(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】クレーン点検システムおよびクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240213BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B66C15/00 A
B66C13/00 D
B66C15/00 L
(21)【出願番号】P 2021516210
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2020017523
(87)【国際公開番号】W WO2020218433
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019086274
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 実
(72)【発明者】
【氏名】本庄 浩平
(72)【発明者】
【氏名】釜島 勝顕
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188250(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107380420(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108802040(CN,A)
【文献】国際公開第2019/047338(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/059877(WO,A1)
【文献】特開平03-177298(JP,A)
【文献】特開2017-171418(JP,A)
【文献】特開平08-053290(JP,A)
【文献】特開2011-207571(JP,A)
【文献】特開2019-009919(JP,A)
【文献】特開2018-074757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段を有し、
ブームの起伏角度が変化可能なクレーンの周囲を移動する移動体と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像データに対して所定の処理を施す処理部と、を有するクレーン点検システムであって、
前記移動体は、前記クレーンが有するセンサによって検出された前記ブームの起伏角度に基づく撮像位置に移動し、
前記移動体
は、前記撮像位置からクレーンの点検箇所を含む複数箇所を
前記撮像手段によって撮像し、
前記撮像手段によって撮像された前記複数箇所を撮像した撮像画像データに対して前記所定の処理を施すことによって点検可能であり、
前記処理部は、前記所定の処理として、
前記撮像画像データに基づく撮像画像によって、前記クレーンの点検箇所に異常が生じているか否かを判断する診断処理、複数の前記撮像画像データに基づいて、加工画像データとして前記クレーンの三次元モデルデータを作成する加工処理を行い、前記三次元モデルデータをユーザに対して表示を行う表示処理又は前記複数箇所を撮像した撮像画像データに基づく撮像画像をユーザに対して表示するための表示処理のいずれか一つを含むクレーン点検システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記クレーンの状態を示す状態情報データを収集し、前記状態情報データに含まれる状態情報と前記加工画像データに基づく加工画像をユーザに対して表示するための表示処理を行う
請求項1に記載のクレーン点検システム。
【請求項3】
前記移動体は、前記撮像画像データを前記クレーンに対して送信し、前記処理部は、前記クレーンの状態を示す状態情報データおよび前記撮像画像データを前記クレーンから収集する
請求項1
又は請求項2に記載のクレーン点検システム。
【請求項4】
前記処理部は、個々の前記クレーンに対応する顧客との関係を示す顧客情報データに基づいて、個々の前記クレーンの状態を示す状態情報データについて、送信する顧客又は閲覧を許可する顧客を決定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン点検システム。
【請求項5】
前記移動体は、
センサとしてマイク又は温度センサを有し、前記クレーンに対して前記センサによるセンシング
による点検も行う
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載のクレーン点検システム。
【請求項6】
前記クレーンの第一領域を撮像する第一移動体と、前記クレーンの前記第一領域とは異なる第二領域を撮像する第二移動体と、を有する
請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載のクレーン点検システム。
【請求項7】
前記撮像手段を有する第一移動体と、
センサとしてマイク又は温度センサを有する第二移動体と、
を有し、
前記第一移動体は、前記撮像手段による点検を行い、前記第二移動体は、前記センサによるセンシングによって点検を行う
請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載のクレーン点検システム。
【請求項8】
前記クレーンは、物理的な拘束によって前記移動体の移動を制限して、移動方向をガイドするガイド部材を有し、
前記移動体は、前記クレーンに設けられたガイド部材に沿って移動する
請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載のクレーン点検システム。
【請求項9】
前記ガイド部材は、前記クレーンのブームの内側に設けられ、前記移動体は、ブームの内側を移動する
請求項8に記載のクレーン点検システム。
【請求項10】
請求項1に記載のクレーン点検システムによって点検される、起伏角度が変化可能なブームを有するクレーンであって、
物理的な拘束によって移動体の移動を制限して、移動方向をガイドするガイド部材を有し、
前記ブームは、撮像手段を有する移動体が沿って移動するガイド部材を有
し、
前記移動体の撮像位置を決めるために前記ブームの起伏角度を検出するセンサを有するクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの点検システムおよびクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのような作業機械は、作業上の安全のため、各種の点検が必要である。
特に、タワークレーンのように装置の大型化が進むほど、安全性の要求が高くなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレーンの点検作業は、ブームが起伏した状態では高所作業が必要となるため、ブームを倒した状態で行われる。しかしながら、ブームを倒すためには広い作業スペースが必要となるという問題が生じていた。
また、この問題により、現場でのクレーンの点検作業が困難な場合もある。
【0005】
本発明は、クレーンの点検を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
撮像手段を有し、ブームの起伏角度が変化可能なクレーンの周囲を移動する移動体と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像データに対して所定の処理を施す処理部と、を有するクレーン点検システムであって、
前記移動体は、前記クレーンが有するセンサによって検出された前記ブームの起伏角度に基づく撮像位置に移動し、
前記移動体は、前記撮像位置からクレーンの点検箇所を含む複数箇所を前記撮像手段によって撮像し、
前記撮像手段によって撮像された前記複数箇所を撮像した撮像画像データに対して前記所定の処理を施すことによって点検可能であり、
前記処理部は、前記所定の処理として、
前記撮像画像データに基づく撮像画像によって、前記クレーンの点検箇所に異常が生じているか否かを判断する診断処理、複数の前記撮像画像データに基づいて、加工画像データとして前記クレーンの三次元モデルデータを作成する加工処理を行い、前記三次元モデルデータをユーザに対して表示を行う表示処理又は前記複数箇所を撮像した撮像画像データに基づく撮像画像をユーザに対して表示するための表示処理のいずれか一つを含む
という構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クレーンの点検を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンの点検システムの概略を説明する図である。
【
図3】移動体のクレーンに対する配置例について示した説明図である。
【
図7】クレーンの検査情報データベースに格納される情報の一例を示す図である。
【
図8】顧客情報データベースに格納される情報の一例を示す図である。
【
図9】ガイド部材で支持される移動体の例(1)に示す移動体の正面図である。
【
図10】ガイド部材で支持される移動体の例(1)に示す移動体の側面図である。
【
図11】ガイド部材に支持された移動体の左側面図である。
【
