(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240213BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/39 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/435 20060101ALI20240213BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K3/36
C08K5/39
C08K5/435
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021520641
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015205
(87)【国際公開番号】W WO2020235230
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019096904
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 大二郎
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0000639(US,A1)
【文献】特開2005-105154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のジエン系ゴムを含むゴム成分と、
少なくともシリカを含む充填剤と、
加硫剤と、
式(1)で表される化合物と、
式(2)で表される化合物と、
前記式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤と、
を含有し、前記加硫促進剤及び前記式(1)で表される化合物の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して1.4質量部より大き
く3.0質量部以下であり、
前記式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤として、少なくともベンゾチアゾリル基を2つ有する化合物を有するチアゾール系加硫促進剤を含み、該ベンゾチアゾリル基を2つ有するチアゾール系化合物の含有量(b)に対する、前記式(1)で表される化合物の含有量(a)の比(a/b)が、0.3以上3.0以下である、ゴム組成物。
【化1】
〔式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、炭素数1~18の1価のアルキル基又は炭素数6~15の1価のアリール基を表す。R
5は、炭素数2~18の2価のアルキル基を表す。R
1~R
5は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
式(2)中、A
1は、2価のヘテロ原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。Xが2つ以上のとき、Xは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。zは0~5の整数を表す。nは1~5の整数を表し、mは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表し、且つ、m+p=2n+1を満たす。Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素数6~15の1価のアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。〕
【請求項2】
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記充填剤の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して70質量部以下である請求項1または請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカのBET比表面積が170m
2/g以上である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(3)で表される請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化2】
〔式(3)中、Ar
11~Ar
14は、それぞれ独立して、炭素数6~12の1価のアリール基を表す。nは、2~12の整数を表す。m1~m4は、それぞれ独立して、1~6の整数を表す。Ar
11~Ar
14は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。〕
【請求項6】
前記式(2)で表される化合物が、下記式(4)で表される請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化3】
〔式(4)中、A
2は、酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。3つのXは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。R
21及びR
22は、それぞれ独立して、アミノ基又は炭素数1~8のアルキル基を表し、更に置換基を有していてもよい。q1及びq2は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。〕
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から外傷等の理由により故障したタイヤを補修し、再活用する動きが広まっている。
これまで、故障したタイヤを補修し、更生するには、故障したタイヤを工場に持ち込み、使用済みのタイヤのトレッドゴムを研磨して台タイヤを成形し、台タイヤ上にクッションゴムを配置し、クッションゴムにプレキュアトレッドを貼り付け、プレキュアトレッド装着済みの台タイヤを加硫缶で加熱する方法等が用いられていた。クッションゴムは、プレキュアトレッドを台タイヤに固定する役割を担っており、更生時間の短縮等観点から、短時間で加硫できる性能を持つ一方、スコーチし難いという機能が求められる。
【0003】
