(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】蒸着装置及び蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240213BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240213BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240213BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
C23C14/24 C
C23C14/24 A
C23C14/50 J
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021196195
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591097632
【氏名又は名称】長州産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】末永 真吾
(72)【発明者】
【氏名】濱永 教彰
(72)【発明者】
【氏名】山下 和吉
(72)【発明者】
【氏名】二宮 秀行
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164920(JP,A)
【文献】特開2004-176126(JP,A)
【文献】特開2013-091857(JP,A)
【文献】特開2008-248362(JP,A)
【文献】特開平05-070932(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110158036(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
C23C 14/50
H05B 33/10
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円形状の基板に対して蒸着を行う蒸着装置であって、
蒸着材を噴射する噴射口が設けられた1又は複数の噴射ノズル、
上記基板の一方の面が上記1又は複数の噴射ノズルの噴射口と対向するように上記基板を保持する基板保持部、及び
上記1又は複数の噴射ノズルの噴射口を囲い、噴射される上記蒸着材の拡散方向を制御するように、上記基板に対して垂直に配置される円筒状の制御板
を備え、
上記基板保持部が、上記基板の法線方向を回転軸として上記基板を回転可能に構成されており、
上記1又は複数の噴射ノズルと上記制御板とが、一体となって上記基板と平行に
、上記基板の一端から他端まで蒸着できるような範囲で往復移動可能に構成されており、
上記円筒状の制御板の内径が上記基板の直径より小さい、蒸着装置。
【請求項2】
上記1又は複数の噴射ノズルと上記基板との間の距離が調整可能に、且つ
上記制御板が、サイズの異なる他の円筒状の制御板に交換可能に構成されている請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
上記1又は複数の噴射ノズルが複数の噴射ノズルであり、
それぞれの上記噴射ノズルの噴射口から異なる蒸着材が噴射される請求項1又は請求項2に記載の蒸着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蒸着装置を用いて上記基板に対して蒸着を行う工程を備える蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置及び蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネル、太陽電池等の金属電極配線、有機エレクトロルミネッセンス(EL)層、半導体層、その他の有機材料薄膜、及び無機材料薄膜等は、真空蒸着法等の蒸着によって形成されることがある。蒸着は、通常、坩堝内の蒸着材を加熱することにより、蒸着材を気化させ、気化した蒸着材を基板表面に向けて噴射し、この基板表面に蒸着材を堆積させることにより行われる。基板表面に堆積された蒸着材が、薄膜を形成する。また、蒸着の際には、所定形状を有するマスクにより基材表面を被覆しておくことで、パターニングされた蒸着膜を形成することができる。このような蒸着を行う蒸着装置は、通常、蒸着材を収容する坩堝等が内部に配置され、気化した蒸着材を噴射する噴射ノズルを有する蒸着源と、基板を固定する基板固定部とを備える。
【0003】
図3に示すように、基板A上に、マスクBを用いてパターニングされた蒸着膜Cを形成する場合、蒸着膜Cの外縁に、シャドーSと呼ばれる膜厚が薄い部分が形成されることがある。このシャドーSは、マスクBの浮きと蒸着材の入射角とによって、蒸着膜CにおけるマスクBの開口の外縁位置Eよりも外側の部分に生じるアウターシャドーS
