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  • 特許-リニアアルファオレフィンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】リニアアルファオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/32 20060101AFI20240213BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20240213BHJP
   C08F 4/78 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 7/12 20060101ALN20240213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C07C2/32
C07C11/02
C07C11/107
C08F4/78
C07C7/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021502873
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2019006976
(87)【国際公開番号】W WO2020022642
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0087078
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンセム
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョスン
(72)【発明者】
【氏名】ソン スンレル
(72)【発明者】
【氏名】ソン インヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ウスン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065052(JP,A)
【文献】特表2014-525900(JP,A)
【文献】特表2010-534762(JP,A)
【文献】特開平07-033687(JP,A)
【文献】特表2010-526647(JP,A)
【文献】特表2020-535118(JP,A)
【文献】特開2017-137464(JP,A)
【文献】特公昭48-006441(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027156(US,A1)
【文献】特表2012-523306(JP,A)
【文献】特表2009-541026(JP,A)
【文献】特表2007-518679(JP,A)
【文献】特表2018-505863(JP,A)
【文献】特開2016-222658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045603(US,A1)
【文献】国際公開第2014/154802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07B、C08F、B01J、B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを酸素吸着剤と接触させて酸素不純物を除去するステップと、
前記酸素不純物が除去されたオレフィンとクロム系触媒を反応器に投入するステップと、
前記反応器で前記オレフィンをオリゴマー化するステップと、
触媒不活性化剤を使用してオリゴマー化反応を終了させるステップとを含み、
前記酸素吸着剤は、CuO、NiO、MoO、ゼオライト3A(zeolite 3A)、活性アルミナ(activated alumina)、またはこれらの混合物であり、
前記酸素吸着剤の比表面積は100~900m/gであり、
前記酸素不純物を除去するステップは、前記酸素吸着剤が充填された吸着塔に前記オレフィンを通過させることで行われ、
前記オレフィンは前記吸着塔に0.02~5hr-1の空間速度(gas hourly space velocity)で投入され、
前記酸素不純物を除去するステップは、10~100℃の温度および5~100kg/cmの圧力下で行われる
前記酸素不純物を除去するステップの後、前記オレフィン内の酸素含量は100ppm未満であり、
前記クロム系触媒は、CrL(L (X)またはCr (L(X)、(式中、Lは、ヘテロリガンドであり、Lは、有機リガンドであり、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、pは、0または1以上の整数であり、qは、(Crの酸化数-p)の整数であり、yは、2以上の整数であり、zは、(2×Crの酸化数)-yの整数である。前記ヘテロリガンドは、(S,S)‐(フェニル) PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル) であり、前記有機リガンドは、ヘキサフルオロアセチルアセトネートである。)で表される、リニアアルファオレフィンの製造方法。
【請求項2】
前記酸素不純物を除去するステップの後、前記酸素吸着剤を再生するステップをさらに含む、請求項1に記載のリニアアルファオレフィンの製造方法。
