(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】皮膚色素疾患用の二次元及び三次元撮像システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240213BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/107 800
A61B5/00 101A
(21)【出願番号】P 2021526574
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2019080330
(87)【国際公開番号】W WO2020099198
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(73)【特許権者】
【識別番号】510255060
【氏名又は名称】シスピア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベレッシェ,イオン
(72)【発明者】
【氏名】ベルギンツ,ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ベレッシェ,ステファン
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516112(JP,A)
【文献】特開2009-022601(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192876(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0213253(US,A1)
【文献】特開2008-173237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚色素疾患(60)用の撮像システムであって、
-
モノスタティック又は略モノスタティック構成で前記色素疾患の二次元画像を取得するデバイス(A)であって、
少なくとも1つの放出器-受信器(3)を備え、前記放出器-受信器(3)が前記疾患を照明するように構成される少なくとも1つの光源(301)と、前記光源の波長に対応する波長の少なくとも1つの受信器(303)とを備える、デバイス(A)と、
- 処理二次元画像(S2)を得るために、前記取得二次元画像(S1)を処理するユニット(B)と、
- 前記処理画像(S2)を視覚化する手段(D1)と
を含み、
- 視角毎に少なくとも1つの画像を得るように少なくとも2つの視角で前記
放出器-受信器
(3)を位置決めする手段であって、球状キャップにわたって分布される手段と、
- 前記色素疾患(60)に前記
放出器-受信器
(3)を向けるように前記
放出器-受信器
(3)を位置決めする窓を含む、前記取得デバイス(A)及びオペレーター(50)を保護する構造体(1)であって、皮膚に位置決めされるように意図されており
、不透明にされる外面を有する構造体(1)と
を更に含み、
- 前記処理ユニット(B)は、前記処理二次元画像(S2)に基づいて再構成される三次元画像(S3)を得るように反射ラドン変換を用いた三次元再構成体用のモジュールを含み、
- 前記視覚化手段は、前記再構成三次元画像(S3)を視覚化する手段(D2)を更に含む
ことを特徴とする、
皮膚色素疾患(60)用の撮像システム。
【請求項2】
前記保護構造体(1)は、携帯取得デバイス(A)に適合する寸法を有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項3】
前記取得デバイス(A)は、マルチセル構造体を含み、各セル(6)は、
放出器-受信器
(3)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項4】
各画像収集に対して、放出角度及び受信角度は、方向付けられており、前記皮膚を含む平面の法線に対して等しいことを特徴とする、請求項
3に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項5】
前記取得デバイスは、可視帯域で放出する光源と、前記受信器を介して同時に前記画像(S1)を取得する手段とを含むことを特徴とする、請求項3又は4に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項6】