1と、マスクBの厚みと蒸着材の入射角とによって、蒸着膜CにおけるマスクBの開口の外縁位置Eよりも内側の部分に生じるインナーシャドーS
2とがある。このようなシャドーSは、微細な成膜パターンの形成を妨げる要因となる。但し、蒸着の際に、シャドーが完全に生じないようにすることは困難であり、生じるシャドーの大きさは設計上計算される。従って、蒸着装置によって蒸着を行う際は、形成されるシャドーは、その計算値に近い許容される範囲内に収まることが好ましい。
【0004】
このような中、各噴射ノズル間に蒸着材の蒸着領域を制御する制御板(遮断壁などとも称される。)が設けられた蒸着装置も開発されている(特許文献1参照)。このような蒸着装置によれば、基板に対して大きく傾斜した方向に噴射される蒸着材が制御板により遮断されるため、蒸着材の入射角を大きい範囲に制御し、シャドーを小さくすることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の各噴射ノズル間に制御板が設けられた蒸着装置においては、例えば、制御板が設けられた位置、すなわち各噴射ノズル間に対応する位置における蒸着量が少なくなるなど、膜厚均一性が十分ではない。また、従来の蒸着装置は、蒸着材の入射角を調整し、シャドーの大きさを制御することが困難である。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、蒸着材の入射角が制御され、膜厚均一性が高い蒸着膜を形成できる蒸着装置、及びこのような蒸着装置を用いた蒸着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、蒸着材を噴射する噴射口が設けられた1又は複数の噴射ノズル、基板の一方の面が上記1又は複数の噴射ノズルの噴射口と対向するように上記基板を保持する基板保持部、及び上記1又は複数の噴射ノズルの噴射口を囲い、噴射される上記蒸着材の拡散方向を制御するように、上記基板に対して垂直に配置される円筒状又は角筒状の制御板を備え、上記基板保持部が、上記基板の法線方向を回転軸として上記基板を回転可能に構成されており、上記1又は複数の噴射ノズルと上記制御板とが、一体となって上記基板と平行に往復移動可能に構成されている蒸着装置である。
【0009】
上記1又は複数の噴射ノズルと上記基板との間の距離が調整可能に、且つ上記制御板が、サイズの異なる他の円筒状又は角筒状の制御板に交換可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
上記制御板が円筒状であることが好ましい。
【0011】
上記1又は複数の噴射ノズルが複数の噴射ノズルであり、それぞれの上記噴射ノズルの噴射口から異なる蒸着材が噴射されることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の本発明は、当該蒸着装置を用いて蒸着を行う工程を備える蒸着方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蒸着材の入射角が制御され、膜厚均一性が高い蒸着膜を形成できる蒸着装置、及びこのような蒸着装置を用いた蒸着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸着装置を示す第1の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る蒸着装置を示す第2の模式図である。
【
図4】
図4は、円筒状の制御板を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係る蒸着装置及び蒸着方法について詳説する。
【0016】
<蒸着装置>
本発明の一実施形態に係る
図1、2の蒸着装置10は、蒸着源11、基板保持部12及び制御板13を備える。なお、蒸着装置10は、適切な真空度が維持される真空チャンバ(図示しない)内に配置される。真空チャンバには、真空チャンバ内の気体を排出させて、真空チャンバ内の圧力を低下させる真空ポンプ、真空チャンバ内に一定の気体を注入して、真空チャンバ内の圧力を上昇させるベンティング手段などが備えられていてよい。
【0017】
蒸着源11は、複数の噴射ノズル14を有する。それぞれの噴射ノズル14の先端(
図1、2における上端)には、気化した蒸着材Dを噴射する噴射口15(開口)が設けられている。蒸着装置10においては、
図2に示すように、4つの噴射ノズル14の各噴射口15が、Z軸方向視において正方形の頂点を形成するように近接して配置されている。蒸着源11は、固体状の蒸着材を収容し、加熱により蒸着材を気化させ、気化した蒸着材Dを複数の噴射ノズル14の噴射口15から噴射するように構成されている。
【0018】