かかる機能を向上するために、例えば、ジエン系ゴム及び1,3-ジフェニルグアニジンを混練することにより混練物を得る工程と、前記混練物、2-メルカプトベンゾチアゾール、及び末端にベンゼン環を含むジチオカルバミン酸塩系促進剤を混練する工程とを含む方法によりゴム組成物を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、加硫ゴムの耐摩耗性能および耐カットチップ性能を向上可能な更生タイヤトレッド用ゴム組成物を得るために、密閉式混合機を使用し、ジエン系ゴム、カーボンブラック、ジヒドラジド化合物および硫黄を混合・分散させる更生タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法であって、前記ジヒドラジド化合物および前記硫黄を前記密閉式混合機内に同時に投入する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、例えば、加硫ゴム部材に対する粘着性に優れ、加硫ゴムの破壊特性、低発熱性を高めることが可能な更生タイヤ用クッションゴムを得るために、更生タイヤ用クッションゴムを、ジエン系ゴムとフィラーとを含み、前記フィラーは、脂肪酸、ロジン酸及びシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種で表面処理された表面処理炭酸カルシウムを含み、前記表面処理炭酸カルシウムの窒素吸着比表面積(N2SA)が20m2/g以上であり、前記表面処理炭酸カルシウムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、1~7質量部となる構成とすることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
更に、例えば、更生タイヤの耐久性を向上するために、更生タイヤ用クッションゴム組成物の配合組成を、ジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック20~100質量部と、変性液状ゴム5~20質量部とすることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-8286号公報
【文献】特開2015-93880号公報
【文献】特開2016-14113号公報
【文献】特開2016-84405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~4に記載されるように、更生タイヤの特性として耐摩耗性、破壊特性、低発熱性などが要求されている。しかしながら、上記特許文献ではいずれも、耐亀裂性は検討されていない。特にトレッドは接地面であるため、亀裂の発生は更生タイヤの寿命に大きく影響する。廃棄物処理量削減や環境負荷を考慮すると、タイヤには長寿命であることが求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、加工性を維持しつつ、耐亀裂性に優れる加硫ゴム及びタイヤが得られるゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物、並びに、耐亀裂性に優れるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の<1>~<9>を提供する。
<1> 少なくとも1種類のジエン系ゴムを含むゴム成分と、少なくともシリカを含む充填剤と、加硫剤と、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、前記式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤と、を含有し、前記加硫促進剤及び前記式(1)で表される化合物の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して1.4質量部より大きいゴム組成物である。
【0010】
【0011】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~18の1価のアルキル基又は炭素数6~15の1価のアリール基を表す。R5は、炭素数2~18の2価のアルキル基を表す。R1~R5は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
式(2)中、A1は、2価のヘテロ原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。Xが2つ以上のとき、Xは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。zは0~5の整数を表す。nは1~5の整数を表し、mは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表し、且つ、m+p=2n+1を満たす。Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、炭素数6~15の1価のアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
【0012】
<2> 前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上である<1>に記載のゴム組成物である。
<3> 前記充填剤の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して70質量部以下である<1>または<2>に記載のゴム組成物である。
<4> 前記シリカのBET比表面積が170m2/g以上である<1>~<3>のいずれかに記載のゴム組成物である。
<5> 前記式(1)で表される化合物が、下記式(3)で表される<1>~<4>のいずれかに記載のゴム組成物である。
【0013】
【0014】
式(3)中、Ar11~Ar14は、それぞれ独立して、炭素数6~12の1価のアリール基を表す。nは、2~12の整数を表す。m1~m4は、それぞれ独立して、1~6の整数を表す。Ar11~Ar14は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
【0015】
<6> 前記式(2)で表される化合物が、下記式(4)で表される<1>~<5>いずれかに記載のゴム組成物である。
【0016】
【0017】
式(4)中、A2は、酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。3つのXは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。R21及びR22は、それぞれ独立して、アミノ基又は炭素数1~8のアルキル基を表し、更に置換基を有していてもよい。q1及びq2は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。
【0018】
<7> 前記加硫促進剤及び前記式(1)で表される化合物の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以下である<1>~<6>のいずれかに記載のゴム組成物である。
【0019】
<8> <1>~<7>のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム組成物である。
