(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】複数の感度範囲を有する電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
G01R15/20 B
(21)【出願番号】P 2021509765
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 US2019042921
(87)【国際公開番号】W WO2020040921
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】591150395
【氏名又は名称】コミサリア タ レネルジー アトミック エ オー エネルジー アルテルナティーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ベリン,ノエミ
(72)【発明者】
【氏名】ミラノ,ショーン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】バシング,ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】フェルモン,クロード
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021575(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184635(US,A1)
【文献】特表2015-503735(JP,A)
【文献】特開2018-115928(JP,A)
【文献】特開2011-185772(JP,A)
【文献】特表2017-505538(JP,A)
【文献】特開平6-324129(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021480(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021500(WO,A1)
【文献】特開2016-38219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0219643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-15/26
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する電流センサであって、
前記導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成され、さらに前記第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するように構成された、
2つ以上の
磁気抵抗素子を含む第1のセンサ装置と、
前記導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で前記磁界を感知するように構成され、さらに前記第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するように構成された、
2つ以上の
磁気抵抗素子を含む第2のセンサ装置と
を備え、
前記第1のセンサ装置と前記第2のセンサ装置とが、形状異方性特性、シールド特性、前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置の
磁気抵抗素子間の間隔、並びに/または積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なり、
前記電流センサは、
前記第1の磁界信号および前記第2の磁界信号に応答して、前記第1の磁界信号と前記第2の磁界信号との合成を示す出力信号を生成するように構成された回路を備え、前記出力信号が前記導体を流れる前記電流に対応するものであり、
前記回路は、
前記第2の磁界信号を使用して飽和係数を生成するための飽和モジュール
であって、前記飽和係数が、前記第2の磁界信号の値に応じて0から1の範囲内で連続的に変化しうる値を有する、飽和モジュールと、
前記第1の磁界信号に前記飽和係数を適用して第1の電流範囲信号を生成するための第1のユニットと、
前記第2の磁界信号に前記飽和係数の
補数である係数を適用して第2の電流範囲信号を生成するための第2のユニットと、
前記第1の電流範囲信号と前記第2の電流範囲信号とを合成して前記導体を流れる前記電流に対応する前記出力信号を生成するための第3のユニットと
を含む、電流センサ。
【請求項2】
前記第1のセンサ装置が、第1のブリッジに配置された第1の複数の
磁気抵抗素子を含み、前記第2のセンサ装置が、第2のブリッジに配置された第2の複数の
磁気抵抗素子を含む、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子間の間隔が、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子間の間隔とは異なる、請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にあり、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にある、請求項2に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第1の距離に配置され、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きい、請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方が、軟磁性材料で作られたシールド層をさらに含み、前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置のうちの前記少なくとも一方に感じられる磁界が、前記シールド層により生ずる要因によって低減されるようにする、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1のセンサ装置と前記第2のセンサ装置とが、形状異方性特性の点で互いに異なり、前記第1のセンサ装置の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が第1の幅を有し、前記第2のセンサ装置の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が前記第1の幅とは異なる第2の幅を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項8】
感知された前記第1の電流範囲が、感知された前記第2の電流範囲よりも小さく、前記第1の幅が前記第2の幅よりも大きい、請求項7に記載の電流センサ。
【請求項9】
前記第1のセンサ装置が第1の飽和閾値を有し、前記第2のセンサ装置が第2の飽和閾値を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項10】
前記飽和係数は、
低電流範囲が測定されるときに前記第1の磁界信号を打ち消すように選択された値を有し、
前記飽和係数の
補数は、前記飽和係数の値を1から減算して得られる値を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項11】
前記1つ以上の磁気抵抗素子が、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、および磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載の電流センサ。
【請求項12】
導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する方法であって、
2つ以上の磁気抵抗素子を含む第1のセンサ装置が、前記導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するとともに、前記第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するステップと、
2つ以上の磁気抵抗素子を含む第2のセンサ装置が、前記導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で前記磁界を感知するとともに、前記第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するステップと
を備え、
前記第1のセンサ装置と前記第2のセンサ装置とが、形状異方性特性、シールド特性、前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置の
磁気抵抗素子間の間隔、および積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なり、
前記方法は、
前記第2の磁界信号を使用して飽和係数を生成するステップ
であって、前記飽和係数が、前記第2の磁界信号の値に応じて0から1の範囲内で連続的に変化しうる値を有する、ステップと、
前記第1の磁界信号に前記飽和係数を適用して第1の電流範囲信号を生成するステップと、
前記第2の磁界信号に前記飽和係数の
補数である係数を適用して第2の電流範囲信号を生成するステップと、
前記第1の電流範囲信号と前記第2の電流範囲信号とを合成して前記導体を流れる前記電流に対応する出力信号を生成するステップと
をさらに備える、方法。
【請求項13】
前記飽和係数は、
低電流範囲が測定されるときに前記第1の磁界信号を打ち消すように選択された値を有し、
前記飽和係数の
補数は、前記飽和係数の値を1から減算して得られる値を有する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のセンサ装置が、第1のブリッジに配置された第1の複数の
