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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】アゼチジン誘導体のボレート
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
A61P35/00
A61K31/69
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021503798
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2019098990
(87)【国際公開番号】W WO2020025037
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】201810872672.X
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810989128.3
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】シェ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ションビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ケヴィン エックス
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュフイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,アイミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,シークアン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,シン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527070(JP,A)
【文献】国際公開第2018/133661(WO,A1)
【文献】特表2011-524903(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105732683(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体:
(式中、
環Aはフェニル基又は5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~6アルキル基及びC1~6ヘテロアルキル基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~6アルキル基又はC1~6ヘテロアルキル基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、
nは、0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれ、
及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、
は、C1~6アルキル基から選ばれ、
は、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、
環Dは、5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は少なくとも1つの=Oによって置換され、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、OH、NH、COOH、C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6~10アリール基及び5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6~10アリール基又は5~10員ヘテロアリール基は、COOH、ハロゲン、OH、NH及びSHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、
mは、0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれる。)
【請求項2】
環Aは、フェニル基及び5~6員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記5~6員ヘテロアリール基は、窒素及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1つの環原子を含有する、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項3】
環Aは、フェニル基、ピリジル基及びチアゾリル基からなる群から選ばれる、請求項2に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項4】
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~3アルキル基及びC1~3アルコキシ基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~3アルキル基又はC1~3アルコキシ基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項5】
は、それぞれ、独立して、フッ素、CN及びトリフルオロメチル基からなる群から選ばれる、請求項4に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項6】
nは0、1及び2からなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項7】
造単位

からなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項8】
及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項9】
及びR は、それぞれ、独立して、Hから選ばれる、請求項8に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項10】
はC3~5アルキル基から選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項11】
はイソブチル基から選ばれる、請求項10に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項12】
は、H及びメチル基からなる群から選ばれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項13】
は、Hである、請求項12に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項14】
環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は1つの=Oによって置換され、任意選択的に、前記5~10員複素環基の環原子のうちのヘテロ原子がホウ素原子と酸素原子だけを含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項15】
環Dは
からなる群から選ばれる、請求項14に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項16】
mは0、1、2及び3からなる群から選ばれる、請求項1~15のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項17】
は、それぞれ、独立して、OH、NH、COOH及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、COOH、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよい、請求項1~16のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項18】
は、それぞれ、独立して、メチル基、t-ブチル基及びカルボキシメチル基からなる群から選ばれる、請求項17に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項19】
構造単位

ある、請求項1~18のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項20】
構造単位

からなる群から選ばれる、請求項19に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項21】
構造単位

からなる群から選ばれる、請求項19に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項22】
式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(II)の化合物、式(II-a)の化合物、式(III)の化合物、式(III-a)の化合物、式(IV)の化合物及び式(IV-a)の化合物からなる群から選ばれる、請求項1~21のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体:
(ここで、Xは-C(R-から選ばれ、且つYは-C(R-から選ばれ、又はXは=C(R)-から選ばれ、且つYは=C(R)-から選ばれ、ここで、R、R、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、1つ又は複数の-COOHによって置換されてもよく、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成する。)
【請求項23】
及びR は、それぞれ、独立して、水素及びC 1~3 アルキル基から選ばれ、又はR とR は互いに連結されてフェニル基を形成する、請求項22に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項24】
構造単位

からなる群から選ばれる、請求項22または23に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体。
【請求項25】
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体からなる群から選ばれ、
または、
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、若しくはその互変異性体からなる群から選ばれる、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体:
【請求項26】
Cu Kα線を用いたX線粉末回折(XRD)パターンにおいて、2θ6.00、11.98、17.88、20.88及び21.48度に回折ピークを有し、または、2θ6.00、8.90、11.98、17.88、20.88、21.48、24.60及び25.44度に回折ピークを有し、または、2θ6.00、8.90、11.98、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60及び25.44度に回折ピークを有し、または、2θ6.00、8.90、11.98、12.80、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60、25.44、27.66、28.94及び30.25度に回折ピークを有する、ことを特徴とする化合物I-1の結晶である、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体
【請求項27】
単斜晶系;空間群P 21;単位格子パラメータ:a=24.4220(5)Å、b=8.4507(2)Å、c=24.4590(5)Å、α=90度、β=107.683(1)度、γ=90度;Z=8である、ことを特徴とする化合物I-1の結晶である、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、若しくはその立体異性体を含む医薬組成物。
【請求項29】
多発性骨髄腫を予防又は治療するのに使用するための、請求項28に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本願は、2018年8月2日に中華人民共和国国家知識産権局に提出された中国特許出願第201810872672.X号の優先権及び利益、並びに、2018年8月28日に中華人民共和国国家知識産権局に提出された中国特許出願第201810989128.3号の優先権及び利益を主張し、その全内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本願は、アゼチジン誘導体のボレート化合物、その調製方法、該化合物を含有する医薬組成物、及び多発性骨髄腫に関連する疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)は、形質細胞悪性増殖性疾患であり、骨髄中のクローン形質細胞が異常に増生し、造血機能を破壊し、骨格を刺激して溶骨性病変を引き起こし、血清及び/又は尿液中にモノクローナル免疫グロブリン又はその断片(M蛋白)が検出され、骨痛、貧血、高カルシウム血症、腎機能障害、感染や出血などの臨床症状があることを特徴とする。ボルテゾミブは可逆的プロテアソーム阻害剤であり、骨髄腫細胞のアポトーシスを促進することで多発性骨髄腫を治療するという目的を達成させる。しかし、長期的治療したところ、一部の多発性骨髄腫の患者にはボルテゾミブに対する薬剤耐性が見られる。したがって、多発性骨髄腫を治療するための安全的で安定性の高い新規医薬品が求められる。
【発明の概要】
【0004】
本願は、アゼチジン誘導体のホウ酸化合物のプロドラッグであり、ホウ酸化合物に比べて、安定性に関して優位性があるアゼチジン誘導体のボレートを提供する。
【0005】
一態様によれば、本願は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、
環Aは、フェニル基及び5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~6アルキル基及びC1~6ヘテロアルキル基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~6アルキル基又はC1~6ヘテロアルキル基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、
nは、0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれ、
及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、
は、C1~6アルキル基から選ばれ、
は、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、
環Dは、5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は少なくとも1つの=Oによって置換され、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、OH、NH、COOH、C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6-10アリール基及び5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6-10アリール基又は5~10員ヘテロアリール基は、COOH、ハロゲン、OH、NH及びSHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基団によって置換されてもよく、
mは0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれる。)
【0006】
いくつかの実施形態では、環Aはフェニル基及び5~6員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記5~6員ヘテロアリール基は、窒素及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1つの環原子を含有する。いくつかの実施形態では、環Aはフェニル基、ピリジル基及びチアゾリル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、環Aはフェニル基から選ばれる。
【0007】
いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~3アルキル基及びC1~3アルコキシ基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~3アルキル基又はC1~3アルコキシ基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基団によって置換されてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、C1~3アルキル基及び1つ又は複数のハロゲンによって置換されたC1~3アルキル基から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、CN、C1~3アルキル基及び1、2又は3個のフッ素によって置換されたC1~3アルキル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、フッ素、CN及びトリフルオロメチル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、フッ素から選ばれる。
【0008】
いくつかの実施形態では、nは0、1及び2からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、nは1及び2からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、nは2から選ばれる。
【0009】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。
【0011】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

