト100の概略を説明する。円筒カットアウト100は、配電線路上に設けられ、変圧器等の高圧機器を保護するために用いられる。円筒カットアウト100は、磁器製の本体碍子(円筒カットアウト本体)8と、配電線側に接続される上部電極4と、機器側に接続される下部電極10と、上部電極4と下部電極10を接続している高圧溶断用ヒューズが内部に設けられているヒューズ筒6を備えている。ヒューズ筒6は、電力ヒューズの一例である。上部電極4は、上部モールドコーン3内の引出線2に接続されている。引出線2は、配電線に接続される。下部電極10は、下部モールドコーン13の引出線12に接続されている。
【0018】
円筒カットアウト100は、取付金具14によって、例えば電柱(図示省略)の上部側に取り付けられる。ヒューズ筒6は、本体碍子8の下方から本体碍子8に挿入、あるいは、取り外しされる。円筒カットアウト100では、電路に大電流が流れると、ヒューズ筒6内に設けられている高圧溶断用ヒューズ9が溶断し、高圧溶断用ヒューズ9からガスが生じる。高圧溶断用ヒューズ9で生じたガスは、矢印15に示すように、放出ガスとして本体碍子8の下部から本体碍子8外に移動する。放出ガスが本体碍子8外に移動すると、円筒カットアウト100に、矢印17の方向(上方)に移動する力(推力)が加わり、取付金具14が変形しながら円筒カットアウト100が上方に移動する。円筒カットアウト100では、放出ガスの発生により円筒カットアウト100が上方に移動することを許容することにより、本体碍子8からヒューズ筒6に加わる(あるいは、ヒューズ筒6から本体碍子8に加わる)衝撃力を低減することができる。
【0019】
円筒カットアウト100の上方への移動が終了すると、上方移動の反動(正確には、円筒カットアウト100に加わる重力と、取付金具14の弾性力)により、円筒カットアウト100に矢印18の方向(下方)に移動する力が加わる。その結果、円筒カットアウト100は、図1に示す状態(放出ガスが発生していない状態)よりも下方に移動する。さらに、円筒カットアウト100の下方への移動が終了すると、下方移動の反動(取付金具14の弾性力)により、円筒カットアウト100は、再度上方(矢印17方向)に移動する。このように、円筒カットアウト100では、放出ガスが発生すると、円筒カットアウト100が上下に振動運動を行う。
【0020】
円筒カットアウト100が下方(矢印18方向)へ移動すると、円筒カットアウト100内に配置されているヒューズ筒6も同時に下方へ移動し、ヒューズ筒6に下方へ移動し続ける慣性力が生じる。そのため、円筒カットアウト100の下方移動が停止しても、ヒューズ筒6は下方へ移動し続けようとする。あるいは、取付金具14の弾性力により円筒カットアウト100の下方移動の速度が低下しても、ヒューズ筒6は下方移動の速度を維持しようとする。ヒューズ筒6の慣性力により、ヒューズ筒6に対して下部電極10との係合を外す力(分離力)が生じる。特に、円筒カットアウト100の上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウト100の下方への移動が終了して上方への移動に変化して上方への移動速度が増加する時点までの間、ヒューズ筒6に対し、ヒューズ筒6(ヒューズ筒6の下部側電極部11)が円筒カットアウト100の下部電極10から離脱しようとする離脱力(下部電極10との係合を外す分離力)が加わる。特に、円筒カットアウト100が最も下方に位置するとき(下方への移動が終了し、上方への移動に変化する位置)に、離脱力は最大となる。
【0021】
従来の円筒カットアウトにおいて、上述した離脱力が最大となった場合でも、ヒューズ筒9の下部側電極部11を下部電極10が挟持する力(挟持力)を超えることはない。そのため、円筒カットアウトが上下に振動運動を行っても、ヒューズ筒9は下部電極10から外れることはない。しかしながら、従来の円筒カットアウトでは、上述した最大の離脱力が発生したタイミングに、ばね16の付勢力により絶縁筒19が下方に移動する力(降下力)が偶然に加わると、ヒューズ筒6が下部電極10から分離する力(離脱力+降下力)が、ヒューズ筒9に対する下部電極10の挟持力を超える可能性がある。その結果、ヒューズ筒6が下部電極10から外れてしまう。詳細は後述するが、円筒カットアウト100では、円筒カットアウト100の振動運動が下方移動から上方移動へ変化する際、ヒューズ筒6が下部電極10から外れることを防止するロック機構が設けられている。そのため、ヒューズ筒9に最大の離脱力が発生したタイミングに、絶縁筒19の降下力が偶然に加わった場合でも、ヒューズ筒6が下部電極10から外れることを防止できる。なお、ロック機構は、下部電極10に設けられている。