前記位置決め手段は、1つ又は複数の
放出器-受信器
(3)が位置決めされるレール(2)と、前記レールを回転させる手段とを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項7】
前記取得デバイスは、前記レール(2)
に単一放出器-受信器(3)を含み、前記レールは、摺動レールであることを特徴とする、請求項
6に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項8】
前記光源は、可視帯域及び近赤外帯域、及び/又は第1の治療窓の帯域及び/又は第2の治療窓の帯域及び/又はSWIR帯域で多波長であり、前記1つ又は複数の受信器は、前記波長に対応し、前記放出器に同期化されており、前記取得デバイスは、波長毎に及び視角毎に少なくとも1つの画像の割合で前記受信器を介して連続的に前記画像(S1)を取得する手段を含むことを特徴とする、請求項1、2、3、4、
6又は
7のいずれか一項に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項9】
前記位置決め窓は、前記保護構造体(1)の頂点に配置されることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項10】
携帯可能であることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【請求項11】
前記取得デバイス(A)は、携帯電話に組み込まれることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の皮膚色素疾患用の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、皮膚の色素疾患の撮像の分野である。
【背景技術】
【0002】
皮膚科学は、皮膚病変の更なる早期治療に対する要求の高まりに直面している。皮膚の色素疾患の問題に対して、世界保健機関(WHO)からの統計資料は、下記を示す。
・2011年に全世界で、2~3百万個の癌、黒色腫の症例が132000人
・1945年以来、10年毎に症例数が2倍
・症例の15%~20%で、黒色腫はほくろから発生している
・発見が遅れた場合、5年生存率が15%
・早期発見の場合、回復率が95%
【0003】
皮膚の色素疾患(ほくろ、良性病変、悪性病変、癌、黒色腫など)を診断するために、皮膚科的技法は、ABCDEと呼ばれる基準に基づいている。従って、色素疾患の癌への進展は、下記を特徴とする。
・黒色腫の非対称性(A)
・不規則境界(B)
・異常色(C)
・変化する直径(D)
・異常進展(E)
【0004】
更に、皮膚科医は、深度における色素疾患進展の信頼できる特徴付けに適していないダーモスコピー又は皮膚鏡検査法などの二次元撮像技法を用いて、色素疾患の厚さの不均一性を評価しようと試みる。場合によっては、診断を確認するために、生体検査及び組織病理検査の高価な診療を行う。
【0005】
皮膚科医の課題は、できるだけ早く疑わしい「ほくろ」を識別し、新しい症候、即ち、観測されるものと病変との間の対応を展開することである。
【0006】
色素疾患の診断の状況で、最も一般的な技法、エピ発光法又は皮膚鏡検査法は、デジタルであることが多いビデオ顕微鏡の使用に基づいており、その結果、周知のABCD基準を用いて、画像を解析することができる。つい最近では、新しい機器、例えば、Astron ClinicaからのSiascope、及びElectro-Optical SystemsからのMelaFindが、発売されている。これらの両方の機器は、可視及び近赤外におけるマルチスペクトル情報に基づいており、関連情報処理ツールの点で異なる。
【0007】
Siascopeは、単純な物理モデルに関連しており、メラニン及びヘモグロビンの計算画像をユーザに与える。より上級版において、専門家は、特定の色素性病変の診断のために非常に重要な情報である、深度におけるメラニンの位置特定に関する情報を有する。しかし、深度における位置特定は、使用される数学モデルの精度に関連がある。皮膚及び皮膚の内部構造体からの光の後方散乱の完全なモデルを得るのは、非常に難しいままであり、この手法を立証するために文献で利用できるデータはほとんどない。
【0008】