磁気抵抗素子を含み、前記第2のセンサ装置が、第2のブリッジに配置された第2の複数の
磁気抵抗素子を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の複数の
磁気抵抗素子間の間隔が、前記第2の複数の
磁気抵抗素子間の間隔とは異なる、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にあり、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にある、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第1の距離に配置され、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きい、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のセンサ装置と前記第2のセンサ装置とがシールド層により生ずる感度の点で互いに異なるように、前記第1のセンサ装置および前記第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方に軟磁性材料の前記シールド層を形成するステップをさらに備え、
前記シールド層が軟磁性材料を含み、前記第1のセンサ装置または前記第2のセンサ装置に感じられる磁界が前記シールド層により生ずる要因によって低減されるようにする、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のセンサ装置と前記第2のセンサ装置とが、形状異方性特性の点で互いに異なり、前記第1のセンサ装置の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が第1の幅を有し、前記第2のセンサ装置の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が前記第1の幅とは異なる第2の幅を有する、請求項
12に記載の方法。
【請求項20】
感知された前記第1の電流範囲が、感知された前記第2の電流範囲よりも小さく、前記第1の幅が前記第2の幅よりも大きい、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する電流センサであって、
前記導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成されるとともに、前記第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するように構成された、
2つ以上の
磁気抵抗素子を含む第1の感知手段と、
前記導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で前記磁界を感知するように構成されるとともに、前記第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するように構成された、
2つ以上の
磁気抵抗素子を含む第2の感知手段と
を備え、
前記第1の感知手段と前記第2の感知手段とが、形状異方性特性、シールド特性、前記第1の感知手段および前記第2の感知手段の
磁気抵抗素子間の間隔、または積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なり、
前記電流センサは、前記第1の磁界信号および前記第2の磁界信号に応答して、出力信号を生成する手段を備え、前記出力信号が前記第1の磁界信号と前記第2の磁界信号との合成を示し、かつ前記出力信号が前記導体で伝達される前記電流に対応するものであり、
前記出力信号を生成する当該手段は、
前記第2の磁界信号を使用して飽和係数を生成する手段
であって、前記飽和係数が、前記第2の磁界信号の値に応じて0から1の範囲内で連続的に変化しうる値を有する、手段と、
前記第1の磁界信号に前記飽和係数を適用して第1の電流範囲信号を生成する手段と、
前記第2の磁界信号に前記飽和係数の
補数である係数を適用して第2の電流範囲信号を生成する手段と、
前記第1の電流範囲信号と前記第2の電流範囲信号とを合成して前記導体を流れる前記電流に対応する前記出力信号を生成する手段と
を含む、電流センサ。
【請求項22】
前記第1の感知手段が、第1のブリッジに配置された第1の複数の
磁気抵抗素子を含み、前記第2の感知手段が、第2のブリッジに配置された第2の複数の
磁気抵抗素子を含む、請求項
21に記載の電流センサ。
【請求項23】
前記第1の複数の
磁気抵抗素子間の間隔が、前記第2の複数の
磁気抵抗素子間の間隔とは異なる、請求項
22に記載の電流センサ。
【請求項24】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にあり、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから実質的に等距離にある、請求項
23に記載の電流センサ。
【請求項25】
前記導体がエッジを有し、前記第1のブリッジにおける前記第1の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第1の距離に配置され、前記第2のブリッジにおける前記第2の複数の
磁気抵抗素子の各々が、前記エッジから第2の距離に配置され、前記第2の距離が前記第1の距離よりも大きい、請求項
24に記載の電流センサ。
【請求項26】
前記第1の感知手段および前記第2の感知手段のうちの少なくとも一方が、軟磁性材料のシールド層を含み、前記第1の感知手段および前記第2の感知手段のうちの前記少なくとも一方に感じられる磁界が、前記シールド層により生ずる要因によって低減されるようにする、請求項
21に記載の電流センサ。
【請求項27】
前記第1の感知手段と前記第2の感知手段とが、形状異方性特性の点で互いに異なり、前記第1の感知手段の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が第1の幅を有し、前記第2の感知手段の少なくとも1つの
磁気抵抗素子が前記第1の幅とは異なる第2の幅を有する、請求項
21に記載の電流センサ。
【請求項28】
感知された前記第1の電流範囲が、感知された前記第2の電流範囲よりも小さく、前記第1の幅が前記第2の幅よりも大きい、請求項
27に記載の電流センサ。
【請求項29】
前記飽和係数は、
低電流範囲が測定されるときに前記第1の磁界信号を打ち消すように選択された値を有し、
前記飽和係数の
補数は、前記飽和係数の値を1から減算して得られる値を有する、請求項
21に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のいくつかの電気電流センサは、電流伝達導体の近くに位置決めされて、その導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する。電流センサは、導体を流れる電流によって誘導された磁界に比例した大きさを有する出力信号を生成する。
【0003】
複数の電流センサは、開ループ構成または閉ループ構成のいずれかで配置され得る。「開ループ」電流センサは、電流伝達導体すなわち一次導体に近接した磁界トランスデューサを含む。磁界トランスデューサは、一次導体を流通する電流によって生成された磁界に比例した出力信号を供給する。「閉ループ」電流センサは、磁界トランスデューサに近接した二次導体を追加で含む。一次導体を流通する電流によって生成された磁界に対抗してそれを打ち消す磁界を生成するために、二次導体を電流が流通する。いくつかの閉ループ電流センサでは、二次導体電流の測定量は、一次導体を流通する電流レベルの指標を提供することができる。
【0004】
種々のパラメータが、磁界センサおよび磁界感知素子の性能を特徴付ける。磁界感知素子に関しては、パラメータは、磁界の変化に応答した磁界感知素子の出力信号の変化である感度と、磁界センサの出力信号が磁界に対して線形に(すなわち、正比例で)変化する度合いである線形度とを含むものである。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で説明される概念、システム、方法、および技法に従って、磁界強度に応じて複数の異なる感度範囲を与える複数のセンサ装置(sensor arrangements)を有する電流センサが提供される。複数のセンサ装置の出力は、単一の出力信号を生成するために、合成されてよい。
【0006】
本出願は、2つ以上の電流範囲で電流を感知するように構成された電流センサを使用して、導体を流れる電流の正確でコアレスな測定を提供する。たとえば、導体は、同じプリント回路基板(PCB)にはんだ付けされた電流センサとともにPCBに一体化されてもよいし、またはスタンドアロン型のバスバーであってもよい。
【0007】
電流センサは、第1の感度範囲および第2の異なる感度範囲など(これらに限定されない)の複数の感度範囲を含むことができる。いくつかの実施形態において、第1の感度範囲は、信号対雑音比が実質最大ではあるがより高い電流で飽和する低電流測定範囲を含むことができ、第2の感度範囲は、コモンモード磁界に対する耐性がより高くかつ閉ループの消費が低減する、より高い電流測定範囲を含むことができる。いくつかの実施形態において、電流センサは、2つよりも多い感度範囲を含むことができる。たとえば、電流センサは、第1の感度範囲(すなわち、低電流測定範囲)と第2の感度範囲(すなわち、高電流測定範囲)との間の1つ以上の中間電流範囲を測定するように構成されてもよい。
【0008】