図12】ガイド部材に支持された移動体の平面図である。
【
図13】移動体をガイド部材に沿って滑動可能とするスライダの平面図である。
【
図16】ガイド部材で支持される移動体の例(2)に示す移動体の平面図である。
【
図17】移動体の機体上面を除去した平面図である。
【
図19】ガイド部材に支持された移動体の平面図である。
【
図20】ガイド部材に支持された移動体の左側面図である。
【
図21】ガイド部材の他の支持構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[クレーンの点検システムの概略]
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンの点検システムの概略を説明する図である。
図1に示すように、点検システム100は、クレーン20の周囲を移動する第一移動体40A及び第二移動体40Bと、各移動体40A,40Bが取得した情報のデータに対して所定の処理を施す処理部としてのクレーン端末30、情報端末60,70及び管理サーバ50とを備えている。
【0010】
管理サーバ50は、一般公衆回線網等であるネットワーク130に接続されている。
ネットワーク130には、管理サーバ50の他に基地局120,150と情報端末60,70と等が接続されている。管理サーバ50はネットワーク130に接続されたこれらのノード、すなわち基地局120,150、各移動体40A,40B及び複数の端末30,60,70とデータの授受を行うことができる。
【0011】
基地局120は、衛星110を介して電波の送受信が可能な衛星通信回線の基地局であり、基地局150は、いわゆる携帯電話通信回線の基地局である。
基地局120,150は、移動体40A,40Bやクレーン端末30等から各種のデータを受信すると、ネットワーク130を介して管理サーバ50に送信する。
【0012】
クレーン20は、クレーン20自身の各部の状態を検出する種々のセンサとネットワーク130と通信可能なクレーン端末30とを有している。
クレーン端末30が有するコントローラ31(
図5参照)は、種々のセンサで検出された情報(以下、センサ情報とする)を、第一送信部351及び第二送信部352(
図5参照)により基地局120,150に送信する。また、クレーン端末30は第一受信部361及び第二受信部362(
図5参照)により所定の情報を受信することもできる。
【0013】
管理サーバ50には、検査情報データベース140、と、顧客情報データベース160とが接続されている。管理サーバ50が有する制御装置51(
図6参照)は、基地局120,150を経由して第一移動体40A、第二移動体40B及びクレーン端末30から受信した診断情報データと当該診断情報データから生成した状態情報データを検査情報データベース140に格納する。
【0014】
管理サーバ50が有する制御装置51は、検査情報データベース140に格納された状態情報データを、ネットワーク130を介して所定の情報端末60,70やクレーン端末30に送信する。管理サーバ50が有する制御装置51は、情報の送信先を、顧客情報データベース160の内容に基づいて決定する。情報は、例えば、クレーン20のユーザである現場監督者等が利用する情報端末70や、現場から離れたところでクレーン20を利用した業務に関わるユーザである管理者が利用する情報端末60に送信され、情報端末60,70の表示画面に表示される。
なお、
図1においては、クレーン20、情報端末60、70がそれぞれ1台のみ示されているが、実際には、管理サーバ50は、多数のクレーン20や多数の情報端末60、70との間で情報の送受信を行うように構成されている。
【0015】
[移動体]
ここで図面に基づいて第一移動体40A及び第二移動体40Bについて説明する。
図2は移動体40の制御系を示すブロック図である。なお、第一移動体40Aと第二移動体40Bとは、その構成が共通しているので、これらの共通する構成を説明する場合には、単に「移動体40」と記載し、これらを区別して説明する必要がある場合には、「第一移動体40A」、「第二移動体40B」と記載する。
【0016】
移動体40は、複数のロータを有し、各ロータの駆動源となるモータの出力を制御することにより飛行し、昇降動作、前後左右の移動、正逆の旋回等を自在に行うことが可能ないわゆるドローンと呼ばれる機体である。
移動体40は、点検対象となるクレーン20の周囲を移動して、その各部を撮像し、取得した撮像画像データを処理部としてのクレーン端末30及び管理サーバ50に送信する。
【0017】
図2に示すように、移動体40は、撮像手段としてのカメラ41、測位部421、方位センサ422、高さセンサ423、姿勢センサ424、センサとしてのマイク425、温度センサ426、駆動部43、制御部44、データ記憶部45、メモリ46、第一及び第二送信部471,472、第一及び第二受信部481,482を備えている。
なお、上述した測位部421、方位センサ422、高さセンサ423、姿勢センサ424、センサとしてのマイク425、温度センサ426などのセンサ類は、一例であり、移動体40が、これらの内の一部又は全部について搭載してない構成としても良い。
【0018】
カメラ41は、移動体40の機体から所定方向に向けられて支持されており、機体の向きに応じて視線の先の光景を撮像する。上記カメラ41は、一定のフレームレートで連続的に撮像画像を取得することができる。これにより、点検箇所を含む複数箇所の撮像を行うことができる。撮像によって得られた画像信号は、カメラ41に接続された画像処理部411に出力され、画像処理部411により所定形式の撮像画像データが生成されてメモリ46内に記録される。
【0019】
上記カメラ41は、可視光線の画像を取得するものに限らず、赤外線を撮像する赤外線カメラを使用しても良い。赤外線カメラを使用した場合、位相差法等により、距離画像データを得ることが可能となる。
また、単願カメラに限らず、ステレオカメラを使用しても良い。この場合も、距離画像データを得ることが可能となる。
【0020】
測位部421は、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satelite System)受信機であり、移動体40の現在位置を測定する。
方位センサ422は、三軸のジャイロ方位角センサであり、移動体40の進行方向及び機体の傾斜角度を検出する。
高さセンサ423は、例えば光学式であり、下方に投光し、その反射光に生じる位相差から機体の高さを検出する。
姿勢センサ424は、三次元の加速度センサからなり、移動体40に定められたX軸、Y軸、Z軸の各方向の加速度を検出する。これら各軸について検出される重力加速度から機体の姿勢を検出することができる。
マイク425は、指向性を有するものであり、カメラ41の視線と同方向の先にある対象物の音声を検出する。
温度センサ426は、非接触式のいわゆる放射温度計であり、カメラ41の視線と同方向の先にある対象物の温度を検出する。
【0021】
第一送信部471及び第一受信部481は、衛星110を介して基地局120との通信を行う。
また、第二送信部472及び第二受信部482は、直接的に基地局150との通信を行う。
【0022】
駆動部43は、移動体40の移動動作のための推力を出力する構成であり、複数のロータと各ロータごとに設けられた複数の回転駆動源であるモータとを有する。各モータは、機体が目標の移動方向に向かって移動が行われるように、制御部44によって制御される。
【0023】
データ記憶部45は、移動体40の制御プログラムや制御に関する各種の情報を記憶する不揮発性の記憶装置である。
メモリ46は、カメラ41の撮像による撮像画像データやマイク425及び温度センサ426によって検出された検出データを記憶する。
メモリ46は、不揮発性の記憶装置から構成しても良い。また、メモリ46は、取り外し可能な記録メディアから構成してもよい。その場合、取り外した記録メディアを用いて、外部のクレーン端末30、情報端末60,70及び管理サーバ50等に対して、ネットワーク130を介さずに撮像画像データ及び検出データの受け渡しを行うことができる。
【0024】
制御部44は、診断情報収集部441と転送部442とを備えている。これらは、制御部44が備える中央処理装置がデータ記憶部45内のプログラムを実行することにより実現する機能的な構成である。
【0025】
診断情報収集部441は、クレーン20について予め定められた点検箇所の撮像位置を含む撮像可能なエリアに機体を移動させる動作制御を実行する。
さらに、診断情報収集部441は、点検箇所又は点検箇所を含む所定範囲に対してカメラ41による撮像及びマイク425と温度センサ426による検出を行って撮像画像データ及び検出データを取得する動作制御を実行する。
【0026】
クレーン20の点検箇所については、例えば、クレーン20に定められた座標系における点検箇所の位置座標がデータ記憶部45に予め用意されている。
そして、クレーン20に対して予め定められた基準位置に予め定められた向きで移動体40を配置することにより、測位部421が取得する現在位置の座標系における点検箇所の位置座標を求めることができる。
これにより、診断情報収集部441は、移動体40をクレーン20の点検箇所の撮像可能なエリアに移動させるように、駆動部43を制御することができる。
【0027】