なお、複数の噴射ノズル14の噴射口15からは同一の蒸着材Dが噴射されてもよく、異なる蒸着材Dが噴射されてもよい。例えば、4つの噴射ノズル14の噴射口15からそれぞれ異なる4種類の蒸着材Dが噴射されてもよい。また、4つの噴射ノズル14の噴射口15のうちの2つずつから同じ蒸着材Dが噴射され、全体で2種類の蒸着材Dが噴射されてもよい。
【0019】
蒸着源11は、具体的には、例えば蒸着材収容室と拡散室とを有し、拡散室に噴射ノズル14が連結された構成とすることができる。蒸着材収容室内には、坩堝が配置され、この坩堝内に固体状の蒸着材が収納される。気化した坩堝内の蒸着材は、蒸着材収容室から拡散室に移動する。坩堝の周囲には、加熱手段としてのヒータ等が配置される。加熱手段により坩堝中の蒸着材が加熱され、蒸着材が気化する。拡散室に移動した気体状の蒸着材は、複数の噴射ノズル14から噴射される。複数の噴射ノズル14は、例えば拡散室の上面に配置されていてよい。蒸着材収容室と拡散室とは一体となっていてもよく、別体となっていてもよい。後述するように、本実施形態において、複数の噴射ノズル14が備わる蒸着源11は、往復移動可能に構成されている。別の実施形態においては、蒸着源の一部(例えば蒸着材収容室等)は、複数の噴射ノズル14等と別体となっていて、往復移動しないようにチャンバ内に固定されていてもよい。蒸着源11は、加熱手段や、図示しない蒸着材の流路に設けられたバルブ等により、蒸着材の放出量を制御可能に構成されていてよい。
【0020】
基板保持部12は、基板Aの一方の面(
図1における下側の面)が複数の噴射ノズル14の噴射口15と対向するように、基板Aを保持する。
図1、2の蒸着装置10においては、基板Aの法線がZ軸方向となるように基板Aが下向きに保持される。換言すれば、基板Aは、水平に保持される。基板保持部12は、基板Aを着脱可能に保持する。また、基板保持部12は、保持した基板Aの法線方向(
図1におけるZ軸方向)を回転軸として、図示しないモータ等の駆動手段により、保持した基板Aを回転可能に構成されている。基板保持部12は、基板Aの回転速度も制御可能なものであることが好ましい。基板保持部12は、例えば基板Aが水平となるように基板Aの側面を保持し、その向きを維持したまま基板Aを回転させる機構(回転手段)を備えているものであってよい。基板保持部12は、基板Aを回転可能に保持する従来公知のものを採用することができる。基板Aにおける複数の噴射ノズル14の噴射口15と対向する側の面(
図1における下側の面)には、所定形状のパターンを有する蒸着用のマスクBが、通常設けられる。また、基板保持部12は、保持する基板Aの高さ、換言すれば、複数の噴射ノズル14から基板Aまでの距離を調整可能に構成されている。
【0021】
基板Aは、蒸着を行う対象となる板状の基材である。基板Aの形状としては特に限定されず、平面視矩形状、平面視円形状等であってよいが、
図2に示されるような平面視円形状であることが好ましい。基板Aの材質は、ガラス、セラミック、シリコン、樹脂、金属等、特に限定されない。
【0022】
制御板13は、複数の噴射ノズル14の噴射口15を囲い、噴射される蒸着材Dの拡散方向を制御するように、基板Aに対して垂直に配置される。
図1、2に示す制御板13は、円筒状である。円筒状の制御板13は、その中心軸が基板Aに対して垂直方向(
図1におけるZ軸方向)となるように配置される。また、円筒状の制御板13の中心軸上又はその近傍に複数の噴射ノズルの噴射口15が位置するように制御板13が配置される。制御板13は、蒸着源11上に、複数の噴射ノズル14を囲うように配置されている。なお、
図1の形態においては、制御板13は、複数の噴射ノズル14の側面までも囲うようにもうけられている。但し、他の形態において、制御板13は、1又は複数の噴射ノズル14の側面までは囲っていなくてもよい(
図2参照)。制御板13は、噴射される蒸着材Dの拡散方向を制御するために、少なくとも噴射ノズル14の噴射口15から基板A側の所定高さまでの空間を筒状に囲うように設けられていればよい。
【0023】
制御板13の材質としては特に限定されず、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等を用いることができる。
【0024】
複数の噴射ノズル14と制御板13とは、一体となって、基板Aと平行に往復移動可能に構成されている。
図1の蒸着装置10においては、制御板13は、複数の噴射ノズル14を備える蒸着源11上に固定されている。そして、蒸着源11は、
図1におけるX軸方向に沿って直線状に設置されたレール16上に配置されている。蒸着装置10は、図示しないモータ等の駆動手段によって、レール16上を、制御板13が固定された蒸着源11が往復移動させることができる。なお、往復移動の速度も制御可能に構成されていることが好ましい。
【0025】