<9> <8>に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加工性を維持しつつ、耐亀裂性に優れる加硫ゴム及びタイヤが得られるゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物、並びに、耐亀裂性に優れるタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、少なくとも1種類のジエン系ゴムを含むゴム成分と、少なくともシリカを含む充填剤と、加硫剤と、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、前記式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤と、を含有し、前記加硫促進剤及び前記式(1)で表される化合物の合計量が、前記ゴム成分100質量部に対して1.4質量部より大きい。
【0022】
【0023】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~18の1価のアルキル基又は炭素数6~15の1価のアリール基を表す。R5は、炭素数2~18の2価のアルキル基を表す。R1~R5は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
式(2)中、A1は、2価のヘテロ原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。Xが2つ以上のとき、Xは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。zは0~5の整数を表す。nは1~5の整数を表し、mは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表し、且つ、m+p=2n+1を満たす。Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、炭素数6~15の1価のアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
【0024】
既述のように、故障したタイヤを、設備の整っている大規模な工場に持ち込み、補修し、更正することが行われている。また、タイヤの一部が抉れたり、欠損する等して故障したタイヤに、ゴム組成物を埋設したり、欠損部分を被覆する等した後、補修用のゴム組成物を加硫し、タイヤを補修する。
本発明のゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分に対して、充填剤として少なくともシリカと加硫剤とを含有し、更に式(1)で表される化合物を含む加硫促進剤と、式(2)で表される化合物を含有する。シリカの含有量と加硫促進剤の含有量との組み合わせにより、耐亀裂性に優れたゴム組成物となる。
また、本発明のゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物は十分な加硫速度を有するため、速やかに加硫をすることも可能である。さらに、本発明のゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物は適切な粘度に調整されているため、加工性に優れている。このため、特にタイヤの補修を行う際は、作業が容易であるとの利点も有している。
上記においては、本発明のゴム組成物を故障タイヤの補修に用いる場合を代表して説明したが、本発明のゴム組成物は、故障タイヤの補修に限られず、タイヤ以外の加硫ゴム製品全般の補修に用いることができる
以下、本発明のゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤについて、詳細に説明する。
【0025】
〔ゴム成分〕
本発明のゴム組成物は、少なくとも1種類のジエン系ゴムを含むゴム成分を含有する。
本発明のゴム組成物は、タイヤに代表される加硫ゴム製品の欠損部分に埋設され、加硫されて、製品の加硫ゴムと一体化して、製品の一部となることから、加硫ゴムとの相性が良い成分であることが好ましい。加硫ゴム製品は、通常、ジエン系ゴムの加硫ゴムであることから、ゴム組成物と欠損した製品の加硫ゴムとの相性が良く、製品として一体化した後、元の製品と、補修により追加された加硫ゴムとが剥離しにくく、元の加硫ゴム製品の基本特性(強度、弾力性等)を損ねにくい。
【0026】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は変性されていてもよい。
合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。
ジエン系ゴムは、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、及びイソブチレンイソプレンゴム、並びにそれらの変性ゴムが好ましく、天然ゴム及びポリブタジエンゴムがより好ましい。ジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0027】
ゴム成分は、天然ゴムと合成ジエン系ゴムのいずれか一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。
タイヤは天然ゴム比率が高いため、製品であるタイヤと相性が良く、また、欠損しにくいという観点から、ゴム成分は天然ゴムを含むことが好ましい。
ゴム成分中の天然ゴムの割合は、55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの割合の上限は100質量%である。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において非ジエン系ゴム及びその変性ゴムを含んでいてもよい。
【0028】
〔充填剤〕
本発明のゴム組成物は充填剤を含有する。
ゴム組成物が充填剤を含有することで、本発明のゴム組成物が加硫した加硫ゴム部分の強度を上げることができるため、加硫ゴム製品が更正した後の加硫ゴム製品の基本特性(強度、弾力性等)を損ねにくい。
本発明では、ゴム組成物を補強する補強性充填剤として、少なくともシリカを含有する。
【0029】
(シリカ)
シリカは特に限定されず、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも、湿式シリカが好ましい。
湿式シリカのBET比表面積は170m2/g以上であることが好ましい。シリカのBET比表面積がこの範囲であることで、ゴム補強性とゴム成分中へのシリカの分散性とを両立することができる。また、ゴム組成物から得られる加硫ゴムの耐亀裂性を向上すことができる。特に、シリカのBET比表面積は、200~350m2/gであることがより好ましい。