また、クレーン20は、タワーブーム24やタワージブ25の回動により点検箇所が移動する場合がある。そのような場合には、診断情報収集部441は、第一又は第二受信部481,482を介する通信により、クレーン端末30からタワーブーム24やタワージブ25の回動角度情報を取得し、点検箇所の位置座標を補正する。そして、移動体40を補正後の点検箇所の撮像位置を含む撮像可能なエリアに移動させる
【0028】
また、クレーン20の所定箇所に指標となるマーキングを付すると共に、診断情報収集部441は、クレーン20の撮像画像中からパターンマッチング等によってマーキングを検出し、マーキングの検出位置に基づいて、移動体40をクレーン20の点検箇所の撮像可能なエリアに移動させてもよい。
また、クレーン20の所定箇所にビーコン等の発信器を設け、これに対する受信機を移動体40に設ける。そして、診断情報収集部441は、発信器の発信位置を特定し、発信位置に基づいて、移動体40をクレーン20の点検箇所の撮像位置を含む撮像可能なエリアに移動させてもよい。
【0029】
転送部442は、撮像可能なエリアにおいて、カメラ41による撮像及びマイク425と温度センサ426によるセンシングによって取得された撮像画像データ及び検出データをメモリ46に記録する処理を実行する。
また、転送部442は、方位センサ422,姿勢センサ424から取得した撮像、検出時の移動体40の位置及び姿勢の情報を撮像画像データ及び検出データに関連付けてメモリ46に記録する(以下、方位センサ422,姿勢センサ424から取得した撮像、検出時の移動体40の位置及び姿勢の情報を関連付けた撮像画像データ及び検出データを「診断情報データ」という)。
また、転送部442は、メモリ46に記録された診断情報データと同じ診断情報データを、第一及び第二送信部471,472により、処理部としてのクレーン端末30及び管理サーバ50に送信する。
【0030】
第一移動体40Aと第二移動体40Bは、データ記憶部45に予め用意されているクレーン20の点検箇所が異なっており、第一移動体40Aは一方の点検箇所の撮像可能なエリア(第一領域)で撮像及びセンシングを行い、第二移動体40Bは他方の点検箇所の撮像可能なエリア(第二領域)で撮像及びセンシングを行う。これらの領域は、一部重複を生じていても良い。また、各移動体40A,40Bが担当する点検箇所は、いずれも重複しない複数の点検箇所であっても良いし、一部重複を生じても良い。
また、各移動体40のカメラ41は、点検箇所に限らず、点検箇所を含む広範囲或いは点検箇所以外のクレーン20の一部分を撮像しても良い。
なお、移動体40の機体数は、二機に限らず、一機又は三機以上でも良い。三機以上とする場合には、データ記憶部45に予め用意されるクレーン20の点検箇所が全て異なっていることが好ましい。
また、第一移動体40Aは点検箇所に対する撮像を行い、第二移動体40Bはマイク425や温度センサ426によるセンシングを行う構成としても良い。
【0031】
なお、移動体40について、診断情報収集部441がクレーン20の点検箇所の撮像可能なエリアに機体を自律的に移動させる制御を行う場合を例示したが、移動体40を外部の無線操縦装置により操縦可能な構成とし、ユーザである作業者が無線操縦装置を操作して、移動体40をクレーン20の点検箇所の撮像可能なエリアに移動させて撮像及びセンシングを行う構成としても良い。
【0032】
図3は、第一移動体40A及び第二移動体40Bのクレーン20に対する配置例について示した説明図である。
図3において、クレーン20は概略的に図示されている。また、図中の移動体40a~40e及び後述する移動体40f、40gは、前述した移動体40と同一の構成からなる。
第一移動体40A及び第二移動体40Bは、移動体40aのように、物理的な拘束が存在しない状態でクレーン20の周囲を飛行によって移動可能に配置しても良い。
【0033】
また、第一移動体40A及び第二移動体40Bは、移動体40bのように、ワイヤ等で補強されたケーブル101によりクレーン20に接続された状態としても良い。ケーブル101は、クレーン20から移動体40bに対する電源供給と移動体40bとクレーン端末30との間でのデータ通信とを可能とする。
また、ケーブル101は、巻き取りと繰り出しを可能とし、ケーブル101が届く範囲を移動体40bの移動可能範囲とする。
【0034】
また、第一移動体40A及び第二移動体40Bは、移動体40c~40eのように、クレーン20に支持されたレール状のガイド部材102~104に沿って滑動可能に支持される構成としても良い。
各ガイド部材102~104には、各ガイド部材102~104に沿って滑動可能な図示しないスライダが設けられ、スライダから各移動体40c~40eを支持する図示しない支持部材が延びている。支持部材は、各移動体40c~40eの姿勢がある程度の範囲で変化可能となるように、自由度をもって各移動体40c~40eを支持している。
また、各ガイド部材102~104回りに各移動体40c~40eが旋回を生じないように、回り止めを設ける、各ガイド部材102~104の断面を円形にしない、各ガイド部材102~104をそれぞれ複数のレールで構成する等の対策を施すことが好ましい。
また、各ガイド部材102~104に沿って移動可能に各移動体40c~40eを支持する構成の場合、各移動体40c~40eは、飛行可能としないで、各ガイド部材102~104に沿って走行可能な構造としても良い。つまり、移動体40c~40eはクレーンの周囲を移動可能に構成されていればよく、その移動の形態は特に限定されない。
【0035】
上記のように、各ガイド部材102~104で各移動体40c~40eを支持する構成とする場合、クレーン20のタワーブーム24の内側にガイド部材を配置しても良い。これにより、移動体40は、飛行が非常に困難な狭いタワーブーム24の内側の点検箇所に対して、良好な撮像及びセンシングを行うことが可能となる。
なお、各ガイド部材102~104で支持される移動体の詳細な例示については、後述する。
【0036】
[クレーン]
クレーン20について
図4に基づいて説明する。ここではクレーン20として、いわゆる移動式のタワークレーンを例示する。以下のクレーン20の記載に関して、クレーン20の前進方向(上部旋回体22の向いている方向とは関係なく、下部走行体21の予め定められた前進方向)を「前」、後退方向を「後」、前を向いた状態で左手側を「左」、前を向いた状態で右手側を「右」とする。
【0037】
図示のように、クレーン20は、自走可能なクローラ式の下部走行体21と、下部走行体21上に旋回可能に搭載された上部旋回体22と、上部旋回体22の前側に起伏可能に取付けられたフロントアタッチメント23とを含んで構成されている。
【0038】
上部旋回体22は、クレーン20のクレーン本体を構成するもので、前,後方向に延びる旋回フレーム221を有している。旋回フレーム221の前側にはブーム取付部222が設けられ、このブーム取付部222には、後述するタワーブーム24の基端249が起伏可能に取付けられている。
【0039】
また、旋回フレーム221のうち、ブーム取付部222の後側近傍には、マスト取付部223が設けられている。このマスト取付部223には、後述するマスト224の基端が回動可能に取付けられている。さらに、旋回フレーム221のうち、マスト取付部223よりも後側には、後述するバックストップ225の基端が回動可能に取付けられている。
【0040】
旋回フレーム221の後側には、フロントアタッチメント23および吊荷との重量バランスをとるカウンタウエイト226が配設されている。また、旋回フレーム221の後側には、ブーム起伏ウインチ等(図示せず)が配設されている。一方、旋回フレーム221の前部右側には、運転席、各種の操作装置(いずれも図示せず)が配置されたキャブ227が設けられている。
【0041】
フロントアタッチメント23は、上部旋回体22に設けられ、地上と高所との間で資材等の荷物を運搬するものである。フロントアタッチメント23は、タワーブーム24、タワージブ25、タワーストラット26を含んで構成されている。
【0042】
タワーブーム24は、上部旋回体22に起伏可能に取付けられている。タワーブーム24は、基端(フート部)249が旋回フレーム221のブーム取付部222に起伏可能に取付けられた下部ブーム241と、基端が下部ブーム241の先端に取付けられた複数(例えば3段)の中間ブーム242と、最も先端側に位置する中間ブーム242の先端に取付けられた上部ブーム243とにより構成されている。下部ブーム241には、後述するジブ起伏ウインチ244、主巻ウインチ245が取付けられている。
【0043】
図示のように、長さ方向で隣合う中間ブーム242の各柱材は、それぞれ連結ピンを用いて連結されている。また、最も下側に位置する中間ブーム242と下部ブーム241との間、最も上側に位置する中間ブーム242と上部ブーム243との間も、それぞれ連結ピンを用いて連結されている。
【0044】
上部ブーム243は、タワーブーム24が起立した姿勢(
図4に示す姿勢)にあるときに上部が前側に突出した形状をなし、上部ブーム243の下辺部は、最も上側に位置する中間ブーム242の先端(上端)に取付けられている。上部ブーム243の前端側には後述のタワージブ25が起伏可能に取付けられ、上部ブーム243の上端側には後述のタワーストラット26が揺動可能に取付けられている。また、上部ブーム243には、三角形状のシーブブラケット246が後方に向けて突設されている。このシーブブラケット246には、タワーガイドシーブ247とガイドシーブ248が回転可能に取付けられている。