制御板13が固定された蒸着源11は、膜厚均一性がより高い蒸着膜を形成できる等の点から、例えば、基板Aの一端から他端まで蒸着できるような範囲で往復移動できるように構成されていることが好ましい。なお、基板Aを回転させることができるため、制御板13が固定された蒸着源11は、例えば、基板Aの中心から一端までを蒸着できるような範囲で往復移動させるように構成されていてもよい。
【0026】
制御板13は、噴射ノズル14の噴射口15から噴射される蒸着材Dの拡散方向(進行方向)を制御する、換言すれば蒸着材Dの基板Aへの入射角を制御するためのものである。蒸着材Dの基板Aの入射角は、制御板13のサイズ(径及び高さ)及び噴射ノズル14の噴射口15から基板Aまでの距離によって制御される。例えば、円筒状の制御板13の径を小さくする、又は制御板13の高さ(Z軸方向の長さ)を大きくすることにより、蒸着材Dの基板Aへの入射角(基板Aの平面と蒸着材Dの進行方向とがなす角)は90°に近づき、シャドーは小さくなる。一方、例えば、円筒状の制御板13の径を大きくする、又は制御板13の高さ(Z軸方向の長さ)を小さくすることにより、蒸着材Dの基板Aへの入射角(基板Aの平面と蒸着材Dの進行方向とがなす角)は小さくなり、シャドーは大きくなる。
【0027】
具体的には
図3に示すように、蒸着材の基板への入射角(基板Aの平面と蒸着材の進行方向とがなす最小の角)をθ、マスクBの浮き(基板AとマスクBとの間隔)をTc、マスクBの厚さをTmとした場合、インナーシャドーS
1の幅W
S1はTc/tanθ、アウターシャドーS
2の幅W
S2は(Tc+Tm)/tanθで表される。一方、
図4に示すように、円筒状の制御板13の高さをL、半径(内径)をRとした場合、典型的には、上記入射角θに関してtanθ=L/Rの関係が成り立つ。従って、インナーシャドーS
1の幅W
S1はTcR/L、アウターシャドーS
2の幅W
S2は(Tc+Tm)R/Lで表される。このため、制御板13の高さL及び半径Rを調整することで、インナーシャドーS
1の幅W
S1及びアウターシャドーS
2の幅W
S2を制御することができる。
【0028】
また、円筒状の制御板13の径を大きくすれば、形成される蒸着膜の膜厚均一性が高まる。従って、設計に基づく、許容されるシャドーの大きさ等に応じて、制御板13のサイズ(径及び高さ)を調整すればよい。また、サイズ(径及び高さの少なくとも一方)の異なる制御板13が複数用意され、複数の制御板13が交換可能に構成されていることが好ましい。なお、サイズの異なる複数の制御板13が交換可能に用意されている場合、複数の制御板13は、いずれも円筒状であることが好ましい。
【0029】
基板Aが円形状であり、制御板13が円筒状である場合、膜厚均一性の高い蒸着膜を得る等の観点から、円筒状の制御板13の直径(内径)は、基板Aの直径より大きくてもよい。また、
図1、2に示されるように、円筒状の制御板13の直径(内径)は、基板Aの直径より小さくてもよい。例えば、基板Aの直径に対する円筒状の制御板13の直径(内径)の比は、1/10以上11/10以下とすることができる。上記比は、1/5以上であってもよく、3/10以上、1/2以上又は1以上であってもよい。また、上記比は、1以下であってもよく、9/10以下、4/5以下、7/10以下、3/5以下又は1/2以下であってもよい。
【0030】
円筒状の制御板13の直径(内径)は、蒸着装置10自体の大きさや、基板Aの大きさ、目標とする蒸着材Dの入射角の大きさ等に応じて適宜設定され、例えば20mm以上500mm以下とすることができる。この直径(内径)は、30mm以上、50mm以上、100mm以上又は200mm以上がさらに好ましい場合もある。この直径(内径)は、300mm以下、200mm以下又は100mm以下がさらに好ましい場合もある。
【0031】
制御板13の高さとしては、例えば100mm以上1,000mm以下であってもよく、200mm以上500mm以下であってもよい。制御板13の高さを上記下限以上とすることで、蒸着材Dの入射角をより小さくすることができる。制御板13の高さを上記上限以下とすることで、制御板13が蒸着源11と共に往復移動するときの安定性を高めることなどができる。
【0032】
<蒸着方法>
以下、蒸着装置10の使用方法、すなわち蒸着装置10を用いた蒸着方法を説明し、あわせて蒸着装置10及びこの蒸着装置10を用いた蒸着方法の利点について説明する。
【0033】
本発明の一実施形態に係る蒸着方法は、蒸着装置10を用いて蒸着を行う工程を備える。当該蒸着方法によって蒸着される蒸着材の種類は特に限定されず、無機物であってもよく、有機物であってもよく、従来の蒸着方法(真空蒸着等)によって蒸着可能な各種の蒸着材を用いることができる。
【0034】
