(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】脂肪組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240213BHJP
A23G 1/36 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/36
(21)【出願番号】P 2021529518
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2019070389
(87)【国際公開番号】W WO2020025555
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-29
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521044534
【氏名又は名称】ブンヘ ロデルス クロクラーン べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナダト バッガン
(72)【発明者】
【氏名】イェアニーネ ウェルレマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィレム デッケル
(72)【発明者】
【氏名】アンティナ フレデリネ フレリックス
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141904(WO,A1)
【文献】特開2011-004604(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073899(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/035968(WO,A2)
【文献】特表2001-527128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組成物であって、
パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水素化ラウリン油と、
パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエステル交換された水素化ラウリン油と、
ヨウ素価が15未満の少なくとも1つの非ラウリン油と、
を含み、
前記脂肪組成物は、
48重量%~58重量%のラウリル酸(C12:0)と、
5重量%~15重量%のパルミチン酸(C16:0)と、
5重量%~20重量%のステアリン酸(C18:0)と、
を含み、
0.6:1~2.5:1のステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比を有し、
前記酸の割合が、前記脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づき、
前記脂肪組成物が、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定された、
30℃で少なくとも40の固形脂肪含有量と、
40℃で最大5の固形脂肪含有量と、
を有する、脂肪組成物。
【請求項2】
前記組成物が、0.7:1~2:1のステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、0.92:1~1.5:1のステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、
50重量%~56重量
%のラウリン酸(C12:0)、および/または
8重量%~13重量
%のパルミチン酸(C16:0)、および/または
8重量%~13重量
%のステアリン酸(C18:0)、を有し、
前記酸の割合が、前記脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく、請求項1
~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、
52重量%~55重量%のラウリン酸(C12:0)、および/または
9重量%~12重量%のパルミチン酸(C16:0)、および/または
9重量%~12重量%のステアリン酸(C18:0)、を有し、
前記酸の割合が、前記脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づく、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定された、
20℃で少なくとも90
の固形脂肪含有量、および/または
30℃で40~55
の固形脂肪含有量、および/または
35℃で5~12
の固形脂肪含有量、および/または
40℃で最大4
の固形脂肪含有量、
を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定された、
20℃で少なくとも92の固形脂肪含有量、および/または
30℃で43~53の固形脂肪含有量、および/または
35℃で5~10の固形脂肪含有量、および/または
40℃で最大3の固形脂肪含有量、
を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1つ以上の乳化剤を
さらに含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