【0022】
(下部電極:第1実施例)
図2から図9を参照し、下部電極10について説明する。図2に示すように、下部電極10は、円筒状の台座部60と、台座部60に固定されている電極部20と、台座部60内で台座部60に取り付けられているロック機構40を備えている。台座部60は、本体碍子8内に固定される(図1も参照)。台座部60の一端面(以下、上面と称する)に、電極部20が固定されている。電極部20は、台座部60の上面に嵌め込まれている。台座部60の外周面には、切欠部62が設けられている。下部電極10では、2個の切欠部62が、台座部60の軸心(中心軸)に対して対称の位置に設けられている。各切欠部62は、台座部60の他端面(以下、下面と称する)から台座部60の軸方向中間部分まで、台座部60軸心に沿って伸びている。台座部60の内面に、円錐台状のガイド部64が設けられている(図7を参照)。ガイド部64は、台座部60の内側面の一部(下方側)に設けられている。ガイド部64は、円筒カットアウト100の下方からヒューズ筒6を挿入する際、ヒューズ筒6の上部側電極部の先端部分を下部電極10の中心へ導くようガイドする。ガイド部64を設けることにより、台座部60の内面に、段部63が形成されている。
【0023】
電極部20は、台座部60に固定される固定部22と、リベット23によって固定部22に固定されている接触部24を備えている。接触部24は、固定部22を介して台座部60に固定されていると捉えることができる。下部電極10では、2個の接触部24が固定部22に固定されている。各接触部24は、台座部60の軸心に対して対称の位置に設けられている。また、各接触部24は、台座部60の周方向において、上述した切欠部62が設けられていない部分に位置している。なお、接触部24は、ヒューズ筒6を本体碍子8に挿入した際に、ヒューズ筒6の外周面(ヒューズ筒6に設けられている下部側電極部11の外周面)と接触する。より具体的には、接触部24は、ヒューズ筒6を本体碍子8に挿入した際に径方向外側に弾性変形し、その弾性力によってヒューズ筒6を挟持する。固定部22には、ねじ部22aが設けられている。ねじ部22aは、上述した切欠部62の上方部分に位置している。ねじ部22aには、引出線12のリード線12aの先端に設けた端子部12bがねじ留め(図1も参照)されている。
【0024】
図3を参照し、電極部20の形態について詳細に説明する。固定部22はリング状であり、中央に貫通孔28が設けられている。接触部24の一端が、固定部22の裏面にリベット23により固定されている。接触部24の中間部分は、貫通孔28を通じて固定部22の表面から突出し、ほぼ180度折れ曲がって再度固定部22の裏面側に伸びている(図2も参照)。各接触部24の他端には、係止部25が設けられている。係止部25は、固定部22の径方向内側に向けて円弧状に折り曲げて形成されている。係止部25は、ヒューズ筒6の下部側電極部11と接触し、ヒューズ筒6(下部側電極部11)を下部電極10に保持する。係止部25よりも他端側には、傾斜部27と先端部26が形成されている。傾斜部27は、下部電極10の上方に向かうに従って固定部22の径方向内側に向かうように、折り曲げて形成されている。傾斜部27が内側上方へ傾斜していることにより、ヒューズ筒6の下部側電極部11を下部電極10の中心へ導くことができる。先端部26は、固定部22の径方向外側に向けて折り曲げて形成されている。電極部20を台座部60に固定する(嵌めこむ)と、先端部26、係止部25及び傾斜部27は、台座部60内に位置する(図2も参照)。
【0025】