当該蒸着方法は、制御板13を備える当該蒸着装置10を用いて蒸着を行うため、制御板13により蒸着材Dの基板Aへの入射角が制御された蒸着を行うことができる。すなわち当該蒸着装置10を用いて蒸着を行うことで、シャドーの小さい蒸着膜の形成が可能となる。なお、通常、蒸着材Dの基板Aに対する入射角(基板Aの平面と蒸着材Dの入射方向とがなす角)は45°から90°の範囲内で設定することができる。当該蒸着装置10によれば、ターゲットとする蒸着材Dの入射角又はシャドーの大きさの範囲に応じて、適切なサイズ(高さ及び内径)を有する制御板13に交換したり、基板保持部12の高さを調整して、複数の噴射ノズル14と基板Aとの間の距離を調整したりすることができる。複数の噴射ノズル14と基板Aとの間の距離としては、例えば100mm以上1,000mm以下の範囲内であってもよく、300mm以上800mm以下の範囲内であってもよい。このように当該蒸着装置10を用いた蒸着方法によれば、蒸着材Dの入射角の調整を行うことが可能である。
【0035】
また、当該蒸着装置10において、制御板13により、蒸着材Dの拡散方向が基板Aに向かう方向に制御されているため、チャンバ内に蒸着材Dが付着し難く、チャンバ内の清掃、メンテナンス等も容易である。
【0036】
当該蒸着装置10を用いた蒸着方法においては、基板Aを回転させながら基板Aに対する蒸着を行うことができ、また、複数の噴射ノズル14と制御板13とを一体的に基板Aと平行に往復移動させながら基板Aに対する蒸着を行うことができる。また、基板Aの回転、及び複数の噴射ノズル14と制御板13との往復移動の双方を行いながら、基板Aに対する蒸着を行うこともできる。基板Aは、基板保持部12により、基板Aの法線方向(
図1、2におけるZ軸方向)を回転軸として、周方向に回転される。制御板13は、複数の噴射ノズル14を有する蒸着源11上に固定されており、蒸着源11は、レール16上に配置されている。このため複数の噴射ノズル14と制御板13とは、レール16上を
図1、2におけるX軸方向に往復移動される。
【0037】
このように、当該蒸着装置10を用いた蒸着方法においては、基板Aの回転、及び複数の噴射ノズル14と制御板13との往復移動の少なくとも一方を行いながら、基板Aに対する蒸着を行うことで、基板Aに形成される蒸着膜の厚みの均一性を高めることができる。なお、膜厚均一性をより高めるなどのために、基板Aの回転速度、及び複数の噴射ノズル14と制御板13との往復移動速度とを調整することができる。また、一回転の間で回転速度を変えてもよく、一往復の間で移動速度を変えてもよい。
【0038】
また、当該蒸着装置10を用いた蒸着方法は、複数の噴射ノズル14を有する蒸着源11を往復移動させながら基板Aに対する蒸着を行うことができるため、大型の基板Aに対して蒸着を行う場合も、蒸着源11を比較的コンパクトな設計とすることができる。
【0039】
さらに、当該蒸着装置10を用いた蒸着方法においては、当該蒸着装置10が複数の噴射ノズル14を備えるため、共蒸着も容易に行うことができる。この際、複数の噴射ノズル14が近接して配置されているため、蒸着材毎の分布の斑が小さく、蒸着材の組成の均一性も高い蒸着膜を形成することができる。なお、当該蒸着装置10を用いた蒸着方法においては、1種類の蒸着源のみを用いた単蒸着も好適に行うことができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、噴射ノズルの数は特に限定されるものではなく、1本でもよく、2本、3本又は5本以上であってもよい。但し、制御板13内に近接して配置可能なサイズ等の観点から、噴射ノズルの本数は、1本以上6本以下が好ましく、2本以上4本以下がより好ましい場合もある。
【0041】
上記実施形態において制御板は円筒状としたが、角筒状であってもよい。角筒状の制御板を用いた場合も、円筒状の制御板を用いた場合と同様の効果を奏することができる。但し、蒸着材の入射角をより正確に制御できる等の点から、制御板は円筒状であることが好ましい。角筒状の制御板としては、軸方向視の形状が四角形、六角形等の形状のものを用いることができる。なお、軸方向視の形状が正多角形状である角筒状の制御板における軸方向視における対角線長さ(内寸)の好適範囲は、上記した円筒状の制御板における直径(内径)の好適範囲を採用することができる。
【0042】
また、本発明の蒸着装置を用い、基板及び噴射ノズルの双方を動かさずに蒸着を行う方法も、本発明の蒸着方法に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の蒸着装置及び蒸着方法は、ディスプレイパネルや太陽電池等の金属電極配線、半導体層、有機EL層、その他の有機材料薄膜や無機材料薄膜等の成膜に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 蒸着装置
11 蒸着源
12 基板保持部
13 制御板
14 噴射ノズル
15 噴射口
16 レール
A 基板
B マスク
C 蒸着膜
D 蒸着材
E マスクの開口の外縁位置
S シャドー
S1 アウターシャドー
S2 インナーシャドー