【0045】
タワージブ25は、タワーブーム24の上部ブーム243の先端に起伏可能に取付けられている。タワージブ25は、基端が上部ブーム243に起伏可能に取付けられた下部ジブ251と、下部ジブ251の先端に取付けられた中間ジブ252と、中間ジブ252の先端に設けられた上部ジブ253とにより構成されている。上部ジブ253の先端側には、ガイドシーブ254とポイントシーブ255が回転可能に取付けられている。ガイドシーブ254とポイントシーブ255は、後述の主巻ロープ256が巻回されるものである。
【0046】
タワーストラット26は、タワーブーム24の上部ブーム243の上端側に揺動可能に取付けられている。タワーストラット26は、第1のストラット261、第2のストラット262、第3のストラット263を、第1の連結部264、第2の連結部265、第3の連結部266によって連結することにより、三角形状の構造体として構成されている。
【0047】
ここで、タワーストラット26の第1の連結部264は、上部ブーム243の上端側に取付けられている。これにより、タワーストラット26は、タワーブーム24の上端に第1の連結部264を支点として揺動可能に取付けられている。また、第2の連結部265にはペンダントロープ267の一端が接続され、ペンダントロープ267の他端はタワージブ25の上部ジブ253の先端側に接続されている。さらに、第3の連結部266には、後述するブーム側ペンダントロープ274が接続されている。
【0048】
ジブ起伏ウインチ244は、タワーブーム24の下部ブーム241に取付けられている。ジブ起伏ウインチ244は、タワーストラット26を介してタワージブ25を起伏させるものである。ジブ起伏ウインチ244とタワーストラット26の第3の連結部266との間は、ジブ起伏ロープ27によって接続されている。
【0049】
ジブ起伏ロープ27は、ジブ起伏ウインチ244とタワーストラット26との間に設けられている。ジブ起伏ロープ27は、タワーブーム24の中間ブーム242に取付けられた複数枚のシーブを有する下部スプレッダ271と、下部スプレッダ271に対向して設けられた複数枚のシーブを有する上部スプレッダ272と、下部スプレッダ271のシーブと上部スプレッダ272のシーブに順次巻回された状態でジブ起伏ウインチ244に巻取られる巻回ロープ273と、一端が上部スプレッダ272に接続され、他端がタワーストラット26の第3の連結部266に接続されたブーム側ペンダントロープ274とにより構成されている。
【0050】
従って、ジブ起伏ウインチ244によって巻回ロープ273を巻取り、巻出すことにより、上部スプレッダ272が下部スプレッダ271に対して接近、離間し、タワーストラット26は、第1の連結部264を支点として揺動する。このタワーストラット26の揺動がペンダントロープ267を介してタワージブ25に伝わることにより、タワーブーム24の先端側でタワージブ25が起伏する構成となっている。
【0051】
主巻ウインチ245は、ジブ起伏ウインチ244の上側近傍に位置してタワーブーム24の下部ブーム241に取付けられている。主巻ウインチ245には主巻ロープ256の一端側が巻回されている。主巻ロープ256の他端側は、シーブブラケット246のガイドシーブ248、タワージブ25のガイドシーブ254、ポイントシーブ255を介して吊荷フック28に取付けられている。従って、主巻ウインチ245によって主巻ロープ256を巻取り、巻出すことにより、吊荷フック28を昇降させることができる。
【0052】
バックストップ225は、旋回フレーム221とタワーブーム24の下部ブーム241との間に設けられている。このバックストップ225は、起立したタワーブーム24を背後から支えるものである。
【0053】
マスト224は、その基端が旋回フレーム221のマスト取付部223に回動可能に取付けられている。マスト224の先端は、上,下方向ないし前,後方向に回動可能な自由端となっている。
マスト224の先端にはブーム用スプレッダ228が設けられ、このブーム用スプレッダ228とタワーブーム24の上部ブーム243との間は、一定の長さを有するペンダントロープ229を介して接続されている。また、ブーム用スプレッダ228と旋回フレーム221側のスプレッダ(図示せず)とに亘って順次巻回されたブーム起伏ロープ291は、旋回フレーム221に設けられたタワーブーム起伏ウインチ(図示せず)に巻回されている。
【0054】
従って、タワーブーム起伏ウインチによってブーム起伏ロープ291を巻取ったときには、ペンダントロープ229を引張ることによりタワーブーム24を起立させることができる。一方、タワーブーム起伏ウインチによってブーム起伏ロープ291を巻出したときには、ペンダントロープ229を介してタワーブーム24を地面側に伏せる(倒す)ことができる。
【0055】
図5はクレーン端末30の構成を示すブロック図である。クレーン端末30は、クレーン20に搭載された制御端末であり、クレーン20の走行、旋回、吊荷等の各種動作の制御及び異常検出の処理を実行する。
クレーン端末30は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されているコントローラ31を備えている。
【0056】
図5に示すように、コントローラ31には、ロードセル321、ブーム角度センサ322、操作量センサ323、ジブ角度センサ324、入力部331、表示装置332、警報器341、停止装置342、第一及び第二送信部351,352、第一及び第二受信部361,362、操作レバー37、コントロールバルブ38が接続されている。
【0057】
ロードセル321は、ブーム用スプレッダ228に取り付けられており、タワーブーム24を起伏させるブーム起伏ロープ291に作用する張力を検出し、検出した張力に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。
入力部331は、たとえば、タッチパネルであり、作業者からの操作に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。作業者は、入力部331を操作して主巻ロープ256の掛け数、タワーブーム長さや吊荷フック28の質量等を設定できる。
【0058】
ブーム角度センサ322は、タワーブーム24の基端側に取り付けられており、タワーブーム24の起伏角度(以下、ブーム角度とも記す)を検出し、検出したブーム角度に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。ブーム角度センサ322は、たとえば、水平面に対する角度である対地角をブーム角度として検出する。
【0059】
ジブ角度センサ324は、タワージブ25の基端側に取り付けられており、タワージブ25の起伏角度(以下、ジブ角度とも記す)を検出し、検出したジブ角度に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。ジブ角度センサ324は、たとえば、水平面に対する角度である対地角をジブ角度として検出する。
【0060】
操作量センサ323は、たとえば、油圧パイロット式操作レバーの操作量を検出し、検出した操作量に対応する制御信号をコントローラ31に出力する。
【0061】
表示装置332は、たとえば、入力部331としても利用されるタッチパネル式のディスプレイを備え、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、表示画面に吊荷重の情報や作業姿勢の情報を表示する。
警報器341は、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、警報を発生する。
【0062】
停止装置342は、コントローラ31から出力される制御信号に基づいて、主巻ウインチ245およびジブ起伏ウインチ244のそれぞれに連結された油圧モータ(不図示)の駆動を停止させる。停止装置342は、たとえば、油圧ポンプから油圧モータへの圧油の供給を絶つことが可能な電磁切換弁である。
【0063】
第一送信部351及び第一受信部361は、衛星110を介して基地局120との通信を行う。
また、第二送信部352及び第二受信部362は、直接的に基地局150との通信を行う。
【0064】
コントローラ31は、荷重演算部311と、ウインチ制御部312と、表示制御部313と、送信制御部314とを機能的に備えている。
荷重演算部311は、ロードセル321ブーム角度センサ322の出力に基づいて吊荷フック28に加わる吊荷重を算出する。
ウインチ制御部312は、吊荷重が定格総荷重以上であるか判定し、定格総荷重以上の場合に、停止装置342に停止信号を出力するとともに、警報器341に警報信号を出力する。停止装置342に停止信号が入力されると、ジブ起伏ウインチ244,主巻ウインチ245の駆動を停止させる。警報器341に警報信号が入力されると、警報を発生する。
【0065】
表示制御部313は、表示装置332の表示画面に表示する画像を制御する。表示制御部313は、荷重演算部311で算出された吊荷重を表示装置332の表示画面に表示させる。