図4から図6を参照し、ロック機構40について説明する。ロック機構40は、リング状の環状部材42と、ばね部材54と、規制部材50を備えている。まず、図4を参照し、環状部材42について説明する。環状部材42は、リング状プレートであり、表裏面を貫通している貫通孔(第1貫通孔48a、第2貫通孔48b)が、周方向に複数形成されている。詳細は後述するが、第1貫通孔48aは規制部材50を取り付けるためのものであり、第2貫通孔48bはばね部材54を取り付けるためのものである。環状部材42の内周面45には、内径が他の部分より増大している拡径部46が設けられている。環状部材42では、2個の拡径部46が、環状部材42の軸心に対して対称の位置に設けられている。環状部材42の周方向において、拡径部46が形成されている各部分に2個の第1貫通孔48aが設けられている。すなわち、環状部材42は、4個の第1貫通孔48aを備えている。また、環状部材42の周方向において、拡径部46が設けられていない各部分(2個の拡径部46の間の部分)に2個の第2貫通孔48bが設けられている。環状部材42は、4個の第2貫通孔48bを備えている。
【0026】
さらに、環状部材42の外周面に、径方向外側に向けて突出している位置合わせ部44が設けられている。環状部材42では、4個の位置合わせ部44が、環状部材42の周方向の2箇所に、2個ずつ偏在して設けられている。位置合わせ部44が設けられている位置は、環状部材42の軸心に対して対称である。環状部材42の周方向の各箇所において、2個の位置合わせ部44は、間隔を有して設けられており、両者の間に凹部49が径方向内側に向けて形成されている。凹部49を、引出線12のリード線12aと端子部12bが通過する(図1も参照)。なお、位置合わせ部44は、拡径部46が設けられていない部分に設けられている。
【0027】
図5に示すように、第2貫通孔48bには、円柱状のばね固定部材52が嵌め込めれている。ばね固定部材52はリベットである。ばね固定部材(リベット)52の胴部52aの外周面に、ばね部材(コイルばね)54が嵌め込まれている。ばね固定部材52によって、ばね部材54が環状部材42に取り付けられる。図6に示すように、第1貫通孔48aには、円柱状の規制部材50が嵌め込めれている。規制部材50は、リベットであり、ばね固定部材52と同一部品である。なお、ロック機構40では規制部材50とばね固定部材52が同一部品であるが、規制部材50とばね固定部材52は、例えばサイズが異なる異部品であってもよい。
【0028】
図7及び図8を参照し、ロック機構40の動作を説明する。図7は、ロック機構40を台座部60に取り付けた状態であり、ばね部材54が現れる断面を示している。なお、図7では、図面の明瞭化のため、電極部20を簡略化して示している(図2の固定部22のみ示している)。ばね部材54の端部(ばね固定部材52に取り付けられている側とは反対側の端部)は、台座部60内に形成されているガイド部64の段部63に接している。
上述したように、ガイド部64の形状は円錐台状である。ばね部材54の端部をガイド部64の段部63に接触させることにより、台座部60に対するばね部材54の位置が規定され、台座部60に対するロック機構40の位置を常に所望の位置に保持することができる。円筒カットアウト100が静止している場合、ロック機構40は、台座部60の軸方向において、自重とばね部材54の伸張力がバランスした位置(実線の位置)に存在する。円筒カットアウト100が上下動(上下に振動運動)すると、ロック機構40は、慣性力によって台座部60に対して軸方向の位置が変化する。例えば、円筒カットアウト100の上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウトの下方への移動が終了して上方に移動を開始し、上方への移動速度が増加する時点までの間、ばね部材54が圧縮され、ロック機構40は、静止位置より下方(破線の位置)に位置する。
【0029】
図8は、ロック機構40を台座部60に取り付けた状態において、規制部材50が現れる断面を示している。ロック機構40が静止位置に存在する場合、接触部24の先端部26とロック機構40(規制部材50)の間には大きな隙間が設けられている。より具体的には、台座部60内において、先端部26と規制部材50の軸方向の位置が異なる。そのため、ロック機構40が静止位置に存在する(円筒カットアウト100が上下動していない)場合、接触部24の中間部分(固定部22の表面から突出している部分)は、径方向外側に変形可能であり、ヒューズ筒6を本体碍子8に容易に着脱することができる。