名前が示唆するように、MelaFindは、黒色腫の発見を唯一の目的として色素点の画像を解析する。これらの色素点の画像は、オルソ画像である。関連デジタルツールは、物理モデルに基づいておらず、新しい点を既存のデータベースと比較し、肯定/否定タイプの応答をオペレーターに返す分類アルゴリズムから基本的に構成されている。このタイプのデバイスは、診断、又はスクリーニング又は予防のタスクに合致してもよく、治療行為及び追跡治療のタスクに合致しなくてもよい。
【0009】
実際には、組織学を用いた皮膚生体検査を更に使用する。しかし、この手法は、被験者の生化学的パラメータを考慮するのに適していない。この手法は、組織切片上の腫瘍の最大厚さを測定するブレスロー指数によって支配されたままであり、従って、切片の数及び質によって制限され、ブレスローによって評価されるように腫瘍の厚さに依存する、標準化され合意に基づいてはいるが経験的な余地を有する退行性面によって、人為的に減少される。縁は、腫瘍(面)の局所解剖学に必ずしも適合するとは限らない。縁は、標準化され、腫瘍の臨床的な可視サイズ(1cmまで)に依存し、特定の臨床形態(限局性強皮症形態及び小結節性基底細胞癌)で指定するのが難しい。
【0010】
様々な起源の他の皮膚病変が多数あるが、単一病変専用のデバイス(上述のようなMelaFindの場合)を用いることにより、これらの皮膚病変は、皮膚の主な発色団に関連があることが多い。
【0011】
本発明の目的は、これらの欠点を軽減することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
より詳細には、本発明の主題は、皮膚色素疾患用の撮像システムであって、
- 色素疾患の二次元画像を取得するデバイスであって、
■ 少なくとも1つの放出器を含む、前記疾患を照明するように構成される光源と、
■ 受信器と
を含むデバイスと、
- 取得画像を処理するユニットと、
- 処理画像を視覚化する手段と
を含む、撮像システムである。
【0013】
撮像システムは、
- 視角毎に少なくとも1つの画像を得るように少なくとも2つの視角で受信器を位置決めする手段であって、球状キャップにわたって分布される手段と、
- 色素疾患に受信器を向けるように受信器を位置決めする窓を含む、取得デバイス及びオペレーターを保護する構造体であって、皮膚に位置決めされるように意図されており、位置決め窓の上を除いて不透明にされる外面を有する構造体と
を更に含み、
- 処理ユニットは、処理二次元画像に基づいて再構成される三次元画像を得るように反射ラドン変換を用いた三次元再構成体用のモジュールを含み、
- 視覚化手段は、再構成三次元画像を視覚化する手段を更に含む
ことを主に特徴とする。
【0014】
有利なことに、保護構造体の寸法は、携帯取得デバイスに適合する。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、取得デバイスは、セル毎に1つの受信器を有するマルチセル構造体を含む。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、取得デバイスは、可視帯域で放出する光源と、受信器を介して同時に画像を取得する手段とを含む。
【0017】
位置決め手段は、例えば、1つ又は複数の受信器が位置決めされるレールと、レールを回転させる手段とを含む。レールは、単一受信器又は単一放出器-受信器を有する摺動レールであってもよい。
【0018】
光源は、可視帯域及び近赤外帯域、及び/又は第1の治療窓の帯域及び/又は第2の治療窓の帯域及び/又はSWIR帯域で多波長であってもよく、1つ又は複数の受信器は、前記波長に対応し、放出器に同期化されており、取得デバイスは、波長毎に及び視角毎に少なくとも1つの画像の割合で受信器を介して連続的に画像を取得する手段を含む。
【0019】
特に、可視帯域及び近赤外帯域(0.4μm~1.1μm)及び/又はSWIR(短波赤外、1.1μm~2.2μm)、及び/又は第1又は第2の治療窓の帯域での皮膚の照明によって、この新規な撮像システムは、非侵入光学デバイス及び関連二次元及び三次元視覚化及び処理モジュールを用いて、様々な視角における二次元視覚化、色素疾患及び色素疾患の皮膚原因の三次元体積視覚化を可能にする。
【0020】
体積照明に基づくシステムは、色素疾患の奥を通った色素疾患の三次元再構成の後、直接観測を可能にする。
【0021】