また、表示制御部313は、管理サーバ50に管理された情報を表示装置332の表示画面に表示させる。
【0066】
送信制御部314は、コントローラ31の記憶装置に記憶させた情報を所定のタイミングで第一送信部351又は第二送信部352を介して送信する。第一送信部351又は第二送信部352から送信された情報は基地局120,150で受信され、管理サーバ50へ送信される。
【0067】
また、送信制御部314は、ブーム角度センサ322及びジブ角度センサ324で検出したブーム角度及びジブ角度からなる回動角度情報を、第一送信部351又は第二送信部352により各移動体40に送信する
さらに、送信制御部314は、各移動体40から受信した診断情報データを第一送信部351又は第二送信部352により管理サーバ50へ送信する。
【0068】
コントロールバルブ38は、コントローラ31からの制御信号に応じて切り替えが可能な複数のバルブから構成されている。
例えば、コントロールバルブ38は、クレーン20が備える油圧ポンプから下部走行体21の駆動輪の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプから上部旋回体22の旋回動作を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプからタワーブーム起伏ウインチの回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプからジブ起伏ウインチ244の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ、上記油圧ポンプから主巻ウインチ245の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給と切断及び回転方向を切り替えるバルブ等を含んでいる。
【0069】
操作レバー37は、コントローラ31を通じてコントロールバルブ38の各種のバルブに対して個別に切り替えを行う制御信号を入力する複数のレバーから構成されている。
【0070】
例えば、操作レバー37の一つである走行レバーは、前述した下部走行体21の駆動輪の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つである旋回レバーは、前述した油圧ポンプから上部旋回体22の旋回動作を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つであるブーム起伏レバーは、前述した油圧ポンプからタワーブーム起伏ウインチの回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つであるジブ起伏レバーは、前述した油圧ポンプからジブ起伏ウインチ244の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
また、操作レバー37の一つである巻き上げレバーは、前述した油圧ポンプから主巻ウインチ245の回転駆動を行う油圧モータへの油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えを行うバルブに対して切り替え信号の入力を行う。
【0071】
コントローラ31は、操作レバー37を構成する各種のレバーの操作に応じて、対応するコントロールバルブ38を構成する各々のバルブに対して油圧の供給、停止及び回転方向の切り替えに対応する制御信号を入力し、各油圧モータの制御を実行する。
これにより、作業者は、操作レバー37を操作することにより、クレーン20の走行動作、上部旋回体22の旋回動作、タワーブーム24の起伏動作、タワージブ25の起伏動作、吊荷フック28の昇降動作を実行することができる。
【0072】
なお、上記クレーン端末30の例では、ロードセル321、ブーム角度センサ322、操作量センサ323、ジブ角度センサ324、リミットスイッチ(図示略)、警報器341、停止装置342等の異常処理を行う構成と、操作レバー37とコントロールバルブ38等の通常操作を行う構成とが、統一的な制御系で制御される構成を例示したが、異常処理を行う構成と通常操作を行う構成とは、それぞれを制御する別個のコントローラを備え、別系統となる構成としても良い。
【0073】
[管理サーバ]
図6は、管理サーバ50の構成を示すブロック図である。管理サーバ50は、制御装置51と、記憶部52と、通信部53とを有する。
制御装置51は、CPUや周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。制御装置51は、記憶部52に予め記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することにより、管理サーバ50の各部を制御する。
記憶部52は、たとえば不揮発性の記憶装置である。
通信部53は、所定の手順に則ってネットワーク130を介したデータ通信(送信および受信)を行う。
制御装置51には表示装置54が接続されており、制御装置51は記憶部52やクレーンの検査情報データベース140、顧客情報データベース160に格納された情報を表示装置54の表示画面に表示させる。
【0074】
制御装置51には、クレーンの検査情報データベース140および顧客情報データベース160が接続されている。
図7は、クレーンの検査情報データベース140に格納される情報の一例を示す図である。
制御装置51は、クレーンの検査情報データベース140に、各移動体40から基地局120,150(クレーン端末30を介する場合を含む)を介して受信した、受信日時を表す日時情報141、クレーン20に固有の作業機ID142、後述する診断結果143等をそれぞれ関連付けて記憶する。
【0075】
図8は、顧客情報データベース160に格納される情報の一例を示す図である。顧客情報データベース160には、クレーン20の作業機ID161と、クレーン20を保有する顧客に関する1以上の顧客情報162と、1以上の顧客の送付先アドレス163とが関連付けて格納されている。なお、一の作業機ID161に対応する顧客の送付先アドレス163は、任意に変更することができる。一の作業機ID161に対応する顧客の送付先アドレス163を複数設定することもできる。
これにより、管理サーバ50の制御装置51は、特定のクレーン20についてクレーンの検査情報データベース140の情報が更新された場合などに、顧客とその送付先を特定し、更新されたクレーン20の情報を送信するか、あるいは更新を通知する。
また、制御装置51は、顧客側からアクセスがあった場合に、顧客のクレーン20に関するクレーンの検査情報データベース140に記録された各種の情報を送信又は閲覧許可を行ってもよい。
その場合、顧客情報データベース160に顧客ごとにパスワード等を設定し、顧客側からアクセス時にパスワードを要求してもよい。そのパスワードも顧客情報データベース160に登録することが好ましい。
【0076】
制御装置51は、診断処理部511と、画像加工処理部512と、表示処理部513とを機能的に備えている。
以下、これらについて順番に説明する。
【0077】
[診断処理部]
診断処理部511は、クレーン20について各移動体40から取得した撮像画像データ及び検出データを含む診断情報データに基づいて、クレーン20の点検箇所について、以下に説明する検査項目に関して、異常が生じているか否かを判断する診断処理を行う。
検査項目は以下の通りである。
(1)タワーブーム、タワージブの亀裂、変形、損傷
(2)フートピン、ジョイントピン、ブッシュの摩耗、損傷
(3)ワイヤロープの摩耗、損傷、乱巻、端末状態
(4)ペンダントロープの損傷、腐食
(5)各スプレッダ、ハンガ、タワーストラットの亀裂、変形、損傷
(6)吊荷フックの亀裂、変形、摩耗
(7)吊荷フックのワイヤ外れ止めの作動状態、変形、損傷
(8)吊荷フックのナットの緩み、ネジ部の損傷、腐食
(9)各シーブの摩耗、変形、損傷
(10)吊荷フック、タワーブーム、タワージブの過巻防止装置の作動状態
(11)ロードセル、ブーム角度センサの作動状態
(12)バックストップの変形、損傷
【0078】
(1)タワーブーム、タワージブの亀裂、変形、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、亀裂、変形、損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「亀裂」及び「損傷」について、機械学習により取得された、タワーブーム、タワージブの損傷又は亀裂のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて「亀裂」又は「損傷」の検出を実行する。そして、「亀裂」又は「損傷」が検出されれば異常と診断し、検出されなければ正常と診断する。
また、診断処理部511は、「変形」について、適正なタワーブーム24又はタワージブ25の画像データと撮像画像データとを比較して、パターンマッチング等の周知の手法による一致度から判定する。あるいは、「亀裂」及び「損傷」と同様に、変形のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて「変形」部分の検出を実行してもよい。
【0079】