水素化パーム核ステアリン、エステル交換された水素化パーム核油ステアリン、
および水素化パーム油
を含む、請求項
1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
トリステアリン酸ソルビタンをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
70重量%~95重量
%の水素化パーム核油ステアリンと、
5重量%~25重量
%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、
1重量%~4重量
%の水素化パーム油と
、
を含む、請求項
9または10に記載の組成物。
【請求項12】
75重量%~90重量%の水素化パーム核油ステアリンと、
8重量%~18重量%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、
2重量%~3重量%の水素化パーム油と、
を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1重量%~3重量%のトリステアリン酸ソルビタンをさらに含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
菓子用途のための請求項1~
13のいずれか一項に記載の脂肪組成物の使用
。
【請求項15】
前記菓子用途が、コンパウンドチョコレートでの使用である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記脂肪組成物が、
-粉乳、乳脂肪、ココアパウダー、カカオマス、バニラ、およびレシチンから選択される1つ以上の原料と、
-砂糖または他の甘味料と
、混合される、請求項
14または15に記載の脂肪組成物の使用。
【請求項17】
前記脂肪組成物が、他の原料とさらに混合される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の脂肪組成物を作製するための工程であって、
パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水素化ラウリン油と、
パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエステル交換された水素化ラウリン油と、
ヨウ素価が15未満の少なくとも1つの非ラウリン油と
、をブレンドすることを含む、工程。
【請求項19】
1つ以上の乳化剤をブレンドすることをさらに含む、請求項18に記載の工程。
【請求項20】
水素化パーム核ステアリン、エステル交換された水素化パーム核油ステアリン、
および水素化パーム油
をブレンドすることを含む、請求項
18または19に記載の脂肪組成物を作製するための工程。
【請求項21】
トリステアリン酸ソルビタンをブレンドすることをさらに含む、請求項20に記載の工程。
【請求項22】
請求項
20または21に記載の脂肪組成物を作製するための工程であって、
70%~95
%の水素化パーム核油ステアリンと、
5%~25
%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、
1%~4
%の水素化パーム油と
、
をブレンドすることを含む、工程。
【請求項23】
75%~90%の水素化パーム核油ステアリンと、
8%~18%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、
2%~3%の水素化パーム油と、
をブレンドすることを含む、請求項22に記載の工程。
【請求項24】
1%~3%のトリステアリン酸ソルビタンをブレンドすることをさらに含む、請求項22または23に記載の工程。
【請求項25】
菓子製品であって、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の少なくとも20重量%の脂肪組成物と、
少なくとも30重量%の砂糖または他の甘味料と、を含む、菓子製品。
【請求項26】
少なくとも5重量%の、粉乳、植物性粉乳、乳製品パウダー、またはそれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項
25に記載の菓子製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪組成物、その使用、脂肪組成物を生産する工程、および脂肪組成物を含む菓子製品に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパウンドチョコレートは、ココアパウダー、植物性脂肪、甘味料、および場合によっては他の添加物を組み合わせて作製された菓子製品である。ココアバターの代わりによく使用される植物性脂肪は、ココナッツ油またはパーム核油である。コンパウンドチョコレートの生産に焼き戻しが不要であるため、あらゆる種類の用途に簡単に適用することができる。
【0003】
パーム核油は、アブラヤシの穀粒から生産される重要なラウリン油である。パーム核油を分別して、はるかに優れた溶融特性を備えたステアリンを提供することができ、これは、ココアバターの代替品として使用することができる。ステアリンは、通常、溶融プロファイルをさらに改善するために水素化される。
【0004】
熱帯気候の場合、比較的高温(例えば、30℃~40℃)での脂肪相の固形物の量を増加させることによって、コンパウンドチョコレートの耐熱性を改善することができる。しかしながら、そのような脂肪修飾は、しばしば、顕著なワックス状の口当たりなど、菓子製品の満足できない官能特性を有する製品をもたらす。