【請求項3】
前記酸素吸着剤はCuOであり、前記再生するステップは、100~200℃で水素および窒素の混合気体を前記吸着塔に通過させることで行われる、請求項2に記載のリニアアルファオレフィンの製造方法。
【請求項4】
前記オレフィンはエチレンである、請求項1に記載のリニアアルファオレフィンの製造方法。
【請求項5】
前記酸素不純物を除去するステップの後、前記オレフィン内の酸素含量は0ppmである、請求項1に記載のリニアオレフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアルファオレフィンの製造方法に関し、より詳細には、オレフィン精製工程を含むリニアアルファオレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、その生産量および消費量を国の化学産業規模の脂標として判断するほど、化学産業の基礎原料として使用される原料である。通常、エチレンは、ポリエチレンなどの重合体を製造する単量体として使用されており、場合によっては重合度を調節して約C4~C40の炭素長(または鎖)を有するリニアアルファオレフィン(Linear Alpha Olefin、LAO)を製造し、様々な化学物質を製造するのに使用している。
【0003】
エチレンのオリゴマー化によるLAO製造工程の触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒(Ziegler‐Natta catalyst)、クロム系触媒など、様々な触媒が使用されている。このうち、クロム系触媒を使用する工程で原料(Feed)エチレン内に存在する不純物が触媒毒として働いてエチレンの転換率が低下し、反応効率が低下する問題、高付加化が可能なC6~C20リニアアルファオレフィンの収率減少などの問題が発生し得る。
【0004】
具体的な一例として、原料エチレン内の酸素(O)は、クロム系触媒に触媒毒として働き、LAO製造工程の転換率の減少、製品の純度の低下を引き起こし、未反応のエチレンの再活用のための運転費の増加、および副生成物の増加による分離費用の増加などの問題をもたらし得る。
【0005】
そのため、LAO製造工程に投入される原料エチレンを精製して不純物を除去し、工程効率を向上させるための技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一様態は、原料オレフィン内の不純物がリニアアルファオレフィン製造工程に使用される触媒に触媒毒として働いて触媒活性が低下し、これによるオレフィンの転換率の減少、および製品の純度の低下などの問題を解決することで、リニアアルファオレフィン製造工程の工程効率を向上させることができるリニアアルファオレフィンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態は、オレフィンを酸素吸着剤と接触させて酸素不純物を除去するステップと、前記酸素不純物が除去されたオレフィンとクロム系触媒を反応器に投入するステップと、前記反応器で前記オレフィンをオリゴマー化するステップとを含む、リニアアルファオレフィンの製造方法を提供する。
【0008】
酸素吸着剤は、CuO、NiO、MoO、ゼオライト3A(zeolite 3A)、活性アルミナ(activated alumina)、またはこれらの混合物であってもよい。
【0009】
酸素吸着剤の比表面積は、100~900m/gであってもよい。
【0010】
酸素不純物を除去するステップは、前記酸素吸着剤が充填された吸着塔に前記オレフィンを通過させることで行われ得る。
【0011】
上記の様態は、具体的には、オレフィンを吸着塔に0.02~5hr-1の空間速度(gas hourly space velocity)で投入してもよい。
【0012】
酸素不純物を除去するステップは、10~100℃の温度および5~100kg/cmの圧力下で行われてもよい。
【0013】
酸素不純物を除去するステップの後、前記酸素吸着剤を再生するステップをさらに含むことができる。
【0014】
酸素吸着剤はCuOであり、再生するステップは、100~200℃で水素および窒素の混合気体を前記吸着塔に通過させることで行われてもよい。
【0015】
酸素不純物を除去するステップの後、前記オレフィン内の酸素含量は100ppm未満であってもよい。
【0016】
クロム系触媒は、CrL(L (X)またはCr (L(X)、(式中、Lは、ヘテロリガンドであり、Lは、有機リガンドであり、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、pは、0または1以上の整数であり、qは、(Crの酸化数-p)の整数であり、yは、2以上の整数であり、zは、(2×Crの酸化数)-yの整数である。)で表されてもよい。
【0017】
オレフィンは、エチレンであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一様態は、クロム系触媒を使用するリニアアルファオレフィン製造工程において、原料オレフィン内の触媒毒として働く酸素などの不純物の含量を減少させることで、オレフィンの転換率の減少、製品の純度の低下と未反応のエチレンの再活用のための運転費の増加、および副生成物の増加による分離費用の増加などの問題を解決することができる。