このようなシリカとしては、例えば、東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニプシルKQ」(BET比表面積=240m2/g)、エボニック社製、商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)等の市販品を用いることができる。シリカは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物では、シリカの分散性を高めるためにシランカップリング剤が添加されていても良い。
【0030】
本発明のゴム組成物は、補強性充填剤として、シリカに加えてカーボンブラックも含有することができる。
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものがより好ましく、ISAFグレードのものが更に好ましい。
【0031】
本発明のゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、70質量部以下であることが好ましい。充填剤含有量が70質量部以下であることで、ゴム組成物の粘度の増大を抑制でき、加工性に優れるゴム組成物とすることができる。耐亀裂性を考慮すると、充填剤の含有量は40質量部以上であることが好ましく、43質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることが更に好ましい。
【0032】
シリカの含有量はゴム成分100質量部に対して3質量部以上であることが好ましい。シリカの含有量が3質量部以上であることで、十分な耐亀裂性を有する加硫ゴムを得ることができる。シリカの含有量は5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましい。なお、シリカの含有量が高くなるほど耐亀裂性が向上する一方で、ゴム組成物の粘度が増大する傾向がある。耐亀裂性とゴム組成物の加工性とのバランスを考慮すると、シリカの含有量はゴム成分100質量部に対して33質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることが更に好ましい。
【0033】
〔加硫剤〕
本発明のゴム組成物は、加硫剤を含む。
加硫剤は、特に制限はなく、通常、硫黄を用い、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
本発明のゴム組成物においては、当該加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であることで加硫を充分に進行させることができ、10質量部以下をとすることで、加硫ゴムの耐老化性を抑制することができる。
ゴム組成物中の加硫剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、0.5~8質量部であることがより好ましく、1~6質量部であることが更に好ましい。
【0034】
〔式(1)で表される化合物〕
本発明のゴム組成物は、式(1)で表される化合物を含有する。
式(1)で表される化合物は、加硫促進剤として機能し得る化合物であり、チウラム系の加硫促進剤である。本発明のゴム組成物が式(1)で表される化合物を含有することで、市場に流通した後のゴム組成物を用いてタイヤ等の加硫ゴムを補修する際の加硫速度を高めることができるため、設備が整っていない小規模の整備工場、小売店等でも、容易にタイヤを補修することができる。
【0035】
【0036】
式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~18の1価のアルキル基又は炭素数6~15の1価のアリール基を表す。R5は、炭素数2~18の2価のアルキル基を表す。R1~R5は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
【0037】
R1~R4で表される炭素数1~18の1価のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等が挙げられる。
R1~R4で表されるアルキル基は直鎖状または分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。また、アルキル基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることがより更に好ましい。
【0038】
R1~R4で表される炭素数6~15の1価のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
R1~R4で表されるアリール基の炭素数は、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
【0039】
R5で表される炭素数2~18の2価のアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。具体的には、例えば、エチレン基、プロピレン基、ジメチルメチレン基、n-ブチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、n-オクチレン基、-デシレン基、n-ドデシレン基、n-オクタデシレン基等が挙げられる。
R5は、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
R5の炭素数は、2~14であることが好ましく、3~12であることがより好ましく、4~10であることが更に好ましい。
【0040】
R1~R5が更に有し得る置換基としては、炭素数1~18の1価のアルキル基、炭素数6~15の1価のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。炭素数1~18の1価のアルキル基と炭素数6~15の1価のアリール基の具体例は、R1~R4で表される炭素数1~18の1価のアルキル基と炭素数6~15の1価のアリール基の具体例として説明したものが挙げられる。
置換基は、炭素数1~18の1価のアルキル基又は炭素数6~15の1価のアリール基が好ましく、炭素数6~15の1価のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましく、炭素数6~10のアリール基がより更に好ましい。
【0041】
故障したタイヤ等の加硫ゴムを補修する際の、ゴム組成物の加硫速度をより高める観点から、式(1)で表される化合物は、式(3)で表されることが好ましい。
【0042】
【0043】
式(3)中、Ar11~Ar14は、それぞれ独立して、炭素数6~12の1価のアリール基を表す。nは、2~12の整数を表す。m1~m4は、それぞれ独立して、1~6の整数を表す。Ar11~Ar14は、それぞれ独立して、更に置換基を有していてもよい。
【0044】