本発明によるシステムは、全部ではないが、少なくとも多くの皮膚病変に適応するように十分一般的である。色素疾患の内部及び外部観察を可能にする三次元体積視覚化によって、肉眼では見えない(内部)構造及び兆候を明らかにして、色素性病変の臨床診断の性能を向上させ、精緻化されるべき黒色腫と母斑との間の鑑別診断(位置特定、メラニンの量又は質、黒色腫の周りの新血管形成の強調表示、黒色腫構造体の深度など)を可能にするパラメータを検出することができる。
【0022】
様々な視角における二次元撮像と組み合わせた三次元体積撮像によって、色素疾患及び潜在的腫瘍の三次元限界をより良く観察し、治癒の条件である悪性皮膚腫瘍の完全な切除を確信して機能予後を向上させることができる。
【0023】
添付図面を参照して、限定されない例として与えられる下記の詳細な説明を読めば、本発明の他の特徴及び利点は、明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】本発明による例示的な撮像システムを概略的に示す。
【
図3a】ドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの垂直断面図を示す。
【
図3b】ドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの斜視図を示す。
【
図3c】ドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの水平断面図を示す。
【
図4】二次元画像を取得するデバイスの機能要素を概略的に示す。
【
図5a】スカートを有するドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの垂直断面図を示す。
【
図5b】スカートを有するドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの斜視図を示す。
【
図6a】スカートを有するマルチセルドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの垂直断面図を示す。
【
図6b】スカートを有するマルチセルドーム型において様々な角度で二次元画像を取得するデバイスの斜視図を示す。
【
図7】様々な角度で取得され後処理された母斑の二次元画像の例示である。
【
図8a】母斑の完全な三次元体積の三次元再構成体、及び当該母斑の三次元構造体の拡大の例示のセットをボクセルのレンダリングによって形成し、
図8aの場合、1つの視野における母斑の表面の画像であり、
図8bの場合、別の視野からの母斑の表面の画像であり、
図8cの場合、1つの視野からの母斑の深度画像であり、
図8dの場合、別の視野からの母斑の深度画像である。
【
図8b】母斑の完全な三次元体積の三次元再構成体、及び当該母斑の三次元構造体の拡大の例示のセットをボクセルのレンダリングによって形成し、
図8aの場合、1つの視野における母斑の表面の画像であり、
図8bの場合、別の視野からの母斑の表面の画像であり、
図8cの場合、1つの視野からの母斑の深度画像であり、
図8dの場合、別の視野からの母斑の深度画像である。
【
図8c】母斑の完全な三次元体積の三次元再構成体、及び当該母斑の三次元構造体の拡大の例示のセットをボクセルのレンダリングによって形成し、
図8aの場合、1つの視野における母斑の表面の画像であり、
図8bの場合、別の視野からの母斑の表面の画像であり、
図8cの場合、1つの視野からの母斑の深度画像であり、
図8dの場合、別の視野からの母斑の深度画像である。
【
図8d】母斑の完全な三次元体積の三次元再構成体、及び当該母斑の三次元構造体の拡大の例示のセットをボクセルのレンダリングによって形成し、
図8aの場合、1つの視野における母斑の表面の画像であり、
図8bの場合、別の視野からの母斑の表面の画像であり、
図8cの場合、1つの視野からの母斑の深度画像であり、
図8dの場合、別の視野からの母斑の深度画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面毎に、同じ要素は、同じ参照符号を有する。
【0026】
本発明によれば、
図2を参照して説明される色素疾患用の撮像システムは、医療専門家(但し、必ずしも医療専門家ではない)であることがあるオペレーターによって使用されるように意図される。撮像システムは、下記の要素を含む。
・生二次元画像S1及び関連データ(視角及び波長)を生成する、様々な視角で、及び潜在的に各視角に対する様々な波長で、二次元画像を取得するデバイスA