から選ばれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、R及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、R及びRは、それぞれ、独立して、Hから選ばれる。
【0013】
いくつかの実施形態では、RはC3~5アルキル基から選ばれる。いくつかの実施形態では、RはCアルキル基から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rはイソブチル基から選ばれる。
【0014】
いくつかの実施形態では、RはH及びメチル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、RはHから選ばれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は1つの=Oによって置換される。いくつかの実施形態では、環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、環Dは
である。いくつかの実施形態では、環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、環Dは
であり、且つ前記5~10員複素環基の環原子のうちのヘテロ原子がホウ素原子と酸素原子だけを含有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、環Dは5員、6員及び10員複素環基からなる群から選ばれ、ここで、前記5員、6員又は10員複素環基は、少なくとも1つの=Oによって置換される。いくつかの実施形態では、環Dは5員、6員及び10員複素環基からなる群から選ばれ、ここで、前記5員、6員又は10員複素環基は、1つの=Oによって置換される。いくつかの実施形態では、環Dは5員、6員及び10員複素環基からなる群から選ばれ、ここで、環Dは
である。いくつかの実施形態では、環Dは5員、6員及び10員複素環基からなる群から選ばれ、ここで、環Dは
であり、且つ前記5員、6員又は10員複素環基の環原子のうちのヘテロ原子がホウ素原子と酸素原子だけを含有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、環Dは
からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、環Dは
から選ばれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、mは0、1、2及び3からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、mは0、1及び2からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、mは0及び1からなる群から選ばれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、OH、NH、COOH及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、COOH、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基団によって置換されてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、1つ又は複数のCOOHによって置換されてもよいC1~4アルキル基から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、独立して、メチル基、t-ブチル基及びカルボキシメチル基からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、Rは、それぞれ、カルボキシメチル基から選ばれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

である。
【0021】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

から選ばれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の構造単位

から選ばれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本願の式(I)の化合物は、式(I-0)化合物のプロドラッグである。
(ここで、環A、n、R、R、R、R及びRは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0025】
いくつかの実施形態では、式(I-0)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0026】
別の態様によれば、本願は、また、式(I-a)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、環D、n、R、R、R、R、R、R及びmは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0027】
いくつかの実施形態では、式(I-a)化合物の構造単位
又は構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本願の式(I-a)化合物は式(I-a-0)化合物のプロドラッグである。
(ここで、環A、n、R、R、R、R及びRは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0029】
いくつかの実施形態では、式(I-a-0)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0030】
別の態様によれば、本願は、また、式(II)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、環D、n、R、R及びmは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0031】
いくつかの実施形態では、式(II)化合物の構造単位
又は構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0032】
別の態様によれば、本願は、また、式(II-a)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、環D、n、R、R及びmは上記式(II)化合物と同義である。)
【0033】
いくつかの実施形態では、式(II-a)化合物の構造単位
又は構造単位
は上記式(II)化合物と同義である。
【0034】
別の態様によれば、本願は、また、式(III)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、n、R、m及びRは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0035】
いくつかの実施形態では、式(III)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(III)化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、式(III)化合物の構造単位

から選ばれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、式(III)化合物の構造単位

からなる群から選ばれる。いくつかの実施形態では、式(III)化合物の構造単位

から選ばれる。
【0038】
別の態様によれば、本願は、また、式(III-a)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、n、R、R、m、及び式(III-a)化合物の構造単位

は上記式(III)化合物と同義である。)
【0039】
別の態様によれば、本願は、また、式(IV)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、n、Rは上記式(I)の化合物と同義であり、
Xは-C(R-から選ばれ、且つYは-C(R-から選ばれ、若しくはXは=C(R)-から選ばれ、且つYは=C(R)-から選ばれ、ここで、R、R、R又はRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、1つ又は複数の-COOHによって置換されてもよく、若しくはRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、若しくはRとRは互いに連結されて3~6員環を形成する。)
【0040】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0041】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物において、R、R、R又はRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、1つ又は複数の-COOHによって置換されてもよく、若しくはRとRは互いに連結されて3~6員環を形成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物において、R、R、R又はRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、若しくはRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、若しくはRとRは互いに連結されて3~6員環を形成する。
【0043】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物において、R、Rは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、若しくはRとRは互いに連結されて5~6員環を形成する。
【0044】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物において、R、Rは、それぞれ、独立して、水素及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、若しくはRとRは互いに連結されてフェニル基を形成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物において、Rはメチル基から選ばれ、Rは水素から選ばれ、若しくはRとRは互いに連結されてフェニル基を形成する。
【0046】
いくつかの実施形態では、式(IV)化合物中の構造単位