【0030】
一方、円筒カットアウト100の振動運動によりロック機構40が破線の位置(ばね部材54が圧縮された位置)に移動すると、接触部24の先端部26が規制部材50に接触し(あるいは、先端部26と規制部材50の隙間がほぼ無くなり)、接触部24の変形が規制される。より具体的には、接触部24の中間部分が径方向外側に変形することが防止される。その結果、接触部24がヒューズ筒6の外周面を挟持し続け、ヒューズ筒6が下部電極10から外れることを防止することができる。ヒューズ筒6が下部電極10から外れることを防止することにより、ヒューズ筒6が本体碍子8外に放出されることを防止することができる。
【0031】
図9を参照し、ロック機構40の他の特徴を説明する。なお、図9では、図面の明瞭化のため、電極部20を簡略化して示している(図2の固定部22のみ示している)。上述したように、環状部材42の外周面には、径方向外側に向けて突出している位置合わせ部44が設けられている(図4を参照)。ロック機構40は、位置合わせ部44が台座部60の切欠部62内に位置するように、台座部60内に取り付けられる。より具体的には、ロック機構40は、ロック機構40が回転したときに位置合わせ部44と切欠部62の側壁が接触するように、台座部60内に取り付けられる。位置合わせ部44及び切欠部62によって、ロック機構40が台座部60に対して回転することを防止することができる。ロック機構40の回転を防止することにより、接触部24の先端部26と規制部材50の周方向の位置ずれを防止することができる。
【0032】
また、上述したように、切欠部62は、台座部60軸心に沿って伸びている。そのため、ロック機構40が上下動する(台座部60に対する軸方向の位置が変化する)際、位置合わせ部44及び切欠部62によって、ロック機構40の移動をスムーズに案内することができる。位置合わせ部44及び切欠部62は、ロック機構40をスムーズに上下動させるためのガイド部と捉えることもできる。
【0033】
(下部電極:第2実施例)
図10から図13を参照し、下部電極110について説明する。下部電極110は、下部電極10の変形例であり、電極部120及びロック機構140の形態が下部電極10の電極部20及びロック機構40と異なる。下部電極110は、下部電極10に代えて、円筒カットアウト100で使用することができる。下部電極110について、下部電極10と実質的に同一の構成は、下部電極10に付した参照番号と同一又は下二桁の数字が同一の参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0034】
図10に示すように、下部電極110では、3個の接触部24が固定部22に固定されている。接触部24の形態、及び、固定部22に対する接触部24の固定形態は、下部電極10と同様である(図3を参照)。
【0035】
図11から図13を参照し、ロック機構140について説明する。ロック機構140は、リング状の環状部材142と、ばね部材154と、位置決め部材151を備えている。図11に示すように、環状部材142はリング状プレートであり、表裏面を貫通している貫通孔148が、周方向の3箇所に形成されている。各貫通孔148は、環状部材142の周方向に等間隔に(環状部材142の軸心に対して120度の角度を有して)設けられている。各貫通孔148には、位置決め部材151が取り付けられる。環状部材142の外周面に、径方向外側に向けて突出している位置合わせ部144が設けられている。また、環状部材142の周方向の一部に、環状部材142の中心に向けて突出している突出部147が設けられている。突出部147では、環状部材142の内径及び外径が、他の部分より縮小している。貫通孔148は、環状部材142の周方向において、位置合わせ部144及び突出部147が設けられていない部分に形成されている。詳細は後述するが、ロック機構140では、接触部24の先端部26が環状部材142の内周面145に接触し、接触部24の変形が規制される。すなわち、ロック機構140では、環状部材142が、接触部24の変形を規制する規制部材として機能する。