・生画像S1及び関連データから処理二次元画像S2を生成し、好ましくは、処理画像S2に基づいて色素疾患及び色素疾患の原因の三次元再構成体S3を更に生成する画像処理ユニットB
・処理二次元画像S2に基づいて様々な視角で色素疾患を二次元視覚化する手段D1
・色素疾患及び色素疾患の再構成原因S3を三次元視覚化する手段D2
【0027】
画像処理ユニットB及び/又は視覚化手段D1及びD2は、取得デバイスAから離れていてもよい。
【0028】
画像処理ユニットBは、使用可能な画像形式(JPEG、PNG、TIFFなど)へのRAW変換、光学収差、フレーミング、センタリング、位置合わせ、較正、スケーリング、閾値化、及び生画像S1の角度割り出しに対する補正を実行する。処理画像S2を得る。
図7は、様々な視角(20°、30°、…、160°、170°)における母斑の処理二次元画像S2の例を挙げる。
【0029】
好ましくは、
図2に示すように、処理画像S2(物体の表面によって反射又は放出される電磁放射の強度レベルを表す画像S1に起因する画像自体)に基づいて、ユニットBは、逆ラドン変換に基づく反射断層撮影タイプのアルゴリズム的処理を介して色素疾患の三次元再構成体を更に与える。処理画像S3を得る。この三次元再構成体に関して、例えば、米国特許第8,836,762号明細書、「Optronic system and method dedicated to identification for formulating three-dimensional Images」を参照してもよい。このタイプの再構成体は、色素疾患の奥を通って色素疾患(母斑、癌、黒色腫など)の構造体に入射する光波の電磁放出、反射又は散乱に連結されたデータを使用し、組織吸収パラメータを導入することなく、
図8に例示のような色素疾患の(断層撮影タイプの)完全な三次元再構成体を可能にする。
【0030】
これらの画像S3のタイプは、欧州特許第3 234 914B1号明細書、「Method for discrimination and identification of objects of a scene by 3D imaging」に記載のように、点群等濃度ボクセルレンダリングタイプ(例えば、最大強度投影(MIP))である。MIP技法により、二次元面で三次元データを視覚化することができる。ボクセル(ボリュームピクセル)を、二次元面に投影する。観測点で投影面と接触し、負担強度閾値をボクセルに適用する光線によって、ボクセルを判定する。奥行き感を得る、従って三次元レンダリングを向上させるために、複数の投影面を、連続観測角で生成する。母斑の再構成三次元体積(S3)のボクセルのレンダリングを、
図8に例示する。
図8a及び
図8bは、2つの視角でとられた母斑の表面の画像を示し、
図8c及び
図8dは、2つの視角でとられた母斑の深度画像を示す。
【0031】
二次元(画像S2)及び三次元(画像S3)視覚化手段D1及びD2は典型的に、パソコン、タブレット、携帯電話(「スマートフォン」)又は任意の他の視覚化手段である。
【0032】
ここで、
図3a、
図3b及び
図3cに示す、様々な視角で色素疾患の二次元画像を取得するデバイスAについて、より詳細に説明する。デバイスAは、以下を含む:
- 色素疾患を照明するように構成される光源。光源は、色素疾患60(
図1に示す例)に向けられる1つ又は複数の放出器を含む。光源は、0.6μm~0.8μmの帯域で放出する可視源であってもよい。好ましくは、光源は、単一波長及び波長制御可能源であり、光源は、帯域毎に1つの波長を用いて、可視帯域及び近赤外帯域(0.4μm~1.1μm)、第1の治療窓の帯域(0.65μm~0.95μm)及び/又は第2の治療窓の帯域(1μm~1.35μm)及び/又はSWIR帯域(1.1μm~2.2μm)で、連続的に放出する。
- 1つ又は複数の放出器の波長と一致する1つ又は複数の受信器303(
図4に示す)。画像S1は、受信器の出力で得られる。
【0033】
図3a、
図3b、
図3c、
図5a、
図5b、
図6aに示すような同じデバイスに放出機能及び受信機能を組み込んだ放出器-受信器3と呼ばれるデバイスを有することができる。例示的な放出器-受信器3を、
図4に詳述する。放出器-受信器3は、可視帯域における光源301、及び更に好ましくは、タイムスタンピングユニット32にそれ自体が接続された波長制御器33に接続された、可視帯域及び赤外帯域における制御可能な光源302を含む。波長制御器33及びタイムスタンピングユニット32は、処理ユニットBによってホストとして処理されてもよい。デバイス3は、光源(可視及び赤外)の帯域に対応する帯域で受信器を更に含む。