【0019】
これにより、リニアアルファオレフィン製造工程の工程効率が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一様態のリニアアルファオレフィン製造工程の例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解し得る意味で使用され得る。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたときに、これは特別に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数型は、文章で特に言及しない限り、複数型も含む。
【0022】
オレフィンのオリゴマー化によるリニアアルファオレフィン製造工程の原料であるオレフィンは、生産および運動過程で、酸素、水、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素含有化合物(oxygenate)、硫黄などの不純物で汚染され得る。
【0023】
かかる不純物は、リニアアルファオレフィン製造工程に使用される触媒に触媒毒として働き、反応の転換率、製品の取得率を減少させて工程効率を低下させる原因として働き得る。
【0024】
具体的には、クロム系触媒を使用するリニアアルファオレフィン製造工程で、原料オレフィン内の酸素不純物は、クロム系触媒に触媒毒として強く働き、オレフィンの転換率の減少と高付加化が可能なC6~C20リニアアルファオレフィンの収率の減少などの問題を発生させて製品の品質が低下し得、さらには、未反応のオレフィンの再活用のための運転費の増加、および副生成物の増加による分離費用の増加などの問題を引き起こし、全般的な工程効率が低下し得る。
【0025】
本発明の一様態は、かかる問題を解決するためのものであり、オレフィンを酸素吸着剤と接触させて酸素不純物を除去するステップと、前記酸素不純物が除去されたオレフィンとクロム系触媒を反応器に投入するステップと、前記反応器で前記オレフィンをオリゴマー化するステップとを含む、リニアアルファオレフィンの製造方法を提供する。
【0026】
本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法は、原料オレフィンを酸素吸着剤と接触させて酸素不純物を除去するステップを含むことで、上述のクロム系触媒を使用するリニアアルファオレフィン製造工程で発生する工程効率の低下の問題を解決することができる。
【0027】
かかる酸素不純物を除去するステップについてより詳細に説明する。
【0028】
本発明のリニアアルファオレフィンの製造方法において、原料オレフィンを酸素吸着剤と接触させて酸素不純物を除去するステップは、必ずしもこれに制限されないが、酸素吸着剤が充填された吸着塔に前記オレフィンを通過させることで行われ得る。
【0029】
吸着塔は、当業界において通常使用される吸着塔構成を採用することができ、かかる吸着塔に酸素吸着剤を充填した後、原料オレフィンを通過させて、原料オレフィン内の酸素を吸着除去することができる。
【0030】
ここで、酸素吸着剤は、CuO、NiO、MoO、ゼオライト3A(zeolite 3A)、活性アルミナ(activated alumina)、またはこれらの混合物であってもよい。具体的には、後述する実施例で確認されるように、同一条件で最も優れた酸素除去能を示すCuOであってもよい。
【0031】
活性化したアルミナは、水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)をジヒドロキシ化(dehydroxylation)して製造された超多孔性粒子であり、市販の商品としては、UOP社製のA‐201などがある。
【0032】
2種以上の吸着剤を使用する場合の一様態は、吸着塔を2段以上の区域に分けて2種以上の吸着剤をそれぞれ充填した形態で行われ得る。
【0033】
具体的には、例えば、吸着塔を3段に分けて、下段にはCuOを、中段には活性化したアルミナを、上段にはゼオライト3Aを充電するなどの様態で行われ得るが、これは例示であるだけである。
【0034】
酸素吸着剤のBET比表面積は、100~900m/gであってもよく、具体的には100~500m/gであってもよく、より具体的には200~300m/gであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
また、酸素吸着剤を2種以上採用する場合、それぞれの酸素吸着剤のBET比表面積は、独立して前記範囲内で定められ得る。
【0036】
本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法において、オレフィンを吸着塔に0.02~5hr-1の空間速度(gas hourly space velocity、GHSV)で投入することができる。より具体的には、0.07~2.5hr-1で投入することができる。本発明はこれに必ずしも制限されないが、この範囲で、エチレン内の酸素を100ppm未満の濃度に除去することができ、好ましい。ここで、空間速度は、オレフィンの流入流量(m/h)を反応器内の反応容積(m)で除して計算することができ、反応容積は、反応器内の触媒が充填された空間以外のオレフィンが流れ得る空間を意味する。
【0037】