(2)フートピン、ジョイントピン、ブッシュの摩耗、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、タワーブーム24、タワージブ25に使用されるフートピン、ジョイントピン、ブッシュの摩耗、損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「摩耗」について、タワーブーム24又はタワージブ25のフートピン、ジョイントピン又はブッシュの撮像画像データから、摩耗部の寸法を算出し、摩耗量を取得する。そして、摩耗量が規定の数値範囲内か否かを判定し、異常の有無を診断する。
また、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0080】
(3)ワイヤロープの摩耗、損傷、乱巻、端末状態
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、主巻ロープ256、ジブ起伏ロープ27、ブーム起伏ロープ291の摩耗、損傷、乱巻の有無の判定及び端末状態の良否の判定を行い、これらの判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「損傷」、「乱巻」について、機械学習により取得された、各ロープの損傷、乱巻状態のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて「損傷」又は「乱巻」の検出を実行する。損傷、乱巻状態としては、キンクの発生や素線切れの発生が含まれる。
あるいは、各ロープの適正な巻状態のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて適正な巻状態を検出しても良い。これらの場合、「乱巻」が検出されれば異常と診断し、「適正な巻状態」が検出されれば正常と診断する。
また、診断処理部511は、「端末状態」について、機械学習により取得された、各ロープの端末の異常状態のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて端末の「異常状態」の検出を実行する。あるいは、各ロープの端末の適正状態のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて端末の「適正状態」を検出しても良い。これらの場合、「異常状態」が検出されれば異常と診断し、「適正状態」が検出されれば正常と診断する。
また、「摩耗」、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0081】
(4)ペンダントロープの損傷、腐食
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、ペンダントロープ267、ブーム側ペンダントロープ274の損傷、腐食の有無の判定を行い、これらの判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「腐食」について、機械学習により取得された、ペンダントロープの腐食状態のパラメータが定められたパターン認識用の識別器を用いて「腐食」の検出を実行する。そして、「腐食」が検出されれば異常と診断し、検出されなければ正常と診断する。
また、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0082】
(5)各スプレッダ、タワーストラットの亀裂、変形、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、ブーム用スプレッダ228、下部スプレッダ271、上部スプレッダ272、タワーストラット26の亀裂、変形、損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
「亀裂」、「変形」、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0083】
(6)吊荷フックの亀裂、変形、摩耗
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワージブ25の撮像画像データから、吊荷フック28の亀裂、変形、摩耗の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
「亀裂」、「変形」、「摩耗」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0084】
(7)吊荷フックのワイヤ外れ止めの作動状態、変形、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワージブ25の撮像画像データから、吊荷フック28に設けられたワイヤ外れ止めの作動状態、変形、損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「作動状態」について、作動前の状態の撮像画像と、作動後の状態の撮像画像のそれぞれについて、適正な作動前の状態の画像又は適正な作動後の画像と比較して、パターンマッチング等の周知の手法による一致度から正否を判定する。
また、「変形」、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0085】
(8)吊荷フックのナットの緩み、ネジ部の損傷、腐食
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワージブ25の撮像画像データから、吊荷フック28に設けられたナットの緩み、ネジ部の損傷、腐食の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
診断処理部511は、「ナットの緩み」について、ナットの撮像画像と、ナットの緩み状態の画像又はナットの締結状態の画像のいずれかについて比較して、パターンマッチング等の周知の手法による一致度から正否を判定する。ナットの撮像画像がナットの緩み状態の画像と一致すれば異常と診断し、ナットの締結状態の画像と一致すれば正常と診断する。
あるいは、ナットの撮像画像から、取り付け位置からのナットの突出長さを求めて、規定以上の突出長さである場合に異常と診断してもよい。
また、「損傷」、「腐食」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0086】
(9)各シーブ、の摩耗、変形、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24、タワージブ25の撮像画像データから、タワーガイドシーブ247、ガイドシーブ248、254、ポイントシーブ255の溝部の摩耗、全体の変形及び損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
「摩耗」、「変形」、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0087】
(10)吊荷フック、タワーブーム、タワージブの過巻防止装置の作動状態
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワージブ25の撮像画像データから、これらに設けられたワイヤロープの過巻防止装置の作動状態の正常又は異常の有無を診断する。
診断処理部511は、過巻防止装置が、正常な作動時に吊荷フック28、タワーブーム24、タワージブ25を、過巻が生じる手前の停止位置で停止させることに基づき、これらの停止状態の撮像画像の停止位置が適正な範囲内となるか否かに応じて、正否を判定する。即ち、診断処理部511は、撮像画像から、吊荷フック28の高さ、タワーブーム24の傾斜角度、タワージブ25の傾斜角度を求め、これらの数値から異常の有無を診断する。
【0088】
(11)ロードセル、ブーム角度センサの作動状態
診断処理部511は、クレーン端末30からの診断情報データに含まれるロードセル321、ブーム角度センサ322の検出データから、これらの検出数値に基づいて正常又は異常の有無を診断する。
【0089】
(12)バックストップの作動、変形、損傷
診断処理部511は、移動体40からの診断情報データに含まれるタワーブーム24の撮像画像データから、バックストップ225の変形、損傷の有無を判定し、判定の結果から異常の有無を診断する。
「変形」、「損傷」の検出の手法については既に記載の場合と同様である。
【0090】
診断処理部511は、上記(1)~(12)の検査項目について診断を行い、診断の結果は、撮像の日時情報と共に検査情報データベース140の該当するクレーン20の状態情報データの一部として記録する。
【0091】
[画像加工処理部]
画像加工処理部512は、クレーン20について各移動体40から取得した診断情報データに含まれる撮像画像データに基づいて、ユーザが異常判断を行うのに適した加工画像データに加工する処理を行う。
画像加工処理部512は、異常判断を行うのに適した加工画像データとしては、クレーン20の三次元モデルの加工画像データを作成する。
【0092】
画像加工処理部512は、各移動体40から取得した診断情報データに含まれる撮像画像データに基づいて三次元モデルの加工画像データを生成する。
各フレームごとの撮像画像データは、移動体40の撮像位置及び向きを示すデータが付帯されているので、クレーン20の同じ部分を撮像した複数の撮像画像データの画像内において共通する特徴点を抽出し、それぞれの画像内の位置を特定することで、当該特徴点の三次元座標を算出することができる。