Ar11~Ar14で表される炭素数6~12の1価のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
nは、3~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
m1~m4は、それぞれ独立して、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。
Ar11~Ar14が有し得る置換基としては、R1~R5が更に有し得る置換基として挙げた基又は原子が挙げられる。
【0045】
式(1)で表される化合物は、市販製品を用いてもよく、例えば、LANXESS社製、商品名「VULCUREN KA9188」(1,6-ビス(N,N-ジベンジルチアカルバモイルチオ)ヘキサン)として入手することができる。
【0046】
本発明のゴム組成物においては、式(1)で表される化合物と、式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤との全加硫促進剤の合計量は、ゴム成分100質量部に対して1.4質量部よりも大きい。全加硫促進剤の合計量が1.4質量部以下であると、ゴム製品としたときに、高い耐亀裂性を得ることができない。加工のしやすさを考慮すると、全加硫促進剤の合計量は、ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.6質量部以下であることが更に好ましい。
ゴム組成物中の式(1)で表される化合物の含有量は、タイヤ等の加硫ゴム補修時のゴム組成物の加硫速度を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.08~0.6質量部であることが更に好ましい。
【0047】
[式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分の加硫をより促進するために、式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤を含有することが好ましい。
具体的には、例えば、グアジニン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の加硫促進剤、及び、式(1)で表される化合物以外のチウラム系の加硫促進剤が挙げられる。
以上の中でも、スルフェンアミド系の加硫促進剤及びチアゾール系の加硫促進剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
ゴム組成物中の式(1)で表される化合物以外の加硫促進剤の含有量は、放置安定性をより高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.5~5質量部であることが好ましく、0.7~3質量部であることがより好ましく、0.8~2質量部であることが更に好ましい。
【0048】
(スルフェンアミド系の加硫促進剤)
スルフェンアミド系の加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましく、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドがより好ましい。
【0049】
(チアゾール系の加硫促進剤)
チアゾール系の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール、2-メルカプト-ナフト[1,2-d]チアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられ、反応性が高いため2-メルカプトベンゾチアゾール及びジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0050】
(チウラム系の加硫促進剤)
式(1)で表される化合物以外のチウラム系の加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(n-ドデシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等が挙げられ、中でも、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、及びテトラベンジルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0051】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分の加硫をより促進するために、チアゾール系の加硫促進剤として、ベンゾチアゾリル基を2つ有するチアゾール系化合物を含有することがより好ましい。ベンゾチアゾリル基を2つ有するチアゾール系化合物としては、例えば、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが挙げられる。
更に、ゴム成分の加硫をより促進するために、ベンゾチアゾリル基を2つ有するチアゾール系化合物の含有量(b)に対する式(1)で表される化合物の含有量(a)の比率(a/b)は、0.3~3.0であることが好ましく、1.0~3.0であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。
【0052】
また、グアジニン系の加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン;ジチオカルバメート系の加硫促進剤としては、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられる。
【0053】
〔式(2)で表される化合物〕
本発明のゴム組成物は、式(2)で表される化合物を含有する。
本発明のゴム組成物が式(2)で表される化合物を含有することで、市場に流通した後のゴム組成物を用いてタイヤ等の加硫ゴムを補修するまでの間、ゴム組成物の加硫を抑制し、柔軟に保つことができ、ゴム組成物の放置安定性を上げることができる。
【0054】
【0055】
式(2)中、A1は、2価のヘテロ原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。Xが2つ以上のとき、Xは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。zは0~5の整数を表す。nは1~5の整数を表し、mは0以上の整数を表し、pは1以上の整数を表し、且つ、m+p=2n+1を満たす。Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、炭素数6~15の1価のアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
【0056】