【0036】
図12に示すように、位置決め部材151は、貫通孔148を利用して、環状部材142に取り付けられている。位置決め部材151はボルトであり、環状部材142の裏面側に設けられているナット152によって環状部材142に締結されている。位置決め部材151には、上方に突出している突出部151aが設けられている。また、ナット152には、ばね部材(コイルばね)154が取り付けられている。
【0037】
図13を参照し、ロック機構140の動作を説明する。図13は、図11のA-O-B線に沿った断面を示している。図13には、位置決め部材151と接触部24の双方が現れている。ばね部材154の端部は、台座部60内に形成されているばね支持部64に固定されている。円筒カットアウト100が静止している場合、ばね部材154の伸張力によって、環状部材142(ロック機構140)に上方に移動する力が加わる。図13において実線で示しているように、ロック機構140に上方に移動する力が加わると、位置決め部材151に設けられている突出部151aが固定部22(電極部120)の裏面22aに接触する。位置決め部材151(突出部151a)が固定部22に接触している状態では、接触部24の先端部26と環状部材142(ロック機構140)の間には大きな隙間が設けられ、接触部24は変形可能である。
【0038】
円筒カットアウト100の上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウトの下方への移動が終了して上方に移動を開始し、上方への移動速度が増加する時点までの間、ばね部材154が圧縮され、環状部材142(ロック機構140)が破線で示す位置に移動する。その結果、接触部24の先端部26が環状部材142の内周面145に接触し、接触部24の変形が規制され、接触部24がヒューズ筒6の外周面を挟持し続ける。すなわち、環状部材142が、接触部24の変形を規制する規制部材として機能する。なお、位置合わせ部144は、台座部60の切欠部62内に位置し、ロック機構140が台座部60に対して回転することを防止するとともに、ロック機構140をスムーズに上下動させるためのガイド部として機能する。
【0039】
下部電極110では、環状部材142に位置決め部材151を取り付けることにより、円筒カットアウト100が静止している際、環状部材142は、ばね部材154によって固定部22に付勢された状態となる。その結果、台座部60内におけるロック機構140の位置を適切な位置(接触部24と接触しない位置)に保持し続けることができる。また、円筒カットアウト100の振動運動が比較的小さいときも、ばね部材154の付勢力により、ロック機構140を接触部24と接触しない位置に保持し続けることができる。円筒カットアウト100内で放出ガスが生じて円筒カットアウト100が振動運動を行い、円筒カットアウト100の上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウトの下方への移動が終了して上方に移動を開始し、上方への移動速度が増加する時点までの間、ばね部材154が圧縮されて環状部材142が下方位置に移動する。接触部24の先端部26が環状部材142の内周面145に接触し、接触部24の変形が規制される。環状部材142に接触部24の変形を規制するためだけの部品(例えば、下部電極10における規制部材50)を省略することができる。そのため、下部電極110の構成部品を削減することができ、下部電極110のコストを低減することができる。
【0040】
(下部電極:第3実施例)
図14及び図15を参照し、下部電極210について説明する。下部電極210は、下部電極110の変形例であり、ロック機構240の形態が下部電極110のロック機構140と異なる。下部電極210は、下部電極10に代えて、円筒カットアウト100で使用することができる。下部電極210について、下部電極110と実質的に同一の構成は、下部電極110に付した参照番号と同一又は下二桁の数字が同一の参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。なお、下部電極210は、3個の接触部24を有している。