電流センサは、1つ以上の磁界感知素子を有する第1のセンサ装置と、1つ以上の磁界感知素子を有する第2のセンサ装置とを含むことができる。第1および第2のセンサ装置の両方の磁界感知素子は、1つ以上の磁気抵抗素子を含むことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、電流センサは、複数の巨大磁気抵抗(GMR)素子を有するGMR積層体を含むことができる。GMR積層体は、対称的な応答と所定の範囲内で許容できる線形範囲とを与えるデュアルスピンバルブであってよい。より高い感度を与えるために、GMR積層体の層(たとえば、フリー層)の内部バイアスは低くてよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、電流センサは、同じダイの上に複数の磁気抵抗素子を含むことができる。
【0010】
複数のセンサ装置の複数の異なる特性は、それぞれのセンサ装置の感度を変えるように変更されてよい。たとえば、形状異方性特性、シールド特性、それぞれのセンサ装置の磁界感知素子間の間隔、および/または積層特性のうちの1つ以上が、それぞれのセンサ装置の感度を変えるために変更されてよい。
【0011】
1つ以上の異なる形状異方性特性を有する異なるセンサ装置が提供されてよい。たとえば、ヨーク形状など(これに限定されない)の様々な異なる形状を有する複数の異なるセンサ装置が提供されてもよい。いくつかの実施形態において、電流センサは、第1の幅(たとえば、第1のヨーク幅)を有する第1のセンサ装置と、第2の異なる幅(たとえば、第2のヨーク幅)を有する第2のセンサ装置とを含むことができる。一実施形態において、より広い幅が、より低い電流測定範囲のために使用されてよく、より小さい、またはより狭いヨーク幅が、より高い電流測定範囲のために使用されてよい。
【0012】
電流センサにおける複数の異なるセンサ装置は、閉ループ構成を有するように形成されてよい。たとえば、当該複数のセンサ装置の各々は、それぞれのセンサ装置に近接した二次導体を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、複数の異なるセンサ装置と導体との間での結合比は、異なってよい。第1のセンサ装置は、より低い電流測定範囲を感知し、導体に対して第1の高い結合比を有するように構成されてよい。閉ループ構成によって補償される磁界は、導体における低電流に適応されるので、導体と第1のセンサ装置との間の第1の結合比は、大きくなり得る。第2のセンサ装置は、より高い電流測定範囲を感知し、導体に対して第2のより低い結合比を有するように構成されてよい。第2のセンサ装置の閉ループ構成によって補償される磁界は、第1のセンサ装置と同程度のものである。したがって、導体と第2のセンサ装置との間の第2の結合比は、導体と第1のセンサ装置との間の第1の結合比と比較して、より低く、または低減され得る。
【0014】
複数の異なるセンサ装置の出力は、電流センサ用の単一の出力信号を生成するために合成されてよい。複数の異なるセンサ装置の出力(たとえば、第1および第2の磁界信号)を合成するために、飽和係数および補数飽和係数が生成されてよい。たとえば、飽和係数は、複数の異なるセンサ装置からの出力のうちの少なくとも1つを使用して生成されてよく、補数飽和係数は、飽和係数から生成されてよい。飽和係数は、第1の電流範囲信号を生成するために、第1のセンサ装置の出力に対応する第1の磁界信号に適用されてよく、補数飽和係数は、第2の電流範囲信号を生成するために、第2のセンサ装置の出力に対応する第2の磁界信号に適用されてよい。第1および第2の電流範囲信号は、導体を流れる電流を示す、電流センサ用の出力を生成するために、合成されてよい。
【0015】
本開示によれば、導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する電流センサは、1つ以上の磁界感知素子を含む第1のセンサ装置を備え、第1のセンサ装置は、導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成され、第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するようにさらに構成される。第2のセンサ装置は1つ以上の磁界感知素子を含み、第2のセンサ装置は、導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で磁界を感知するように構成され、第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するようにさらに構成される。第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とは、形状異方性特性、シールド特性、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置の磁界感知素子間の間隔、並びに/または積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なる。また、第1の磁界信号および第2の磁界信号に応答して、第1の磁界信号と第2の磁界信号との合成を示す出力信号を生成するように構成された回路が提供される。ここで、出力信号は、導体を流れる電流に対応するものである。
【0016】
本開示の様々な態様の特徴は、単独で、または組み合わせて、以下のうちの1つまたは複数を含むことができる。第1のセンサ装置は、第1のブリッジに配置された第1の複数の磁界感知素子を含むことができ、第2のセンサ装置は、第2のブリッジに配置された第2の複数の磁界感知素子を含むことができる。第1のブリッジにおける第1の複数の磁界感知素子間の間隔は、第2のブリッジにおける第2の複数の磁界感知素子間の間隔とは異なってよい。実施形態において、導体はエッジを有し、第1のブリッジにおける第1の複数の磁界感知素子の各々は、エッジから実質的に等距離にあってよく、第2のブリッジにおける第2の複数の磁界感知素子の各々は、エッジから実質的に等距離にあってよい。実施形態において、導体はエッジを有し、第1のブリッジにおける第1の複数の磁界感知素子の各々は、エッジから第1の距離に配置されてよく、第2のブリッジにおける第2の複数の磁界感知素子の各々は、エッジから第2の距離に配置されてよい。ここで、第2の距離は、第1の距離よりも大きい。第1のセンサ装置および第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方は、軟磁性材料で作られたシールド層をさらに含むことができ、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方に感じられる磁界は、シールド層により生ずる要因によって低減されるものとされてよい。第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とは、形状異方性特性の点で互いに異なってよい。ここで、第1のセンサ装置の少なくとも1つの磁界感知素子は、第1の幅を有し、第2のセンサ装置の少なくとも1つの磁界感知素子は、第1の幅とは異なる第2の幅を有する。感知された第1の電流範囲は、感知された第2の電流範囲よりも小さくてよい。ここで、第1の幅は、第2の幅よりも大きい。第1のセンサ装置は、第1の飽和閾値を有することができ、第2のセンサ装置は、第2の飽和閾値を有することができる。上記回路は、第1の磁界信号を飽和係数と合成して第1の電流範囲信号を生成するための第1のユニットと、第2の磁界信号を飽和係数の補数バージョンと合成して第1の電流範囲信号を生成するための第2のユニットと、第1の電流範囲信号と第2の電流範囲信号とを合成して、導体を流れる電流に対応する出力信号を生成するための第3のユニットとを含むことができる。
【0017】
また、導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する方法が説明され、この方法は、第1のセンサ装置が、導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するとともに、第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するステップと、第2のセンサ装置が、導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で磁界を感知するとともに、第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するステップとを含む。ここで、第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とは、形状異方性特性、シールド特性、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置の磁界感知素子間の間隔、または積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なる。当該方法は、第1の磁界信号と第2の磁界信号とを合成して導体を流れる電流を示す出力信号を生成するステップをさらに含む。合成するステップは、第1の磁界信号に飽和係数を適用して第1の電流範囲信号を生成するステップと、第2の磁界信号に飽和係数の補数バージョンを適用して第2の電流範囲信号を生成するステップと、第1の電流範囲信号と第2の電流範囲信号とを合成して、導体で伝達される電流に対応する出力信号を生成するステップとを含むことができる。
【0018】
さらなる態様によれば、導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する電流センサは、導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成されるとともに、第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成するように構成された、1つ以上の磁界感知手段を含む第1の感知手段と、導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で磁界を感知するように構成されるとともに、第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成するように構成された、1つ以上の磁界感知手段を含む第2の感知手段とを備える。ここで、第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とは、形状異方性特性、シールド特性、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置の磁界感知素子間の間隔、または積層特性のうちの1つ以上の点で互いに異なる。また、第1の磁界信号および第2の磁界信号に応答して出力信号を生成するための手段が提供される。ここで、出力信号は、第1の磁界信号と第2の磁界信号との合成を示し、出力信号は、導体で伝達される電流に対応する。