A1で表される2価のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、中でも、硫黄原子であることが好ましい。
zは、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
nは、1~3が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。
mは0~6が好ましく、0~4がより好ましく、0~2が更に好ましく、0がより更に好ましい。
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、中でも、塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
Xが2つ以上のとき、Xは同じであることが好ましい。
pは1~7が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0057】
Ar1及びAr2で表される炭素数6~15の1価のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
アリール基の炭素数は、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
Ar1及びAr2が更に有し得る置換基としては、R1~R5が更に有し得る置換基として説明した基及び原子が挙げられる。
式(2)で表される化合物は、式(4)で表されることが好ましい。
【0058】
【0059】
式(4)中、A2は、酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはハロゲン原子を表す。3つのXは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。R21及びR22は、それぞれ独立して、アミノ基又は炭素数1~8のアルキル基を表し、更に置換基を有していてもよい。q1及びq2は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。
【0060】
A2は硫黄原子であることが好ましい。
Xは、式(2)中のXと同義であり、塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
R21及びR22で表される炭素数1~8のアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基等が挙げられる。
R21及びR22で表されるアルキル基は直鎖状または分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。また、アルキル基の炭素数は、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2であることが更に好ましい。
q1及びq2は、それぞれ独立して、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましく、0がより更に好ましい。
【0061】
式(2)で表される化合物は、市販製品を用いてもよく、例えば、ランクセス社製、商品名「ブルカレントE/C」(N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド)として入手することができる。
【0062】
ゴム組成物中の式(2)で表される化合物の含有量は、ゴム組成物の調製からタイヤ等の加硫ゴム補修までのゴム組成物の放置安定性を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましく、0.08~1.0質量部であることが更に好ましい。
【0063】
[粘着付与剤]
本発明のゴム組成物は、更に、粘着付与剤を含有することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、欠損が生じた加硫ゴム、穴等が開いたタイヤ等の故障部分に付与され、加硫されることで、各製品と一体化する。ゴム組成物が粘着付与剤を含むことで、欠損した加硫ゴム部分と、付与されるゴム組成物との接着性が向上するため、欠損した加硫ゴム部分と本発明のゴム組成物由来の加硫ゴムとを、より強固に接着することができる。
【0064】
粘着付与剤としては、例えばロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステルや重合ロジンエステルなどのロジン系樹脂;クマロンインデン樹脂、水添クマロンインデン樹脂、フェノール変性クマロンインデン樹脂、エポキシ変性クマロンインデン樹脂などのクマロンインデン系樹脂;ポリテルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂などのテルペン系樹脂;アルキルフェノー樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、p-第三-ブチルフェノールアセチレン樹脂などのフェノール系樹脂;脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族変性脂肪族系石油樹脂、芳香族系純モノマー樹脂などの石油系樹脂などが挙げられる。
これらの粘着付与剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記の本発明のゴム組成物に用いる粘着付与剤は、フェノール系樹脂が好ましい。
【0065】
ゴム組成物中の粘着付与剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2.0質量部を超え、10質量部以下であることが好ましい。
粘着付与剤の含有量がゴム成分100質量部に対して、2.0質量部を超えることで、欠損した加硫ゴム部分と、付与されるゴム組成物との接着性がより向上し、また、欠損した加硫ゴム部分と本発明のゴム組成物由来の加硫ゴムとを、より強固に接着することができる。
粘着付与剤の含有量がゴム成分100質量部に対して、10質量部以下であることで、ゴム組成物の金属へのべたつきを抑制することができるため、粘着付与剤を含むゴム組成物を、金属ローラー等を有する装置を用いて、搬送、混練等する際の作業性に優れる。
ゴム組成物中の粘着付与剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2.3~8質量部であることがより好ましく、2.3~4.9質量部であることが更に好ましく、2.6~4.7質量部であることがより更に好ましい。
【0066】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分に、充填剤、加硫剤、式(1)で表される化合物、及び式(2)で表される化合物とともに、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