本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法において、酸素不純物を除去するステップは、10~100℃の温度および5~100kg/cmの圧力下で行われ得る。ただし、本発明は必ずしもこれに制限されない。
【0038】
一方、本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法は、酸素不純物を除去するステップの後、酸素吸着剤を再生するステップをさらに含むことができる。
【0039】
酸素吸着剤を再生するステップをさらに行うことで、吸着塔内の吸着剤の使用期間を増やして工程費用を最小化することができ、これは、後述するように、1以上の吸着塔を使用して工程を運転する場合、各吸着塔の状態を循環式に変えながら連続して行うことができる。
【0040】
かかる吸着剤を再生するステップは、吸着剤内の吸着した酸素などの不純物を洗浄ガスで押し出して吸着剤を洗浄し、吸着塔内に残存する不純物とオレフィンを除去するステップであってもよい。
【0041】
まず、吸着剤別の再生方法についてより詳細に説明すると、CuO吸着剤の場合、吸着塔の温度を100~200℃に維持する状態で、洗浄ガスを吸着塔に通過させることで行われ得る。
【0042】
この際、洗浄ガスは、水素(H)および窒素(N)の混合ガスであってもよい。また、混合ガスで水素および窒素の体積比は5:95~95:5であってもよいが、これに限定されない。
【0043】
具体的には、かかる洗浄過程は、窒素を投入して吸着塔内の温度を100~120℃に加熱した後、水素および窒素を5:95の体積比で含む混合ガスを投入しながら150~200℃まで加熱し、洗浄を行うことができる。
【0044】
CuOの場合、200℃を超える範囲に温度を高めて洗浄する場合、変質して吸着能を失う恐れがあるため、洗浄温度は上記のようにすることが好ましい。
【0045】
吸着剤として、ゼオライト3A、NiO、MoO、または活性化したアルミナを使用する場合、窒素を洗浄ガスとして、200~300℃で洗浄を行うことができる。
【0046】
本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法での不純物を除去するステップの具体的な工程様態を、吸着剤としてCuOが充填された2個の吸着塔(第1吸着塔および第2吸着塔)を使用する場合を例にあげて説明すると、以下の通りである。
【0047】
先ず、第1吸着塔は、吸着工程を行い、第2吸着塔は、前に吸着工程が完了した状態で再生工程を行う。これにより、第1吸着塔では、オレフィン内の不純物が吸着され、第2吸着塔は、次の吸着工程のために吸着剤が再生される。この際、第1吸着塔の出口は、バルブなどを介してリニアアルファオレフィン製造工程の反応器と連通することができ、第2吸着塔の出口は、バルブなどを介して連通しないように調節することができる。
【0048】
かかるステップが完了すると、工程を変え、第1吸着塔は再生工程を、第2吸着塔は吸着工程を行うようにすることができ、かかる過程が連続して循環され得る。
【0049】
ただし、本発明はこれに制限されず、3個以上の吸着塔を使用し、2個のグループに分けて上記の過程を循環することも可能である。
【0050】
本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法の不純物を除去するステップにおいて、オレフィン内の酸素含量が100ppm未満になるようにしてもよい。
【0051】
オレフィン内の酸素含量を100ppm未満にすることで、後述する実施例からも確認されたように、高い収率でC6~C20のリニアアルファオレフィンが製造され、高い転換率も達成され得る。また、触媒毒として働く不純物の含有量を減少させて触媒の寿命が低減することを防止し、工程費用が低減することができる。
【0052】
以下、図1を参照して、本発明の一様態のリニアアルファオレフィンの製造方法について具体的な一例示として説明する。
【0053】
プラントは、オレフィン内の不純物を除去する吸着塔10と、オリゴマー化が行われる反応器20と、反応器20にオレフィン、触媒、助触媒、および溶媒を含む触媒組成物を注入するための注入ライン40と、反応器20からオリゴマー化反応生成物の流出のための流出ライン50と、流出ライン50に触媒不活性化剤を投入するための触媒不活性化剤の注入ライン60と、オリゴマー化反応生成物を分離するための蒸留器30とを含むことができる。
【0054】
先ず、吸着塔10で上述のオレフィン内の不純物を除去するステップが行われる。本ステップの具体的な内容は、上述したため省略する。
【0055】
不純物の除去の後、酸素などの不純物が除去されたオレフィンは、オレフィンのオリゴマー化のためのクロム系触媒、助触媒、および溶媒とともに注入ライン40を介してリニアアルファオレフィン製造反応器20に投入される。
【0056】
反応器20は、バッチ式反応器、セミバッチ式反応器および連続式反応器を含むことができるが、これらに限定されない。
【0057】
オリゴマー化反応のためのクロム系触媒は、CrL(L (X)またはCr (L(X)、(式中、Lは、ヘテロリガンドであり、Lは、有機リガンドであり、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲンであり、pは、0または1以上の整数であり、qは、(Crの酸化数-p)の整数であり、yは、2以上の整数であり、zは、(2×Crの酸化数)-yの整数である。)で表されてもよい。これは、オリゴマーとの反応効率に優れた触媒として好ましく採択され得るが、必ずしもこれに制限されない。