【0019】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明にて記載される。本開示の他の特徴、目的および利点は、本説明および図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0020】
上述した特徴は、以下の図面の説明からより完全に理解され得るであろうし、図面においては、同様の参照符号は同様の構成要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】ヨーク形状を有する磁界感知素子の上面図である。
【
図2A】異なる幅を有する複数の磁気感知素子の感度を比較したプロット図である。
【
図3】導体に対する、
図1の電流センサ内の1つ以上の磁界感知素子の間隔を示す図である。
【
図4】導体のエッジの上に位置決めされた、2つのセンサ装置を有する
図1の電流センサを示す図である。
【
図4A】それぞれのセンサ装置の各々について、導体からの距離に基づいた異なるセンサ装置の結合比を比較するプロット図である。
【
図5】
図1の電流センサのセンサ装置(たとえば、低電流ブリッジ)の出力信号を例示するプロット図である。
【
図5A】
図1の電流センサのセンサ装置(たとえば、高電流ブリッジ)の出力信号を例示するプロット図である。
【
図5C】
図1の、第1のセンサ装置の出力信号、第2のセンサ装置の出力信号、および電流センサの出力信号のプロット図である。
【
図6】二重(またはデュアル)スピンバルブ型積層体を有する磁気抵抗素子の層を例示する図である。
【
図6A】シールド層を有する
図1の第1および第2のセンサ装置を例示する図である。
【
図7】導体を流れる電流によって生成された磁界を感知する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、電流センサ100は、導体106に近接して配置された第1のセンサ装置102および第2のセンサ装置104を含む。第1のセンサ装置102は、少なくとも2つの離間した磁界感知素子を含むことができ、第2のセンサ装置104は、少なくとも2つの離間した磁界感知素子を含むことができる。たとえば、第1のセンサ装置102は、2つ以上の磁界感知素子を有する第1のブリッジ構成103を含むことができ、第2のセンサ装置104は、2つ以上の磁界感知素子を有する105を有する第2のブリッジ構成を含むことができる。
【0023】
図1の例示的な実施形態において、第1および第2のブリッジ構成103、105は、ホイートストンブリッジなどのブリッジ構成で結合された4つの磁気抵抗素子を含む。たとえば、第1および第2のブリッジ構成103、105の各々においては、ブリッジの各辺が互いに隣接して配置された2つの磁気抵抗素子を含み、ブリッジの一辺が他の一辺から離間した状態となるように、複数の磁気抵抗素子が結合されていればよい。
【0024】
このような装置により、(各ブリッジ辺の中間ノード103a、103b、105a、105bの間で得られる)ブリッジの差動出力信号は、導体106を流れる電流以外のソースからの浮遊磁界を阻止する差動信号をもたらすことができる。磁気抵抗素子は、巨大磁気抵抗(GMR:giant magnetoresistance)素子、異方性磁気抵抗(AMR:anisotropic magnetoresistance)素子、トンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magnetoresistance)素子、または磁気トンネル接合(MTJ:magnetic tunnel junction)素子のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態において、磁界感知素子は、1つ以上のホール効果素子として提供されてもよいことが認識されるべきである。
【0025】
第1および第2のセンサ装置102、104は、導体106のうちの異なる部分に近接して配置されてよい。たとえば、第1のセンサ装置102は、導体106のうちの第1の部分108に近接して配置され、第2のセンサ装置104は、導体106のうちの異なる第2の部分110に近接して置かれる。
【0026】
第1および第2のセンサ装置102、104は、導体106を流れる電流を、第1および第2の部分108、110でそれぞれ感知し、第1および第2の部分108、110で導体106を流れる電流に対応する出力信号(たとえば、それぞれ、第1および第2の磁界信号)を生成するように構成されてよい。一実施形態において、第1および第2のセンサ装置102、104は、導体106を流れる電流の異なる範囲に対応する異なる測定範囲で磁界を感知するように構成されてよい。たとえば、第1のセンサ装置102は、導体106を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成されてよく、第2のセンサ装置104は、導体106を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で磁界を感知するように構成されてよい。いくつかの実施形態において、第1の測定範囲は、より高い電流範囲に対応してよく、第2の測定範囲は、より低い電流範囲に対応してよい。他の実施形態において、第1の測定範囲は、より低い電流範囲に対応してもよく、第2の測定範囲は、より高い電流範囲に対応してもよい。第1の例の実施形態において、低電流範囲は、おおよそ20mAから1Aまでの範囲であってよく、高電流範囲は、おおよそ1Aから100Aまでの範囲であってよい。第2の例の実施形態において、低電流範囲は、おおよそ0Aから40mAまでの範囲であってよく、第2の実施形態において、高電流範囲は、おおよそ40mAから1Aまでの範囲であってよい。
【0027】
図1に例示されるように、第1および第2のセンサ装置102、104は、供給電圧112および基準端子113(たとえば、接地端子)に結合される。
【0028】
次に第1のセンサ装置102を参照すると、第1のセンサ装置102は、第1および第2のノード103a、103bにもかかわらず、第1の差動増幅器114に結合する差分磁界信号を生成することができる。第1の増幅器114の1つ以上の出力は、第1のHブリッジ回路116の1つ以上の入力部に結合される。第1のHブリッジ回路116は、共に結合される複数の電界効果トランジスタを含んで、2つの入力信号を比較して雑音および/または干渉(たとえば、DCオフセット)を除去または低減し、並びに、いくつかの実施形態では2つの入力信号間の差分に利得(ゲイン)を適用することができる。
【0029】
第1のフィードバックコイル115は、同程度の逆磁界を感知素子に適用してブリッジ上の差分磁界をおおよそゼロガウスにするために、第1のセンサ装置102に近接して位置決めされてよい。第1のセンサ装置102の感知素子上の差分磁界をゼロにするのに必要な第1のコイル115を流れる電流は、第1の抵抗器117によって感知されるが、これにより閉ループ電流感知システムを実現するためである。
【0030】
第1の感知抵抗器117の電圧は、第2の増幅器118に結合される。いくつかの実施形態において、増幅器118は、温度補償を含むオフセット調整および/またはゲイン調整を実行するように構成されてよい。
【0031】
次に第2のセンサ装置104を参照すると、第2のセンサ装置104は、第1および第2のノード105a、105bにもかかわらず、第3の差動増幅器120に結合する差分磁界信号を生成することができる。第3の増幅器120の1つ以上の出力は、第2のHブリッジ回路122の1つ以上の入力部に結合される。第2のHブリッジ回路122は、共に結合される複数の電界効果トランジスタを含んで、2つの入力信号を比較して雑音および/または干渉(たとえば、DCオフセット)を除去または低減し、並びに、いくつかの実施形態においては、2つの入力信号間の差分に利得(ゲイン)を適用することができる。
【0032】
第2のフィードバックコイル121は、同程度の逆磁界を感知素子に適用してブリッジ上の差分磁界をおおよそゼロガウスにするために、第2のセンサ装置104に近接して位置決めされてよい。第2のセンサ装置104の感知素子上の差分磁界をゼロにするのに必要な第2のコイル121を流れる電流は、第2の抵抗器123によって感知されるが、これにより閉ループ電流感知システムを実現するためである。
図1には電流センサ100が閉ループセンサとして示されているが、いくつかの実施形態においては、電流センサ100は、開ループセンサであってもよいことが認識されるべきである。
【0033】
第2の感知抵抗器123の電圧は、第4の増幅器124に結合される。一実施形態において、第4の増幅器124は、温度補償を含むオフセット調整および/またはゲイン調整を実行するように構成されてよい。
【0034】
増幅器118は、第1のセンサ装置102によって感知された磁界信号に対応し、導体106を流れる第1の電流範囲を示す第1の磁界信号119を生成することができる。増幅器124は、第2のセンサ装置104によって感知された磁界信号に対応し、導体106を流れる第2の電流範囲を示す第2の磁界信号125を生成することができる。
【0035】
第1および第2の磁界信号119、125は、導体を流れる電流のレベルに対応する電流センサの出力139を生成するために、合成されてもよい。第1および第2の磁界信号119、125を合成するために、種々の方式が可能である。