欠損した加硫ゴムの補修は、欠損部分に本発明のゴム組成物が付着し易いように、また、加硫後にゴム組成物由来の加硫ゴムと故障した加硫ゴムの欠損部分とが接着し易いように、加硫ゴムの欠損部分を研磨することが好ましい。
欠損部分に本発明のゴム組成物を付与した後、加硫するときの加硫温度は、故障した製品の加硫ゴムの過加硫を抑制する観点から、100~130℃であることが好ましい。
【0067】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は本発明のゴム組成物を用いてなる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの新規製造に用いてもよいし、タイヤの補修用に用いてもよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加工性に優れるとともに、使用時には加硫速度が大きく、速やかに加硫することができるため、特に補修用のタイヤ用ゴム組成物に好適である。
【0068】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてなる。
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて新規に製造されタイヤであってもよいが、故障部分に本発明のタイヤ用ゴム組成物を付与して補修された更正タイヤであることが好ましい。
故障したタイヤの補修は、タイヤの欠損部分に本発明のタイヤ用ゴム組成物が付着し易いように、また、加硫後にタイヤ用ゴム組成物由来の加硫ゴムと故障したタイヤの欠損部分とが接着し易いように、タイヤの欠損部分を研磨することが好ましい。
加硫温度は、故障したタイヤの加硫ゴムの過加硫を抑制する観点から、100~130℃であることが好ましい。
【実施例】
【0069】
<実施例1~2、比較例1~2>
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す配合組成で各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。
なお、表中の成分の詳細は以下のとおりである。
【0070】
1.ゴム成分
NR:天然ゴム、RSS#1
【0071】
2.充填剤
(1)カーボンブラック
カーボンブラック1:N220、旭カーボン株式会社製、商品名「#80」
カーボンブラック2:N330、旭カーボン株式会社製、商品名「#70」
カーボンブラック3:N326、旭カーボン株式会社製、商品名「#70L」
カーボンブラック4:N234、東海カーボン株式会社製、商品名「シースト7HM」
(2)シリカ
東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積=205m2/g)
【0072】
3.粘着付与剤
アルキルフェノール樹脂:ノボラック型アルキルフェノール樹脂、日立化成工業株式会社製、商品名「ヒタノール1502」
【0073】
4.加硫促進剤
(1)1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)
大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD」
(2)ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)
大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM」(ベンゾチアゾリル基を2つ有するチアゾール系化合物、表1中の「加硫促進剤(b)」)
(3)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)
大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ-G」
(4)式(1)で表される化合物(a)
1,6-ビス(N,N-ジベンジルチアカルバモイルチオ)ヘキサン、LANXESS社製、商品名「VULCUREN KA9188」
表1では、(1)~(3)の加硫促進剤の合計量(表1中「化合物(a)以外の促進剤合計」と表記する)、(1)~(4)の加硫促進剤の合計(表1中「加硫促進剤合計」と表記する)、及び、a/b(加硫促進剤(b)の含有量bに対する式(1)で表される化合物(a)の含有量aの比率)を示した。
【0074】
5.加硫遅延剤
式(2)で表される化合物:N-フェニル-N-(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド、ランクセス社製、商品名「ブルカレントE/C」
【0075】
6.加硫剤
硫黄:不溶性硫黄、フレキシス社製、商品名「クリステックスHS OT-20」
【0076】
〔ゴム組成物の評価〕
調製した実施例及び比較例のゴム組成物の各サンプルについて、以下の評価を行った。
1.耐亀裂性評価
各サンプルのゴム組成物を、145℃で40分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムから、2mm×50mm×6mmのシートを作製し、その中心部に微小な穴を空けて初期亀裂とした。その後、該シートに対して、2.0MPa、周波数は6Hz、雰囲気温度80℃の条件で、長辺方向に繰り返し応力を加えた。そして、サンプルごとに、繰り返し応力を加えてから、試験片が破断するまでの繰り返し回数を測定した後、その繰り返し回数の常用対数を算出した。なお、破断までの測定試験は、サンプルごとに4度実施して常用対数を算出し、それらの平均を平均常用対数とした。
評価については、比較例1の平均常用対数を100とした場合の指数として示した。サンプルの平均常用対数が大きい程、加硫ゴムが耐亀裂進展性に優れることを示す。評価結果を表1に示した。
【0077】
2.粘度評価
各サンプルのゴム組成物の粘度を、JIS K 6300-1:2001(ムーニー粘度)に準拠して行った。比較例1の値を100として指数表示した。指数値が小さいほどゴム組成物の粘度が小さいことを示す。評価結果を表1に示した。
【0078】
【0079】
比較例1~2に示すように、カーボンブラックのみを含有させた場合では、高い耐亀裂性を得ることができなかった。
【0080】
これに対し、実施例のゴム組成物は、シリカを含有し、かつ、加硫促進剤の合計量がゴム成分100質量部に対して1.4質量部を超えて添加されている。表1から明らかなように、実施例1及び実施例2のゴム組成物は、粘度が比較例1に対して若干高くなりながらも十分な加工性を有しつつ、高い耐亀裂性を示した。充填剤合計量、カーボンブラックとシリカの比率、及び、シリカの種類を変えても、同じ傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、加工性を維持しながら、耐亀裂性に優れる加硫ゴム及びタイヤ用ゴム組成物、並びに、タイヤを得ることができる。