【0005】
US2015/164102は、ココアバター、一般的なココアバター代替品、およびラウリン脂肪よりも飽和脂肪酸の量が少ない、適切なテクスチャ、光沢、および溶融プロファイルの特徴、ならびに焼き戻しを含まない冷却工程中の良好な結晶化速度を有する、チョコレート製品におけるコーティング及び成形用途のための、トランス脂肪を含まないココアバター代替品と、その製造工程とに関するものである。
【0006】
US5,439,700は、ラウリン脂肪のブレンドに関するものであり、N30、オレイン酸含有量、ラウリン酸含有量、およびエライジン含有量、ならびに少なくとも50重量パーセントのS3含有量を有する天然脂肪の画分の特定の仕様を伴う。これらのブレンドは、菓子製品の脂肪のコーティングの調製に有用な脂肪であると説明されている。
【0007】
US5,932,275は、ココアバター代替品としての使用に適切なオイルブレンドについて説明している。これらのオイルブレンドは、パーム核油およびその誘導体に基づき、パーム核油、水素化パーム核油、パーム核ステアリン、および水素化パーム核ステアリンを含む。これらのパーム核油ブレンドから作製された菓子製品およびチョコレート代替組成物などの食用食品も開示されている。
【0008】
US6,210,739は、パーム核油、水素化パーム核油、パーム核ステアリン、および水素化パーム核ステアリン、ならびに任意選択で水素化パーム核油、水素化ココナッツ油、ココナッツ油、パーム核油、または菓子製品およびチョコレート代替組成物などの食用製品での使用に適切なそれらの混合物を含む少なくとも1つのシーディング剤を含む、新規オイルブレンドに関するものである。
【0009】
IN00602MU2014は、水素化ステアリンおよび水素化オレインを含む脂肪組成物に関するものであり、水素化ステアリンまたは水素化オレインのうちの少なくとも1つは、エステル交換されている。
【0010】
US2017/119008は、トランスを含まない低飽和脂肪のココアバターの代替およびその作製方法を説明している。
【0011】
改善された耐熱性および望ましい官能特性、特に速溶融性であり、かつ非ワックス状の口当たり特徴を有するコンパウンドチョコレートなどの菓子製品を作製するために使用することができる脂肪組成物が、依然として必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明によると、48重量%~58重量%のラウリン酸(C12:0)、5重量%~15重量%のパルミチン酸(C16:0)、および5重量%~20重量%のステアリン酸(C18:0)、を含み、ステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比が、0.6:1~2.5:1のであり、酸の割合および比率が、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、かつC8~C24脂肪酸の総重量に基づき、30℃で少なくとも40の固形脂肪含有量、40℃で最大5の固形脂肪含有量であり、固形脂肪含有量が、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定される、脂肪組成物が提供される。
【0013】
本発明の脂肪組成物は、熱帯気候における菓子用途のための原料として特に有用であることが見出された。本発明による脂肪組成物は、特に良好な耐熱性だけでなく、非常に好ましい官能特性も提供する。具体的には、本発明による脂肪組成物は、コンパウンドチョコレートにおいて良好かつ安定した物理的特性を提供する。
【0014】
本発明の脂肪組成物は、本明細書で定義される脂肪酸および固形脂肪含有量の要件を満たす、天然もしくは合成の脂肪、天然もしくは合成の脂肪の画分、またはそれらの混合物から作製され得る。好ましくは、脂肪組成物は、天然脂肪のブレンドに由来する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、12週間の保管後の感覚評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「脂肪」という用語は、脂肪酸アシル基を含有するグリセリド油脂を指し、いずれの特定の融点も意味しない。「油」という用語は、「脂肪」と同義語として使用される。
【0017】
本明細書で使用される、「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和(モノ-不飽和およびポリ-不飽和を含む)カルボン酸を指す。X個の炭素原子およびY個の二重結合を有する脂肪酸は、CX:Yと表されてもよい。例えば、パルミチン酸はC16:0と表されてもよく、オレイン酸はC18:1と表されてもよい。本明細書で言及される組成物中の脂肪酸の割合は、グリセリド中に存在するトリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドのアシル基を含み、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。脂肪酸プロファイル(すなわち、組成)は、例えば、ISO 12966-2およびISO 12966-4に従ってガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。
【0018】