【0036】
例示的な実施形態において、
図5~
図5Cに関連してさらに以下に説明されるように、飽和係数または飽和係数関数が生成されてセンサ出力信号139を供給するために使用される。これを行うために、増幅器124の出力は、第1の飽和モジュール134の入力部、第2の飽和モジュール136の入力部、および第2の混合器すなわち増幅器132の第1の入力部に結合される。
【0037】
第1の飽和モジュール134は、第2の磁界信号125を受信し、飽和係数を生成することができる。いくつかの実施形態において、飽和係数は、電流センサ100の特定の用途、および測定される1つ以上の電流範囲に少なくとも部分的に基づいて決定され、2つの飽和係数(たとえば、0および1)の間で変化し得る。たとえば、一実施形態において、飽和係数は、第2の電流範囲を測定する(たとえば、低電流範囲を測定する)ときに、第1のセンサ装置102の出力(たとえば、高電流ブリッジの出力)を打ち消して、雑音が入ることを防ぐように選択されてよい。いくつかの実施形態において、第1の飽和モジュール134は、比較器および基準値(または基準閾値)を使用して、飽和係数を生成することができる。
【0038】
増幅器118の出力は、第1の混合器すなわち増幅器130の第1の入力部に結合され、第1の飽和モジュール135の出力は、第1の混合器130の第2の入力部に結合されてよい。第1の混合器130は、第1の磁界信号119に飽和係数135を適用して第1の電流範囲信号131を生成するように構成されてよい。
【0039】
第2の飽和モジュール136は、第2の磁界信号125を受信し、補数飽和係数137を生成するように構成されてよい。一実施形態において、補数飽和係数137は、飽和係数135の補数バージョンであってよい。
【0040】
第2の飽和モジュール136の出力は、第2の混合器132の第2の入力部に結合される。第2の混合器132は、第2の磁界信号に補数飽和係数137を適用して第2の電流範囲信号133を生成するように構成されてよい。
【0041】
第1および第2の混合器130、132の出力は、第1および第2の電流範囲信号131、133をそれぞれ供給するために、第3の混合器すなわち増幅器138の第1の入力部および第2の入力部にそれぞれ結合されてよい。第3の混合器138は、第1の電流範囲信号131と第2の電流範囲信号133とを合成して、導体106を流れる電流に対応する出力信号139を生成するように構成されてよい。一実施形態において、出力信号139は、第1の磁界信号119と第2の磁界信号125との合成に対応してよい。
【0042】
次に
図2を参照すると、ヨーク形状を有する磁界感知素子200が提供される。磁界感知素子200は、
図1の第1および第2のセンサ装置102、104における第1および第2のブリッジ構成103、105の磁気感知素子と同一または実質的に同種のものであってよい。
【0043】
磁界感知素子200は、主要部201と、当該主要部201に結合された2つのアーム206、208と、当該2つのアーム206、208にそれぞれ結合された2つの横方向アーム212、214とを有する。いくつかの実施形態において、主要部201と、2つのアーム206、208と、2つの横方向アーム212、214とは、各々が幅(W)を有する。しかしながら、他の実施形態において、幅は異なってもよい。
【0044】
磁界感知素子200の長さ(L)、および磁界感知素子200の横方向アーム212、214の長さ(d)は、各々、磁界感知素子200の幅(W)の少なくとも3倍であってよく、磁界感知素子200の幅(W)は、約1μmから約20μmのまでの範囲であってよい。
磁界感知素子200の寸法は、たとえば、以下の範囲内であってよい。
- 磁界感知素子200の主要部201の長さ(L)は、約10μmから10ミリメートルまでの範囲であってよく、
- 磁界感知素子200のアーム206、208の長さ(l)は、幅(W)の少なくとも3倍であってよく、
- 磁界感知素子200の幅(W)は、約1μmから約20μmまでの範囲であってよい。
【0045】
磁界感知素子200のアーム206、208は、主要部201と平行である横方向アーム212、214に連結され、全体の長さ(L)の約4分の1から3分の1までの範囲である長さlを有する。
【0046】
一般に、ヨーク形状を有する磁界感知素子200の感度は、幅(W)が増加するにつれて増加し、低周波数雑音は、幅(W)または長さ(L)が増加するときに減少する。
【0047】
一実施形態において、ヨーク形状は、主要部201の長手方向中央領域において、よりよい磁気均一度を与えることができる。これは、主に主要部201に沿ったヨーク長の反磁界に起因し、これが、フリー(自由)層磁界感知素子200の異方性を誘起し、磁界感知素子200の長さに沿ったゼロ磁界での磁化としてみられるものである。固定層が磁界感知素子200と直交する(たとえば、矢印202)磁界を有する場合に、矢印202の方向に外部磁界が印加されるとき、フリー層磁化は、均一に、すなわち磁区のジャンプなしに、回転する。フリー(自由)層の磁化の均一な回転は、応答において段差のない応答曲線をもたらす。
【0048】
磁気抵抗素子200は、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、または磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの少なくとも1つの形態を取ることができる。
【0049】
GMR素子の場合、積層体の全体がヨーク形状に設計されてもよいが、TMR素子の場合、いくつかの実施形態において、自由層のみがヨーク形状を有することができる。
図2にはヨーク形状を有する磁界感知素子200が示されているが、他の実施形態において、磁界感知素子200は、様々な異なる形状を有して形成されてもよいことが認識されるべきである。たとえば、いくつかの実施形態において、磁界感知素子200は、直線バーの形状を有して形成されてもよい(たとえば、寸法Lおよびwを有し、寸法lおよびdに関連付けられた特徴を有さないように)。
【0050】
電流センサ(たとえば、
図1のセンサ100)において使用される磁界感知素子の1つ以上の特性は、異なる感度を与えるために変更されてよい。たとえば、第1および第2のセンサ装置(たとえば、
図1の102、104)における磁界感知素子は、形状異方性特性、シールド特性、磁界感知素子間の各間隔、および/または積層特性のうちの1つ以上の点において互いに異なってよい。一実施形態において、センサ装置における磁界感知素子の特定の特性は、所望の測定範囲(たとえば、測定される電流範囲)に少なくとも部分的に基づいて選択されてよい。
【0051】
次に
図2Aを参照すると、異なる幅を有する複数の磁界感知素子の感度を比較したプロット
図250が与えられており、縦軸(たとえば、y軸)は、単位エルステッド当たりの感度パーセンテージ(%/Oe)を単位とする感度値に対応し、横軸(たとえば、x軸)は、エルステッド(Oe)を単位とする磁界値に対応する。一実施形態において、異なる幅を有する複数の磁界感知素子が、異なる測定範囲を感知するために使用されてよい。たとえば、より大きい(すなわちより広い)幅を有する磁界感知素子は、より高い感度を有するので、低電流範囲を測定するために使用されてよい。さらに、より小さい(すなわち狭い)幅を有する磁界感知素子は、より低い感度とより高い浮遊磁界耐性とを有するので、より高い電流範囲を測定するために使用されてよい。
【0052】
プロット
図250において、第1の波形252は、第1の幅を有する磁界感知素子の感度に対応し、第2の波形254は、第2の幅を有する磁界感知素子の感度に対応し、第3の波形256は、第3の幅を有する磁界感知素子の感度に対応し、第4の波形258は、第4の幅を有する磁界感知素子の感度に対応する。一実施形態において、第1、第2、第3および第4の幅はそれぞれ異なる。たとえば、第1の幅は、第2、第3および第4の幅よりも大きくてよく、第2の幅は、第3および第4の幅よりも大きくてよく、第3の幅は、第4の幅よりも大きくてよい。一実施形態において、第1の幅は、おおよそ20μmであってよく、第2の幅は、おおよそ5μmであってよく、第3の幅は、おおよそ3μmであってよく、第4の幅は、おおよそ1μmであってよい。しかしながら、特定の磁界感知素子の幅は、多様であってよく、電流センサの特定の用途に少なくとも部分的に基づいて選択されてよいことが認識されるべきである。
【0053】
プロット250に例示されるように、磁界感知素子の幅が増加するにつれて、磁界感知素子の感度が増加し、磁界感知素子の幅が減少するにつれて、磁界感知素子の感度が減少する。たとえば、第1の波形252は、波形254、246、258と比較して、最も大きな幅を有する磁界感知素子に対応するので、第1の波形252は、最も高い感度値を有する。第4の波形258は、波形252、254、256と比較して、最も小さな幅を有するので、第4の波形258は、波形252、254、256の各々よりも小さい感度値を有する。
【0054】
したがって、第1のセンサ装置が第1の測定範囲で磁界を感知することができ、第2のセンサ装置が第2の測定範囲で磁界を感知することができるように、測定される所望の電流範囲に応じて、異なる幅を持つ磁界感知素子を有するセンサ装置が形成され提供されればよい。特定の磁界感知素子の幅は、電流センサの特定の用途、および測定される1つ以上の電流範囲に基づいて選択されればよい。
【0055】
次に
図3を参照すると、第1のセンサ装置302が導体306に対して垂直に(ここではその上方に)配置されるとともに、第2のセンサ装置304が導体306に対して垂直に配置されず、その代わりに非電流伝達面308に対して配置されるように(すなわち、第1および第2のセンサ装置302、304が導体のエッジ312をまたぐように)、電流センサ300が導体306のエッジ312の上に位置決めされてよい。一実施形態において、電流センサ300、第1および第2のセンサ装置302、304、並びに導体306は、