従って、クレーン20の点検箇所について撮像画像から複数の特徴点を抽出し、三次元座標を算出して、各特徴点を連結することにより、クレーン20の点検箇所について三次元モデルの加工画像データを生成することができる。三次元モデルの加工画像データは、クレーン20の各部の外部形状をあらゆる方向から表示することができるので、これを用いてクレーン20の異常の有無の診断を行うことも可能である。
なお、各移動体40のカメラ41として、赤外線カメラやステレオカメラを搭載した場合には、撮像画像の画素ごとに距離データが得られるので、より高精度な三次元モデルの加工画像データを生成することが可能となる。
また、各移動体40が、GPSを使用して位置座標を取得可能な測位部421を搭載していない構成の場合でも、連続するフレームでの撮像時における移動体40の移動速度が検出可能であれば、上記の手法で撮像画像から複数の特徴点を抽出して三次元モデルの加工画像データを生成することができる。
【0093】
画像加工処理部512は、作成したクレーン20の三次元モデルの加工画像データを撮像の日時情報と共に検査情報データベース140の該当するクレーン20の状態情報データの一部として記録する。
【0094】
[表示処理部]
表示処理部513は、クレーン20の状態を示す状態情報データとして、クレーンの検査情報データベース140に登録された各種の情報の表示処理を実行する。
表示する状態情報データの状態情報としては、例えば、診断処理部511によるクレーン20の診断結果、画像加工処理部512によるクレーン20の三次元モデルの加工画像、移動体40から取得した撮像画像データに基づく撮像画像、当該撮像画像に関する文字情報(クレーン20の撮像箇所、撮像日時)、移動体40から取得した検出データの情報等である。撮像画像は、数が膨大となる場合には、例えば、診断に使用された代表的な画像の一部のみとしてもよい。
また、表示処理部513は、管理サーバ50に接続された表示装置54での表示に限らず、通信部53からネットワーク130を介して、外部の情報端末60,70やクレーン端末30に表示を行っても良い。
また、外部の端末30,60,70に表示処理を行う場合には、顧客情報データベース160に照合して、表示する相手がいずれかの顧客であることを確認した上で、当該顧客のクレーン20に関する状態情報のみを表示するように制限を行ってもよい。また、表示処理は、状態情報データを顧客の端末30,60,70に送信してもよいし、状態情報データは送信しないで状態情報の閲覧のみを可能としても良い。
【0095】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記クレーンの点検システム100では、クレーン20の周囲を移動する各移動体40によって撮像された撮像画像データに対して所定の処理を施す処理部としてのサーバ50を有している。このため、クレーン20のブームやジブのように高所に到る対象について点検を行う場合でも、クレーン20の点検作業を容易に行うことが可能となる。
【0096】
また、管理サーバ50の診断処理部511は、撮像画像データに基づいて、クレーン20の点検箇所に異常が生じているか否かを判断しているので、客観的な判断が容易且つ迅速に得ることができ、点検作業について効率化及びさらなる容易化を図ることが可能となる。
【0097】
また、管理サーバ50の画像加工処理部512は、撮像画像データをユーザが異常判断を行うのに適した加工画像データに加工する加工処理を行うので、単なる撮像画像を見る場合に比べて容易且つ的確に異常判断を行うことが可能となる。
特に、加工画像データとしてクレーン20の三次元モデルデータを作成するので、三次元モデルの加工画像データは、クレーン20の各部の外部形状をあらゆる方向から表示することができ、クレーン20の現場から離れていても、現場にいるかのように、より緻密に異常判断を行うことが可能となる。
【0098】
また、管理サーバ50の表示処理部513は、クレーン20の状態を示す状態情報データを検査情報データベース140に収集して、状態情報データに含まれる状態情報と加工画像データに基づく加工画像をユーザに対して表示するための表示処理を行っている。
このため、ユーザはクレーン20のある現場に行かなくても当該クレーン20の状態を把握することができ、保守管理を効率的に行うことが可能となる。
【0099】
また、移動体40は、撮像画像データをクレーン20が有するクレーン端末30に対して送信し、管理サーバ50は、クレーン端末30からクレーン20の状態を示す状態情報データおよび撮像画像データを収集している。
従って、管理サーバ50は、クレーン端末30が接続された既存のネットワークを利用して撮像画像データを収集することができ、移動体40のネットワーク接続環境を不要とすることもでき、クレーン点検システムの構築を容易に行うことが可能となる。
【0100】
また、移動体40は、クレーン20のタワーブーム24の起伏状態を示す起伏情報をクレーン端末30から取得し、当該起伏情報に基づいて撮像位置を特定するので、クレーン20が姿勢の変化を生じた場合でも適正な撮像画像データを取得することが可能となる。
【0101】
さらに、移動体40は、カメラ41とは異なるセンサであるマイク425や温度センサ426を有し、クレーン20に対してこれらのセンサによるセンシングも行っているので、多種のデータを収集することができ、より精度の高いクレーンの診断を行うことが可能となる。
【0102】
また、第一移動体40Aと第二移動体40Bとでそれぞれ別々に第一領域、第二領域の撮像を行っているので、クレーン20の点検箇所が複数ある場合に、効率的に撮像作業を行うことが可能となる。
【0103】
また、カメラ41を有する第一移動体40Aと、マイク425や温度センサ426を有する第二移動体40Bとにより、撮像とセンシングを別々に行う構成とした場合には、第一移動体40Aは撮像に適した位置のみを経路として移動を行い、第二移動体40Bは、センシングに適した位置のみを経路として移動を行わせることができるので、効率的に診断情報データの収集を行うことが可能となる。
【0104】
また、移動体40(後述する移動体40f、40gを含む)がクレーン20に設けられたガイド部材102~104に沿って移動する構成として場合には、移動体40の振動等の発生を抑えて良好な撮像画像データを取得することが可能となる。
また、ガイド部材をクレーン20のタワーブーム24の内側に設け、移動体40をタワーブーム24の内側を移動させる構成とした場合には、飛行による移動を行う移動体40の場合には,周囲との接触のおそれがあるために入れないタワーブーム24の内側に対しても撮像やセンシングを行うことが可能となる。
【0105】
[その他]
上記発明の実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記クレーンの点検システム100では、クレーン20の一例として、タワークレーンを例示したがこれに限らず、クローラクレーン、ホイールクレーン、トラッククレーン等の移動式クレーンに加えて、港湾クレーン、天井クレーン、ジブクレーン、門型クレーン、アンローダ、固定式クレーン等、あらゆるクレーンに適用可能である。
また、吊荷フックを備えるクレーンに限らず、マグネット、アースドリルバケット等のアタッチメントを吊下するクレーンも本発明の適用の対象である。
また、前述した診断処理部511における検査項目は、一例であって、これらの一部又は別の検査項目を含むものであっても良い。特に、上記のように各種クレーンに適用する場合には、種別に応じてより適正な検査項目について診断処理を行うことが好ましい。
【0106】
また、各種の診断において、撮像画像データからの異常箇所の検出をパターン認識用の識別器を用いて行っているが、これに限定されるものではない。例えば、パターンマッチング等他の周期の手法により異常箇所の検出を行っても良い。
【0107】
[ガイド部材で支持される移動体の例(1)]
ガイド部材102~104で支持される移動体の例(1)について図面に基づいて詳細に説明する。
図9は上記移動体40fの正面図、
図10は左側面図、
図11はガイド部材103に支持された移動体40fの左側面図、
図12は平面図である。
【0108】
移動体40fは複数のロータにより推力を得て移動するいわゆるドローンであり、
図9及び
図10に示すように、前後左右を個別に撮影するカメラ41fが機体下部にジンバル機構412fを介して装備されている。
ジンバル機構412fは、鉛直上下、左右、前後の三軸回りで各カメラ41fの向きを変更調節可能に支持している。
また、機体下部には、一対の脚部413fを備えている。これら一対の脚部413fは、移動体40fが着地する場合には、下方に回動して各カメラ41fをガードし、移動中は撮影の妨げとならないように上方に退避されるようになっている。
【0109】
移動体40fの機体の右側面には、各ガイド部材102~104に沿って滑動可能なスライダ49fから左方に延びる支持部材494fが連結されている。支持部材494fには、途中部分にボールジョイント495fが設けられており、移動体40fは、上下と前後に多少の揺動が許容されると共に左右軸回りにも姿勢を変化させることができる。