からなる群から選ばれる。
【0047】
別の態様によれば、本願は、また、式(IV-a)化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
(ここで、環A、n、R、X、Yは上記式(IV)化合物と同義である。)
【0048】
いくつかの実施形態では、式(IV-a)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本願の式(II)化合物、式(III)化合物又は式(IV)化合物は式(II-0)化合物のプロドラッグである。
(ここで、環A、n及びRは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0050】
いくつかの実施形態では、式(II-0)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本願の式(II-a)化合物、式(III-a)化合物又は式(IV-a)化合物は式(II-a-0)化合物のプロドラッグである。
(ここで、環A、n及びRは上記式(I)の化合物と同義である。)
【0052】
いくつかの実施形態では、式(II-a-0)化合物の構造単位
は上記式(I)の化合物と同義である。
【0053】
別の態様によれば、本願は、また、以下の構造式から選ばれる化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本願の上記化合物は、それぞれ以下の化合物のプロドラッグである。
【0055】
別の態様によれば、本願は、また、以下の構造式から選ばれる化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本願の上記化合物は、それぞれ、以下の化合物のプロドラッグである。
【0057】
別の態様によれば、本願は、また、化合物I-1、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体又はその幾何学的異性体を提供する。
【0058】
別の態様によれば、本願は、また、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本願の医薬組成物は、薬学的に許容される補助材料、担体又は希釈剤のうちの1種又は複数種をさらに含む。
【0059】
別の態様によれば、本願は、また、治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体、又はその医薬組成物を治療有効量で投与することを含む哺乳動物の多発性骨髄腫の治療方法を提供する。
【0060】
別の態様によれば、本願は、また、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又は幾何学的異性体、又はその医薬組成物の、多発性骨髄腫を予防又は治療するための医薬品の調製における用途を提供する。
【0061】
別の態様によれば、本願は、また、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体、又はその医薬組成物の、多発性骨髄腫の予防又は治療における用途を提供する。
【0062】
別の態様によれば、本願は、また、多発性骨髄腫を予防又は治療するための式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体又はその幾何学的異性体、又はその医薬組成物を提供する。
【0063】
別の態様によれば、本願は、薬物動態、バイオアベイラビリティ、吸湿性、安定性、溶解性、純度、調製し易さなどの少なくとも1つに関して優れた性質を有する、化合物I-1の結晶を提供する。
【0064】
本願は、化合物I-1のForm I結晶を提供し、Cu Kα線を用いたX-線粉末回折(XRPD)パターンにおいて、前記化合物I-1のForm I結晶は、2θ約6.00、11.98、17.88、20.88、21.48度で回折ピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、前記化合物I-1のForm I結晶は、2θ約6.00、8.90、11.98、17.88、20.88、21.48、24.60、25.44度で回折ピークを有する。いくつかの実施形態では、前記化合物I-1のForm I結晶は、2θ約6.00、8.90、11.98、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60、25.44度で回折ピークを有する。いくつかの実施形態では、前記化合物I-1のForm I結晶は、2θ約6.00、8.90、11.98、12.80、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60、25.44、27.66、28.94、30.25度で回折ピークを有する。
【0065】
さらに、本願の化合物I-1のForm I結晶のCu Kα線を用いたX-線粉末回折パターンにおいて、回折ピークのピーク位置及び相対強度を下表1に示す。
【0066】
表1 化合物I-1のForm I結晶のX線粉末回折パターンの回折ピークのピーク位置及び相対強度
【0067】
特定の一実施形態では、本願に係る化合物I-1のForm I結晶のXRPDパターンを図1に示す。
【0068】
特定の一実施形態では、本願は、化合物I-1のForm I結晶を提供し、前記結晶は、単斜晶系;空間群P 21;単位格子パラメータ:a=24.4220(5)Å、b=8.4507(2)Å、c=24.4590(5)Å、α=90度、β=107.683(1)度、γ=90度;Z=8を特徴とする。
【0069】
本願では、X-線粉末回折スペクトルにより測定された機器は、型番Bruker D8 Advance線回折装置であり、条件及び方法は、チューブ:Cu、Kα、(λ=1.54056Å)、40kv 40mA;スリット:0.60mm/10.50mm/7.10mm、走査範囲:3~40°又は4~40°、time[s]:0.12、ステップ:0.02°とする。
【0070】
任意の所定の結晶形に関しても、たとえば結晶形態などの要因による優先配向のため、回折ピークの相対強度が変化可能であることは、結晶学分野において公知することである。優先配向による影響を受けるところでは、ピーク強度が変化可能であるが、結晶形の回折ピークの位置が変わらない。さらに、任意の所定の結晶形に関しては、ピークの位置にはわずかな誤差がある可能性があり、これも、結晶学分野において公知することである。たとえば、サンプル分析における温度の変化、サンプルの移動、又は機器のキャリブレーションなどにより、ピークの位置が移動可能であり、2θ値の測定誤差が約±0.2度であることがあり、したがって、当業者にとって明らかなように、各種の結晶の構造を同定する際に、この誤差を考慮すべきである。
【0071】
別の態様によれば、本願は、化合物I-1のForm I結晶の調製方法を提供し、前記方法は、化合物I-1を溶媒から析出させるステップを含み、ここで、前記溶媒は、酢酸イソプロピル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、メチルt-ブチルエーテル、n-ヘプタン及び2-メチルテトラヒドロフランから選ばれる1種又は複数種である。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記溶媒は酢酸イソプロピルから選ばれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本願は、化合物I-1のForm I結晶の調製方法を提供し、前記方法は、
L-リンゴ酸と化合物4-9とを酢酸イソプロピルにて反応させ、化合物I-1を得るステップ1)と、
固体を析出させるステップ2)と、を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、ステップ1)において、L-リンゴ酸を酢酸イソプロピルに溶解し、化合物4-9を酢酸イソプロピルに溶解し、上記の2種の溶液を混合する。
【0075】
いくつかの実施形態では、ステップ2)の後に、ステップ2)で析出させた固体を分離することをさらに含む。いくつかの特定の実施形態では、ステップ2)で析出させた固体を分離した後、分離した固体を乾燥させることをさらに含む。
【0076】
さらなる態様によれば、本願は、前記化合物I-1の結晶を結晶組成物の重量に対して50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上含む結晶組成物であって、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である結晶組成物を提供する。
【0077】
またさらなる態様によれば、本願は、治療有効量の本願の前記化合物I-1の結晶、又はその結晶組成物を含む医薬組成物であって、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である医薬組成物を提供する。本願の医薬組成物は、薬学的に許容される補助材料を含有してもよく、含有しなくてもよい。さらに、本願の医薬組成物は、1種又は複数種のほかの治療剤をさらに含み得る。
【0078】
別の態様によれば、本願は、また、治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに、化合物I-1の結晶、又はその結晶組成物、又はその医薬組成物を治療有効量で投与することを含む哺乳動物の多発性骨髄腫の治療方法であって、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である方法を提供する。
【0079】
別の態様によれば、本願は、また、化合物I-1の結晶、又はその結晶組成物、又はその医薬組成物の、多発性骨髄腫を予防又は治療するための医薬品の調製における用途であって、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である用途を提供する。
【0080】
別の態様によれば、本願は、また、化合物I-1の結晶、又はその結晶組成物、又はその医薬組成物の、多発性骨髄腫の予防又は治療における用途であって、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である用途を提供する。
【0081】
別の態様によれば、本願は、また、多発性骨髄腫を予防又は治療するための化合物I-1の結晶、又はその結晶組成物、又はその医薬組成物を提供し、ここで、前記化合物I-1の結晶は化合物I-1のForm I結晶である。
【0082】
定義
特に断らない限り、本願で使用される以下の用語は以下の定義を有する。1つの特定の用語は、特に定義しない場合、確定又は明瞭ではないと思われるのではなく、当該分野での定義で理解すべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、それに対応する商品又はその活性成分を意味する。
【0083】
本願における構造単位若しくは基団における点線(
)は共有結合を示す。
【0084】
用語「置換された」とは、特定原子上の任意の1つ又は複数の水素原子が置換基により置換されたことを意味し、特定原子の原子価が正常であり且つ置換された化合物が安定的であればよい。置換基がオキソ(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されたことを意味し、オキソは芳香族基に発生することはない。
【0085】
用語「でもよい」又は「でもよく」とは、後で説明するイベント又は状況が発生してもよく、発生しなくてもよく、この説明には、前記イベント又は状況が発生した場合と、前記イベント又は状況が発生しない場合とが含まれる。たとえば、エチル基がハロゲンにより置換「されてもよい」とは、エチル基が未置換(-CHCH)、一置換(たとえば-CHCHF)、多置換(たとえば-CHFCHF、-CHCHFなど)又は全置換(-CFCF)であってもよい。当業者が理解できるように、1つ又は複数の置換基を含むいずれの基団でも、空間的に存在し得ない及び/又は合成できない置換又は置換モードを導入することはない。
【0086】
任意の変数(たとえばR)が化合物の構成又は構造において1回以上現れる場合、各場合での定義はそれぞれ独立する。たとえば、1つの基団が0~2個のRにより置換される場合、前記基団は、多くとも2つのRにより置換されてもよく、且つ各場合のRはそれぞれ独立したオプションがある。さらに、構造単位
における各Rはそれぞれ独立しており、同じでも異なっていてもよい。さらに、置換基及び/又はその変形の組み合わせは、このような組み合わせが安定的な化合物を生成し得る場合にのみ許可される。
【0087】
本願では、Cm-nとは、この部分には所定の範囲m~n中の整数個の炭素原子を有することを意味する。たとえば、「C1~6」とは、この基団が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子又は6個の炭素原子を有し得ることを意味する。
【0088】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0089】
用語「アミノ基」とは-NH基団を指す。
【0090】
用語「アルキル基」とは、一般式-C2n+1の炭化水素基である。該アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。たとえば、用語「C1~6アルキル基」とは、炭素数1~6のアルキル基(たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基など)を指す。
【0091】
用語「複素環」、「複素環基」、「複素環基団」は、交換して使用可能であり、且つ安定的な3員~7員単環又は縮合7員~10員又は架橋6員~10員二環複素環部分を意味し、飽和又は部分不飽和のものであり、且つ炭素原子に加えて1つ又は複数のヘテロ原子を有する。ここで、前記ヘテロ原子は、N、S、Oからなる群から選ばれる1種又は複数種であり得る。複素環は、安定的な構造を生成する任意のヘテロ原子又は炭素原子でその側基に連結することができ、且つ環原子のいずれかが置換されてもよい。前記飽和又は部分不飽和複素環基の例として、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、ピロリドニル基、ピペリジニル基、ピロリニル基、テトラヒドロキノリニル基、テトラヒドロイソキノリニル基、デカヒドロキノリニル基、オキサゾリジニル基、ピペラジニル基、ジオキサニル基、ジオキソラニル基、ジアゼピニル基、オキサゼピニル基、チアゼピニル基、モルホリニル基及びキヌクリジニル基を含むが、これらに制限されない。
【0092】
用語「シクロアルキル基」とは、単環、架橋環又はスピロ環として存在し得る完全飽和炭素環を指す。特に指示がない限り、該炭素環は、通常3~10員環である。シクロアルキル基の非限定的な例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基)、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、アダマンチル基などが含まれるが、これらに制限されない。
【0093】