図1の電流センサ100、第1および第2のセンサ装置102、104、並びに導体106と、それぞれ、同一または実質的に同種のものであってよい。
【0056】
第1および第2のセンサ装置302、304は、1つ以上の磁界感知素子を含むことができる。たとえば、また
図3に例示されるように、第1のセンサ装置302は、第1、第2、第3および第4の磁界感知素子302a~302dを含み、第2のセンサ装置304は、第1、第2、第3および第4の磁界感知素子304a~304dを含み、各磁界感知素子は、エッジ312から所定の距離d2だけ離間している。
【0057】
電流センサ300は、第1および第2のセンサ装置302、304の各々が、それぞれ第1および第2のセンサ装置302、304内の素子で感知された磁界間で勾配を感知するように、構成されてよい。たとえば、第1のセンサ装置302は、素子302a、302bに感じられる磁界と、素子302c、302dに感じられる磁界との間の差を示す磁界信号を生成することができる。同様に、第2のセンサ装置304は、素子304a、304bに感じられる磁界と、素子304c、304dに感じられる磁界との間の差を示す磁界信号を生成することができる。したがって、感知の手法は、感知素子302a、302b、304a、304dに感じられる磁界と、感知素子302c、302d、304c、304dに感じられる磁界とにおける差(または勾配)を必要とする。
【0058】
導体306に対する電流センサ300の位置は、導体306を流れる電流レベルに少なくとも部分的に基づいて選択され得るので、予期される磁界強度、磁界感知素子の感度、および/または測定される磁界勾配に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態においては、各ブリッジにおいて、少なくとも1つの第1の磁界感知素子が電流伝達導体306に対して垂直に配置され、かつ少なくとも1つの第2の磁界感知素子が電流伝達導体306に対して垂直に配置されないときに生じ得るように、起こり得る最大の磁界勾配(すなわち、各ブリッジで離間した複数の磁界感知素子が感ずる磁界間の最大の差分)を第1および第2のセンサ装置302、304が感じるように、センサ300を位置決めすることが望ましい場合がある。これを行うために、電流センサ300の第1の部分300aは、導体306に対して(ここではその上方に)垂直に配置されるとともに、第2の部分300bは、導体306に対して垂直に配置されず、その代わりに、非電流伝達面308に対して垂直に配置される。そのような一構成では、第1の部分300aのエッジ300cと第2の部分300bのエッジ300dとが導体306のエッジ312から等距離(ここでは距離「d1」で表される)となるように、電流センサ300が位置付けら決めされてよい(また、いくつかの実施形態においては、感知素子302a~302d、304a~304dが導体エッジ312から等距離(ここでは距離「d2」で表される)となるようにされてよい)。したがって、第1の部分300aと第2の部分300bとのサイズ(たとえば、幅、長さ)が等しくてよい。
【0059】
他の実施形態において、第1の部分300aと第2の部分300bとのサイズが異なっていてもよい。たとえば、導体306のエッジ312から第1の部分300aのエッジ300cまでの距離が、導体306のエッジ312から第2の部分300bのエッジ300dまでの距離よりも大きいように、電流センサ300が位置決めされてもよい。そのような構成では、磁界感知素子302a~302d、304a~304dは、導体エッジ312から等距離で離間していなくてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、電流センサ300のすべて(または、少なくとも第1および第2のセンサ装置302、304の両方)が、導体306に対して垂直に配置(すなわち、その上方に位置決め)されてもよい。そのような実施形態において、第1および第2のセンサ装置302、304の感知素子302a~302d、304a~304dは、感知素子に感じられる磁界勾配を確保するために、導体306に対して中心に配置されない。他の実施形態においては、そのいずれの部分も(または、第1および第2のセンサ装置302、304の感知素子302a~302d、304a~304dの少なくともいずれも)、導体306に対して垂直に配置(すなわち、その上方に位置決め)されず、その代わりに、導体306に対して電流センサ300が垂直方向にオフセットされるように、電流センサ300が導体306に対して位置決めされてもよい。
【0061】
図3には、第1および第2のセンサ装置302、304がそれぞれ4つの磁界感知素子302a~302d、304a~304dを含むように示されているが、他の実施形態において、第1および第2のセンサ装置302、304(または、本明細書で説明される任意の電流センサ)は、4つよりも少ない磁界感知素子、または4つよりも多い磁界感知素子を含んでもよいことが認識されるべきである。
【0062】
次に
図4を参照すると、電流センサ400は、導体406のエッジ412の上に位置決めされている。電流センサ400は、第1、第2、第3および第4の磁界感知素子402a~402dを有する第1のセンサ装置402と、第1、第2、第3および第4の磁界感知素子404a~404dを有する第2のセンサ装置404とを含み、各々が同じダイの上に配置されている。一実施形態において、導体406は、同一プリント回路基板(PCB)にはんだ付けされた電流センサ400とともにPCBに一体化されてもよいし、またはスタンドアロン型のバスバーであってもよい。
【0063】
一実施形態において、電流センサ400、第1および第2のセンサ装置402、404、並びに導体406は、
図1の電流センサ100、第1および第2のセンサ装置102、104、並びに導体106と、それぞれ、同一または実質的に同種のものであってよい。
【0064】
導体406を流れる電流の異なる電流範囲を測定する能力を提供するために、第1のセンサ装置402の磁界感知素子402a~402dは、第2のセンサ装置404の磁界感知素子404a~404dとは異なる距離だけ、互いに離間してよい。たとえば、また
図4で例示されるように、第1のセンサ装置402は、導体406のエッジ412にまたがるように位置決めされる。第1のセンサ装置402は、導体406の上に位置決めされない第1のペアの磁界感知素子402a、402bと、導体406の上に位置決めされる第2のペアの磁界感知素子402c、402dとを含む。第1のペア402a、402bは、第2のペア402c、402dから第1の距離420だけ離間する。一実施形態において、第1のペア402a、402bは、第2のペア402c、402dと同じ距離だけエッジ412から離間する。他の実施形態においては、第1のペア402a、402bは、第2のペア402c、402dとは異なる距離だけエッジ412から離間してもよい。
【0065】
第2のセンサ装置404もまた、導体406のエッジ412にまたがるように位置決めされる。たとえば、第2のセンサ装置404は、導体406の上に位置決めされない第1のペアの磁界感知素子404a、404bと、導体406の上に位置決めされる第2のペアの磁界感知素子404c、404dとを含む。第1のペア404a、404bは、第2のペア404c、404dから第2の距離422だけ離間する。一実施形態において、第1のペア404a、404bは、第2のペア404c、404dと同じ距離だけエッジ412から離間する。他の実施形態においては、第1のペア404a、404bは、第2のペア404c、404dとは異なる距離だけエッジ412から離間してもよい。
【0066】
第1のセンサ装置402の第1のペアの素子402a、402bと、第2のペアの素子402c、402dとの間の第1の距離420は、第2のセンサ装置404の第1のペアの素子404a、404bと、第2のペアの素子402c、402dとの間の第2の距離422とは異なってよい(たとえば、より小さく、より大きくてもよい)。したがって、第1のセンサ装置402は、導体406を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知するように構成されてよく、第2のセンサ装置404は、導体406を流れる第2の異なる電流範囲に対応する第2の異なる測定範囲で磁界を感知するように構成されてよい。
【0067】
第1のセンサ装置402の第1および第2のペア402a~402dと、第2のセンサ装置404の第1および第2のペア404a~404dとの間の間隔が異なることで、第1および第2のセンサ装置402、404について異なる結合比が提供され得る。異なる結合比は、異なるレベルの感度を与えることができる。センサ装置の結合比とは、測定される電流によって、それぞれのセンサ装置の素子上で生成される差分磁界の量を意味する。たとえば、第1のセンサ装置402は、より高い電流測定範囲を感知し、導体406に対して第1の結合比を有するように構成されてよく、第2のセンサ装置404は、より低い電流測定範囲を感知し、導体406に対して第2の結合比を有するように構成されてよい。第1のセンサ装置の閉ループ構成によって補償される磁界は、第2のセンサ装置よりも大きくてよい。したがって、導体406と第1のセンサ装置402との間の第1の結合比は、導体406と第2のセンサ装置404との間の第2の結合比と比較して、より低い、または低減されたものとなり得る。たとえば、第2のセンサ装置の閉ループ構成によって補償される磁界は、より小さくてよいので、導体406と第2のセンサ装置404との間の第2の結合比は、より大きくてよい。
【0068】
次に
図4Aを参照すると、プロット
図450は、
図4の第1のセンサ装置402についての第1の結合比452を、
図4の第2のセンサ装置404についての第2の結合比454と比較しており、縦軸(たとえば、y軸)は、導体を流れるアンペア当たりの磁界密度(G/A)に対応し、横軸(たとえば、x軸)は、ここではミリメートル単位の磁界感知素子間の距離値に対応する。