【0034】
- 視角θn(N≦Mで、nは、1からNまで変化する)毎に少なくとも1つの画像を得るように、
図3a、
図3b、
図5a及び
図5bで分かるように球状キャップにわたって分布される、色素疾患に対してM個(M≧2)の視角で1つ又は複数の受信器(又は更に1つ又は複数の放出器)を位置決めする手段。画像を、色素疾患から同じ距離で取得する。θN-θ1が大きければ大きいほど、二次元及び/又は三次元視覚化画像は、より正確である。典型的に、120°≦θN-θ1≦180°であり、θ1=20°、θN=170°及びθN-θ1=150°で、
図7において16個の視角がある。位置決め手段は、例えば、視角θnを保証する位置Pnに受信器(又は更に放出器-受信器3)が摺動することができる、球状キャップに沿って湾曲されたレール2を含む。受信器を摺動させる必要なしに、事前に判定された位置Pnに受信器が装着された(従って、N個の受信器がある)レール2を使用することもできる。更に、位置決め手段は、
図3b及び
図3cに示すように1つ又は複数の受信器(又は放出器-受信器3)の位置Pnkを保証する角度φk(kは、1からKまで変化する、K≦M及びN.K=M)で垂直軸Oz(レール2の2つの位置が見える
図3cに示す)の周りに、又はレールの端部を含む平面に位置する水平軸Oxの周りに、レール2を回転させる手段を含む。φK-φ1が大きければ大きいほど、二次元及び/又は三次元視覚化画像は、より正確である。典型的に、120°≦φK-φ1≦180°である。1つの代替案によれば、位置決め手段は、より詳細に後述される保護構造体1と一体であり、構造体1は、手動で又は自動的に回転する。θN-θ1=φK-φ1=180°は、
図3a及び
図3bに示すようなドーム形構造体に対応することに留意されたい。
【0035】
一実施形態によれば、取得デバイスは、マルチセル構造体を含み、各セル6は、受信器又は放出器-受信器3を含む。この構造体は、
図6a及び
図6bに示すような球状キャップの形をとり、球状キャップの限定領域又は球状キャップの内面全体にわたって分布されてもよい。
【0036】
取得デバイスを、携帯電話(スマートフォン)から改造してもよく、又は携帯電話(スマートフォン)に組み込んでもよい。
- 更に、取得デバイスは、図面に示すような位置決め手段の形状(但し、他の形状(立方体、又は複合体又はその他)も想定される)に一般的に従う、オペレーター50及び放出器及び受信器を保護する構造体1を含む。この構造体1は、疾患60に取得デバイスを向けるように取得デバイスを位置決めする窓を含む。位置決め窓は、軸z(皮膚は平面xy上にある)に沿った疾患60の法線上で、保護構造体1の頂点に配置される。従って、オペレーターは、保護構造体1を皮膚に維持しながら、
図3a及び
図3bに例示のように窓が疾患60に面するように、取得デバイスを直接目視によって位置決めしてもよい。この窓は、オペレーター50による色素疾患60への視覚中心合わせを容易にする拡大鏡4を含んでもよい。構造体1は、オペレーターによって皮膚に位置決めされるように意図されており、オペレーターを光放出から保護し、更に受信器を迷走放出から保護するように、位置決め窓の上を除いて不透明にされる外面を有する。眼の安全のために、有利なことに、拡大鏡4は、放出-受信中に、自動シャッターを含む。
【0037】
図3a及び
図3bは、ドームの形をした構造体1を示す。
図5a及び
図5bに示す1つの変型例によれば、皮膚に当たる保護構造体1、及び色素疾患60の寸法及び/又は身体(例えば、顔)のこの又はその部分上の位置に応じて調整可能な開口部Ψに、スカート5を関連付ける。
【0038】
好ましくは、構造体1の寸法は、身体の様々な部分に置きやすい携帯取得デバイスAに適合する。構造体1が、例えば、図面に示すようなドームを形成する場合、構造体1は典型的に、15cm未満の半径を有する。構造体を固定してもよく、構造体の寸法は、更に大きくてもよい。
【0039】
限定されない例として、インターフェース接続(35)のタイプは、メモリカードスロット、USB、Wi-Fi、Bluetoothなどのタイプである。
【0040】
下記のような2つの画像取得技法を使用してもよい。
- 「受動」撮像技法。受動撮像技法は、可視帯域及び近赤外帯域に関する。周辺光には透明のままである拡大鏡4が装備される可能性がある位置決め窓を通過するデバイスの外部からの周辺光によって、色素疾患を照明する。当該放出器は、周辺光である。