【0058】
溶媒は、不活性溶媒であってもよい。すなわち、クロム系触媒、助触媒および触媒不活性剤と反応しない任意の不活性溶媒が使用され得、不活性溶媒は、脂肪族炭化水素を含むことができる。脂肪族炭化水素は、飽和脂肪族炭化水素として、C2n+2(この際、nは1~15の整数)で表されるリニアの飽和脂肪族炭化水素、C2m(この際、mは3~8の整数)で表される脂環族飽和脂肪族炭化水素およびこれらの炭素原子数1~3の低級アルキル基が1または2以上置換された飽和脂肪族炭化水素を含む。これらを具体的に並べると、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノネン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、2,2‐ジメチルペンタン、2,3‐ジメチルペンタン、2,4‐ジメチルペンタン、3,3‐ジメチルペンタン、2,2,4‐トリメチルペンタン、2,3,4‐トリメチルペンタン、2‐メチルヘキサン、3‐メチルヘキサン、2,2‐ジメチルヘキサン、2,4‐ジメチルヘキサン、2,5‐ジメチルヘキサン、3,4‐ジメチルヘキサン、2‐メチルヘプタン、4‐メチルヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,4‐ジメチルシクロヘキサンおよび1,2,4‐トリメチルシクロヘキサンから選択される1種以上であり、これに限定されるものではない。
【0059】
助触媒は、有機アルミニウム化合物、有機アルミノキサン、有機ホウ素化合物またはこれらの混合物であってもよい。
【0060】
有機アルミニウム化合物は、AlR(Rは、それぞれ独立して、(C1‐C12)アルキル、(C2‐C10)アルケニル、(C2‐C10)アルキニル、(C1‐C12)アルコキシまたはハロゲンである。)の化合物またはLiAlHであってもよい。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0061】
より具体的には、有機アルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ‐n‐オクチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、アルミニウムイソプロポキシド、エチルアルミニウムセスキクロライドおよびメチルアルミニウムセスキクロライドから選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
有機アルミノキサンは、本発明をこれに限定するものではないが、トリメチルアルミニウムに水を添加して製造され得るオリゴマー化合物であってもよい。このように製造されたアルミノキサンオリゴマー化合物は、リニア、サイクリック、ケージ(cage)またはこれらの混合物であってもよい。
【0063】
具体的には、有機アルミノキサンは、アルキルアルミノキサン、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン(EAO)、テトライソブチルアルミノキサン(TIBAO)およびイソブチルアルミノキサン(IBAO)だけでなく、修飾アルキルアルミノキサン、例えば、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)から選択され得る。修飾メチルアルミノキサン(Akzo Nobel社製)は、メチル基以外にイソブチルまたはn‐オクチル基のような混成アルキル基を含むことができる。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0064】
より具体的には、有機アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン(EAO)およびテトライソブチルアルミノキサン(TIBAO)、イソブチルアルミノキサン(IBAO)から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0065】
有機ホウ素化合物は、本発明をこれに限定するものではないが、ボロキシン、NaBH、トリエチルボラン、トリフェニルボラン、トリフェニルボランアンモニア錯化合物、トリブチルボレート、トリイソプロピルボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリチル(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレートまたはエチルジフェニルアンモニウム(テトラペンタフルオロフェニル)ボレートであってもよく、これらの有機ホウ素化合物は、有機アルミニウム化合物、または有機アルミノキサンとの混合物として使用することができる。
【0066】