【0069】
プロット
図450において、第1のセンサ装置402の第1の素子ペア402a、402bは、第1のセンサ装置402の第2の素子ペア402c、402dから第1の距離420だけ離間して第1の結合比452をもたらす。さらに、第2のセンサ装置404の第1の素子ペア404a、404bは、第2のセンサ装置404の第2の素子ペア404c、404dから第2の距離422だけ離間して第2の結合比454をもたらす。
【0070】
結合比452、454(たとえば、Rcp[G/A])は、測定される導体406を流れる電流によって、第1および第2のセンサ装置402、404の感知素子上で生成された差分磁界の量に相当する。したがって、第1および第2のセンサ装置402、404は、異なる測定範囲で磁界を感知するために、それぞれ異なる結合比(ここでは第1および第2の結合比452、454)を有するように構成されてよい。
【0071】
たとえば、第1のセンサ装置(たとえば、高電流ブリッジ)では、感知される最大磁界が高くなり得るので、第1のペア402a、402bと第2のペア402c、402dとの間の結合比は、閉ループ構成において必要とされる電流を低減させるように(たとえばより低消費となるように)、小さくなり得る。第2のセンサ装置404(たとえば、低電流ブリッジ)の場合、感知される最大磁界が低くなり得るので、第1のペア404a、404bと第2のペア404c、404dとの間の結合比は、閉ループ構成に過多な電流を要求することなく(たとえば、より高いフロントエンド感度で)、大きくなり得る。
【0072】
次に
図5を参照すると、プロット
図500は、
図1の電流センサの第2のセンサ装置(たとえば、低電流ブリッジ)の出力信号502を示しており、縦軸(たとえば、y軸)は、出力信号値(アンペア)に対応し、横軸(たとえば、x軸)は、ここではミリ秒(ms)単位の時間値に対応する。一実施形態において、第2のセンサ装置は、
図1の第2のセンサ装置104と同一または実質的に同種のものでよく、出力信号502は、第2の磁界信号125に対応してよい。
【0073】
一実施形態において、第2のセンサ装置は、低電流ブリッジに対応し得、第2のセンサ装置によって感知される電流が1つ以上のそれぞれの閾値よりも大きいとき、または当該各閾値を超過するときに、、1つ以上の閾値の値で飽和または停滞状態になるように構成されてよい。たとえば、またプロット
図500で例示されるように、第2のセンサ装置(たとえば、低電流ブリッジ)は、測定される電流が第1の閾値の値504(たとえば、30アンペア)および/または第2の閾値の値506(たとえば、-30アンペア)よりも大きいときに、飽和または停滞状態になるように構成されてよい。
【0074】
次に
図5Aを参照すると、プロット
図520は、
図1の電流センサの第1のセンサ装置(たとえば、高電流ブリッジ)の出力信号522を示しており、縦軸(たとえば、y軸)は、出力信号値(アンペア)に対応し、横軸(たとえば、x軸)は、ここではミリ秒(ms)単位の時間値に対応する。一実施形態において、第1のセンサ装置は、
図1の第1のセンサ装置102と同一または実質的に同種のものであってよく、出力信号522は、第1の磁界信号119に対応してよい。
【0075】
第1のセンサ装置は、高電流ブリッジに対応し得るので、その各出力信号522は、特定の閾値の値で飽和しない。たとえば、またプロット
図520に例示されるように、出力信号522は、導体を流れる+/-60アンペアの電流によって生成される磁界の存在下で、飽和せず、または停滞状態にはならない。
【0076】
一実施形態において、第2および第1のセンサ装置それぞれによって生成された出力信号502、522は、電流センサ100の出力信号139など(これに限定されない)の出力信号を生成するために、合成されてよい。出力信号502、522を合成するために、出力信号502、522のうちの少なくとも1つに、飽和係数が適用されてよい。
【0077】
次に
図5Bを参照すると、プロット
図540は、飽和係数または飽和係数関数542を示す。一実施形態において、飽和係数542は、電流センサ100の出力信号139など(これに限定されない)の出力信号を生成するために、第2および第1のセンサ装置の出力502、522と共に使用されてよい。より詳細には、飽和係数542は、第1の磁界信号522(
図5A)に適用されてよく、飽和係数の
補数バージョンは、第2の磁界信号502(
図5)に適用されてよい。
【0078】
飽和係数542は、電流センサの複数のセンサ装置のうちの少なくとも1つの複数の出力の1つを使用して計算されてよい。たとえば、いくつかの実施形態において、飽和係数542は、第2のセンサ装置(たとえば、低電流ブリッジ)の出力信号502を使用して生成されてよい。飽和係数542の値は、電流センサ100の特定の用途、および測定される1つ以上の電流範囲に少なくとも部分的に基づいて決定され、2つの飽和係数(ここでは、0および1)の間で変化し得る。一実施形態において、飽和係数542は、低電流を測定するときに、ここでは第1のセンサ装置の出力信号522である高電流ブリッジ出力を打ち消して、雑音が入ることを防ぐように構成されてよい。
【0079】
飽和係数D(t)は、以下の式を使用して決定されてよい。
【数1】
【0080】
ここで、BridgeOutputLCは、低電流ブリッジの出力値であり、Imeanは、一定の係数である。Imeanの値の選択は、用途に依存することになる。一般に、Imeanは、高電流ブリッジの検出限界値を上回るべきであり、低電流閉ループの消費を制限するのに十分に低くあるべきである。飽和係数542は、両方の出力信号502、522の合成である再構成後の出力信号を供給するために、2つの出力信号502、522間の境界での値の差(たとえば、ジャンプ)を制限するように構成されてよい。
【0081】
次に
図5Cを参照すると、プロット
図560は、第1のセンサ装置の出力信号556(たとえば、飽和係数D(t)が乗算された
図5Aの信号522)、第2のセンサ装置の出力信号558(たとえば、飽和係数の
補数値1-D(t)が乗算された
図5の信号502)、および電流センサ(たとえば、
図1の電流センサ100)の出力信号562を例示する。一実施形態において、出力信号562は、
図1の電流センサ100の出力信号139と同一または実質的に同種のものであってよい。
【0082】
出力信号562(V
out(t))は、以下の式を使用して決定されてよい。
【数2】
【0083】
ここで、D(t)は、飽和係数であり、BridgeOutputHCは、高電流ブリッジの出力値であり、BridgeOutputLCは、低電流ブリッジの出力値である。
【0084】
プロット
図560に例示されるように、出力信号562は、飽和係数の
補数値が乗算された第2のセンサ装置の出力信号502と、飽和係数が乗算された第1のセンサ装置の出力信号522との合成である。
【0085】
次に
図6を参照すると、デュアルスピンバルブ型磁気抵抗素子600は、たとえば、電流センサ100の1つ以上の磁界感知素子を供給するために使用され得るものであり、二重固定型磁気抵抗素子に相当する第1の部分602と、逆二重固定型磁気抵抗素子に相当する第2の部分604とを含む。共通の反強磁性ピニング(pinning)層606が、第1の部分602と第2の部分604との間に形成されてよい。
【0086】
デュアルスピンバルブ型磁気抵抗素子600は、2つの自由層構造を有することができ、これについては、スペーサ層608、610が、当該2つの自由層構造に異なる結合をもたらすように選択された異なる厚みを有するので、2つの自由層構造は、図示されるように互いに反対方向の磁界を有する。2つの自由層構造における磁界の方向は、図示される方向を逆にしたものでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1のスペーサ層608は、第1のスペーサ層608とこれに隣接する上部自由層構造との間に反強磁性結合を形成するように、たとえば、約1.7nmから約2.3nmまで、または約3.0nmから約3.7nmまでという2例の範囲のうちの1つとなり得る厚みを有する。いくつかの他の実施形態において、当該2つの範囲は、上記の代わりに、約0.7nmから約1.0nmまで、または約3.0nmから約3.7nmまででもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、第2のスペーサ層610は、第2のスペーサ層610とこれに隣接する下部自由層構造との間に強磁性結合を形成するように、たとえば、約1.0nmから約1.7nmまで、または約2.3nmから約3.0nmまでという2例の範囲のうちの1つとなり得る厚みを有する。
【0089】
したがって、上記2つの自由層構造は、互いに反対方向に向いている公称方向の磁界を有することが認識されるであろう。加えて、第1および第2のスペーサ層608、610の厚みの選択によって、強磁性および反強磁性という2つの結合は、互いに反対方向でほぼ同じ大きさを有することができる。
【0090】
デュアルスピンバルブ型磁気抵抗素子600の動作は、磁気抵抗素子の連続積層体の組合せ(たとえば、二重固定(pinned)型磁気抵抗素子部分602と、逆二重固定型磁気抵抗素子部分604とを有する積層体)と非常によく似て動作し、ここで、結果として得られる2つのスペーサ層608、610は、下部自由層構造に対する強磁性結合と、上部自由層構造に対する反強磁性結合とをもたらすように選択された厚みを有することが、さらに認識されるべきである。
【0091】
いくつかの代替実施形態において、第1のスペーサ層608は、第2のスペーサ層610と同じ厚みを有することができ、その逆もまた同様である。デュアルスピンバルブ型磁気抵抗素子600は、2つの合成反強磁性(SAF:synthetic antiferromagnetic)型固定(pinned)構造と、また2つの他の固定層(すなわち、単一層の固定層)とを有することができる。当該2つの合成反強磁性(SAF)型固定構造とまた2つの他の固定層とは共に、本明細書において固定層構造と呼ばれる。