用語「アリール基」とは、共役のπ電子系を有する全炭素単環又は縮合多環の芳香環基団を指す。たとえば、アリール基は、6~20個の炭素原子、6~14個の炭素原子又は6~12個の炭素原子を有し得る。アリール基の非限定的な例には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、及び1,2,3,4-テトラリンなどを含むが、これらに制限されない。
【0094】
用語「ヘテロアリール基」とは、単環又は縮合多環系を指し、ここで、N、O、Sからなる群から選ばれる環原子を少なくとも1つ含有し、残りの環原子がCであり、且つ少なくとも1つの芳香環を有する。好ましいヘテロアリール基は、1つの4~8員環、特に5~8員環、又は6~14個、特に6~10個の環原子を含む複数の縮合環を有する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、テトラゾリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基などを含むが、これらに制限されない。
【0095】
用語「ヘテロアルキル基」とは、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であり、鎖には好ましくは1~14個の炭素、より好ましくは1~10個の炭素、さらに好ましくは1~6個の炭素、最も好ましくは1~3個の炭素を有し、ここで、1つ又は複数の炭素は、S、O及びNからなる群から選ばれるヘテロ原子で置換される。例示的なヘテロアルキル基には、アルキルエーテル、s-アルキルアミンとt-アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルスルフィド(alkyl sulfide)など、たとえばアルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基が含まれ、別に規定しない限り、C1~6ヘテロアルキル基は、C、C、C、C、C及びCのヘテロアルキル基、たとえばC1~6アルコキシ基、C1~6アルキルチオ基、C1~6アルキルアミノ基を含む。
【0096】
用語「アルコキシ基」とは-O-アルキル基である。
【0097】
用語「治療」とは、本願の前記化合物又は製剤を投与することで疾患又は前記疾患に関連する1つ又は複数の症状を予防、改善又は消除することを意味し、以下の場合を含む。
(i)疾患又は病状が哺乳動物、特にこの病状に罹患しやすいが、病状に罹患したと診断されないこのような哺乳動物に発症することを予防すること、
(ii)疾患又は病状を抑制し、つまりその進行を阻害すること、
(iii)疾患又は病状を緩和させ、つまり、この疾患又は病状を解消すること。
【0098】
用語「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、病状又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状を低減、改善又は解消する、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病状又は障害の1種又は複数種の症状の発生を予防又は遅延し得る本願の化合物の使用量を指す。「治療有効量」となる本願の化合物の量は、該化合物、病状及びその重症度、投与方式及び治療対象の哺乳動物の年齢によって変わるが、例示的には当業者によって自分の知識及び本開示の内容に基づいて決定され得る。
【0099】
用語「薬学的に許容される」とは、化合物、材料、組成物及び/又は剤形に関しては、確実な医学的判断による範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応、ほかの問題や合併症を引き起こすことなくヒトや動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比と合致することを意味する。
【0100】
薬学的に許容される塩として、たとえば、金属塩、アンモニウム塩、有機アルカリと形成する塩、無機酸と形成する塩、有機酸と形成する塩、アルカリ性若しくは酸性アミノ酸と形成する塩などが考えられる。
【0101】
用語「医薬組成物」とは、1種又は複数種の本願の化合物又はその塩と、薬学的に許容される補助材料とからなる混合物である。医薬組成物とする目的は、生体への本願の化合物の投与を容易にすることである。
【0102】
用語「薬学的に許容される補助材料」とは、生体に対して明らかな刺激がなく、この活性化合物の生物学活性及び性能を損なわない補助材料である。適切な補助材料は当業者が公知するものであり、たとえば炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などがある。
【0103】
本願では、用語「含む(comprise)」又は「含み(comprise)」及びこれらの英語の変態たとえばcomprises又はcomprisingは、非排他的でオープンな意味で理解すべきであり、即ち「を含むが、これらに制限されない」。
【0104】
本願の化合物及び中間体は、異なる互変異性体の形態で存在してもよく、且つこのような形態のすべては本願の範囲に含まれる。用語「互変異性体」又は「互変異性体の形態」とは、低エネルギーバリアを通じて互変可能な、エネルギーの異なる構造異性体である。たとえば、プロトン互変異性体(プロトン移動互変異性体とも呼ばれる)は、プロトン移動による互変、たとえばケト-エノール及びイミン-エナミン異性化を含む。プロトン互変異性体の具体例はイミダゾール部分であり、ここで、プロトンが2つの環窒素間で移動可能である。互変異性体は結合電子の再編成による互変の一部を含む。
【0105】
特に断らない限り、立体中心の絶対立体配置は楔形結合及び点線結合(
)で表される。本願の化合物がオレフィン性二重結合又は他の幾何学的非対称中心を含む場合、特に規定しない限り、EとZ幾何学的異性体を含む。同様に、すべての互変異性体形態は本願の範囲に含まれる。
【0106】
本願の化合物では、特定の幾何学的異性体又は立体異性体の形態が存在し得る。本願では、すべてのこのような化合物が想定されており、互変異性体、シス異性体及びトランス異性体、(-)-と(+)-エナンチオマー、(R)-と(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物やほかの混合物、たとえばエナンチオマー又はジアステレオマーリッチな混合物が含まれ、これらはすべて本願の範囲に属する。アルキル基などの置換基には別の不斉炭素原子が存在してもよい。これらの異性体のすべて及びこれらの混合物はすべて本願の範囲に含まれる。
【0107】
本願は、1つ又は複数の原子が原子量又は質量数が自然によく見られた原子量又は質量数と異なる原子により置換された以外、本明細書に記載のものと同じ同位体で標識された本願の化合物である。本願の化合物に結合し得る同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、及び塩素の同位体が含まれ、たとえば、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I、及び36Clなどである。
【0108】
同位体で標識された本願の化合物(たとえばH及び14Cで標識されたもの)は化合物及び/又は基質組織の分布の分析に用いられ得る。トリチウム化水素(即ちH)と炭素-14(即ち14C)同位体は、製造し易さ及び検出可能性のため、特に好ましい。陽電子放出同位体、たとえば15O、13N、11C及び18Fは、基質占有率を測定するために陽電子放出断層撮影(PET)の研究に用いられ得る。通常、以下で開示された形態及び/又は実施例におけるものと類似した下記手順により、同位体標識試薬を同位体で標識されていない試薬に変更して同位体で標識された本願の化合物を調製することができる。
【0109】
さらに、重い同位体(たとえば重水素(即ちH))による置換は、高代謝安定性による治療上の利点(たとえばインビボ半減期の増加又は必要な用量の低減)を提供することができ、したがって、場合によって好ましく、ここで、重水素置換は部分的又は完全的に行われ得、部分重水素置換とは、少なくとも1つの水素が少なくとも1つの重水素により置換されることを意味する。
【0110】
本願の化合物は非対称のものであってもよく、たとえば、1つ又は複数の立体異性体を有する。特に断らない限り、すべての立体異性体、たとえばエナンチオマーとジアステレオマーは本願に含まれる。本願では、不斉炭素原子を含む化合物は、光学的に純粋な形態又はラセミの形態で分離され得る。光学的に純粋な形態は、ラセミ混合物から分割する、又はキラル原料又はキラル試薬を用いて合成することができる。
【0111】
本願の医薬組成物は、本願の化合物と適切な薬学的に許容される補助材料とを組みわせて調製することができ、たとえば固体、半固体、液体又は気体製剤、たとえば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、膏剤、クリーム剤、懸濁剤、座剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、ミクロスフェアやエアロゾルなどとしてもよい。
【0112】
本願の化合物又はその薬学的に許容される塩又はその医薬組成物の典型的な投与経路は、経口投与、直腸投与、局所投与、吸入投与、非経口投与、舌下投与、膣内投与、鼻腔内投与、眼内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与などを含むが、これらに制限されない。
【0113】
本願の医薬組成物は、本分野で周知する方法、たとえば通常の混合法、溶解法、造粒法、糖衣錠剤化法、粉砕法、乳化法、凍結乾燥法などを用いて制造できる。
【0114】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は経口形態である。経口投与の場合、活性化合物と本分野で公知する薬学的に許容される補助材料とを混合することで、該医薬組成物を調製することができる。これらの補助材料を用いると、本願の化合物を錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤、液体、ゲル剤、シロップ剤、懸濁剤などに調製して、患者に経口投与することができる。
【0115】
固体経口医薬組成物は通常の混合、充填又は製剤方法によって調製される。たとえば、前記の活性化合物と固体補助材料を混合し、必要に応じて得た混合物を粉砕し、必要な場合、他の適切な補助材料を加え、次に、該混合物を顆粒に加工して、錠剤又は糖衣剤の素錠を得るという方法によって得られる。適切な補助材料は、粘着剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤や矯味剤などを含むが、これらに制限されない。
【0116】
医薬組成物は、非経口投与にも適用でき、たとえば、適切な単位剤型の無菌溶液剤、懸濁剤又は凍結乾燥製品などが挙げられる。
【0117】
本明細書に記載の一般式(I)の化合物のすべての投薬方法では、1日投与量が0.01mg/kg~200mg/kg体重であり、一括又は分割用量で投与する。
【0118】
本願の化合物は、当業者に公知するさまざまな合成方法、下記に記載の特定の実施形態、これらの実施形態と他の化学合成方法とを組み合わせた実施形態、及び当業者に公知する等同置換方式によって調製することができ、好ましい実施形態は、本願の実施例を含むが、これらに制限されない。
【0119】
本願の特定の実施形態の化学反応は、適切な溶媒において行われ、前記溶媒は、本願の化学変化及びそれに必須な試薬や材料に適しなければならない。本願の化合物を得るために、場合によって、当業者は既存の実施形態に基づいて合成ステップ若しくは反応手順を修正又は選択する必要がある。
【0120】
本分野の合成経路では、考慮に入れる要因の1つは反応性官能基(たとえば本願におけるアミノ基)に適切な保護基を選択することであり、たとえば、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis (4th Ed). Hoboken,New Jersey: John Wiley & Sons,Inc.を参照することができ、本願で引用されるすべての参照文献は全体として本願に組み込まれる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本願の式(I)の化合物は、当業者が以下の汎用経路を通じて本分野で知られている方法により調製できる。
【0122】
本願では、下記略語が使用されている。
【0123】
TBTUは、O-ベンゾトリアゾリル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートを表し、TMSClはトリメチルクロロシランを表し、Cu(OAc)は酢酸銅を表し、TEAはトリエチルアミンを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、DIEA/DIPEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンを表し、HPLCは高速液体クロマトグラフィーを表し、SFCは超臨界流体クロマトグラフィーを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、MeOHはメタノールを表し、THFはテトラヒドロフランを表し、DCMはジクロロメタンを表し、Cyはシクロヘキシル基を表し、TFAはトリフルオロ酢酸を表す。
【0124】
明確にするために、実施例にて本発明をさらに説明するが、実施例は本願の範囲を制限するものではない。本願で使用されるすべての試薬は市販品であり、さらに精製せずに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】本願の実施例4で調製された化合物I-1のForm I結晶のXRPDパターンである。
図2】算出した化合物I-1のForm I結晶のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0126】
実施例1 化合物1-9の合成
ステップ1:化合物1-2の合成
0℃で、化合物1-1(10.00g)とメタノール(100.00mL)との混合溶液にTMSCl(27g)を加え、その後、反応混合物を窒素ガス保護下、室温で12時間撹拌した。減圧下濃縮させて反応させ、化合物1-2を得た。化合物1-2:1HNMR: (400 MHz, METHANOL-d4) δ 5.04-5.17 (m, 1H), 4.11 (q, J=9.12 Hz, 1H), 3.91 (dt, J=5.90, 9.98 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 2.59-2.86 (m, 2H)。
ステップ2:化合物1-3の合成
室温でp-フルオロフェニルボロン酸(7g)のアセトニトリル(80.00mL)溶液に化合物1-2(2.53g)、4Å分子篩(2.00g)、Cu(OAc)(3.33g)及びTEA(6.75g)を加えた。反応混合物を80℃に加熱し、さらに12時間撹拌した。反応混合物をろ過して、ろ液を濃縮させ、得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=3:1)により精製し、化合物1-3を得た。化合物1-3:1HNMR:(400 MHz, CHLOROFORM-d) δ 6.87-7.02 (m, 2H), 6.41-6.54 (m, 2H), 4.45 (dd, J=7.65, 8.66 Hz, 1H), 4.00 (ddd, J=3.89, 6.71, 8.47 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.58-3.75 (m, 1H), 2.46-2.75 (m, 2H)。MS (ESI) m/z: 209.9 [M+1]。