図5a及び
図5bを参照して記載されるデバイスの場合、二次元画像を連続的に取得する。
図6a及び
図6bを参照して記載される取得デバイスの場合、画像を、マルチセル受信器構造体全体によって同時に取得してもよい。次に、取得デバイスは、同時取得用の手段(例えば、受信器を同期化する手段)を含む。周囲照明により、疾患の表面体積の三次元画像を得ることができる。しかし、再構成三次元画像に対して有効な深度を必ずしも得ることができるとは限らない。
- 「能動」撮像技法。能動撮像技法は、可視帯域及び赤外帯域に関する。放出器-受信器3の放出源301、302によって、色素疾患を照明し、位置決め窓は、デバイスの外部からの周辺光にはもはや透明でない。この窓を、例えば、オペレーターによってマスキングし、又は、位置決め窓に、上述のようなシャッターを装備してもよい。各視角に対して複数の波長で、照明を連続的に実行してもよい。次に、各波長及び各視角に対して、色素疾患を連続的に撮像する。次に、取得デバイスは、照明に同期化される連続取得用の手段(例えば、受信器を放出器に同期化する手段)を含む。この技法により、疾患の表面体積の三次元画像、及び色素疾患の奥行きがある三次元撮像を得ることができる。有利なことに、各画像収集に対して、放出角度及び受信角度は、方向付けられており、皮膚を含む平面の法線に対して等しい又は略等しい。これらの角度(θ、φ)を、座標系(x、y、z)で
図3a、
図3b及び
図3cに例示する。従って、角座標系を、法線に対して定義し、法線の両側の2つの角度は、同じ絶対値を有してもよく、反対の符号でもよい。従って、二次元画像を、モノスタティック又は略モノスタティック構成で収集する。従って、デバイスは、異なる角度でとられた二次元画像の全てに基づいて三次元画像を得るために、再帰反射又はモノスタティック又は略モノスタティック反射で二次元画像を使用するように設計される。更に、収集された及び正確に参照された二次元画像の数が増加するにつれて、三次元撮像の精度は増加する。
【0041】
本発明は、「第1の治療窓」(650nm~950nm)における照明を介して三次元体積画像を得ることができる。この手法の結果、空間分解能が増加し、背景雑音が最小になる。分光学的特性(光子吸収及び放出)が第1の治療窓の範囲内にある三次元撮像の使用により、「厚い」組織の撮像にアクセスすることができる。
【0042】
「第2の治療窓」(1000nm~1350nm)は、光子散乱の最小化のために波の侵入の深度を増加することができ、従って、深度が数ミリメートルを超える光透過率を得ることができる。この放出窓は、母斑及び微小脈管化の原因の進展に関する追加情報を与える。
【0043】
使用される様々な波長からの光波の散乱は、色素疾患からの光波の散乱の影響が、使用される照明波長に応じて相補的(散乱の深度、散乱断面、散乱構造の粗さの判定)であることを考えると、色素疾患の様々な三次元再構成体、従って、色素疾患に関する完全な比較情報を可能にする。
【0044】
従って、得られた二次元画像を使用して、特に、皮膚の組織に対して高い貫通力を有する照明波長に対して、ある深さで皮膚の三次元再構成体を得る。
【0045】
この二次元及び三次元撮像システムは、生物医学分野、皮膚又は皮下疾患に主に適用される。非黒色腫皮膚癌(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌)の状況で、本発明によるシステムは、腫瘍の三次元限界の正確な視覚化を可能にし、治癒の条件である悪性皮膚腫瘍の完全な切除を確信することができる。
【0046】
従って、最も頻度の高い単純結節性形態(患者の45%~60%)は、これらの単純結節性形態の範囲内に小結節性形態があることがあるが、周辺限界設定なしで、及び切除のより大きい縁を必要とすることなく、非常に明確に限界設定され、三次元画像は、これらの複雑な形状の正確な表現を可能にする。
【0047】
従って、三次元撮像は、肉眼では見えない構造及び兆候を明らかにして、色素性病変の臨床診断の性能を向上させることができ、精緻化されるべき黒色腫、癌及び母斑の間の鑑別診断(位置特定、形状、深度、黒色腫/癌の周りの脈管化の強調表示、マイクロレリーフへの変化、真皮境界への変化、血管変化、皮膚腫瘍の完全な切除を確信することができる腫瘍の限界の視覚化)を可能にする三次元パラメータを検出することができる。