本発明の脂肪組成物は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、48%~58重量%のラウリン酸(C12:0)を含有する。脂肪組成物は、好ましくは、50重量%~56重量%の総ラウリン酸(C12:0)、より好ましくは、51重量%~55重量%、例えば52重量%~55重量%の総ラウリン酸(C12:0)を含有する。
【0019】
本発明の脂肪組成物のパルミチン酸(C16:0)含有量は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、5重量%~15重量%、好ましくは8重量%~13重量%、より好ましくは9重量%~12重量%である。
【0020】
本発明の脂肪組成物のステアリン酸(C18:0)含有量は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、5重量%~20重量%、好ましくは8重量%~13重量%、より好ましくは9重量%~12重量%である。
【0021】
脂肪組成物中のステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比は、0.6:1~2.5:1、好ましくは0.7:1~2:1、より好ましくは0.92:1~1.5:1の範囲である。
【0022】
ゆえに、本発明の好ましい脂肪組成物は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づいて、50重量%~56重量%のラウリン酸(C12:0)、8重量%~13重量%のパルミチン酸(C16:0)、および8重量%~13重量%のステアリン酸(C18:0)を含み、ステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比は、0.7:1~2:1であり、上記酸の割合および比率は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、上記割合は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づく。
【0023】
本発明の脂肪組成物は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定して、30℃で少なくとも40の固形脂肪含有量および40℃で最大5の固形脂肪含有量を有する。固形脂肪含有量は、割合であるため、Y℃での固形脂肪含有量Xは、ISO8292-1に従って、脂肪のX%がY℃で固形であることを意味する。
【0024】
好ましくは、脂肪組成物は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定して、30℃で40~55の固形脂肪含有量、より好ましくは30℃で43~53の固形脂肪含有量を有する。
【0025】
好ましくは、脂肪組成物は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定して、40℃で最大4の固形脂肪含有量、より好ましくは40℃で最大3の固形脂肪含有量を有する。
好ましくは、脂肪組成物は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定して、20℃で少なくとも90の固形脂肪含有量、より好ましくは20℃で少なくとも92の固形脂肪含有量を有する。
【0026】
好ましくは、脂肪組成物は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定して、35℃で5~12の固形脂肪含有量、より好ましくは35℃で5~10の固形脂肪含有量を有する。
【0027】
したがって、本発明の好ましい脂肪組成物は、30℃で40~55の固形脂肪含有量、40℃で最大4の固形脂肪含有量、20℃で少なくとも90の固形脂肪含有量、および35℃で5~12の固形脂肪含有量を有し、固形脂肪含有量は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定される。
【0028】
本発明の最も好ましい実施形態は、52重量%~55重量%の総ラウリン酸(C12:0)、9%~12重量%のパルミチン酸、および9%~12重量%のステアリン酸を含み、ステアリン酸(C18:0)対パルミチン酸(C16:0)の重量比は、0.92:1~1.5:1であり、上記酸の割合および比率は、脂肪組成物中のグリセリドのアシル基として結合した酸を指し、上記割合は、C8~C24脂肪酸の総重量に基づき、脂肪組成物は、30℃で43~53の固形脂肪含有量、40℃で最大3の固形脂肪含有量、20℃で少なくとも92の固形脂肪含有量、および35℃で5~10の固形脂肪含有量を有し、固形脂肪含有量は、ISO8292-1に従って非安定化脂肪について測定される。
【0029】
コンパウンドチョコレートなどの菓子製品が、熱帯気候での安定した構造だけでなく、好ましい範囲内のN30および/またはN40で脂肪組成物を含むときに、望ましい溶融挙動も有することが考えられる。
【0030】
「ラウリン油」という用語は、主に短鎖および中鎖脂肪酸(カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、およびミリスチン酸(C14:0))、例えば、ココナッツ油、パーム核油、ババス油、コフネヤシ油、クフェア油を含むグリセリド油脂を指す。
【0031】
「ヨウ素価」という用語は、100Gの油に添加され得るヨウ素のグラム数を指し、AOCS法CD1-25で測定される。
【0032】