【0110】
図11及び
図12では、タワーブーム24に支持されるガイド部材103を例示する。タワーブーム24は、ブーム長手方向に沿った四本の主パイプをボックス状に配置して備えており、四本の主パイプの内側において、二本の主パイプ間に一定間隔で懸架装備された懸架部材105によって主パイプと平行に、二本が対となってガイド部材103は支持されている。一対のガイド部材103は、各々が一定の長さの丸パイプからなり、ゴム製のジョイント107によって必要長さとなるように連結されている。
他のガイド部材102,104も同様の構成及び同様の支持構造で支持されている。
【0111】
図13は移動体40fをガイド部材102~104に沿って滑動可能とするスライダ49fの平面図、
図14はスライダ49fの左側面図、
図15は正面図である。
スライダ49fは、前後に並ぶ一対のガイド部材102~104の前側のガイド部材102~104の左右と前側に設けられた三つの車輪491fと、後側のガイド部材102~104の左右と後側に設けられた三つの車輪491fと、これらの車輪491fが一対のガイド部材102~104を囲繞する配置で回転可能に支持する一対の支持枠492fと、一対の支持枠492fを前後方向に沿った軸回りに回動可能に支持する連結体493fとからなるユニットを上下に二つ備えている。
さらに、スライダ49fは、上側のユニットを上下方向の軸回りに支持する支持体496fと、下側のユニットを上下方向の軸回りに支持する支持体497fと、上下の支持体496f,497fを前後方向の軸回りと左右方向の軸回りの回動を可能とする結合軸498fによって連結し、当該結合軸498fが前述した支持部材494fと連結されている。
【0112】
移動体40fは、上記配置でガイド部材103に支持されることにより、タワーブーム24の内側で四方に向かって撮影を行うことができる。
また、一対のガイド部材102~104を六つの車輪491fで四方から囲繞するので、ガイド部材102~104回りに旋回を生じることが防止され、移動体40fは、安定的に移動動作を行いながら撮影を行うことができる。
また、スライダ49fの上述した構造により、
図14や
図15に示すように、ガイド部材102~104がいずれの方向に湾曲を生じている場合でも上下のユニットの向きの違いを許容して、湾曲したガイド部材102~104に沿って円滑な移動を行うことができる。
また、移動体40fは、ガイド部材102~104等に接する車輪に駆動源から走行動力を付与して移動を行うことも可能だが、ロータの回転により推力を得る構成としている。これにより、車輪におけるスリップ等が生じないで安定的に移動を行うことが可能となる。また、車輪の場合には、動力を車輪に伝達するまでの機構構成が複雑化するが、ロータの場合には、そのような問題がなく、構成を簡易化することが可能となる。
【0113】
なお、
図11及び
図12では、タワーブーム24内に設けられたガイド部材103に沿って移動体40fが移動可能な構成を例示しているが、タワージブ25内も同じ構成でガイド部材104を支持することにより、移動体40fによりタワージブ25内を撮影することができる。同様に、下部走行体21や上部旋回体22の側面に同様の支持構造を適用してガイド部材102を設けることで、下部走行体21や上部旋回体22を撮影することができる。
【0114】
[ガイド部材で支持される移動体の例(2)]
ガイド部材102~104で支持される移動体の例(2)について図面に基づいて詳細に説明する。
図16は上記移動体40gの平面図、
図17は移動体40gの機体上面416gを除去した平面図、
図18は機体側壁496gを切り欠いた正面図、
図19はガイド部材103に支持された移動体40fの平面図、
図20は正面図である。
【0115】
移動体40gも複数のロータにより推力を得て移動するいわゆるドローンであり、
図16~
図18に示すように、一本のガイド部材102~104に沿って移動を行う。
図19及び
図20に示すように、ガイド部材(
図19,
図20ではタワーブーム24に支持されるガイド部材103を例示する)は、タワーブーム24のブーム長手方向に沿ってボックス状に配置された四本の主パイプの内側においてタワーブーム24の中心に配置されている。
例えば、ガイド部材103は、タワーブーム24の四本の内の二本の主パイプ間に一定間隔で懸架装備された懸架部材105から延びる支柱106によって一定間隔で支持されている。
ガイド部材103は、一定の長さの丸パイプからなり、ゴム製のジョイント107によって必要長さとなるように連結されている。これにより、安定した移動体40の移動が可能となる。
他のガイド部材102,104も同様の構成及び同様の支持構造で支持されている。
【0116】
移動体40gは、前後左を個別に撮影する三基のカメラ41gが機体外壁に設けられており、右側を撮影するカメラ41gだけは、ガイド部材103を支持する支柱106を避ける配置とすべきことから機体上面416gに設けられている。
また、機体上面416gには、電源ユニット414gと制御ユニット415gとが設けられている。
【0117】
移動体40gの機体の中心には、ガイド部材102~104が上下に貫通している。
ガイド部材102~104は、長手方向に沿って外周の前後左の三箇所にガイド溝が形成されている。そして、移動体40gの機体内部には、前後左の三方からガイド部材102~104の各ガイド溝102a~104aに嵌まるように当接する三つの車輪491gが回転可能に支持されており、これらの車輪491gによってガイド部材102~104に沿った滑動を可能としている。
【0118】
移動体40gは、上記配置でガイド部材103に支持されることにより、タワーブーム24の内側で四方に向かって撮影を行うことができる。
また、各ガイド部材102~104を三つの車輪491gで三方から囲繞するので、ガイド部材102~104回りに旋回を生じることが防止され、移動体40gは、安定的に移動動作を行いながら撮影を行うことができる。
また、移動体40gは、三つの車輪491gで各ガイド部材102~104を囲む構成なので、ガイド部材102~104がいずれの方向に湾曲を生じている場合でも影響が少なく、湾曲したガイド部材102~104に沿って円滑な移動を行うことができる。
また、移動体40gも、ガイド部材102~104等に接する車輪に駆動源から走行動力を付与して移動を行うことも可能だが、ロータの回転により推力を得る構成としている。これにより、スリップのない安定的な移動と構成の簡易化を実現できる。
【0119】
なお、
図19及び
図20では、タワーブーム24内に設けられたガイド部材103に沿って移動体40gが移動可能な構成を例示しているが、タワージブ25内も同じ構成でガイド部材104を支持することにより、移動体40fによりタワージブ25内を撮影することができる。同様に、下部走行体21や上部旋回体22の側面に同様の支持構造を適用してガイド部材102を設けることで、下部走行体21や上部旋回体22を撮影することができる。
尚、移動体40は下部走行体21や上部旋回体22の周囲を撮影することでクレーンの周囲監視として使用してもよい。また、クレーンの吊荷フック周辺を撮影することで吊荷監視としても使用してもよい。つまり、移動体40の撮影を点検以外のクレーン作業を支援する撮影に利用してもよい。
【0120】
また、ガイド部材103がタワーブーム24の二本の主パイプに懸架された懸架部材105から延びる支柱106に支持される例を示したが、支持構造はこれに限定されない。
例えば、
図21に示すようにタワーブーム24の二本の主パイプから個別に中央付近に延出された二本の支持パイプ105a,105bの先端部を支柱106の基端部と共に連結し、支柱106の先端部でガイド部材103を指示する構成としても良い。また、同様の支持構造をガイド部材102,104にも適用しても良い。
【0121】
なお、上記
図16~
図20に示した移動体40gについては、三つの車輪491gをガイド部材102~104側に押圧するバネとダンパーを介して支持する構成としても良い。
また、ガイド部材102~104のいずれかのガイド溝102a~104aの近傍にガイド部材102~104に沿ったレール状の電極を設け、移動体40g側には、レール状の電極に摺動する電源ブラシを設け、移動体40gがガイド部材102~104から給電が行われる構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係るクレーンの点検システムは、クレーンの周囲を移動する移動体を有するクレーンの点検システムについて産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0123】
20 クレーン
30 クレーン端末(処理部)
31 コントローラ
40 移動体
40A 第一移動体
40B 第二移動体
40a~40g 移動体
41 カメラ(撮像手段)
425 マイク
426 温度センサ
441 診断情報収集部
442 転送部
44 制御部
50 管理サーバ(処理部)
51 制御装置
511 診断処理部
512 画像加工処理部
513 表示処理部
54 表示装置
60,70 情報端末
100 クレーン点検システム
102~104 ガイド部材
120,150 基地局
130 ネットワーク
140 検査情報データベース
160 顧客情報データベース