ステップ3:化合物1-4の合成
氷浴下、化合物1-3(700.00mg)のメタノール(3.00mL)、テトラヒドロフラン(3.00mL)、及び水(1.50mL)の混合溶液にLiOH・HO(702.83mg)を加えた。反応混合物を0℃~室温で3時間撹拌し、その後、1mol/Lの塩酸でpH=6に調整し、混合液を濃縮させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて、濃縮させて溶媒を除去し、化合物1-4を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物1-4:MS (ESI) m/z: 195.9 [M+1]。
ステップ4:化合物1-5の合成
-10℃で化合物1-4(150.00mg)のDMF(3.00mL)溶液にグリシンメチルエステル塩酸塩(115.78mg)、TBTU(296.09mg)、及びDIEA(397.27mg、0.53mL)を加えた。反応混合物を-10℃~0℃で3時間撹拌し、その後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えた。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過し、濃縮させて溶媒を除去し、得た産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により精製し、化合物1-5を得た。化合物1-5:1HNMR: (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ 7.41 (br s, 1H), 6.90-7.04 (m, 2H), 6.44-6.57 (m, 2H), 4.28-4.37 (m, 1H), 4.11 (dd, J=5.90, 8.66 Hz, 2H) 3.98 (ddd, J=3.39, 6.90, 8.53 Hz, 1H), 3.66-3.80 (m, 4H), 2.45-2.69 (m, 2H)。MS (ESI) m/z: 266.9 [M+1]。
ステップ5:化合物1-6の合成
化合物1-5(160.00mg)のTHF(2.00mL)、MeOH(2.00mL)、及びHO(1.00mL)の混合溶液にLiOH・HO(126.07mg)を加えた。反応混合物を0℃~室温で12時間撹拌し、その後、1mol/Lの塩酸でpH=3に調整した。混合液を濃縮させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて、濃縮させて溶媒を除去し、化合物1-6を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物1-6:MS (ESI) m/z: 252.9 [M+1]。
ステップ6:化合物1-8の合成
-10℃で化合物1-6(150.0mg)のDMF(5.00mL)溶液に化合物1-7(178.10mg)、TBTU(229.12mg)、及びDIEA(307.42mg、415.43μL)を加えた。反応混合物を-10℃~0℃で2時間撹拌し、その後、反応混合物に水(5mL)を加え、水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮させ、溶媒を除去し、化合物1-8を得た。化合物1-8:MS (ESI) m/z: 448.1 [M+1]。
ステップ7:化合物1-9の合成
氷浴下、化合物1-8(260.00mg)のメタノール(5.00mL)溶液にイソブチルホウ酸(414.73mg)とHCl(1mol/L、41.55μL)水溶液を加えた。反応混合物を室温に昇温し、さらに3時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮させて、粗品を得、その後、分取HPLCにより分離して精製し、次に、SFCで分離して精製し、化合物1-9を得た。化合物1-9:1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ 6.76-6.93 (m, 2H), 6.63 (br d, J=4.52 Hz, 2H), 4.59 (br s, 5H), 4.08 (br d, J=10.29 Hz, 1H), 2.73 (br s, 1H), 2.07-2.40 (m, 2H), 1.52-1.75 (m, 1H), 1.31 (br d, J=16.81 Hz, 2H), 0.80-0.97 (m, 6H)。MS (ESI) m/z: (M-17) 347.9。
分取HPLC分離条件:
カラム:Phenomenex Synergi C18 150*30mm*4μm;
流動相:A:水(0.225%ギ酸)、B:メタノール;
溶出勾配:B%:55%~85%;
ピーク出現時間:10min。
SFC分離条件:
カラム:AD(250mm*30mm、5μm);
流動相:A:二酸化炭素、B:メタノール;
溶出勾配:B%:20%~20%;
流速:50mL/min;
ピーク出現順番は、高速キラル液体カラムクロマトグラフィーにおいて出現する二番目のピークである。
【0127】
実施例2 化合物2-8の合成
ステップ1:化合物2-2の合成
室温で化合物1-2(173.15mg)と2,3,5-トリフルオロピリジン(0.1g)のDMSO(10mL)溶液にKPO(319.03mg)を加えた。反応混合物を120℃に加熱して、48時間撹拌した。その後、反応液を移し、水(10mL)を加えて希釈し、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮させ、溶媒を除去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=5:1)で分離し、化合物2-2を得た。化合物2-2:1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ 7.87 (d, J=2.26 Hz, 1H), 7.06 (ddd, J=2.38, 8.09, 10.85 Hz, 1H), 4.83-4.93 (m, 1H), 4.20-4.31 (m, 1H), 3.98-4.09 (m, 1H), 3.74-3.84 (m, 3H), 2.67 (dtd, J=5.14, 8.94, 11.11 Hz, 1H), 2.49 (tdd, J=6.68, 8.78, 11.23 Hz, 1H)。MS (ESI) m/z: 228.9 [M+1]。
ステップ2:化合物2-3の合成
0℃で化合物2-2(280.00mg)のMeOH(1.00mL)、THF(1.00mL)、及びHO(0.50mL)の混合溶液にLiOH・HO(257.43mg)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、1mol/Lの塩酸でpHを6~7に調整し、混合液を濃縮させ、化合物2-3を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物2-3:MS (ESI) m/z: 214.9 [M+1]。
ステップ3:化合物2-4の合成
-10℃で化合物2-3(0.3g)のDCM(10mL)溶液にグリシンメチルエステル塩酸塩(211.05mg)、TBTU(539.71mg)、及びDIPEA(724.14mg)を加えた。反応混合物を-10℃~0℃で3時間撹拌し、その後、反応混合物に水(10mL)を加えた。水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮させ、溶媒を除去し、得た産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=1:1)で分離して精製し、化合物2-4を得た。化合物2-4:1H NMR (400 MHz, CHLOROFORM-d) δ 8.03 (s, 1H), 7.92 (d, J=2.26 Hz, 1H), 7.13 (ddd, J=2.38, 7.91, 10.79 Hz, 1H), 4.85 (t, J=8.66 Hz, 1H), 4.18 (br d, J=5.77 Hz, 1H), 4.00-4.06 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 2.66-2.78 (m, 1H), 2.49-2.63 (m, 1H)。MS (ESI) m/z: 285.9 [M+1]。
ステップ4:化合物2-5の合成
0℃で化合物2-4(0.45g)のTHF(2.00mL)、水(1.00mL)、及びMeOH(2.00mL)の混合溶液にLiOH・HO(330.98mg)を加え、反応混合物を室温で2時間撹拌し、その後、1mol/Lの希塩酸でpH=6程度に調整した。混合液を濃縮させ、酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて、濃縮させて溶媒を除去し、化合物2-5を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物2-5:MS (ESI) m/z: 271.9 [M+1]。
ステップ5:化合物2-7の合成
-10℃で化合物2-5(0.3g)のDCM(4.00mL)溶液に化合物2-6(503.35mg)、TBTU(426.18mg)、及びDIPEA(314.50mg、423.85μL)を加えた。反応混合物を-10℃~20℃で2時間撹拌し、その後、反応混合物に水(10mL)を加え、水相をジクロロメタンで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮させ、溶媒を除去し、化合物2-7を得た。化合物2-7:MS (ESI) m/z:519.1 [M+1]。
ステップ6:化合物2-8の合成
0℃で化合物2-7(0.45g)のMeOH(3.00mL)溶液にn-ヘキサン(4.00mL)、イソブチルホウ酸(619.42mg)、及びHCl(1mol/L、1.74mL)水溶液を加えた。反応混合物を0℃~25℃で12時間撹拌し、その後、反応液を分液して、メタノール層を1mol/L NaHCO溶液でPH5~6に調整した。さらに、分取HPLCで分離し、化合物2-8を得た。化合物2-8:1H NMR: (400 MHz, METHANOL-d4) δ 7.89 (br s, 1H), 7.43 (br t, J=9.54 Hz, 1H), 4.78-4.83 (m, 1H), 3.96-4.24 (m, 4H), 2.74 (br s, 1H), 2.63 (br d, J=7.03 Hz, 1H), 2.46-2.58 (m, 1H), 1.65 (br d, J=6.02 Hz, 1H), 1.35 (br t, J=6.90 Hz, 2H), 0.92 (br d, J=5.77 Hz, 6H)。MS (ESI) m/z: 367.1 [M-17]。
化合物2-8のHPLC分離条件:
カラム:Xtimate C18 150*25mm*5μm
流動相:A:水(含0.225%FA)、B:メタノール
溶出勾配:B%:55%~85%
高速液体カラムクロマトグラフィーにおいて、滞在時間は9.5minである。
化合物2-9は、実施例2のステップ1における2,3,5-トリフルオロピリジンを化合物aに変更したこと、化合物2-9の核磁気共鳴(NMR)、質量分析(MS)データ及びHPLC分離条件を下表2に示すように変更したこと以外、実施例2と同様な方法によって合成した。
表2
【0128】
実施例3 化合物3-7の合成
実施例2のステップ1~ステップ4の調製過程を参照して化合物3-5を得た。
ステップ1:化合物3-6の合成
-10℃で化合物3-5(300.0mg)のDMF(5.00mL)溶液に化合物1-7(324.08mg)、TBTU(416.91mg)、及びDIEA(559.39mg、753.90μL)を加えた。反応混合物を-10℃~0℃で0.5時間撹拌し、その後、反応混合物に水(5mL)を加え、水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して濃縮させ、溶媒を除去し、化合物3-6を得た。化合物3-6:MS (ESI) m/z: 473.0 [M+1]。
ステップ2:化合物3-7の合成
氷浴下、化合物3-6(500.00mg)のメタノール(5.00mL)溶液にイソブチルホウ酸(755.34mg)とHCl(1mol/L、2.12mL)水溶液を加えた。反応混合物を室温に昇温し、さらに3時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮させて、その後、分取HPLCにより分離して精製し、次に、SFCで分離して精製し、化合物3-7を得た。化合物3-7:1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ 7.28-7.44 (m, 2H), 6.64 (t, J=8.78 Hz, 1H), 4.73-4.80 (m, 2H), 3.96-4.32 (m, 4H), 2.62-2.81 (m, 2H), 2.38-2.57 (m, 1H), 1.64 (qd, J=6.86, 13.55 Hz, 1H), 1.23-1.43 (m, 2H), 0.93 (d, J=6.53 Hz, 6H)。MS (ESI) m/z: (M-17) 373.0。
分取HPLC分離条件:
カラム:Xtimate C18 150*25mm*5um;
流動相:A:水(0.225%ギ酸)、B:アセトニトリル;
溶出勾配:B%:46%~76%;
ピーク出現時間:13min。
SFC分離条件:
カラム:AD(250mm*30mm、5μm);
流動相:A:二酸化炭素、B:エタノール;
溶出勾配:B%:15%~15%;
流速:50mL/min;
ピーク出現順番は、高速キラル液体カラムクロマトグラフィーにおいて出現する二番目のピークである。
【0129】
実施例4 化合物I-1の合成
ステップ1:化合物4-3の合成
室温下、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(22.02g)を、化合物4-1(10g)と化合物4-2(20.13g)を含有するアセトニトリル(200mL)溶液に加えた。反応混合物を100℃で16時間撹拌し、その後、室温に冷却し、次に、酢酸エチルに加えた。有機層をそれぞれ水と飽和食塩水で洗浄し、その後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮させて溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=10:1)により精製し、化合物4-3を得た。化合物4-3:MS (ESI) m/z: 227.9 [M+1]。
ステップ2:化合物4-4の合成
0℃で化合物4-3(7.2g)のメタノール(20mL)、テトラヒドロフラン(20mL)、及び水(10mL)の混合溶液にLiOH・HO(6.65g)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、減圧下濃縮させ、水と酢酸エチルで希釈して、分液した。水層を1mol/Lの塩酸でpH=6に調整し、その後、酢酸エチルで抽出した。有機相を併せて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮させて溶媒を除去し、化合物4-4を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物4-4:MS (ESI) m/z: 213.9 [M+1]。