「乳化剤」という用語は、乳濁液の安定性を動力学的に増加させる物質、例えば、レシチン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリン(PGPR)、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノグリセリドおよびジグリセリド、蒸留モノグリセリド、ならびに脂肪酸のプロピレングリコールエステルを指す。
【0033】
好ましい実施形態では、脂肪組成物は、パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水素化ラウリン油と、パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエステル交換された水素化ラウリン油と、ヨウ素価が15未満の少なくとも1つの非ラウリン油と、任意選択で1つ以上の乳化剤とを含む。
【0034】
より好ましい実施形態では、脂肪組成物は、水素化パーム核油ステアリン、エステル交換された水素化パーム核油ステアリン、水素化パーム油、および任意選択でトリステアリン酸ソルビタンを含む。
【0035】
好ましくは、脂肪組成物は、70重量%~95重量%の水素化パーム核油ステアリンと、5重量%~25重量%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、1重量%~4重量%の水素化パーム油と、任意選択で1重量%~3重量%のトリステアリン酸ソルビタンとを含む。
【0036】
より好ましくは、脂肪組成物は、75重量%~90重量%の水素化パーム核油ステアリンと、8重量%~18重量%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、2重量%~3重量%の水素化パーム油と、任意選択で1重量%~3重量%のトリステアリン酸ソルビタンとを含む。
【0037】
本発明は、コンパウンドチョコレートなどの菓子用途のための本発明による脂肪組成物の使用にも関する。
【0038】
菓子製品は、好ましくは、本発明の脂肪組成物、砂糖または他の甘味料、粉乳、乳脂肪、ココアパウダー、カカオマス、バニラ、およびレシチンから選択される1つ以上の原料、ならびに任意選択で他の原料を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の脂肪組成物は、コンパウンドチョコレートのために使用される(またはコンパウンドチョコレートにおける使用に適切であり得る)。本発明の脂肪組成物を使用して生産されたコンパウンドチョコレートは、熱安定性だけでなく、好ましい官能特性も有することが見出された。コンパウンドチョコレートは、本発明の脂肪組成物、砂糖、ココアパウダー、脱脂粉乳、バニラ、およびトリステアリン酸ソルビタン、レシチン、またはポリリシノレイン酸ポリグリセリン(PGPR)などの乳化剤のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、コンパウンドチョコレートは、30重量%~60重量%の砂糖、20重量%~50重量%の脂肪、5重量%~20重量%の脱脂粉乳、5重量%~20重量%のココアパウダー、最大0.3重量%のバニラ、および最大5重量%の乳化剤を含む。
【0040】
本発明は、パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの水素化ラウリン油と、パーム核油、パーム核油画分、ココナッツ油、ココナッツ油画分、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエステル交換された水素化ラウリン油と、ヨウ素価が15未満の少なくとも1つの非ラウリン油と、任意選択で1つ以上の乳化剤とをブレンドすることを含む、脂肪組成物を作製するための工程にも関する。
【0041】
好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、70重量%~95重量%の水素化パーム核油ステアリンと、5重量%~25重量%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、1重量%~4重量%の水素化パーム油と、任意選択で1重量%~3重量%のトリステアリン酸ソルビタンとをブレンドすることを含む。
【0042】
より好ましい実施形態では、脂肪組成物を作製するための工程は、75重量%~90重量%の水素化パーム核油ステアリンと、8重量%~18重量%のエステル交換された水素化パーム核油ステアリンと、2重量%~3重量%の水素化パーム油と、任意選択で1重量%~3重量%のトリステアリン酸ソルビタンとをブレンドすることを含む。
【0043】
本発明の工程は、好ましくは、ブレンド後、典型的には水素化またはエステル交換後、および/または任意のブレンド後のブレンドまたは製品の成分の漂白および/または脱臭の1つ以上のステップを含む。
【0044】
本発明は、少なくとも20重量%の本発明の脂肪組成物および少なくとも30重量%の砂糖または他の甘味料を含む菓子製品にも関する。本発明の脂肪組成物を含む菓子製品は、好ましくは、少なくとも5重量%の、粉乳、植物性粉乳、乳製品パウダー、またはそれらの混合物のうちの1つ以上を含む。
【0045】
少なくとも20重量%の本発明の脂肪組成物と少なくとも30重量%の砂糖または他の甘味料とを組み合わせることを含む、本発明の菓子製品を作製する方法が、本発明によってさらに提供される。
【0046】
菓子製品の耐熱性を改善するための本発明の脂肪組成物の使用も本発明によって提供され、菓子製品は、好ましくは、コンパウンドチョコレートである。好ましくは、その使用は、非ワックス状の口当たり特徴を有する速溶融性の製品を提供することを含む。