【0041】
下部電極210では、ロック機構240は、リング状の環状部材242と、ばね部材254を備えている。図14に示すように、環状部材242はリング状プレートであり、外周面に径方向外側に向けて突出している位置合わせ部244が設けられており、周方向の一部に環状部材242の中心に向けて突出している突出部247が設けられている。環状部材242には、貫通孔が設けられていない。すなわち、環状部材242は、環状部材142から貫通孔148を削除したものである(図11を比較参照)。
【0042】
図15に示すように、環状部材242と台座部60に形成されているばね支持部64の間に、ばね部材254が配置されている。ばね部材254の径は、環状部材242の内径より大きく、環状部材242の外径より小さい。ばね部材254の一端は環状部材242に固定されており、他端はばね支持部64に固定されている。下部電極210では、円筒カットアウト100が静止している場合、ロック機構240が、自重とばね部材254の伸張力がバランスした位置(実線の位置)に存在する。このときに、接触部24の先端部26と環状部材242(ロック機構240)の間には大きな隙間が設けられているので、接触部24は変形可能である。
【0043】
円筒カットアウト100が振動運動を行い、円筒カットアウト100の上方から下方への移動速度が減少し始めた時点から、円筒カットアウトの下方への移動が終了して上方に移動を開始し、上方への移動速度が増加する時点までの間、ばね部材254が圧縮され、環状部材242(ロック機構240)が破線で示す位置に移動する。その結果、接触部24の先端部26が環状部材242の内周面245に接触し、接触部24の変形が規制され、接触部24がヒューズ筒6の外周面を挟持し続ける。すなわち、下部電極210では、下部電極110と同様に、環状部材242が接触部24の変形を規制する規制部材として機能する。なお、位置合わせ部244は、台座部60の切欠部62内に位置し、ロック機構240が台座部60に対して回転することを防止するとともに、ロック機構240をスムーズに上下動させるためのガイド部として機能する。
【0044】
(他の変形例)
上記実施例では、2個の接触部を有する下部電極(下部電極10)と、3個の接触部を有する下部電極(下部電極110、210)について説明した。しかしながら、本明細書で開示する下部電極において、接触部の数は任意である。例えば、下部電極10において接触部の数を3個以上にしてもよく、下部電極110,210において接触部の数を2個または4個以上にしてもよい。
【0045】
上記実施例では、環状部材の外周面に凹部(凹部49,149,249)を設け、引出線12のリード線12aと端子部12bが凹部を通過する例について説明した。しかしながら、下部電極と引出線12を導電板等で接続し、リード線12aを省略することもできる。その場合、環状部材の外周面に凹部を設けることも省略することができる。
【0046】
第1実施例では環状部材に規制部材が固定されたロック機構、第2実施例では環状部材に位置決め部材が固定されたロック機構、第3実施例では環状部材に規制部材及び位置決め部材等の他部品が固定されていないロック機構、を備える下部電極について説明した。各実施例の下部電極において、規制部材(環状部材と別体の規制部材)、位置決め部材を環状部材に固定するか否かは、目的と用途に応じて任意に選択することができる。例えば第1実施例の環状部材にさらに位置決め部材を固定してもよいし、第2実施例の環状部材に環状部材とは別体の規制部材を固定してもよい。あるいは、第2実施例において位置決め部材を省略してもよい。なお、第2実施例では、位置決め部材を利用して(位置決め部材を固定するナットを利用して)ばね部材を環状部材に固定している。しかしながら、第2実施例のロック機構において、第1実施例のロック機構と同様に、ばね部材を環状部材に固定するためだけの部材(ばね固定部材)を用いてばね部材を環状部材に固定してもよい。
【0047】