ステップ3:化合物4-5の合成
-10℃で化合物4-4(1.5g)のジクロロメタン(50mL)溶液にグリシンメチルエステル塩酸塩(1.06g)、TBTU(2.71g)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.64g)を加えた。反応混合物を-10℃~0℃で3時間撹拌し、その後、水(40mL)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を併せて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮させて溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=5:1)により精製し、化合物4-5を得た。化合物4-5:MS (ESI) m/z: 284.9 [M+1]。
ステップ4:化合物4-6の合成
0℃で化合物4-5(0.5g)のテトラヒドロフラン(2mL)、メタノール(2mL)、及び水(1mL)の混合溶液にLiOH・HO(369.03mg)を加えた。反応混合物を0℃~20℃で2時間撹拌し、その後、濃縮させて、水(3mL)で希釈し、分液した。水層を1mol/Lの塩酸でpH=6に調整し、酢酸エチルで抽出した。有機相を併せて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮させて溶媒を除去し、化合物4-6を得、そのまま次のステップの反応に用いた。化合物4-6:MS (ESI) m/z: 270.9 [M+1]。
ステップ5:化合物4-8の合成
-10℃で化合物4-6(0.26g)、化合物2-6(437.84mg)、及びTBTU(370.71mg)のジクロロメタン(10mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(273.56mg)を加えた。反応混合物を室温に徐々に昇温し、さらに2時間撹拌し、その後、反応混合物を水(10mL)に加えて希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を併せて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過した。ろ液を濃縮させて溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流動相:石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により精製し、化合物4-8を得た。化合物4-8:MS (ESI) m/z: 518.2 [M+1]。
ステップ6:化合物4-9の合成
0℃で化合物4-8(0.17g)のメタノール(4mL)とn-ヘキサン(6mL)との混合溶液にイソブチルホウ酸(234.45mg)と1mol/L HCl(1.31mL)を加えた。反応混合物を室温に徐々に昇温し、さらに12時間撹拌し、その後、減圧下濃縮させ、溶媒を除去して残留物を得た。残留物を分取HPLCにより精製し、さらにSFCで分離し、化合物4-9を得た。化合物4-9:1H NMR (400 MHz, METHANOL-d4) δ 6.83 (br s, 2H), 6.61 (br s, 1H), 4.49 (br s, 1H), 4.10 (br s, 3H), 3.84 (br s, 1H), 2.75 (br s, 1H), 2.59 (br s, 1H), 2.48 (br s, 1H), 1.62 (br s, 1H), 1.30 (br s, 2H), 0.92 (br s, 6H)。MS (ESI) m/z: 366.1 [M-17].
化合物4-9の分取HPLC分離方法:
カラム:Xtimate C18 150×25mm、5μm;
流動相:水(0.225%FA)-MeOH;
溶出勾配:61%~85%;
滞在時間:9.5min。
化合物4-9の分取SFC分離方法:
カラム:C2 250mm×30mm、10μm;
流動相:A:二酸化炭素、B:メタノール;
溶出勾配B%:30%~30%;
流速:60mL/min。
化合物4-9のピーク出現順番は、高速キラル液体カラムクロマトグラフィーにおいて出現する二番目のピークである。
ステップ7:化合物I-1の合成
方法1:L-リンゴ酸(332mg)を酢酸イソプロピル(2.5mL)に加え、70℃に加熱して撹拌し、10分間後、酢酸イソプロピル溶液2.5mLに溶解した化合物4-9(1.0g)を加えた。その後、加熱を停止し、25℃に降温し、この温度で5日間撹拌し続けた。ろ過して、ろ過ケーキを収集して、真空乾燥させ、化合物I-1のForm I結晶として化合物I-1を得た。
方法2:化合物I-1(68.9g)を反応フラスコに加え、その後、酢酸イソプロピル440mLを加え、混合液を窒素ガス保護下、室温で24h撹拌した。ろ過して乾燥させ、化合物I-1のForm I結晶(64.4g)を得て、得た結晶のCu Kα線を用いたX-線粉末回折パターンを図1に示す。
化合物I-1:1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.30 (br s, 1H), 10.65 (br s, 1H), 8.57 (br t, J=5.77 Hz, 1H), 7.11 (ddd, J=2.64, 9.16, 12.30 Hz, 1H), 6.91 (br t, J=8.16 Hz, 1H), 6.53 (dt, J=5.65, 9.60 Hz, 1H), 4.44 (br t, J=7.91 Hz, 1H), 4.37 (dd, J=3.89, 7.65 Hz, 1H), 4.10 (br s, 2H), 3.91-4.01 (m, 1H), 3.76 (q, J=7.36 Hz, 1H), 2.61 (br d, J=10.79 Hz, 2H), 2.19-2.44 (m, 3H), 1.61 (td, J=6.71, 13.68 Hz, 1H), 1.20-1.36 (m, 2H), 0.86 (t, J=6.02 Hz, 6H)。
化合物I-1のForm I結晶の単結晶の製造方法:マイクロ波管に化合物I-1 50mgを加えて、エタノール1mLを加えて溶解させ、その後、マイクロ波管を、n-ヘキサンを容れたビーカーに投入して静置し、単結晶をエタノールにて緩やかに析出させた。
化合物I-1のForm I結晶の単結晶の単位格子パラメータ、その結晶学データや原子座標などを以下の表3と表4に示し、算出した化合物I-1のForm I結晶のX-線粉末回折パターンを図2に示す。
表3 結晶学データ及び構造精密化
表4 原子座標(×10)及び等価等方性の変位パラメータ(Å2×10
実施例4のステップ7の方法1の過程を参照して、以下の目標化合物(化合物I-2~化合物I-10)を製造し、ここで、実施例4のステップ7の方法1の化合物4-9は下表5の化合物bに対応し、実施例4のステップ7の方法1のL-リンゴ酸は下表5の化合物cに対応する。
表5
【0130】
試験例1
MM1.S細胞に対するインビトロ抗増殖試験
本実験では、腫瘍細胞系MM1.Sにおいてインビトロで化合物が細胞活性に与える影響を測定することで、化合物の細胞増殖抑制作用を研究した。
MM1.S細胞を1ウェルあたり7,000個の細胞の密度で黒色96ウェル細胞培養板に接種し、その後、培養板を37℃、5% CO及び100%相対湿度のインキュベータにて一晩培養した。試験化合物を一定の濃度(0.3nM~2000nM)で細胞培養ウェルに加え、その後、培養板をインキュベータに戻し、溶媒対照(DMSO添加、試験化合物不含)と空白対照を設置した。培養板を37℃、5% CO及び100%相対湿度のインキュベータにて2日間培養した。Promega CellTiter-Glo発光法による細胞活性検出キッド(Promega-G7571)を用いて標準方法に従ってサンプルを処理し、SpectraMax i3x of Molecular Devicesプレートリーダーにおいて発光信号を検出した。下記式により試験化合物の阻害率を算出した。
阻害率%=(RLU溶媒対照-RLU化合物)/(RLU溶媒対照-RLU空白対照)×100%
結果を表6に示す。
表6
【0131】
試験例2:化合物の肝ミクロソーム安定性のテスト
試験化合物をCD-1マウス、SDラット及びヒト肝ミクロソームのそれぞれとインキュベートして、試験化合物の安定性を評価した。
試験化合物溶液サンプルの調製:10mM実施例化合物のDMSO溶液(5μL)をDMSO(45μL)とメタノールと水との混合溶媒(450μL、メタノールと水の体積比を1:1とした)に加えて、100μMの試験化合物溶液を調製し、100μM試験化合物溶液50μLを100mMリン酸カリウム緩衝液450μLに加え、10μMの試験化合物溶液を得た。
10μMの試験化合物溶液を3種類の種(それぞれヒト、ラット及びマウス)のミクロソームと10分間プレインキュベートし、その後、各時点でインキュベート板に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)再生系作動液を加えて反応を開始させ、最後に、それぞれ0、5、10、20、30及び60分間に、停止液(100%ACN)を反応板に加えて反応を停止した。試験化合物をLC-MS/MS法で測定した。試験化合物の肝ミクロソーム安定性の試験結果を表7に示す。
表7
注:Hはhuman(人)、Rはrat(ラット)、Mはmouse(マウス)を示す。
【0132】
試験例3:化合物の細胞膜透過性のテスト
試験化合物についてMDR1-MDCK II細胞において細胞膜透過性を評価した。
試験化合物(10mMの化合物のDMSO溶液)をトランスポート緩衝液(10mM Hepesを含むHBSS、pH=7.4)で希釈し、最終濃度が2μMのサンプルを調製し、その後、二方向(A-BとB-A)で投与した。投与後、細胞板を37℃、5% CO含有及び飽和湿度のインキュベータに入れて150分間インキュベートした。150分間のインキュベートが終了した後、サンプルを収集し、LC-MS/MS方法によりトランスポートサンプル中の試験化合物の濃度を半定量的に検出した。試験化合物の細胞膜透過性のテスト結果を表8に示す。
表8
注:Papp A to Bは化合物が細胞に入る速度、Papp B to Aは細胞が化合物を外部に排出する速度を示し、Efflux Ratio(排出比)=Papp B to A/Papp A to Bである。
【0133】
試験例4 安定性試験
サンプル約50mgをきれいな使い捨て型培養皿に入れて、薄層にした。アルミホイルで覆い、アルミホイルに複数の穴を開けた。それぞれ25℃±2℃/60%RH±5%RHと40℃±2℃/75%RH±5%RHの安定性箱に入れて、所定の時点でサンプリングし、HPLC方法によって化合物の含有量を測定し、結果を表9に示す。
表9
(付記)
[付記1]
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体:
(式中、
環Aはフェニル基又は5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~6アルキル基及びC1~6ヘテロアルキル基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~6アルキル基又はC1~6ヘテロアルキル基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、
nは、0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれ、
及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、
は、C1~6アルキル基から選ばれ、
は、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、
環Dは、5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は少なくとも1つの=Oによって置換され、
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、OH、NH、COOH、C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6~10アリール基及び5~10員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基、C3~6シクロアルキル基、C1~6ヘテロアルキル基、C6~10アリール基又は5~10員ヘテロアリール基は、COOH、ハロゲン、OH、NH及びSHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、
mは、0、1、2、3、4及び5からなる群から選ばれる。)
[付記2]
環Aは、フェニル基及び5~6員ヘテロアリール基からなる群から選ばれ、前記5~6員ヘテロアリール基は、窒素及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1つの環原子を含有し、好ましくは、環Aは、フェニル基、ピリジル基及びチアゾリル基からなる群から選ばれ、より好ましくは、環Aはフェニル基から選ばれる、付記1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記3]
は、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、OH、NH、C1~3アルキル基及びC1~3アルコキシ基からなる群から選ばれ、ここで、前記C1~3アルキル基又はC1~3アルコキシ基は、ハロゲン、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、ハロゲン、CN、C1~3アルキル基及び1つ又は複数のハロゲンによって置換されたC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、より好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、CN、C1~3アルキル基及び1、2又は3個のフッ素によって置換されたC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、さらに好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、フッ素、CN及びトリフルオロメチル基からなる群から選ばれ、最も好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、フッ素から選ばれる、付記1又は2に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記4]
nは0、1及び2からなる群から選ばれ、好ましくは、nは1及び2からなる群から選ばれ、より好ましくは、nは2である、付記1~3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記5]
構造単位