【0092】
上記素子積層体の様々な特性は、結果として得られる感度を変化させるために、変更可能であることが認識されるであろう。一例として、異なる感度を有する2つの異なる積層体を作り出すために、二重堆積法が使用されてもよい。
【0093】
次に
図6Aを参照すると、第1のセンサ装置652および第2のセンサ装置654が与えられており、これら装置はそれぞれシールド層662、664を有している。第1および第2のセンサ装置652、654は、
図1の第1および第2のセンサ装置102、104と同一または実質的に同種のものであってよい。第1のセンサ装置652は、第1のセンサ装置652の第1の面(ここでは上面)に隣接して配置された第1のシールド層662を含み、第2のセンサ装置654は、第2のセンサ装置654の第2の面(ここでは底面)に隣接して配置された第2のシールド層664を含む。
【0094】
図6Aは、第1および第2のセンサ装置652、654の各々の少なくとも一方の面に隣接して配置されたシールド層を示しているが、シールド層は、第1および第2のセンサ装置652、654に隣接して形成されてもよいし、または第1および第2のセンサ装置652、654の任意の面に形成されてもよいことが認識されるべきである。たとえば、シールド層662、664は、特定のセンサ装置の上面、底面、側面、あるいは、当該上面、底面および/または側面の任意の組合せに対して隣接して与えられてもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2のセンサ装置652、654のうちの一方がシールド層を含んでよく、第1および第2のセンサ装置652、654のうちの他方がシールド層を含まなくてもよい。
【0095】
シールド特性は、第1および第2のセンサ装置652、654間で異なってよい。たとえば、第1および第2のシールド層662、664は、軟磁性材料で与えられてよい。第1および第2のシールド層662、664は、それぞれのセンサ装置に関する異なる感度および測定範囲を与えるために、互いに異なる特性および/または寸法(たとえば、厚み)および/またはセンサ装置それぞれに対する位置を有することができる。そのような一実施形態において、第1のセンサ装置652と第2のセンサ装置654とは、それぞれのシールド層662、664により生ずる感度の点で互いに異なってよい。
【0096】
次に
図7を参照すると、導体を流れる電流によって生成された磁界を感知するための方法700が例示される。方法700は、ブロック702で開始して、第1のセンサ装置が、導体を流れる第1の電流範囲に対応する第1の測定範囲で磁界を感知し、当該第1の測定範囲で感知された磁界を示す第1の磁界信号を生成する。
【0097】
ブロック704では、第2のセンサ装置が、導体を流れる第2の電流範囲に対応する第2の測定範囲で磁界を感知し得、当該第2の測定範囲で感知された磁界を示す第2の磁界信号を生成する。一実施形態において、第1の磁界信号は、第2の磁界信号とは異なってよく、第1の電流範囲は、第2の電流範囲とは異なってよい(たとえば、より小さく、より大きくてもよい)。
【0098】
複数の異なるセンサ装置は、複数の異なる測定範囲で磁界を感知するように構成されてよく、当該複数の異なる測定範囲は、導体を流れる異なる電流範囲に対応する。たとえば、一実施形態において、第1のセンサ装置は、より高い電流範囲に対応する第1の測定範囲を用いて、当該第1の測定範囲で磁界を感知するように構成されてよく、第2のセンサ装置は、より低い電流範囲に対応する第2の測定範囲を用いて、当該第2の測定範囲で磁界を感知するように構成されてよい。
【0099】
複数の異なるセンサ装置(たとえば、ブリッジ構成)の各々は、それぞれの測定範囲で感知された磁界を示す磁界信号(たとえば、アナログ出力)を生成することができる。複数の異なる磁界信号を生成するために、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置は、形状異方性特性、シールド特性、当該第1および第2のセンサ装置の磁界感知素子間の間隔、並びに/または積層特性など(これらに限定されない)の異なる特性を有することができる。たとえば、第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とは、異なる幅、厚みまたは形状など(これらに限定されない)を有する形状異方性特性の点で互いに異なる。いくつかの実施形態において、第1のセンサ装置の1つ以上の磁界感知素子は、第1の幅を有することができ、第2のセンサ装置の1つ以上の磁界感知素子は、当該第1の幅とは異なる(たとえば、より小さい、より大きい)第2の幅を有することができる。
【0100】
上記第1および/または第2のセンサ装置の磁界感知素子は、ヨーク形状などの様々な異なる形状で形成されてよい。
【0101】
第1のセンサ装置は、第1のブリッジ構成で配置された第1の複数の磁界感知素子を含むことができ、第2のセンサ装置は、第2のブリッジ構成で配置された第2の複数の磁界感知素子を含むことができる。各ブリッジ構成の磁界感知素子間の間隔は、異なる測定範囲をもつセンサ装置を提供するために、異なってよい。たとえば、第1の複数の磁界感知素子間の間隔は、第2の複数の磁界感知素子間の間隔とは異なってよい。いくつかの実施形態において、第1のブリッジの第1の複数の磁界感知素子と、第2のブリッジの第2の複数の磁界感知素子とは、エッジから実質的に等距離にあってよい。他の実施形態において、第1のブリッジの第1の複数の磁界感知素子は、エッジから第1の距離に配置されてよく、第2のブリッジの第2の複数の磁界感知素子は、エッジから、第1の距離とは異なる(たとえば、より大きい、より小さい)第2の距離に配置されてよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、シールド特性は、第1および第2のセンサ装置間で異なってよい。たとえば、第1のセンサ装置と第2のセンサ装置とがシールド層により生ずる感度の点で互いに異なるように、第1のセンサ装置および第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方に軟磁性材料のシールド層が形成されてよい。一実施形態において、第1および第2のセンサ装置がそれぞれシールド層を含むことができるが、シールド層は、それぞれのセンサ装置について異なる感度および測定範囲を与えるために、異なる特性を有することができる。
【0103】
ブロック706では、導体を流れる電流を示す出力信号を生成するために、第1の磁界信号と第2の磁界信号とが合成され得る。第2のセンサ装置(たとえば、低電流ブリッジ)の出力は、第2のセンサ装置についての目標測定範囲よりも高い電流に対して飽和し得る。いくつかの実施形態において、電流センサの回路(たとえば、フロントエンド増幅器)は、複数の異なるセンサ装置が同じ電流について同一または実質的に同種の出力レベルを有することができるように、当該複数の異なるセンサ装置(たとえば、異なるブリッジ)の感度を補償するように構成されてよい。
【0104】
第1の磁界信号と第2の磁界信号とを合成するために、第1および第2のセンサ装置のうちの少なくとも一方の出力を使用して、飽和係数が生成されてよい。たとえば、飽和係数(D(t))は、以下の式を使用して決定されてよい。
【数3】
【0105】
ここで、BridgeOutputLCは、低電流ブリッジの出力値であり、Imeanは、高電流ブリッジの検出限界値を上回り、低電流閉ループの消費を制限するのに十分に低いように選択された一定の係数である。いくつかの実施形態において、低電流ブリッジは、第2のセンサ装置であってよいので、第2のセンサ装置によって生成された第2の磁界信号が、飽和係数を生成するために使用されてよい。他の実施形態において、低電流ブリッジは、第1のセンサ装置であってもよいので、第1のセンサ装置によって生成された第1の磁界信号が、飽和係数を生成するために使用されてもよい。
【0106】
飽和係数の値は、2つの飽和係数(たとえば、0および1)の間で変化し得、飽和係数は、電流センサの特定の用途、および測定される1つ以上の電流範囲に少なくとも部分的に基づいて決定されてよい。一実施形態において、飽和係数は、低電流を測定するときに、高電流ブリッジ出力を打ち消して、雑音が入ることを防ぐように構成されてよい。
【0107】
補数飽和係数は、飽和係数の
補数バージョン(たとえば、1-D(t))を得ることで生成されてよい。一実施形態において、飽和係数は、第1の電流範囲信号を生成するために第1の磁界信号に適用されてよく、飽和係数の
補数バージョンは、第2の電流範囲信号を生成するために第2の磁界信号に適用されてよい。
第1の電流範囲信号と第2の電流範囲信号とは、導体で伝達される電流に対応する出力信号を生成するために、合成されてよい。いくつかの実施形態において、出力信号(V
out(t))は、以下の式を使用して決定されてよい。
【数4】
【0108】
ここで、D(t)は、飽和係数であり、BridgeOutputHCは、高電流ブリッジの出力値(たとえば、第1のセンサ装置からの第1の磁界信号)であり、BridgeOutputLCは、低電流ブリッジの出力値(たとえば、第2のセンサ装置の第2の磁界信号)である。出力信号は、2つ以上の測定範囲を使用する導体を流れる電流に対応する。
【0109】
ブロック702、704および706に関連して説明した動作は、同時に、または実質的に同時に実行されてもよいことが認識されるであろう。
【0110】
本特許の主題である、様々な概念、構造、および技法を例示する役割を果たす好ましい実施形態を説明してきたが、これらの概念、構造、および技法を組み込む他の実施形態が使用されてもよいことは目下明らかとなるであろう。それに応じて、本特許の範囲は、説明された実施形態に限定されるべきでなく、むしろ、以下の請求項の趣旨および範囲によってのみ限定されるべきであることが提示される。