第1実施例では規制部材及びばね固定部材を環状部材にリベット締結し、第2実施例では位置決め部材を環状部材にボルト締結する例について説明した。環状部材に対して環状部材とは別体の部品(規制部材,ばね固定部材及び位置決め部材)を固定する手段は任意であり、上記リベット締結又はボルト締結に代えて、溶接、あるいは、環状部材の貫通孔にねじ溝を形成し、環状部材とは別体の部品にねじ山を形成し、その部品を環状部材にねじ留めしてもよい。なお、第1実施例では、円柱状の規制部材を環状部材に固定する形態について説明したが、規制部材の形状は任意であり、例えば多角形(平板状、角柱状等)であってもよい。また、環状部材に環状部材とは別体の規制部材を固定することに代え、環状部材の周方向の一部を屈曲させ、環状部材に規制部を設けてもよい(環状部材と規制部材が一体物であってよい)。
【0048】
第1実施例では環状部材の周方向の2箇所に位置合わせ部を設けた形態、第2及び第3実施例では環状部材の周方向の1箇所に位置合わせ部を設けた形態について説明した。しかしながら、位置合わせ部の数は任意であり、環状部材の周方向の3箇所に位置合わせ部を設けてもよいし、あるいは、環状部材から位置合わせ部を省略してもよい。
【0049】
上記実施例では、円筒カットアウトが静止している際、ばね部材の伸張力を利用して環状部材を所定の位置(接触部に接触しない位置)に保持する例について説明した。すなわち、上記実施例では、ばね部材が環状部材を上方に押し上げ、環状部材の位置を保持している。しかしながら、ばね部材の圧縮力を利用して環状部材を所定の位置に保持してもよい。すなわち、ばね部材を環状部材よりも上方に配置し、環状部材を台座部の上面から吊り下げてもよい。
【0050】
上記実施例では、円筒カットアウト本体内にヒューズ筒を配置する例について説明した。しかしながら、ヒューズ筒に代え、円筒カットアウト本体内に限流ヒューズを配置してもよい。限流ヒューズも、電力ヒューズの一例である。典型的に、内部に限流ヒューズが配置された円筒カットアウトは、大電流を遮断することによるガス放出はない。そのため、限流ヒューズが配置された円筒カットアウトでは、放出ガスが発生して円筒カットアウトが上下振動運動(位置変動)を行うことはない。しかしながら、限流ヒューズの内部には、絶縁コアや消弧砂を封入されており、典型的にヒューズ筒よりも重量が大きい。そのため、例えば、大型の地震又は大型自動車等の事故等に起因して発生する振動によっては、円筒カットアウトに上下振動運動が発生するおそれがある。内部に限流ヒューズが配置された円筒カットアウトにおいても、上記実施例で開示したロック機構を備えていれば、限流ヒューズの下部側電極が円筒カットアウトの下部電極から外れることを防止することができ、限流ヒューズが円筒カットアウト本体の外部への離脱を防止することができる。そのため、内部に限流ヒューズが配置された円筒カットアウトにおいても、本明細書で開示する技術(下部電極がロック機構を備えている技術)は有用に適用することができる。
【0051】
上記実施例では、円筒カットアウトの振動運動が下方移動から上方移動へ変化する際、接触部の先端を規制部材(環状部材とは別体の規制部材、あるいは、環状部材自身)に接触させる例について説明した。しかしながら、本明細書で開示する下部電極では、ロック機構は、円筒カットアウトの振動運動が下方移動から上方移動へ変化する際、接触部の中間部分(ヒューズ筒と接触する部分)が変形することを規制する構造であってもよい。本明細書で開示する技術において重要なことは、下部電極が、円筒カットアウト本体の位置変動によってヒューズ筒に対して円筒カットアウト本体の外部に移動する離脱力が加わったとき(円筒カットアウトの振動運動が下方移動から上方移動へ変化した際)に、ヒューズ筒の下部側電極部を保持するロック機構を備えているということである。
【0052】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
6:ヒューズ筒
10:下部電極
20:ロック機構
24:接触部
60:台座部
100:円筒カットアウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15