からなる群から選ばれ、
好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれ、
より好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれる、付記1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記6]
及びRは、それぞれ、独立して、H及びC1~3アルキル基からなる群から選ばれ、好ましくは、R及びRは、それぞれ、独立して、Hから選ばれる、付記1~5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記7]
はC3~5アルキル基から選ばれ、好ましくは、RはCアルキル基から選ばれ、より好ましくは、Rはイソブチル基から選ばれる、付記1~6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記8]
は、H及びメチル基からなる群から選ばれ、好ましくは、Rは、Hである、付記1~7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記9]
環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、前記5~10員複素環基は1つの=Oによって置換され、好ましくは、環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、環Dは

であり、より好ましくは、環Dは5~10員複素環基から選ばれ、ここで、環Dは
であり、且つ前記5~10員複素環基の環原子のうちのヘテロ原子がホウ素原子と酸素原子だけを含有し、さらに好ましくは、環Dは5員、6員及び10員複素環基からなる群から選ばれ、ここで、環Dは
であり、且つ前記5員、6員又は10員複素環基の環原子のうちのヘテロ原子がホウ素原子と酸素原子だけを含有し、最も好ましくは、環Dは
からなる群から選ばれる、付記1~8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記10]
mは0、1、2及び3からなる群から選ばれ、好ましくは、mは0、1及び2からなる群から選ばれ、より好ましくは、mは0及び1からなる群から選ばれる、付記1~9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記11]
は、それぞれ、独立して、OH、NH、COOH及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、COOH、OH及びNHからなる群から選ばれる1つ又は複数の基によって置換されてもよく、好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、1つ又は複数のCOOHによって置換されてもよいC1~4アルキル基から選ばれ、より好ましくは、Rは、それぞれ、独立して、メチル基、t-ブチル基及びカルボキシメチル基からなる群から選ばれる、付記1~10のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記12]
構造単位