また、本発明の一様態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、オリゴマー化反応ステップの反応温度は、0~200℃の温度、具体的には15~130℃の温度、より具体的には40~100℃の温度で行われ得るが、これに制限するものではない。反応圧力は、大気圧~500barの圧力で、具体的には大気圧~100bar、より具体的には大気圧~80barの圧力で行われ得る。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
反応器20の後端に排出された反応生成物は、流出ライン50を介して蒸留器30に移送され、蒸留により製品別に分離して回収され得る。
【0068】
一方、流出ライン50に注入されて、無駄な副反応の発生を抑制する触媒不活性化剤は、当業界において採用される触媒不活性化剤であれば制限なく採択することができる。
【0069】
具体的には、2‐エチルヘキサノール(2‐ethylhexanol)であってもよい。
【0070】
他方、2‐エチルヘキサノールと類似した沸点を有するC10リニアアルファオレフィンの容易な分離のために、C6~C20のリニアアルファオレフィンより沸点が相当高いか、相当低い物質を使用することもできる。
【0071】
具体的な例示としては、沸点が低い酸素含有無機物として、O、CO、CO、HO、NO、SO、またはこれらの混合物であってもよい。具体的には、O、CO、CO、またはこれらの混合物であってもよく、より具体的には、COおよびOであってもよい。さらに具体的には、COは、様々な産業分野において副生成物または排気ガスとして発生する物質として安く手に入れることが可能であることから、工程経済性の向上の面で好ましい。
【0072】
ここで、NOは、例示的に、NO、NO、NO、N、N、N、またはこれらの混合物であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
他の具体的な例示としては、沸点が高い物質として、酸素、リン、窒素、および硫黄からなる群から選択される少なくとも一つを含む官能基のうち1種以上を含み、数平均分子量が400以上の有機化合物であってもよく、具体的には、C31以上のホスフィン(phosphine)系化合物、C31以上のアミン(amine)系化合物、C31以上のチオール(thiol)系化合物、またはC31以上のアルコール(alcohol)系化合物であってもよい。より具体的には、下記化学式1で表されるポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)であってもよい。
【0074】
【化1】

(化学式1中、nは、11以上170以下である。)
化学式1中、nは、より具体的には、12以上150以下、17以上130以下、17以上110以下、17以上35以下、または16以上35以下であってもよい。
【0075】
蒸留器30は、特定の形態の蒸留器に限定されず、蒸留塔の段数は、必要に応じて調節可能である。蒸留方式も特定の蒸留方式に限定されず、必要に応じて適切な蒸留方法を採用することができる。一例示を挙げるとBottom reboiler(BTM reboiler)およびOver head condenser(OVHD condenser)を含み、段数が50以上100段以下の複数の蒸留塔を用いることができる。
【0076】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1~4および比較例1~3]
実施例1および2‐エチレンをBET比表面積が200m/gであるCuO粒子(polymex‐301、Sud‐Chemie)が充填された1機の吸着塔を用いて、50℃、30kg/cmの圧力下で、1.5hr-1の空間速度で投入しながら0ppm水準に不純物を除去した後、その結果物を下記のようにバッチ(batch)反応器に投入し、オリゴマー化して得られた最終生成物内のC6~C20リニアアルファオレフィンの生成量およびこれよりも炭素含有量が多い高分子(polymer)の生成量を測定した。
【0078】
オリゴマー化触媒としては、下記のように準備したものを使用した。(([(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化クロム(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)](5.3μmol‐Cr))
【0079】
三テトラヒドロフラン三塩化クロム(CrCl(THF))2.1mg(5.3μmol)を二塩化メタン1mLに溶解し、この溶液に(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)リガンド化合物2.4mg(5.6μmol)を二塩化メタン1mLに溶解した溶液を徐々に加えて60分間反応させた。次に、5分間さらに撹拌した後、ナトリウムヘキサフルオロアセチルアセトネート1.3mg(5.6μmol)を徐々に加えた。次に、反応物を3時間さらに撹拌した後、0.2μmのシリンジフィルタ(syringe filter)を使用して濾過した。濾過した液体に真空をかけて揮発物を除去し、乾燥した暗緑色の固体を取得した。
【0080】