【0047】
本明細書で明らかに先に公表された文献のリストまたは議論は、その文献が最新技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0048】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、またはパラメータについての優先度および選択肢は、別段文脈が示さない限り、本発明の全ての他の態様、実施形態、機能、およびパラメータについてのあらゆる全ての優先度および選択肢と組み合わせて開示されているものとみなされるべきである。
【0049】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を決して限定するものではない。実施例において、および本明細書を通して、他に示されない限り、全ての割合、部分、および比率は重量による。
【実施例】
【0050】
実施例1
本発明による2つの脂肪ブレンドを調製した。
【0051】
脂肪Aは、87重量%の完全水素化パーム核ステアリン、9重量%の化学的にエステル交換された完全水素化パーム核ステアリン、2%の完全水素化パーム油(3未満のヨウ素価)、および2%のトリステアリン酸ソルビタンのブレンドである。
【0052】
脂肪Bは、78.4重量%の完全水素化パーム核ステアリン、16.7重量%の化学的にエステル交換された完全水素化パーム核ステアリン、2.9%の完全水素化パーム油(3未満のヨウ素価)、および2%のトリステアリン酸ソルビタンのブレンドである。
脂肪Aおよび脂肪Bの分析結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
上の表中、
CX:Yは、X個の炭素原子およびY個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC-FAMEによって決定した(ISO 12966-2およびISO 12966-4)
IVFAMEは、計算されたヨウ素価を指す。
SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
トランスは、トランス脂肪酸を指す。
US-NXは、X℃で非安定化脂肪についてNMRによって決定された固形脂肪含有量を指す(ISO8292-1)。
【0055】
比較例1
2つの比較脂肪ブレンドを調製した。
比較脂肪Cは、78.4重量%の化学的にエステル交換された完全水素化パーム核ステアリン、パーム核ステアリンを含む19.6重量%のエステル交換されたパームステアリン、および2%のソルビタントリステアレートのブレンドである。
【0056】
比較脂肪Dは、2重量%のトリステア酸ソルビタンおよび8重量%の完全水素化パーム油(ヨウ素価が3未満)を含む92重量%の完全水素化パーム核ステアリンのブレンドである。
【0057】
比較脂肪Cおよび比較脂肪Dの分析結果を表2に示す。
【0058】
【0059】
上の表中、
CX:Yは、X個の炭素原子およびY個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC-FAMEによって決定した(ISO 12966-2およびISO 12966-4)
IVFAMEは、計算されたヨウ素価を指す。
SAFAは、飽和脂肪酸を指す。
トランスは、トランス脂肪酸を指す。
US-NXは、X℃で非安定化脂肪のNMRによって決定された固形脂肪含有量を指す(ISO8292-1)。
【0060】
実施例2
上記の脂肪ブレンドを、以下のモデル用途で評価する。チョコレートコンパウンドを、以下のレシピに従って調製した(表3)。
【0061】
【0062】
チョコレートコンパウンドの試料を以下のように評価した。
-38℃での熱耐性の決定
【0063】
この試験のために、直径約35MMおよび厚さ約5MMの円形の錠剤を調製し、ペトリ皿に入れた。ペトリ皿では、5MMの正方形に分割された4軸の軸目盛りを作製した。
【0064】
コンパウンド錠剤をアルミナ箔で包み、ペトリ皿と同じ条件で保管することによって、別の評価方式を実施した。
【0065】
これらのペトリ皿を38℃で2時間保管し、1時間後および2時間後に変形について調べた。比較脂肪Cで作製した製品は、顕著な変形を示したが、脂肪Aおよび脂肪Bを含有するコンパウンドは、38℃で2時間保管しても変形を示さず、比較脂肪Dで作製した製品と比較して優れた耐性を示した。
【0066】
包まれた錠剤は、円形の錠剤と同等の結果を示した。結果を以下の表(表4)に要約する。
【0067】
【0068】
-感覚評価
錠剤(脂肪Aおよび脂肪B)を20℃で6週間および12週間保管し、比較試料(比較脂肪D)に対して多数の感覚特徴を評価した。比較脂肪Cで作製した製品は熱耐性試験に合格しなかったため、この試料は、感覚評価で試験しなかった。試料は、相対的な硬度(最初の一口)、溶解、展延性、冷たさ、ワックス性、フレーバー放出時間、フレーバー衝撃、および効果後のフレーバーについて評価した。結果を
図1および2に示す。
【0069】
図1は、6週間の保管後の感覚評価を示す。
図2は、12週間の保管後の感覚評価を示す。
【0070】
-硬度
コンパウンドバーの硬度を、試料を20℃で2週間、1ヶ月、および2ヶ月保管した後、BROOKFIELDテクスチャーアナライザー(針TA9、侵入深さ0.5MM/秒で2MM)を使用して測定した。各試料を5回測定し、平均結果を以下の表に示す。
【0071】