であり、好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれ、より好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれ、さらに好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれる、付記1~11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記13]
式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(II)の化合物、式(II-a)の化合物、式(III)の化合物、式(III-a)の化合物、式(IV)の化合物及び式(IV-a)の化合物からなる群から選ばれる、付記1~12のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体:
(ここで、Xは-C(R-から選ばれ、且つYは-C(R-から選ばれ、又はXは=C(R)-から選ばれ、且つYは=C(R)-から選ばれ、ここで、R、R、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、1つ又は複数の-COOHによって置換されてもよく、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、
好ましくは、R、R、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、前記C1~6アルキル基は、1つ又は複数の-COOHによって置換されてもよく、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、
より好ましくは、R、R、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、又はRとRは互いに連結されて3~6員環を形成し、
さらに好ましくは、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~6アルキル基からなる群から選ばれ、又はRとRは互いに連結されて5~6員環を形成し、
一層好ましくは、R及びRは、それぞれ、独立して、水素及びC1~3アルキル基から選ばれ、又はRとRは互いに連結されてフェニル基を形成し、
最も好ましくは、Rはメチル基から選ばれ、Rは水素から選ばれ、又はRとRは互いに連結されてフェニル基を形成する。)
[付記14]
構造単位

からなる群から選ばれ、好ましくは、構造単位

からなる群から選ばれる、付記13に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体。
[付記15]
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体からなる群から選ばれる、付記1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体:

[付記16]
以下の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体若しくはその幾何学的異性体からなる群から選ばれる、付記1に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体:

[付記17]
Cu Kα線を用いたX線粉末回折(XRD)パターンにおいて、2θ6.00、11.98、17.88、20.88及び21.48度に回折ピークを有し、好ましくは、2θ6.00、8.90、11.98、17.88、20.88、21.48、24.60及び25.44度に回折ピークを有し、より好ましくは、2θ6.00、8.90、11.98、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60及び25.44度に回折ピークを有し、さらに好ましくは、2θ6.00、8.90、11.98、12.80、13.70、16.50、17.88、20.88、21.48、24.60、25.44、27.66、28.94及び30.25度に回折ピークを有する、ことを特徴とする化合物I-1の結晶:

[付記18]
単斜晶系;空間群P 21;単位格子パラメータ:a=24.4220(5)Å、b=8.4507(2)Å、c=24.4590(5)Å、α=90度、β=107.683(1)度、γ=90度;Z=8である、ことを特徴とする化合物I-1の結晶:

[付記19]
付記1~16のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体、その幾何学的異性体、及び/又は付記17又は18に記載の化合物I-1の結晶を含む医薬組成物。
[付記20]
治療を必要とする哺乳動物に、治療有効量の、付記1~16のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体、付記17又は18に記載の化合物I-1の結晶、又は付記19に記載の医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物の多発性骨髄腫を治療する方法。
[付記21]
多発性骨髄腫を予防又は治療するのに使用するための、付記1~16のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、その互変異性体、その立体異性体若しくはその幾何学的異性体、付記17又は18に記載の化合物I-1の結晶、又は付記19に記載の医薬組成物。
図1
図2