次に、2000mLのステンレススチール圧力反応器を窒素、真空で洗浄した後、メチルシクロヘキサン(MCH)1Lを投入し、助触媒として改質されたメチルアルミノキサン(m‐MAO3A、Akzo Nobel社製、18wt% in heptane)(1.57g、4mmol)を順に投入した後、反応器の温度を60℃に上げた。次に、上記で準備した[(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化クロム(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)]3.1mg(5.3μmol‐Cr)投入した後、不純物が除去されたエチレンを反応器内の圧力を20barまで満たした後、連続して圧力を維持しながら供給し、250rpmで2時間撹拌してオリゴマー化反応を行った。次に、撹拌を止めて反応器内の気相のエチレンをすべて排出し、反応器温度を10℃に冷却した。
【0081】
次に、触媒不活性剤としてCOガスをディップチューブを用いて1barの圧力で10分間投入し、反応溶液に対してバブリング(bubbling)を行って反応を終了した後、反応生成物を濾過、分離した。次に、濾過した生成物20mLを別のフラスコで1時間100度で乾燥した後、Internal standardでheptaneを使用してGC‐FID分析を実施し、C6~C20リニアアルファオレフィンの生成量およびこれよりも炭素含有量が多い高分子(polymer)の生成量を測定した。これは、表1にまとめた。COの投入量は、モル数基準で助触媒内のアルミニウムの総モル数に対して5倍である。
【0082】
実施例3および4‐不純物の除去時にエチレンの空間速度を調節して不純物を吸着した後、エチレン内の酸素の濃度が<100ppmである水準に不純物を除去した以外は、実施例1と同様に行った。
【0083】
比較例1~3‐不純物吸着ステップを行っていない以外は、実施例1と同様に行った。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から分かるように、吸着によりエチレン内の酸素不純物を除去した実施例の場合、C6~C20リニアアルファオレフィンの生成量が不純物の吸着を行っていない比較例に比べて著しく高く、不純物である高分子の生成量が非常に少なかった。
【0086】
[実施例5~7および比較例4]
実施例5~7‐実施例1と同じ方法で不純物の吸着を経たエチレンをバッチ反応器ではない連続反応器(CSTR)に注入しながら連続工程でオリゴマー化反応を行った。吸着塔内に投入するエチレンの空間速度を調節して不純物が除去されたエチレン内の酸素の濃度を調節した。
【0087】
具体的には、実施例1と同じ方法で製造されたオリゴマー化触媒(([(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化クロム(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)](5.3μmol‐Cr)))1.0gをメチルシクロヘキサン12Lに溶解し、触媒タンクに保存した。
【0088】
連続反応器(CSTR)にメチルシクロヘキサン2.0L/hrを注入しながら反応器の後端の圧力調節バルブを用いて、反応器の圧力を60barとして加圧した。加圧した後、反応器ジャケットに注入される熱流体の温度を高めて反応器内部の温度を60℃に上げた。昇温が終了すると、助触媒として改質されたメチルアルミノキサン(m‐MAO3A、Akzo Nobel社製、18wt% in heptane)(3.14g/hr、4mmol)を連続注入し、タンクに保存された[(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化クロム(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)]6.2mg/hr(5.3μmol‐Cr)を注入した。次に、不純物が除去されたエチレンを0.6kg/hrで連続注入し、反応を開始した。
【0089】
反応器の後端には、触媒不活性剤として2‐ethylhexanolを連続注入して反応を終了させ、生成物をサンプリングした。サンプリングした生成物を濾過して、GC‐FID分析を実施し、C6~C20リニアアルファオレフィンの生成量およびこれよりも炭素含有量が多い高分子(polymer)の生成量を計算した。これは表2にまとめた。
【0090】
比較例4‐不純物吸着過程を経ていないエチレンを連続注入した以外は、実施例5と同様に行った。
【0091】
【表2】
【0092】
表2から分かるように、吸着によりエチレン内の酸素不純物を除去した実施例の場合、C6~C20リニアアルファオレフィンの生成量が、不純物の吸着を行っていない比較例に比べて著しく高いことを確認することができる。
【0093】
[実施例8~10]
不純物の吸着時に吸着剤として、それぞれ、ゼオライトCaA、ゼオライト5A、ゼオライト13Xを使用した以外は、実施例5のような連続工程でリニアアルファオレフィンを製造し、その結果を表3にまとめた。
【0094】
【表3】
【0095】
表3において、ゼオライトCaA、ゼオライト5A、ゼオライト13Xを使用した場合、不純物の吸着を行っていない場合に比べて、優れたリニアアルファオレフィンの生成量を示す。
【0096】
ただし、CuOを吸着剤として使用した実施例5と比較した時には、同一条件で、エチレン内の酸素濃度が100ppmを超える水準であり、リニアアルファオレフィン生成量も相対的には劣っている結果を示した。
【符号の説明】
【0097】
10 吸着塔
20 反応器
30 蒸留器
40 注入ライン
50 流出ライン
60 触媒不活性化剤注入ライン
図1